説明

1,3−ジオキソランヌクレオシドの調製方法

一般式IおよびII(式中、Bはプリンまたはピリミジン塩基、またはこれの類似体または誘導体である)の1,3−ジオキソランヌクレオシドの新規調製方法が開示される。本発明はまた、これらの化合物の調製における使用のための中間体も提供する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2002年8月6日に出願された米国仮出願第60/401,655号の優先権を主張する。この特許出願の開示は、参照して本明細書に組み込まれる。
【0002】
この出願は、製薬化学の分野に属し、特に鏡像異性体的に純粋なD−およびL−形態にあるものを包含する、1,3−ジオキソラン−ヌクオレオシドの調製方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
エイズ、すなわち後天性免疫不全症候群は、世界的な規模に達した悲惨な病気である。エイズは、1981年に、見たところ健康な同性愛の男性が、カポジ肉腫(KS)およびニューモシスティス・カリニ肺炎(PCP)に罹った時、初めて疾病対策センター(CDC)の目に留まった。これらは、免疫不全患者が患うことでしか知られていない2つの日和見疾患である。その2、3年後、エイズの原因物質であるリンパアデノパシー関連レトロウイルス、すなわちヒト免疫不全ウイルス(HIV)が、パリのパスツール研究所によって単離され、その後、米国の国立がん研究所の個人研究者(independent source)によって確認された。
【0004】
重大なヒトの健康問題を引起こすもう1つのウイルスは、B型肝炎ウイルス(HBV)である。HBVは、ヒトのがんの原因としてタバコについで第2位である。HBVががんを誘発するメカニズムは知られていない。これが直接的に腫瘍の発生を引起こすか、または慢性的炎症、肝硬変、および感染に関連した細胞再生を通じて、間接的に腫瘍の発生を引起こすかもしれないと仮定されている。
【0005】
宿主が感染に気が付かない2から6ヶ月の潜伏期間後に、HBV感染は、急性肝炎および肝臓損傷につながり、その結果として腹痛、黄疸、およびあるいくつかの酵素の血液レベルの上昇を生じることがある。HBVは劇症肝炎を引起こすことがある。これは、肝臓の大きい部分が破壊される、多くの場合この病気の急速に進行する致命的な形態である。
【0006】
患者は一般的には、HBV感染の急性期から回復する。しかしながら、いくらかの患者の場合、高レベルのウイルス抗原が、長期間または不定な期間血液中に存在し続け、慢性感染を引起こす。慢性感染は、慢性の持続性肝炎につながることがある。慢性の持続性HBVに感染した患者は、発展途上国において最も多く見られる。1991年半ばまで、HBVの慢性的キャリヤーが、アジア単独で約2億2千5百万人、世界中ではほぼ3億人存在した。慢性の持続性肝炎は、疲労、肝硬変、および原発性肝臓がんである肝細胞がんを引起こすことがある。
【0007】
西側工業国において、HBV感染の高リスクグループは、HBVキャリヤーまたはこの人たちの血液サンプルと接触する人々を包含する。HBVの疫学は、エイズの疫学に非常に類似している。このことは、HBV感染が、HIVまたはエイズに感染した患者の間で発症率が高い理由である。しかしながらHBVは、HIVよりも伝染性が高い。
【0008】
1985年に、合成ヌクレオシド3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT、ジドブジン、レトロビル)が、HIVの複製を阻害することが報告され、エイズとの闘いにおいて用いられる最初のFDA承認薬となった。それ以来、2’,3’−ジデオキシイノシン(DDI)、2’,3’−ジデオキシシチジン(DDC)、2’,3’−ジデオキシ−2’,3’−ジデヒドロチミジン(D4T)、(−)−2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)、および(−)−炭素環式2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシグアノシン(カルボビル)、およびそのプロドラッグのアバカビルは、HIVに対して有効であることが証明されている。細胞キナーゼによる5’−トリホスフェートへの細胞ホスホリル化後、これらの合成ヌクレオシドは、ウイルスDNAの成長鎖中に組み込まれ、3’−ヒドロキシル基の不存在により連鎖停止を引起こす。これらはまた、ウイルス酵素逆転写酵素も阻害しうる。
【0009】
3TCおよびその5−フルオロシトシン類似体(FTC)は、HBVに対して活性を示す。Furmanら、「シス−5−フルオロ−1−[2−(ヒドロキシメチル)−1,3−オキサチオラン−5−イル]−シトシンの(−)および(+)鏡像異性体の抗B型肝炎ウイルス活性、細胞毒性、および同化作用プロフィール(The Anti−Hepatitis B Virus Activities,Cytotoxicities,and Anabolic Profiles of the (−) and (+)Enantiomers of cis−5−Fluoro−1−[2−(Hydroxymethyl)−1,3−oxathiolane−5−yl]−Cytosine)」、抗菌薬および化学療法(Antimicrobial Agents and Chemotherapy)、December 1992、pp.2686−2692;およびChengら、生物化学ジャーナル(Journal of Biological Chemistry)、Volume 267(20)、pp.13938−13942(1992)。
【0010】
ラセミオキサチオランヌクレオシドBCH−189がヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複製に対して強力な活性を有するという発見(Belleau,B.ら、「エイズに関する第5回国際会議(5th International Conference on AIDS)」、カナダ国モントリオール、6月4−9日、1989、#T.C.O.1)がきっかけになって、Chuらはキラル生成物(+)−および(−)−BCH−189を合成した(Tetrahedron Lett.,1991、32、3791)。後者のものであるラミブジンは、あるいはまた3TCまたはエピビルとしても知られているが、現在、HIV感染およびHBV感染の両方の治療に臨床的に用いられている。3TCおよびインターフェロンは現在、HBV感染の治療のための唯一のFDA承認薬である。ウイルス耐性は一般的に、患者の約14%において3TC治療の6ヶ月以内に発生する。
【0011】
その後、5−フルオロシトシン類似体の(−)−FTCが、HIVに対してさらに一層活性であると決定された(Choi,W.ら、J.Am.Chem.Soc.、1991、113、9377)。さらに最近になって、FTCまたはラシビルのラセミ形態は、単独の(−)−FTCよりも、HIVまたはHBVに対してさらに有利な効果を示すことが発見された(Schinazi,R.F.ら、抗菌薬化学療法1992、2423、米国特許第5,204,4665号;第5,210,085号;第5,914,331号;第639,814号)。シス−2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン(FTC)は現在、HIVの治療のため、および別個にHBVのために臨床試験中である。Schinaziら、(1992)「シス−5−フルオロ−1−[2−(ヒドロキシメチル)−1,3−オキサチオラン−5−イル]シトシンのラセメートおよび鏡像異性体によるヒト免疫不全ウイルスの選択的阻害(selective inhibition of human immunodeficiency viruses by racemates and enantiomers of cis−5−fluoro−1−[2−(hydroxymetyl)−1,3−oxathiolane−5−yl]cytosine)」、Antimicrob.Agents Chemother.2423−2431;米国特許第5,210,085号;第WO91/11186号;第WO92/14743号;米国特許第5,914,331号、および米国特許第5,814,639号参照。
【0012】
これらの1,3−オキサチオランヌクレオシドは、シリル化プリンまたはピリミジン塩基と1,3−オキサチオラン中間体との縮合によって製造される。米国特許第5,204,466号は、ルイス酸として塩化錫を用いて、1,3−オキサチオランとシリル化ピリミジンとを縮合させる方法を開示している。これは、ほぼ完全なβ−立体選択性を与える(同様に、Choiら、上記引用文中参照)。いくつかの米国特許は、ケイ素ベースのルイス酸の存在下における1,3−オキサチオラン−2−カルボン酸エステルと保護シリル化塩基との縮合を介し、ついでこのエステルの対応ヒロドキシメチル基への還元によって最終生成物を得ることによる、1,3−オキサチオランヌクレオシドの調製方法を開示している(米国特許第5,663,320号;第5,693,787号;第5,696,254号;第5,744,596号;第5,756,706号、および第5,864,164号参照)。さらにはこれらの特許は、対応1,3−ジオキソラン中間体を用いた、同様な方法での1,3−ジオキソランヌクレオシドの合成についての一般的な開示を含んでいる。
【0013】
米国特許第5,272,151号は、チタン触媒の存在下のシリル化プリンまたはピリミジン塩基との縮合によるヌクレオシドの調製のための2−O−保護−5−O−アシル化−1,3−オキサチオランを用いる方法を開示している。
【0014】
米国特許第6,215,004号は、ルイス酸触媒を用いない、2−O−保護−メチル−5−クロロ−1,3−オキサチオランとシリル化5−フルオロシトシンとの縮合を含む、1,3−オキサチオランヌクレオシドの生成方法を開示している。
【0015】
すべての場合、1,3−オキサチオラン環は、次の方法の1つにおいて調製される。すなわち、(i)p−トルエンスルホン酸の存在下における、トルエン中のメルカプト酢酸とグリオキシレートまたはグリコール酸に由来するアルデヒドとの反応により、5−オキソ−1,3−オキサチオラン−2−カルボン酸を生じる方法(Kraus,J−L.ら、Synthesis、1991、1046);(ii)還流下トルエン中で、2−メルカプトアセトアルデヒドジエチルアセタールでの無水グリオキシレートの環化により、5−エトキシ−1,3−オキサチオラン−ラクトンを生じる方法(米国特許第5,047,407号);(iii)グリオキシル酸エステルとメルカプトアセトアルデヒド(ダイマー形態)との縮合により、5−ヒドロキシ−1,3−オキサチオラン−2−カルボン酸エステルを生じる方法;または(iv)アシルオキシアセトアルデヒドと2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアン、すなわち2−メルカプトアセトアルデヒドのダイマー形態とのカップリングにより、2−(アイロキシ(ayloxy))メチル−5−ヒドロキシ−1,3−オキサチオランを形成する方法である。ラクトン、すなわち5−オキソ化合物は、ヌクレオシドを合成するプロセスの間、対応ラクトールに還元されなければならない。2−カルボン酸またはそのエステルもまた、ボラン−メチルスルフィド錯体を用いて対応2−ヒドロキシメチル誘導体に還元されなければならない。
