説明

2バンド発振器

【課題】1つの接地用コンデンサを用いて2つの発振回路の発振トランジスタの接地を行なうとともに各発振周波数帯でインピーダンスを低くすることのできる2バンド発振器を提供すること。
【解決手段】第1の周波数帯で発振する第1の発振トランジスタと、前記第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯で発振する第2の発振トランジスタと、一端が前記第2の発振トランジスタの高周波的接地端子に接続され、他端が接地電極に接続される接地用コンデンサと、一端が前記第1の発振トランジスタの高周波的接地端子に接続され、他端が前記接地用コンデンサの一端に接続されるインダクタとを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの発振回路からなり、互いに異なる周波数帯で発振する2バンド発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの周波数帯でそれぞれ発振する従来の2バンド発振器の回路を図2に示す。第1発振回路41はコレクタ接地型の第1の発振トランジスタ42を有し、エミッタはバイアス抵抗43によってグランドに接続される。ベースには第1のスイッチトランジスタ44からバイアス電圧が印加される。また、ベースとグランドとの間には共振用の第1のインダクタ45と第1のバラクタダイオード46とからなる並列共振回路が設けられる。さらに、ベース・エミッタ間およびエミッタ・グランド間にはそれぞれ帰還コンデンサ47、48が接続され、エミッタから発振信号が出力される。
【0003】
また、第2発振回路51はコレクタ接地型の第2の発振トランジスタ52を有し、エミッタはバイアス抵抗53によってグランドに接続される。ベースには第2のスイッチトランジスタ54からバイアス電圧が印加される。また、ベースとグランドとの間には共振用の第2のインダクタ55と第2のバラクタダイオード56とからなる並列共振回路が設けられる。さらに、ベース・エミッタ間およびエミッタ・グランド間にはそれぞれ帰還コンデンサ57、58が接続され、エミッタから発振信号が出力される。
【0004】
そして、第1のスイッチトランジスタ44と第2のスイッチトランジスタ54との各ベースには一方をオンとし、他方をオフとするための切替電圧が印加されるので、第1の発振回路41または第2の発振回路51のいずれか一方が発振動作となり、発振周波数は第1および第2のバラクタダイオード46、56の各カソードに印加される制御電圧を変えることによって変えられる。
【0005】
このように形成されている2バンド発振器においては、2つの発振トランジスタ42、52の端子を高周波的に接地するための接地用コンデンサ49、59をそれぞれ設けていた。具体的には、各発振トランジスタ42、52のコレクタ側の端子からなる高周波的接地端子に各接地用コンデンサ49、59の一端を接続し、他端を接地電極に接続している。各接地用コンデンサ49、59は、図3に示すように容量成分以外にも直列にインダクタ成分を持っているため、各接地用コンデンサ49、59の容量成分とインダクタ成分とが直列共振する周波数で高周波的にインピーダンスが0となる。この周波数を接地用コンデンサの自己共振周波数といい、2バンド発振器においては、自己共振周波数がそれぞれの発振周波数の中心値と一致する接地用コンデンサ49、59を用いていた。図2の例においては、第1の発振回路41の発振周波数より第2の発振回路51の発振周波数を高く設定している。
【0006】
【特許文献1】特開2002−261543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の2バンド発振器においては、2つの発振回路41、51の発振トランジスタ42、52の接地用コンデンサとして、発振周波数帯でインピーダンスが低くなるように、各発振回路41、51毎にそれぞれ接地用コンデンサ49、59設けていた。
【0008】
しかしながら2バンド発振器に対する小型化の要請により、接地用コンデンサを2個設けるスペースがなくなり、1つの接地用コンデンサにより2つの発振回路に対応することが要望された。ところが、従来においてはこの要望を満たす2バンド発振器は存在しなかった。
【0009】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、1つの接地用コンデンサを用いて2つの発振回路の発振トランジスタの接地を行なうとともに各発振周波数帯でインピーダンスを低くすることのできる2バンド発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係る2バンド発振器は、第1の周波数帯で発振する第1の発振トランジスタと、前記第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯で発振する第2の発振トランジスタと、一端が前記第2の発振トランジスタの高周波的接地端子に接続され、他端が接地電極に接続される接地用コンデンサと、一端が前記第1の発振トランジスタの高周波的接地端子に接続され、他端が前記接地用コンデンサの一端に接続されるインダクタとを備え、前記接地用コンデンサは、容量成分と、当該容量成分と直列に接続されるインダクタ成分とを有しているとともに当該容量成分およびインダクタ成分とが前記第2の周波数帯で直列共振するように形成されており、前記インダクタのインダクタンスと前記接地用コンデンサの前記容量成分および前記インダクタ成分とが前記第1の周波数帯で直列共振するように前記インダクタが形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の2バンド発振器によれば、1つの接地用コンデンサにより2つの発振回路の各発振トランジスタを、それぞれの発振周波数帯でインピーダンスを低くするようにして接地することができ、2バンド発振器の小型化を図ることができる。
【0012】
また、本発明に係る2バンド発振器は、前記インダクタがストリップラインで形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の2バンド発振器によれば、ストリップラインは回路の配線パターンを利用して形成されるので、インダクタの小型化を図ることができ、2バンド発振器自身の更なる小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、本発明に係る2バンド発振器によれば、1つの接地用コンデンサを用いて2つの発振回路の発振トランジスタの接地を行なうとともに各発振周波数帯でインピーダンスを低くすることができる等の優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る2バンド発振器の実施形態を図1を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明の2バンド発振器の1実施形態を示す回路図である。
