説明

2つのアンテナまたはその同等物を使用してナビゲーションビーコン信号を検出するための方法

【課題】位置決定の正確さを向上させる、ナビゲーションビーコン信号を検出するための方法を提供する。
【解決手段】2つのアンテナ11,12または1つの合成開口アンテナのいずれかを使用し、干渉除去ビームを形成するために複数のアンテナ重み成分を使用して複数の別個の測定値を結合することによって、複数のナビゲーションビーコン信号21,22,23を検出する。一実施形態では、複数のアンテナ重み成分は、固有値処理によって決定される。他の実施形態では、複数のアンテナ重み成分は、簡略化された処理によって決定される。他の態様では、単一のアンテナが、最初に受信される測定値を受信するために使用される。最初に受信された測定値のコピーが作成され、空間ダイバーシティをエミュレートするために適切な時間遅延を達成するように処理される。最初に受信された測定値および処理されたコピーは、干渉除去ビームを形成するために結合される。

【発明の詳細な説明】
【優先権の主張】
【0001】
本出願は、2005年5月11日に出願された米国仮特許出願第60/680,454号に基づいて優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、位置決定のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
距離に基づく位置決定システムでは、複数のソースからのナビゲーション(navigation)ビーコン信号の時間遅延測定値が各ナビゲーションビーコン信号のソースに関連する距離情報に変換される。未知のユーザ位置を見いだすために既知の位置に関する様々なソースまでの距離が、たとえば三辺測量または多辺測量として知られている幾何学的技法によって結合される(combined)。ナビゲーションビーコン信号の遅延が(たとえば、ユーザクロックがネットワークに同期されていないシステムで)全然知られることができない場合、位置決定アルゴリズムは、追加の時間遅延測定値を使用して、三辺測量法によって見いだされるために、ユーザクロックの時間バイアスを別の未知のものとみなすこともある。
【0004】
位置決定の正確さを向上させるために、マルチプルの(multiple)ナビゲーションビーコン信号(すなわち信号ソース)を受信することが望ましい。しかし、多くの場合、より弱いビーコン信号(すなわちユーザ受信機からより遠く離れた信号)は、より強いナビゲーションビーコン信号によってマスクされる(masked)ので、検出不可能である(したがって、使用不可能である)。
【0005】
より弱いナビゲーションビーコン信号を捕捉しようとする場合、従来技法はユーザ受信機ごとに単一のアンテナを使用する。より弱いナビゲーションビーコン信号の検出は、より弱いナビゲーションビーコン信号の感度を上げるために増加された信号積分時間を使用することによって試みられる。
【0006】
したがって、2つのアンテナまたはその同等物を使用することによってナビゲーションビーコン信号を検出するための方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
2つのアンテナまたはその同等物を使用することによってナビゲーションビーコン信号を検出するための方法が開示される。
【0008】
一態様によれば、複数のナビゲーションビーコン信号を検出するための方法は、2つの別個の測定値を受信するために2つのアンテナを使用すること、および干渉除去ビームを形成するために2つのアンテナ重み成分を使用して2つの別個の測定値を結合することを具備する。一実施形態では、2つのアンテナ重み成分が固有値(eigenvalue)処理によって決定される。他の実施形態では、2つのアンテナ重み成分が簡略化された処理によって決定される。
【0009】
他の実施形態によれば、複数のナビゲーションビーコン信号を検出するための方法は、複数の別個の測定値を受信するために合成開口アンテナ(synthetic aperture)を使用すること、および干渉除去ビームを形成するために複数のアンテナ重み成分を使用して複数の別個の測定値を結合することを具備する。一実施形態では、複数のアンテナ重み成分が固有値処理によって決定される。他の実施形態では、複数のアンテナ重み成分が簡略化された処理によって決定される。
【0010】
一態様によれば、複数のナビゲーションビーコン信号を検出する方法は、最初に受信される測定値を受信するためにアンテナを使用すること、最初に受信された測定値のコピーを作成し、空間ダイバーシティをエミュレートするために時間遅延を一致させることによって最初に受信された測定値のコピーを処理して、最初に受信された測定値の処理されたコピーをもたらすこと、および干渉除去ビームを形成するために2つのアンテナ重み成分を使用して、最初に受信された測定値を最初に受信された測定値の処理されたコピーと結合することを具備する。一実施形態では、2つのアンテナ重み成分が固有値処理によって決定される。他の実施形態では、2つのアンテナ重み成分が簡略化された処理によって決定される。
