説明

1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシン

【課題】縫糸を針の糸捕捉鉤で確実に捕捉することができ、ミシンベッド内空間で縫目形成を行えるようにする。
【解決手段】鉤針13、半回転釜200、糸引出作動子401の協働によって被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成し、鉤針13の第1ストロークにおいて送り歯601により被縫製体をハンドステッチ縫目のための縫目ピッチ送りし、鉤針13の第2ストロークにおいて送り歯601により被縫製体をハンドステッチ縫目間のための縫目間ピッチ送りする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンに係り、特に縫糸が針の糸捕捉鉤へ確実に捕捉され、かつミシンベッド内空間で縫目形成を行ないピンポイント/サドルステッチと呼ばれる擬似ハンドステッチに適する1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
1本の縫糸で被縫製体の一側上で交互に見えたり隠れたりするピンポイントステッチを形成し、手縫いの風合いをかもし出す縫目は、国際標準であるISO 4915 Stitch Type 104(チェーンステッチ)及びISO 4915 Stitch Type 209(サドルステッチ/ハンドステッチ)として規格化されている。
【0003】
従来から、針に刺し通された1本の縫糸が刺し通された縫針、糸捕捉鉤を側設した鉤針、ル―パー及びスプレッダーを用いて、“104”縫目をピンポイントステッチ(擬似ハンドステッチ)として形成し、星縫等の布ズレを防止するピンポイント縫いミシンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このピンポイント縫いミシンは、1本の縫糸が刺し通された縫針と糸捕捉鉤を側設した鉤針を使用しているので、縫目ピッチは縫針と鉤針間の間隔に限定されるという欠点がある。また、このピンポイント縫いミシンにおいて、縫製時に、布の上側にはバルーンステッチが形成されるが、本来縫製されるピンポイントステッチが布の下側に形成されるので、作業者にとって目視できない状態で縫製作業が強いられることから、ピンポイント縫位置を確認することが困難となって正確な縫製ができないという欠点もある。また、このピンポイント縫いミシンにおける“104”縫目では、縫目を形成している縫糸を引張ることによって容易にほどけるので、上述した星縫等の布ズレを防止する機能を失ってしまうという欠点もある。
【0005】
この欠点を解決するため、回転釜に内装されるボビンに巻装された1本の縫糸で、1本の糸捕捉鉤を側設した鉤針、糸掛けフック、糸捕捉鉤への縫糸案内スプレッダ及び天秤を用いて、“104”縫目に類似する擬似ピンポイントステッチを形成する擬似ハンドステッチ縫いミシンが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特公昭55−35481号公報(第5図、第6図、第7図)
【特許文献2】特公平4−3234号公報(=U.S. Patent 4,590,878) (第11図、第13図、第14図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この擬似ハンドステッチ縫いミシンにおいて、縫製時に、布の上側には2重になった縫糸がハンドステッチ状に形成され、布の下側には錠縫縫目が形成される。しかしながら、この擬似ハンドステッチ縫いミシンでは、針の糸捕捉鉤への縫糸案内スプレッダは布を支える針板と回転釜の間に配置させる必要があるにも拘らず、天秤はその機能上、針板の直下に設置して、針板と回転釜の間に配置させ、かつ縫糸案内スプレッダを駆動する駆動機構を配置しなければならないので、限りあるミシンベッド内空間には、このような配置は具体的に実現できないものであった。
【0008】
また、この擬似ハンドステッチ縫いミシンでは、回転釜にくぐり込まれた縫糸が回転釜からくぐり出た縫糸を糸掛けフックで布の上方に引き上げなければならず、作業者は布上で、このような位置に手をもっていくことは極めて危険であり、布を移動する縫製作業に支障を来すという難点があった。したがって、この擬似ハンドステッチ縫いミシンを実施することは不可能である。
【0009】
また、キルト若しくは刺子又はパッチワークの作成に当たって、古来より手作業で縫製が行われている。これは極めて多大の手間を必要とし、重労働が強いられる作業となっている。そこで、ロックステッチ(ISO 4915 Stitch Type 301)で縫製するミシンを用いて、使用される2本の糸のうち1本に透明糸を用いることにより、一見したところハンドステッチ縫いがかもしだされるようにする手法も採用されている。しかしながら、この手法で縫製された縫目では基本的にロックステッチミシンを用いていることにより、糸が連続して縫われているので、キルト若しくは刺子又はパッチワークで必要とされる縫製後の被縫製体表面に生じる凹凸を伴う柔らかさを追求するという本来のハンドステッチ縫いの風合いが得られないという難点がある。
【0010】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、縫糸が針の糸捕捉鉤へ確実に捕捉され、かつミシンベッド内空間で縫目形成を行ないピンポイント/サドルステッチと呼ばれる擬似ハンドステッチに適する1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、縫糸が針の糸捕捉鉤へ確実に捕捉され、かつミシンベッド内空間で縫目形成を行なうとともに、縫目ピッチ及び縫目間ピッチを自由に設定できる1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンを提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成し、被縫製体の送り方向、即ち縫方向を1跳び縫いセット毎に可変とし、キルト若しくは刺子又はパッチワークに適する1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の原理は、糸捕捉鉤を側設され垂直方向に直線往復運動する鉤針、半回転正転と半回転逆転する半回転釜、天秤のように往復運動する糸引出作動子、及び楕円運動する送り歯を協働させて、縫糸を針の糸捕捉鉤へ確実に捕捉し、かつミシンベッド内空間で縫目形成を行なうことで、被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目をそれぞれ形成させることにある。また、鉤針、半回転釜、糸引出作動子の協働によって被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成するにあたり、送り歯による被縫製体の送り量を縫目ピッチ送りと縫目間ピッチ送りに応じてそれぞれ変化させることで、縫目ピッチ及び縫目間ピッチを自由に設定できることにある。
【0014】
この目的を達成するため本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法は、
(a)糸捕捉鉤を側設され垂直方向に直線往復運動する鉤針が第1ストロークにおいて上死点から下降し針板に載置された被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、針板の下方にあって糸が巻装され半回転逆転する釜の糸出口から引き出され鉤針に周接して緊張されている糸を糸捕捉鉤で捕捉すること、
(b)鉤針を第1ストロークにおいて被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体を1縫目ピッチ送りするとともに糸を捕捉した鉤針が上昇すること及び釜がさらに逆転することにより糸締めすること、
(c)鉤針が第2ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、糸捕捉鉤で捕捉されていた糸を半回転正転する釜の剣先で掬うと共に、捕捉されていた糸を釜の回転によって糸捕捉鉤から解放すること、
(d)釜の剣先で掬われて解放された糸を釜が更に回転することにより釜にくぐり入れて釜に巻装されている糸に交錯させ、釜からくぐり出た糸を糸締めすること、
(e)鉤針を第2ストロークにおいて被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体を1縫目間ピッチ送りすること、
(f)(a)乃至(e)の工程を繰り返して被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されることからなる。
【0015】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法で、釜は糸が巻装されるボビンを収納するボビンケースを内釜に内蔵し、ボビンケースは内釜と一緒に回転自在に外釜に装架され、
鉤針が針板から上昇するとき釜が逆転して針板から離間する方向及び位置において、糸出口はボビンケースに設けられる。
【0016】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法で、鉤針が上死点から下死点に運動する際に釜は回転停止される。
【0017】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法で、糸捕捉鉤で捕捉されていた糸が釜の剣先で掬われた後、釜の糸出口から引き出されている糸を引掛け、釜から引出して糸締めし、糸捕捉鉤で糸を捕捉した後、引掛けている糸を釈放する。
【0018】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法で、第2ストロークにおいて鉤針が上死点から下降する際に糸捕捉鉤で捕捉された糸を鉤針の針先と被縫製体の間で糸捕捉鉤の非開口方向に糸寄せする。
【0019】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法で、釜からくぐり出た糸を糸締めするにあたり、縫目ピッチに応じて糸締量を調節する。
【0020】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法で、鉤針が上死点から下降して被縫製体に貫通し、下死点から上昇して被縫製体から抜け出す前に、被縫製体を針板上で押圧保持する押圧保持を解除して被縫製体の送り方向を鉤針を回動軸として手動回動操作する。
【0021】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法で、釜の剣先で掬われて解放された糸を釜が更に回転することにより釜にくぐり入れて釜に巻装されている糸に交錯させる後で、釜からくぐり出る糸を糸締めする前に、釜にくぐり入れられている糸を釜の周囲で一時滞留させ、釜からくぐり出る糸を糸締めすることにより一時滞留を解除する。
【0022】
また、上記の目的を達成するための本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法は、
鉤針、半回転釜、糸引出作動子の協働によって被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成し、鉤針の第1ストロークにおいて送り歯により被縫製体をハンドステッチ縫目のための縫目ピッチ送りし、鉤針の第2ストロークにおいて送り歯により被縫製体をハンドステッチ縫目間のための縫目間ピッチ送りするにあたり、
縫目ピッチ送りの縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送りの縫目間ピッチ送り量をそれぞれ設定し、
1つの跳び縫いセットごとに縫目ピッチ送り、縫目間ピッチ送りにそれぞれ対応する各被縫製体送りモードに順次切換え、
設定された縫目ピッチ送り量、縫目間ピッチ送り量をそれぞれ各被縫製体送りモードにおいて送り駆動機構に伝達して送り歯により被縫製体を送ることからなる。
【0023】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法で、鉤針が被縫製体から抜け出しているとき、被縫製体を針板上で押圧保持する押圧保持を解除して縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら被縫製体を手動送りする。
【0024】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法で、鉤針が被縫製体から抜け出しているとき、被縫製体を送る送り歯を退避して縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら被縫製体を手動送りする。
【0025】
また、上記の目的を達成するための本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、
上死点から下降し針板に載置された被縫製体に貫通し、下死点から被縫製体から抜け出して上昇し、垂直方向に直線往復運動する第1ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、糸を捕捉し、第2ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、捕捉されていた糸を解放する糸捕捉鉤を側設した鉤針と、
針板の下方にあって糸が巻装され糸が糸出口から引き出される釜であって、第1ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、半回転逆転し、糸捕捉鉤で糸を捕捉した鉤針の上昇に伴ってさらに逆転することにより糸を糸締めすると共に、鉤針が第2ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、糸捕捉鉤で捕捉されていた糸を釜が半回転正転して掬う剣先を有し、捕捉されていた糸を釜の回転によって釜の剣先で掬って糸捕捉鉤から解放し、解放された糸を釜が更に回転することにより釜にくぐり入れて釜に巻装されている糸に交錯させる半回転釜と、
糸捕捉鉤が糸を捕捉する際に釜が回転することにより糸出口から引き出されている糸を鉤針に周接して緊張するとともに釜からくぐり出た糸を糸締めする糸引出作動子と、
鉤針を第1ストロークにおいて被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体を1縫目ピッチ送りするとともに、鉤針を第2ストロークにおいて被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体を1縫目間ピッチ送りする送り歯とを備え、
これにより被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成される。
【0026】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、釜は糸が巻装されるボビンを収納するボビンケースを内釜に内蔵し、ボビンケースは内釜と一緒に回転自在に外釜に装架され、
鉤針が針板から上昇するとき釜が逆転して針板から離間する方向及び位置において、糸出口をボビンケースに設けられる。
【0027】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、鉤針が上死点から下死点に運動する際に釜は回転停止する期間を有する。
【0028】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、糸引出作動子は、糸捕捉鉤で捕捉されていた糸が釜の剣先で掬われた後、釜の糸出口から引き出されている糸を引掛け、釜から引出して糸締めし、糸捕捉鉤で糸を捕捉した後、引掛けている糸を釈放する機能を有する。
【0029】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、第2ストロークにおいて鉤針が上死点から下降する際に糸捕捉鉤で捕捉された糸を鉤針の針先と被縫製体の間で糸寄せする糸寄せ機構を備える。
【0030】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、送り量設定機構によって設定された縫目ピッチに応じて糸引出作動子の糸締量を調節する糸締調節機構を備える。
【0031】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、被縫製体を針板上で押圧保持する押え金を備え、鉤針が被縫製体から抜け出しているとき、押え金の押圧保持を解除して縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら被縫製体を手動送りする押圧解除機構を備える。
【0032】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、鉤針が被縫製体から抜け出しているとき、被縫製体を送る送り歯を退避して縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら被縫製体を手動送りする送り歯退避機構を備える。
【0033】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、鉤針が上死点から下降して被縫製体に貫通し、下死点から上昇して被縫製体から抜け出す前に、被縫製体を針板上で押圧保持する押圧保持を解除して被縫製体の送り方向を鉤針を回動軸として手動回動操作するための回動操作/直線送り切換機構を備える。
【0034】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、内釜を半回転で正転、逆転するように駆動するドライバーに、鉤針が被縫製体に貫通した後、鉤針が被縫製体に貫通することによって生じる暴れを針落ち位置に矯正する針受を設ける。
【0035】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、糸出口から引き出され糸引出作動子によって糸捕捉鉤に位置決めされ鉤針に周接して緊張されている糸を糸捕捉鉤に強制挿入する糸挿入子を備える。
【0036】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、鉤針の糸捕捉鉤が鉤針の上死点から下降して被縫製体に貫通し、針板を越えるまでの期間及び下死点から上昇して針板を越え、被縫製体を抜け出して上死点に達するまでの期間に糸捕捉鉤を閉塞する蓋針を駆動する鉤針・蓋針駆動機構を備える。
【0037】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、釜の周囲の一部には、釜の剣先で掬われて解放された糸を釜が更に回転することにより釜にくぐり入れて釜に巻装されている糸に交錯させる後で、釜からくぐり出る糸を糸締めする前に、釜にくぐり入れられている糸を一時滞留させ、釜からくぐり出る糸を糸締めすることにより一時滞留を解除する糸滞留部を備える。
【0038】
また、上記の目的を達成するための本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、
鉤針、半回転釜、糸引出作動子の協働によって被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成し、鉤針の第1ストロークにおいて送り歯により被縫製体をハンドステッチ縫目のための縫目ピッチ送りし、鉤針の第2ストロークにおいて送り歯により被縫製体をハンドステッチ縫目間のための縫目間ピッチ送りする1本糸錠縫化ハンドステッチミシンであって、
縫目ピッチ送りの縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送りの縫目間ピッチ送り量をそれぞれ設定する送り量設定機構と、
1つの跳び縫いセットごとに縫目ピッチ送り、縫目間ピッチ送りにそれぞれ対応する各被縫製体送りモードに順次切換える送りモード切換機構と、
設定された縫目ピッチ送り量、縫目間ピッチ送り量をそれぞれ各被縫製体送りモードにおいて伝達して送り歯により被縫製体を送る送り駆動機構とを備える。
【0039】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、送り量設定機構は、鉤針を駆動する上軸から2分の1減速される中間軸に枢支される支え腕に枢着される逆T字形の送り調節体から成り、逆T字形の送り調節体の両腕には縫目ピッチ送り量操作部材、縫目間ピッチ送り量操作部材がそれぞれ枢着される。
【0040】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、送りモード切換機構は、中間軸に固着され少なくとも2個の偶数個の偏位点を有する送り切換カム及び送り切換カムに外接する送り切換ロッドから成り、送り切換ロッドの連結端は縫目ピッチ切換リンクの一端に枢着され、他端は逆T字形の送り調節体の縦腕端に枢着される。
【0041】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンで、送り駆動機構は、一端が送り切換ロッドの連結端に枢着される水平送り連結リンクと、第1の腕が水平送り連結リンクの他端に枢着される水平送り連結クランクと、一端が水平送り連結クランクの第2の腕に枢着され他端が水平送り縦ロッドに枢着される水平送りロッドリンクと、上軸に固着される水平送り偏心カム及び水平送りロッドリンクの他端に枢着され水平送り偏心カムに外接する水平送り駆動ロッドとから成る。
【発明の効果】
【0042】
本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンによれば、縫糸が針の糸捕捉鉤へ確実に捕捉され、かつミシンベッド内空間で1本糸錠縫化縫目形成を行ないピンポイント/サドルステッチと呼ばれる擬似ハンドステッチに適する縫製ができる。
【0043】
更に、本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンによれば、被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されるので、作業者にとって表面にハンドステッチ縫目を目視できる状態で縫製作業が行なわれ、ハンドステッチ縫位置を確認できることから正確な縫製ができる。
【0044】
また、本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンによれば、被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されるので、1本糸錠縫化縫目を形成している縫糸を引っ張ることによって容易にほどけることがないので、強固な縫製が得られる。
【0045】
また、本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンによれば、鉤針、半回転釜、糸引出作動子の協働によって1本糸錠縫化縫目が形成されるので、縫目ピッチ、縫目間ピッチはそれぞれ自由に設定可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンを実施の最良の形態例について図面に基き説明する。
【0047】
本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは図1、図2に示すように、アーム2及びベッド3からなるフレーム1に、糸捕捉鉤13aを側設し垂直方向に直線往復運動して被縫製体21に縫糸20を刺し通す鉤針13、半回転正転と半回転逆転して縫糸20を交差させ縫目を作る半回転釜200、天秤のように往復運動して縫糸20に弛みを与えたり縫目を引き締めたりする糸引出作動子401、及び楕円運動して被縫製体21を送り出す送り歯601等が装着され、半回転釜200に巻装された1本の縫糸20で被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目をそれぞれ形成させるミシンである。なお、本明細書において、「巻装」とは巻かれた状態で装着されていることを意味する。
【0048】
アーム2には上軸5及び中間軸8、ベッド3には水平送り軸605、上下送り軸613及び釜軸201が、それぞれ軸方向が水平方向に設置されている。上軸5は上軸前メタル7及び上軸後メタル6で、中間軸8は中間軸前メタル9及び中間軸後メタル10でそれぞれアーム2に回動自在に設置されている。水平送り軸605は水平送り軸前メタル607及び水平送り軸後メタル608で、上下送り軸613は上下送り軸前メタル614及び上下送り軸後メタル611でそれぞれアーム2に回動自在に設置されている。釜軸201は釜軸後メタル225および外釜取付部202cのメタル(図13参照)とでアーム2に回動自在に設置されると共に、後述する半回転釜200の内釜ドライバー203に固定されている。
【0049】
上軸5の一端には従動プーリ4が設けられモータMにより無端ベルトである駆動ベルトMBを介して駆動される。また、上軸5の他端には鉤針13を駆動する鉤針・蓋針駆動機構100の釣合錘101が設けられ、上軸5の中間には送り歯601を楕円運動させる布送り機構600を駆動する布送り駆動機構700が連結され、上軸5の従動プーリ4に近傍する部位には縫目ピッチ・縫目間ピッチの送り量設定機構300を駆動する上軸駆動プーリ25が設けられている。中間軸8には半回転釜200を駆動する釜駆動機構220及び糸引出作動子401を駆動する糸引出駆動機構400が連結されている。
【0050】
鉤針・蓋針駆動機構100は、鉤針13を、上死点から下降し針板12に載置された被縫製体21に貫通し、下死点から被縫製体21から抜け出して上昇し、垂直方向に直線往復運動する第1ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体21に貫通し、下死点から上昇する際に、縫糸20を糸捕捉鉤13aで捕捉し、第2ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体21に貫通し、下死点から上昇する際に、糸捕捉鉤13aで捕捉されていた縫糸20を解放することができる機構構成である。なお、本明細書において、「鉤針13の第1ストローク」とは鉤針13が針上死点→針下死点→針上死点に至るまでの1針目、「鉤針13の第2ストローク」とは鉤針13が針上死点→針下死点→針上死点に至るまでの2針目のことを意味する。
【0051】
この鉤針13は図3(A)、(B)、図4に示すように、針留107に固定され、針留107は針棒上メタル105及び針棒下メタル106によって垂直方向に直線往復運動可能な状態でアーム2に設置された針棒11の下端部に、針止めネジ108で固定されている。また、針棒上メタル105及び針棒下メタル106間の針棒11には針棒抱104が固定され、この針棒抱104に形成されたクランクロッドピン104aは針棒クランクロッド103の一端が回動自在に連結され、針棒クランクロッド103の他端は上軸5の他端に固着された釣合錘101にクランクロッドピン102によって回動自在に連結されている。したがって、針棒クランクロッド103が上軸5の回転により釣合錘101を介してクランク運動するので、鉤針13が針留107で固定された針棒11が針棒抱104によって垂直方向に直線往復運動する。
