説明

2ウェイ型物置きラック

【課題】製造が容易で寸法や精度管理がラフなもので済み、また使用に際しては脱落の虞がなく、しかも少ない部品点数で載置物の大きさや重量に応じて2通りの使用形態がとれる、2ウェイ型物置きラックを安価に提供する。
【解決手段】2ウェイ型物置きラック1を、取付けレール2とこれに吊持される断面L字形のラック本体3とで構成する。取付けレール2の下面中央に長手方向の差し込み溝7を開設し、その両側に受け片2c,2cを対向して設ける。ラック本体3の2つの辺片3a,3bの幅を異ならしめ、辺片3a,3bの外側部にそれぞれ係合部3cを設ける。係合部3cのいずれかを受け片2c,2cに係着することにより、辺片3a,3bを選択的に物品載置用の棚板として水平に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅やマンション,オフィス等の建築物,受付カウンターやベッド等の構築物の壁面に片持ちで取付けされ、身の回り品や生活雑貨等の置物を載置するのに用いる物置きラックに係り、詳しくは置物の種類や使用目的に応じて幅の異なる2種類の棚板を選択的に用いることのできる2ウェイ型物置きラックに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅やオフィス等の建築物の壁面に片持ちで取付けされる物置きラックとして、例えば、棚板と棚板取付具とからなり、該棚板取付具は棚板を片持ち状に支持すべく一端縁が嵌入される嵌合溝部を長手方向に連続して備えた型材よりなり、前記嵌合溝部は、建物等の壁面に固定具を介して取付けられる取付壁と、該取付壁の下端に設けられた下支持部と、前記取付壁の上端に設けられた上支持部とから形成され、該上支持部は、一側方に僅かに下降する傾斜状に延設され、棚板の上面側と当接する上支持面と、該上支持面の延設端より壁面に当後すべく壁面方向に上向傾斜状に延設された上支持壁とからなり、前記下支持部は、前記上支持面より長く略水平方向に延設され、前記棚板の下面側を支持する下支持面と、壁面に沿って下方に延設された壁当接面と、該壁当接面と下支持面との両端を互いに連結する下支持壁とからなる三角形筒状に形成され、前記下支持面には長手方向に沿って技止め用のかえり突条が設けられると共に、その延設端に長手方向に沿って上方に突出する支持突条が設けられ、さらに上支持面延設端の下方と対応する下支持面に、下方に膨出する弧状の棚板嵌入ガイド部が形成された構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−31445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の物置きラックに用いる棚板取付具は、アルミ等の押出型材を適宜長さに切断して使用されるが、押出型材の断面形状は複雑であって、棚板取付具が所定厚さの棚板を上下から精度よく挟むためには、押出型材の成形型である押出しダイスの製作と精度管理がむずかしいという欠点がある。
【0005】
また、成形された棚板取付具の上支持部と下支持部と間に棚板が差し込まれるが、棚板取付具の上支持部と下支持部には、棚板と載置物から常時開き方向の荷重が作用することから上支持部と下支持部間の間隔が緩んで棚板が抜けやすくなり、これを回避しようと上下支持部間の間隔を狭くしておくと棚板の差し込みが困難になるという問題がある。さらに、規定の棚板よりも大きな置物を載置したい場合には、別途に幅広な棚板を用意しなければならないから、部品点数の増加や部品管理並びに経済性の観点から不利である。
【0006】
本発明は、かかる実情を背景にしてなされたもので、その目的とするところは、製造が容易で寸法や精度管理がラフなもので済み、また使用に際しては脱落の虞がなく、しかも少ない部品点数で載置物の大きさや重量に応じて2通りの使用形態がとれる2ウェイ型物置きラックを安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明の2ウェイ型物置きラックは、建築物の壁面に固定される取付けレールと、該取付けレールに吊持される断面L字形のラック本体とを備え、前記取付けレールの下面中央に長手方向の差し込み溝を開設し、該差し込み溝の両側に一対の受け片を対向して設け、前記ラック本体の2つの辺片の幅を異ならしめるとともに、各辺片の外側部に係合部を設け、これら係合部のいずれかを前記一対の受け片に係着することにより、前記2つの辺片を選択的に物品載置用の棚板として水平に配置することを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の2ウェイ型物置きラックは、前記一対の辺片に設けられる各係合部が、それぞれの辺片の外側縁から互いに他方の辺片と平行に突出し、前記差し込み溝を通過して前記一対の受け片の一方の上面に係合する第1突片と、該第1突片から前記受け片の厚みと同等の間隔を置いて前記それぞれの辺片から前記第1突片と反対方向へ突出し、前記一対の受け片の他方の下面に係合する第2突片とからなることを特徴としている。
【0009】
