説明

1−オキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−メチルイソインドリンを用いた疼痛の治療、改変および管理方法

さまざまなタイプの疼痛の治療、予防、改変および管理方法を開示する。特定の方法は、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを、単独であるいは第2の活性薬剤および/または手術、心理療法または理学療法と併用して、投与することを含んでなる。さらに、本発明の方法で使用するのに適した医薬組成物、単位剤形およびキットも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 発明の分野
本発明は、免疫調節化合物を、単独でまたは公知の治療薬と併用して、投与することからなる疼痛の治療、予防、改変および管理方法に関する。本発明はまた、医薬組成物ならびに投薬計画に関する。特に、本発明は、神経ブロックおよび/または他の疼痛症候群の標準的な治療法と共に、免疫調節化合物を使用することを包含する。
【背景技術】
【0002】
2. 発明の背景
疼痛は多様な障害の先導的な症状であり、実際のまたは潜在的な組織損傷に関連したまたはそのような損傷から説明された不快な感覚ならびに感情的な経験として定義される。Merskey H, Bogduk N編, Classification of Chronic Pain, International Association for the Study of Pain (IASP) Task Force on Taxonomy, IASP Press: Seattle, 209-214, 1994。疼痛の認識は非常に主観的であるため、疼痛は効果的に診断しかつ治療するのが最も難しい病状のひとつである。疼痛は機能的能力の重大な悪化を招き、患者の仕事、社会生活、家族生活に支障をきたす。成人集団の約5パーセントは著しい心身障害を引き起こすほどに重症の疼痛に苦しんでいると推定される。Chojnowska E, Stannard C. Epidemiology of Chronic Pain, Chapter 2, pp 15-26: T.S. Jensen, P.R. Wilson, A.S.C. Rice編, Clinical Pain Management Chronic Pain, Arnold, London, 2003。
【0003】
ほとんどの疼痛症状には、末梢からの神経入力の増加がみられる。感覚神経のインパルスは一次求心性ニューロンの軸索から脊髄の後角に伝わり、それらは、シナプスで興奮性アミノ酸と神経ペプチドを放出することによって、神経インパルスを後角ニューロンに伝播する。後角の投射ニューロンは末梢刺激についての情報を処理して、上行脊髄経路を経て脳に伝達する。Mannion, R.J.およびWoolf, C.J., Clin. J. of Pain 16: S144-S156 (2000)。
【0004】
後角の投射ニューロンの発射は、それらが受け取る興奮性入力だけでなく、脊髄およびより高度な神経中枢からの抑制性入力によっても決定される。いくつかの脳領域は下行抑制経路に寄与している。これらの経路からの神経線維は、後角の他のニューロンまたは一次求心性ニューロンとともにシナプスで、内因性オピオイド、γ-アミノ酪酸(GABA)、セロトニンなどの抑制物質を放出して、侵害受容性伝達を抑制している。末梢神経の損傷は、様々なメカニズムを介して、後角ニューロンに対する抑制性コントロールの量を下方調整することによって、後角の興奮性を変化させうる。
【0005】
C-侵害受容器の活性化または損傷された神経により後角ニューロンが反復してまたは長期的に刺激を受けると、後角ニューロンの興奮性および反応性の長期増加を引き起こし、これはその刺激よりも長時間続くことがある。後角ニューロンの疼痛過敏化はそれらの興奮性を増大させ、その結果、通常の入力に対して長くかつ強く応答する。一次求心性C線維におけるそのような持続的活動は、後角の形態的および生化学的変化をもたらし、かかる変化をもとに戻すことは困難であることが知られている。後角においては、いくつかの変化が中枢性の疼痛過敏化により生じることがわかってきた。それらには以下のものが含まれる:(i)脊髄ニューロンが該ニューロンによって通常作動される領域の外側で有害な刺激に応答するようになる、後角の受容体野のサイズの拡大、(ii)所与の有害な刺激に対する応答の強度および持続時間の増加(痛覚過敏)、(iii)通常の無害な刺激(例えば、機械的受容器の一次求心性Aβ線維からの刺激)に対して痛みを感じる応答(アロディニア(allodynia))、および(iv)疼痛の非損傷組織への広がり(関連痛)。Koltzenburg, M. Clin. J. of Pain 16:S131-S138 (2000); およびMannion, R.J. & Woolf, C.J., Clin. J. of Pain 16:S144-S156 (2000)。
【0006】
中枢性の疼痛過敏化は、損傷後に生じる持続的な疼痛および痛覚過敏を部分的に説明することができ、そして治癒期に損傷の保護を促すことによって適応目的を果たすことができる。しかしながら、中枢性の疼痛過敏化は、損傷が治癒した後も長く持続し、それにより慢性疼痛に至ることがある。疼痛過敏化はまた、慢性疼痛において重要な役割を果たしており、慢性疼痛が実際に引き起こしている刺激を空間的にも時間的にもしばしば越えてしまう理由を説明したり、また、確立された疼痛が急性の疼痛よりも抑制するのが難しい理由を説明するのに役立っている。Koltzenburg, M. Clin. J. of Pain 16:S131-S138 (2000)。
【0007】
2.1 疼痛のタイプ
2.1.1 侵害受容性疼痛
侵害受容性疼痛は、炎症性化学メディエーターのような有害な刺激が組織損傷、疾患または炎症の後に放出されるときに誘発されるものであり、損傷部位にある正常に機能する感覚受容器(侵害受容器)により検知される。Koltzenburg, M. Clin. J. of Pain 16: S131-S138 (2000)。侵害受容性疼痛の臨床例としては、限定するものではないが、化学薬品もしくは熱による熱傷、皮膚の切り傷および挫傷、変形性関節症、慢性関節リウマチ、腱炎、および筋筋膜疼痛と関連した疼痛が挙げられる。
【0008】
侵害受容器(感覚受容器)は組織の周辺の至るところに分布している。それらは、持続する場合には組織を傷つけると考えられる有害な刺激(例えば、熱的、機械的または化学的刺激)に敏感である。そのような刺激による末梢の侵害受容器の活性化は、2つの別個のタイプの一次求心性ニューロン(すなわち、伝導速度の遅い無髄C線維および伝導速度のより速い有髄Aδ線維)の発射を起こさせる。C線維は焼けるような痛みと関連しており、Aδ線維は刺すような痛みと関連している。Koltzenburg, M. Clin. J. of Pain 16: S131-S138 (2000); Besson, J.M. Lancet 353: 1610-15 (1999); およびPractical Management of Pain 編集P. Prithvi Raj. (第3版, Mosby, Inc. St Louis, 2000)中のJohnson, B.W. Pain Mechanisms: Anatomy, Physiology and Neurochemistry, Chapter 11。大部分の侵害受容性疼痛は、AδタイプとCタイプの両方の一次求心性神経線維からのシグナル伝達を伴っている。
【0009】
末梢の侵害受容器はプロスタグランジン、サブスタンスP、ブラジキニン、ヒスタミン、セロトニンのような炎症性メディエーターにより、または、強力な、繰り返される、もしくは長期にわたる有害刺激により過敏化される。さらに、サイトカインおよび成長因子(例えば、神経成長因子)がニューロンの表現型と機能に影響を及ぼしうる。Besson, J.M. Lancet 353: 1610-15 (1999)。過敏化されると、侵害受容器はより低い活性化閾値および発火率の増加を示し、このことは、それらがより容易にかつより頻繁に神経インパルスを発生することを意味している。侵害受容器の末梢性の過敏化は、脊髄後角の中枢性の過敏化ならびに痛覚過敏やアロディニアのような臨床上の疼痛状態において重要な役割を果たしている。
【0010】
炎症もまた、末梢の侵害受容器に別の重要な影響を及ぼしているようである。いくつかのC-侵害受容器はどのようなレベルの機械的または熱的刺激に対しても通常は応答せず、炎症の存在下でまたは組織損傷に応答して活性化されるにすぎない。そのような侵害受容器は「サイレント」侵害受容器と呼ばれており、内蔵および皮膚組織において確認されている。Besson, J.M. Lancet 353: 1610-15 (1999); Koltzenburg, M. Clin. J. of Pain 16:S131-S138 (2000)。
【0011】
有害な刺激が様々な組織を通ってどのように処理されるかの相違は、侵害受容性疼痛の様々な特徴に寄与している。例えば、皮膚の疼痛は十分に局在化された、鋭い、ちくちくする、または焼ける感覚として説明されることが多いが、身体深部の疼痛は広汎性の、鈍い、またはずきずきする感覚として説明される。一般的に、疼痛の知覚には中枢神経系と総体的な体験が影響するので、疼痛の知覚と刺激の強さとの間には多様な関係が存在する。
【0012】
2.1.2 神経因性疼痛
神経因性疼痛は神経系の損傷または障害を反映しており、IASP(国際疼痛学会)によって「神経系における一次的病変または機能的障害により開始または誘発される疼痛」と定義されている。Merskey H, Bogduk N編集, Classification of Chronic Pain, International Association for the Study of Pain (IASP) Task Force on Taxonomy, IASP Press: Seattle, 209-214, 1994。いくつかの神経因性疼痛は末梢神経系の損傷または機能障害が原因で起こる。損傷の結果、重要なトランスデューサー分子、伝達物質およびイオンチャンネルの発現に変化が生じ、末梢ニューロンの興奮性が改変されることとなる。Practical Management of Pain 編集P. Prithvi Raj. (第3版, Mosby, Inc. St Louis, 2000)中のJohnson, B.W. Pain Mechanisms: Anatomy, Physiology and Neurochemistry, Chapter 11。神経因性疼痛の臨床例としては、限定するものではないが、糖尿病性ニューロパシーと関連した疼痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、および卒中後疼痛が挙げられる。
【0013】
神経因性疼痛は通常、いくつかの明確に区別される特徴と関連しており、例えば、疼痛は継続的であるかまたは一時的であり、焼けつく、ひりひりする、ちくちくする、ずきずきする、電気ショックのような、刺す、締めつけられる、うずく、または散発的など、多様に説明される。逆説的に、熱刺激や機械的刺激の知覚低下をきたしている神経因性疼痛の患者には、しばしば部分的または完全な感覚欠損が存在している。異常または異例の不快な感覚(dysaesthesias)も存在し、患者を苦しめる一因となっている。その他の特徴は、通常は無害な刺激でも疼痛が起こる状態(アロディニア)または閾上刺激に応答する不釣合いの疼痛知覚(痛覚過敏)である。Practical Management of Pain 編集P. Prithvi Raj. (第3版, Mosby, Inc. St Louis, 2000)中のJohnson, B.W. Pain Mechanisms: Anatomy, Physiology and Neurochemistry, Chapter 11; およびAttal, N. Clin. J. of Pain 16:S118-S130 (2000)。
【0014】
複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、通常、神経損傷の不在下(CRPSタイプI)または存在下(CRPSタイプII)で四肢を冒す種類の神経因性疼痛である。CRPSタイプIは反射性交感神経性萎縮症(RSD)として知られる症状を伴い、また、CRPSタイプIIはカウザルギーとして知られる症状を伴う。両タイプとも交感神経依存性疼痛症候群と一致するサブセットを有している。1993年に、IASPのスペシャルコンセンサス会議はこの疾患の診断および学術用語に取り組み、これら2つのサブタイプを含む用語CRPSを承認した。その後の研究および会議により、これらの定義が練り直されて、現在のガイドラインは非常に高い特異性(0.95)とともに高い感度(0.70)を提供している。Bruehlら Pain 81: 147-154 (1999)。しかしながら、何がこの疾患を引き起こすのか、または最良の治療法はどのようなものかに関して、一般的な合意はまだ得られていない。Paice, E., British Medical Journal 310: 1645-1648 (1995)。
【0015】
CRPSは、多くの神経、骨および軟組織(四肢を含む)を冒す多重症状・多重系症候群であり、激烈な疼痛を特徴とする。これは130年前に初めて記載されたが、CRPSは依然としてあまり理解されていない。例えば、末梢および中枢の体性感覚、自律神経および運動のプロセシングの変化、ならびに交感神経系と求心性神経系の病的な相互作用が根本的なメカニズムとして提案されている。Wasnerらは、回復するCRPSの初期段階での皮膚交感神経性の血管収縮神経活性の完全な機能喪失を実証した。Wasner G., Heckmann K., Maier C., Arch Neurol 56(5): 613-20 (1999)。Kurversらは、CRPSのステージIでの微小循環異常に対する脊髄成分を提案し、これは神経原性炎症メカニズムを介して出現すると考えられた。Kurvers H.A., Jacobs M.J., Beuk R.J., Pain 60(3): 333-40 (1995)。血管異常の原因は不明であり、交感神経系(SNS)がこうした変化の発生に関与しているのか否かの問題も依然として議論されている。
【0016】
米国での実際のCRPSの発生数はわかっておらず、この疾患の疫学に関して入手可能な情報は限られている。男女ともに罹患するが、この症候群は女性のほうに発生率が高く、小児集団を含めて、あらゆる年齢層において発生しうる。Schwartzman R.J., Curr Opin Neurol Neurosurg 6(4): 531-6 (1993)。CRPSへと至った各種原因としては、限定するものではないが、頭部損傷、卒中、ポリオ、腫瘍、外傷、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、心筋梗塞、リウマチ性多発性筋痛、手術、腕神経叢障害、ギプス/副木による固定、小さな四肢損傷、および悪性疾患が挙げられる。
【0017】
CRPSの症状としては、限定するものではないが、疼痛、自律神経機能障害、浮腫、運動障害、ジストロフィー、および萎縮が挙げられる。Schwartzman R.J., N Engl J Med 343(9): 654-6 (2000)。疼痛はきわめて激烈で容赦のないものであり、しばしば焼けつくような痛みとして説明される。全CRPS患者の90パーセントは、自然発生的な灼熱痛とアロディニア(allodynia;軽い触覚刺激による疼痛をさす)を訴える。医師がこの症候群に対して抱く困難性の多くは、疼痛が身体的所見から予想されるよりもかなり悪いという事実である。同上。疼痛はまた、腫れおよび関節痛、発汗の増加、温度および軽い接触への過敏性、ならびに皮膚の色の変化を伴う。実際、CRPSは疼痛のみの訴えでは診断がつかない。患者は感覚異常の兆候および症状だけでなく、過度の発汗、浮腫または皮膚の栄養変化を伴う血管機能障害を抱えていなければならない。
【0018】
上述したように、IASPは、CRPSを2つのタイプ、すなわち、CRPSタイプI(RSDとも呼ばれる)およびCRPSタイプII(カウザルギーとも呼ばれる)に分類した。これら2つのタイプは、主に、誘発する事象がはっきりとした神経損傷を含んでいたか否かに基づいて区別される。CRPSタイプIは神経損傷以外の初期の侵害的事象の後で発生する。CRPSタイプIIは神経損傷の後にみられる。CRPSはさらに、その発生および徴候において3つの明確に区別されるステージ(病期)に分割される。しかし、この疾患の経過は患者ごとに予測することができないので、病期の判定は常にはっきりしているとはいえず、また、治療に役立つとも思われない。Schwartzman R.J., N Engl J Med 343(9): 654 (2000)。
【0019】
ステージIつまり「早期RSD」では、疼痛はその損傷から予想されるよりも重症で、焼けつくまたはずきずきするような質の痛みである。それは四肢の物理的接触または感情の起伏に依存して増大しうる。患部は典型的には浮腫状になり、高体温か低体温であり、また、爪と毛髪の成長増加を示すことがある。放射線写真は初期の骨性変化を示すこともある。同上。
【0020】
ステージIIつまり「確立されたRSD」では、浮腫状の組織が硬化する。皮膚は一般的に、網状皮斑またはチアノーゼを伴って、冷たくかつ発汗過多になる。毛髪は失われ、爪は隆起し、壊れやすく、脆くなる。手の乾燥が顕著になり、また、皮膚と皮下組織の萎縮が目立つようになる。疼痛は依然としてこの疾患の主な特徴として残る。それは通常一定しているが、患部へのなんらかの刺激により増大する。このステージでは硬直が現れる。放射線写真は広汎性の骨粗鬆症を示すことがある。同上。
【0021】
ステージIIIつまり「後期RSD」では、疼痛が手足に広がる。疼痛は強さの点で小さくなるが、主な特徴として残る。突然の再発が自然発生的に起こりうる。不可逆的な組織損傷が生じ、皮膚は一般的に薄く、光沢を示す。浮腫は存在しないが、攣縮が生じることがある。X線フィルムは典型的には著しい骨の無機質脱落を示す。同上。
【0022】
CRPSの全ステージにおいて、患者は重症の慢性疼痛に耐えており、ほとんどの患者は睡眠を妨げられている。CRPSは相当な罹病率を有することから、この疾患の自覚をうながすことが大切である。早期の効果的な治療により、個体におけるCRPSの影響を少なくすることができる。William D. Dzwierzynskiら, Hand Clinics Vol 10(1): 29-44 (1994)。
【0023】
2.1.3 その他のタイプの疼痛
内臓痛は慣例的に体性痛の変形とみなされてきたが、神経学的作用機序において相違しうる。内臓痛はまた、炎症の存在下でのみ活性化される内蔵の一次求心性線維、サイレント侵害受容器を必要とすると考えられている。Cervero, F.およびLaird J.M.A., Lancet 353: 2145-48 (1999)。
【0024】
内臓痛には特定の臨床的特徴がある:(i)それは全ての内臓から誘起されるわけではなく、また、常に内臓の損傷と関連しているわけでもない;(ii)中枢神経系(CNS)での内臓侵害受容性経路の組織化ゆえに、特に個別の内臓感覚経路が存在せず、また内臓の求心性神経線維の比率が低いために、それはしばしば広汎性で、あまり局在化されない;(iii)それは他の非内臓構造体のせいにされることがある;(iv)それは吐き気のような運動および自律神経反射と関連している。Practical Management of Pain 編集P. Prithvi Raj. (第3版, Mosby, Inc. St Louis, 2000)中のJohnson, B.W., Pain Mechanisms: Anatomy, Physiology and Neurochemistry, Chapter 11;およびCervero, F. & Laird J.M.A., Lancet 353: 2145-48 (1999)。
【0025】
頭痛は一次および二次頭痛障害として分類される。最も普通に見られる2つの一次障害、すなわち偏頭痛と緊張型頭痛の病態生理学は複雑で、十分には理解されていない。最近の研究により、CNSへの侵害受容性入力は末梢の侵害受容器の活性化と過敏化のため増強され、そして侵害受容性インパルスの連続発射がCNSの二次および三次ニューロンの活性化と過敏化をもたらすことが示されている。こうして、中枢性の過敏化は偏頭痛と緊張型頭痛の開始および維持においてある役割を果たしているように思われる。Practical Management of Pain 編集P. Prithvi Raj. (第3版, Mosby, Inc. St Louis, 2000)中のJohnson, B.W. Pain Mechanisms: Anatomy, Physiology and Neurochemistry, Chapter 11。
【0026】
術後疼痛(例えば、手術中に引き起こされる外傷から組織に生じる疼痛)は侵害受容性入力の連続発射をもたらす。手術後には、損傷部位にサイトカイン、神経ペプチドおよび他の炎症性メディエーターを含む炎症性応答がみられる。これらの化学物質は外部刺激に対する過敏化および応答増加の原因となり、例えば、閾値の低下および閾上刺激に対する応答増加をもたらす。総合すると、これらのプロセスは末梢性および中枢性の疼痛過敏化に帰結する。Practical Management of Pain 編集P. Prithvi Raj. (第3版, Mosby, Inc. St Louis, 2000)中のJohnson, B.W. Pain Mechanisms: Anatomy, Physiology and Neurochemistry, Chapter 11。
【0027】
混合痛は侵害受容性成分と神経因性成分を有する慢性の疼痛である。例えば、特定の疼痛はある疼痛経路を介して開始され、別の異なる疼痛経路を介して持続され得る。混合痛状態の例としては、限定するものではないが、癌性疼痛や腰痛がある。
【0028】
2.2 疼痛の治療
CRPS関連疼痛のための現在の治療法は、疼痛の管理および徹底的な理学療法を含み、これらは浮腫や関節の攣縮を防止するのに役立ち、また、疼痛を最小限に抑えるのに役立っている。激烈な疼痛を抑えるために、しばしば薬物療法と神経ブロックが利用される。局所神経ブロックは各種薬剤、例えば局所麻酔薬、ブレチリウム、ステロイド、カルシトニン、レセルピン、グアネチジンと共にBierブロック法を用いて行なわれる。Perez R.S.ら, J Pain Symptom Manage 2001 Jun; 21(6): 511-26。特異的かつ選択的な交感神経節神経ブロックは、診断および治療の両目的のために行なわれる。選択的神経ブロックの論理的根拠は、交感神経系を遮断して感覚神経の活性化を低減させることである。神経ブロック処置で十分に制御できない患者は交感神経非依存性のCRPSでありうる。神経ブロックに無反応であると、疼痛は一般的に生涯にわたり続き、痛みが激烈なあまり衰弱してしまう。同上。
【0029】
慢性疼痛の治療に現在用いられる薬物療法は、一般的に、非麻薬性鎮痛薬、麻薬性鎮痛薬、カルシウムチャンネル阻害薬、筋弛緩薬、および全身性副腎皮質ステロイドを含む。しかし、患者はめったに完全な疼痛緩和を得ることはない。さらに、疼痛および自律神経系機能障害のメカニズムはあまり理解されていないので、治療はもっぱら経験に基づいて行なわれる。CRPS患者の5〜10パーセントは慢性型の疼痛を発症し、しばしば重症の身体障害を伴い、鎮痛薬を徹底して使用するようになる。したがって、疼痛を治療し管理するための安全で効果的な方法が依然として必要とされている。
【0030】
2.3 免疫調節化合物
LPS刺激されたPBMCによるTNF-α産生を強力に阻害する能力について選択された一群の化合物が研究された。L.G. Corralら, Ann. Rheum. Dis. 58: (Suppl I) 1107-1113 (1999)。これらの化合物は、IMiDsTM (Celgene Corporation)または免疫機能改善薬(Immunomodulatory Drugs)と呼ばれており、強力なTNF-α阻害だけでなく、LPS誘導性単球のIL1βおよびIL12産生の顕著な阻害をも示す。LPS誘導性IL6も免疫調節化合物により、部分的にではあるが、阻害される。これらの化合物はLPS誘導性IL10の強力な刺激剤である。同上。
【発明の開示】
【0031】
3. 発明の概要
本発明は、疼痛を治療、予防、改変または管理(例えば、鎮静時間を長くすること)する方法であって、かかる治療、予防、改変または管理が必要な患者に、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート(包接化合物)もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる上記方法を包含する。
【0032】
本発明の別の実施形態は、1種以上の免疫調節化合物を、疼痛の治療または予防に現在用いられている他の治療薬(例えば、抗うつ薬、抗高血圧薬、抗不安薬、カルシウムチャンネル阻害薬、筋弛緩薬、非麻薬性鎮痛薬、麻薬性鎮痛薬、αアドレナリン受容体アゴニスト、αアドレナリン受容体アンタゴニスト、抗炎症薬、cox-2阻害剤、免疫機能改善薬、免疫抑制剤、高圧酸素、JNK阻害剤、およびコルチコステロイドなどであるが、これらに限らない)と併用することを包含する。
【0033】
本発明のさらに別の実施形態は、1種以上の免疫調節化合物を、疼痛の治療、予防または管理に用いられる従来の治療法(例えば、手術、介入的方法(例:神経ブロック)、理学療法、および心理療法を含むが、これらに限らない)と組み合わせて用いることを包含する。
【0034】
本発明はさらに、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを含有する、疼痛の治療、予防、改変および/または管理に用いるための医薬組成物、単位剤形、ならびにキットを包含する。
【0035】
4. 発明の詳細な説明
本発明は、一部には、本明細書に記載する化合物が、単独でまたは他の薬剤との併用で、さまざまなタイプおよび重症度の疼痛を効果的に治療、予防、改変および/または管理するように作用しうるという考えに基づくものである。理論によって制限されないが、本発明の化合物は、必ずしもそうではないが、鎮痛薬として作用しうる。特に、ある種の化合物はサイトカイン(例えば、TNF-α、IL-1β、IL 12、IL-4)の生産に劇的な影響を与えるので、それらが投与された損傷動物またはヒトのベースラインもしくは正常な疼痛閾値を回復することによって、それらは「抗痛覚過敏薬」および/または「神経調節薬」として機能しうると考えられる。したがって、本発明の化合物は、一般的に刺激によって誘発された応答を減少させる鎮痛薬とは相違して、疼痛と関連した苦痛を抑制するかまたは侵害受容器の応答性を直接減少させるか、のいずれかによってその応答に耐える患者の能力を改変することで作用することができる。こうした理由のため、本明細書に記載する化合物は、侵害受容性疼痛だけでなく、実質的に異なる病因を有する他のタイプの疼痛(例えば、神経因性疼痛)の治療、予防、改変および管理にも使用できると考えられる。さらに、本発明の特定の化合物が作用すると考えられる独特の作用機序のために、それらは、全身投与したときでさえ一部の鎮痛薬(例えば、オピオイド)に典型的な有害作用(例えば、麻薬作用)を発生することなく、疼痛を緩和または軽減することができると考えられる。
【0036】
本発明の第1の実施形態は、疼痛を治療、予防、改変または管理する方法であって、かかる処置が必要な患者に、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与することを含んでなる上記方法を包含する。本発明はさらに、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛、侵害受容性疼痛と神経因性疼痛の混合痛、内臓痛、偏頭痛、頭痛および術後疼痛を含むがこれらに限らない、特定のタイプの疼痛の治療、予防、改変または管理に関する。
【0037】
特に断らないかぎり、「侵害受容性疼痛」という用語には、限定するものではないが、化学薬品もしくは熱による熱傷、皮膚の切り傷、皮膚の挫傷、変形性関節症、慢性関節リウマチ、腱炎、または筋筋膜疼痛と関連している疼痛が含まれる。
【0038】
特に断らないかぎり、「神経因性疼痛」という用語には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:CRPSタイプI、CRPSタイプII、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)、反射性神経血管性ジストロフィー、反射性ジストロフィー、交感神経依存性疼痛症候群、カウザルギー、骨のズーデック萎縮、疼痛性ニューロジストロフィー、肩手症候群、外傷後ジストロフィー、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、癌関連疼痛、幻肢痛、線維筋痛症、慢性疲労症候群、脊髄損傷痛、中枢性卒中後疼痛、神経根障害、糖尿病性ニューロパシー、卒中後疼痛、梅毒性神経障害、または薬物(ビンクリスチン、ベルケード、サリドマイドなど)により医原的に誘発される痛みのある他の神経障害状態。
【0039】
本明細書中で用いる「複合性局所疼痛症候群」、「CRPS」および「CRPSおよび関連症候群」という用語は、(自然発生的であろうと誘発されたものであろうと)疼痛、例えば、アロディニア(通常は痛みを感じない刺激に対して痛みの応答をすること)および痛覚過敏(通常はほんの弱い痛みの刺激に対して過敏に反応すること);誘発する事象に不釣合いな疼痛(例えば、くるぶしの捻挫後に何年も続く重症の疼痛);単一の末梢神経分布に限らない局所疼痛;皮膚の栄養変化(毛髪および爪の異常な成長、ならびに皮膚の潰瘍)と関連した自律神経系の機能障害(例えば、浮腫、血流の変化、発汗過多);のうち1以上により特徴づけられる慢性の疼痛障害を意味する。
【0040】
本発明の別の実施形態は、疼痛の閾値、発生および/または持続期間を改変または調整する方法であって、かかる改変または調整が必要な患者に、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与することを含んでなる上記方法を包含する。
【0041】
本発明の別の実施形態は、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグと、任意の担体とを含有する医薬組成物を包含する。
【0042】
また、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグと、任意の担体とを含有する単位剤形も本発明により包含される。
【0043】
本発明の別の実施形態は、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを含有する医薬組成物を含んでなるキットを包含する。本発明はさらに、単位剤形を含んでなるキットを包含する。本発明により包含されるキットは追加の活性薬剤またはそれらの組合せをさらに含むことができる。
【0044】
理論によって制限されないが、特定の免疫調節化合物と、疼痛の症状を治療するために用いられる他の薬物とは、疼痛の治療、改変または管理において相補的にまたは相乗的に作用することができると考えられる。したがって、本発明の一実施形態は、疼痛を治療、予防、改変および/または管理する方法であって、かかる処置が必要な患者に、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート(包接化合物)もしくはプロドラッグ、および治療上または予防上有効な量の第2の活性薬剤を投与することを含んでなる上記方法を包含する。
【0045】
第2の活性薬剤の例としては、限定するものではないが、疼痛の治療または予防に用いられる従来の治療薬、例えば、抗うつ薬、鎮痙薬、抗高血圧薬、抗不安薬、カルシウムチャンネル阻害薬、筋弛緩薬、非麻薬性鎮痛薬、麻薬性鎮痛薬、抗炎症薬、cox-2阻害剤、免疫機能改善薬、αアドレナリン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、免疫抑制剤、コルチコステロイド、高圧酸素、ケタミン、他の麻酔薬、NMDAアンタゴニスト、および例えばPhysician's Desk Reference 2003に見いだせる他の治療薬が挙げられる。
【0046】
本発明はまた、1種以上の免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグ、および第2の活性薬剤を含有する医薬組成物、単位剤形、ならびにキットを包含する。例えば、キットは1種以上の本発明の化合物、および抗うつ薬、カルシウムチャンネル阻害薬、非麻薬性鎮痛薬、麻薬性鎮痛薬、抗炎症薬、cox-2阻害剤、αアドレナリン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、免疫機能改善薬、免疫抑制剤、鎮痙薬、または疼痛の症状を緩和または軽減することができる他の薬剤を含むことができる。
【0047】
さらに、特定の免疫調節化合物は、疼痛治療に用いられる治療薬の投与に関連した有害な作用を減少または排除し、それにより患者への大量の治療薬の投与を可能にし、また、患者のコンプライアンスを向上させることができると考えられる。したがって、本発明の別の実施形態は、疼痛患者において第2の活性薬剤の投与に関連した有害作用を逆転、減少または回避する方法であって、かかる処置が必要な患者に、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与することを含んでなる上記方法を包含する。有害作用の例としては、限定するものではないが、吐き気、上胃部の苦痛、嘔吐、長期の出血、呼吸低下、代謝性アシドーシス、高体温、蕁麻疹、気管支収縮、血管神経性水腫、およびライ症候群が挙げられる。
【0048】
本明細書の他のところで述べるように、疼痛の症状は理学療法、心理療法、およびある種の手術(例えば、選択的な体性または交感神経神経節の神経ブロックなど)を用いて治療することができる。理論によって制限されるものではないが、このような従来の治療法と免疫調節化合物を併用すると、従来の治療法に伴う合併症を軽減するような特異で予想外の相乗効果が得られると考えられる。したがって、本発明は、疼痛を治療、予防、改変および/または管理する方法であって、患者(例えば、ヒト)に、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを、外科手術(例えば、神経ブロック)、理学療法、心理療法またはその他の非薬物療法の前、間、あるいは後で、投与することを含んでなる上記方法を包含する。
【0049】
4.1 免疫調節化合物
本発明の化合物は、市販されているか、または本明細書に開示した特許公報もしくは特許公開公報に記載された方法に従って製造することができる。さらに、光学的に純粋な組成物は、公知の分割剤やキラルなカラム、その他の標準的な合成有機化学技術を用いて、不斉合成または分割することもできる。本発明で用いる化合物には、ラセミ体であるか、ステレオマー的に富化されているか、またはステレオマー的に純粋である免疫調節化合物、ならびにその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグが含まれる。
【0050】
本明細書中で用いる場合、特に断らない限り、「溶媒和物」という用語には本発明の化合物の水和物が含まれる。
【0051】
本発明で用いるのに好ましい化合物は、分子量が約1000 g/mol以下の小さい有機分子であり、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖、またはその他の巨大分子ではない。
【0052】
本明細書中で用いる「免疫調節化合物」または「IMiDsTM」(Celgene Corporation)は、特に断らない限り、TNF-α、LPS誘導性単球のIL 1βおよびIL 12産生を顕著に阻害し、IL 6産生を部分的に阻害する小さい有機分子を包含する。具体的な免疫調節化合物については以下で述べる。
【0053】
TNF-αは、急性炎症の間にマクロファージと単球によって産生される炎症性サイトカインである。細胞内の多様なシグナル伝達事象はTNF-αが一因となっている。TNF-αは癌においても病理学的役割を果たしている可能性がある。理論によって制限されるものではないが、本発明の免疫調節化合物が奏する生物学的効果のひとつは、TNF-α合成の低下である。本発明の免疫調節化合物はTNF-αのmRNAの分解を増大させる。
【0054】
さらに、理論によって制限されるものではないが、本発明で用いる免疫調節化合物は、強力なT細胞の共刺激剤でもあり、用量依存的に細胞増殖を劇的に増加させることができる。本発明の免疫調節化合物はまた、CD4+ T細胞サブセットに対してよりもCD8+ T細胞サブセットに対して大きな共刺激効果を有する。さらに、これらの化合物は抗炎症作用を有し、T細胞を効果的に共刺激することが好ましい。
【0055】
免疫調節化合物の具体的な例としては、限定するものではないが、以下のものが含まれる:置換スチレンのシアノおよびカルボキシ誘導体、例えば、米国特許第5,929,117号に開示されるもの;1-オキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン類および1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン類、例えば、米国特許第5,874,448号および第5,955,476号に開示されるもの;テトラ置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-l-オキソイソインドリン類、例えば、米国特許第5,798,368号に記載されるもの;1-オキソおよび1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリン類(例えば、サリドマイドの4-メチル誘導体)、米国特許第5,635,517号、第6,476,052号、第6,555,554号および第6,403,613号に開示されるものを含むがそれらに限らない;インドリン環の4または5位において置換された1-オキソおよび1,3-ジオキソイソインドリン類(例えば、4-(4-アミノ-1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)-4-カルバモイルブタン酸)、米国特許第6,380,239号に記載される;2位において2,6-ジオキソ-3-ヒドロキシピペリジン-5-イルで置換されたイソインドリン-1-オンおよびイソインドリン-1,3-ジオン(例えば、2-(2,6-ジオキソ-3-ヒドロキシ-5-フルオロピペリジン-5-イル)-4-アミノイソインドリン-1-オン)、米国特許第6,458,810号に記載される;非ポリペプチド環状アミドのクラス、米国特許第5,698,579号および第5,877,200号に記載される;アミノサリドマイドおよびアミノサリドマイドの類似体、加水分解産物、代謝産物、誘導体および前駆体、ならびに置換された2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)フタルイミドおよび置換された2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-l-オキソイソインドール、例えば、米国特許第6,281,230号および第6,316,471号に記載されるもの;イソインドール-イミド化合物、例えば、2001年10月5日付の米国特許出願第09/972,487号、2001年12月21日付の米国特許出願第10/032,286号、および国際特許出願PCT/US01/50401号 (国際公開WO 02/059106号)に記載されるもの。上記特許および特許出願のそれぞれは、参照することによりその全体を本明細書に組み入れるものとする。免疫調節化合物には、サリドマイドは含まれない。
【0056】
その他の具体的な本発明の免疫調節化合物には、限定するものではないが、米国特許第5,635,517号(参照によりその全体を本明細書に組み入れる)に記載されるような、ベンゾ環がアミノで置換された1-オキソおよび1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリンが含まれる。これらの化合物は、下記の構造I:
【化1】

