説明

2−メチレン−19−ノル−(23S)−25−デヒドロ−1α−ヒドロキシビタミンD3−26,23−ラクトンおよび2−メチレン−19−ノル−(23R)−25−デヒドロ−1α−ヒドロキシビタミンD3−26,23−ラクトン

式中X1およびX2が、個々に、Hまたはヒドロキシ保護基から選ばれる式1Aおよび1Bの化合物を提供する。そのような化合物は、製薬組成物の調製に使用し得、種々の生物学的障害を治療するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、ビタミンD化合物、さらに詳細には、2-メチレン-19-ノル-(23R)-25-デヒドロ-1α-ヒドロキシビタミンD3-26,23-ラクトン(“GC-3”)および2-メチレン-19-ノル-(23S)-25-デヒドロ-1α-ヒドロキシビタミンD3-26,23-ラクトン(“HLV”)、並びにこれら化合物またはこれら化合物の混合物を含む製薬調合物に関する。また、本発明は、GC-3、HLV、これらの塩およびこれらの混合物の、各種疾患を治療するのに使用する医薬品の製造における使用に関する。
【0002】
(技術背景)
天然ホルモン、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1α,25-ジヒドロキシコレカルシフェロールおよびカルシトリオールとも称する)およびエルゴステロール群のそのアナログ、即ち、1α,25-ジヒドロキシビタミンD2は、動物およびヒトにおけるカルシウムホメオスタシスの極めて強力なレギュレーターであることが知られており、また、細胞分化におけるそれらの活性も立証されている (Ostrem et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 2610 (1987))。1α-ヒドロキシビタミンD3、1α-ヒドロキシビタミンD2、各種側鎖同族化ビタミン類およびフッ素化アナログ類のようなこれらの代謝物の多くの構造的アナログが、製造され試験されている。これらの化合物の幾つかは、細胞分化およびカルシウム調節における興味ある分類の活性を示す。活性におけるこの差異は、腎性骨ジストロフィー、ビタミンD-耐性くる病、骨粗しょう症、乾癬およびある種の悪性腫瘍のような種々の疾患の治療において有用であり得る。1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の構造およびこの化合物中の炭素原子を表示するのに使用する番号付け方式を下記に示す。
【化1】

1α,25-ジヒドロキシビタミンD3 = 1α,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール = カルシトリオール
【0003】
もう1つの群のビタミンDアナログ類、即ち、いわゆる19-ノル-ビタミンD化合物は、ビタミンD系の典型的なA環環外メチレン基(炭素19)の2個の水素原子による置換に特徴を有する。そのような19-ノルアナログ類(例えば、1α,25-ジヒドロキシ-19-ノル-ビタミンD3)の生物学的試験によれば、細胞分化の誘発において高効能を有する選択的活性プロフィール、および極めて低いカルシウム動員活性が明らかになっている。即ち、これらの化合物は、悪性腫瘍の治療用または種々の皮膚障害の治療用の治療薬として潜在的に有用である。そのような19-ノル-ビタミンDアナログ類の2つの異なる合成方法が開示されている(Perlman et al., Tetrahedron Lett. 31, 1823 (1990);Perlman et al., Tetrahedron Lett. 32, 7663 (1991);およびDeLuca et al., U.S. Pat. No. 5,086,191)。
米国特許第4,666,634号においては、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の2β-ヒドロキシおよびアルコキシ(例えば、ED-71)アナログ類が、骨粗しょう症用の潜在的な薬物として、また、抗がん剤として、Chugaiグループによって開示され、試験されている。Okano et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 163, 1444 (1989)も参照されたい。1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の他の2-置換(ヒドロキシアルキル基(例えば、ED-120)およびフルオロアルキル基による) A環アナログ類も、製造され、試験されている(Miyamoto et al., Chem. Pharm. Bull. 41, 1111 (1993);Nishii et al., Osteoporosis Int. Suppl. 1, 190 (1993);Posner et al., J. Org. Chem. 59, 7855 (1994);および J. Org. Chem. 60, 4617 (1995))。
【0004】
また、1α,25-ジヒドロキシ-19-ノル-ビタミンD3の各種2-置換アナログ類、即ち、ヒドロキシまたはアルコキシ基(DeLuca等の米国特許第5,536,713号)による、2-アルキル基(DeLuca等の米国特許第5,945,410号)による、および2-アルキリデン基(DeLuca等の米国特許第5,843,928号)による2-位置置換化合物も合成されており、これらの化合物は、興味のある選択的活性プロフィールを示している。これらの研究は、全て、ビタミンDレセプター中の結合部位が合成ビタミンDアナログ類のC-2の種々の置換基を適合させていることを示唆している。
薬理学的に重要なビタミンD化合物の19-ノル群を探求する継続的な試みにおいては、炭素2 (C-2)でのメチレン置換基、炭素1 (C-1)でのヒドロキシル基、および炭素20 (C-20)へ結合させた短縮側鎖の存在に特徴を有するアナログ類が合成され、試験されている。1α-ヒドロキシ-2-メチレン-19-ノル-プレグナカルシフェロールは米国特許第6,566,352号に記載されており、また、1α-ヒドロキシ-2-メチレン-19-ノル-(20S)-ホモプレグナカルシフェロールは米国特許第6,579,861号に記載されており、さらに、1α-ヒドロキシ-2-メチレン-19-ノル-ビスホモプレグナカルシフェロールは米国特許第6,627,622号に記載されている。これらの3つの化合物は、全て、ビタミンDレセプターに対する比較的高い結合活性および比較的高い細胞分化活性を有するが、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3と比較した場合、カルシウム血症活性はあったとしても僅かである。これら化合物の生物学的活性により、これらの化合物は、上記352号、861号および622号米国特許において説明されているような種々の医薬用途における優れた候補となっている。
【0005】
(発明の開示)
本発明は、2-メチレン-19-ノル-(23R)-25-デヒドロ-1α-ヒドロキシビタミンD3-26,23-ラクトン(“GC-3”)、2-メチレン-19-ノル-(23S)-25-デヒドロ-1α-ヒドロキシビタミンD3-26,23-ラクトン(“HLV”)および関連化合物、GC-3および/またはHLVを含む製薬調合物、並びに種々の疾患状態を治療するのに使用する医薬品の調製におけるこれら化合物またはこれら化合物の混合物の使用を提供する。
従って、1つの局面においては、本発明は、ラクトン官能基を含むビタミンDアナログを提供する。幾つかのそのような実施態様においては、上記ラクトンは、環外メチレン基を含む。幾つかのそのような実施態様においては、上記環外メチレン基は、ラクトン官能基のカルボニル成分に隣接する炭素原子に結合している。ある実施態様においては、上記ビタミンDアナログは、19-ノル-ビタミンDアナログである。
従って、1つの局面においては、本発明は、下記に示すような式1A、式1Bを有する化合物またはその混合物を提供する:
【化2】

式中、X1およびX2は、同一または異なるものであり得、個々に、Hまたはヒドロキシ保護基から選択される。ある実施態様においては、X1およびX2は、双方とも、ヒドロキシ保護基、例えばシリル基である。幾つかのそのような実施態様においては、X1およびX2は、双方とも、t-ブチルジメチルシリル基である。他の実施態様においては、X1およびX2は、双方とも、Hであり、下記に示すような異性体式1A1および1B1を有する、上記式1Aとして示す化合物が2-メチレン-19-ノル-(23R)-25-デヒドロ-1α-ヒドロキシビタミンD3-26,23-ラクトンであり、式1Bとして示す化合物が、2-メチレン-19-ノル-(23S)-25-デヒドロ-1α-ヒドロキシビタミンD3-26,23-ラクトンであり、或いはこれら化合物の混合物である:
【化3】

【0006】
幾つかのそのような実施態様においては、式1A1および1B1の化合物は、下記の式1A2および1B2の化合物またはこれら化合物の混合物であり、下記に示すような構造を有する:
【化4】