【0011】
他の実施形態は、以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかになることが理解され、それは例として図示され説明されている様々な実施形態である。図面および詳細な説明は、本来例示的とみなされるべきであり、制限的とみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】複数のナビゲーションビーコン信号を検出するためのシステムを示す図である。
【図1b】複数のナビゲーションビーコン信号を検出するためのシステムを示す図である。
【図1c】複数のナビゲーションビーコン信号を検出するためのシステムを示す図である。
【図2a】複数のナビゲーションビーコン信号を検出するためのアルゴリズムの流れ図である。
【図2b】複数のナビゲーションビーコン信号を検出するためのアルゴリズムの流れ図である。
【図2c】複数のナビゲーションビーコン信号を検出するためのアルゴリズムの流れ図である。
【図3a】ユーザ受信機のブロック図である。
【図3b】ユーザ受信機のブロック図である。
【図4】チャネル7および8に関する検出されたPPMs(パイロット位相測定値)のヒストグラムである。チャネル7は単一ホイップアンテナを使用する場合である。
【図5】チャネル5ならびにチャネル2および3の結合セットに関する検出されたPPMs(パイロット位相測定値)のヒストグラムである。
【図6】調査されたチャネルの例示的サブセットに関する定点ごとのPPMs(パイロット位相測定値)の数の実験上のCDFを示すグラフである。
【図7】ICアルゴリズムだけに関する定点ごとのPPMs(パイロット位相測定値)の数をベースラインフォーマットの定点ごとのPPMsの数と比較するグラフである。
【図8】ISアルゴリズムおよびICアルゴリズムに関する定点ごとのPPMs(パイロット位相測定値)の数をベースラインフォーマットの定点ごとのPPMsの数と比較するグラフである。
【図9】REアルゴリズムおよびICアルゴリズムに関する定点ごとのPPMs(パイロット位相測定値)の数をベースラインフォーマットの定点ごとのPPMsの数と比較するグラフである。
【図10】REアルゴリズム、ISアルゴリズムおよびICアルゴリズムに関する定点ごとのPPMs(パイロット位相測定値)の数をベースラインフォーマットの定点ごとのPPMsの数と比較するグラフである。
【詳細な説明】
【0013】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、本発明の様々な実施形態の説明を意図するものであって、本発明が実施されることができる実施形態だけを示すことを意図するものではない。本開示に記載の各実施形態は、本発明の例または図としてのみ提供されるものであり、必ずしも他の実施形態より好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。本明細書は、本発明の完全な理解を提供するために具体的で詳細な説明を含む。しかし、本発明はこれらの具体的で詳細な説明がなくても実施されることができることが当業者には明らかであろう。いくつかの例では、本発明の概念を不明瞭にするのを避けるためによく知られている構造およびデバイスがブロック図形式で示されている。頭字語および他の記述的専門用語は、単に便宜のためにおよび明瞭にするためにのみ使用されることができ、本発明の範囲を限定するものではない。
【0014】
本発明は、2つのアンテナまたはその同等物を使用することによってナビゲーションビーコン信号を検出するための方法を開示する。2つのアンテナを使用することは、周囲の無線環境の2つの別個の測定値を受信するための空間ダイバーシティの形態を提供する。空間ダイバーシティは、位置の正確さおよび信頼性を改善するためにより多くのナビゲーションビーコン信号を受信する際に改善された感度を可能にする。2つの別個の測定値が、干渉除去(IC)アルゴリズムの代替形態によってより弱いナビゲーションビーコン信号の検出性を高めるようにユーザ受信機で処理される。本明細書では干渉除去アルゴリズムの2つの実施形態、すなわち固有値処理および簡略化された処理が開示される。本明細書では干渉除去アルゴリズムの2つの実施形態だけが開示されるが、干渉除去アルゴリズムの他の実施形態が本発明の範囲内で使用されることができることを当業者は知ることになるであろう。
【0015】
空間ダイバーシティを実現するためには、2つの物理的アンテナが必ずしも必要であるとは限らないことを当業者は知ることになるであろう。異なる時点に受信された測定値を、それらがあたかも同時に2つの別々のアンテナによって受信された2つの別個の測定値であるかのように捕捉する単一アンテナは、合成開口アンテナとして知られている。合成開口アンテナは、より強いナビゲーションビーコン信号によってマスクされる可能性があるナビゲーションビーコン信号を検出するために干渉除去アルゴリズムを用いて使用されることができる。