[式中、XおよびYの一方はC=Oで、XおよびYの他方はC=OまたはCH2であり、R2は水素または低級アルキル、特にメチルである]を有する。具体的な免疫調節化合物には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン;
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリン;
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-6-アミノイソインドリン;
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-7-アミノイソインドリン;
1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン; および
1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリン。
【0057】
その他の具体的な本発明の免疫調節化合物は、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)フタルイミドおよび置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-l-オキソイソインドールのクラスに属するものであり、例えば、米国特許第6,281,230号; 第6,316,471号; 第6,335,349号; および第6,476,052号、ならびに国際特許出願PCT/US97/13375号 (国際公開WO 98/03502号)に記載されるものである(これらのそれぞれを参照することにより本明細書に組み入れる)。代表的な化合物は次式のものである:
【化2】

[式中、
XおよびYの一方はC=Oで、XおよびYの他方はC=OまたはCH2であり、
(i) Rl、R2、R3およびR4のそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、または炭素原子数1〜4のアルコキシであるか、(ii) Rl、R2、R3およびR4の1つは-NHR5で、Rl、R2、R3およびR4の残りは水素であり、
R5は、水素または炭素原子数1〜8のアルキルであり、
R6は、水素、炭素原子数1〜8のアルキル、ベンジル、またはハロであるが、ただし、XとYがC=Oであり、かつ(i) Rl、R2、R3およびR4のそれぞれがフルオロであるか、(ii) Rl、R2、R3またはR4の1つがアミノである場合には、R6は水素以外のものである]。
【0058】
このクラスの代表的な化合物は次式:
【化3】

[式中、Rlは水素またはメチルである]で表される。別の実施形態において、本発明は、これらの化合物のエナンチオマー的に純粋な形態(例えば、光学的に純粋な(R)または(S)エナンチオマー)の使用を包含する。
【0059】
さらに他の具体的な本発明の免疫調節化合物は、米国特許出願公開第2003/0096841号および同第2003/0045552号、ならびに国際特許出願PCT/US01/50401号 (国際公開WO 02/059106号)(前記特許出願のそれぞれを本明細書に組み入れる)に開示されるイソインドールイミドのクラスに属するものである。代表的な化合物は下記の式IIで表される化合物、ならびにその製薬上許容される塩、水和物、溶媒和物、クラスレート、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体、および立体異性体の混合物である:
【化4】

[式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、他方はCH2またはC=Oであり、
Rlは、H、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(S)R3、C(O)OR4、(C1-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、C(O)NHR3、C(S)NHR3、C(O)NR3R3'、C(S)NR3R3'または(C1-C8)アルキル-O(CO)R5であり、
R2は、H、F、ベンジル、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、または(C2-C8)アルキニルであり、
R3およびR3'は、独立して、(Cl-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C0-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、(C1-C8)アルキル-O(CO)R5またはC(O)OR5であり、
R4は、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C8)アルキル-OR5、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、または(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリールであり、
R5は、(Cl-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、または(C2-C5)ヘテロアリールであり、
R6は、それぞれの場合に独立して、H、(Cl-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C2-C5)ヘテロアリール、または(C0-C8)アルキル-C(O)OR5であるか、複数のR6は一緒になってヘテロシクロアルキル基を形成し、
nは、0または1であり、
*は、キラル炭素中心を表す]。
【0060】
具体的な式IIの化合物において、nが0であるとき、Rlは、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(O)OR4、(C1-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、C(S)NHR3、または(C1-C8)アルキル-O(CO)R5であり、
R2は、Hまたは(C1-C8)アルキルであり、
R3は、(Cl-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C5-C8)アルキル-N(R6)2、(C0-C8)アルキル-NH-C(O)O-R5; (C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、(C1-C8)アルキル-O(CO)R5、またはC(O)OR5であり、そして他の記号は同一の定義を有する。
【0061】
他の具体的な式IIの化合物において、R2はHまたは(C1-C4)アルキルである。
【0062】
他の具体的な式IIの化合物において、R1は(C1-C8)アルキルまたはベンジルである。
【0063】
他の具体的な式IIの化合物において、RlはH、(C1-C8)アルキル、ベンジル、CH2OCH3、CH2CH2OCH3、または
【化5】

である。
【0064】
式IIの化合物の別の実施形態において、R1は、
【化6】

[式中、QはOまたはSであり、R7は、それぞれの場合に独立して、H、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、ハロゲン、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C0-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、(C1-C8)アルキル-O(CO)R5、またはC(O)OR5であり、隣接するR7は一緒になって二環式アルキルまたはアリール環を形成することができる]である。
【0065】
他の具体的な式IIの化合物において、RlはC(O)R3である。
【0066】
他の具体的な式IIの化合物において、R3は(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C1-C8)アルキル、アリール、または(C0-C4)アルキル-OR5である。
【0067】
他の具体的な式IIの化合物において、ヘテロアリールはピリジル、フリルまたはチエニルである。
【0068】
他の具体的な式IIの化合物において、RlはC(O)OR4である。
【0069】
他の具体的な式IIの化合物において、C(O)NHC(O)のHは、(Cl-C4)アルキル、アリールまたはベンジルと置き換えることができる。
【0070】
このクラスの化合物のさらなる例としては、限定するものではないが、以下のものが含まれる:[2-(2,6-ジオキソ-ピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-lH-イソインドール-4-イルメチル]-アミド; (2-(2,6-ジオキソ-ピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-lH-イソインドール-4-イルメチル)-カルバミン酸t-ブチルエステル; 4-(アミノメチル)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン; N-(2-(2,6-ジオキソ-ピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-lH-イソインドール-4-イルメチル)-アセトアミド; N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}シクロプロピル-カルボキサミド; 2-クロロ-N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}アセトアミド; N-(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)-3-ピリジルカルボキサミド; 3-{1-オキソ-4-(ベンジルアミノ)イソインドリン-2-イル}ピペリジン-2,6-ジオン; 2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-4-(ベンジルアミノ)イソインドリン-1,3-ジオン; N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}プロパンアミド; N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}-3-ピリジルカルボキサミド; N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}ヘプタンアミド; N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}-2-フリルカルボキサミド; {N-(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)カルバモイル}メチルアセテート; N-(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)ペンタンアミド; N-(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)-2-チエニルカルボキサミド; N-{[2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル]メチル}(ブチルアミノ)カルボキサミド; N-{[2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル]メチル}(オクチルアミノ)カルボキサミド; およびN-{[2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル]メチル}(ベンジルアミノ)カルボキサミド。
【0071】
さらに他の具体的な本発明の免疫調節化合物は、米国特許出願公開第2002/0045643号、国際公開WO 98/54170号、および米国特許第6,395,754号(前記特許または特許出願のそれぞれを本明細書に組み入れる)に開示されるイソインドールイミドのクラスに属するものである。代表的な化合物は式IIIで表される化合物、ならびにその製薬上許容される塩、水和物、溶媒和物、クラスレート、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体、および立体異性体の混合物である:
【化7】

[式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、他方はCH2またはC=Oであり、
Rは、HまたはCH2OCOR'であり、
(i) Rl、R2、R3またはR4のそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、または炭素原子数1〜4のアルコキシであるか、(ii) R1、R2、R3またはR4の1つはニトロまたは-NHR5で、R1、R2、R3またはR4の残りは水素であり、
R5は、水素または炭素数1〜8のアルキルであり、
R6は、水素、炭素原子数1〜8のアルキル、ベンゾ、クロロ、またはフルオロであり、
R'は、R7-CHR10-N(R8R9)であり、
R7は、m-フェニレンまたはp-フェニレンまたは-(CnH2n)-(ここで、nは0〜4の数値である)であり、
R8およびR9のそれぞれは、互いに独立して、水素または炭素原子数1〜8のアルキルであるか、R8とR9は一緒になってテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、または-CH2CH2X1CH2CH2-(ここで、X1は-O-、-S-または-NH-である)であり、
Rl0は、水素、炭素原子数1〜8のアルキル、またはフェニルであり、
*は、キラル炭素中心を表す]。
【0072】
その他の代表的な化合物は次式のものである:
【化8】

[式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYの他方はC=OまたはCH2であり、
(i) Rl、R2、R3またはR4のそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、または炭素原子数1〜4のアルコキシであるか、(ii) R1、R2、R3またはR4の1つは-NHR5で、R1、R2、R3またはR4の残りは水素であり、
R5は、水素または炭素数1〜8のアルキルであり、
R6は、水素、炭素原子数1〜8のアルキル、ベンゾ、クロロ、またはフルオロであり、
R7は、m-フェニレンまたはp-フェニレンまたは-(CnH2n)-(ここで、nは0〜4の数値である)であり、
R8およびR9のそれぞれは、互いに独立して、水素または炭素原子数1〜8のアルキルであるか、R8とR9は一緒になってテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、または-CH2CH2X1CH2CH2-(ここで、X1は-O-、-S-または-NH-である)であり、
Rl0は、水素、炭素原子数1〜8のアルキル、またはフェニルである]。
【0073】
その他の代表的な化合物は次式のものである:
【化9】

[式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYの他方はC=OまたはCH2であり、
(i) Rl、R2、R3またはR4のそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、または炭素原子数1〜4のアルコキシであるか、(ii) R1、R2、R3またはR4の1つは-NHR5で、R1、R2、R3およびR4の残りは水素であり、
R6は、水素、炭素原子数1〜8のアルキル、ベンゾ、クロロ、またはフルオロである]。
【0074】
その他の代表的な化合物は次式のものである:
【化10】

[式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYの他方はC=OまたはCH2であり、
(i) Rl、R2、R3またはR4のそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、または炭素原子数1〜4のアルコキシであるか、(ii) R1、R2、R3またはR4の1つはニトロまたは保護されたアミノで、R1、R2、R3およびR4の残りは水素であり、
R5は、水素または炭素数1〜8のアルキル、またはCO-R7-CH(R10)NR8R9(ここで、R7、R8、R9、およびR10のそれぞれは本明細書中で定義したとおりである)であり、
R6は、炭素原子数1〜8のアルキル、ベンゾ、クロロ、またはフルオロである]。
【0075】
具体的な化合物の例は次式のものである:
【化11】

[式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYの他方はC=OまたはCH2であり、
R6は、水素、炭素原子数1〜8のアルキル、ベンジル、クロロ、またはフルオロであり、
R7は、m-フェニレン、p-フェニレンまたは-(CnH2n)-(ここで、nは0〜4の数値である)であり、
R8およびR9のそれぞれは、互いに独立して、水素または炭素原子数1〜8のアルキルであるか、R8とR9は一緒になってテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、または-CH2CH2X1CH2CH2-(ここで、X1は-O-、-S-または-NH-である)であり、
Rl0は、水素、炭素原子数1〜8のアルキル、またはフェニルである]。
【0076】
最も好ましい本発明の免疫調節化合物は、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンおよび3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンである。これらの化合物は標準的な合成法により得ることができる(例えば、参照により本明細書に組み入れる米国特許第5,635,517号を参照のこと)。これらの化合物はCelgene Corporation (Warren, NJ)から入手かのうである。4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンは次の化学構造を有する:
【化12】

【0077】
化合物3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンは次の化学構造を有する:
【化13】

【0078】
別の実施形態において、本発明の具体的な免疫調節化合物は、2003年9月4日出願の米国仮特許出願第60/499,723号(参照することにより本明細書に組み入れるものとする)に開示された、3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの多型、例えば、A、B、C、D、E、F、GおよびH型を包含する。例えば、3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのA型は、溶媒和されていない結晶質の物質で、非水性溶媒系から得ることができる。A型は、約8、14.5、16、17.5、20.5、24および26度(2θ)に顕著なピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査熱量測定による融点の最大値が270℃付近である。
【0079】
3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのB型は、半水和された結晶質の物質で、ヘキサン、トルエン、水(これらに限らない)などの様々な溶媒系から得ることができる。B型は、約16、18、22および27度(2θ)に顕著なピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査熱量測定による融点の最大値が268℃付近である。
【0080】
3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのC型は、半溶媒和された結晶質の物質で、アセトン(これに限らない)などの溶媒から得ることができる。C型は、約15.5および25度(2θ)に顕著なピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査熱量測定による融点の最大値が269℃付近である。
【0081】
3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのD型は、溶媒和された結晶質の多型で、アセトニトリルと水の混合溶媒から調製される。D型は、約27および28度(2θ)に顕著なピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査熱量測定による融点の最大値が270℃付近である。
【0082】
3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのE型は、二水和された結晶質の物質で、3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを水中でスラリー化し、アセトン:水の比が約9:1の溶媒系中で3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンをゆっくり蒸発させることにより得られる。E型は、約20、24.5および29度(2θ)に顕著なピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査熱量測定による融点の最大値が269℃付近である。
【0083】
3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのF型は、溶媒和されていない結晶質の物質で、E型の脱水により得られる。F型は、約19、19.5および25度(2θ)に顕著なピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査熱量測定による融点の最大値が269℃付近である。
【0084】
3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのG型は、溶媒和されていない結晶質の物質で、B型とE型をテトラヒドロフラン(THF)などの溶媒中でスラリー化することにより得られる。G型は、約21、23および24.5度(2θ)に顕著なピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査熱量測定による融点の最大値が267℃付近である。
【0085】
3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのH型は、一部が水和された結晶質の物質で、E型を0%の相対湿度にさらすことにより得られる。H型は、約15、26および31度(2θ)に顕著なピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査熱量測定による融点の最大値が269℃付近である。
【0086】
その他の具体的な本発明の免疫調節化合物には、限定するものではないが、米国特許第5,874,448号および同第5,955,476号(それぞれの特許を参照することにより本明細書に組み入れるものとする)に記載されるような、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリンおよび1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリンが含まれる。代表的な化合物は次式のものである:
【化14】

[式中、
Yは酸素またはH2であり、
R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは、互いに独立して、水素、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、炭素原子数1〜4のアルコキシ、またはアミノである]。
【0087】
その他の具体的な本発明の免疫調節化合物には、限定するものではないが、米国特許第5,798,368号(参照することにより本明細書に組み入れるものとする)に記載される、テトラ置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンが含まれる。代表的な化合物は次式のものである:
【化15】

[式中、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、または炭素原子数1〜4のアルコキシである]。
【0088】
その他の具体的な本発明の免疫調節化合物には、限定するものではないが、米国特許第6,403,613号(参照することにより本明細書に組み入れるものとする)に記載される、1-オキソおよび1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリンが含まれる。代表的な化合物は次式のものである:
【化16】

[式中、
Yは酸素またはH2であり、
R1およびR2の一方は、ハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ、またはカルバモイルであり、R1およびR2の他方は、独立して、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ、またはカルバモイルであり、
R3は、水素、アルキル、またはベンジルである]。
【0089】
前記化合物の具体例は次式のものである:
【化17】

[式中、
R1およびR2の一方は、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、炭素原子数1〜4のアルコキシ、ジアルキルアミノ(各アルキルは炭素原子数1〜4)、シアノ、またはカルバモイルであり、
R1およびR2の他方は、独立して、水素、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、炭素原子数1〜4のアルコキシ、アルキルアミノ(アルキルは炭素原子数1〜4)、ジアルキルアミノ(各アルキルは炭素原子数1〜4)、シアノ、またはカルバモイルであり、
R3は、水素、炭素原子数1〜4のアルキル、またはベンジルである]。その他の代表的な化合物は次式のものである:
【化18】

