説明

11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ−1の阻害剤としてのピラゾールカルボキサミド

構造式(I)のピラゾールカルボキサミドは、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ−1の選択的な阻害剤である。本化合物は、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)などの糖尿病、高血糖、肥満、インスリン抵抗性、異脂肪血症、高脂血症、高血圧、メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)及びNIDDMに関連する他の症候の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素、11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ タイプI(11β−HSD−1又はHSD−1)の阻害剤としてのピラゾールカルボキサミド及びこのような化合物を用いたある種の症状を治療する方法に関する。本発明の化合物は、インスリン非依存性2型糖尿病(NIDDM)などの糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、脂質疾患、高血圧及びその他の疾病及び症状の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、複数の原因因子に由来し、絶食状態における血漿グルコースレベルの上昇(高血糖)を最も端的な特徴とする。糖尿病には、一般に認知されている2つの形態が存在する。1型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病(IDDM)では、患者は、グルコースの利用を制御するホルモンであるインスリンをほとんど、又は全く産生せず、2型糖尿病又はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)では、患者はインスリンを産生し、高インスリン血症さえ示す(非糖尿病の個体と比較して、患者の血漿インスリンレベルは同レベルであるか、上昇している場合さえある。)が、同時に高血糖を呈する。1型糖尿病は、通常、注射を介した外からのインスリン投与により治療を行う。しかし、2型糖尿病の場合、「インスリン抵抗性」が起こっていることが多く、主要なインスリン感受性組織である筋肉、肝臓及び脂肪組織中において、インスリンのグルコース及び脂質代謝刺激効果が減弱している。インスリン抵抗性であるが糖尿病ではない患者では、そのインスリン抵抗性を補うレベルにインスリンレベルが上昇しており、血清グルコースレベルは上昇していない。NIDDMの患者では、血漿インスリンレベルが上昇している場合でも、顕著なインスリン抵抗性を克服するには十分ではなく、その結果高血糖となる。
【0003】
インスリン抵抗性は、未だ完全に解明されていないインスリン受容体結合の欠陥が主な原因である。インスリンに対する抵抗性がある結果、グルコース取り込みが十分に活性化されず、筋肉でのグルコース酸化及びグリコーゲン貯蔵が低下し、脂肪組織における脂肪分解のインスリン抑制が不適切になり、肝臓によるグルコース産生及び分泌が異常になる。
【0004】
糖尿病において起こる高血糖が持続する場合、又は制御されない場合、罹病率が上昇し、死亡時期が早まる。グルコースホメオスタシスの異常はまた、直接的及び間接的に、肥満、高血圧及び脂質、リポタンパク質及びアポリポタンパク質代謝の変化を伴うことが多い。2型糖尿病患者は、例えば、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、発作、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害及び網膜症などの、心血管系の合併症を発症するリスクが高くなる。したがって、糖尿病の臨床管理及び治療では、グルコースのホメオスタシス、脂質代謝、肥満及び高血圧を治療によって管理することが非常に重要である。
【0005】
インスリン抵抗性を有するが2型糖尿病を発症していない多くの患者はまた、「シンドロームX」又は「メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)」と呼ばれる症候を発症するリスクがある。シンドロームX又はメタボリックシンドロームは、腹部肥満、高インスリン血症、高血圧、低HDL及び高VLDLに加えてインスリン抵抗性を特徴とする。明白な糖尿病を発症しているかどうかにかかわらず、これらの患者は、上記で挙げた心血管系合併症を発症するリスクが高い。
【0006】
2型糖尿病の治療には、通常、身体運動及び食事が含まれる。スルホニル尿素(例えば、トルブタミド及びグリピジド)もしくは、メグリチニド(膵臓のβ細胞を刺激して、より多くのインスリンを分泌させる。)を投与することによって、及び/又はスルホニル尿素又はメグリチニドが有効でなくなった場合にはインスリンを注射することによって、インスリンの血漿レベルを増加させると、インスリン抵抗性のある組織を刺激するのに十分な濃度までインスリン濃度を高くすることができる。しかし、血漿グルコースレベルが危険なまでに低下する場合があり、究極的にはインスリン抵抗性のレベルが上昇する可能性がある。
【0007】
ビグアナイド剤は、インスリン感受性を向上させ、それにより高血糖をある程度是正する。しかし、多くのビグアナイド剤、例えばフェンホルミン及びメトホルミンは、乳酸アシドーシス、悪心及び下痢を引き起こす。
【0008】
グリタゾン(すなわち、5−ベンジルチアゾリジン−2,4−ジオン)は、新しい化合物のクラスであり、高血糖及び2型糖尿病の他の症候を軽減する可能性を秘めている。これらの薬剤は、筋肉、肝臓及び脂肪組織中のインスリン感受性を大きく向上させ、その結果、実質的に低血糖を生じさせずに、高い血漿グルコースレベルをある程度、又は完全に是正する。現在市販されているグリタゾンは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γサブタイプのアゴニストである。一般に、グリタゾンを用いた場合に見られるインスリン感受性の向上は、PPAR−γのアゴニズムによるものと考えられている。2型糖尿病及び/又は異脂肪血症の治療のために開発されている、さらに新しいPPARアゴニストは、PPARα、γもしくはδサブタイプの1又は複数のアゴニストである。インスリン感受性増強剤及び2型糖尿病の治療に対する他のメカニズムの概説として、M.Tadayyon及びS.A.Smith,“Insulin sensitisation in the treatment of type 2 diabetes,”Expert Opin.Investig.Drugs,12:307−324(2003)を参照のこと。
【0009】
メタボリックシンドロームなど、糖尿病及び関連症状を治療する新しい方法が引き続き必要とされている。本発明は、このニーズ及び他のニーズに合致するものである。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、構造式I:
【0011】
【化2】

のピラゾールカルボキサミド又は医薬適合性のその塩もしくは溶媒和物に関する。
(式中、
各nは、独立に0、1又は2であり;
は、水素又はC1−4アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はヒドロキシもしくは1個から3個のフッ素で置換されている。)であり;
は、C1−4アルキル、アリール、アリールメチル、ヘテロアリール又はヘテロアリールメチル(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から4個のR置換基で置換されている。)であり;
は、水素、ハロゲン又はC1−4アルキル(アルキルは、置換されていないか、ヒドロキシもしくは1個から3個のフッ素で置換されている。)であり;
は、水素又はC1−4アルキルであり;
は、(CHアリール、(CH4−9シクロアルキル、(CH5−11ビシクロアルキル又は(CH10−14トリシクロアルキル(該アリール、シクロアルキル、ビシクロアルキル及びトリシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル及びC1−4アルキルから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)であるか;
又は、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、O、S及びNC0−4アルキルから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有する、5から7員環の飽和複素環を形成し、該複素環は、場合によっては、ベンゼン環と縮合しており、該複素環又は場合によってはベンゼン環と縮合している複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、C1−4アルキル、トリフルオロメチル及び(CHアリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン及びC1−4アルキルから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されているか;
又は、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、O、S及びNC0−4アルキルから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有するC6−11アザビシクロ環系を形成し、該アザビシクロ環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキルから独立に選択される、1個から3個の置換基で置換されており;
各Rは、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、ハロゲン、シアノ、C1−4アルキル、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アリール及びヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又はシアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキル、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択される。)。
【0012】
本発明のピラゾールカルボキサミドは、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ タイプ1(11β−HSD1)の阻害剤として有効である。したがって、これらは、2型糖尿病、脂質疾患、肥満、アテローム性動脈硬化症及びメタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)など、11β−HSD1の阻害が奏功する疾患の治療、制御又は予防に有用である。
【0013】
本発明はまた、本発明の化合物と、医薬適合性の担体とを含有する、医薬組成物にも関する。
【0014】
本発明はまた、11β−HSD1の阻害が奏功する疾患又は症状の治療、制御もしくは予防を必要とする個体における、本発明の化合物及び医薬組成物を投与することによる、11β−HSD1の阻害が奏功する疾患、疾病又は症状の治療、制御もしくは予防のための方法にも関する。
【0015】
本発明はまた、本発明の化合物及び医薬組成物を投与することによる、2型糖尿病、肥満、脂質疾患、アテローム性動脈硬化症及びメタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)の治療又は制御のための方法にも関する。
【0016】
本発明はまた、肥満の症状を治療するのに有用であることが知られている別の薬剤の治療上の有効量と組み合わせて本発明の化合物を投与することによる、肥満を治療するための方法にも関する。
【0017】
本発明はまた、2型糖尿病の症状を治療するのに有用であることが知られている別の薬剤の治療上の有効量と組み合わせて本発明の化合物を投与することによる、2型糖尿病を治療するための方法にも関する。
【0018】
本発明はまた、アテローム性動脈硬化症の症状を治療するのに有用であることが知られている別の薬剤の治療上の有効量と組み合わせて本発明の化合物を投与することによる、アテローム性動脈硬化症を治療するための方法にも関する。
【0019】
本発明はまた、脂質疾患の症状を治療するのに有用であることが知られている別の薬剤の治療上の有効量と組み合わせて本発明の化合物を投与することによる、脂質疾患を治療するための方法にも関する。
【0020】
本発明はまた、メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)の症状を治療するのに有用であることが知られている別の薬剤の治療上の有効量と組み合わせて本発明の化合物を投与することによる、メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)を治療するための方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、11β−HSD1の阻害剤として有用なピラゾールカルボキサミド誘導体に関する。本発明の化合物は、構造式I:
【0022】
【化3】