幾つかのそのような実施態様においては、上記化合物は、精製形で存在し得る。他の実施態様においては、組成物中の上記化合物は、混合物として存在し得る。ある実施態様においては、上記混合物は、式1Aの化合物および式1Bの化合物を含み、式1Aの化合物対式1Bの化合物の比率は、50:50〜99.9:0.1の範囲である。幾つかのそのような実施態様においては、式1Aの化合物対式1Bの化合物の比率は、70:30〜99.9:0.1、80:20〜99.9:0.1、90:10〜99.9:0.1または95:5〜99.9:0.1の範囲である。他の実施態様においては、上記混合物は、式1Aの化合物および式1Bの化合物を含み、式1Bの化合物対式1Aの化合物の比率は、50:50〜99.9:0.1の範囲である。幾つかのそのような実施態様においては、式1Bの化合物対式1Aの化合物の比率は、70:30〜99.9:0.1、80:20〜99.9:0.1、90:10〜99.9:0.1または95:5〜99.9:0.1の範囲である。
【0007】
上記化合物は、所望且つ極めて有利な生物学的活性パターンを示す。GC-3およびHLVの双方はビタミンDレセプターに結合するが、両化合物は、この点においては、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3よりも活性は低い。また、GC-3およびHLVの双方は、HL-60細胞の分化を誘発する点では、1,25-(OH)2D3よりも低い活性を示す。しかしながら、GC-3およびHLVは、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3-介在転写を拮抗作用する能力を有する。GC-3およびHLVは、骨カルシウム動員により測定したとき、カルシウム血症活性を有さないが、腸カルシウム輸送を高める能力を保持している。これらの化合物は生体外では拮抗薬として、生体内で弱作用薬として機能するので、これらの化合物は、幾つかの組織に局所投与したとき、有用な治療薬として機能し得る。従って、これら化合物は、喘息、高カルシウム血症、湿疹、サルコイドーシスおよびビタミンD中毒の治療のための治療法における使用を見出し得る。これら化合物は、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3と比較して、ビタミンDレセプターへの比較的高い結合性に特徴を有し、また、腸カルシウム輸送を高める能力も保持する。しかしながら、これらの化合物は、カルシウムを骨から動員する能力において、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3と比較したときにカルシウム血症活性を有さないようである。また、これら化合物は、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3と一緒に投与したとき、拮抗作用活性を示す。従って、これら化合物は、喘息、高カルシウム血症、湿疹、サルコイドーシスおよびビタミンD中毒の治療のための療法において有用であり得る。
また、本明細書において説明する化合物は、適度の細胞分化活性に特徴を有する。従って、これら化合物は、乾癬治療用の治療薬、および/またはとりわけ白血病、結腸癌、乳癌および前立腺癌に対する抗癌剤としても使用し得る。さらに、その適度の細胞分化活性に基づき、上記化合物は、しわ;適切な皮膚水和の欠如、即ち、乾燥皮膚;適切な皮膚締まりの欠如、即ち、皮膚のたるみ;および不十分な皮脂分泌のような種々の皮膚症状の治療用の治療薬として使用し得る。即ち、これらの化合物の使用は、皮膚を湿潤化し、皮膚のバリア機能を改善する。
【0008】
もう1つの局面においては、本発明は、ビタミンDレセプターと拮抗作用させる方法を提供する。該方法は、本発明の化合物または製薬組成物を動物対象者に投与することを含む。上記動物対象者に投与した化合物は、ビタミンDレセプターと拮抗作用する。
もう1つの局面においては、本発明は、喘息または湿疹を患っている動物対象者における喘息または湿疹の治療方法を提供する。該方法は、有効量の本発明の化合物または製薬組成物を上記動物対象者に投与することを含む。上記化合物の投与は、喘息または湿疹に関連する症状の軽減をもたらす。
本発明方法のある実施態様においては、上記化合物または製薬組成物を、経口、直腸、非経口、経皮または局所投与する。他の実施態様においては、上記化合物または製薬剤を、吸入器またはネブライザー使用して達成し得るエアゾール中で投与する。
もう1つの局面においては、本発明は、ビタミンDレセプターと拮抗させるためのおよび/または喘息または湿疹を患っている動物対象者の喘息または湿疹の治療用の製薬組成物または医薬品の製造における本発明の化合物の使用を提供する。ある実施態様においては、上記化合物を使用して、プロピレングリコールのようなグリコール化合物を含み得るエアゾールを調製する。
本発明の化合物は、本発明の化合物または化合物の混合物を製薬上許容し得る担体と一緒に含む製薬剤または医薬品を調製するのに使用し得る。そのような製薬剤および医薬品を使用して、ビタミンDレセプターが介在する障害のような本明細書で説明する障害のような種々の生物学的障害を治療し得る。そのような傷害を治療する方法は、典型的には、有効量の上記化合物または上記化合物を含む適切量の製薬剤または医薬品を、上記生物学的障害を被っている対象者に投与することを含む。ある実施態様においては、上記対象者は、哺乳類である。幾つかのそのような実施態様においては、上記哺乳類は、囓歯類、霊長類、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、クマ、ブタ、ウサギまたはモルモットから選択される。幾つかのそのような実施態様においては、上記哺乳類は、ラットであるかマウスである。ある実施態様においては、上記対象者は、霊長類、例えば、ある実施態様においては、ヒトである。
上記化合物は、上記の疾患または障害を治療する組成中に、該組成物の約0.01μg/gm〜約1mg/gm、好ましくは該組成物の約0.1μg/gm〜約500μg/gmの量で存在し、約0.01μg/日〜約1mg/日、好ましくは約0.1μg/日〜約500μg/日の投与量で局所、経皮、経口、直腸または非経口投与し得る。
本発明のさらなる目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面から明らかとなろう。
図1〜図7は、天然ホルモンの1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(図中、“1,25(OH)2D3”と称する)の生物学的活性と比較した2-メチレン-19-ノル-(23R)-1α,25-ジヒドロキシビタミンD2(図中、“GC-3”と称する)および2-メチレン-19-ノル-(23S)-1α,25-ジヒドロキシビタミンD2(図中、“HLV”と称する)の各種生物学的活性を説明する。
【0009】
(発明を実施するための最良の形態)
2-メチレン-19-ノル-(23R)-25-デヒドロ-1α-ヒドロキシビタミンD3-26,23-ラクトン(“GC-3”)および2-メチレン-19-ノル-(23S)-25-デヒドロ-1α-ヒドロキシビタミンD3-26,23-ラクトン(“HLV”)を合成し、試験し、本明細書において説明するような種々の生物学的障害の治療において有用であることを見出した。構造的には、下記で示すように、GC-3は下式1A1を有し、HLVは式1B1を有する。
【化5】

GC-3およびHLVの異性体の調製において使用する反応順序の1つの工程は、適切な二環式ウィンダウス-グランドマン(Windaus-Grundmann)タイプケトン(II)をアリルホスフィンオキサイドIIIと縮合させ、次いで、後の工程において、TESの除去、側鎖延長、ラクトン環形成および脱保護(Y1およびY2基の除去)を行うことによって実施し得る。
【化6】

【0010】
ホスフィンオキサイドIIIにおいては、Y1およびY2は、好ましくはシリル保護基のようなヒドロキシ-保護基である。t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基は、とりわけ有用なヒドロキシ-保護基の一例である。上記の方法は、収束合成概念の応用を代表するものであり、多くのビタミンD化合物の調製に有効に応用されている(Lythgoe et al., J. Chem. Soc. Perkin Trans. I, 590 (1978);Lythgoe, Chem. Soc. Rev. 9, 449 (1983);Toh et al., J. Org. Chem. 48, 1414 (1983);Baggiolini et al., J. Org. Chem. 51, 3098 (1986);Sardina et al., J. Org. Chem. 51, 1264 (1986);J. Org. Chem. 51, 1269 (1986);DeLuca等の米国特許第5,086,191号;DeLuca等の米国特許第5,536,713号;およびDeLuca等の米国特許第5,843,928号を参照されたい。これらの文献は、全て、その全体を参考として且つ本明細書で十分に説明するのと同様にすることを目的として本明細書に合体させる)。
ホスフィンオキサイドIIIは、多数の19-ノルビタミンD化合物を製造するのに使用し得る好都合な試薬であり、Sicinski et al., J. Med. Chem., 41, 4662 (1998);DeLuca等の米国特許第5,843,928号;Perlman et al., Tetrahedron Lett. 32, 7663 (1991);およびDeLuca等の米国特許第5,086,191号に記載されている手法に従って製造し得る。下記の図式Iは、米国特許第5,843,928号に概略されているようなホスフィンオキサイドIIIの一般的合成手順を示す;該米国特許は、本明細書において十分に説明するのと同様にしてその全体を参考として本明細書に合体させる。図式Iに示す方法の修正法を使用すれば、当業者にとっては明白である多数のビタミンDアナログ類を製造することが可能である。例えば、ケトンBをアルケンCに転化するのに使用するMePh3P+ Br-の代りに、多くの種類のホスホニウム化合物を使用することができる。そのような化合物の例としては、EtPh3P+ Br-、PrPh3P+ Br-、並びにトリフェニルホスフィンとアルキルハライド、アルケニルハライド、保護ヒドロキシアルキルハライドおよび保護ヒドロキシアルケニルハライドとの反応により一般的に製造した化合物がある。その後、この手順を使用して調製したアルケン類を、図式Iにおけるホスフィンオキサイドを調製するのに使用する方法と同様な方法で、ホスフィンオキサイドを調製するまで完遂させ得る。また、図式Iの化合物Cと同類のアルケンを(Ph3P)3RhClおよびH2により還元して他のビタミンDアナログ類を調製することもできる。米国特許第5,945,410号およびSicinski, R. R. et al., J. Med. Chem., 41, 4662-4674 (1998) を参照されたい;これらの文献は、双方とも、その全体を参考としてまた全体的目的において本明細書に合体させる。従って、図式Iに示したホスフィンオキサイドの調製手順は、本発明の化合物以外の多くの種類のビタミンDアナログ類を調製するのに使用し得る。
【0011】
図式I:
【化7】

