説明

1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジンの臭化水素塩又はその結晶

【課題】本発明の課題は、アセチルコリン・エステラーゼ阻害作用に起因する疾患の治療又は予防剤として有用な、ドネペジルと臭化水素との塩又はその結晶を提供することにある。
【解決手段】粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)6.6°及び26.9°などに回折ピークを有する、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジンの臭化水素塩又はその溶媒和物の結晶。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセチルコリン・エステラーゼ阻害作用を有する各種老人性痴呆症等の予防剤又は治療剤として有用なドネペジルと臭化水素との塩又はその結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
塩酸ドネペジル(Donepezil Hydrochloride、化学名;1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジン・塩酸塩)はアセチルコリン・エステラーゼ阻害作用を有する各種老人性痴呆症治療薬であり、特にアルツハイマー型老年痴呆の予防剤又は治療剤として極めて有用性が高い(特許文献1)。
ドネペジルの塩としては、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジンの塩酸塩及びその結晶が知られているが(特許文献2)、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジンの臭化水素塩等は、見出されていなかった。
【特許文献1】特開昭64-79151号公報
【特許文献2】国際公開第97/46527号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
医薬品の原薬として用いる塩、結晶は、工業的生産において取り扱いやすい性質を有することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意研究を進めてきた結果、以下の新規な塩を見出し本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、ドネペジルと臭化水素との塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶に関する。
【0005】
すなわち本発明は以下を含む。
(1)
1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジンの臭化水素塩又はその溶媒和物、
(2)
粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)6.6°及び26.9°に回折ピークを有する、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジンの臭化水素塩又はその溶媒和物の結晶、
(3)
粉末X線回折において、さらに、回折角度(2θ±0.2°)21.1°及び21.6°に回折ピークを有する前記(2)記載の結晶、
(4)
粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)21.5°及び24.4°に回折ピークを有する、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジンの臭化水素塩又はその溶媒和物の結晶、
(5)
粉末X線回折において、さらに、回折角度(2θ±0.2°)10.2°及び18.2°に回折ピークを有する前記(4)記載の結晶、
(6)
アルコール系溶媒及び水からなる群から選ばれる1又は2の溶媒を用いて結晶化させることを特徴とする、前記(4)記載の結晶の製造方法、
(7)
上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶を含有する医薬、
(8)
上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶を有効成分とする、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用が有効な疾患の予防又は治療剤、
(9)
上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶を有効成分とする、老年性痴呆予防又は治療剤、
(10)
上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶を有効成分とする、アルツハイマー病予防又は治療剤、
(11)
上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶を含有する医薬組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明のドネペジルと臭化水素との塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶は、優れたアセチルコリン・エステラーゼ阻害作用を有するので、医薬、特にアセチルコリン・エステラーゼ阻害作用に起因する各種老人性痴呆症等の予防剤又は治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
【0008】
本明細書中においては、化合物の構造式が便宜上一定の異性体を表すことがあるが、本発明には化合物の構造上生ずる総ての光学異性体を含み、便宜上の式の記載に限定されるものではなく、いずれか一方の異性体でも混合物でもよい。従って、本発明の塩には、光学活性体及びラセミ体が存在することがありえるが、本発明においては限定されず、いずれもが含まれる。
