説明

17−AAG又は17−AG又はそのいずれかのプロドラッグをHER2阻害剤と組み合わせて用いる乳癌の治療方法

17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)又は17-アミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AG)、又は17-AAGか又は17-AGのいずれかのプロドラッグをHER2阻害剤と組み合わせて投与することによって被検者において乳癌を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、17-アリルアミノ-l7-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)又はl7-アミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AG)、又はそのいずれかのプロドラッグをHER2阻害剤と組み合わせて用いる乳癌の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に女性における癌死の第二の主な原因は、乳癌、乳房細胞から生じる悪性腫瘍である。ほとんどの乳癌は、胸部の導管又は小葉に沿って並ぶ細胞において開始する。癌は、静脈やリンパ管、典型的には、腋窩リンパ節、内部乳腺結節、及び/又は鎖骨上窩又は鎖骨下結節によって他の臓器に広がる(転移する)ことができる。
乳癌の治療としては、手術、放射線療法、及び化学療法が挙げられる。化学療法剤としては、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、エピルビシン(Ellence(登録商標))、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、ビノレルビン(Navelbine(登録商標))、パクリタキセル(Taxrol(登録商標))、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、白金錯体薬剤(例えば、シスプラチンやカルボプラチン)、エトポシド、ビンブラスチン、フルオロウラシル及びトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))が挙げられる。併用治療が使用し得る: シクロホスファミド/メトトレキセート/フルオロウラシル(CMF)、フルオロウラシル/ドキソルビシン/シクロホスファミド(CAF/FAC)、ドキソルビシン/シクロホスファミド(AC)、シクロホスファミド/エピルビシン/フルオロウラシル(CEF)、エピルビシン/シクロホスファミド(EC)、ドセタキセル/ドキソルビシン/シクロホスファミド(TAC)、ドキソルビシン後にCMF(A→CMF)及びAC後にパクリタキセル(AC→T)。化学療法には、エストロゲン遮断薬、例えば、タモキシフェンやフルベストラントによるホルモン治療も含まれ得る。
これらの薬剤の全てではないにしてもほとんどが深刻な副作用又は他の制限を有する。それらの使用は、食欲不振、嘔気、嘔吐、口のびらん、毛髪の損失、月経周期の変化を引き起こすことがある。これらの薬剤は、また、白血球の減少(感染のリスクを増加させる)、血小板(血液凝固に関連する問題点を引き起こす)、赤血球(疲労や貧血症に至る)を引き起こすことがある。ドキソルビシンやエピルビシンは、心臓障害を引き起こすことがある。癌が寛解するトラスツズマブ患者は、トラスツズマブを服用することを停止すると高い再発のリスクを起こす。ホルモン治療は、リスクを持つ; 例えば、タモキシフェンは、子宮内膜癌と脳卒中のリスクを増加させることがあり、フルベストラントは、胃腸症状、頭痛、背痛、血管拡張、咽頭炎、膣出血を引き起こすことがある。
乳癌の既存の治療のいずれもがほとんどの患者の疾患に永続的な治療に大きな潜在的可能性を与えることから、真に有効である治療を見つけるために世界全体にわたって多くの研究所や臨床センターにおいて集中的な努力が進行中である。
種々の化合物が、現在、乳癌治療に用いるのに探究されている。このような一化合物が、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシンである(“l7-AAG”、一般名タネスピマイシン、しばしばl7-アリルアミノゲルダナマイシンとも呼ばれる)。17-AAGは、天然産物ゲルダナマイシンの半合成類似体であり(Sasaki et al. l98l)、これは産生微生物、例えば、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス変種ゲルダナス(Streptomyces hygroscopicus var. geldanus) NRRL 3602を培養することによって入手できる。他の生物学的に活性なゲルダナマイシン誘導体は、17-アミノデメトキシゲルダナマイシン(“17-AG”)であり、これは17-AAGの代謝によって人体に産生される(Egorin el al. 1998)。17-AGは、ゲルダナマイシンから化学合成によっても作ることができる(Sasaki et al. 1979)。ゲルダナマイシンとその類似体は1990年代に抗癌剤として集中的に研究されてきた(例えば、Sasaki et al. 198l; Schnur 1995, Schnur et al. 1995a and 1995b; Schnur et al. 1999)が、それらのいずれも抗癌使用に承認されなかった。
【0003】
【化1】

【0004】
17-AAGやゲルダナマイシンは、熱ショックタンパク質-9O("Hsp90")に結合し、その活性を阻害することによって作用すると考えられる(Schulte and Neckers, 1998)。Hsp90は、多くの細胞タンパク質(“クライアントタンパク質”)の通常の処理 - 特に正しい折りたたみ - のためのシャペロンとして作用し、全ての哺乳動物細胞において見られる。ストレス(低酸素症、熱等)は、その発現の数倍の増加を誘発する。他のストレス誘発性タンパク質(コシャペロン)、例えば、熱ショックタンパク質-70(“Hsp7O”)も存在し、これは、ストレスに対する細胞応答と回復の役割を果たすものである。
癌細胞におけるHsp90の阻害によって、Hsp90とクライアントタンパク質、例えば、erbB2、ステロイド受容体、raf-l、cdk4、Aktとの間の相互作用が破壊される。例えば、17-AAGにさらすことによって、SKBr3乳癌細胞におけるerbB2の減少及びRaf-lや突然変異体p53の不安定化(Schulte and Neckers, 1998)、乳癌細胞におけるステロイド受容体の減少(Bagatell et al. 2001)、MEXF 276Lメラノーマ細胞におけるHsp90の減少及びRaf-lやerbB2のダウンレギュレーション(Burger et al. 2004)、結腸腺癌細胞におけるRaf-l、c-Akt及びErk1/2の減少(Hostein et al. 2001)、白血病細胞におけるBcr-Ablやc-Rafの細胞内タンパク質のダウンレギュレーション及びAktキナーゼ活性の低下(Nimmanapalli et al. 2001)、野生型Rbを有する肺がん細胞におけるcdk4、cdk6、サイクリンEの分解(Jiang and Shapiro 2002)、また、NSCLC細胞におけるerbB1とerbB2のレベルの減少(Nguyen et al. 2000)が得られる。
Johnson, Jr., et al.の2006年4月26日出願の米国特許出願第11/412,298号と、2006年4月26日出願の同第11/412,299号には、それぞれ、単剤として、また、プロテアソーム阻害剤と組み合わせて、多発性骨髄腫の治療用の17-AAGのようなHsp90阻害剤の使用が開示されている。
癌細胞の腫瘍形成や転移に関与するHsp90及び他のタンパク質と相対して17-AAGが活性であることから、多くの臨床研究者は、ヒト臨床試験における抗癌剤としてその有効性を評価してきた。これらの種々の試験から、国立癌研究所の癌治療評価プログラム(CTEP)は、更に、研究のためにこれらの第2相用量/計画用法を推奨した: 220mg/m2(患者又は被検者の体表面積(BSA)の1平方メートル当たりのmg)が3週間の内の2週間週に二回投与され、450mg/m2が週に一度連続して又は休止又は中断して、300mg/m2が4週間の内の3週間週に一度投与される。17-AAGによる種々の臨床試験の結果 - ほぼ例外なく固形腫瘍患者による - は、一般には、限定された臨床活性を示し、以下に要約する:
【0005】
(a)患者が3週間毎に5日間毎日17-AAGを受けた固形腫瘍をもつ成人患者において第1相試験を行った。開始用量は、10mg/m2であり、最大耐量(“MTD”)の56mg/m2まで増加させ、40mg/m2として指定される第2相用量が推奨された。プロトコールを、重大な既存の肝疾患をもつ患者を除外するために修正し、その後、患者を同じ計画について用量110mg/m2まで治療した。客観的な腫瘍反応は、認められなかった。可逆的肝毒性を限定する用量のために、プロトコールは、1日40mg/m2の用量で開始する隔週で週に二回の計画で患者に投与するように更に修正した。40mg/m2と56mg/m2の日用量で5日間、ピーク血漿濃度は、それぞれ、1,860±660nMと3,170±1,310nMであった。56mg/m2で治療した患者について、17-AAGと17-AGの平均AUC値は、それぞれ、6,708nM×時間と5,558のnM×時間、平均t1/2は、それぞれ、3.8時間と8.6時間であった。17-AAGと17-AGのクリアランスは、それぞれ、19.9L/時間/m2と30.8L/時間/m2であり、VZ値は、それぞれ、93L/m2と203L/m2であった(Grem et al. 2005; Wilson et al. 2001)。
(b)第1相の第二試験において、固形腫瘍が進行した患者は5mg/m2の開始用量で毎日×5の計画で17-AAGを受けた。80mg/m2で、用量制限毒性(肝炎、腹痛、嘔気、呼吸困難)が認められたが、用量が157mg/m2/日に達するまで用量増加を続けた。用量の計画変更を、更に、週に二回の投薬を可能にするように実施した。8Omg/m2の服用レベルで、t1/2は1.5時間であり、血漿Cmaxは2,700nMであった。同様に、17-AGについて、t1/2は1.75時間であり、Cmaxは607nMであった。血漿濃度は、試験管内と生体内異種移植モデルにおいて細胞死滅(10-500nM)を達成するのに必要な濃度を超えた(Munster et al. 20Ol)。
