説明

(2S,3R)−N−2−((3−ピリジニル)メチル)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタ−3−イル)−3,5−ジフルオロベンズアミドの調製及び治療への適用

本発明は、ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体に結合し、その活性をモジュレートする化合物、これらの化合物を調製する方法、これらの化合物を含有する医薬組成物、並びに中枢神経系(CNS)の機能障害が関連するものを含めた多種多様の症状及び障害を治療するためにこれらの化合物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体に結合し、その活性をモジュレートする化合物、これらの化合物を調製する方法、これらの化合物を含有する医薬組成物、並びに中枢神経系(CNS)の機能障害が関連するものを含めた多種多様の症状及び障害を治療するためにこれらの化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)としても公知であるニューロンニコチン性受容体(NNR)を標的とする化合物の治療可能性は、いくつかの総説の主題であった(例えば、Breiningら、Ann. Rep. Med. Chem. 40: 3(2005)、Hogg及びBertrand、Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 3: 123(2004)、Suto及びZacharias、Expert Opin. Ther. Targets 8: 61(2004)、Daniら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 14: 1837(2004)、Bencherif及びSchmitt、Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 349(2002)を参照されたい)。NNRリガンドが治療として提案されてきた適応症の種類には、アルツハイマー病、注意欠陥障害、及び統合失調症を含めた認知障害(Newhouseら、Curr. Opin. Pharmacol. 4: 36(2004)、Levin及びRezvani、Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 423(2002)、Grahamら、Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 387(2002)、Ripollら、Curr. Med. Res. Opin. 20(7): 1057(2004)、及びMcEvoy及びAllen、Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 433(2002));疼痛及び炎症(Deckerら、Curr. Top. Med. Chem. 4(3): 369(2004)、Vincler、Expert Opin. Invest. Drugs 14(10): 1191(2005)、Jain、Curr. Opin. Inv. Drugs 5: 76(2004)、Miaoら、Neuroscience 123: 777(2004));うつ及び不安(Shytleら、Mol. Psychiatry 7: 525(2002)、Damajら、Mol. Pharmacol. 66: 675(2004)、Shytleら、Depress. Anxiety 16: 89(2002));神経変性(O'Neillら、Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 399(2002)、Takataら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 306: 772(2003)、Marreroら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 309: 16(2004));パーキンソン病(Jonnala及びBuccafusco、J. Neurosci. Res. 66: 565(2001));嗜癖(Dwoskin及びCrooks、Biochem. Pharmacol. 63: 89(2002)、Coeら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 15(22): 4889(2005));肥満症(Liら、Curr. Top. Med. Chem. 3: 899(2003));並びにトゥーレット症候群(Saccoら、J. Psychopharmacol. 18(4): 457(2004)、Youngら、Clin. Ther. 23(4): 532(2001))がある。
【0003】
中枢及び末梢神経系の両方において、nAChRサブタイプについて不均一な分布が存在する。例えば、脊椎動物の脳において優勢なnAChRサブタイプは、α4β2、α7、及びα3β2であり、一方自律神経節において優勢であるものは、α3β4であり、神経筋接合部のものは、α1β1δγ及びα1β1δεである(Dwoskinら、Exp. Opin. Ther. Patents 10: 1561(2000)及びHollidayらJ. Med. Chem. 40(26)、4169(1997)を参照されたい)。
【0004】
いくつかのニコチン性化合物の限度は、複数のnAChRサブタイプへの非特異的な結合によって、それらが様々な望ましくない副作用と関連することである。例えば、筋肉及び神経節のnAChRサブタイプへの結合、並びにそれらの刺激は、治療剤としての特定のニコチン性結合化合物の有用性を制限し得る副作用をもたらし得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Breiningら、Ann. Rep. Med. Chem. 40: 3(2005)
【非特許文献2】Hogg及びBertrand、Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 3: 123(2004)
【非特許文献3】Suto及びZacharias、Expert Opin. Ther. Targets 8: 61(2004)
【非特許文献4】Daniら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 14: 1837(2004)
【非特許文献5】Bencherif及びSchmitt、Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 349(2002)
【非特許文献6】Newhouseら、Curr. Opin. Pharmacol. 4: 36(2004)
【非特許文献7】Levin及びRezvani、Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 423(2002)
【非特許文献8】Grahamら、Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 387(2002)
【非特許文献9】Ripollら、Curr. Med. Res. Opin. 20(7): 1057(2004)
【非特許文献10】McEvoy及びAllen、Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 433(2002)
【非特許文献11】Deckerら、Curr. Top. Med. Chem. 4(3): 369(2004)
【非特許文献12】Vincler、Expert Opin. Invest. Drugs 14(10): 1191(2005)
【非特許文献13】Jain、Curr. Opin. Inv. Drugs 5: 76(2004)
【非特許文献14】Miaoら、Neuroscience 123: 777(2004)
【非特許文献15】Shytleら、Mol. Psychiatry 7: 525(2002)
【非特許文献16】Damajら、Mol. Pharmacol. 66: 675(2004)
【非特許文献17】Shytleら、Depress. Anxiety 16: 89(2002)
【非特許文献18】O'Neillら、Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 399(2002)
【非特許文献19】Takataら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 306: 772(2003)
【非特許文献20】Marreroら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 309: 16(2004)
【非特許文献21】Jonnala及びBuccafusco、J. Neurosci. Res. 66: 565(2001)
【非特許文献22】Dwoskin及びCrooks、Biochem. Pharmacol. 63: 89(2002)
【非特許文献23】Coeら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 15(22): 4889(2005)
【非特許文献24】Liら、Curr. Top. Med. Chem. 3: 899(2003)
【非特許文献25】Saccoら、J. Psychopharmacol. 18(4): 457(2004)
【非特許文献26】Youngら、Clin. Ther. 23(4): 532(2001)
【非特許文献27】Dwoskinら、Exp. Opin. Ther. Patents 10: 1561(2000)
【非特許文献28】HollidayらJ. Med. Chem. 40(26)、4169(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の化合物は、α7nAChRサブタイプに対して高度の特異的結合を示し、α4β2サブタイプ並びに神経節及び筋肉のnAChRサブタイプに対して低い親和性を示す。したがって、これらの化合物は、非特異的なnAChRサブタイプ結合によってもたらされる副作用を生じさせることなく、このような治療を必要としている患者においてα7nAChRの治療モジュレーターとしての役割を果たすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明には、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(式I)又は薬学的に許容されるその塩が含まれる。
【化1】

【0008】
本発明の化合物は、α7サブタイプのNNRに高親和性で結合し、α4β2NNRサブタイプ、並びに神経節及び筋肉サブタイプよりも、このサブタイプに対して選択性を示す。
【0009】
本発明には、本発明の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物が含まれる。本発明の医薬組成物は、ニコチン性コリン作動性神経伝達の機能障害、又はニコチン性コリン作動性神経の変性を特徴とするそれらに障害を含めた、多種多様の状態又は障害を治療又は予防するために使用することができる。
【0010】
本発明には、CNS障害及び機能障害、炎症、細菌及び/若しくはウイルス感染に関連する炎症反応、疼痛、代謝症候群、自己免疫障害、又は本明細書においてさらに詳細に記載されている他の障害などの障害及び機能障害を治療又は予防する方法が含まれる。本発明には、血管新生をモジュレートする方法が含まれる。この方法は、治療有効量の、その塩を含めた本発明の化合物、又はこのような化合物を含む医薬組成物を対象に投与することを伴う。さらに、本発明には、診断用薬として、及び本明細書に記載されているような受容体結合研究において有用性を有する化合物が含まれる。
【0011】
本発明の上記及び他の態様について、下記の詳細な記載及び実施例においてさらに詳細を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド又は薬学的に許容されるその塩についての用量に対する新規物体認識(NOR)を示す。統計的に有意な作用が、0.1mg/kgぐらいに低い用量で観察された。
【図2】(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド又は薬学的に許容されるその塩の投与による、新規物体認識(NOR)についての最小有効用量の決定のために使用したデータを示す。統計的に有意な作用が、0.03mg/kgぐらいに低い用量で観察された。
【図3】0.1mg/kgの(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド又は薬学的に許容されるその塩の第3の投与に続く、時間に対する新規物体認識(NOR)を示す。投与後6時間までの用量について統計的に有意な作用が観察された。
【図4】0.3mg/kgの(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド又は薬学的に許容されるその塩の第3の投与に続く、時間に対する新規物体認識(NOR)を示す。投与後18時間までの用量について統計的に有意な作用が観察された。
【図5】α7ニコチン性受容体についての化合物A及び化合物Bの各々についての用量反応を示す。
【図6】化合物A及び化合物Bの各々とアセチルコリン(Ach)との同時適用に対する電気生理学的反応を示す。
【図7】図7A、7B、及び7Cは、ニコチン性α7受容体の活性化に関して、化合物AとAchとの相互作用についての電気生理学的反応を示す。
【図8】図8A、8B、及び8Cは、ニコチン性α7受容体の活性化に関して、化合物BとAchとの相互作用についての電気生理学的反応を示す。
【図9】化合物A一塩酸塩についてのX線回折パターンである。
【図10】化合物A一塩酸塩についての結晶構造である。
【図11】化合物Aヘミガラクタル酸塩についてのX線回折パターンである。
【図12】化合物Aについての塩スクリーニングからの塩についての六つの異なるX線回折パターンのオーバーレイを例示する。
【図13】CFAが誘発する温熱性痛覚過敏における(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの評価の結果を例示する。試験物質、モルヒネ、及びビヒクルを、CFA注射の24時間後に8匹のSDラットの群に各々皮下投与した。温熱性痛覚過敏を、CFA注射の前(CFA前)、処理前、及びSC注射の1時間後に行った。一方向ANOVA、それに続くダネット検定を適用して、処理群とビヒクル対照群とを比較した。差異は、*P<0.05レベルで有意であると見なした。
【図14】(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドが、ビヒクル処理群と比較して、1mg/kg及び10mg/kgの用量で糖尿病性ニューロパシー疼痛を減少させるのに有効であることを示す、Von Frey評価の結果を例示する。
【図15】(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドで処理した肥満(「db-被験物質」)マウスにおいて有意により低いものとして、体重増加の比較を例示する。特に、MLAと(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドとを同時投与された動物は、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド単独を投与された肥満ラットが示した体重増加の減少を示さなかった。
【図16】肥満対照におけるより、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドで処理した肥満マウス(「db-被験物質」)において、平均摂食量が有意により低かったことを例示する。痩せたマウスの摂食量は、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(「Db-被験物質」)によって影響されなかった。MLAと(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドとを同時投与された動物は、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド単独を投与された肥満ラットが示した毎日の平均摂食量の減少を示さなかった。
【図17】(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドが、肥満マウス(「db-被験物質」)において空腹時血漿グルコースレベルを有意に阻害したことを例示する。しかし、この作用は、MLAによる同時投与によって逆転されなかった。
【図18】(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドが、肥満マウス(「db-被験物質」)においてグリコシル化HbA1cレベルを有意に阻害したことを例示する。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドによるグリコシル化HbA1cの減少は、MLAの同時投与によって減衰した。
【図19】(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドが、肥満マウス(「db-被験物質」)において炎症促進性サイトカインであるTNFαを有意に減少させたことを例示する。これらの作用は、α7アンタゴニストであるMLAの同時投与によって阻害された。
【図20】ビヒクルで処理した対照(「db」)と比較して、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドが、肥満マウス(「db-被験物質」)において有意により低いトリグリセリドレベルをもたらしたことを例示する。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドによるトリグリセリドの減少は、MLAの同時投与によって減衰しなかった。
【図21】オボアルブミン感作マウスにおけるメタコリン負荷に対するPenh反応における変化%に対する(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの作用を例示する。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド及びビヒクルを、21日目から25日目まで連続6日間、OVA負荷の30分前に皮下(1日2回)又は気管内(毎日)投与し、最後の投与は26日目のMCh誘発の30分前に投与した。Penh値を決定した。OVA免疫化ビヒクルと他の処理群との間の比較のために、一方向ANOVA、それに続くダネット検定を適用した。*OVA-ビヒクル対照に対してP<0.05。
【図22】オボアルブミン感作マウスにおける白血球数及び細胞分画数に対する(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの作用を例示する。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド及びビヒクルを、21日目から25日目まで連続6日間、OVA負荷の30分前に皮下(1日2回)又は気管内(毎日)投与し、最後の投与は26日目の気管支肺胞洗浄液収集の30分前に投与した。総白血球数及び細胞分画数を決定した。OVA免疫化ビヒクルと他の処理群との間の比較のために、一方向ANOVA、それに続くダネット検定を適用した。*OVA-ビヒクル対照に対してP<0.05。
【図23】オボアルブミン感作マウスにおける白血球数%及び細胞分画数%に対する(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの作用を例示する。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド及びビヒクルを、21日目から25日目まで連続6日間、OVA負荷の30分前に皮下(1日2回)又は気管内(毎日)投与し、最後の投与は26日目の気管支肺胞洗浄液収集の30分前に投与した。総白血球数及び細胞分画数を決定した。OVA免疫化ビヒクルと他の処理群との間の比較のために、一方向ANOVA、それに続くダネット検定を適用した。*OVA-ビヒクル対照に対してP<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
下記の定義は、定義する用語を明確化することを意図するが、限定することは意図しない。本明細書において使用される特定の用語が特に定義されていない場合、このような用語は不明確であると考えるべきではない。むしろ、用語は、それらの容認された意味の範囲内で使用する。
【0014】
本明細書において使用する場合、「化合物(複数可)」という用語は、容易に明らかであろう文脈によって、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの遊離塩基の形態、又は代わりに塩の形態を意味するために使用してもよい。当業者であれば、その差を識別することができるであろう。
【0015】
参照を簡単にするために、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(式I)又は薬学的に許容されるその塩をまた、化合物Aと称する。さらに、構造的類似体を、本明細書において比較の目的のために使用する。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-4-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容されるその塩を、化合物Bと称する。化合物Bは、参照により本明細書中に組み込まれているWO04/76449に公開されているように、ラセミ混合物の単一の異性体である。
【0016】
本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、製剤の他の成分と適合性であり、医薬組成物のレシピエントに対して有害ではない、担体(複数可)、賦形剤(複数可)、添加剤(複数可)又は本発明の化合物の塩の形態を意味する。
【0017】
本明細書において使用する場合、「医薬組成物」という用語は、1種又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は添加剤と任意選択で混合した、本発明の化合物を意味する。医薬組成物は好ましくは、それらを製造及び商業化の目的に適したものとするために、環境条件に対してある程度の安定性を示す。
【0018】
本明細書において使用する場合、「有効量」、「治療有効量」、「治療量」又は「有効用量」という用語は、所望の薬理又は治療効果を誘発し、したがって障害の有効な予防又は治療をもたらすのに十分である本発明の化合物の量を意味する。障害の予防は、障害の進行、及び障害と関連する症状の発症を遅延又は予防することによって明らかにし得る。障害の治療は、症状の減少又は解消、障害の進行の阻害又は逆転、及び患者の満足のいく状態に対する任意の他の寄与によって明らかにし得る。
【0019】
下記にさらに詳細に説明するように、並びに図1、2、3、及び4に関連して、0.03μM/kgほどの低い用量の式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩について、投与後18時間までに観察される作用を含めて統計的に有意な作用が観察される。有効用量は、患者の状態、障害の症状の重症度、及び医薬組成物が投与される態様などの要因によって変化し得る。したがって、本明細書において使用する場合、有効用量は、100mg未満、好ましくは50mg未満、さらに好ましくは10mg未満、最も好ましくは1mg未満でよい。これらの有効用量は典型的には、単回用量として、又は24時間の期間に亘って投与される一つ若しくは複数の用量として投与される量を表す。
【0020】
化合物
本発明の一態様には、化合物(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(式I)又は薬学的に許容されるその塩が含まれる。
【化2】