で説明されるか、又は医薬適合性のその塩もしくは溶媒和物であり、
式中、
各nは、独立に0、1又は2であり;
は、水素又はC1−4アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はヒドロキシもしくは1個から3個のフッ素で置換されている。)であり;
は、C1−4アルキル、アリール、アリールメチル、ヘテロアリール又はヘテロアリールメチル(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から4個のR置換基で置換されている。)であり;
は、水素、ハロゲン又はC1−4アルキル(アルキルは、置換されていないか、ヒドロキシもしくは1個から3個のフッ素で置換されている。)であり;
は、水素又はC1−4アルキルであり;
は、(CHアリール、(CH4−9シクロアルキル、(CH5−11ビシクロアルキル又は(CH10−14トリシクロアルキル(該アリール、シクロアルキル、ビシクロアルキル及びトリシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル及びC1−4アルキルから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)であるか;
又は、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、O、S及びNC0−4アルキルから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有する、5から7員環の飽和複素環を形成し、該複素環は、場合によっては、ベンゼン環と縮合しており、該複素環又は場合によってはベンゼン環と縮合している複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、C1−4アルキル、トリフルオロメチル及び(CHアリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン及びC1−4アルキルから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されているか;
又は、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、O、S及びNC0−4アルキルから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有するC6−11アザビシクロ環系を形成し、該アザビシクロ環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキルから独立に選択される、1個から3個の置換基で置換されており;
各Rは、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、ハロゲン、シアノ、C1−4アルキル、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アリール及びヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又はシアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキル、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択される。
【0023】
本発明の化合物のある実施形態において、Rは、メチルである。この実施形態のクラスにおいて、Rは、水素、ハロゲン又はメチルである。このクラスのサブクラスにおいて、Rは、塩素である。このクラスの別のサブクラスにおいて、Rは、メチルである。
【0024】
この第1の実施形態の第2のクラスにおいて、Rは、アリール又はヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から3個のR置換基で置換されている。)である。このクラスのサブクラスにおいて、Rは、フェニル(置換されていないか、又は1個から3個のR置換基で置換されている。)である。このクラスの別のサブクラスにおいて、Rは、水素、ハロゲン又はメチルである。このサブクラスのサブクラスにおいて、Rは、塩素である。このサブクラスの別のサブクラスにおいて、Rは、メチルである。
【0025】
本発明の化合物の第2の実施形態において、Rは、水素又はメチルであり、Rは、C4−9シクロアルキル、C5−11ビシクロアルキル又はC10−14トリシクロアルキルであり;該シクロアルキル、ビシクロアルキル及びトリシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル及びC1−4アルキルから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。この実施形態のクラスにおいて、Rは、水素である。この実施形態の第2のクラスにおいて、Rは、メチルである。この実施形態の第3のクラスにおいて、Rは、メチルであり;Rは、アリール又はヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から3個のR置換基で置換されている。)であり;Rは、水素、メチル又は塩素である。この第3のクラスのサブクラスにおいて、Rは、塩素である。
【0026】
本発明の化合物の第3の実施形態において、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、O、S及びNC0−4アルキルから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有する、5から7員環の飽和複素環を形成し、該複素環は、場合によっては、ベンゼン環と縮合しており、該複素環又は場合によってはベンゼン環と縮合している複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、C1−4アルキル、トリフルオロメチル及び(CHアリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン及びC1−4アルキルから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。この実施形態のクラスにおいて、Rは、メチルであり;Rは、アリール又はヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から3個のR置換基で置換されている。)であり;Rは、水素、メチル又は塩素である。このクラスのサブクラスにおいて、Rは、塩素又はメチルである。
【0027】
本発明の化合物の第4の実施形態において、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、O、S及びNC0−4アルキルから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有するC6−11アザビシクロ環系を形成し、該アザビシクロ環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキルから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。この実施形態のクラスにおいて、Rはメチルであり、Rはアリール又はヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から3個のR置換基で置換されている。)であり、Rは水素、メチル又は塩素である。このクラスのサブクラスにおいて、Rは塩素又はメチルである。
【0028】
本発明の化合物の第5の実施形態において、Rはメチルであり;Rはアリール又はヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から3個のR置換基で置換されている。)であり;Rは水素、メチル又は塩素であり;Rは水素であり;Rは、アダマンチル又はビシクロ[2.2.1]ヘプチル(置換されていないか、又はメチル、ヒドロキシ及びハロゲンから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)である。この実施形態のクラスにおいて、Rは塩素である。
【0029】
11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ タイプIの阻害剤として有用な、本発明の化合物の実例であるが非限定な例は、次のもの
【0030】
【表3】


又は医薬適合性のその塩である。
【0031】
本明細書で使用される場合、以下の定義が使用される。
【0032】
「アルキル」、並びにアルコキシ及びアルカノイルなどの接頭語「アルク(alk)」を有する他の基は、炭素鎖に別段の定義が与えられていなければ、線状又は分枝及びそれらの組み合わせであり得る炭素鎖を意味する。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどである。炭素原子の指定された数が、例えば、C3−10を許容する場合、アルキルという用語には、シクロアルキル基及びシクロアルキル構造と組み合わされた線状又は分枝アルキル鎖の組み合わせも含まれる。炭素原子の数が指定されていない場合には、C1−6を意味するものとする。
【0033】
「アルケニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含有し、炭素鎖に別段の定義が与えられていなければ、線状又は分枝及びそれらの組み合わせであり得る炭素鎖を意味する。アルケニルの例には、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニルなどが含まれる。炭素原子の指定された数が、例えば、C5−10を許容する場合、アルケニルという用語には、シクロアルケニル基及び線状、分枝状及び環状構造の組み合わせも含まれる。炭素原子の数が指定されていない場合には、C2−6を意味するものとする。
【0034】
「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含有し、線状もしくは分枝又はそれらの組み合わせであり得る炭素鎖を意味する。アルキニルの例には、エチニル、プロパルギル、3−メチル−1−ペンチニル、2−へプチニルなどが含まれる。
【0035】
「シクロアルキル」は、アルキルのサブセットであり、指定された数の炭素原子を有する飽和炭素環式環を意味する。シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどである。特段の記載がなければ、シクロアルキル基は、通常、単環式である。別段の記載がなければ、シクロアルキル基は飽和している。
【0036】
「ビシクロアルキル」という用語は、一般構造:
【0037】
【化4】

(式中、x、w及びzは、それぞれ独立に1、2又は3である。)
の橋頭炭素原子を1対含有する、架橋された脂環式ヒドロカルビル基を意味する。ビシクロアルキルの代表例は、これらに限定されないが、それぞれ下記の構造の、ビシクロ[2.1.1]へキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル及びビシクロ[3.2.1]オクチルである。
【0038】
【化5】

【0039】
「トリシクロアルキル」という用語は、3個の環にそれぞれ共通している4個の橋頭炭素を有する架橋された脂環式ヒドロカルビル基を意味する。トリシクロアルキルの代表例は、これらに限定されないが、下記の式:
【0040】
【化6】