【0052】
また、鉤針13の糸捕捉鉤13aは、蓋針14によって開閉される。この蓋針14は蓋針留111に蓋針止めネジ112で固定され、蓋針留111は蓋針棒上メタル113及び蓋針棒下メタル114によって垂直方向に直線往復運動可能な状態でアーム2に設置された蓋針棒15の下端部に固定されている。また、蓋針棒上メタル113及び蓋針棒下メタル114間の蓋針棒15には蓋針棒受116が固定されている。蓋針棒受116及び蓋針棒上メタル113間の蓋針棒15には、針棒上メタル105及び針棒抱104間の針棒11に固定された蓋針棒支え上腕118が移動可能に隙間を有して嵌められている。蓋針棒支え上腕118及び蓋針棒上メタル113間の蓋針棒15には蓋針棒回転止120が固定され、この蓋針棒回転止120に形成された切欠120aは、アーム2に突出するように固定された蓋針棒案内121が摺動可能に嵌め込まれている。したがって、蓋針棒回転止120が固定された蓋針棒15は回転しないようになる。また、蓋針棒回転止120はアーム2に一端が固定された蓋針棒バネ119の他端が固定され、常時下方に引っ張られるようになっている。なお、蓋針棒回転止120の下部側にはOリング117が蓋針棒15に嵌めこまれ、蓋針棒下メタル114の上部側にはOリング115が蓋針棒15に嵌めこまれている。Oリング117は蓋針棒回転止120と蓋針棒支え上腕118が当接する際の緩衝材として、Oリング115は蓋針棒下メタル114と蓋針棒受116が当接する際の緩衝材としてそれぞれ機能させるものである。
【0053】
このように構成された鉤針・蓋針駆動機構100は、上軸5の回転により針棒11が上昇した場合には図3(A)に示すように、蓋針棒支え上腕118が蓋針棒回転止120を蓋針棒バネ119の弾性力に抗して上昇させる。この際、鉤針13の上昇と共に蓋針14も上昇するので、図5(A)、図6(A)に示すように、鉤針13の糸捕捉鉤13aは蓋針14によって閉状態になる。即ち、鉤針13が下死点から上死点に向かっていくときに糸捕捉鉤13aは蓋針14によって閉塞されることになる。また、上軸5の回転により針棒11が下降した場合には図3(B)に示すように、蓋針棒支え上腕118も下降するので、蓋針棒回転止120は蓋針棒バネ119の弾性力によって下降する。この際、蓋針14は蓋針棒15に固定された蓋針棒受116が蓋針棒下メタル114に当接するので、図5(B)、図6(B)に示すように、鉤針13の糸捕捉鉤13aは開状態になる。即ち、鉤針13が被縫製体21を貫通した後、糸捕捉鉤13aは針板12の下方において蓋針14から開放されることになる。
【0054】
この鉤針・蓋針駆動機構100の近傍には図1、図2に示すように、被縫製体21を針板12に押え付けるための押え金501を動作させる押え機構500が設けられている。押え機構500は図7に示すように、押え棒503が垂直方向に直線往復運動可能にアーム2に設置され、押え棒503の下端部に、押え金501が揺動自在に取り付けられた押え足502が押え止ネジ509で固定されている。また、押え棒503の上部には押え圧力調節ネジ508が固定され、押え圧力調節ネジ508はアーム2の上部に螺合されている。押え棒503には押え棒抱き505が固定され、押え棒抱き505とアーム2の下面との間には押え圧力調節バネ504が押え棒503に嵌めこまれている。この押え圧力調節バネ504による押え金501の被縫製体21に対する押圧力は押え圧力調節ネジ508を回すことによって調節できる。さらに、押え金501を上下させるために、押え棒抱き505に係合する押え上げレバー506がアーム2に固定された押え上げレバー軸507に回動自在に設けられている。押え上げレバー506を上昇させると押え棒抱き505が上昇し、下降させると押え棒抱き505が下降する。したがって、押え上げレバー506を上昇させて押え金501及び針板12間に空間を作り、被縫製体21を針板12上に載せたら押え上げレバー506を下降させて当該被縫製体21を押え金501で針板12に押し付けることで、被縫製体21を針板12上にセットすることができる。
【0055】
布送り機構600は図1、図2に示すように、鉤針13を第1ストロークにおいて被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体21を1縫目ピッチ送りするとともに、鉤針13を第2ストロークにおいて被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体21を1縫目間ピッチ送りする送り歯601を備えている。
【0056】
この布送り機構600は図2、図9、図10に示すように、針板12の下方に設けられ、送り歯601が送り土台602の略中央部に固定されている。送り土台602の一端は、水平送り軸605の一方に固定された水平送り腕604に水平送り腕軸603によって回動自在に連結されている。したがって、水平送り軸605を往復回転させることで水平送り腕604が往復揺動するので、送り歯601を水平方向で往復運動させることができる。また、送り土台602の他端には上下送りローラ軸609が固定され、上下送りローラ軸609に上下送りローラ608が回動自在に設けられている。この上下送りローラ608は、上下送り軸613の一方に固定された上下送り二又616の二又部616aに摺動可能に挿入されている。したがって、上下送り軸613を往復回転することで上下送り二又616が往復揺動するので、上下送り二又616に嵌り込んだ上下送りローラ608が送り土台602の他端を上下方向に往復運動させることができる。ここで図8(A)、(B)、(C)に示すように、縫目送りの1縫目ピッチP1とは被縫製体21の表面に形成されるハンドステッチ縫目の縫長さで、縫目間送りの1縫目間ピッチP2とは連続する2つのハンドステッチ縫目間の跳び長さである。
【0057】
布送り駆動機構700は図9に示すように、送り量設定機構300で設定された縫目ピッチ送り量、縫目間ピッチ送り量をそれぞれ各被縫製体送りモードにおいて伝達して送り歯601により被縫製体21を送るもので、上軸5に、水平送り軸605を往復回転させる水平送りカム701と、上軸5に固定され上下送り軸613を往復回転させる上下送りカム717とが固定されている。なお、本明細書において、「各被縫製体送りモード」とは縫目ピッチ送りと縫目間ピッチ送りのことを意味する。
【0058】
水平送りカム701は偏心カムで、カム部701aには水平送り駆動ロッド702が回動自在に嵌合され、水平送り駆動ロッド702のアーム端702aには水平送り縦ロッド704の一端が連結ピン703で回動自在に連結されている。水平送り縦ロッド704の他端は、水平送り軸605の他方に固定された水平送り軸駆動腕705に連結ピン706で回動自在に連結されている。したがって、上軸5が回転すると水平送りカム701が水平送り駆動ロッド702を偏心運動させるので、水平送り縦ロッド704が上下運動して水平送り軸駆動腕705が水平送り軸605を往復回転させることができる。
【0059】
上下送りカム717は偏心カムで、カム部717aには上下送り縦ロッド714の一端が回動自在に嵌合され、上下送り縦ロッド714の他端は、上下送り軸613の他方に固定された上下送り軸駆動腕715に連結ピン716で回動自在に連結されている。したがって、上軸5が回転すると上下送りカム717が上下送り縦ロッド714の一端を偏心運動させるので、上下送り縦ロッド714自体が上下運動して上下送り軸駆動腕715が上下送り軸613を往復回転させることができる。
【0060】
このように水平送り軸605を往復回転させることで、水平送り腕604が往復揺動して送り土台602を水平方向で往復運動させ、上下送り軸613を往復回転させることで、上下送り二又616が往復揺動して上下送り二又616に嵌り込んだ上下送りローラ608が送り土台602の他端を上下方向に往復運動させる。したがって、送り土台602に固定された送り歯601は、上昇→前進→下降→後退という所謂送りの四工程運動をすることができる。
【0061】
送り量設定機構300は図11に示すように、縫目ピッチ送りの縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送りの縫目間ピッチ送り量をそれぞれ設定するもので、鉤針13を駆動する上軸5から2分の1減速される中間軸8に枢支される支え腕311に枢着される逆T字形の送り調節体310から成る。逆T字形の送り調節体310の横腕となる両腕には、縫目ピッチ送り量操作部材である縫目送り調節レバー301、縫目間ピッチ送り量操作部材である縫目間送り調節レバー302がそれぞれ枢着されている。
【0062】
具体的には、支え腕311の腕端311aは逆T字形の送り調節体310の横腕と縦腕とが交差する部位を送り調節体ピン309で回動自在に連結すると共に、中間軸8に回動自在に嵌め合わされている。逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aには、連結ピン308Aで第1の調節レバーリンク307の一端が回動自在に連結され、第1の調節レバーリンク307の他端には縫目間送り調節レバー302の作用点となる部位が連結ピン308Bで回動自在に連結されている。逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bには、連結ピン308Cで第2の調節レバーリンク307’の一端が回動自在に連結され、第2の調節レバーリンク307’の他端には縫目送り調節レバー301の作用点となる部位が連結ピン308Dで回動自在に連結されている。縫目間送り調節レバー302及び縫目送り調節レバー301はそれぞれ支点となる部位が、アーム2に固定された調節レバー軸303に回動自在に備えられている。また、調節レバー軸303に回動自在に設けられた縫目間送り調節レバー302及び縫目送り調節レバー301間には、T字形の調節レバー仕切板304の縦腕端304aが調節レバー軸303に備えられ、横腕となる一方の横腕端304bは上に、他方の横腕端304cは下になるように止ネジ313A、313Bでアーム2に固定されている。また、一方の横腕端304bには止ネジ313Aで仕切板上スペーサー305が固定され、他方の横腕端304cには止ネジ313Bで仕切板下スペーサー306が固定されている。仕切板上スペーサー305は、縫目間送り調節レバー302及び縫目送り調節レバー301の力点となる部位の上昇位置のリミッタで、仕切板下スペーサー306は、縫目間送り調節レバー302及び縫目送り調節レバー301の力点となる部位の下降位置のリミッタである。なお、縫目間送り調節レバー302及び縫目送り調節レバー301は、支点となる部位をアーム2に固着された調節レバー軸303に枢支されて、操作ツマミとなる力点となる部位の操作により設定される位置に波ワッシャー等の弾撥部材で押圧された状態で停止される。以下、この停止状態を半固定という。
【0063】
また、図1、図2に示すように、1つの跳び縫いセットごとに縫目ピッチ送り、縫目間ピッチ送りにそれぞれ対応する各被縫製体送りモードに順次切換える送りモード切換機構350を備えている。なお、本明細書において、「跳び縫いセット(skip stitch set)」とは一組のハンドステッチ縫目及び錠縫縫目のことを意味する。
【0064】
送りモード切換機構350は図11に示すように、中間軸8に固着され2個の偏位点を有する送り切換三角カム351と、送り切換三角カム351に外接する送り切換ロッド352とを備えている。送り切換ロッド352の連結端352aは縫目ピッチ切換リンク355の一端に枢着され、縫目ピッチ切換リンク355の他端は逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cに枢着されている。具体的には、送り切換三角カム351は送り切換ロッド352に形成された略四角形のカム穴352bに外接し、送り切換ロッド352の連結端352aは連結ピン354で縫目ピッチ切換リンク355の一端に回動自在に連結され、縫目ピッチ切換リンク355の他端は連結ピン312で逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cが回動自在に連結されている。
【0065】
なお、送り切換三角カム351は、2個の偶数個の偏位点を有して1つの跳び縫いセットを形成させていたが、これに限らず、4個以上の偶数個の偏位点を有する送り切換カムとして、複数の跳び縫いセットを形成させるようにしてもよい。
【0066】
また、布送り駆動機構700は図11に示すように、一端が送り切換ロッド352の連結端352aに枢着される水平送り連結リンク712と、第1の腕709aが水平送り連結リンク712の他端に枢着される水平送り連結クランク709と、一端が水平送り連結クランク709の第2の腕709bに枢着され他端が水平送り縦ロッド704に枢着される水平送りロッドリンク707とを備えている。具体的には、水平送り連結リンク712の一端は送り切換ロッド352の連結端352aに連結ピン354で回動自在に連結され、水平送り連結リンク712の他端は水平送り連結クランク709の第1の腕709aに連結ピン711で回動自在に連結され、水平送り連結クランク709の第2の腕709bは連結ピン708で水平送りロッドリンク707の一端を回動自在に連結している。水平送りロッドリンク707の他端は水平送り縦ロッド704及び水平送り駆動ロッド702のアーム端702aを連結ピン703で回動自在に連結している。
【0067】
さらに、中間軸8の一端には中間軸従動プーリ26が固定され、この中間軸従動プーリ26と上軸5に固定された上軸駆動プーリ25に無端ベルトであるタイミングベルトTBが巻き掛けられている。この中間軸従動プーリ26と上軸駆動プーリ25とは上軸5から2分の1減速されて中間軸8に回転運動が伝達される。
【0068】
なお、送り量設定機構300及び送りモード切換機構350の動作については、後述する動作説明において詳述する。
【0069】
半回転釜200及び釜駆動機構220は図1、図2に示すように、針板12の下方にあって縫糸20が巻装され縫糸20が糸出口212aから引き出される釜であって、第1ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体21に貫通し、下死点から上昇する際に、半回転逆転し、糸捕捉鉤13aで縫糸20を捕捉した鉤針13の上昇に伴ってさらに逆転することにより縫糸20を糸締めすると共に、鉤針13が第2ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体21に貫通し、下死点から上昇する際に、糸捕捉鉤13aで捕捉されていた縫糸20を釜が半回転正転して掬う剣先205aを有し、捕捉されていた縫糸20を釜の回転によって釜の剣先205aで掬って糸捕捉鉤13aから解放し、解放された縫糸20を釜が更に回転することにより釜にくぐり入れて釜に巻装されている縫糸20に交錯させることができる機構構成である。
【0070】
このような半回転釜200は図12、図13に示すように、縫糸20が巻装されるボビン211を収納するボビンケース212を内釜205に内蔵し、ボビンケース212は内釜205と一緒に回転自在に外釜202に装架されている。なお、本明細書において、「装架」とは架け渡して装着することを意味する。具体的には、縫糸20を巻装したボビン211を収容したボビンケース212と、ボビンケース212を取り外し自在に収容すると共に剣先205aを有する内釜205と、内釜を回転自在に内装しベッド3に対して回転止めされる外釜202とを備えている。内釜205はボビンケース212を収容するボビンケース収容部205bを有し、このボビンケース収容部205bにボビンケース212を取り外し自在に収容する。外釜202は、内釜ドライバーバネ204が固定された内釜ドライバー203及び内釜205を収容する内釜収容部202aを有している。また、外釜202には、釜軸201の一端を回動可能に挿入するための釜軸穴202bが設けられた取付ボス部202cを有し、この釜軸穴202b及び内釜収容部202aの回転中心は、釜軸201の回転中心と同心である。
【0071】
この外釜202の内釜収容部202aに、内釜ドライバー203を収容して釜軸穴202bに挿入された釜軸201に固定する。さらに、内釜収容部202aに内釜205及び内釜押え206を収容し、右内釜押え爪208、左内釜押え爪209で内釜押え206を、内釜押え爪バネ210でバネ力を付与した状態で固定する。なお、内釜205と内釜ドライバーバネ204が固定された内釜ドライバー203との間には所定の隙間ができるようになっている。また、内釜ドライバー203の内釜ドライバーバネ204と内釜205との関係は、内釜ドライバーバネ204の両端で内釜205の自由回動を規制することができるもので、内釜ドライバー203が釜軸201で半回転正転すると、内釜ドライバーバネ204の一端が内釜205に当接し、内釜ドライバーバネ204の他端が内釜205と隙間O2(図18(O)参照)を有するようになっている。また、内釜ドライバー203が釜軸201で半回転逆転すると、内釜ドライバーバネ204の他端が内釜205に当接し、内釜ドライバーバネ204の一端が内釜205と隙間O1(図18(E)参照)を有することになる。また、内釜押え206の針落ち方向には、縫糸20のゆるみを調整するための上バネ207がネジによって固定されている。また、ボビンケース212には、鉤針13が針板12から上昇するとき半回転釜200が逆転して針板から離間する方向及び位置において、糸出口212aを設けている。
【0072】
釜駆動機構220は図14、図15に示すように、中間軸8の他端側に固定され偏心カムである釜駆動三角カム230と、釜駆動三角カム230に外接する釜駆動二又231と、一端が釜駆動二又231の力点となる部位に連結される釜駆動縦ロッド228と、腕233aが釜駆動縦ロッド228の他端に連結され扇型歯車軸221に固定される釜駆動扇型歯車233と、釜駆動扇型歯車233に噛み合わされ釜軸201に固定された釜軸歯車224とから成る。具体的には、釜駆動三角カム230は釜駆動二又231に形成された略升形のカム溝231aに外接し、釜駆動二又231の力点となる部位には連結ピン229で釜駆動縦ロッド228の一端が回動自在に連結され、釜駆動縦ロッド228の他端は連結ピン227で釜駆動扇型歯車233の腕233aに回動自在に連結されている。また、釜駆動二又231の支点となる部位が釜駆動二又軸232によって枢支され、この釜駆動二又軸232はアーム2に固定されている。なお、扇型歯車軸221は、ベッド3に軸方向が水平方向に配置され扇型歯車軸前メタル222及び扇型歯車軸後メタル223で回動自在に設置されている。
【0073】
このような構成の釜駆動機構220は中間軸8が回転すると、釜駆動三角カム230が偏心運動することで釜駆動二又231が釜駆動二又軸232を支点にして釜駆動縦ロッド228を上下運動させるので、釜駆動扇型歯車233を往復揺動させる。この釜駆動扇型歯車233の往復揺動に基づき釜軸歯車224が固定された釜軸201も一定の回転角で往復回転運動するので、半回転釜200の内釜206を半回転正転、半回転逆転させることができる。
【0074】
糸引出駆動機構400は図1、図2に示すように、糸引出作動子401が、鉤針13の糸捕捉鉤13aが縫糸20を捕捉する際に半回転釜200が回転することにより糸出口212aから引き出されている縫糸20を鉤針13に周接して緊張するとともに半回転釜200からくぐり出た縫糸20を糸締めすることができる機構構成である。なお、本明細書において、「周接」とはある部位の周りに接していることを意味する。この糸引出作動子401は、糸捕捉鉤13aで捕捉されていた縫糸20が半回転釜200の剣先205aで掬われた後、半回転釜200の糸出口212aから引き出されている縫糸20を引掛け、半回転釜200から引出して糸締めし、糸捕捉鉤13aで縫糸20を捕捉した後、引掛けている縫糸20を釈放する機能を有している。
【0075】
このような糸引出駆動機構400は図16、図17に示すように、中間軸8の水平方向における回転運動を垂直方向における回転運動に変換するねじ歯車410と、ねじ歯車410で水平方向から垂直方向に変換された回転運動を伝達する糸引出作動子駆動カム軸408と、糸引出作動子駆動カム軸408の回転運動を糸引出作動子401に上述した機能をもたせる糸引出作動子駆動カム407とを備えている。
【0076】
具体的には、ねじ歯車410の第1歯車410Aが中間軸8に固定され、第2歯車410Bが糸引出作動子駆動カム軸408の一端(上端)に固定されている。糸引出作動子駆動カム軸408の他端側(下端側)にはカム溝407aが形成された正面カムである糸引出作動子駆動カム407が固定されている。この糸引出作動子駆動カム軸408は、アーム2に固定されている糸引出作動子駆動カム軸筒409に装着された糸引出作動子駆動カム軸上メタル411及び糸引出作動子駆動カム軸下メタル412で回動自在に設置されている。また、糸引出駆動機構400は、水平方向に配置され糸引出作動子駆動カム407のカム溝407aに係合するカムフォロア406がカムフォロアピン413で回動自在に設けられた糸引出作動子駆動ロッド台405と、水平方向に配置され一端が糸引出作動子駆動ロッド台405に固定され他端が糸引出作動子駆動腕403の腕端403aに段ピン414で回動自在に固定された糸引出作動子駆動ロッド404と、垂直方向に配置され一端が糸引出作動子駆動腕403に固定され他端が糸引出作動子401に固定された糸引出作動子揺動軸402とを備えている。なお、糸引出作動子駆動ロッド台405は、中空の長穴405aが形成され、この長穴405aに糸引出作動子駆動カム軸408が挿入されて、糸引出作動子駆動カム407の下方で水平方向に移動可能にスラスト受415で糸引出作動子駆動カム軸408に装着されている。
【0077】
このような構成の糸引出駆動機構400は中間軸8が回転すると、ねじ歯車410で糸引出作動子駆動カム軸408が回転するので、糸引出作動子駆動ロッド台405及び糸引出作動子駆動ロッド404はカムフォロア406が糸引出作動子駆動カム407のカム溝407aの形状に応じて糸引出作動子401を揺動させる。この糸引出作動子401の揺動運動は、鉤針13の糸捕捉鉤13aが縫糸20を捕捉する際に半回転釜200が回転することにより糸出口212aから引き出されている縫糸20を鉤針13に周接して緊張するとともに半回転釜200からくぐり出た縫糸20を糸締めすると共に、縫糸20が半回転釜200の剣先205aで掬われた後、半回転釜200の糸出口212aから引き出されている縫糸20を引掛け、半回転釜200から引出して糸締めし、糸捕捉鉤13aで縫糸20を捕捉した後、引掛けている縫糸20を釈放するものである。
【0078】
このように構成された1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、鉤針13、半回転釜200、糸引出作動子401の協働によって被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成し、鉤針13の第1ストロークにおいて送り歯601により被縫製体21をハンドステッチ縫目のための縫目ピッチ送りし、鉤針13の第2ストロークにおいて送り歯601により被縫製体21をハンドステッチ縫目間のための縫目間ピッチ送りするものである。また、1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、縫目ピッチ送りの縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送りの縫目間ピッチ送り量をそれぞれ設定し、1つの跳び縫いセットごとに縫目ピッチ送り、縫目間ピッチ送りにそれぞれ対応する各被縫製体送りモードに順次切換え、設定された縫目ピッチ送り量、縫目間ピッチ送り量をそれぞれ各被縫製体送りモードにおいて送り駆動機構700に伝達して送り歯601により被縫製体21を送るものである。なお、本明細書において、「協働」とは他の部分と協同して働くことを意味する。
【0079】
このような1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作を、1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を中心にして図18(A)〜(W)、図19、図20に基づき説明する。図18(A)〜(W)は鉤針13、半回転釜200及び糸引出作動子401の動作説明図で、図19は鉤針13、半回転釜200、糸引出作動子401、蓋針14及び送り歯601のモーションダイヤグラムである。この動作説明において、方向を示す場合には図18(A)〜(W)を正面から見た状態で説明する。また、図18(A)〜(W)において、送り歯601の図示を省略している。
【0080】
なお、図18(A)〜(W)においては、半回転釜200の半回転逆転とは内釜205が反時計方向に回転し、半回転釜200の半回転正転とは内釜205が時計方向に回転するものとする。また、便宜上、縫糸20が糸捕捉鉤13aに捕捉されていない鉤針13が上死点に位置する状態で、且つ内釜205の剣先205aが垂直方向の下方に位置している状態(図18(A))から動作説明を行うものとする。この図18(A)の状態においては、半回転釜200は停止した状態、糸引出作動子401はボビン211からボビンケース212の糸出口212aを介して縫糸20を引き出している状態、蓋針14は閉状態、送り歯601は縫目間送り状態である。被縫製体21の送り方向は左とする。また、図19においては、プーリ4が2回転で跳び縫いセットとして形成するので、縫製の1サイクルは上軸5における720度で示され、図18(A)は上軸5が0度(720度)の状態とする。上軸5が0度で鉤針13は上死点、180度で鉤針13は下死点、360度で鉤針13は上死点、540度で鉤針13は下死点となる。
【0081】
図1において、モータMにより駆動ベルトMBを介して駆動される従動プーリ4が、鉤針13側より見て時計方向に回転すると、上軸5の回転により鉤針・蓋針駆動機構100、布送り駆動機構700、釜駆動機構220及び糸引出駆動機構400が駆動する。鉤針・蓋針駆動機構100が駆動すると鉤針13を垂直方向に直線往復運動させ、布送り駆動機構700が駆動すると布送り機構600で送り歯601を送りの四工程運動させ、釜駆動機構220が駆動すると半回転釜200の内釜206を半回転正転、半回転逆転させ、糸引出駆動機構400が駆動すると糸引出作動子401を揺動させる。なお、各機構の動作説明は上述した構成説明で詳述したので省略する。
【0082】
このように動作する鉤針13、半回転釜200、糸引出作動子401及び送り歯601は下記のように協働して、1本の縫糸20で被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目をそれぞれ形成させる。
【0083】