【0021】
一実施形態において、化合物には、(2R,3S)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド、(2R,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド、及び(2S,3S)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの一つ又は複数が実質的に存在しない。
【0022】
一実施形態では、酸が、塩酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、マロン酸、L-酒石酸、フマル酸、クエン酸、L-リンゴ酸、R-マンデル酸、S-マンデル酸、コハク酸、4-アセトアミド安息香酸、アジピン酸、ガラクタル酸、ジ-p-トルオイル-D-酒石酸、シュウ酸、D-グルクロン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-メトキシ安息香酸、(1S)-(+)-10-カンファースルホン酸、(1R,3S)-(+)-ショウノウ酸、及びp-トルエンスルホン酸から選択される酸付加塩、又はその水和物若しくは溶媒和物である。さらなる実施形態において、酸と(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドとのモル比は、1:2又は1:1である。
【0023】
本発明の別の態様には、
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド一塩酸塩又はその水和物若しくは溶媒和物;
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド一リン酸塩又はその水和物若しくは溶媒和物;
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドモノ-4-ヒドロキシ安息香酸塩又はその水和物若しくは溶媒和物;及び
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドヘミ-4-ヒドロキシ安息香酸塩又はその水和物若しくは溶媒和物
から選択される化合物が含まれる。
【0024】
本発明の別の態様には、個々に又は組み合わせて、25重量%未満の、好ましくは15重量%未満の、好ましくは5重量%未満の、好ましくは2重量%未満の、好ましくは1重量%未満の(2R,3R)-、(2S,3S)-、又は(2R,3S)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを含有する、化合物(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド又は薬学的に許容されるその塩が含まれる。
【0025】
本発明の別の態様には、実質的に結晶性である、化合物(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(式I)又は薬学的に許容されるその塩が含まれる。別の態様には、下記のピークの±0.5度2θ以内に一つ又は複数のピークを含むX線回折パターンを特徴とする、化合物(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド塩酸塩の多形形態が含まれる。
【表1】

【0026】
本発明の別の態様は、図9に実質的に相当するX線粉末回折パターンを特徴とする、化合物(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド塩酸塩の多形形態である。
【0027】
本発明の別の態様には、α7が媒介する疾患又は機能障害の治療又は予防のための医薬の製造における本発明の化合物の使用が含まれる。本発明の別の態様には、治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む、α7が媒介する疾患又は機能障害を治療又は予防する方法が含まれる。本発明の別の態様には、α7が媒介する疾患又は機能障害の治療又は予防において使用するための本発明の化合物が含まれる。一実施形態において、疾患又は機能障害は、
i)急性、神経性、炎症性、神経因性、慢性疼痛、激しい慢性疼痛、術後痛、癌に関連する疼痛、アンギナ、腎仙痛又は胆石仙痛、月経、片頭痛、痛風、関節炎、リウマチ様疾患、腱鞘炎、脈管炎、三叉神経又はヘルペス神経痛、糖尿病性ニューロパシー疼痛、灼熱痛、腰痛症、求心路遮断症候群、及び腕神経叢裂離の一つ又は複数を含めた疼痛;
ii)代謝症候群、体重増加、I型糖尿病、II型糖尿病、又は糖尿病性ニューロパシー;
iii)乾癬、喘息、アテローム性動脈硬化症、特発性肺線維症、慢性及び急性炎症、乾癬、内毒素血症、痛風、急性偽痛風、急性痛風性関節炎、関節炎、関節リウマチ、骨関節炎、同種移植片拒絶、慢性移植片拒絶、喘息、アテローム性動脈硬化症、単核食細胞依存性肺傷害、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、鎌状赤血球症における急性胸部症候群、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性胆管炎、アフタ性口内炎、嚢炎、糸球体腎炎、ループス腎炎、血栓症、及び移植片対宿主反応の一つ又は複数を含めた炎症;並びに
iv)加齢関連記憶障害、軽度認知性障害、初老期認知症、早期発症型アルツハイマー病、老人性認知症、アルツハイマー型の認知症、アルツハイマー型の軽度から中等度の認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、アルツハイマー病、脳卒中、AIDS認知症複合、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、失読症、統合失調症、統合失調症様障害、分裂感情障害、統合失調症における認知欠損、及び統合失調症における認知機能障害の一つ又は複数を含めた認知
からなる群から選択される。
【0028】
本発明の別の態様には、本発明の化合物及び1種又は複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が含まれる。
【0029】
本発明の別の態様には、有効量の本発明の化合物を投与することを含む、アセチルコリン誘発電流を増強する方法が含まれる。
【0030】
本発明の別の実施形態には、実施例のいずれか一つを参照した、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド又は薬学的に許容されるその塩が含まれる。
【0031】
本発明の別の実施形態には、活性治療物質として使用するための、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド又は薬学的に許容されるその塩が含まれる。
【0032】
本発明の別の実施形態には、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド又は薬学的に許容されるその塩の投与によって、それを必要としている対象においてNNRをモジュレートする方法が含まれる。
【0033】
本発明の範囲には、態様及び実施形態の組合せが含まれる。
【0034】
特に明記しない限り、本明細書において示された構造はまた、一つ又は複数の同位体標識原子の存在のみが異なる化合物を含むことを意味する。例えば、重水素若しくはトリチウムによる水素原子の置き換え、又は13C若しくは14Cによる炭素原子の置き換え、又は15Nによる窒素原子の置き換え、又は17O若しくは18Oによる酸素原子の置き換えを除いて、本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような同位体標識化合物は、研究又は診断手段として有用である。
【0035】
本発明には、塩の溶媒和物などのこれらの組合せを含めた、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの塩又は溶媒和物が含まれる。本発明の化合物は、溶媒和形態、例えば水和形態、及び非溶媒和形態で存在してもよく、本発明は、全てのこのような形態を包含する。
【0036】
絶対というわけではないが、典型的には、本発明の塩は、薬学的に許容される塩である。「薬学的に許容される塩」という用語内に包含される塩とは、本発明の化合物の無毒性塩を意味する。
【0037】
適切な薬学的に許容される塩の例には、無機酸付加塩(クロリド、ブロミド、硫酸塩、リン酸塩、及び硝酸塩など);有機酸付加塩(酢酸塩、ガラクタル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びアスコルビン酸塩など);酸性アミノ酸を有する塩(アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩など);アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩など);アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩及びカルシウム塩など);アンモニウム塩;有機塩基性塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、及びN,N'-ジベンジルエチレンジアミン塩など);並びに塩基性アミノ酸を有する塩(リシン塩及びアルギニン塩など)などが含まれる。塩は、場合によっては水和物又はエタノール溶媒和物でよい。
【0038】
本明細書において注目されるように、本発明には、本明細書において特殊性によって同定された特定の化合物が含まれる。本発明の化合物は、周知の標準的合成法を含めた種々の方法によって作製し得る。例示的な一般の合成法を下記に示し、次いで、本発明の特定の化合物を実施例において調製する。
【0039】
下記に記載する実施例の全てにおいて、感応性基又は反応性基のための保護基を、合成化学の一般原則に従って必要に応じて用いる。保護基を、有機合成の標準的方法によって操作する(例えば、T. W. Green及びP. G. M. Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第3版、John Wiley & Sons、New York(1999)を参照されたい)。これらの基は、当業者には容易に明らかな方法を使用して、化合物合成の都合のよい段階において除去する。方法の選択及び反応条件及びそれらを実行する順序は、本発明の化合物の調製と整合性が取れているべきである。
【0040】
本発明はまた、本発明の化合物の調製における中間体として有用な化合物の合成方法を、それらの調製方法と併せて提供する。
【0041】
これらの化合物は、容易に利用可能な出発物質及び試薬を使用して、下記の方法に従って調製することができる。これらの反応において、それら自体がこの技術分野における当業者に公知の変形を用い得るが、さらなる詳細については言及しない。
【0042】
塩の形態
本発明の一態様は、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの新規な塩の形態に関する。
【0043】
遊離塩基の形態の(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、制限された水溶性を伴った固体である。しかし、遊離塩基は、無機酸及び有機酸の両方と反応し、医薬組成物の調製のために有利な物理的性質(結晶化度、水溶性、及び化学分解に対する安定性など)を有する特定の酸付加塩が作製される。典型的には、これらの塩の形態は、薬学的に許容される塩である。
【0044】
本発明には、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの薬学的に許容される塩が含まれる。適切な薬学的に許容される塩の例には、無機酸付加塩(クロリド、ブロミド、硫酸塩、リン酸塩、及び硝酸塩など);有機酸付加塩(酢酸塩、ガラクタル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びアスコルビン酸塩など);酸性アミノ酸を有する塩(アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩など);アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩など);アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩及びカルシウム塩など);アンモニウム塩;有機塩基性塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、及びN,N'-ジベンジルエチレンジアミン塩など);並びに塩基性アミノ酸を有する塩(リシン塩及びアルギニン塩など)などが含まれる。塩は、場合によっては水和物又は溶媒和物(エタノール溶媒和物など)でよい。
【0045】
本発明の一態様には、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの酸付加塩が含まれ、酸は、塩酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、マロン酸、L-酒石酸、フマル酸、クエン酸、L-リンゴ酸、R-マンデル酸、S-マンデル酸、コハク酸、4-アセトアミド安息香酸、アジピン酸、ガラクタル酸、ジ-p-トルオイル-D-酒石酸、シュウ酸、D-グルクロン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-メトキシ安息香酸、(1S)-(+)-10-カンファースルホン酸、(1R,3S)-(+)-ショウノウ酸、及びp-トルエンスルホン酸から選択される。本発明にはまた、これらの塩の形態の水和物及び溶媒和物が含まれる。
【0046】
本発明を含む塩の化学量論は、変化し得る。例えば、酸と(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドとのモル比は、1:2又は1:1であることが典型的であるが、3:1、1:3、2:3、3:2及び2:1などの他の比が可能である。
【0047】
本発明の一実施形態において、塩は、1:2の酸と(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドとの化学量論を有する。別の実施形態において、塩は、1:1の酸と(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドとの化学量論を有する。
【0048】
本明細書において注目されるように、本明細書に記載されている塩が形成される態様によって、塩は、塩の形成の間に存在する溶媒を吸蔵する結晶構造を有することができる。したがって、塩は、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドに対して変動する化学量論の溶媒の水和物及び他の溶媒和物として生じることができる。
【0049】
本発明の別の実施形態には、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド又はその水和物若しくは溶媒和物が含まれる。
【0050】
本発明の別の実施形態には、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド一塩酸塩又はその水和物若しくは溶媒和物が含まれる。
【0051】
本発明の別の実施形態 (2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド一リン酸塩又はその水和物若しくは溶媒和物が含まれる。
【0052】
本発明の別の実施形態には、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドモノ-4-ヒドロキシ安息香酸塩又はその水和物若しくは溶媒和物が含まれる。
【0053】
本発明の別の実施形態には、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドヘミ-4-ヒドロキシ安息香酸塩又はその水和物若しくは溶媒和物が含まれる。
【0054】
本発明のさらなる態様には、塩の調製のための方法が含まれる。塩が形成される正確な条件は、経験的に決定し得る。塩は、制御条件下にて結晶化によって得てもよい。
【0055】
本発明の一実施形態には、個々に又は組み合わせて、25重量%未満、好ましくは15重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満、よりさらに好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の(2R,3R)-、(2S,3S)-、又は(2R,3S)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを含有する、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド又は薬学的に許容されるその塩の調製方法が含まれる。
【0056】
塩の形態の調製方法は変化し得る。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド塩の形態の調製は、典型的には
(i)適切な溶媒中の適切に純粋な(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの遊離塩基、又は遊離塩基の溶液を、純粋な形態の酸のいずれかと、又は適切な溶媒中の酸(典型的には0.5〜1当量の酸)のいずれかの溶液と混合することと;
(ii)(a)このように得られた塩溶液を必要に応じて冷却し、沈殿をもたらすことと、又は
(ii)(b)適切な逆溶媒を加え、沈殿をもたらすことと、
又は
(ii)(c)第1の溶媒を蒸発させ、新しい溶媒を加え、ステップ(ii)(a)又はステップ(ii)(b)を繰り返すことと、
(iii)塩を濾過し、集めることと
を伴う。
【0057】
用いられる化学量論、溶媒ミックス、溶質濃度、及び温度は、変化し得る。塩の形態を調製又は再結晶するのに使用することができる代表的な溶媒には、これらに限定されないが、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、アセトン、酢酸エチル、トルエン、水、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、n-ヘプタン、及びアセトニトリルが含まれる。
【0058】
これらの塩のいくつかは、医薬調製物の生成におけるそれらの見込みを確立するのに十分な安定性を示す。このような安定性は、種々の方法で示すことができる。大気中の水分を獲得及び放出する傾向は、動的蒸気吸着(DVS)によって評価することができる。
【0059】
一般の合成法
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの合成は、スキーム1に例示するように、(2S,3R)-3-アミノ-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(このような合成に関し、参照により本明細書中に組み込まれているPCT/US08/71872に記載されているように得る)と3,5-ジフルオロ安息香酸との、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N,1-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)が媒介するカップリングによって達成される。
【化3】