のトリシクロ[3.3.11,5.13,7]と体系的に名付けられる、アダマンチルが含まれる。
【0041】
「アルコキシ」という用語は、指定された炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルコキシド(例えば、C1−6アルコキシ)又はこの範囲内の任意の数の直鎖もしくは分枝鎖アルコキシド(すなわち、メトキシ(MeO−)、エトキシ、イソプロポキシなど)を表す。
【0042】
「アルキルチオ」という用語は、指定された炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルキルスルフィド(例えば、C1−6アルキルチオ)、又はこの範囲内の任意の炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルキルチオ(すなわち、メチルチオ(MeS−)、エチルチオ、イソプロピルチオなど)を表す。
【0043】
「アルキルアミノ」という用語は、指定された炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルキルアミン(例えば、C1−6アルキルアミノ)又はこの範囲内の任意の炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルキルアミン(すなわち、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノなど)を表す。
【0044】
「アルキルスルホニル」という用語は、指定された炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルキルスルホン(例えば、C1−6アルキルスルホニル)又はこの範囲内の任意の炭素原子数の直鎖又は分枝鎖アルキルスルホン(すなわち、メチルスルホニル(MeSO−)、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニルなど)を表す。
【0045】
「アルキルスルフィニル」という用語は、指定された炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルキルスルホキシド(例えば、C1−6アルキルスルフィニル)又はこの範囲内の任意の炭素原子数の直鎖又は分枝鎖アルキルスルホキシド(すなわち、メチルスルフィニル(MeSO−)、エチルスルフィニル、イソプロピルスルフィニルなど)を表す。
【0046】
「アルキルオキシカルボニル」という用語は、指定された炭素原子数の本発明のカルボン酸誘導体の直鎖もしくは分枝鎖エステル(例えば、C1−6アルキルオキシカルボニル)又はこの範囲内の任意の炭素原子数の本発明のカルボン酸誘導体の直鎖もしくは分枝鎖エステル(すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−)、エチルオキシカルボニル又はブチルオキシカルボニルなど)を表す。
【0047】
「アリール」は、炭素環原子を含有する単環又は多環式芳香族環系を意味する。好ましいアリールは、単環又は二環式の6員から10員環芳香族環系である。フェニル及びナフチルは、好ましいアリールである。最も好ましいアリールは、フェニルである。
【0048】
「複素環」及び「ヘテロシクリル」は、O、S及びNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、さらにイオウの酸化型(すなわち、SO及びSO)を含む、飽和又は不飽和非芳香族環又は環系を意味する。複素環の例は、テトラヒドロフラン(THF)、ジヒドロフラン、1,4−ジオキサン、モルホリン、1,4−ジチアン、ピペラジン、ピペリジン、1,3−ジオキソラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピロリン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、オキサチオラン、ジチオラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、オキサチアン、チオモルホリンなどである。
【0049】
「ヘテロアリール」は、O、S及びNから選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含有する芳香族又は部分的芳香族複素環を意味する。したがって、ヘテロアリールには、アリール、シクロアルキル及び芳香族でない複素環などの他の種類の環に縮合したヘテロアリールが含まれる。ヘテロアリール基の例には、ピロリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、トリアジニル、チエニル、ピリミジル、ベンズイソキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリニル、ピリダジニル、インダゾリル、イソインドリル、ジヒドロベンゾチエニル、インドリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾジオキソリル、キノキサリニル、プリニル、フラザニル、イソベンジルフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、インドリル、イソキノリル、ジベンゾフラニルなどがある。ヘテロシクリル基及びヘテロアリール基の場合、3個から15個の原子を含有する環及び環系が含まれ、1個から3個の環を形成する。
【0050】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を表す。塩素及びフッ素が、一般に好ましい。アルキル基又はアルコキシ基においてハロゲンが置換される場合には、フッ素が最も好ましい(例えば、CFO及びCFCHO)。
【0051】
医薬組成物における場合の「組成物」という用語は、活性成分及び担体を構成する不活性成分、並びに、任意の成分の2以上の化合、錯化もしくは凝集から、又は1もしくは複数の成分の解離から、又は1もしくは複数の成分の他の種類の反応もしくは相互作用から直接又は間接的に得られるあらゆる生成物を含む生成物を包含するものとする。したがって、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物と医薬適合性の担体とを混合することによって調製されるあらゆる組成物が包含される。
【0052】
化合物の「投与」及び/又は「投与する」という用語は、必要としている個体に、本発明の化合物又は本発明の化合物のプロドラッグを与えることを意味するものと理解されたい。
【0053】
構造式Iの化合物は、1又は複数の不斉中心を含有することができ、このため、ラセミ体及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物並びに個別のジアステレオマーとして存在することができる。本発明は、構造式Iの化合物のかかる異性体形態を全て包含するものとする。
【0054】
本明細書に記載されている化合物の中には、オレフィン二重結合を含有するものがあり、別段の記載がなければ、E及びZ幾何異性体の両方を含むものとする。
【0055】
本明細書に記載されている化合物の中には、ケト−エノール互変異性体など、互変異性体として存在し得るものがある。各互変異性体ならびにそれらの混合物は、構造式Iの化合物内に包含される。
【0056】
構造式Iの化合物は、例えば、適切な溶媒(例えばメタノールもしくは酢酸エチル又はそれらの混合液)からの分別結晶によって、又は、光学的に活性のある固定相を用いたキラルクロマトグラフィーを介して、その個々のジアステレオ異性体に分離することができる。絶対的な立体化学は、必要であれば、絶対配置が既知である不斉中心を含有する試薬で誘導体化された結晶産物又は結晶中間体のX線結晶構造解析によって決定し得る。
【0057】
あるいは、一般構造式Iの化合物の任意の立体異性体は、光学的に純粋な出発物質又は絶対配置が既知である試薬を用いた立体特異的な合成により得ることもできる。
【0058】
本発明の異なる局面において、医薬組成物は、医薬適合性の担体と組み合わせて、構造式Iによる化合物又は医薬適合性のそれらの塩もしくはそれらの溶媒和物を含有するものである。「溶媒和物」という用語は、水和物、アルコラート又は結晶体の他の溶媒和物を意味する。
【0059】
本発明の別の局面において、高血糖、糖尿病又はインスリン抵抗性の治療を必要とする哺乳動物患者における高血糖、糖尿病又はインスリン抵抗性を治療する方法は、構造式Iに従う化合物又は医薬適合性のその塩もしくは溶媒和物の有効量を該患者へ投与することを含む。
【0060】
本発明の別の局面において、インスリン非依存性糖尿病を治療する方法は、そのような治療を必要とする哺乳動物患者において開示され、構造式Iに従う化合物の抗糖尿病効果を示す量を該哺乳動物患者に投与することを含む。
【0061】
本発明の別の局面において、肥満の治療を必要とする哺乳動物患者における、構造式Iに従う化合物を肥満を治療するのに有効な量で該患者に投与することを含む、肥満を治療する方法が開示される。
【0062】
本発明の別の局面において、メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)の治療を必要とする哺乳動物患者における、構造式Iに従う化合物をメタボリックシンドロームを治療するのに有効な量で該患者に投与することを含む、メタボリックシンドロームを治療する方法が開示される。
【0063】
本発明の別の局面において、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLからなる群から選択される脂質疾患の治療を必要とする哺乳動物患者における、構造式Iに従う化合物を該脂質疾患を治療するのに有効な量で該患者に投与することを含む、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL、高LDLからなる群から選択される脂質疾患を治療する方法が開示される。
【0064】
本発明の別の局面において、アテローム性動脈硬化症の治療を必要とする哺乳動物患者における、該患者に構造式Iに従う化合物をアテローム性動脈硬化症を治療するのに有効な量で投与することを含む、アテローム性動脈硬化症を治療する方法が開示される。
【0065】
本発明の別の局面において、(1)高血糖、(2)耐糖能低下、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)膵炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経障害、(20)メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)、(21)高血圧並びにインスリン抵抗性を要素とする他の症状及び疾患からなる群から選択される症状を治療することを必要とする哺乳類の患者において、該症状を治療する方法が開示され、これには、該患者に対して、構造式Iに従う化合物を、前記症状を治療するのに効果的な量で投与することが含まれる。
【0066】
本発明の別の局面において、(1)高血糖、(2)耐糖能低下、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)膵炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経障害、(20)メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)、(21)高血圧並びにインスリン抵抗性を要素とする他の症状及び疾患からなる群から選択される症状の発現を遅延させることを必要とする哺乳類の患者において、該症状の発現を遅延させる方法が開示され、これには、該患者に対して、構造式Iに従う化合物を、前記症状の発現を遅延させるのに効果的な量で投与することが含まれる。
【0067】
本発明の別の局面において、(1)高血糖、(2)耐糖能低下、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)膵炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経障害、(20)メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)、(21)高血圧並びにインスリン抵抗性を要素とする他の症状及び疾患からなる群から選択される症状の発症リスクを低下させる治療を必要とする哺乳類の患者において、該症状の発症リスクを低下させる方法が開示され、これには、該患者に対して、構造式Iに従う化合物を、前記症状の発症リスクを低下させるのに効果的な量で投与することが含まれる。
【0068】
本発明の別の局面において、(1)高血糖、(2)耐糖能低下、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)膵炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経障害、(20)メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)、(21)高血圧並びにインスリン抵抗性を要素とする他の症状及び疾患からなる群から選択される症状を治療することを必要とする哺乳類の患者において、該症状を治療する方法が開示され、これには、構造式Iで定義される化合物の有効量と、(a)ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DP−IV)阻害剤;(b)(i)PPARγアゴニスト、(ii)PPARαアゴニスト、(iii)PPARα/γデュアルアゴニスト及び(iv)ビグアナイド、からなる群から選択されるインスリン増感剤;(c)インスリン及びインスリン模倣物質;(d)スルホニル尿素及び他のインスリン分泌促進剤;(e)α−グリコシダーゼ阻害剤;(f)グルカゴン受容体アンタゴニスト;(g)GLP−1、GLP−1類似物質及びGLP−1受容体アゴニスト;(h)GIP、GIP模倣物質及びGIP受容体アゴニスト;(i)PACAP、PACAP模倣物質及びPACAP受容体3アゴニスト;(j)(i)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(ii)吸着剤、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)コレステロール吸収阻害剤、(v)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤及び(vi)抗酸化剤、からなる群から選択されるコレステロール低下剤;(k)PPARδアゴニスト;(l)抗肥満化合物;(m)回腸胆汁酸輸送剤阻害剤;(n)グルココルチコイドを除く抗炎症剤;(o)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤及び(p)カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラマプリル、ゾフェノプリル、カンデサルタン、シレキセチル、エプロサルタン、イルべサルタン、ロサルタン、タソサルタン、テルミサルタン及びバルサルタンなどの、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト又はレニン阻害剤のような、アンジオテンシン又はレニン系に作用するものを含む血圧降下剤;からなる群から選択される化合物と、を投与することが含まれ、該化合物は、前記患者に対して、前記症状を治療するのに有効な量で投与される。
【0069】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤には、WO03/004498(2003年1月16日);WO03/004496(2003年1月16日);EP 1 258 476(2002年11月20日);WO02/083128(2002年10月24日);WO02/062764(2002年8月15日);WO03/000250(2003年1月3日);WO03/002530(2003年1月9日);WO03/002531(2003年1月9日);WO03/002553(2003年1月9日);WO03/002593(2003年1月9日);WO03/000180(2003年1月3日);及びWO03/000181(2003年1月3日)で開示されているものが含まれる。具体的なDP−IV阻害剤化合物には、イソロイシンチアゾリド;NVP−DPP728;P32/98;及びLAF 237が含まれる。
【0070】
構造式Iの化合物と組み合わせることができる抗肥満化合物には、フェンフルラミン、デキスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドY又はYアンタゴニスト、カナビノイドCB1受容体アンタゴニスト又は逆アゴニスト、メラノコルチン受容体アゴニスト、とりわけ、メラノコルチン−4受容体アゴニスト、グレリンアンタゴニスト及びメラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニストが含まれる。構造式Iの化合物と組み合わせることができる抗肥満化合物のまとめとして、S.Chakiら、“Recent advance in feeding suppressing agents:potential therapeutic strategy for the treatment of obesity,”Expert Opin.Ther.Patents,11:1677−1692(2001)及びD.Spanswick及びK.Lee,“Emerging antiobesity drugs,”Expert Opin.Emerging Drugs,8:217−237(2003)を参照のこと。
【0071】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるニューロペプチドY5アンタゴニストには、米国特許第6,335,345号(2002年1月1日)及びWO01/14376(2001年3月1日)で開示されているもの;及びGW 59884A;GW 569180A;LY366377;及びCGP−71683Aとされる特定の化合物が含まれる。
【0072】
式Iの化合物と組み合わせることができるカナビノイドCB1受容体アンタゴニストには、PCT公開WO03/007887;米国特許第5,624,941号(リモナバントなど);PCT公開WO02/076949(SLV−319など);米国特許第6,028,084号;PCT公開WO98/41519;PCT公開WO00/10968;PCT公開WO 99/02499;米国特許第5,532,237号及び米国特許第5,292,736号で開示されているものが含まれる。
【0073】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるメラノコルチン受容体アゴニストには、WO 03/009847(2003年2月6日);WO 02/068388(2002年9月6日);WO 99/64002(1999年12月16日);WO 00/74679(2000年12月14日);WO 01/70708(2001年9月27日);及びWO 01/70337(2001年9月27日)で開示されているもの、ならびに、J.D.Speakeら、“Recent advances in the development of melanocortin−4 receptor agonists,”Expert Opin.Ther.Patents,12:1631−1638(2002)で開示されているものが含まれる。
【0074】
本発明の別の局面において、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び異脂肪血症からなる群から選択される症状の治療が必要である哺乳動物患者における、該症状の治療方法が開示され、この方法には、構造式Iで定義される化合物及びHMG−CoA還元酵素阻害剤の治療上の有効量を該患者に投与することが含まれる。