【0016】
鍵(key)中間体であるアルデヒドは、次のいくつかの方法を用いて調製することができる。すなわち、(i)1,4−ジ−O−ベンゾイルメソ−エリトリトール(Ohle,M.Ber.、1941、74、291)、1,6−ジ−O−ベンゾイルD−マンニトール(Hudson,C.S.ら、J.Am.Chem.Soc.、1939、61、2432)、または1,5−ジ−O−ベンゾイル−D−アラビトール(Haskins,W.T.ら、J.Am.Chem.Soc.、1943、65、1663)の鉛テトラアセテート酸化;(ii)モノアシル化エチレングリコールの調製、ついでアルデヒドへの酸化(Sheikh,E.、Tetrahedron Lett.、1972、257;Mancuso,A.J.およびSwern,D.、Synthesis,1981、165;Bauer,M.、J.Org.Chem.、1975、40,1990;Hanessian,S.ら、Synthesis、1981、394);(iii)エチレンクロロヒドリンのアシル化、ついでジメチルスルホキシド酸化(Kornblum,N.ら、J.Am.Chem.Soc.、1959、81、4113);(iv)1,2−イソプロピリデングリセロールのアシル化、ついで脱アセトンおよびペリオデート酸化(Shao,M−J.ら、Synthetic Commun.、1988、18、359;Hashiguchi,S.ら、ヘテロ環(Heterocycles)、1986、24、2273);(v)鉛テトラアセテート酸化(Wolf,F.J.、Weijlard,J.、Org.Synth,Coll.Vol.、1963、4、124);(vi)アリルまたは3−メチル−2−ブテン−1−オルアシレート(Chou,T.−S.ら、J.Chin.Chem.Soc.、1997、44、299;Hambeck,R.、Just,G.;Tetrahedron Lett.、1990、31、5445);(vii)およびさらに最近になって、2−ブテン−1,4−ジオールのアシル化、ついでオゾン分解(Marshall,J.A.ら、J.Org.Chem.、1998、63、5962)である。同様に米国特許第6,215,004号は、2,2−ジエトキシエタノールのアシル化によるアシルオキシアセトアルデヒドジエチルアセタールの調製方法を開示している。
【0017】
α−アシルオキシアセトアルデヒドは、これらのオキサチオランおよびジオキソランヌクレオシドの合成のためのみならず、生物活性化合物、例えばメスカリン(Hopkins,M.H.ら、J.Am.Chem.Soc.、1991、113、5354)、オキセタノシン(Hambalek,R.,Just,J.、Tetrahedron Lett.1990、31、5445)、カロリド(kallolide)A(Marshall,J.A.ら、J.Org.Chem.、1998、63、5962)、(±)−クマウサレン(kumausallene)および(+)−エピ−クマウサレン(Grese,T.S.ら、J.Org.Chem.、1993、58、2468)、1,3−ジオキソランヌクレオシドの合成のための鍵中間体である。
【0018】
Norbeck,D.W.ら(Tetrahedron Letters 1989、30、6263)は、(±)−1−[(2β,4β)−2−(ヒドロキシメチル)−4−ジオキソラニル]チミン(「(±)−ジオキソラン−T」)の合成を報告した。これは、結果として、C4’原子においてジアステレオマーのラセミ混合物を生じる。この生成物は、C3’原子がO3’原子によって置換されている3’−デオキシチミジンの誘導体である。この生成物は、ベンジルオキシアルデヒドジメチルアセタールおよび(±)−メチルグリセラートから5工程で合成され、その結果、1:1ジアステレオマー混合物の79%収率を生じる。Norbeckは、(±)−ジオキソラン−Tのラセミ混合物が、ATH8細胞における中程度の抗−HIV活性を示すことを報告した(20μMのEC50;Tetrahedron Letters 1989、30、6246)。
【0019】
Belleauら(エイズに関する第5回国際会議、カナダ国モントリオール;1990年6月4日−9日;論文番号TCO1)は、3’位に酸素または硫黄を含有するシチジンヌクレオシドの合成方法を報告した。ジオキソラン環は、RCOCHCHOとグリセリンとの縮合によって調製された。Norbeckの手順の場合のように、Belleau合成は結果として、ヌクレオシドのC4’炭素の周りにジアステレオマーのラセミ混合物を生じる。Belleauは、(±)−BCH−189と呼ばれる硫黄類似体が、抗−HIV活性を有することを報告した。(±)−ジオキオラン−Tもまた、Choiらによって同様な方法で合成された(Choi,W.−Bら、J.Am.Chem.Soc.1991、113、9377−9378;Liotta,D.C.ら、米国特許第5,852,027号)。
【0020】
ジオキソランヌクレオシドの不斉合成が、Evans,C.A.らによって報告された(Tetrahedron:Asymmetry 1993、4、2319−2322)。1,2−ジメトキシエタン中のSnClの存在下におけるD−マンニトールとBnOCHCH−(OCHとの反応、ついでRuCl/NaOCl酸化は、シス−およびトランス−ジオキソラン−4−カルボン酸を生じた。これはついで、脱カルボキシル、カップリング、および脱保護反応によって、D−およびL−ジオキソランヌクレオシドに転換された。BnOCHCH(OCHとL−アスコルビン酸との反応によるこれらのカルボン酸への、これに代わるより効率的な経路もまた、この論文において報告された。
【0021】
キラルカルボン酸(6)もまた、酸性条件下に、商品として入手しうる2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−(S)−カルボン酸とヒドロキシ−アセトアルデヒドの保護誘導体、例えばベンゾイルオキシアセトアルデヒドとを反応させることによって調製することができる(Mansour,T.ら、米国特許第5,922,867号;Nghe Nguyen−Ba、米国特許第6,358,963号)。
【0022】
ジオキソランヌクレオシドの抗ウイルス活性(Corbett,A.H.&Rublein J.C.、Curr.Opin.Investig.Drugs 2001、2、348−353;Gu,Z.ら、Antimicrob.Agents Chemother.1999、43、2376−2382;Gu,Z.ら、ヌクレオシド・ヌクレオチド(Nucleosides Nucleotides)1999、18、891−892)がきっかけとなって、Chuらは、強力な抗ウイルスおよび/または抗がん剤を求めて一連の鏡像異性体的類似体を合成した。これらのうち、いくつかの化合物、例えば(−)−(2’R,4’R)−2,6−ジアミノ−9−[2−(ヒドロキシ−メチル)−1’,3’−ジオキソラン−4’イル]プリン(DAPD)(米国特許第5,767,122号)、(−)−(2S,4R)−1−[2−(ヒドロキシメチル)−1’,3’−ジオキソラン−4 −イル]シトシン)L−OddC)および(−)−(2’S,4’R)−1’−[2’−(ヒドロキシ−メチル)−1’,3’−ジオキソラン−4’−イル]−5−ヨードウラシル)L−IOddU(米国特許第5,792,773号)が特定され、現在、抗ウイルスまたは抗がん剤としてのこれらの価値を評価するために、臨床前または臨床研究中である(Kim,H.−O.ら、J.Med.Chem.1993、36、519−528、およびその中の引例;Corbett,A.H.&Rublein J.C.,Curr.Opin.Investig.Drugs 2001、2、348−353;Gu,Z.ら、Antimicrob.Agents Chemother.1999、43、2376−2382;Mewshaw,J.P.ら、J.Acquir.Immune Defic.Syndr.2002、29、11−20参照)。
【0023】
ラセミヌクレオシドの1つの鏡像異性体が通常、より高い生物活性を示すので(Kimら、J.Med.Chem.1993、36、519−528、およびその中の引例参照)、Chuらは、それぞれD−およびL−ジオキソランヌクレオシドのためのD−マンノースおよびL−グロンラクトンからのジオキソランヌクレオシドの不斉合成方法を開発した(米国特許第5,767,122号、第5,792,773号)。しかしながらこれらの方法は多くの工程を含み、大部分の中間体は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製される必要があった(Kimら、J.Med.Chem.1993、36、519−528、およびその中の引例参照)。
【0024】
臨床試験用に十分に多量のジオキソランヌクレオシド製剤原料を調製するために、キラル2−アシルオキシメチル−5−オキソ−1,3−ジオキソランが、鍵中間体として用いられてきた。これは、BFの存在下、ROCHCHOまたはそのアセタールのグリコール酸での環化、ついでキラル樹脂上でのカラム分離、または酵素分割によって調製された。キラル樹脂および酵素の高いコストのために、これらの方法によってキラルラクトンを調製することは非常に高価になる。
【0025】
したがって、ジオキソランヌクレオシドの生物活性異性体を生成するための、費用効率が高い立体選択的方法へのニーズが依然として存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
鏡像異性体的に純粋なジオキソランヌクレオシドの合成のための、費用効率が高い新規方法を提供することが、本発明の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、必要に応じて官能性(functionality)を導入するオプションをともなう、安価な先駆物質からの1,3−ジオキソランヌクレオシドの効率的な合成経路を包含する。これらの方法によって、これらの化合物の生物活性異性体の立体選択的調製が可能になる。
【0028】
本発明の1つの実施態様において、次の工程を含む、D−またはL−1,3−ジオキソランヌクレオシドの調製方法が提供される:
a)式(VII)または(VIII):
【0029】
【化4】