[式中、
R1およびR2の一方は、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、炭素原子数1〜4のアルコキシ、ジアルキルアミノ(各アルキルは炭素原子数1〜4)、シアノ、またはカルバモイルであり、
R1およびR2の他方は、独立して、水素、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、炭素原子数1〜4のアルコキシ、アルキルアミノ(アルキルは炭素原子数1〜4)、ジアルキルアミノ(各アルキルは炭素原子数1〜4)、シアノ、またはカルバモイルであり、
R3は、水素、炭素原子数1〜4のアルキル、またはベンジルである]。
【0090】
その他の具体的な本発明の免疫調節化合物には、限定するものではないが、米国特許第6,380,239号(参照することにより本明細書に組み入れるものとする)に記載される、インドリン環の4位または5位において置換された1-オキソおよび1,3-ジオキソイソインドリンが含まれる。代表的な化合物は次式の化合物またはその塩である:
【化19】

[式中、C*で表される炭素原子はキラル中心を構成し(nがゼロでなく、R1がR2と同じでないとき);X1およびX2の一方はアミノ、ニトロ、炭素原子数1〜6のアルキル、またはNH-Zであり、X1およびX2の他方は水素であり;R1およびR2のそれぞれは、互いに独立して、ヒドロキシ、またはNH-Zであり;R3は水素、炭素原子数1〜6のアルキル、ハロ、またはハロアルキルであり;Zは水素、アリール、炭素原子数1〜6のアルキル、ホルミル、または炭素原子数1〜6のアシルであり;nは0、1または2である;ただし、X1がアミノで、nが1または2であるとき、R1とR2は両方がヒドロキシであることはない]。さらなる代表的な化合物は次式のものである:
【化20】

[式中、C*で表される炭素原子は、nがゼロでなくかつR1がR2でないとき、キラル中心を構成し;X1およびX2の一方はアミノ、ニトロ、炭素原子数1〜6のアルキル、またはNH-Zであり、X1およびX2の他方は水素であり;R1およびR2のそれぞれは、互いに独立して、ヒドロキシ、またはNH-Zであり;R3は炭素原子数1〜6のアルキル、ハロ、または水素であり;Zは水素、アリール、炭素原子数1〜6のアルキル、または炭素原子数1〜6のアシルであり;nは0、1または2である]。
【0091】
その他の代表的な化合物は次式の化合物またはその塩である:
【化21】

[式中、C*で表される炭素原子は、nがゼロでなくかつR1がR2でないとき、キラル中心を構成し;X1およびX2の一方はアミノ、ニトロ、炭素原子数1〜6のアルキル、またはNH-Zであり、X1およびX2の他方は水素であり;R1およびR2のそれぞれは、互いに独立して、ヒドロキシ、またはNH-Zであり;R3は炭素原子数1〜6のアルキル、ハロ、または水素であり;Zは水素、アリール、炭素原子数1〜6のアルキルもしくはアシルであり;nは0、1または2である]。前記化合物の具体例は次式のものである:
【化22】

[式中、X1およびX2の一方はニトロ、またはNH-Zであり、X1およびX2の他方は水素であり;
R1およびR2のそれぞれは、互いに独立して、ヒドロキシ、またはNH-Zであり;
R3は炭素原子数1〜6のアルキル、ハロ、または水素であり;
Zは水素、フェニル、炭素原子数1〜6のアシル、または炭素原子数1〜6のアルキルであり;
nは0、1または2である;
ただし、X1およびX2の一方がニトロで、nが1または2であるとき、R1およびR2はヒドロキシ以外であり;
-COR1および-(CH2)nCOR2が異なるとき、C*で表される炭素原子はキラル中心を構成する]。
【0092】
その他の代表的な化合物は次式のものである:
【化23】

[式中、X1およびX2の一方は炭素原子数1〜6のアルキルであり;
R1およびR2のそれぞれは、互いに独立して、ヒドロキシまたはNH-Zであり;
R3は炭素原子数1〜6のアルキル、ハロ、または水素であり;
Zは水素、フェニル、炭素原子数1〜6のアシル、または炭素原子数1〜6のアルキルであり;
nは0、1または2であり;
-COR1および-(CH2)nCOR2が異なるとき、C*で表される炭素原子はキラル中心を構成する]。
【0093】
さらに他の具体的な本発明の免疫調節化合物には、限定するものではないが、米国特許第6,458,810号(参照することにより本明細書に組み入れるものとする)に記載される、2位が2,6-ジオキソ-3-ヒドロキシピペリジン-5-イルで置換されたイソインドリン-1-オンおよびイソインドリン-1,3-ジオンが含まれる。代表的な化合物は次式のものである:
【化24】