【0075】
より具体的には、本発明の別の局面において、前記HMG−CoA還元酵素阻害剤がスタチンである、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び異脂肪血症からなる群から選択される症状の治療が必要である哺乳動物患者における、該症状の治療方法が開示される。
【0076】
さらに具体的には、本発明の別の局面において、前記HMG−CoA還元酵素阻害剤が、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン及びロスバスタチンからなる群から選択されるスタチンである、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び異脂肪血症からなる群から選択される症状の治療が必要である哺乳動物患者における、該症状の治療方法が開示される。
【0077】
本発明の別の局面において、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び異脂肪血症及びこのような症状の続発症からなる群から選択される症状の発症リスクを低下させる治療が必要な哺乳動物患者に対して、構造式Iで定義される化合物及びHMG−CoA還元酵素阻害剤の治療上の有効量を投与することを含む、該症状の発症リスクを低下させる方法が開示される。
【0078】
本発明の別の局面において、アテローム性動脈硬化症の発現を遅延させる、又は発症リスクを低下させる治療が必要なヒト患者における、構造式Iで定義される化合物及びHMG−CoA還元酵素阻害剤の有効量を該患者に投与することを含む、アテローム性動脈硬化症の発現を遅延させる、又は発症リスクを低下させる方法が開示される。
【0079】
より具体的には、前記HMG−CoA還元酵素阻害剤がスタチンである、アテローム性動脈硬化症の発現を遅延させる、又は発症リスクを低下させる治療が必要であるヒト患者における、アテローム性動脈硬化症の発現を遅延させる、又は発症リスクを低下させる方法が開示される。
【0080】
さらにより具体的には、前記HMG−CoA還元酵素阻害剤が、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン及びロスバスタチンからなる群から選択されるスタチンである、アテローム性動脈硬化症の発現を遅延させる、又は発症リスクを低下させる治療が必要であるヒト患者における、アテローム性動脈硬化症の発現を遅延させる、又は発症リスクを低下させる方法が開示される。
【0081】
さらにより具体的には、前記スタチンがシンバスタチンである、アテローム性動脈硬化症の発現を遅延させる、又は発症リスクを低下させる治療が必要であるヒト患者における、アテローム性動脈硬化症の発現を遅延させる、又は発症リスクを低下させる方法が開示される。
【0082】
本発明の別の局面において、前記HMG−CoA還元酵素阻害剤がスタチンであり、コレステロール吸収阻害剤を投与することをさらに含む、アテローム性動脈硬化症の発現を遅延させる、又は発症リスクを低下させる治療が必要なヒト患者における、アテローム性動脈硬化症の発現を遅延させる、又は発症リスクを低下させる治療方法が開示される。
【0083】
より具体的には、本発明の別の局面において、前記HMG−CoA還元酵素阻害剤がスタチンであり、前記コレステロール吸収阻害剤がエゼチミブである、アテローム性動脈硬化症の発現を遅延させる、又は発症リスクを低下させる治療が必要であるヒト患者における、アテローム性動脈硬化症の発現を遅延させる、又は発症リスクを低下させる方法が開示される。
【0084】
本発明の別の局面において、
(1)構造式Iに従う化合物、
(2)(a)DP−IV阻害剤;(b)(i)PPARγアゴニスト;(ii)PPARαアゴニスト、(iii)PPARα/γデュアルアゴニスト及び(iv)ビグアナイド、からなる群から選択されるインスリン増感剤;(c)インスリン及びインスリン模倣物質;(d)スルホニル尿素及び他のインスリン分泌促進剤;(e)α−グリコシダーゼ阻害剤;(f)グルカゴン受容体アンタゴニスト;(g)GLP−1、GLP−1類似物質及びGLP−1受容体アゴニスト;(h)GIP、GIP模倣物質及びGIP受容体アゴニスト;(i)PACAP、PACAP模倣物質及びPACAP受容体3アゴニスト;(j)(i)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(ii)吸着剤、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)コレステロール吸収阻害剤、(v)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤及び(vi)抗酸化剤、からなる群から選択されるコレステロール低下剤;(k)PPARδアゴニスト;(l)抗肥満化合物;(m)回腸胆汁酸輸送剤阻害剤;(n)グルココルチコイドを除く抗炎症剤;(o)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤;及び(p)カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラマプリル、ゾフェノプリル、カンデサルタン、シレキセチル、エプロサルタン、イルべサルタン、ロサルタン、タソサルタン、テルミサルタン及びバルサルタンなどの、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト又はレニン阻害剤のような、アンジオテンシン又はレニン系に作用するものを含む血圧降下剤;(q)コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)の阻害剤からなる群から選択される化合物;及び
(3)医薬適合性の担体
を含む医薬組成物が開示される。
【0085】
本発明の化合物は、医薬適合性の塩の形態で投与し得る。「医薬適合性の塩」という用語は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む医薬適合性の非毒性塩基又は酸から調製された塩を表す。「医薬適合性の塩」という用語に包含される塩基性化合物の塩は、一般に、遊離塩基を適切な有機酸又は無機酸と反応させることによって調製される本発明の化合物の非毒性塩を表す。本発明の塩基性化合物の代表的な塩には、酢酸塩(acetate)、ベンゼンスルホン酸塩(benzenesulfonate)、安息香酸塩(benzoate)、重炭酸塩(bicarbonate)、重硫酸塩(bisulfate)、重酒石酸塩(bitartrate)、ホウ酸塩(borate)、臭化物(bromide)、カンシル酸塩(camsylate)、炭酸塩(carbonate)、塩化物(chloride)、クラブラン酸塩(clavulanate)、クエン酸塩(citrate)、二塩酸塩(dihydrochloride)、エデト酸塩(edetate)、エジシル酸塩(edisylate)、エストル酸塩(estolate)、エシル酸塩(esylate)、フマル酸塩(fumarate)、グルセプトン酸塩(gluceptate)、グルコン酸塩(gluconate)、グルタミン酸塩(glutamate)、グリコリルアルサニル酸塩(glycollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシン酸塩(hexylresorcinate)、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩(hydrobromide)、塩酸塩(hydrochloride)、ヒドロキシナフトエ酸塩(hydroxynaphthoate)、ヨウ化物(iodide)、イソチオン酸塩(isothionate)、乳酸塩(lactate)、ラクトビオン酸塩(lactobionate)、ラウリン酸塩(laurate)、リンゴ酸塩(malate)、マレイン酸塩(maleate)、マンデル酸塩(mandelate)、メシル酸塩(mesylate)、臭化メチル(methylbromide)、硝酸メチル塩(methylnitrate)、硫酸メチル塩(methylsulfate)、粘液酸塩(mucate)、ナプシル酸塩(napsylate)、硝酸塩(nitrate)、N−メチルグルカミンアンモニウム塩(N−methylglucamine ammonium salt)、オレイン酸塩(oleate)、シュウ酸塩(oxalate)、パモン酸塩(pamoate)(エンボナート)、パルミチン酸塩(palmitate)、パントテン酸塩(pantothenate)、リン酸塩/二リン酸塩(phosphate/diphosphate)、ポリガラクツロン酸塩(polygalacturonate)、サリチル酸塩(salicylate,)、ステアリン酸塩(stearate)、硫酸塩(sulfate)、塩基性酢酸塩(subacetate)、コハク酸塩(succinate)、タンニン酸塩(tannate)、酒石酸塩(tartrate)、テオクル酸塩(teoclate)、トシル酸塩(tosylate)、トリエチオダイド(triethiodide)及び吉草酸塩(valerate)が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明の化合物が酸性部分を有する場合には、医薬適合性の適切なそれらの塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(manganic、)、亜マンガン(mangamous)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの無機塩基から得られる塩が含まれるが、これらに限定されない。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。医薬適合性の非毒性有機塩基から得られる塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの、一級、二級及び三級アミン、環状アミン並びに塩基性イオン交換樹脂の塩が含まれる。
【0086】
また、本発明の化合物中に存在するカルボン酸(−COOH)又はアルコール基の場合には、アルコールのメチル、エチルもしくはピバロイルオキシメチル又はアシル誘導体(酢酸エステル又はマレイン酸エステルなど)のような、カルボン酸誘導体の医薬適合性のエステルも使用することができる。徐放又はプロドラッグ製剤として使用するために溶解度又は加水分解特性を改変するための、本分野において公知のエステル及びアシル基が含まれる。
【0087】
本明細書中で使用される場合、構造式Iの化合物と表記する場合には、医薬適合性の塩も含まれること、及び、遊離の化合物もしくは医薬適合性のそれらの塩への前駆体として使用する場合、又はその他の合成操作において使用する場合には、医薬適合性でない塩も含まれることが理解できるであろう。
【0088】
溶媒和物、特に、構造式Iの化合物の水和物も、同様に本発明に含まれる。
【0089】
本明細書に記載されている化合物は、11β−HSD1酵素の選択的阻害剤である。したがって、本発明は、コルチゾンのコルチゾールへの転換に関与する、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの還元酵素活性を阻害するための11β−HSD1阻害剤の使用に関する。NIDDM、肥満、異脂肪血症、インスリン抵抗性及び高血圧を含む多数の疾患が、コルチゾール過剰と関連している。本発明の化合物の投与によって、標的組織においてコルチゾール及びその他の11β−ヒドロキシステロイドのレベルが低下し、それにより過剰量のコルチゾール及び他の11β−ヒドロキシステロイドの影響が減少する。11β−HSD1の阻害は、NIDDM、肥満、高血圧及び異脂肪血症のような、コルチゾール及び他の11β−ヒドロキシステロイドが異常に高値になることが介在する疾病を治療及び制御するために使用することができる。コルチゾールレベルを低下させるというような、脳における11β−HSD1活性の阻害もまた、不安、うつ及び認知障害を治療又は緩和するのに有用であり得る。
【0090】
本発明には、哺乳動物患者、特にヒトにおいて、過剰の又は制御されない量のコルチゾール及び/又は他のコルチコステロイドが介在するような、本明細書に記載した疾病及び症状の治療、制御、改善、予防、発現遅延又は発症リスク低下のための、構造式Iの化合物又はその医薬適合性の塩もしくは溶媒和物の有効量を投与することによる、11β−HSD1阻害剤の使用が含まれる。11β−HSD1酵素の阻害は、通常不活性であるコルチゾンが、過剰量で存在する場合にこれらの疾病及び症状の症候を起こし得るか又はその一因となり得るコルチゾールへと変化するのを制限する。
【0091】
NIDDM及び高血圧
本発明の化合物は、11β−HSD2よりも11β−HSD1を優先する選択的阻害剤である。11β−HSD1の阻害は、コルチゾールレベルを低下させること、及びそれに関連する状態の治療に有用であるが、11β−HSD2の阻害は、高血圧のような重大な副作用を伴う。
【0092】
コルチゾールは、重要で十分に認められた抗炎症性ホルモンであり、インスリン感受性を低下させ、その結果、肝臓において糖新生が増加し、グルコースレベルが上昇するというように、肝臓におけるインスリンの作用に対するアンタゴニストとしても作用する。既に耐糖能が低下した患者においては、コルチゾールレベルが異常に高い場合、2型糖尿病発症の可能性が高まる。
【0093】
ミネラルコルチコイド受容体が存在する組織内のコルチゾールレベルが高い場合、高血圧が引き起こされることが多い。11β−HSD1の阻害は、特定組織内のコルチゾールとコルチゾンとの比を、コルチゾンが優位になるように変化させる。
【0094】
11β−HSD1阻害剤の治療上有効量を投与することは、NIDDMの症候を治療し、制御し及び改善する上で有効であり、11β−HSD1阻害剤の治療上の有効量の定期的な投与は、特にヒトにおいてNIDDMの発現を遅延させる、又は予防する。
【0095】
クッシング症候群:
コルチゾールレベル上昇の影響は、血流中のコルチゾールレベルが高いことを特徴とする代謝性疾患であるクッシング症候群の患者においても観察される。クッシング症候群の患者では、NIDDMを発症することが多い。
【0096】
肥満、メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)、異脂肪血症:
コルチゾールレベル過剰は、肥満を伴うが、これはおそらく、肝臓の糖新生が増加していることが原因である。腹部肥満は、耐糖能異常、高インスリン血症、高トリグリセリド血症及びメタボリックシンドロームの他の要因(高血圧、VLDL上昇及びHDL低下など)と密接に関連する。Montagueら、Diabetes,2000,49:883−888。このように、11β−HSD1阻害剤の有効量を投与することは、肥満の治療又は制御において有用である。11β−HSD1阻害剤による長期治療はまた、特に、その患者が食餌コントロール及び運動と組み合わせて11β−HSD1阻害剤を使用している場合、肥満の発現を遅延させるか、又は予防するのに有用である。
【0097】
インスリン抵抗性を低下させ、血清グルコースを正常な濃度に維持することによって、本発明の化合物は、また、メタボリックシンドローム又はシンドロームX、肥満、反応性低血糖症及び糖尿病性異脂肪血症を含む、II型糖尿病及びインスリン抵抗性を伴う症状の治療及び予防における有用性がある。
【0098】
認知及び痴呆:
脳内のコルチゾールレベルが過剰な場合、神経毒性が強まることによりニューロンの欠損又は機能不全も起こり得る。認知障害は、老化及び脳内のコルチゾールレベルが過剰になることに関連している。J.R.Seckl及びB.R.Walker,Endocrinology,2001,142:1371−1376及びこの文献で引用されている参考文献を参照のこと。11β−HSD1阻害剤の有効量を投与することにより、老化及びニューロンの機能不全に伴う認知障害が軽減、改善、制御又は予防される。11β−HSD1の阻害剤はまた、不安及びうつの治療に有用であり得る。
【0099】
アテローム性動脈硬化症:
上記のように、11β−HSD1活性の阻害及びコルチゾール量の低下は、高血圧を治療又は制御する上で有益である。高血圧及び異脂肪血症は、アテローム性動脈硬化症の発症の一因であるので、本発明の11β−HSD1阻害剤の治療上の有効量を投与することは、アテローム性動脈硬化症を治療し、制御し、その発現を遅延させ、又は予防する上で特に有益である。
【0100】
膵臓に対する効果:
単離したマウス膵臓β細胞における11β−HSD1活性の阻害により、グルコース刺激によるインスリン分泌が向上する(B.Davaniら、J.Biol.Chem.,2000,275:34841−34844)。グルココルチコイドは、インビボにおいてインスリン分泌を低下させることが示されている(B.Billaudelら、Horm.Metab.Res.,1979,11:555−560)。
【0101】
眼圧の低下:
最近のデータから、グルココルチコイド標的受容体及び11β−HSD酵素レベルと、緑内障の罹病率との間の関連が示唆されている(J.Stokesら、Invest.Ophthamol.,2000,41:1629−1638)。したがって、11β−HSD1活性の阻害は、緑内障の治療における眼圧低下に有用である。
【0102】
免疫調節:
結核、乾癬などのある種の疾患状態において、及び、過剰なストレス下においても、実際には細胞性反応が患者にとってより有益であり得る時に、グルココルチコイド活性が高いことにより、免疫反応が液性反応にシフトする。11β−HSD1活性の阻害及び付随するグルココルチコイドレベル低下により、免疫反応が細胞性反応にシフトする。D.Mason,Immunology Today,1991,12:57−60、及びG.A.W.Rock,Baillier’s Clin.Endocrinol.Metab.,1999,13:576−581を参照のこと。
【0103】
骨粗しょう症:
グルココルチコイドは、骨形成を阻害する可能性があり、その結果、骨量が失われることになり得る。11β−HSD1は、骨の再吸収に関与する。11β−HSD1の阻害は、骨粗しょう症による骨の喪失を予防する上で有益である。C.H.Kimら、J.Endocrinol.,1999,162:371−379;C.G.Bellowsら、Bone,1998,23:119−125;及びM.S.Cooperら、Bone,2000,27:375−381。
【0104】
その他の用途:
本発明の化合物を用いた治療により、下記の疾病、疾患及び症状、すなわち(1)高血糖、(2)耐糖能低下、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)膵炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経障害、(20)メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)、(21)高血圧並びにインスリン抵抗性を要素とする他の疾患を、治療、制御、予防又は遅延させることができる。
【0105】
上記の疾病及び状態は、構造式Iの化合物を使用して治療することができるか、又は、本明細書に記載されている疾病及び症状の発症を予防するか、又はそのリスクを低下させるために、本化合物を投与することができる。11β−HSD2を同時に阻害することにより、有害な副作用が起こり得るか、又はコルチゾールの減少が望まれる標的組織内のコルチゾール量を実際には増加させ得るので、11β−HSD2を殆ど、又は全く阻害しない11β−HSD1の選択的阻害剤が望ましい。
【0106】