の環化化合物の調製または入手工程;およびついで
b)式(VII)または(VIII)の化合物の環を開環し、必要であれば保護して、式6aまたは6b:
【0030】
【化5】

(式中、Rは、適切な酸素保護基である)
の化合物を得る工程;およびついで
c)式6aまたは6bの化合物を活性化して、式7aまたは7b:
【0031】
【化6】

(式中、Lは適切な脱離基、例えばO−アシル、例えばOAc、ハロゲン(F、Br、Cl、I)、またはOMs、OTsなどである)
の化合物を得る工程;およびついで
d)式7aまたは7bの化合物を、活性化および/または保護プリンまたはピリミジン塩基、またはその誘導体へカップリングして、式8aまたは8b:
【0032】
【化7】

(式中、Bは、プリンまたはピリミジン塩基、またはその誘導体である)
の化合物を得る工程;およびついで
e)必要であれば、式8aまたは8bの化合物を脱保護し、1,3−ジオキソランヌクレオシドを生じる工程。
【0033】
本発明の1つの特別な実施態様において、次の工程を含む、式(VII)または(VIII)の環化化合物の調製方法が提供される:
a)式1または1’(どちらもD−およびL−異性体を含む):
【0034】
【化8】

(式中、RおよびRは独立して、アルキルまたはアラルキルであり;
は=CR5’またはCH(OH)R5’であり;かつ
5’は、アルキルまたはアラルキルである)
の化合物の調製または入手工程;およびついで
b)式1の化合物を酸化するか、または式1’の化合物を加水分解して、式2(D−およびL−異性体を含む):
【0035】
【化9】

(式中、Mは、金属、好ましくはアルカリ金属、例えばNaまたはKである)
の化合物を得る工程;およびついで
c)式2の化合物と、X’−CHCH(OR(式中、X’は、適切な脱離基、好ましくはハロゲン(F、Cl、Br、I)、またはMsO、TsOなど、最も好ましくはBrである)とをカップリングして、式3(D−およびL−異性体を含む):
【0036】
【化10】

(式中、各Rは独立して、アルキルまたはアラルキルである)
の化合物を得る工程;およびついで
d)式3の化合物を加水分解して、式4(D−およびL−異性体を含む):
【0037】
【化11】

の化合物を得る工程;およびついで
e)式3または4の化合物を環化して、式VIIまたはVIIIの環化化合物を得る工程。
【0038】
さらに一層好ましい実施態様において、式3または4の化合物の環化は、酸性条件において達成される。
【0039】
したがって本発明の方法は、式IIIからVI:
【0040】
【化12】

の化合物、およびこれらの医薬適合性の塩またはエステルの調製に用いられてもよい。上記式中、Rは、H、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、OH、OR’(R’はC〜Cの低級アルキルである)、OCH、SH、SR’、SCH、NH、NHR’、NR’、C〜Cの低級アルキル、CH、CH=CH、NC=CH、COH、COR’、CONH、CONHR’、CHOH、CHCHOH、CF、CHCHF、CH=CHCOH、CH=CHCOR’、CH=CHCl、CH=CHBr、またはCH=CHIであり;
各XおよびYは独立して、H、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、OH、OR’(R’はC〜Cの低級アルキルである)、OCH、SH、SR’、SCH、NH、NHR’、NR’、またはCHであり;かつ
Zは、CH、CからX(Xは、上記のように規定される)である。
【0041】
本発明の方法は、式VIIおよびVIII:
【0042】
【化13】

の中間体の調製に用いられてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明は、必要に応じて官能性を導入するオプションをともなう、安価な先駆物質からの1,3−ジオキソランヌクレオシドの効率的な合成経路を包含する。これらの方法によって、これらの化合物の生物活性異性体の立体選択的調製が可能になる。
【0044】
本発明の1つの実施態様において、次の工程を含む、D−またはL−1,3−ジオキソランヌクレオシドの調製方法が提供される:
a)式VIIまたはVIII:
【0045】
【化14】

の環化化合物の調製または入手工程;およびついで
b)式VIIまたはVIIIの化合物の環を開環し、必要であれば保護して、式6aまたは6b:
【0046】
【化15】

(式中、Rは、適切な酸素保護基である)
の化合物を得る工程;およびついで
c)式6aまたは6bの化合物を活性化して、式7aまたは7b:
【0047】
【化16】

(式中、Lは、適切な脱離基、例えばO−アシル、例えばOAc、ハロゲン(F、Br、Cl、I)、またはMsO、TsOなどである)
の化合物を得る工程;およびついで
d)式7aまたは7bの化合物を、活性化および/または保護プリンまたはピリミジン塩基、またはその誘導体へカップリングして、式8aまたは8b:
【0048】
【化17】

(式中、Bは、プリンまたはピリミジン塩基、またはその誘導体である)
の化合物を得る工程;およびついで
e)必要であれば、式8aまたは8bの化合物を脱保護し、1,3−ジオキソランヌクレオシドを生じる工程。
【0049】
本発明の1つの特別な実施態様において、次の工程を含む、式VIIまたはVIIIの環化化合物の調製方法が提供される:
a)式1または1’(どちらもD−およびL−異性体を含む):
【0050】
【化18】

(式中、RおよびRは独立して、アルキルまたはアラルキルであり;
は=CR5’またはCH(OH)R5’であり;かつ
5’は、アルキルまたはアラルキルである)
の化合物の調製または入手工程;およびついで
b)式1の化合物を酸化するか、または式1’の化合物を加水分解して、式2(D−およびL−異性体を含む):
【0051】
【化19】

(式中、Mは、金属、好ましくはアルカリ金属、例えばNaまたはKである)
の化合物を得る工程;およびついで
c)式2の化合物と、X’−CHCH(OR(式中、X’は、適切な脱離基、好ましくはハロゲン(F、Cl、Br、I)、またはMsO、TsOなど、最も好ましくはBrである)とをカップリングして、式3(D−およびL−異性体を含む):
【0052】
【化20】