本発明の2ウェイ型物置きラックは、住宅やマンション,オフィス等の建築物の壁面やパーテーション等に取付けレールが固定される。取付けレールはさらに、ベッドのヘッドボードやフットボード,受付カウンター,机等の構築物の脇に設置してもよく、あるいはサッシの室内側の下枠に設置したり、サッシの室内側の下枠自体を本発明の取付けレールとすることもできる。
【0010】
取付けレールとラック本体は、アルミ合金や合成樹脂等による押出型材を所要長さに切断したり、細長い鋼板を折曲して形成される。ラック本体の係合部は、ラック本体に沿って長く設けてもよく、あるいは短い形状のものを所定間隔で複数設けてもよい。
【0011】
ラック本体は、2つの係合部のいずれかを取付けレールの一対の受け片に係着することにより、係合部を受け片に係着した側の辺片が吊下げ片として垂下され、他の側の辺片が物品載置用の棚板として水平に配置される。また、棚板として使用していた側の辺片の係合部を取付けレールの一対の受け片に係着することにより、幅の異なる他方の辺片が物品載置用の棚板となる。
【0012】
ラック本体はこのように、取付けレールを用いてL字状に片持ちで吊り下げられ、水平に配置されるいずれか一方の辺片を棚板として使用する。ラック本体の2つの辺片は、幅広と幅狭に形成されていることから、2種類の棚板として使用目的に応じて使い分ける。棚板に載置する置物としては、比較的軽量で且つあまり嵩張らない、例えば腕時計やメガネ,財布,定期入れ,宝飾類等の身の回り品、写真立てや卓上カレンダー,花瓶,文房具類等の生活雑貨が適当である。
【0013】
また、ラック本体の2つの辺片に設けられる係合部のそれぞれを、辺片外縁の第1突片と、この第1突片から取付けレールの一対の受け片の厚み分を置いて第1突片とは逆方向へ突出する第2突片とで形成し、いずれか一方の第1突片を取付けレールの差し込み溝に差し込んで、第1突片を一対の受け片の一方の上面に係合させ、さらに第2突片を一対の受け片の他方の下面に係合させることにより、ラック本体が取付けレールに片持ちで吊持される。
【0014】
このように吊持されたラック本体は、吊下げ側の辺片が鉛直方向に、棚板側の辺片が水平方向にそれぞれ配置される。またラック本体には、吊下げ側の辺片の下端一側部に偏倚する棚板側の辺片の荷重がモーメントとして作用し、第1,第2突片と一対の受け片とを圧着させる。さらに、棚板に置物を載置した場合には上述のモーメントに置物の重量が加わり、ラック本体の取付け状態をより安定させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の2ウェイ型物置きラックによれば、少ない部品点数で載置物の大きさや重量に応じた2通りの使用形態がとれるので利便性に優れる。また、製造が容易で寸法や精度管理がラフなもので済み、2ウェイ型物置きラックを安価に提供することができる。さらに使用に際してはラック本体に脱落の虞がなく、安定した使用が可能である。
【0016】
また、ラック本体の辺片に設定される係合部のそれぞれを、辺片外縁の第1突片と、この第1突片から一対の受け片の厚み分を置いて第1突片とは逆方向へ突出する第2突片とで形成することにより、取付けレールに対してラック本体を着脱する際に第1,第2突片の抜き差しを簡便に行うことができ、しかもラック本体を取付けレールに装着した際には、ラック本体の取付け状態をよく保つことができる。また、第1突片を辺片の長手方向に沿って設定した場合には、棚板側の辺片の外縁に第1突片が上向きに突出して脱落防止用のエッジと利用できるので、使用性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一形態例を示す幅狭な辺片を棚板として用いた場合の2ウェイ型物置きラックの断面正面図である。
【図2】本発明の一形態例を示す幅広な辺片を棚板として用いた場合の2ウェイ型物置きラックの断面正面図である。
【図3】本発明の一形態例を示すラック本体の取付け部分の拡大断面正面図である。
【図4】本発明の一形態例を示す2ウェイ型物置きラックの2種類の使用形態を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図4に示す本形態例の2ウェイ型物置きラック1は、建築物や構築物の壁面Wに複数のブラケット4及びタッピングねじ5を用いて固定される取付けレール2と、該取付けレール2に着脱自在に吊持されるラック本体3とからなっている。取付けレール2とラック本体3には、アルミ合金や合成樹脂等による押出型材を所要長さに切断したものや、細長い鋼板を折曲したものが用いられる。
【0019】
各ブラケット4は、壁面Wに密着させた本体プレート4aにタッピングねじ5を挿通し、該タッピングねじ5を壁面Wにねじ込んで固定されるもので、本体プレート4aの両端に連続する側板4b(一方は図示せず)の上下には、それぞれ係止凹部6,6が設けられている。
【0020】
前記取付けレール2は、断面略下向きコ字状のレール本体2aの上部に、断面略横向きコ字状の取付け体2bが一体形成されており、レール本体2aの下面中央には、後述するラック本体3の第1突片3dの厚みよりも幅広な差し込み溝7が長手方向に開設され、該開口4の両側に一対の受け片2c,2cが対向して設けられている。