(a)垂直方向に直線往復運動する鉤針13が第1ストロークにおいて上死点(上軸5:0度)から下降し針板12に載置された被縫製体21に貫通し(図18(A)〜図18(F)、図19)、下死点(上軸5:180度)から上昇する際に、針板12の下方にあって半回転逆転する半回転釜200の糸出口212aから糸引出作動子401によって引き出され鉤針13に周接して緊張されている縫糸20を糸捕捉鉤13aで捕捉する(図18(G)、図18(H)、図19)。この際、半回転釜200が有するボビンケース212の糸出口212aは図20に示すように、鉤針13が針板12から上昇するとき半回転釜200の内釜205が逆転して針板12から離間する方向及び位置に設けられていることになる。これにより、糸引出作動子401によって引き出されている縫糸20を鉤針13に周接することが可能になる。また、鉤針13が実質的に上死点(上軸5:0度)から下死点(上軸5:180度)に運動する際に半回転釜200を回転停止させる。このように半回転釜200を回転停止させるのは、第1ストロークにおいて鉤針13の糸捕捉鉤13aに縫糸20を糸掛けするために、第2ストロークにおいて半回転正転した釜を半回転逆転させるタイミングにするためである。
【0084】
なお、半回転釜200は鉤針13が被縫製体21に刺さってから半回転逆転を開始する(上軸5:130度)(図18(E)、図19)。糸引出作動子401は鉤針13が被縫製体21に刺さる前に最前進で停止する(上軸5:80度)(図18(D)、図19)。蓋針14は鉤針13が被縫製体21に刺さると開状態になる(図18(E)、図19)。送り歯601は鉤針13が被縫製体21に刺さる前に被縫製体21の布送りを停止する(図18(D)、図19)。
【0085】
(b)鉤針13を第1ストロークにおいて被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点(上軸5:360度)を通過する間に、被縫製体21を送り歯601で1縫目ピッチ送りするとともに縫糸20を捕捉した鉤針13が上昇すること及び半回転釜200がさらに逆転することにより糸締めする(図18(I)〜図18(M)、図19)。
【0086】
なお、半回転釜200は鉤針13が上死点(上軸5:360度)を通過してから半回転逆転を停止する(上軸5:367度)(図18(M)、図19)。糸引出作動子401は鉤針13が下死点(上軸5:180度)に到達すると縫糸20を繰り出しできるように後退する揺動を開始し(図18(F)、図19)、鉤針13が上死点(上軸5:360度)を通過する前に後退を停止する(図18(L)、図19)。蓋針14は、鉤針13が下死点(上軸5:180度)から上死点(上軸5:360度)に移動する際、当該鉤針13が針板12を通過した後に鉤針13の糸捕捉鉤13aを閉状態にして被縫製体21を鉤針13と共に通過する(図18(J)、図18(K)、図19)。送り歯601は鉤針13が上死点(上軸5:360度)を通過する直前に1縫目ピッチ送りを開始する(図18(L)、図19)。
【0087】
(c)鉤針13が第2ストロークにおいて上死点(上軸5:360度)から下降し被縫製体21に貫通し(図18(N)、図18(O)、図19)、下死点(上軸5:540度)から上昇する際に、糸捕捉鉤13aで捕捉されていた縫糸20を半回転正転する半回転釜200の剣先205aで掬うと共に、捕捉されていた縫糸20を半回転釜200の回転によって糸捕捉鉤13aから解放する(図18(P)、図19)。なお、鉤針13が実質的に上死点(上軸5:360度)から下死点(上軸5:540度)に運動する際に半回転釜200を回転停止させる。このように半回転釜200を回転停止させるのは、第2ストロークにおいて鉤針13の糸捕捉鉤13aに引っ掛けられた縫糸20を釜の剣先205aで糸捕捉鉤13aから開放するために、第1ストロークにおいて半回転逆転した釜を半回転正転させるタイミングにするためである。
【0088】
なお、半回転釜200は鉤針13が下死点(上軸5:540度)に到達すると半回転正転を開始する(図18(P)、図19)。糸引出作動子401は、鉤針13が被縫製体21に刺さってから、後退して縫糸20を繰り出すように揺動を開始する(図18(N)、図19)。蓋針14は鉤針13が上死点から下降して被縫製体21を通過すると、鉤針13の糸捕捉鉤13aを開状態にする(図18(O)、図19)。送り歯601は鉤針13が被縫製体21に刺さる前に1縫目ピッチ送りを停止する(図18(N)、図19)。
【0089】
(d)半回転釜200の剣先205aで掬われて解放された縫糸20を半回転釜200が更に回転することにより半回転釜200の内釜ドライバーバネ204が固定された内釜ドライバー203の他端と内釜205との間に形成される隙間O2にくぐり入れて半回転釜200に巻装されている縫糸20に交錯(interlace)させ、内釜ドライバーバネ204が固定された内釜ドライバー203の一端と内釜205との間に形成される隙間O1からくぐり出た縫糸20を糸引出作動子401で糸締めする(図18(Q)〜図18(W)、図19)。
【0090】
なお、半回転釜200は鉤針13が被縫製体21から抜けて上死点(上軸5:720度)に到達するまでの間に半回転正転を停止する(図18(V)、図19)。糸引出作動子401は鉤針13が被縫製体21から抜けると縫糸20を引き締めできるように前進するように揺動を開始する(図18(T)、図19)。蓋針14は鉤針13が下死点から上昇して被縫製体21を通過すると、鉤針13の糸捕捉鉤13aを閉状態にする(図18(T)、図19)。送り歯601は鉤針13が上死点(上軸5:720度)を通過する直前に1縫目間ピッチ送りを開始する(図18(W)、図19)。
【0091】
(e)鉤針13を第2ストロークにおいて被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点(上軸5:720度)を通過する間に、被縫製体21を1縫目間ピッチ送りする(図18(W)、図19)。
【0092】
(f)(a)乃至(e)の工程を繰り返して被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目をそれぞれ形成する。
【0093】
したがって、縫糸20が鉤針13の糸捕捉鉤13aへ確実に捕捉され、かつミシンベッド内空間で1本糸錠縫化縫目形成を行ないピンポイント/サドルステッチと呼ばれる擬似ハンドステッチに適する縫製ができる。また、被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されるので、作業者にとって表面にハンドステッチ縫目を目視できる状態で縫製作業が行なわれ、ハンドステッチ縫位置を確認できることから正確な縫製ができる。また、被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されるので、1本糸錠縫化縫目を形成している縫糸20を引っ張ることによって容易にほどけることはないので、強固な縫製が得られる。
【0094】
このような1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、送り量設定機構300及び送りモード切換機構350によって縫目ピッチ、縫目間ピッチを調節することができる。この送り量設定機構300及び送りモード切換機構350の動作について図21〜図24に基づき説明する。図21〜図24は送り量設定機構300、モード切換機構350、布送り機構600及び布送り駆動機構700を模式的に示す図である。また、図21〜図24において、縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302はそれぞれ上下に揺動し、縫目送り調節レバー301の上端点a’s、縫目間送り調節レバー302の上端点asでそれぞれ最少送りピッチとなり、縫目送り調節レバー301の下端点a’d、縫目間送り調節レバー302の下端点adでは、それぞれ最大送りピッチとなるように構成されている。この動作説明において、方向を示す場合には図21〜図24を送り歯601方向から右方向に見た状態で説明する。
<縫目送りピッチ及び縫目間送りピッチの最小送りの設定例>
まず、縫目送りの1縫目ピッチと縫目間送りの1縫目ピッチとを最小送りにした場合について図21に基づき説明する。
【0095】
縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302を操作して両方とも最少送りピッチの上端点a’s、asに設定すると、縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302の各作用点となる部位b’、bはそれぞれ最下点に位置するので、連結されている調節レバーリンク307’、307がそれぞれ、支え腕311によって支持された逆T字形の送り調節体310を直立の状態で下方に移動させる。この移動位置が送り調節体310の最下位置となる。
【0096】
逆T字形の送り調節体310が直立の状態で最下位置に位置すると、逆T字形の送り調節体310の縦腕端に枢着されている縫目ピッチ切換リンク355を介して送り切換えロッド352の連結端352aと水平送り連結リンク712をそれぞれ下方向に引き下げる。この移動位置が送り切換えロッド352の連結端352aと水平送り連結リンク712の最下位置となる。この状態で、中間軸8が時計方向に回転すると、送り切換三角カム351が偏心運動するので、送り切換ロッド352は略水平方向の左右二つの位置q、q’間を変位量Qで往復間欠揺動する。なお、送り切換三角カム351のカム形状は、送り切換ロッド352が移動位置q、q’において間欠停止することができる形状に形成されている。移動位置q、q’における送り切換ロッド352の間欠停止時間は送り切換三角カム351により定まる。また、中間軸8は上軸5が2回転する間に1回転するので、上軸の1回転で送り切換ロッド352は移動位置q方向に、さらに上軸の1回転で送り切換ロッド352は移動位置q’方向に移動することになる。
【0097】
送り切換ロッド352が右方向位置q’に移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は最下位置に移動した逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bであるc’点に一致し、送り切換ロッド352が左方向位置qに移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は最下位置に移動した逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aであるc点に一致する。したがって、縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302によつてそれぞれ設定された送り調節体310の一方の横腕端310aであるc点と他方の横腕端310bであるc’点に、水平送り連結リンク712の一端であるh点を位置決めすることができるので、各被縫製体送りモードの設定を順次切換えることができる。この各被縫製体送りモードの設定は、送り切換ロッド352が行なっている。この被縫製体送りモード毎に布送りがなされる。
【0098】
このように縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302がそれぞれ最少送りピッチに設定されている場合には、水平送り連結クランク709の第1の腕709aは水平送り連結リンク712に引き下げられて時計方向に回転する。そのため、水平送りクランク709の第2の腕709bの下端であるj点は左方向に揺動して停止している。この状態で、上軸5が時計方向に回転すると、水平送り偏心カム701の偏心量eが水平送り駆動ロッド702を略水平方向に往復運動するので、水平送りクランク709の第2の腕709bに連結されている水平送りロッドリンク707は一端であるj点を揺動中心にして、水平送りロッドリンク707の他端lに連結されている水平送り縦ロッド704が左右方向に揺動される。なお、水平送りクランク709の第2の腕709bが左方向に揺動して停止する位置は、水平送りロッドリンク707は一端であるj点が水平送り縦ロッド704の揺動中心位置に一致するように設定されていて、水平送り偏心カム701の偏心量eは伝達されても水平送りロッドリンク707の揺動中心と水平送り縦ロッド704の揺動中心が重なるので、水平送り縦ロッド704へ伝達される上下運動は極めて微小となる。したがって、各被縫製体送りモードにおいては、送り歯602の水平送り量は発生せず被縫製体21は最小送りとなる。
<縫目送りピッチ及び縫目間送りピッチの最大送りの設定例>
次に、縫目送りの1縫目ピッチと縫目間送りの1縫目ピッチとを最大送りにした場合について図22に基づき説明する。
【0099】
縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302を操作して両方とも最大送りピッチの下端点a’d、adに設定すると、縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302の各作用点となる部位b’、bはそれぞれ最上点に位置するので、連結されている調節レバーリンク307’、307がそれぞれ、支え腕311によって支持された逆T字形の送り調節体310を直立の状態で上方に移動させる。この移動位置が送り調節体310の最上位置となる。
【0100】
逆T字形の送り調節体310が直立の状態で最上位置に位置すると、逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cに枢着されている縫目ピッチ切換リンク355を介して送り切換えロッド352の連結端352aと水平送り連結リンク712をそれぞれ上方向に押し上げる。この移動位置が送り切換えロッド352の連結端352aと水平送り連結リンク712の最上位置となる。この状態で、中間軸8が時計方向に回転すると、上述した最少送りの設定例と同様に、送り切換三角カム351が偏心運動するので、送り切換ロッド352は略水平方向の左右二つの位置q、q’間を変位量Qで往復間欠揺動する。なお、送り切換三角カム351のカム形状は、送り切換ロッド352が移動位置q、q’において間欠停止することができる形状に形成されている。移動位置q、q’における送り切換ロッド352の間欠停止時間は送り切換三角カム351により定まる。また、中間軸8は上軸5が2回転する間に1回転するので、上軸の1回転で送り切換ロッド352は移動位置q方向に、さらに上軸の1回転で送り切換ロッド352は移動位置q’方向に移動することになる。
【0101】
送り切換ロッド352が右方向位置q’に移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は最上位置に移動した逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bであるc’点に一致し、送り切換ロッド352が左方向位置qに移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は最上位置に移動した逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aであるc点に一致する。したがって、縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302によつてそれぞれ設定された送り調節体310の一方の横腕端310aであるc点と他方の横腕端310bであるc’点に、水平送り連結リンク712の一端であるh点を位置決めすることができるので、各被縫製体送りモードの設定を順次切換えることができる。この各被縫製体送りモードの設定は、送り切換ロッド352が行なっている。この被縫製体送りモード毎に布送りがなされる。
【0102】
このように縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302がそれぞれ最大送りピッチに設定されている場合には、水平送り連結クランク709の第1の腕709aは水平送り連結リンク712に押し上げられて反時計方向に回転する。そのため、水平送りクランク709の第2の腕709bの下端であるj点は右方向に揺動して停止している。この状態で、上軸5が時計方向に回転すると、水平送り偏心カム701の偏心量eが水平送り駆動ロッド702を略水平方向に往復運動するので、水平送り偏心カム701が左方向へ偏心回転移動すると、水平送り駆動ロッド702によって水平送りロッドリンク707の他端lは左下がりに揺動し、水平送り偏心カム701が右方向へ偏心回転移動すると、水平送り駆動ロッド702によって水平送りロッドリンク707の他端lは右上がりに揺動することになる。その結果、水平送り縦ロッド704には水平送り駆動ロッド702による往復揺動運動が最大の上下方向の往復運動に変換されて伝達される。したがって、各被縫製体送りモードにおいては、送り歯602の水平送り量は最大ピッチとなり被縫製体21は最大ピッチで布送りされる。
<縫目送りピッチ最少、縫目間送りピッチ最大の設定例>
次に、図8(B)に示すように、縫目送りの1縫目ピッチP1を最小送りにして、縫目間送りの1縫目ピッチP2を最大送りにした場合について図23(A)、(B)に基づき説明する。
【0103】
図23(A)に示すように、縫目送り調節レバー301を最小送りピッチの最上点a’sへ、縫目間送り調節レバー302を最大送りピッチの最下点adへそれぞれ操作して設定すると、縫目送り調節レバー301の作用点となる部位b’は最下点に位置し、縫目間送り調節レバー302の作用点となる部位bは最上点に位置する。縫目送り調節レバー301に連結された調節レバーリンク307’は逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bを引き下げ、縫目間送り調節レバー302に連結された調節レバーリンク307は逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aを押し上げる。その結果、逆T字形の送り調節体310は支え腕311によって枢支される枢支点dを中心に時計方向に回転する。
【0104】
その状態では、逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cは右方向へ傾斜して、縦腕端310cに連結されている縫目ピッチ切換リンク355は、中間軸8が時計方向に回転して送り切換三角カム351が偏心運動することで送り切換ロッド352が左方向位置qに移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は時計方向に回転した逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aであるc点に一致する。即ち、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は、連結ピン312を中心にして時計方向に回転することで左上方に移動する。したがって、縫目ピッチ切換リンク355の他端に連結されている水平送り連結リンク712は上方向に押し上げられ、この水平送り連結リンク712に連結されている水平送り連結クランク709の第1の腕709aは押し上げられて反時計方向に回転する。そのため、水平送りクランク709の第2の腕709bの下端であるj点は右方向に揺動して停止している。この状態で、上軸5が時計方向に回転すると、水平送り偏心カム701の偏心量eが水平送り駆動ロッド702を略水平方向に往復運動するので、水平送り偏心カム701が左方向へ偏心回転移動すると、水平送り駆動ロッド702によって水平送りロッドリンク707の他端lは左下がりに揺動し、水平送り偏心カム701が右方向へ偏心回転移動すると、水平送り駆動ロッド702によって水平送りロッドリンク707の他端lは右上がりに揺動して停止している。その結果、水平送り縦ロッド704には水平送り駆動ロッド702による往復揺動運動が最大の上下方向の往復運動に変換されて伝達される。したがって、縫目間送り調節レバー302によって設定された縫目間の送りが最大送りピッチの送り量となる。
【0105】
一方、図23(B)に示すように、逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cは右方向へ傾斜して、縦腕端310cに連結されている縫目ピッチ切換リンク355は、中間軸8が時計方向に回転して送り切換三角カム351が偏心運動することで送り切換ロッド352が右方向位置q’に移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は時計方向に回転した逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bであるc’点に一致する。即ち、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は、連結ピン312を中心にして反時計方向に回転することで右下方に移動する。したがって、縫目ピッチ切換リンク355の他端に連結されている水平送り連結リンク712は下方向に引き下げられ、この水平送り連結リンク712に連結されている水平送り連結クランク709の第1の腕709aは引き下げられて時計方向に回転する。そのため、水平送りクランク709の第2の腕709bの下端であるj点は左方向に揺動して停止している。この状態で、上軸5が時計方向に回転すると、水平送り偏心カム701の偏心量eが水平送り駆動ロッド702を略水平方向に往復運動するので、水平送りクランク709の第2の腕709bに連結されている水平送りロッドリンク707は一端であるj点を揺動中心にして、水平送りロッドリンク707の他端lに連結されている水平送り縦ロッド704が左右方向に揺動される。なお、水平送りクランク709の第2の腕709bが左方向に揺動して停止する位置は、水平送りロッドリンク707は一端であるj点が水平送り縦ロッド704の揺動中心位置に一致するように設定されていて、水平送り偏心カム701の偏心量eは伝達されても水平送りロッドリンク707の揺動中心と水平送り縦ロッド704の揺動中心が重なるので、水平送り縦ロッド704へ伝達される上下運動は極めて微小となる。したがって、送り歯602の水平送り量も極めて微小となるので、被縫製体21は僅かに布送りされる。即ち、縫目送り調節レバー301によって設定された最小送りピッチの送り量となる。
【0106】
このようにして各被縫製体送りモードのそれぞれの設定を順次切換えることができる。
<縫目送りピッチ最大、縫目間送りピッチ最小の設定例>
次に、図8(C)に示すように、縫目送りの1縫目ピッチP1を最大送りにして、縫目間送りの1縫目ピッチP2を最小送りにした場合について図24(A)、(B)に基づき説明する。
【0107】
図24(A)に示すように、縫目送り調節レバー301を最大送りピッチの最下点a’dへ、縫目間送り調節レバー302を最小送りピッチの最上点asへそれぞれ操作して設定すると、縫目送り調節レバー301の作用点となる部位b’は最上点に位置し、縫目間送り調節レバー302の作用点となる部位bは最下点に位置する。縫目送り調節レバー301に連結された調節レバーリンク307’は逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bを押し上げ、縫目間送り調節レバー302に連結された調節レバーリンク307は逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aを引き下げる。その結果、逆T字形の送り調節体310は支え腕311によって枢支される枢支点dを中心に反時計方向に回転する。
【0108】
その状態では、逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cは左方向へ傾斜して、縦腕端310cに連結されている縫目ピッチ切換リンク355は、中間軸8が時計方向に回転して送り切換三角カム351が偏心運動することで送り切換ロッド352が左方向位置qに移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は反時計方向に回転した逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aであるc点に一致する。即ち、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は、連結ピン312を中心にして時計方向に回転することで左下方に移動する。したがって、縫目ピッチ切換リンク355の他端に連結されている水平送り連結リンク712は下方向に引き下げられ、この水平送り連結リンク712に連結されている水平送り連結クランク709の第1の腕709aは引き下げられて時計方向に回転する。そのため、水平送りクランク709の第2の腕709bの下端であるj点は左方向に揺動して停止している。この状態で、上軸5が時計方向に回転すると、水平送り偏心カム701の偏心量eが水平送り駆動ロッド702を略水平方向に往復運動するので、水平送りクランク709の第2の腕709bに連結されている水平送りロッドリンク707は一端であるj点を揺動中心にして、水平送りロッドリンク707の他端lに連結されている水平送り縦ロッド704が左右方向に揺動される。なお、水平送りクランク709の第2の腕709bが左方向に揺動して停止する位置は、水平送りロッドリンク707は一端であるj点が水平送り縦ロッド704の揺動中心位置に一致するように設定されていて、水平送り偏心カム701の偏心量eは伝達されても水平送りロッドリンク707の揺動中心と水平送り縦ロッド704の揺動中心が重なるので、水平送り縦ロッド704へ伝達される上下運動は極めて微小となる。したがって、送り歯602の水平送り量も極めて微小となるので、被縫製体21は僅かに布送りされる。即ち、縫目間送り調節レバー302によって設定された最小送りピッチの送り量となる。
【0109】
一方、図24(B)に示すように、逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cは左方向へ傾斜して、縦腕端310cに連結されている縫目ピッチ切換リンク355は、中間軸8が時計方向に回転して送り切換三角カム351が偏心運動することで送り切換ロッド352が右方向位置q’に移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は反時計方向に回転した逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bであるc’点に一致する。即ち、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は、連結ピン312を中心にして反時計方向に回転することで右上方に移動する。したがって、縫目ピッチ切換リンク355の他端に連結されている水平送り連結リンク712は上方向に押し上げられ、この水平送り連結リンク712に連結されている水平送り連結クランク709の第1の腕709aは押し上げられて反時計方向に回転する。そのため、水平送りクランク709の第2の腕709bの下端であるj点は右方向に揺動して停止している。この状態で、上軸5が時計方向に回転すると、水平送り偏心カム701の偏心量eが水平送り駆動ロッド702を略水平方向に往復運動するので、水平送り偏心カム701が左方向へ偏心回転移動すると、水平送り駆動ロッド702によって水平送りロッドリンク707の他端lは左下がりに揺動し、水平送り偏心カム701が右方向へ偏心回転移動すると、水平送り駆動ロッド702によって水平送りロッドリンク707の他端lは右上がりに揺動して停止している。その結果、水平送り縦ロッド704には水平送り駆動ロッド702による往復揺動運動が最大の上下方向の往復運動に変換されて伝達される。したがって、縫目送り調節レバー301によって設定された縫目間の送りが最大送りピッチの送り量となる。