【0012】
構造IIのヒドラインダノン類は、既知の方法または当業者にとって自明であり本明細書において説明するような適合化方法により調製し得る。ビタミンDアナログ類を合成するのに使用する幾つかの重要な二環式ケトン類の特定の例は、Mincione et al., Synth. Commun 19, 723, (1989);およびPeterson et al., J. Org. Chem. 51, 1948, (1986) に記載されているケトン類である。
2-アルキリデン-19-ノル-ビタミンD化合物の全体的合成方法は、米国特許第5,843,928号に例示され、説明されている;該米国特許は、その全体を参考として且つ本明細書で十分に説明するのと同様にすることを目的として本明細書に合体させる。
【0013】
本明細書において使用するとき、用語“ヒドロキシ保護基”とは、限定するものではないが、アルコキシカルボニル、アシル、アルキルシリルまたはアルキルアリールシリル基(以下、単純に“シリル”基と称する)、およびアルコキシアルキル基のような、ヒドロキシ(-OH)官能基の一時的保護のために一般的に使用する任意の基を意味する。アルコキシカルボニル保護基は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルまたはアリルオキシカルボニルのようなアルキル-O-CO-基である。用語“アシル”は、1〜6個の炭素を有し、全ての異性体形のアルカノイル基;または、オキサリル、マロニル、スクシニル、グルタリル基のような、1〜6個の炭素を有するカルボキシアルカノイル基;または、ベンゾイルまたはハロ、ニトロもしくはアルキル置換ベンゾイル基のような芳香族アシル基を意味する。アルコキシアルキル保護基は、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチル、またはテトラヒドロフラニルおよびテトラヒドロピラニルのような基である。好ましいシリル保護基は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、ジブチルメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニル-t-ブチルシリルおよび同類のアルキル化シリル基である。用語“アリール”は、フェニル-、またはアルキル-、ニトロ-もしくはハロ-置換フェニル基を意味する。ヒドロキシ官能性に対する保護基の広範囲の目録は、Protective Groups in Organic Synthesis, Greene, T.W.; Wuts, P. G. M., John Wiley & Sons, New York, NY, (3rd Edition, 1999) において見出すことができる;該目録は、本明細書において説明する手法を使用して追加または削除し得、また、その全体を参考として且つ本明細書で十分に説明するのと同様にすることを目的として本明細書に合体させる。
“保護ヒドロキシ”基は、ヒドロキシ官能基の一時的または永久的保護のために一般的に使用する上記の基のいずれか、例えば、上記で定義したようなシリル、アルコキシアルキル、アシルまたはアルコキシカルボニル基によって誘導体化された即ち保護されたヒドロキシ基である。
【0014】
(実施例)
2-メチレン-19-ノル-(23R)-25-デヒドロ-1α-ヒドロキシビタミンD3-26,23-ラクトン(GC-3)および2-メチレン-19-ノル-(23S)-25-デヒドロ-1α-ヒドロキシビタミンD3-26,23-ラクトン(HLV)の合成
各種19-ノルビタミンDアナログ類の合成および特性は、米国特許第5,843,928号、米国特許第6,627,622号、米国特許第6,579,861号、米国特許第5,086,191号、米国特許第5,585,369号および米国特許第6,537,981号のような多くの米国特許に記載されている。上記文献の各々は、その全体を参考として且つ本明細書で十分に説明するのと同様にすることを目的として本明細書に合体させる。
図式I、IIA、IIBおよびIICは、以下で詳細に説明する合成手順を概略している。
(8S, 20S)-デ-A,B-8-ヒドロキシ-20-(ヒドロキシメチル)-プレグナン (1)
火炎乾燥させた1000mLの三つ口フラスコに、5.0g (12.7ミリモル)のエルゴカルシフェロール(Sigma-Aldrich社から商業的に入手し得る)、400mLの無水MeOHおよび5mL (62ミリモル)の無水ピリジンを順次装入した。溶液を-78℃に冷却し、深青色が発生し持続するまでO3で処理した(およそ20〜30分)。その後、溶液を、青色が消失するまで15分間O2でフラッシングした。固形ホウ化水素ナトリウム(4.5g、118.9ミリモル)を、4時間に亘って分割して添加した。ホウ化水素ナトリウムの第1分割分を-78℃で添加し、20分後、ホウ化水素ナトリウムの第2分割分を添加した。反応混合物を、3〜4時間に亘って室温に温め、その後、ホウ化水素ナトリウムの最後の分割分を添加した。室温で18時間撹拌した後、混合物を、水により失活させ、真空中で濃縮し、EtOAcで抽出した。混ぜ合せた有機相を、1N HCl、飽和NaHCO3、塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(15% EtOAc/ヘキサン)によって精製して、1.41g (6.64ミリモル)のジオールを52%の収率で白色固形物として得た;1H NMR (CDCl3、600 MHz) δ 4.09 (dm、J = 3.0 Hz、1H)、3.64 (dd、J = 10.5、3.0 Hz、1H)、3.38 (dd、J = 10.5、6.6 Hz、1H) 1.99 (dm、J = 13.2 Hz、1H)、1.03 (d、J = 7.2 Hz、3H)、0.96 (s、3H);13C NMR (CDCl3) δ 69.26、67.87、52.97、52.40、41.89、40.26、38.27、33.60、26.69、22.60、17.43、16.65、13.61;C13H24O2 [M]+で計算した正確な質量 212.1776、分析値 212.1779。
【0015】
(8S, 20R)-デ-A,B-8-ヒドロキシ-20-(ホルミルメチル)-プレグナン (3)
5mLの無水ピリジン中のジオール1の溶液(500mg、2.35ミリモル)を、-25℃に冷却した。1mLの無水ピリジン中の塩化トシル(553mg、2.9ミリモル)の前以って冷却した溶液を、上記のジオール溶液に、カニューレにより滴下して添加した。-25℃で3.5時間撹拌した時点で、反応物を0℃まで温め、さらに20時間撹拌せしめた。混合物を、CH2Cl2で抽出し、飽和CuSO4水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮して残留物を得、これをシリカゲルカラムでクロマトグラフィー処理(20% EtOAc/ヘキサン)して、600mg (1.64ミリモル)の相応するトシレート2を70%の収率で得た。DMSO(2mL)中の2(300mg、0.82ミリモル)の溶液に、KCN (106 mg、1.64ミリモル)を添加し、混合物を70℃で1.5時間撹拌した。混合物をEt2Oで希釈し、有機相をH2Oおよび飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮した。残留物を、CH2Cl2(3mL)中に溶解した。この溶液に、トルエン中DIBALH溶液(0.9mL、0.902ミリモル)を0℃で添加し、混合物を同じ温度で1.5時間撹拌した。混合物に、10%の酒石酸カリウムナトリウム水溶液を添加し、水性相をEt2Oで抽出した。有機相を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮した。残留物を、フラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で精製し(3% EtOAc/ヘキサン)、3 (2工程において133mg、0.59ミリモル、72%)を得た:[α]20D +18.8°(c 1.21、CHCl3);1H NMR(CDCl3、400MHz) δ 9.75 (d、J = 2.4Hz、1H)、4.08 (s、1H)、2.45 (dm、J = 15.7Hz、1H)、2.15 (m、1H)、1.00 (d、J= 6.6Hz、3H)、0.98 (s、3H);13C NMR (CDCl3、400MHz) δ 69.17、56.34、52.54、50.68、41.99、40.22、33.54、31.22、27.40、22.44、19.85、17.34、13.50;C14H24O2 [M]+で計算した正確な質量 224.1776、分析値 224.1771。
【0016】
(8S, 20R)-デ-A, B-8-ヒドロキシ-20-(2-ヒドロキシエチル)-プレグナン (4)
