(S)−2−{4−[2−(2,4−ジアミノ−キナゾリン−6−イル)−エチル]−ベンゾイルアミノ}−4−メチレン−ペンタン二酸の二カリウム塩の安定な結晶多形
本発明は、安定な結晶多形型の抗葉酸化合物、特に(S)−2−{4−[2−(2,4−ジアミノ−キナゾリン−6−イル)−エチル]−ベンゾイルアミノ}−4−メチレン−ペンタン二酸二カリウム塩、およびそれらの調製方法を提供する。該多形は、水和物の形態とすることができる。本発明は、該多形を含む医薬組成物および該多形を使用する治療方法をさらに提供する。該多形は、異常な細胞増殖、炎症性疾患、喘息、および関節炎を含めた多数の状態の治療において有用であり、該多形は、単独でまたは1種以上のさらなる活性薬剤と組み合わせて投与することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、その開示全体を参照により本明細書の一部となすものとする2009年7月8日出願の米国特許出願第61/223,888号の優先権を主張するものである。
【0002】
本出願は、抗葉酸化合物の多形、それらの調製方法、ならびに該多形を含む組成物、および該多形を使用する治療方法を対象としている。
【背景技術】
【0003】
葉酸は、N−[4(2−アミノ−4−ヒドロキシ−プテリジン−6−イルメチルアミノ)−ベンゾイル]−L(+)−グルタミン酸の系統名で知られている水溶性のビタミンBであり、以下の構造を有する。
【化1】
上記の式に見られるように、葉酸の構造は、一般に、プテリジン環、パラ−アミノ安息香酸部分、およびグルタメート部分から形成されていると説明することができる。葉酸およびその誘導体は、代謝および成長に必要であり、特に身体のチミジレート、アミノ酸、およびプリンの合成に関与している。天然のホレートなどの葉酸の誘導体は、葉酸に匹敵する生化学的作用を有することが知られている。葉酸は、1,4−ジアジン環などでの水素化を介して誘導体化されるか、またはメチル化、ホルムアルデヒド化(formaldehydylated)、または架橋されることが知られており、置換は、一般に、N5またはN10位で発生する。ホレートは、先天的欠損症、心疾患、卒中、記憶喪失、および加齢性認知症の重症度または発生率の低減を含めた様々な用途における効力について研究されてきた。
【0004】
ホレートのような抗葉酸化合物は、葉酸と構造的に類似している。しかし、抗葉酸化合物は、ホレート代謝を妨害するように機能する。抗葉酸剤の概説は、参照により本明細書の一部となすものとするTakamoto(1996)The Oncologist、1:68〜81により示されている。1つの特定の群の抗葉酸剤、いわゆる「古典的抗葉酸剤」は、葉酸p−アミノベンゾイルグルタミン酸側鎖、またはその側鎖の誘導体の存在を特徴とする。別の群の抗葉酸剤、いわゆる「非古典的抗葉酸剤」は、p−アミノベンゾイルグルタミン酸基の特異的な欠如を特徴とする。抗葉酸剤は葉酸の作用と反対の生理的作用を有するため、抗葉酸剤は、アポトーシスを引き起こすことにより癌細胞を破壊する能力などの有用な生理的機能を示すことが示されてきた。
【0005】
ホレートモノグルタミレートおよび抗葉酸剤モノグルタミレートは、還元形または非還元形で、それぞれの形に特異的な担体により細胞膜を通して輸送される。これらの輸送系の発現は、細胞型および細胞成長条件によって異なる。細胞への進入後、大部分のホレート、および多くの抗葉酸剤は、ポリグルタミル化により修飾され、1つのグルタミン酸残基がペプチド結合を介してαカルボキシ基で第2のグルタミン酸残基に結合する。このことは、通常、3〜6個のグルタミン酸残基の付加により、ポリ−L−γ−グルタミレートの形成につながる。ホレートに作用する酵素は、ポリグルタミル化形態に対してより高い親和力を有する。したがって、ポリグルタミル化ホレートは、一般に、より長い細胞内での保持時間を示す。
【0006】
無傷のホレート酵素経路は、DNAの構成単位、ならびに多くの重要なアミノ酸のde novo合成を維持するのに重要である。抗葉酸剤の標的としては、(i)ジヒドロホレートレダクターゼ(DHFR)、(ii)チミジレートシンターゼ(TS)、(iii)ホリルポリグルタミルシンターゼ、および(iv)グリシンアミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼ(GARFT)およびアミノイミダゾールカルボキサミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼ(AICART)を含めた、ホレート代謝に関与している様々な酵素が挙げられる。
【0007】
膜貫通型糖タンパク質である還元ホレート担体(RFC)は、(受容体を介する機序とは対照的な)担体を介する機序により、哺乳動物細胞へ還元ホレートを輸送するホレート経路において積極的な役割を果たす。RFCは、メトトレキセートなどの抗葉酸剤も輸送する。したがって、RFCの機能する能力を媒介することにより、細胞の還元ホレートを吸収する能力に影響を及ぼすことができる。
【0008】
ポリグルタミル化ホレートは、酵素補因子として機能することができ、一方、ポリグルタミル化抗葉酸剤は、一般に、酵素阻害剤として機能する。さらに、ホレート代謝の妨害により、DNAおよび一部のアミノ酸のde novo合成が防止され、それにより抗葉酸剤選択的な細胞毒性が可能となる。その構造を以下に示しているメトトレキセートは、癌治療、特に急性白血病、非ホジキンリンパ腫、乳癌、頭頸部癌、絨毛癌、骨肉腫、および膀胱癌の治療における使用が示されてきた1種の抗葉酸剤である。
【化2】
【0009】
参照により本明細書の一部となすものとするNairら(J.Med.Chem.(1991)34:222〜227)は、古典的抗葉酸剤のポリグルタミル化が抗腫瘍活性に必須ではなく、ポリグルタミル化が薬物の薬理学的活性および標的特異性の低下をもたらす恐れがあるという点で望ましくない可能性さえあることを証明した。これに続いて、多数のポリグルタミル化不可能な(nonpolyglutamylatable)古典的抗葉酸剤が発見された。参照により本明細書の一部となすものとするNairら(1998)Proc.Amer.Assoc.Cancer Research 39:431を参照されたい。ポリグルタミル化不可能な抗葉酸剤の1つの特定の群は、グルタミン酸部分の4位のメチリデン基(すなわち、=CH2置換基)を特徴とする。この化学基の存在は、抗葉酸化合物の生物活性に影響を及ぼすことが示されてきた。参照により本明細書の一部となすものとするNairら(1996)Cellular Pharmacology 3:29を参照されたい。
【0010】
代謝安定性が増大して用量の減少および患者への投与頻度の減少を可能にする抗葉酸剤の探索において、さらなる葉酸誘導体も研究されてきた。例えば、ジデアザ(すなわち、キナゾリン系)類似体は、プテリジン環系での生理的ヒドロキシル化を回避することが示されてきた。さらに、第2級アミン窒素原子を場合により置換された炭素原子により置換することにより、隣接する結合が生理的切断から保護されることが示されてきた。
【0011】
第2級アミン窒素の炭素置換を有する抗葉酸剤の一例は、その構造を以下に示している4−アミノ−4−デオキシ−10−デアザプテロイル−γ−メチレングルタミン酸(より一般的にMDAMと呼ばれる)である。
【化3】
MDAMのL−エナンチオマーは、増大した生理的活性を示すことが示されてきた。参照により本明細書の一部となすものとする米国特許第5,550,128号を参照されたい。代謝安定性のために考案された古典的抗葉酸剤の別の例はZD1694であり、以下に示している。
【化4】
【0012】
以下に示している構造の抗葉酸化合物の群は、上記の分子の特色のいくつかを組み合わせたものであり、この群の化合物は、MobileTrexate、Mobile Trex、Mobiltrex、またはM−Trexという名称で知られている。
【化5】
上記の式で示している通り、この群の化合物は、M−Trex(式中、XをCH2、CHCH3、CH(CH2CH3)、NH、またはNCH3とすることができる)を包含する。
【0013】
抗葉酸剤の医薬化合物としての有効性は、上記の代謝不活性に加えて他の因子に起因する。多数の酵素が体内のホレート代謝に関与しているため、抗葉酸剤の阻害標的を選択することができる。換言すると、抗葉酸剤は、それらが阻害する酵素(複数可)に応じて多様なものとすることが可能である。例えば、抗葉酸剤の中には、ジヒドロホレートレダクターゼ(DHFR)を主に阻害するものもあれば、チミジレートシンターゼ(TS)、グリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(GARFT)、またはアミノイミダゾールカルボキサミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼを主に阻害するものもあり、さらにはこれらの酵素の組合せを阻害するものもある。
【発明の概要】
【0014】
抗葉酸剤は様々な状態を治療するのに有用であるが、安定な形、特に医薬組成物に組み込むことができる形の抗葉酸化合物を提供することは困難となる可能性がある。
【0015】
今や、本発明により、抗葉酸活性を有する特定の化合物を、明らかに異なる物理的性質を有する安定な多形型で提供できることが確定した。特に、本発明は、化合物(S)−2−{4−[2−(2,4−ジアミノ−キナゾリン−6−イル)−エチル]−ベンゾイルアミノ}−4−メチレン−ペンタン二酸二カリウム塩(式(1)の化合物)の安定な多形型を提供する。本発明は、水和物などの、該化合物の様々な安定な結晶性の擬似多形型をさらに提供する。
【0016】
一実施形態において、本発明は、Ia型多形と称される、式(1)の化合物の結晶多形を提供する。
【化6】
Ia型多形は、4.946、7.118、7.785、8.238、9.229、9.822、13.4000、15.271、15.658、16.128、16.459、17.286、18.088、17.452、18.889、19.490、19.837、21.456、22.658、23.168、23.811、24.691、28.436、および29.609からなる群から選択される1つ以上のおおよそのX線粉末回折格子面間隔ピークを有することを特徴とすることができる。Ia型は、また、本明細書に例示の特定のX線粉末回折パターン図を有することを特徴とすることができる。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、Ib型多形と称される、式(1)の化合物の結晶多形を提供する。Ib型多形は、4.811、8.316、9.542、10.047、13.189、14.946、15.973、17.219、18.162、21.814、22.260、23.087、23.351、24.518、25.456、26.846、28.376、29.648、30.509、31.226、および32.328からなる群から選択される1つ以上のおおよそのX線粉末回折格子面間隔ピークを有することを特徴とすることができる。Ib型は、また、本明細書に例示の特定のX線粉末回折パターン図を有することを特徴とすることができる。
【0018】
Ib型多形は、また、3334、3194、1597、1556、1492、1446、1400、1367、1338、1314、1294、1255、1190、1075、1020、992、928、835、797、748、および733からなる群から選択される1つ以上のおおよそのFTIRピークを有するFTIRスペクトルを有することを特徴とすることができる。さらに、Ib型は、本明細書に例示の特定のFTIR図を有することを特徴とすることができる。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、II型多形と称される、式(1)の化合物の結晶多形を提供する。II型多形は、4.794、7.020、7.747、8.104、9.457、11.483、13.223、15.010、15.693、16.943、18.222、19.552、22.498、23.003、および29.490からなる群から選択される1つ以上のおおよそのX線粉末回折格子面間隔ピークを有することを特徴とすることができる。II型は、また、本明細書に例示の特定のX線粉末回折パターン図を有することを特徴とすることができる。
【0020】
II型多形は、また、332、3207、1555、1499、1443、1396、1289、1188、1154、1083、1018、940、835、および796からなる群から選択される1つ以上のおおよそのFTIRピークを有するFTIRスペクトルを有することを特徴とすることができる。さらに、II型は、本明細書に例示の特定のFTIR図を有することを特徴とすることができる。
【0021】
各多形型は、示差走査熱量測定(DSC)特性との関連で説明することもできる。例えば、各多形型は、DSCを使用して測定した場合に約310℃での吸熱最大値を有することができる。特定の実施形態において、Ib型多形は、約92.7℃、120.1℃、および125.9℃でピークを示すDSC曲線を有することができ、II型多形は、約68.0℃、95.3℃、115.8℃、および126.3℃でピークを示すDSC曲線を有することができる。
【0022】
特定の実施形態において、本発明の様々な多形は、水和物の形で提供することができる。例えば、結晶多形は、約10重量%〜約40重量%の含水率を有し得る。特定の実施形態において、水和物は、約25℃の温度および約60%の相対湿度で貯蔵するとある期間にわたって安定であると特徴付けることができる。安定性は、水和物がさらに水を吸収しないことおよび/または水和物が水を失わないことから明らかであることが好ましい。
【0023】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の結晶多形型を調製する方法も対象としている。一部の実施形態において、該方法は、場合により加熱ステップと共に、さらに場合により混合ステップと共に、アルコール(例えば、メタノール)および水などの好適な極性溶媒中で式(1)の化合物の溶液を形成するステップを含むことができる。加熱ステップを使用する場合、該溶液を周囲条件などまで冷却して該多形の沈殿を容易にすることが有用となる可能性がある。特定の抗溶媒を使用して所望の多形を該溶液から沈殿させることができ、そのような抗溶媒は、無極性溶媒(例えば、メチルイソブチルケトンおよびテトラヒドロフラン)であることが好ましい。特定の実施形態において、該方法は、式(1)の化合物から不純物を単離するステップを含むことができる。このステップは、該化合物を、異物(例えば、式(1)の実際の化合物以外の物質)を吸収および/または吸着するのに適した物質と組み合わせるサブステップを含むことができる。具体的には、該物質は活性炭を包含することができる。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、医薬組成物を対象としている。一実施形態において、本発明は、治療有効量のIa型結晶多形または医薬として許容されるプロドラッグまたはその医薬として活性な代謝物、および医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、治療有効量のIb型結晶多形または医薬として許容されるプロドラッグまたはその医薬として活性な代謝物、およびその医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、治療有効量のII型結晶多形または医薬として許容されるプロドラッグまたはその医薬として活性な代謝物、およびその医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、治療を必要としている対象に本明細書に記載の多形を投与することにより様々な状態を治療する方法を対象としている。一実施形態において、本発明は、異常な細胞増殖、炎症、喘息、および関節炎からなる群から選択される状態を治療する方法を提供し、前記方法は、治療を必要としている対象に治療有効量のIa型結晶多形または医薬として許容されるプロドラッグまたはその医薬として活性な代謝物を投与するステップを含む。別の実施形態において、本発明は、異常な細胞増殖、炎症、喘息、および関節炎からなる群から選択される状態を治療する方法を提供し、前記方法は、治療を必要としている対象に治療有効量のIb型結晶多形または医薬として許容されるプロドラッグまたはその医薬として活性な代謝物を投与するステップを含む。さらなる実施形態において、本発明は、異常な細胞増殖、炎症、喘息、および関節炎からなる群から選択される状態を治療する方法を提供し、前記方法は、治療を必要としている対象に治療有効量のII型結晶多形または医薬として許容されるプロドラッグまたはその医薬として活性な代謝物を投与するステップを含む。
【0026】
特定の実施形態において、該多形化合物は、本明細書に記載のさらなる多形と組み合わせることができる。他の実施形態において、該多形は、1種以上のさらなる活性薬剤(例えば、メトトレキセート)と組み合わせることができる。
【0027】
前述の一般項で本発明についてこのように説明してきたが、次に、必ずしも原寸に比例していない添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】頂部線は実際のXRDパターンであり、底線は様々なピークの相対強度を例示している、本発明の一実施形態のIa型と称される多形のX線粉末回折パターン図である。
【図2】頂部線は実際のXRDパターンであり、底線は様々なピークの相対強度を例示している、本発明の一実施形態のIb型と称される多形のX線粉末回折パターン図である。
【図3】本発明の一実施形態のIb型の多形の示差走査熱量曲線を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態のIb型の多形の熱重量分析により得た曲線を示す図である。
【図5】相対湿度(RH)を変化させている間の時間に対する質量変化を示す、本発明の一実施形態のIb型の多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図6】RHの関数としての質量変化を示す、本発明の一実施形態のIb型の多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図7】RHを変化させている間の時間に対する含水率を示す、本発明の一実施形態のIb型の多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図8】RHの関数としての含水率を示す、本発明の一実施形態のIb型の多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態のIb型多形のFTIRスペクトルを示す図である。
【図10】頂部線は実際のXRDパターンであり、底線は様々なピークの相対強度を例示している、本発明の一実施形態のII型と称される多形のX線粉末回折パターン図である。
【図11】本発明の一実施形態のII型多形の示差走査熱量曲線を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態のII型多形の熱重量分析により得た曲線を示す図である。
【図13】RHを変化させている間の時間に対する質量変化を示す、本発明の一実施形態のII型の多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図14】RHの関数としての質量変化を示す、本発明の一実施形態のII型多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図15】RHを変化させている間の時間に対する含水率を示す、本発明の一実施形態のII型多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図16】RHの関数としての含水率を示す、本発明の一実施形態のII型多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図17】本発明の一実施形態のII型多形のFTIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明を、様々な実施形態を参照しながら以降でより完全に説明する。これらの実施形態は、本開示が完璧および完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供するものである。実際、本発明は、多くの様々な形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈すべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供するものである。明細書、および添付の特許請求の範囲において使用する場合、文脈において明白な別段の支持がない限り、単数形「a」、「an」、「the」は、複数の指示物を包含する。
【0030】
I.定義
本明細書において使用する場合、「多形」という用語は、ある化合物の結晶型であって、同じ化合物の他の結晶型と比較して明確な空間格子配列を有するものを意味する。多形は、化合物の様々な非溶媒和結晶型と定義することもできる。特定の多形は、様々な化学的および物理的性質を有することができる。具体的な別段の定めのない限り、多形という用語は、擬似多形を同様に包含することを意図したものである。
【0031】
本明細書において使用する場合、「擬似多形」という用語は、その化合物の結晶格子に溶媒または水を組み込んでいる多形を意味する。本発明が包含する擬似多形の具体例としては、溶媒和物(化合物の結晶格子に溶媒を組み込んでいる結晶型であると理解されている)および水和物(化合物の結晶格子に水を組み込んでいる結晶型を意味するものと理解されている)が挙げられる。擬似多形は、脱溶媒和溶媒和物(すなわち、溶媒和物から溶媒を除去することにより作製することができる形)または脱水水和物(すなわち、水和物から水を除去することにより作製することができる形)とすることもできる。
【0032】
本明細書において使用する場合、「プロドラッグ」という用語は、生理的条件下でまたは加溶媒分解により特定の化合物に転換することができる化合物を意味する。
【0033】
本明細書において使用する場合、「活性な代謝物」という用語は、本発明の化合物、またはそのプロドラッグの代謝から、そのような化合物またはプロドラッグが哺乳動物に投与された場合に生じる生理的に活性な化合物を意味する。化合物の代謝物は、当技術分野において知られている慣例の技術を使用して同定することができる。
【0034】
本明細書において使用する場合、「治療有効量」または「治療有効用量」という用語は互換的であり、本明細書に記載の治療方法に従って所望の治療効果を引き出すのに十分な本発明の化合物、またはその生物活性変異体の濃度を意味する。
【0035】
本明細書において使用する場合、「医薬として許容される担体」という用語は、当技術分野において従来使用されている、生物活性剤の貯蔵、投与、および/または治癒作用を促進する任意の物質を意味し、そのような用語は、「希釈剤」、「ビヒクル」、「アジュバント」などの、同じ機能を付与する物質のための任意のさらなる用語を包含することを意図したものである。
【0036】
本明細書において使用する場合、「間欠投与」という用語は、治療有効用量の本発明の組成物の投与の後に中断の期間が設けられ、次いで、もう1度治療有効用量の投与が行われることを意味する。
【0037】
本明細書において使用する場合、「抗増殖剤」という用語は、細胞の過剰増殖を減少させる化合物を意味する。
【0038】
本明細書において使用する場合、「異常な細胞増殖」という用語は、1種または複数の細胞型の不適当な成長または増殖を特徴とする疾患または状態(その疾患または状態を患っていない個体におけるその細胞型(複数可)の成長と比べて)を意味する。
【0039】
本明細書において使用する場合、「癌」という用語は、局所的にまたは血流およびリンパ系を通って身体の他の部位に拡散する恐れがある細胞の制御されない異常な成長を特徴とする疾患または状態を意味する。該用語は、腫瘍形成または非腫瘍形成癌を包含し、原発性腫瘍および腫瘍転移などの様々なタイプの癌を包含する。
【0040】
本明細書において使用する場合、「腫瘍」という用語は、新生物とも呼ばれる、制御されず進行性である過剰な細胞分裂から生じる多細胞生物内の異常な細胞の塊を意味する。腫瘍は良性または悪性でもよい。
【0041】
本明細書において使用する場合、「線維性障害」という用語は、線維症および全体的または部分的に線維芽細胞の増殖に起因する線維症の他の医学的合併症を意味する。
【0042】
本明細書において使用する場合、「関節炎」という用語は、感染、自己免疫、または外傷が原因である可能性がある、関節に影響を及ぼす炎症性障害を意味する。
【0043】
II.化合物
本発明は、式(1)の化合物、(S)−2−{4−[2−(2,4−ジアミノ−キナゾリン−6−イル)−エチル]−ベンゾイルアミノ}−4−メチレン−ペンタン二酸二カリウム塩の多数の多形結晶形を提供する。本発明は、式(1)の化合物の擬似多形、特に該化合物の水和物も提供する。
【化7】
【0044】
式(1)の化合物は、代謝的に不活性な抗葉酸剤である。当技術分野において認識されているように、抗葉酸剤は、ホレート代謝の様々な段階を妨害する化合物である。したがって、本発明の多形は、ホレート代謝、またはホレート代謝に関連する他の生物学的機序の妨害に関連するまたはそれにより治療することができる疾患および状態の治療に有用な医薬組成物において使用することができる。
【0045】
特定の実施形態において、本発明は、純粋な単一の多形ならびに2種以上の異なる多形を含む混合物を包含することができる。純粋な単一の多形は、他の多形を実質的に含まないものとすることができる。実質的に含まないとは、他の多形(複数可)が約15重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、または約1重量%未満の量で存在していることを意味する。当業者は、「約15重量%未満の量で」という表現が、対象の多形が多形混合物中に約85重量%超の量で存在していることを意味することを理解するであろう。同様に、「約10重量%未満」という表現は、対象の多形が多形混合物中に約90重量%超などの量で存在していることを意味する。他の実施形態において、純粋な単一の多形は、他の多形を完全に含まないものとすることができる。
【0046】
他の実施形態において、本発明の多形型は、実質的に純粋であると説明することができ、それは、式(1)の化合物の各多形型が少なくとも約90重量%の純度で(すなわち、該化合物の他の多形型を含めた不純物が約10重量%未満)、少なくとも約95重量%、少なくとも約98重量%、または少なくとも約99重量%の純度で単離されることを意味している。
【0047】
ある化合物の特定の多形が同じ化合物の他の多形型より良好な物理的および化学的性質を有し得るため、本発明の好ましい実施形態の化合物の多形が望ましい可能性がある。例えば、1つの多形は、特定の溶媒中で増大した溶解度を有し得る。そのような増大した溶解度により、本発明の好ましい実施形態の化合物の製剤化または投与を容易にすることができる。様々な多形は、薬物の性能に影響を及ぼし、したがって薬物の製剤化に影響を及ぼし得る様々な物理的性質(例えば、異なる圧縮性、適合性、および錠剤などの特定の形態となる能力)も有し得る。特定の多形は、同じ溶媒中で別の多形と比べて異なる溶解速度も示すことができる。様々な多形は、異なる物理的安定性(例えば、準安定多形からより安定な多形への固相転換)および/または異なる化学的安定性(例えば、反応性)も有し得る。
【0048】
特定の実施形態において、式(1)の化合物の個々の結晶形は、特徴的なX線粉末回折パターンにより同定することができる。X線粉末回折は、試料の構造特性評価のために該試料(例えば、粉末または微結晶性物質)に対してX線照射を使用する、知られている技術である。粉末回折データは、通常、回折強度Iが散乱角2θの関数としてまたは散乱ベクトルqの関数として示されるディフラクトグラムとして提示される。同定は、知られている標準または国際回析データセンター(International Centre for Diffraction Data)の粉末回折ファイル(Powder Diffraction File)(PDF)もしくはケンブリッジ結晶構造データベース(Cambridge Structural Database)(CSD)などのデータベースとの回折パターンの比較により実施する。該技術のベースとなっている基礎物理学により、格子面間隔の測定において、一般にオングストローム単位のフラクションまでの高い精度および正確性がもたらされ、その結果、特定の物質、さらにはそれぞれが特徴的な回折パターンを示す同じ結晶化合物の別々の多形型でさえ、確実に同定することができる。各線の位置(格子間隔に相当する)および相対強度はいずれも特定の相および物質を示している。Shimadzu XRD−6000 X線回折計などのそのようなデータを測定するのに有用な機器は当技術分野において知られており、本発明の化合物を測定するのに任意のそのような機器を使用することができる。特定の実施形態において、XRD分析は、カッパアルファ(Kα)照射をもたらす銅(Cu)アノードを組み込んでいる装置を使用して実施することができる。したがって、本発明の特定の多形は、XRD分析で特にCu Kα照射を使用して得た代表的な図および/またはおおよそのX線粉末回折「d−間隔」ピーク(すなわち、2°θでの格子面間隔ピーク)との関連で同定および説明することができる。
【0049】
さらなる実施形態において、式(1)の化合物の個々の結晶形は、試料および対照の温度を増大させるのに必要な熱の量の差異を温度の関数として測定する示差走査熱量測定(DSC)により得られる特徴的な曲線により同定することができる。DSC分析の結果は、特に、温度変化に対する熱流束の曲線とすることができる。試料と対照の間の熱流量の差異を観察することにより、DSC分析は、相転移の間に吸収または放出される熱の量を測定することができ、ガラス転移などのより微妙な相変化を同定することもできる。DSCは、試料の純度の評価に適用可能であるため、工業的環境において品質管理装置として広く使用されている。PerkinElmer DSC 7示差走査熱量計などのそのようなデータを測定するのに有用な機器は当技術分野において知られており、本発明の化合物を測定するのに任意のそのような機器を使用することができる。特定の実施形態において、DSC分析は、特定の加熱速度で特定の温度範囲にわたって加熱することにより実施することができる。該分析は、密閉された金の皿などの試料ホルダーの観点からさらに説明することができる。したがって、本発明の特定の多形は、DSC分析で特に毎分約10℃の速度で加熱して得られる代表的な図および/またはおおよそのピークとの関連で同定および説明することができる。
【0050】