(c)固形腫瘍が進行した患者を10mg/m2の開始用量で4週間毎のうちの3週間週に一回治療する17-AAGの第1相試験を行い、第2相用量は295mg/m2が推奨された。用量増加は、395mg/m2の用量に達し、膵臓炎に続発する悪心嘔吐とグレード3の疲労が認められた。投薬計画を4週間のうちの3週間週に二回と3週間のうちの2週間週に二回の投薬を可能にするように修正した。集団薬物動態(PK)解析をこの試験から得られるデータで行った。17-AAGについてVd(分配容積)は、中枢区画が24.2Lで末梢区画が89.6Lであった。クリアランス値は、17-AAGと17-AGについてそれぞれ26.7L/時間と21.3L/時間であった。代謝クリアランスは、46.4%の17-AAGが17-AGに代謝されたことを示した。客観的な腫瘍応答は、今までこの試験において認められていなかった(Chen et al. 2005)。
(d)固形腫瘍とリンパ腫をもつ患者における他の第1相試験を、4週間サイクルのうちの3週間毎週の投薬を用いて行った。開始用量は、15mg/m2であった。用量増加は、有意な毒性がなくll2mg/m2に達し、“生物学的”活性の用量範囲に達する目的において続けた。週一回17-AAGのMTDは、308mg/m2で達した。客観的な腫瘍応答は、この試験において今まで認められてなく、測定したHsp90クライアントタンパク質のレベルは、治療の間、変化しなかった。シャペロン又はクライアントタンパク質レベルと17-AAG又はl7-AG PKとの間に相関は、見られなかった。17-AAG PKとその臨床毒性との間に相関もなかった(Goetz et al. 2005)。
【0006】
(e)11人の転移性メラノーマ患者を含む他の第1相試験は、週一回の投与計画を用いて行った。開始用量は、10mg/m2であり、用量制限毒性は、450mg/m2/週で認められた(ASTがグレード3/4に上がる)。より多い用量(16-450mg/m2/週)で使われる17-AAG製剤は、単一の輸液中に10-40mLのジメチルスルホキシド(DMSO)を含有し、おそらく、これが試験において認められた胃腸毒性の原因になる。320-450mg/m2で治療した患者の中で、二人は、放射線学的に証明された長期安定な疾患を示した。完全もしくは部分的応答は、記録されなかった。最も多量の服用レベル(450mg/m2)で血漿17-AAG濃度は10μMを超え、24時間を超える期間120nMを超えたままであった。450mg/m2の最も多量の服用レベルで、平均分配容積は、142.6Lであり、平均クリアランスは、32.2L/時間であり、平均ピーク血漿レベルは、8,998μg/Lであった。研究した服用レベルについて曲線(AUC)下の用量と面積間に線形相関があった。薬力学的(PD)パラメータを測定し、320-450mg/m2/週で治療される9人の患者のうちの8人において共同シャペロンタンパク質Hsp70の誘導が認められた。腫瘍生検においてクライアントタンパク質の減少が認められた: 24時間で、9人の患者のうち8人にCDK4、6人の患者のうち4人にRaf-lの減少。これらのデータは、腫瘍におけるHsp90が1〜5日間に阻害されることを示した(Banerji et al. 2005)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今まで行われた第1相試験において評価される患者集団は、ほぼ例外なく難治性又は耐性の固形腫瘍をもつ患者からなり、限定された臨床活性しか認めらなかった。従って、抗癌剤として17-AAGを開発する集中的な努力にもかかわらず、17-AAGは、あらゆる癌の治療における使用にいかなる行政当局によってもなお承認されていない。化合物の潜在的治療効果が癌の治療において実現され得るように17-AAG及び17-AAGのプロドラッグ及び17-AGを調薬し投与する方法が依然として求められている。
約20〜30パーセントの乳癌の症例において、ヒト上皮成長因子受容体2タンパク質(HER2、HER2/neu、ErbB2、Neu、又はp185としても知られる)は、HER2過剰発現、HER2陽性又はHER2+と呼ばれる状態を過剰生産する。この状況は、HER2遺伝子を通常の補体の過剰発現又は遺伝子の特別なコピーの存在(増幅)から生じ得る。HER2陽性乳癌がより攻撃的な傾向があることから - より急速に成長し、それどころかより再発しやすい - HER2陽性乳癌のための治療を開発するのに重点が置かれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、乳癌をこのような治療を必要とする被検者において治療するための方法であって、17-AAG又は17-AG又は17-AAG又は17-AGのいずれかのプロドラッグの治療的に有効な用量とHER2(タンパク質)阻害剤の治療的に有効な用量を被検者に投与する工程を含み、所望により、治療効果が更に得られなくなるまで前記工程を反復する工程を含んでもよい、前記方法を提供する。
一実施態様において、方法は、17-AAG又はそのプロドラッグの複数回用量を少なくとも4週間の時間をかけて乳癌患者に投与することを含み、ここで、このような各用量は、17-AAGの約300mg/m2〜約450mg/m2又は17-AG又は17-AAG又は17-AGのプロドラッグの当量(モルに基づく)の範囲にある。一実施態様において、用量は、約375〜約450mg/m2である。一実施態様において、この用量は、週一回少なくとも四週間投与される。一実施態様において、この用量は、週一回四週間毎週投与され、四週間当たりの投薬速度がサイクルと呼ばれ、このような治療の複数のサイクルが乳癌患者に投与される。一実施態様において、完全な治療は、6サイクル以下である。
一実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量は、用量当たりの17-AAGのAUCtotalが約13,000ng/mL×時間〜48,000ng/mL×時間の範囲で得られる用量である。一実施態様において、この用量は、17-AAGのCmaxが14,000ng/mLを超えないような速度と頻度で投与される。一実施態様において、この用量は、17-AAGのCmaxが3,600ng/mLを超え、好ましくは5,000ng/mLを超えるような速度と頻度で投与される。一実施態様において、この用量は、17-AAGのCmaxが3,600ng/mLを超えるが、14,000ng/mL未満、好ましくは5,000ng/mLを超えるが、14,000ng/mL未満であるような速度と頻度で投与される。
一実施態様において、17-AG又は17-AGのプロドラッグ(プロドラッグは17-AAGを含む)の治療的に有効な用量は、用量当たりの17-AGのAUCtotalが約5,800ng/mL×時間〜39,000ng/mL×時間の範囲で得られる用量である。一実施態様において、この用量は、17-AGのCmaxが3,300ng/mLを超えないような速度と頻度で投与される。一実施態様において、この用量は、l7-AGのCmaxが800ng/mLを超え、好ましくは1,100ng/mLを超えるような速度と頻度で投与される。一実施態様において、この用量は、17-AGのCmaxが800ng/mLを超えるが、3,300ng/mL未満、好ましくは1,100ng/mLを超えるが、3,300ng/mL未満であるような速度と頻度で投与される。
一実施態様において、17-AAG、l7-AG、又はそれらのいずれかのプロドラッグの治療的に有効な用量は、用量当たりの17-AAGと17-AGの合計のAUCtotalが約23,000ng/mL×時間〜82,000ng/mL×時間の範囲で得られる用量である。一実施態様において、この用量は、17-AAGのCmaxが14,000ng/mLを超えず及び/又は17-AGのCmaxが3,300ng/mLを超えないような速度と頻度で投与される。一実施態様において、この用量は、17-AAGのCmaxが3,600ng/mLを超える(好ましくは5,000ng/mLを超える)及び/又は17-AGのCmaxが800ng/mLを超える(好ましくは1,100ng/mLを超える)ような速度と頻度で投与される。一実施態様において、この用量は、17-AAGのCmaxが3,600ng/mLを超えるが14,000ng/mL未満である(好ましくは5,000ng/mLを超えるが14,000ng/mL未満である)及び/又は17-AGのCmaxが800ng/mLを超えるが3,300ng/mL未満(好ましくはl,l00ng/mLを超えるが3,300ng/mL未満)であるような速度と頻度で投与される。
【0009】
一実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量は、17-AAGの終末t1/2(時間)が1.5〜12の範囲で得られる用量である。一実施態様において、17-AAG又はl7-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量は、17-AAGの終末t1/2(時間)が上記の範囲で、また、用量当たりの17-AAGのAUCtotalが約13,000ng/mL×時間〜48,000ng/mL×時間の範囲で得られる用量である。
一実施態様において、17-AG又はl7-AGのプロドラッグの治療的に有効な用量は、17-AGの終末t1/2(時間)が3.7〜8.8の範囲で得られる用量である。一実施態様において、17-AG又は17-AGのプロドラッグの治療的に有効な用量は、17-AGの終末t1/2(時間)が上記の範囲で、また、用量当たりの17-AGのAUCtotalが約5,800ng/mL×時間〜39,000ng/mL×時間の範囲で得られる用量である。
一実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量は、67〜800の範囲の17-AAGの分配容積Vz(L)が得られる用量である。一実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量は、17-AAGの分配容積Vz(L)が上記の範囲で、また、用量当たりの17-AAGのAUCtotalが約13,000ng/mL×時間〜48,000ng/mL×時間の範囲で得られる用量である。
一実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量は、クリアランス(L/時間)が13〜52の範囲で生じる用量である。一実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量は、17-AAGのクリアランス(L/時間)が上記の範囲で、また、用量当たりの17-AAGのAUCtotalが約13,000ng/mL×時間〜48,000ng/mL×時間の範囲で得られる用量である。
一実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量は、Vss(L)が66〜550の範囲で得られる用量である。一実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量は、17-AAGのVss(L)が上記の範囲で、また、用量当たり17-AAGのAUCtotalが約13,000ng/mL×時間〜48,000ng/mL×時間の範囲で得られる用量である。