無水EtOH (10mL)中の3の溶液(100mg、0.443ミリモル)に、NaBH4 (85mg、2.22ミリモル)を0℃で添加し、混合物を同じ温度で1.5時間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈し、水、1N HCl、飽和NaHCO3水溶液、塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮した。残留物を、フラッシュカラムクロマトグラフィーによりシリカゲル上で精製し(10%EtOAc/ヘキサン)、所望のジオール4 (75mg、0.337ミリモル、76%)を得た:1H NMR (CDCl3、800MHz) δ 4.06 (d、J = 2.4 Hz、1H)、3.69 (ddd、J = 10.4、8.8、4.8Hz、1H)、3.62 (ddd、J = 10.4、7.2、7.2 Hz、1H) 1.98 (dm、J = 12.8Hz、1H)、0.92 (d、J = 6.6Hz、3H)、0.91 (s、3H) 13C NMR (CDCl3) δ 69.55、61.05、57.11、52.82、42.16、40.61、39.00、33.78、32.67、27.49、22.73、18.93、17.64、13.70;C14H26O2 [M]+で計算した正確な質量 226.1933、分析値 226.1945。
【0017】
(8S, 20R)-デ-A, B-8-ヒドロキシ-20-(2-トリエチルシリルオキシエチル)-プレグナン(5)
0℃の無水CH2Cl2(5mL)中のジオール4(50mg、0.22ミリモル)の溶液に、トリエチルアミン(95μL、0.67ミリモル)、次いで、トリエチルシリルクロライド(TESCl、40μL、0.22ミリモル)を添加した。溶液を、0℃で30分間撹拌し、その後水で失活させた。混合物を、CH2Cl2で抽出し、混ぜ合せた有機相を、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮して残留物を得、これをシリカゲルカラム上でクロマトグラフィー処理し(30%EtOAc/ヘキサン)、O-シリル化化合物5 (68mg、0.18ミリモル、81%)を得た:[α]20D +31.2°(c 1.45、CHCl3);1H NMR (CDCl3、400MHz) δ 4.08 (s、1H)、3.68 (m、1H)、3.59 (m、1H)、1.99 (m、1H)、0.97 (t、J = 7.9Hz、9H)、0.91 (s、3H)、0.60 (q、J = 7.9Hz、6H);13C NMR (CDCl3) δ 69.45、60.95、56.84、52.60、41.89、40.35、38.86、33.53、32.47、27.19、22.52、18.91、17.41、13.41、6.56、5.78;C20H40O2Si [M]+で計算した正確な質量 340.2798、分析値 340.2803。
【0018】
(20R)-デ-A,B-20-(2-トリエチルシリルオキシエチル)-プレグナン-8-オン (6)
CH2Cl2 (10mL)中のアルコール5 (41mg、0.12ミリモル)の溶液に、ピリジニウム-p-トルエンスルホネート(PPTS) (10mg、0.02ミリモル)および重クロム酸ピリジニウム(PDC、0.231g、0.60ミリモル)を室温で添加した。室温で6時間撹拌した後、混合物を2cmのフラッシュシリカゲルパッドに通し、EtOAcで洗浄した。濾液を濃縮し、ヘキサン中20%EtOAcでクロマトグラフィー処理し、所望のケトン6 (31mg、0.091ミリモル、76%)を無色油状物として得た。分析目的で、ケトン6のサンプルを、HPLC(Zorbax Silica、250/9.4mm、10%EtOAc/ヘキサン、5mL/分、Rv = 23mL)によってさらに精製した:1H NMR (CDCl3、600MHz) δ 3.67 (ddd、J = 10.2、8.4、4.8Hz、1H)、3.59 (ddd、J = 10.2、7.8、7.2Hz、1H)、2.43 (dd、J = 12.0、7.2Hz、1H)、0.95 (d、J = 6.6Hz、3H) 0.94 (t、J = 7.8Hz、9H) 0.62 (s、3H)、0.57 (q、J = 7.8Hz、6H);13C NMR (CDCl3) δ 212.09、61.99、60.72、56.89、49.94、40.97、38.95、38.79、32.64、27.51、24.04、19.08、19.03、12.41、6.80、4.42;C18H33O2Si [M-C2H5]+で計算した正確な質量 309.2250、分析値 309.2252。
【0019】
(7E)-(1R,3R,20R)-1,3-ジ-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-2-メチレン-9,10-seco-19-ノル-20-(2-トリエチルシリルオキシエチル)-5,7-プレグナンジエン (7)
-20℃の無水THF(600μL)中のホスフィンオキサイドH (89mg、0.15ミリモル)の溶液に、PhLi (130μL、0.15ミリモル)をアルゴン下に撹拌しながらゆっくり添加した。溶液は、濃いオレンジ色に変化した。混合物を-78℃に冷却し、無水THF (400μL)中のケトン6 (29mg、86μモル)の前以って冷却した(-78℃)溶液をゆっくり添加した。混合物を、アルゴン下に-78℃で1時間、0℃で18 時間撹拌した。酢酸エチルを添加し、有機相を塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、蒸発させた。残留物をヘキサン中で溶解し、シリカSep-Packカートリッジ上に適用し、ヘキサン中0.5%EtOAcで洗浄し、19-ノルビタミン誘導体7 (48mg、79%)を得た。その後、Sep-Packを酢酸エチルで洗浄してジフェニルホスフィンオキサイド(20 mg)を回収した:1H NMR (CDCl3、900 MHz) δ 6.21 (d、J = 11.2Hz、1H、6-H)、5.83 (d、J = 11.2Hz、1H、7-H)、4.97 (s、1H、=CH2)、4.92 (s、1H、=CH2)、4.42 (m、2H、1β-および3α-H)、3.68 (ddd、J= 10.4、8.1、4.5Hz、1H)、3.59 (ddd、J = 10.4、7.2、7.2Hz、1H)、2.82 (br d、J = 12.6Hz、1H)、2.51 (dd、J = 13.5、5.4Hz、1H)、2.46 (dd、J = 12.6、4.5Hz、1H)、2.33 (dd、J = 13.5、3.6Hz、1H)、2.18 (dd、J = 11.7、8.1Hz、1H) 0.96 (t、J = 8.1Hz、9H、SiCH2CH3) 0.94 (d、J = 6.3Hz、3H)、0.89 (s、9H、Si-t-Bu)、0.86 (s、9H、Si-t-Bu)、0.60 (q、J = 8.1Hz、6H、SiCH2)、0.54 (s、3H、18-H3)、0.08、0.06、0.04および0.02 (各々s、各々3H、4 x SiCH3);13C NMR (CDCl3) δ 153.22、141.37、132.98、122.63、116.37、106.48、72.73、71.88、61.24、56.96、56.52、47.83、45.95、40.80、39.27、38.80、33.50、28.97、27.93、26.06、26.00、23.65、22.47、19.47、18.47、18.39、12.22、7.03、-4.63 (2 x SiMe)、-4.68 (SiMe)、-4.87 (SiMe);C41H78O3Si3 [M]+で計算した正確な質量 702.5259、分析値 702.5286。
【0020】
(7E)-(1R,3R,20R)-1,3-ジ-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-2-メチレン-9,10-seco-19-ノル-20-(2-ヒドロキシエチル)-5,7-プレグナンジエン (8)
0℃のベンゼン(2 mL)中の7(48mg、68μmol)の溶液に、AcOH/THF/H2O (8:8:1、8mL)を添加し、同じ温度で3時間撹拌した。混合物に飽和NaHCO3水溶液を添加し、水性相をEtOAcで抽出した。有機相を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮した。残留物を、シリカカラム上でクロマトグラフィー処理して(5% EtOAc/ヘキサン)、所望のアルコール8(32mg、54μmol、80%)を得た:[α]20D +29.2°(c 1.11、CHCl3) 1H NMR (CDCl3、800MHz) δ 6.19 (d、J = 11.2Hz、1H、6-H)、5.82 (d、J = 11.2Hz、1H、7-H)、4.95 (s、1H、=CH2)、4.90 (s、1H、=CH2)、4.40 (m、2H、1β-および3α-H)、3.71 (m、1H)、3.63 (m、1H)、2.82 (br d、J = 12.8Hz、1H)、2.50 (dd、J = 13.6、6.4Hz、1H)、2.44 (dd、J = 12.8、4.0Hz、1H)、2.30 (dm、J = 10.4Hz、1H)、2.16 (dd、J = 12.8、8.8、1H)、0.95 (d、J = 7.2Hz、3H)、0.88 (s、9H、Si-t-Bu)、0.84 (s、9H、Si-t-Bu)、0.54 (s、3H)、0.059、0.044、0.028および0.003 (各s、各3H、4 x SiCH3);13C NMR (CDCl3) δ 141.01、132.85、125.51、122.37、116.21、106.26、72.54、71.61、60.93、56.78、56.27、47.62、45.72、40.59、38.95、38.55、33.25、28.72、27.81、25.84、25.78、23.40、22.22、18.99、18.25、18.16、12.04、-4.86 (2 x SiMe)、-4.91 (SiMe)、-5.10 (SiMe);C35H65O3Si2 [MH]+で計算した正確な質量 589.4472、分析値 589.4472。