他の実施形態において、式(1)の化合物の個々の結晶形は、温度の関数としての重量を説明するのに使用することができる熱重量分析(TGA)により得られる特徴的な曲線により同定することができる。TGA分析は、重量、温度、および温度変化の測定における高程度の精度に依存する。その分析器は、通常、試料を載せた皿(一般に白金)を有する高精度の天秤からなる。熱電対を有する小さい伝熱炉に皿を入れて、温度を正確に測定する。その雰囲気を不活性ガスでパージして、酸化または他の望ましくない反応を防止することができる。分析は、温度を徐々に上昇させることおよび温度に対して重量をプロットすることにより実施する。Orton TG730などのそのようなデータを測定するのに有用な機器は当技術分野において知られており、本発明の化合物を測定するのに任意のそのような機器を使用することができる。特定の実施形態において、TGA分析は、特定の加熱速度で特定の温度範囲にわたって加熱することにより実施することができる。したがって、本発明の特定の多形は、TGA分析で特に毎分約10℃の速度で加熱して得られる代表的な図および/またはおおよそのピークとの関連で同定および説明することができる。
【0051】
さらなる実施形態において、式(1)の化合物の個々の結晶形は、試料を湿度および温度の様々な条件に曝し、試料の応答を重量測定により測定する動的蒸気収着(DVS)により得られる特徴的な曲線により同定することができる。DVS分析の結果は、特に、経時的な相対湿度(RH)の関数としての試料の重量パーセントを示す二重曲線、経時的なRHの関数としての試料の含水率を示す二重曲線、RHとの関連で重量パーセントを示す曲線、またはRHとの関連で含水率を示す曲線とすることができる。TA Instruments VTI−SA3などのそのようなデータを測定するのに有用な機器は当技術分野において知られており、本発明の化合物を測定するのに任意のそのような機器を使用することができる。特定の実施形態において、DVS分析は、一連の特定のRH値で走査することにより実施することができる。したがって、本発明の特定の多形は、DVS分析で特に毎時5%RHの変化で0%、50%、および95%RHで、ならびに0%および95%RHで5時間の保持時間で走査して得られる代表的な図および/またはおおよそのピークとの関連で同定および説明することができる。
【0052】
さらなる実施形態において、式(1)の化合物の個々の結晶形は、赤外(IR)スペクトル分析により得られる特徴的な曲線により同定することができる。PerkinElmerスペクトルBXフーリエ変換赤外(FTIR)分光計などのそのようなデータを測定するのに有用な機器は当技術分野において知られており、本発明の化合物を測定するのに任意のそのような機器を使用することができる。したがって、本発明の特定の多形は、FTIR分析で得られる代表的な図および/またはおおよそのピークとの関連で同定および説明することができる。
【0053】
本発明は、式(1)の化合物の水和物の形も提供する。特定の実施形態において、式(1)の化合物の水和物は、約10重量%〜約40重量%の水を含むことができる。他の実施形態において、式(1)の化合物の水和物は、約10重量%〜約35重量%、約10重量%〜約30重量%、約12重量%〜約28重量%、または約14重量%〜約28重量%の量で水を含むことができる。本発明の水和物の形は、約25℃の温度(±2℃)および約60%の相対湿度(±5%RH)で貯蔵すると安定であることが好ましい。好ましくは、そのような安定性は、水和物がさらに水をあまり吸収しないこと(例えば、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満の吸収)を特徴とすることができる。そのような安定性は、水和物が水をあまり失わないこと(例えば、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、または約1%以下の低下)をさらに特徴とすることができる。水和物は、上記の条件下で少なくとも約1カ月、少なくとも約2カ月、少なくとも約3カ月、少なくとも約6カ月、少なくとも約9カ月、または少なくとも約12カ月の貯蔵期間にわたって安定であることが好ましい。
【0054】
式(1)の化合物の個々の多形型は、適切な溶媒および抗溶媒の併用系を介して得ることができる。「溶媒」および「抗溶媒」という用語は、使用し得る物質の範囲を限定することを意図したものではなく、むしろ、使用する各物質間の関係を、それらが明確に正反対の性質を有するという点から説明するのに使用するものである。「溶媒」は、特に、極性溶媒と呼ぶことができる極性の液体とすることができる。「抗溶媒」は、特に、無極性溶媒と呼ぶことができる無極性の液体とすることができる。
【0055】
式(1)の化合物の試料は、任意の好適な極性溶媒(複数可)を使用して可溶化することができる。使用し得る極性溶媒の非限定的な例としては、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびそれらの組合せが挙げられる。当然のことながら、当業者が本開示に照らして認識できる他の極性溶媒も使用することができる。例えば、特定の実施形態において、好適な極性溶媒は、周囲条件(例えば、約18〜25℃および1atm)で液体であり、少なくとも約15の比誘電率を有する任意の物質とすることができる。特定の実施形態において、極性溶媒は、水と少なくとも1種のさらなる極性溶媒、特にアルコール、より具体的にはメタノールとの混合物とすることができる。
【0056】
式(1)の化合物の極性溶媒系溶液を抗溶媒と共に直接使用して、所望の多形型を単離することができる。一部の実施形態において、可溶化した式(1)の化合物を処理して化合物の純度を向上させることができる。例えば、ある量の活性炭を該溶液に添加して混合物を形成することができる。当然のことながら、溶液から不純物を除去するのに有用な任意のさらなる物質も使用することができる。純度向上剤(すなわち、活性炭)との混合物は、所望の多形型の単離に移る前に濾過することが好ましい。例えば、該混合物は、該溶液から活性炭または他の純度向上剤を除去するのに適したSEITZ(登録商標)K200フィルター、および/またはCELITE(登録商標)フィルターパッド(例えば、厚さ約5mm)、および/または任意のさらなる濾材を介して濾過することができる。次いで、回収した精製溶液は、続けて抗溶媒で処理することができる。
【0057】
式(1)の化合物の極性溶媒溶液は、そこに好適な無極性溶媒を添加することによりスラリー化することができる。使用し得る無極性溶媒の非限定的な例としては、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸エチル、ジオキサン、およびそれらの組合せが挙げられる。当然のことながら、当業者が本開示に照らして認識できる他の無極性溶媒も使用することができる。例えば、特定の実施形態において、好適な無極性溶媒は、周囲条件で液体であり、約15未満の比誘電率を有する任意の物質とすることができる。
【0058】
無極性溶媒の選択は、特に、回収する多形型に関連し得る。そのような特異性の例は本明細書において示している。上記のように形成されるスラリーを、好ましくは撹拌しながら、所定の期間放置して、固体の生成物を最大限に形成することができる。固体の生成物は、濾過および任意選択の洗浄により回収することができる。特定の実施形態において、濾過した生成物は、最初は極性溶媒と無極性溶媒との混合物で洗浄し、2回目は無極性溶媒単独で洗浄することができる。
【0059】
本明細書に添付の実施例は、様々な溶媒/抗溶媒系を評価して、安定な結晶塩の形成に有用な系を同定することができる試験を説明している。同定した式(1)の化合物の2種の特定の安定な結晶塩の多形型を以下に示している。
【0060】
A.I型多形
I型多形は、本明細書に記載の通りに調製することができ、その溶媒は水とメタノールとの混合物であり、抗溶媒はMEKまたはMIBKである。より具体的には、式(1)の化合物は、水とメタノールとの混合物中で可溶化することができ、得られた溶液はMEKまたはMIBK中でスラリー化することができる。スラリーは、最初に約40℃の温度まで加熱し、周囲温度まで冷却させることができる。I型多形は25℃(±2℃)および60%相対湿度(±5%RH)で安定であり、水をあまり吸収することはない。
【0061】
40kV/40mA Cuアノードを有するPANALYTICAL(登録商標)X’Pert回折計(PANALYTICAL B.V.、オランダ)を使用してI型のX線粉末回折パターンを得た。厚さ0.4mmの静止試料を使用し、KAPTON(登録商標)箔で覆った。0.02°のステップサイズおよび2.4秒のステップ時間で2〜50°シータの測定範囲を使用した。
【0062】
抗溶媒としてMEKを使用したI型のX線粉末回折パターンを図1に例示している。抗溶媒としてMiBKを使用したI型のX線粉末回折パターンを図2に例示している。それらから分かるように、形態IのXRDパターンは一貫した一連のメインピークを示しているが、I型は、該多形を単離するのに利用する抗溶媒に応じてわずかに変動することができる。したがって、本発明のI型多形は、2つの派生型、すなわち、Ia型多形(MEK抗溶媒)およびIb型多形(MIBK抗溶媒)を有すると説明することができる。
【0063】
Ia型多形は、図1に示しているディフラクトグラムを有し、水/メタノールを溶媒としておよびMEKを抗溶媒として使用して得られる。Ia型は、以下で表1に示しているおおよそのX線粉末回折「d−間隔」ピーク(すなわち、2°θでの格子面間隔ピーク)を特徴とすることができる。一部の実施形態において、以下に示している正確な格子面間隔ピークは、最大で0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、または0.2度の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0064】
【表1】
【0065】
Ib型多形は図2に示しているディフラクトグラムを有し、水/メタノールを溶媒としておよびMIBKを抗溶媒として使用して得られる。Ib型は、以下で表2に示しているおおよそのX線粉末回折「d−間隔」ピーク(すなわち、2°θでの格子面間隔ピーク)を特徴とすることができる。一部の実施形態において、以下に示している正確な格子面間隔ピークは、最大で0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、または0.2度の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0066】
【表2】
【0067】
I型は、示差走査熱量測定法(DSC)を使用して求めた約310℃の吸熱最大値を有することをさらに特徴とする。特に、結晶性固体は、この最大値よりも上で分解する。特定の実施形態において、Ib型多形は、PerkinElmer熱量計を使用し、試料を密閉された金の皿に入れ、毎分約10℃の速度で25℃から230℃まで加熱して得た、図3に示しているDSC曲線を特徴とすることができる。具体的には、Ib型のDSC曲線は、92.7℃、120.1℃、および125.9℃でピークを有することを特徴とすることができる。約93℃でのピークは水の損失を示した。理論に拘束されることを望むものではないが、約120℃でのピークは、この温度での小さな構造変化に起因すると考えられている。一部の実施形態において、上記の正確なDSC曲線ピークは、最大で0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5℃の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0068】
他の実施形態において、Ib型多形は、図4に示しているTGA曲線を特徴とすることができる。熱重量分析は、毎分約10℃の速度で加熱することにより室温から250℃の温度範囲にわたって加熱することにより実施した。
【0069】
さらなる実施形態において、Ib型多形は、図5から図8に示している様々なDVS曲線を特徴とすることができる。DVS分析は、相対湿度を5%RHの変化の速度で50%RH、0%RH、95%RH、0%RH、95%RH、および50%RHで変化させ、0%および95%RHで5時間保持しながら走査することにより実施した。
【0070】
さらなる実施形態において、Ib型多形は、PerkinElmerスペクトルBXフーリエ変換赤外(FTIR)分光計を使用して得た、図9に示しているIRスペクトルを特徴とすることができる。分析は、具体的には、Solvias SOP A.52,S255_01に従って実施した。Ib型は、以下で表3に示しているおおよそのFTIRピーク(cm−1)を特徴とすることができる。一部の実施形態において、正確なピーク値は、最大で0.01、0.05、0.1、0.5、1、または2cm−1の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0071】
【表3】
【0072】
B.II型多形
II型多形は、本明細書に記載の通りに調製することができ、その溶媒は水とメタノールとの混合物であり、抗溶媒はTHFである。より具体的には、式(1)の化合物は、水とメタノールとの混合物中で可溶化することができ、得られた溶液はTHF中でスラリー化することができる。スラリーは、最初に約40℃の温度まで加熱し、周囲温度まで冷却させることができる。II型多形は、25℃(±2℃)および60%相対湿度(±5%RH)で安定であり、水をあまり吸収することはない。
【0073】
II型のX線粉末回折パターンは、形態Iに関して上記したのと同じ機器を使用して得た。抗溶媒としてTHFを使用した形態IIのX線粉末回折パターンを図10に例示している。II型は、以下で表4に示しているおおよそのX線粉末回折「d−間隔」ピーク(すなわち、2°θでの格子面間隔ピーク)を特徴とすることができる。一部の実施形態において、以下に示している正確な格子面間隔ピークは、最大で0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、または0.2度の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0074】
【表4】
【0075】
II型は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して求めた約310℃の吸熱最大値を有することをさらに特徴とする。特に、結晶性固体は、この最大値よりも上で分解する。特定の実施形態において、II型多形は、I型に関して上記したのと同じ機器および試験条件を使用して得た、図11に示しているDSC曲線を特徴とすることができる。約68℃でのピークは緩く結合した水の放出を示し、一方、約95℃でのピークは密接に結合した水の放出を示した。約116℃でのピークは、この温度での小さな相転移に起因すると考えられている。一部の実施形態において、上記の正確なDSC曲線ピークは、最大で0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5℃の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0076】
他の実施形態において、II型多形は、図12に示しているTGA曲線を特徴とすることができる。熱重量分析は、毎分約10℃の速度で加熱することにより室温から250℃の温度範囲にわたって加熱することにより実施した。
【0077】
さらなる実施形態において、II型多形は、図13から図16に示している様々なDVS曲線を特徴とすることができる。DVS分析は、I型に関して上記した通りに実施した。
【0078】
さらなる実施形態において、Ib型多形は、I型に関して上記した通りに得た、図17に示しているIRスペクトルを特徴とすることができる。II型は、以下で表5に示しているおおよそのFTIRピーク(cm−1)を特徴とすることができる。一部の実施形態において、正確なピーク値は、最大で0.01、0.05、0.1、0.5、1、または2cm−1の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0079】
【表5】
【0080】
C.調製方法
抗葉酸化合物を合成する様々なプロセスが、全てを参照により本明細書に組み込む米国特許第4,996,207号、米国特許第5,550,128号、Abrahamら(1991)J.Med.Chem.34:222〜227、およびRosowskyら(1991)J.Med.Chem.34:203〜208で開示されている。式(1)の化合物の合成に対して特異的な方法は、その開示全体を参照により本明細書に組み込む2009年10月8日公開の米国特許出願公開第2009/0253719号で示されている。
【0081】
上で論じたように、一部の実施形態において、式(1)の化合物の純度を、該化合物の所望の多形型を形成する前に増大させることが有用となり得る。具体的には、式(1)の化合物は、不純物(例えば、式(1)の実際の化合物ではない任意の物質)を吸着および/または吸収するのに適した物質と組み合わせることができる。例えば、炭素処理を使用することができる。特定の実施形態において、出発化合物は、水とメタノールとの混合物などの好適な溶媒中で活性炭と混合することができる。次いで、該混合物は、SEITZ(登録商標)K200フィルターおよび/またはCELITE(登録商標)パッドなどを介して濾過することができる。濾過した溶液は、本発明の所望の多形の形成において直接使用することができる。当業者が本開示に照らして認識できる任意のさらなる物質(例えば、ゼオライト)も、式(1)の化合物から不純物を除去するのに有用な物質として本開示により包含される。
【0082】
所望の多形型の形成は、水および/またはメタノールなどの好適な極性溶媒中の式(1)の化合物の溶液を加熱するステップを含むことができる。加熱は、最大で少なくとも約30℃、好ましくは少なくとも約35℃、より好ましくは少なくとも約40℃の温度とすることができる。当然のことながら、加熱は、所望であれば、最大でさらに高い温度まで行うことができるが、記載した温度を超えて加熱する必要はない。
【0083】
所望の多形型を形成するのに使用する所望の抗溶媒は、加熱の間または所望の温度に達した後に添加することができる。所望の温度への加熱の間および/または後に撹拌(例えば、混合)を適用することも有用となり得る。加熱および抗溶媒の添加後、完全な混合物は、おおよそ周囲温度(例えば、約18℃〜約25℃)まで冷却することができる。冷却は、任意の外部の冷却手段を使用しない受動冷却などのように長時間にわたって実施することが好ましい。撹拌は、冷却の間継続することができる。一部の実施形態において、バルク溶液に所望の多形の結晶を播種することが有用となり得るが、これは必須ではない。冷却した混合物は本発明の所望の多形を含むはずであり、それは濾過などの従来の手段を介して単離することができる。
【0084】
III.医薬組成物
本発明により提供する式(1)の化合物の多形型を使用して医薬組成物を形成することができる。該組成物は、該多形型の医薬として許容されるプロドラッグおよび活性な代謝物も含み得る。さらに、本発明の組成物は、様々な手段により調製および送達することができる。該医薬組成物は、該多形を1種以上のその医薬として許容される担体、および場合により、他の治療成分と共に送達するように調製することができる。各担体は、該組成物の任意の他の成分と適合し、そのレシピエントにとって有害ではないという点で許容されるものでなければならない。担体は、また、薬剤の任意の望ましくない副作用を低減し得る。本発明において使用することができる担体の非限定的な例は、参照によりその全体を本明細書に組み込むWangら(1980)J.Parent.Drug Assn.34(6):452〜462に記載されている。
【0085】
本発明の医薬組成物は、式(1)の化合物の多形を、以下でさらに説明している治療有効量で含むことが好ましい。特定の実施形態において、該組成物中の該多形の量は、該組成物の総重量に対するものである。例えば、特定の実施形態において、該医薬組成物は、多形を約0.01mg/g〜約100mg/gの量で含む。さらなる実施形態において、該医薬組成物は、多形を約0.02mg/g〜約80mg/g、約0.05mg/g〜約75mg/g、約0.08mg/g〜約50mg/g、約0.1mg/g〜約30mg/g、約0.25mg/g〜約25mg/g、または約0.5mg/g〜約20mg/gの量で含む。薬物の量は、単位用量(例えば、単一のカプセルまたは錠剤中の薬物の量)を基準とすることもできる。
【0086】
本発明の組成物としては、本明細書に記載の多形の投与を達成する限り、短期の、迅速に発現する、迅速に消失する、制御放出性の、持続放出性の、遅延放出性の、およびパルス放出性組成物を挙げることができる。参照によりその全体を本明細書に組み込むRemington’s Pharmaceutical Sciences(第18版、Mack Publishing Company、Eaton、Pennsylvania、1990)を参照されたい。
【0087】
本発明の医薬組成物は、経口、(静脈内、筋肉内、皮下、皮内、関節内、滑液嚢内、髄腔内、動脈内、心臓内、皮下、眼窩内、嚢内、脊髄内、胸骨内、および経皮を含めた)非経口、(経皮、頬側、および舌下を含めた)局所、肺、膣、尿道、および直腸投与を含めた様々な送達の様式に適している。投与は、鼻内噴霧、外科移植、手術用の内部ペイント、輸液ポンプを介する、またはカテーテル、ステント、気球もしくは他の送達装置を介することもできる。最も有用および/または有益な投与の様式は、特にレシピエントおよび治療される障害の状態に応じて変えることができる。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、以下でより十分に説明している経口剤形で提供する。
【0088】
該医薬組成物は、好都合なことに、単位剤形で利用可能にすることができ、それにより、そのような組成物は、医薬分野において一般に知られている方法のいずれかにより調製することができる。一般に言えば、そのような調製方法は、(様々な方法により)本発明の活性化合物を、1種以上の成分からなることができる好適な担体または他のアジュバントと組み合わせるステップを含む。次いで、活性成分と1種以上のアジュバントとの組合せを物理的に処理して、送達に適した形で組成物を提示する(例えば、成形して錠剤にする、または水性懸濁液を形成する)。
【0089】
経口投薬に適した本発明の医薬組成物は、それぞれが所定の量の活性薬剤を含有する、(速溶性または発泡性のものを含めた)錠剤、カプセル、カプレット、およびオブラートなどの様々な形をとることができる。該組成物は、粉末または顆粒、水性または非水性液体中の溶液または懸濁液の形、および液体エマルジョン(水中油および油中水)とすることもできる。活性薬剤は、巨丸剤、舐剤、またはペーストとして送達することもできる。上記剤形の調製方法は一般に当技術分野において知られており、任意のそのような方法が本発明の組成物の送達において使用するためのそれぞれの剤形の調製に好適であろうことは一般に理解される。
【0090】
一実施形態において、化合物は、不活性希釈剤または食用担体などの医薬として許容されるビヒクルと組み合わせて経口投与することができる。経口組成物は、硬または軟殻ゼラチンカプセル中に封入してもよく、圧縮して錠剤にしてもよく、または患者の食事の食物に直接組み込んでもよい。該組成物および調製物の割合は変化させ得るが、そのような治療上有用な組成物中の物質の量は、有効な投薬レベルが得られるような量であることが好ましい。
【0091】
該化合物を含有する硬カプセルは、ゼラチンなどの生理的に分解可能な組成物を使用して作製することができる。そのような硬カプセルは該化合物を含み、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンなどの不活性な固体希釈剤を含めた追加の成分をさらに含み得る。該化合物を含有する軟ゼラチンカプセルは、ゼラチンなどの生理的に分解可能な組成物を使用して作製することができる。そのような軟カプセルは該化合物を含み、該化合物は、水または落花生油、液体パラフィン、またはオリーブ油などの油媒体と混合してもよい。
【0092】
舌下錠剤は、非常に迅速に溶解するように考案されている。そのような組成物の例としては、酒石酸エルゴタミン、硝酸イソソルビド、およびイソプロテレノールHCLが挙げられる。これらの錠剤の組成物は、薬物に加えて、ラクトース、粉末状スクロース、デキストロース、およびマンニトールなどの様々な可溶性の医薬品添加物を含有する。本発明の固体剤形は、場合によりコーティングしてもよく、好適なコーティング物質の例としては、セルロースポリマー(セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートなど)、ポリビニルアセテートフタレート、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、ならびにメタクリル樹脂(EUDRAGIT(登録商標)という商品名で市販されているものなど)、ゼイン、セラック、および多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
本発明の医薬調製物の粉末状および顆粒状組成物は、知られている方法を使用して調製することができる。そのような組成物は、患者に直接投与するか、またはさらなる剤形の調製(錠剤を形成する、カプセルを充填する、またはそこに水性もしくは油状ビヒクルを添加することにより水性もしくは油状の懸濁液もしくは溶液を調製することなど)において使用することができる。これらの組成物のそれぞれは、分散または湿潤剤、懸濁剤、および保存剤などの1種または複数の添加剤をさらに含み得る。追加の医薬品添加物(例えば、賦形剤、甘味料、香味物質、または着色剤)もこれらの組成物中に含むことができる。
【0094】
経口投与に適した本発明の医薬組成物の液体組成物は、液体の形または使用前に水もしくは別の好適なビヒクルで戻すことを意図した乾燥製品の形で調製、包装、および販売することができる。
【0095】
本発明の1種以上の化合物を含有する錠剤は、例えば、圧縮または成形などにより、場合により1種以上のアジュバントまたは補助成分と共に、当業者に容易に知られている任意の標準的プロセスにより製造することができる。各錠剤は、場合によりコーティングまたは割線を入れてもよく、活性薬剤の緩徐または制御された放出を実現するように製剤化してもよい。
【0096】
上で論じたものに加えて、本発明の組成物において使用するためのアジュバントまたは補助成分は、結合剤、賦形剤、潤滑剤、崩壊剤、希釈剤、界面活性剤、安定剤、保存剤、香味物質および着色剤などの、一般に当技術分野において許容されると考えられる任意の医薬成分を包含することができる。結合剤は、一般に、錠剤の結合力を促進し、錠剤が圧縮後に確実に無傷なままとなるようにするのに使用される。好適な結合剤としては、デンプン、多糖類、ゼラチン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ワックス、ならびに天然および合成ガムが挙げられるが、これらに限定されない。許容される賦形剤としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末状セルロース、および微結晶性セルロース、ならびに、マンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールなどの可溶性の物質が挙げられる。潤滑剤は、錠剤の製造を容易にするのに有用であり、植物油、グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸が挙げられる。錠剤の崩壊を容易にするのに有用な崩壊剤としては、一般に、デンプン、粘土、セルロース、アルギン、ガム、および架橋ポリマーが挙げられる。一般に錠剤に嵩を増すために含まれる希釈剤としては、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、および粉糖を挙げることができる。本発明の組成物における使用に適した界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性、または非イオン性界面活性剤とすることができる。安定剤を該組成物中に含んで、酸化反応などの活性薬剤の分解につながる反応を阻害または軽減することができる。
【0097】
固体剤形は、コーティングの適用などにより、活性薬剤の遅延放出を実現するように製剤化することができる。遅延放出コーティングは当技術分野において知られており、そのようなものを含有する剤形は、任意の知られている好適な方法により調製することができる。そのような方法は、一般に、固体剤形(例えば、錠剤またはカプレット)の調製後に、遅延放出コーティング組成物の適用を含む。適用は、無気噴霧、流動床コーティング、コーティングパンの使用などの方法により実施することができる。遅延放出コーティングとして使用するための物質は、セルロース系の物質(例えば、セルロースブチレートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびカルボキシメチルエチルセルロース)、ならびにアクリル酸、メタクリル酸、およびそれらのエステルのポリマーおよびコポリマーなどのポリマー状の性質のものとすることができる。
【0098】
本発明の固体剤形は、持続放出性(すなわち、長期間にわたって活性薬剤を放出する)とすることもでき、また、遅延放出性であってもなくてもよい。持続放出性組成物は当技術分野において知られており、一般に、不溶性プラスチック、親水性ポリマー、または脂肪族化合物などの徐々に分解または加水分解できる物質の基質内に薬物を分散させることにより調製される。あるいは、固体剤形は、そのような物質でコーティングしてもよい。
【0099】
特定の実施形態において、本明細書に開示の化合物および組成物は、医療器具を介して送達することができる。そのような送達は、一般に、これらに限定されないが、ステント、カテーテル、気球カテーテル、シャント、またはコイルを含めた任意の挿入可能または移植可能な医療器具を介して実施することができる。一実施形態において、本発明は、その表面が本明細書に記載の化合物または組成物でコーティングされたステントなどの医療器具を提供する。本発明の医療器具は、例えば、本明細書に開示のものなどの疾患または状態を治療、防止するか、またはそれらの経過に影響を及ぼすための任意の用途において使用することができる。
【0100】
