説明

2光子記録方法、2光子吸収記録材料、2光子吸収記録再生方法、光記録媒体、光記録再生方法、3次元ボリュームディスプレイ及び該ボリュームディスプレイの製造方法

【課題】2光子吸収を利用して屈折率変調、吸収率変調または発光強度変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその反射率、透過率または発光強度の違いを検出することにより再生する2光子記録方法及び再生方法、さらにそのような記録再生が可能な2光子吸収記録材料を提供する。特に高感度で保存性に優れた2光子吸収記録再生方法及び2光子吸収記録材料を提供する。さらに、それらを用いた2光子吸収3次元光記録材料及び2光子吸収3次元光記録方法及び再生方法を提供する。
【解決手段】2光子吸収により2光子吸収記録材料に潜像を形成する第一の工程と、潜像が形成された2光子吸収記録材料に熱処理を施し、潜像に従い屈折率、吸収率または発光強度を変調して記録する第二の工程と、熱処理後の2光子吸収記録材料をさらに全面光照射して形成した記録を定着する第三の工程と、を含み、記録を消去することなく再生可能とできる2光子記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元光記録材料などの高密度光記録媒体、3次元ボリュームディ スプレイ等への応用可能な2光子吸収記録材料及び2光子記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、非線形光学効果とは、印加する光電場の2乗、3乗あるいはそれ以上に比例する非線型な光学応答のことである。近年、3次の非線形光学効果が注目されており、その中でも特に、非共鳴2光子吸収が注目を集めている。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して励起される現象であり、化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2光子の吸収が起こる場合を非共鳴2光子吸収という。なお、以下の記述において特に明記しなくても2光子吸収とは非共鳴2光子吸収を指す。
【0003】
ところで、非共鳴2光子吸収の効率は印加する光電場の2乗に比例する(2光子吸収の2乗特性)。このため、2次元平面にレーザーを照射した場合においては、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は全く起こらない。一方、3次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ2光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために2光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる線形吸収に比べて、非共鳴2光子吸収では、この2乗特性に由来して空間内部の1点のみで励起が起こるため、空間分解能が著しく向上する。
通常、非共鳴2光子吸収を誘起する場合には、化合物の(線形)吸収帯が存在する波長領域よりも長波長でかつ吸収の存在しないレーザーを用いることが多い。透明領域のレーザーを用いるため、レーザー光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性のために試料内部の1点を極めて高い空間分解能で励起できる。その点が通常の1光子(線形)吸収に対する大きな利点となる。
【0004】
一方、従来から、レーザー光により一回限りの情報の記録が可能な光情報記録媒体(光ディスク)が知られており、追記型CD(いわゆるCD−R)、追記型DVD(いわゆるDVD−R)などが実用化されている。
例えば、DVD−Rの代表的な構造は、照射されるレーザー光のトラッキングのための案内溝(プレグルーブ)がCD−Rに比べて半分以下(0.74〜0.8μm)と狭く形成された透明な円盤状基板上に、色素からなる記録層、そして通常は該記録層の上に光反射層、そして更に必要により保護層からなる。
DVD−Rへの情報の記録は、可視レーザー光(通常は630nm〜680nmの範囲)を照射し、記録層の照射部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的あるいは化学的変化(例えば、ピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより行われる。一方、情報の読み取り(再生)もまた記録用のレーザー光と同じ波長のレーザー光を照射することにより行われ、記録層の光学的特性が変化した部位(記録部分)と変化しない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより情報が再生される。この反射率の違いはいわゆる「屈折率の変調」に基づくものである。
【0005】
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。
さらにコンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。
そのような中、DVD−Rのような従来の2次元光記録媒体は物理原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい片面25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