【0060】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの合成は、カルボン酸を活性化する他の薬剤を使用することによって同様に達成することができる。例えば、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-ビス(テトラメチレン)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBPyU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、及び(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)(EDCI)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、並びに、例えば、Kiso及びYajima、Peptides、39〜91頁、Academic Press、San Diego、CA(1995)に記載されているものなどの活性化剤の使用は、当業者には周知である。
【0061】
治療方法
本発明の化合物は、α7NNRに選択的に結合し、その活性をモジュレートする能力を有する。結果的に、これらの化合物は、他のタイプのニコチン性化合物が提案されてきており、或いは治療法として有用であると示されている様々な状態又は障害(CNS障害、炎症、細菌及び/又はウイルス感染と関連する炎症反応、疼痛、代謝症候群、自己免疫障害、又は本明細書においてさらに詳細に記載する他の障害など)の予防又は治療のために使用することができる。これらの化合物は、血管新生をモジュレートするために、並びに受容体結合研究(インビトロ及びインビボ)における診断用薬として使用することができる。このような治療及び他の教示は、例えば、Williamsら、Drug News Perspec. 7(4): 205(1994)、Arnericら、CNS Drug Rev. 1(1): 1〜26(1995)、Arnericら、Exp. Opin. Invest. Drugs 5(1): 79〜100(1996)、Bencherifら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 279: 1413(1996)、Lippielloら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 279: 1422(1996)、Damajら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 291: 390(1999);Chiariら、Anesthesiology 91: 1447(1999)、Lavand'homme及びEisenbach、Anesthesiology 91: 1455(1999)、Holladayら、J. Med. Chem. 40(28): 4169〜94(1997)、Bannonら、Science 279: 77(1998)、PCT WO94/08992、PCT WO96/31475、PCT WO96/40682、及びBencherifらへの米国特許第5,583,140号、Dullらへの同第5,597,919号、Smithらへの同第5,604,231号及びCosfordらへの同第5,852,041号、並びに本明細書において上記に一覧表示した他の参考文献に記載されている。
【0062】
CNS障害
これらの化合物及びそれらの医薬組成物は、神経変性障害、精神神経障害、神経障害、及び嗜癖を含めた種々のCNS障害の治療又は予防において有用である。化合物及びそれらの医薬組成物を使用して、認知欠損及び機能障害(加齢性及びその他のもの);注意障害及び認知症(病原菌又は代謝障害によるものを含めた)を治療又は予防し;神経保護を実現し;痙攣及び多発性脳梗塞を治療し;気分障害、強迫行為及び嗜癖行動を治療し;鎮痛を実現し;サイトカイン及び核因子κBによって媒介されるものなどの炎症を制御し;炎症性障害を治療し;疼痛緩和を実現し;細菌、真菌、及びウイルス感染を治療するための抗感染剤として感染症を治療することができる。本発明の化合物及び医薬組成物を使用して、治療又は予防することができる障害、疾患及び状態の中には、加齢関連記憶障害(AAMI)、軽度認知性障害(MCI)、加齢に伴う認知低下(ARCD)、初老期認知症、早期発症型アルツハイマー病、老人性認知症、アルツハイマー型の認知症、アルツハイマー病、認知症には進展していない認知性障害(CIND)、レビー小体型認知症、HIV-認知症、AIDS認知症複合、血管性認知症、ダウン症候群、頭部外傷、外傷性脳損傷(TBI)、拳闘家認知症、クロイツフェルトヤコブ病及びプリオン病、脳卒中、虚血、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、失読症、統合失調症、統合失調症様障害、分裂感情障害、統合失調症における認知機能障害、統合失調症における認知欠損、パーキンソニズム(パーキンソン病、脳炎後パーキンソニズム、グアムのパーキンソニズム-認知症、前頭側頭型認知症パーキンソン型(FTDP)を含めた)、ピック病、ニーマンピック病、ハンチントン病、ハンチントン舞踏病、晩発性ジスキネジア、運動亢進症、進行性核上性麻痺、進行性核上性不全麻痺、下肢静止不能症候群、クロイツフェルトヤコブ病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患(MND)、多系統萎縮症(MSA)、皮質基底核変性症、ギランバレー症候群(GBS)、及び慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー(CIDP)、てんかん、常染色体優性夜間前頭葉てんかん、躁病、不安、うつ、月経前神経不安、パニック障害、過食症、食欲不振症、ナルコレプシー、過剰日中睡眠症、双極性障害、全般性不安障害、強迫性障害、爆発的な激怒、反抗挑戦性障害、トゥーレット症候群、自閉症、薬物及びアルコール嗜癖、タバコ嗜癖、肥満症、悪液質、乾癬、ループス、急性胆管炎、アフタ性口内炎、潰瘍、喘息、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、痙攣性ジストニア、下痢、便秘、嚢炎、ウイルス性肺炎、関節炎(関節リウマチ及び骨関節炎を含めた)、内毒素血症、敗血症、アテローム性動脈硬化症、特発性肺線維症、急性疼痛、慢性疼痛、ニューロパシー、尿失禁、糖尿病並びに新生物形成がある。
【0063】
認知性障害又は認知機能障害は、統合失調症及び他の精神病性障害(これらに限定されないが、精神病性障害、統合失調症様障害、分裂感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、及び全身的病状による精神病性障害を含めた)、認知症及び他の認知障害(これらに限定されないが、軽度認知性障害、初老期認知症、アルツハイマー病、老人性認知症、アルツハイマー型の認知症、加齢性記憶障害、レビー小体型認知症、血管性認知症、AIDS認知症複合、失読症、パーキンソニズム(パーキンソン病、パーキンソン病の認知性障害及び認知症を含めた)、多発性硬化症の認知性障害、外傷性脳損傷によってもたらされる認知性障害、外傷性脳損傷によってもたらされる認知症を含めた)、不安障害(これらに限定されないが、広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の病歴がない広場恐怖症、特定恐怖症、対人恐怖、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、全般性不安障害及び全身的病状による全般性不安障害を含めた)、気分障害(これらに限定されないが、大うつ病性障害、気分変調性障害、双極性うつ病、双極性躁病、双極性障害I型、躁病、うつ病又は混合性エピソードと関連するうつ、双極性障害II型、気分循環性障害、及び全身的病状による気分障害を含めた)、睡眠障害(これらに限定されないが、睡眠異常障害、原発性不眠症、原発性過眠症、ナルコレプシー、睡眠時異常行動障害、悪夢障害、夜驚症及び夢遊病障害を含めた)、精神遅滞、学習障害、運動能力障害、コミュニケーション障害、広汎性発達障害、注意欠陥及び破壊的行動障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、乳児期、小児期、又は成人の栄養補給障害及び摂食障害、チック障害、排泄障害、物質関連障害(これらに限定されないが、物質依存、物質乱用、物質中毒、物質離脱、アルコール関連障害、アンフェタミン又はアンフェタミン様関連障害、カフェイン関連障害、カンナビス関連障害、コカイン関連障害、幻覚剤関連障害、吸入剤関連障害、ニコチン関連障害、オピオイド関連障害、フェンシクリジン又はフェンシクリジン様関連障害、及び鎮静剤、睡眠剤又は抗不安薬関連障害を含めた)、人格障害(これらに限定されないが、強迫性人格障害及び衝動制御障害を含めた)などの精神障害又は状態と関連し得る。
【0064】
認知パフォーマンスは、例えば、アルツハイマー病評価スケールの認知サブスケール(ADAS-cog)などの有効な認知スケールによって評価し得る。認知の改善における本発明の化合物の有効性の一つの測定には、このようなスケールによって患者の変化の程度を測定することが含まれてもよい。
【0065】
上記の症状及び障害は、例えば、American Psychiatric Association: Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版、テキスト改訂、Washington, DC、American Psychiatric Association、2000においてさらに詳細に考察されている。物質使用、乱用、及び依存に関連する症状及び診断上の特徴について、このマニュアルをまたより詳細に参照し得る。
【0066】
炎症
神経系は、主として迷走神経によって、マクロファージ腫瘍壊死因子(TNF)の放出を阻害することによって自然免疫反応の大きさをレギュレートすることが知られている。この生理機構は、「コリン作動性抗炎症性経路」として公知である(例えば、Tracey、「The inflammatory reflex」、Nature 420: 853〜9(2002)を参照されたい)。過剰な炎症及び腫瘍壊死因子の合成は、種々の疾患において疾病及び死亡さえをももたらす。これらの疾患には、これらに限定されないが、内毒素血症、関節リウマチ、骨関節炎、乾癬、喘息、アテローム性動脈硬化症、特発性肺線維症、及び炎症性腸疾患が含まれる。
【0067】
本明細書に記載されている化合物を投与することによって治療又は予防することができる炎症状態には、これらに限定されないが、慢性及び急性炎症、乾癬、内毒素血症、痛風、急性偽痛風、急性痛風性関節炎、関節炎、関節リウマチ、骨関節炎、同種移植片拒絶、慢性移植片拒絶、喘息、アテローム性動脈硬化症、単核食細胞依存性肺傷害(mononuclear-phagocyte dependent lung injury)、特発性肺線維症、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、鎌状赤血球症における急性胸部症候群、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性胆管炎、アフタ性口内炎、嚢炎、糸球体腎炎、ループス腎炎、血栓症、及び移植片対宿主反応が含まれる。
【0068】
細菌及び/又はウイルス感染と関連する炎症反応
多くの細菌及び/又はウイルス感染は、毒素の形成によって、並びに細菌又はウイルス及び/又は毒素に対する体の自然な反応によって引き起こされる副作用と関連する。感染に対する体の反応は、かなりの量のTNF及び/又は他のサイトカインを生じさせることを伴うことが多い。これらのサイトカインの過剰発現は、著しい損傷(敗血症性ショック(細菌が敗血症であるとき)、内毒素ショック、尿路性敗血症及び毒素ショック症候群など)をもたらし得る。
【0069】
サイトカイン発現は、NNRによって媒介され、これらの受容体のアゴニスト又は部分アゴニストを投与することによって阻害することができる。これらの受容体のアゴニスト又は部分アゴニストである本明細書に記載されているそれらの化合物は、したがって細菌性感染、並びにウイルス及び真菌性感染に関連する炎症反応を最小化するために使用することができる。このような細菌性感染の例には、炭疽、ボツリヌス中毒、及び敗血症が含まれる。これらの化合物のいくつかはまた、抗菌特性を有し得る。
【0070】
これらの化合物はまた、抗生物質、抗ウイルス剤及び抗真菌剤などの、細菌、ウイルス及び真菌性感染を制御する既存療法と組み合わせた補助療法として使用することができる。抗毒素をまた使用して、病原体によって生じた毒素に結合させ、炎症反応を生じさせずに結合した毒素を体内で通過させることができる。抗毒素の例は、例えば、Bundleらへの米国特許第6,310,043号において開示されている。細菌及び他の毒素に対して有効な他の薬剤が有効であり得、それらの治療効果は、本明細書に記載されている化合物との同時投与によって完全にすることができる。
【0071】
疼痛
これらの化合物を投与して、急性、神経性、炎症性、神経因性及び慢性疼痛を含めた疼痛を治療及び/又は予防することができる。本明細書に記載されている化合物の鎮痛作用は、U.S.特許出願公開第20010056084A1号(Allgeierら)に記載されているように行って、持続性炎症性疼痛及び神経因性疼痛のモデルにおいて示すことができる(例えば、炎症性疼痛の完全フロイントアジュバントラットモデルにおける機械的痛覚過敏、及び神経因性疼痛のマウス坐骨神経部分結紮モデルにおける機械的痛覚過敏)。
【0072】
鎮痛作用は、様々な起源又は原因の疼痛を治療するために、特に、炎症性疼痛及び関連する痛覚過敏、神経因性疼痛及び関連する痛覚過敏、慢性疼痛(例えば、激しい慢性疼痛、術後痛、癌を含めた様々な状態に関連する疼痛、アンギナ、腎仙痛又は胆石仙痛、月経、片頭痛及び痛風)の治療において適切である。炎症性疼痛は、関節炎及びリウマチ様疾患、腱鞘炎及び脈管炎を含めて、多様な起源があり得る。神経因性疼痛には、三叉神経又はヘルペス神経痛、糖尿病性ニューロパシー疼痛、灼熱痛、腰痛症及び求心路遮断症候群(腕神経叢裂離など)が含まれる。
【0073】
血管新生
α7NNRは、血管新生と関連する。例えば、α7NNRのアンタゴニスト(又は特定の投与量で、部分アゴニスト)の投与による血管新生の阻害によって、望ましくない血管新生又は血管形成を特徴とする状態を治療又は予防することができる。このような状態は、炎症性血管形成及び/又は虚血が誘発する血管形成を特徴とするものを含むことができる。腫瘍増殖と関連する血管新生はまた、α7NNRのアンタゴニスト又は部分アゴニストとして機能する本明細書に記載されているそれらの化合物を投与することによって阻害することができる。
【0074】
α7NNR-比活性の特異的アンタゴニズムは、炎症、虚血、及び腫瘍形成に対する血管形成反応を減少させる。本明細書に記載されている化合物を評価するための適当な動物モデル系に関するガイダンスは、例えば、Heeschen, C.ら、「A novel angiogenic pathway mediated by non-neuronal nicotinic acetylcholine receptors」、J. Clin. Invest. 110(4):527〜36(2002)において見出すことができる。
【0075】
本明細書に記載されている化合物を使用して治療することができる代表的な腫瘍タイプには、NSCLC、卵巣がん、膵臓がん、乳癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、中咽頭癌、下咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝癌、胆嚢癌、胆管癌、小腸癌、尿路癌、腎癌、膀胱癌、尿路上皮癌、女性生殖器官癌、子宮頸癌、子宮癌、卵巣癌、絨毛癌、妊娠栄養膜疾患、男性生殖器官癌、前立腺癌、精嚢癌、睾丸癌、生殖細胞腫瘍、内分泌腺癌、甲状腺癌、副腎癌、下垂体癌、皮膚癌、血管腫、黒色腫、肉腫、骨及び軟部肉腫、カポジ肉腫、脳の腫瘍、神経の腫瘍、目の腫瘍、髄膜の腫瘍、星状細胞腫、神経膠腫、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽細胞腫、シュワン細胞腫、髄膜腫、造血器悪性腫瘍に起因する固形腫瘍(白血病、緑色腫、形質細胞腫、菌状息肉症のプラーク及び腫瘍、並びに皮膚T細胞リンパ腫/白血病など)、並びにリンパ腫に起因する固形腫瘍が含まれる。
【0076】
これらの化合物はまた、抗新生物抗腫瘍剤(シスプラチン、アドリアマイシン、ダウノマイシンなど)、及び/又は当技術分野において公知のもののような抗VEGF(血管内皮増殖因子)剤との同時投与を含めて、抗癌治療の他の形態と併せて投与することができる。
【0077】
これらの化合物は、腫瘍部位を標的にする態様で投与することができる。例えば、これらの化合物は、微粒子を腫瘍に向ける様々な抗体に結合したミクロスフィア、微粒子又はリポソーム中で投与することができる。さらに、これらの化合物は、動脈及び静脈を通過するが、腫瘍の周囲の毛細血管床中に留まるような適当な大きさのミクロスフィア、微粒子又はリポソーム中に存在することができ、これらの化合物を腫瘍に局所的に投与する。このような薬物送達装置は、当技術分野において公知である。
【0078】
他の障害
CNS障害、炎症、望ましくない血管新生、及び疼痛を治療するのに加えて、本発明の化合物をまた使用して、NNRが役割を果たしている特定の他の状態、疾患、及び障害を予防又は治療することができる。例には、ループスなどの自己免疫障害、サイトカイン放出と関連する障害、感染症に続発する悪液質(例えば、AIDS、AIDS関連症候群及び腫瘍形成において起こるようなもの)、肥満症、天疱瘡、尿失禁、網膜疾患、感染症、筋無力症、イートンランバート症候群、高血圧症、骨粗鬆症、血管収縮、血管拡張、心不整脈、I型糖尿病、過食症、食欲不振症、及びPCT出願WO98/25619に記載されているそれらの適応症が含まれる。本発明の化合物をまた投与して、てんかんの徴候となるものなどの痙攣を治療し、梅毒及びクロイツフェルトヤコブ病などの状態を治療することができる。
【0079】
診断用の使用
これらの化合物は、特にそれらが修飾されて適当な標識を含むとき、プローブなどの診断用組成物において使用することができる。プローブを使用して、例えば、特異的受容体、特にα7受容体サブタイプの相対数及び/又は機能を決定することができる。この目的にために、本発明の化合物を、最も好ましくは放射性同位体部分(11C、18F、76Br、123I又は125Iなど)で標識する。
【0080】
投与された化合物は、使用する標識にふさわしい公知の検出方法を使用して検出することができる。検出方法の例には、ポジトロン放出断層撮影(PET)及び単光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)が含まれる。上記の放射標識は、PET(例えば、11C、18F又は76Br)及びSPECT(例えば、123I)画像法において有用であり、11Cについて約20.4分、18Fについて約109分、123Iについて約13時間、及び76Brについて約16時間の半減期である。選択した受容体サブタイプを非飽和濃度で可視化するために、高比活性が望ましい。投与される用量は典型的には毒性範囲より低く、ハイコントラスト画像を実現する。化合物は無毒性レベルで投与できることが予想される。用量の決定は、放射標識画像法の当業者には公知の態様で行われる。例えば、Londonらへの米国特許第5,969,144号を参照されたい。
【0081】
これらの化合物は、公知の技術を使用して投与することができる。例えば、Londonらへの米国特許第5,969,144号を参照されたい。これらの化合物は、診断用組成物を製剤するのに有用なそれらのタイプの成分などの他の成分を組み込んだ製剤組成物中で投与することができる。本発明を実行するのに従って有用な化合物は最も好ましくは、高純度の形態で用いられる。Elmalchらへの米国特許第5,853,696号を参照されたい。
【0082】
これらの化合物が対象(例えば、ヒト対象)に投与された後、対象内のその化合物の存在は、選択したNNRサブタイプの存在、量、及び機能を示すために、適当な技術によって画像化及び定量化することができる。これらの化合物は、ヒトに加えて、マウス、ラット、イヌ、及びサルなどの動物に投与することができる。SPECT及びPET画像法は、任意の適当な技術及び装置を使用して行うことができる。Villemagneら、Arnericら(編) Neuronal Nicotinic Receptors: Pharmacology and Therapeutic Opportunities、235〜250(1998)及びElmalchらへの米国特許第5,853,696号を参照されたい。
【0083】
放射性標識化合物は、選択的NNRサブタイプ(例えば、α7)に高親和性で結合し、好ましくは他のニコチン性コリン作動性受容体サブタイプ(例えば、α4β2、並びに筋肉及び神経節と関連するそれらの受容体サブタイプ)に対して無視できる非特異的結合を示す。したがって、これらの化合物は、種々のCNS疾患及び障害と関連する診断のための、対象の体内、特に脳内のニコチン性コリン作動性受容体サブタイプの非侵襲性画像法のための薬剤として使用することができる。
【0084】
一態様において、診断用組成物は、ヒト患者などの対象において疾患を診断する方法において使用することができる。この方法は、その患者に、本明細書に記載されているような検出可能な標識化合物を投与し、選択したNNRサブタイプ(例えば、α7受容体サブタイプ)へのその化合物の結合を検出することを伴う。診断手段(PET及びSPECTなど)を使用する当業者は、本明細書に記載されている放射性標識化合物を使用して、中枢及び自律神経系の機能障害と関連する症状及び障害を含めた多種多様の症状及び障害を診断することができる。このような障害には、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び統合失調症を含めた多種多様のCNS疾患及び障害が含まれる。評価することができるこれら及び他の代表的な疾患及び障害には、Bencherifらへの米国特許第5,952,339号に記載されているものが含まれる。
【0085】
別の態様において、診断用組成物は、ヒト患者などの対象の選択的ニコチン性受容体サブタイプをモニターする方法において使用することができる。この方法は、本明細書に記載されているような検出可能な標識化合物をその患者に投与し、選択したニコチン性受容体サブタイプ、すなわち、α7受容体サブタイプへのその化合物の結合を検出することを伴う。
【0086】
受容体結合
本発明の化合物は、結合アッセイにおいて、NNRサブタイプ、特に、α7受容体サブタイプに結合する化合物のための参照リガンドとして使用することができる。この目的のために、本発明の化合物を、好ましくは放射性の同位体部分(3H、又は14Cなど)で標識する。このような結合アッセイの例を、下記で詳細に記載する。
【0087】
医薬組成物
本発明の化合物をバルクの活性化学物質の形態で投与することは可能であるが、これらの化合物を医薬組成物又は製剤の形態で投与することが好ましい。したがって、本発明の一態様には、本発明の化合物及び1種又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は添加剤を含む医薬組成物が含まれる。本発明の別の態様は、本発明の化合物を1種又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤又は添加剤と混合することを含めた、医薬組成物の調製方法を提供する。
【0088】
本発明の化合物が投与される態様は変化し得る。本発明の化合物は、好ましくは経口的に投与される。経口投与のための好ましい医薬組成物には、錠剤、カプセル剤、カプレット、シロップ剤、溶液剤、及び懸濁剤が含まれる。本発明の医薬組成物は、調節放出剤形(持続放出錠剤及びカプセル製剤など)で提供し得る。
【0089】
医薬組成物はまた、注射によって、すなわち、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、及び側脳室内に投与することができる。静脈内投与は、注射の好ましい方法である。注射のための適切な担体は当業者には周知であり、5%デキストロース溶液、食塩水、及びリン酸緩衝生理食塩水が含まれる。
【0090】
他の手段、例えば、直腸投与を使用して、製剤をまた投与し得る。直腸投与のために有用な製剤(坐剤など)は、当業者には周知である。化合物はまた、吸入によって(例えば、エアゾールの形態で);局所的に(ローションの形態でなど);経皮的に(経皮パッチを使用するなど(例えば、Novartis及びAlza Corporationから市販されている技術を使用することによって)、粉体噴射によって、又は口腔、舌下、若しくは鼻腔内吸収によって投与することができる。