(式中、各Rは独立して、アルキルまたはアラルキルである)
の化合物を得る工程;およびついで
d)式3の化合物を加水分解して、式4(D−およびL−異性体を含む):
【0053】
【化21】

の化合物を得る工程;およびついで
e)式3または4の化合物を環化して、式VIIまたはVIIIの環化化合物を得る工程。
【0054】
さらに一層好ましい実施態様において、式3または4の化合物の環化は、酸性条件において達成される。
【0055】
したがって本発明の方法は、式IIIからVI:
【0056】
【化22】

の化合物、およびこれらの医薬適合性の塩またはエステルの調製に用いられてもよい。上記式中、Rは、H、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、OH、OR’(R’はC〜Cの低級アルキルである)、OCH、SH、SR’、SCH、NH、NHR’、NR’、C〜Cの低級アルキル、CH、CH=CH、NC=CH、COH、COR’、CONH、CONHR’、CHOH、CHCHOH、CF、CHCHF、CH=CHCOH、CH=CHCOR’、CH=CHCl、CH=CHBr、またはCH=CHIであり;
各XおよびYは独立して、H、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、OH、OR’(R’はC〜Cの低級アルキルである)、OCH、SH、SR’、SCH、NH、NHR’、NR’、またはCHであり;かつ
Zは、CH、またはCからX(Xは、上記のように規定される)である。
【0057】
本発明の方法は、式VIIおよびVIII:
【0058】
【化23】

の中間体の調製に用いられてもよい。
【0059】
この方法は、1,2−O−保護−グリセラール、またはその類似体または誘導体の、1,2−O−保護−グリセリン酸塩、例えばカリウム、ナトリウム、またはほかのアルカリ金属への酸化を包含する。これらの塩はまた、商品として入手しうる中間体、すなわちメチル(R)−または(S)−1,2−O−イソプロピリデン−グリセレートを、塩基、例えば水性KOH、NaOHなどで加水分解することによって調製することができる。この塩は、X’−CHCH(OR(式中、X’は、適切な脱離基、好ましくはハロゲン(F、Cl、Br、I)、例えばBrCHCH(ORまたはその誘導体、またはMsO、TsOなどである)と反応し、ついで環化して、二環式中間体(VII)または(VIII)を生じ、これはついで、鏡像異性体的に純粋なD−またはL−ジオキソランヌクレオシドの調製に用いることができる。
【0060】
定義
本明細書において用いられている「実質的に含まない」、「実質的に不存在にある」、または「単離された」という用語は、そのヌクレオシドの指定された鏡像異性体を少なくとも95重量%、好ましくは99から100重量%含むヌクレオシド組成物のことを言う。好ましい実施態様において、この方法は、反対の立体配置の鏡像異性体を実質的に含まない化合物を生成する。
【0061】
本明細書において用いられているアルキルという用語は、ほかに特定されていなければ、C〜C10飽和直鎖、分岐鎖、または環状、第一、第二、または第三炭化水素のことを言い、具体的にはメチル、トリフルオロメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、および2,3−ジメチルブチルを包含する。この用語は、置換および非置換の両方のアルキル基を包含する。アルキル基を置換することができる部分は、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、スルフェート、ホスホン酸、ホスフェート、またはホスホネートからなる群から選択され、これらは非保護であるか、または必要に応じて当業者に知られているように、例えばGreeneら、「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、John Wiley and Sons,Second Edition,1991(参照して本明細書に組み込まれる)に教示されているように保護されている。
【0062】
本明細書において用いられている低級アルキルという用語は、ほかに特定されていなければ、C〜C飽和直鎖、分岐鎖、または適切であれば、環状(例えばシクロプロピル)アルキル基のことを言い、これには置換または非置換の両方の形態が含まれる。この出願においてほかに具体的に記載されていなければ、アルキルが適切な部分である時、低級アルキルが好ましい。同様に、アルキルまたは低級アルキルが適切な部分である時、非置換アルキルまたは低級アルキルが好ましい。
【0063】
本明細書において用いられているアリールという用語は、ほかに特定されていなければ、フェニル、ビフェニル、またはナフチルのことを言う。この用語は、置換および非置換の両方の部分を包含する。アリール基は、ブロモ、クロロ、フルオロ、ヨード、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、スルフェート、ホスホン酸、ホスフェート、またはホスホネートからなる群から選択される1つまたはそれ以上の部分で置換されていてもよく、これらは、非保護であるか、または必要に応じて当業者に知られているように、例えばGreeneら、「有機合成における保護基」、John Wiley and Sons,Second Edition,1991に教示されているように保護されている。
【0064】
アルカリールまたはアルキルアリールという用語は、アリール置換基を有するアルキル基のことを言う。アラルキルまたはアリールアルキルという用語は、アルキル置換基を有するアリール基のことを言う。
【0065】
本明細書において用いられているハロという用語は、ブロモ、クロロ、フルオロ、およびヨードを包含する。
【0066】
本明細書において用いられているヘテロ原子という用語は、酸素、硫黄、窒素、およびリンのことを言う。
【0067】
アシルという用語は、エステル基の非カルボニル部分が、直鎖、分岐鎖、または環状アルキルまたは低級アルキル、メトキシメチルを含むアルコキシアルキル、ベンジルを含むアラルキル、アリールオキシアルキル、例えばフェノキシメチル、場合によりハロゲンで置換されたフェニルを含むアリール、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシ、スルホネートエステル、例えばメタンスルホニルを含むアルキルまたはアラルキルスルホニル、モノ、ジ、またはトリホスフェートエステル、トリチルまたはモノメトキシトリチル、置換ベンジル、トリアルキルシリル(例えばジメチル−t−ブチルシリル)、またはジフェニルメチルシリルから選択されるカルボン酸エステルのことを言う。エステル中のアリール基は、最適にはフェニル基を含む。「低級アシル」という用語は、非カルボニル部分が低級アルキルであるアシル基のことを言う。
【0068】
本明細書において用いられている「保護された」という用語は、ほかに規定されていなければ、さらなる反応を防ぐため、またはほかの目的のために、酸素、窒素、またはリン原子に付加される基のことを言う。非常に多様な酸素および窒素保護基が、有機合成の当業者に知られている。
【0069】
プリンまたはピリミジン塩基という用語には、次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、アデニン、N−アルキル−プリン、N−アシルプリン(ここでアシルはC(O)(アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキルである))、N−ベンジルプリン、N−ハロプリン、N−ビニルプリン、N−アセチレンプリン、N−アシルプリン、N−ヒドロキシアルキルプリン、N−チオアルキルプリン、N−アルキルプリン、N−アルキル−6−チオプリン、チミン、シトシン、5−フルオロ−シトシン、5−メチルシトシン、6−アザピリミジン(6−アザ−シトシンを含む)、2−および/または4−メルカプトピリミジン、ウラシル、5−ハロウラシル(5−フルオロウラシルを含む)、C−アルキルピリミジン、C−ベンジル−ピリミジン、C−ハロピリミジン、C−ビニルピリミジン、C−アセチレンピリミジン、C−アシルピリミジン、C−ヒドロキシアルキルプリン、C−アミド−ピリミジン、C−シアノピリミジン、C−ニトロ−ピリミジン、C−アミノピリミジン、N−アルキル−プリン、N−アルキル−6−チオプリン、5−アザシチジニル、5−アザ−ウラシリル、トリアゾロピリジニル、イミダゾロ−ピリジニル、ピロロピリミジニル、およびピラゾロピリミジニルである。プリン塩基には、次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、グアニン、アデニン、ヒポキサンチン、2,6−ジアミノプリン、6位にアミノまたはカルボニル基を含む置換基を場合により有する2−(Br、Fl、Cl、またはI)−プリン、および2位にアミノまたはカルボニル基を含む置換基を場合により有する6−(Br、Cl、またはI)−プリンである。この塩基上の官能性酸素および窒素基は、必要に応じて、または所望に応じて、保護されていてもよい。適切な保護基は当業者によく知られており、これには、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリチル、アルキル基、およびアシル基、例えばアセチルおよびプロピオニル、メタンスルホニル、およびp−トルエンスルホニルが含まれる。
【0070】
本明細書において用いられるヘテロアリールまたはヘテロ芳香族という用語は、芳香環に少なくとも1つの硫黄、酸素、窒素、またはリンを含む芳香族のことを言う。ヘテロ環式という用語は、環中に少なくとも1つのヘテロ原子、例えば酸素、硫黄、窒素、またはリンが存在する非芳香族環基のことを言う。ヘテロアリールおよびヘテロ環基の非限定例には、次のものが含まれる。すなわち、フリル、フラニル、ピリジル、ピリミジル、チエニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピラジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、キノリル、イソキノリル、ベンゾチエニル、イソベンゾフリル、ピラゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、プリニル、カルバゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソ−チアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、キナゾリニル、シノリニル、フタラジニル、キサンチニル、ヒポキサンチニル、チオフェン、フラン、ピロール、イソピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリミジン、またはピリダジン、およびプテリジニル、アジリジン、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、チアジン、ピリジン、ピラジン、ピペラジン、ピロリジン、オキサジラン、フェナジン、フェノチアジン、モルホリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、キノキサリニル、キサンチニル、ヒポキサンチニル、プテリジニル、5−アザシチジニル、5−アザウラシリル、トリアゾロピリジニル、イミダゾロピリジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、アデニン、N−アルキルプリン、N−ベンジルプリン、N−ハロプリン、N−ビニルプリン、N−アセチレンプリン、N−アシルプリン、N−ヒドロキシアルキルプリン、N−チオアルキルプリン、チミン、シトシン、6−アザピリミジン、2−メルカプトピリミジン、ウラシル、N−アルキルピリミジン、N−ベンジルピリミジン、N−ハロピリミジン、N−ビニルピリミジン、N−アセチレンピリミジン、N−アシルピリミジン、N−ヒドロキシアルキルプリン、およびN−チオアルキルプリン、およびイソキサゾリルである。ヘテロ芳香族基は、場合によりアリールについて上に記載されているように置換されていてもよい。ヘテロ環式またはヘテロ芳香族基は場合により、ハロゲン、ハロアルキル、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシル誘導体、アミド、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノから選択される1つまたはそれ以上の置換基で置換されていてもよい。ヘテロ芳香族化合物は、所望に応じて一部または全部水素化されていてもよい。非限定例として、ジヒドロピリジンを、ピリジンの代わりに用いることができる。ヘテロ環式またはヘテロアリール基上の官能性酸素および窒素基は、必要に応じて、または所望に応じて保護されてもよい。適切な保護基は、当業者によく知られており、これには、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t−ブチルジメチルシリル、およびt−ブチルジフェニルシリル、トリチルまたは置換トリチル、アルキル基、アシル基、例えばアセチルおよびプロピオニル、メタンスルホニル、およびp−トルエニルスルホニルが含まれる。
【0071】
これらのプリンまたはピリミジン塩基、ヘテロ芳香族化合物およびヘテロ環は、アルキル基または芳香環で置換されていてもよく、単結合または二重結合を通して結合されるか、ヘテロ環式環系に縮合されてもよい。プリン塩基、ピリミジン塩基、ヘテロ芳香族、またはヘテロ環は、あらゆる利用可能な原子を通して糖部分に結合されていてもよい。これには、環窒素および環炭素(C−ヌクレオチドを生成する)が含まれる。
【0072】
プロセス工程の詳細な説明
環化中間体を介したβ−D−またはβ−L−1,3−ジオキソランヌクレオシドの製造方法
工程1 − 環化中間体の調製
このプロセスのための鍵出発原料は、適切に置換されたD−またはL−環式中間体である。D−またはL−環式中間体は、購入することができ、または標準的脱離または酸化、および還元技術を包含するあらゆる既知の手段によって調製することができる。1つの実施態様において、D−またはL−環式中間体は、次のプロトコルにしたがって調製される。
【0073】
【化24】