[式中、
*で表される炭素原子はキラル中心を構成し、
Xは-C(O)-または-CH2-であり、
R1は炭素原子数1〜8のアルキルまたは-NHR3であり、
R2は水素、炭素原子数1〜8のアルキル、またはハロゲンであり、
R3は水素、炭素原子数1〜8のアルキル(炭素原子数1〜8のアルコキシ、ハロ、アミノ、もしくは炭素原子数1〜4のアルキルアミノで置換されていてもよい)、炭素原子数3〜18のシクロアルキル、フェニル(炭素原子数1〜8のアルキル、炭素原子数1〜8のアルコキシ、ハロ、アミノ、もしくは炭素原子数1〜4のアルキルアミノで置換されていてもよい)、ベンジル(炭素原子数1〜8のアルキル、炭素原子数1〜8のアルコキシ、ハロ、アミノ、もしくは炭素原子数1〜4のアルキルアミノで置換されていてもよい)、または-COR4であり、
R4は水素、炭素原子数1〜8のアルキル(炭素原子数1〜8のアルコキシ、ハロ、アミノ、もしくは炭素原子数1〜4のアルキルアミノで置換されていてもよい)、炭素原子数3〜18のシクロアルキル、フェニル(炭素原子数1〜8のアルキル、炭素原子数1〜8のアルコキシ、ハロ、アミノ、もしくは炭素原子数1〜4のアルキルアミノで置換されていてもよい)、またはベンジル(炭素原子数1〜8のアルキル、炭素原子数1〜8のアルコキシ、ハロ、アミノ、もしくは炭素原子数1〜4のアルキルアミノで置換されていてもよい)である]。
【0094】
本発明の化合物は、市販されているか、または本明細書に開示される特許公報もしくは特許公開公報に記載されている方法に従って調製することができる。さらに、光学的に純粋な化合物は、公知の分割剤またはキラルなカラム、さらには他の標準的な合成有機化学技術を用いて、不斉合成または分割することができる。
【0095】
本明細書中で使用する場合、特に断らない限り、「製薬上許容される塩」という用語には、この用語の対象となる化合物の無毒性の酸付加塩および塩基付加塩が包含される。許容しうる無毒性の酸付加塩には、当技術分野で公知の有機酸および無機酸または塩基から誘導される酸付加塩が包含され、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸、サリチル酸、フタル酸、エンボン酸(embolic acid)、エナント酸などが挙げられる。
【0096】
本質的に酸性である化合物は、種々の製薬上許容される塩基と塩を形成することができる。そのような酸性化合物の製薬上許容される塩基付加塩を調製するために使用できる塩基は、無毒性の塩基付加塩、すなわち、薬理学的に許容されるカチオンを含有する塩、例えば、限定するものではないが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、特に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、またはカリウムの塩を形成する塩基である。好適な有機塩基としては、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(meglumaine)(N-メチルグルカミン)、リシン、およびプロカインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
本明細書中で使用する場合、特に断らない限り、「プロドラッグ」という用語は、化合物の誘導体であって、生物学的条件下(in vitroまたはin vivo)で加水分解、酸化、またはそれ以外の反応を受けて該化合物を提供することのできる誘導体を意味する。プロドラッグの例としては、生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイド、および生加水分解性ホスフェート類似体のような生加水分解性部分を含む、本発明の免疫調節化合物の誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。プロドラッグの他の例としては、-NO、-NO2、-ONO、または-ONO2部分を含む免疫調節化合物の誘導体が挙げられる。プロドラッグは、典型的には、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 172-178, 949-982 (Manfred E. Wolff編, 第5版 1995)およびDesign of Prodrugs (H. Bundgaard編, Elselvier, New York 1985)に記載されているような公知の方法を用いて調製することができる。
【0098】
本明細書中で使用する場合、特に断らない限り、「生加水分解性アミド」、「生加水分解性エステル」、「生加水分解性カルバメート」、「生加水分解性カーボネート」、「生加水分解性ウレイド」、「生加水分解性ホスフェート」という用語は、それぞれ、化合物のアミド、エステル、カルバメート、カーボネート、ウレイド、またはホスフェートを意味するが、ただし、1) 化合物の生物活性を妨害することなく、取込み、作用の持続、または作用の開始のような有利な特性をin vivoで化合物に付与することができるか;または2) 生物学的に不活性であるが、in vivoで生物学的に活性な化合物に変換されるかのいずれかである。生加水分解性エステルの例としては、低級アルキルエステル、低級アシルオキシアルキルエステル(例えば、アセトキシルメチルエステル、アセトキシエチルエステル、アミノカルボニルオキシメチルエステル、ピバロイルオキシメチルエステル、およびピバロイルオキシエチルエステル)、ラクトニルエステル(例えば、フタリジルエステルおよびチオフタリジルエステル)、低級アルコキシアシルオキシアルキルエステル(例えば、メトキシカルボニルオキシメチルエステル、エトキシカルボニルオキシエチルエステル、およびイソプロポキシカルボニルオキシエチルエステル)、アルコキシアルキルエステル、コリンエステル、およびアシルアミノアルキルエステル(例えば、アセトアミドメチルエステル)が挙げられるが、これらに限定されない。生加水分解性アミドの例としては、低級アルキルアミド、α-アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミド、およびアルキルアミノアルキルカルボニルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。生加水分解性カルバメートの例としては、低級アルキルアミン、置換エチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、ヘテロ環式およびヘテロ芳香族アミン、ならびにポリエーテルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
各種の本発明の免疫調節化合物は1つ以上のキラル中心を含み、エナンチオマーのラセミ混合物またはジアステレオマーの混合物として存在しうる。本発明は、そのような化合物の立体異性体的に純粋な形態の使用、ならびにかかる形態の混合物の使用を包含する。例えば、本発明の特定の免疫調節化合物のエナンチオマーを等しい量または等しくない量で含有する混合物は、本発明の方法および組成物において使用することができる。こうした異性体は、キラルなカラムやキラルな分割剤といった標準的技法を用いて、不斉合成または分割することができる。例えば、Jacques, J.ら, Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley-Interscience, New York, 1981); Wilen, S. H.ら, Tetrahedron 33: 2725 (1977); Eliel, E. L., Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962); およびWilen, S. H., Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E. L. Eliel編, Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN, 1972)を参照されたい。
【0100】
本明細書中で使用する場合、特に断らない限り、「立体異性体的に純粋」とは、ある化合物の1つの立体異性体を含有し、その化合物の他の立体異性体を実質的に含まない組成物を意味する。例えば、1つのキラル中心をもつ化合物の立体異性体的に純粋な組成物は、その化合物の相対するエナンチオマーを実質的に含まないだろう。2つのキラル中心をもつ化合物の立体異性体的に純粋な組成物は、その化合物の他のジアステレオマーを実質的に含まないだろう。典型的な立体異性体的に純粋な化合物は、約80重量%以上のその化合物のある1つの立体異性体と、約20重量%以下のその化合物の他の立体異性体を含み、より好ましくは、約90重量%以上のその化合物の1つの立体異性体と、約10重量%以下のその化合物の他の立体異性体を含み、さらにより好ましくは、約95重量%以上のその化合物の1つの立体異性体と、約5重量%以下のその化合物の他の立体異性体を含み、最も好ましくは、約97重量%以上のその化合物の1つの立体異性体と、約3重量%以下のその化合物の他の立体異性体を含むものである。本明細書中で使用する場合、特に断らない限り、「立体異性体的に富化された」とは、約60重量%以上の化合物のある1つの立体異性体、好ましくは約70重量%以上、より好ましくは約80重量%以上の化合物の1つの立体異性体を含む組成物を意味する。本明細書中で使用する場合、特に断らない限り、「エナンチオマー的に純粋」とは、1つのキラル中心をもつ化合物の立体異性体的に純粋な組成物を意味する。同様に、「エナンチオマー的に富化された」とは、1つのキラル中心をもつ化合物の立体異性体的に富化された組成物を意味する。
【0101】
描かれた構造とその構造に与えられた名称との間に矛盾がある場合、描かれた構造をより重視すべきである点に留意されたい。このほか、構造または構造の一部分の立体化学が、例えば、太線または破線で、明示されていない場合、その構造または構造の一部分には、そのすべての立体異性体が包含されると解釈するものとする。
【0102】
4.2 第2の活性薬剤
第2の活性薬剤を、免疫調節化合物と一緒に本発明の方法および組成物において使用することができる。好ましい実施形態では、第2の活性薬剤は、疼痛を緩和するか、炎症反応を抑制するか、鎮静効果もしくは抗神経痛性作用を付与するか、または患者を楽にすることができる薬剤である。
【0103】
第2の活性薬剤の例としては、限定するものではないが、麻薬性鎮痛薬、非麻薬性鎮痛薬、抗炎症薬、cox-2阻害剤、αアドレナリン受容体アゴニスト、αアドレナリン受容体アンタゴニスト、ケタミン、麻酔薬、NMDA拮抗薬、免疫機能改善薬、免疫抑制剤、抗うつ薬、鎮痙薬、抗高血圧薬、抗不安薬、カルシウムチャンネル阻害薬、筋弛緩薬、コルチコステロイド、高圧酸素、JNK阻害薬、疼痛を緩和することが知られている他の治療薬、ならびにこれらの製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、プロドラッグ、および薬理的に活性な代謝産物が挙げられる。
【0104】
麻薬(オピオイド)は激烈な痛みの治療に用いることができる。麻薬性鎮痛薬の例として、限定するものではないが、オキシコドン(OxyContin(登録商標))、硫酸モルヒネ(MS Contin(登録商標)、Duramorph(登録商標)、Astramorph(登録商標))、メペリジン(Demerol(登録商標))、フェンタニル経皮パッチ(Duragesic(登録商標))、およびその他の公知の従来の薬物が挙げられる;例えば、Physicians' Desk Reference, 594-595, 2851 および 2991(第57版, 2003)を参照のこと。オキシコドン(OxyContin(登録商標))はオピオイドの長期作用性形態であり、通常CRPSの初期および後期段階で使用される。硫酸モルヒネは、信頼できる予測可能な効果、安全性のプロファイル、ナロキソンを用いてモルヒネ作用をうち消すことの容易さゆえに、痛覚消失のために使用される。米国では、硫酸モルヒネはMS Contin(登録商標)、Duramorph(登録商標)、Astramorph(登録商標)という名称で販売されている。例えば、Physicians' Desk Reference, 594-595 (第57版, 2003)を参照のこと。フェンタニル経皮パッチ(Duragesic(登録商標))は、硫酸モルヒネよりかなり短い半減期を有する強力な麻薬性鎮痛薬である。メペリジン(Demerol(登録商標))およびヒドロモルホン(Dilaudid(登録商標))は疼痛の管理にも使用することができる。例えば、Physicians' Desk Reference, 2991(第57版, 2003)を参照のこと。
【0105】
非麻薬性鎮痛薬および抗炎症薬は、好ましくは、妊娠および授乳中の疼痛の治療に用いられる。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)およびcox-2阻害剤のような抗炎症薬は、典型的には、プロスタグランジン合成に関与するシクロオキシゲナーゼの活性を低下させることにより炎症反応と疼痛を抑制する。NSAIDは、疼痛症候群の初期段階において疼痛緩和をもたらしうる。抗炎症薬の例として、限定するものではないが、サリチル酸アセテート(Aspirin(登録商標))、イブプロフェン(Motrin(登録商標)、Advil(登録商標))、ケトプロフェン(Oruvail(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、ナプロキセンナトリウム(Anaprox(登録商標)、Naprelan(登録商標)、Naprosyn(登録商標))、ケトロラック(Acular(登録商標))、およびその他の従来の薬物が挙げられる。具体的なcox-2阻害剤はセレコキシブ(Celebrex(登録商標))である。例えば、Physicians' Desk Reference, 1990, 1910-1914および2891(第57版, 2003); Physicians' Desk Reference for Nonprescription Drugs and Dietary Supplements, 511, 667および773 (第23版, 2002)を参照のこと。
【0106】
抗うつ薬は、CNSにおけるセロトニンおよび/またはノルエピネフリンのシナプス濃度を、シナプス前膜によるそれらの再取込みを阻害することによって、増加させる。いくつかの抗うつ薬はまた、損傷した末梢求心性線維の発火率を低下させるナトリウムチャンネル遮断能を有する。抗うつ薬の例としては、限定するものではないが、ノルトリプチリン(Pamelor(登録商標))、アミトリプチリン(Elavil(登録商標))、イミプラミン(Tofranil(登録商標))、ドキセピン(Sinequan(登録商標))、クロミプラミン(Anafranil(登録商標))、フルオキセチン(Prozac(登録商標))、セルトラリン(Zoloft(登録商標))、ネファゾドン(Serzone(登録商標))、ベンラファキシン(Effexor(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))、ブプロピオン(Wellbutrin(登録商標))、およびその他の公知の薬物が挙げられる。例えば、Physicians' Desk Reference, 329, 1417, 1831および3270 (第57版, 2003)を参照のこと。
【0107】
また、鎮痙薬も本発明の実施形態において使用することができる。鎮痙薬の例として、限定するものではないが、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、ガバペンチン(Neurontin(登録商標))、フェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、クロナゼパム、トピラメート、ラモトリジン、ゾニサミド、およびチアガビンが挙げられる。例えば、Physicians' Desk Reference, 2563 (第57版, 2003)を参照のこと。
【0108】
コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、デキサメタゾン、またはヒドロコルチゾン)、経口的に活性なクラスIb抗不整脈剤(例えば、メキシレチン)、カルシウムチャンネル阻害薬(例えば、ニフェジピン)、β-遮断薬(例えば、プロプラノロール)、α-遮断薬(例えば、フェノキシベンザミン)、およびα2-アドレナリン作動薬(例えば、クロニジン)もまた、免疫調節化合物と組み合わせて用いることができる。例えば、Physicians' Desk Reference, 1979, 2006および2190 (第57版, 2003)を参照のこと。
【0109】
本発明において用いる具体的な第2の活性薬剤には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:サリチル酸アセテート(Aspirin(登録商標))、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、Enbrel(登録商標)、ケタミン、ガバペンチン(Neurontin(登録商標))、フェニトイン(Dilantin(登録商標))、カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))、オキシカルバゼピン(Trileptal(登録商標))、バルプロ酸(Depakene(登録商標))、硫酸モルヒネ、ヒドロモルホン、プレドニゾン、グリセオフルビン、ペントニウム、アレンドロネート、ジフェンヒドラミド、グアネチジン、ケトロラック(Acular(登録商標))、チロカルシトニン、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、クロニジン(Catapress(登録商標))、ブレチリウム、ケタンセリン、レセルピン、ドロペリドール、アトロピン、フェントラミン、ブピバカイン、リドカイン、アセトアミノフェン、ノルトリプチリン(Pamelor(登録商標))、アミトリプチリン(Elavil(登録商標))、イミプラミン(Tofranil(登録商標))、ドキセピン(Sinequan(登録商標))、クロミプラミン(Anafranil(登録商標))、フルオキセチン(Prozac(登録商標))、セルトラリン(Zoloft(登録商標))、ネファゾドン(Serzone(登録商標))、ベンラファキシン(Effexor(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))、ブプロピオン(Wellbutrin(登録商標))、メキシレチン、ネフェジピン、プロプラノロール、トラマドール、ラモトリジン、ジコノチド、ケタミン、デキシトロメトロファン、ベンゾジアゼピン、バクロフェン、チザニジン、およびフェノキシベンザミン。
【0110】
4.3 治療および管理の方法
本発明の方法は、様々なタイプの疼痛を予防、治療、改変および/または管理する方法を包含する。本明細書中で用いる場合、特に断らない限り、「疼痛を予防する」という用語は、疼痛と関連した1以上の症状を抑制するまたはその重症度を低下させることを含むが、これらに限らない。疼痛と関連した症状としては、限定するものではないが、以下のものが含まれる:自律神経の機能障害、運動の開始不能、虚弱、震え、筋痙攣、筋緊張異常、筋萎縮、浮腫、硬直、関節痛、発汗の増加、温度に対する過敏性、軽い接触への過敏性(アロディニア)、皮膚の色の変化、高体温または低体温、爪と毛髪の成長増加、早期の骨性変化、網状皮斑またはチアノーゼを伴う発汗過多、毛髪の喪失、隆起した、壊れた、または脆い爪、手の乾燥、汎発性骨粗鬆症、不可逆的な組織損傷、薄くて光沢のある皮膚、関節の痙縮、および著しい骨の無機質脱落。
【0111】
本明細書中で用いる場合、特に断らない限り、「疼痛を治療する」という用語は、疼痛の症状が現れた後に本発明の化合物または他の追加の活性薬剤を投与することを指し、一方、「予防する」は症状が現れる前に、特に疼痛のリスクがある患者に、投与することを指す。疼痛のリスクがある患者の例としては、限定するものではないが、外傷、神経障害、心筋梗塞、筋骨格障害および悪性疾患を有する患者が含まれる。疼痛症候群の家族歴のある患者も予防的処置にふさわしい候補である。
【0112】
本明細書中で用いる場合、特に断らない限り、「疼痛を改変する」という用語は、疼痛の閾値、発生および/または持続期間を改変すること、または患者が疼痛に応答する方法を変えることを意図している。理論によって制限されるものではないが、免疫調節化合物は抗痛覚過敏薬および/またはニューロモジュレーターとして作用しうると考えられる。一つの実施形態において、「疼痛を改変する」とは、異常に大きく反応する患者の疼痛応答(すなわち、特定の刺激に対して通常の疼痛より大きく感ずるレベル)を取り除き、ヒトまたは動物のシステムを正常な疼痛閾値の方に戻すことを包含する。別の実施形態では、「疼痛を改変する」とは、特定の強度の刺激に対する患者の疼痛応答を低減させることを包含する。別の実施形態では、「疼痛を改変する」とは、有効量の免疫調節化合物を投与する前の患者の疼痛閾値に対して患者の疼痛閾値を高めることを包含する。
【0113】
本明細書中で用いる場合、特に断らない限り、「疼痛を管理する」という用語は、疼痛に苦しんでいた患者における疼痛の再発を防止すること、および/または疼痛に苦しんでいた患者が緩和状態のままでいる時間を長くすることを意図している。
【0114】
本発明は、様々なステージおよび特定のタイプの疼痛症候群をもつ患者において該疾患を治療、予防、改変および管理する方法を包含し、かかる疾患としては、限定するものではないが、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛、侵害受容性疼痛と神経因性疼痛の混合痛、内臓痛、偏頭痛、頭痛および術後疼痛と称されるものが含まれる。特定のタイプの疼痛には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:化学薬品もしくは熱による熱傷、皮膚の切り傷、皮膚の挫傷、変形性関節症、慢性関節リウマチ、腱炎、または筋筋膜疼痛と関連した疼痛;CRPSタイプI、CRPSタイプII、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)、反射性神経血管性ジストロフィー、反射性ジストロフィー、交感神経依存性疼痛症候群、カウザルギー、骨のズーデック萎縮、疼痛性ニューロジストロフィー、肩手症候群、外傷後ジストロフィー、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、癌関連疼痛、幻肢痛、線維筋痛症、慢性疲労症候群、脊髄損傷痛、中枢性卒中後疼痛、神経根障害、糖尿病性ニューロパシー、卒中後疼痛、梅毒性神経障害、および薬物(ビンクリスチン、ベルケード、サリドマイドなど)により医原的に誘発される痛みのある他の神経障害状態。
【0115】
本発明はさらに、疼痛の治療を予め行なったが、標準的な治療法に十分応答しなかったまたは全く応答しなかった患者、ならびに疼痛の治療を前もって行なっていなかった患者において疼痛を治療、改変または管理する方法を包含する。疼痛患者はいろいろな臨床的徴候およびさまざまな臨床結果を示すので、患者に与える治療、改変または管理は予後に応じて変化しうる。医師は、個々の患者を治療するために効果的に用いることのできる特定の第2薬剤、手術の種類、および理学療法のタイプを、過度の実験を行なうことなく、容易に決定することができよう。
【0116】
本発明により包含される方法は、1種以上の免疫調節化合物、またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを、疼痛に苦しんでいるかまたはそのように思われる患者(例えば、ヒト)に、投与することを含んでなる。
【0117】