本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、間欠的に投与することができる。治療有効用量の投与は、例えば持続放出性組成物のように継続的に達成するか、または、例えば、1日あたり1回、2回、3回、もしくはそれ以上の投与のような所望の連日投薬量レジメンに従って達成することができる。「中断の期間」とは、組成物の継続的な持続放出または連日投与の中断を意図したものである。中断の期間は、継続的な持続放出または連日投与の期間より長くても短くてもよい。中断の期間の間、関連する組織中での組成物の成分のレベルは、実質的に、治療の間に得られる最大レベル未満である。中断期間の好ましい長さは、使用する組成物の有効用量の濃度および形態次第である。中断期間は、少なくとも2日間、少なくとも4日間または少なくとも1週間とすることができる。他の実施形態において、中断の期間は、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月またはそれ以上である。持続放出性組成物を使用する場合、中断期間は、体内における組成物のより長い滞留時間を考慮に入れるために、延長しなければならない。あるいは、有効用量の持続放出性組成物の投与の頻度は、したがって減少させることができる。本発明の組成物の投与の間欠スケジュールは、所望の治療効果、最終的には疾患または障害の治療が達成されるまで継続することができる。
【0101】
本発明の医薬組成物は、単一の本明細書に記載の多形を含むか、2種以上の本明細書に記載の多形を含むか、または1種以上の本明細書に記載の多形を1種以上のさらなる医薬として活性な化合物と共に含むことができる(すなわち、同時投与)。したがって、本発明の組成物中の医薬として活性な化合物は、固定の組合せで投与することができると認識されている(すなわち、両方の活性物質を含有する単一の医薬組成物)。あるいは、医薬として活性な化合物は、同時に投与することができる(すなわち、同時に投与する別個の組成物)。別の実施形態において、医薬として活性な化合物を順次投与する(すなわち、1種以上の医薬として活性な化合物の投与に続き、1種以上の医薬として活性な化合物を別個に投与する)。当業者であれば、最も好ましい投与の方法により所望の治療効果が得られることが認識されよう。
【0102】
治療有効量の本発明の組成物の送達は、治療有効用量の該組成物の投与を介して実現することができる。したがって、一実施形態において、治療有効量は、異常な細胞増殖を治療するのに有効な量である。別の実施形態において、治療有効量は、炎症を治療するのに有効な量である。さらに別の実施形態において、治療有効量は、関節炎を治療するのに有効な量である。さらに別の実施形態において、治療有効量は、喘息を治療するのに有効な量である。
【0103】
活性化合物は、患者に治療量の本発明の化合物を、重篤な毒性作用なしで、in vivoで送達するのに十分な量で医薬組成物中に含まれる。薬物組成物中の活性化合物の濃度は、薬物の吸収、失活、および排出速度ならびに当業者に知られている他の因子次第である。投薬量が、また、軽減されるべき状態の重症度と共に変動することに留意されたい。任意の特定の対象について、個々の必要性および投与する人物または組成物の投与を監督する人物の専門的な判断に従って、時間とともに特定の投薬量レジメンを調整すべきであり、本明細書に記載の投薬範囲は単に例示的なものであり、特許請求している組成物の範囲または実施を限定することを意図したものではないことをさらに理解されたい。活性成分は、一度に投与してもよく、または様々な時間間隔で投与される多数のより小さい用量に分割してもよい。
【0104】
本発明の治療有効量は、レシピエントの体重に基づいて決定することができる。例えば、一実施形態において、本発明の1種または複数の化合物の治療有効量は、1日あたり体重の約0.1μg/kg〜体重の約5mg/kgの範囲である。あるいは、治療有効量は、固定用量の観点から記述することができる。したがって、別の実施形態において、本発明の1種または複数の化合物の治療有効量は、1日あたり約0.01mg〜約500mgの範囲である。当然のことながら、そのような量は、1日を通して投与される多数のより小さい投薬量に分割できることが理解される。
【0105】
本明細書に記載の1種以上の化合物を含む本発明の組成物は、治療有効量で哺乳動物、好ましくはヒトに投与することを企図したものである。本明細書に記載の状態または疾患のいずれかの治療用の化合物または組成物の有効用量は、従来の技術の使用により、および類似の環境下で得られる結果を観察することにより容易に決定することができる。組成物の有効量は、対象の体重、性別、年齢、および病歴に応じて変動すると予期される。当然のことながら、これらに限定されないが、関与している特定の疾患、関与の程度または疾患の重症度、個々の患者の応答、投与される特定の化合物、投与の様式、投与される調製物のバイオアベイラビリティー特性、選択される用量レジメン、および併用薬の使用を含めた他の因子も、送達されるべき組成物の有効量に影響を及ぼし得る。該化合物は、治療される状態に関連する望ましくない症状および臨床徴候を軽減するのに十分な期間、優先的に投与される。効力および投薬量を求める方法は当業者に知られている。例えば、参照により本明細書に組み込むIsselbacherら(1996)Harrison’s Principles of Internal Medicine 第13版、1814〜1882を参照されたい。
【0106】
IV.活性薬剤の組合せ
様々な疾患または状態の治療において使用するために、本発明の医薬組成物は、様々な組合せで上記の多形を含むことができる。例えば、一実施形態において、本発明の医薬組成物は、単一の式(1)の化合物の多形を含むことができる。別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、2種以上の式(1)の化合物の多形を含むことができる。さらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、1種以上の式(1)の化合物の多形を、治療特性を有すると認識されている1種以上のさらなる化合物と共に含むことができる。例えば、本明細書に記載の医薬組成物は、1種以上の毒性を低下させる化合物(例えば、葉酸またはロイコボリン)と共に投与することができる。さらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、抗炎症剤、抗関節炎剤、抗生物質、抗真菌剤、または抗ウイルス剤であることが知られている1種以上の化合物と共に投与することができる。そのようなさらなる化合物は、該医薬組成物の成分として提供するか、または本発明の組成物と交互に提供することができる。換言すると、本発明の医薬組成物を式(1)の化合物の多形と同じ組成物中の追加の活性薬剤(複数可)と共に投与するか、または追加の活性薬剤(複数可)を本発明の医薬組成物とは別の送達形態で投与することができる。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、以下に記載の群から選択される1種以上の化合物と組み合わせて提供することができる。
【0107】
以下の記述において、上で開示している多形を有する本発明の医薬組成物中のさらなる活性薬剤として有用な特定の化合物は、一般に記載した化合物を使用して治療される特定の疾患または状態に関連して説明することができる。そのような疾患または状態の開示は、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、特に、本明細書に開示の医薬組成物を使用して治療することができる疾患または状態を限定するものではない。むしろ、そのような例示的な疾患または状態は、一般に追加の化合物を使用して治療される疾患および状態のタイプを例示するためだけに示すものである。
【0108】
追加の活性薬剤として、本発明の医薬組成物は、特定の実施形態において、抗増殖剤と共に投与することができる。増殖性障害は、現在、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然物、酵素、生物学的応答調節剤、種々の薬剤、放射性医薬品(例えば、ホルモンまたは抗体を標識とするY−90)、ホルモンおよび拮抗薬を含めた様々なクラスの化合物により治療されている。以下に列挙している抗増殖剤のいずれか、または、例えば、DeVita,V.T.,Jr.、Hellmann,S.、Rosenberg,S.A.;Cancer:Principles&Practice of Oncology、第5版、Lippincott−Raven Publishers(1997)に記載されている他の任意のそのような治療剤および成分は、本発明の医薬組成物と共に使用することができる。
【0109】
本発明の医薬組成物と共に使用するのに適した血管新生抑制剤の代表的な非限定的な例としては、レチノイド酸およびその誘導体、2−メトキシエストラジオール、ANGIOSTATIN(商標)タンパク質、ENDOSTATIN(商標)タンパク質、スラミン、スクアラミン、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤−I、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤−2、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−2、軟骨由来の阻害剤、パクリタキセル、血小板第4因子、硫酸プロタミン(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(ズワイガニの甲羅から調製される)、硫酸化多糖類ペプチドグリカン複合体(sp−pg)、スタウロスポリン、(例えば、プロリン類似体(1−アゼチジン−2−カルボン酸(LACA)、cis−ヒドロキシプロリン)、d,l−3,4−デヒドロプロリン、チアプロリン、アルファ、アルファ−ジピリジル、ベータ−アミノプロピオニトリルフマレート、4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3h)−オキサゾロンを含めた)基質代謝の調節剤、メトトレキセート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2マクログロブリン−血清、chimp−3、キモスタチン、ベータ−シクロデキストリンテトラデカスルフェート、エポネマイシン、フマギリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、d−ペニシラミン(CDPT)、ベータ−1−アンチコラゲナーゼ−血清、アルファ−2−抗プラスミン剤、ビサントレン、ロベンザリット二ナトリウム、n−(2−カルボキシフェニル−4−クロロアントロニル酸二ナトリウムまたは「CCA」、サリドマイド、血管新生抑制ステロイド、カルボキシアミノイミダゾール、およびBB94などのメタロプロテイナーゼ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の血管新生抑制剤としては、これらの血管新生成長因子:bFGF、aFGF、FGF−5、VEGFアイソフォーム、VEGF−C、HGF/SFおよびAng−1/Ang−2に対する抗体、好ましくは単クローン抗体が挙げられる。Ferrara N.およびAlitalo、K.「Clinical application of angiogenic growth factors and their inhibitors」(1999)Nature Medicine 5:1359〜1364。
【0110】
本発明の医薬組成物と共に使用するのに適したアルキル化剤の代表的な非限定的な例としては、メクロレタミン(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、シクロホスファミド、イホスファミド(急性および慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳房、卵巣、肺、ウィルムス腫瘍、子宮頸部、精巣、軟部組織肉腫)、メルファラン(L−サルコリシン)(多発性骨髄腫、乳房、卵巣)、クロラムブシル(慢性リンパ性白血病、原発性マクログロブリン血症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)などのナイトロゲンマスタード、ヘキサメチルメラミン(卵巣)、チオテパ(膀胱、乳房、卵巣)などのエチレンイミンおよびメチルメラミン、ブスルファン(慢性顆粒球白血病)などのアルキルスルホネート、カルムスチン(BCNU)(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、原発性脳腫瘍、多発性骨髄腫、悪性黒色腫)、ロムスチン(CCNU)(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、原発性脳腫瘍、小細胞肺)、セムスチン(メチル−CCNU)(原発性脳腫瘍、胃、結腸)、ストレプトゾシン(STR)(悪性膵島細胞腫瘍、悪性カルチノイド)などのニトロソ尿素、ならびにダカルバジン(DTIC−ジメチルトリアゼノイミダゾール−カルボキサミド)(悪性黒色腫、ホジキン病、軟部組織肉腫)などのトリアゼンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
本発明の医薬組成物と共に使用するのに適した代謝拮抗剤の代表的な非限定的な例としては、メトトレキセート(アメトプテリン)(急性リンパ性白血病、絨毛癌、菌状息肉症、乳房、頭頸部、肺、骨肉腫)などの葉酸類似体、フルオロウラシル(5−フルオロウラシル−5−FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン−FUdR)(乳房、結腸、胃、膵臓、卵巣、頭頸部、膀胱、前癌性皮膚病変)(局所)、シタラビン(シトシンアラビノシド)(急性顆粒球および急性リンパ性白血病)などのピリミジン類似体、メルカプトプリン(6−メルカプトプリン−6−MP)(急性リンパ性、急性顆粒球および慢性顆粒球白血病)、チオグアニン(6−チオグアニン−TG)(急性顆粒球、急性リンパ性および慢性顆粒球白血病)、ペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン)(毛様細胞白血病、菌状息肉症、慢性リンパ性白血病)などのプリン類似体および関連する阻害剤、ビンブラスチン(VLB)(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、乳房、精巣)、ビンクリスチン(急性リンパ性白血病、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺)などのビンカアルカロイド、エトポシド(精巣、小細胞肺および他の肺、乳房、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性顆粒球白血病、カポジ肉腫)、およびテニポシド(精巣、小細胞肺および他の肺、乳房、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性顆粒球白血病、カポジ肉腫)などのエピポドフィロトキシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
本発明の医薬組成物と共に使用するのに適した細胞毒性剤の代表的な非限定的な例としては、ドキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、リン酸エストラムスチンナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、遺伝子組換えインターフェロンアルファ−2a、パクリタキセル、テニポシド、およびストレプトゾシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
本発明の医薬組成物と共に使用するのに適した天然物の代表的な非限定的な例としては、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)(絨毛癌、ウィルムス腫瘍横紋筋肉腫、精巣、カポジ肉腫)、ダウノルビシン(ダウノマイシン−ルビドマイシン)(急性顆粒球および急性リンパ性白血病)、ドキソルビシン(軟部組織、骨原性、および他の肉腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性白血病、乳房、泌尿生殖器、甲状腺、肺、胃、神経芽細胞腫)、ブレオマイシン(精巣、頭頸部、皮膚、食道、肺、および泌尿生殖器、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、プリカマイシン(ミトラマイシン)(精巣、悪性高カルシウム血症)、マイトマイシン(マイトマイシンC)(胃、子宮頸部、結腸、乳房、膵臓、膀胱、頭頸部)などの抗生物質、L−アスパラギナーゼ(急性リンパ性白血病)などの酵素、および、インターフェロン−アルファ(毛様細胞白血病、カポジ肉腫、黒色腫、カルチノイド、腎細胞、卵巣、膀胱、非ホジキンリンパ腫、菌状息肉症、多発性骨髄腫、慢性顆粒球白血病)などの生物学的応答調節剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
本明細書に開示の医薬組成物と共に使用することができる追加の薬剤としては、シスプラチン(cis−DDP)、カルボプラチン(精巣、卵巣、膀胱、頭頸部、肺、甲状腺、子宮頸部、子宮内膜、神経芽細胞腫、骨肉腫)などの白金配位錯体;ミトキサントロン(急性顆粒球白血病、乳房)などのアントラセンジオン;ヒドロキシ尿素(慢性顆粒球白血病、真性多血症、本態性血小板増加症、悪性黒色腫)などの置換尿素;プロカルバジン(N−メチルヒドラジン、MIH)(ホジキン病)などのメチルヒドラジン誘導体;ミトタン(o,p’−DDD)(副腎皮質)、アミノグルテチミド(乳房)などの副腎皮質抑制剤;プレドニゾン(急性および慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、乳房)などの副腎皮質ステロイド;カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール(子宮内膜、乳房)などのプロゲスチン;ならびにリン酸ベタメタゾンナトリウムおよび酢酸ベタメタゾンなどのステロイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
本発明の医薬組成物と共に使用するのに適したホルモンおよび拮抗薬の代表的な非限定的な例としては、エストロゲン:ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール(乳房、前立腺);抗エストロゲン剤:タモキシフェン(乳房);アンドロゲン:プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン(乳房);抗アンドロゲン剤:フルタミド(前立腺);ゴナドトロピン放出ホルモン類似体:およびロイプロリド(前立腺)が挙げられるが、これらに限定されない。他のホルモンとしては、酢酸メドロキシプロゲステロン、エストラジオール、酢酸メゲストロール、酢酸オクトレオチド、二リン酸ジエチルスチルベストロール、テストラクトン、および酢酸ゴセレリンが挙げられる。
【0116】
本発明の医薬組成物は、関節炎を治療するのに使用される治療剤と共に使用することができる。そのような薬剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、アスピリン(アセチルサリチル酸)、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、およびアセトアミノフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);
アセトアミノフェン、オピオイド鎮痛薬、および経皮フェンタニルなどの鎮痛薬;
エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、アナキンラ、アバタセプト、トリウキシマブ、セルトリズマブペゴール、およびトシリズマブなどの生物学的応答調節剤;
グルココルチコイド(GC)、フルチカゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、アドレナリン、アルドステロン、酢酸コルチゾン、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、プロシノニド、リメキソロン、およびスプラレナールコルテックス(Suprarenal Cortex)などのコルチコステロイドまたはステロイド;
ヒドロキシクロロキン、シクロホスファミド、クロラムブシル、金化合物オーラノフィン、スルファサラジン、ミノサイクリン、シクロスポリン、トール様受容体作動薬および拮抗薬、キナーゼ阻害剤(例えば、p38 MAPK)、免疫抑制剤および腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤(例えば、エタネルセプト、インフリキシマブ、およびアダリムマブ)などの疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD);
アミトリプチリン、フルオキセチン、シクロベンザプリン、トラマドール、ガバペンチン、プレガバリン、および二重再取込み阻害剤などの線維筋痛治療薬;
エストロゲン、副甲状腺ホルモン、ビスホスホネート、選択的な受容体分子、および骨形成剤などの骨粗鬆症治療薬;
アロプリノール、プロベネシド、ロサルタン、およびフェノフィブレートなどの痛風治療薬;
アシトレチンなどの乾癬治療薬;ならびに
局所NSAIDsおよびカプサイシンなどの局所治療。
【0117】
本発明の医薬組成物は、また、喘息を治療するのに使用される治療剤と共に使用することができる。そのような薬剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
クロモリンナトリウムおよびフマル酸ケトチフェンなどの抗アレルギー剤;
NSAIDsおよびステロイド系抗炎症剤(例えば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニド)などの抗炎症剤;
臭化イプラトロピウム、ベラドンナアルカロイド、アトロピン、および臭化オキシトロピウムなどの抗コリン作用剤;
クロルフェニラミン、ブロムフェニラミン、ジフェンヒドラミン、クレマスチン、ジメンヒドリネート、セチリジン、ヒドロキシジン、メクリジン、フェキソフェナジン、ロラタジン、およびエナジンなどの抗ヒスタミン剤;
アルブタモール、テルブタリン、エピネフリン、メタプロテレノール、臭化イプラトロピウム、麻黄(アルカロイドの源)、エフェドリン、およびプソイドエフェドリンなどのβ2−アドレナリン作動薬(ベータ作動薬);
ザフィルルカストおよびジロイトン、モンテルカストなどのロイコトリエン受容体拮抗薬;
テオフィリン、ジフィリン、およびオクストリフィリンなどのキサンチン(気管支拡張剤);
キサンチン、メチルキサンチン、オキシトリフィリン、アミノフィリンなどの種々の喘息治療剤、ザルダベリンなどのホスホジエステラーゼ阻害剤、ニフェジピンなどのカルシウム拮抗薬、およびクロマカリムなどのカリウム活性化剤;ならびに
クロモグリク酸ナトリウム、クロモリンナトリウム、ネドクロミル、およびケトチフェンなどの予防薬剤(複数可)。
【0118】
さらに、本発明の医薬組成物と共に使用することができる活性薬剤の非限定的な例としては、乾癬治療剤、炎症性腸疾患治療(IBD治療)剤、慢性閉塞性肺疾患治療(COPD治療)剤、多発性硬化治療剤が挙げられる。
【0119】
特定の実施形態において、本発明の多形は、メトトレキセートと組み合わせることができる。具体的には、該化合物は、同じ剤形中で一緒に提供する、または併用療法において一緒に使用することを意図した別個の剤形中で提供する(例えば、第1のスケジュールで多形を投与し、第2のスケジュールでメトトレキセートを投与する)といった組合せで投与することができる。2つのスケジュールは、特に、重なってもよい。
【0120】
V.製品
本発明は、1種以上の式(1)の化合物の多形を、場合により1種以上のさらなる活性薬剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する製品も含む。該製品は、乾燥または液体の形で、本発明の使用に適した組成物を任意の担体と共に含有するバイアルまたは他の容器を含むことができる。特に、該製品は、本発明の組成物を有する容器を含むキットを含むことができる。そのようなキットにおいて、該組成物は、様々な組合せで送達することができる。例えば、該組成物は、全ての活性成分を含む単一の投薬量を含むことができる。交互に、2種以上の活性成分を提供する場合、該組成物は、それぞれが1種以上の活性成分を含む多数の投薬量を含むことができ、各投薬量は、組み合わせて、連続して、または他の非常に近接した時間で投与することを意図したものである。例えば、各投薬量は、それぞれが単一の活性成分を含むが、組み合わせて投与するためにブリスターパック、バッグなどで提供される、固体(例えば、錠剤、カプレット、カプセルなど)または液体(例えば、バイアル)とすることができる。特定の実施形態において、第1の活性成分(例えば、本発明の多形)を有する剤形は連日投与用に提供することができ、第2の活性成分(例えば、メトトレキセートまたは別の化合物)を有する剤形は毎週投与用に提供することができる。
【0121】
該製品は、本発明の方法の実施に関する、容器のラベルの形態の、および/または容器が包装されている箱に含まれる挿入物の形態の説明書をさらに含むことができる。説明書は、バイアルが包装されている箱に印刷することもできる。説明書には、対象または当該分野の従事者が医薬組成物を投与することを可能にするための十分な投薬量などの情報および投与情報が含有される。当該分野の従事者には、該組成物を投与し得る任意の医師、看護師、技術者、配偶者、または他の介護者が包含されることが予期される。医薬組成物は、対象が自己投与することもできる。
【0122】
VI.治療方法
開示している式(1)の化合物の多形は、ホレート代謝の妨害が状態の症状または状態を治療するのに一般に有益な様々な状態の治療において有用であり得る。したがって、さらなる実施形態において、本発明は、様々な疾患または状態を治療する方法を対象としている。特定の実施形態において、本発明は、ホレート代謝の妨害により治療可能であることが知られているまたは分かっている疾患または状態を治療する方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、異常な細胞増殖、(炎症性腸疾患を含めた)炎症、関節炎(特にリウマチ様関節炎)、乾癬、および喘息などの状態を治療する方法を提供する。
【0123】
A.異常な細胞増殖
異常な細胞増殖は、健康への重篤な脅威をもたらす癌および非癌障害を含めた多くの疾患および状態の原因であることが示されてきた。一般に、腫瘍などにおける異常な細胞成長は、正常な細胞成長を上回り、それと同調しない。さらに、腫瘍細胞の異常な成長は、一般に、最初に細胞成長の異常性を引き起こした刺激の停止後に異常な(すなわち、過剰な)様式のままであり続ける。良性腫瘍は、それらの分化した特徴を保持し、完全に制御されない様式で分割しない細胞を特徴とする。良性腫瘍は、通常、限局性および非転移性である。悪性腫瘍(すなわち、癌)は、未分化であり、身体の成長制御シグナルに応答せず、制御されない様式で増殖する細胞を特徴とする。悪性腫瘍は侵襲性であり、転移することができる。
【0124】
異常な細胞増殖の疾患または状態の治療は、(腫瘍または癌性成長を含めた)異常増殖細胞の死滅、それらの体または集団の成長またはサイズの増大の阻害、または緩徐化、異常増殖細胞の集団の細胞数の低減、あるいは異常増殖細胞の他の解剖部分への拡散の防止、ならびに異常増殖細胞の成長のサイズの低減の方法を含む。「治療」という用語は、必ずしも異常な細胞増殖の障害の治癒または完全な消滅を意味するものではない。異常な細胞増殖の防止は、異常な細胞増殖の障害の発生率または発症の可能性を、治療を行わない場合と比較して緩徐化、遅延、制御、または減少する方法を含む。
【0125】
異常な細胞増殖、特に過剰増殖は、遺伝子組換え、感染、毒素への曝露、自己免疫障害、および良性または悪性腫瘍誘発を含めた多種多様な因子が原因で発生する恐れがある。過剰増殖性細胞障害としては、皮膚障害、血管障害、心血管障害、線維性障害、メサンギウム障害、自己免疫障害、移植片対宿主拒絶反応、腫瘍、および癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
本発明を使用して治療することができる代表的な非限定的なタイプの非新生物性の異常細胞増殖障害としては、乾癬、湿疹、角化症、基底細胞癌、および扁平上皮癌などの皮膚障害;高血圧症および血管閉塞性疾患(例えば、アテローム性硬化症、血栓症および再狭窄)などの心血管系の障害;脈管形成(形成)などの血管増殖性障害および血管新生などの血管の異常な増殖をもたらす血管新生(拡張)障害;ならびに肥満および糖尿病(1&2型)を含めたインスリン抵抗性状態などの内分泌系に関連する障害が挙げられる。
【0127】
本発明の組成物および方法は、非新生物性の異常な細胞増殖に関連する炎症性疾患を治療するのにも有用である。これらの例としては、炎症性腸疾患(IBD)、リウマチ様関節炎(RA)、多発性硬化症(MS)、増殖性糸球体腎炎、紅斑性狼瘡、強皮症、側頭動脈炎、閉塞性血栓血管炎、皮膚粘膜リンパ節症候群、喘息、宿主対移植片、甲状腺炎、グレーブス病、抗原誘発性気道過敏症、肺好酸球増多症、ギランバレー症候群、アレルギー性鼻炎、重症筋無力症、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型関連脊髄症、単純ヘルペス脳炎、炎症性筋疾患、アテローム性硬化症、およびグッドパスチャー症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
特定の実施形態において、本発明の多形は、乾癬の治療において有用である。乾癬は、皮膚で発生する抗原提示細胞(APC)による慢性T−細胞刺激を特徴とする免疫介在性皮膚障害である。様々なタイプの乾癬としては、例えば、プラーク乾癬(すなわち、尋常性乾癬)、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬、乾癬性紅皮症、乾癬性関節炎、頭皮乾癬および爪乾癬が挙げられる。乾癬の一般的な全身治療としては、メトトレキセート、シクロスポリンおよび経口レチノイドが挙げられるが、それらの使用は毒性により限定される。乾癬の患者の最大で40%は、乾癬性関節炎にもかかっている(Kormeili Tら Br J Dermatol.(2004)151(1):3〜15。
【0129】