好ましい実施形態において、被検者は、HER2陽性乳癌を有する。一実施態様において、17-AAGとHER2阻害剤は、それぞれ個別の医薬製剤で投与される。他の実施態様においては、17-AAGとHER2阻害剤は、同一の医薬製剤中にある。一実施態様において、HER2阻害剤は、トラスツズマブ(HerceptinTM)である。一実施態様において、17-AAGは、トラスツズマブと輸液として120分かけて投与される。一実施態様において、HER2阻害剤は、トラスツズマブであり、負荷量として90分かけて4.0mg/kgで、また、毎週維持量として30分かけて2.0mg/kgで投与される。一実施態様において、方法は、更に、投与する工程の前に被検者について固形腫瘍におけるHER2過剰発現を検査する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
定義
本発明の理解と実施を援助するために、本明細書に用いられる特定の用語の定義を以下に示す。
“2+”or“3+”HER2過剰発現は、それぞれ、病巣の10%を超える腫瘍細胞における完全な細胞膜の中程度の染色又は強い染色を意味する。腫瘍細胞の染色は、Ridolfi et al. 2000に開示されるIHC又はFISH方法を用いて行われる。
“17-AAG”は、17-AAGのプロドラッグを含むように定義され、17-AAGの濃度は、17-AAGのプロドラッグのモル当量濃度を含むように定義される。
“17-AG”は、17-AGのプロドラッグを含むように定義され、17-AGの濃度は、17-AGのプロドラッグのモル当量濃度を含むように定義される。
“有害事象”は、国立癌研究所(2003)において定義された通りある。
“用量制限毒性”(DLT)は、国立癌研究所(2003)が述べている以下の任意の臨床毒性として定義される。血液学的毒性は、以下を含む: (1)グレード4 好中球減少(絶対好中球数(ANC)<0.5×109/L)5日連続を超える、又は発熱性好中球減少(ANC<1.0×l09/L、発熱≧38.5℃)、(2)グレード4血小板減少(血小板<25.0×109/L又は血小板輸血を必要とする出血エピソード)、及び/又はグレード4貧血(ヘモグロビン<6.5g/dl)。非血液学的毒性は、以下を含む: (1)≧グレード3の非血液学的毒性のいずれも(グレード3の注射部位反応、脱毛症、食欲不振、疲労を除く)、(2)最大の医学的介入及び/又は予防の使用にもかかわらず、≧グレード3の嘔気、下痢及び/又は嘔吐、及び/又は(3)薬剤関連毒性からの長期回復のために4週間を超える治療遅延。
“KPS一般状態”は、表1で定義され、ECOG基準に対する比較も示される。
【0011】
【表1】

【0012】
“測定可能な病巣”は、従来の技術において≧20mmとして又はスパイラルコンピュータ断層撮影法(CT)スキャンにおいて≧10mmとして少なくとも一つの寸法で正確に測定することができる病巣を意味する。臨床病巣は、それらが表在性(例えば、皮膚結節、触診可能なリンパ節)である場合に測定可能であるとみなされる。“非測定可能な病巣”は、“測定可能な病巣”以外の全ての病巣を意味する。
“腫瘍応答”は、腫瘍応答の評価と最良総合効果の分析のための以下の固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)の基準を意味する(Therasse et al. 2000)。表2は、一つ又は複数の新たな病巣の出現があってもなくても対象病巣と対象外の病巣における腫瘍応答の全ての可能な組み合わせに対する全体の応答を示す。
【0013】
【表2】

【0014】
“完全退縮(complete response)”(CR)は、対象病巣について全ての対象病巣の消失を意味する。CRは、対象外の病巣について全ての対象外の病巣の消失と腫瘍マーカーレベルの標準化を意味する。
“部分退縮(partial response)”(PR)は、対象病巣について、ベースライン長径和を基準とする対象病巣の最も長い直径の合計で少なくとも30%縮小することを意味する。確認されたPR又はCRの状態を割り当てるために、応答する腫瘍患者における腫瘍測定の変化は、応答の基準が最初に満たされる≧4週間後に行わなければならない反復研究によって確認される。
“進行停止(stable disease)”(StD)は、対象病巣について、治療期間から最長直径の最も小さい合計を基準とする、PRとしてみなす充分な縮小もPrDとしてみなす充分な増大もないことを意味する。追跡測定は、6週間の最小間隔で研究入力後少なくとも一回StD基準を満たしたものでなければならない。
“不完全な退縮/進行停止”(不完全退縮/StD)は、対象外の病巣について一つ以上の対象外病巣の持続及び/又は正常な限界を超える腫瘍マーカーレベルの維持を意味する。測定可能な腫瘍が退縮又はStDの基準を満たした場合に治療中に出現するか又は悪化するあらゆる浸出液の新生物由来の細胞学的確認は、退縮又はStDとPrDとを区別するために必須である。
“進行性疾患(progressive disease)”(PrD)は、治療を開始してから記録される最長直径の最も小さい合計を基準とする、対象病巣について対象病巣の最長直径の合計で少なくとも20%の増加、又は一つ以上の新たな病巣の外観を意味する。対象外病巣について、PrDは、一つ以上の新たな病巣の出現及び/又は既存の対象外病巣の明確な進行として定義される。
“対象病巣”は、全ての関与した臓器を代表する全ての測定可能な病巣(最高10まで)を意味する。対象病巣は、ベースラインで、また、治療中の規定の間隔で測定され記録される。対象病巣は、それらのサイズ(最長直径を有する病巣)と正確な反復測定のためのそれらの適合性(画像技術によってか又は臨床的に)に基づいて選ばれる。最長直径は、各対象病巣について記録される。全ての対象病巣について最長直径の合計を算出し、ベースライン基準として用いて、治療に対する客観的な腫瘍応答を更に特徴づける。“対象外病巣”は、対象病巣でないあらゆる病巣である。
“治療的に有効な用量”は、特に明記しない限り、所望の治療の結果を達成するために投与されるのに必要とされる薬剤量を意味する。
“腫瘍マーカー退縮”は、ベースラインと関連して腫瘍マーカーの値が≧50%だけ低下することを意味する。
“腫瘍マーカー進行”は、以下のいずれかの発生を意味する: (1)治療前の測定と関連して: >200単位の治療前のマーカーレベルから>25%だけ腫瘍マーカーの増加、又は≦200単位の治療前のマーカーレベルから>50%だけ増加、又は(2)調べた結果の最低マーカーレベル(“調べた結果の最悪マーカーレベル”)での測定と関連して: >200単位の調べた結果の最悪マーカーレベルから>25%だけ腫瘍マーカーの増加、又は≦200単位の調べた結果の最悪マーカーレベルから>50%だけ増加。
【0015】
実施態様
本発明は、17-AAG、17-AG及び17-AAG又は17-AGのプロドラッグをHER2阻害剤と組み合わせて用いる乳癌(特にHER2陽性乳癌)を治療するための新規な重要な方法を提供する。本発明は、部分的には、乳癌患者における扱いにくい毒性を引き起こす血中濃度に達することなく、AUCtotal、Cmax、終末半減期t1/2、クリアランス、及びVzか又はVssとして表される分配容積として表される、17-AAG又は17-AGの治療的に有効血中濃度(又は17-AGと共に添加される17-AAGの血中濃度、これらの部分が細胞分析において等効力であるので)を達成し維持するために17-AAGを調薬し投与するのための新規な方法の発見、また、ファスツズマブ及び他のHER2阻害剤が乳癌患者におけるこれらの化合物の抗癌活性を強化することができる発見による。
一実施態様において、HER2阻害剤は、17-AAG又は17-AG又はそれらのいずかのプロドラッグを投与する前に投与される。他の実施態様において、17-AAG又は17-AG又はそれらのいずかのプロドラッグは、HER2阻害剤を投与する前に投与される。更に他の実施形態において、二つのタイプの薬剤が併用して投与される。一実施態様において、17-AAG又は17-AG又はそれらのいずかのプロドラッグとHER2阻害剤が1週間の間に別々に投与される。
一実施態様において、本発明は、17-AAG、17-AG、又はそれらのいずれかのプロドラッグの複数回用量を、HER2阻害剤と組み合わせて四週間かけて投与することを含む。ひとまとめにして、四週間かけるこれらの四回の投与が治療のサイクル又は、簡単に、サイクルと呼ばれる。患者は、複数のサイクルで治療することができる。本明細書に詳しく記載されるものよりより長い又はより短い時間のサイクルを含むか又はより多い又はより少ない用量を含む、異なるサイクルが、本明細書に記載される治療的に有効な量と薬物動態パラメータが達成される限り使用し得る。
一実施態様において、治療的に有効な用量は、17-AAG、l7-AG、又は17-AAG又は17-AGのプロドラッグの複数回用量をHER2阻害剤と組み合わせて(互いに少なくとも一週間以内に別個に投与することを含む)、少なくとも4週間かけて乳癌患者に投与することによって達成され、ここで、このような複数回用量によって、少なくとも13,000ng/mL×時間で48,000ng/mL×時間未満の用量当たりの17-AAGのAUCtotalが得られる。一実施態様において、一サイクルにつき四回用量が投与され、各一回分が少なくとも300mg/m2で各回投与の間が1週間である。
17-AAG又は17-AG以外の化合物は、それらが生体内で17-AAG又は17-AG(即ち、17-AAG又は17-AGのプロドラッグ)に変換される場合には投与することができる。プロドラッグの一タイプは、ゲルダナマイシンベンゾキノン環がヒドロキノン環に還元されるが、被検者においてベンゾキノン環に代謝されるものであり、17-AAGプロドラッグの個々の例は、17-アリルアミノ-18,21-ジヒドロ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAGH2)である。Adams et al. 2005a and 2005b。17-AAGが生体内で17-AGに変換され(Egorin et al. 1998)、l7-AGが17-AAGにほぼ等しい活性を有する(Schnur et al. l995a and 1995b)ので、l7-AAGH2は、17-AGのプロドラッグであるとみなされ得る。遊離塩基形の17-AAGH2が容易に空気酸化するので、好ましくは、処理されるアンモニウム塩として又は抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸); 低pH緩衝剤(例えば、クエン酸/クエン酸塩)、及び金属キレート化剤(例えば、EDTA)を含む溶液製剤として処理される。