【0006】
そのような状況の中、究極の高密度、高容量記録媒体として、3次元光記録媒体が俄然注目されてきている。3次元光記録媒体は、3次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねることで、従来の2次元記録媒体の何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。3次元光記録媒体を提供するためには、3次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならないが、その手段として、2光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法とある。
2光子吸収材料を用いる3次元光記録媒体では、上記で説明した物理原理に基づいて何十、何百倍にもわたっていわゆるビット記録が可能であって、より高密度記録が可能であり、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体であると言える。
【0007】
2光子吸収材料を用いた3次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(レヴィッチ、ユージーン、ポリス他、特表2001−524245号[特許文献1]、パベル、ユージエン他、特表2000−512061号[特許文献2])、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(コロティーフ、ニコライ・アイ他、特表2001−522119号[特許文献3]、アルセノフ、ヴラディミール他、特表2001−508221号[特許文献4])等が提案されているが、いずれも具体的な2光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている2光子吸収化合物の例も2光子吸収効率の極めて小さい2光子吸収化合物を用いている。さらに、これらの特許にて用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。
特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率または透過率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する2光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。
また、河田聡、川田善正、特開平6−28672号[特許文献5]、河田聡、川田善正他、特開平6−118306号[特許文献6]には、屈折率変調により3次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が開示されているが、2光子吸収3次元光記録材料を用いた方法についての記載はない。
【0008】
したがって、2光子吸収3次元光記録材料や3次元ボリュームディスプレイを実現するためには、高感度かつ保存性に優れ、かつ所望の反射率(屈折率)、透過率(吸収率)または発光強度の変調を行うことができる2光子記録方法及び2光子吸収記録材料の開発が必要である。
【0009】
ここで、画像記録方法一般においては、従来より液状の現像剤等を用いず、廃棄物の発生のないドライタイプの画像記録方法が種々検討されており、中でも、光により硬化する組成物を用いる方法が注目されている。この方法は、露光することによって、記録材料中に含まれる、光により硬化する組成物が硬化することにより潜像が形成され、一方、記録材料中の露光部に含まれる、加熱により発色若しくは消色反応に作用する成分が記録材料内で移動し色画像を形成することを特徴とする。このような方式の記録材料を用いる場合、まず、レーザーなどを用い記録材料上に露光し、該露光部を硬化させて潜像を形成した後、この記録材料を加熱することにより、未硬化部分(未露光分)に含まれる発色若しくは消色反応に作用する成分を移動させ、可視画像を形成する。この方式によれば、廃棄物の発生のない完全ドライシステムを実現することができる。これらの画像記録方式は例えば、特開2001−159825号[特許文献9]や特開2002−82431号[特許文献10]に記載されている。
但し、これらの画像記録方法を2光子記録方法及び2光子吸収記録材料に応用した例は今までには記載されていなかった。
【特許文献1】特表2001−524245号公報
【特許文献2】特表2000−512061号公報
【特許文献3】特表2001−522119号公報
【特許文献4】特表2001−508221号公報
【特許文献5】特開平6−28672号公報
【特許文献6】特開平6−118306号公報
【特許文献7】特開2001−159825号公報
【特許文献8】特開2002−82431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上に述べたように、非共鳴2光子吸収により得た励起エネルギーを用いて反応を起こし、その結果レーザー焦点(記録)部と非焦点(非記録)部で屈折率、吸収率または発光強度を変調することができれば、3次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で記録することができ、究極の高密度記録媒体と考えられる3次元光記録媒体への応用が可能となる。