また、本発明である塩又はその溶媒和物の結晶には、結晶多形が存在することもあるが同様に限定されず、いずれかの結晶形の単一物であっても混合物であってもよい。
【0009】
以下に、本明細書において記載する用語、記号等の意義を説明し、本発明を詳細に説明する。
【0010】
「ドネペジル」とは、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジンを意味する。
【0011】
一般に、粉末X線回折における回折角度(2θ)は±0.2°の範囲内で誤差が生じ得るから、上記の回折角度の値は±0.2°程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。したがって、粉末X線回折におけるピークの回折角度が完全に一致する結晶だけでなく、ピークの回折角度が±0.2°程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0012】
「アルコール系溶媒」とは、C1−6アルキルアルコールを意味し、具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等である。
【0013】
「エーテル系溶媒」とは、ジC1−6アルキルエーテル又は環状エーテルを意味し、具体例としては、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラハイドロフラン等である。
【0014】
「1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジンの臭化水素塩又はその溶媒和物」における溶媒和とは、本発明の塩と溶媒和を形成するものであれば特に限定されないが、溶媒が当該化合物1分子に対し0.1〜5分子の適宜な比で溶媒和を形成する形態である。溶媒和における溶媒としては、特に限定されないが、例えば、塩やその結晶の製造において用いられた溶媒(アルコール系溶媒、エーテル系溶媒等)や水等があげられ、好ましくは水、ジイソプロピルエーテル及びエタノールからなる群から選ばれる1〜3個の溶媒(複数の組合せの場合は、任意の比率の混合物)等があげられ、より好ましくは水との溶媒和等があげられる。
【0015】
本発明の塩において、ドネペジルと臭化水素との比は特に限定されないが、臭化水素は、ドネペジル1分子に対し0.5〜2分子(好適には当該化合物1分子に対し約1分子)の比で塩を形成する。
【0016】
本発明の塩又はその溶媒和物、及びそれらの結晶は、以下に記載する方法により製造することができる。但し、本発明の塩又はその溶媒和物、及びそれらの結晶の製造方法は、これらに限定されるものではない。
【0017】
製造方法
[ドネペジルと臭化水素との塩の製造]
【0018】
本発明の製造方法において、出発原料として使用するドネペジル(1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジン)は、特許文献(国際公開第99/29668号パンフレット)に記載された方法等により製造することができる。
【0019】
(操作1)
ドネペジル、溶剤及び臭化水素を混合し、室温又は加熱下溶解する。この溶解工程において、ドネペジル、溶剤及び酸を加える順序は特に制限されず、また撹拌下又は静置下で行うことができる。
【0020】
(操作2)
この混合溶液が溶解後、以下の方法等により、ドネペジルと臭化水素との塩を得ることができる。
(1)当該混合物を常圧下又は減圧下、溶剤を留去する。
(2)当該混合物を溶解時の温度にて撹拌又は放置する。
(3)当該混合物を溶解時の温度から冷却し、撹拌又は放置する。
(4)当該混合物に溶解時の温度にて貧溶媒を加え、撹拌又は放置する。
(5)当該混合物に貧溶媒を加え、冷却し、撹拌又は放置する。
【0021】
(操作3)
ドネペジルと臭化水素との塩が析出物、固体等として得られた場合、この析出物等は、適宜溶剤にて洗浄することもできる。またこの得られた析出物、残渣は、必要に応じて、室温下又は加熱下にて、常圧下又は減圧下乾燥することもできる。
【0022】
これらドネペジルと臭化水素との塩を得るための工程(上記操作2)の時間は、特に限定されないが、好ましくは1時間〜3日であり、より好ましくは1〜24時間である。また、これらドネペジルと臭化水素との塩を得るための冷却温度、冷却速度は特に限定されない。
【0023】
[ドネペジルと臭化水素との塩の結晶の製造]
【0024】
上記(操作1)〜(操作3)を行い、ドネペジルと臭化水素との塩を結晶として得ることもできる。
また、ドネペジルと臭化水素との塩と、溶剤とを混合、溶解し、次いで(1)当該混合物を常圧下又は減圧下、溶媒留去する、(2)当該混合物を溶解時の温度にて撹拌又は放置する、(3)当該混合物を溶解時の温度から冷却し、撹拌又は放置する、(4)当該混合物に溶解時の温度にて貧溶媒を加え、撹拌又は放置する、(5)当該混合物に貧溶媒を加え、冷却し、撹拌又は放置することにより、ドネペジルと臭化水素との塩を結晶として得ることができる。
【0025】
臭化水素としては、気体又はその溶液のいずれであってもかまわないが、好ましくは臭化水素の溶液であり、より好ましくは臭化水素の水溶液である。
【0026】
上記溶剤とは、特に制限されないが、具体例としては例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル等)、ケトン(例えば、アセトン等)、ニトリル(例えば、アセトニトリル等)、ベンゼン、トルエン、環状エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルスルホキシド、ハロゲン化炭素(例えば、塩化メチレン等)からなる群から選ばれる1又は複数の溶剤である。複数の溶剤を用いる場合、混合溶剤として加えても、各溶剤を別々に加えてもよい。