【0110】
このようにして各被縫製体送りモードのそれぞれの設定を順次切換えることができる。
【0111】
このように、送り量設定機構300及び送りモード切換機構350による1縫目ピッチ送りと1縫目間ピッチ送りの各送り量は、各調節レバー301、302の位置設定によりそれぞれ設定された送り量を交互に切換えて被縫製体21を送り歯601で布送りすることができると共に、鉤針13、半回転釜200、糸引出作動子401の協働によって1本糸錠縫化縫目が形成されるので、縫目ピッチ、縫目間ピッチはそれぞれ自由に設定可能である。
【0112】
なお、上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいては、鈎針13の糸捕捉鉤13aで縫糸20を捕捉後、縫糸20が糸捕捉鉤13aから抜け出ないようにする蓋針14を、鉤針13が針板12を通過した後から鉤針13の上死点までの期間及び鉤針13の上死点から被縫製体21に刺さるまでの期間において糸捕捉鉤13aを閉塞する鉤針・蓋針駆動機構100を設けていたが、これに限らず、図25(A)、(B)、図26に示すような鉤針・蓋針駆動機構130で、蓋針14を駆動してもよい。なお、図25(A)、(B)、図26において、図3(A)、(B)、図4に示す鉤針・蓋針駆動機構100と同一の構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0113】
この鉤針・蓋針駆動機構130は、針棒11に一端が枢着され他端にローラフォロア134を有する蓋針駆動リンク132と、蓋針棒15に固着されローラフォロア134を水平方向に移動可能に嵌合する溝138aを有する蓋針棒駆動腕138と、ローラフォロア134を嵌入して鉤針13の上死点から下死点に向かって垂直方向に移動させると共に、下死点に向かって移動するローラフォロア134を所定位置で水平方向に移動させる垂直溝135a、水平溝135bが形成されアーム2に固定された板溝カム135とを備えている。
【0114】
蓋針駆動リンク132の一端は、針棒抱き131の一端に形成されたピン131aにより回動自在に保持されている。針棒抱き131の他端にはクランクロッドピン131bが形成され、このクランクロッドピン131bには針棒クランクロッド103の一端が回動自在に連結されている。この針棒抱き131は針棒上メタル105及び針棒下メタル106間の針棒11に固定されている。また、蓋針駆動リンク132の他端にはローラ軸133が形成され、ローラ134aを回動自在に保持することでローラフォロア134が構成される。
【0115】
蓋針棒駆動腕138は、蓋針棒上メタル113及び蓋針棒下メタル114間の蓋針棒15に固定されている。また、板溝カム135は、垂直溝135a、水平溝135bが曲線溝で繋げられてL字状に形成されている。
【0116】
このように構成された鉤針・蓋針駆動機構130は、鉤針13の糸捕捉鉤13aが上死点から下降して被縫製体に貫通し、針板12を越えるまでの期間及び下死点から上昇して針板12を越え、被縫製体を抜け出して上死点に達するまでの期間に糸捕捉鉤13aを閉塞する蓋針14を駆動することができる。
【0117】
具体的には、上軸5の回転により針棒11が上昇した場合には図25(A)に示すように、蓋針駆動リンク132のローラフォロア134が板溝カム135の垂直溝135aに沿って上昇すると共に蓋針棒駆動腕138を上昇させる。この際、鉤針13の上昇と共に蓋針棒駆動腕138が固定された蓋針棒15を介して蓋針14も上昇するので、図5(A)、図6(A)に示すように、鉤針13の糸捕捉鉤13aは蓋針14によって閉状態になる。即ち、鉤針13の糸捕捉鉤13aが上死点から下降して被縫製体に貫通し、針板12を越えるまでの期間及び下死点から上昇して針板12を越え、被縫製体を抜け出して上死点に達するまでの期間において糸捕捉鉤13aは蓋針14によって閉塞されることになる。また、上軸5の回転により針棒11が下降した場合には図25(B)に示すように、蓋針駆動リンク132のローラフォロア134が板溝カム135の垂直溝135aに沿って下降後、水平溝135bに沿って水平移動する。この際、鉤針13は降下するが蓋針棒駆動腕138は停止するので、図5(B)、図6(B)に示すように、鉤針13の糸捕捉鉤13aは開状態になる。即ち、鉤針13の糸捕捉鉤13aが鉤針13の糸捕捉鉤13aが上死点から下降して被縫製体に貫通し、針板12を越えてから当該糸捕捉鉤13aは蓋針14から開放されることになる。
【0118】
このように蓋針14を鉤針・蓋針駆動機構130で駆動するのは、鉤針13が被縫製体を貫通する際に、糸捕捉鉤13aが被縫製体の織り糸を引っ掛けて地糸切れの発生を防止すると共に、捕捉した糸が糸捕捉鉤13aより抜け出ることを防止するためである。
【0119】
また、上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいては図18(M)、(N)に示すように、鉤針13の第2ストロークにおいて鉤針13が下降していくと、鉤針13の針先と被縫製体21との間で鉤針13の糸捕捉鉤13aに捕捉された縫糸20が張った状態から弛んだ状態になって糸弛みができるので、その糸弛み状態の縫糸20を、下降する鉤針13の針先で刺し通してしまう虞がある。そこで、図27(A)、(B)、図28(A)、(B)に示すように、第2ストロークにおいて鉤針13が上死点から下降する際に糸捕捉鉤13aで捕捉された縫糸を鉤針13の針先と被縫製体の間で糸寄せする糸寄せ機構800A、800Bを備えるとよい。
【0120】
糸寄せ機構800Aは図27(A)、(B)に示すように、鉤針13の針先と被縫製体21との間において発生する糸弛みを引っ掛けるL字形に形成された糸寄せ801と、上軸5に取り付けられ水平平面において運動軌跡が楕円形になる楕円駆動機構802と、楕円駆動機構802による楕円運動を糸寄せ801に伝達するリンク機構803とを備えている。
【0121】
楕円駆動機構802は、上軸5に偏心した状態で固定されカム溝804aが円周上の一周に亘り形成された円柱状の糸寄せ駆動カム804と、糸寄せ駆動カム804を覆うように嵌め込まれリンク機構803が連結される糸寄せ駆動腕805aが形成された円筒状の糸寄せ駆動体805と、糸寄せ駆動体805に組み込まれ糸寄せ駆動カム804のカム溝804aに嵌入するカムフォロア806とから構成されている。糸寄せ駆動カム804のカム溝804aは、糸寄せ駆動体805が上軸5の軸方向と同じ方向に直線往復運動できるように形成されている。また、カムフォロア806は、糸寄せ駆動体805の内周壁から一部突出するように当該糸寄せ駆動体805に固定されたローラ軸806aと、ローラ軸806aの先端に回動自在に保持され糸寄せ駆動カム804のカム溝804aに嵌入するローラ806bとから構成されている。
【0122】
リンク機構803は、糸寄せ駆動体805の糸寄せ駆動腕805aに設けられた軸穴805a’に回動自在に保持された糸寄せ駆動腕軸807と、糸寄せ駆動腕軸807の先端に一端が屈曲自在に連結された糸寄せ調節軸808と、糸寄せ調節軸808の他端に設けられた雄ねじ808aがねじ込まれる雌ねじ809aが一端に設けられ他端に糸寄せ801が固定された糸寄せ取付軸809と、アーム2の所定位置に設けられた雌ねじ(図示せず)にねじ込まれる雄ねじ810aが設けられ糸寄せ取付軸809を回動自在に支持する糸寄せ取付軸支え810とから構成されている。なお、糸寄せ調節軸808の雄ねじ808aと糸寄せ取付軸809の雌ねじ809aとは、完全に締め付けることなくねじ込まれているので、糸寄せ調節軸808と糸寄せ取付軸809とは回動自在になっている。また、アーム2の所定位置に設けられた雌ねじと糸寄せ取付軸支え810の雄ねじ810aとは、完全に締め付けることなくねじ込まれるので、糸寄せ取付軸支え810はアーム2に対して回動自在になっている。
【0123】
このように構成された糸寄せ機構800Aは図29に示すように、上軸5が1回転する間に糸寄せ801の先端部801aを運動軌跡830の楕円運動により押え金501上で1周させるもので、上下方向に直線運動する鉤針13に干渉することなく糸寄せ801の先端部801aを楕円運動させることができる。具体的には、上軸5が回転すると、当該上軸5に偏心して固定された糸寄せ駆動カム804も回転するので、糸寄せ駆動カム804のカム溝804aに係合するカムフォロア806を有する糸寄せ駆動体805が、上軸5の軸方向と同じ方向に直線往復運動すると共に糸寄せ駆動カム804の偏心方向に往復運動(以下、「偏心往復運動」という。)する。
【0124】
糸寄せ駆動体805の直線往復運動がリンク機構803に伝達されると、リンク機構803の糸寄せ駆動腕軸807と糸寄せ調節軸808とは屈曲する。この屈曲運動により、糸寄せ取付軸支え810を支点にして糸寄せ調節軸808の糸寄せ駆動腕軸807との連結点が力点となり糸寄せ取付軸809に固定された糸寄せ801の先端部801aが作用点となるので、糸寄せ801の先端部801aは糸寄せ駆動体805の直線往復運動に対して相反する方向に揺動する。また、糸寄せ駆動体805の偏心往復運動がリンク機構803に伝達されると、リンク機構803の糸寄せ駆動腕軸807と糸寄せ調節軸808とは屈曲方向ではないのでその状態を維持するが、糸寄せ取付軸支え810と糸寄せ取付軸809との連結点を支点にして糸寄せ駆動体805の糸寄せ駆動腕805aに回動自在に保持された糸寄せ駆動腕軸807が力点になり糸寄せ取付軸809に固定された糸寄せ801の先端部801aが作用点となるので、糸寄せ801の先端部801aは糸寄せ駆動体805の偏心往復運動に対して相反する方向に揺動する。
【0125】
したがって、糸寄せ駆動体805による運動方向が直交する2つの往復運動が合成されると、糸寄せ801の先端部801aは図29に示すような運動軌跡830の楕円運動を水平平面において行うことができるので、第2ストロークにおいて鉤針13が上死点から下降する際に糸捕捉鉤13aで捕捉された縫糸を鉤針13の針先と被縫製体の間で糸寄せ801の先端部801aで掬って糸寄せすることが可能になる。
【0126】
また、糸寄せ機構800Bは図28(A)、(B)に示すように、鉤針13の針先と被縫製体21との間において発生する糸弛みを引っ掛けるL字形に形成された糸寄せ811と、上軸5の回転運動を偏心運動に変換する偏心機構812と、偏心機構812に連結され当該偏心機構の偏心運動を水平運動に変換する第1のリンク機構813と、偏心機構812に連結され当該偏心機構の偏心運動を上下運動に変換する第2のリンク機構814と、第1のリンク機構813及び第2のリンク機構814に連結され、第1のリンク機構813の水平運動及び第2のリンク機構814の上下運動を合成して水平方向において運動軌跡を楕円形にして、その楕円運動を糸寄せ801に伝達する糸寄せ取付腕815とを備えている。
【0127】
偏心機構812は、上述した図3(A)、(B)、図4に示す鉤針・蓋針駆動機構100の針棒クランクロッド103を釣合錘101に連結するクランクロッドピン102の代わりに糸寄せ駆動偏心軸816を利用する。糸寄せ駆動偏心軸816は、針棒クランクロッド103を釣合錘101に連結するクランクロッドピン816aと、一端にクランクロッドピン816aが固定され他端に偏心軸816cが固定された腕部816bとから構成されている。
【0128】
第1のリンク機構813は、糸寄せ駆動偏心軸816の偏心軸816cに係合する長穴817aが一端に形成された糸寄せ水平揺動腕817を備えている。長穴817aは長手方向が上下方向となるように糸寄せ水平揺動腕817に形成されている。この糸寄せ水平揺動腕817は、一端となる長穴817aが力点、他端が作用点、一端と他端との間が支点となるように構成されている。糸寄せ水平揺動腕817の支点を支持する糸寄せ機構取付台818がアーム2に固定されている。糸寄せ水平揺動腕817の支点となる部位は、糸寄せ機構取付台818の所定位置に設けられた糸寄せ支軸819に回動自在に支持されている。したがって、糸寄せ水平揺動腕817の他端は糸寄せ支軸819を支点にして送り歯601の送りの運動方向と同一方向である水平方向で往復揺動することができる。
【0129】
第2のリンク機構814は、糸寄せ駆動偏心軸816の偏心軸816cに係合する長穴820aが一端に形成された糸寄せ上下駆動腕820を備えている。長穴820aは長手方向がほぼ水平方向となるように糸寄せ上下駆動腕820に形成されている。この糸寄せ上下駆動腕820は、一端となる長穴820aが力点、他端が作用点、一端と他端との間が支点となるように構成されている。糸寄せ上下駆動腕820の支点は糸寄せ水平揺動腕817の一端に連結ピン等の連結部材821によって回動自在に連結されている。また、糸寄せ上下駆動腕820の作用点には、上下方向に配置された糸寄せ上下揺動腕822の上端822aが連結ピン等の連結部材823によって回動自在に連結されている。したがって、糸寄せ上下駆動腕820の他端は連結部材821を支点にして上下方向に往復揺動することができるので、糸寄せ上下駆動腕820の他端に連結された糸寄せ上下揺動腕822は上下方向で往復運動することができる。
【0130】
糸寄せ取付腕815は、T字形に形成され横腕の配置方向が送り歯601の送りの運動方向と直交する方向で、一方の横腕端815aは連結ピン等の連結部材824で糸寄せ水平揺動腕817の他端に回動自在に連結され、他方の横腕端815bには連結ピン等の連結部材825で糸寄せ上下揺動腕822の下端822bが回動自在に連結されている。また、糸寄せ取付腕815の縦腕の配置方向は垂直方向で、先端815cに糸寄せ801が固定されている。
【0131】
このように構成された糸寄せ機構800Bは糸寄せ機構800Aと同様で図29に示すように、上軸5が1回転する間に糸寄せ811の先端部811aを運動軌跡830の楕円運動により押え金501上で1周させるもので、上下方向に直線運動する鉤針13に干渉することなく糸寄せ811の先端部811aを楕円運動させることができる。具体的には、釣合錘101が上軸5によって回転すると、糸寄せ駆動偏心軸816のクランクロッドピン816aの軸心と偏心軸816cの軸心との距離が、釣合錘101の上軸5による回転中心と糸寄せ駆動偏心軸816のクランクロッドピン816aを嵌め込む穴の中心との距離より短いので、糸寄せ駆動偏心軸816の偏心軸816cは円運動する。
【0132】
糸寄せ駆動偏心軸816の偏心軸816cが円運動すると、糸寄せ水平揺動腕817の他端は長穴817aにより糸寄せ支軸819を支点にして送り歯601の送りの運動方向と同一方向である水平方向に往復揺動するので、当該糸寄せ水平揺動腕817の他端に連結された糸寄せ取付腕815の縦腕端815cも送り歯601の送りの運動方向と同一方向である水平方向で往復揺動を行うことになる。また、糸寄せ駆動偏心軸816の偏心軸816cが円運動すると、糸寄せ上下駆動腕820の他端は長穴820aにより連結ピン821を支点にして上下方向に往復揺動するので、糸寄せ上下駆動腕820の他端に連結された糸寄せ上下揺動腕822は上下方向で往復運動することになる。糸寄せ上下揺動腕822が上下方向で往復運動すると、当該糸寄せ上下揺動腕822の下端822bに連結された糸寄せ取付腕815の他端815bが上下方向に往復揺動するので、当該糸寄せ取付腕815の縦腕端815cは送り歯601の送りの運動方向と直交する方向である水平方向で往復揺動を行うことになる。
【0133】
したがって、第1のリンク機構813及び第2のリンク機構814による2つの往復揺動が合成されると、糸寄せ811の先端部811aは図29に示すような運動軌跡830の楕円運動を水平方向において行うことができるので、第2ストロークにおいて鉤針13が上死点から下降する際に糸捕捉鉤13aで捕捉された縫糸を鉤針13の針先と被縫製体の間で糸寄せ811の先端部811aで掬って糸寄せすることが可能になる。
【0134】
また、上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいては、鉤針13が均質でない被縫製体や極厚の被縫製体を貫通する場合には屈曲する虞があるので、糸捕捉鉤13aで捕捉されていた縫糸20を半回転正転する半回転釜200の剣先205aで掬うにあたり鉤針13が半回転釜200の剣先205aから離れた方向に針落ちする現象が発生する可能性がある。そこで、図30、図31(A)、(B)に示すように、内釜205を半回転で正転、逆転するように駆動する内釜ドライバー241に、鉤針13が被縫製体に貫通した後、鉤針13が被縫製体に貫通することによって生じる暴れを針落ち位置に矯正する針受242を設けるとよい。この内釜ドライバー241及び針受242は、上述した半回転釜200で内釜ドライバー203と交換することで利用することができる。
【0135】
通常、一般的なミシン針と半回転釜で被縫製体を縫製するにあたり、針の針穴に刺し通された針糸を釜の剣先で掬う時、針糸にループができそのループを釜の剣先で掬うので、多少鉤針が針落ち位置からずれても目飛びが発生することはなかったが、針が半回転釜の剣先方向に屈曲してその剣先に衝突することを防止するため、内釜ドライバーが有する針落ち腕の針落ち位置側に面取りを施している。
【0136】
したがって、針受242が設けられる内釜ドライバー241は、鉤針13が第2ストロークにおいて被縫製体に貫通した時に鉤針13の針落ち位置に位置する湾曲した針落ち腕241aを備え、鉤針13が半回転釜200の剣先方向に屈曲してその剣先205aに衝突することを防止するため、当該針落ち腕241aの針落ち位置側に面取り241bが施されている。
【0137】
しかしながら、上述した1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法では、鉤針13の第2ストロークにおいて糸捕捉鉤13aで捕捉されていた縫糸20を半回転正転する半回転釜200の剣先205aで掬うには(図18(P))、縫糸20にループが生じないタイミングで行うので、鉤針13の屈曲によって目飛びが発生する虞がある。そこで、針受242は湾曲して形成し針落ち腕241aとほぼ平行になるように内釜ドライバー241の所定位置に固定する。これにより、鉤針13を針落ち位置へと導くことが可能となるので、目飛びを防止することができる。なお、針受242にも鉤針13の針落ち位置側に面取り242aを施し、鉤針13が半回転釜200の剣先より離れる方向に屈曲して目飛びが発生することを防止する。
【0138】
また、上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいては、天秤のように往復運動して縫糸20に弛みを与えたり縫目を引き締めたりする糸引出作動子401を備えているが、縫目ピッチを送り量設定機構300で変更しても糸引出作動子401による糸締量が常時一定になっている。そこで、図32、図33に示すように、送り量設定機構300によって設定された縫目ピッチに応じて糸引出作動子401の糸締量を調節する糸締調節機構420を備えるとよい。
【0139】
糸締調節機構420は、糸引出駆動機構400の構成要素である糸引作動子駆動ロッド404の代わりに、糸引出作動子駆動ロッド423の一端を糸引出作動子駆動ロッド台405に固定し、この糸引出作動子駆動ロッド423の他端と糸引出作動子駆動腕403の腕端403aとを糸引出作動子調節ロッド424で連結する。具体的には、糸引出作動子駆動ロッド423の他端と糸引出作動子調節ロッド424の一端とは連結角駒軸422で回動可能に連結され、糸引出作動子調節ロッド424の他端と糸引出作動子駆動腕403の腕端403aとは段ピン414で回動自在に連結されている。また、連結角駒軸422には水平方向が長手方向となる略直方体に形成された角駒421が回動自在に嵌め込まれ、角駒421は糸引出作動子駆動ロッド423の上方に位置している。なお、連結角駒軸422はフランジを中心にして軸が両面から突出するように形成することで、角駒421と糸引出作動子駆動ロッド423とを分離させることができる。角駒421は水平方向が長手方向となる略直方体に形成された糸引出作動子調節枡425の下面に形成されたコの字形溝425aに摺動自在に嵌め込まれている。このコの字形溝425aも長手方向に沿って形成されている。また、糸引出作動子調節枡425の上面にはT字形の糸引出作動子調節板426の横腕426aが固定されている。
【0140】
糸引出作動子調節板426が固定された糸引出作動子調節枡425は、ベッド3の所定位置に固定された糸引出作動子調節台板428にスラスト受429によって上下方向に配置して固定されている糸引出作動子調節枡軸427に回動自在に嵌め込まれている。また、糸引出作動子調節枡軸427は糸引出作動子調節板426の穴426cを貫通して糸引出作動子調節枡425の穴425bに挿入し固定され、糸引出作動子調節台板428に対して上下方向でガタなく回動自在に嵌め込まれている。なお、糸引出作動子調節枡425は角駒421に載せられた状態なので、糸引出作動子調節枡軸427から離脱することはない。
【0141】
さらに、糸引出作動子調節板426の縦腕端426bと、縫目送り調節レバー301とは調節ワイヤー431によって連結されている。この調節ワイヤー431は、例えば、ワイヤーガード430に挿入され、両端にはワイヤー端子432が固定されている。一方のワイヤー端子432は糸引出作動子調節板426の縦腕端426bに固定され、他方のワイヤー端子432は縫目送り調節レバー301の力点となる部位と支点となる部位との間に固定されている。また、調節ワイヤー431の一方のワイヤー端子432側はワイヤーガイド止め433によって糸引出作動子調節台板428に移動可能に固定され、他方のワイヤー端子432側はワイヤーガイド止め433が取付板434によってアーム2に移動可能に固定されている。なお、縫目送り調節レバー301の力点となる部位には送り調節レバーツマミ323が固定されている。
【0142】
このように構成された糸締調節機構420による糸締調節動作について、図34(A)、(B)に基づき説明する。図34(A)は、糸締調節機構420をミシンの下から見た図で、上方に位置する図面は糸締調節機構420で縫目を引き締める場合を、下方に位置する図面は縫目に弛みを与える場合をそれぞれ示している。図34(B)は、糸締調節機構420をミシンの下から見た図で、a点は糸引出作動子駆動カム407の回転中心、b点はカムフォロア406の回転中心、c点は糸引出作動子調節枡425の回転中心、d点は糸引出作動子駆動ロッド423と糸引出作動子調節ロッド424を連結する連結角駒軸422の中心点、e点は糸引出作動子調節ロッド424と糸引出作動子駆動腕403を連結する連結中心点、f点は糸引出作動子駆動腕403の回転中心点である。また、図34(B)に示すL1は、a点からd点までの長さで、カム構407aの最大径CamRlから糸引出作動子駆動ロッド台405のカムフォロア406からの固定までの長さと、糸引出作動子駆動ロッド423の固定からの長さと、糸引出作動子調節ロッド424の長さとを加算した長さであり、L2は、L1がa点を中心に角度βだけ回転した場合におけるa点からd’点までの長さで、L2=cosβ×L1である。
【0143】
この糸締調節機構420は、調節ワイヤー431が引っ張られると糸引出作動子調節板426の縦腕端426bを引っ張るので、糸引出作動子調節枡425は糸引出作動子調節枡軸427を回転中心にして、図34(A)、(B)中、時計方向に回転し、長手方向を糸引出作動子駆動ロッド423の長手方向と同じ方向に合わせることができる。この状態で、中間軸8(図32、図33)が回転すると、糸引出作動子駆動ロッド台405はカムフォロア406が糸引出作動子駆動カム407のカム溝407aの形状に応じて糸引出作動子調節ロッド424を直線往復運動させるので、糸引出作動子401を揺動させることができる。この際、糸引出作動子調節枡425の長手方向と糸引出作動子駆動ロッド423の長手方向とは同一方向に配置されているので、糸引出作動子駆動ロッド423及び糸引出作動子調節ロッド424と連結角駒軸422によって装着された角駒421は、糸引出作動子調節枡425のコの字形溝425a内を最大移動距離によって直線往復運動することになる。
【0144】
具体的には図34(B)に示すように、糸引出作動子駆動カム407のカム溝407aによる変移量Hが、当該カム溝407aの最大怪CamRlから最小径CamRsを減算した値となるので(H=CamRl−CamRs)、糸引出作動子調節桝425が糸引出作動子駆動ロッド423の長手方向と同一方向に配置されると、カム溝407aによる変移量Hはそのまま糸引出作動子調節ロッド424に伝達され糸引出作動子調節ロッド424に連結される糸引出作動子駆動腕403を揺動させることができる。したがって、長さL1で糸引出作動子駆動腕403の腕端403aを揺動させることができるので、この糸引出作動子駆動腕403が固定される糸引出作動子揺動軸402に固定された糸引出作動子401の糸掛部401aの揺動基準位置をNpとすると揺動幅が最大のPaになり、縫目を引き締めることができる。
【0145】
また、この糸締調節機構420は、調節ワイヤー431が押されると糸引出作動子調節板426の縦腕端426bを押すので、糸引出作動子調節枡425は糸引出作動子調節枡軸427を回転中心にして、図中、反時計方向に回転し、長手方向を糸引出作動子駆動ロッド423の長手方向に対して角度θだけ傾斜させることができる。この状態で、中間軸8が回転すると、糸引出作動子駆動ロッド台405はカムフォロア406が糸引出作動子駆動カム407のカム溝407aの形状に応じて糸引出作動子調節ロッド424を直線往復運動させるので、糸引出作動子401を揺動させることができる。この際、糸引出作動子調節枡425の長手方向は糸引出作動子駆動ロッド423の長手方向に対して角度θだけ傾斜して配置されているので、糸引出作動子駆動ロッド423及び糸引出作動子調節ロッド424と連結角駒軸422によって装着された角駒421は、糸引出作動子調節枡425のコの字形溝425a内を傾斜方向で直線往復運動することになる。
【0146】
具体的には図34(B)に示すように、糸引出作動子調節桝425が角度θだけ傾斜した位置に配置されると、糸引出作動子駆動ロッド423と糸引出作動子調節ロッド424を連結する連結角駒軸422の中心d点が角駒422の糸引出作動子調節桝425の溝425a内を摺動するので、連結角駒軸422の中心点となるd点がd’点に移動する。このように、連結角駒軸422の中心点となるd点がd’点に移動すると、連結された糸引出作動子調節ロッド424も移動して糸引出作動子調節ロッド424と連結する糸引出作動子駆動腕403を揺動させる移動量Hが減少することになるので、糸引出作動子調節ロッド424と糸引出作動子駆動腕403の腕端403aを連結する連結中心点となるe点がe’点までしか移動しないことになる。したがって、糸引出作動子駆動腕403が固定される糸引出作動子揺動軸402に固定された糸引出作動子401の揺動量は少なくなるので、揺動基準位置Npからの糸引出作動子401の糸掛部401aまでの揺動幅PaがPbとなり、縫目に弛みを与えることができる。
【0147】
なお、図34(A)、(B)においては、糸引出作動子調節桝425の傾斜方向が上方になっていたが、これに限らず、糸締調節機構420の設定次第で下方に傾斜させて縫目に弛みを与えることもできる。
【0148】