しかし、現時点で利用可能な2光子吸収化合物では、2光子吸収能が低いため、光源としては非常に高出力のレーザーが必要で、かつ記録時間も長くかかる。
特に3次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レート達成のために、記録を高感度にて2光子吸収により行うことができる2光子吸収3次元光記録材料の構築が必須である。そのためには、高効率に2光子を吸収し励起状態を生成することができる2光子吸収化合物と、2光子吸収化合物励起状態を用いて何らかの方法にて2光子吸収記録材料の屈折率、吸収率または発光強度の違いを効率的に形成できる記録成分を含む材料が有力であるが、そのような材料は今まで開示されておらず、そのような材料の構築が望まれていた。
【0011】
本発明の目的は、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して屈折率変調、吸収率変調または発光強度変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその反射率、透過率または発光強度の違いを検出することにより再生することを特徴とする2光子記録方法及び再生方法、さらにそのような記録再生が可能な2光子吸収記録材料を提供するものである。
特に高感度で保存性に優れた2光子吸収記録再生方法及び2光子吸収記録材料を提供するものである。
さらに、それらを用いた2光子吸収3次元光記録材料及び2光子吸収3次元光記録方法及び再生方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らの鋭意検討の結果、本発明の目的は、下記の手段により達成された。
(1) 2光子吸収により2光子吸収記録材料に潜像を形成する第一の工程と、潜像が形成された2光子吸収記録材料に熱処理を施し、潜像に従い屈折率、吸収率または発光強度を変調して記録する第二の工程と、熱処理後の2光子吸収記録材料をさらに全面光照射して形成した記録を定着する第三の工程と、を含み、記録を消去することなく再生可能とできることを特徴とする2光子記録方法。
(2) 前記第一の工程において2光子吸収記録材料に2光子吸収させる光源がレーザーであることを特徴とする(1)に記載の2光子記録方法。
(3) 前記第三の工程における光照射の光源が、レーザー、LED、フラッシュランプ、蛍光灯、キセノンランプ及び水銀灯より選択される少なくとも一種であることを特徴とする(1)または(2)に記載の2光子記録方法。
(4) 前記2光子吸収記録材料が、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有し、光重合可能な化合物と、光重合開始剤と、を含有する光重合性組成物を含む(1)〜(3)に記載の2光子記録方法。
(5) 前記2光子吸収記録材料が、支持体上に、熱応答性マイクロカプセルに内包された発色または消色成分Aと、熱応答性マイクロカプセル外部に、少なくとも、同一分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する重合性基と前記発色または消色成分Aと反応して発色または消色させる部位とを有する実質的に無色の化合物Bと、光重合開始剤と、からなる光重合性組成物と、を含有する感光感熱記録層を有する感光感熱2光子吸収記録材料であり、第一の工程において、前記光重合性組成物が2光子吸収により潜像を形成し、第二の工程において、前記発色または消色成分Aが熱処理により潜像に従って発色または消色することで屈折率、吸収率または発光強度を変調して記録を行い、第三の工程において、前記感光感熱記録層を全面光照射して光重合開始剤成分を消色し、記録を定着することで、記録を消去することなく再生可能とできることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の2光子記録方法。
(6) 前記2光子吸収記録材料が、支持体上に、熱応答性マイクロカプセルに内包された発色または消色成分Aと、熱応答性マイクロカプセル外部に、少なくとも、前記発色または消色成分Aと反応して発色または消色させる実質的に無色の化合物Cと、同一分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する重合性基と前記発色または消色成分Aと化合物Cとの反応を抑制する部位とを有する実質的に無色の化合物Dと、光重合開始剤と、からなる光重合性組成物と、を含有する感光感熱記録層を有する2光子吸収記録材料であり、第一の工程において、前記光重合性組成物が2光子吸収により潜像を形成し、第二の工程において、前記発色または消色成分Aが熱処理により潜像に従って発色または消色することで屈折率、吸収率または発光強度を変調して記録を行い、第三の工程において、前記感光感熱記録層を全面光照射して光重合開始剤成分を消色し、記録を定着することで、記録を消去することなく再生可能とできることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の2光子記録方法。
(7) 前記光重合開始剤が、300〜800nmに最大吸収波長を有する分光増感色素と、該分光増感色素と相互作用する化合物と、を含有する(4)〜(6)のいずれかに記載の2光子記録方法。