構造式Iの11β−HSD1阻害剤は、一般に、約500nM未満、好ましくは約100nM未満の阻害定数IC50を有する。一般に、化合物の、11β−HSD1のIC50に対する11β−HSD2のIC50の比は、少なくとも約2以上、好ましくは約10以上である。11β−HSD1のIC50に対する11β−HSD2のIC50の比が、約100以上である化合物が、さらになお好ましい。例えば、本発明の化合物は、理想的には、約1000nMを超える、好ましくは5000nMを超える、11β−HSD2に対する阻害定数IC50を示す。
【0107】
構造式Iの化合物は、構造式Iの化合物又はその他の薬物が有用性を持つ疾病又は症状の治療、予防、抑制又は改善において、1又は複数の他の薬物と組み合わせ使用することができる。通常、薬物を組み合わせると、それぞれの薬物単独に比べて安全性又は有効性がさらに高くなるか、又は薬物を組み合わせると、個々の薬物の能力の加算に基づいて予想されるものよりも安全又は効果的である。このような他の薬物は、一般に用いられている経路及び量で、構造式Iの化合物と同時に又は順次に投与することができる。構造式Iの化合物が、1又は複数の他の薬物と同時に使用される場合、このような他の薬物と構造式Iの化合物とを含有する複合製品が好ましい。しかし、構造式Iの化合物と1又は複数の他の薬物とが異なる重複するスケジュールで投与される療法も、併用療法に含まれ得る。他の活性成分と組み合わせて使用される場合、本発明の化合物又は他の活性成分、又はその両方は、それぞれが単独で使用される場合に比べて少ない用量で効果的に使用し得ることも想定される。したがって、本発明の医薬組成物には、構造式Iの化合物に加えて、1又は複数の他の活性成分を含有する医薬組成物が含まれる。
【0108】
構造式Iの化合物と組み合わせて投与することができ、個別に又は同一の医薬組成物中で投与し得る他の活性成分の例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。(a)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害剤;(b)(i)グリタゾン(例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾンなど)などのPPARγアゴニスト及びKRP−297などのPPARα/γデュアルアゴニストを含む他のPPARリガンド及び、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベザフィブレートなどのPPARαアゴニスト、及び(ii)メトホルミン及びフェンホルミンなどのビグアナイド、を含むインスリン増感剤;(c)インスリン又はインスリン模倣物質;(d)スルホニル尿素及び、トルブタミド、グリピジド、メグリチニド及び関連物質などの他のインスリン分泌促進物質;(e)アカルボースなどのα−グルコシダーゼ阻害剤;(f)WO98/04528、WO99/01423、WO00/39088及びWO00/69810に開示されているものなどのグルカゴン受容体アンタゴニスト;(g)GLP−1、GLP−1類似物質及びGLP−1受容体アゴニスト(WO00/42026及びWO00/59887に開示されているものなど);(h)GIP及びWO00/58360に開示されているものなどのGIP模倣物質、及びGIP受容体アゴニスト:(i)PACAP、PACAP模倣物質及びWO01/23420に開示されているものなどのPACAP受容体3アゴニスト;(j)(i)HMG−CoA還元酵素阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン、ロスバスタチン及び他のスタチン)、(ii)胆汁酸吸着剤(コレスチラミン、コレスチポール及び架橋されたデキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はそれらの塩、(iv)エゼチミブ及びβ−シトステロールなどのコレステロール吸収阻害剤、(v)例えばアバシミブ(avasimibe)などのアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤及び(vi)プロブコールなどの抗酸化剤、などのコレステロール低下剤;(k)WO97/28149に開示されているものなどの、PPARδアゴニスト;(l)フェンフルラミン、デキスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドY又はYアンタゴニスト、CB1受容体逆アゴニスト及びアンタゴニスト、βアドレナリン作動性受容体アゴニスト、メラノコルチン−受容体アゴニスト、とりわけ、メラノコルチン−4受容体アゴニスト、グレリンアンタゴニスト及びメラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニストなどの抗肥満化合物;(m)回腸の胆汁酸輸送体阻害剤;(n)アスピリン、非ステロイド性抗炎症剤、アザルフィジン及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤などの、グルココルチコイドを除く、炎症症状に使用するための薬剤;(o)タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)阻害剤;(p)カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラマプリル、ゾフェノプリル、カンデサルタン、シレキセチル、エプロサルタン、イルべサルタン、ロサルタン、タソサルタン、テルミサルタン及びバルサルタンなどの、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト又はレニン阻害剤のような、アンジオテンシン又はレニン系に作用するものを含む血圧降下剤;及び(q)コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤。上記の組み合わせには、1又は複数の他の活性化合物とともに、構造式Iの化合物又は医薬適合性のその塩もしくは溶媒和物が含まれる。非限定例には、構造式Iの化合物と、ビグアナイド、スルホニル尿素、HMG−CoA還元酵素阻害剤、PPARアゴニスト、PTP−1B阻害剤、DP−IV阻害剤及び抗肥満化合物から選択される2以上の活性化合物との組み合わせが含まれる。
【0109】
本発明の化合物の有効量を哺乳動物、特にヒトに与えるために、あらゆる適切な投与経路を使用し得る。例えば、経口、直腸、局所、非経口、眼内、肺又は鼻内などを用いることができる。剤形には、錠剤、トローチ剤、分散剤、懸濁剤、溶液、カプセル剤、クリーム剤、軟膏、エアロゾル剤などが含まれる。好ましくは、構造式Iの化合物を経口投与する。
【0110】
活性成分の有効用量は、使用する具体的な化合物、投与方式、治療する症状及びその症状の重症度に依存して変化する。このような用量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0111】
構造式Iの化合物の適応症となる、本明細書中に記載された疾病及び症状を治療又は予防する場合、約0.1mgから約100mg/kg(mpk)体重の1日投与量で、好ましくは1日1回の投与もしくは1日に2回から6回に分割した投与で本発明の化合物を投与すると、一般に満足な結果が得られる。つまり、1日総投与量は、約0.1mgから約1000mg、好ましくは約1mgから約50mgである。代表的な70kgの成人の場合には、1日総投与量は、約7mgから約350mgとなろう。この投与計画は、最適の治療応答を与えるように調節され得る。
【0112】
本発明の別の局面は、医薬適合性の担体と組み合わせて、構造式Iの化合物又は医薬適合性のその塩もしくは溶媒和物を含有する医薬組成物に関する。
【0113】
本組成物には、経口、直腸、局所、非経口(皮下、筋肉内及び静脈内を含む。)、眼(眼科用)、経皮、肺(経鼻又は経口腔吸入)又は鼻腔投与に適切な組成物が含まれるが、あらゆる場合において、最適経路は、治療を施す症状の性質及び重症度、ならびに活性成分に依存することになろう。これらは、都合よく、単位剤形中に存在し得、医薬分野で周知のあらゆる方法により調製し得る。
【0114】
構造式Iの化合物は、従来の医薬調合技術にしたがって医薬担体と組み合わせることができる。担体は、広範囲の種々の形態を取り得る。例えば、経口液体組成物のための担体には、例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤並びに経口液体懸濁剤、エリキシル剤及び溶液の製造において使用される他の成分が含まれる。経口固体剤形、例えば、粉末、硬カプセル及び軟カプセル及び錠剤を調製するために、デンプン、糖及び微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体が使用される。経口用固体製剤が経口用液体製剤よりも好ましい。
【0115】
経口用固体剤形には、また、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチもしくはゼラチンのような結合剤;リン酸二カルシウムのような賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸のような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような滑剤;及びスクロース、ラクトース又はサッカリンなどの甘味剤が含有され得る。カプセル剤にはまた、脂肪油のような液体担体が含有され得る。
【0116】
コーティングとして作用するために、又は用量単位の物理的形状を修正するために、様々な他の材料が存在し得る。例えば、錠剤を、シェラック、糖又は両方で被覆することができる。
【0117】
錠剤を標準的な水性技術又は非水性技術によってコーティングすることができる。これらの組成物中の活性化合物のパーセンテージは、通常、勿論、約2%から約60%(w/w)まで変化させることができる。したがって、錠剤には、低値は約0.1mgから高値は約1.5gまで、好ましくは、低値は約1.0mgから高値は約500mgまで、さらに好ましくは、低値は約10mgから高値は約100mgまでの範囲の量で、構造式Iの化合物又はその塩もしくは水和物が含有される。
【0118】
シロップ剤又はエリキシル剤などの経口用液体剤形には、活性成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチル及びプロピルパラベン、色素並びにチェリー又はオレンジ風味などの香味剤が含有され得る。
【0119】
非経口剤は、通常、溶液又は懸濁液の形態であり、通常、水を用いて、及び、場合によってはヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤を含有させて調製される。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及び油中のそれらの混合物中で調製することができる。通常、希釈された形態にある調製物には、保存剤も含有される。
【0120】
水溶液及び分散液、及び注射用溶液又は分散液の即時調製のための粉末を含む、医薬注射剤形はまた、無菌でなくてはならず、容易に注射可能である程度の流動性がなければならず、これらは、製造及び保管の条件下で安定でなくてはならず、通常保存されている。したがって、担体には、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、これらの適切な混合物及び植物油を含む、溶媒又は分散媒体が含まれる。
【0121】
アッセイ:阻害定数の測定
シンチレーション近接アッセイ(Scintillation Proximity Assay)(SPA)により、試験化合物についてインビトロ酵素活性を評価した。要約すると、トリチウム化したコルチゾン基質、NADPH補因子及び漸次希釈化合物を、11β−HSD1酵素と共に37℃でインキュベーションして、コルチゾールへの変換を進行させた。このインキュベーションに続いて、抗コルチゾールモノクローナル抗体及び構造式Iの化合物と前もって混合したプロテインA被覆SPAビーズの調製物を、それぞれのウェルに添加した。この混合物を15℃で振盪し、次いで96ウェルプレートに適した液体シンチレーションカウンターで読み取った。パーセント阻害率を、非阻害対照ウェルに対して計算し、IC50曲線を作成した。このアッセイを11β−HSD2に対して同様に行い、その場合、基質及び補因子として、それぞれトリチル化したコルチゾール及びNADを使用した。このアッセイを開始するために、基質 40μL(50mM HEPES緩衝液、pH7.4中の、25nM H−コルチゾン+1.25mM NADPH)を、96ウェルプレートの指定されたウェルに添加した。本化合物をDMSO中に10mMになるように溶解し、続いてDMSO中で連続して50倍希釈した。次に、この希釈物質を、4倍、7回漸次希釈した。次に、それぞれの漸次希釈化合物 1μLを、二重試験として基質に添加した。この反応を開始するために、CHO形質転換体からの11β−HSD1ミクロソーム 10μLを、出発物質の約10%が変換されるのに適切な濃度で、各ウエルに添加した。パーセント阻害率の最終的計算のために、アッセイの最小値と最大値となるもの:化合物又は酵素非存在下で基質を含有するもの1組(バックグラウンド)と、化合物を全く添加せずに基質及び酵素を含有する別の組(最大シグナル)という、一連のウェルを付加した。このプレートを、遠心分離機において低速で短時間スピンして、試薬をプールし、接着片で密封し、穏やかに混合し、37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション後、抗コルチゾールモノクローナル抗体及び式Iの化合物と共に前もって懸濁したSPAビーズ 45μLを各ウエルに添加した。このプレートを再び密封し、15℃で1.5時間超、穏やかに振盪した。Topcountなどのプレートでの測定用の液体シンチレーションカウンターでデータを回収した。抗コルチゾール抗体/コルチゾール結合の阻害を調整するために、1.25nM[3]Hコルチゾールを添加した基質を、指定された単一ウェルに添加した。200μM化合物 1μLを、これらのウェルのそれぞれに、緩衝液 10μLと共に酵素の代わりに添加した。阻害の計算値は全て、SPAビーズ上での抗体へのコルチゾール結合を妨害する化合物に起因した。
【0122】
アッセイ:インビボ阻害の測定
一般的に、試験化合物を哺乳動物に経口投与し、通常1時間から24時間の所定の時間間隔を経過させた。トリチル化コルチゾンを静脈内注射し、続いて、数分後に採血した。分離した血清からステロイドを抽出し、HPLCによって分析した。化合物及びビヒクル投与対照グループについて、H−コルチゾンとその還元生成物であるH−コルチゾールとの相対レベルを決定した。これらの値から、絶対変換率ならびにパーセンテージ阻害率を計算した。
【0123】
より具体的には、ビヒクル(5%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンv/vHO、又は等価物)中に、通常は10mg/kgで投与できるよう、所望の濃度で溶解することによって、経口投与用に化合物を調製した。一晩絶食させた後、ICRマウス(Charles Riverより入手)に対して、強制経口投与により、0.5mL/投与/動物で、この溶液を試験群あたり3匹の動物に投与した。
【0124】
所望の時間、通常1時間又は4時間経過後、dPBS中の3μM H−コルチゾン 0.2mLを、尾静脈を介して注射した。この動物を2分間ケージに入れ、続いてCOチャンバー内で安楽死させた。終了に際して、マウスを取り出し、心臓穿刺によって血液を回収した。この血液を、室温で30分間以上血清分離チューブの中に置き、適切に凝固させた。インキュベーション時間後、3000Xg、4℃で、10分間の遠心分離によって、血液から血清を分離した。
【0125】
血清中のステロイドを分析するために、最初に有機溶媒でこれらを抽出した。血清 0.2mL体積を、汚染されていない微量遠心管に移した。これに、酢酸エチル 1.0mL体積を添加し、続いて1分間激しくボルテックスした。微量遠心分離で高速回転させ、水溶性の血清タンパク質を沈殿させ、有機性の上清を透明化した。上部の有機相 0.85mLを、新しい微量遠心管に移し、乾燥させた。HPLCを用いて分析するために、コルチゾン及びコルチゾールを高濃度で含有するDMSO 0.250mL中で、その乾燥試料を再懸濁した。
【0126】
30%メタノールで平衡化したMetachem Inertsil C−18クロマトグラフィーカラムに0.200mLの試料を注入した。50%メタノールまで緩やかに直線的勾配で濃度を上げ、標的ステロイドを分離し、内部標準として用いた再懸濁液中の非放射性標準物質の254nmのUVにより同時にモニターを行った。ラジオクロマトグラフィー検出器によってトリチウムシグナルを収集し、分析用ソフトウエアにデータを転送した。H−コルチゾンのH−コルチゾールへのパーセント変換率を、コルチゾンのAUCとコルチゾールのAUCの合計に対するコルチゾールのAUCの比として計算した。
【0127】
本発明の化合物の調製:
次のスキーム及び実施例の手法に従い、適切な材料を用いて、本発明の構造式Iの化合物を調製することができ、本発明の構造式Iの化合物の調製を次の具体的な実施例によりさらに例示する。しかし、これらの実施例で説明する化合物は、本発明としてみなされる唯一の種類を形成するものとして解釈されるべきではない。これらの実施例は、さらに、本発明の化合物の調製に関する詳細を説明するものである。当業者は、次の調製手段の条件及びプロセスの既知のバリエーションがこれらの化合物を調製するために使用できることを容易に理解するであろう。本発明の化合物は、通常、それらの中性型において単離されるが、有機溶媒に溶解させ、次に適切な酸を添加し、続いて、蒸発、沈殿又は結晶化を行うことにより、トリアゾール部分をさらに医薬適合性の塩に変換することができる。別段の記載がない限り、温度は全て摂氏である。マススペクトル(MS)は、エレクトロスプレーイオン−マススペクトロスコーピー(ESMS)により測定した。
【0128】
反応スキーム1及び2では、構造式Iの本発明の化合物の合成に使用する方法を説明する。置換基は全て、別段の断りがない限り、上記で定義されるとおりである。
【0129】
反応スキーム1では、本発明の構造式Iの新規化合物の一般的な合成を説明する。スキーム1に示すように、α,γ−ジケトエステル1−2を得るために、芳香環(R)において様々に置換され得、Rが水素、メチル又は短いアルキルである、アセトフェノン 1−1を、リチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)又はリチウムジイソプロピルアミド(LDA)などの強塩基で処理し、その後、シュウ酸ジエステルで処理することにより、カルボキシル化することができる。R−ヒドラジンとともに加熱し、次に、エステルを加水分解することにより、中間体1−2をピラゾール1−3に変換することができる。酢酸などの弱酸触媒により、ピラゾール形成反応が促進される。そのエステルの加水分解は、一般的で通常有用な条件である、水性メタノール/テトラヒドロフラン中の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いて、当業者に周知の様々な方法で遂行し得る。構造式Iの1−5のようなアミドを得るために、当業者に周知の様々なアミドカップリング条件のいずれかに、一級アミン又は二級アミンとともに、中間体1−3を供することができる。Rが水素である中間体1−3に対して、アミド形成反応前にRをClに変換し得るが、これにより、構造式Iのアミドの別のサブセットである、式1−6のアミドが得られる。塩素分子及びN−クロロスクシニミドを含むがこれらに限定されない、様々な求電子性の塩素化剤をこの変換に使用することができる。
【0130】
【化7】