【0016】
【化2】

【0017】
本発明の方法は、一実施態様において、乳癌を前記治療を必要とする患者において治療する方法であって、方法が、17-AAG又は17-AG、又は17-AAG又は17-AGのプロドラッグ、例えば、17-AAGH2の複数回用量を、少なくとも4週間かけて乳癌患者に投与することを含み、ここで、このような複数回用量によって、用量当たりの17-AGのAUCtotalが少なくとも5,800ng/mL×時間で39,000ng/mL×時間未満で得られる、前記方法を含む。一実施態様において、四回分が一サイクルで投与され、各一回分が少なくとも300mg/m2で各回投与の間が1週間である。
従って、本発明の治療方法において、用語“投与すること”は、被検者に投与した後又は投与と同時に生体内で17-AAG又は17-AGに変換する化合物で乳癌を治療することを包含する。17-AAGH2の個々の場合において、“投与すること”は、その塩又はその溶液を投与することを包含する。他の17-AAG又は17-AGプロドラッグを用いることができ、それらの選択と調製のための従来の手順は、例えば、Wermuth 2003に記載されている。
HER2阻害剤は、(l)マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)及び/又はAkt/ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3-キナーゼ)経路を通る下流のシグナル伝達を遮断するか又は減少させることによってHER2を阻害することができる及び/又は(2)トラスツマブとほぼ同様のメカニズムによって治療作用を及ぼす分子である。トラスツマブ作用のメカニズムは、(a)HER2機能の阻害(例えば、HER2細胞外ドメインに結合するので、その同種リガンドによって結合を防止することによって、同種リガンドに結合し、HER2への結合を阻止することによって、HER2をダウンレギュレーションすることによって、又はHER2のチロシンキナーゼ活性を阻害することによって)及び/又は(b)腫瘍細胞におけるHER2の細胞外ドメインに結合し、ホストの免疫系による攻撃のために細胞をマークすることに関与すると考えられる。更に、トラスツズマブは、細胞毒性因子、例えば、腫瘍壊死因子α(TNF-α)に感受性のない又は耐性腫瘍細胞に感受性のあるものである。トラスツズマブ作用の可能なメカニズムの説明について、例えば、Hudziak et al. 1997 and Genentech 2005を参照のこと。阻害によって、腫瘍成長の遅延、腫瘍縮小の誘発、細胞毒性化学療法の強化、及び転移の減少が生じ得る(De Bono and Rowinsky, 2002)。一実施態様において、HER2阻害剤は、有機小分子、ペプチド又はペプチド模倣薬、又は抗体、又はHER2に結合するあらゆる機能性断片又はその抗体断片である。このような有機小分子の例は、ピリミド-ピリミジン(Hilberg et al. 2003)、キナゾリン(Tang et al. 2000a and 2000b)、インダゾリルピロロトリアジン(Yite et al. 2005)、アリールインドリノン(Cui et al. 2004)、ラパチニブ(Carter et al. 2004; Xia et al. 2005)である。ペプチド又はペプチド模倣阻害剤の例は、Greene et al. 2003; Park et al. 2000に開示されている。
【0018】
一実施態様において、HER2阻害剤は、HER2に結合し、それによってMAPK及び/又はAkt/PI3-キナーゼ経路を通る下流シグナル伝達を遮断するか又は減少させる、抗体、又はそのあらゆる機能性断片又は抗体断片である。本発明によって包含される抗HER2抗体の範囲は、Hudziak et al. 1997, 1998a, 1998b, 2000, 2002a, and 2002bに定義される化合物を包含する。抗HER2抗体の例は、モノクローナル抗体4D5、3E8、3H4、及びトラスツズマブである。他の実施態様において、HER2阻害剤は、4D5又はトラスツズマブが結合した抗原に結合する抗体、又はそのあらゆる機能性断片又は抗体断片である。他の実施態様において、HER2阻害剤は、4D5又はトラスツズマブの相補性決定領域(CDR)を含む、抗体、又はそのあらゆる機能性断片又は抗体断片である。一実施態様において、モノクローナル抗HER2抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。一実施態様において、モノクローナル抗HER2抗体は、トラスツズマブである。
トラスツズマブ(Hercepin(登録商標)、Genentech、サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州、米国)は、HER2に結合するヒト化モノクローナル抗体である。トラスツズマブ及び適切な医薬製剤を製造し使用する方法及びその投与手段と方法は、Hudziak et al. 1997, 1998a, 1998b, 2000, 2002a and 2002bに教示されている。トラスツズマブは、(1)腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現させ且つそれらの転移性疾患のために一つ以上の化学療法の用法を受けた転移性乳癌患者の治療、また、(2)腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現させ且つそれらの転移性疾患のために化学療法を受けていない転移性乳癌患者のパクリタキセルと組み合わせた治療用の単剤として承認されている。一実施態様において、トラスツズマブは、腫瘍がHER2過剰発現を予測するのに有効とされる分析によって評価された患者に用いられる。HER2タンパク質過剰発現を分析する方法としては、免疫組織化学(IHC)を用いる方法や蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を用いる方法が挙げられる。市販のIHC試験は、PathVysion(登録商標)(Vysis Inc.、ダウナーズグローブ、イリノイ州)である。市販のFISH試験は、DAKO HercepTest(登録商標)(DAKO Corp.、カルピンテリア、カリフォルニア州)である。
【0019】
治療のために生体内で用いられる場合、抗HER2抗体は、治療的に有効な量で投与される。好ましくは、非経口的に、可能な場合には、標的細胞部位に、又は静脈内に(IV)投与される。抗HER2抗体の投与量は、典型的には約0.1〜約10mg/kg患者体重の範囲である。非経口投与について、抗HER2抗体は、医薬的に許容され得る非経口賦形剤に関連して単位用量注射用剤形(溶液、懸濁液、エマルジョン)で処方される。このような賦形剤の例は、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、5%ヒト血清アルブミンである。不揮発性油やオレイン酸エチルのような非水性賦形剤も用いることができる。リポソームは、担体として用いることができる。賦形剤は、少量の添加剤、例えば、等張性や化学安定性を増強する物質、例えば、緩衝液や防腐剤を含有することができる。抗HER2抗体は、典型的には、このような賦形剤に約1mg/ml〜l0mg/mlの濃度で処方される。抗HER2抗体がトラスツズマブである場合、トラスツズマブは、好ましくは、約20mLの注射用静菌水(BWFI)又は注射用滅菌水(SWFI)によって再構成された、約440mgのトラスツズマブ、約400mgのα、α-トレハロース二水和物、約9.9mgのL-ヒスチジン、及び約1.8mgのポリソルベート20を含む医薬製剤で投与される。好ましい実施態様において、トラスツズマブを含む医薬製剤は、約21mg/mLのトラスツズマブを含み、pH約6を有する。一実施態様において、投与されるトラスツズマブの各用量は、1〜4mg/kg、好ましくは約2〜4mg/kgである。より好ましい実施態様において、トラスツズマブの初回量又は負荷量は、約4mg/kgであり、トラスツズマブの全ての追加量又は維持量は、約2mg/kgである。典型的には、IV注入として用量が投与される。
他の実施態様において、HER2阻害剤は、二重チロシンキナーゼ阻害剤、即ち、HER2だけでなく第二チロシンキナーゼ、典型的にはEGFR(ErbBlとしても知られる)も阻害する。二重チロシンキナーゼ阻害剤の例としては、Gefitinib(Iressa(登録商標))、Erlotinib(Tarceva(登録商標))及びlapitinib. de Bono and Rowinsky 2002; Johnston 2006が挙げられる。
【0020】
本発明のために治療を必要とする被検者は、典型的には、乳癌に罹患しているヒト患者であるが、本発明の方法は、問題の具体的な哺乳動物のために本明細書に記載された等価なAUCtotal又は他のPK及びPDのパラメータを達成するために単位用量を適切に調整して動物のために実施され得る(ネコ、ウシ、イヌ、ウマ等を含む)。薬剤科学の当業者は、ヒト治療のための用量とPKのパラメータの本開示から問題の種に適用できる換算係数を知っているか或いは容易に決定することができる。
一実施態様において、被検者は、組織学的に確認された乳癌の悪性腫瘍によって診断されている。一態様において、被検者は、2+又は3+ HER2過剰発現による転移性乳癌を有する。一実施態様において、被検者は、トラスツズマブで治療した後に疾患の進行を有する。HER2阻害剤がトラスツズマブである場合、被検者は、好ましくは、肺に障害を生じさせず、既存の心機能異常がなく、及び/又はいかなるチャイニーズハムスター卵巣タンパク質にも過敏でない。
17-AAGの治療的に有効な用量とHER2阻害剤の治療的に有効な用量は、それぞれ、治療結果をもたらす被検者に一治療サイクルにわたってそれぞれの投与で投与される17-AAGとHER2の阻害剤の量である。治療結果は、癌の進行又は広がりの速度がある期間遅くなるか又は停止されることがあり得る。ある患者において、治療結果は、対象又は対象外の病巣の部分的又は完全な消失であり得る。治療結果は、一つ又は複数の治療サイクルによって達成され得る。しかしながら、あらゆる乳癌患者がいかなる抗癌治療でも治療結果を達成する保証はあり得ない。
上述したように、治療サイクルは、四週間であり得る。他の実施形態において、週用量は、本明細書に記載される等価なAUCtotal又は他のPKとPDのパラメータが達成される限り任意の適当な数週間使うことができる。各サイクルに使われる単位用量は、週に少なくとも一回投与される。