【0091】
医薬組成物は、単位用量形態、又は多回用量若しくはサブ単位用量で製剤し得る。
【0092】
本明細書に記載されている医薬組成物の投与は、断続的、又は段階的、連続的、一定若しくは制御された速度でよい。医薬組成物は、温血動物、例えば、マウス、ラット、ネコ、ウサギ、イヌ、ブタ、ウシ、又はサルなどの哺乳動物に投与し得るが、有利にはヒトに投与される。さらに、医薬組成物を投与する時刻及び1日当たりの回数は、変化してもよい。
【0093】
本発明の化合物は、種々の障害及び状態の治療に使用してもよく、したがって、それらの障害又は状態の治療又は予防において有用な種々の他の適切な治療剤と組み合わせて使用し得る。したがって、本発明の一実施形態には、他の治療化合物と組み合わせた本発明の化合物の投与が含まれる。例えば、本発明の化合物は、他のNNRリガンド(バレニクリンなど)、抗酸化剤(フリーラジカル除去剤など)、抗菌剤(ペニシリン抗生物質など)、抗ウイルス剤(ヌクレオシド類似体(ジドブジン及びアシクロビルなど)など)、抗凝血剤(ワルファリンなど)、抗炎症剤(NSAIDなど)、解熱剤、鎮痛剤、麻酔剤(手術において使用するなど)、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(ドネペジル及びガランタミンなど)、抗精神病薬(ハロペリドール、クロザピン、オランザピン、及びクエチアピンなど)、免疫抑制剤(シクロスポリン及びメトトレキサートなど)、神経保護剤、ステロイド(ステロイドホルモンなど)、副腎皮質ステロイド(デキサメタゾン、プレドニゾン、及びヒドロコルチゾンなど)、ビタミン、ミネラル、栄養補助食品、抗うつ剤(イミプラミン、フルオキセチン、パロキセチン、エスシタロプラム、セルトラリン、ベンラファクシン、及びデュロキセチンなど)、抗不安薬(アルプラゾラム及びブスピロンなど)、抗痙攣剤(フェニトイン及びガバペンチンなど)、血管拡張剤(プラゾシン及びシルデナフィルなど)、気分安定剤(バルプロ酸塩及びアリピプラゾールなど)、抗癌剤(抗増殖性物質など)、降圧剤(アテノロール、クロニジン、アムロピジン、ベラパミル、及びオルメサルタンなど)、緩下剤、便軟化剤、利尿剤(フロセミドなど)、鎮痙剤(ジサイクロミンなど)、抗運動障害剤、並びに抗潰瘍薬(エソメプラゾールなど)と組み合わせて使用することができる。医薬活性剤のこのような組合せは、一緒に又は別々に投与してもよく、別々に投与するとき、投与は同時又は順次に、任意の順序で行い得る。化合物又は薬剤の量、及び投与の相対的なタイミングは、所望の治療効果を達成するために選択する。本発明の化合物と他の治療剤とを組み合わせた投与は、(1)両方の化合物を含む単一の医薬組成物;又は(2)各々が化合物の一つを含む別々の医薬組成物、において同時に投与することによる組合せでよい。代わりに、組合せは、順次の態様で別々に投与してもよく、一つの治療剤を最初に投与し、他の治療剤を次に投与する。このような順次投与は、時間的に近くても又は時間的に離れていてもよい。
【0094】
本発明の別の態様には、対象に、治療的又は予防的有効量の本発明の化合物及び1種又は複数の他の治療(化学療法、放射線療法、遺伝子治療、又は免疫療法を含めた)を投与することを含む併用療法が含まれる。
【0095】
実施例
下記の実施例は本発明を例示するために提供し、本発明を限定するものと解釈すべきではない。これらの実施例において、全ての部分及び割合は、特に断りのない限り、重量による。
【0096】
核磁気共鳴(NMR)分析
NMRスペクトルは、オートサンプラーを備え、DRX400コンソールで制御される、Varian Unity300MHz機器又はBruker400MHz機器で集めた。標準的Bruker充填実験を使用してTopspin v1.3(パッチレベル8)と動作するICONNMR v4.0.4(ビルド1)を使用して自動化実験を行った。非定型の分光法のために、Topspin単独を使用することによってデータを得た。
【0097】
融点
約5℃/分の加熱速度に相当する設定でFisher-Johnsホットステージ融点装置を使用した。
【0098】
示差走査熱量測定(DSC)
Dscデータは、50ポジションオートサンプラーを備えたMettler DSC823eで集めた。機器は、認定されたインジウムを使用してエネルギー及び温度について較正した。典型的には、ピンホールアルミニウムパン中の0.5〜1.5mgの各試料を、25℃から300℃に10℃分-1で加熱した。試料上で50ml/分-1での窒素パージを維持した。機器制御及びデータ分析は、stare v9.10ソフトウェアパッケージを使用して行った。
【0099】
X線粉末回折(XRPD)
方法1
X線粉末回折パターンは、Cu Kα線(40kV、40mA)、θ-θゴニオメーター、V20の発散スリット及び受光スリット、黒鉛二次モノクロメーター及びシンチレーションカウンターを使用してSiemens D5000回折計で集めた。検証されたCorundum標準(NIST1976)を使用して機器を性能検査する。データ収集のために使用したソフトウェアは、Diffrac Plus XRD Commander v2.3.1であり、データはDiffrac Plus EVA v11,0.0.2又はv13.0.0.2を使用して分析し、示した。
【0100】
試料は、粉末を受入れたままで使用して周囲条件下で平板標本として操作した。概ね30mgの試料を、磨いたゼロバックグラウンド(510)シリコンウエハー中に切り込んだ空洞中に穏やかに充填した。分析の間に、それ自体の面内で試料を回転させた。データ収集の詳細は、
・角度範囲:2〜42°2θ
・ステップサイズ:0.05°2θ又は0.1°2θ
・収集時間:4秒ステップ-1
である。
【0101】
方法2
X線粉末回折パターンは、Cu Kα線(40kV、40mA)、自動化XYZステージ、自動試料位置決めのためのレーザビデオ顕微鏡及びHiStar二次元領域検出器を使用して、Bruker AXS C2 GADDS回折計で集めた。X線光学は、0.3mmのピンホールコリメーターと連結した単一のGobel多層膜反射鏡からなる。
【0102】
ビーム広がり、すなわち試料上のX線ビームの有効なサイズは、概ね4mmであった。θ-θ連続スキャンモードを20cmの試料-検出器の距離と共に用いたが、それによって3.2°〜29.7°の有効な2θ範囲を得る。典型的には、試料をX線ビームに120秒間曝露する。データ収集のために使用したソフトウェアは、WNT4.1.16のためのGADDSであり、データはDiffrac Plus EVA v9.0.0.2又はv13.0.0.2を使用して分析し、示した。
【0103】
周囲条件下での試料の操作は、粉砕をせずに受入れたままの粉末を使用して、平板標本として調製した。概ね1〜2mgの試料をスライドガラス上に軽く押し付け、平らな表面を得た。非周囲条件下で操作する試料は、熱伝導化合物と共にシリコンウエハー上に乗せた。次いで、試料を約10℃分-1で適当な温度に熱し、続いてデータ収集を開始する前に約1分間等温に保った。
【0104】
単結晶X線回折(SCXD)
データは、Oxford Cryosystems Cryostream冷却装置を備えたBruker AXS 1K SMART CCD回折計で集めた。SHELXS又はSHELXDプログラムを使用して構造を解析し、Bruker AXS SHELXTL一式の一部としてSHELXLプログラムで精密化した。特に明記しない限り、炭素に結合した水素原子を幾何的に配置し、ライディング等方性原子変位パラメーターで精密化した。ヘテロ原子に結合した水素原子を差フーリエ合成において位置付け、等方性原子変位パラメーターによって自由に精密化した。
【実施例1】
【0105】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの合成
(2S,3R)-3-アミノ-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(20mg、0.092mmol、このような合成に関して、参照により本明細書中に組み込まれているPCT WO09/018505に記載されているように調製)、o-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N,1-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU、41.7mg、0.110mmol)及び3,5-ジフルオロ安息香酸(17.4mg、0.110mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF、2ml)懸濁液に、トリエチルアミン(28mg、0.28mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、酢酸エチル(200ml)で希釈し、20%炭酸カリウム水溶液で洗浄した。残渣を、溶離液(メタノール:トリエチルアミン=300:1)を伴うシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。溶媒を除去し、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(30mg、76%)を得た。HPLCによる純度:100%(214nm)、98.2%(254nm); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 8.48 (d, j = 2.0 Hz, 1H), 8.36 (dd, j = 1.7 Hz, j = 4.9 Hz, 1H), 7.56-7.60 (m, 1H), 7.14-7.20 (m, 1H), 7.05-7.14 (m, 2H), 6.87-6.96 (m, 1H), 6.23 (d, j = 7.8 Hz, 1H), 3.88-3.96 (m, 1H), 3.02-3.13 (m, 1H), 2.82-3.00 (m, 4H), 2.65-2.82 (m, 2H), 1.97-2.05 (m, 1H), 1.58-1.84 (m, 3H), 1.43-1.55 (m, 1H); ESI-MS 358.1(MH)+
【実施例2】
【0106】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドフマレートの合成
25℃で3,5-ジフルオロ安息香酸(9.36g、59.2mmol)、クロロホルム(200mL)及びトリエチルアミン(16.34g、161.5mmol)の溶液に、HBTU(22.5g、59.2mmol)を加えた。混合物を40〜42℃に45分間加熱し、白色の懸濁液の形成がもたらされた。懸濁液を10℃に冷却し、15〜20分間に亘り(2S,3R)-3-アミノ-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(11.7g、53.8mmol)のクロロホルム(50mL)溶液を加え、1.5時間撹拌した。反応混合物を40〜42℃に加熱し、さらなる3,5-ジフルオロ安息香酸(2.0g、13mmol)及びHBTU(4g、11mmol)を加え、続いて40〜42℃で2時間、次いで周囲温度で16時間撹拌した。反応混合物を水(200mL)ですばやくクエンチし、撹拌しながら、水層のpHを10wt%水酸化ナトリウム水溶液でpH=10〜11に調節した。層を分離し、有機層を水(100mL)で2度洗浄した。溶媒を真空中で除去し、22.9gの粘性のオレンジ色の固体を得た。原油中の生成物の強度は、参照標準に対して定量的HPLCによって66.0wt%で決定した。これは15.1g(78%)の収率に相当する。油をメチルエチルケトン(50mL)に溶解し、それを続いて真空中で蒸留した。この工程を全部で3度繰り返した。オーバーヘッド撹拌機、温度プローブ、滴下漏斗及び冷却器を備えた500mLの三つ口丸底フラスコに、フマル酸(4.9g、42mmol)及びメチルエチルケトン(150mL)を充填した。懸濁液を78℃に加熱し、それによって酸の完全な溶解がもたらされた。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドのメチルエチルケトン(50mL)溶液をゆっくりと加え、内部温度を75℃超に保持した。添加の完了後、懸濁液を78℃で30〜45分間撹拌し、熱源を遮断した。懸濁液を一晩撹拌し、濾過し、ケークを50℃にて真空中で16時間乾燥させ、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドフマレートを淡黄色の結晶性固体として得た(HPLCによって99.6%純度、mp208〜210℃)。収率:2ステップについて65%。1H NMR (D2O, 400 MHz): δ 8.30 (d, J = 5.6 Hz, 1H); 8.06 (d, J = 7.5 Hz, 1H); 7.48 (dd, J = 8.7 Hz, J = 5.6 Hz, 1 H); 6.97-7.06 (m, 1H); 6.75-6.85 (m, 2 H); 6.49 (s, 2H); 4.15 (d, J = 7.5 Hz, 1H); 3.69-3.81 (m, 1H); 3.40-3.59 (m, 2H); 3.17-3.40 (m, 4 H); 2.03-2.18 (m, 2H); 1.91-2.03 (m, 2 H), 1.78-1.91 (m, 1H)。
【実施例3】
【0107】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド一塩酸塩の合成
手順A:(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(250mg(0.7mmol))の酢酸イソプロピル(10mL)溶液に、塩酸水溶液(65μL、37%(w/w)、0.78mmol)を加えた。溶液を50℃に加熱し、4時間の期間に亘り0℃に冷却した。一塩酸塩試料は、0℃でガム及び白色の粉末の混合物であった。次いで、試料を20℃に加熱し、0℃に再び冷却した(冷却勾配、5℃/分)。このように得られた固体を集め、25℃にて真空下で24時間乾燥させた。mp(DSC)=274.8℃。
【0108】
手順B:濃塩酸(0.54mL、37%(w/w)、6.6mmol)を、氷バスによって冷却しながらテトラヒドロフラン(THF、約4mL)に滴下で添加し、THFで5mL容量に希釈した。この溶液を、温かい(45〜50℃)(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(2.43g、96.8%純度、6.58mmol)のアセトン(20mL)溶液に滴下で添加した(5分間に亘り)。固体が沈殿し始めた。混合物を沸騰近くで15分間加熱し、周囲温度に冷却し、16時間静置した。固体を窒素下で吸引濾過によって集め、アセトンで洗浄し、真空オーブン中で乾燥させた(85℃、3時間)。これによって、LCMSによって93%純度であった2.26gの材料が残った。全試料を熱い(沸騰に近い)2-プロパノール(25mL)中で10分間消化した。混合物を周囲温度に冷却し、3時間静置した。固体を窒素下で吸引濾過によって集め、真空オーブン中で乾燥させた(85℃、2.5時間)。このように得られた白色の結晶は、HPLCによって>99%純度であった(重量2.03g(78.4%収率)、273〜276℃で溶解)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.45 (広幅なs, 1H), 8.66 (d, 1H), 8.54 (s, 1H), 8.28 (d, 1H), 7.76 (d, 1H), 7.41 (m, 1H), 7.24 (m, 3H), 4.14 (m, 1H), 4.07 (m, 1H), 3.46 (m, 2H), 3.10-3.35 (m, 4H), 2.06 (m, 3H), 1.90 (m, 1H), 1.69 (m, 1H).元素分析:C20H21ON3F2HClについて計算(C、60.99%;H、5.63%、N、10.67%);実測値(C、60.94%、60.91%;H、5.64%、5.66%;N、10.63%、10.67%)。
【実施例4】
【0109】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド一リン酸塩の合成
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(250mg(0.7mmol))のイソプロピルアルコール(5mL)溶液に、THF溶液中の780μL(0.78mmol、1.1当量)の1Mリン酸を加えた。溶液を50℃に加熱し、4時間の期間に亘り0℃に冷却した。0℃で形成された白色で不動のスラリーは、試料を室温に温めた後に残った。溶媒の蒸発によって結晶性材料が生じ、それを集め、25℃にて真空下で24時間乾燥させた。mp(DSC)=219.2℃。
【0110】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.48 (s, 1H), 8.34 (d, 1H), 8.28 (d, 1H), 7.68 (d, 1H), 7.43 (m, 1H), 7.24 (m, 3H), 5.04 (br s), 3.84 (m, 1H), 2.70-3.35 (m, 7H), 1.60-1.90 (m, 4H), 1.40 (m, 1H)。
【実施例5】
【0111】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドモノ-4-ヒドロキシ安息香酸塩の合成
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(250mg(0.70mmol))の酢酸イソプロピル(5mL)溶液に、780μL(0.78mmol、1.1当量)の4-ヒドロキシ安息香酸(1M)のTHF溶液を加えた。溶液を50℃に加熱し、4時間の期間に亘って0℃に冷却した。モノ-4-ヒドロキシ安息香酸塩をガムとして得た。ヘミ-4-ヒドロキシ安息香酸塩による種晶添加、並びにガム及び溶媒の蒸発した混合物(開始容量の4分の1のみが残った)の50℃と室温との間の48時間の熟成(4時間のサイクル)の後で結晶化を得た。次いで、固体を窒素下での溶媒の蒸発によって単離した。このように得られた固体を集め、25℃にて真空下で24時間乾燥させた。mp(DSC)=144.0℃。
【実施例6】
【0112】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドヘミ-4-ヒドロキシ安息香酸塩の合成
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(71.5mg(0.20mmol))の酢酸イソプロピル(3.5mL)溶液に、100μL(0.1mmol、0.5当量)の4-ヒドロキシル安息香酸(1M)のTHF溶液を加えた。酢酸イソプロピルを蒸発させ、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドモノ-4-ヒドロキシ安息香酸塩を固体として得て、それを集め、真空下で25℃にて24時間乾燥させた。mp(DSC)=106.0℃。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.23 (br s), 8.43 (s, 1H), 8.29 (s, 1H), 8.28 (s, 1H), 7.78 (d, 1H), 7.61 (m, 1H), 7.41 (m, 3H), 7.22 (m, 1H), 6.80 (d, 1H), 3.66 (m, 1H), 2.70-3.20 (m, 7H), 1.50-1.90 (m, 4H), 1.20 (m, 1H)。
【実施例7】
【0113】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド一水和物の合成
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(993mg、2.80mmol)の水(5mL)溶液に、クロロホルム(15mL)を加えた。水層のpHを、10重量%水酸化ナトリウムでpH=10〜11に調節した。二相性混合物を激しく振盪し、層を分離させた。クロロホルム層を単離し、水層をクロロホルム(9mL)でもう一度抽出した。合わせたクロロホルム層を水(7mL)で一度洗浄し、無水硫酸マグネシウムの床上で濾過し、真空中で濃縮し、泡立つ傾向がある無色で透明な油を得た。材料をメチルtert-ブチルエーテル(MTBE、10〜15mL)で処理し、続いて真空中での溶媒蒸留を行った。この方法をもう一度繰り返した。材料をMTBE(10〜15mL)に溶解し、白色の曇りが現れるまでヘプタンを加えた。この時点で、50〜55℃にて周囲圧力で揮発性物質のゆっくりとした蒸留を開始し、さらなる固体材料が分離した。蒸留を停止し、材料を濾過によって集め、少量のヘプタンで洗浄した。材料を55℃にて真空/窒素流下で60時間、及び70〜85℃にて40時間真空中で乾燥させ、400mgの(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド一水和物を白色の脆い固体として得た。αD26.6℃=40°;元素分析、計算値:C(63.99);H(6.18);N(11.19)、H2O(4.8重量%)、実測値:C(64.23);H(6.27);N(11.18);H2O(4.48)。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 8.46 (d, J = 2 Hz, 1H); 8.35 (dd, J = 4.8 Hz, J = 2 Hz, 1 H); 7.56-7.61 (m, 1H); 7.08-7.19 (m, 3H); 6.87-6.95 (m, 1H), 6.32 (d, J = 8.1 Hz, 1H); 3.89-3.95 (m, 1H); 3.00-3.12 (m, 1H), 2.84-2.99 (m, 4H); 2.68-2.84 (m, 2H); 1.98-2.04 (m, 1H); 1.83 (s, 2H); 1.58-1.79 (m, 3H); 1.44-1.54 (m, 1H)。240℃で分解する。
【実施例8】
【0114】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドヘミガラクタル酸塩の合成
撹拌した(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(357mg、1.00mmol)の無水エタノール(10mL)溶液に、70〜72℃でガラクタル酸(無溶媒)(105mg、0.50mmol)を少量で加えた。酸添加の完了後、さらに15分加熱を続けた。溶液を周囲温度にゆっくり冷却した。2時間静置した後、固体を真空濾過によって集め、エタノールで洗浄し、窒素コーン下で30分間乾燥させた。このように得られた材料を真空オーブン中で75℃にて3時間乾燥させ、残留エタノールを除去した。XRPD分析の結果を図11に示す。
【実施例9】
【0115】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの塩スクリーニング
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド遊離塩基のストック溶液を、下記のように調製した。
【0116】
・IPA中20mg/ml、i-ProAc中25mg/ml-対イオン1〜12
・i-ProAc中25mg/ml-対イオン13〜20
各バイアルを、周囲温度にて2mlの遊離塩基ストック溶液で充填した(40〜50mgの遊離塩基/バイアル)。次いで、各バイアルに、周囲温度にて1.1当量又は2.2当量で適当な容量のストック酸性溶液を加えた(特に明記しない限りTHF中1M)。不溶性酸は、それに応じて固体として加えた。全ての試料を、0℃に冷却する前に50℃に10時間に亘り温めた。ガム及び油を含めた全てのアモルファス固体を、熟成(2日に亘り4時間のサイクルで周囲温度〜50℃)、続いてXRPD再分析にかけた。熟成後にアモルファスのままであったそれらの試料に、2mlのメチルエチルケトンを加え、試料を3日間さらに熟成させた。透明な溶液を、50℃にて概ね半分、次いで四分の一の容量に順次に蒸発させた。真空下での溶媒の完全な除去の前に、残りの溶液を5℃にさらに冷却した。全てのこのように得られた固体をXRPDによって分析し、独特のXRPDパターンを有する結晶性試料を、1HNMR/イオンクロマトグラフィー、1週間の40℃/75%RHでの固体安定性及び水溶性(25℃で標的10mg/ml、未緩衝化)によってさらに分析した。
【表2】