(8) (7)記載の分光増感色素が2光子吸収を行う2光子吸収化合物であることを特徴とする(7)に記載の2光子記録方法。
(9) 前記2光子吸収記録材料に、2光子吸収化合物である分光増感色素の有する線形吸収帯よりも長波長でかつ線形吸収のモル吸光係数が10以下の波長のレーザー光を照射して誘起された2光子吸収を利用して記録を起こすことを特徴とする(7)または(8)記載の2光子記録方法。
(10) 前記の、分光増感色素と相互作用する化合物の少なくとも1つが、有機系ボレート塩化合物である(7)〜(9)のいずれかに記載の2光子記録方法。
(11) 前記2光子吸収を利用した記録が書き換えできない方式であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の2光子吸収記録材料。
(12) (1)記載の2光子吸収記録材料が、複数の記録層を積層してなる多層構成の2光子吸収記録材料であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の2光子記録方法。
(13) (1)〜(12)のいずれかに記載の2光子記録方法が可能な2光子吸収記録材料。
(14) (1)〜(13)のいずれかに記載の2光子吸収記録材料に、2光子吸収を利用して屈折率変調または吸収率変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその反射率または透過率の違いを検出することにより再生することを特徴とする(1)〜(12)記載の2光子記録再生方法。
(15) 前記2光子吸収記録材料に、2光子吸収を利用して発光能変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその発光強度の違いを検出することにより再生することを特徴とする(14)記載の2光子記録再生方法。
(16) (13)記載の2光子吸収記録材料から成る2光子吸収3次元光記録媒体。
(17) (13)記載の2光子吸収記録材料が保存時に遮光カートリッジ内に保存されていることを特徴とする2光子吸収光記録媒体。
(18) (14)、または(15)記載の2光子記録再生方法から成る2光子吸収3次元光記録再生方法。
(19) (13)記載の2光子吸収記録材料から成る3次元ボリュームディスプレイ。
(20) (1)〜(12)のいずれかに記載の2光子記録方法を用いた3次元ボリュームディスプレイの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の2光子吸収化合物は2光子吸収断面積(感度)が大きく、さらにそれを用いた本発明の2光子吸収記録材料を用いることにより、高感度にて2光子吸収による屈折率変調、吸収率変調または発光強度変調による記録を行うことができる。特に保存性に優れた2光子吸収記録材料を提供することができる。
さらに、本発明の2光子吸収光記録材料を用いることで、2光子吸収3次元光記録及び再生が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の2光子記録方法及び2光子吸収記録材料について詳しく説明する。
【0015】
本発明の2光子記録方法は、2光子吸収により2光子吸収記録材料に潜像を形成する第一の工程と、潜像が形成された2光子吸収記録材料に熱処理を施し潜像に従い屈折率、吸収率または発光強度を変調する第二の工程と、熱処理後の2光子吸収記録材料を、さらに全面光照射して記録を定着する第三の工程と、を含み、記録を消去することなく再生可能とできることを特徴とする。
以下、本発明の2光子記録方法について詳細に説明し、該説明を通じて本発明の2光子吸収記録材料の詳細についても説明する。
【0016】
<2光子記録方法>
本発明の2光子記録方法は、既述のように、潜像を形成する第一の工程と、潜像に従い屈折率、吸収率または発光強度を変調する第二の工程と、さらに光照射により記録の定着を行う第三の工程を有してなり、必要に応じて他の工程を有していてもよい。まず、第一から第三の工程について詳述する。
【0017】
(第一の工程)前記第一の工程においては、後述する2光子吸収記録材料に、2光子吸収により生じる潜像を形成する。即ち、2光子吸収工程である(以下、第一の工程を「2光子吸収工程」いうことがある。)。2光子吸収記録材料として、後述するように、例えば、光重合性組成物、若しくはこれを含む材料を用いた場合、光照射により、該光照射部において前記光重合性組成物中の重合性の化合物が重合反応を起こして硬化し、2光子吸収により生じる潜像を形成する。
【0018】
前記2光子吸収工程において用いる光源としては、レーザーを用いることが好ましい。本発明に用いる光は好ましくは波長200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかであり、より好ましくは波長300〜1000nmの紫外光、可視光または赤外光であり、さらに好ましくは400〜800nmの可視光または赤外光である。
用いることができるレーザーは特に限定されないが、具体的には、中心波長1000nm付近に発振波長を有するTi−サファイア等の固体レーザーやファイバーレーザー、780nm付近の発振波長を有するCD−Rなどでも用いられている半導体レーザーや固体レーザー、ファイバーレーザー、620〜680nmの範囲の発振波長を有するDVD−Rなどでも用いられているAlGaInP等の半導体レーザーや固体レーザー、400〜415nm付近の発振波長を有するGaNやInGaN等の半導体レーザーなどを好ましく用いることができる。