17-AAGの各単位用量は、最大耐量(MTD)以下の用量である。MTDは、治療方法を受ける六人の被検者のいずれも又は一人だけが対症療法に従わない血液学的又は非血液学的毒性を受ける最大量として定義され得る。好ましくは、17-AAGの投与される量は、MTD以下である。好ましくは、17-AAGの投与量は、許容され得ない及び/又は扱いにくい血液学的又は非血液学的毒性を生じない量である。一実施態様において、MTDは、450mg/m2/用量である。
【0021】
一実施態様において、単一単位用量で投与される17-AAGの量は、300mg/m2/用量〜450mg/m2/用量の範囲にあり得る。他の一実施例において、単一単位用量で投与される17-AAGの量は、約225mg/m2/用量; 300mg/m2/用量; 375mg/m2/用量; 450mg/m2/用量である。17-AAGが週一回四週間投与される場合、17-AAGの投与量は、225〜450mg/m2/用量の範囲にある。17-AAGが週一回投与される場合、17-AAGの投与量は、300〜450mg/m2/用量の範囲にある。17-AAGが週一回投与される場合、17-AAGの投与量は、375〜450mg/m2/用量の範囲にある。週一回投与の他の実施形態において、17-AAGの投与量は、450mg/m2/用量である。当業者は、17-AAG又は17-AGプロドラッグ又は17-AG自体の単位投与量が、本明細書に17-AAGに示される用量及び17-AAGと17-AGに示されるPKパラメータ並びにプロドラッグ又はl7-AG代謝産物の分子量と相対的なバイオアべイラビリティより算出され得ることを認識する。
本発明は、また、一治療サイクルにつき投与される17-AAGの量によって記載され得る。一サイクル当たりの量は、典型的には1,200mg/m2以上であり、より一般的には1,500mg/m2以上である。17-AAGの投与量は、少なくとも1,200〜1,800mg/m2/治療サイクル; 1,500〜1,800mg/m2/治療サイクルであり得る。
上述のように、単位用量の投与の頻度は、週一回、週二回である。一実施態様において、医薬製剤は、週一回四週間のうちの3又は4週間静脈内に投与される。毎週同じ曜日に投与し得る。患者は、治療関連の毒性を防止するか又は改善するために前処理薬剤を投与することができる。例示的処理前薬剤は、下記の例で記載される。17-AAGとHER2阻害剤は、典型的には、少なくとも30、60、90、又はl20分間で注入される、IV注入によって投与される。BSAが2.4m2を超える患者について、投薬は、2.4m2の最大BSAを用いた本明細書に方法に従って算出し得る。
ヒト臨床試験において、17-AAGの450mg/m2/単一投与の週一回四週間の投与用法は、いかなる治療患者においてもDLTに達成させずに使われた。
上記の段落における用量は、簡潔さのために17-AAGに関して表してきたが、モル当量のl7-AG又は17-AAG又は17-AGのプロドラッグ、又は17-AAG、17-AG又は17-AAG又はl7-AGのプロドラッグの組み合わせが代わりに使用し得ることを当業者は理解する。
【0022】
上述のように、17-AAGが投与された後、それ自体で抗癌作用を有する、17-AGの主代謝産物が被検者に出現する。従って、17-AAGと17-AGは、それぞれ、また、一緒に、本発明の方法の治療の効果に関与する。17-AAGの治療的に有効な用量と投薬用法は、本明細書に記載される被検者において17-AAG及び/又は17-AGの曲線下面積(AUCtotal)を達成するものである。種々の治療的に有効な用量と投薬用法を、以下の例において示す。本発明によって示される17-AAG及び/又は17-AGの治療的に有効な用量と投薬用法は、また、終末半減期(t1/2); クリアランス(CL); 排出相又は定常状態における分配量(VZ及び/又はVss)によって記載され得る。
単位用量の治療的に有効な量は、本発明の方法に従う一つ以上の投与サイクルの後、治療の効果を生じる量であり得る。本発明の治療法からの治療の効果は、治療の開始(医薬製剤の第一投与)から4、8、12、16、20、又は24週間で応答する被検者に認められ得る。治療の効果は、対象病巣、対象外病巣、又は全体の応答について本明細書に定義されるCR、PR、又はStD(又は不完全退縮/StD)であり得る。ある患者は、CRから再発せず、疾患の進行が顕著に遅延し、それらの癌が更に転移もしない。他の治療の効果は、患者のKPSの10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、又は50%以上による改善であり得る。他の治療の効果は、患者のECOGの1、2、3以上による改善であり得る。
本発明は、種々の実施形態において、17-AAG又はl7-AG又はそれらのいずれかのプロドラッグをHER2阻害剤と更に他の抗癌化合物(例えば、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エピルビシン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、カペシタビン、ゲムシタビン、タモキシフェン、フルベストラント、白金薬剤、エトポシド、ビンブラスチン、又はフルオロウラシル)と組み合わせて投与することによって乳癌を治療する方法を提供する。
重要なことに、本発明は、一つ以上の従来の抗癌治療用法に失敗した乳癌患者を治療するために使用し得る。これらの従来の抗癌用法としては、単一療法、併用療法、手術、及び放射線療法が挙げられるがこれらに限定されない。1つの重要な実施形態において、方法は、ヘルセプチン単一療法又は他の化学療法剤とのヘルセプチン併用療法に耐性があることがわかった癌を有する患者の治療に適用される。
【0023】
本発明の方法に有効な活性医薬成分(“API”、17-AAG、17-AG、それらのいずれかのプロドラッグ、HER2阻害剤、他の抗癌化合物等)は、適切な固体又は液体の剤形で経口的に又は静脈内に投与するために処方され得る。Gennaro, ed., Remington: Ihe Science and Practice of Pharmacy, 2Oth Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 2003)を参照のこと、この文献の記載は本願明細書に含まれるものとする。APIは、例えば、溶液、エマルジョン、懸濁液、又は経腸又は非経口投与に適した他のいかなる形のための非毒性の医薬的に許容され得る担体又は賦形剤と配合させ得る。医薬的に許容され得る担体としては、水及び液化した製剤を製造するのに用いるのに適した他の担体が挙げられる。更に、補助安定剤、濃厚化剤、着色剤が用いられてもよい。
本発明の方法に有効なAPIは、マイクロカプセル、ナノ粒子、又はナノ懸濁液として処方されてもよい。このような製剤の一般プロトコールは、例えば、Max Donbrow, ed., CRC Press (1992)によるMicrocapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy、Bosch et al. 1996; De Castro 1996, and Bagchi et al. 1997に記載されている。表面積と容積との比を増加させることによって、これらの製剤は、17-AAG又は他の比較的不溶のAPIの送達に特に適切である。
17-AAGは、ビタミンE又はそのPEG化誘導体とのエマルジョンに処方され得る。このような賦形剤との一般的方法は、Quay et al. 1998やLambert et al. 2000に記載されている。17-AAGは、エタノール(好ましくはl% w/v未満)を含有する水溶液に溶解され得る。ビタミンE又はPEG化ビタミンEが添加される。その後、エタノールを除去して、静脈内又は経口投与経路のために処方され得る。
本方法に有効な医薬製剤を調製する他の方法は、17-AAG又は他のAPIをリポソームに封入することを含む。薬剤送達賦形剤としてリポソームを形成する方法は、当該技術において周知である。本発明に適応できる適切なプロトコールとしては、パクリタキセルについてはBoni et al. 1997、Staubinder et al. 1995、Rahman et al. 1995によって、また、エポチロンについてはSonntag et al. 2001によって必要な変更を加えて記載されたものが挙げられる。このような製剤に用いることができる種々の脂質の中で、ホスファチジルコリンとポリエチレングリコール誘導体化ジステアリルホスファチジルエタノールアミンが注目に値する。
【0024】
単一剤形又は単位剤形を製造するために担体物質と組み合わせることができるl7-AAG又は他のAPIの量は、治療される被検者及び具体的な投与方法によって変動する。例えば、IV用のための製剤は、約1mg/mL〜約25m/mLの範囲にあり、好ましくは約5mg/mL、より好ましくは約10mg/mLのl7-AAG量を含む。IV製剤は、典型的には、使用する前にSWFI、生理食塩水、又は5%デキストロース溶液で約2倍〜約30倍に希釈される。多くの場合、希釈は約5〜約10倍である。
本発明の方法の一実施態様において、17-AAGは、(i)エタノールである第一成分; (ii)ポリエトキシル化ヒマシ油である第二成分; 及び(iii) Zhong et al, 2005に開示される、プロピレングリコール、PEG 300、PEG 400、グリセロール、及びそれらの組み合わせより選ばれる第三成分を含む賦形剤に溶解した17-AAGを含む溶液医薬製剤として処方される。
用いることができる17-AAGの他の製剤は、Tabibi et al. 2004に教示される、ジメチルスルホキシド(“DMSO”)や卵レシチン(卵リン脂質)に基づくものである。しかしながら、DMSOのある種の特徴があることから(臭気、拒絶反応)、このような製剤は、本明細書に教示されるDMSOを含まないものより好ましくない。
本発明の方法に使うことができる17-AAGについての他の製剤は、Ulm et al. 2003、Ulm et al. 2004、Mansfield et al.2006、Desai et al. 2006、Isaacs et al. 2006に記載されている。
他の実施態様において、医薬製剤は、投与の前に滅菌WFI、USPで1:7に希釈し得る(SWFI 6部に対して希釈されていない製剤1部)。希釈は、制御された無菌条件下で行われる。最終の希釈された製剤濃度は、一例として17-AAGを用いて、少なくとも1.00mg/mL、例えば、約1.43、約2.00又は約10.00mg/mLである。
医薬製剤がアナフィラキシー反応を引き起こすことがある追加の化合物を含む場合(Cremophor(登録商標)のような)、アナフィラキシー反応を防止するか又は減弱させるために、追加の薬剤、例えば、(a)ロラチジン又はジフェンヒドラミン、(b)ファモチジン、(c)メチルプレドニゾン又はデキサメタゾンが投与され得る。