【0016】
また、仮想空間ダイバーシティの形態は1つの物理的アンテナを使用する連続除去(successive cancellation)によっても実現される。受信機はそのメモリ内に最も強い受信ナビゲーションビーコン信号のコピーを含む。このメモリは第2の仮想アンテナ、すなわち、雑音も、干渉も、または他のより弱いナビゲーションビーコン信号の存在もない最も強いナビゲーションビーコン信号だけを受信するアンテナとして働く。メモリ内のこのコピーは、適切に計算されたアンテナ重み成分によって最初に受信された測定値から減じられることができる。2番目に強いナビゲーションビーコン信号、3番目に強いナビゲーションビーコン信号などは、所望のレベルの感度のナビゲーションビーコン信号に達するようにこれと同様のやり方で除去されることができることを当業者は理解するであろう。
【0017】
図1a、1bおよび1cは、複数のナビゲーションビーコン信号を検出するシステムを示す。(地上、空中および/または宇宙のソースを含む)マルチプルの信号ソース31、32、33は、ナビゲーションビーコン信号21、22、23をユーザ受信機10に送信する。図1aでは、ユーザ受信機10は、ナビゲーションビーコン信号を受信するための2つの物理的アンテナ11、12を含む。図1bでは、合成開口アンテナ14が図1aに示されている2つの物理的アンテナに取って代わる。図1cでは、連続除去を使用する単一物理的アンテナ16が図1aに示されている2つの物理的アンテナに取って代わる。
【0018】
図2a、2bおよび2cは、複数のナビゲーションビーコン信号を検出するためのアルゴリズムの流れ図である。図2a、ステップ210に示されているように、2つの別個の測定値を受信するために2つのアンテナが使用される。ステップ220で、2つの別個の測定値が、干渉除去ビームを形成するために2つのアンテナ重み成分を使用して結合される。図2bでは、合成開口アンテナが使用される。ステップ240で、合成開口アンテナが複数の別個の測定値を受信する。ステップ250で、複数のアンテナ重み成分を使用して、複数の測定値が干渉除去ビームを形成するために結合される。図2cでは、1つのアンテナがナビゲーションビーコン信号を検出するために使用される。ステップ270で、1つのアンテナが最初に受信される測定値を受信する。ステップ280で、最初に受信された測定値のコピーが作成され、空間ダイバーシティをエミュレートするために時間遅延を一致させることにより処理されて、最初に受信された測定値の処理されたコピーをもたらす。ステップ290で、2つのアンテナ重み成分を使用して最初に受信された測定値および処理されたコピーが干渉除去ビームを形成する。
【0019】
図3aおよび3bは、ユーザ受信機10のブロック図である。相互にすべて電気的に結合されているアンテナシステム110、トランシーバシステム120、プロセッサ130およびコンピュータ可読媒体140を含むユーザ受信機10の第1実施形態が図3aに示されている。アンテナシステム110は、2つの物理的アンテナ、合成開口アンテナまたは連続除去を利用する単一アンテナを含むことができる。図3bは、アンテナシステム110およびトランシーバシステム120を含むユーザ受信機10の第2実施形態を示す。さらに、集積回路150は、アンテナシステム110およびトランシーバシステム120に電気的に結合されている。集積回路150は、プロセッサおよびメモリシステム、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、ASIC(特定用途向け集積回路)またはそれらの同等物を使用して実装されることもできることを当業者は理解するであろう。
【0020】
一実施形態では、干渉除去アルゴリズムは、代数固有値(algebraic eigenvalues)を使用して干渉除去のために最適のアンテナ重み成分wおよびwを決定する(「固有値処理」)。ここで、2つのアンテナまたはその同等物を有する移動体ユーザなどのユーザシステムのための固有値処理が説明される。アンテナ#1およびアンテナ#2に関するベースバンド複素(complex)電圧間の複素相関について考察する。複素相関(complex-correlation)は複素値行列(complex valued matrix)によって特徴付けられる:
【数1】

【0021】
式中、iおよびjはそれぞれ値1または2を取ることができ、IQデータ(時間,1)はアンテナ#1に関する複素電圧サンプルの時系列であり、IQデータ(時間,2)はアンテナ#2に関する複素電圧サンプルの時系列であり、N時間は合計の時間サンプルの合計数であり、sum_timeは全時間の複素合計であり、X’はXの複素共役を示す。ρ(1,1)、ρ(1,2)、ρ(2,1)、およびρ(2,2)は全部合わせて2X2相関行列ρを定義する。