(式中、RおよびRは独立して、アルキルまたはアラルキルであり;
は=CR5’またはCH(OH)R5’であり;
5’は、アルキルまたはアラルキルであり;かつ
Mは、金属、好ましくはアルカリ金属、例えばNaまたはKである)。
【0074】
グリセロールは、1,2−O−保護−グリセロール(1)またはグリセロール類似体、例えばD−またはL−1,2−O−ジイソプロピリデングリセロール、または1,2:5,6−ジ−O−ジイソプロピリデン−D−マンニトール、またはほかの隣位保護ジオールを、相溶性溶媒中で、適温において、適切な酸化剤と反応させることによって、1,2−O−保護−グリセリン酸塩(2)に酸化され、対応する1,2−O−保護−グリセリン酸塩(2)を生じる。この保護グリセロールは、購入することができるか、または標準的保護技術を包含するあらゆる既知の手段によって調製することができる。このグリセロールは、あらゆる適切な保護基、例えばアシルまたはシリル基によって、好ましくはアシル基によって、当業者によく知られている方法によって、Greeneら、「有機合成における保護基」、John Wiley and Sons,Second Edition,1991に教示されているように保護することができる。例えばアセトンをグリセロールと反応させ、室温において、対応するD−またはL−1,2−O−ジイソプロピリデングリセロールを形成することができる。
【0075】
可能性のある酸化剤は、酸化を促進するあらゆる試薬であり、これには次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、NaIO/RuCl水和物、NaOCl/RuCl水和物、またはKMnO、またはNaIO、またはKIOついでKMnOである。
【0076】
グリセリン酸塩形成は、所望の結果を達成する、すなわち反応が、分解または過剰な副生成物を促進することなく、許容しうる速度で進行するのに適したあらゆる温度で実施することができる。好ましい温度は−10℃から100℃である。
【0077】
【化25】

(式中、RおよびRは独立して、アルキルまたはアラルキルであり;
は=CR5’またはCH(OH)R5’であり;
5’は、アルキルまたはアラルキルであり;かつ
Mは、金属、好ましくはアルカリ金属、例えばNaまたはKである)。
【0078】
化合物2は、1’を、塩基、例えば水性KOHまたはNaOHで加水分解することによって調製することができる。
【0079】
必要な温度を得ることができ、かつ反応成分を可溶化しうるあらゆる反応溶媒を選択することができる。非限定例は、あらゆる非プロトン性溶媒であり、これには次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、アルキル溶媒、例えばヘキサンおよびシクロヘキサン、トルエン、アセトン、エチルアセテート、THF、ジオキサン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、またはこれらのあらゆる組合わせ、または別の方法では水である。
【0080】
化合物1、1’、および2は、D−およびL−異性体を包含する。
【0081】
【化26】

(式中、各Rは独立して、水素、アルキル、またはアラルキルであり、多くとも1つのRが水素である)。
【0082】
1,2−O−保護−グリセリン酸塩(2)をついで、X’−CHCH(OR(式中、X’は、適切な脱離基、好ましくはハロゲン(F、Cl、Br、I)、またはMsO、TsOなど、最も好ましくはBrである)と、相間移動触媒、例えばクラウンエーテルまたはテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物を用いて、または用いずに、相溶性溶媒中で適温において反応させて、アセタールまたはヘミアセタール3(D−およびL−異性体を包含する)を生じうる。1つの実施態様において、グリセリン酸塩(2)は、先行工程から精製されない。
【0083】
アセタールまたはヘミアセタール形成は、所望の結果を達成する、すなわち反応が、分解または過剰な副生成物を促進することなく、許容しうる速度で進行するのに適したあらゆる温度で実施することができる。好ましい温度は還流条件である。
【0084】
必要な温度を得ることができ、かつ反応成分を可溶化しうるあらゆる反応溶媒を選択することができる。非限定例は、あらゆる非プロトン性溶媒であり、これには次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、アルキル溶媒、例えばヘキサンおよびシクロヘキサン、トルエン、ジオキサン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、またはこれらのあらゆる組合わせ、好ましくは無水DMFである。
【0085】
【化27】

【0086】
アセタールまたはヘミアセタール3をついで、酸性条件下、相溶性溶媒中で適温において加水分解し、アルデヒド4(D−およびL−異性体を包含する)を生じる。加水分解に適した酸には次のものが含まれる。すなわち、酢酸、蟻酸、水性トリフルオロ酢酸、水性硫酸、水性塩酸、メタンスルホン酸、アルキルまたはアラルキルスルホン酸、またはルイス酸である。
【0087】
アルデヒド形成は、所望の結果を達成する、すなわち反応が、分解または過剰な副生成物を促進することなく、許容しうる速度で進行するのに適したあらゆる温度で実施することができる。好ましい温度は−10℃から室温である。
【0088】
必要な温度を得ることができ、かつ反応成分を可溶化しうるあらゆる反応溶媒を選択することができる。非限定例は、あらゆるプロトン性または非プロトン性溶媒であり、これには次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、アルキル溶媒、例えばヘキサンおよびシクロヘキサン、トルエン、THF、ジオキサン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、またはこれらのあらゆる組合わせ、または別の方法では水である。
【0089】
【化28】