体表面積及び個々の患者に割り当てられた用量によっては、17-AAG又は他のAPIの用量は、混合バッグに添加される異なる量の製剤を必要とする。投与セットにおける損失を考慮するために過剰充填が算出され使われ得る。好ましくは、製剤が希釈された医薬製剤のpHは中性であり、溶液は約600mOsmの高張液である。一実施態様において、医薬製剤は、-20℃で保存され、遮光される。製剤は、混合前に室温にされる。室温にした後、混合は、穏やかにさかさまにすることによる。希釈後、製剤は、室温で約10時間まで安定である(1:7の希釈で)。
上記に略述し且つ詳述した本発明を以下の実施例において具体的に説明する。
【実施例】
【0025】
17-AAGとトラスツズマブによる乳癌患者の治療
本発明を非盲検用量増加臨床試験において試験した。トラスツズマブと組み合わせて投与される17-AAGのMTDを固形腫瘍悪性腫瘍が進行した(第1相)患者において確立するように試験を設計した。患者は、転移又は切除不能である組織学的に確認された悪性腫瘍を有し、標準治療手段又は緩和手段が存在せず、もはや有効でもなかった。転移性疾患が存在する場合には、対症療法が必要とされるように進行しなかった。17-AAGを、週一回120分かけてIV注入によって投与した。患者を4週サイクルにおいて評価した。17-AAGの用量を225mg/m2から開始してMTDが確認されるまで増加した。
疾患応答評価を2治療サイクル(約8週間)毎に行った。安定な患者又は応答している患者における抗腫瘍効力の分析は、RECIST. Therasse et al.2000に従って作られる客観的な腫瘍評価に基づいた。
この研究において登録される患者は、以下の試験対象患者基準を満たした: (1) 年齢≧18歳; (2) KPS一般状態≧70%; (3) 組織学的に確認された固形腫瘍悪性度(治療前の28日以内に評価した; 試験の第1相部分に対して); (4) 2+又は3+ HER2過剰発現を有する転移性乳癌、トラスツズマブ(単剤として又は併用療法において; 試験の第2相部分に対して)による転移性疾患の初期治療後に疾患が進行した; (5) いかなる従来の化学療法、手術又は放射線療法の全ての有害事象も、NCI CTCAE(v. 3.0)グレード≦2に変化した; (6) 17-AAG投与の10日以内の以下の実験結果: ヘモグロビン≧8.5g/dL、絶対好中球数≧1.5×109/L、血小板数≧75×109/L、血清ビリルビン≦2×ULN、AST及びALT≦2×ULN、及び血清クレアチニン≦2×ULN。
以下のいずれの性質を有する患者を研究における関与から除外した: (1) Cremophor(登録商標)又はトラスツズマブを含有する従来の治療に対して確認された超過敏反応CTCAEグレード≧3; (2)妊娠している又は母乳養育している; (3)中枢神経系(CNS)転移がわかっている; (4)治療の開始前の21日以内の化学療法剤、生物製剤、免疫療法剤又は治験薬(治療又は診断)の投与; (5)安静時の重い呼吸困難; 又はニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスIII又はIV鬱血性心不全、又は50%未満の左心室駆出分画率(LVEF); (6)患者に過剰なリスクを加えるあらゆる医用条件(例えば、クラスIII又はIV(NYHA分類)の鬱血性心不全、抗感染症治療を必要とする感染症等)、(7)皮膚の治癒した基底細胞癌、子宮頸部か又は膀胱の上皮内癌、又はPSAが<2ng/mLであるT1期又はT2期前立腺癌を除いて少なくとも5年間再発があれば過去の悪性腫瘍患者。
【0026】
PK評価。 第一治療サイクル間にのみPK試料採取を得た。17-AAG第一投与(1、2及び3日目)後にのみ17-AAGと17-AGの血漿濃度の分析のための血液試料(合計約55mL)を集めた。有効な液体クロマトグラフィ-質量分析(LC-MS)法によって血漿濃度を求めた。第一注入後のみトラスツズマブの血漿濃度の分析のための血液試料を集め、連続試料採取を1日目に行い、単一試料を2、3、8及び15日目に得た。トラスツズマブの血漿濃度を、定量化限界が150ng/mLの酸素結合免疫吸着法を用いて求めた。
PD評価。第一治療サイクルの間にのみPD試料採取を得た。問題の個々の毒性の存在(例えば、重篤度、持続期間、可逆性)を、薬物動態パラメータと比較した(例えば、クリアランス、曝露、消失半減期、最大血漿濃度、時間が対象血漿濃度を超える)。これらの毒性としては、肝毒性や胃腸毒性を挙げることができる。実験によって、Hsp70と末梢血リンパ球におけるHsp9O依存性クライアントタンパク質の評価が相関した。これらの相関研究によって、(a) 17-AAGがプロトコールで治療された患者からのリンパ球においてHsp90機能を阻害した程度の評価; 及び(b) 17-AAGに対する臨床応答とバイオマーカーのモジュレーションの程度との相関が可能になった。
治療の終わりの評価。計画的な治療期間は、24週間(6サイクル)であった。研究薬剤の少なくとも一つの用量を受けた全ての患者は、17-AAGの最後の用量後の28日までに行われ、身体検査(体重とバイタルサイン測定による)、心エコー図/MUGA、KPS一般状態、血液学、凝固、腫瘍マーカー及び化学/電解液分析の文書化、尿検査、患者の現在の薬剤の評価及び進行中の臨床有害事象(もしあれば)が含まれる、治療の終わりの評価が行われた。腫瘍評価と心エコー図/MUGAは、過去の評価が中止前の4週間を超えて行われた場合にのみ行われた。
投与及び計画。トラスツズマブをまず最初に負荷量(4mg/kg)として90分かけて週一回投与した; 続いて週一回輸液(2mg/kg)を許容されるように30分かけて投与した。トラスツズマブ注入の直後に17-AAG注入を続け、通常は数分が経過した。研究の用量増加期において、17-AAGは、前投薬後に120分かけて注入される増加用量(算出mg/m2)で週一回静脈内に投与した。体表面積が2.4m2を超える患者について、2.4m2の最大BSAを用いて投薬を算出した。17-AAGのMTDと推奨された2期用量の決定後、続いて全ての患者が120分かけてこの用量を受ける。
【0027】
17-AAGの調製。17-AAGを、バイアル中で10mg/mLの濃度まで30%プロピレングリコール、20%Cremophor(登録商標)EL、及び50%エタノールに溶解した。製剤は、20mm仕上げによる20mLの1型透明ガラスバイアル(200mg/バイアルを含有する)において利用可能だった。バイアルを灰色の20mmのテフロン(登録商標)被覆血清ストッパーと白色の20mmフリップ-オフホワイトラッカーを塗った押し上げ式のふたで閉じた。投与前にSWFI、USPで1:7に希釈した(SWFD6部に対して希釈されていない製剤1部)。希釈を、制御された無菌条件下で行った。最終の希釈製剤は、約1.43mg/mlの濃度を有した。17-AAGを、ガラス真空容器か又は適合できる非PVC、非DEIIP(ジ(2-エチルヘキシル)フタレート)IV混合バッグ)を用いて調製した。いずれのシステムも非PVC、非DEHP含有投与セットとインライン0.22μmフィルタか又はこのようなフィルタを含有するエクステンションセットの使用が必要である。17-AAGの感光性のために、遮光が勧められる。
最終の希釈製剤は、約1.43mg/mLの濃度を有した。17-AAGは、ガラス真空容器か又は適合できる非PVC、非DEHP IV混合バッグを用いて調製した。いずれのシステムも非PVC、非DEHP含有投与セットと0.22μmフィルタがインラインか又は含有するエクステンションセットを必要とした。
前投薬治療。17-AAGをそれぞれ注入する前に全ての患者が前投薬された。各患者に適切な前投薬用法は、潜在性Cremophoro(登録商標)誘発超過敏反応の既往歴及び17-AAGで治療した後に認められる超過敏反応の種類と重篤度に基づいた。標準前投薬用法は、17-AAGの注入の30分前に、ロラチジンl0mg p.o.、ファモチジン20mg p.o.、及びメチルプレドニゾロン40-80mg IVか又はデキサメタゾン10-20mg IVを前投薬することであった。高用量前投薬用法は、17-AAGの注入の少なくとも30分前に、ジフェンヒドラミン50mg IV、ファモチジン20mg IV及びメチルプレドニゾロン80mg IVか又はデキサメタゾン20mg IV (又は注入の6時間前とl2時間前にそれぞれ10mgの経口投与量として分割する)を前投薬することであった。
【0028】
投薬。最初の患者コホートは、17-AAGのIV注入を225mg/m2の用量で受けた。患者コホートを、以下の増加計画ごとに登録した: コホート1(225mg/m2); コホート2(300mg/m2); コホート3(375mg/m2); 及びコホート4(450mg/m2)。トラスツズマブを、以下の用量で投与した: 1週間で4mg/kgの負荷量、次に、2mg/kg週一回×その後4週間毎に3回。3人の患者を、各コホートに割り当てた。用量を増加決定の評価が可能な3人の患者のコホートにおいてDLTが認められなかった場合には(“評価が可能な”は4週間に3回の治療を受けたか又は薬剤関連毒性のために中止したこととしてここに定義される)、次の服用レベルを評価した。三人の患者のうちの一人がDLTを受けた場合には、コホートは、六人の評価が可能な患者に増加した。コホートに入った六人の評価が可能な患者のうちの2人以上がDLTを受けた場合には、MTDを超えた; 過去の服用レベルが6人の患者のうちの1人だけにDLTを生じた場合には、この用量をMTDとみなし、研究の2期部分に入った続いての全ての患者に用いた。
25人の患者(女性21人、男性4人)を、このプロトコールに従って治療した。女性患者の中で18人が、Her2陽性転移性乳癌(MBC)によって診断された。診断された他の癌は、各一人が結腸直腸、腎、卵巣、子宮及び胸腺の癌であり、二人が前立腺癌であった。患者の年齢の中央値は、66歳であった(33〜87歳の範囲で)。KPSの中央値は、90であった(80〜100の範囲で)。診断から時間の中央値は、60ヵ月であった(13〜229ヵ月の範囲で)。18人のMBC患者の中で、従来の治療の中央値の数は、3であり(0〜9の範囲で; 内分泌治療を含まない)、従来のトラスツズマブ含有用法の中央値の数は、2であった(0-5の範囲で)。その他の7人の患者の中で、従来の治療の中央値の数は、2であった(0〜7の範囲で)。
患者の一部からの血漿試料を、有効な医薬品安全性試験実施基準(GLP)対応分析法を用いて分析した。全ての血漿試料について、17-AAGと17-AGを分析した。17-AAGと17-AGの定量化の下限は、それぞれ、10.0ng/mLと5.0ng/mLであった。
4人のコホート1患者(患者102-105)は、17-AAG(225mg/m2)とトラスツズマブを受けた。投与されるサイクルの平均数は、1.8であった。DLTは、認められなかった。