【表3】



【表4】

【実施例10】
【0117】
塩酸塩の結晶構造
塩酸塩の結晶は、室温と50℃との間での(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド一塩酸塩のメタノール溶液の熟成によって得た。単結晶構造データを下記の表に示す。試料は、バルクの代表的なものであることを確認した。
【表5】

【0118】
直接法によって構造決定を得た(F2に対するフルマトリックス最小二乗精密化、重み付けw-12(Fo2)+(0.0435P)2+(0.1500P)、P=(Fo2+2Fc2)/3、異方性原子変位パラメーター、経験的吸収補正を適用、絶対構造パラメーター=-0.04(3))。全てのデータについて最終wR2={Σ[w(Fo2-Fc2)2]/Σ[w(Fo2)2]1/2}=0.0636、3684反射のF値に対して通常のR1=0.0231、Fo>4σ(Fo)、全てのデータ及び252パラメーターについてS=1.004。最終△/σ(最大)0.001、△/σ(平均)、0.000。+0.195と-0.136eÅ-3との間の最終差マップ。
【0119】
絶対構造パラメーターの値によって、キラル中心の立体配置の決定が可能となった。この立体配置を図10に示す。
【実施例11】
【0120】
生物学的アッセイ
CNSのnAChR α4β2NNRサブタイプにおける放射性リガンド結合
ラット皮質からの膜の調製:150〜250gの重量のラット(雌性、Sprague-Dawley)を12時間の明/暗サイクルに維持し、PMI Nutrition International、Inc.によって供給された水及び食料を自由に摂取させた。動物を70%CO2で麻酔し、次いで斬首した。脳を取り出し、氷冷のプラットフォーム上に置いた。大脳皮質を取り出し、20容(重量:容量)の氷冷の調製用緩衝液(137mMのNaCl、10.7mMのKCl、5.8mMのKH2PO4、8mMのNa2HPO4、20mMのHEPES(遊離酸)、5mMのヨードアセトアミド、1.6mMのEDTA、pH7.4)中に入れた。100μMの最終濃度までメタノールに溶解したPMSFを加え、懸濁液をポリトロンによってホモジナイズした。ホモジネートを18,000×gで4℃にて20分間遠心分離し、このように得られたペレットを20容の氷冷水に再懸濁させた。氷上の60分のインキュベーション後、新しいペレットを、4℃にて20分間の18,000×gの遠心分離によって集めた。最終のペレットを10容の緩衝液に再懸濁させ、-20℃で保存した。
【0121】
SH-EP1/ヒトα4β2クローン細胞からの膜の調製:40 150mmの培養皿からの細胞ペレットをプールし、20ミリリットルの氷冷の調製用緩衝液中でポリトロン(Kinematica GmbH、Switzerland)によってホモジナイズした。ホモジネートを48,000gで4℃にて20分間遠心分離した。このように得られたペレットを20mLの氷冷の調製用緩衝液に再懸濁し、-20℃で保存した。
【0122】
アッセイの日に、冷凍した膜を解凍し、48,000×gで20分間回転させた。上清をデカントし、廃棄した。ペレットをダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Life Technologies、pH7.4)に再懸濁し、ポリトロンによって6秒間ホモジナイズした。タンパク質濃度を、ウシ血清アルブミンを標準物質として、Pierce BCAタンパク質アッセイキットを使用して決定した(Pierce Chemical Company、Rockford、IL)。
【0123】
膜調製(ヒトについて概ね50μg及びラットα4β2について200〜300μgのタンパク質)を、競合化合物(0.01nM〜100μM)及び5nMの[3H]ニコチンの存在下で、PBS(各々、50μL及び100μL)中、氷上で2〜3時間インキュベートした。0.33%ポリエチレンイミン(w/v)に予浸したGF/Bフィルターを使用した、マルチマニホールド組織ハーベスター(Brandel、Gaithersburg、MD)上での急速濾過によってインキュベーションを終了させ、非特異的結合を減少させた。組織をPBS(pH7.4)中で3度すすいだ。シンチレーション液を、洗浄した組織を含有するフィルターに加え、平衡化させた。次いで、フィルターを計数して、液体シンチレーション計測(2200CA Tri-Carb LSC、Packard Instruments、50%効率性、又はWallac Trilux1450MicroBeta、40%効率性、Perkin Elmer)によって膜に結合した放射能を決定した。
【0124】
データを壊変毎分(DPM)として表した。各アッセイ内で、各ポイントでは2〜3回反復した。各ポイントについての反復試験を平均化し、薬物濃度のログに対してプロットした。結合の50%阻害を生じさせる化合物の濃度であるIC50を、最小二乗非線形回帰によって決定した。Ki値を、Cheng-Prussof式(1973)を使用して計算した。
【0125】
Ki=IC50/(1+N/Kd)
式中、Nは、[3H]ニコチンの濃度であり、Kdは、ニコチンの親和性である(3nM、別々の実験において決定)。
【0126】
α7NNRサブタイプ
150〜250gの重量のラット(雌性、Sprague-Dawley)を、12時間の明/暗サイクルに維持し、PMI Nutrition International、Inc.によって供給された水及び食料を自由に摂取させた。動物を70%CO2で麻酔し、次いで斬首した。脳を取り出し、氷冷のプラットフォーム上に置いた。海馬を取り出し、10容(重量:容量)の氷冷の調製用緩衝液(137mMのNaCl、10.7mMのKCl、5.8mMのKH2PO4、8mMのNa2HPO4、20mMのHEPES(遊離酸)、5mMのヨードアセトアミド、1.6mMのEDTA、pH7.4)中に入れた。100μMの最終濃度までメタノールに溶解したPMSFを加え、組織懸濁液をポリトロンによってホモジナイズした。ホモジネートを18,000×gで4℃にて20分間遠心分離し、このように得られたペレットを10容の氷冷水に再懸濁させた。氷上の60分のインキュベーション後に、新しいペレットを、18,000×gの遠心分離によって4℃にて20分間集めた。最終のペレットを10容の緩衝液に再懸濁させ、-20℃で保存した。アッセイの日に、組織を解凍し、18,000×gで20分間遠心分離し、次いで氷冷のPBS(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、138mMのNaCl、2.67mMのKCl、1.47mMのKH2PO4、8.1mMのNa2HPO4、0.9mMのCaCl2、0.5mMのMgCl2、Invitrogen/Gibco、pH7.4)中で概ね2mgのタンパク質/mLの最終濃度まで再懸濁させた。タンパク質は、ウシ血清アルブミンを標準物質として使用して、Lowryら、J. Biol. Chem. 193: 265(1951)の方法によって決定した。
【0127】
[3H]MLAの結合は、Daviesら、Neuropharmacol. 38: 679(1999)の方法の変形形態を使用して測定した。[3H]MLA(比活性=25〜35Ci/mmol)は、Tocrisから得た。[3H]MLAの結合は、21℃にて2時間のインキュベーションを使用して決定した。インキュベーションは48ウェルマイクロタイタープレートで行い、300μLの最終インキュベーション容量でウェル毎に約200μgのタンパク質を含有した。インキュベーション緩衝液はPBSであり、[3H]MLAの最終濃度は5nMであった。Brandel組織ハーベスターを使用して室温にて、ガラス繊維フィルター(GF/B、Brandel)上の結合したリガンドを含有するタンパク質の濾過によって、結合反応を終了させた。フィルターを、0.33%ポリエチレンイミンを含有する脱イオン水に浸漬し、非特異的結合を減少させた。各フィルターを、室温にてPBS(3×1mL)で洗浄した。非特異的結合を、選択したウェル中に50μMの非放射性MLAを含めることによって決定した。
【0128】
試験化合物による[3H]MLA結合の阻害を、選択したウェル中に七つの異なる濃度の試験化合物を含めることによって決定した。各濃度を3連で反復した。IC50値は、特異的[3H]MLA結合の50パーセントを阻害する化合物の濃度として推定した。阻害定数(Ki値、nMで報告)を、Chengら、Biochem. Pharmacol. 22: 3099〜3108(1973)の方法を使用してIC50値から計算した。
【0129】
末梢性nAChRに対する選択性
ヒト筋肉nAChRサブタイプにおける相互作用
筋肉型nAChRの活性を、胎児性横紋筋肉腫に由来するヒトクローン系TE671/RDにおいて確立した(Strattonら、Carcinogen 10: 899(1989))。これらの細胞は、筋肉型nAChRと同様の、薬理学的(Lukas、J. Pharmacol. Exp. Ther. 251: 175(1989))、電気生理学的(Oswaldら、Neurosci. Lett. 96: 207(1989))、及び分子生物学的プロファイル(Lutherら、J. Neurosci. 9: 1082(1989))を有する受容体を発現する。
【0130】
TE671/RD細胞は、通常のプロトコルに従って、増殖性成長相に維持した(Bencherifら、Mol. Cell. Neurosci. 2: 52(1991)及びBencherifら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 257: 946(1991))。細胞を、10%ウマ血清(Gibco/BRL)、5%ウシ胎児血清(HyClone、Logan UT)、1mMのピルビン酸ナトリウム、4mMのL-グルタミン、及び50,000単位のペニシリン-ストレプトマイシン(Irvine Scientific)を有するダルベッコ改変イーグル培地(Gibco/BRL)中で培養した。細胞が80%密集度のとき、12ウェルポリスチレンプレート(Costar)に蒔いた。細胞が100%密集度に達したときに、実験を行った。
【0131】
Lukasら、Anal. Biochem. 175: 212(1988)によって記載されている方法に従って、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の機能を86Rb+流出を使用してアッセイした。実験の日に、増殖培地をウェルから穏やかに取り出し、塩化86ルビジウム(106μCi/mL)を含有する増殖培地を各ウェルに加えた。細胞を37℃で最低3時間インキュベートした。充填期間の後に、過剰な86Rb+を除去し、細胞を妨害しないように注意しながら、標識非含有ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(138mMのNaCl、2.67mMのKCl、1.47mMのKH2PO4、8.1mMのNa2HPO4、0.9mMのCaCl2、0.5mMのMgCl2、Invitrogen/Gibco、pH7.4)で2度洗浄した。次に、細胞を、100μMの試験化合物、100μMのL-ニコチン(Acros Organics)、又は緩衝液単独に4分間曝露させた。曝露期間の後に、放出された86Rb+を含有する上清を取り出し、シンチレーションバイアルに移した。シンチレーション液を加え、放出された放射能を液体シンチレーション計測によって測定した。
【0132】
各アッセイ内で、各ポイントについて2回反復し、それを平均化した。86Rb+放出の量を陽性対照(100μMのL-ニコチン)及び陰性対照(緩衝液単独)の両方と比較し、L-ニコチンのそれに対する放出割合を決定した。
【0133】
適切な場合、試験化合物の用量反応曲線を決定した。個々の化合物の最大活性化(Emax)を、L-ニコチンによって誘発された最大活性化の割合として決定した。特定のイオン流出の最大半量活性化(EC50)をもたらす化合物濃度をまた決定した。
【0134】
ラット神経節nAChRサブタイプにおける相互作用
ラット神経節nAChRの活性を、ラット副腎髄質の腫瘍に由来する神経堤起源の連続クローン細胞系である褐色細胞腫クローン系PC12で確立した。これらの細胞は、神経節様nAChRを発現している(Whitingら、Nature 327: 515(1987);Lukas、J. Pharmacol. Exp. Ther. 251: 175(1989);Whitingら、Mol. Brain Res. 10: 61(1990)を参照されたい)。
【0135】
ラットPC12細胞を、通常のプロトコルによって増殖性成長相に維持した(Bencherifら、Mol. Cell. Neurosci. 2: 52(1991)及びBencherifら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 257: 946(1991))。細胞を、10%ウマ血清(Gibco/BRL)、5%ウシ胎児血清(HyClone、Logan UT)、1mMのピルビン酸ナトリウム、4mMのL-グルタミン、及び50,000単位のペニシリン-ストレプトマイシン(Irvine Scientific)を有するダルベッコ改変イーグル培地(Gibco/BRL)中で培養した。細胞が80%密集度のとき、それらを12ウェルNuncプレート(Nunclon)に蒔き、0.03%ポリ-L-リシン(Sigma、100mMのホウ酸に溶解)でコーティングした。細胞が80%密集度に達したときに、実験を行った。
【0136】
Lukasら、Anal. Biochem. 175: 212(1988)によって記載されている方法に従って、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の機能を86Rb+流出を使用してアッセイした。実験の日に、増殖培地をウェルから穏やかに取り出し、塩化86ルビジウム(106μCi/mL)を含有する増殖培地を各ウェルに加えた。細胞を37℃で最低3時間インキュベートした。充填期間の後に、過剰な86Rb+を除去し、細胞を妨害しないように注意しながら標識非含有ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(138mMのNaCl、2.67mMのKCl、1.47mMのKH2PO4、8.1mMのNa2HPO4、0.9mMのCaCl2、0.5mMのMgCl2、Invitrogen/Gibco、pH7.4)で2度洗浄した。次に、細胞を、100μMの試験化合物、100μMのニコチン又は緩衝液単独に4分間曝露させた。曝露期間の後に、放出された86Rb+を含有する上清を取り出し、シンチレーションバイアルに移した。シンチレーション液を加え、放出された放射能を液体シンチレーション計測によって測定した。
【0137】
各アッセイ内で、各ポイントについて2回反復し、それを平均化した。86Rb+放出の量を陽性対照(100μMのニコチン)及び陰性対照(緩衝液単独)の両方と比較し、L-ニコチンのそれに対する放出割合を決定した。
【0138】
適切な場合、試験化合物の用量反応曲線を決定した。個々の化合物の最大活性化(Emax)を、L-ニコチンによって誘発された最大活性化の割合として決定した。特定のイオン流出の最大半量活性化(EC50)をもたらす化合物濃度をまた決定した。
【0139】
新規物体認識
3トライアルの新規物体認識試験を使用することによって記憶を評価した。第1日目(探索トライアル)に、ラットにアリーナ(44.5×44.5×30.5cm)を6分間探索させた。第2日目(獲得トライアル)に、ラットに同じアリーナを二つの同一の物体(両方とも物体A)の存在下で3分間探索させた。第3日目(保持又は思い起こしトライアル)に、同じ動物にアリーナを二つの異なる物体(見慣れた物体A及び新規な物体B)の存在下で3分間再び探索させることによって、パフォーマンスを評価した。3回のNORトライアルの間に、24時間のトライアル間の間隔を課した。思い起こしトライアルの間に新規な(物体B)対見慣れた(物体A)物体を探索するのに費やした時間を比較することによって、認識記憶を評価した。認識インデックスを各動物について評価し、比((時間B/時間A+時間B)×100)として表した。
【0140】
生物学的データの要約
インビトロの薬理学
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド、又は薬学的に許容されるその塩についてのインビトロの一次薬理学データの要約を表1に示し、下記で詳細に考察する。
【0141】
一次薬理学及び選択性:(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、ラット海馬膜中のラット天然α7受容体への[3H]メチルリカコニチン(MLA)の結合を阻害した(100nMのKi)。
【0142】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、ヒト組換えα4β2ニコチン性受容体への[3H]-ニコチンの結合を阻害し(1470nMのKi)、ラット天然α4β2受容体への[3H]エピバチジンの結合を阻害した(4120nMのKi)。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドはまた、ヒト天然神経節型ニコチン性受容体(恐らくα3β4)についての親和性の減少を示し、SH-SY5Y膜中の受容体への[3H]エピバチジンの結合を阻害し(48μMのKi)、且つヒト天然筋肉型ニコチン性受容体(恐らくα1β1γδ)についての親和性の減少を示し、TE-671膜中の受容体への[3H]エピバチジンの結合を阻害した(136μMのKi)。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、SH-EP1膜中のヒト組換えα4β4ニコチン性受容体への[3H]エピバチジンの結合を阻害した(19μMのKi)。
【表6】