また他にも、可視光域に発振波長を有するYAG・SHGレーザーなどの固体SHGレーザー、半導体SHGレーザーなども好ましく用いることができる。
本発明に用いるレーザーはパルス発振レーザーであってもCWレーザーであっても良い。
【0019】
なお、本発明の2光子吸収記録材料に記録を行う際は、2光子吸収化合物の有する線形吸収帯よりも長波長でかつ線形(1光子)吸収のモル吸光係数が10以下の波長のレーザー光を照射して誘起された2光子吸収を利用して記録を起こすことが好ましく、1以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましく、線形吸収がないことが最も好ましい。
【0020】
再生の際使用する光は、例えば上記レーザー光であることが好ましい。また、パワーまたはパルス形状は同じか異なるものの、記録時と同じ波長のレーザーを用いて再生することがより好ましい。
また、再生の際使用する光として、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、LED、有機ELなども挙げられる。特定の波長域の光を照射するために、必要に応じてシャープカットフィルターやバンドパスフィルター、回折格子等を用いることも好ましい。
【0021】
(第二の工程)前記第二の工程においては、第一の工程により潜像が形成された2光子吸収記録材料に対し、該2光子吸収記録材料に熱処理を施し、前記潜像に従った屈折率、吸収率または発光強度の変調による記録を形成する。即ち、記録形成工程である。2光子吸収記録材料中に発色または消色材料が含まれる場合には、2光子吸収による潜像に応じてイメージワイズに発色または消色反応を起こし、その際に生じる屈折率、吸収率または発光強度変調により記録を形成する工程である。
【0022】
2光子吸収記録材料として、後述するように、例えば、光重合性組成物とともに、発色または消色成分を含む材料を用いた場合、加熱により発色/消色成分と、該発色/消色成分と反応して発色/消色させる化合物又は化合物中の発色/消色させる特定の基とが反応して、第一の工程で形成された潜像の形状に従って発色/消色し、屈折率、吸収率または発光強度の変調による記録を形成する。前記熱処理は、2光子吸収記録材料の全面に施すことができる方法で行うことが好ましい。
【0023】
前記熱処理の際の加熱方法としては、従来公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、ヒートローラー等により処理することができる。前記加熱温度としては、一般に80〜200℃が好ましく、85〜130℃がより好ましい。前記加熱温度が、80℃未満であると、発色または消色濃度が不十分となることがあり、200℃を超えると、着色したり、支持体に損傷を受けることがある。また、加熱時間としては、1秒〜5分が好ましく、3秒〜1分がより好ましい。また、熱処理前に、発色または消色温度未満の所定の温度で2光子吸収記録材料全面を均一に予熱する過程を設けることにより、さらに感度を向上させることもできる。
【0024】
ここで、本発明にて発色反応とは、200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光の領域にて、吸収スペクトル形が変化するような反応を示し、より好ましくは吸収スペクトルにおいてλmaxが長波長化、εが増大のいずれかが起こるような反応を示し、さらに好ましくはその両方が起こるような反応を示す。また、発色反応は200〜1000nmの波長領域で起こることがより好ましく、300〜900nmの波長領域で起こることがさらに好ましい。
【0025】
一方で、本発明にて消色反応とは、200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光の領域に吸収を有する消色性色素が、λmaxが短波長化、モル吸光係数の減少のいずれかが起こすような反応の総称を示し、さらに好ましくはその両方を起こすような反応である。また、消色反応は200〜1000nmの波長領域で起こることがより好ましく、300〜900nmの波長領域で起こることがさらに好ましい。
【0026】
ここで、色素の屈折率は一般に、線形吸収極大波長(λmax)付近からそれより長波長な領域で高い値を取り、特にλmaxからλmaxより200nm程長波長な領域において非常に高い値を取り、色素によっては1.8を超え、場合によっては2を超えるような高い値をとる。その一方で、バインダーポリマー等の色素ではない有機化合物は通常1.4〜1.6程度の屈折率である。
よって、2光子吸収により発色または消色反応を起こさせることは、吸収率差や発光強度差だけでなく、大きな屈折率差も好ましく形成できることがわかる。
【0027】
(第三の工程)前記第三の工程においては、第二の工程において熱処理を施した2光子吸収記録材料に対して、全面光照射し、該2光子吸収記録材料の屈折率、吸収率または発光強度変調による記録を定着するとともに、分光増感色素の着色を消色する。即ち、形成した屈折率、吸収率または発光強度変調による記録を安定化させる定着工程である。
【0028】