【0022】
ρは、2つの固有ベクトルを有する2つの実数の、正の固有値を有する。2つのアンテナ(アンテナ#1およびアンテナ#2)からのIQストリームの「ビーム形成」組合せについて考察する:
【数2】

【0023】
したがって、wおよびwがρの正規直交固有ベクトルの成分である場合、IQデータC(時間)の平均エネルギーは、|w+|w=1という制約の下で最低値および最大値にある。すなわち、最低エネルギーは一方の固有ベクトルから選択されたwおよびwに関して生じ、最大値は他方の固有ベクトルから選択されたwおよびwに関して生じる。
【0024】
ビーム形成に関して線形結合について説明すると、一方の固有値がビームを(できるだけ)到来(incoming)無線エネルギーの方に向けるアンテナ重み成分を与え、他方の固有値がビームを(できるだけ)到来無線エネルギーから離れた方に向ける直交ビームを与える。低いほうの固有ベクトルは、小さいほうの固有値に対応する固有ビーム(eigenbeam)を表す。高いほうの固有ベクトルは大きいほうの固有値に対応する固有ビームを表す。高いほうの固有ベクトルは2つの単一アンテナ(別々にアンテナ#1およびアンテナ#2)のいずれかに非常に似ているように見える。
【0025】
表1は、ベースライン、干渉除去(IC)アルゴリズム(固有値処理を使用)、PNオフセットの探索残余リスト(RE)アルゴリズムおよび高感度パイロット探索(IS)アルゴリズムなど、様々なアルゴリズムの性能を分析するために使用される12組のデータを列挙する。ベースラインアルゴリズムでは、3072のチップコヒーレント積分があり、それらのうちの32が積分された合計98304(3PNロール(rolls))に関してインコヒーレントに合計されている。処理ソフトウェアがEc/Io>−33dBのフル探索閾値ごとに10−5誤警報レベルを計算する。(Ecはジュール単位のチップごとのエネルギーに等しく、Ioは1Hzあたりのワット単位の干渉雑音密度に等しい。)IS(高感度パイロット探索)アルゴリズムでは、98304のチップコヒーレント積分があり、フルドップラー探索を伴い、インコヒーレント合計を伴わない。処理ソフトウェアは、Ec/Io>−37dBのフル探索閾値ごとに10−5誤警報レベルを計算する。
【表1】

【0026】
ベースライン積分とIS積分は両方とも、80msまたは3PNロールのデータに対応する、同じ数のチップ、98304に関する。信号が(移動体ユーザが移動している場合)それでもなお発見されることができるように、長いコヒーレント積分によるドップラー探索が必要とされる。インコヒーレント対コヒーレントドップラー探索に関する信号対雑音比(SNR)の改善は理論的に約√32または7.5dBであるはずである。しかし、コヒーレント積分とインコヒーレント積分との間の様々な次数のχ統計値のため、コヒーレント積分の7.5dB効果は、非常に低い誤警報率でたった4dBまで低減される。
【0027】
高いほうの固有ベクトルは、合計のエネルギーを最大化するようなやり方でアンテナ電圧信号を追加する。対照的に、低いほうの固有ベクトルは、合計のエネルギーを最小化するようなやり方でアンテナ電圧信号を追加する。
【0028】
移動体ユーザが基地局に近い状況について考察する。基地局は、ここではナビゲーションビーコンとして使用されている。2つのアンテナ(アンテナ#1とアンテナ#2)の間の信号の相関は大きく、各アンテナで受信された優勢な近くの基地局ナビゲーションビーコン信号から生じる。高いほうの固有ベクトルは、2つのアンテナ(アンテナ#1およびアンテナ#2)を強いソースに向かってビーム形成する傾向がある。低いほうの固有ベクトルは、対照的に、ビームヌル(たとえばビーム最小)を強い信号ソースの方に向ける傾向がある。高いほうの固有ベクトルは、この組合せからのPPMs(パイロット位相測定値)が各個々のアンテナ(それぞれアンテナ#1およびアンテナ#2)で受信されるものに非常に似ているので、限界便益を有すると予期される。PPMsは、基地局が三辺測量システムでナビゲーションビーコンとして使用されることができるようにする基地局からの信号の時間遅延測定値を提供する。しかし、低いほうの固有ベクトルは、アンテナビームが優勢な近くの基地局ナビゲーションビーコン信号を最小化するように形成されるようにする。最適組合せによって部分的に除去されたこのナビゲーションビーコン信号によって、より弱いナビゲーションビーコン信号は、優勢な近くの基地局ナビゲーションビーコン信号と移動体ユーザから(ビーム形成の点で)同じ方向にない限り、サーチャで分解されることができる。
【0029】
チャネル5および10は、2つの固有ベクトルの解を(等しい雑音レベルに関して基準化した(scaling)後で)インコヒーレントに合計することにより形成される。これはSNRsを高めないはずである。しかし、非常に低い誤警報率では、χ統計値の次数を上げることによって、検出のより低い閾値が生じる可能性がある。