【0021】
(7E)-(1R,3R,20R)-1,3-ジ-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-2-メチレン-9,10-seco-19-ノル-20-(2-ホルミルメチル)-5,7-プレグナンジエン (9)
-60℃のCH2Cl2 (5mL)中のDMSO (100μL、1.35ミリモル)の溶液に、塩化オキサリル(65μL、0.71ミリモル)を添加した。2分後、CH2Cl2 (3mL)中の第一級アルコール8(32mg、55μmol)の-60℃の溶液を、カニューレにより添加した。得られた混合物を-60℃で1時間撹拌し、Et3N(0.400mL、2.82ミリモル)で失活させ、室温まで温めた。H2Oによる希釈時に、抽出混合物を、CH2Cl2で抽出し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(2〜5%EtOAc/ヘキサン) により精製して、所望のアルデヒド9(25mg、0.55ミリモル、78%)を得た:[α]20D -8.4°(c 1.25、CHCl3);1H NMR (CDCl3、600MHz) δ 9.75 (dd、J = 3.6、1.8Hz、1H)、6.20 (d、J = 11.4Hz、1H、6-H)、5.83 (d、J = 11.4Hz、1H、7-H)、4.96 (s、1H、=CH2)、4.91 (s、1H、=CH2)、4.41 (m、2H、1β-および3α-H)、2.81 (dd、J = 12.6、4.2Hz、1H)、2.50 (dd、J = 13.2、6.0Hz、1H)、2.47 (m、2H)、2.45 (dd、J = 12.6、4.8Hz、1H)、2.31 (dd、J = 13.2、3.0Hz、1H)、1.02 (d、J = 6.6Hz、3H)、0.88 (s、9H、Si-t-Bu)、0.85 (s、9H、Si-t-Bu)、0.58 (s、3H)、0.07、0.05、0.03および0.01 (各々s、各々3H、4 x SiCH3);13C NMR (CDCl3) δ 203.58、153.13、140.80、133.32、122.50116.61、106.54、72.74、71.81、56.45、51.06、47.84、45.94、40.64、38.78、32.17、32.04、28.86、28.14、26.05、26.00、23,54、22.38、20.35、18.47、18.39、12.29、-4.63 (3 x SiMe)、-4.89 (SiMe);C35H62O3Si2 [M]+で計算した正確な質量 586.4238、分析値 586.4247。
【0022】
(7E)-(1R,3R,20R)-1,3-ジ-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-2-メチレン-9,10-seco-19-ノル-20-[(2S)-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニル-4-ペンテン-1-イル]-5,7-プレグナンジエン(10)および(7E)-(1R,3R,20R)-1,3-ジ-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-2-メチレン-9,10-seco-19-ノル-20-[(2R)-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニル-4-ペンテン-1-イル]-5,7-プレグナンジエン(11)
飽和NH4Cl水溶液/THF (5:1、3mL)中の9(25mg、425μmol)の溶液に、メチルブロモメチルアクリレート(10μL、85μmol) (Sigma-Aldrich社から商業的に入手し得る)および活性化Zn粉末(11mg、0.17ミリモル)を0℃で添加し、混合物を同じ温度で1.5時間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈した。有機相を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮した。残留物を、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー (5%EtOAc/ヘキサン) によって精製して、10(5mg、7.3μmol、57%)および11(4mg、5.5μmol、43%)を、それぞれ、無色油状物として得た。
10:1H NMR (CDCl3、400MHz) δ 6.25(s、1H、=CH2)、6.21 (d、J = 11.2Hz、1H、6-H)、5.84 (d、J = 11.2Hz、1H、7-H)、5.67 (s、1H、=CH2)、4.97 (s、1H、=CH2)、4.91 (s、1H、=CH2)、4.42 (m、2H、1β-および3α-H)、3.87 (m、1H、CH-OH)、3.77 (s、3H、-CO2CH3)、2.82 (br d、J = 11.3、1H)、2.56〜2.44 (m、3H)、2.40〜2.25 (m、2H)、2.18 (m、1H)、0.97 (d、J = 6.6Hz、3H)、0.90 (s、9H、Si-t-Bu)、0.85 (s、9H、Si-t-Bu)、0.57 (s、3H)、0.08、0.06、0.05および0.02 (各々s、各々3H、4 x SiCH3);13C NMR (CDCl3) δ 168.31、153.19、141.28、137.76、133.03、127.92、122.58、116.41、106.44、72.79、71.78、67.85、57.35、56.54、52.28、47.85、46.00、43.93、41.78、40.86、38.72、33.09、28.94、28.08、26.04、25.97、23.62、22.44、18.87、18.45、18.35、12.35、-4.67 (SiMe)、-4.90 (3 x SiMe);C40H70O5Si2Na [M+Na]+で計算した正確な質量 709.4660、分析値 709.4680を見出した。
11:1H NMR (CDCl3、400MHz) δ 6.29 (s、1H、=CH2)、6.22 (d、J = 11.1Hz、1H、6-H)、5.84 (d、J = 11.1Hz、1H、7-H)、5.70 (s、1H、=CH2)、4.98 (s、1H、=CH2)、4.93 (s、1H、=CH2)、4.43 (m、2H、1β-および3α-H)、3.90 (m、1H、CH-OH)、3.79 (s、3H、-CO2CH3)、2.84 (br d、J = 12.1Hz、1H)、2.71 (dd、J = 13.8、1.7Hz、1H)、2.56〜2.42 (m、2H)、2.34 (m、1H)、1.03 (d、J = 6.4Hz、3H)、0.90 (s、9H、Si-t-Bu)、0.87 (s、9H、Si-t-Bu)、0.57 (s、3H)、0.09、0.08、0.06および0.04 (各々s、各々3H、4 x SiCH3);13C NMR (CDCl3) δ 168.30、153.17、141.23、137.77、133.04、128.07、122.58、116.41、106.46、72.72、71.83、69.45、57.47、56.43、52.28、47.80、45.91、44.13、40.81、40.27、38.77、34.39、28.93、28.12、26.03、25.98、23.61、22.42、19.55、18.74、18.37、12.29、-4.67 (3 x SiMe)、-4.88 (SiMe);C40H70O5Si2 [M]+で計算した正確な質量 686.4762、分析値 686.4789。
【0023】
(23S)-25-デヒドロ-2-メチレン-19-ノル-1α-ヒドロキシビタミン D3-26,23-ラクトン (HLV)