【0131】
反応スキーム2は、構造式Iの化合物の代替的な一般的合成を表す。この手順において、ヒドロキシピラゾール2−2は、R−ヒドラジンを用い、次に上述のようなエステル加水分解により、式2−1(R=Me又はEt)のケトジエステルから調製される。中間体2−2をピリジン中のトリフルオロメタンスルホン酸無水物で処理し、次に、一級アミン又は二級アミンで処理して、式2−3のトリフロキシピラジンアミドを得ることができる。Suzuki反応を用いてこのトリフロキシピラジン2−3をアリールボロン酸とカップリングさせ、構造式Iの化合物2−4を得ることができる。Suzuki反応において使用することができるパラジウム触媒には、Pd(PPh及びPd(OAc)/PPhが含まれるがこれらに限定されない。
【0132】
【化8】

【0133】
次の実施例は、本発明を説明するために提供するものであり、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【0134】
【化9】

【0135】
段階A:
窒素雰囲気下のエタノール(50mL)及び酢酸(10mL)中の磁気を用いて撹拌しているジエチルオキサロプロピオン酸(3−1)(10.04g、49.65mmol)の溶液に、メチルヒドラジン(3.4mL、1.3等量)を添加した。この混合物を2日間還流温度に加熱した。この後、減圧下で溶媒を除去し、酢酸エチルをいくらか含むヘキサンを添加した。生成物3−2を結晶化し、固形物を濾過し、洗浄し、乾燥させた。
【0136】
段階B:
THF(100mL)中のエステル3−2(5.50g、29.86mmol)の磁気を用いて撹拌している溶液に、水(50mL)及びLiOH一水和物(5.00g、4等量)を添加した。数時間後、その反応物を濃HClで約pH5まで酸性化し、THFで3回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去し、酸3−3を得た。
【0137】
段階C:
窒素雰囲気下のジクロロメタン(50mL)中の磁気を用いて撹拌している酸3−3(502mg、3.22mmol)の溶液に、ピリジン(3.2mL、12等量)を添加した。この反応混合物を氷浴中で0℃まで冷却した。この反応混合物にトリフルオロメタンスルホン酸無水物(3.3mL、6等量)を添加した。30分後、その氷浴をはずし、その反応物を2時間室温に温めた。この反応混合物に、2−アダマンタンアミン塩酸塩(1.21g、2等量)を添加し、この反応混合物を一晩撹拌した。この後、この反応混合物をジクロロメタンで希釈し、水で2回洗浄し、続いて、1%HCl水溶液及び飽和食塩水溶液で洗浄した。その有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。シリカクロマトグラフィーにより、5% EtOAc/ヘキサンで溶出して、その残渣を精製し、トリフレートアミド(triflate amide)生成物3−4を得た。
【0138】
段階D:
上記のトリフレートアミド(triflate amide)(84.4mg、0.200mmol)を脱気したn−プロパノール(1mL)に溶解し、適切に置換されたフェニルボロン酸(1.4から1.5等量)、トリフェニルホスフィン(約50mol%)及び酢酸パラジウム(約25mol%)を含有するマイクロ波試験管に添加した。撹拌子を添加し、その容器に窒素ガスをフラッシュし、クリンプシールして、120℃にて2分間、マイクロ波中で加熱した。その反応物にメタノールを添加し、固形物を沈殿させ、シリカプラグを介してこれらを濾過して除いた。この濾過液の溶媒を減圧下で除去した。その残渣をジクロロメタンに溶解し、0.5N 炭酸水素ナトリウムで洗浄した。その有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。通常はBiotage QUAD3でシリカクロマトグラフィーにより、精製を行った。最終生成物をアセトニトリル/水から凍結乾燥させた。
【0139】
【化10】