【0030】
図4は、チャネル7および8の検出されたPPMsのヒストグラムである。チャネル7は、単一ホイップアンテナの場合である。チャネル8(「干渉除去チャネル」)は、低いほうの固有ベクトルを使用する。チャネル7の単一ホイップアンテナは、チャネル7および8からのPPMsの結合(union)を含む合成チャネルを生成するために干渉除去の低いほうの固有ベクトルチャネル(チャネル8)と結合される。両方のチャネルが特定のPNオフセットでPPMを検出した場合、高いほうの値のEc/Ioを有するPPMだけが保持される。干渉除去チャネル(チャネル8)は、Ec/Io>−36dBに関する改善を有効に有しない。しかし、−36dBより下では、干渉除去チャネルは何百ものPPMsを追加する。干渉除去チャネル(チャネル8)によって追加されたPPMsは、隣接リストと残余リストとの間でほぼ等しく分配される。
【0031】
図5は、チャネル5ならびにチャネル2および3の結合セットに関する検出されたPPMsのヒストグラムである。図5は両方の固有ベクトル(チャネル5)に関するインコヒーレント合計を単一アンテナ(チャネル2)および低いほうの固有ベクトル「干渉除去」固有ベクトル(チャネル3)の組合せと比較する。両方の固有ベクトル(チャネル5)に関するインコヒーレント合計を形成する場合、最も強いEc/Io値がシフトダウンされるが、PPMsはそれでもなお含まれる。したがって、様々なチャネルの最適組合せをどのように得るかは、図5からは、はっきりとは明らかではない。表2は、合成合計チャネルを含めて、各チャネルに関するPPMsの合計数をまとめたものである。表2は、両方の固有ベクトル(チャネル5)に関するインコヒーレント合計と、単一アンテナ(チャネル2)および低いほうの固有ベクトル「干渉除去」固有ベクトル(チャネル3)の組合せとの間のPPMsの数における違いは事実上ないことを示す。表2に示されている例では、チャネル2の残余リストを追加することはPPMsを38%増加させる。
【表2】

【0032】
表3は様々なチャネルに関するチャネル2(インコヒーレント合計を使用する単一ホイップアンテナ)のPPMsの数の改善をまとめたものである。表3に示されているように、ベースラインとしてチャネル2で隣接リストだけを使用すると、チャネル7(単一ホイップアンテナでのコヒーレント+ドップラー)に関するPPMsの数の改善は15%である。隣接リストとは、セルラ電話が通信目的で探す基地局のリストのことを表す。残余リストは、電話機が通常は探索しないその他の基地局を表す。残余リストが含まれている場合、改善は25%である。さらに、表3に示されているように、チャネル2をベースラインとして、隣接リストだけを使用すると、チャネル5(2つのアンテナ)に関するPPMsの数の改善は19%である。残余リストが含まれる場合、改善は27%である。チャネル5の結果は、チャネル2+3の場合と同じである。表3に示されているように、チャネル2をベースラインとして、隣接リストだけを使用すると、チャネル7+8に関するPPMsの数の改善は33%である。残余リストが含まれる場合、改善は55%である。
【表3】

【0033】
表4は、様々なチャネルに関するチャネル7(長いコヒーレント+ドップラー探索の単一ホイップアンテナ)に関するPPMsの数の改善をまとめたものである。表4に示されているように、隣接リストだけを使用し、2つのアンテナ(チャネル7+8)を使用すると、PPMsの数の改善は16%である。残余リストが含まれる場合、改善は24%である。
【表4】

【0034】
図6は、調査された例示的サブセットのチャネルに関する定点ごとのPPMsの数の実験上のCDFを示す。表5は、調査された同じ例示的サブセットのチャネルに関する4以下のPPMsのCDFパーセンタイルをリストアップする。図5は、4以下のPPMsを有していた定点の20%の半分より多くが、REおよびISアルゴリズムの単一アンテナ特徴だけを使用して4PPMsより多くにシフトされることを示す。図5に示されているように、ISアルゴリズムだけは、より多くのPPMsを検出する際にREアルゴリズムだけを使用するのに比べて約2倍効果的である。さらに、ISアルゴリズムとREアルゴリズムを合わせたものはそれぞれ別々のものの合計より良い。表5からの顕著な特徴は、2アンテナ干渉除去(IC)アルゴリズムはそれだけで、単一アンテナを使用するその他の2つのアルゴリズム(REまたはIS)のいずれよりも効果的であることである。さらに表5に示されているように、ICアルゴリズムと組み合わされたREアルゴリズムはREアルゴリズムをISアルゴリズムと結合するより多くの改善を追加する。3つすべてのアルゴリズム(IC、REおよびIS)の組合せは、全体で93%の改善をもたらす。
【表5】

【0035】