【0143】
インビボの薬理学
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド、又は薬学的に許容されるその塩についてのインビボの薬理学データの要約を表2に示し、下記で詳細に考察する。
【表7】

【0144】
新規物体認識(NOR)課題によって評価すると、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、正常なラットにおける経口投与に続いて長期の視覚的エピソード記憶/陳述記憶を改善した。これらの研究の結果を、図1において示す。獲得トライアルの24時間後のビヒクル処理群の認識インデックスは、54±1%であり、この期間の後にこの群が見慣れた物体を認識することができないことを示した。対照的に、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドで処理された動物は、0.84μmol/kgの用量レベルで70±4%、及び0.28μmol/kgの用量レベルで74±3%の認識インデックスを示した。
【0145】
フォローアップNOR研究(図2)において、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドについての最小有効用量(MED)レベルは、0.084μmol/kgであることが決定されたが、これはラットが試験した全ての用量レベルで見慣れた物体を認識できることを示す。「思い起こしのみ」セッションにおいて、動物のサブセットは、1日目(すなわち、探索セッション)及び2日目(すなわち、獲得セッション)に水を経口的に投与し、次いで0.28μmol/kgの(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを3日目(すなわち、思い起こしセッション)に経口的に投与した。単一の経口投与の後でさえ、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、この用量レベルにおいて認知促進作用を示した。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、有意に対照より高い認識インデックスを示し、急性投与に続いて見慣れた物体を認識していることを示した。65%における破線は、生物学的認知増強活性についての本発明者らの判断基準を示す。*P<0.05。
【0146】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを、正常なラットにおいてNOR課題におけるその効果持続期間について評価した。これらの研究の結果を、図3に示す。思い起こしトライアルにおける投与後0.5時間及び24時間後のビヒクル処理群の認識インデックスは各々51±1%及び53±4%であり、この期間の後にこの群が見慣れた物体を認識することができないことを示した。対照的に、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(0.28μmol/kg:経口)で処理された動物は、0.5時間で68±4%、2時間で71±2%及び6時間で62±2%の認識インデックスを示したが、これはラットが投与後6時間まで見慣れた物体を認識することができることを示唆した。
【0147】
さらに、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(0.84μmol/kg:経口)で処理した動物は、0.5時間で59±2%、2時間で63±2%、6時間で68±3%、及び18時間で68±3%の認識インデックスを示したが、これはこの用量レベルで投与した後に、ラットが18時間まで見慣れた物体を認識することができることを示唆した(図4)。65%における破線は、生物学的認知増強活性についての本発明者らの判断基準を示す(*P<0.05)。
【0148】
電気生理学
化合物A、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド、及び化合物B、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-4-フルオロベンズアミドは、両方ともα7NNRにおいて部分アゴニストである。しかし、いわゆるハンプ電流を誘発するそれらの能力において二つの化合物の間に劇的な差異が存在する。ハンプ電流は、アゴニスト除去に続く内因性AChの同時適用の間に観察されるテール電流として定義される。本明細書において示されるように、化合物Aは、改善されたプロファイル、及びこの神経伝達が損なわれる精神病性障害などの状態におけるα7機能をモジュレートするより大きな可能性を提供する。
【0149】
α7ニコチン性ACh受容体による化合物A及び化合物Bの用量反応を分析した。化合物B及び化合物Aの両方は、α7ニコチン性受容体において部分アゴニストである(EC50=664nM、1.6μM及びEMAX=46.6%、54.4%)。図5に示すように、EC50及びEMAXの両方は、これらのリガンドの間で比較可能である。
【0150】
しかし、図6において例示されるように、化合物とAChとの同時適用によって、これらの二つのリガンドの間の実質的な差異が明らかになった。化合物Bは、恐らく競争的阻害によって、AChによって生じる電流を阻害し、一方化合物Aは、ACh誘発電流を増強した。この増強についての一つの仮説は、オルソステリックなモジュレーションについての化合物Aの能力である。
【0151】
さらに、図7及び8に示すように、AChがナノモル濃度の化合物B又は化合物Aと共に同時適用されたときに、実質的な差異が見出された。
【0152】
図7Aは、ニコチン性α7受容体の活性化に関する、リガンド(化合物A、200nM)とアセチルコリン(100μM)との相互作用を測定するための充填Dynaflowチップの実験計画を表す。チャネルを下記のように調製した。対照溶液(チャネル#2)、リガンド自体を適用(チャネル#3)、アセチルコリン自体を適用(チャネル#1)、及びアセチルコリン及びリガンドの混合物を適用(チャネル#4)。
【0153】
図7Bは、異なる適用の順序によって得た四つの代表的な電流曲線を示す。
【0154】
曲線1、図7B:曲線の上のバーは、AChの適用の時間を示す。曲線は、70μMのAChの1秒の適用によって誘発された電流を表す。曲線は、細胞をAChの1秒の適用のためのチャネル#2からチャネル#1へ、及びチャネル2に戻す(ウォッシュアウト)移動の結果を例示する。AChの適用は、ウォッシュアウト後に迅速な回復を伴う電流の強い活性化を生じさせた。
【0155】
曲線4、図7B:曲線4は、リガンド及びACh/リガンド混合物の適用の後の測定の終わりにおける曲線1の反復を表す(回復)。
【0156】
曲線2、図7B:下向き/上向き矢印は、適用の時間を示す。曲線2は、200nMの化合物Aの5秒の適用を表す。曲線は、5秒間のチャネル#2からチャネル#3への細胞の移動の結果を例示する。200nMの濃度の化合物A単独は、強いマクロ電流を生じない。
【0157】
曲線3、図7B:曲線3は、ACh及び化合物Aの適用の相互作用を表す。曲線3は、細胞をチャネル#2から#3に(2秒)、#4に(1秒)、#3に戻し(2秒)、#2に戻す(ウォッシュアウト)移動の結果を例示する。AChの適用に続く化合物Aの適用によって深い「ハンプ」電流が生じる。この電流は、曲線1及び4を比較したときに見られるようにAChの結果、又は曲線2に見られるように化合物Aの結果ではなかった(α7受容体単独の活性化)。むしろ曲線3は、ACh及び化合物Aの両方の適用の相互作用の例を例示する。
【0158】
図7Cは、異なる濃度の化合物A(100〜500nMの範囲)で得たハンプ電流の絶対値の平均(n=4)を表す。本発明者らは、概ね500nMのEMAXを伴う電流の濃度依存的増加(EC50=120nM)を観察した。
【0159】
同様に、図8A、8B、及び8Cは、化合物Bについて得た結果を表す。図7A〜Cと図8A〜Cとを比較することによって、化合物Bと比べると、AChが化合物Aと同時適用されたときに実質的な差異について注目し得る。化合物Aは、ACh誘発電流を増強する。
【0160】
ホルマリン試験
急性疼痛の最も臨床的な予測的スクリーニングモデルの一つは、マウスにおけるホルマリン試験である(LeBarsら、2001)。Dubuisson及びDennis(1977)によって最初に記載されたこのパラダイムにおいて、ホルマリンの希釈液を対象(ラット又はマウス)の後足の足底面に注射し、侵害受容行動、例えば、注射された足をなめること及びかむことを測定する。反応の二つの相を観察する。最初に、注射の直後に開始し、5〜10分続く初期相、それに続いて注射後に15〜60分続き得る遅発相である。侵害受容反応は、初期相における直接の化学的刺激、及び後期相における炎症/持続性疼痛によって生じる(Dubuisson及びDennis、1977)。遅発相における反応はまた、初期相の間の求心性神経の連続発火(afferent barrage)による脊髄における情報の処理の変化によって決まる(Coderreら、1990)。試験の利点は、二つの異なるタイプの刺激が同じアッセイにおいて用いられ、試験の二つの相において薬物の変化する鎮痛作用の可能性を研究することである(Tjolsen及びHole、1997)。
【0161】
対象(概ね20〜25グラムの重量の成体雄CD-1マウス(Charles River、Raleigh、NC))を、それらのホームケージから取り出し、秤量し、次いで20〜30分の順応期間のために透明なPlexiglas(商標)観察箱に入れた。次いで、マウスを観察チャンバーから取り出し、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(0.9%食塩水中の塩酸塩として)(1mg/kg、3mg/kg又は10mg/kg、s.c.(遊離塩基に対して計算))、モルヒネ(5mg/kg;s.c.)又は0.9%食塩水ビヒクルを、1mL/kgの容量で皮下投与した。次いで、マウスを、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド及びモルヒネについての30分の所定の前処理時間のために、チャンバーに戻した。
【0162】
試験化合物による前処理時間の後に、動物にホルマリン溶液を注射した(2.5%、10%リン酸緩衝ホルマリン溶液(Sigma):蒸留水の1:4希釈として生成)。対象の指定した足を穏やかに捕らえ、ホルマリン溶液を、足の背面の中央に皮内注射した。注射すると、対象をその観察チャンバーにすぐに戻し、タイマーを開始させて、第I相の始まりをマークした。各対象を、全部で40分のセッションについてビデオテープに録画した。テープをスコアリングするとき、各対象を40分のセッションに亘り5分の間隔で1分間観察した。その1分間隔の間になめることに費やした時間を記録し、足のかたよりが存在するかしないかを注目した。
【0163】
データ分析のために、試験の第I相はホルマリン注射後の0〜5分として定義し、第II相はホルマリン注射後の20〜40分として定義した。それらの時間枠の間の1分の間隔の間になめることに費やした時間を記録し、平均±S.E.Mとしてグラフ化した。投与群の間の比較のために、処置を従属変数としてセッションの各相について一方向分散分析(ANOVA)を行った。適切な場合事後分析を行い、特定の群の差異を決定した。
【0164】
結果は、第I相におけるなめるのに費やす時間の減少において、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの統計的に有意な用量がなかったことを示すが、それにも関わらず、10mg/kgの(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、ホルマリン試験の第II相における足をなめるのに費やす時間の減少において有意であった(P<0.05)。陽性対照であるモルヒネ(5mg/kg;s.c.)は、試験の両方の相において効果的であった。これらのデータは、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドが、化学的に誘発された炎症性/持続性疼痛に関して鎮痛の可能性を有することを示す。
【0165】
オリジナルビデオテープをそれに続いて分析し、第I相(ホルマリン後0〜5分)及び第II相(20〜40分)についての全期間に亘って各動物をスコア化することによって、データについて同様の傾向が明らかになったが、第I相又は第II相において患部の足をなめるのに費やす時間の減少に対する(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの作用について、統計的有意性は得られなかった。
【0166】
Coderre TJ、Vaccarino AL、Melzack R(1990)、Central nervous system plasticity in the tonic pain response to subcutaneous formalin injection、Brain Res. 535:155〜158;Dubuisson D及びDennis SG(1977)、The formalin test: A quantitative study of the analgesic effects of morphine, meperidine, and brain stem stimulation in rats and cats、Pain 4: 161〜174;Malmberg AB及びBannon AW(2002)、Unit 8.9: Models of nociception: hot-plate, tail-flick, and formalin tests in rodents、Current Protocols in Neuroscience;及びTjolsen A及びHole K(1997)、Animal models of analgesia、Handbook of Experimental Pharmacology Volume 130: The Pharmacology of Pain(A. Dickenson及びJ.-M. Besson編)、Springer Verlag、New York、1〜20頁を参照されたい。
【0167】
完全フロイントアジュバント(CFA)が誘発する温熱性痛覚過敏
ラットにおける完全フロイントアジュバント(CFA)の注射は、単関節炎(骨関節炎)及び他の炎症状態の治療における薬物としての使用するための可能性を有する化合物を評価するために通常使用される。痛覚過敏の徴候が、24時間以内に発生する(Schaible及びGrubb、1993)。
【0168】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを、Walker及び同僚(2003)によって記載されたものと同様の方法を使用して、ラットにおけるCFAが誘発する温熱性痛覚過敏試験において鎮痛作用の可能性について評価した。手短に言えば、受入れ時に180±20gの重量の成体雄性Sprague-Dawleyラット(BioLasco、Taiwan)を、群毎にn=8の処理群に無作為に割り付けた。動物は各々、実験的試験の24時間前にCFA(DIFCO、264010;0.1%溶液)を右後足への足底下注射(0.1mL)に受けた。温熱性痛覚過敏を、30℃に設定した熱制御したガラス製の床を有する足/尾刺激装置鎮痛メーター(stimulator analgesia meter)(IITCモデル-336G、IITC、USA)を使用して試験した。対象をガラス製の高床上のプラスチック箱内に入れ、ガラス製床の下に位置する光ビームを右後足の足底面に向けた。動物が熱刺激から足を引っ込めるのに必要な時間を、自動的に記録した。12〜14秒の平均群ベースライン潜時を惹起するように光の強度を調節し(CFA前)、20秒のカットオフ潜時を課した。足引っ込めについての潜時を各ラットについて得て、熱疼痛閾値として定義した。
【0169】
引っ込めまでの潜時がベースラインの75%未満であった場合に限り、CFA注射の24時間後、実験法のために対象を前選択した(温熱性痛覚過敏が明らかに存在するかについて)。試験物質、モルヒネ及びビヒクルを、0時において皮下(s.c.)注射によって投与した。次いで、温熱性痛覚過敏の処理後レベルを、処理後60分で測定した。一方向ANOVA、それに続くダネット検定を、試験物質処理群とビヒクル対照群との間の比較のために適用した。活性は、P<0.05レベルで有意であると見なした。
【0170】
全体的に、0.1mg/kg、1mg/kg又は10mg/kgでの(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの皮下(s.c.)投与は、ビヒクル(0.9%食塩水)対照群と比較して、ラットにおいてCFAが誘発する温熱性痛覚過敏に対する投与1時間後での有意な鎮痛作用と関連しなかった。対照的に、同時に行った参照標準のモルヒネ(3mg/kg、s.c.)は、投与後1時間で有意な鎮痛作用を生じさせた。図13を参照されたい。Schaible H-G及びGrubb BD(1993)、Afferent and spinal mechanisms of joint pain、Pain 55: 5〜54;及びWalker KM、Urban L、Medhurst SJ、Patel S、Panesar M、Fox AJ及びMcintyre P(2003)、The VR1 antagonist capsazepine reverses mechanical hyperalgesia in models of inflammatory and neuropathic pain、JPET 304: 56〜62を参照されたい。
【0171】
ストレプトゾトシン(STZ)が誘発する糖尿病性ニューロパシー(アロディニアから明らかである)
糖尿病の主要な合併症である末梢性ニューロパシーは、通常非侵害刺激との接触から自発痛又は疼痛知覚をもたらすことが多い。このような神経因性疼痛は、糖尿病患者の20〜24%、又は世界で概ね3千万人の人が体験している(Schmader、2002)。ラットにおけるストレプトゾトシン(STZ)が誘発する糖尿病モデルは、末梢性ニューロパシーについて治療可能性を与える試験化合物の有効性を評価し、且つそれらの推定上の作用機序を理解する手段を提供する。このモデルにおいて、膵臓のβ及びα細胞に対して不可逆的な損傷をもたらすことによって臨床的糖尿病を模倣する抗生物質であるSTZの単一の注射は、慢性高血糖症、神経機能障害及び痛覚感受性をもたらす。現在の研究は、糖尿病性ニューロパシーのSTZラットモデルを用いて、疼痛の評価、機械的アロディニアに対する(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの作用を調査する。
【0172】
各ラットの尾静脈への、クエン酸緩衝液(pH=6)に溶解したストレプトゾトシン(60mg/kg)の注射(0.5ml)によって糖尿病を誘発した。糖尿病の発生は、研究3日目に全ての動物の血糖値(BGL)を測定することによって確認した(BGL>300mg/dL)。研究14日目にBGLを再び測定し、研究21日目に触覚アロディニアを示した動物のみについてそれらのBGLを再び試験した。研究14日目に触覚アロディニアを示さなかった動物について、研究16日目にBGLを測定した。研究23日目にこれらの動物についてそれらのBGLを再び試験した。
【0173】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(0.1mg/kg、1mg/kg又は10mg/kg、p.o.)を、塩酸塩の水溶液として1日1回水中で投与した(各々、研究14日目又は研究16日目に開始して、研究21日目又は23日目まで続ける)。対照物質であるガバペンチン(0.9%食塩水中、150mg/kg、i.p.)は、アロディニア試験日にのみ投与した。試験物、ビヒクル又は対照物質の投与は、研究14日目のアロディニアの評価に基づいた。研究14日目にアロディニアが存在しない場合は、研究16日目に動物を再び評価した。疼痛反応は、研究14日目及び21日目、又は16日目及び23日目に、試験物投与の30分後に測定した。
【0174】
アロディニア評価のために、Chaplan及び同僚(1994)の方法に従ってVon Freyフィラメントを使用した。手短に言えば、ラットを囲いの中に入れ、金属メッシュ表面上に置いたが、自由に移動させた。ラットのキャビンを赤いセロファンで覆い、環境分布を減少させた。探索行動が止まった後に試験を開始した。
【0175】
げっ歯類は、その足が予想外に触られるときに足引っ込め反射を示す。所与の長さ及び直径のVon Frey繊維の先端を皮膚に対して垂直に押し付けたとき、繊維が曲がるまで研究者がプローブを前進させ続ける限り、作動力が増加する。繊維が曲がった後、プローブを前進させ、繊維をより曲げさせたが、さらなる力を加えなかった。動物はその足を引き戻すことによって感覚があることを示す。最初に選択したフィラメントに対する足引っ込め反応がない場合、より強い刺激を与えた。足を引っ込めた場合には、次に弱い刺激を選択した。この様式で、反応のありなしのこのように得られたパターンを使用して、足引っ込め閾値を決定した。
【0176】
一組のVon Freyモノフィラメントは、実際の力のおおよその対数尺スケール及び知覚した力の線形スケールを提供する。下記は、力(g)及びモノフィラメントのその相当するサイズを示す表である。
【表8】