本発明の一実施形態においては、免疫調節化合物を経口的に、約0.10〜約150mg/日の量で1回量または分割量として投与する。特定の実施形態では、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンを約0.1〜10mg/日の量で、あるいは約0.1〜10mgを1日おきにまたは他の短縮した治療計画で投与する。好ましい実施形態では、3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを約5〜25mg/日の量で、あるいは約5〜50mgを1日おきにまたは他の短縮した治療計画で投与する。
【0118】
一実施形態において、本発明は、侵害受容性疼痛を治療、予防、管理および/または改変するための方法に関し、この方法は、かかる処置を必要とする患者に、有効量の免疫調節化合物、またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与することを含んでなる。特定の実施形態では、侵害受容性疼痛が身体的損傷(例えば、皮膚の切り傷または挫傷、化学薬品または熱による熱傷)、変形性関節症、慢性関節リウマチ、または腱炎から生じる。別の実施形態では、侵害受容性疼痛が筋筋膜疼痛である。
【0119】
他の実施形態において、本発明は、神経因性疼痛を治療、予防、管理および/または改変するための方法に関し、この方法は、かかる処置を必要とする患者に、有効量の免疫調節化合物、またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与することを含んでなる。特定の実施形態では、神経因性疼痛が卒中、糖尿病性ニューロパシー、梅毒性神経障害、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、または薬物(ビンクリスチン、ベルケード、サリドマイドなど)により医原的に誘発される痛みのある他の神経障害と関連している。
【0120】
さらなる実施形態において、本発明は、混合痛(すなわち、侵害受容性成分と神経因性成分の両方を伴う疼痛)を治療、予防、管理および/または改変するための方法に関し、この方法は、かかる処置を必要とする患者に、有効量の免疫調節化合物、またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与することを含んでなる。
【0121】
本発明の他の実施形態は、内臓痛、頭痛(例えば、偏頭痛)、CRPSタイプI、CRPSタイプII、RSD、反射性神経血管性ジストロフィー、反射性ジストロフィー、交感神経依存性疼痛症候群、カウザルギー、骨のズーデック萎縮、疼痛性ニューロジストロフィー、肩手症候群、外傷後ジストロフィー、自律神経機能障害、癌関連疼痛、幻肢痛、線維筋痛症、慢性疲労症候群、術後痛、脊髄損傷痛、中枢性卒中後疼痛、または神経根障害を治療、予防、管理および/または改変するために、患者に1種以上の免疫調節化合物、またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与することを含んでなる。
【0122】
別の実施形態において、本発明は、サイトカインと関連した疼痛を治療、予防、管理および/または改変するための方法に関し、この方法は、かかる処置を必要とする患者に、有効量の免疫調節化合物、またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与することを含んでなる。一実施形態では、サイトカインの活性またはサイトカインの産生を抑制することが、結果的に、疼痛の治療、予防、管理および/または改変をもたらす。別の実施形態では、サイトカインがTNF-αである。別の実施形態では、サイトカインと関連した疼痛が侵害受容性疼痛である。別の実施形態では、サイトカインと関連した疼痛が神経因性疼痛である。
【0123】
他の実施形態において、本発明は、炎症と関連した疼痛を治療、予防、管理および/または改変するための方法に関し、この方法は、かかる処置を必要とする患者に、有効量の免疫調節化合物、またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与することを含んでなる。
【0124】
別の実施形態において、本発明は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)と関連した疼痛を治療、予防、管理および/または改変するための方法に関し、この方法は、かかる処置を必要とする患者に、有効量の免疫調節化合物を投与することを含んでなる。一実施形態では、MAPKがJNK (例えば、JNK1、JNK2またはJNK3)である。別の実施形態では、MAPKが細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK) (例えば、ERK1またはERK2)である。
【0125】
他の実施形態において、本発明は、手術に伴う疼痛、一実施形態では計画手術(すなわた、計画損傷)に伴う疼痛を治療、予防、管理および/または改変するための方法に関し、この方法は、かかる処置を必要とする患者に、有効量の免疫調節化合物を投与することを含んでなる。この実施形態では、免疫調節化合物を計画手術の前、間および/または後に投与することができる。特定の実施形態では、患者に、約5〜25mg/日の免疫調節化合物を計画手術の約1〜21日前に、および/または約5〜25mg/日の免疫調節化合物を計画手術の約1〜21日後に投与する。別の実施形態では、患者に、約10mg/日の免疫調節化合物を計画手術の約1〜21日前に、および/または約10mg/日の免疫調節化合物を計画手術の約1〜21日後に投与する。
【0126】
4.3.1 第2の活性薬剤を用いる併用療法
本発明の特定の方法は、第2の活性薬剤または活性成分と併用して、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、もしくはプロドラッグを投与することを含む。免疫調節化合物の例は本明細書に開示されている(例えば、セクション4.1を参照のこと)。第2の活性薬剤の例も本明細書に開示されている(例えば、セクション4.2を参照のこと)。
【0127】
患者への免疫調節化合物および第2の活性薬剤の投与は、同一のまたは異なる投与経路により同時にまたは逐次的に行うことができる。特定の活性薬剤に利用される特定の投与経路の適合性は、活性薬剤それ自体(例えば、血流に入る前に分解を起こすことなく経口投与することができるかどうか)および治療対象の疾患に依存するであろう。免疫調節化合物の好ましい投与経路は経口である。本発明の第2の活性薬剤または成分の好ましい投与経路は、当業者に公知である。例えば、Physicians' Desk Reference, 594-597 (第57版, 2003)を参照のこと。
【0128】
一実施形態では、第2の活性薬剤は、約1〜約3,500 mg、約5〜約2,500 mg、約10〜約500 mg、または約25〜約250 mgの量で、経口的、静脈内、筋肉内、皮下、粘膜、または経皮的に1日1回または2回投与される。
【0129】
第2の活性薬剤の具体的な量は、使用する特定の薬剤、治療または管理の対象となる疾患のタイプ、疾患の重症度および病期、ならびに免疫調節化合物と患者に併行して投与される任意の追加の活性薬剤の量に依存するであろう。特定の実施形態では、第2の活性薬剤は以下に挙げるものである:サリチル酸アセテート(Aspirin(登録商標))、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、Enbrel(登録商標)、Remicade(登録商標)、Humira(登録商標)、Kineret(登録商標)、ケタミン、ガバペンチン(Neurontin(登録商標))、フェニトイン(Dilantin(登録商標))、カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))、オキシカルバゼピン(Trileptal(登録商標))、バルプロ酸(Depakene(登録商標))、硫酸モルヒネ、ヒドロモルホン、プレドニゾン、グリセオフルビン、ペントニウム、アレンドロネート、ジフェンヒドラミン、グアネチジン、ケトロラック(Acular(登録商標))、チロカルシトニン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロニジン(Catapress(登録商標))、ブレチリウム、ケタンセリン、レセルピン、ドロペリドール、アトロピン、フェントラミン、ブピバカイン、リドカイン、アセトアミノフェン、ノルトリプチリン(Pamelor(登録商標))、アミトリプチリン(Elavil(登録商標))、イミプラミン(Tofranil(登録商標))、ドキセピン(Sinequan(登録商標))、クロミプラミン(Anafranil(登録商標))、フルオキセチン(Prozac(登録商標))、セルトラリン(Zoloft(登録商標))、ネファゾドン(Serzone(登録商標))、ベンラファキシン(Effexor(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))、ブプロピオン(Wellbutrin(登録商標))、メキシレチン、ニフェジピン、プロプラノロール、トラマドール、ラモトリジン、ジコノチド、ケタミン、デキストロメトルファン、ベンゾジアゼピン、バクロフェン、チザニジン、フェノキシベンザミン、またはこれらの組合せ、またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、プロドラッグもしくは薬理学的に活性な代謝産物。
【0130】
ヒドロモルホン(Dilaudid(登録商標))は、好ましくは、中程度から重度の疼痛を管理するために約2mgの初期量を経口的に、または約1mgを静脈内に投与する。例えば、Physicians' Desk Reference, 2991 (第57版, 2003)を参照のこと。硫酸モルヒネ(MS Contin(登録商標)、Duramorph(登録商標)、Astramorph(登録商標))は、好ましくは、患者がすでに麻薬性鎮痛薬を服用しているかにもよるが、約2mg IV/SC/IMの初期量で投与する。例えば、Physicians' Desk Reference, 594-595 (第57版, 2003)を参照のこと。患者に有害な副作用の兆候(特に、呼吸低下)が認められない限り、投与可能な量の固有の制限はない。さまざまなIV用量を使用することができ、通常は、所望の効果が得られるまでタイトレートする。長期に薬剤を使用していない患者では、2mg IV/SCほどで十分である。麻薬性鎮痛薬を長期間服用している患者では、一般に、より高用量が必要である。硫酸モルヒネはまた、即時放出型および遅延放出型製剤として経口形態でも利用される。長期作用性経口形態は1日2回投与すればよい。疼痛の症状が現れている間は即時放出型が必要とされ、その用量はこれまでの使用に左右される。オキシコドン(OxyContin(登録商標))は、オピオイドの長期作用性形態であり、疼痛症候群の初期および後期段階で用いられる。オキシコドン(OxyContin(登録商標))は、好ましくは、約10〜160mg量を1日2回投与する。例えば、Physicians' Desk Reference, 2851 (第57版, 2003)を参照のこと。メペリジン(Demerol(登録商標))は、好ましくは、約50〜150mg PO/IV/IM/SC量を3〜4時間ごとに投与する。メペリジン(Demerol(登録商標))の典型的な小児量は3〜4時間ごとに1〜1.8mg/kg (0.5〜0.8mg/lb) PO/IV/IM/SCである。例えば、Physicians' Desk Reference, 2991 (第57版, 2003)を参照のこと。フェンタニル経皮パッチ(Duragesic(登録商標))は経皮投与形態として入手可能である。大部分の患者はこの薬物を72時間の投与間隔で投与されるが、約48時間の投与間隔が必要な患者もいる。典型的な成人量は約25mcg/h (10cm2)、50mcg/h (20cm2)、75mcg/h (75cm2)、または100mcg/h (100cm2)である。例えば、Physicians' Desk Reference, 1775 (第57版, 2003)を参照のこと。
【0131】
非麻薬性鎮痛薬および抗炎症薬、例えばNSAIDおよびcox-2阻害剤は、軽度から中程度までの疼痛患者の治療に用いることができる。イブプロフェン(Motrin(登録商標)、Advil(登録商標))は400〜800mg量を1日3回経口投与する。例えば、Physicians' Desk Reference, 1900-1904 (第57版, 2003); Physicians' Desk Reference for Nonprescription Drugs and Dietary Supplements, 511, 667および773(第23版, 2002)を参照のこと。ナプロキセンナトリウム(Anaprox(登録商標)、Naprelan(登録商標)、Naprosyn(登録商標))も、好ましくは、軽度から中程度までの疼痛の緩和のために約275mg量を1日3回、または約550mgを1日2回使用する。例えば、Physicians' Desk Reference, 1417, 2193および2891 (第57版, 2003)を参照のこと。
【0132】
抗うつ薬、例えばノルトリプチリン(Pamelor(登録商標))もまた、慢性および/または神経因性疼痛の患者を治療するための本発明の実施形態において使用される。経口成人量は、典型的には、約25〜100mg量であり、200mg/日を超えないことが好ましい。典型的な小児量は、初期量として約0.1mg/kg POであり、耐薬性がある場合は約0.5〜2mg/日まで増量する。アミトリプチリン(Etrafon(登録商標))は、好ましくは、神経因性疼痛に約25〜100mg POの成人量で用いる。例えば、Physicians' Desk Reference, 1417および2193 (第57版, 2003)を参照のこと。
【0133】
鎮痙薬、例えばガバペンチン(Neurontin(登録商標))もまた、慢性および神経因性疼痛の患者を治療するために使用される。好ましくは、ガバペンチンは約100〜1,200mg量を1日3回経口投与する。例えば、Physicians' Desk Reference, 2563 (第57版, 2003)を参照のこと。カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))は真の三叉神経痛と関連した疼痛の治療に用いる。成人の経口用量は、典型的には、初期量として約100mg量を1日2回であり、耐薬性がある場合は約2,400mg/日まで増量する。例えば、Physicians' Desk Reference, 2323-25 (第57版, 2003)を参照のこと。
【0134】
一実施形態において、免疫調節化合物と第2の活性薬剤は、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに、免疫調節化合物が他方の薬剤と一緒に作用して、それらを別のやり方で投与した場合よりも大きな効果をもたらすように、ある順序で、ある時間間隔以内に投与する。例えば、第2の活性薬剤は、同時に、または異なる時点に任意の順序で連続的に投与することができるが、同時に投与しない場合には、所望の治療または予防効果が得られるように時間的に十分接近させてそれらを投与すべきである。一実施形態では、免疫調節化合物と第2の活性薬剤は重なり合う時間帯にそれらの効果を発揮する。それぞれの第2の活性薬剤は別個に、任意の適切な形態で、適当な経路により投与してもよい。他の実施形態では、第2の活性薬剤の投与前、投与と同時、または投与後に免疫調節化合物を投与する。また、疼痛の予防手段として、または疼痛緩和のために手術を行なうこともできる。
【0135】
各種の実施形態において、免疫調節化合物と第2の活性薬剤は、約1時間未満の間隔をおいて、約1時間の間隔をおいて、約1時間から約2時間の間隔をおいて、約2時間から約3時間の間隔をおいて、約3時間から約4時間の間隔をおいて、約4時間から約5時間の間隔をおいて、約5時間から約6時間の間隔をおいて、約6時間から約7時間の間隔をおいて、約8時間から約9時間の間隔をおいて、約9時間から約10時間の間隔をおいて、約10時間から約11時間の間隔をおいて、約11時間から約12時間の間隔をおいて、24時間までの間隔をおいて、または48時間までの間隔をおいて、投与する。他の実施形態では、免疫調節化合物と第2の活性薬剤を同時に投与する。
【0136】
他の実施形態において、免疫調節化合物と第2の活性薬剤は、約2〜4日ずらして、約4〜6日ずらして、約1週間ずらして、約1〜2週間ずらして、または、2週間より多くずらして、投与する。
【0137】
特定の実施形態において、免疫調節化合物と、任意に第2の活性薬剤とは、患者に周期的に投与する。周期的療法は、第1の薬剤をある期間にわたり投与し、続いて第2の薬剤および/または第3の薬剤をある期間にわたり投与し、この逐次投与を繰り返すことを含む。周期的療法は、1以上の療法に対する耐性の発生を減らすことができ、1つの治療法の副作用を回避または軽減することができ、かつ/また、治療の効力を改善することができる。
【0138】
特定の実施形態において、免疫調節化合物と、任意に第2の活性薬剤とは、約3週間より短いサイクルで、およそ2週間ごとに1回、およそ10日ごとに1回、または毎週1回、投与する。1サイクルは、免疫調節化合物と、任意に第2の活性薬剤とを、各サイクル約90分間にわたり、各サイクル約1時間にわたり、各サイクル約45分間にわたり注入することで、投与することを含む。各サイクルは少なくとも1週間の休み、少なくとも2週間の休み、少なくとも3週間の休みを入れることができる。投与されるサイクル数は約1〜12サイクル、より一般的には約2〜10サイクル、さらに一般的には約2〜8サイクルである。
【0139】
なおも他の実施形態においては、免疫調節化合物を、連続注入または長い休止期間をおかない高頻度投与により、規則的な投薬計画で投与する。そのような規則的投与は休止期間を設けずに一定の間隔で投与する必要がある。典型的には、免疫調節化合物を、より低い用量で用いる。そのような投薬計画は、比較的低用量を長期間にわたり毎日投与することを含む。好ましい実施形態では、低用量の使用により、有害な副作用を最小限に抑えたり、休止期間をなくすことができる。特定の実施形態では、免疫調節化合物が、約24時間から約2日間まで、約1週間まで、約2週間まで、約3週間まで、約1ヶ月まで、約2ヶ月まで、約3ヶ月まで、約4ヶ月まで、約5ヶ月まで、約6ヶ月までにわたる長期の低用量または連続注入により送達される。当業者はこのような投薬計画を最適化することができる。
【0140】
他の実施形態においては、治療のコースが患者に同時発生的に施され、すなわち、個々の用量の第2の活性薬剤が、別個に、しかし免疫調節化合物が第2の活性薬剤と一緒に作用しうるような時間間隔のうちに、投与される。例えば、ある成分は、2週間ごとに1回または3週間ごとに1回投与される他の成分と組み合わせて、1週間に1回投与することができる。言い換えると、投薬計画は、たとえ治療薬が同時にまたは同日中に投与されなくとも、同時発生的に行なわれる。
【0141】
第2の活性薬剤は、免疫調節化合物と相加的に、より好ましくは相乗的に作用することができる。一実施形態では、免疫調節化合物と1種以上の第2の活性薬剤とを同一の医薬組成物として同時に投与する。別の実施形態では、免疫調節化合物と1種以上の第2の活性薬剤とを別個の医薬組成物として同時発生的に投与する。さらに別の実施形態では、免疫調節化合物を第2の活性薬剤の投与前または投与後に投与する。本発明は、免疫調節化合物と第2の活性薬剤を同一のまたは異なる投与経路(例えば、経口および非経口)により投与することを包含する。特定の実施形態において、免疫調節化合物が、有害な副作用(毒性を含むがこれに限らない)を起こす可能性のある第2の活性薬剤と同時に投与される場合には、第2の活性薬剤を、有害な副作用が誘発される閾値より低い用量で有利に投与することができる。
【0142】
4.3.2 疼痛管理介入技術との併用
さらに他の実施形態において、本発明は、疼痛管理介入技術と併用して(介入技術の前、間または後に)、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる、疼痛を治療、予防、改変および/または管理する方法を包含する。疼痛管理介入技術の例としては、限定するものではないが、交感神経ブロックの使用、静脈内局部ブロックの使用、後索刺激装置の配置、または鎮痛薬送達用の髄腔内注入装置の配置が挙げられる。好適な疼痛管理介入技術は、疼痛によって冒された領域の交感神経系の活動を遮断する選択的神経ブロックを提供するものである。
【0143】
免疫調節化合物と疼痛管理介入技術の併用は、特定の患者において予想以上に効果的である独特の治療計画を提供することができる。理論によって制限されるものではないが、免疫調節化合物は、疼痛管理介入技術と同時発生的に施した場合、相加的または相乗的効果を生み出すと考えられる。疼痛管理介入技術の一例は、各種薬剤(局所麻酔薬、例えばブピバカインおよびリドカイン、グアネチジン、ケタミン、ブレチリウム、ステロイド、ケトロラック、およびレセルピンを含むが、これらに限らない)と共にBIERブロックを用いる静脈内局部ブロックである。Perez R.S.ら, J Pain Symptom Manage 2001 Jun; 21(6): 511-26。上肢に関係するCRPS症例の場合は、星状(頸胸)神経節ブロックを使用することができる。本発明はまた、体性神経ブロックの使用を包含し、このブロックは腕神経叢ブロックのさまざまな変形と共に連続硬膜外注入を伴う。体性神経ブロックの腋窩、鎖骨上、または鎖骨下アプローチも有用でありうる。
【0144】
4.3.3 理学療法または心理療法との併用
さらに他の実施形態において、本発明は、理学療法または心理療法と併用して、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる、疼痛を治療、予防、改変および/または管理する方法を包含する。
【0145】
上述したように、疼痛の症状には血管運動機能不全および運動障害が含まれる。軽い重力負荷から漸進的でアクティブな重力負荷への一定した進行は、疼痛症候群の患者において非常に重要である。また、次第に増加する感覚刺激に対する緩やかな脱感作も役に立つ。ノーマライズされた知覚の緩やかな増加は、CNSにおける改変されたプロセッシングをリセットする傾向がある。したがって、理学療法は機能回復において重要な役割を果たしうる。理学療法の目標は、筋力と柔軟性を徐々に高めることである。
【0146】
免疫調節化合物と理学療法の併用は、特定の患者において予想以上に効果的である独特の治療計画を提供することができると考えられる。理論によって制限されるものではないが、免疫調節化合物は、理学療法と同時発生的に施した場合、相加的または相乗的効果を生み出すと考えられる。
【0147】
多くの疼痛に関する文献は、うつ病や不安といった、付随する行動的および精神医学的な病状に触れている。免疫調節化合物と心理療法の併用は、特定の患者において予想以上に効果的である独特の治療計画を提供することができると考えられる。理論によって制限されるものではないが、免疫調節化合物は、心理療法(例えば、バイオフィードバック、緊張緩和トレーニング、認知行動療法、および個人または家族の精神療法を含むが、これらに限らない)と同時発生的に施した場合、相加的または相乗的効果を生み出すと考えられる。
【0148】
免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、もしくはプロドラッグは、理学療法または心理療法の前、間または後に投与される。特定の方法では、第2の活性薬剤も患者に投与される。
【0149】
4.4 医薬組成物および単位剤形
医薬組成物は、個別の単位剤形の調製に使用することができる。本発明の医薬組成物および剤形には、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、もしくはプロドラッグが含まれる。本発明の医薬組成物および剤形は、1種以上の賦形剤をさらに含むことができる。