PPMsの小さな数から始まる定点に関する定点ごとのPPMsの数の改善は、追加のPPMごとの最大の改善が、非常に少ないPPMsから始まっている場合に得られることが示されているので興味深い。全CDFにわたるプロットは、1つの変数(たとえば、何らかの改善下の定点ごとのPPMsの数)のCDFが、ベースラインフォーマットに関する定点ごとのPPMsの数など何らかの他の変数を条件にそこからプロットされることができるプロットである。図7〜10は、RSアルゴリズム、ISアルゴリズムまたはICアルゴリズムだけ、または様々な組合せに関する定点ごとのPPMsの数をベースラインフォーマットの定点ごとのPPMsの数と比較する。図7に示されているように、ICアルゴリズムは、低いPPM数の定点においても、定点ごとのPPMsの最大の改善を追加する。図8では、ICアルゴリズムとISアルゴリズムの両方が利用されている。図8に示されているように、ベースライン定点全体にわたって定点ごとのPPMsの数が非常に顕著に増大している。図9では、ICアルゴリズムとREアルゴリズムの両方が利用されている。定点ごとの低いPPMsでは、改善は約2〜3PPMsであるが、定点ごとの高いPPMsでは改善が増大している。図10では、ICアルゴリズム、REアルゴリズムおよびISアルゴリズムが利用されている。図10に示されているように、各定点に追加された平均の改善は約5〜6PPMsであり、より高いPPM数の定点において改善が増大している。2アンテナ干渉除去(IC)アルゴリズムは、低いPPM数の定点を50%より大きく改善する。ICアルゴリズムがREアルゴリズムおよびISアルゴリズムと組合せて追加された場合、改善は、表5に示されているように、93%である。
【0036】
干渉除去アルゴリズムの第2実施形態は、簡略化された処理を使用する。アンテナ重み成分は、最も強いナビゲーションビーコン信号を正確に除去するために各アンテナで受信された最も強いナビゲーションビーコン信号の測定値に基づいて選択される。aおよびaが2つのアンテナ(アンテナ#1およびアンテナ#2)のそれぞれでの最も強いナビゲーションビーコン信号の複素電圧とすると、その最も強いナビゲーションビーコン信号を除去するために、アンテナ重み成分wおよびwを、w=−aおよびw=aとなるように設定する。ここで、w*a+w*aはゼロに等しく、最も強いナビゲーションビーコン信号を除去する。マルチプルの強いナビゲーションビーコン信号がある場合、マルチプルの強いナビゲーションビーコン信号のうちのできるだけ多くを除去するように複素アンテナ重み成分を設定する。3つの強いナビゲーションビーコン信号を使用する例では、アンテナ#1によって受信された3つの強いナビゲーションビーコン信号の複素電圧がx、yおよびzであり、アンテナ#2によって受信された3つの強いナビゲーションビーコン信号の複素電圧がx、yおよびzであると仮定する。アンテナ#1での複素電圧の合計がS=x+y+zであり、アンテナ#2での複素電圧の合計がS=x+y+zであるとすると、アンテナ重み成分wおよびwは、他のより弱いナビゲーションビーコン信号がアンテナによって検出可能であるように適当なトレードオフで3つの強いナビゲーションビーコン信号を除去するためにw=−Sおよびw=Sに設定されるべきである。例ではアンテナ重み成分を計算するために特定の数式が示されているが、他の数式が本発明の範囲を侵害することなくアンテナ重み成分のために使用されることができることを当業者は理解するであろう。さらに、本発明は特定の数の強いナビゲーションビーコン信号だけを除去することに限定されないことを当業者は理解しているであろう。そうではなく、所望の数の強いナビゲーションビーコン信号を除去するためにアンテナ重み成分を複数の強いナビゲーションビーコン信号の複素電圧の合計に適用することが当業者には理解されているであろう。
【0037】
さらに、2つの物理的アンテナを有する必要はない。異なる時点に受信された測定値を、それらがあたかも同時に2つの別々のアンテナによって受信された2つの別個の測定値であるかのように捕捉する単一アンテナは、合成開口アンテナとして知られている。合成開口アンテナは、より強いナビゲーションビーコン信号によってマスクされる可能性のあるナビゲーションビーコン信号を検出するために干渉除去アルゴリズムを用いて使用されることができる。合成開口アンテナを使用する場合、異なる時点に1つの物理的アンテナによって受信されたナビゲーションビーコン信号は、あたかもそれらが同時に受信されたかのように結合されるので、2つの仮想アンテナ(仮想アンテナ#1および仮想アンテナ#2)があると仮定する。たとえば、仮想アンテナ#1は、時間tとt+dとの間に到着するパイロットバーストから成ることができ、一方仮想アンテナ#2は、しばらく後で--時間tとt+dとの間に到着するパイロットバーストから成ることができる。時間tおよびtは、整数のPNロールによって異なる。パイロットバーストは正確にPNロールごとに一度繰り返して起こるので、時間で整数のPNロールによって分離された2つのパイロットバーストからのナビゲーションビーコン信号は、空間で分離された2つのアンテナによって受信された同時のナビゲーションビーコン信号に似ている。2つの時間tおよびtが定義されると、(前述のように)2つの物理的アンテナの場合に適用可能なすべての組合せ処理が適用されることができる。