NaHの懸濁液(60%オイル分散液、4mg、100μモル)に、THF(3mL)中の10の溶液(5mg、7μモル)を0℃で添加し、混合物を同じ温度で30分間撹拌した。混合物に飽和NH4Cl水溶液を添加し、水性相をEt2Oで洗浄した。有機相を混ぜ合せ、飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮した。残留物を、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(5%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、保護ビタミン12(4mg、6μmol、81%)を無色油状物として得た:1H NMR (CDCl3、900MHz) δ 6.22 (dd、J = 2.7、2.7、1H、=CH2)、6.20 (d、J = 11.3Hz、1H、6-H)、5.82 (d、J = 11.3Hz、1H、7-H)、5.61 (dd、J = 2.7、2.7Hz、1H、=CH2)、4.96 (s、1H、=CH2)、4.90 (s、1H、=CH2)、4.64 (m、1H、CH-O-)、4.42 (m、2H、1β-および3α-H)、3.06 (dddd、J = 17.1、7.2、2.7、2.7Hz、1H) 2.81 (dm、J = 12.6Hz、1H)、2.54 (dd、J = 12.6、5.4Hz、1H)、2.52 (dddd、J = 17.1、5.4、3.6、2.7Hz、1H)、2.46 (dd、J = 13.5、5.4Hz、1H)、2.28 (dd、J = 13.5、2.7Hz、1H)、2.16 (dd、J = 12.6、8.1Hz、1H)、2.01 (dm、J = 12.6Hz、1H)、1.99 (dd、J = 12.6、7.2Hz、1H)、1.01 (d、J = 6.3Hz、3H)、0.89 (s、9H、Si-t-Bu)、0.85 (s、9H、Si-t-Bu)、0.55 (s、3H)、0.07、0.05、0.04および0.01 (各々s、各々3H、4 x SiCH3);13C NMR (CDCl3) δ 170.66、153.18、140.96、135.05、133.24、122.51、122.11、116.57、106.44、75.40、72.82、71.73、57.07、56.49、47.88、45.98、43.73、40.84、38.70、34.72、33.28、28.90、27.94、26.05、25.96、23.57、22.43、18.81、18.47、18.36、12.31、-4.67 (3 x SiMe)、-4.88 (SiMe);C39H66O4Si2Na [M+Na]+で計算した正確な質量 677.4397、分析値 677.4407。
【0024】
MeCN (1mL)中の12(3mg、5.3μmol)の溶液に、HF/MeCN (1:9、1mL)を0℃で添加し、混合物を同じ温度で30分間撹拌した。混合物に飽和NaHCO3水溶液を添加し、水性相をEtOAcで抽出した。有機相を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮した。残留物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(20%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、HLV (2mg、4.6μモル、88%)を無色油状物として得た。分析目的で、最終生成物HLVのサンプルを、HPLC (Zorbax Eclipse XDB-C18、15%MeOH/H2O、3mL/分、Rv = 21.8mL)によってさらに精製した:UV (エタノール中) λmax 243、251、261;1H NMR (CDCl3、800MHz) δ 6.34 (d、J = 11.2Hz、1H、6-H)、6.23 (dd、J = 2.4、2.4Hz、1H、=CH2)、5.88 (d、J = 11.2Hz、1H、7-H)、5.62 (dd、J = 2.4、2.4Hz、1H、=CH2)、5.11 (s、1H、=CH2)、5.09 (s、1H、=CH2)、4.65 (m、1H、-CH-O-)、4.49 (m、1H)、4.46 (m、1H)、3.07 (dddd、J = 16.8、8.0、2.4、2.4Hz、1H) 2.87 (dd、J = 13.6、4.8 Hz、1H)、2.81 (dm、J = 12.8Hz、1H)、2.57 (dd、J = 13.6、4.0Hz、1H)、2.53 (dddd、J = 16.8、5.6、3.2、3.2Hz、1H)、2.33 (dd、13.6、5.6Hz、1H)、2.27 (dd、J = 12.8、8.0Hz、1H)、2.01 (m、2H)、1.02 (d、J = 6.4Hz、3H)、0.57 (s、3H);C27H38O4Na [M+Na]+で計算した正確な質量 449.2668、分析値 449.2666。
【0025】
(23R)-25-デヒドロ-2-メチレン-19-ノル-1α-ヒドロキシビタミンD3-26,23-ラクトン (GC-3)
NaHの懸濁液(60%オイル分散液、4mg、100μモル)に、THF(1mL)中の11(3mg、5.1μモル)を0℃で添加し、混合物を同じ温度で30分間撹拌した。混合物に飽和NH4Cl水溶液を添加し、水性相をEt2Oで抽出した。有機相を混ぜ合せ、飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(5%EtOAc/ヘキサン) によって精製して、保護ビタミン13(1.5mg、2.3μモル、45%)を無色油状物として得た:1H NMR (CDCl3、900MHz) δ 6.21 (dd、J = 2.7、2.7Hz、1H、=CH2)、6.20 (d、J = 10.8Hz、1H、6-H)、5.82 (d、J = 10.8Hz、1H、7-H)、5.61 (dd、J = 2.7、2.7 Hz、1H、=CH2)、4.96 (s、1H、=CH2)、4.91 (s、1H、=CH2)、4.59 (ddt、J = 14.4、14.4、7.2Hz、1H、-CH-O-)、4.41 (m、2H、1β-および3α-H)、3.04 (dddd、J = 16.7、7.2、2.7、1.8Hz、1H) 2.81 (dm、J = 12.6Hz、1H)、2.54 (dddd、J = 16.7、6.3、3.6、2.7Hz、1H)、2.49 (dd、J = 13.5、6.3Hz、1H)、2.45 (dd、J = 13.5、4.5Hz、1H)、2.32 (dd、J = 13.5、3.6Hz、1H)、2.17 (dd、J = 13.5、9.0Hz、1H)、1.02 (d、J = 7.2Hz、3H)、0.88 (s、9H、Si-t-Bu)、0.85 (s、9H、Si-t-Bu)、0.55 (s、3H)、0.07、0.05、0.03および0.01 (各々s、各々3H、4 x SiCH3);13C NMR (CDCl3) δ 170.57、153.12、140.92、134.94、133.21、122.52、122.07、116.55、106.51、72.71、71.83、56.80、56.35、47.80、45.87、42.54、40.72、38.79、34.27、33.90、28.87、28.24、25.99 (2 x t-Bu-Si)、23.54、22.38、19.48、18.45、12.23、-4.66 (3 x SiMe)、-4.90 (SiMe);C39H66O4Si2Na [M+Na]+で計算した正確な質量 677.4397、分析値 677.4407。
【0026】
MeCN (1mL)中の13(2mg、4μモル)の溶液に、HF/MeCN (1:9、1mL)を0℃で添加し、混合物を同じ温度で30分間撹拌した。混合物に飽和NaHCO3水溶液を添加し、水性相をEtOAcで抽出した。有機相を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮した。残留物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(20%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、GC-3 (1mg、2μモル、60%)を無色油状物として得た。分析目的で、最終生成物GC-3のサンプルを、HPLC (Zorbax Eclipse XDB-C18、15%MeOH/H2O、3mL/分、Rv = 22.6mL))によってさらに精製した:UV(エタノール中) λmax 243、251、261;1H NMR (CDCl3、800MHz) δ 6.35 (d、J = 11.2Hz、1H、6-H)、6.22 (dd、J = 2.4、2.4Hz、1H、=CH2)、5.88 (d、J = 11.2Hz、1H、7-H)、5.62 (dd、J = 2.4、2.4Hz、1H、=CH2)、5.12 (s、1H、=CH2)、5.09 (s、1H、=CH2)、4.59 (ddt、J = 14.4、13.6、7,2Hz、1H、CH-O-)、4.49 (m、1H)、4.47 (m、1H)、3.05 (dddd、J = 16.8、7.2、2.4、2.4Hz、1H) 2.84 (dd、J = 13.6、4.0Hz、1H)、2.81 (dm、J = 15.2Hz、1H)、2.58 (dd、J = 13.6、4.0Hz、1H)、2.55 (dddd、J = 16.8、6.4、3.2、3.2Hz、1H)、2.33 (dd、J = 13.6、6.4Hz、1H)、2.30 (dd、J = 13.6、8.8Hz、1H)、1.03 (d、J = 6.4Hz、3H)、0.57 (s、3H);C27H38O4Na [M+Na]+で計算正確な質量 449.2668、分析値 449.2688。
【0027】
図式IIA:
【化8】