3人のコホート2患者(患者201-203)は、17-AAG(300mg/m2)とトラスツズマブを受けた。投与されるサイクルの平均数は、6.7であった。DLTは、認められなかった。コホート2(患者202)から一人の患者が、治療後にPRを有することが認められた。
【0029】
患者202(70+歳女性)を、疾患の活性部位においてHer2+ MBCで診断した(骨、心臓、右腎、左副腎の転移を含む)。彼女は、この研究における登録の前にトラスツズマブ単一療法の治療による緩慢な進行性の疾患を有した。彼女は、特発性血小板減少症のために研究から脱退する前に8サイクルの治療(27注入)を受けた。
8人のコホート3患者(患者301-308)は、17-AAG(375mg/m2)とトラスツズマブを受けた。投与されるサイクルの平均数は、4.3であった。一人の患者は、疲労と腹痛を有すると認められた。コホート3からの一人の患者(患者306)は、治療後PRを有することが認められた。患者306(40+歳女性)、疾患の活性部位(肺と骨を含む)においてHer2+ MBCで診断された患者は、超過敏反応のために研究から脱退する前に13注入を受けた。
十人のコホート4患者(患者401-410)は、17-AAG(450mg/m2)とトラスツズマブを受けた。一人の患者は、グレード4の血小板の減少を有することが認められた。トラスツズマブ量を、17-AAGを投与する前に投与した。
全体として、骨髄抑制又は心血管系毒性の所見がなかった。最低肝毒性だけが認められた。
血漿薬剤濃度解析のために血液を以下の通り集めた: プレドーズ、30分間の注入内、及び注入の5分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、24時間後、48時間後の注入の終わり(EOI)の直前。17-AAGと17-AGの血漿濃度を各試料について測定し、標準PK値を決定した。患者の血漿試料の全てを分析した。図1〜4は、コホート1-4(17-AAG服用レベル225、300、375、及び450mg/m2)(平均、SD)について17-AAGと17-AGの血漿濃度: 時間曲線を示すグラフである。
一般に、代謝産物(17-AG)の血漿濃度は、注入約1時間後から親化合物(17-AAG)より高かった。代謝産物が生物学的に活性であるので、薬剤に対する実際の曝露は、二つの血漿プロファイルの合計である。図2〜4は、曲線のより予想された形を示すグラフである。図5と図6は、それぞれ、用量(平均)が増加した17-AAGと17-AGの濃度の増加を示すグラフである。
この用量範囲(225〜450mg/m2)の場合、225、300、375、及び450mg/m2服用レベルについて、それぞれ、17-AAGCmaxの増加は、3,258; 4050; 9,405; 及び8,107ng/mLであり、17-AG Cmaxの増加は、957.8; 1,861; 2,250; 及び2,225ng/mLであった。図5と図6は、投与される用量に関して、それぞれ、17-AAGと17-AGの血漿濃度の平均増加を示すグラフである。血漿レベルの漸近線傾向がある。血漿濃度: 時間結果を非コンパートメント法を用いて分析して、17-AAGと17-AGのPKを求めた(Kinetica version 4.3; Innaphase, Champs sur Mame, France)。結果を表3と表4にまとめる。
【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

【0034】
【表7】

【0035】
17-AAG及び17-AGについての終末消失半減期は、それぞれ、4.13±2.48時間と5.9±1.4時間であった。注入血液試料の48時間後の封入は、17-AAGか又は17-AGの半減期にほとんど変化がなかった。
17-AAGの全体の全身性クリアランスは、32.16±12.16L/時間(又は18.21±6.09L/時間/m2)であった。17-AAGの分配容積は、Vz : 186.92±156.4L(又は107.2±89.31L/m2)及びVss : 147.36±94.8L(又は84.5±54.0L/m2)であった。血漿結果は、トラスツズマブとの同時投与が17-AAGの動力学に対して全く影響を与えなかったことを示す。
17-AAG及び17-AGの全体の曝露は、17-AAG及び17-AGのAUCtotal値を加えることによって求めた。17-AGと17-AAGとの比平均は、73.3、標準偏差が25.6であり、全体の曝露量平均は、41,153、標準偏差が20,513であった。図7は、代謝産物(17-AG)と親薬剤(17-AAG)双方の全体の曝露量と服用レベルのプロットを示すグラフである。それは、服用レベルが増加するにつれて全体の曝露量が増加する傾向を示す。ラインは、それぞれ、17-AGと17-AGについて0.419とO.112に等しい分析係数(R2)を有する。図8は、代謝産物(17-AG)と共に加えた親薬剤(17-AAG)双方の全体の曝露量と服用レベルのプロットを示すグラフである。それは、服用レベルが増加するにつれて全体の曝露量が増加する傾向を示す。ラインは、0.464に等しい分析係数(R2)を有する。
コホート1〜3の患者についての血清濃度の測定から、17-AAGの服用レベルがトラスツズマブのPKに影響を及ぼさないことが示された(図9)。トラスツズマブの全体のPKは、以下の通りであることが決定された: Tmax = 3.5±2.4時間、Cmax = 117μg/mL、クリアランス = 22.91±7.69mL/時間、Vss = 3.0±0.8L、及びAUCtotal = 12,947±3,442μg/m×時間。
PD分析。末梢血白血球(PBL)を、6人の患者から17-AAGとトラスツズマブの投与前と、17-AAGとトラスツズマブの投与の6時間後、2日後、3日後、8日後(8日目の投与の前に)及び15(日後(15日目の投与の前に)に得た。PBLを、プロテインゲルで行い、raf-l、AKT、cdk4、Hsp7O及びp85を免疫ブロットした。図10A-10Dは、コホート3から四人の患者の結果を示す図である。患者のうちの3人は、HER2+であった; 第四患者のHER2状態(図10B)は、不明であった。結果から、治療によって熱ストレス応答の誘導(Hsp70レベルの増加によって示されるように)と注入投与後の3日間までraf-1レベルの増加が得られたことが示される。効果は、投薬一週間後なお認めることができた。
本発明を個々の実施態様によって記載してきたが、変更と改善が本発明の範囲と真意の範囲内であることを当業者は認識する。文献と特許文献の引用は、このような文書が適切な従来技術であることを許容するものでなく、その文書の内容又は日付に関して許容もしない。本発明を、ここでは書面による明細書によって記載してきたが、本発明が種々の実施態様で実施することができ且つ上記の説明が具体的な説明のためであり以下の特許請求の範囲を制限するものでないことを当業者は認識する。
【0036】
参考文献
以下は、上文に引用した文献のリストである。各々の文献の記載は、あたかもそれが詳細に個々に組み込まれているかのように本願明細書に含まれるものとする。
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【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、三人の患者コホートについて225mg/m2の17-AAGの用量に関する17-AAG及び17-AGの血漿濃度の平均と標準偏差(SD) 対 時間を示す。
【図2】図2は、三人の患者コホートについて300mg/m2の17-AAGの用量に関する17-AAG及び17-AGの血漿濃度の平均と標準偏差(SD) 対 時間を示す。
【図3】図3は、八人の患者コホートについて375mg/m2の17-AAGの用量に関する17-AAG及び17-AGの血漿濃度の平均と標準偏差(SD) 対 時間を示す。
【図4】図4は、十人の患者コホートについて450mg/m2の17-AAGの用量に関する17-AAG及び17-AGの血漿濃度の平均と標準偏差(SD) 対 時間を示す。
【図5】図5は、225mg/m2、300mg/m2、375mg/m2、450mg/m2の17-AAGの用量に関する17-AAGの平均血漿濃度 対 時間を示す。
【図6】図6は、225mg/m2、300mg/m2、375mg/m2、450mg/m2の17-AAGの用量に関する17-AGの平均血漿濃度 対 時間を示す。
【図7】図7は、17-AAG及び17-AGのAUCtotal 対 用量を示す。
【図8】図8は、全体の曝露量(17-AAGと17-AGの合計AUCtotal) 対 用量を示す。
【図9】図9は、225mg/m2、300mg/m2、375mg/m2の17-AAG用量に関するトラスツズマブの血清濃度 対 時間を示す。
【図10】図10A、10B、10C及び10Dは、コホート3における四人の患者についてのraf-l、AKT、cdk4、Hsp70、p85の免疫ブロットを示す。試料は、最初の注入(“PreTx”)の前、最初の注入の6時間後(“6h”)、2日目(“d2”)、3日目(“d3”)、8日目注入前の8日目(“d8”)、15日目注入前の15日目(“d15”)に採取した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳癌をこのような治療を必要とする被検者において治療するための方法であって、前記方法が、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)又は17-アミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AG)又は17-AAGか又は17-AGのプロドラッグの治療的に有効な用量と、HER2阻害剤の治療的に有効な用量を、前記被検者に投与する工程を含み、所望により、治療効果が更に得られなくなるまで前記工程を反復する工程を含んでもよい、前記方法。
【請求項2】
乳癌をこのような治療を必要とする被検者において治療するための方法であって、前記方法が、17-AAG又はそのプロドラッグの複数回用量(ここで、このような各回の用量は、約300mg/m2〜約450mg/m2の17-AAG、又は当量の17-AAGプロドラッグ又は17-AGプロドラッグの範囲にある)と、HER2阻害剤の複数回用量(ここで、前記HER2阻害剤は、トラスツズマブであり、このような各回の用量は、約2mg/kg〜約4mg/kgの範囲にある)を、前記患者に少なくとも週一回の期間にわたって投与する工程を含む、前記方法。
【請求項3】
このような各回の用量が、約375mg/m2〜約450mg/m2の17-AAG、又は当量の17-AAGプロドラッグ又は17-AGプロドラッグの範囲にある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