【0038】
さらに、1つの物理的アンテナを使用する「連続除去」の使用は、ナビゲーションビーコン信号を検出するために干渉除去アルゴリズムを用いて使用されることができる。ここで、受信機がナビゲーションビーコン信号のコピーを記憶する。受信機が非常に強く受信するナビゲーションビーコン信号では、記憶されたナビゲーションビーコン信号の時間遅延が、空間ダイバーシティをエミュレートするために実際に受信された強いナビゲーションビーコン信号の時間遅延に一致するように設定されている限り、受信機は記憶されたナビゲーションビーコン信号をあたかも第2「仮想アンテナ」から来たように扱うことができる。したがって、固有値または簡略化された処理のいずれかを使用して、強いナビゲーションビーコン信号が効果的に除去されることができ、したがって、マスクされたより弱いナビゲーションビーコン信号が受信されることができる。この「連続除去」技法の使用は、最も強いナビゲーションビーコン信号を除去し、次いで第2に強いナビゲーションビーコン信号を、次いで第3に強いナビゲーションビーコン信号を除去し、その他同様にして、より弱いナビゲーションビーコン信号に対する所望のレベルの感度が実現されるまで、成功裏に利用されることができることが当業者によって理解されるであろう。
【0039】
開示された諸実施形態の前述の説明は、本発明を当業者なら誰でも作成または使用することができるようにするために提供されている。これらの実施形態に対する様々な変更形態が当業者には容易に明らかになるであろうし、本明細書で定義された一般的原理は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の諸実施形態に適用されることができる。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナビゲーションビーコン信号を検出する方法であって、
2つの別個の測定値を受信するために2つのアンテナを使用すること、および
干渉除去ビームを形成するために2つのアンテナ重み成分を使用して前記2つの別個の測定値を結合すること
を具備する方法。
【請求項2】
前記2つのアンテナ重み成分は固有値処理によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つのアンテナ重み成分は簡略化された処理によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記2つのアンテナ重み成分のそれぞれは最も強いナビゲーションビーコン信号の複素電圧である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記2つのアンテナ重み成分のそれぞれは複数の最も強いナビゲーションビーコン信号の複素電圧の合計である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
複数のナビゲーションビーコン信号を検出するための方法であって、
複数の別個の測定値を受信するために合成開口アンテナを使用すること、および
干渉除去ビームを形成するために複数のアンテナ重み成分を使用して前記複数の別個の測定値を結合すること
を具備する方法。
【請求項7】
前記複数のアンテナ重み成分は固有値処理によって決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のアンテナ重み成分は簡略化された処理によって決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のアンテナ重み成分のそれぞれは最も強いナビゲーションビーコン信号の複素電圧である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のアンテナ重み成分のそれぞれは複数の最も強いナビゲーションビーコン信号の複素電圧の合計である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
複数のナビゲーションビーコン信号を検出するための方法であって、
最初に受信される測定値を受信するためにアンテナを使用すること、
前記最初に受信された測定値のコピーを作成し、空間ダイバーシティをエミュレートするために時間遅延を一致させることによって前記最初に受信された測定値の前記コピーを処理して、処理されたコピーをもたらすこと、および
干渉除去ビームを形成するために2つのアンテナ重み成分を使用して前記最初に受信された測定値を前記処理されたコピーと結合すること