【0028】
図式IIB:
【化9】

【0029】
図式IIC:
【化10】

【0030】
生物学的活性
ビタミンDレセプター結合性
試験材料
タンパク質源:
全長組換えラットビタミンDレセプターを大腸菌 BL21(DE3) Codon Plus RIL細胞中で発現させ、2つの異なるカラムクロマトグラフィー系を使用して等質に精製した。1番目の系は、C-末端ヒスチジンタグをこのタンパク質上で使用するニッケル親和性樹脂であった。この樹脂から溶出したタンパク質を、イオン交換クロマトグラフィー(S-Sepharose Fast Flow)を使用してさらに精製した。精製タンパク質の各アリコートを液体窒素中で急速凍結させ、使用するまで-80℃で保存した。結合性アッセイにおける使用に当っては、該タンパク質を、0.1%のChaps清浄剤を含むTEDK50 (50mM Tris、1.5mM EDTA、pH 7.4、5mM DTT、150mM KCl)中で希釈した。上記レセプタータンパク質およびリガンド濃度を、20%を超えない添加放射性標識化リガンドが上記レセプターに結合するように最適化した。
試験薬物
標識化していないリガンドをエタノール中に溶解し、濃度を、UV分光測光法を使用して測定した(1,25(OH)2D3:モル吸光係数 = 18,200およびλmax = 265nm;アナログ類:モル吸光係数 = 42,000およびλmax = 252nm)。放射性標識化リガンド (3H-1,25(OH)2D3、~159 Ci/ミリモル)をエタノールに1nMの最終濃度で添加した。
アッセイ条件
放射性標識化リガンドと標識化していないリガンドを100mclの希釈タンパク質に≦ 10%の最終エタノール濃度で添加し、混合し、氷上で1夜インキュベートして結合平衡に至らせた。翌日、100mclのヒドロキシルアパタイトスラリー(50%)を各チューブに添加し、10分間隔で30分混合した。ヒドロキシルアパタイトを遠心分離により集め、その後、0.5%のTriton X-100を含有するTris-EDTA緩衝液(50mM Tris、1.5mM EDTA、pH 7.4)で3回洗浄した。最終洗浄後、ペレットを、4mlのBiosafe IIシンチレーションカクテルを含有するシンチレーションバイアルに移し、混合し、シンチレーションカウンター内に入れた。総結合性を、放射性標識化リガンドのみを含有するチューブから測定した。
【0031】
HL-60分化
試験材料
試験薬物:
試験薬物をエタノール中に溶解し、濃度を、UV分光測光法を使用して測定した。連続希釈物を、細胞培養物中に存在するエタノール最終濃度(≦ 0.2%)を変化させないで薬物濃度範囲を測定し得るように調製した。
細胞:
ヒト前骨髄球性白血病(HL60)細胞を、10%のウシ胎仔血清を含有するRPMI-1640培地中で増殖させた。細胞は、37℃で5%CO2の存在下にインキュベートした。
アッセイ条件
HL60細胞を、1.2×105 細胞/mlで塗抹した。塗抹後18時間で、正副2通りの細胞を薬物で処理した。4日後、細胞を採集し、ニトロブルーテトラゾリウム還元アッセイを実施した(Collins et al., 1979; J. Exp. Med. 149:969-974)。分化細胞のパーセントを、総数200個の細胞を計数し、細胞内黒青色ホルマゾン付着物を含有する数を記録することによって判定した。単球細胞への分化の検証は、食作用活性を測定することによって判定した(データは示していない)。
生体外転写アッセイ
転写活性を、24-ヒドロキシラーゼ(24OHase)遺伝子プロモーターをルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流に安定的に移入したROS 17/2.8 (骨)細胞中で測定した(Arbour等、1998年)。細胞を所定の投与量範囲で投与した。投与後16時間で、細胞を採集し、ルシフェラーゼ活性を、照度計を使用して測定した。RLU = 相対ルシフェラーゼ単位。
拮抗作用は、1,25(OH)2D3と当該化合物の混合物を、最終エタノール濃度を同じに良好に保持した上記同一物に添加することによって試験した。
腸カルシウム輸送および骨カルシウム動員
雄の離乳Spraque-Dawleyラットに、Diet 11 (Suda et al. J. Nutr. 100:1049, 1970) (0.47%Ca)給餌+ビタミンAEKを1週間、次いで、Diet 11 (0.02%Ca)給餌+AEKを3週間与えた。その後、ラットを1週間の0.47%のCaを含有する給餌に、次いで、2週間の0.02%のCaを含有する給餌に切り換えた。投与は、0.02%カルシウム給餌の最後の1週間中に開始した。4回連続のip投与を約24時間間隔で行なった。最後の投与後24時間で、血液を切断した首から採取し、血清カルシウム濃度を骨カルシウム動員の尺度として測定した。また、腸の最初の10cmも、反転腸管法を使用する腸カルシウム輸送分析用に収集した。拮抗作用を、1,25(OH)2D3と上記化合物の組合せを動物に同時に投与することによって試験した。
【0032】
GC-3およびHLVは、双方ともビタミンDレセプターに結合するが、これらの化合物の双方は、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3よりもこの点では活性が低い(図1参照)。また、GC-3およびHLVの双方は、HL-60細胞分化を誘発させる点でも25-(OH)2D3よりも低い活性を示す(図2)。GC-3は、図3および5に示すように、天然ホルモン(1α,25-ジヒドロキシビタミンD3)と一緒に投与したとき拮抗作用活性を示し、また、HLVは、図4および図5において示すように、幾分高い程度で拮抗作用活性を示す。GC-3およびHLVは、骨カルシウム動員によって測定したとき、2,340ピコモル/日の投与量で投与した場合でさえも、カルシウム血症活性を有していない(図6参照)。しかしながら、GC-3およびHLVの双方は、腸カルシウム輸送を高める能力を保持している(図7)。これらの化合物は、生体外では拮抗薬として、生体内では弱作用薬として作用するので、これら化合物は、幾らかの組織に局所投与する場合、有用な治療薬として作用し得る。従って、これらの化合物は、喘息、高カルシウム血症、湿疹、サルコイドーシスおよびビタミンD中毒の治療のための治療法における使用を見出し得る。
本発明の化合物は、ビタミンDレセプターの中和を望む用途において有用である。そのような用途としては、喘息または湿疹を患っている動物対象者における喘息または湿疹の治療がある。従って、ある実施態様においては、動物対象者における喘息または湿疹の予防または治療方法は、動物対象者に、有効量の本発明の単数または複数の化合物或いはこれら単数または複数の化合物を含む製薬組成物を投与することを含む。対象者への上記単数または複数の化合物または上記製薬組成物の投与は、動物対象者における喘息または湿疹を防止または軽減する。
【0033】
治療目的においては、式1A、1B、1A1、1B1、1A2および1B2によって定義する各化合物は、無毒性溶媒中の溶液として、或いは適切な溶媒または担体中のエマルジョン、懸濁液または分散剤として、或いは固形担体と一緒のピル剤、錠剤またはカプセル剤としての医薬用途用に、当該技術において既知の通常の方法に従って調合し得る。また、そのような製剤は、いずれも、安定剤、酸化防止剤、結合剤、着色剤、乳化剤または風味改良剤のような他の製薬上許容し得且つ無毒の賦形剤も含有し得る。製薬上許容し得る賦形剤および担体は、当業者には一般的に知られており、そのようにして、本発明に含ませる。そのような賦形剤および担体は、例えば、“Remingtons Pharmaceutical Sciences” Mack Pub. Co., New Jersey (1991) に記載されている;該文献は、その全体を参考として且つ本明細書で十分に説明するのと同様にすることを目的として本明細書に合体させる。
上記化合物は、経口、局所、非経口、直腸または経皮投与し得る。上記化合物は、有利には、適切な滅菌溶液の注入または静脈内輸注により、或いは消化管を介しての液体また固形投与量剤形で、或いは経皮投与に適するクリーム、軟膏、パッチまたは同様なビヒクルの剤形で投与する。ある実施態様においては、上記化合物の0.001μg〜約1mg/日の投与量が、治療目的において適切である。幾つかのそのような実施態様においては、適切且つ有効な投与量は、上記化合物の0.01μg〜1mg/日の範囲であり得る。他のそのような実施態様においては、適切且つ有効な投与量は、上記化合物の0.1μg〜500μg/日の範囲であり得る。そのような投与量は、当該技術において周知であるように、治療すべき疾患または症状のタイプ、疾患または症状の重篤度、および対象者の応答性に応じて調整されるであろう。上記化合物は、単独でまたは他の活性ビタミンD化合物と一緒に適切に投与し得る。
【0034】
本発明において使用する組成物は、単数または複数の活性成分としての有効量のGC-3および/またはHLV、および適切な担体を含む。本発明のある実施態様に従う使用における上記単数または複数の化合物の有効量は、一般に、本明細書において説明しているような投与量であり、局所、経皮、経口、経鼻、直腸または非経口投与し得る。
式1Aおよび式1Bの化合物は、有利には、前骨髄球の正常マクロファージへの分化を達成するのに十分な量で投与し得る。上述したような投与量が適しており、上記投与量は、当該技術において周知であるように、疾患の重篤度並びに対象者の状態および応答性に応じて調整し得ることを理解されたい。上述したように、式1Aおよび式1Bの化合物は、該2つの化合物の混合物として存在し得る。幾つかの混合物においては、上記混合物は、式1Aの化合物および式1Bの化合物を含み得る。ある実施態様においては、上記混合物は式1Aの化合物および式1Bの化合物を含み、式1Aの化合物対式1Bの化合物の比率は50:50〜99.9:0.1の範囲である。幾つかのそのような実施態様においては、式1Aの化合物対式1Bの化合物の比率は、70:30〜99.9:0.1、80:20〜99:9:0.1、90:10〜99.9:0.1または95:5〜99.9:0.1の範囲である。他の実施態様においては、上記混合物は式1Aの化合物および式1Bの化合物を含み、式1Bの化合物対式1Aの化合物の比率は、50:50〜99.9:0.1の範囲である。幾つかのそのような実施態様においては、式1Bの化合物対式1Aの化合物の比率は、70:30〜99.9:0.1、80:20〜99.9:0.1、90:10〜99.9:0.1または95:5〜99.9:0.1の範囲である。
【0035】
上記単数または複数の化合物は、クリーム剤、ローション剤、軟膏、エアゾール、座薬、局所パッチ、ピル剤、カプセル剤または錠剤として、或いは製薬上無毒性で且つ許容し得る溶媒またはオイル中の溶液、エマルジョン、分散剤または懸濁液のような液体剤形で調合し得、そのような製剤は、安定剤、酸化防止剤、乳化剤、着色剤、結合剤または風味改良剤のような他の製薬上無毒性のまたは有益な成分をさらに含み得る。
従って、本発明の製剤は、活性成分を、製薬上許容し得る担体および任意成分としての他の治療成分と一緒に含む。担体は、製剤の他の成分と適合性であり且つその受容者に対して有害でないという意味において“許容し得る”ものでなければならない。
経口投与に適する本発明の製剤は、カプセル剤、小包装剤(sachet)、錠剤またはトローチ剤のような個々の単位の剤形(各々が所定量の活性成分を含有する);粉末または顆粒剤形;水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液剤形;或いは水中油エマルジョンまたは油中水エマルジョン剤形であり得る。
直腸投与用の製剤は、活性成分とココアバターのような担体とを混入した座薬剤形、またはかん腸剤形であり得る。
非経口投与に適する製剤は、好都合には、好ましくは受容者の血液と等張性である上記活性成分の滅菌油性または水性調合物を含む。
局所投与に適する製剤は、塗布薬、ローション、アプリカント(applicant)類;クリーム、軟膏またはペーストのような水中油または油中水エマルジョン;或いは点滴剤またはスプレー剤のような溶液または懸濁液のような液状または半液状調合物を含む。
経鼻投与においては、粉末吸入;スプレー缶、ネブライザーまたはアトマイザーによって分配される自己推進またはスプレー製剤を使用し得る。各製剤は、分配するとき、好ましくは、10〜100ミクロンの範囲の粒度を有する。
上記各製剤は、好都合には、投与量単位剤形で提供し得、製薬技術において周知の任意の方法によって調製し得る。用語“投与量単位”とは、そのような活性成分またはその固形または液体の製薬用希釈剤または担体との混合物のいずれかを含む物理的にまた化学的に安定な単位投与量として患者に投与し得る単一の、即ち、単回投与量を意味する。
【0036】
本明細書において引用した全ての文献は、その全体を参考として且つ本明細書で十分に説明するのと同様にすることを目的として本明細書に合体させる。
本発明は、本明細書において例示として説明した実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲に属するそのような全ての態様を包含するものと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】[3H]-1,25-(OH)2-D3との結合において全長組換えラットビタミンDレセプターと拮抗するGC-3、HLVと1,25(OH)2D3の相対的活性を比較したグラフである。
【図2】GC-3、HLVおよび1,25(OH)2D3の濃度の関数として%HL-60細胞分化を比較したグラフである。
【図3】1,25(OH)2D3単独の生体外転写活性をGC-3と組合せた1,25(OH)2D3の生体外転写活性と比較したグラフである。
【図4】1,25(OH)2D3のみの生体外転写活性とHLVと組合せた1,25(OH)2D3の転写活性とを比較したグラフである。
【図5】HLV、GC-3および1,25(OH)2D3の生体外転写活性を比較したグラフである。
【図6】GC-3、HLVおよび1,25(OH)2D3の骨カルシウム動員活性を比較した棒グラフである。
【図7】GC-3、HLVおよび1,25(OH)2D3の腸カルシウム輸送活性を比較した棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式1A、1Bを有する化合物またはその混合物:
【化1】