このような各回の用量が、約450mg/m2の17-AAG、又は当量の17-AAGプロドラッグ又は17-AGプロドラッグである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記用量が、週一回少なくとも4週間投与される、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
17-AAGか又は17-AGのプロドラッグが、17-アリルアミノ-18,21-ジヒドロ-17-デメトキシゲルダナマイシンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
HER2阻害剤が、モノクローナル抗体、好ましくはトラスツズマブである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
HER2阻害剤が、二重チロシンキナーゼ阻害剤である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
乳癌が、HER2陽性乳癌である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
投与工程の前に被検者についてHER2過剰発現を試験する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
乳癌をこのような治療を必要とする被検者において治療するための方法であって、前記方法が、HER2阻害剤の治療的に有効な用量と、用量当たり17-AAGのAUCtotalが約13,000ng/mL×時間〜約48,000ng/mL×時間の範囲で得られる17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量を、前記被検者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項12】
17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの前記用量が、17-AAGのCmaxが14,000ng/mLを超えないような速度と頻度で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの前記用量が、17-AAGのCmaxが3,600ng/mLを超え、好ましくは5,000ng/mLを超えるような速度と頻度で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの前記用量が、17-AAGのCmaxが3,600ng/mLを超える(好ましくは5,000ng/mLを超える)が14,000ng/mLを超えないような速度と頻度で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
乳癌をこのような治療を必要とする被検者において治療するための方法であって、前記方法が、HER2阻害剤の治療的に有効な用量と、用量当たりの17-AGのAUCtotalが約5,800ng/mL×時間〜約39,000ng/mL×時間の範囲で得られる17-AG又は17-AGのプロドラッグの治療的に有効な用量を、前記被検者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項16】
17-AG又は17-AGのプロドラッグの前記用量が、17-AGのCmaxが3,300ng/mLを超えないような速度と頻度で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
17-AG又は17-AGのプロドラッグの前記用量が、17-AGのCmaxが800ng/mLを超える(好ましくは1,100ng/mLを超える)ような速度と頻度で投与される、請求項15に記載の方法。。
【請求項18】
17-AG又は17-AGのプロドラッグの前記用量が、17-AGのCmaxが800ng/mLを超える(好ましくは1,100ng/mLを超える)が3,300ng/mLを超えないような速度と頻度で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
乳癌をこのような治療を必要とする被検者において治療するための方法であって、前記方法が、HBR2阻害剤の治療的に有効な用量と、用量当たりの17-AAGと17-AGの合計のAUCtotalが約23,000ng/mL×時間〜約82,000ng/mL×時間の範囲で得られる17-AAG、17-AAGのプロドラッグ、17-AG、又は17-AGのプロドラッグの治療的に有効な用量を、前記被検者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項20】
17-AAG、17-AAGのプロドラッグ、l7-AG、又は17-AGのプロドラッグの前記用量が、17-AAGのCmaxが14,000ng/mLを超えないか又は17-AGのCmaxが3,300ng/mLを超えないような速度と頻度で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
17-AAG、17-AAGのプロドラッグ、l7-AG、又は17-AGのプロドラッグの前記用量が、17-AAGのCmaxが3,600ng/mLを超える(好ましくは5,000ng/mLを超える)か又は17-AGのCmaxが800ng/mLを超える(好ましくは1,100ng/mLを超える)ような速度と頻度で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
17-AAG、17-AAGのプロドラッグ、l7-AG、又は17-AGのプロドラッグの前記用量が、17-AAGのCmaxが3,600ng/mLを超える(好ましくは5,000ng/mLを超える)が14,000ng/mLを超えないか又は17-AGのCmaxが800ng/mLを超える(好ましくは1,100ng/mLを超える)が3,300ng/mLを超えないような速度と頻度で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
乳癌をこのような治療を必要とする被検者において治療するための方法であって、前記方法が、HER2阻害剤の治療的に有効な用量と、17-AAGの終末T1/2が1.5時間〜12時間の範囲で得られる17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量を、前記被検者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項24】
17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの前記用量によって、用量当たりの17-AAGのAUCtotalが約13,000ng/mL×時間〜約48,000ng/mL×時間の範囲で得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
乳癌をこのような治療を必要とする被検者において治療するための方法であって、前記方法が、HER2阻害剤の治療的に有効な用量と、17-AGの終末T1/2が3.7時間〜8.8時間の範囲で得られる17-AG又は17-AGのプロドラッグの治療的に有効な用量を、前記被検者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項26】
投与される17-AG又は17-AGのプロドラッグの前記用量によって、用量当たりの17-AGのAUCtotalが約5,800ng/mL×時間〜約39,000ng/mL×時間の範囲で得られる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
乳癌をこのような治療を必要とする被検者において治療するための方法であって、前記方法が、HER2阻害剤の治療的に有効な用量と、17-AAGの分配容積Vzが67L〜800Lの範囲で得られる17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量を、前記被検者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項28】
投与される17-AAG又はl7-AAGのプロドラッグの前記用量によって、用量当たりの17-AAGのAUCtotalが約13,000ng/mL×時間〜約48,000ng/mL×時間の範囲で得られる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
乳癌をこのような治療を必要とする被検者において治療するための方法であって、前記方法が、HER2阻害剤の治療的に有効な用量と、17-AAGのクリアランスが13L/時間〜52L/時間の範囲で得られる17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量を、前記被検者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項30】
投与される17-AAG又はl7-AAGのプロドラッグの前記用量によって、用量当たりの17-AAGのAUCtotalが約13,000ng/mL×時間〜約48,000ng/mL×時間の範囲で得られる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
乳癌をこのような治療を必要とする被検者において治療するための方法であって、前記方法が、HER2阻害剤の治療的に有効な用量と、17-AAGの分配容積Vssが66L〜550Lの範囲で得られる17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な用量を、前記被検者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項32】
投与される17-AAG又はl7-AAGのプロドラッグの前記用量によって、用量当たりの17-AAGのAUCtotalが約13,000ng/mL×時間〜約48,000ng/mL×時間の範囲で得られる、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【公表番号】特表2009−513631(P2009−513631A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537754(P2008−537754)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/040139
【国際公開番号】WO2007/053284
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(500017830)コーサン バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】