を具備する方法。
【請求項12】
前記2つのアンテナ重み成分は固有値処理によって決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記2つのアンテナ重み成分は簡略化された処理によって決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記2つのアンテナ重み成分のそれぞれは最も強いナビゲーションビーコン信号の複素電圧である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記2つのアンテナ重み成分のそれぞれは複数の最も強いナビゲーションビーコン信号の複素電圧の合計である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
複数のナビゲーションビーコン信号を検出するための方法を実施するためにコンピュータプログラムによって実行可能な命令のプログラムを組入れたコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
2つの別個の測定値を受信するために2つのアンテナを使用すること、および
干渉除去ビームを形成するために2つのアンテナ重み成分を使用して前記2つの別個の測定値を結合すること
を具備する、コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
複数のナビゲーションビーコン信号を検出するための方法を実施するためにコンピュータプログラムによって実行可能な命令のプログラムを組入れたコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
複数の別個の測定値を受信するために合成開口アンテナを使用すること、および
干渉除去ビームを形成するために複数のアンテナ重み成分を使用して前記複数の別個の測定値を結合すること
を具備する、コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
複数のナビゲーションビーコン信号を検出するための方法を実施するためにコンピュータプログラムによって実行可能な命令のプログラムを組入れたコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
最初に受信される測定値を受信するためにアンテナを使用すること、
前記最初に受信された測定値のコピーを作成し、空間ダイバーシティをエミュレートするために時間遅延を一致させることによって前記最初に受信された測定値の前記コピーを処理して、処理されたコピーをもたらすこと、および
干渉除去ビームを形成するために2つのアンテナ重み成分を使用して前記最初に受信された測定値を前記処理されたコピーと結合すること
を具備する、コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
複数のナビゲーションビーコン信号を検出するための方法を実施するための集積回路であって、前記方法は、
2つの別個の測定値を受信するために2つのアンテナを使用すること、および
干渉除去ビームを形成するために2つのアンテナ重み成分を使用して前記2つの別個の測定値を結合すること
を具備する、集積回路。
【請求項20】
複数のナビゲーションビーコン信号を検出するための方法を実施するための集積回路であって、前記方法は、
複数の別個の測定値を受信するために合成開口アンテナを使用すること、
干渉除去ビームを形成するために複数のアンテナ重み成分を使用して前記複数の別個の測定値を結合すること
を具備する、集積回路。
【請求項21】
複数のナビゲーションビーコン信号を検出するための方法を実施するための集積回路であって、前記方法は、
最初に受信される測定値を受信するためにアンテナを使用すること、
前記最初に受信された測定値のコピーを作成し、空間ダイバーシティをエミュレートするために時間遅延を一致させることによって前記最初に受信された測定値の前記コピーを処理して、処理されたコピーをもたらすこと、および
干渉除去ビームを形成するために2つのアンテナ重み成分を使用して前記最初に受信された測定値を前記処理されたコピーと結合すること
を具備する、集積回路。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−47684(P2013−47684A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−219358(P2012−219358)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2008−511447(P2008−511447)の分割
【原出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】