【0027】
ドネペジル、臭化水素、溶剤との混合物の溶解時の加熱温度は、特に限定されないが、好ましくは20〜80℃である。
【0028】
ドネペジル、臭化水素、溶剤との混合物の溶解後の冷却時温度は、特に限定されないが、好ましくは−20〜40℃である。
【0029】
溶剤の使用量は、特に限定されないが、好ましくはドネペジルが加熱により溶解する量を下限とし、結晶の収量が著しく低下しない量を上限として適宜選択することができ、より好ましくはドネペジルとの重量に対する容量比で4〜30倍量(v/w)である。
【0030】
臭化水素の使用量は、ドネペジルの当量以上であれば特に制限されないが、好ましくはドネペジルとのモル比で1〜3倍量であり、より好ましくはドネペジルとのモル比で約1〜1.5倍量である。
【0031】
ドネペジルと臭化水素との塩を結晶として得る場合、結晶析出前に種結晶(目的とするドネペジルの臭化水素塩の結晶)を加えても良い。種結晶を加える温度は特に規定されないが、好ましくは60℃以下であり、より好ましくは10℃〜40℃である。
【0032】
この結晶が析出する前又は結晶が析出する過程において、貧溶媒(ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン又はこれらの混合溶媒等)を適宜加えることもできる。
混合液中に析出した結晶をろ取し、目的とするドネペジルと臭化水素の塩を得ることができる。
【0033】
得られた結晶は、必要に応じて溶解した溶剤と同じ溶剤にて洗浄することができる。またこの得られた結晶は、必要に応じて、室温下又は加熱下にて、常圧下又は減圧下乾燥することができる。
【0034】
例えば、(i)ドネペジルと臭化水素との塩に溶剤(例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル等)、ケトン(例えば、アセトン等)、ニトリル(例えば、アセトニトリル等)、ベンゼン、トルエン、環状エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、N,N-ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルスルホキシド、ハロゲン化炭素(例えば、塩化メチレン等)又はこれらの混合溶媒等)を加え、20〜80℃に加熱し、溶解する。(ii)当該混合物にジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等を加える。(iii)当該混合物を−20〜40℃に冷却し、得られた析出物を濾取することにより、ドネペジルと臭化水素との塩を結晶として得ることができる。
【0035】
本発明にかかるドネペジルの臭化水素との塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶は、各種老人性痴呆症;特にアルツハイマー型老年痴呆、脳卒中(脳出血、脳梗塞)、脳動脈硬化症、頭部外傷等に伴う脳血管障害;脳炎後遺症、脳性麻痺等に伴う注意力低下、言語障害、意欲低下、注意欠陥/多動障害、情緒障害、記銘障害、幻覚−妄想状態、行動異常等の治療、予防、緩解、改善等に有効である。
【0036】
更に、本発明にかかるドネペジルの臭化水素との塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶は、強力かつ選択性の高い抗コリンエステラーゼ作用を有するので、これらの作用に基づく医薬としても有用である。特に本発明にかかるドネペジルの塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶は、アルツハイマー型老年痴呆のほか、例えば、ハンチントン舞踏病、ピック病、晩発性異常症等にも有用である。
【0037】
本発明にかかるドネペジルの臭化水素との塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶を医薬として使用する場合、通常、本発明の塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶と適当な添加剤とを混和し、製剤化したものを使用する。ただし、前記は、本発明の塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶を原体のまま医薬として使用することを否定するものではない。
上記添加剤としては、一般に医薬に使用される、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、吸収促進剤等を挙げることができ、所望により、これらを適宜組み合わせて使用することもできる。
【0038】
本発明にかかるドネペジルの臭化水素との塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶をこれらの医薬として使用する場合は、経口投与若しくは非経口投与により投与される。投与量は、症状の程度;患者の年令、性別、体重、感受性差;投与方法;投与の時期、間隔、医薬製剤の性質、調剤、種類;有効成分の種類等によって異なり、特に限定されないが、通常成人1日あたり約0.1〜300mg、好ましくは約1〜100mgであり、これを通常1日1回又は2回〜4回に分けて投与する。
【0039】
本発明にかかるドネペジルの臭化水素との塩若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶を製剤化するためには、製剤の技術分野における通常の方法で注射剤、坐薬、舌下錠、錠剤、カプセル剤、経皮剤等の剤型とする。注射剤を調製する場合には、主薬に必要によりpH調製剤、緩衝剤、懸濁化剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤等を添加し、常法により静脈、皮下、筋肉内注射剤とする。その際必要により常法により凍結乾燥物とすることも可能である。