(式中、X1およびX2は、個々に、Hおよびヒドロキシ保護基から選択される)。
【請求項2】
X1およびX2が、双方ともヒドロキシ保護基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
X1およびX2が、双方ともt-ブチルジメチルシリル基である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
X1およびX2が双方ともHであり、前記化合物が下記の式1A1または1B1を有する、請求項1記載の化合物。
【化2】

【請求項5】
有効量の請求項4記載の化合物および製薬上許容し得る担体を含む、製薬組成物。
【請求項6】
前記有効量が、組成物グラム当り約0.01μg〜約1mgの前記化合物を含む、請求項5記載の製薬組成物。
【請求項7】
前記有効量が、組成物のグラム当り約0.1μg〜約500μgの前記化合物を含む、請求項5記載の製薬組成物。
【請求項8】
X1およびX2が双方ともHであり、前記化合物が下記の式1A2または1B2を有する、請求項1記載の化合物。
【化3】

【請求項9】
有効量の請求項1、請求項4または請求項8記載の化合物またはこれら化合物の混合物或いは請求項1、請求項4または請求項8記載の化合物またはこれら化合物の混合物を含む製薬調合物を対象者に投与することを含む、生物学的障害を被っている対象者の治療方法。
【請求項10】
前記化合物、混合物または製薬調合物が、投与後の前記対象者において、ビタミンDレセプターと拮抗する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的障害が、喘息である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的障害が、湿疹である、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記化合物、混合物または製薬調合物を、前記対象者に、経口、非経口、直腸、経皮または局所投与する、請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記化合物、これら化合物の混合物または製薬調合物を、エアゾール中の前記化合物、これら化合物の混合物または製薬調合物を伝達させることによって投与する、請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記化合物、これら化合物の混合物を、0.01μg/日〜1mg/日の投与量で投与する、請求項9記載の方法。
【請求項16】
有効量の請求項1、請求項4または請求項8記載の化合物またはこれら化合物の混合物、或いは有効量の請求項1、請求項4または請求項8記載の化合物またはこれら化合物の混合物を含む製薬調合物を動物対象者に投与することを含む、高カルシウム血症、サルコイドーシスまたはビタミンD中毒を被っている動物対象者における高カルシウム血症、サルコイドーシスまたはビタミンD中毒の治療方法。
【請求項17】
前記化合物、これら化合物の混合物または製薬調合物を、吸入器またはネブライザーを使用して投与する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記化合物を、前記対象者に、経口、非経口、直腸、経皮または局所投与する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
請求項1、請求項4または請求項8記載の化合物の混合物が式1Aの化合物および式1Bの化合物を含み、式1Aの化合物対式1Bの化合物の比率が50:50〜99.9:0.1の範囲である、請求項1、請求項4または請求項8記載の化合物。
【請求項20】
式1Aの化合物対式1Bの化合物の比率が、70:30〜99.9:0.1の範囲である、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
請求項1、請求項4または請求項8記載の化合物の混合物が式1Aの化合物および式1Bの化合物を含み、式1Bの化合物対式1Aの化合物の比率が50:50〜99.9:0.1の範囲である、請求項1、請求項4または請求項8記載の化合物。
【請求項22】
式1Bの化合物対式1Aの化合物の比率が、70:30〜99.9:0.1の範囲である、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
ビタミンDレセプターとの拮抗用、喘息の治療用、湿疹の治療用、或いは高カルシウム血症、サルコイドーシスまたはビタミンD中毒の治療用の医薬品の製造における、請求項1、請求項4または請求項8記載の化合物または混合物の使用。
【請求項24】
ビタミンDレセプターとの拮抗、喘息の治療、湿疹の治療、或いは高カルシウム血症、サルコイドーシスまたはビタミンD中毒の治療における、請求項1、請求項4または請求項8記載の化合物または混合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−538214(P2008−538214A)
【公表日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504319(P2008−504319)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/011508
【国際公開番号】WO2006/105221
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(500517248)ウイスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション (18)
【Fターム(参考)】