さらなる実施形態において、本発明の多形は、血管の異常な増殖をもたらす脈管形成(形成)および血管新生(拡張)障害を含めた血管増殖性障害の治療において有用である。他の血管増殖性障害としては、関節炎および糖尿病性網膜症などの眼疾患が挙げられる。異常な血管新生は、また、固形腫瘍に関連する。特定の実施形態において、本発明の組成物は、制御されない血管新生に関連する疾患の治療において有用である。異常な血管新生の代表的な非限定的な疾患としては、リウマチ様関節炎、虚血性再灌流関連の脳水腫および損傷、皮質虚血、卵巣過形成および過剰血管形成、(多嚢胞性卵巣症候群)、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症、および未熟児網膜症(水晶体後線維増殖症)、黄斑変性症、角膜移植片拒絶反応、血管新生緑内障などの他の眼の血管新生疾患およびオスラー・ウェーバー症候群が挙げられる。異常な血球増殖に関連する癌としては、血管内皮腫、血管腫、およびカポジ肉腫が挙げられる。
【0130】
さらなる実施形態において、本発明の多形は、異常な細胞増殖を伴う心血管系の障害の治療において有用である。そのような障害としては、例えば、高血圧症、血管閉塞性疾患(例えば、アテローム性硬化症、血栓症、および血管形成後の再狭窄)、急性冠動脈症候群(不安定狭心症、心筋梗塞、虚血性および非虚血性心筋症、心筋梗塞後の心筋症、ならびに心筋線維症など)および物質誘発性心筋症が挙げられる。
【0131】
血管損傷は、内皮および血管平滑筋細胞増殖ももたらす恐れがある。該損傷は、外傷性事象または介入治療(例えば、血管形成、血管移植、吻合、臓器移植)により引き起こされる可能性がある(Clowes Aら A.J.Vasc.Surg(1991)13:885)。再狭窄(例えば、冠動脈、頸動脈、および脳損傷)は、冠動脈の気球血管形成の成功後の主要な合併症である。それは、冠動脈の内側を覆っている内皮細胞への物理的損傷の結果放出される成長因子により引き起こされると考えられている。
【0132】
本発明により治療または防止することができる他のアテローム性硬化状態としては、糖尿病、糖尿病性糸球体硬化症、および糖尿病性網膜症の合併症を含めた、内皮および/または血管平滑筋細胞の増殖を伴う動脈壁の疾患が挙げられる。
【0133】
さらなる実施形態において、本発明の多形は、内分泌系に関連する異常な細胞増殖性障害の治療において有用である。そのような障害としては、例えば、肥満、糖尿病(1&2型)、糖尿病性網膜症、糖尿病に関連する黄斑変性症、妊娠糖尿病、耐糖能障害、多嚢胞性卵巣症候群、骨粗鬆症、骨減少症、ならびにウェルナー症候群を含めた組織および臓器の老化の加速を含むインスリン抵抗性状態が挙げられる。
【0134】
さらなる実施形態において、本発明の多形は、泌尿生殖器系の異常な細胞増殖性障害の治療において有用である。これらの例としては、例えば、子宮内膜症、良性前立腺肥大症、平滑筋腫、多嚢胞性腎疾患、および糖尿病性腎障害が挙げられる。
【0135】
さらなる実施形態において、本発明の多形は、線維性障害の治療において有用である。線維症を伴う医学的状態としては、外科手術または傷害から生じる望ましくない組織接着が挙げられる。線維性障害の非限定的な例としては、肝硬変およびメサンギウム増殖性細胞障害が挙げられる。
【0136】
さらなる実施形態において、組織および関節の異常な細胞増殖性障害を本発明に従って治療することができる。そのような障害としては、例えば、レイノー現象/病、シェーグレン症候群、全身性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、脈管炎、強直性脊椎炎、骨関節炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎、および線維筋痛が挙げられる。
【0137】
特定の実施形態において、肺系の異常な細胞増殖性障害も本発明に従って治療することができる。これらの障害としては、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、反応性気道疾患、肺線維症、および肺高血圧症が挙げられる。
【0138】
本発明に従って治療することができる異常な細胞増殖成分を含むさらなる障害としては、ベーチェット症候群、線維嚢胞性乳腺炎、線維線腫、慢性疲労症候群、急性呼吸困難症候群(ARDS)、虚血性心疾患、透析後症候群、白血病、後天性免疫不全症候群、血管炎、脂質性組織球増加症、敗血症性ショック、およびガードナー症候群などの家族性腸ポリープ症が挙げられる。本発明の組成物および方法により治療することができる障害の範囲には、例えば、ヒトパピローマウイルス誘発性疾患(例えば、ヒトパピローマウイルス感染により生じる病変)、エプスタイン・バーウイルス誘発性疾患、瘢痕形成、性器疣贅、皮膚疣贅などを含めたウイルス誘発性過剰増殖疾患も含まれる。
【0139】
本発明の多形は、原発性腫瘍および腫瘍転移などの様々なタイプの癌を含めた異常な細胞増殖の状態および疾患の治療においてさらに有用である。本発明に従って治療することができる特定の非限定的なタイプの良性腫瘍としては、血管腫、幹細胞腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経線維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞線腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生性過形成、トラコーマ、および化膿性肉芽腫が挙げられる。
【0140】
本発明に従って治療可能な代表的な非限定的な癌としては、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、脳癌、咽頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、神経組織、頭頸部、結腸、胃、気管支、腎臓の癌、基底細胞癌、潰瘍および乳頭型の両方の扁平上皮癌、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫、骨髄腫、巨細胞腫瘍、小細胞肺腫瘍、胆石、島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性および慢性のリンパ性および顆粒球腫瘍、毛様細胞腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節細胞腫、過形成角膜神経腫瘍、マルファン体型腫瘍、ウィルムス腫瘍、精上皮腫、卵巣腫瘍、平滑筋腫瘍、子宮頸部異形成および上皮内癌、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、軟部組織肉腫、悪性カルチノイド、局所的皮膚病変、菌状息肉症、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性および他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫瘍、真性多血症、腺癌、多形神経膠芽腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮癌、ならびに他の癌および肉腫が挙げられる。
【0141】
本発明の多形は、拒絶反応または他の合併症に関与する臓器移植に関連する増殖応答の防止または治療においても有用である。例えば、増殖応答は、心臓、肺、肝臓、腎臓、および他の身体臓器または臓器系の移植の間に発生し得る。
【0142】
B.炎症
本発明の多形は、炎症を特徴とする疾患の治療においても有用である。有意な炎症成分を有する疾患および状態は普遍的なものであり、例えば、皮膚障害、腸障害、特定の神経変性障害、関節炎、自己免疫疾患および様々な他の疾病が挙げられる。これらの疾患の一部は、上記の通り炎症成分および増殖成分の両方を有する。特定の実施形態において、該化合物は、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコイドーシス、または乾癬を治療するのに使用する。開示している多形は、他の炎症性疾患、例えば、アレルギー性障害、皮膚障害、移植片拒絶反応、連鎖球菌感染後および自己免疫腎不全、敗血症性ショック、全身性炎症性反応症候群(SIRS)、成人呼吸困難症候群(ARDS)、毒物注入、紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、自己免疫溶血性貧血、インスリン依存性糖尿病、およびリウマチ熱、骨盤内炎症性疾患(PID)、結膜炎、皮膚炎、ならびに気管支炎の治療においても有用である。
【0143】
炎症性腸疾患(IBD)としては、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)を含めた複数の慢性炎症性状態が挙げられる。CDおよびUCのいずれも、それらの病因が不明であるため「特発性」であると考えられている。クローン病および潰瘍性大腸炎は、多くの症状(例えば、下痢、腹痛、発熱、疲労)を共に有しているが、潰瘍性大腸炎が結腸に限定される一方、クローン病は胃腸管の任意のセグメントに影響を与える可能性がある。いずれの疾患も、関節炎、眼疾患(例えば、上強膜炎および虹彩炎)、皮膚疾患(例えば、結節性紅斑および壊疽性膿皮症)、尿路合併症、胆石、および貧血を含めた腸外の徴候を伴う可能性がある。多くの患者は凝固亢進状態であるため、卒中、網膜血栓、および肺塞栓は珍しいものではない。
【0144】
特定の実施形態において、本発明の多形は、炎症性腸疾患の治療において有用である。好ましい実施形態において、炎症性腸疾患はクローン病である。
【0145】
慢性閉塞性肺疾患、すなわちCOPDは、進行性であり肺の異常な炎症性反応に関連する完全には可逆的ではない気流制限を特徴とする。それは、最も一般的な成人の呼吸器の状態、慢性的病的状態および死亡の主要な原因の1つであり、世界的に相当な経済的および社会的な負担となっている(Pauwels R A.Lancet.(2004)364(9434):613〜20)。該障害の他の名称としては、例えば、慢性閉塞性気道疾患、(COAD);慢性閉塞性肺疾患、(COLD)、慢性気流障害、(CALまたはCAFL)および慢性気流閉塞(COA)が挙げられる。
【0146】
COPDは、気道、実質、および肺血管系にわたる慢性炎症を特徴とする。該炎症は、多数の細胞、メディエーター、および炎症性作用を伴う。メディエーターとしては、例えば、プロテアーゼ、酸化物質および毒性のペプチドが挙げられる。時間とともに、炎症により肺が損傷し、COPDの特徴的な病理変化につながる。疾患の徴候としては、慢性気管支炎および気腫のいずれも挙げられる。慢性気管支炎は、大量の粘液を産生し、喘鳴および感染を引き起こす、長期にわたる気道の炎症である。対象が、少なくとも1年に3カ月および連続して2年間にわたって日常的に咳および粘液を有する場合に慢性と見なされる。気腫は、肺胞および/または気管支を破壊し、肺胞を拡張させ、したがって呼吸を困難にする疾患である。COPD患者において最も一般的なのは、小葉中心型の気腫である。特定の実施形態において、本発明の組成物は、慢性閉塞性肺疾患の治療において有用である。
【0147】
サルコイドーシスは、異常な細胞増殖が関係するさらに別の慢性炎症性疾患である。サルコイドーシスは多臓器肉芽腫性障害であり、その肉芽腫は、炎症性細胞が一定量供給される血管新生毛細管発芽により作製される。
【0148】
上記の通り、炎症は、再狭窄、プラーク破綻から生じるアテローム性硬化合併症、重度の組織虚血、および心不全を含めた心血管疾患の発生機序においても重要な役割を果たしている。例えば、動脈壁における炎症性変化は、再狭窄およびアテローム性硬化症の発症において主要な役割を果たすと考えられている(Ross R.N Engl J Med.(1999)340:115〜126)。プラークの形成において発生する局所炎症は、最終的にプラーク破綻および急性冠動脈症候群につながる進行したプラークの線維キャップの弱体化にも関与する(Lind L.Atherosclerosis.(2003)169(2):203〜14)。
【0149】
多発性硬化症(MS)は慢性であり、中枢神経系に影響を及ぼす自己免疫疾患を悪化させることが多い。MSは、身体が、ミエリン鞘(脳および脊髄において神経を遮断する脂肪族物質)中のタンパク質に抗体および白血球を向ける場合に生じる炎症を特徴とする。その結果は、筋肉の協調、視覚および他の神経シグナルを緩徐化または阻害する多数の領域の瘢痕化(硬化症)となり得る。特定の実施形態において、本発明の多形は、多発性硬化症の治療において有用である。
【0150】
炎症は、パーキンソン病およびアルツハイマー病を含めた神経障害の発生機序に関連することが示されてきた(Mirza B.ら Neuroscience(2000)95(2):425〜32;Gupta A.Int J Clin Pract.(2003)57(1):36〜9;Ghatan E.ら Neurosci Biobehav Rev.(1999)23(5):615〜33)。
【0151】
本発明は、例えば、アレルギー性障害、アレルギー性鼻炎、皮膚障害、移植片拒絶反応、連鎖球菌感染後および自己免疫腎不全、敗血症性ショック、全身性炎症性応答症候群(SIRS)、成人呼吸困難症候群(ARDS)、毒物注入、紅斑性狼瘡、重症筋無力症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫溶血性貧血、インスリン依存性糖尿病、糸球体腎炎、ならびにリウマチ熱、骨盤内炎症性疾患(PID)、結膜炎、皮膚炎、気管支炎、および鼻炎の治療においても有用である。
【0152】
C.喘息
特定の実施形態において、本明細書に開示の多形は、喘息の治療において使用することができる。最近になって、喘息の主要な基礎病理が気道組織の炎症であることが明らかとなってきた(Lemanke(2002)Pediatrics 109(2):368〜372;Nagayamaら(1995)Pediatr Allergy Immunol.6:204〜208)。喘息は、喘鳴、咳、胸部絞扼感、息切れおよび痰の生成を含めた広範囲の症状および兆候を伴う。気道の炎症は、喘息発生機序およびその臨床的徴候の重要な特色である。肥満細胞、好酸球、およびリンパ球を含めた炎症性細胞は、軽度の喘息を患っている若年の患者の気道にさえ存在している。
【0153】
炎症は、喘息を伴うかどうかに関わらず喘鳴障害にも関与している。喘息は、職業性喘息、運動誘発性喘息、夜間性喘息、またはステロイド抵抗性喘息などのように、喘息エピソード(または喘息発作)を引き起こし得るトリガーまたは特定の個体において喘息を悪化させるものにより分類されることがある。したがって、本発明の多形は、一般に、喘鳴障害の治療において使用することもできる。
【0154】
D.関節炎および骨関節炎
4000万人超の米国人が、100種超のリウマチ性疾患を含めた様々な形態の関節炎(すなわち、腱、軟骨、血管、および内臓を含めた身体の様々な構造を構成または支持している関節、筋肉、および結合組織に影響を及ぼす疾患)で苦しんでいる。代表的なタイプの関節炎としては、リウマトイド(軟部組織リウマチおよび非関節性リウマチなど)、線維筋痛、結合組織炎、筋肉リウマチ、筋筋膜痛、上腕骨上顆炎、凍結肩、ティーツェ症候群、筋膜炎、腱炎、腱鞘炎、滑液嚢炎)、若年性慢性、脊椎関節症(強直性脊椎炎)、骨関節炎、高尿酸血症および急性痛風、慢性痛風に関連する関節炎、および全身性紅斑性狼瘡が挙げられる。
【0155】
肥厚性関節炎または骨関節炎は、最も一般的な形態の関節炎であり、関節の軟骨の破壊を特徴とする。骨関節炎は、65歳以上の人で一般的であるが、数十年早く発症し得る。軟骨の破壊により骨が互いに摩擦し、痛みおよび運動の低下を引き起こす。最近になって、炎症が骨関節炎において重要な役割を果たしている証拠が多く見つかっている。骨関節炎(OA)の関節代替外科手術を受ける用意がある患者の3分の1近くが、関節を包囲し保護している滑液に重度の炎症を有していた。特定の実施形態において、本発明の多形は、骨関節炎の治療において有用である。
【0156】
次に最も一般的な形態の関節炎はリウマチ様関節炎である。それは、全身に影響を及ぼす恐れがある自己免疫疾患であり、脱力感、疲労、食欲の低下、および筋肉痛を引き起こす。一般に、発症年齢は骨関節炎よりずっと早く、20歳と50歳の間である。炎症は滑膜表層において始まり、関節全体に拡大する恐れがある。したがって、本発明の多形は、炎症性疾患または状態の治療において有用である。別の実施形態において、本発明の多形は、関節炎、具体的にはリウマチ様関節炎の治療において有用である。特定の実施形態において、関節炎(特にリウマチ様関節炎)を含めた炎症性状態は、別の活性薬剤とのある組合せで提供する本明細書に記載の多形の投与を介して、本発明に従って治療することができる。特定の実施形態において、本発明の多形は、メトトレキセートと組み合わせて投与することができる。メトトレキセートおよび多形は、同じ製剤中で投与するか、またはそれらは、組み合わせて投与される別個の製剤中に提供することができる(例えば、同じ時間もしくはその前後に服用されるか、または重なっていてもいなくてもよい別個の時間に服用される(1つの製剤については連日投与、他の製剤については毎週、隔週、毎月、または1回だけの投与など))。
【実施例】
【0157】
実験
次に、様々な実施例を具体的に参照しながら本発明を説明する。以下の実施例は、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、むしろ、例示的な実施形態として提示するものである。
【0158】
(実施例1)
多形スクリーニング − メタノール/水ベースの系
メタノールと水との混合物を式(1)の化合物の溶媒として使用して、多数の様々な有望な抗溶媒を試験した。メタノールおよび水を9:1の比で使用して式(1)の化合物を溶解した。該溶液を活性炭で処理し、濾過し、10個の別個の試料に分割した。微量分析を使用して、様々な抗溶媒をメタノール/水溶液中の化合物に添加した。各試料を結晶生成物の形成について評価し、その結果を以下で表6に示している。
【0159】
【表6】
【0160】
(実施例2)
多形スクリーニング − メタノールベースの系
式(1)の化合物の溶媒としてメタノールを使用して多数の様々な有望な抗溶媒を試験した。式(1)の化合物をメタノール中に溶解し、該溶液を活性炭で処理し、濾過し、9個の別個の試料に分割した。微量分析を使用して、様々な抗溶媒をメタノール溶液中の化合物に添加した。各試料を結晶生成物の形成について評価し、その結果を以下で表7に示している。
【0161】
【表7】
【0162】
(実施例3)
多形型の調製
式(1)の化合物(10g)を活性炭(1g)と混合し、メタノール(45mL)と水(5mL)との混合物に添加した。該溶液を30分間混合した。該混合物を、SEITZ(登録商標)K200フィルターを介して、次いで、CELITE(登録商標)パッド(厚さ約5mm)を介して濾過した。得られた透明な黄色の溶液を1.5gのポーションに分割した。次に、個々のポーションを、以下に記載の抗溶媒(すなわち、THF、MEK、またはMiBK)を添加しながら多形スクリーニングに曝した。
【0163】
1.5g量の上で得た溶液を1gのTHFと合わせてスラリーを形成し、そこに追加の1.5gの式(1)の化合物の溶液および追加の1gのTHFを添加した。スラリーを約40℃まで加熱し、次いで、終夜撹拌しながら周囲温度まで冷却させた。得られた固形物を濾過し、THF/メタノール(1:1、1mL)およびTHF(1mL)で洗浄して、90mgの白っぽい固形の多形IIを得た。
【0164】
1.5g量の上で得た溶液を0.5gのMEKと合わせてスラリーを形成し、そこに追加の1.5gの式(1)の化合物の溶液および追加の0.6gのMEKを添加した。スラリーを約40℃まで加熱し、次いで、終夜撹拌しながら周囲温度まで冷却させた。得られた固形物を濾過し、MEK/メタノール(1:1、1mL)およびMEK(1mL)で洗浄して、140mgの白っぽい固形の多形Iaを得た。
【0165】
1.5g量の上で得た溶液を0.5gのMIBKと合わせてスラリーを形成し、そこに追加の1.5gの式(1)の化合物の溶液および追加の0.6gのMIBKを添加した。スラリーを約40℃まで加熱し、次いで、終夜撹拌しながら周囲温度まで冷却させた。得られた固形物を濾過し、MIBK/メタノール(1:1、1mL)およびMIBK(1mL)で洗浄して、240mgの白っぽい固形の多形Ibを得た。
【0166】
(実施例4)
多形応力試験
Ib型多形およびII型多形の試料を、勾配液体クロマトグラフィーにより237nmでUV検出しながら実施する方法AM−5−ASP001に従って、HPLC−UVにより純度について分析した。Thermo ScientificからのHypersil GOLDカラム(250×4.6mm、5μm)を30℃の温度で使用した。Dionex P580勾配ポンプおよび1.0ml/minの流量(勾配溶離)でDionex STH 585カラムオーブンを使用した。Dionex Degasys DG−1210脱ガス剤およびGynkotek Gina 50オートサンプラーインジェクターを5μLの注入量で使用した。Dionex PDA−100フォトダイオードアレイ検出器を237nmの波長で使用した。試料実行時間は46分であった。各試料を、合成した日(ゼロ点)ならびに周囲条件(すなわち、室温および室内湿度)で、25℃(±2℃)および60%相対湿度(RH)(±5%RH)で、ならびに40℃(±2℃)および75RH(±5%RH)で1、2、および4週間貯蔵した時点で試験した。試験結果を表8(Ib型)および表9(II型)に提示しており、示している値は面積%である。いずれの多形型も、周囲条件で貯蔵した場合ならびに25℃および60%RHで貯蔵した場合に安定であることが示された。
【0167】
【表8】
【0168】
【表9】
【0169】
Ib型多形およびII型多形の試料を、方法AM−1−全体/含水率(AM−1−General/water content)に従って、カールフィッシャー滴定を使用して含水率についても分析した。カールフィッシャー定量滴定装置(DL39、Mettler Toledo)を、Stromboli乾燥オーブン(Mettler Toledo)、発生電極、および標準的な化学天秤(精度が少なくとも0.0mg)と共に使用した。装置の条件は、オーブン温度150℃、ガス流量100.0mL/min、および撹拌子速度50%に設定した。管理パラメーターは、最長時間600s、電流2.0μA、終点100mVに設定し、発生速度は普通に設定した。各試料を、合成した日(ゼロ点)ならびに周囲条件(すなわち、室温および室内湿度)で、25℃(±2℃)および60%相対湿度(RH)(±5%RH)で、ならびに40℃(±2℃)および75%RH(±5%RH)で1、2、および4週間貯蔵した時点で試験した。試験結果を表10(Ib型)および表11(II型)に提示しており、示している値は含水率パーセントである。
【0170】
【表10】
【0171】
【表11】
【0172】
本明細書に記載の本発明の多くの変法および他の実施形態が、前述の記述で示した教示の利益を享受するこれらの発明が関係する分野の当業者には思い浮かぶであろう。したがって、本発明が、開示している特定の実施形態に限定されるものではなく、変法および他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図したものであることが理解されよう。本発明において特定の用語を利用しているが、それらは一般的および記述的な意味でのみ使用するものであり、限定することを目的としたものではない。
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、その開示全体を参照により本明細書の一部となすものとする2009年7月8日出願の米国特許出願第61/223,888号の優先権を主張するものである。
【0002】
本出願は、抗葉酸化合物の多形、それらの調製方法、ならびに該多形を含む組成物、および該多形を使用する治療方法を対象としている。
【背景技術】
【0003】
葉酸は、N−[4(2−アミノ−4−ヒドロキシ−プテリジン−6−イルメチルアミノ)−ベンゾイル]−L(+)−グルタミン酸の系統名で知られている水溶性のビタミンBであり、以下の構造を有する。
【化1】
上記の式に見られるように、葉酸の構造は、一般に、プテリジン環、パラ−アミノ安息香酸部分、およびグルタメート部分から形成されていると説明することができる。葉酸およびその誘導体は、代謝および成長に必要であり、特に身体のチミジレート、アミノ酸、およびプリンの合成に関与している。天然のホレートなどの葉酸の誘導体は、葉酸に匹敵する生化学的作用を有することが知られている。葉酸は、1,4−ジアジン環などでの水素化を介して誘導体化されるか、またはメチル化、ホルムアルデヒド化(formaldehydylated)、または架橋されることが知られており、置換は、一般に、N5またはN10位で発生する。ホレートは、先天的欠損症、心疾患、卒中、記憶喪失、および加齢性認知症の重症度または発生率の低減を含めた様々な用途における効力について研究されてきた。
【0004】
ホレートのような抗葉酸化合物は、葉酸と構造的に類似している。しかし、抗葉酸化合物は、ホレート代謝を妨害するように機能する。抗葉酸剤の概説は、参照により本明細書の一部となすものとするTakamoto(1996)The Oncologist、1:68〜81により示されている。1つの特定の群の抗葉酸剤、いわゆる「古典的抗葉酸剤」は、葉酸p−アミノベンゾイルグルタミン酸側鎖、またはその側鎖の誘導体の存在を特徴とする。別の群の抗葉酸剤、いわゆる「非古典的抗葉酸剤」は、p−アミノベンゾイルグルタミン酸基の特異的な欠如を特徴とする。抗葉酸剤は葉酸の作用と反対の生理的作用を有するため、抗葉酸剤は、アポトーシスを引き起こすことにより癌細胞を破壊する能力などの有用な生理的機能を示すことが示されてきた。
【0005】
ホレートモノグルタミレートおよび抗葉酸剤モノグルタミレートは、還元形または非還元形で、それぞれの形に特異的な担体により細胞膜を通して輸送される。これらの輸送系の発現は、細胞型および細胞成長条件によって異なる。細胞への進入後、大部分のホレート、および多くの抗葉酸剤は、ポリグルタミル化により修飾され、1つのグルタミン酸残基がペプチド結合を介してαカルボキシ基で第2のグルタミン酸残基に結合する。このことは、通常、3〜6個のグルタミン酸残基の付加により、ポリ−L−γ−グルタミレートの形成につながる。ホレートに作用する酵素は、ポリグルタミル化形態に対してより高い親和力を有する。したがって、ポリグルタミル化ホレートは、一般に、より長い細胞内での保持時間を示す。
【0006】
無傷のホレート酵素経路は、DNAの構成単位、ならびに多くの重要なアミノ酸のde novo合成を維持するのに重要である。抗葉酸剤の標的としては、(i)ジヒドロホレートレダクターゼ(DHFR)、(ii)チミジレートシンターゼ(TS)、(iii)ホリルポリグルタミルシンターゼ、および(iv)グリシンアミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼ(GARFT)およびアミノイミダゾールカルボキサミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼ(AICART)を含めた、ホレート代謝に関与している様々な酵素が挙げられる。
【0007】
膜貫通型糖タンパク質である還元ホレート担体(RFC)は、(受容体を介する機序とは対照的な)担体を介する機序により、哺乳動物細胞へ還元ホレートを輸送するホレート経路において積極的な役割を果たす。RFCは、メトトレキセートなどの抗葉酸剤も輸送する。したがって、RFCの機能する能力を媒介することにより、細胞の還元ホレートを吸収する能力に影響を及ぼすことができる。
【0008】
ポリグルタミル化ホレートは、酵素補因子として機能することができ、一方、ポリグルタミル化抗葉酸剤は、一般に、酵素阻害剤として機能する。さらに、ホレート代謝の妨害により、DNAおよび一部のアミノ酸のde novo合成が防止され、それにより抗葉酸剤選択的な細胞毒性が可能となる。その構造を以下に示しているメトトレキセートは、癌治療、特に急性白血病、非ホジキンリンパ腫、乳癌、頭頸部癌、絨毛癌、骨肉腫、および膀胱癌の治療における使用が示されてきた1種の抗葉酸剤である。
【化2】
【0009】
参照により本明細書の一部となすものとするNairら(J.Med.Chem.(1991)34:222〜227)は、古典的抗葉酸剤のポリグルタミル化が抗腫瘍活性に必須ではなく、ポリグルタミル化が薬物の薬理学的活性および標的特異性の低下をもたらす恐れがあるという点で望ましくない可能性さえあることを証明した。これに続いて、多数のポリグルタミル化不可能な(nonpolyglutamylatable)古典的抗葉酸剤が発見された。参照により本明細書の一部となすものとするNairら(1998)Proc.Amer.Assoc.Cancer Research 39:431を参照されたい。ポリグルタミル化不可能な抗葉酸剤の1つの特定の群は、グルタミン酸部分の4位のメチリデン基(すなわち、=CH2置換基)を特徴とする。この化学基の存在は、抗葉酸化合物の生物活性に影響を及ぼすことが示されてきた。参照により本明細書の一部となすものとするNairら(1996)Cellular Pharmacology 3:29を参照されたい。
【0010】
代謝安定性が増大して用量の減少および患者への投与頻度の減少を可能にする抗葉酸剤の探索において、さらなる葉酸誘導体も研究されてきた。例えば、ジデアザ(すなわち、キナゾリン系)類似体は、プテリジン環系での生理的ヒドロキシル化を回避することが示されてきた。さらに、第2級アミン窒素原子を場合により置換された炭素原子により置換することにより、隣接する結合が生理的切断から保護されることが示されてきた。
【0011】
第2級アミン窒素の炭素置換を有する抗葉酸剤の一例は、その構造を以下に示している4−アミノ−4−デオキシ−10−デアザプテロイル−γ−メチレングルタミン酸(より一般的にMDAMと呼ばれる)である。
【化3】
MDAMのL−エナンチオマーは、増大した生理的活性を示すことが示されてきた。参照により本明細書の一部となすものとする米国特許第5,550,128号を参照されたい。代謝安定性のために考案された古典的抗葉酸剤の別の例はZD1694であり、以下に示している。
【化4】
【0012】
以下に示している構造の抗葉酸化合物の群は、上記の分子の特色のいくつかを組み合わせたものであり、この群の化合物は、MobileTrexate、Mobile Trex、Mobiltrex、またはM−Trexという名称で知られている。
【化5】
上記の式で示している通り、この群の化合物は、M−Trex(式中、XをCH2、CHCH3、CH(CH2CH3)、NH、またはNCH3とすることができる)を包含する。
【0013】
抗葉酸剤の医薬化合物としての有効性は、上記の代謝不活性に加えて他の因子に起因する。多数の酵素が体内のホレート代謝に関与しているため、抗葉酸剤の阻害標的を選択することができる。換言すると、抗葉酸剤は、それらが阻害する酵素(複数可)に応じて多様なものとすることが可能である。例えば、抗葉酸剤の中には、ジヒドロホレートレダクターゼ(DHFR)を主に阻害するものもあれば、チミジレートシンターゼ(TS)、グリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(GARFT)、またはアミノイミダゾールカルボキサミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼを主に阻害するものもあり、さらにはこれらの酵素の組合せを阻害するものもある。