【0017】
本実施形態においては、第1発振回路11はコレクタ接地型の第1の発振トランジスタ12を有し、エミッタはバイアス抵抗13によってグランドに接続される。ベースには第1のスイッチトランジスタ14からバイアス電圧が印加される。また、ベースとグランドとの間には共振用の第1のインダクタ15と第1のバラクタダイオード16とからなる並列共振回路が設けられる。さらに、ベース・エミッタ間およびエミッタ・グランド間にはそれぞれ帰還コンデンサ17、18が接続され、エミッタから発振信号が出力される。
【0018】
また、第2発振回路21はコレクタ接地型の第2の発振トランジスタ22を有し、エミッタはバイアス抵抗23によってグランドに接続される。ベースには第2のスイッチトランジスタ24からバイアス電圧が印加される。また、ベースとグランドとの間には共振用の第2のインダクタ25と第2のバラクタダイオード26とからなる並列共振回路が設けられる。さらに、ベース・エミッタ間およびエミッタ・グランド間にはそれぞれ帰還コンデンサ27、28が接続され、エミッタから発振信号が出力される。
【0019】
そして、第1のスイッチトランジスタ14と第2のスイッチトランジスタ24との各ベースには一方をオンとし、他方をオフとするための切替電圧が印加されるので、第1の発振回路11または第2の発振回路52のいずれか一方が発振動作となり、発振周波数は第1および第2のバラクタダイオード16、26の各カソードに印加される制御電圧を変えることによって変えられる。
【0020】
このように形成されている本実施形態の2バンド発振器においては、第1の発振回路11の発振周波数より第2の発振回路21の発振周波数を高く設定している。
【0021】
更に、本実施形態においては、2つの発振トランジスタ12、22の端子を高周波的に接地するために、発振周波数が高く設定されている第2の発振回路21の発振トランジスタ22のコレクタ側の端子からなる高周波的接地端子に接地用コンデンサ29の一端を接続し、他端を接地電極に接続し、発振周波数が低く設定されている第1の発振回路11の発振トランジスタ12のコレクタ側の端子からなる高周波的接地端子にインダクタ19の一端を接続し、他端を接地用コンデンサ29に接続している。このインダクタ19はストリップラインによって形成するとよい。
【0022】
そして、接地用コンデンサ29は、容量成分と、当該容量成分と直列に接続されるインダクタ成分とを有しているとともに当該容量成分およびインダクタ成分とが高く設定されている第2の周波数帯で直列共振するように形成されている。また、インダクタ19のインダクタンスと接地用コンデンサ29の容量成分およびインダクタ成分とによって低く設定されている第1の周波数帯で直列共振するようにインダクタ19が形成されている
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0023】
本実施形態の2バンド発振器においては、第1のスイッチトランジスタ14と第2のスイッチトランジスタ24との各ベースに対して一方をオンとし、他方をオフとするための切替電圧が印加されて、第1の発振回路11または第2の発振回路22のいずれか一方が発振動作を行なう。本実施形態においては、第1および第2のバラクタダイオード16、26の各カソードに印加される制御電圧を変えることによって、第1の発振回路11は低い発振周波数をもって発振し、第2の発振回路21は高い発振周波数をもって発振する。
【0024】
同時に、一方の第1の発振回路11の発振トランジスタ12は、インダクタ19と接地用コンデンサ29とが、インダクタ19のインダクタンスと接地用コンデンサ29の容量成分およびインダクタ成分とによって設定されている低い第1の周波数帯で直列共振することによって、高周波的に接地される。他方の第2の発振回路21の発振トランジスタ22は、接地用コンデンサ19が、自己の容量成分と、当該容量成分と直列に接続されるインダクタ成分とによって設定されている高い第2の周波数帯で直列共振することによって、高周波的に接地される。
【0025】
従って、本実施形態の2バンド発振器によれば、1つの接地用コンデンサ29により2つの発振回路11、21の各発振トランジスタ12、22を、それぞれの発振周波数帯でインピーダンスを低くするようにして接地することができ、2バンド発振器の小型化を図ることができる。
【0026】
更に、インダクタ19をストリップラインによって形成することにより、当該インダクタ19が回路の配線パターンを利用して形成されるので、インダクタ19の小型化を図ることができるとともに、2バンド発振器自身の更なる小型化を図ることができる。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0028】
例えば、発振信号はエミッタから出力されるとしたが、コレクタから出力しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る2バンド発振器の1実施形態を示す回路図
【図2】従来の2バンド発振器の1例を示す回路図
【図3】一般的なコンデンサの等価回路
【符号の説明】
【0030】
11、21 第1および第2の発振回路
12、22 第1および第2の発振トランジスタ
19 インダクタ
29 接地用コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯で発振する第1の発振トランジスタと、
前記第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯で発振する第2の発振トランジスタと、
一端が前記第2の発振トランジスタの高周波的接地端子に接続され、他端が接地電極に接続される接地用コンデンサと、
一端が前記第1の発振トランジスタの高周波的接地端子に接続され、他端が前記接地用コンデンサの一端に接続されるインダクタと
を備え、
前記接地用コンデンサは、容量成分と、当該容量成分と直列に接続されるインダクタ成分とを有しているとともに当該容量成分およびインダクタ成分とが前記第2の周波数帯で直列共振するように形成されており、
前記インダクタのインダクタンスと前記接地用コンデンサの前記容量成分および前記インダクタ成分とが前記第1の周波数帯で直列共振するように前記インダクタが形成されている
ことを特徴とする2バンド発振器。
【請求項2】
前記インダクタはストリップラインで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の2バンド発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−61098(P2008−61098A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237846(P2006−237846)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】