本工程における全面光照射の方法としては、記録層表面全面を一度に照射する方法でも、スキャニング等により記録面を徐々に光照射し最終的に全面を照射する方法でもよいが、ほぼ均一の照射光を用いて、最終的に屈折率、吸収率または発光強度変調による記録形成後の2光子吸収記録材料の記録面全体に照射することができる方法であればよい。このように本工程における全面光照射とは、2光子吸収によるものではなく、記録材料全面に一様に光を照射して線形吸収(1光子吸収)を起こさせる結果となることを意味し、ノンイメージワイズ露光とも、ベタ露光とも呼ぶ。
【0029】
本工程で使用可能な光源としては、記録材料中に特定領域に吸収を有する分光増感色素等の光吸収材料を用いることにより、紫外〜赤外領域に光源波長を有する、公知の光源の中から適宜選択することができる。具体的には、最大吸収波長が300〜1000nmの範囲にある光源が好ましく、中でも、装置の簡易化、小型化及び低コスト化を達成しうる点で、青色、緑色、赤色等のレーザー光源、LED、フラッシュランプ、蛍光灯、キセノンランプ、水銀灯等がより好ましい。この場合、使用する分光増感色素等の光吸収材料の吸収波長に適合する波長を有する光源を適宜選択することが好ましい。
【0030】
また、光照射時間としては、記録を定着し、分光増感化合物由来の着色を十分に消色しうる時間照射すればよいが、十分な記録の定着性と消色性を得ながら記録速度を低下させない観点から、数秒〜数十分が好ましく、数秒〜数分がより好ましい。
【0031】
本工程を経ることにより、2光子吸収記録材料に残存する分光増感色素由来の着色成分を除去することができ解像度を向上させることができる。また、2光子吸収による屈折率、吸収率または発光強度変調による記録、つまり2光子記録の安定性、保存性、非破壊再生性等を高めることができる。
また、発色成分にジアゾニウム塩化合物を用いた場合には、屈折率、吸収率または発光強度変調による記録形成後の記録層中に残存するジアゾニウム塩化合物をも光照射により失活させ発色反応を抑制できるため、濃度変動、変色等を防止して保存安定性を向上させることができる。
【0032】
なお、分光増感色素は、第二または第三の工程にて分解してその吸収及び増感機能を失うことが好ましい。
【0033】
なお、2光子吸収記録材料として、発色または消色化合物の異なる単色の記録層を複数積層した、多層の感光感熱記録層を有する材料を用いる場合、前記第一の工程では、複数のレーザー光源を用いて各記録層の感光波長に合致した光源によりそれぞれの記録層を露光することが好ましく、本工程においても、各記録層の光感応性を考慮し、複数の光源の全てを用いてこれらを各々独立に又は同時に光照射し、屈折率、吸収率または発光強度変調による記録部の定着及び着色の消色を行うことが好ましい。この場合は吸収率または発光強度の変調を行い、フルカラー3次元ボリュームディスプレイに応用することが好ましい。
【0034】
一方で、2光子吸収記録材料として、発色または消色化合物の同一な記録層を複数積層した、多層の感光感熱記録層を有する材料を用いる場合は、屈折率変調を用いて記録し、反射率の変調で再生する2光子吸収3次元光記録材料に応用することが好ましい。
【0035】
本発明の2光子記録再生方法としては、2光子吸収化合物を有する2光子吸収記録材料に、2光子吸収を利用して屈折率変調または吸収率変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその反射率または透過率の違いを検出することにより再生する方法が好ましい。
また一方で、2光子吸収化合物を有する2光子吸収記録材料に、2光子吸収を利用して発光能変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその発光強度の違いを検出することにより再生する方法が好ましい。
その際発光は蛍光でもりん光でも良いが、蛍光であることが発光効率の点で好ましい。
【0036】
なお、本発明の2光子吸収記録材料は、湿式処理を行わないことが好ましい。
本発明の2光子吸収記録材料は、書き換えできない方式であることが好ましい。なおここで、書き換えできない方式とは、不可逆反応により記録される方式であり、一度記録されたデータは、さらに上書き記録して書き換えしようとしても書き換えされることなく保存できる方式を示す。したがって重要でかつ長期保存が必要なデータの保存に適する。ただし無論、まだ記録されていない領域に新たに追記して記録していくことは可能である。そのような意味で、一般には「追記型」または「ライトワンス型」と呼ばれる。
【0037】
本発明の2光子吸収記録材料にて、記録により生成する発色または消色部の大きさは10nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、50nm〜5μmの範囲であることがより好ましく、50nm〜2μmの範囲であることがさらに好ましい。
また、記録材料の再生を可能にするためには、反応部または発色部の大きさは照射光波長の1/20〜20倍の大きさであることが好ましく、1/10〜10倍の大きさであることがより好ましく、1/5〜5倍の大きさであることが最も好ましい。
【0038】
なお、本発明の2光子吸収記録材料において、2光子吸収を行うことにより起こる化学反応、発色反応等は熱分解によらない反応、すなわちフォトンモードにて起こることが特に高感度化の点で好ましい。