【発明の概要】
【0014】
抗葉酸剤は様々な状態を治療するのに有用であるが、安定な形、特に医薬組成物に組み込むことができる形の抗葉酸化合物を提供することは困難となる可能性がある。
【0015】
今や、本発明により、抗葉酸活性を有する特定の化合物を、明らかに異なる物理的性質を有する安定な多形型で提供できることが確定した。特に、本発明は、化合物(S)−2−{4−[2−(2,4−ジアミノ−キナゾリン−6−イル)−エチル]−ベンゾイルアミノ}−4−メチレン−ペンタン二酸二カリウム塩(式(1)の化合物)の安定な多形型を提供する。本発明は、水和物などの、該化合物の様々な安定な結晶性の擬似多形型をさらに提供する。
【0016】
一実施形態において、本発明は、Ia型多形と称される、式(1)の化合物の結晶多形を提供する。
【化6】
Ia型多形は、4.946、7.118、7.785、8.238、9.229、9.822、13.4000、15.271、15.658、16.128、16.459、17.286、18.088、17.452、18.889、19.490、19.837、21.456、22.658、23.168、23.811、24.691、28.436、および29.609からなる群から選択される1つ以上のおおよそのX線粉末回折格子面間隔ピークを有することを特徴とすることができる。Ia型は、また、本明細書に例示の特定のX線粉末回折パターン図を有することを特徴とすることができる。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、Ib型多形と称される、式(1)の化合物の結晶多形を提供する。Ib型多形は、4.811、8.316、9.542、10.047、13.189、14.946、15.973、17.219、18.162、21.814、22.260、23.087、23.351、24.518、25.456、26.846、28.376、29.648、30.509、31.226、および32.328からなる群から選択される1つ以上のおおよそのX線粉末回折格子面間隔ピークを有することを特徴とすることができる。Ib型は、また、本明細書に例示の特定のX線粉末回折パターン図を有することを特徴とすることができる。
【0018】
Ib型多形は、また、3334、3194、1597、1556、1492、1446、1400、1367、1338、1314、1294、1255、1190、1075、1020、992、928、835、797、748、および733からなる群から選択される1つ以上のおおよそのFTIRピークを有するFTIRスペクトルを有することを特徴とすることができる。さらに、Ib型は、本明細書に例示の特定のFTIR図を有することを特徴とすることができる。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、II型多形と称される、式(1)の化合物の結晶多形を提供する。II型多形は、4.794、7.020、7.747、8.104、9.457、11.483、13.223、15.010、15.693、16.943、18.222、19.552、22.498、23.003、および29.490からなる群から選択される1つ以上のおおよそのX線粉末回折格子面間隔ピークを有することを特徴とすることができる。II型は、また、本明細書に例示の特定のX線粉末回折パターン図を有することを特徴とすることができる。
【0020】
II型多形は、また、332、3207、1555、1499、1443、1396、1289、1188、1154、1083、1018、940、835、および796からなる群から選択される1つ以上のおおよそのFTIRピークを有するFTIRスペクトルを有することを特徴とすることができる。さらに、II型は、本明細書に例示の特定のFTIR図を有することを特徴とすることができる。
【0021】
各多形型は、示差走査熱量測定(DSC)特性との関連で説明することもできる。例えば、各多形型は、DSCを使用して測定した場合に約310℃での吸熱最大値を有することができる。特定の実施形態において、Ib型多形は、約92.7℃、120.1℃、および125.9℃でピークを示すDSC曲線を有することができ、II型多形は、約68.0℃、95.3℃、115.8℃、および126.3℃でピークを示すDSC曲線を有することができる。
【0022】
特定の実施形態において、本発明の様々な多形は、水和物の形で提供することができる。例えば、結晶多形は、約10重量%〜約40重量%の含水率を有し得る。特定の実施形態において、水和物は、約25℃の温度および約60%の相対湿度で貯蔵するとある期間にわたって安定であると特徴付けることができる。安定性は、水和物がさらに水を吸収しないことおよび/または水和物が水を失わないことから明らかであることが好ましい。
【0023】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の結晶多形型を調製する方法も対象としている。一部の実施形態において、該方法は、場合により加熱ステップと共に、さらに場合により混合ステップと共に、アルコール(例えば、メタノール)および水などの好適な極性溶媒中で式(1)の化合物の溶液を形成するステップを含むことができる。加熱ステップを使用する場合、該溶液を周囲条件などまで冷却して該多形の沈殿を容易にすることが有用となる可能性がある。特定の抗溶媒を使用して所望の多形を該溶液から沈殿させることができ、そのような抗溶媒は、無極性溶媒(例えば、メチルイソブチルケトンおよびテトラヒドロフラン)であることが好ましい。特定の実施形態において、該方法は、式(1)の化合物から不純物を単離するステップを含むことができる。このステップは、該化合物を、異物(例えば、式(1)の実際の化合物以外の物質)を吸収および/または吸着するのに適した物質と組み合わせるサブステップを含むことができる。具体的には、該物質は活性炭を包含することができる。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、医薬組成物を対象としている。一実施形態において、本発明は、治療有効量のIa型結晶多形または医薬として許容されるプロドラッグまたはその医薬として活性な代謝物、および医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、治療有効量のIb型結晶多形または医薬として許容されるプロドラッグまたはその医薬として活性な代謝物、およびその医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、治療有効量のII型結晶多形または医薬として許容されるプロドラッグまたはその医薬として活性な代謝物、およびその医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、治療を必要としている対象に本明細書に記載の多形を投与することにより様々な状態を治療する方法を対象としている。一実施形態において、本発明は、異常な細胞増殖、炎症、喘息、および関節炎からなる群から選択される状態を治療する方法を提供し、前記方法は、治療を必要としている対象に治療有効量のIa型結晶多形または医薬として許容されるプロドラッグまたはその医薬として活性な代謝物を投与するステップを含む。別の実施形態において、本発明は、異常な細胞増殖、炎症、喘息、および関節炎からなる群から選択される状態を治療する方法を提供し、前記方法は、治療を必要としている対象に治療有効量のIb型結晶多形または医薬として許容されるプロドラッグまたはその医薬として活性な代謝物を投与するステップを含む。さらなる実施形態において、本発明は、異常な細胞増殖、炎症、喘息、および関節炎からなる群から選択される状態を治療する方法を提供し、前記方法は、治療を必要としている対象に治療有効量のII型結晶多形または医薬として許容されるプロドラッグまたはその医薬として活性な代謝物を投与するステップを含む。
【0026】
特定の実施形態において、該多形化合物は、本明細書に記載のさらなる多形と組み合わせることができる。他の実施形態において、該多形は、1種以上のさらなる活性薬剤(例えば、メトトレキセート)と組み合わせることができる。
【0027】
前述の一般項で本発明についてこのように説明してきたが、次に、必ずしも原寸に比例していない添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】頂部線は実際のXRDパターンであり、底線は様々なピークの相対強度を例示している、本発明の一実施形態のIa型と称される多形のX線粉末回折パターン図である。
【図2】頂部線は実際のXRDパターンであり、底線は様々なピークの相対強度を例示している、本発明の一実施形態のIb型と称される多形のX線粉末回折パターン図である。
【図3】本発明の一実施形態のIb型の多形の示差走査熱量曲線を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態のIb型の多形の熱重量分析により得た曲線を示す図である。
【図5】相対湿度(RH)を変化させている間の時間に対する質量変化を示す、本発明の一実施形態のIb型の多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図6】RHの関数としての質量変化を示す、本発明の一実施形態のIb型の多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図7】RHを変化させている間の時間に対する含水率を示す、本発明の一実施形態のIb型の多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図8】RHの関数としての含水率を示す、本発明の一実施形態のIb型の多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態のIb型多形のFTIRスペクトルを示す図である。
【図10】頂部線は実際のXRDパターンであり、底線は様々なピークの相対強度を例示している、本発明の一実施形態のII型と称される多形のX線粉末回折パターン図である。
【図11】本発明の一実施形態のII型多形の示差走査熱量曲線を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態のII型多形の熱重量分析により得た曲線を示す図である。
【図13】RHを変化させている間の時間に対する質量変化を示す、本発明の一実施形態のII型の多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図14】RHの関数としての質量変化を示す、本発明の一実施形態のII型多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図15】RHを変化させている間の時間に対する含水率を示す、本発明の一実施形態のII型多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図16】RHの関数としての含水率を示す、本発明の一実施形態のII型多形の動的蒸気収着分析により得た曲線を示す図である。
【図17】本発明の一実施形態のII型多形のFTIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明を、様々な実施形態を参照しながら以降でより完全に説明する。これらの実施形態は、本開示が完璧および完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供するものである。実際、本発明は、多くの様々な形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈すべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供するものである。明細書、および添付の特許請求の範囲において使用する場合、文脈において明白な別段の支持がない限り、単数形「a」、「an」、「the」は、複数の指示物を包含する。
【0030】
I.定義
本明細書において使用する場合、「多形」という用語は、ある化合物の結晶型であって、同じ化合物の他の結晶型と比較して明確な空間格子配列を有するものを意味する。多形は、化合物の様々な非溶媒和結晶型と定義することもできる。特定の多形は、様々な化学的および物理的性質を有することができる。具体的な別段の定めのない限り、多形という用語は、擬似多形を同様に包含することを意図したものである。
【0031】
本明細書において使用する場合、「擬似多形」という用語は、その化合物の結晶格子に溶媒または水を組み込んでいる多形を意味する。本発明が包含する擬似多形の具体例としては、溶媒和物(化合物の結晶格子に溶媒を組み込んでいる結晶型であると理解されている)および水和物(化合物の結晶格子に水を組み込んでいる結晶型を意味するものと理解されている)が挙げられる。擬似多形は、脱溶媒和溶媒和物(すなわち、溶媒和物から溶媒を除去することにより作製することができる形)または脱水水和物(すなわち、水和物から水を除去することにより作製することができる形)とすることもできる。
【0032】
本明細書において使用する場合、「プロドラッグ」という用語は、生理的条件下でまたは加溶媒分解により特定の化合物に転換することができる化合物を意味する。
【0033】
本明細書において使用する場合、「活性な代謝物」という用語は、本発明の化合物、またはそのプロドラッグの代謝から、そのような化合物またはプロドラッグが哺乳動物に投与された場合に生じる生理的に活性な化合物を意味する。化合物の代謝物は、当技術分野において知られている慣例の技術を使用して同定することができる。
【0034】
本明細書において使用する場合、「治療有効量」または「治療有効用量」という用語は互換的であり、本明細書に記載の治療方法に従って所望の治療効果を引き出すのに十分な本発明の化合物、またはその生物活性変異体の濃度を意味する。
【0035】
本明細書において使用する場合、「医薬として許容される担体」という用語は、当技術分野において従来使用されている、生物活性剤の貯蔵、投与、および/または治癒作用を促進する任意の物質を意味し、そのような用語は、「希釈剤」、「ビヒクル」、「アジュバント」などの、同じ機能を付与する物質のための任意のさらなる用語を包含することを意図したものである。
【0036】
本明細書において使用する場合、「間欠投与」という用語は、治療有効用量の本発明の組成物の投与の後に中断の期間が設けられ、次いで、もう1度治療有効用量の投与が行われることを意味する。
【0037】
本明細書において使用する場合、「抗増殖剤」という用語は、細胞の過剰増殖を減少させる化合物を意味する。
【0038】
本明細書において使用する場合、「異常な細胞増殖」という用語は、1種または複数の細胞型の不適当な成長または増殖を特徴とする疾患または状態(その疾患または状態を患っていない個体におけるその細胞型(複数可)の成長と比べて)を意味する。
【0039】
本明細書において使用する場合、「癌」という用語は、局所的にまたは血流およびリンパ系を通って身体の他の部位に拡散する恐れがある細胞の制御されない異常な成長を特徴とする疾患または状態を意味する。該用語は、腫瘍形成または非腫瘍形成癌を包含し、原発性腫瘍および腫瘍転移などの様々なタイプの癌を包含する。
【0040】
本明細書において使用する場合、「腫瘍」という用語は、新生物とも呼ばれる、制御されず進行性である過剰な細胞分裂から生じる多細胞生物内の異常な細胞の塊を意味する。腫瘍は良性または悪性でもよい。
【0041】
本明細書において使用する場合、「線維性障害」という用語は、線維症および全体的または部分的に線維芽細胞の増殖に起因する線維症の他の医学的合併症を意味する。
【0042】
本明細書において使用する場合、「関節炎」という用語は、感染、自己免疫、または外傷が原因である可能性がある、関節に影響を及ぼす炎症性障害を意味する。
【0043】
II.化合物
本発明は、式(1)の化合物、(S)−2−{4−[2−(2,4−ジアミノ−キナゾリン−6−イル)−エチル]−ベンゾイルアミノ}−4−メチレン−ペンタン二酸二カリウム塩の多数の多形結晶形を提供する。本発明は、式(1)の化合物の擬似多形、特に該化合物の水和物も提供する。
【化7】
【0044】
式(1)の化合物は、代謝的に不活性な抗葉酸剤である。当技術分野において認識されているように、抗葉酸剤は、ホレート代謝の様々な段階を妨害する化合物である。したがって、本発明の多形は、ホレート代謝、またはホレート代謝に関連する他の生物学的機序の妨害に関連するまたはそれにより治療することができる疾患および状態の治療に有用な医薬組成物において使用することができる。
【0045】
特定の実施形態において、本発明は、純粋な単一の多形ならびに2種以上の異なる多形を含む混合物を包含することができる。純粋な単一の多形は、他の多形を実質的に含まないものとすることができる。実質的に含まないとは、他の多形(複数可)が約15重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、または約1重量%未満の量で存在していることを意味する。当業者は、「約15重量%未満の量で」という表現が、対象の多形が多形混合物中に約85重量%超の量で存在していることを意味することを理解するであろう。同様に、「約10重量%未満」という表現は、対象の多形が多形混合物中に約90重量%超などの量で存在していることを意味する。他の実施形態において、純粋な単一の多形は、他の多形を完全に含まないものとすることができる。
【0046】
他の実施形態において、本発明の多形型は、実質的に純粋であると説明することができ、それは、式(1)の化合物の各多形型が少なくとも約90重量%の純度で(すなわち、該化合物の他の多形型を含めた不純物が約10重量%未満)、少なくとも約95重量%、少なくとも約98重量%、または少なくとも約99重量%の純度で単離されることを意味している。
【0047】
ある化合物の特定の多形が同じ化合物の他の多形型より良好な物理的および化学的性質を有し得るため、本発明の好ましい実施形態の化合物の多形が望ましい可能性がある。例えば、1つの多形は、特定の溶媒中で増大した溶解度を有し得る。そのような増大した溶解度により、本発明の好ましい実施形態の化合物の製剤化または投与を容易にすることができる。様々な多形は、薬物の性能に影響を及ぼし、したがって薬物の製剤化に影響を及ぼし得る様々な物理的性質(例えば、異なる圧縮性、適合性、および錠剤などの特定の形態となる能力)も有し得る。特定の多形は、同じ溶媒中で別の多形と比べて異なる溶解速度も示すことができる。様々な多形は、異なる物理的安定性(例えば、準安定多形からより安定な多形への固相転換)および/または異なる化学的安定性(例えば、反応性)も有し得る。
【0048】
特定の実施形態において、式(1)の化合物の個々の結晶形は、特徴的なX線粉末回折パターンにより同定することができる。X線粉末回折は、試料の構造特性評価のために該試料(例えば、粉末または微結晶性物質)に対してX線照射を使用する、知られている技術である。粉末回折データは、通常、回折強度Iが散乱角2θの関数としてまたは散乱ベクトルqの関数として示されるディフラクトグラムとして提示される。同定は、知られている標準または国際回析データセンター(International Centre for Diffraction Data)の粉末回折ファイル(Powder Diffraction File)(PDF)もしくはケンブリッジ結晶構造データベース(Cambridge Structural Database)(CSD)などのデータベースとの回折パターンの比較により実施する。該技術のベースとなっている基礎物理学により、格子面間隔の測定において、一般にオングストローム単位のフラクションまでの高い精度および正確性がもたらされ、その結果、特定の物質、さらにはそれぞれが特徴的な回折パターンを示す同じ結晶化合物の別々の多形型でさえ、確実に同定することができる。各線の位置(格子間隔に相当する)および相対強度はいずれも特定の相および物質を示している。Shimadzu XRD−6000 X線回折計などのそのようなデータを測定するのに有用な機器は当技術分野において知られており、本発明の化合物を測定するのに任意のそのような機器を使用することができる。特定の実施形態において、XRD分析は、カッパアルファ(Kα)照射をもたらす銅(Cu)アノードを組み込んでいる装置を使用して実施することができる。したがって、本発明の特定の多形は、XRD分析で特にCu Kα照射を使用して得た代表的な図および/またはおおよそのX線粉末回折「d−間隔」ピーク(すなわち、2°θでの格子面間隔ピーク)との関連で同定および説明することができる。
【0049】
さらなる実施形態において、式(1)の化合物の個々の結晶形は、試料および対照の温度を増大させるのに必要な熱の量の差異を温度の関数として測定する示差走査熱量測定(DSC)により得られる特徴的な曲線により同定することができる。DSC分析の結果は、特に、温度変化に対する熱流束の曲線とすることができる。試料と対照の間の熱流量の差異を観察することにより、DSC分析は、相転移の間に吸収または放出される熱の量を測定することができ、ガラス転移などのより微妙な相変化を同定することもできる。DSCは、試料の純度の評価に適用可能であるため、工業的環境において品質管理装置として広く使用されている。PerkinElmer DSC 7示差走査熱量計などのそのようなデータを測定するのに有用な機器は当技術分野において知られており、本発明の化合物を測定するのに任意のそのような機器を使用することができる。特定の実施形態において、DSC分析は、特定の加熱速度で特定の温度範囲にわたって加熱することにより実施することができる。該分析は、密閉された金の皿などの試料ホルダーの観点からさらに説明することができる。したがって、本発明の特定の多形は、DSC分析で特に毎分約10℃の速度で加熱して得られる代表的な図および/またはおおよそのピークとの関連で同定および説明することができる。
【0050】
他の実施形態において、式(1)の化合物の個々の結晶形は、温度の関数としての重量を説明するのに使用することができる熱重量分析(TGA)により得られる特徴的な曲線により同定することができる。TGA分析は、重量、温度、および温度変化の測定における高程度の精度に依存する。その分析器は、通常、試料を載せた皿(一般に白金)を有する高精度の天秤からなる。熱電対を有する小さい伝熱炉に皿を入れて、温度を正確に測定する。その雰囲気を不活性ガスでパージして、酸化または他の望ましくない反応を防止することができる。分析は、温度を徐々に上昇させることおよび温度に対して重量をプロットすることにより実施する。Orton TG730などのそのようなデータを測定するのに有用な機器は当技術分野において知られており、本発明の化合物を測定するのに任意のそのような機器を使用することができる。特定の実施形態において、TGA分析は、特定の加熱速度で特定の温度範囲にわたって加熱することにより実施することができる。したがって、本発明の特定の多形は、TGA分析で特に毎分約10℃の速度で加熱して得られる代表的な図および/またはおおよそのピークとの関連で同定および説明することができる。
【0051】
さらなる実施形態において、式(1)の化合物の個々の結晶形は、試料を湿度および温度の様々な条件に曝し、試料の応答を重量測定により測定する動的蒸気収着(DVS)により得られる特徴的な曲線により同定することができる。DVS分析の結果は、特に、経時的な相対湿度(RH)の関数としての試料の重量パーセントを示す二重曲線、経時的なRHの関数としての試料の含水率を示す二重曲線、RHとの関連で重量パーセントを示す曲線、またはRHとの関連で含水率を示す曲線とすることができる。TA Instruments VTI−SA3などのそのようなデータを測定するのに有用な機器は当技術分野において知られており、本発明の化合物を測定するのに任意のそのような機器を使用することができる。特定の実施形態において、DVS分析は、一連の特定のRH値で走査することにより実施することができる。したがって、本発明の特定の多形は、DVS分析で特に毎時5%RHの変化で0%、50%、および95%RHで、ならびに0%および95%RHで5時間の保持時間で走査して得られる代表的な図および/またはおおよそのピークとの関連で同定および説明することができる。
【0052】
さらなる実施形態において、式(1)の化合物の個々の結晶形は、赤外(IR)スペクトル分析により得られる特徴的な曲線により同定することができる。PerkinElmerスペクトルBXフーリエ変換赤外(FTIR)分光計などのそのようなデータを測定するのに有用な機器は当技術分野において知られており、本発明の化合物を測定するのに任意のそのような機器を使用することができる。したがって、本発明の特定の多形は、FTIR分析で得られる代表的な図および/またはおおよそのピークとの関連で同定および説明することができる。
【0053】
本発明は、式(1)の化合物の水和物の形も提供する。特定の実施形態において、式(1)の化合物の水和物は、約10重量%〜約40重量%の水を含むことができる。他の実施形態において、式(1)の化合物の水和物は、約10重量%〜約35重量%、約10重量%〜約30重量%、約12重量%〜約28重量%、または約14重量%〜約28重量%の量で水を含むことができる。本発明の水和物の形は、約25℃の温度(±2℃)および約60%の相対湿度(±5%RH)で貯蔵すると安定であることが好ましい。好ましくは、そのような安定性は、水和物がさらに水をあまり吸収しないこと(例えば、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満の吸収)を特徴とすることができる。そのような安定性は、水和物が水をあまり失わないこと(例えば、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、または約1%以下の低下)をさらに特徴とすることができる。水和物は、上記の条件下で少なくとも約1カ月、少なくとも約2カ月、少なくとも約3カ月、少なくとも約6カ月、少なくとも約9カ月、または少なくとも約12カ月の貯蔵期間にわたって安定であることが好ましい。
【0054】
式(1)の化合物の個々の多形型は、適切な溶媒および抗溶媒の併用系を介して得ることができる。「溶媒」および「抗溶媒」という用語は、使用し得る物質の範囲を限定することを意図したものではなく、むしろ、使用する各物質間の関係を、それらが明確に正反対の性質を有するという点から説明するのに使用するものである。「溶媒」は、特に、極性溶媒と呼ぶことができる極性の液体とすることができる。「抗溶媒」は、特に、無極性溶媒と呼ぶことができる無極性の液体とすることができる。
【0055】
式(1)の化合物の試料は、任意の好適な極性溶媒(複数可)を使用して可溶化することができる。使用し得る極性溶媒の非限定的な例としては、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびそれらの組合せが挙げられる。当然のことながら、当業者が本開示に照らして認識できる他の極性溶媒も使用することができる。例えば、特定の実施形態において、好適な極性溶媒は、周囲条件(例えば、約18〜25℃および1atm)で液体であり、少なくとも約15の比誘電率を有する任意の物質とすることができる。特定の実施形態において、極性溶媒は、水と少なくとも1種のさらなる極性溶媒、特にアルコール、より具体的にはメタノールとの混合物とすることができる。
【0056】
式(1)の化合物の極性溶媒系溶液を抗溶媒と共に直接使用して、所望の多形型を単離することができる。一部の実施形態において、可溶化した式(1)の化合物を処理して化合物の純度を向上させることができる。例えば、ある量の活性炭を該溶液に添加して混合物を形成することができる。当然のことながら、溶液から不純物を除去するのに有用な任意のさらなる物質も使用することができる。純度向上剤(すなわち、活性炭)との混合物は、所望の多形型の単離に移る前に濾過することが好ましい。例えば、該混合物は、該溶液から活性炭または他の純度向上剤を除去するのに適したSEITZ(登録商標)K200フィルター、および/またはCELITE(登録商標)フィルターパッド(例えば、厚さ約5mm)、および/または任意のさらなる濾材を介して濾過することができる。次いで、回収した精製溶液は、続けて抗溶媒で処理することができる。
【0057】
式(1)の化合物の極性溶媒溶液は、そこに好適な無極性溶媒を添加することによりスラリー化することができる。使用し得る無極性溶媒の非限定的な例としては、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸エチル、ジオキサン、およびそれらの組合せが挙げられる。当然のことながら、当業者が本開示に照らして認識できる他の無極性溶媒も使用することができる。例えば、特定の実施形態において、好適な無極性溶媒は、周囲条件で液体であり、約15未満の比誘電率を有する任意の物質とすることができる。
【0058】
無極性溶媒の選択は、特に、回収する多形型に関連し得る。そのような特異性の例は本明細書において示している。上記のように形成されるスラリーを、好ましくは撹拌しながら、所定の期間放置して、固体の生成物を最大限に形成することができる。固体の生成物は、濾過および任意選択の洗浄により回収することができる。特定の実施形態において、濾過した生成物は、最初は極性溶媒と無極性溶媒との混合物で洗浄し、2回目は無極性溶媒単独で洗浄することができる。
【0059】
本明細書に添付の実施例は、様々な溶媒/抗溶媒系を評価して、安定な結晶塩の形成に有用な系を同定することができる試験を説明している。同定した式(1)の化合物の2種の特定の安定な結晶塩の多形型を以下に示している。
【0060】
A.I型多形
I型多形は、本明細書に記載の通りに調製することができ、その溶媒は水とメタノールとの混合物であり、抗溶媒はMEKまたはMIBKである。より具体的には、式(1)の化合物は、水とメタノールとの混合物中で可溶化することができ、得られた溶液はMEKまたはMIBK中でスラリー化することができる。スラリーは、最初に約40℃の温度まで加熱し、周囲温度まで冷却させることができる。I型多形は25℃(±2℃)および60%相対湿度(±5%RH)で安定であり、水をあまり吸収することはない。
【0061】
40kV/40mA Cuアノードを有するPANALYTICAL(登録商標)X’Pert回折計(PANALYTICAL B.V.、オランダ)を使用してI型のX線粉末回折パターンを得た。厚さ0.4mmの静止試料を使用し、KAPTON(登録商標)箔で覆った。0.02°のステップサイズおよび2.4秒のステップ時間で2〜50°シータの測定範囲を使用した。