また、図34(B)に示すように、カム構407aの最小径CamRsによるタイミング位置で連結角駒軸422の中心点と糸引出作動子調節桝425の回転中心とは同一点になっているが、これに限らず、カム溝407aの最小径CamRsによるタイミング位置で糸引出作動子駆動ロッド423と糸引出作動子調節ロッド424を連結する連結角駒軸422の中心点と糸引出作動子調節桝425の回転中心は同一点でなくとも正常に動作させることができる。
【0149】
また、上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいては、被縫製体を直線送りしかすることができなかった。そこで、図35(A)、(B)に示すように、鉤針13が上死点から下降して被縫製体に貫通し、下死点から上昇して被縫製体から抜け出す前に、被縫製体を針板12上で押圧保持する押え金501の押圧保持を解除して被縫製体の送り方向を、鉤針13を回動軸として手動回動操作するための回動操作/直線送り切換機構540を備えてもよい。このような回動操作送りのことを、「フリーカーブ縫い」と言う。フリーカーブ縫いは、被縫製体の送り方向を縫製者の任意の方向に操作できるようになるので、一定の縫目ピッチ、縫目間ピッチにて小回り曲線縫いを容易にすることができる。
【0150】
回動操作/直線送り切換機構540は図35(A)、(B)、図36に示すように、上軸5の回転運動を押え機構500に伝達させ、鉤針13が上死点から下降して被縫製体に貫通し、下死点から上昇して被縫製体から抜け出す前に、被縫製体を針板12上で押圧保持する押え金501の押圧保持を解除して鉤針13を回動軸として手動回動操作可能にする押圧解除機構520を有している。
【0151】
押圧解除機構520は、上軸5の他端側に押圧解除カム駆動台530が固定され、押圧解除カム駆動台530の側面側(図中、左側)には押圧解除カム528が上軸5上を摺動可能に当該上軸5に嵌め込まれている。押圧解除カム528は平面カムで、凹部528aが円周面上に形成されたプーリのような形状から成る本体528bと、本体528bの一方の側面(図中、左側)にポリダイン曲線(Polydyne curve)のような卵形に形成された円弧カム部528cと、円弧カム部528cの側面(図中、左側)に設けられ本体528bの回転中心と同心となる円筒部528dとから構成されている。なお、円弧カム部528cの最小径円弧の半径と円筒部528dの半径とは同径なので、その部位においては同一面となっている。この押圧解除カム528は上軸5上で回転しないように、上軸5上に固定された押圧解除カム駆動台530の側面(図中、左側)に突き出した状態で固定されるピン529を摺動可能に嵌め込んで上軸5の回転運動を伝達することができるピン穴528eが形成されている。
【0152】
また、押圧解除機構520は、押え機構500の押え棒抱き505と押え足502との間に押圧解除板522が押え棒503に移動可能に嵌め込まれている。押圧解除板522と押え棒抱き505との間には押圧解除バネ521が押え棒503に嵌め込まれ、押圧解除板522を下方に移動させるように弾性力を与えることができる。また、アーム2には上軸5の回転運動を押え機構500に伝達させるための解除軸526が、軸方向が水平方向になるように設置されている。この解除軸526は軸メタル525でアーム2に回動自在に設置されている。解除軸526の一端には押圧解除カム528の円弧カム部528cと円筒部528dに個別に接触させる押圧解除カム用アーム527が固定され、他端には押圧解除腕523が固定されている。押圧解除腕523の腕端523aは押圧解除板522に揺動可能に段ねじ等の連結部材によって連結されている。
【0153】
このような押圧解除機構520を操作して、直線送りと手動回動操作送りとを切り換えるために回動操作/直線送り切換機構540は、直線送りと手動回動操作送りとを切り換える切換レバー542と、押圧解除カム528の凹部528aに嵌り込むと共に切換レバー542の切換操作に連動する切換ピン546と、切換レバー542及び切換ピン546が設置されアーム2に固定される切換基台541とを備えている。
【0154】
切換基台541は例えばコの字形に形成されており、対向する2つの板面がアーム2に固定され垂直方向に位置する板面には1つの穴541aと、穴541aの回りに配置された2つの円弧状の長穴541b、541cとが設けられ、上軸5が配置された側とは逆側となる板面の穴541aの上部にはスイッチングレバー545が揺動可能に一端545aを段ねじ等の連結部材によって連結されている。スイッチングレバー545の他端545bには切換ピン546が固定され長穴541bを挿通するように構成されている。なお、切換ピン546はスイッチングレバー545が揺動することにより揺動する範囲が長穴541bの長手方向の長さに限定されている。このスイッチングレバー545の一端545aと他端545bとの間には長穴545cが設けられ、この長穴545cには穴541aに挿入された状態で切換基台541に固定される切換軸メタル544が挿入されている。切換軸メタル544には、一端に切換レバー542が固定され他端に2つのアーム543a、543bが形成された切換軸543が回動自在に挿入されている。なお、切換レバー542は切換基台541のスイッチングレバー545が設けられた方向に配置されている。
【0155】
切換軸543の一方のアーム543aは切換基台541の長穴541cに揺動可能に挿入され、この一方のアーム543aは、切換軸543が回動することにより揺動する範囲が長穴541cの長手方向の長さに限定されている。また、切換軸543の他方のアーム543bにはバネ掛け549が固定され、バネ掛け549には切換バネ548の一端が掛け止めされ、切換バネ548の他端は切換ピン546に掛け止めされている。この切換バネ548は常時、バネ掛け549と切換ピン546とを近づけるように弾性力を与えている。
【0156】
このように構成された回動操作/直線送り切換機構540は、切換レバー542が図35(A)の位置(図中、左側方向)に停止している時には右側に傾倒した切換軸543の他方のアーム543bのバネ掛け549に掛け止めされた切換バネ548の弾性力により、スイッチングレバー545の切換ピン546が押圧解除カム528を図中右側に移動させるので、押圧解除カム528と押圧解除カム駆動台530とは接触する。また、切換レバー542が図35(B)の位置に停止している時には左側に傾倒した切換軸543の他方のアーム543bのバネ掛け549に掛け止めされた切換バネ548の弾性力により、スイッチングレバー545の切換ピン546が押圧解除カム528を図中左側に移動させるので、押圧解除カム528と押圧解除カム駆動台530とは離隔する。
【0157】
この回動操作/直線送り切換機構540でフリーカーブ縫いを行う場合には、切換レバー542を図35(A)の位置から反時計方向(左回転方向)に回転させて図35(B)の位置に切り換える。
【0158】
この時、押圧解除カム528の円弧カム部528cの円筒部528dと同一面となっている箇所以外が上方に位置している場合には、当該円弧カム部528cが押圧解除カム用アーム527のアーム部に平行移動する際に、当該アーム部に当接するので、押圧解除カム528は移動することができない。しかし、切換軸543の他方のアーム543bは、切換レバー542が反時計方向に回転すると反時計方向に揺動することができる。この状態で上軸5を回転すると、押圧解除カム528の円弧カム部528cの円筒部528dと同一面となっている箇所が押圧解除カム用アーム527のアーム部に回転移動してくるので、円弧カム部528cは押圧解除カム用アーム527のアーム部に平行移動可能となり、他方のアーム543bのバネ掛け549と切換バネ548によって連結されたスイッチングレバー545の切換ピン546は、切換バネ548の弾性力により時計方向(右回転方向)に揺動させられる。
【0159】
具体的には、切換軸543の他方のアーム543bが当該切換軸543を回転中心にして反時計方向に揺動すると、当該他方のアーム543bが切換軸543の回転中心より左方向に移動するので、切換ピン546が切換バネ548の弾性力により引っ張られて、スイッチングレバー545の切換基台541に対する連結点を揺動中心にして時計方向に揺動することになる。切換ピン546が時計方向に揺動すると、当該切換ピン546が係合した押圧解除カム528が図35(A)の位置から左方向となる図35(B)の位置へと移動する。押圧解除カム528が左方向に移動すると、押圧解除カム用アーム527のアーム部が円弧カム部528cに接触するので、円弧カム部528cのカム形状に基づき押圧解除カム用アーム527のアーム部を、解除軸526を揺動中心にして上下方向に往復揺動させる。押圧解除カム用アーム527のアーム部が上下方向に往復揺動すると、押圧解除腕523の腕端523aも上下方向に往復揺動するので、腕端523aに連結されている押圧解除板522は押圧解除バネ521の弾性力により押え金501を上下運動させることができる(図37(B)、(C))。したがって、鉤針13が上死点から下降して被縫製体に貫通し、下死点から上昇して被縫製体から抜け出す前に、被縫製体を針板12上で押圧保持する押え金501の押圧保持を解除することができるようになる。なお、押圧解除板522は円弧カム部528cのカム形状に基づき上昇すると、押圧解除バネ521の弾性力が押え圧力調節バネ504の弾性力より強いので、押え棒抱き505は上昇し押え棒503に固定された押え金501の押圧保持を解除できる。したがって、押え圧力調節ネジ508を緩めると押え圧力調節バネ504の弾性力が弱まるので、押え金501の上昇高さを高くすることができる。
【0160】
また、フリーカーブ縫いに設定されている切換レバー542を図35(B)の位置から時計方向に回転させて図35(A)の位置に切り換えると、直線縫いができるようになる。切換レバー542が時計方向に回転すると、切換軸543の他方のアーム543bが時計方向に揺動するので、この他方のアーム543bのバネ掛け549と切換バネ548によって連結されたスイッチングレバー545の切換ピン546は、切換バネ548の弾性力により反時計方向に揺動させられる。具体的には、切換軸543の他方のアーム543bが当該切換軸543を回転中心にして時計方向に揺動すると、当該他方のアーム543bが切換軸543の回転中心より右方向に移動するので、切換ピン546が切換バネ548の弾性力により引っ張られて、スイッチングレバー545の切換基台541に対する連結点を揺動中心にして反時計方向に揺動することになる。切換ピン546が反時計方向に揺動すると、当該切換ピン546が係合した押圧解除カム528が図35(B)の位置から右方向となる図35(A)の位置へと移動する。押圧解除カム528が右方向に移動すると、押圧解除カム用アーム527のアーム部が円弧カム部528cから外れて円筒部528dに接触するので、押圧解除カム用アーム527のアーム部はその位置で停止したままである。したがって、押え金501は押圧状態を保持できる(図37(A))。
【0161】
また、上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいては、鉤針13の第1ストロークにおいて送り歯601、押え金501により被縫製体をハンドステッチ縫目のための縫目ピッチ送りし、鉤針13の第2ストロークにおいて送り歯601、押え金501により被縫製体をハンドステッチ縫目間のための縫目間ピッチ送りしているので、縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に変更することができなかった。そこで、図38、図41に示すように、鉤針13が被縫製体から抜け出しているとき、押え金501の押圧保持を解除すると共に被縫製体を送る送り歯601を退避して縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら被縫製体を手動送りするための手動送り/直線送り切換機構740を備えてもよい。このような手動送りのことを、「フリーモーション縫い」と言う。フリーモーション縫いは、被縫製体の送り方向を縫製者の任意の方向に操作できるようになるので、縫目ピッチ、縫目間ピッチを任意に変更しながら小回り曲線縫いを容易にすることができる。
【0162】
手動送り/直線送り切換機構740は図38、図39に示すように、上軸5の回転運動を押え機構500及び布送り機構600に伝達させ、鉤針13が被縫製体から抜け出しているとき、押え金501の押圧保持を解除して縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら被縫製体を手動送りする押圧解除機構720Aと、鉤針13が被縫製体から抜け出しているとき、被縫製体を送る送り歯601を退避して縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら被縫製体を手動送りする送り歯退避機構720Bとを備えている。
【0163】
押圧解除機構720Aは、上軸5の他端側に円板型の押圧解除カム駆動台730が固定され、押圧解除カム駆動台730の側面側には押圧解除カム728が上軸5上を摺動可能に当該上軸5に嵌め込まれている。押圧解除カム728は偏心カムで、凹部728aが円周面内に形成されたプーリのような形状から成る本体728bと、本体728bの一方の側面(図中、左側)に設けられ本体728bの回転中心とは偏心した位置に回転中心を有する円筒状のカム部728cと、カム部728cの側面(図中、左側)に設けられ本体728bの回転中心と同心でカム部728cより小径の円筒部728dとから構成されている。なお、カム部728cと円筒部728dは同一面となる箇所がある。この押圧解除カム728は上軸5上で回転しないように、押圧解除カム駆動台730の側面(図中、左側)に突き出した状態で固定されたピン729を摺動可能に嵌め込むことができるピン穴728eが形成されている。
【0164】
また、押圧解除機構720Aは、押圧解除機構520と同様に、押え棒抱き505と押え足502との間に押圧解除板522が押え棒503に移動可能に嵌め込まれている。押圧解除板522と押え棒抱き505との間には押圧解除バネ521が押え棒503に嵌め込まれ、押圧解除板522を下方に移動させるように弾性力を与えることができる。また、アーム2には上軸5の回転運動を押え機構500に伝達させるための解除軸526が、軸方向が水平方向になるように設置されている。この解除軸526は軸メタル525でアーム2に回動自在に設置されている。解除軸526の一端には押圧解除カム728のカム部728cと円筒部728dに個別に接触させる押圧解除用二又731が固定され、他端には押圧解除腕523が固定されている。押圧解除用二又731は上部のアーム731aと下部のアーム731bとが、押圧解除カム728のカム部728cをほぼ接触した状態で移動可能に嵌合し、円筒部728dに対しては空間ができるように形成されている。また、押圧解除腕523の腕端523aは押圧解除板522に揺動可能にネジ等の連結部材によって連結されている。
【0165】
このような押圧解除機構720Aを操作して、直線送りと手動送りとを切り換えるために手動送り/直線送り切換機構740は、直線送りと手動送りとを切り換える切換レバー742と、押圧解除カム728の凹部728aに嵌り込むと共に切換レバー742の切換操作に連動する切換ピン746と、切換レバー742及び切換ピン746が設置されアーム2に固定される切換基台741とを備えている。
【0166】
切換基台741は例えばコの字形に形成されており、対向する2つの板面がアーム2に固定され垂直方向に位置する板面の左側には1つの穴741aと、穴741aの回りに配置された2つの円弧状の長穴741b、741cとが設けられ、ミシンの前面側となる板面の穴741aの上部にはスイッチングレバー745が揺動可能に一端745aを段ネジ等の連結部材によって連結されている。スイッチングレバー745の他端745bには切換ピン746が固定され長穴741bを挿通するように構成されている。なお、切換ピン746はスイッチングレバー745が揺動することにより揺動する範囲が長穴741bの長手方向の長さに限定されている。このスイッチングレバー745の一端745aと他端745bとの間には長穴745cが設けられ、この長穴745cには穴741aに挿入された状態で切換基台741に固定される切換軸メタル744を挿入している。切換軸メタル744は、一端に切換レバー742が固定され他端に2つのアーム743a、743bが形成された切換軸743が回動自在に挿入されている。なお、切換レバー742は切換基台741のスイッチングレバー745が設けられたミシンの前面側に配置されている。
【0167】
切換軸743の一方のアーム743aは切換基台741の長穴741cに揺動可能に挿入され、この一方のアーム743aは、切換軸743が回動することにより揺動する範囲が長穴741cの長手方向の長さに限定されている。また、切換軸743の他方のアーム743bにはバネ掛け749が固定され、バネ掛け749には切換バネ748の一端が掛け止めされ、切換バネ748の他端は切換ピン746に掛け止めされている。この切換バネ748は常時、バネ掛け749と切換ピン746とを近づけるように弾性力を与えている。
【0168】
送り歯退避機構720Bは、押圧解除カム駆動台730から所定長さだけ離れた上軸5に送り歯退避カム駆動台723が固定され、送り歯退避カム駆動台723の側面側(図中、右側)には送り歯退避カム721が上軸5上を摺動可能に当該上軸5に嵌め込まれている。送り歯退避カム721は偏心カムで、凹部721aが円周面上に形成されたプーリのような形状から成る本体721bと、本体721bの一方の側面(図中、右側)に設けられ本体721bの回転中心とは偏心した位置に回転中心を有する円筒状のカム部721cと、カム部721cの側面(図中、右側)に設けられ本体721bの回転中心と同心でカム部721cより小径の円筒部721dとから構成されている。なお、円筒部721dの半径はカム部721cの最小半径と同一径なので、カム部721cと円筒部721dは同一面となる箇所がある。この送り歯退避カム721は上軸5の軸方向に摺動可能で当該上軸5と一体的に回転できるように、送り歯退避カム駆動台723の側面(図中、右側)に突き出した状態で固定されたピン722を摺動可能に嵌め込むことができるピン穴721eが形成されている。
【0169】
また、送り歯退避機構720Bは、布送り駆動機構700の上下送り縦ロッド714に換えて上下送り縦ロッド726を使用する。この上下送り縦ロッド726の一端には長方形の穴726aが形成されて送り歯退避カム721のカム部721cが短辺に対してほぼ接触した状態で移動可能に嵌合され、その上部には長穴726bが形成されてアーム2に固定された縦ロッド案内台724に縦ロッド案内ピン725で連結されている。なお、穴726aにカム部721cが嵌合しても当該穴726aの長辺方向が水平方向となり、この水平方向に大きな空間が生じることになる。したがって、送り歯退避カム721が回転してカム部721cが偏心運動すると、上下送り縦ロッド726は水平方向には移動しないが上下方向には移動することになる。また、長穴726bに縦ロッド案内ピン725が挿入されても当該長穴726bの長手方向が垂直方向となり、この垂直方向に大きな空間が生じるので、上下送り縦ロッド726の穴726aが送り歯退避カム721のカム部721cから円筒部721dに移動した場合には上下送り縦ロッド726を下げることが可能となる。
【0170】
この上下送り縦ロッド726の他端は上下送り軸613の他方に固定された上下送り軸駆動腕715に連結ピン716で回動自在に連結されている。したがって、上軸5が回転すると、送り歯退避カム721のカム部721cが上下送り縦ロッド726の一端を上下運動させるので、上下送り軸駆動腕715が上下送り軸613を往復回転させることができる。
【0171】
また、上下送り軸613には、ねじりコイルバネである送り歯退避バネ727が嵌め込まれ、一方の腕727aがベッド3に固定され他方の腕727bが上下送り縦ロッド726の他端と上下送り軸駆動腕715とを連結している連結ピン716に引っ掛けられており、連結ピン716を常時下方に押すように弾性力を与えている。したがって、上下送り縦ロッド726の穴726aが送り歯退避カム721のカム部721cから円筒部721dに移動した場合には、送り歯退避バネ727が上下送り軸駆動腕715の連結ピン716の連結端を常時下方に下げているので、上下送り縦ロッド726を下がった状態に停止させると共に送り歯601を退避させる位置に停止させることができる。
【0172】
さらに、送り歯退避機構720Bとして、切換基台741の垂直方向に位置する板面の右側には1つの穴741dが設けられ、ミシンの前面側となる板面の穴741dの上部にはスイッチングレバー750が揺動可能に一端750aを段ネジ等の連結部材によって連結されている。スイッチングレバー750の他端750bには、送り歯退避カム721の凹部721aに嵌り込む切換ピン751が固定され、この切換ピン751が切換基台741の外で揺動できるようにスイッチングレバー750が構成されている。このスイッチングレバー750の一端750aと他端750bとの間には長穴750cが設けられ、この長穴750cには穴741dに挿入された状態で切換基台741に固定される切換軸メタル752が挿入されている。切換軸メタル752は、一端に2つのアーム753a、753bが形成された切換軸753が回動自在に挿入されている。なお、切換軸753の2つのアーム753a、753bは、手動送り/直線送り切換機構740の切換軸743と同じ方向に配置されている。
【0173】
切換軸753の一方のアーム753aは、切換基台741の外で揺動できるように当該切換基台741に配置されている。また、切換軸753の他方のアーム753bにはバネ掛け754が固定され、バネ掛け754には切換バネ755の一端が掛け止めされ、切換バネ755の他端は切換ピン751に掛け止めされている。この切換バネ755は常時、バネ掛け754と切換ピン751とを近づけるように弾性力を与えている。また、切換軸753の他方のアーム753bに固定されたバネ掛け754と、切換軸743の他方のアーム743bに固定されたバネ掛け749とは連結リンク756によって連結されている。
【0174】
なお、押圧解除機構720Aにおける押圧解除カム728のカム部728cの形状と、押圧解除機構520における押圧解除カム528の円弧カム部528cの形状とが異なっているのは、押圧解除機構720Aは鉤針13が被縫製体21から抜け出している間に押え金501の押圧保持を解除するが、押圧解除機構520は鉤針13が上死点から下降して被縫製体21に貫通し、下死点から上昇して被縫製体21から抜け出す前の間に押え金501の押圧保持を解除するからである。
【0175】
このように構成された手動送り/直線送り切換機構740は、切換レバー742が図40(A)の位置に停止している時には押圧解除カム728と押圧解除カム駆動台730とは接触し送り歯退避カム駆動台723と送り歯退避カム721とは離隔し、切換レバー742が図40(B)の位置に停止している時には押圧解除カム728と押圧解除カム駆動台730とは離隔し送り歯退避カム駆動台723と送り歯退避カム721とは接触している。
【0176】
この手動送り/直線送り切換機構740でフリーモーション縫いを行う場合には、切換レバー742を図40(A)の位置から反時計方向(左回転方向)に回転させて図40(B)の位置に切り換える。この時、押圧解除カム728のカム部728cの円筒部728dと同一面となっている箇所以外が上方に位置している場合には、当該カム部728cが押圧解除用二又731の上部のアーム731aに平行移動する際に、当該上部のアーム731aに引っ掛かるので、押圧解除カム728は移動することができない。しかし、切換軸743の他方のアーム743bは、切換レバー742が反時計方向に回転すると反時計方向に揺動することができる。この状態で上軸5を回転すると、押圧解除カム728のカム部728cの円筒部728dと同一面となっている箇所が押圧解除用二又731の上部のアーム731aに回転移動してくるので、カム部728cは押圧解除用二又731の上部のアーム731aに平行移動可能となり、他方のアーム743bのバネ掛け749と切換バネ748によって連結されたスイッチングレバー745の切換ピン746は、切換バネ748の弾性力により時計方向(右回転方向)に揺動させられる。
【0177】
具体的には、切換軸743の他方のアーム743bが当該切換軸743を回転中心にして反時計方向に揺動すると、当該他方のアーム743bが切換軸743の回転中心より左方向に移動するので、切換ピン746が切換バネ748の弾性力により引っ張られて、スイッチングレバー745の切換基台741に対する連結点を揺動中心にして時計方向に揺動することになる。切換ピン746が時計方向に揺動すると、当該切換ピン746が係合した押圧解除カム728が図40(A)の位置から左方向となる図40(B)の位置へと移動する。
【0178】
押圧解除カム728が左方向に移動すると、押圧解除カム728の円筒部728dとカム部728cの同一半径点で当該押圧解除カム728が上軸5上を摺動して押圧解除用二又731がカム部728cに係合するので、カム部728cの偏心したカム形状に基づき押圧解除用二又731の上部のアーム731aを、解除軸526を揺動中心にして上下方向に往復揺動させる。押圧解除用二又731の上部のアーム731aが上下方向に往復揺動すると、押圧解除腕523の腕端523aも上下方向に往復揺動するので、腕端523aに連結されている押圧解除板522は押圧解除バネ521の弾性力により押え金501を上下運動させることができる(図41(B)、(C))。
【0179】
また、切換レバー742を図40(A)の位置から反時計方向(左回転方向)に回転させて図40(B)の位置に切り換えると、バネ掛け749に一方が連結された連結リンク756も引っ張られて左方向に移動するので、この連結リンク756の他方に連結されたバネ掛け754が切換軸753の他方のアーム753bを、当該切換軸753を回転中心にして反時計方向に揺動させる。切換軸753の他方のアーム753bが当該切換軸753を回転中心にして反時計方向に揺動すると、当該他方のアーム753bが切換軸753の回転中心より左方向に移動するので、切換ピン754が切換バネ755の弾性力により引っ張られて、スイッチングレバー750の切換基台741に対する連結点を揺動中心にして時計方向に揺動することになる。切換ピン754が時計方向に揺動すると、当該切換ピン754が係合した送り歯退避カム721が図40(A)の位置から左方向となる図40(B)の位置へと移動する。送り歯退避カム721が左方向に移動すると、当該送り歯退避カム721の上下送り縦ロッド726の穴726aに位置する部位がカム部721cから円筒部721dに移動するので、上下送り縦ロッド726は送り歯退避バネ727により下がった状態に停止し、送り歯601は常に退避した位置に停止することになる。
【0180】
したがって、切換レバー742をフリーモーション縫いに切り換えた場合には、鉤針13が被縫製体から抜け出しているとき、押え金501の押圧保持を解除すると共に被縫製体を送る送り歯601を退避して縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら被縫製体を手動送りすることができるようになる。
【0181】