【0090】
D−およびL−アルデヒド4をついで、好ましくは酸の存在下、相溶性溶媒中で適温において環化し、鍵中間体VIIまたはVIIIを生じうる。好ましい酸は、BFエテレートである。
【0091】
【化29】

【0092】
D−またはL−3を同様に、好ましくは酸の存在下、相溶性溶媒中で適温において環化し、鍵中間体VIIまたはVIIIを生じうる。好ましい実施態様において、この酸は、BFエテレートである。
【0093】
環化は、所望の結果を達成する、すなわち反応が、分解または過剰な副生成物を促進することなく、許容しうる速度で進行するのに適したあらゆる温度で実施することができる。好ましい温度は−10℃から100℃である。
【0094】
必要な温度を得ることができ、かつ反応成分を可溶化しうるあらゆる反応溶媒を選択することができる。非限定例は、あらゆる非プロトン性溶媒であり、これには次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、アルキル溶媒、例えばヘキサンおよびシクロヘキサン、トルエン、THF、ジオキサン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、またはこれらのあらゆる組合わせ、好ましくはアセトニトリルである。
【0095】
工程2 − ヌクレオシドの調製
【0096】
【化30】


(式中、Rは、適切な酸素保護基である)。
【0097】
この鍵中間体VIIまたはVIIIはついで、水性アルカリまたはアルカリ土類金属塩基、例えば水性NaOHまたは水性KOHの存在下、相溶性溶媒中で適温において加水分解し、カルボン酸を生じうる。これはついで必要であれば、標準的保護技術によって保護することができ、適切に保護されたカルボン酸6aまたは6bを生じる。このカルボン酸は、あらゆる適切な保護基、例えばアシルまたはシリル基によって、好ましくはアシル基によって、当業者によく知られている方法によって、Greeneら、「有機合成における保護基」、John Wiley and Sons,Second Edition,1991に教示されているように保護することができる。例えばアセトンをグリセロールと反応させ、室温において、対応するD−またはL−1,2−O−ジイソプロピリデングリセロールを形成することができる。
【0098】
カルボン酸形成は、所望の結果を達成する、すなわち反応が、分解または過剰な副生成物を促進することなく、許容しうる速度で進行するのに適したあらゆる温度で実施することができる。好ましい温度は−10℃から室温である。
【0099】
必要な温度を得ることができ、かつ反応成分を可溶化しうるあらゆる反応溶媒を選択することができる。非限定例は、あらゆる非プロトン性溶媒であり、これには次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、アルキル溶媒、例えばヘキサンおよびシクロヘキサン、トルエン、エチルアセテート、THF、ジオキサン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、またはこれらのあらゆる組合わせ、または別の方法では水である。
【0100】
【化31】


(式中、Lは適切な脱離基、例えばO−アシル、例えばOAc、またはハロゲン(F,Br、Cl、またはI)、またはOMs、OTsなどである)。
【0101】
適切に保護されたカルボン酸6aまたは6bをついで、相溶性溶媒中、適温において活性化し、活性化された1,3−ジオキソラン7aまたは7bを得ることができる。例えばこの適切に保護されたカルボン酸(6a)または(6b)を、鉛テトラアセテートで脱カルボキシルして、1,3−ジオキソラン−4−アセテート7を生じうる。
【0102】
脱カルボキシルは、所望の結果を達成する、すなわち反応が、分解または過剰な副生成物を促進することなく、許容しうる速度で進行するのに適したあらゆる温度で実施することができる。好ましい温度は−10℃から100℃である。
【0103】
必要な温度を得ることができ、かつ反応成分を可溶化しうるあらゆる反応溶媒を選択することができる。非限定例は、あらゆる非プロトン性溶媒であり、これには次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、アルキル溶媒、例えばヘキサンおよびシクロヘキサン、トルエン、エチルアセテート、THF、ジオキサン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ピリジン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、またはこれらのあらゆる組合わせ、好ましくは無水アセトニトリルである。
【0104】
【化32】