【0062】
抗溶媒としてMEKを使用したI型のX線粉末回折パターンを図1に例示している。抗溶媒としてMiBKを使用したI型のX線粉末回折パターンを図2に例示している。それらから分かるように、形態IのXRDパターンは一貫した一連のメインピークを示しているが、I型は、該多形を単離するのに利用する抗溶媒に応じてわずかに変動することができる。したがって、本発明のI型多形は、2つの派生型、すなわち、Ia型多形(MEK抗溶媒)およびIb型多形(MIBK抗溶媒)を有すると説明することができる。
【0063】
Ia型多形は、図1に示しているディフラクトグラムを有し、水/メタノールを溶媒としておよびMEKを抗溶媒として使用して得られる。Ia型は、以下で表1に示しているおおよそのX線粉末回折「d−間隔」ピーク(すなわち、2°θでの格子面間隔ピーク)を特徴とすることができる。一部の実施形態において、以下に示している正確な格子面間隔ピークは、最大で0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、または0.2度の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0064】
【表1】
【0065】
Ib型多形は図2に示しているディフラクトグラムを有し、水/メタノールを溶媒としておよびMIBKを抗溶媒として使用して得られる。Ib型は、以下で表2に示しているおおよそのX線粉末回折「d−間隔」ピーク(すなわち、2°θでの格子面間隔ピーク)を特徴とすることができる。一部の実施形態において、以下に示している正確な格子面間隔ピークは、最大で0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、または0.2度の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0066】
【表2】
【0067】
I型は、示差走査熱量測定法(DSC)を使用して求めた約310℃の吸熱最大値を有することをさらに特徴とする。特に、結晶性固体は、この最大値よりも上で分解する。特定の実施形態において、Ib型多形は、PerkinElmer熱量計を使用し、試料を密閉された金の皿に入れ、毎分約10℃の速度で25℃から230℃まで加熱して得た、図3に示しているDSC曲線を特徴とすることができる。具体的には、Ib型のDSC曲線は、92.7℃、120.1℃、および125.9℃でピークを有することを特徴とすることができる。約93℃でのピークは水の損失を示した。理論に拘束されることを望むものではないが、約120℃でのピークは、この温度での小さな構造変化に起因すると考えられている。一部の実施形態において、上記の正確なDSC曲線ピークは、最大で0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5℃の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0068】
他の実施形態において、Ib型多形は、図4に示しているTGA曲線を特徴とすることができる。熱重量分析は、毎分約10℃の速度で加熱することにより室温から250℃の温度範囲にわたって加熱することにより実施した。
【0069】
さらなる実施形態において、Ib型多形は、図5から図8に示している様々なDVS曲線を特徴とすることができる。DVS分析は、相対湿度を5%RHの変化の速度で50%RH、0%RH、95%RH、0%RH、95%RH、および50%RHで変化させ、0%および95%RHで5時間保持しながら走査することにより実施した。
【0070】
さらなる実施形態において、Ib型多形は、PerkinElmerスペクトルBXフーリエ変換赤外(FTIR)分光計を使用して得た、図9に示しているIRスペクトルを特徴とすることができる。分析は、具体的には、Solvias SOP A.52,S255_01に従って実施した。Ib型は、以下で表3に示しているおおよそのFTIRピーク(cm−1)を特徴とすることができる。一部の実施形態において、正確なピーク値は、最大で0.01、0.05、0.1、0.5、1、または2cm−1の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0071】
【表3】
【0072】
B.II型多形
II型多形は、本明細書に記載の通りに調製することができ、その溶媒は水とメタノールとの混合物であり、抗溶媒はTHFである。より具体的には、式(1)の化合物は、水とメタノールとの混合物中で可溶化することができ、得られた溶液はTHF中でスラリー化することができる。スラリーは、最初に約40℃の温度まで加熱し、周囲温度まで冷却させることができる。II型多形は、25℃(±2℃)および60%相対湿度(±5%RH)で安定であり、水をあまり吸収することはない。
【0073】
II型のX線粉末回折パターンは、形態Iに関して上記したのと同じ機器を使用して得た。抗溶媒としてTHFを使用した形態IIのX線粉末回折パターンを図10に例示している。II型は、以下で表4に示しているおおよそのX線粉末回折「d−間隔」ピーク(すなわち、2°θでの格子面間隔ピーク)を特徴とすることができる。一部の実施形態において、以下に示している正確な格子面間隔ピークは、最大で0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、または0.2度の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0074】
【表4】
【0075】
II型は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して求めた約310℃の吸熱最大値を有することをさらに特徴とする。特に、結晶性固体は、この最大値よりも上で分解する。特定の実施形態において、II型多形は、I型に関して上記したのと同じ機器および試験条件を使用して得た、図11に示しているDSC曲線を特徴とすることができる。約68℃でのピークは緩く結合した水の放出を示し、一方、約95℃でのピークは密接に結合した水の放出を示した。約116℃でのピークは、この温度での小さな相転移に起因すると考えられている。一部の実施形態において、上記の正確なDSC曲線ピークは、最大で0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5℃の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0076】
他の実施形態において、II型多形は、図12に示しているTGA曲線を特徴とすることができる。熱重量分析は、毎分約10℃の速度で加熱することにより室温から250℃の温度範囲にわたって加熱することにより実施した。
【0077】
さらなる実施形態において、II型多形は、図13から図16に示している様々なDVS曲線を特徴とすることができる。DVS分析は、I型に関して上記した通りに実施した。
【0078】
さらなる実施形態において、Ib型多形は、I型に関して上記した通りに得た、図17に示しているIRスペクトルを特徴とすることができる。II型は、以下で表5に示しているおおよそのFTIRピーク(cm−1)を特徴とすることができる。一部の実施形態において、正確なピーク値は、最大で0.01、0.05、0.1、0.5、1、または2cm−1の変動(すなわち、プラスまたはマイナス)を示し得る。
【0079】
【表5】
【0080】
C.調製方法
抗葉酸化合物を合成する様々なプロセスが、全てを参照により本明細書に組み込む米国特許第4,996,207号、米国特許第5,550,128号、Abrahamら(1991)J.Med.Chem.34:222〜227、およびRosowskyら(1991)J.Med.Chem.34:203〜208で開示されている。式(1)の化合物の合成に対して特異的な方法は、その開示全体を参照により本明細書に組み込む2009年10月8日公開の米国特許出願公開第2009/0253719号で示されている。
【0081】
上で論じたように、一部の実施形態において、式(1)の化合物の純度を、該化合物の所望の多形型を形成する前に増大させることが有用となり得る。具体的には、式(1)の化合物は、不純物(例えば、式(1)の実際の化合物ではない任意の物質)を吸着および/または吸収するのに適した物質と組み合わせることができる。例えば、炭素処理を使用することができる。特定の実施形態において、出発化合物は、水とメタノールとの混合物などの好適な溶媒中で活性炭と混合することができる。次いで、該混合物は、SEITZ(登録商標)K200フィルターおよび/またはCELITE(登録商標)パッドなどを介して濾過することができる。濾過した溶液は、本発明の所望の多形の形成において直接使用することができる。当業者が本開示に照らして認識できる任意のさらなる物質(例えば、ゼオライト)も、式(1)の化合物から不純物を除去するのに有用な物質として本開示により包含される。
【0082】
所望の多形型の形成は、水および/またはメタノールなどの好適な極性溶媒中の式(1)の化合物の溶液を加熱するステップを含むことができる。加熱は、最大で少なくとも約30℃、好ましくは少なくとも約35℃、より好ましくは少なくとも約40℃の温度とすることができる。当然のことながら、加熱は、所望であれば、最大でさらに高い温度まで行うことができるが、記載した温度を超えて加熱する必要はない。
【0083】
所望の多形型を形成するのに使用する所望の抗溶媒は、加熱の間または所望の温度に達した後に添加することができる。所望の温度への加熱の間および/または後に撹拌(例えば、混合)を適用することも有用となり得る。加熱および抗溶媒の添加後、完全な混合物は、おおよそ周囲温度(例えば、約18℃〜約25℃)まで冷却することができる。冷却は、任意の外部の冷却手段を使用しない受動冷却などのように長時間にわたって実施することが好ましい。撹拌は、冷却の間継続することができる。一部の実施形態において、バルク溶液に所望の多形の結晶を播種することが有用となり得るが、これは必須ではない。冷却した混合物は本発明の所望の多形を含むはずであり、それは濾過などの従来の手段を介して単離することができる。
【0084】
III.医薬組成物
本発明により提供する式(1)の化合物の多形型を使用して医薬組成物を形成することができる。該組成物は、該多形型の医薬として許容されるプロドラッグおよび活性な代謝物も含み得る。さらに、本発明の組成物は、様々な手段により調製および送達することができる。該医薬組成物は、該多形を1種以上のその医薬として許容される担体、および場合により、他の治療成分と共に送達するように調製することができる。各担体は、該組成物の任意の他の成分と適合し、そのレシピエントにとって有害ではないという点で許容されるものでなければならない。担体は、また、薬剤の任意の望ましくない副作用を低減し得る。本発明において使用することができる担体の非限定的な例は、参照によりその全体を本明細書に組み込むWangら(1980)J.Parent.Drug Assn.34(6):452〜462に記載されている。
【0085】
本発明の医薬組成物は、式(1)の化合物の多形を、以下でさらに説明している治療有効量で含むことが好ましい。特定の実施形態において、該組成物中の該多形の量は、該組成物の総重量に対するものである。例えば、特定の実施形態において、該医薬組成物は、多形を約0.01mg/g〜約100mg/gの量で含む。さらなる実施形態において、該医薬組成物は、多形を約0.02mg/g〜約80mg/g、約0.05mg/g〜約75mg/g、約0.08mg/g〜約50mg/g、約0.1mg/g〜約30mg/g、約0.25mg/g〜約25mg/g、または約0.5mg/g〜約20mg/gの量で含む。薬物の量は、単位用量(例えば、単一のカプセルまたは錠剤中の薬物の量)を基準とすることもできる。
【0086】
本発明の組成物としては、本明細書に記載の多形の投与を達成する限り、短期の、迅速に発現する、迅速に消失する、制御放出性の、持続放出性の、遅延放出性の、およびパルス放出性組成物を挙げることができる。参照によりその全体を本明細書に組み込むRemington’s Pharmaceutical Sciences(第18版、Mack Publishing Company、Eaton、Pennsylvania、1990)を参照されたい。
【0087】
本発明の医薬組成物は、経口、(静脈内、筋肉内、皮下、皮内、関節内、滑液嚢内、髄腔内、動脈内、心臓内、皮下、眼窩内、嚢内、脊髄内、胸骨内、および経皮を含めた)非経口、(経皮、頬側、および舌下を含めた)局所、肺、膣、尿道、および直腸投与を含めた様々な送達の様式に適している。投与は、鼻内噴霧、外科移植、手術用の内部ペイント、輸液ポンプを介する、またはカテーテル、ステント、気球もしくは他の送達装置を介することもできる。最も有用および/または有益な投与の様式は、特にレシピエントおよび治療される障害の状態に応じて変えることができる。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、以下でより十分に説明している経口剤形で提供する。
【0088】
該医薬組成物は、好都合なことに、単位剤形で利用可能にすることができ、それにより、そのような組成物は、医薬分野において一般に知られている方法のいずれかにより調製することができる。一般に言えば、そのような調製方法は、(様々な方法により)本発明の活性化合物を、1種以上の成分からなることができる好適な担体または他のアジュバントと組み合わせるステップを含む。次いで、活性成分と1種以上のアジュバントとの組合せを物理的に処理して、送達に適した形で組成物を提示する(例えば、成形して錠剤にする、または水性懸濁液を形成する)。
【0089】
経口投薬に適した本発明の医薬組成物は、それぞれが所定の量の活性薬剤を含有する、(速溶性または発泡性のものを含めた)錠剤、カプセル、カプレット、およびオブラートなどの様々な形をとることができる。該組成物は、粉末または顆粒、水性または非水性液体中の溶液または懸濁液の形、および液体エマルジョン(水中油および油中水)とすることもできる。活性薬剤は、巨丸剤、舐剤、またはペーストとして送達することもできる。上記剤形の調製方法は一般に当技術分野において知られており、任意のそのような方法が本発明の組成物の送達において使用するためのそれぞれの剤形の調製に好適であろうことは一般に理解される。
【0090】
一実施形態において、化合物は、不活性希釈剤または食用担体などの医薬として許容されるビヒクルと組み合わせて経口投与することができる。経口組成物は、硬または軟殻ゼラチンカプセル中に封入してもよく、圧縮して錠剤にしてもよく、または患者の食事の食物に直接組み込んでもよい。該組成物および調製物の割合は変化させ得るが、そのような治療上有用な組成物中の物質の量は、有効な投薬レベルが得られるような量であることが好ましい。
【0091】
該化合物を含有する硬カプセルは、ゼラチンなどの生理的に分解可能な組成物を使用して作製することができる。そのような硬カプセルは該化合物を含み、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンなどの不活性な固体希釈剤を含めた追加の成分をさらに含み得る。該化合物を含有する軟ゼラチンカプセルは、ゼラチンなどの生理的に分解可能な組成物を使用して作製することができる。そのような軟カプセルは該化合物を含み、該化合物は、水または落花生油、液体パラフィン、またはオリーブ油などの油媒体と混合してもよい。
【0092】
舌下錠剤は、非常に迅速に溶解するように考案されている。そのような組成物の例としては、酒石酸エルゴタミン、硝酸イソソルビド、およびイソプロテレノールHCLが挙げられる。これらの錠剤の組成物は、薬物に加えて、ラクトース、粉末状スクロース、デキストロース、およびマンニトールなどの様々な可溶性の医薬品添加物を含有する。本発明の固体剤形は、場合によりコーティングしてもよく、好適なコーティング物質の例としては、セルロースポリマー(セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートなど)、ポリビニルアセテートフタレート、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、ならびにメタクリル樹脂(EUDRAGIT(登録商標)という商品名で市販されているものなど)、ゼイン、セラック、および多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
本発明の医薬調製物の粉末状および顆粒状組成物は、知られている方法を使用して調製することができる。そのような組成物は、患者に直接投与するか、またはさらなる剤形の調製(錠剤を形成する、カプセルを充填する、またはそこに水性もしくは油状ビヒクルを添加することにより水性もしくは油状の懸濁液もしくは溶液を調製することなど)において使用することができる。これらの組成物のそれぞれは、分散または湿潤剤、懸濁剤、および保存剤などの1種または複数の添加剤をさらに含み得る。追加の医薬品添加物(例えば、賦形剤、甘味料、香味物質、または着色剤)もこれらの組成物中に含むことができる。
【0094】
経口投与に適した本発明の医薬組成物の液体組成物は、液体の形または使用前に水もしくは別の好適なビヒクルで戻すことを意図した乾燥製品の形で調製、包装、および販売することができる。
【0095】
本発明の1種以上の化合物を含有する錠剤は、例えば、圧縮または成形などにより、場合により1種以上のアジュバントまたは補助成分と共に、当業者に容易に知られている任意の標準的プロセスにより製造することができる。各錠剤は、場合によりコーティングまたは割線を入れてもよく、活性薬剤の緩徐または制御された放出を実現するように製剤化してもよい。
【0096】
上で論じたものに加えて、本発明の組成物において使用するためのアジュバントまたは補助成分は、結合剤、賦形剤、潤滑剤、崩壊剤、希釈剤、界面活性剤、安定剤、保存剤、香味物質および着色剤などの、一般に当技術分野において許容されると考えられる任意の医薬成分を包含することができる。結合剤は、一般に、錠剤の結合力を促進し、錠剤が圧縮後に確実に無傷なままとなるようにするのに使用される。好適な結合剤としては、デンプン、多糖類、ゼラチン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ワックス、ならびに天然および合成ガムが挙げられるが、これらに限定されない。許容される賦形剤としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末状セルロース、および微結晶性セルロース、ならびに、マンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールなどの可溶性の物質が挙げられる。潤滑剤は、錠剤の製造を容易にするのに有用であり、植物油、グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸が挙げられる。錠剤の崩壊を容易にするのに有用な崩壊剤としては、一般に、デンプン、粘土、セルロース、アルギン、ガム、および架橋ポリマーが挙げられる。一般に錠剤に嵩を増すために含まれる希釈剤としては、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、および粉糖を挙げることができる。本発明の組成物における使用に適した界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性、または非イオン性界面活性剤とすることができる。安定剤を該組成物中に含んで、酸化反応などの活性薬剤の分解につながる反応を阻害または軽減することができる。
【0097】
固体剤形は、コーティングの適用などにより、活性薬剤の遅延放出を実現するように製剤化することができる。遅延放出コーティングは当技術分野において知られており、そのようなものを含有する剤形は、任意の知られている好適な方法により調製することができる。そのような方法は、一般に、固体剤形(例えば、錠剤またはカプレット)の調製後に、遅延放出コーティング組成物の適用を含む。適用は、無気噴霧、流動床コーティング、コーティングパンの使用などの方法により実施することができる。遅延放出コーティングとして使用するための物質は、セルロース系の物質(例えば、セルロースブチレートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびカルボキシメチルエチルセルロース)、ならびにアクリル酸、メタクリル酸、およびそれらのエステルのポリマーおよびコポリマーなどのポリマー状の性質のものとすることができる。
【0098】
本発明の固体剤形は、持続放出性(すなわち、長期間にわたって活性薬剤を放出する)とすることもでき、また、遅延放出性であってもなくてもよい。持続放出性組成物は当技術分野において知られており、一般に、不溶性プラスチック、親水性ポリマー、または脂肪族化合物などの徐々に分解または加水分解できる物質の基質内に薬物を分散させることにより調製される。あるいは、固体剤形は、そのような物質でコーティングしてもよい。
【0099】
特定の実施形態において、本明細書に開示の化合物および組成物は、医療器具を介して送達することができる。そのような送達は、一般に、これらに限定されないが、ステント、カテーテル、気球カテーテル、シャント、またはコイルを含めた任意の挿入可能または移植可能な医療器具を介して実施することができる。一実施形態において、本発明は、その表面が本明細書に記載の化合物または組成物でコーティングされたステントなどの医療器具を提供する。本発明の医療器具は、例えば、本明細書に開示のものなどの疾患または状態を治療、防止するか、またはそれらの経過に影響を及ぼすための任意の用途において使用することができる。
【0100】
本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、間欠的に投与することができる。治療有効用量の投与は、例えば持続放出性組成物のように継続的に達成するか、または、例えば、1日あたり1回、2回、3回、もしくはそれ以上の投与のような所望の連日投薬量レジメンに従って達成することができる。「中断の期間」とは、組成物の継続的な持続放出または連日投与の中断を意図したものである。中断の期間は、継続的な持続放出または連日投与の期間より長くても短くてもよい。中断の期間の間、関連する組織中での組成物の成分のレベルは、実質的に、治療の間に得られる最大レベル未満である。中断期間の好ましい長さは、使用する組成物の有効用量の濃度および形態次第である。中断期間は、少なくとも2日間、少なくとも4日間または少なくとも1週間とすることができる。他の実施形態において、中断の期間は、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月またはそれ以上である。持続放出性組成物を使用する場合、中断期間は、体内における組成物のより長い滞留時間を考慮に入れるために、延長しなければならない。あるいは、有効用量の持続放出性組成物の投与の頻度は、したがって減少させることができる。本発明の組成物の投与の間欠スケジュールは、所望の治療効果、最終的には疾患または障害の治療が達成されるまで継続することができる。
【0101】
本発明の医薬組成物は、単一の本明細書に記載の多形を含むか、2種以上の本明細書に記載の多形を含むか、または1種以上の本明細書に記載の多形を1種以上のさらなる医薬として活性な化合物と共に含むことができる(すなわち、同時投与)。したがって、本発明の組成物中の医薬として活性な化合物は、固定の組合せで投与することができると認識されている(すなわち、両方の活性物質を含有する単一の医薬組成物)。あるいは、医薬として活性な化合物は、同時に投与することができる(すなわち、同時に投与する別個の組成物)。別の実施形態において、医薬として活性な化合物を順次投与する(すなわち、1種以上の医薬として活性な化合物の投与に続き、1種以上の医薬として活性な化合物を別個に投与する)。当業者であれば、最も好ましい投与の方法により所望の治療効果が得られることが認識されよう。
【0102】
治療有効量の本発明の組成物の送達は、治療有効用量の該組成物の投与を介して実現することができる。したがって、一実施形態において、治療有効量は、異常な細胞増殖を治療するのに有効な量である。別の実施形態において、治療有効量は、炎症を治療するのに有効な量である。さらに別の実施形態において、治療有効量は、関節炎を治療するのに有効な量である。さらに別の実施形態において、治療有効量は、喘息を治療するのに有効な量である。
【0103】
活性化合物は、患者に治療量の本発明の化合物を、重篤な毒性作用なしで、in vivoで送達するのに十分な量で医薬組成物中に含まれる。薬物組成物中の活性化合物の濃度は、薬物の吸収、失活、および排出速度ならびに当業者に知られている他の因子次第である。投薬量が、また、軽減されるべき状態の重症度と共に変動することに留意されたい。任意の特定の対象について、個々の必要性および投与する人物または組成物の投与を監督する人物の専門的な判断に従って、時間とともに特定の投薬量レジメンを調整すべきであり、本明細書に記載の投薬範囲は単に例示的なものであり、特許請求している組成物の範囲または実施を限定することを意図したものではないことをさらに理解されたい。活性成分は、一度に投与してもよく、または様々な時間間隔で投与される多数のより小さい用量に分割してもよい。
【0104】
本発明の治療有効量は、レシピエントの体重に基づいて決定することができる。例えば、一実施形態において、本発明の1種または複数の化合物の治療有効量は、1日あたり体重の約0.1μg/kg〜体重の約5mg/kgの範囲である。あるいは、治療有効量は、固定用量の観点から記述することができる。したがって、別の実施形態において、本発明の1種または複数の化合物の治療有効量は、1日あたり約0.01mg〜約500mgの範囲である。当然のことながら、そのような量は、1日を通して投与される多数のより小さい投薬量に分割できることが理解される。
【0105】
本明細書に記載の1種以上の化合物を含む本発明の組成物は、治療有効量で哺乳動物、好ましくはヒトに投与することを企図したものである。本明細書に記載の状態または疾患のいずれかの治療用の化合物または組成物の有効用量は、従来の技術の使用により、および類似の環境下で得られる結果を観察することにより容易に決定することができる。組成物の有効量は、対象の体重、性別、年齢、および病歴に応じて変動すると予期される。当然のことながら、これらに限定されないが、関与している特定の疾患、関与の程度または疾患の重症度、個々の患者の応答、投与される特定の化合物、投与の様式、投与される調製物のバイオアベイラビリティー特性、選択される用量レジメン、および併用薬の使用を含めた他の因子も、送達されるべき組成物の有効量に影響を及ぼし得る。該化合物は、治療される状態に関連する望ましくない症状および臨床徴候を軽減するのに十分な期間、優先的に投与される。効力および投薬量を求める方法は当業者に知られている。例えば、参照により本明細書に組み込むIsselbacherら(1996)Harrison’s Principles of Internal Medicine 第13版、1814〜1882を参照されたい。
【0106】
IV.活性薬剤の組合せ
様々な疾患または状態の治療において使用するために、本発明の医薬組成物は、様々な組合せで上記の多形を含むことができる。例えば、一実施形態において、本発明の医薬組成物は、単一の式(1)の化合物の多形を含むことができる。別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、2種以上の式(1)の化合物の多形を含むことができる。さらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、1種以上の式(1)の化合物の多形を、治療特性を有すると認識されている1種以上のさらなる化合物と共に含むことができる。例えば、本明細書に記載の医薬組成物は、1種以上の毒性を低下させる化合物(例えば、葉酸またはロイコボリン)と共に投与することができる。さらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、抗炎症剤、抗関節炎剤、抗生物質、抗真菌剤、または抗ウイルス剤であることが知られている1種以上の化合物と共に投与することができる。そのようなさらなる化合物は、該医薬組成物の成分として提供するか、または本発明の組成物と交互に提供することができる。換言すると、本発明の医薬組成物を式(1)の化合物の多形と同じ組成物中の追加の活性薬剤(複数可)と共に投与するか、または追加の活性薬剤(複数可)を本発明の医薬組成物とは別の送達形態で投与することができる。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、以下に記載の群から選択される1種以上の化合物と組み合わせて提供することができる。
【0107】
以下の記述において、上で開示している多形を有する本発明の医薬組成物中のさらなる活性薬剤として有用な特定の化合物は、一般に記載した化合物を使用して治療される特定の疾患または状態に関連して説明することができる。そのような疾患または状態の開示は、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、特に、本明細書に開示の医薬組成物を使用して治療することができる疾患または状態を限定するものではない。むしろ、そのような例示的な疾患または状態は、一般に追加の化合物を使用して治療される疾患および状態のタイプを例示するためだけに示すものである。
【0108】
追加の活性薬剤として、本発明の医薬組成物は、特定の実施形態において、抗増殖剤と共に投与することができる。増殖性障害は、現在、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然物、酵素、生物学的応答調節剤、種々の薬剤、放射性医薬品(例えば、ホルモンまたは抗体を標識とするY−90)、ホルモンおよび拮抗薬を含めた様々なクラスの化合物により治療されている。以下に列挙している抗増殖剤のいずれか、または、例えば、DeVita,V.T.,Jr.、Hellmann,S.、Rosenberg,S.A.;Cancer:Principles&Practice of Oncology、第5版、Lippincott−Raven Publishers(1997)に記載されている他の任意のそのような治療剤および成分は、本発明の医薬組成物と共に使用することができる。
【0109】