【0150】
本発明の医薬組成物および剤形は、1つ以上の追加の活性成分を含むこともできる。したがって、本発明の医薬組成物および剤形には、本明細書に開示されている活性成分(例えば、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、もしくはプロドラッグ、および第2の活性薬剤)が含まれる。場合により含まれる追加の活性薬剤の例は、本明細書に開示されている(例えば、セクション4.2参照)。
【0151】
本発明の単位剤形は、経口、粘膜(例えば、鼻腔、舌下、膣、頬腔内、もしくは直腸)、非経口(例えば、皮下、静脈内、ボーラス注射、筋肉内、もしくは動脈内)、経真皮もしくは経皮投与を患者に行うのに好適である。剤形の例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:錠剤;キャプレット剤;カプセル剤、例えば、軟質弾性ゼラチンカプセル剤;カシェ剤;トローチ剤;ロゼンジ剤;分散液剤;坐剤;散剤;エーロゾル剤(例えば、点鼻剤または吸入器);ゲル剤;患者への経口または粘膜投与に好適な液体剤形、例えば、懸濁液剤(例えば、水性もしくは非水性の懸濁液剤、水中油型乳濁液剤、または油中水型乳濁液剤)、溶液剤、およびエリキシル剤;患者への非経口投与に好適な液体剤形;および患者への非経口投与に好適な液体製剤を提供すべく用時調製することのできる無菌の固体(例えば、結晶質または非晶質固体)。
【0152】
本発明の剤形の組成、形状、およびタイプは、典型的には、その用途により変化する。例えば、疾患の急性治療に使用する剤形には、同一疾患の慢性治療に使用する剤形よりも多量に1以上の活性成分が含まれうる。同様に、非経口剤形には、同一疾患の治療に用いる経口剤形よりも少量の活性成分が含まれうる。本発明に包含される特定の剤形が相互に相違する、これらのおよび他の方法については、当業者に自明であろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照されたい。
【0153】
典型的な医薬組成物および剤形には、1種以上の賦形剤が含まれる。好適な賦形剤については、製薬分野の当業者に周知であり、好適な賦形剤の非限定的な例は、本明細書中に挙げられている。特定の賦形剤が医薬組成物または剤形に含めるのに好適であるか否かは、当技術分野で周知のさまざまな要因(例えば、限定するものではないが、剤形を患者に投与する方法)に依存する。例えば、錠剤のような経口剤形には、非経口剤形に使用するには適切でない賦形剤が含まれうる。特定の賦形剤の適合性は、剤形中の個々の活性成分にも依存しうる。例えば、いくつかの活性成分の分解は、乳糖のようないくつかの賦形剤により、または水に暴露したときに、加速される可能性がある。第一級または第二級アミンを含む活性成分は、そのような加速された分解を特に受けやすい。したがって、本発明は、乳糖、他の単糖類または二糖類を、含むにしても、少量しか含まない医薬組成物および剤形を包含する。本明細書中で使用する場合、「乳糖フリー」という用語は、かりに存在するにしても、存在する乳糖の量が、活性成分の分解速度を実質的に増加させるには不十分であることを意味する。
【0154】
当技術分野で周知であり、例えば米国薬局方(USP) 25-NF20 (2002)に列挙されている、賦形剤を本発明の乳糖フリー組成物に含めることができる。一般的には、乳糖フリー組成物には、活性成分、結合剤/充填剤、および滑沢剤が、製薬上適合しうるかつ製薬上許容される量で含まれる。好ましい乳糖フリー剤形には、活性成分、微結晶性セルロース、アルファ化デンプン、およびステアリン酸マグネシウムが含まれる。
【0155】
水は一部の化合物の分解を促進する可能性があるので、本発明はさらに、活性成分を含む無水の医薬組成物および剤形を包含する。例えば、製剤の貯蔵寿命または経時安定性のような特性を調べるために、長期貯蔵をシミュレートする手段として、水(例えば、5%)を添加することが、製薬技術分野で広く受け入れられている。例えば、Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 第2版, Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80を参照されたい。実際、水および熱は一部の化合物の分解を促進する。したがって、製剤の製造時、取扱い時、包装時、貯蔵時、輸送時、および使用時には通常、水分および/または湿気に曝されることから、製剤に及ぼす水の影響は、非常に重要になってくる。
【0156】
本発明の無水の医薬組成物および剤形は、無水の成分または水分量の少ない成分を用いて水分または湿分の少ない条件下で調製することができる。乳糖と、一級または二級アミンを有する少なくとも1つの活性成分とを含有する医薬組成物および剤形は、製造時、包装時、および/または貯蔵時に水分および/または湿分と実質的に接触することが予想されるのであれば、無水であることが好ましい。
【0157】
無水の医薬組成物は、その無水状態が保持されるように調製しかつ貯蔵しなければならない。したがって、水への暴露を防止することが知られている材料を用いて無水の組成物を包装し、それらを好適な処方キットに含めるようにすることが好ましい。好適な包装の例としては、気密フォイル、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、およびストリップパックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
本発明はさらに、活性成分の分解速度を低下させる1種以上の化合物を含む医薬組成物および剤形を包含する。そのような化合物(本明細書中では「安定化剤」という)としては、抗酸化剤(例:アスコルビン酸)、pH緩衝剤、または塩緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
賦形剤の量および種類と同様に、剤形中の活性成分の量および特定の種類は、患者に投与する経路(ただし、これに限定されない)のような要因に依存して変化しうる。しかしながら、本発明の典型的な剤形には、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、もしくはプロドラッグが、約0.10〜約150 mgの量で含まれる。典型的な剤形には、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、もしくはプロドラッグが、約0.1、1、2、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、25、50、100、150、または200 mgの量で含まれる。特定の実施形態では、好ましい剤形が、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンを約1、2、5、10、25、または50 mgの量で含む。特定の実施形態では、好ましい剤形が、3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを約5、10、25、または50 mgの量で含む。典型的な剤形には、第2の活性薬剤が約1〜約3,500 mg、約5〜約2,500 mg、約10〜約500 mg、または約25〜約250 mgの量で含まれる。もちろん、第2の活性薬剤の特定の量は、使用する特定の薬剤、治療または管理の対象となる疼痛のタイプ、患者に同時発生的に投与される免疫調節化合物と任意の追加の活性薬剤の量に依存するであろう。
【0160】
4.4.1 経口剤形
経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、個別の剤形として、例えば、限定するものではないが、錠剤(例えば、噛むことのできる錠剤)、キャプレット剤、カプセル剤、および液剤(例えば、香味シロップ剤)として、提示することができる。そのような剤形は、所定量の活性薬剤を含有しており、当業者に周知の製剤学的方法により調製可能である。概要については、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照されたい。
【0161】
本発明の典型的な経口剤形は、従来の医薬配合技術に従って活性成分を少なくとも1種の賦形剤と均質混合状態に組み合わせることにより調製される。賦形剤は、投与に望まれる製剤の形に応じて多種多様な形態をとることができる。例えば、経口液剤またはエーロゾル剤形で使用するのに好適な賦形剤としては、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、および着色剤が挙げられるが、これらに限定されない。固形経口剤形(例えば、散剤、錠剤、カプセル剤、およびキャプレット剤)で使用するのに好適な賦形剤の例としては、デンプン、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、および崩壊剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
投与が容易であることから、錠剤およびカプセル剤は、最も有利な経口単位剤形を代表するものであり、この場合には、固体賦形剤が利用される。所望であれば、標準的な水系方式または非水系方式により錠剤にコーティングを施すことができる。そのような剤形は、任意の製剤学的方法により調製することができる。一般的には、医薬組成物および剤形は、活性成分を、液状担体、微細な固形担体、またはその両方と均質かつ緊密に混合してから、必要ならば、その混合物を所望の提示形態に成形することにより、調製される。
【0163】
例えば、錠剤は、圧縮または成形により調製することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒のような自由流動性形態の活性成分を、場合により賦形剤と混合してから、好適な機械で圧縮することにより、調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を好適な機械で成形することにより製造することができる。
【0164】
本発明の経口剤形で使用することのできる賦形剤の例としては、結合剤、充填剤、崩壊剤、および滑沢剤が挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物および剤形で使用するのに好適な結合剤としては、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、または他のデンプン、ゼラチン、天然および合成ガム、例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸化合物、トラガカント末、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、No.2208、2906、2910)、微結晶性セルロース、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
微結晶性セルロースの好適な形態としては、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(入手先はFMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PA)として販売されている材料、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な結合剤は、AVICEL RC-581として販売されいる微結晶性セルロースとナトリウムカルボキシメチルセルロースとの混合物である。好適な無水または低水分の賦形剤または添加剤としては、AVICEL-PH-103TMおよびStarch 1500 LMが挙げられる。
【0166】
本明細書中に開示されている医薬組成物および剤形で使用するのに好適な充填剤の例としては、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート類、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物中の結合剤または充填剤は、典型的には、医薬組成物または剤形の約50〜約99重量パーセントの量で存在する。
【0167】
崩壊剤は、水性環境に暴露したときに崩壊する錠剤を提供すべく、本発明の組成物で使用される。崩壊剤の含有量が多すぎる錠剤は、貯蔵時に崩壊する可能性があり、一方、含有量が少なすぎる錠剤は、所望の速度でまたは所望の条件下で崩壊しない可能性がある。したがって、多すぎたり少なすぎたりして悪影響がでるほど活性成分の放出を改変することのない十分量の崩壊剤を用いて、本発明の固形経口剤形を形成しなければならない。使用する崩壊剤の量は、製剤のタイプによって変化し、当業者であれば、容易に確定しうる。典型的な医薬組成物には、約0.5〜約15重量%の崩壊剤、好ましくは約1〜約5重量%の崩壊剤が含まれる。
【0168】
本発明の医薬組成物および剤形で使用することのできる崩壊剤としては、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、ナトリウムデンプングリコレート、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、他のデンプン類、アルファ化デンプン、他のデンプン類、クレー類、他のアルギン類、他のセルロース類、ガム類、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
本発明の医薬組成物および剤形で使用することのできる滑沢剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽質鉱油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール類、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。追加の滑沢剤としては、例えば、サイロイドシリカゲル(AEROSIL200、製造元はW.R. Grace Co., Baltimore, MD)、合成シリカの凝結エーロゾル(販売元はDegussa Co., Plano, TX)、CAB-O-SIL(高熱反応二酸化ケイ素生成物、販売元はCabot Co., Boston, MA)、およびそれらの混合物が挙げられる。かりに使用するのであれば、滑沢剤は、典型的には、それが配合される医薬組成物または剤形の約1重量パーセント未満の量で使用される。
【0170】
本発明の好ましい固形経口剤形には、免疫調節化合物、無水乳糖、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸、コロイド状無水シリカ、およびゼラチンが含まれる。
【0171】
4.4.2 遅延放出剤形
本発明の活性薬剤は、当業者に周知である制御放出手段または送達器具により投与することができる。例としては、米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;ならびに同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、および同第5,733,566号(いずれも参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。そのような剤形を用いれば、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、浸透系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェア、またはそれらの組合せを使用して、1種以上の活性成分の徐放または制御放出を行うことにより、さまざまな割合での所望の放出プロファイルを得ることができる。本明細書に記載のものを含めて当業者に公知の好適な制御放出製剤は、本発明の活性成分と共に使用すべく容易に選択することができる。したがって、本発明は、経口投与に適する1つの単位剤形、例えば、限定するものではないが、制御放出に適合させた錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤、およびキャプレット剤を包含する。
【0172】
すべての制御放出医薬品は、それらの対応する非制御医薬品により達成される薬物療法に比して薬物療法を改善するという共通の目標を有する。理想的には、医学的処置における最適にデザインされた制御放出製剤の使用は、最小限の薬物を利用して最小限の時間で症状の治癒またはコントロールを行うことにより特徴づけられる。制御放出製剤の利点としては、薬物活性の長期持続、投与回数の減少、および患者のコンプライアンスの向上が挙げられる。このほか、制御放出製剤を用いれば、作用の開始時間または薬剤の血中レベルのような他の特性に影響を及ぼすことができるので、副作用(例えば、有害作用)の発生に影響を及ぼすことができる。
【0173】
ほとんどの制御放出製剤では、速やかに所望の治療効果を生じる量の薬物(活性成分)を最初に放出させ、このレベルの治療効果または予防効果を長期間にわたり保持する他の薬物量を徐々にかつ連続的に放出させるように、デザインされる。この一定レベルの薬物を生体内で保持するために、代謝されて生体から排泄される薬物の量を補充する速度で薬物を剤形から放出させなければならない。活性成分の制御放出は、種々の条件により、例えば、限定するものではないが、pH、温度、酵素、水、または他の生理的条件もしくは化合物により促進させることができる。
【0174】
4.4.3 非経口剤形
非経口剤形は、患者に対して、種々の経路により、例えば、限定するものではないが、皮下、静脈内(ボーラス注射を含む)、筋肉内、および動脈内に、投与することができる。典型的には、それらの投与は混入汚染物に対する患者の自然防御を迂回するので、非経口剤形は無菌であるか、または患者に投与する前に滅菌可能であることが好ましい。非経口剤形の例としては、そのまま注射できる状態にある溶液剤、製薬上許容される注射用媒体に溶解もしくは懸濁させることができる状態にある乾燥製品、そのまま注射できる状態にある懸濁液剤、および乳濁液剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
本発明の非経口剤形を提供するために使用することのできる好適な媒体は、当業者に周知である。例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:注射用水USP;水性媒体、例えば、限定するものではないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸加リンゲル注射液;水混和性媒体、例えば、限定するものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール;ならびに非水性媒体、例えば、限定するものではないが、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジル。
【0176】
本明細書中に開示されている1種以上の活性成分の溶解性を増大させる化合物もまた、本発明の非経口剤形中に配合することができる。例えば、シクロデキストリンおよびその誘導体を用いて、免疫調節化合物およびその誘導体の溶解性を増大させることができる。例えば、米国特許第5,134,127号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。
【0177】
4.4.4 局所および経粘膜剤形
本発明の局所および経粘膜剤形としては、スプレー剤、エーロゾル剤、溶液剤、乳濁液剤、懸濁液剤、または当業者に公知の他の剤形が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版および第18版, Mack Publishing, Easton PA (1980 & 1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 第4版, Lea & Febiger, Philadelphia (1985)を参照されたい。口腔内の粘膜組織の治療に好適な剤形は、洗口剤または経口ゲル剤として製剤化することができる。
【0178】
本発明に包含される局所および経粘膜剤形を提供するために使用することのできる好適な賦形剤(例えば、担体および希釈剤)および他の材料は、製薬分野の当業者に周知であり、所与の医薬組成物または剤形が適用される特定の組織に依存する。その事実をふまえて、典型的な賦形剤としては、無毒でかつ製薬上許容される、溶液剤、乳濁液剤、またはゲル剤を形成するための水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。保湿剤または湿潤剤もまた、所望であれば、医薬組成物および剤形に添加することができる。そのような追加の成分の例は、当技術分野で周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版および第18版, Mack Publishing, Easton PA (1980 & 1990)を参照されたい。
【0179】
医薬組成物または剤形のpHを調整することにより、1種以上の活性成分の送達を改善することも可能である。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、または等張性を調整することにより、送達を改善することもできる。ステアレートのような化合物を医薬組成物または剤形に添加して1種以上の活性成分の親水性または親油性を改変することにより、送達を改善することも有利である。これに関連して、ステアレートは、製剤用の脂質媒体として、乳化剤または界面活性剤として、および送達促進剤または浸透促進剤として、役立ちうる。活性成分のさまざまな塩、水和物、または溶媒和物を用いることにより、得られる組成物の特性をさらに調整することができる。
【0180】
4.4.5 キット
典型的には、本発明の活性成分は、同時にまたは同一の投与経路で患者に投与しないことが好ましい。したがって、本発明は、医師が使用したときに、患者への適正量の活性成分の投与を単純化できるキットを包含する。
【0181】
本発明の典型的なキットは、免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、プロドラッグ、もしくはクラスレートの剤形を含んでなる。本発明に包含されるキットは、追加の活性成分またはそれらの組合せをさらに含むことができる。追加の活性成分の例としては、限定するものではないが、抗うつ薬、鎮痙薬、抗高血圧薬、抗不安薬、カルシウムチャンネル阻害薬、筋弛緩薬、非麻薬性鎮痛薬、麻薬性鎮痛薬、抗炎症薬、cox-2阻害剤、免疫機能改善薬、免疫抑制剤、コルチコステロイド、高圧酸素、または本明細書中に開示される他の治療薬が挙げられる(例えば、セクション4.2を参照されたい)。
【0182】
本発明のキットは、活性成分の投与に使用される器具をさらに含んでいてもよい。そのような器具の例としては、シリンジ、ドリップバッグ、パッチ、および吸入器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
本発明のキットは、1種以上の活性成分を投与するために使用することのできる製薬上許容される媒体をさらに含むことができる。例えば、活性成分が非経口投与に供すべく用時調製しなければならない固体形態で提供される場合、キットは、非経口投与に好適である微粒子フリーの無菌溶液を形成すべく活性成分を溶解させることのできる好適な媒体の入った密閉容器を備えることができる。製薬上許容される媒体の例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない:注射用水USP;水性媒体、例えば、限定するものではないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸加リンゲル注射液;水混和性媒体、例えば、限定するものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール;ならびに非水性媒体、例えば、限定するものではないが、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジル。