【0177】
全ての正規分布データは、平均±SEM、及び動物の個々の値、それに続くスチューデントT検定(ソフトウェア:Microsoft(登録商標)Excel)として表す。p値<0.05は、有意差を表すと見なす。アロディニアデータの非正規分布によって、それらのデータの記述は、それらのあいまいな性質及び傾斜分布を表すために、平均(±SEM)及び中央値の両方として提供する。
【0178】
Von Freyデータは、各後脚を引っ込めるのに必要な最小の力(g)として表す。STZ注射後の14/16日に疼痛閾値の減少を記録した。この減少は、Von Freyフィラメントに対する動物の感受性の増加として表した。STZ注射前のベースラインでのビヒクル処理動物の引っ込め力(平均及び群中央値)は、57.57±2.43であった(群中央値=60g)。研究14/16日目に、足引っ込め力(中央値)は、有意により低かったが(20.5〜22.14±2.36g;ベースラインに対して<0.01;中央値=20.5g)、これは(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド処理前の触覚アロディニアを示す。研究の終わり(研究21/23日目)において、処理後においてまだ触覚アロディニアが観察された(20.46±3.31g;ベースラインに対してp<0.01;中央値=8g)。
【0179】
全体的に、1mg/kgの(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドによる処理は、治療前(p<0.01)又はビヒクル対照(p<0.05)と比較すると、研究14/16日目においてその投与の30分後にアロディニアを阻害した。10mg/kgの用量での(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドによる処理は、治療前(p=0.012)と比較すると、研究14/16日目においてその投与の30分後にアロディニアを阻害した。1mg/kgの用量での(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドによる処理は、治療前(p=0.012)と比較すると、研究21/23日目においてその投与の30分後にアロディニアを阻害した。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドによる処理は、ビヒクル対照(p<0.05)と比較すると、10mg/kg(群11M)の用量で、研究21/23日目においてその投与の30分後にアロディニアを阻害した。陽性対照であるガバペンチンによる処理は、治療前(研究14/16日目及び21/23;p<0.01)と比較すると、又はビヒクル対照(研究21/23日目;p<0.01)と比較すると、全ての処理日において触覚アロディニアを有意に逆転した。研究の終わり(研究21/23日目)において、血清中のインスリンレベルを分析した。インスリンレベルの有意差は観察されなかった。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを、全ての用量で各々、研究14日目又は16日目に開始して、研究21日目又は23日目まで毎日投与した。被験物質注射の前(TI注射前)及び被験物質投与の30分後(TI注射後)に、疼痛試験を行った。研究14日目又は16日目及び21日目又は23日目に、陽性対照であるガバペンチンを、疼痛試験の2時間前に投与した。陽性対照であるガバペンチンによる処理は、治療前及びビヒクルと比較して、全ての処理日において触覚アロディニアを有意に逆転した。研究14/16日目で処理前及び処置後において、各々22.77±3.77g(中央値=15g)、45.62±4.24g(中央値=60g)、p<0.01;研究21/23日目で処理前及び処置後において、各々28.23±4.91g(中央値=20.5g)、50.88±4.12g(中央値=60g)、p<0.01;研究14/16日目でビヒクル群において、45.62±4.24g(中央値=60g)、26.61±4.41g(中央値=15g)、p<0.01;研究21/23日目でビヒクル群において、50.88±4.12g(中央値=60g)、20.46±3.31g(中央値=10g)、p<0.01。
【0180】
終了日のVon Frey試験の直後に、血液を集めた。研究の終わりに、動物をケタミン/キシラジン溶液で安楽死させた(IP)。概ね0.5〜0.7mlの血液を、心臓穿刺によって抗凝固剤(K3EDTA)を含有するチューブに集めた。血液試料を氷上に冷却して保存し、収集の30分以内に遠心分離した。血漿を得るために、血液を3000rpmで10分間遠心分離した。血漿を標識されたチューブに移し、直立させて保存し、発送まで概ね-20℃で冷凍した。各試料を、化合物番号及び動物番号で標識した。
【0181】
全ての動物は研究の間に体重が増えた。群の間で体重増加の有意差はなかった。
【0182】
全ての動物において平均血糖値は増加した。ベースラインは108.86±1.03mg/dlであり、研究3日目に390.99±6.47mg/dlに増加した。群の間で統計的有意差は見出されなかった。研究14日目のアロディニアについての結果に基づいて、高グルコースレベルがまた研究14/16日目及び21/23に測定された。研究の終わりに(研究21及び23日目)、平均血糖値は403.86±8.45mg/dlであった。
【0183】
研究の終わりにおいて、血清中のインスリンレベルを分析した。研究の終わりにおけるビヒクル対照のインスリンレベルは、0.79±0.41μg/lであった。処理の間のインスリンレベルに有意差は観察されなかった。
【0184】
Von Frey評価の結果は、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドが、ビヒクル処理群と比較して、1mg/kg及び10mg/kgの用量で糖尿病性ニューロパシー疼痛を減少させるのに有効であることを示す。図14を参照されたい。
【0185】
Chaplan SR、Bach FW、Pogrel JW、Chung JM、Yaksh TL(1994)、Quantitative assessment of tactile allodynia in the rat paw、J. Neurosci. Methods 53: 55〜63;Schumader KE(2002)、Epidemiology and impact on quality of life of postherpetic neuralgia and painful diabetic neuropathy、Clinical Journal of Pain 18: 350〜354;及びSommer C(2003). Painful neuropathies、Curr. Opin. Neurol. 16: 623〜628を参照されたい。
【0186】
2型糖尿病のマウスモデル
2型糖尿病の十分に確立したモデルであるdb/dbマウスは、肥満表現型を現し、また代謝症状(高血糖症、高脂血症及び高インスリン血症を含めた)を通常現すレプチン欠損変異体である(Halaasら、1995及びLeeら、1996)。糖尿病のこの実験動物モデルを、体重及びいくつかのさらなる代謝パラメーターに対する(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの作用を決定するために設計された研究において用いた。
【0187】
この研究において、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを、1日1回、1.0mg/kgで経口的に(経管栄養によって)繰り返し投与した(概ね3週齢で開始し、7週の研究に亘り続けた)。非糖尿病性ヘテロ接合体同腹子マウス(db/+;「Db」と称する)を対照として使用した。体重及び食物摂取量を週2回決定した。α7アンタゴニストであるメチルリカコニチン(MLA)をまた、db/db(「db」と称する)又はdb/+マウスの選択したコホートに毎日3mg/kgで経管栄養によって同時に与えた。7週の投与計画の終わりに、総増加率(全体的な体重増加)及び毎日の平均食物摂取量を計算した。さらに、グルコースレベルを一晩絶食させたマウスにおいて評価した。さらに、一晩絶食させたマウスからの血液試料分析物を、腫瘍壊死因子-a(TNF-α)、トリグリセリド及びグリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)の測定のために集めた。全てのデータは、平均±SEMとして表す。調査した各パラメーターについて、全ての群の間の差異は、事後Neuman-Keuls多重比較試験による一方向ANOVAによって比較した。
【0188】
全体的に、肥満db/dbマウスへの(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの7週間に亘る毎日の投与は、ビヒクルで処理した対照肥満db/dbマウスと比較して、測定した全てのパラメーターにおいて有意な減少をもたらした。総体重増加、毎日の平均摂食量、グリコシル化HbA1cレベル及びTNF-αの血漿濃度に関して、MLAの同時投与は、その作用を減衰した。血漿グルコース及びトリグリセリドの減衰は、MLAと(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドとの同時投与によって有意に減衰されなかったが、その逆への傾向があった。
【0189】
図15において例示するように、3週齢と10週齢の間の7週間の処理の終わりに、ビヒクル対照で処理した肥満群(「db」)における総体重増加は、痩せたビヒクル対照動物(「Db」)のそれと比較して有意により大きかった。比較すると、体重増加は、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドで処理した肥満(「db-被験物質」)マウスにおいて有意により低かった。特に、MLAと(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドとを同時投与された動物は、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド単独を投与された肥満ラットが示す体重増加の減少を示さなかった。
【0190】
図16に示すように、ビヒクル対照肥満群(「db」)における毎日の食物摂取量は、痩せたビヒクル対照(「Db」)のそれよりも有意により多かった。平均摂食量は、TC-(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドで処理した肥満マウス(「db-被験物質」)において、肥満対照におけるよりも有意に低かった。痩せたマウスの摂食量は、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(「Db-被験物質」)によって影響されなかった。MLAと(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドとを同時投与された動物は、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド単独を投与された肥満ラットが示す毎日の平均摂食量の減少を示さなかった。
【0191】
図17に示すように、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、肥満マウス(「db-被験物質」)において空腹時血漿グルコースレベルを有意に阻害した。しかし、この作用は、MLAとの同時投与によって逆転されなかった。
【0192】
図18に示すように、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、肥満マウス(「db-被験物質」)においてグリコシル化HbA1cレベルを有意に阻害した。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドによるグリコシル化HbA1cの減少は、MLAの同時投与によって減衰した。
【0193】
図19に示すように、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、肥満マウス(「db-被験物質」)において炎症性促進性サイトカインであるTNFαを有意に減少させた。これらの作用は、α7アンタゴニストであるMLAの同時投与によって阻害された。
【0194】
図20に示すように、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、ビヒクル処理対照(「db」)と比較して、肥満マウス(「db-被験物質」)において有意により低いトリグリセリドレベルをもたらした。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドによるトリグリセリドの減少は、MLAの同時投与によって減衰しなかった。
【0195】
肺、気道過敏症、Penh測定
Hamelmannらの方法を使用して、マウスにおける気道過敏症を阻害する可能性について(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを評価した。手短に言えば、オボアルブミン(OVA)感作動物(1群毎に12匹の動物)を、21日目、23日目、及び25日目に鼻孔吸入によってエアロゾル化した5%OVAで25分間負荷をかけた。マウスを21日目から26日目まで、1日2回の皮下(s.c.)又は1日1回の気管内(i.t.)によるビヒクル又は(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド、21日目、23日目及び25日目の30分の上記のオボアルブミンエアゾール負荷、並びに26日目のメタコリン負荷又は気管支肺胞洗浄液(BALF)収集で処理した。参照標準であるデキサメタゾンは、21日目、23日目及び25日目にOVA負荷の60分前に、26日目にメタコリン誘発又はBALF収集の60分前に、3mg/kgで経口的に(p.o.)1日1回投与した。気道の反応性の非侵襲性測定を、エンハンスドポーズ(Penh)の増加が気道閉塞のインデックスの役割を果たす全身プレチスモグラフィーを使用することによって行った。吸入したメタコリンに対する反応を測定し、各々のベースライン値の割合として計算した。対応のないスチューデントT検定を、ビヒクル対照とシャム群との間の比較のために使用した。一方向ANOVA及びダネット事後分析を、ビヒクル対照と処理群との間の比較のために適用した。統計的有意性は、P<0.05で考慮する。
【0196】
図21は、オボアルブミン感作マウスにおけるメタコリン負荷に対するPenh反応における変化%に対する(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの作用を例示する。メタコリン(10mg/mL及び30mg/mL)へのPenh反応は、シャム対照と比較して、OVA感作動物において有意に増大した。3mg/kg(PO)でのデキサメタゾンは、ビヒクルで処理したOVA動物と比較して、絶対値及び%値の両方において、メタコリン(10mg/mL及び30mg/mL)が誘発するPenh値の増加の有意な阻害をもたらしたが、これは気道過敏症に対する有効性を示す。0.1mg/kg、1mg/kg、及び10mg/kg(1日2回)(s.c.)での(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、メタコリンが誘発するPenh値の増加の有意な阻害をもたらした。10mg/kg(IT)はまた、有意な阻害と関連した。
【0197】
オボアルブミン感作マウスにおける白血球数/細胞分画数及び白血球数%/細胞分画数%に対する(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの作用を、図Y及びZに各々例示する。総WBC、好中球、リンパ球、単球及び好酸球の有意な増加が、シャム対照に対するOVA感作動物におけるBALF中に注目され、有意な増加はデキサメタゾンによって有意に阻害された。0.1mg/kg及び1mg/kg(SC)での(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド、は、BALF中の総WBC及び好酸球を有意に減少させた(しかし、10mg/kg(SC)では減少させなかった)。10mg/kg(SC)での(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドは、単球を減少させた。リンパ球は、0.1mg/kg及び1mg/kg(SC)で、並びに10mg/kg(IT)で減少した。
【0198】
これらの結果は、デキサメタゾンに対して、0.1mg/kg、1mg/kg及び10mg/kg(1日2回)(s.c.)、並びに10mg/kg(i.t.)での(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの多回投与は、OVA感作マウスモデルにおいて気道過敏症に対する有意な保護を可能にし(マウスにおける全身プレチスモグラフィーを使用したメタコリン負荷に対するPenh反応の減少からも明らかなように)、BALF中の好酸球及び白血球の有意な減少と関連することを示す(しかし、これは一貫した用量反応関係を欠いている)。
【0199】
図21は、オボアルブミン感作マウスにおけるメタコリン負荷に対するPenh反応における変化%に対する(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの作用を例示する。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド及びビヒクルを、21日目から25日目まで連続6日間、OVA負荷の30分前に皮下(1日2回)又は気管内(毎日)投与し、最後の投与は26日目のMCh誘発の30分前に投与した。Penh値を決定した。OVA免疫化ビヒクルと他の投与群との間の比較のために、一方向ANOVA、それに続くダネット検定を適用した。*OVA-ビヒクル対照に対してP<0.05。
【0200】
図22は、オボアルブミン感作マウスにおける白血球数及び細胞分画数に対する(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの作用を例示する。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド及びビヒクルを、21日目から25日目まで連続6日間、OVA負荷の30分前に皮下(1日2回)又は気管内(毎日)投与し、最後の投与は26日目の気管支肺胞洗浄液収集の30分前に投与した。総白血球数及び細胞分画数を決定した。OVA免疫化ビヒクルと他の処理群との間の比較のために、一方向ANOVA、それに続くダネット検定を適用した。*OVA-ビヒクル対照に対してP<0.05。
【0201】
図23は、オボアルブミン感作マウスにおける白血球数%及び細胞分画数%に対する(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの作用を例示する。(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド及びビヒクルを、21日目から25日目まで連続6日間、OVA負荷の30分前に皮下(1日2回)又は気管内(毎日)投与し、最後の投与は26日目の気管支肺胞洗浄液収集の30分前に投与した。総白血球数及び細胞分画数を決定した。OVA免疫化ビヒクルと他の処理群との間の比較のために、一方向ANOVA、それに続くダネット検定を適用した。*OVA-ビヒクル対照に対してP<0.05。
【0202】
Hamelmann E、Schwarze J、Takeda K、Oshiba A、Larsen GL、Irvin CG及びGelfand EW、Noninvasive measurement of airway responsiveness in allergic mice using barometric plethysmography、Am J Respir Crit Care Med、156:766〜775、1997を参照されたい。
【0203】
本明細書に記載されている実験のための試験化合物は、遊離又は塩の形態で用いた。他に特定しない限り、インビボ試験のために提供した化合物は、(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド塩酸塩であったが、投与量は遊離塩基の形態と仮定して得た。
【0204】
観察された特異的薬理学的反応は、選択した特定の活性化合物、又は医薬担体の存在の有無、並びに用いる製剤及び投与方法のタイプによって変化し、それら次第で変化することがあり、結果におけるこのような予想される変動又は差異が本発明の実施に従って予期される。
【0205】
本発明の特定の実施形態を本明細書において例示し、詳細を記載するが、本発明はそれだけに限定されない。上記の詳細な記載を本発明の例示として提供するが、本発明の限定を構成するものと解釈すべきではない。変形形態は当業者には明らかであり、本発明の精神から逸脱しない全ての変形形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(式I):
【化1】