本発明の医薬組成物と共に使用するのに適した血管新生抑制剤の代表的な非限定的な例としては、レチノイド酸およびその誘導体、2−メトキシエストラジオール、ANGIOSTATIN(商標)タンパク質、ENDOSTATIN(商標)タンパク質、スラミン、スクアラミン、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤−I、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤−2、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−2、軟骨由来の阻害剤、パクリタキセル、血小板第4因子、硫酸プロタミン(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(ズワイガニの甲羅から調製される)、硫酸化多糖類ペプチドグリカン複合体(sp−pg)、スタウロスポリン、(例えば、プロリン類似体(1−アゼチジン−2−カルボン酸(LACA)、cis−ヒドロキシプロリン)、d,l−3,4−デヒドロプロリン、チアプロリン、アルファ、アルファ−ジピリジル、ベータ−アミノプロピオニトリルフマレート、4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3h)−オキサゾロンを含めた)基質代謝の調節剤、メトトレキセート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2マクログロブリン−血清、chimp−3、キモスタチン、ベータ−シクロデキストリンテトラデカスルフェート、エポネマイシン、フマギリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、d−ペニシラミン(CDPT)、ベータ−1−アンチコラゲナーゼ−血清、アルファ−2−抗プラスミン剤、ビサントレン、ロベンザリット二ナトリウム、n−(2−カルボキシフェニル−4−クロロアントロニル酸二ナトリウムまたは「CCA」、サリドマイド、血管新生抑制ステロイド、カルボキシアミノイミダゾール、およびBB94などのメタロプロテイナーゼ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の血管新生抑制剤としては、これらの血管新生成長因子:bFGF、aFGF、FGF−5、VEGFアイソフォーム、VEGF−C、HGF/SFおよびAng−1/Ang−2に対する抗体、好ましくは単クローン抗体が挙げられる。Ferrara N.およびAlitalo、K.「Clinical application of angiogenic growth factors and their inhibitors」(1999)Nature Medicine 5:1359〜1364。
【0110】
本発明の医薬組成物と共に使用するのに適したアルキル化剤の代表的な非限定的な例としては、メクロレタミン(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、シクロホスファミド、イホスファミド(急性および慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳房、卵巣、肺、ウィルムス腫瘍、子宮頸部、精巣、軟部組織肉腫)、メルファラン(L−サルコリシン)(多発性骨髄腫、乳房、卵巣)、クロラムブシル(慢性リンパ性白血病、原発性マクログロブリン血症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)などのナイトロゲンマスタード、ヘキサメチルメラミン(卵巣)、チオテパ(膀胱、乳房、卵巣)などのエチレンイミンおよびメチルメラミン、ブスルファン(慢性顆粒球白血病)などのアルキルスルホネート、カルムスチン(BCNU)(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、原発性脳腫瘍、多発性骨髄腫、悪性黒色腫)、ロムスチン(CCNU)(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、原発性脳腫瘍、小細胞肺)、セムスチン(メチル−CCNU)(原発性脳腫瘍、胃、結腸)、ストレプトゾシン(STR)(悪性膵島細胞腫瘍、悪性カルチノイド)などのニトロソ尿素、ならびにダカルバジン(DTIC−ジメチルトリアゼノイミダゾール−カルボキサミド)(悪性黒色腫、ホジキン病、軟部組織肉腫)などのトリアゼンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
本発明の医薬組成物と共に使用するのに適した代謝拮抗剤の代表的な非限定的な例としては、メトトレキセート(アメトプテリン)(急性リンパ性白血病、絨毛癌、菌状息肉症、乳房、頭頸部、肺、骨肉腫)などの葉酸類似体、フルオロウラシル(5−フルオロウラシル−5−FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン−FUdR)(乳房、結腸、胃、膵臓、卵巣、頭頸部、膀胱、前癌性皮膚病変)(局所)、シタラビン(シトシンアラビノシド)(急性顆粒球および急性リンパ性白血病)などのピリミジン類似体、メルカプトプリン(6−メルカプトプリン−6−MP)(急性リンパ性、急性顆粒球および慢性顆粒球白血病)、チオグアニン(6−チオグアニン−TG)(急性顆粒球、急性リンパ性および慢性顆粒球白血病)、ペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン)(毛様細胞白血病、菌状息肉症、慢性リンパ性白血病)などのプリン類似体および関連する阻害剤、ビンブラスチン(VLB)(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、乳房、精巣)、ビンクリスチン(急性リンパ性白血病、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺)などのビンカアルカロイド、エトポシド(精巣、小細胞肺および他の肺、乳房、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性顆粒球白血病、カポジ肉腫)、およびテニポシド(精巣、小細胞肺および他の肺、乳房、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性顆粒球白血病、カポジ肉腫)などのエピポドフィロトキシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
本発明の医薬組成物と共に使用するのに適した細胞毒性剤の代表的な非限定的な例としては、ドキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、リン酸エストラムスチンナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、遺伝子組換えインターフェロンアルファ−2a、パクリタキセル、テニポシド、およびストレプトゾシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
本発明の医薬組成物と共に使用するのに適した天然物の代表的な非限定的な例としては、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)(絨毛癌、ウィルムス腫瘍横紋筋肉腫、精巣、カポジ肉腫)、ダウノルビシン(ダウノマイシン−ルビドマイシン)(急性顆粒球および急性リンパ性白血病)、ドキソルビシン(軟部組織、骨原性、および他の肉腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性白血病、乳房、泌尿生殖器、甲状腺、肺、胃、神経芽細胞腫)、ブレオマイシン(精巣、頭頸部、皮膚、食道、肺、および泌尿生殖器、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、プリカマイシン(ミトラマイシン)(精巣、悪性高カルシウム血症)、マイトマイシン(マイトマイシンC)(胃、子宮頸部、結腸、乳房、膵臓、膀胱、頭頸部)などの抗生物質、L−アスパラギナーゼ(急性リンパ性白血病)などの酵素、および、インターフェロン−アルファ(毛様細胞白血病、カポジ肉腫、黒色腫、カルチノイド、腎細胞、卵巣、膀胱、非ホジキンリンパ腫、菌状息肉症、多発性骨髄腫、慢性顆粒球白血病)などの生物学的応答調節剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
本明細書に開示の医薬組成物と共に使用することができる追加の薬剤としては、シスプラチン(cis−DDP)、カルボプラチン(精巣、卵巣、膀胱、頭頸部、肺、甲状腺、子宮頸部、子宮内膜、神経芽細胞腫、骨肉腫)などの白金配位錯体;ミトキサントロン(急性顆粒球白血病、乳房)などのアントラセンジオン;ヒドロキシ尿素(慢性顆粒球白血病、真性多血症、本態性血小板増加症、悪性黒色腫)などの置換尿素;プロカルバジン(N−メチルヒドラジン、MIH)(ホジキン病)などのメチルヒドラジン誘導体;ミトタン(o,p’−DDD)(副腎皮質)、アミノグルテチミド(乳房)などの副腎皮質抑制剤;プレドニゾン(急性および慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、乳房)などの副腎皮質ステロイド;カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール(子宮内膜、乳房)などのプロゲスチン;ならびにリン酸ベタメタゾンナトリウムおよび酢酸ベタメタゾンなどのステロイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
本発明の医薬組成物と共に使用するのに適したホルモンおよび拮抗薬の代表的な非限定的な例としては、エストロゲン:ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール(乳房、前立腺);抗エストロゲン剤:タモキシフェン(乳房);アンドロゲン:プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン(乳房);抗アンドロゲン剤:フルタミド(前立腺);ゴナドトロピン放出ホルモン類似体:およびロイプロリド(前立腺)が挙げられるが、これらに限定されない。他のホルモンとしては、酢酸メドロキシプロゲステロン、エストラジオール、酢酸メゲストロール、酢酸オクトレオチド、二リン酸ジエチルスチルベストロール、テストラクトン、および酢酸ゴセレリンが挙げられる。
【0116】
本発明の医薬組成物は、関節炎を治療するのに使用される治療剤と共に使用することができる。そのような薬剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、アスピリン(アセチルサリチル酸)、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、およびアセトアミノフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);
アセトアミノフェン、オピオイド鎮痛薬、および経皮フェンタニルなどの鎮痛薬;
エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、アナキンラ、アバタセプト、トリウキシマブ、セルトリズマブペゴール、およびトシリズマブなどの生物学的応答調節剤;
グルココルチコイド(GC)、フルチカゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、アドレナリン、アルドステロン、酢酸コルチゾン、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、プロシノニド、リメキソロン、およびスプラレナールコルテックス(Suprarenal Cortex)などのコルチコステロイドまたはステロイド;
ヒドロキシクロロキン、シクロホスファミド、クロラムブシル、金化合物オーラノフィン、スルファサラジン、ミノサイクリン、シクロスポリン、トール様受容体作動薬および拮抗薬、キナーゼ阻害剤(例えば、p38 MAPK)、免疫抑制剤および腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤(例えば、エタネルセプト、インフリキシマブ、およびアダリムマブ)などの疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD);
アミトリプチリン、フルオキセチン、シクロベンザプリン、トラマドール、ガバペンチン、プレガバリン、および二重再取込み阻害剤などの線維筋痛治療薬;
エストロゲン、副甲状腺ホルモン、ビスホスホネート、選択的な受容体分子、および骨形成剤などの骨粗鬆症治療薬;
アロプリノール、プロベネシド、ロサルタン、およびフェノフィブレートなどの痛風治療薬;
アシトレチンなどの乾癬治療薬;ならびに
局所NSAIDsおよびカプサイシンなどの局所治療。
【0117】
本発明の医薬組成物は、また、喘息を治療するのに使用される治療剤と共に使用することができる。そのような薬剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
クロモリンナトリウムおよびフマル酸ケトチフェンなどの抗アレルギー剤;
NSAIDsおよびステロイド系抗炎症剤(例えば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニド)などの抗炎症剤;
臭化イプラトロピウム、ベラドンナアルカロイド、アトロピン、および臭化オキシトロピウムなどの抗コリン作用剤;
クロルフェニラミン、ブロムフェニラミン、ジフェンヒドラミン、クレマスチン、ジメンヒドリネート、セチリジン、ヒドロキシジン、メクリジン、フェキソフェナジン、ロラタジン、およびエナジンなどの抗ヒスタミン剤;
アルブタモール、テルブタリン、エピネフリン、メタプロテレノール、臭化イプラトロピウム、麻黄(アルカロイドの源)、エフェドリン、およびプソイドエフェドリンなどのβ2−アドレナリン作動薬(ベータ作動薬);
ザフィルルカストおよびジロイトン、モンテルカストなどのロイコトリエン受容体拮抗薬;
テオフィリン、ジフィリン、およびオクストリフィリンなどのキサンチン(気管支拡張剤);
キサンチン、メチルキサンチン、オキシトリフィリン、アミノフィリンなどの種々の喘息治療剤、ザルダベリンなどのホスホジエステラーゼ阻害剤、ニフェジピンなどのカルシウム拮抗薬、およびクロマカリムなどのカリウム活性化剤;ならびに
クロモグリク酸ナトリウム、クロモリンナトリウム、ネドクロミル、およびケトチフェンなどの予防薬剤(複数可)。
【0118】
さらに、本発明の医薬組成物と共に使用することができる活性薬剤の非限定的な例としては、乾癬治療剤、炎症性腸疾患治療(IBD治療)剤、慢性閉塞性肺疾患治療(COPD治療)剤、多発性硬化治療剤が挙げられる。
【0119】
特定の実施形態において、本発明の多形は、メトトレキセートと組み合わせることができる。具体的には、該化合物は、同じ剤形中で一緒に提供する、または併用療法において一緒に使用することを意図した別個の剤形中で提供する(例えば、第1のスケジュールで多形を投与し、第2のスケジュールでメトトレキセートを投与する)といった組合せで投与することができる。2つのスケジュールは、特に、重なってもよい。
【0120】
V.製品
本発明は、1種以上の式(1)の化合物の多形を、場合により1種以上のさらなる活性薬剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する製品も含む。該製品は、乾燥または液体の形で、本発明の使用に適した組成物を任意の担体と共に含有するバイアルまたは他の容器を含むことができる。特に、該製品は、本発明の組成物を有する容器を含むキットを含むことができる。そのようなキットにおいて、該組成物は、様々な組合せで送達することができる。例えば、該組成物は、全ての活性成分を含む単一の投薬量を含むことができる。交互に、2種以上の活性成分を提供する場合、該組成物は、それぞれが1種以上の活性成分を含む多数の投薬量を含むことができ、各投薬量は、組み合わせて、連続して、または他の非常に近接した時間で投与することを意図したものである。例えば、各投薬量は、それぞれが単一の活性成分を含むが、組み合わせて投与するためにブリスターパック、バッグなどで提供される、固体(例えば、錠剤、カプレット、カプセルなど)または液体(例えば、バイアル)とすることができる。特定の実施形態において、第1の活性成分(例えば、本発明の多形)を有する剤形は連日投与用に提供することができ、第2の活性成分(例えば、メトトレキセートまたは別の化合物)を有する剤形は毎週投与用に提供することができる。
【0121】
該製品は、本発明の方法の実施に関する、容器のラベルの形態の、および/または容器が包装されている箱に含まれる挿入物の形態の説明書をさらに含むことができる。説明書は、バイアルが包装されている箱に印刷することもできる。説明書には、対象または当該分野の従事者が医薬組成物を投与することを可能にするための十分な投薬量などの情報および投与情報が含有される。当該分野の従事者には、該組成物を投与し得る任意の医師、看護師、技術者、配偶者、または他の介護者が包含されることが予期される。医薬組成物は、対象が自己投与することもできる。
【0122】
VI.治療方法
開示している式(1)の化合物の多形は、ホレート代謝の妨害が状態の症状または状態を治療するのに一般に有益な様々な状態の治療において有用であり得る。したがって、さらなる実施形態において、本発明は、様々な疾患または状態を治療する方法を対象としている。特定の実施形態において、本発明は、ホレート代謝の妨害により治療可能であることが知られているまたは分かっている疾患または状態を治療する方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、異常な細胞増殖、(炎症性腸疾患を含めた)炎症、関節炎(特にリウマチ様関節炎)、乾癬、および喘息などの状態を治療する方法を提供する。
【0123】
A.異常な細胞増殖
異常な細胞増殖は、健康への重篤な脅威をもたらす癌および非癌障害を含めた多くの疾患および状態の原因であることが示されてきた。一般に、腫瘍などにおける異常な細胞成長は、正常な細胞成長を上回り、それと同調しない。さらに、腫瘍細胞の異常な成長は、一般に、最初に細胞成長の異常性を引き起こした刺激の停止後に異常な(すなわち、過剰な)様式のままであり続ける。良性腫瘍は、それらの分化した特徴を保持し、完全に制御されない様式で分割しない細胞を特徴とする。良性腫瘍は、通常、限局性および非転移性である。悪性腫瘍(すなわち、癌)は、未分化であり、身体の成長制御シグナルに応答せず、制御されない様式で増殖する細胞を特徴とする。悪性腫瘍は侵襲性であり、転移することができる。
【0124】
異常な細胞増殖の疾患または状態の治療は、(腫瘍または癌性成長を含めた)異常増殖細胞の死滅、それらの体または集団の成長またはサイズの増大の阻害、または緩徐化、異常増殖細胞の集団の細胞数の低減、あるいは異常増殖細胞の他の解剖部分への拡散の防止、ならびに異常増殖細胞の成長のサイズの低減の方法を含む。「治療」という用語は、必ずしも異常な細胞増殖の障害の治癒または完全な消滅を意味するものではない。異常な細胞増殖の防止は、異常な細胞増殖の障害の発生率または発症の可能性を、治療を行わない場合と比較して緩徐化、遅延、制御、または減少する方法を含む。
【0125】
異常な細胞増殖、特に過剰増殖は、遺伝子組換え、感染、毒素への曝露、自己免疫障害、および良性または悪性腫瘍誘発を含めた多種多様な因子が原因で発生する恐れがある。過剰増殖性細胞障害としては、皮膚障害、血管障害、心血管障害、線維性障害、メサンギウム障害、自己免疫障害、移植片対宿主拒絶反応、腫瘍、および癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
本発明を使用して治療することができる代表的な非限定的なタイプの非新生物性の異常細胞増殖障害としては、乾癬、湿疹、角化症、基底細胞癌、および扁平上皮癌などの皮膚障害;高血圧症および血管閉塞性疾患(例えば、アテローム性硬化症、血栓症および再狭窄)などの心血管系の障害;脈管形成(形成)などの血管増殖性障害および血管新生などの血管の異常な増殖をもたらす血管新生(拡張)障害;ならびに肥満および糖尿病(1&2型)を含めたインスリン抵抗性状態などの内分泌系に関連する障害が挙げられる。
【0127】
本発明の組成物および方法は、非新生物性の異常な細胞増殖に関連する炎症性疾患を治療するのにも有用である。これらの例としては、炎症性腸疾患(IBD)、リウマチ様関節炎(RA)、多発性硬化症(MS)、増殖性糸球体腎炎、紅斑性狼瘡、強皮症、側頭動脈炎、閉塞性血栓血管炎、皮膚粘膜リンパ節症候群、喘息、宿主対移植片、甲状腺炎、グレーブス病、抗原誘発性気道過敏症、肺好酸球増多症、ギランバレー症候群、アレルギー性鼻炎、重症筋無力症、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型関連脊髄症、単純ヘルペス脳炎、炎症性筋疾患、アテローム性硬化症、およびグッドパスチャー症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
特定の実施形態において、本発明の多形は、乾癬の治療において有用である。乾癬は、皮膚で発生する抗原提示細胞(APC)による慢性T−細胞刺激を特徴とする免疫介在性皮膚障害である。様々なタイプの乾癬としては、例えば、プラーク乾癬(すなわち、尋常性乾癬)、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬、乾癬性紅皮症、乾癬性関節炎、頭皮乾癬および爪乾癬が挙げられる。乾癬の一般的な全身治療としては、メトトレキセート、シクロスポリンおよび経口レチノイドが挙げられるが、それらの使用は毒性により限定される。乾癬の患者の最大で40%は、乾癬性関節炎にもかかっている(Kormeili Tら Br J Dermatol.(2004)151(1):3〜15。
【0129】
さらなる実施形態において、本発明の多形は、血管の異常な増殖をもたらす脈管形成(形成)および血管新生(拡張)障害を含めた血管増殖性障害の治療において有用である。他の血管増殖性障害としては、関節炎および糖尿病性網膜症などの眼疾患が挙げられる。異常な血管新生は、また、固形腫瘍に関連する。特定の実施形態において、本発明の組成物は、制御されない血管新生に関連する疾患の治療において有用である。異常な血管新生の代表的な非限定的な疾患としては、リウマチ様関節炎、虚血性再灌流関連の脳水腫および損傷、皮質虚血、卵巣過形成および過剰血管形成、(多嚢胞性卵巣症候群)、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症、および未熟児網膜症(水晶体後線維増殖症)、黄斑変性症、角膜移植片拒絶反応、血管新生緑内障などの他の眼の血管新生疾患およびオスラー・ウェーバー症候群が挙げられる。異常な血球増殖に関連する癌としては、血管内皮腫、血管腫、およびカポジ肉腫が挙げられる。
【0130】
さらなる実施形態において、本発明の多形は、異常な細胞増殖を伴う心血管系の障害の治療において有用である。そのような障害としては、例えば、高血圧症、血管閉塞性疾患(例えば、アテローム性硬化症、血栓症、および血管形成後の再狭窄)、急性冠動脈症候群(不安定狭心症、心筋梗塞、虚血性および非虚血性心筋症、心筋梗塞後の心筋症、ならびに心筋線維症など)および物質誘発性心筋症が挙げられる。
【0131】
血管損傷は、内皮および血管平滑筋細胞増殖ももたらす恐れがある。該損傷は、外傷性事象または介入治療(例えば、血管形成、血管移植、吻合、臓器移植)により引き起こされる可能性がある(Clowes Aら A.J.Vasc.Surg(1991)13:885)。再狭窄(例えば、冠動脈、頸動脈、および脳損傷)は、冠動脈の気球血管形成の成功後の主要な合併症である。それは、冠動脈の内側を覆っている内皮細胞への物理的損傷の結果放出される成長因子により引き起こされると考えられている。
【0132】
本発明により治療または防止することができる他のアテローム性硬化状態としては、糖尿病、糖尿病性糸球体硬化症、および糖尿病性網膜症の合併症を含めた、内皮および/または血管平滑筋細胞の増殖を伴う動脈壁の疾患が挙げられる。
【0133】
さらなる実施形態において、本発明の多形は、内分泌系に関連する異常な細胞増殖性障害の治療において有用である。そのような障害としては、例えば、肥満、糖尿病(1&2型)、糖尿病性網膜症、糖尿病に関連する黄斑変性症、妊娠糖尿病、耐糖能障害、多嚢胞性卵巣症候群、骨粗鬆症、骨減少症、ならびにウェルナー症候群を含めた組織および臓器の老化の加速を含むインスリン抵抗性状態が挙げられる。
【0134】
さらなる実施形態において、本発明の多形は、泌尿生殖器系の異常な細胞増殖性障害の治療において有用である。これらの例としては、例えば、子宮内膜症、良性前立腺肥大症、平滑筋腫、多嚢胞性腎疾患、および糖尿病性腎障害が挙げられる。
【0135】
さらなる実施形態において、本発明の多形は、線維性障害の治療において有用である。線維症を伴う医学的状態としては、外科手術または傷害から生じる望ましくない組織接着が挙げられる。線維性障害の非限定的な例としては、肝硬変およびメサンギウム増殖性細胞障害が挙げられる。
【0136】
さらなる実施形態において、組織および関節の異常な細胞増殖性障害を本発明に従って治療することができる。そのような障害としては、例えば、レイノー現象/病、シェーグレン症候群、全身性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、脈管炎、強直性脊椎炎、骨関節炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎、および線維筋痛が挙げられる。
【0137】
特定の実施形態において、肺系の異常な細胞増殖性障害も本発明に従って治療することができる。これらの障害としては、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、反応性気道疾患、肺線維症、および肺高血圧症が挙げられる。
【0138】
本発明に従って治療することができる異常な細胞増殖成分を含むさらなる障害としては、ベーチェット症候群、線維嚢胞性乳腺炎、線維線腫、慢性疲労症候群、急性呼吸困難症候群(ARDS)、虚血性心疾患、透析後症候群、白血病、後天性免疫不全症候群、血管炎、脂質性組織球増加症、敗血症性ショック、およびガードナー症候群などの家族性腸ポリープ症が挙げられる。本発明の組成物および方法により治療することができる障害の範囲には、例えば、ヒトパピローマウイルス誘発性疾患(例えば、ヒトパピローマウイルス感染により生じる病変)、エプスタイン・バーウイルス誘発性疾患、瘢痕形成、性器疣贅、皮膚疣贅などを含めたウイルス誘発性過剰増殖疾患も含まれる。
【0139】
本発明の多形は、原発性腫瘍および腫瘍転移などの様々なタイプの癌を含めた異常な細胞増殖の状態および疾患の治療においてさらに有用である。本発明に従って治療することができる特定の非限定的なタイプの良性腫瘍としては、血管腫、幹細胞腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経線維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞線腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生性過形成、トラコーマ、および化膿性肉芽腫が挙げられる。
【0140】
本発明に従って治療可能な代表的な非限定的な癌としては、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、脳癌、咽頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、神経組織、頭頸部、結腸、胃、気管支、腎臓の癌、基底細胞癌、潰瘍および乳頭型の両方の扁平上皮癌、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫、骨髄腫、巨細胞腫瘍、小細胞肺腫瘍、胆石、島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性および慢性のリンパ性および顆粒球腫瘍、毛様細胞腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節細胞腫、過形成角膜神経腫瘍、マルファン体型腫瘍、ウィルムス腫瘍、精上皮腫、卵巣腫瘍、平滑筋腫瘍、子宮頸部異形成および上皮内癌、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、軟部組織肉腫、悪性カルチノイド、局所的皮膚病変、菌状息肉症、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性および他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫瘍、真性多血症、腺癌、多形神経膠芽腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮癌、ならびに他の癌および肉腫が挙げられる。
【0141】
本発明の多形は、拒絶反応または他の合併症に関与する臓器移植に関連する増殖応答の防止または治療においても有用である。例えば、増殖応答は、心臓、肺、肝臓、腎臓、および他の身体臓器または臓器系の移植の間に発生し得る。
【0142】
B.炎症
本発明の多形は、炎症を特徴とする疾患の治療においても有用である。有意な炎症成分を有する疾患および状態は普遍的なものであり、例えば、皮膚障害、腸障害、特定の神経変性障害、関節炎、自己免疫疾患および様々な他の疾病が挙げられる。これらの疾患の一部は、上記の通り炎症成分および増殖成分の両方を有する。特定の実施形態において、該化合物は、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコイドーシス、または乾癬を治療するのに使用する。開示している多形は、他の炎症性疾患、例えば、アレルギー性障害、皮膚障害、移植片拒絶反応、連鎖球菌感染後および自己免疫腎不全、敗血症性ショック、全身性炎症性反応症候群(SIRS)、成人呼吸困難症候群(ARDS)、毒物注入、紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、自己免疫溶血性貧血、インスリン依存性糖尿病、およびリウマチ熱、骨盤内炎症性疾患(PID)、結膜炎、皮膚炎、ならびに気管支炎の治療においても有用である。
【0143】
炎症性腸疾患(IBD)としては、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)を含めた複数の慢性炎症性状態が挙げられる。CDおよびUCのいずれも、それらの病因が不明であるため「特発性」であると考えられている。クローン病および潰瘍性大腸炎は、多くの症状(例えば、下痢、腹痛、発熱、疲労)を共に有しているが、潰瘍性大腸炎が結腸に限定される一方、クローン病は胃腸管の任意のセグメントに影響を与える可能性がある。いずれの疾患も、関節炎、眼疾患(例えば、上強膜炎および虹彩炎)、皮膚疾患(例えば、結節性紅斑および壊疽性膿皮症)、尿路合併症、胆石、および貧血を含めた腸外の徴候を伴う可能性がある。多くの患者は凝固亢進状態であるため、卒中、網膜血栓、および肺塞栓は珍しいものではない。