【実施例】
【0184】
5. 実施例
以下の実施例は本発明の特定の実施形態を例示するものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0185】
5.1 薬理学的研究
疼痛は炎症反応によって開始され、TNF-αのような炎症性サイトカインの作用により維持される。TNF-αは侵害受容性疼痛と神経因性疼痛のいずれにおいても病理学的役割を担っていると考えられる。免疫調節化合物が発揮する生物学的作用の一つはTNF-α合成の低下である。免疫調節化合物はTNF-α mRNAの分解を高める。Schwann細胞におけるその発現の増加は、痛みを伴ったヒト神経障害において示されている。アロディニア患者の血清中では可溶性のTNF-α受容体が、アロディニアを訴えていない神経障害患者と比べて、増加している。このサイトカインは一次求心性侵害受容器において異所性活性を誘発することができ、それゆえに神経因性疼痛における痛覚過敏の原因でありうる。考えられる一つのメカニズムは、TNF-αが細胞において活動的なナトリウムイオンチャンネルを形成できるというものである。侵害受容器へのナトリウム流入の増加は、それらを異所性放電のほうへ向けると考えられる。このサイトカインは、それが神経損傷または神経機能障害の部位で活性化されると、病理学的役割を果たす可能性がある。
【0186】
理論によって制限されるものではないが、免疫調節化合物は、予め欠乏状態で使用されると、長期圧迫損傷モデルの神経因性疼痛にさらされたラットにおいて機械的アロディニアおよび熱的痛覚過敏を軽減することができる。神経内膜TNF-αを低下させることに加えて、免疫調節化合物は脊髄後角でmet-エンケファリン(重要な抗侵害受容性の神経伝達物質)の長期増加を引き起こしうる。また、免疫調節化合物はラットの炎症性痛覚過敏およびマウスのライジング(writhing)痛覚反応を抑制することもできる。
【0187】
ヒトPBMCおよびヒト全血のLPS刺激後のTNF-α産生の、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンおよびサリドマイドによる阻害をin vitroで検討した。PBMCおよびヒト全血のLPS刺激後のTNF-α産生を阻害するための4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンのIC50は、それぞれ約24nM (6.55ng/mL)および約25nM (6.83ng/mL)であった。PBMCおよびヒト全血のLPS刺激後のTNF-α産生を阻害するための3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのIC50は、それぞれ約100nM (25.9ng/mL)および約480nM (103.6ng/mL)であった。これに対して、サリドマイドはPBMCのLPS刺激後のTNF-α産生を阻害するためのIC50が約194μM (50.1μg/mL)であった。
【0188】
in vitro研究は、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンまたは4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンの薬理活性プロファイルがサリドマイドと類似しているが、サリドマイドより50〜2,000倍強力であることを示唆している。3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンまたは4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンの薬理作用は、受容体により開始される刺激シグナル(例えば、IGF-1、VEGF、シクロオキシゲナーゼ-2)に対する細胞性応答のインヒビターとしてのその作用、ならびに他の活性に由来する。その結果、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンまたは4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンは、炎症性サイトカインの生成を抑制し、接着分子およびアポトーシス阻害タンパク質(例えば、cFLIP、cIAP)をダウンレギュレートし、デスレセプター(death-receptor)により開始されるプログラムされた細胞死への感受性を促進し、血管形成応答を抑制する。
【0189】
さらに、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンまたは4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンは、T細胞受容体(TCR)活性化による一次誘発後のT細胞の増殖を刺激することにおいて、サリドマイドより約50〜100倍強力であることが示されている。これらの化合物はまた、PBMC (IL2)またはT細胞(IFN-γ)のTCR活性化後のIL2およびIFN-γ産生を増強することにおいて、サリドマイドより約50〜100倍強力である。その上、これらの化合物はPBMCによる前炎症性サイトカインTNF-α、IL1β、およびIL6のLPS刺激産生の用量依存的抑制を示したが、それらは抗炎症性サイトカインIL10の産生を増加させた。
【0190】
5.2 毒性研究
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンおよび4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンが心血管機能および呼吸機能に及ぼす影響を、麻酔したイヌで検討した。2群のビーグル犬(2匹/性別/群)を使用した。一方の群には媒体のみを3回投与し、他方の群には次第に増加する用量(2、10および20mg/kg)の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンまたは4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンを3回投与した。全ての場合に、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン、または媒体の用量は、頸静脈から注入することにより、少なくとも30分の間隔をおいて連続的に投与した。
【0191】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンまたは4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンにより誘発される心血管および呼吸の変化は、媒体対照群と比較したとき、全ての用量で最小限度であった。媒体群と処置群との間で統計的有意差を生じるのは、低用量の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンまたは4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンを投与した後で動脈血圧がすこし増加することだけであった。この影響は約15分間持続したが、それより高い用量では認められなかった。大腿血流、呼吸パラメーター、およびQtc間隔の偏差は、対照群と処置群の両方に共通しており、処置に関連ありとは見なされなかった。
【0192】
5.3 動物疼痛モデルを用いた研究
免疫調節化合物は、当技術分野でよく知られたいずれかの疼痛モデルを用いて、疼痛を治療、予防、管理および/または改変する能力について試験することができる。さまざまな動物疼痛モデルが、Hogan, Q., Regional Anesthesia and Pain Medicine 27(4): 385-401 (2002)に記載されており、この文献をそのまま本明細書中に組み入れるものとする。
【0193】
侵害受容性疼痛モデルの例としては、ホルマリン試験、ホットプレート試験、およびテールフリック試験が挙げられる。ホルマリン試験、ホットプレート試験、およびテールフリック試験の例を以下に説明する。
【0194】
最も普通に用いられる神経因性疼痛モデルは、Bennett、Selzer、およびChungのモデルである。Bountra, C., Munglani, R., Schmidt, W.K.編 Pain: Current Understanding. Emerging Therapies and Novel Approaches to Drug Discovery, Marcel Dekker, Inc., New York, 2003中のSiddall, P.J.およびMunglani, R., Animal Models of Pain, pp 377-384。BennettおよびSelzerのモデルはよく知られており、短時間で実施できる。Chungのモデルは大部分の動物における機械的アロディニアのためのもので、複雑ではあるが十分に確立されている。これらのモデルは、臨床状態での損傷および機能不全のいくつかを試みて模倣するための、ある範囲のアプローチを代表している。さらに、疼痛を伴う疾患(例えば、糖尿病性ニューロパシーまたは新しい骨癌)の動物モデルおよび内臓痛のモデルも存在する。
【0195】
5.3.1 ラットにおける持続的疼痛の測定のためのホルマリン試験
動物に免疫調節化合物または媒体(対照)を注射し、続いて肢の背面にホルマリンを注射する。動物を観察して、60分の間に注射した肢を痛さで縮める回数を数える。このモデルは、疼痛治療用の抗侵害受容性薬物の評価を可能にする。Abbott, F.ら Pain 60: 91-102 (1995)。
【0196】
実験中は動物をダンボール製靴箱のケージに入れる。ホルマリン(50μ1; 0.5%)は、針(28.5G)を足指より上、足首より下に配置し、それを皮膚の表面に差し込むことにより後右肢の背面に注射する。注射直後にタイマーをスタートさせて、第一相の始まりとする。注射後10分間動物を観察し、動物が注射した肢を縮める回数を数える。最初のホルマリン注射の30分後に第二相を開始させる。次の20分間も、第一相と同様に縮める回数を数える。免疫調節化合物はホルマリン試験に先立つ24時間までに約0.10〜150mg/日の量で経口的に投与する。動物はそれらが処置される順序で繰り返される。試験期間の終了直後に、IACUCガイドラインに従ってCO2窒息により動物を安楽死させる。
【0197】
この研究中のいずれかの時点で予期されない事象を経験する動物はいずれも、獣医学的介入について評価される。標準的な獣医学的治療で回復しない動物は、IACUCガイドラインに従ってCO2窒息により直ちに安楽死させる。
【0198】
5.3.2 ラットにおける急性疼痛の測定のためのホットプレート試験
動物に免疫調節化合物または媒体(対照)を注射し、その後1度に1匹ずつホットプレートにのせる。熱刺激に応答する潜時を、動物が1本の肢をなめるのに要する時間量により測定する。Malmberg, A.およびYaksh, T., Pain 60: 83-90 (1995)。このモデルは、疼痛治療における抗侵害受容性薬物の評価を可能にする。Langermanら, Pharmacol. Toxicol. Methods 34: 23-27 (1995)。
【0199】
最適なホットプレート温度を決定するためにモルヒネ処置を用いる。8〜10mg/kgの用量のモルヒネ(腹腔内)は、急性疼痛アッセイにおいて最高に近い抗侵害受容性応答を与える。このタイプの抗侵害受容性応答が上記用量のモルヒネにより観察される温度(およそ55℃)に装置を設定する。免疫調節化合物はホットプレート試験に先立つ24時間までに約0.10〜150mg/日の量で経口的に投与する。処置後の時間が経過したら、個々の動物の試験を開始する。1匹の動物をホットプレートにのせ、ストップウォッチまたはタイマーをすぐにスタートさせる。動物が侵害受容性応答(例えば、肢をなめる)を示すまで、または(加熱した表面に長くさらすことにより生じうる組織の損傷を最小限に抑えるため)30秒のカットオフ時間に達するまで、動物を観察する。動物をホットプレートからおろして、応答するまでのその潜時を記録する。カットオフ時間以前に応答しない動物については、カットオフ時間を応答時間として記録する。動物はそれらが処置される順序で繰り返される。実験直後に、IACUCガイドラインに従ってCO2窒息により動物を安楽死させる。
【0200】
この研究中のいずれか時点で予期されない事象を経験する動物はいずれも、獣医学的介入について評価される。標準的な獣医学的治療で回復しない動物は、IACUCガイドラインに従ってCO2窒息により直ちに安楽死させる。
【0201】
5.3.3 ラットにおける急性疼痛の測定のためのテールフリック試験
動物に免疫調節化合物または媒体(対照)を注射し、その後光ビームを尾部に集める。この刺激に応答する潜時は、動物がその尾を振り動かすのに要する時間量により測定する。このモデルは、疼痛治療における抗侵害受容性薬物の評価を可能にする。Langermanら, Pharmacol. Toxicol. Methods 34: 23-27 (1995)を参照されたい。
【0202】
免疫調節化合物はIACUCガイドラインに従ってテールフリック試験に先立つ24時間までに約0.10〜150mg/日の量で経口的に投与する。処置後の時間が経過したら、個々の動物の試験を開始する。1匹の動物をテールフリック装置にのせ、焦点に集めた光ビームを腹側の尾表面にあてる。応答潜時は、光線をあててから尾を振り動かすまでの時間である。動物が侵害受容性応答(例えば、尾を振り動かす)を示すまで、または(加熱した表面に長くさらすことにより生じうる組織の損傷を最小限に抑えるため)10秒のカットオフ時間に達するまで、動物を観察する。動物を光源から離し、応答するまでのその潜時を記録し、IACUCガイドラインに従ってCO2窒息により動物を安楽死させる。光ビームの強度はベースライン潜時が2.5〜4秒となるように調整する。カットオフ時間以前に応答しない動物については、カットオフ時間を応答時間として記録する。動物はそれらが処置される順序で繰り返される。
【0203】
この研究中のいずれか時点で予期されない事象を経験する動物はいずれも、獣医学的介入について評価される。標準的な獣医学的治療で回復しない動物は、IACUCガイドラインに従ってCO2窒息により直ちに安楽死させる。
【0204】
5.3.4 局所カプサイシン誘発性熱アロディニアのためのモデル
熱アロディニアに特に有用なモデルは、局所カプサイシン誘発性熱アロディニアモデルである。Butelman, E.R.ら, J. of Pharmacol. Exp. Therap. 306: 1106-1114 (2003)。このモデルは、温水尾逃避反射モデルを改変したものである。Ko, M.C.ら, J. of Pharmacol. Exp. Therap. 289: 378-385 (1999)。簡単に説明すると、サルを温度制御室(20〜22℃)に配置した特注の椅子に座らせる。尾の毛を標準的なクリッパーで剃り、尾逃避反射の潜時を38℃と42℃の両方の温水刺激で、0.1秒ずつ増加しながら最大20秒と決めてベースラインを得る。ベースラインを決定した後、尾を穏やかに乾かして、イソプロピルアルコールパッドで油をふき取る。使用の約15分前に、70%エタノールと30%滅菌水からなる媒体中にカプサイシンを溶解して、最終カプサイシン濃度を0.0013または0.004 Mとする。この溶液(0.3mL)をガーゼパッチに少しずつ注入してパッチを飽和させるが、あふれ出るのを避ける。カプサイシン溶液をパッチに添加してから30秒以内に、カプサイシンパッチをテープで尾にしっかりと固定する。15分後、パッチを取り除き、38℃と42℃の両方の温水刺激での尾逃避反射試験を上記のように実施する。アロディニアはベースライン測定値と比較して尾逃避反射潜時の減少として検出される。アロディニアを軽減させる免疫調節化合物の能力を測定するために、カプサイシンパッチを貼る前(例えば、15分前、30分前、60分前、または90分前)に前記化合物を1回投与する。あるいはまた、免疫調節化合物のアロディニア逆転特性は、カプサイシンパッチを貼った後(例えば、直後、30分後、60分後、または90分後)に前記化合物を1回投与することにより判定することもできる。
【0205】
カプサイシンモデルは、痛覚過敏およびアロディニアの治療に用いられる薬剤(例えば、バニロイド受容体1(VR1)アンタゴニストおよびAMPAアンタゴニスト)に適しているのに対して、UV皮膚熱傷はブラジキニンB1受容体アンタゴニスト、カンナビノイドアゴニスト、およびVR1アンタゴニストに適していると考えられる。カプサイシンモデルの臨床使用は、いくつかの臨床上使用される薬物(例えば、オピオイド、局所麻酔薬、ケタミンおよびガバペンチン)の抗痛覚過敏作用を支持している。内臓モデルは痛覚過敏モデルとしての可能性が今のところ不明であり、妥当性を確認する必要がある。
【0206】
5.4 疼痛患者の臨床試験
免疫調節化合物、例えば、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンおよび3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを0.1〜25mg/日の量で疼痛症候群の患者に3〜6ヶ月間投与する。疼痛の強さに対する薬物治療の効果、日常生活の活動に及ぼす疼痛の影響、および他の疼痛薬物の使用について基礎的な評価を行なう。
【0207】
特定の実施形態においては、従来の理学療法に応答せず、少なくとも1年間存在している上腕CRPSを有する患者において臨床試験を実施する。この疾患の早期には、患者は公式の自律神経試験(定量的軸索反射性発汗試験(QSART)、静止発汗、およびサーモグラフィー)により自律神経機能障害の明確な証拠を有する。これが利用できない場合は、臨床徴候の資料により自律神経機能障害(水分補給、体温、皮膚、爪または毛髪の成長の変化)がアロディニアおよび浮腫の症状とともに示される。患者は、10〜25mg/日の経口用量で3-(4-アミノ-l-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンによる連続治療を受ける。応答は標準的な疼痛スケールを用いて評価し、例えば、疼痛のNumeric Pain Scale Assessment (VAS)、McGill Indexを用いるクオリティー・オブ・ライフ(生活の質)、および臨床試験での客観的徴候(例えば、浮腫の可視的減少、発汗、皮膚の変色、体温の変化、皮膚の変化、毛髪と爪の成長、および細かな動的な動きなど)を利用しうる。連続的経口1日量として10mgを用いる治療は十分に許容される。免疫調節化合物により治療されるCRPS患者での研究は、これらの薬物がこの疾患において鎮痛薬としての利点を備えていることを示す。
【0208】
本明細書に記載する本発明の実施形態は、本発明の範囲に含まれる単なる例示であり、本発明の完全な範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することで、より一層理解されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛を治療、予防、改変または管理する方法であって、かかる治療、予防、改変または管理が必要な患者に、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体を投与することを含んでなる、上記方法。
【請求項2】
前記患者に、治療上または予防上有効な量の少なくとも1種の第2の活性薬剤を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の活性薬剤が疼痛を緩和または軽減することができるものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2の活性薬剤が、抗うつ薬、抗高血圧薬、抗不安薬、カルシウムチャンネル阻害薬、αアドレナリン受容体アゴニスト、αアドレナリン受容体アンタゴニスト、ケタミン、麻酔薬、筋弛緩薬、非麻薬性鎮痛薬、麻薬性鎮痛薬、抗炎症薬、免疫機能改善薬、免疫抑制剤、コルチコステロイド、鎮痙薬、cox-2阻害剤、高圧酸素、またはこれらの組合せである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第2の活性薬剤が、サリチル酸アセテート、セレコキシブ、ケタミン、ガバペンチン、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、フェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、プレドニゾン、ニフェジピン、クロニジン、オキシコドン、メペリジン、硫酸モルヒネ、ヒドロモルホン、フェンタニル、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、グリセオフルビン、アミトリプチリン、イミプラミン、またはドキセピンである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
疼痛が侵害受容性疼痛または神経因性疼痛である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
疼痛が、化学薬品もしくは熱による熱傷、皮膚の切り傷、皮膚の挫傷、変形性関節症、慢性関節リウマチ、腱炎、または筋筋膜疼痛と関連している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
疼痛が、糖尿病性ニューロパシー、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、卒中後疼痛、複合性局所疼痛症候群、交感神経依存性疼痛症候群、反射性交感神経性ジストロフィー、反射性神経血管性ジストロフィー、反射性ジストロフィー、脊髄損傷痛、骨のズーデック萎縮、疼痛性ニューロジストロフィー、肩手症候群、外傷後ジストロフィー、癌関連疼痛、幻肢痛、線維筋痛症、慢性疲労症候群、神経根障害、梅毒性神経障害、または薬物から誘発される痛みのある神経障害状態である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
複合性局所疼痛症候群がタイプIまたはタイプIIである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
痛みのある神経障害状態がビンクリスチン、ベルケードまたはサリドマイドにより医原的に誘発される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
疼痛が、内臓痛、偏頭痛、緊張型頭痛、術後痛、または侵害受容性疼痛と神経因性疼痛の混合痛である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
免疫調節化合物の立体異性体がエナンチオマー的に純粋である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
免疫調節化合物が4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
免疫調節化合物がエナンチオマー的に純粋である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
免疫調節化合物が3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
免疫調節化合物がエナンチオマー的に純粋である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
免疫調節化合物が式(I):
【化1】