また、フリーモーション縫いに設定されている切換レバー742を図40(B)の位置から時計方向に回転させて図40(A)の位置に切り換えると、直線縫いができるようになる。切換レバー742が時計方向に回転すると、切換軸743の他方のアーム743bが時計方向に揺動するので、この他方のアーム743bのバネ掛け749と切換バネ748によって連結されたスイッチングレバー745の切換ピン746は、切換バネ748の弾性力により反時計方向に揺動させられる。具体的には、切換軸743の他方のアーム743bが当該切換軸743を回転中心にして時計方向に揺動すると、当該他方のアーム743bが切換軸743の回転中心より右方向に移動するので、切換ピン746が切換バネ748の弾性力により引っ張られて、スイッチングレバー745の切換基台741に対する連結点を揺動中心にして反時計方向に揺動することになる。切換ピン746が反時計方向に揺動すると、当該切換ピン746が係合した押圧解除カム728が図40(B)の位置から右方向となる図40(A)の位置へと移動する。押圧解除カム728が右方向に移動すると、押圧解除用二又731のアーム731a、731bがカム部728cから外れて円筒部728dに接触するので、押圧解除用二又731はその位置で停止したままである。したがって、押え金501は押圧状態を保持できる(図41(A))。
【0182】
また、切換レバー742を図40(B)の位置から時計方向に回転させて図40(A)の位置に切り換えると、バネ掛け749に一方が連結された連結リンク756が押されて右方向に移動するので、この連結リンク756の他方に連結されたバネ掛け754が切換軸753の他方のアーム753bを、当該切換軸753を回転中心にして時計方向に揺動させる。切換軸753の他方のアーム753bが当該切換軸753を回転中心にして時計方向に揺動すると、当該他方のアーム753bが切換軸753の回転中心より右方向に移動するので、切換ピン754が切換バネ755の弾性力により引っ張られて、スイッチングレバー750の切換基台741に対する連結点を揺動中心にして反時計方向に揺動することになる。
【0183】
切換ピン754が反時計方向に揺動すると、当該切換ピン754が係合した送り歯退避カム721が図40(B)の位置から右方向となる図40(A)の位置へと移動する。この時、送り歯退避カム721のカム部721cの円筒部721dと同一面となっている箇所以外が上方に位置している場合には、当該カム部721cが上下送り縦ロッド726の穴726aに平行移動する際に、当該上下送り縦ロッド726の穴726aの周囲に引っ掛かるので、送り歯退避カム721は移動することができない。しかし、切換軸753の他方のアーム753bは、切換レバー742が時計方向に回転すると時計方向に揺動することができる。この状態で上軸5を回転すると、送り歯退避カム721のカム部721cの円筒部721dと同一面となっている箇所が上下送り縦ロッド726の穴726aに回転移動してくるので、カム部721cは上下送り縦ロッド726の穴726aに平行移動可能となり、他方のアーム753bのバネ掛け754と切換バネ755によって連結されたスイッチングレバー750の切換ピン751は、切換バネ755の弾性力により反時計方向に揺動させられる。
【0184】
具体的には、切換軸753の他方のアーム753bが当該切換軸753を回転中心にして時計方向に揺動すると、当該他方のアーム753bが切換軸753の回転中心より右方向に移動するので、切換ピン751が切換バネ755の弾性力により引っ張られて、スイッチングレバー750の切換基台741に対する連結点を揺動中心にして反時計方向に揺動することになる。切換ピン751が反時計方向に揺動すると、当該切換ピン751が係合した送り歯退避カム721が図40(B)の位置から右方向となる図40(A)の位置へと移動する。送り歯退避カム721が右方向に移動すると、上下送り縦ロッド726の穴726aの壁面がカム部721cに接触するので、カム部721cの偏心したカム形状に基づき上下送り縦ロッド726を上下方向に往復揺動させる。上下送り縦ロッド726が上下方向に往復揺動すると、上下送り軸駆動腕715が上下送り軸613を往復回転させることができる。上下送り軸613が往復回転することで、上下送り二又616が往復揺動して上下送り二又616に嵌り込んだ上下送りローラ608が送り土台602の他端を上下方向に往復運動させる。
【0185】
このように、送り歯退避機構720Bで送り土台602の他端を上下方向に往復運動させると共に、水平送り軸605及び水平送り腕604で送り土台602を水平方向で往復運動させることで、送り土台602に固定された送り歯601は、上昇→前進→下降→後退という送りの四工程運動をすることができる。したがって、切換レバー742を直線送りに切り換えた場合には、直線縫いができるようになる。
【0186】
なお、押圧解除機構720Aと送り歯退避機構720Bは、単独に用いてもフリーモーション縫いは可能である。押圧解除機構720Aのみの場合には、鉤針13が被縫製体から抜け出しているとき、押え金501の押圧保持を解除して縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら被縫製体を手動送りする。また、送り歯退避機構720Bのみの場合には、押え圧力調節ネジ508を緩めて押え金501の押圧力を弱めた調整に設定することで、鉤針13が被縫製体から抜け出しているとき、被縫製体を送る送り歯601を退避して縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら被縫製体を手動送りする。
【0187】
また、上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいては、太糸や撚りの少ない縫糸の縫製する場合に鉤針13の糸捕捉鉤13aで縫糸を捕捉できなくなる虞がある。そこで、図42、図43に示すように、半回転釜200の糸出口212aから引き出され糸引出作動子401によって糸捕捉鉤13aに位置決めされ鉤針13に周接して緊張されている糸を糸捕捉鉤13aに強制挿入する糸挿入子451の糸挿入子駆動機構450を備えるとよい。なお、糸挿入子451の先端451aは縫糸を引っ掛けることができるような凹部に形成され、針板12の下方で往復運動するものである。
【0188】
糸挿入子駆動機構450は、糸引出駆動機構400の糸引出作動子駆動カム407を利用するもので、糸引出作動子駆動カム407の上面に糸挿入子451を揺動するための正面カムである糸挿入子駆動カム溝456を形成させる。なお、この糸引出作動子駆動カム407の下面には糸引出作動子401を揺動させるためのカム溝407aが形成されている。
【0189】
また、糸挿入子駆動機構450は、水平方向に配置され一端452aに糸引出作動子駆動カム407の糸挿入子駆動カム溝456に係合するカムフォロア455が設けられ他端452bに糸挿入子451が固定された糸挿入子駆動腕452と、糸挿入子駆動腕452をベッド3に回動自在に取り付ける糸挿入子駆動腕台453とを備えている。カムフォロア455は、糸挿入子駆動腕452の一端452aに設けられたローラ軸452cと、ローラ軸452cの先端に回動自在に保持され糸引出作動子駆動カム407の糸挿入子駆動カム溝456に嵌入するローラ457とから構成されている。また、糸挿入子駆動腕台453には駆動腕軸454が固定され、この駆動腕軸454に糸挿入子駆動腕452が回動可能に取り付けられている。
【0190】
このように構成された糸挿入子駆動機構450は、糸挿入子駆動腕452が駆動腕軸454を支点にしてカムフォロア455が作用点となり糸挿入子451が力点となり、カムフォロア455が糸引出作動子駆動カム407の糸挿入子駆動カム溝456の形状に応じて糸挿入子駆動腕452を回動させるので、糸挿入子451の先端451aは鉤針13が針板12に載置された被縫製体に貫通し、下死点から上昇する間に、半回転釜200の側方において往復運動することができる。
【0191】
また、上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、鉤針13の第2ストロークにおいて、内釜ドライバーバネ204が固定された内釜ドライバー203の他端と内釜205との間に形成される隙間O2にくぐり入れた縫糸20が、図18(U)に示すような内釜205の半回転正転により緊張状態から弛緩状態に移行することがある。そこで、半回転釜200の内釜205の周囲の一部には、内釜205の剣先205aで掬われて鉤針13の糸捕捉鉤13aより解放された縫糸を内釜205が更に回転することにより半回転釜200にくぐり入れて半回転釜200に巻装されている縫糸に交錯させた後で、半回転釜200からくぐり出る糸を糸締めする前に、半回転釜200にくぐり入れられている縫糸を一時滞留させ、半回転釜200からくぐり出る縫糸を糸引出作動子401が糸締めすることにより一時滞留を解除する凹状の糸滞留部205f(図45)、または凸状の糸滞留部205g(図46)を備えるとよい。
【0192】
凹状の糸滞留部205fや凸状の糸滞留部205gを備える内釜205は図45、図46に示すように、半回転釜なので半円形状であり回転方向の一端側に形成された剣先205aの近傍には糸掛け部205cと共に上爪205d、下爪205eが形成され、上爪205dと下爪205eとで形成される隙間は針落溝205hとなる。凹状の糸滞留部205fは図45に示すように、円弧状の下爪205eの針落溝205h側とは反対となる側面に上述のような糸滞留機能を発揮できるように切り欠かれて形成されている。また、凸状の糸滞留部205gは図46に示すように、円弧状の上爪205dの針落溝205h側とは反対となる側面に上述のような糸滞留機能を発揮できるように突き出して形成されている。
【0193】
このように構成された凹状の糸滞留部205f、凸状の糸滞留部205gは、図18(U)に示すような内釜205の半回転正転した位置になっても図47に示すように、それぞれ縫糸を引っ掛けたままの状態に維持できるので、半回転釜200にくぐり入れられている縫糸を一時滞留させることができ、その後、糸引出作動子401で半回転釜200からくぐり出る縫糸を糸締めすることで縫糸の一時滞留を解除することができるようになる。したがって、鉤針13の第2ストロークにおいて、内釜ドライバーバネ204が固定された内釜ドライバー203の他端と内釜205との間に形成される隙間O2にくぐり入れた縫糸20は、内釜205が半回転正転しても緊張状態を保つことができ、半回転釜200にくぐり入れられている縫糸20と糸出口212aから引き出される縫糸20を弛緩させることなく、糸引出作動子401の糸掛部401aで捕捉できる。なお、凹状の糸滞留部205f、凸状の糸滞留部205gは何れか一方が設けられていればよい。
【0194】
次に、上述した蓋針駆動機構130、糸寄せ機構800A、800B、針受242、糸締調節機構420、回動操作/直線送り切換機構540、手動送り/直線送り切換機構740、糸挿入子駆動機構450、凹状の糸滞留部205fや凸状の糸滞留部205gを備えた内釜205を適宜選択して組み込んだ1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作を、1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を中心にして説明する。
【0195】
例えば、回動操作/直線送り切り換えできるフリーカーブ縫い用の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンについて、主に図48、図49、図18(A)〜(W)、図52(A)、(B)に基づき説明する。図48はフリーカーブ縫い用の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの全体斜視図で、図49はフリーカーブ縫い用の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの駆動系を示すブロック図で、図52(A)は鉤針13、半回転釜200、糸引出作動子401、蓋針14及び内釜205のモーションダイヤグラムで、図52(B)は鉤針13、半回転釜200、糸寄せ801及び糸挿入子451のモーションダイヤグラムである。なお、図18(A)〜(W)は上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンと同じなので説明は省略する。また、図48に示す全体斜視図は上述した図1に示す全体斜視図と、布送り駆動機構700、送り量設定機構300及び送りモード切換機構350で使用する部品の形状等が異なっているが、製品化にあたり形状を改良しているだけであり、構成及び動作は同一であり、また、内釜205を除く半回転釜200、押え機構500、布送り機構600、糸引出駆動機構400は構成及び動作が同一なので、同一符号を付して説明は省略する。さらに、このフリーカーブ縫い用の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンでは、糸寄せ機構800Aと、押圧解除機構520を有する回動操作/直線送り切換機構540とを使用する。
【0196】
また、釜駆動機構220は図1に示す全体斜視図においては、釜駆動扇型歯車233が釜軸歯車224の下方で噛み合っていたが、図48に示す全体斜視図では釜駆動機構220は、釜駆動扇型歯車233が釜軸歯車224の下方で噛み合うように構成されている。このような釜駆動機構220は図50、図51に示すように、図14、図15に示す釜駆動機構220の扇型歯車軸221の代わりに、釜駆動扇型歯車233が釜軸歯車224の下方で噛み合うようなベッド3の位置に設置される扇型歯車軸235が使用される。したがって、図50、図51に示す釜駆動縦ロッド228は図14、図15に示す釜駆動縦ロッド228より短くなっている。
【0197】
さらに、縫目送り調節レバー301、縫目間送り調節レバー302の力点となる部位には、送り調節レバーツマミ323が装着されている。
【0198】
図48、図49において、モータMにより駆動ベルトMBを介して駆動される従動プーリ4が、鉤針13側より見て時計方向に回転すると、上軸5の回転により鉤針・蓋針駆動機構130、布送り駆動機構700、釜駆動機構220、糸引出駆動機構400、回動操作/直線送り切換機構540、糸寄せ機構800A及び糸挿入子駆動機構450が駆動する。鉤針・蓋針駆動機構130が駆動すると鉤針13を垂直方向に直線往復運動させ、布送り駆動機構700が駆動すると布送り機構600で送り歯601を送りの四工程運動させ、釜駆動機構220が駆動すると半回転釜200の内釜206を半回転正転、半回転逆転させ、糸引出駆動機構400が駆動すると糸引出作動子401を揺動させ、回動操作/直線送り切換機構540が駆動すると鉤針13の第1ストローク及び第2ストローク毎に押え金501の押圧保持を所定時間だけ解除させ、糸寄せ機構800Aが駆動すると鉤針13の第1ストローク及び第2ストローク毎に糸寄せ801を鉤針13の近傍で楕円運動させ、糸挿入子駆動機構450が駆動すると鉤針13の第1ストローク及び第2ストローク毎に糸挿入子451を往復運動させる。なお、各機構の動作説明は上述した構成説明で詳述したので省略する。
【0199】
このように動作する鉤針13、半回転釜200、糸引出作動子401、送り歯601、押え金501、糸引出作動子401及び糸挿入子451は下記のように協働して、1本の縫糸20で被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目をそれぞれ形成させる。なお、直線送りの場合には上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシン(図1、図2)と同様の縫製動作なので説明を省略する。
【0200】
切換レバー542を回動操作送り(フリーカーブ縫い)に切り換えてミシンを駆動させると、
(a)垂直方向に直線往復運動する鉤針13が第1ストロークにおいて上死点(上軸5:0度)から下降し針板12に載置された被縫製体21に貫通し(図18(A)〜図18(F)、図52(A))、下死点(上軸5:180度)から上昇する際に、針板12の下方にあって半回転逆転する半回転釜200の糸出口212aから糸引出作動子401によって引き出され鉤針13に周接して緊張されている縫糸20を糸捕捉鉤13aで捕捉する(図18(G)、図18(H)、図52(A))。この際、半回転釜200が有するボビンケース212の糸出口212aは図44(B)に示すように、鉤針13が針板12から上昇するとき半回転釜200の内釜205が逆転して針板12から離間する方向及び位置に設けられていることになる。これにより、糸引出作動子401によって引き出されている縫糸20を鉤針13に周接することが可能になる。また、糸引出作動子401によってボビンケース212の糸出口212aから引き出すと共に鉤針13の糸捕捉鉤13aに位置決めすることで鉤針13に周接して緊張されている縫糸20を、糸挿入子451を揺動させることで鉤針13の糸捕捉鉤13aに強制挿入する(図18(F)〜図18(K)、図44、図52(B))。また、鉤針13が実質的に上死点(上軸5:0度)から下死点(上軸5:180度)に運動する際に半回転釜200を回転停止させる。このように半回転釜200を回転停止させるのは、第1ストロークにおいて鉤針13の糸捕捉鉤13aに縫糸20を糸掛けするために、第2ストロークにおいて半回転正転した釜を半回転逆転させるタイミングにするためである。さらに、鉤針13の第1ストロークにおいて鉤針13が上死点から下降して被縫製体21に貫通し、下死点から上昇して被縫製体21から抜け出す前に、被縫製体21を針板12上で押圧保持する押え金501の押圧保持を解除する(図18(H)〜図18(K)、図52(B))。これにより、鉤針13の第1ストロークにおいて被縫製体21の送り方向を鉤針13を回動軸として手動回動操作することができる。
【0201】
なお、半回転釜200は鉤針13が被縫製体21に刺さってから半回転逆転を開始する(上軸5:130度)(図18(E)、図52(A))。糸引出作動子401は鉤針13が被縫製体21に刺さる前に最前進で停止する(上軸5:80度)(図18(D)、図52(A))。蓋針14は鉤針13が被縫製体21に刺さると開状態になる(図18(E)、図52(A))。送り歯601は鉤針13が被縫製体21に刺さる前に被縫製体21の布送りを停止する(図18(D)、図52(A))。
【0202】
(b)鉤針13を第1ストロークにおいて被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点(上軸5:360度)を通過する間に、被縫製体21を送り歯601で1縫目ピッチ送りするとともに縫糸20を捕捉した鉤針13が上昇すること及び半回転釜200がさらに逆転することにより糸締めする(図18(I)〜図18(M)、図52(A))。
【0203】
なお、半回転釜200は鉤針13が上死点(上軸5:360度)を通過してから半回転逆転を停止する(上軸5:367度)(図18(M)、図52(A))。糸引出作動子401は鉤針13が下死点(上軸5:180度)に到達すると縫糸20を繰り出しできるように後退する揺動を開始し(図18(F)、図52(A))、鉤針13が上死点(上軸5:360度)を通過する前に後退を停止する(図18(L)、図52(A))。蓋針14は、鉤針13が下死点(上軸5:180度)から上死点(上軸5:360度)に移動する際、当該鉤針13が針板12を通過した後に鉤針13の糸捕捉鉤13aを閉状態にして被縫製体21を鉤針13と共に通過する(図18(J)、図18(K)、図52(A))。送り歯601は鉤針13が上死点(上軸5:360度)を通過する直前に1縫目ピッチ送りを開始する(図18(L)、図52(A))。また、糸寄せ801は鉤針13の第1ストロークにおいても先端部801aを図29に示すような運動軌跡830の楕円運動を水平方向において1回転だけ行うが(図18(A)〜図18(M)、図52(B))、この時には鉤針13が下降しても糸捕捉鉤13aには縫糸20は捕捉されていない。
【0204】
(c)鉤針13が第2ストロークにおいて上死点(上軸5:360度)から下降し被縫製体21に貫通し(図18(N)、図18(O)、図52(A))、下死点(上軸5:540度)から上昇する際に、糸捕捉鉤13aで捕捉されていた縫糸20を半回転正転する半回転釜200の剣先205aで掬うと共に、捕捉されていた縫糸20を半回転釜200の回転によって糸捕捉鉤13aから解放する(図18(P)、図52(A))。なお、鉤針13が実質的に上死点(上軸5:360度)から下死点(上軸5:540度)に運動する際に半回転釜200を回転停止させる。このように半回転釜200を回転停止させるのは、第2ストロークにおいて鉤針13の糸捕捉鉤13aに引っ掛けられた縫糸20を釜の剣先205aで糸捕捉鉤13aから開放するために、第1ストロークにおいて半回転逆転した釜を半回転正転させるタイミングを取るためである。
【0205】
なお、半回転釜200は鉤針13が下死点(上軸5:540度)に到達すると半回転正転を開始する(図18(P)、図52(A))。糸引出作動子401は、鉤針13が被縫製体21に刺さる寸前に停止する(図18(N)、図52(A))。その後、蓋針14は鉤針13が上死点から下降して被縫製体21を通過すると、鉤針13の糸捕捉鉤13aを開状態にする(図18(O)、図52(A))。送り歯601は鉤針13が被縫製体21に刺さる前に1縫目ピッチ送りを停止する(図18(N)、図52(A))。
【0206】
また、糸寄せ801は鉤針13の第2ストロークにおいて先端部801aを図29に示すような運動軌跡830の楕円運動を水平方向において1回転だけ行う(図18(M)〜図18(W)、図52(B))。この際、鉤針13が下降していくと、鉤針13の針先と被縫製体21との間で鉤針13の糸捕捉鉤13aに捕捉された縫糸20が張った状態から緩んだ状態になって糸弛みができるので、この糸弛みを鉤針13の針先と被縫製体21の間で糸捕捉鉤13aの非開口方向に糸寄せ801の先端部801aで糸寄せする(図18(M)、(N)、図52(B))。具体的には図29に示すように、糸寄せ801の先端部801aの運動軌跡830の楕円運動は、押え金501を上から見ると時計方向になり、この運動軌跡830の糸寄せ点となる位置830aの近傍で縫糸20の輪を、糸捕捉鉤13aの非開口方向に糸寄せ801の先端部801aで糸寄せすることで当該先端部801aで引っ掛けることができる。なお、図52(B)に示す運動軌跡830の位置830bは図29に示す位置のことである。
【0207】
また、鉤針13の第2ストロークにおいて鉤針13が上死点から下降して被縫製体21に貫通し、下死点から上昇して被縫製体21から抜け出す前に、被縫製体21を針板12上で押圧保持する押え金501の押圧保持を解除する(図18(P)〜図18(T)、図52(B))。これにより、鉤針13の第2ストロークにおいて被縫製体21の送り方向を鉤針13を回動軸として手動回動操作することができる。
【0208】
また、半回転釜200において内釜205に例えば凸状の糸滞留部205gを備えている場合には、図18(U)に示すような内釜205の半回転正転した位置になっても図47に示すように、凸状の糸滞留部205gが縫糸20を引っ掛けたままの状態に維持できるので、半回転釜200にくぐり入れられている縫糸を一時滞留させることができ、その後、糸引出作動子401で半回転釜200からくぐり出る縫糸を糸締めすることで縫糸の一時滞留を解除することができるようになる。したがって、鉤針13の第2ストロークにおいて、内釜ドライバーバネ204が固定された内釜ドライバー203の他端と内釜205との間に形成される隙間O2にくぐり入れた縫糸20は、内釜205が半回転正転しても緊張状態を保つことができる。
【0209】
なお、鉤針13の第2ストロークにおいても糸挿入子451は揺動するが(図18(O)〜図18(S)、図52(B))、この時には縫糸20は鉤針13の糸捕捉鉤13aに位置決めされていない。
【0210】
(d)半回転釜200の剣先205aで掬われて解放された縫糸20を半回転釜200が更に回転することにより半回転釜200の内釜ドライバーバネ204が固定された内釜ドライバー203の他端と内釜205との間に形成される隙間O2にくぐり入れて半回転釜200に巻装されている縫糸20に交錯(interlace)させ、内釜ドライバーバネ204が固定された内釜ドライバー203の一端と内釜205との間に形成される隙間O1からくぐり出た縫糸20を糸引出作動子401で糸締めする(図18(Q)〜図18(W)、図52(A))。
【0211】
なお、半回転釜200は鉤針13が被縫製体21から抜けて上死点(上軸5:720度)に到達するまでの間に半回転正転を停止する(図18(V)、図52(A))。糸引出作動子401は鉤針13が被縫製体21から抜けると縫糸20を引き締めできるように前進するように揺動を開始する(図18(T)、図52(A))。蓋針14は鉤針13が下死点から上昇して被縫製体21を通過すると、鉤針13の糸捕捉鉤13aを閉状態にする(図18(T)、図52(A))。送り歯601は鉤針13が上死点(上軸5:720度)を通過する直前に1縫目間ピッチ送りを開始する(図18(W)、図52(A))。
【0212】
(e)鉤針13を第2ストロークにおいて被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点(上軸5:720度)を通過する間に、被縫製体21を1縫目間ピッチ送りする(図18(W)、図52(A))。
【0213】
(f)(a)乃至(e)の工程を繰り返して被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目をそれぞれ形成する。
【0214】
したがって、縫糸20が鉤針13の糸捕捉鉤13aへ確実に捕捉され、かつミシンベッド内空間で1本糸錠縫化縫目形成を行ないピンポイント/サドルステッチと呼ばれる擬似ハンドステッチに適する縫製ができ、また、被縫製体21の縫方向を1跳び縫いセット毎に可変とすることができるのでキルト若しくは刺子又はパッチワークに適する縫製ができるようになる。また、被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されるので、作業者にとって表面にハンドステッチ縫目を目視できる状態で縫製作業が行なわれ、ハンドステッチ縫位置を確認できることから正確な縫製ができる。また、被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されるので、1本糸錠縫化縫目を形成している縫糸20が引っ掛けられることによって容易にほどけることはないので、強固な縫製が得られる。
【0215】
なお、送り量設定機構300及び送りモード切換機構350は上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンと同一構成なので、縫目ピッチ、縫目間ピッチの調整に関する説明は省略する。
【0216】