【0021】
取付け体2bの開口部上下には、爪片2d,2dが長手方向に対向して位置しており、取付けレール2は、この爪片2d,2dを壁面Wに固定されたブラケット4の係止凹部6,6に差し込み、複数のブラケット4の側板4bを爪片2d,2dで上下から挟持することにより取り付けられる。
【0022】
前記ラック本体3は、L字形に連なる2つ辺片3a,3bの幅を1:1.7程度に異ならせており、辺片3a,3bの外側部にはそれぞれ係合部3cが設けられている。辺片3a,3bの係合部3cは、自身の辺片の外縁から互いに他方の辺片と平行に突出する第1突片3dと、該第1突片3dから取付けレール2の受け片2c,2cの厚みtと同等の間隔を置いて第1突片3dと反対方向へ突出する第2突片3eとよりなり、さらに第1突片3dは第2突片3eよりも突出量が大きく且つ厚みを持たせたものとなっている。
【0023】
各係合部3cの第1,第2突片3d,3eは、ラック本体3の長手方向全長に亘って設けられており、辺片3a,3bのいずれか一方の係合部3cの第1突片3dを取付けレール2の差し込み溝7よりレール本体2aの内部に差し込み、さらにこの第1突片3dを壁面Wと反対側の受け片2cの上面に係合させ、一方の側の第2突片3eを壁面W側の受け片2cの下面に係合させることにより、ラック本体3が取付けレール2に片持ちで吊持される。
【0024】
このように吊持されたラック本体3は、吊下げ側の辺片が鉛直方向に配置され、棚板側の辺片が水平方向に配置される。図1と図4の左側は、幅狭な辺片3aを棚板として使用し、幅広の辺片3bを吊下げ片とした事例を示している。図2と図4の右側はこれとは逆に、幅広の辺片3bを棚板として使用し、幅狭な辺片3aを吊下げ片とした事例を示している。
【0025】
またラック本体3には、吊下げ側の辺片の下端一側部に偏倚する棚板側の辺片の荷重がモーメントとして作用し、第1,第2突片3d,3eと一対の受け片2c,2cとを圧着させるのに役立つ。さらに、棚板に置物を載置した場合には上述のモーメントに置物の重量が加わり、ラック本体3の取付け状態をより安定させる。
【0026】
本形態例の2ウェイ型物置きラック1は、以上のように構成されており、少ない部品点数でありながら置物の大きさや重量に応じた2通りの使用形態を簡便にとれるので、利便性に優れている。また、図1と図4の左側の事例では、棚板として用いた幅狭な辺片3aの外側縁に上向きに位置する第1突片3dが、置物の脱落を防止するエッジとして利用でき、図2図4の右側の事例でも同様に、棚板として用いた幅広な辺片3bの第1突片3dが、エッジとして置物の脱落を有効に防止する。
【0027】
なお、上述の形態例では取付けレールの固定にブラケットを用いたが、本発明はブラケットを省略して、取付けレールを建築物や構築物の壁面に直接固定してもよい。また、ラック本体の辺片に設定される係合部は、吊下げレールからラック本体を吊持できればよく、必ずしも上述の形態例に示した形状のみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0028】
1…2ウェイ型物置きラック
2…取付けレール
2a…レール本体
2b…取付け体
2c…受け片
2d…爪片
3…ラック本体
3a…幅狭の辺片
3b…幅広の辺片
3c…係合部
3d…第1突片
3e…第2突片
4…ブラケット
5…タッピングねじ
6…係止凹部
7…差し込み溝
W…壁面
t…受け片2cの厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁面に固定される取付けレールと、該取付けレールに吊持される断面L字形のラック本体とを備え、
前記取付けレールの下面中央に長手方向の差し込み溝を開設し、該差し込み溝の両側に一対の受け片を対向して設け、前記ラック本体の2つの辺片の幅を異ならしめるとともに、各辺片の外側部に係合部を設け、
これら係合部のいずれかを前記一対の受け片に係着することにより、前記2つの辺片を選択的に物品載置用の棚板として水平に配置する
ことを特徴とする2ウェイ型物置きラック。
【請求項2】
前記各係合部は、それぞれの辺片の外側縁から互いに他方の辺片と平行に突出し、前記差し込み溝を通過して前記一対の受け片の一方の上面に係合する第1突片と、
該第1突片から前記受け片の厚みと同等の間隔を置いて前記それぞれの辺片から前記第1突片と反対方向へ突出し、前記一対の受け片の他方の下面に係合する第2突片とからなる
ことを特徴とする請求項1に記載の2ウェイ型物置きラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−120726(P2011−120726A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280620(P2009−280620)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(397022715)フェデポリマーブル株式会社 (7)
【Fターム(参考)】