[式中、XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYの他方はC=OまたはCH2であり、R2は水素または低級アルキルである]
で表される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
免疫調節化合物がエナンチオマー的に純粋である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
免疫調節化合物が式(II):
【化2】

[式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、他方はCH2またはC=Oであり、
Rlは、H、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(S)R3、C(O)OR4、(C1-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、C(O)NHR3、C(S)NHR3、C(O)NR3R3'、C(S)NR3R3'または(C1-C8)アルキル-O(CO)R5であり、
R2は、H、F、ベンジル、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、または(C2-C8)アルキニルであり、
R3およびR3'は、独立して、(Cl-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C0-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、(C1-C8)アルキル-O(CO)R5またはC(O)OR5であり、
R4は、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルキル-OR5、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、または(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリールであり、
R5は、(Cl-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、または(C2-C5)ヘテロアリールであり、
R6は、それぞれの場合に独立して、H、(Cl-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C2-C5)ヘテロアリール、または(C0-C8)アルキル-C(O)OR5であるか、複数のR6は一緒になってヘテロシクロアルキル基を形成し、
nは、0または1であり、
*は、キラル炭素中心を表す]
で表される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
免疫調節化合物がエナンチオマー的に純粋である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
免疫調節化合物が置換スチレンのシアノもしくはカルボキシ誘導体、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン、1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン、またはテトラ置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-l-オキソイソインドリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
免疫調節化合物がエナンチオマー的に純粋である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
疼痛を治療、予防、改変または管理する方法であって、かかる治療、予防、改変または管理が必要な患者に、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体を、該患者の疼痛の症状を軽減または回避することに向けられた外科手術、心理または理学療法の前、間、あるいは後で、投与することを含んでなる、上記方法。
【請求項24】
疼痛を治療、予防、改変または管理するのに有効な量の免疫調節化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体と、疼痛を緩和または軽減することができる第2の活性薬剤とを含有する医薬組成物。
【請求項25】
第2の活性薬剤が、抗うつ薬、抗高血圧薬、抗不安薬、カルシウムチャンネル阻害薬、筋弛緩薬、非麻薬性鎮痛薬、抗炎症薬、cox-2阻害剤、αアドレナリン受容体アゴニスト、αアドレナリン受容体アンタゴニスト、ケタミン、麻酔薬、免疫機能改善薬、免疫抑制剤、コルチコステロイド、高圧酸素、鎮痙薬、またはこれらの組合せである、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
第2の活性薬剤が、サリチル酸アセテート、セレコキシブ、ケタミン、ガバペンチン、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、フェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、プレドニゾン、ニフェジピン、クロニジン、オキシコドン、メペリジン、硫酸モルヒネ、ヒドロモルホン、フェンタニル、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、グリセオフルビン、アミトリプチリン、イミプラミン、またはドキセピンである、請求項24に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2007−525484(P2007−525484A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536542(P2006−536542)
【出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/012721
【国際公開番号】WO2005/044178
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(591120033)セルジーン・コーポレーション (84)
【氏名又は名称原語表記】CELGENE CORPORATION
【Fターム(参考)】