【0144】
特定の実施形態において、本発明の多形は、炎症性腸疾患の治療において有用である。好ましい実施形態において、炎症性腸疾患はクローン病である。
【0145】
慢性閉塞性肺疾患、すなわちCOPDは、進行性であり肺の異常な炎症性反応に関連する完全には可逆的ではない気流制限を特徴とする。それは、最も一般的な成人の呼吸器の状態、慢性的病的状態および死亡の主要な原因の1つであり、世界的に相当な経済的および社会的な負担となっている(Pauwels R A.Lancet.(2004)364(9434):613〜20)。該障害の他の名称としては、例えば、慢性閉塞性気道疾患、(COAD);慢性閉塞性肺疾患、(COLD)、慢性気流障害、(CALまたはCAFL)および慢性気流閉塞(COA)が挙げられる。
【0146】
COPDは、気道、実質、および肺血管系にわたる慢性炎症を特徴とする。該炎症は、多数の細胞、メディエーター、および炎症性作用を伴う。メディエーターとしては、例えば、プロテアーゼ、酸化物質および毒性のペプチドが挙げられる。時間とともに、炎症により肺が損傷し、COPDの特徴的な病理変化につながる。疾患の徴候としては、慢性気管支炎および気腫のいずれも挙げられる。慢性気管支炎は、大量の粘液を産生し、喘鳴および感染を引き起こす、長期にわたる気道の炎症である。対象が、少なくとも1年に3カ月および連続して2年間にわたって日常的に咳および粘液を有する場合に慢性と見なされる。気腫は、肺胞および/または気管支を破壊し、肺胞を拡張させ、したがって呼吸を困難にする疾患である。COPD患者において最も一般的なのは、小葉中心型の気腫である。特定の実施形態において、本発明の組成物は、慢性閉塞性肺疾患の治療において有用である。
【0147】
サルコイドーシスは、異常な細胞増殖が関係するさらに別の慢性炎症性疾患である。サルコイドーシスは多臓器肉芽腫性障害であり、その肉芽腫は、炎症性細胞が一定量供給される血管新生毛細管発芽により作製される。
【0148】
上記の通り、炎症は、再狭窄、プラーク破綻から生じるアテローム性硬化合併症、重度の組織虚血、および心不全を含めた心血管疾患の発生機序においても重要な役割を果たしている。例えば、動脈壁における炎症性変化は、再狭窄およびアテローム性硬化症の発症において主要な役割を果たすと考えられている(Ross R.N Engl J Med.(1999)340:115〜126)。プラークの形成において発生する局所炎症は、最終的にプラーク破綻および急性冠動脈症候群につながる進行したプラークの線維キャップの弱体化にも関与する(Lind L.Atherosclerosis.(2003)169(2):203〜14)。
【0149】
多発性硬化症(MS)は慢性であり、中枢神経系に影響を及ぼす自己免疫疾患を悪化させることが多い。MSは、身体が、ミエリン鞘(脳および脊髄において神経を遮断する脂肪族物質)中のタンパク質に抗体および白血球を向ける場合に生じる炎症を特徴とする。その結果は、筋肉の協調、視覚および他の神経シグナルを緩徐化または阻害する多数の領域の瘢痕化(硬化症)となり得る。特定の実施形態において、本発明の多形は、多発性硬化症の治療において有用である。
【0150】
炎症は、パーキンソン病およびアルツハイマー病を含めた神経障害の発生機序に関連することが示されてきた(Mirza B.ら Neuroscience(2000)95(2):425〜32;Gupta A.Int J Clin Pract.(2003)57(1):36〜9;Ghatan E.ら Neurosci Biobehav Rev.(1999)23(5):615〜33)。
【0151】
本発明は、例えば、アレルギー性障害、アレルギー性鼻炎、皮膚障害、移植片拒絶反応、連鎖球菌感染後および自己免疫腎不全、敗血症性ショック、全身性炎症性応答症候群(SIRS)、成人呼吸困難症候群(ARDS)、毒物注入、紅斑性狼瘡、重症筋無力症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫溶血性貧血、インスリン依存性糖尿病、糸球体腎炎、ならびにリウマチ熱、骨盤内炎症性疾患(PID)、結膜炎、皮膚炎、気管支炎、および鼻炎の治療においても有用である。
【0152】
C.喘息
特定の実施形態において、本明細書に開示の多形は、喘息の治療において使用することができる。最近になって、喘息の主要な基礎病理が気道組織の炎症であることが明らかとなってきた(Lemanke(2002)Pediatrics 109(2):368〜372;Nagayamaら(1995)Pediatr Allergy Immunol.6:204〜208)。喘息は、喘鳴、咳、胸部絞扼感、息切れおよび痰の生成を含めた広範囲の症状および兆候を伴う。気道の炎症は、喘息発生機序およびその臨床的徴候の重要な特色である。肥満細胞、好酸球、およびリンパ球を含めた炎症性細胞は、軽度の喘息を患っている若年の患者の気道にさえ存在している。
【0153】
炎症は、喘息を伴うかどうかに関わらず喘鳴障害にも関与している。喘息は、職業性喘息、運動誘発性喘息、夜間性喘息、またはステロイド抵抗性喘息などのように、喘息エピソード(または喘息発作)を引き起こし得るトリガーまたは特定の個体において喘息を悪化させるものにより分類されることがある。したがって、本発明の多形は、一般に、喘鳴障害の治療において使用することもできる。
【0154】
D.関節炎および骨関節炎
4000万人超の米国人が、100種超のリウマチ性疾患を含めた様々な形態の関節炎(すなわち、腱、軟骨、血管、および内臓を含めた身体の様々な構造を構成または支持している関節、筋肉、および結合組織に影響を及ぼす疾患)で苦しんでいる。代表的なタイプの関節炎としては、リウマトイド(軟部組織リウマチおよび非関節性リウマチなど)、線維筋痛、結合組織炎、筋肉リウマチ、筋筋膜痛、上腕骨上顆炎、凍結肩、ティーツェ症候群、筋膜炎、腱炎、腱鞘炎、滑液嚢炎)、若年性慢性、脊椎関節症(強直性脊椎炎)、骨関節炎、高尿酸血症および急性痛風、慢性痛風に関連する関節炎、および全身性紅斑性狼瘡が挙げられる。
【0155】
肥厚性関節炎または骨関節炎は、最も一般的な形態の関節炎であり、関節の軟骨の破壊を特徴とする。骨関節炎は、65歳以上の人で一般的であるが、数十年早く発症し得る。軟骨の破壊により骨が互いに摩擦し、痛みおよび運動の低下を引き起こす。最近になって、炎症が骨関節炎において重要な役割を果たしている証拠が多く見つかっている。骨関節炎(OA)の関節代替外科手術を受ける用意がある患者の3分の1近くが、関節を包囲し保護している滑液に重度の炎症を有していた。特定の実施形態において、本発明の多形は、骨関節炎の治療において有用である。
【0156】
次に最も一般的な形態の関節炎はリウマチ様関節炎である。それは、全身に影響を及ぼす恐れがある自己免疫疾患であり、脱力感、疲労、食欲の低下、および筋肉痛を引き起こす。一般に、発症年齢は骨関節炎よりずっと早く、20歳と50歳の間である。炎症は滑膜表層において始まり、関節全体に拡大する恐れがある。したがって、本発明の多形は、炎症性疾患または状態の治療において有用である。別の実施形態において、本発明の多形は、関節炎、具体的にはリウマチ様関節炎の治療において有用である。特定の実施形態において、関節炎(特にリウマチ様関節炎)を含めた炎症性状態は、別の活性薬剤とのある組合せで提供する本明細書に記載の多形の投与を介して、本発明に従って治療することができる。特定の実施形態において、本発明の多形は、メトトレキセートと組み合わせて投与することができる。メトトレキセートおよび多形は、同じ製剤中で投与するか、またはそれらは、組み合わせて投与される別個の製剤中に提供することができる(例えば、同じ時間もしくはその前後に服用されるか、または重なっていてもいなくてもよい別個の時間に服用される(1つの製剤については連日投与、他の製剤については毎週、隔週、毎月、または1回だけの投与など))。
【実施例】
【0157】
実験
次に、様々な実施例を具体的に参照しながら本発明を説明する。以下の実施例は、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、むしろ、例示的な実施形態として提示するものである。
【0158】
(実施例1)
多形スクリーニング − メタノール/水ベースの系
メタノールと水との混合物を式(1)の化合物の溶媒として使用して、多数の様々な有望な抗溶媒を試験した。メタノールおよび水を9:1の比で使用して式(1)の化合物を溶解した。該溶液を活性炭で処理し、濾過し、10個の別個の試料に分割した。微量分析を使用して、様々な抗溶媒をメタノール/水溶液中の化合物に添加した。各試料を結晶生成物の形成について評価し、その結果を以下で表6に示している。
【0159】
【表6】
【0160】
(実施例2)
多形スクリーニング − メタノールベースの系
式(1)の化合物の溶媒としてメタノールを使用して多数の様々な有望な抗溶媒を試験した。式(1)の化合物をメタノール中に溶解し、該溶液を活性炭で処理し、濾過し、9個の別個の試料に分割した。微量分析を使用して、様々な抗溶媒をメタノール溶液中の化合物に添加した。各試料を結晶生成物の形成について評価し、その結果を以下で表7に示している。
【0161】
【表7】
【0162】
(実施例3)
多形型の調製
式(1)の化合物(10g)を活性炭(1g)と混合し、メタノール(45mL)と水(5mL)との混合物に添加した。該溶液を30分間混合した。該混合物を、SEITZ(登録商標)K200フィルターを介して、次いで、CELITE(登録商標)パッド(厚さ約5mm)を介して濾過した。得られた透明な黄色の溶液を1.5gのポーションに分割した。次に、個々のポーションを、以下に記載の抗溶媒(すなわち、THF、MEK、またはMiBK)を添加しながら多形スクリーニングに曝した。
【0163】
1.5g量の上で得た溶液を1gのTHFと合わせてスラリーを形成し、そこに追加の1.5gの式(1)の化合物の溶液および追加の1gのTHFを添加した。スラリーを約40℃まで加熱し、次いで、終夜撹拌しながら周囲温度まで冷却させた。得られた固形物を濾過し、THF/メタノール(1:1、1mL)およびTHF(1mL)で洗浄して、90mgの白っぽい固形の多形IIを得た。
【0164】
1.5g量の上で得た溶液を0.5gのMEKと合わせてスラリーを形成し、そこに追加の1.5gの式(1)の化合物の溶液および追加の0.6gのMEKを添加した。スラリーを約40℃まで加熱し、次いで、終夜撹拌しながら周囲温度まで冷却させた。得られた固形物を濾過し、MEK/メタノール(1:1、1mL)およびMEK(1mL)で洗浄して、140mgの白っぽい固形の多形Iaを得た。
【0165】
1.5g量の上で得た溶液を0.5gのMIBKと合わせてスラリーを形成し、そこに追加の1.5gの式(1)の化合物の溶液および追加の0.6gのMIBKを添加した。スラリーを約40℃まで加熱し、次いで、終夜撹拌しながら周囲温度まで冷却させた。得られた固形物を濾過し、MIBK/メタノール(1:1、1mL)およびMIBK(1mL)で洗浄して、240mgの白っぽい固形の多形Ibを得た。
【0166】
(実施例4)
多形応力試験
Ib型多形およびII型多形の試料を、勾配液体クロマトグラフィーにより237nmでUV検出しながら実施する方法AM−5−ASP001に従って、HPLC−UVにより純度について分析した。Thermo ScientificからのHypersil GOLDカラム(250×4.6mm、5μm)を30℃の温度で使用した。Dionex P580勾配ポンプおよび1.0ml/minの流量(勾配溶離)でDionex STH 585カラムオーブンを使用した。Dionex Degasys DG−1210脱ガス剤およびGynkotek Gina 50オートサンプラーインジェクターを5μLの注入量で使用した。Dionex PDA−100フォトダイオードアレイ検出器を237nmの波長で使用した。試料実行時間は46分であった。各試料を、合成した日(ゼロ点)ならびに周囲条件(すなわち、室温および室内湿度)で、25℃(±2℃)および60%相対湿度(RH)(±5%RH)で、ならびに40℃(±2℃)および75RH(±5%RH)で1、2、および4週間貯蔵した時点で試験した。試験結果を表8(Ib型)および表9(II型)に提示しており、示している値は面積%である。いずれの多形型も、周囲条件で貯蔵した場合ならびに25℃および60%RHで貯蔵した場合に安定であることが示された。
【0167】
【表8】
【0168】
【表9】
【0169】
Ib型多形およびII型多形の試料を、方法AM−1−全体/含水率(AM−1−General/water content)に従って、カールフィッシャー滴定を使用して含水率についても分析した。カールフィッシャー定量滴定装置(DL39、Mettler Toledo)を、Stromboli乾燥オーブン(Mettler Toledo)、発生電極、および標準的な化学天秤(精度が少なくとも0.0mg)と共に使用した。装置の条件は、オーブン温度150℃、ガス流量100.0mL/min、および撹拌子速度50%に設定した。管理パラメーターは、最長時間600s、電流2.0μA、終点100mVに設定し、発生速度は普通に設定した。各試料を、合成した日(ゼロ点)ならびに周囲条件(すなわち、室温および室内湿度)で、25℃(±2℃)および60%相対湿度(RH)(±5%RH)で、ならびに40℃(±2℃)および75%RH(±5%RH)で1、2、および4週間貯蔵した時点で試験した。試験結果を表10(Ib型)および表11(II型)に提示しており、示している値は含水率パーセントである。
【0170】
【表10】
【0171】
【表11】
【0172】
本明細書に記載の本発明の多くの変法および他の実施形態が、前述の記述で示した教示の利益を享受するこれらの発明が関係する分野の当業者には思い浮かぶであろう。したがって、本発明が、開示している特定の実施形態に限定されるものではなく、変法および他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図したものであることが理解されよう。本発明において特定の用語を利用しているが、それらは一般的および記述的な意味でのみ使用するものであり、限定することを目的としたものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物の多形であって、
【化1】
a)4.946、7.118、7.785、8.238、9.229、9.822、13.4000、15.271、15.658、16.128、16.459、17.286、18.088、17.452、18.889、19.490、19.837、21.456、22.658、23.168、23.811、24.691、28.436、および29.609からなる群から選択される1つ以上のおおよそのX線粉末回折格子面間隔ピーク、
b)4.811、8.316、9.542、10.047、13.189、14.946、15.973、17.219、18.162、21.814、22.260、23.087、23.351、24.518、25.456、26.846、28.376、29.648、30.509、31.226、および32.328からなる群から選択される1つ以上のおおよそのX線粉末回折格子面間隔ピーク、
c)4.794、7.020、7.747、8.104、9.457、11.483、13.223、15.010、15.693、16.943、18.222、19.552、22.498、23.003、および29.490からなる群から選択される1つ以上のおおよそのX線粉末回折格子面間隔ピーク、
d)3334、3194、1597、1556、1492、1446、1400、1367、1338、1314、1294、1255、1190、1075、1020、992、928、835、797、748、および733からなる群から選択される1つ以上のおおよそのFTIRピーク、
e)332、3207、1555、1499、1443、1396、1289、1188、1154、1083、1018、940、835、および796からなる群から選択される1つ以上のおおよそのFTIRピーク、
f)約92.7℃、120.1℃、および125.9℃でピークを示す示差走査熱量曲線、
g)約68.0℃、95.3℃、115.8℃、および126.3℃でピークを示す示差走査熱量曲線、および
h)示差走査熱量測定法を使用して測定した約310℃での吸熱最大値
のうち1つ以上を特徴とする結晶化合物である多形。
【請求項2】
Ia型と称され、4.946、7.118、7.785、8.238、9.229、9.822、13.4000、15.271、15.658、16.128、16.459、17.286、18.088、17.452、18.889、19.490、19.837、21.456、22.658、23.168、23.811、24.691、28.436、および29.609からなる群から選択される1つ以上のおおよその格子面間隔ピークを示すX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項3】
前記Ia型多形が少なくとも約90%の純度で存在する、請求項1又は2に記載の結晶多形。
【請求項4】
Ib型と称され、4.811、8.316、9.542、10.047、13.189、14.946、15.973、17.219、18.162、21.814、22.260、23.087、23.351、24.518、25.456、26.846、28.376、29.648、30.509、31.226、および32.328からなる群から選択される1つ以上のおおよその格子面間隔ピークを示すX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項5】
前記Ib型多形が少なくとも約90%の純度で存在する、請求項1又は4に記載の結晶多形。
【請求項6】
II型と称され、4.794、7.020、7.747、8.104、9.457、11.483、13.223、15.010、15.693、16.943、18.222、19.552、22.498、23.003、および29.490からなる群から選択される1つ以上のおおよその格子面間隔ピークを示すX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項7】
前記II型多形が少なくとも約90%の純度で存在する、請求項1又は6に記載の結晶多形。
【請求項8】
Ib型と称され、3334、3194、1597、1556、1492、1446、1400、1367、1338、1314、1294、1255、1190、1075、1020、992、928、835、797、748、および733からなる群から選択される1つ以上のおおよそのピークを示すFTIRパターンを有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項9】
II型と称され、332、3207、1555、1499、1443、1396、1289、1188、1154、1083、1018、940、835、および796からなる群から選択される1つ以上のおおよそのピークを示すFTIRパターンを有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項10】
示差走査熱量測定法を使用して測定した約310℃での吸熱最大値を有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項11】
水和物の形である、請求項1〜10のいずれかに記載の結晶多形。
【請求項12】
前記水和物が約10重量%〜約40重量%の水を含む、請求項11に記載の結晶多形。
【請求項13】
前記水和物がさらに水を吸収しないように約25℃の温度および約60%の相対湿度で貯蔵すると、水和物が少なくとも約1カ月間安定である、請求項10又は11に記載の結晶多形。
【請求項14】
式(1)の化合物および極性溶媒の溶液を形成するステップと、前記形成された溶液の少なくとも一部を無極性溶媒と組み合わせるステップと、式(1)の化合物の多形である固体の結晶質を単離するステップとを含む、請求項1〜13のいずれかに記載の結晶多形を調製する方法。
【請求項15】
前記極性溶媒が水およびアルコールを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記無極性溶媒がメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記組み合わせるステップの前に、式(1)の化合物を活性炭と組み合わせることにより前記化合物から任意の不純物を除去するステップをさらに含む、請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記結晶多形が特定の型であり、前記単離された多形の特定の型が少なくとも約90%の純度を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
医薬として許容される担体および治療有効量の請求項1〜13のいずれかに記載の多形を含む医薬組成物。
【請求項20】
治療を必要としている対象に治療有効量の請求項1〜13のいずれかに記載の多形を投与するステップを含む、異常な細胞増殖、炎症、喘息、および関節炎からなる群から選択される状態を治療する方法。
【請求項21】
前記多形を少なくとも1種のさらなる活性薬剤と組み合わせて投与するステップを含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種のさらなる活性薬剤がメトトレキセートを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記状態が関節炎である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記状態がリウマチ様関節炎である、請求項23に記載の方法。
【請求項1】
式(1)の化合物の多形であって、
【化1】
a)4.946、7.118、7.785、8.238、9.229、9.822、13.4000、15.271、15.658、16.128、16.459、17.286、18.088、17.452、18.889、19.490、19.837、21.456、22.658、23.168、23.811、24.691、28.436、および29.609からなる群から選択される1つ以上のおおよそのX線粉末回折格子面間隔ピーク、
b)4.811、8.316、9.542、10.047、13.189、14.946、15.973、17.219、18.162、21.814、22.260、23.087、23.351、24.518、25.456、26.846、28.376、29.648、30.509、31.226、および32.328からなる群から選択される1つ以上のおおよそのX線粉末回折格子面間隔ピーク、
c)4.794、7.020、7.747、8.104、9.457、11.483、13.223、15.010、15.693、16.943、18.222、19.552、22.498、23.003、および29.490からなる群から選択される1つ以上のおおよそのX線粉末回折格子面間隔ピーク、
d)3334、3194、1597、1556、1492、1446、1400、1367、1338、1314、1294、1255、1190、1075、1020、992、928、835、797、748、および733からなる群から選択される1つ以上のおおよそのFTIRピーク、
e)332、3207、1555、1499、1443、1396、1289、1188、1154、1083、1018、940、835、および796からなる群から選択される1つ以上のおおよそのFTIRピーク、
f)約92.7℃、120.1℃、および125.9℃でピークを示す示差走査熱量曲線、
g)約68.0℃、95.3℃、115.8℃、および126.3℃でピークを示す示差走査熱量曲線、および
h)示差走査熱量測定法を使用して測定した約310℃での吸熱最大値
のうち1つ以上を特徴とする結晶化合物である多形。
【請求項2】
Ia型と称され、4.946、7.118、7.785、8.238、9.229、9.822、13.4000、15.271、15.658、16.128、16.459、17.286、18.088、17.452、18.889、19.490、19.837、21.456、22.658、23.168、23.811、24.691、28.436、および29.609からなる群から選択される1つ以上のおおよその格子面間隔ピークを示すX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項3】
前記Ia型多形が少なくとも約90%の純度で存在する、請求項1又は2に記載の結晶多形。
【請求項4】
Ib型と称され、4.811、8.316、9.542、10.047、13.189、14.946、15.973、17.219、18.162、21.814、22.260、23.087、23.351、24.518、25.456、26.846、28.376、29.648、30.509、31.226、および32.328からなる群から選択される1つ以上のおおよその格子面間隔ピークを示すX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項5】
前記Ib型多形が少なくとも約90%の純度で存在する、請求項1又は4に記載の結晶多形。
【請求項6】
II型と称され、4.794、7.020、7.747、8.104、9.457、11.483、13.223、15.010、15.693、16.943、18.222、19.552、22.498、23.003、および29.490からなる群から選択される1つ以上のおおよその格子面間隔ピークを示すX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項7】
前記II型多形が少なくとも約90%の純度で存在する、請求項1又は6に記載の結晶多形。
【請求項8】
Ib型と称され、3334、3194、1597、1556、1492、1446、1400、1367、1338、1314、1294、1255、1190、1075、1020、992、928、835、797、748、および733からなる群から選択される1つ以上のおおよそのピークを示すFTIRパターンを有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項9】
II型と称され、332、3207、1555、1499、1443、1396、1289、1188、1154、1083、1018、940、835、および796からなる群から選択される1つ以上のおおよそのピークを示すFTIRパターンを有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項10】
示差走査熱量測定法を使用して測定した約310℃での吸熱最大値を有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項11】
水和物の形である、請求項1〜10のいずれかに記載の結晶多形。
【請求項12】
前記水和物が約10重量%〜約40重量%の水を含む、請求項11に記載の結晶多形。
【請求項13】
前記水和物がさらに水を吸収しないように約25℃の温度および約60%の相対湿度で貯蔵すると、水和物が少なくとも約1カ月間安定である、請求項10又は11に記載の結晶多形。
【請求項14】
式(1)の化合物および極性溶媒の溶液を形成するステップと、前記形成された溶液の少なくとも一部を無極性溶媒と組み合わせるステップと、式(1)の化合物の多形である固体の結晶質を単離するステップとを含む、請求項1〜13のいずれかに記載の結晶多形を調製する方法。
【請求項15】
前記極性溶媒が水およびアルコールを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記無極性溶媒がメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記組み合わせるステップの前に、式(1)の化合物を活性炭と組み合わせることにより前記化合物から任意の不純物を除去するステップをさらに含む、請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記結晶多形が特定の型であり、前記単離された多形の特定の型が少なくとも約90%の純度を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
医薬として許容される担体および治療有効量の請求項1〜13のいずれかに記載の多形を含む医薬組成物。
【請求項20】
治療を必要としている対象に治療有効量の請求項1〜13のいずれかに記載の多形を投与するステップを含む、異常な細胞増殖、炎症、喘息、および関節炎からなる群から選択される状態を治療する方法。
【請求項21】
前記多形を少なくとも1種のさらなる活性薬剤と組み合わせて投与するステップを含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種のさらなる活性薬剤がメトトレキセートを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記状態が関節炎である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記状態がリウマチ様関節炎である、請求項23に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2012−532877(P2012−532877A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519692(P2012−519692)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/041171
【国際公開番号】WO2011/005832
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(507075587)チェルシー・セラピューティクス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/041171
【国際公開番号】WO2011/005832
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(507075587)チェルシー・セラピューティクス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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