次に、手動送り/直線送り切り換えできるフリーモーション縫い用の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンについて、主に図53、図54、図18(A)〜(W)、図52(A)、(C)に基づき説明する。図53はフリーモーション縫い用の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの全体斜視図で、図49はフリーモーション縫い用の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの駆動系を示すブロック図で、図52(C)は鉤針13、半回転釜200、糸寄せ811及び押え金501のモーションダイヤグラムである。図18(A)〜(W)、図52(A)はフリーカーブ縫い用の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンと同様の内容である。なお、図53に示す全体斜視図は上述した図1に示す全体斜視図と、布送り駆動機構700、送り量設定機構300及び送りモード切換機構350で使用する部品の形状等が異なっているが、製品化にあたり形状を改良しているだけであり、構成及び動作は同一であり、また、内釜205を除く半回転釜200、押え機構500、布送り機構600、糸引出駆動機構400は構成及び動作が同一なので、同一符号を付して説明は省略する。また、このフリーモーション縫い用の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンでは、糸寄せ機構800Bと、押圧解除機構720A、送り歯退避機構720Bを備えた手動送り/直線送り切換機構740とを使用する。
【0217】
また、釜駆動機構220はフリーカーブ縫い用の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンと同様に、図50、図51に示す釜駆動扇型歯車233が釜軸歯車224の下方で噛み合うように構成され、釜駆動扇型歯車233が扇型歯車軸235に固定されているので、図50、図51に示す釜駆動縦ロッド228は図14、図15に示す釜駆動縦ロッド228より短くなっている。
【0218】
さらに、フリーカーブ縫い用の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンと同様に、縫目送り調節レバー301、縫目間送り調節レバー302の力点となる部位には、送り調節レバーツマミ323が装着されている。
【0219】
図53、図54において、モータMにより駆動ベルトMBを介して駆動される従動プーリ4が、鉤針13側より見て時計方向に回転すると、上軸5の回転により鉤針・蓋針駆動機構130、布送り駆動機構700、釜駆動機構220、糸引出駆動機構400、手動送り/直線送り切換機構740、糸寄せ機構800B及び糸挿入子駆動機構450が駆動する。鉤針・蓋針駆動機構130が駆動すると鉤針13を垂直方向に直線往復運動させ、釜駆動機構220が駆動すると半回転釜200の内釜206を半回転正転、半回転逆転させ、糸引出駆動機構400が駆動すると糸引出作動子401を揺動させ、回動操作/直線送り切換機構740が駆動すると鉤針13の第1ストローク及び第2ストローク毎に押え金501の押圧保持を所定時間だけ解除させると共に布送り駆動機構700を停止させることで送り歯601を常時退避させ、糸寄せ機構800Bが駆動すると鉤針13の第1ストローク及び第2ストローク毎に糸寄せ811を鉤針13の近傍で楕円運動させ、糸挿入子駆動機構450が駆動すると鉤針13の第1ストローク及び第2ストローク毎に糸挿入子451を往復運動させる。なお、各機構の動作説明は上述した構成説明で詳述したので省略する。
【0220】
このように動作する鉤針13、半回転釜200、糸引出作動子401、送り歯601、押え金501、糸引出作動子401及び糸挿入子451は下記のように協働して、1本の縫糸20で被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目をそれぞれ形成させる。なお、直線送りの場合には上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシン(図1、図2)と同様の縫製動作なので説明を省略する。
【0221】
切換レバー542を回動操作送り(フリーモーション縫い)に切り換えてミシンを駆動させると、
(a)垂直方向に直線往復運動する鉤針13が第1ストロークにおいて上死点(上軸5:0度)から下降し針板12に載置された被縫製体21に貫通し(図18(A)〜図18(F)、図52(A))、下死点(上軸5:180度)から上昇する際に、針板12の下方にあって半回転逆転する半回転釜200の糸出口212aから糸引出作動子401によって引き出され鉤針13に周接して緊張されている縫糸20を糸捕捉鉤13aで捕捉する(図18(G)、図18(H)、図52(A))。この際、半回転釜200が有するボビンケース212の糸出口212aは図20(B)に示すように、鉤針13が針板12から上昇するとき半回転釜200の内釜205が逆転して針板12から離間する方向及び位置に設けられていることになる。これにより、糸引出作動子401によって引き出されている縫糸20を鉤針13に周接することが可能になる。また、糸引出作動子401によってボビンケース212の糸出口212aから引き出すと共に鉤針13の糸捕捉鉤13aに位置決めすることで鉤針13に周接して緊張されている縫糸20を、糸挿入子451を揺動させることで鉤針13の糸捕捉鉤13aに強制挿入する(図18(F)〜図18(K)、図44、図52(C))。また、鉤針13が実質的に上死点(上軸5:0度)から下死点(上軸5:180度)に運動する際に半回転釜200を回転停止させる。このように半回転釜200を回転停止させるのは、第1ストロークにおいて鉤針13の糸捕捉鉤13aに縫糸20を糸掛けするために、第2ストロークにおいて半回転正転した釜を半回転逆転させるタイミングを取るためである。さらに、鉤針13の第1ストロークにおいて鉤針13が被縫製体21から抜け出しているとき、押え金501の押圧保持を解除すると共に被縫製体21を送る送り歯601を退避する(図18(J)〜図18(N)、図52(C))。これにより、鉤針13の第1ストロークにおいて縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら被縫製体21を手動送りすることができる。なお、送り歯601は、この手動送りの間、送り歯退避機構720Bが常時退避させている。
【0222】
また、半回転釜200は鉤針13が被縫製体21に刺さってから半回転逆転を開始する(上軸5:130度)(図18(E)、図52(A))。糸引出作動子401は鉤針13が被縫製体21に刺さる前に最前進で停止する(上軸5:80度)(図18(D)、図52(A))。蓋針14は鉤針13が被縫製体21に刺さると開状態になる(図18(E)、図52(A))。
【0223】
(b)鉤針13を第1ストロークにおいて被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点(上軸5:360度)を通過する間に、被縫製体21を送り歯601で1縫目ピッチ送りするとともに縫糸20を捕捉した鉤針13が上昇すること及び半回転釜200がさらに逆転することにより糸締めする(図18(I)〜図18(M)、図52(A))。
【0224】
なお、半回転釜200は鉤針13が上死点(上軸5:360度)を通過してから半回転逆転を停止する(上軸5:367度)(図18(M)、図52(A))。糸引出作動子401は鉤針13が下死点(上軸5:180度)に到達すると縫糸20を繰り出しできるように後退する揺動を開始し(図18(F)、図52(A))、鉤針13が上死点(上軸5:360度)を通過する前に後退を停止する(図18(L)、図52(A))。蓋針14は、鉤針13が下死点(上軸5:180度)から上死点(上軸5:360度)に移動する際、当該鉤針13が針板12を通過した後に鉤針13の糸捕捉鉤13aを閉状態にして被縫製体21を鉤針13と共に通過する(図18(J)、図18(K)、図52(A))。また、糸寄せ811は鉤針13の第1ストロークにおいても先端部811aを図29に示すような運動軌跡830の楕円運動を水平方向において1回転だけ行うが(図18(A)〜図18(M)、図52(C))、この時には鉤針13が下降しても糸捕捉鉤13aには縫糸20は捕捉されていない。
【0225】
(c)鉤針13が第2ストロークにおいて上死点(上軸5:360度)から下降し被縫製体21に貫通し(図18(N)、図18(O)、図52(A))、下死点(上軸5:540度)から上昇する際に、糸捕捉鉤13aで捕捉されていた縫糸20を半回転正転する半回転釜200の剣先205aで掬うと共に、捕捉されていた縫糸20を半回転釜200の回転によって糸捕捉鉤13aから解放する(図18(P)、図52(A))。なお、鉤針13が実質的に上死点(上軸5:360度)から下死点(上軸5:540度)に運動する際に半回転釜200を回転停止させる。このように半回転釜200を回転停止させるのは、第2ストロークにおいて鉤針13の糸捕捉鉤13aに引っ掛けられた縫糸20を釜の剣先205aで糸捕捉鉤13aから開放するために、第1ストロークにおいて半回転逆転した釜を半回転正転させるタイミングにするためである。
【0226】
なお、半回転釜200は鉤針13が下死点(上軸5:540度)に到達すると半回転正転を開始する(図18(P)、図52(A))。糸引出作動子401は、鉤針13が被縫製体21に刺さってから、後退して縫糸20を繰り出すように揺動を開始する(図18(N)、図52(A))。蓋針14は鉤針13が上死点から下降して被縫製体21を通過すると、鉤針13の糸捕捉鉤13aを開状態にする(図18(O)、図52(A))。
【0227】
また、糸寄せ811は鉤針13の第2ストロークにおいて先端部811aを図29に示すような運動軌跡830の楕円運動を水平方向において1回転だけ行う(図18(M)〜図18(W)、図52(C))。この際、鉤針13が下降していくと、鉤針13の針先と被縫製体21との間で鉤針13の糸捕捉鉤13aに捕捉された縫糸20が張った状態から緩んだ状態になって糸弛みができるので、この糸弛みを鉤針13の針先と被縫製体21の間で糸捕捉鉤13aの非開口方向に糸寄せ811の先端部811aで糸寄せする(図18(M)、(N)、図52(C))。具体的には図29に示すように、糸寄せ811の先端部811aの運動軌跡830の楕円運動は、押え金501を上から見ると時計方向になり、この運動軌跡830の糸寄せ点となる位置830aの近傍で縫糸20の輪を、糸捕捉鉤13aの非開口方向に糸寄せ811の先端部811aで糸寄せすることで当該先端部811aで引っ掛けることができる。なお、図52(C)に示す運動軌跡830の位置830bは図29に示す位置のことである。
【0228】
また、鉤針13の第2ストロークにおいて鉤針13が被縫製体21から抜け出しているとき、押え金501の押圧保持を解除すると、被縫製体21を送る送り歯601は退避しているので(図18(T)〜図18(E)、図52(C))、鉤針13の第2ストロークにおいて縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら被縫製体21を手動送りすることができる。
【0229】
また、半回転釜200において内釜205に例えば凸状の糸滞留部205gを備えている場合には、図18(U)に示すような内釜205の半回転正転した位置になっても図47に示すように、凸状の糸滞留部205gが縫糸20を引っ掛けたままの状態に維持できるので、半回転釜200にくぐり入れられている縫糸を一時滞留させることができ、その後、糸引出作動子401で半回転釜200からくぐり出る縫糸を糸締めすることで縫糸の一時滞留を解除することができるようになる。したがって、鉤針13の第2ストロークにおいて、内釜ドライバーバネ204が固定された内釜ドライバー203の他端と内釜205との間に形成される隙間O2にくぐり入れた縫糸20は、内釜205が半回転正転しても緊張状態を保つことができ、半回転釜200にくぐり入れられている縫糸20と糸出口212aから引き出される縫糸20を弛緩させることなく、糸引出作動子401の先端引掛け部401aで捕捉できる。
【0230】
なお、鉤針13の第2ストロークにおいても糸挿入子451は揺動するが(図18(O)〜図18(S)、図52(C))、この時には縫糸20は鉤針13の糸捕捉鉤13aに位置決めされていない。
【0231】
(d)半回転釜200の剣先205aで掬われて解放された縫糸20を半回転釜200が更に回転することにより半回転釜200の内釜ドライバーバネ204が固定された内釜ドライバー203の他端と内釜205との間に形成される隙間O2にくぐり入れて半回転釜200に巻装されている縫糸20に交錯(interlace)させ、内釜ドライバーバネ204が固定された内釜ドライバー203の一端と内釜205との間に形成される隙間O1からくぐり出た縫糸20を糸引出作動子401で糸締めする(図18(Q)〜図18(W)、図52(A))。
【0232】
なお、半回転釜200は鉤針13が被縫製体21から抜けて上死点(上軸5:720度)に到達するまでの間に半回転正転を停止する(図18(V)、図52(A))。糸引出作動子401は鉤針13が被縫製体21から抜けると縫糸20を引き締めできるように前進するように揺動を開始する(図18(T)、図52(A))。蓋針14は鉤針13が下死点から上昇して被縫製体21を通過すると、鉤針13の糸捕捉鉤13aを閉状態にする(図18(T)、図52(A))。
【0233】
(e)鉤針13を第2ストロークにおいて被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点(上軸5:720度)を通過する間に、被縫製体21を1縫目間ピッチ送りする(図18(W)、図52(A))。
【0234】
(f)(a)乃至(e)の工程を繰り返して被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目をそれぞれ形成する。
【0235】
したがって、縫糸20が鉤針13の糸捕捉鉤13aへ確実に捕捉され、かつミシンベッド内空間で1本糸錠縫化縫目形成を行ないピンポイント/サドルステッチと呼ばれる擬似ハンドステッチに適する縫製ができ、また、被縫製体21の縫方向を1跳び縫いセット毎に可変とすることができるのでキルト若しくは刺子又はパッチワークに適する縫製ができるようになる。また、被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されるので、作業者にとって表面にハンドステッチ縫目を目視できる状態で縫製作業が行なわれ、ハンドステッチ縫位置を確認できることから正確な縫製ができる。また、被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されるので、1本糸錠縫化縫目を形成している縫糸20が引っ掛けられることによって容易にほどけることはないので、強固な縫製が得られる。
【0236】
なお、送り量設定機構300及び送りモード切換機構350は上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンと同一構成なので、縫目ピッチ、縫目間ピッチの調整に関する説明は省略する。
【0237】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンによる好ましい実施の形態例を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの駆動系統を示すブロック図である。
【図3(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける鉤針・蓋針駆動機構を示す斜視図で、(A)は鉤針が上死点の図である。
【図3(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける鉤針・蓋針駆動機構を示す斜視図で、(B)は鉤針が下死点の図である。
【図4】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける鉤針・蓋針駆動機構を示す分解斜視図である。
【図5】鉤針と蓋針との関係を示す斜視図で、(A)は鉤針の糸捕捉鉤が蓋針で閉状態になった図、(B)は鉤針の糸捕捉鉤が開状態になった図である。
【図6】鉤針と蓋針との関係を示す部分斜視図で、(A)は鉤針の糸捕捉鉤が蓋針で閉状態になった図、(B)は鉤針の糸捕捉鉤が開状態になった図である。
【図7】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける押え機構を示す分解斜視図である。
【図8】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンで得られる擬似ハンドステッチ縫目構造を示す説明図である。
【図9】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける布送り機構及び布送り駆動機構を示す分解斜視図である。
【図10】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける布送り機構を示す斜視図である。
【図11】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける布送り駆動機構、送り量設定機構及びモード切換機構を示す分解斜視図である。
【図12】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける半回転釜を示す斜視図である。
【図13】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける半回転釜を示す分解斜視図である。
【図14】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける釜駆動機構を示す斜視図である。
【図15】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける釜駆動機構を示す分解斜視図である。
【図16】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける糸引出機構を示す斜視図である。
【図17】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける糸引出機構を示す分解斜視図である。
【図18(A)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(B)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(C)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(D)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(E)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(F)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(G)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(H)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(I)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(J)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(K)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(L)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(M)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(N)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(O)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(P)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(Q)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(R)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(S)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(T)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(U)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(V)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(W)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図19】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの鉤針、半回転釜、糸引出作動子、蓋針及び送り歯の動作状態を示す動作説明図である。
【図20】図18(H)に記載された半回転釜のみを上から見た状態を示す説明図である。
【図21】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける送り量設定機構、モード切換機構、布送り機構及び布送り駆動機構を模式的に示す図である。
【図22】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける送り量設定機構、モード切換機構、布送り機構及び布送り駆動機構を模式的に示す図である。
【図23(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける送り量設定機構、モード切換機構、布送り機構及び布送り駆動機構を模式的に示す図である。
【図23(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける送り量設定機構、モード切換機構、布送り機構及び布送り駆動機構を模式的に示す図である。
【図24(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける送り量設定機構、モード切換機構、布送り機構及び布送り駆動機構を模式的に示す図である。
【図24(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける送り量設定機構、モード切換機構、布送り機構及び布送り駆動機構を模式的に示す図である。
【図25(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける他の実施形態である鉤針・蓋針駆動機構を示す斜視図で、(A)は鉤針が上死点の図である。
【図25(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける他の実施形態である鉤針・蓋針駆動機構を示す斜視図で、(A)は鉤針が下死点の図である。
【図26】図25(A)、(B)の鉤針・蓋針駆動機構を示す分解斜視図である。
【図27(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける糸寄せ機構を示す斜視図である。
【図27(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける糸寄せ機構を示す分解斜視図である。
【図28(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける他の実施形態である糸寄せ機構を示す斜視図である。
【図28(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける他の実施形態である糸寄せ機構を示す分解斜視図である。
【図29】図27(A)、(B)、図27(A)、(B)の糸寄せ機構の糸寄せの運動軌跡を示す説明図である。
【図30】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける半回転釜に使用される針受を設けた内釜ドライバーを示す斜視図である。
【図31】(A)は図30の内釜ドライバーを示す分解斜視図で、(B)はその内釜ドライバーに設けられた針受を(A)とは異なる方向から見た斜視図である。
【図32】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける糸締調節機構を示す斜視図である。
【図33】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける糸締調節機構を示す分解斜視図である。
【図34(A)】図32、図33の糸締調節機構をミシンの下から見た時の動作状態を示す平面図である。
【図34(B)】図32、図33の糸締調節機構をミシンの下から見た時の動作状態を示す模式図である。
【図35(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける回動操作/直線送り切換機構を示し、切換レバーが直線送りに切換えられている状態の斜視図である。
【図35(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける回動操作/直線送り切換機構を示し、切換レバーが回動操作に切換えられている状態の斜視図である。
【図36】図35(A)、(B)の回動操作/直線送り切換機構を示す分解斜視図である。
【図37】図35(A)、(B)、図36の回動操作/直線送り切換機構が有する押圧解除機構の動作状態を示し、(A)は切換レバーが直線送りに切換えられている状態の押圧解除カムと押圧解除カム用アームとの関係を示す説明図で、(B)、(C)は切換レバーが回動操作に切換えられている状態の押圧解除カムと押圧解除カム用アームとの関係を示す説明図である。
【図38】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける手動送り/直線送り切換機構を示す斜視図である。
【図39】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける手動送り/直線送り切換機構を示す分解斜視図である。
【図40(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける手動送り/直線送り切換機構を示し、切換レバーが直線送りに切換えられている状態の斜視図である。
【図40(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける手動送り/直線送り切換機構を示し、切換レバーが手動送りに切換えられている状態の斜視図である。
【図41】図38、図39の手動送り/直線送り切換機構が有する押圧解除機構の動作状態を示し、(A)は切換レバーが直線送りに切換えられている状態の押圧解除カムと押圧解除カム用アームとの関係を示す説明図で、(B)、(C)は切換レバーが手動送りに切換えられている状態の押圧解除カムと押圧解除カム用アームとの関係を示す説明図である。
【図42】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける糸挿入子駆動機構を示す斜視図である。