(式中、Bは、プリンまたはピリミジン塩基、またはその誘導体である)。
【0105】
活性化された1,3−ジオキソラン7aまたは7bをついで、相溶性溶媒中、適温において、当分野で知られているあらゆる手段を用いて、プリンまたはピリミジン塩基、またはその誘導体とカップリングし、保護されたβ−D−またはβ−L−1,3−ジオキソランヌクレオシド8aまたは8bを得ることができる。例えば、活性化されたプリンまたはピリミジン塩基を、好ましくは塩基のシリル化、例えばHMDSでシリル化された塩基を介して、ルイス酸、例えば錫テトラクロライド、チタンテトラクロライド、またはトリメチルシリルトリフレートを用いて、1,3−ジオキソランにカップリングすることができる。
【0106】
このカップリングは、所望の結果を達成する、すなわち反応が、分解または過剰な副生成物を促進することなく、許容しうる速度で進行するのに適したあらゆる温度で実施することができる。好ましい温度は−50℃から100℃である。
【0107】
必要な温度を得ることができ、かつ反応成分を可溶化しうるあらゆる反応溶媒を選択することができる。非限定例は、あらゆる非プロトン性溶媒であり、これには次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。すなわち、アルキル溶媒、例えばヘキサンおよびシクロヘキサン、トルエン、THF、ジオキサン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ピリジン、またはこれらのあらゆる組合わせ、好ましくはジクロロメタンである。
【0108】
その後このヌクレオシドは、当業者によく知られている方法によって、Greeneら、「有機合成における保護基」、John Wiley and Sons,Second Edition,1991に教示されているように脱保護することができる。例えばt−ブチルジフェニルシリル保護された5’−OHは、室温においてTHFの1N TBAF溶液で脱保護することができる。あるいはまた、アシル基で保護された5’−OHは、非限定的に、アルコールおよび水、例えばエタノールおよび水中のアンモニアまたは有機アミンで脱保護することができる。
【0109】
本発明の化合物は、少なくとも2つのキラル中心を有し、光学的に活性なラセミ形態において存在してもよく、単離されてもよい。いくつかの化合物は、多形性を示しうる。本発明は、本発明の化合物のラセミ、光学的に活性、多形、キラル、ジアステレオマー、または立体異性体の形態、またはこれらの混合物を包含する。これらは、本明細書に記載されている有用な特性を有する。本発明のあるいくつかの化合物が、不斉置換された炭素原子を含有し、光学的に活性な形態またはラセミ形態で単離されうると理解される。光学的に活性な形態は、例えば、再結晶技術、光学的に活性な出発原料からの合成、キラル合成、またはキラル固定相を用いたクロマトグラフィー分離、または酵素分割によるラセミ形態の分割によって調製することができる。特定の立体化学または異性体形態が具体的に指摘されていなければ、すべてのキラル、ジアステレオマー、ラセミ形態、および1つの構造のすべての幾何学的異性体形態が対象となる。
【0110】
これらの化合物の光学的に活性な形態は、再結晶技術、光学的に活性な出発原料からの合成、キラル合成、またはキラル固定相を用いたクロマトグラフィー分離によるラセミ形態の分割を包含する、当分野において知られているあらゆる技術を用いて調製することができる。
【0111】
光学的に活性な材料を得るための方法の例には、少なくとも次のものが含まれる。
【0112】
i)結晶の物理的分離 − 個々の鏡像異性体の巨視的結晶が手動で分離される技術。この技術は、分かれた鏡像異性体の結晶が存在するならば、すなわち材料が集塊(conglomerate)であり、これらの結晶が外観上はっきりと識別されるならば、用いることができる;
ii)同時結晶化 − 個々の鏡像異性体が、ラセメートの溶液から別々に結晶化される技術であって、ラセメートが固体状態において集塊でありさえすれば可能である技術;
iii)酵素分割 − 酵素を用いた、鏡像異性体についての異なる反応速度によるラセメートの一部または完全分離が行なわれる技術;
iv)酵素不斉合成 − 合成の少なくとも1つの工程が、所望の鏡像異性体の鏡像異性体的に純粋であるかまたは濃縮された(enriched)合成先駆物質を得るために酵素反応を利用する合成技術;
v)化学的不斉合成 − 所望の鏡像異性体が、この生成物中に不斉性(すなわちキラリティー)を生成する条件下にアキラル先駆物質から合成される合成技術。これは、キラル触媒またはキラル助剤を用いて行なわれてもよい。
【0113】
vi)ジアステレオマー分離 − 個々の鏡像異性体をジアステレオマーに転換する鏡像異性体的に純粋な試薬(キラル助剤)とラセミ化合物とを反応させる技術。この結果生じたジアステレオマーをついで、今やさらに明確になった構造差により、クロマトグラフィーまたは結晶化によって分離し、その後キラル助剤を除去して、所望の鏡像異性体が得られる;
vii)一次および二次不斉トランスフォーメーション − ラセメートからのジアステレオマーが平衡し、所望の鏡像異性体からのジアステレオマーの溶液中の優勢を生じるか、または所望の鏡像異性体からのジアステレオマーの優先的結晶化は、平衡をかき乱し、したがって場合によっては原則的に、すべての材料が、所望の鏡像異性体から結晶性ジアステレオマーに転換される技術。この所望の鏡像異性体はついで、ジアステレオマーから放出される;
viii)動的分割 − この技術は、動的条件下、キラル、非ラセミ試薬または触媒を用いての鏡像異性体の等しくない反応速度により、ラセメートの一部または全部分割(または一部分割された化合物のさらなる分割)の達成のことを言う;
ix)非ラセミ先駆物質からのエナンチオ特異的合成 − 所望の鏡像異性体が、非キラル出発原料から得られ、立体化学的統合性(integrity)が、合成経路に対して妥協しないか、または最小限しか妥協しない合成技術;
x)キラル液体クロマトグラフィー − ラセメートの鏡像異性体が、固定相との異なる相互作用によって(キラルHPLC経由も包含する)、液体移動相において分離される技術。固定相は、キラル材料から作製することができる。または移動相は、異なる相互作用を引起こすために追加のキラル材料を含有してもよい;
xi)キラルガスクロマトグラフィー − ラセメートを揮発させ、鏡像異性体を、固定非ラセミキラル吸着相を含有するカラムとの、気体移動相における異なる相互作用によって分離させる技術;
xii)キラル溶媒での抽出 − 鏡像異性体を、特別なキラル溶媒中への1つの鏡像異性体の優先的溶解によって分離させる技術;
xiii)キラル膜を通過する輸送 − ラセメートを薄膜バリヤとの接触下に置く技術。このバリヤは一般的に、1つがラセメートを含有する2つの混和性流体を分離し、駆動力、例えば濃度または圧力差が、膜バリヤを通る優先的輸送を引起こす。分離は、ラセメートの1つだけの鏡像異性体を通過させることができる、この膜の非ラセミキラル性の結果として生じる。
【0114】
擬似移動床クロマトグラフィーを包含するキラルクロマトグラフィーを、1つの実施態様において用いる。非常に多様なキラル固定相が、商品として入手しうる。
【0115】
本発明は、次の非限定例によってさらによく理解される。
【0116】
(実施例)
融点を、メル・テンプ(Mel−temp)II装置で測定し、修正しない。NMRスペクトルを、バリアン(Varian)400AMX分光計で、内部標準としてTMSを用いて、HNMRについては400MHz、13CNMRについては100MHzで記録した。化学シフト(δ)を、百万分の1(ppm)で報告し、シグナルは、s(一重項)、d(二重項)、t(三重項)、q(四重項)、m(多重項)、またはbs(広幅一重項)として報告する。IRスペクトルは、ニコレット(Nicolet)510P FT−IR分光計で測定した。質量スペクトルは、マイクロマス・オートスペック(Micromass Autospec)高解像質量分光計で記録した。TLCは、アナルテック社(Analtech Co.)から購入したユニプレーツ(Uniplates)(シリカゲル)上で実施した。カラムクロマトグラフィーは、フラッシュクロマトグラフィー用のシリカゲル−60(220−440メッシュ)、または真空フラッシュカラムクロマトグラフィー用のシリカゲルG(TLCグレード、>440メッシュ)のどちらかを用いて実施した。UVスペクトルは、ベックマン(Beckman)DU650分光光度計で得られた。元素分析は、ジョージア州ノルクロスのアトランティック・マイクロラブ社(Atlantic Microlab,Inc.,Norcross,GA)、またはテネシー州ノックスビルのガルブレイス・ラボラトリーズ社(Galbraith Laboratories,Inc.,Knoxville,TN)によって実施した。HPLCは、モデル600コントローラー、モデル996光ダイオードアレイ検出器、およびモデル717プラスオートサンプラーを備えたウォーターズ(Waters)HPLC装置(マサチューセッツ州ミルフォードのミリポア社(Millipore Corporation,Milford,MA))を用いて実施した。システム制御、データ収集、およびプロセシングのために、ミレニアム(Millennium)2010ソフトウエアを用いた。キラライザー(chiralyser)偏光検出器、パーキン−エルマー(Perkin−Elmer)モデル241MC偏光計(コネチカット州ウイルトン(Wilton,CT))を、旋光度の決定のために用いた。
【実施例1】
【0117】
1.エステル(3)の調製
CCl(60mL)、CHCN(60mL)、およびHO(90mL)中の1,2:5,6−O−ジイソプロピリデン−D−マンニトール(1、13.1g、50ミリモル)RuCl・HO(0.4g)、NaIO(0.2モル、42.8g)、およびNaHCO(0.11モル、9.24g)の混合物を、室温で3時間攪拌した。有機相を除去し、水性相を、減圧下、乾燥に至るまで濃縮した。残渣を、EtOH(300mL)中で1時間還流し、濾過した。この濾過物を乾燥に至るまで濃縮し、トルエン(50mL)と共蒸発させた。残渣を、DMF(100mL)中のブロモアセトアルデヒドジエチルアセタール(50ミリモル、7.52mL)と混合した。この混合物を、5時間還流した。溶媒を真空除去した。残渣をEtOAc(200mL)で処理し、混合物をHO(50mL×2)で洗浄した。有機相を乾燥した(NaSO)。溶媒を除去すると、化合物3を生じた(13.5g、50%)。H−NMR(CDCl):H−NMR(CDCl):δ4.70(t、1H、CHOEt)、4.62(m、1H、2−H)、4.18(m、4H、2xCH)、3.50−3.75(m、4H、2xMeCH)、1.50、1.40(ss、6H、C(Me))、1.20(t、J=6.8Hz、6H、2xCCH)。
【0118】
2.化合物(5)の調製
蟻酸(HO中80%、20mL)中の化合物3(1.0g、4.2ミリモル)の溶液を、室温で1時間20分攪拌した。この溶液を35℃以下で乾燥に至るまで濃縮した。残渣をトルエン(2×10mL)と共蒸発させると、粗ジオールを油として生じた。これをアセトニトリル(50mL、0.01%のHOを含有)中に溶解した。この溶液に、BF・OEt(8.4ミリモル、1.065mL)を添加し、室温で20時間攪拌した。EtOAc(100mL)を添加し、その結果生じた溶液を、HO(10mL)および水性NaHCO(3×10mL)で洗浄した。有機溶液を乾燥した(NaSO)。溶媒を除去し、残渣をシリカゲルカラム(5%MeOH/CHCl)によって精製すると、化合物5を固体として生じた。H−NMR(CDCl):δ5.26(s、1H、2−H)、4.92(d、J= 12.4Hz、1H)、4.69(dd、J=1.2、6.8Hz、1H)、4.49(dd、J=1.2、8.8Hz、1H)、4.19(d、J=12.8Hz、1H)、4.05(dd、J=7.2、9.2Hz、1H)。
【0119】
3. 4−アセトキシジオキソラン(7)の調製
化合物5(200mg、1.5ミリモル)を、THF(20mL)中に溶解した。この溶液に、1N NaOH(2mL、2ミリモル)を添加し、混合物を室温で2時間攪拌した。この混合物に、NaHCO(3ミリモル、252mg)、ついで過剰BzCl(1.5mL)を添加し、混合物を、室温で2時間攪拌した。EtOAc(50mL)を添加し、この溶液のpHを、6N HClの添加によって1.5に調節した。有機溶液をHO(2×5mL)で洗浄し、乾燥した(NaSO)。溶媒を除去し、残渣をTHF(20mL)中に溶解した。この溶液に、ピリジン(1.5ミリモル、118mg)およびPd(OAc)(3ミリモル、1.33g)を添加し、混合物を室温で16時間攪拌した。EtOAc(100mL)を添加し、混合物をHO(3×20mL)で洗浄した。有機相を乾燥した(NaSO)。溶媒を除去し、残渣をシリカゲルカラム(10%EtOAc/ヘキサン)によって精製すると、化合物7を生じた(38%)。H−NMR(CDCl):δ8.10−7.42(m、5H、Bz)、6.44、6.38(ddd、J=2.0、4、4、4.0Hz、1H、4−H)、5.55、5.46(tt、J=3.2、4.0Hz、1H、2−H)、4.43(m、2H、2−CH)、4.24(m、1H、5−H)、4.02(m、1H、5’−H)、2.11、1.99(ss、3H、Ac)。
【0120】
4. 2’−ヒドロキシメチル−1’3’−ジオキソラン−イル−2−アミノ−6−パラメトキシベンゼンメルカプトプリン(9)の調製
HMDS(10mL)中2−アミノ−6−クロロプリン(2ミリモル、339mg)および(NHSO(10mg)の懸濁液を5時間還流し、透明溶液を乾燥に至るまで蒸発させた。残渣をCHCl(10mL)中に溶解した。この溶液に、CHCl(5mL)中のアセテート7(133mg、0.5ミリモル)の溶液、およびヨードトリメチルシラン(TMSI、2.6ミリモル、0.37mL)を0℃で添加した。混合物を室温で20時間攪拌し、3時間還流した。その結果生じた混合物を室温まで冷却し、pH7に中和した。有機溶液を乾燥し(NaSO)、溶媒を除去した。残渣をシリカゲルカラム(5%MeOH/CHCl)によって精製すると、生成物を、3/2の比(β−異性体の方が多い)のα/β−異性体、2’−ベンゾイルオキシメチル−1’,3’−ジオキソラン−4’−イル−2−アミノ−6−クロロプリン(132mg、70%)の混合物を生じた。
【0121】
DMF(5mL)中のp−メトキシベンゼンチオール(0.14mL、1ミリモル)とNaH(48mg、2ミリモル)との混合物を、室温で10分間攪拌した。この混合物に、DMF(2mL)中の保護ヌクレオシドの溶液を添加し、混合物を室温で20時間攪拌した。溶媒を除去し、残渣をMeOH(20mL)中に溶解し、ブチルアミン(2mL)を添加した。溶液を20時間還流した。溶媒を除去し、残渣をシリカゲルカラムによって精製すると、最終ヌクレオチド、2’−ヒドロキシメチル−1’,3’−ジオキソラン−イル−2−アミノ−6−パラメトキシベンゼンメルカプトプリン(9)を生じた。NMR(CDCl):δ7.91(s、1H、8−H)、7.50(d、J=8.4Hz、2H、Ph)、6.95(d、J=8.4Hz、2H、Ph)、6.24(dd、J=2.8、8.4Hz、1H、4’−H)、5.25(t、J=2.4Hz、1H、2’−H)、4.86(brs、2H、NH)、4.47、4.30(mm、2H、5’−H)、3.91(d、J=1.2Hz、2H、6’−H)、3.85(s、3H、OCH)。
【0122】
本明細書に記載されている本発明の修正および好ましい調節は、当業者には明白である。これらの修正および調節のすべては、本発明の範囲内にあると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1は、中間体の二環式エステルVIIまたはVIIIを通した、ジオキソランヌクレオシドの不斉合成の非限定的な図である。1から9のすべての中間体は、D−およびL−異性体を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