又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
(2R,3S)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド、(2R,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド、及び(2S,3S)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドの一つ又は複数が実質的に存在しない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
酸が塩酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、マロン酸、L-酒石酸、フマル酸、クエン酸、L-リンゴ酸、R-マンデル酸、S-マンデル酸、コハク酸、4-アセトアミド安息香酸、アジピン酸、ガラクタル酸、ジ-p-トルオイル-D-酒石酸、シュウ酸、D-グルクロン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-メトキシ安息香酸、(1S)-(+)-10-カンファースルホン酸、(1R,3S)-(+)-ショウノウ酸、及びp-トルエンスルホン酸から選択される酸付加塩としての、又はその水和物若しくは溶媒和物としての、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
酸と(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドとのモル比が、1:2又は1:1である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド一塩酸塩又はその水和物若しくは溶媒和物;
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド一リン酸塩又はその水和物若しくは溶媒和物;
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドモノ-4-ヒドロキシ安息香酸塩又はその水和物若しくは溶媒和物;及び
(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドヘミ-4-ヒドロキシ安息香酸塩又はその水和物若しくは溶媒和物
から選択される化合物。
【請求項6】
個々に又は組み合わせて、25重量%未満の(2R,3R)-、(2S,3S)-、又は(2R,3S)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを含有する、化合物(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項7】
個々に又は組み合わせて、15重量%未満の(2R,3R)-、(2S,3S)-、又は(2R,3S)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを含有する、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
個々に又は組み合わせて、5重量%未満の(2R,3R)-、(2S,3S)-、又は(2R,3S)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを含有する、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
個々に又は組み合わせて、2重量%未満の(2R,3R)-、(2S,3S)-、又は(2R,3S)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを含有する、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
個々に又は組み合わせて、1重量%未満の(2R,3R)-、(2S,3S)-、又は(2R,3S)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミドを含有する、請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
実質的に結晶性である、化合物(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド(式I):
【化2】

又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項12】
下記のピークの±0.5度2θ以内に一つ又は複数のピークを含むX線回折パターンを特徴とする、化合物(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド塩酸塩の多形形態。
【表1】

【請求項13】
図9に実質的に相当するX線粉末回折パターンを特徴とする、化合物(2S,3R)-N-2-((3-ピリジニル)メチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-3,5-ジフルオロベンズアミド塩酸塩の多形形態。
【請求項14】
α7が媒介する疾患又は機能障害の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
治療有効量の請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、α7が媒介する疾患又は機能障害を治療又は予防する方法。
【請求項16】
α7が媒介する疾患又は機能障害の治療又は予防において使用するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
i)急性、神経性、炎症性、神経因性、慢性疼痛、激しい慢性疼痛、術後痛、癌に関連する疼痛、アンギナ、腎仙痛又は胆石仙痛、月経、片頭痛、痛風、関節炎、リウマチ様疾患、腱鞘炎、脈管炎、三叉神経又はヘルペス神経痛、糖尿病性ニューロパシー疼痛、灼熱痛、腰痛症、求心路遮断症候群、及び腕神経叢裂離の一つ又は複数を含めた疼痛;
ii)代謝症候群、体重増加、I型糖尿病、II型糖尿病、又は糖尿病性ニューロパシー;
iii)乾癬、喘息、アテローム性動脈硬化症、特発性肺線維症、慢性及び急性炎症、乾癬、内毒素血症、痛風、急性偽痛風、急性痛風性関節炎、関節炎、関節リウマチ、骨関節炎、同種移植片拒絶、慢性移植片拒絶、喘息、アテローム性動脈硬化症、単核食細胞依存性肺傷害、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、鎌状赤血球症における急性胸部症候群、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性胆管炎、アフタ性口内炎、嚢炎、糸球体腎炎、ループス腎炎、血栓症、及び移植片対宿主反応の一つ又は複数を含めた炎症;並びに
iv)加齢関連記憶障害、軽度認知性障害、初老期認知症、早期発症型アルツハイマー病、老人性認知症、アルツハイマー型の認知症、アルツハイマー型の軽度から中等度の認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、アルツハイマー病、脳卒中、AIDS認知症複合、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、失読症、統合失調症、統合失調症様障害、分裂感情障害、統合失調症における認知欠損、及び統合失調症における認知機能障害の一つ又は複数を含めた認知
からなる群から選択される疾患又は機能障害の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項18】
疾患又は機能障害が、
i)急性、神経性、炎症性、神経因性、慢性疼痛、激しい慢性疼痛、術後痛、癌に関連する疼痛、アンギナ、腎仙痛又は胆石仙痛、月経、片頭痛、痛風、関節炎、リウマチ様疾患、腱鞘炎、脈管炎、三叉神経又はヘルペス神経痛、糖尿病性ニューロパシー疼痛、灼熱痛、腰痛症、求心路遮断症候群、及び腕神経叢裂離の一つ又は複数を含めた疼痛;
ii)代謝症候群、体重増加、I型糖尿病、II型糖尿病、又は糖尿病性ニューロパシー;
iii)乾癬、喘息、アテローム性動脈硬化症、特発性肺線維症、慢性及び急性炎症、乾癬、内毒素血症、痛風、急性偽痛風、急性痛風性関節炎、関節炎、関節リウマチ、骨関節炎、同種移植片拒絶、慢性移植片拒絶、喘息、アテローム性動脈硬化症、単核食細胞依存性肺傷害、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、鎌状赤血球症における急性胸部症候群、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性胆管炎、アフタ性口内炎、嚢炎、糸球体腎炎、ループス腎炎、血栓症、及び移植片対宿主反応の一つ又は複数を含めた炎症;並びに
iv)加齢関連記憶障害、軽度認知性障害、初老期認知症、早期発症型アルツハイマー病、老人性認知症、アルツハイマー型の認知症、アルツハイマー型の軽度から中等度の認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、アルツハイマー病、脳卒中、AIDS認知症複合、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、失読症、統合失調症、統合失調症様障害、分裂感情障害、統合失調症における認知欠損、及び統合失調症における認知機能障害の一つ又は複数を含めた認知
からなる群から選択される、治療有効量の請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、疾患又は機能障害を治療又は予防する方法。
【請求項19】
疾患又は機能障害が、
i)急性、神経性、炎症性、神経因性、慢性疼痛、激しい慢性疼痛、術後痛、癌に関連する疼痛、アンギナ、腎仙痛又は胆石仙痛、月経、片頭痛、痛風、関節炎、リウマチ様疾患、腱鞘炎、脈管炎、三叉神経又はヘルペス神経痛、糖尿病性ニューロパシー疼痛、灼熱痛、腰痛症、求心路遮断症候群、及び腕神経叢裂離の一つ又は複数を含めた疼痛;
ii)代謝症候群、体重増加、I型糖尿病、II型糖尿病、又は糖尿病性ニューロパシー;
iii)乾癬、喘息、アテローム性動脈硬化症、特発性肺線維症、慢性及び急性炎症、乾癬、内毒素血症、痛風、急性偽痛風、急性痛風性関節炎、関節炎、関節リウマチ、骨関節炎、同種移植片拒絶、慢性移植片拒絶、喘息、アテローム性動脈硬化症、単核食細胞依存性肺傷害、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、鎌状赤血球症における急性胸部症候群、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性胆管炎、アフタ性口内炎、嚢炎、糸球体腎炎、ループス腎炎、血栓症、及び移植片対宿主反応の一つ又は複数を含めた炎症;並びに
iv)加齢関連記憶障害、軽度認知性障害、初老期認知症、早期発症型アルツハイマー病、老人性認知症、アルツハイマー型の認知症、アルツハイマー型の軽度から中等度の認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、アルツハイマー病、脳卒中、AIDS認知症複合、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、失読症、統合失調症、統合失調症様障害、分裂感情障害、統合失調症における認知欠損、及び統合失調症における認知機能障害の一つ又は複数を含めた認知
からなる群から選択される、疾患又は機能障害の治療又は予防において使用するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物、及び1種又は複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項21】
有効量の請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、アセチルコリン誘発電流を増強する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2012−515797(P2012−515797A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548174(P2011−548174)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/021926
【国際公開番号】WO2010/085724
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(501054735)ターガセプト,インコーポレイテッド (37)
【Fターム(参考)】