【図43】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける糸挿入子駆動機構を示す分解斜視図である。
【図44】図18(H)に記載された半回転釜と、糸引出作動子及び糸挿入子との関係を示す図で、(A)は図42、図43の糸挿入子駆動機構の糸挿入子が縫糸を鉤針の糸捕捉鉤に強制挿入する状態を示す説明図で、(B)は半回転釜、糸引出作動子及び糸挿入子を上から見た状態を示す説明図である。
【図45】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける半回転釜の内釜に凹状糸滞留部を備えた状態を示す斜視図である。
【図46】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける半回転釜の内釜に凸状糸滞留部を備えた状態を示す斜視図である。
【図47】半回転釜の内釜に凹状糸滞留部を備えた本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について、図18(U)の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図48】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンによる他の好ましい実施の形態例を示す全体斜視図である。
【図49】図48の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの駆動系統を示すブロック図である。
【図50】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける他の実施形態である釜駆動機構を示す斜視図である。
【図51】図50の釜駆動機構を示す分解斜視図である。
【図52(A)】図48、図49、図53、図54の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの鉤針、半回転釜、糸引出作動子、蓋針及び糸滞留部の動作状態を示す動作説明図である。
【図52(B)】図48、図49の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの鉤針、半回転釜、糸寄せ、押え金及び糸挿入子の動作状態を示す動作説明図である。
【図52(C)】図53、図54の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの鉤針、半回転釜、糸寄せ、押え金及び糸挿入子の動作状態を示す動作説明図である。
【図53】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンによる他の好ましい実施の形態例を示す全体斜視図である。
【図54】図53の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの駆動系統を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0239】
5……上軸
8……中間軸
12……針板
13……鉤針
13a……糸捕捉鉤
100、130……鉤針・蓋針駆動機構
200……半回転釜
202……外釜
205……内釜
205f……凹状の糸滞留部
205g……凸状の糸滞留部
211……ボビン
212……ボビンケース
212a……糸出口
242……針受
300……送り量設定機構
301……縫目ピッチ送り量操作部材
302……縫目間ピッチ送り量操作部材
310……逆T字形の送り調節体
311……支え腕
350……送りモード切換機構 351……送り切換カム
352……送り切換ロッド
355……縫目ピッチ切換リンク
401……糸引出作動子
420……糸締調節機構
450……糸挿入子
540……回動操作/直線送り機構
601……送り歯
700……送り駆動機構
701……水平送り偏心カム
702……水平送り駆動ロッド
704……水平送り縦ロッド
707……水平送りロッドリンク
709……水平送り連結クランク
709a……第1の腕
709b……第2の腕
712……水平送り連結リンク
720A……押圧解除機構
720B……送り歯退避機構
800……糸寄せ機構

20……縫糸
21……被縫製体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)糸捕捉鉤を側設され垂直方向に直線往復運動する鉤針が第1ストロークにおいて上死点から下降し針板に載置された被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、前記針板の下方にあって糸が巻装され半回転逆転する釜の糸出口から引き出され前記鉤針に周接して緊張されている糸を前記糸捕捉鉤で捕捉すること、
(b)前記鉤針を前記第1ストロークにおいて前記被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、前記被縫製体を1縫目ピッチ送りするとともに前記糸を捕捉した前記鉤針が上昇すること及び前記釜がさらに逆転することにより糸締めすること、
(c)前記鉤針が第2ストロークにおいて上死点から下降し前記被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、前記糸捕捉鉤で捕捉されていた糸を半回転正転する前記釜の剣先で掬うと共に、捕捉されていた糸を前記釜の回転によって前記糸捕捉鉤から解放すること、
(d)前記釜の剣先で掬われて解放された糸を前記釜が更に回転することにより前記釜にくぐり入れて前記釜に巻装されている糸に交錯させ、前記釜からくぐり出た糸を糸締めすること、
(e)前記鉤針を前記第2ストロークにおいて前記被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、前記被縫製体を1縫目間ピッチ送りすること、
(f)前記(a)乃至(e)の工程を繰り返して前記被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されることを特徴とする1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項2】
前記釜は糸が巻装されるボビンを収納するボビンケースを内釜に内蔵し、前記ボビンケースは前記内釜と一緒に回転自在に外釜に装架され、
前記鉤針が前記針板から上昇するとき前記釜が逆転して前記針板から離間する方向及び位置において、前記糸出口を前記ボビンケースに設けることを特徴とする請求項1記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項3】
前記鉤針が前記上死点から下死点に運動する際に前記釜を回転停止させることを特徴とする請求項1記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項4】
前記糸捕捉鉤で捕捉されていた糸が前記釜の剣先で掬われた後、前記釜の糸出口から引き出されている糸を引掛け、前記釜から引出して糸締めし、前記糸捕捉鉤で前記糸を捕捉した後、引掛けている糸を釈放することを特徴とする請求項1記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項5】
前記第2ストロークにおいて前記鉤針が前記上死点から下降する際に前記糸捕捉鉤で捕捉された糸を前記鉤針の針先と前記被縫製体の間で前記糸捕捉鉤の非開口方向に糸寄せすることを特徴とする請求項1記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項6】
前記釜からくぐり出た糸を糸締めするにあたり、前記縫目ピッチに応じて糸締量を調節することを特徴とする請求項1記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項7】
前記鉤針が前記上死点から下降して前記被縫製体に貫通し、下死点から上昇して前記被縫製体から抜け出す前に、前記被縫製体を針板上で押圧保持する押圧保持を解除して前記被縫製体の送り方向を前記鉤針を回動軸として手動回動操作することを特徴とする請求項1記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項8】
前記釜の剣先で掬われて解放された糸を前記釜が更に回転することにより前記釜にくぐり入れて前記釜に巻装されている糸に交錯させる後で、前記釜からくぐり出る糸を糸締めする前に、前記釜にくぐり入れられている糸を前記釜の周囲で一時滞留させ、前記釜からくぐり出る糸を糸締めすることにより前記一時滞留を解除することを特徴とする請求項1記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項9】
鉤針、半回転釜、糸引出作動子の協働によって被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成し、前記鉤針の第1ストロークにおいて送り歯により前記被縫製体を前記ハンドステッチ縫目のための縫目ピッチ送りし、前記鉤針の第2ストロークにおいて前記送り歯により前記被縫製体を前記ハンドステッチ縫目間のための縫目間ピッチ送りするにあたり、
前記縫目ピッチ送りの縫目ピッチ送り量及び前記縫目間ピッチ送りの縫目間ピッチ送り量をそれぞれ設定し、
1つの跳び縫いセットごとに前記縫目ピッチ送り、前記縫目間ピッチ送りにそれぞれ対応する各被縫製体送りモードに順次切換え、
設定された前記縫目ピッチ送り量、前記縫目間ピッチ送り量をそれぞれ各被縫製体送りモードにおいて送り駆動機構に伝達して前記送り歯により前記被縫製体を送ることを特徴とする1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項10】
前記鉤針が前記被縫製体から抜け出しているとき、前記被縫製体を針板上で押圧保持する押圧保持を解除して前記縫目ピッチ送り量及び前記縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら前記被縫製体を手動送りすることを特徴とする請求項9記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項11】
前記鉤針が前記被縫製体から抜け出しているとき、前記被縫製体を送る前記送り歯を退避して前記縫目ピッチ送り量及び前記縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら前記被縫製体を手動送りすることを特徴とする請求項9記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項12】
上死点から下降し針板に載置された被縫製体に貫通し、下死点から前記被縫製体から抜け出して上昇し、垂直方向に直線往復運動する第1ストロークにおいて上死点から下降し前記被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、糸を捕捉し、第2ストロークにおいて上死点から下降し前記被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、捕捉されていた糸を解放する糸捕捉鉤を側設した鉤針と、
前記針板の下方にあって糸が巻装され前記糸が糸出口から引き出される釜であって、前記第1ストロークにおいて前記上死点から下降し前記被縫製体に貫通し、前記下死点から上昇する際に、半回転逆転し、前記糸捕捉鉤で糸を捕捉した前記鉤針の上昇に伴ってさらに逆転することにより前記糸を糸締めすると共に、前記鉤針が前記第2ストロークにおいて上死点から下降し前記被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、前記糸捕捉鉤で捕捉されていた糸を前記釜が半回転正転して掬う剣先を有し、捕捉されていた糸を前記釜の回転によって前記釜の剣先で掬って前記糸捕捉鉤から解放し、解放された糸を前記釜が更に回転することにより前記釜にくぐり入れて前記釜に巻装されている糸に交錯させる半回転釜と、
前記糸捕捉鉤が前記糸を捕捉する際に前記釜が回転することにより前記糸出口から引き出されている糸を前記鉤針に周接して緊張するとともに前記釜からくぐり出た糸を糸締めする糸引出作動子と、
前記鉤針を前記第1ストロークにおいて前記被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、前記被縫製体を1縫目ピッチ送りするとともに、前記鉤針を前記第2ストロークにおいて前記被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、前記被縫製体を1縫目間ピッチ送りする送り歯とを備えることにより前記被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されることを特徴とする1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項13】
前記釜は糸が巻装されるボビンを収納するボビンケースを内釜に内蔵し、前記ボビンケースは前記内釜と一緒に回転自在に外釜に装架され、
前記鉤針が前記針板から上昇するとき前記釜が逆転して前記針板から離間する方向及び位置において、前記糸出口を前記ボビンケースに設けることを特徴とする請求項12記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項14】
前記鉤針が前記上死点から下死点に運動する際に前記釜は回転停止する期間を有することを特徴とする請求項12記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項15】
前記糸引出作動子は、前記糸捕捉鉤で捕捉されていた糸が前記釜の剣先で掬われた後、前記釜の糸出口から引き出されている糸を引掛け、前記釜から引出して糸締めし、前記糸捕捉鉤で前記糸を捕捉した後、引掛けている糸を釈放する機能を有することを特徴とする請求項12記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項16】
前記第2ストロークにおいて前記鉤針が前記上死点から下降する際に前記糸捕捉鉤で捕捉された糸を前記鉤針の針先と前記被縫製体の間で糸寄せする糸寄せ機構を備えることを特徴とする請求項12記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項17】
前記送り量設定機構によって設定された前記縫目ピッチに応じて前記糸引出作動子の糸締量を調節する糸締調節機構を備えることを特徴とする請求項12記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項18】
前記被縫製体を針板上で押圧保持する押え金を備え、前記鉤針が前記被縫製体から抜け出しているとき、前記押え金の押圧保持を解除して前記縫目ピッチ送り量及び前記縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら前記被縫製体を手動送りする押圧解除機構を備えることを特徴とする請求項12記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項19】
前記鉤針が前記被縫製体から抜け出しているとき、前記被縫製体を送る前記送り歯を退避して前記縫目ピッチ送り量及び前記縫目間ピッチ送り量を任意に与えながら前記被縫製体を手動送りする送り歯退避機構を備えることを特徴とする請求項18記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項20】
前記鉤針が前記上死点から下降して前記被縫製体に貫通し、下死点から上昇して前記被縫製体から抜け出す前に、前記被縫製体を針板上で押圧保持する押圧保持を解除して前記被縫製体の送り方向を前記鉤針を回動軸として手動回動操作するための回動操作/直線送り切換機構を備えることを特徴とする請求項12記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項21】
前記内釜を半回転で正転、逆転するように駆動するドライバーに、前記鉤針が前記被縫製体に貫通した後、前記鉤針が前記被縫製体に貫通することによって生じる暴れを針落ち位置に矯正する針受を設けることを特徴とする請求項13記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項22】
前記糸出口から引き出され前記糸引出作動子によって前記糸捕捉鉤に位置決めされ前記鉤針に周接して緊張されている糸を前記糸捕捉鉤に強制挿入する糸挿入子を備えることを特徴とする請求項12記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項23】
前記鉤針の前記糸捕捉鉤が前記鉤針の前記上死点から下降して前記被縫製体に貫通し、前記針板を越えるまでの期間及び前記下死点から上昇して前記糸捕捉鉤が前記糸を捕捉した後、前記針板を越え、前記被縫製体を抜け出して前記上死点に達するまでの期間に前記糸捕捉鉤を閉塞する蓋針を駆動する鉤針・蓋針駆動機構を備えることを特徴とする請求項12記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項24】
前記釜の周囲の一部には、前記釜の剣先で掬われて解放された糸を前記釜が更に回転することにより前記釜にくぐり入れて前記釜に巻装されている糸に交錯させる後で、前記釜からくぐり出る糸を糸締めする前に、前記釜にくぐり入れられている糸を一時滞留させ、前記釜からくぐり出る糸を糸締めすることにより前記一時滞留を解除する糸滞留部を備えることを特徴とする請求項12記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項25】
鉤針、半回転釜、糸引出作動子の協働によって被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成し、前記鉤針の第1ストロークにおいて送り歯により前記被縫製体を前記ハンドステッチ縫目のための縫目ピッチ送りし、前記鉤針の第2ストロークにおいて前記送り歯により前記被縫製体を前記ハンドステッチ縫目間のための縫目間ピッチ送りする1本糸錠縫化ハンドステッチミシンであって、
前記縫目ピッチ送りの縫目ピッチ送り量及び前記縫目間ピッチ送りの縫目間ピッチ送り量をそれぞれ設定する送り量設定機構と、
1つの跳び縫いセットごとに前記縫目ピッチ送り、前記縫目間ピッチ送りにそれぞれ対応する各被縫製体送りモードに順次切換える送りモード切換機構と、
設定された前記縫目ピッチ送り量、前記縫目間ピッチ送り量をそれぞれ各被縫製体送りモードにおいて伝達して前記送り歯により前記被縫製体を送る送り駆動機構とを備えることを特徴とする1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項26】
前記送り量設定機構は、前記鉤針を駆動する上軸から2分の1減速される中間軸に枢支される支え腕に枢着される逆T字形の送り調節体から成り、前記逆T字形の送り調節体の両腕には縫目ピッチ送り量操作部材、縫目間ピッチ送り量操作部材がそれぞれ枢着されることを特徴とする請求項25記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項27】
前記送りモード切換機構は、前記中間軸に固着され少なくとも2個の偶数個の偏位点を有する送り切換カム及び前記送り切換カムに外接する送り切換ロッドから成り、前記送り切換ロッドの連結端は縫目ピッチ切換リンクの一端に枢着され、他端は前記逆T字形の送り調節体の縦腕端に枢着されることを特徴とする請求項25記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項28】
前記送り駆動機構は、一端が前記送り切換ロッドの連結端に枢着される水平送り連結リンクと、第1の腕が前記水平送り連結リンクの他端に枢着される水平送り連結クランクと、一端が前記水平送り連結クランクの第2の腕に枢着され他端が水平送り縦ロッドに枢着される水平送りロッドリンクと、前記上軸に固着される水平送り偏心カム及び前記水平送りロッドリンクの他端に枢着され前記水平送り偏心カムに外接する水平送り駆動ロッドとから成ることを特徴とする請求項27記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18(A)】
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【図18(B)】
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【図18(C)】
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【図18(D)】
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【図18(E)】
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【図18(F)】
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【図18(G)】
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【図18(H)】
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【図18(I)】
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【図18(J)】
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【図18(K)】
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【図18(L)】
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【図18(M)】
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【図18(N)】
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【図18(O)】
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【図18(P)】
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【図18(Q)】
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【図18(R)】
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【図18(S)】
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【図18(T)】
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【図18(U)】
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【図18(V)】
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【図18(W)】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23(A)】
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【図23(B)】
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【図24(A)】
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【図24(B)】
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【図25(A)】
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【図25(B)】
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【図26】
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【図27(A)】
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【図27(B)】
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【図28(A)】
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【図28(B)】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34(A)】
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【図34(B)】
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【図35(A)】
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【図35(B)】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40(A)】
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【図40(B)】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52(A)】
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【図52(B)】
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【図52(C)】
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【図53】
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【図54】
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【公開番号】特開2007−229444(P2007−229444A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356152(P2006−356152)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【特許番号】特許第3963939号(P3963939)
【特許公報発行日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000156008)株式会社鈴木製作所 (20)
【Fターム(参考)】