【0140】
段階A:
500mLの丸底フラスコに、ジエチルエーテル無水物(250mL)及び撹拌子を添加した。その容器を密封し、窒素ガスをフラッシュし、ドライアイスアセトン浴中で−78℃に冷却した。リチウムヘキサメチルジシラジド(ヘキサン中1M、78mL、78mmol)を添加し、その溶液を15分間冷却した。オルト−クロロアセトフェノン4−1(10mL、1等量)を添加し、その溶液を1時間撹拌、冷却した。シュウ酸ジエチル(12.5mL、1.2等量)を添加し、その反応物を一晩温めた。生成物4−2を濾取して乾燥させた。
【0141】
段階B:
磁気を用いて撹拌している4−2(1.05g、4.01mmol)及びエタノール(20mL)の溶液に、氷酢酸(5mL)を添加した。その容器に窒素ガスをフラッシュした。メチルヒドラジン(R=Me)(260μL、1.2等量)を添加し、この反応混合物を一晩撹拌した。2種類の生成物が形成される。より極性の高い異性体が所望する生成物であった。減圧下で溶媒を除去し、その残渣をEtOAcに溶解した。その酸を炭酸水素ナトリウム飽和溶液で中性化し、次に、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。その有機層をMgSOで乾燥させ、濾過した。シリカクロマトグラフィーにより、15−50%EtOAc/ヘキサンで溶出して精製を行い、所望する生成物4−3を得た。
【0142】
段階C:
磁気を用いて撹拌しているTHF(50mL)及び水(10mL)中のピラゾール4−3(736.4mg、2.789mmol)の溶液に、水酸化リチウム一水和物(1.20g、10等量)を添加した。その溶液を2.5時間還流させた。減圧下で溶媒を除去した。残渣をEtOACに溶解し、1N HClで酸性化し、EtOAcで2回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過した。その生成物4−4を完全に乾燥させた。
【0143】
段階D:
磁気を用いて撹拌しているHOAc(10mL)中の酸4−4(340mg、1.44mmol)の溶液に、塩素ガスを15分間泡立てて通気した。減圧下で溶媒を除去し、その残渣をEtOAc及び水に溶解した。水からその生成物を2回抽出し、合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過した。生成物4−5をジエチルエーテルから蒸発させ、固体を得た。
【0144】
段階E:
磁気を用いて撹拌しているDCM(1mL)中の4−4又は4−5(28mg)の溶液に、DIEA(6等量)及びPyBroP(1.3等量)を添加した。この溶液を20分間撹拌し、次にアミンRNH(1.2等量)を添加した。その溶液を一晩撹拌した。シリカクロマトグラフィーにより、EtOAc/ヘキサンで溶出して、精製を行い、構造式Iの化合物4−6及び4−7を得た。
【0145】
【化11】