【0040】
懸濁剤としての例を挙げれば、例えば、メチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等を挙げることができる。
【0041】
溶解補助剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マグロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステル等を挙げることができる。
【0042】
また安定化剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、エーテル等が、保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール等を挙げることができる。
【0043】
本発明にかかるドネペジルの臭化水素若しくはその溶媒和物又はそれらの結晶は、例えば、以下の実施例に記載した方法により製造することができ、また、当該化合物の効果は、文献(特開昭64-79151号公報)等に記載した方法により確認することができる。ただし、これらは例示的なものであって、本発明は、如何なる場合も以下の具体例に制限されるものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0044】
以下の参考例、実施例中の「室温」は通常約10℃から約35℃を示す。%は特記しない限り重量パーセントを示す。
【実施例】
【0045】
実施例1
ドネペジル30gにエタノール240mlを加え、当該混合物を加温(外温 50℃)し、溶解した。次いで、内温34℃にて攪拌下、当該混合物へ臭化水素酸(47%水溶液)16.5gとエタノール60mlの混液を加えた。当該混合物をさらに室温下で12時間20分攪拌し、析出物を濾取した。この析出物をエタノール70mlで洗浄後、50℃で7時間減圧乾燥して、ドネペジルの臭化水素塩の結晶、35.2g(収率96.7%)を得た。
【0046】
実施例2
ドネペジル臭化水素塩1.5gに水−メタノール混液(50:50)15mlを加え、当該混合物を加温(外温 70℃)し、溶解した。次いで、当該混合物を外温 5℃にて約5分放置した。さらに外温3℃にて一晩放置し、析出物を濾取した。この析出物を冷水1mlで洗浄後、室温で6時間減圧乾燥し、ドネペジルの臭化水素塩の結晶、0.883g(収率58.9%)を得た。
【0047】
実施例3
ドネペジル臭化水素塩1.8gに水−メタノール混液(50:50)50mlを加え、当該混合物を加温下(外温 70℃)において超音波をかけることにより溶解した。当該混合物のうちの約4mlを真空下において減圧乾燥したものに、エタノール20mlを添加し溶解させた。次いで、当該混合物を外温3℃にて一晩放置し、析出物を濾取した。この析出物を冷水1mlで洗浄後、60℃で一晩乾燥し、ドネペジルの臭化水素塩の結晶を得た。
【0048】
粉末X線回折パターンの測定
各実施例で得られた結晶の粉末X線回折測定は、日本薬局方の一般試験法に記載された粉末X線回折測定法に従い、以下の測定条件で行った。
(装置)
理学X線DTAシステム:RINT−2000(株式会社リガク製)
(操作方法)
試料について、以下の条件で測定を行った。
使用X線:CuKα線
管電圧:40kV
管電流:200mA
発散スリット:1/2deg
受光スリット:0.3mm
散乱スリット:1/2deg
走査速度:2゜/分
走査ステップ:0.02゜
測定範囲(2θ):5〜40゜
【0049】
実施例2で得られた結晶の粉末X線回折パターンを図1に示し、実施例3で得られた結晶の粉末X線回折パターンを図2に示した。
【0050】
実施例2で得られた結晶の回折角(2θ)のピーク及び強度を表1に示し、実施例3で得られた結晶の回折角(2θ)のピーク及び強度を表2に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例2で得られた結晶の粉末X線回折パターンを表す図である。
【図2】実施例3で得られた結晶の粉末X線回折パターンを表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジンの臭化水素塩又はその溶媒和物。
【請求項2】
粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)6.6°及び26.9°に回折ピークを有する、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジンの臭化水素塩又はその溶媒和物の結晶。
【請求項3】
粉末X線回折において、さらに、回折角度(2θ±0.2°)21.1°及び21.6°に回折ピークを有する、請求項2記載の結晶。
【請求項4】
粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)21.5°及び24.4°に回折ピークを有する、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジンの臭化水素塩又はその溶媒和物の結晶。
【請求項5】
粉末X線回折において、さらに、回折角度(2θ±0.2°)10.2°及び18.2°に回折ピークを有する、請求項4記載の結晶。
【請求項6】
アルコール系溶媒及び水からなる群から選ばれる1又は2の溶媒を用いて結晶化させることを特徴とする、請求項4記載の結晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−22984(P2007−22984A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210184(P2005−210184)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】