1,2−O−保護−グリセロールの酸塩への酸化、またはメチル(R)−または(S)−1,2−O−保護−グリセレートの加水分解によって中間体1を形成する工程;
式:X’CHCH(OR(式中、X’は、ハロゲンまたはプソイドハロゲンであり、Rは、アルキルまたはアラルキル(C1〜20)である)の化合物での中間体1のアルキル化工程;および
場合によりアセタールの加水分解を伴った、酸触媒での環化工程
を含む式VIIまたはVIIIの化合物の調製方法。
【請求項2】
式VIIまたはVIIIの化合物のエステル基の加水分解工程、ついでその結果生じたアルコールの、塩基性条件下、式6(D−およびL−異性体を含む):
【化2】

(式中、Rは保護基である)
の化合物への保護工程もさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
は、アシル、シリル、アルキル、またはアラルキル基(C1〜20)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
化合物6のカルボキシル基の脱カルボキシル工程、およびプリンまたはピリミジン塩基、またはその誘導体とのカップリング、ついで脱保護によって式:III−VI:
【化3】

(式中、
Rは、H、ハロゲン、OH、OR’、SH、SR’、NH、NHR’、NR’、C〜Cの低級アルキル、CH=CH、NC=CH、COH、COR’、CONH、CN、CONHR’、CHOH、CHCN、CHCHOH、CF、CHCHF、CH=CHCOH、CH=CHCOR’、CH=CHCl、CH=CHBr、またはCH=CHIであり;
R’は、低級アルキル(C1〜4)であり;
各XおよびYは独立して、H、ハロゲン、OH、OCH、SH、SCH、NH、NHR’、NR’、またはCHであり;かつ
Zは、CHまたはC−Xである)
のD−およびL−ジオキソランヌクレオシドを形成する工程
もさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
式VIIおよびVIIIのエステルの加水分解に用いられる塩基は、有機または無機塩基またはこれらの組合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
この塩基が、水性アルカリまたはアルカリ土類金属塩基である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
この塩基が、水性NaOHまたは水性KOHである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
酸化が、NaIO/RuCl水和物、NaOCl/RuCl水和物、KMnO、NaIO、およびKIO、およびこれらの組合わせからなる群から選択される酸化剤を用いて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
脱カルボキシルが、約−10℃から100℃で、非プロトン性溶媒または水、またはこれらの組合わせ中で実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
この溶媒が、非プロトン性溶媒である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
この溶媒が、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、エチルアセテート、THF、ジオキサン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、またはこれらの組合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
この酸がルイス酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
この酸がBFエテレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
塩基またはその誘導体のシリル化;および
このシリル化塩基またはその誘導体の、ルイス酸の存在下における式6の化合物へのカップリング
による、プリンまたはピリミジン塩基、またはその誘導体のカップリング工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
ルイス酸が、錫テトラクロライド、チタンテトラクロライド、またはトリメチルシリルトリフレートからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
この塩基またはその誘導体が、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)でシリル化される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
式II−VIのヌクレオシドを光学的に活性な形態において単離する工程もさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
この光学的に活性な形態は、再結晶化技術、光学的に活性な出発原料からの合成、キラル合成、またはキラル固定相を用いたクロマトグラフィー分離によるラセミ形態の分割によって単離される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
このプリンまたはピリミジン塩基は、アデニン、N−アルキル−プリン、N−アシルプリン(ここでアシルは、C(O)(アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキルである))、N−ベンジルプリン、N−ハロプリン、N−ビニルプリン、N−アセチレンプリン、N−アシルプリン、N−ヒドロキシアルキルプリン、N−チオアルキルプリン、N−アルキルプリン、N−アルキル−6−チオプリン、チミン、シトシン、5−フルオロ−シトシン、5−メチルシトシン、6−アザピリミジン(6−アザ−シトシンを含む)、2−および/または4−メルカプトピリミジン、ウラシル、5−ハロウラシル(5−フルオロウラシルを含む)、C−アルキルピリミジン、C−ベンジル−ピリミジン、C−ハロピリミジン、C−ビニルピリミジン、C−アセチレンピリミジン、C−アシルピリミジン、C−ヒドロキシアルキルプリン、C−アミド−ピリミジン、C−シアノピリミジン、C−ニトロ−ピリミジン、C−アミノピリミジン、N−アルキル−プリン、N−アルキル−6−チオプリン、5−アザシチジニル、5−アザ−ウラシリル、トリアゾロピリジニル、イミダゾロ−ピリジニル、ピロロピリミジニル、およびピラゾロピリミジニルからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−504703(P2006−504703A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539827(P2004−539827)
【出願日】平成15年8月6日(2003.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2003/024986
【国際公開番号】WO2004/028445
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(505038368)フアーマセツト・インコーポレイテツド (2)
【Fターム(参考)】