【0146】
段階A:
500mLの丸底フラスコに、ジエチルエーテル無水物(250mL)及び撹拌子を添加した。その容器を密封し、窒素ガスをフラッシュし、ドライアイスアセトン浴中で−78℃に冷却した。リチウムヘキサメチルジシラジド(ヘキサン中1M、78mL、78mmol)を添加し、その溶液を15分間冷却した。オルト−フルオロアセトフェノン5−1(10mL、1等量)を添加し、その溶液を1時間撹拌、冷却した。ジ−tert−ブチルオキサレート(19.7g、1.2等量)を添加し、その反応物を一晩温めた。生成物5−2を濾取して完全に乾燥させた。
【0147】
段階B:
マイクロ波試験管中で、HOAc(5mL)中の5−2(1g、3.66mmol)の溶液に、メチルヒドラジン(R=Me)(234μL、1.2等量)を添加した。その試験管に窒素ガスをフラッシュし、密封した。その反応物をマイクロ波中で150℃にて20分間加熱した。白色の固体になるまで、減圧下で溶媒を除去した。所望する異性体は、他方の異性体よりも極性が強く、溶解度が低かった。その残渣をEtOAcに溶解し、所望する異性体を濾取した。生成物5−3の残りを回収するために、シリカクロマトグラフィーにより、200:100:10:2/DCM:ヘキサン:メタノール:HOAcで溶出して、残りの濾過液を精製し、より低い異性体を回収した。化合物4−6及び4−7の調製に対して上記で述べた手順に従い、化合物5−3を中間体5−4に変換し、最終化合物5−5及び5−6に変換した。
【0148】
【化12】

【実施例】
【0149】
(実施例1及び2)
磁気を用いて撹拌しているDCM(1mL)中の中間体4−5(25mg、0.092mmol)の溶液に、DIEA(6等量)及びPyBroP(1.3等量)を添加した。その溶液を10分間撹拌し、次にヒドロキシアダマンタンアミン塩酸塩(6−1)(1.2等量)を添加した。その溶液を一晩撹拌した。2種類の異性体、cis及びtrans(それぞれ6−2及び6−3)が形成された。シリカゲルクロマトグラフィーにより、80% EtOAc:ヘキサンで溶出して、精製を行った。同じ抽出条件下でのさらなるシリカゲルクロマトグラフィーにより、重複する分画を精製した。C−18逆相で各異性体の最終精製を行った。炭酸水素ナトリウム飽和水溶液から最終生成物をDCMで抽出した。その有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、濾過液を蒸発させ、最終化合物を得た。マススペクトル:m/z 420.1(M+H)。
【0150】
より非極性のcis化合物6−2:
H NMR(CDCl,600MHz)7.57(d,J=8.0Hz,1H),7.49(td,J=7.7Hz,J=2.3Hz,1H),7.43(t,J=7.0Hz,1H),7.33(dd,J=7.6Hz,J=1.7Hz,1H),7.15(d,J=7.8Hz,1H),4.17(d,J=8.1Hz,1H),3.73(s,3H),2.34(s,2H),2.18(s,1H),1.93(d,J=12Hz,2H),1.81(d,J=12.8Hz,2H),1.75(m,4H),1.66(d,J=12.6Hz,2H);
より極性の強いtrans化合物6−3:
1H NMR(CDCl3,600MHz)7.57(d,J=7.5Hz,1H),7.49(td,J=7.9Hz,J=1.7Hz,1H),7.43(td,J=7.6Hz,J=1.1Hz,1H),7.33(dd,J=7.5Hz,J=1.6Hz,1H),7.11(d,J=7.6Hz,1H),4.25(d,J=7.8Hz,1H),3.74(s,3H),2.28(s,2H),2.21(s,1H),1.95(d,J=11.6Hz,2H),1.87(d,J=13.6Hz,2H),1.81(m,4H),1.56(m,2H)。
【0151】
次のさらなる実施例は、上述の一般的方法に従い調製した。
【0152】
【表4】


【0153】
医薬製剤の例
本発明の化合物の経口組成物の具体的な実施形態として、実施例1又は2の化合物 50mgを、十分に微粉化したラクトースと共に調剤して、サイズOの硬ゼラチンカプセルを満たす580mgから590mgの総量を得た。
【0154】
本発明をその具体的な実施態様を参照して説明し、例示したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、ここで様々な変更、修飾及び置換がなされ得ることは当業者に認識されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式I:
【化1】

の化合物又は医薬適合性のその塩もしくは溶媒和物:
(式中、
各nは、独立に0、1又は2であり;
は、水素又はC1−4アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はヒドロキシもしくは1個から3個のフッ素で置換されている。)であり;
は、C1−4アルキル、アリール、アリールメチル、ヘテロアリール又はヘテロアリールメチル(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から4個のR置換基で置換されている。)であり;
は、水素、ハロゲン又はC1−4アルキル(アルキルは、置換されていないか、ヒドロキシもしくは1個から3個のフッ素で置換されている。)であり;
は、水素又はC1−4アルキルであり;
は、(CHアリール、(CH4−9シクロアルキル、(CH5−11ビシクロアルキル又は(CH10−14トリシクロアルキル(該アリール、シクロアルキル、ビシクロアルキル及びトリシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル及びC1−4アルキルから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)であるか;
又は、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、O、S及びNC0−4アルキルから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有する、5から7員環の飽和複素環を形成し、該複素環は、場合によっては、ベンゼン環と縮合しており、該複素環又は場合によってはベンゼン環と縮合している複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、C1−4アルキル、トリフルオロメチル及び(CHアリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン及びC1−4アルキルから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されているか;
又は、R及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、O、S及びNC0−4アルキルから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有するC6−11アザビシクロ環系を形成し、該アザビシクロ環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキルから独立に選択される、1個から3個の置換基で置換されており;
各Rは、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、ハロゲン、シアノ、C1−4アルキル、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アリール及びヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又はシアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキル、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択される。)。
【請求項2】
が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が水素、ハロゲン又はメチルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
がアリール又はヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から3個のR置換基で置換されている。)である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
がフェニル(置換されていないか、又は1個から3個のR置換基で置換されている。)である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
nが0であり、Rが水素又はメチルであり、RがC4−9シクロアルキル、C5−11ビシクロアルキル又はC10−14トリシクロアルキルであり;該シクロアルキル、ビシクロアルキル及びトリシクロアルキルが、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル及びC1−4アルキルから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
がメチルであり;Rがアリール又はヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から3個のR置換基で置換されている。)であり;Rが水素、メチル又は塩素である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
及びRが、それらが結合している窒素原子と一緒に、O、S及びNC0−4アルキルから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有する、5から7員環の飽和複素環を形成し、該複素環が、場合によっては、ベンゼン環と縮合しており、該複素環又は場合によってはベンゼン環と縮合している複素環が、置換されていないか、又はハロゲン、C1−4アルキル、トリフルオロメチル及び(CHアリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン及びC1−4アルキルから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
がメチルであり;Rがアリール又はヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から3個のR置換基で置換されている。)であり;Rが水素、メチル又は塩素である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
及びRが、それらが結合している窒素原子と一緒に、O、S及びNC0−4アルキルから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有するC6−11アザビシクロ環系を形成し、該アザビシクロ環が、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキルから独立に選択される、1個から3個の置換基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
がメチルであり、Rがアリール又はヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から3個のR置換基で置換されている。)であり;Rが水素、メチル又は塩素である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
がメチルであり;Rがアリール又はヘテロアリール(アリール及びヘテロアリールは、置換されていないか、又は1個から3個のR置換基で置換されている。)であり;Rが水素、メチル又は塩素であり;Rが水素であり;Rがアダマンチル又はビシクロ[2.2.1]ヘプチル(置換されていないか、又はメチル、ヒドロキシ及びハロゲンから独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
【表1】


からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物又は医薬適合性のその塩もしくは溶媒和物。
【請求項14】
次の表から選択される請求項1に記載の化合物:
【表2】


又は医薬適合性のその塩もしくは溶媒和物。
【請求項15】
医薬適合性の担体と組み合わせて請求項1に記載の化合物を含有する、医薬組成物。
【請求項16】
高血糖、糖尿病又はインスリン抵抗性の治療を必要とする哺乳動物患者に、請求項1に記載の化合物の有効量を投与することを含む、前記哺乳動物患者における高血糖、糖尿病又はインスリン抵抗性を治療する方法。
【請求項17】
インスリン非依存性糖尿病の治療を必要とする哺乳動物患者に、請求項1に記載の化合物の抗糖尿病の有効量を投与することを含む、前記哺乳動物患者におけるインスリン非依存性糖尿病を治療する方法。
【請求項18】
肥満の治療を必要とする哺乳動物患者に、請求項1に記載の化合物を、肥満を治療するのに有効な量で投与することを含む、前記哺乳動物患者における肥満を治療する方法。
【請求項19】
シンドロームXの治療を必要とする哺乳動物患者に、請求項1に記載の化合物を、シンドロームXを治療するのに有効な量で投与することを含む、前記哺乳動物患者におけるシンドロームXを治療する方法。
【請求項20】
異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLからなる群から選択される脂質疾患の治療を必要とする哺乳動物患者に、請求項1に記載の化合物を前記脂質疾患を治療するのに有効な量で投与することを含む、前記哺乳動物患者における、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLからなる群から選択される脂質疾患を治療する方法。
【請求項21】
アテローム性動脈硬化症の治療を必要とする哺乳動物患者に、請求項1に記載の化合物を、アテローム性動脈硬化症を治療するのに有効な量で投与することを含む、アテローム性動脈硬化症を治療する方法。

【公表番号】特表2007−501789(P2007−501789A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522670(P2006−522670)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/025036
【国際公開番号】WO2005/016877
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】