すなわち、既存のCD−RやDVD−Rにて実用されている方法とは異なる機構で記録することが、特に記録材料における書き込み転送速度を考える際に好ましい。
【0039】
本発明の2光子記録再生方法は、DVD−R、DVD−BL(BD)のような光記録再生方法、近接場光記録再生方法、3次元光記録再生方法、3次元ボリュームディスプレイ記録再生方法等に用いることが好ましいが、より好ましくは3次元光記録再生方法に用いることが好ましい。すなわち、本発明の2光子記録再生方法は、2光子吸収3次元光記録再生方法または2光子吸収3次元ボリュームディスプレイ記録再生方法に用いることが好ましい。
同様に、本発明の2光子吸収記録材料は、DVD−R、DVD−BL(BD)のような光記録媒体、近接場光記録媒体、3次元光記録媒体、3次元ボリュームディスプレイ記録材料等に用いることが好ましいが、より好ましくは3次元光記録材料、媒体に用いることが好ましい。すなわち、本発明の2光子吸収記録材料は、2光子吸収3次元光記録媒体または2光子吸収3次元ボリュームディスプレイ記録材料に用いることが好ましい。
【0040】
なお、本発明の2光子吸収記録材料を光記録媒体に用いる際は、保存時2光子吸収記録材料は遮光カートリッジ内に保存されていることが好ましい。また、記録光及び再生光波長以外の紫外光、可視光、赤外光の波長域の一部をカットすることができる遮光フィルターを2光子吸収記録材料の表面、裏面またはその両面に備え付けていることも好ましい。
【0041】
本発明の2光子吸収記録材料を光記録媒体に用いる際は、光記録媒体はディスク状でもカード状でもテープ状であっても良くいかなる形状であっても良い。
【0042】
また、本発明の2光子吸収化合物及び2光子吸収記録材料は3光子以上の多光子吸収を行っても構わない。
【0043】
以下に本発明の2光子吸収記録材料に関し、さらに詳しく述べる。
【0044】
<2光子吸収記録材料>
本発明の2光子記録方法に用いる2光子吸収記録材料としては、2光子吸収により潜像を形成し、加熱により前記潜像に従って屈折率、吸収率または発光強度を変調して記録を行えうる材料の中から適宜選択することができ、中でも、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有し、活性光線により光重合可能な化合物と、光重合開始剤とを少なくとも含有する光重合性組成物、若しくは該光重合性組成物を有する感光感熱性の2光子吸収記録材料が好ましい。以下、前記光重合性組成物、及び感光感熱性の2光子吸収記録材料について説明する。
【0045】
(光重合性組成物)前記光重合性組成物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有し、光により光重合可能な化合物(以下、「光重合可能な化合物」ということがある。)と、光重合開始剤とを少なくとも有してなり、必要に応じて、他の成分を有してなる。前記光重合性組成物は、前記第一の工程でレーザー焦点部にて2光子吸収により光重合開始剤からラジカルが発生し、組成物中で前記光重合可能な化合物が重合反応を起こすと、光照射部のみが硬化して潜像を形成する。ここで前記光重合性組成物に発色または消色成分が含まれる場合、第二の工程で前記潜像に基づき発色または消色を起すことにより、屈折率、吸収率または発光強度変調による記録として2光子吸収記録材料に形成される。さらに、第三の工程において、全面光照射することにより残存する光重合開始剤成分が消色され、屈折率、吸収率または発光強度変調による記録の保存性を向上させ、かつ着色の消色により解像度を向上させることができる。
【0046】
−光重合可能な化合物−
前記光重合可能な化合物は、分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有し、光により重合反応を起こして重合硬化しうる化合物である。前記光重合可能な化合物としては、以下に示す光重合性モノマー(D,D)を挙げることができる。前記D,Dは、後述するように、重合性基を有しない化合物Cと好適に併用して用いられる。
【0047】
前記光重合性モノマーDとしては、分子内に少なくとも1個のビニル基を有する光重合性モノマーであることが好ましい。具体的には、アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類;メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル類、メタクリルアミド類;無水マレイン酸、マレイン酸エステル類;イタコン酸、イタコン酸エステル類;スチレン類;ビニルエーテル類;ビニルエステル類;N−ビニル複素環類;アリールエーテル類;アリルエステル類等が挙げられる。
【0048】
上記のうち、分子内に複数のビニル基を有する光重合性モノマーを使用することが好ましく、例えば、トリメチロールプロパンやペンタエリスリトール等の多価アルコール類のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル;レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール等の多価フェノール類やビスフェノール類のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル;アクリレート又はメタクリレート末端エポキシ樹脂;アクリレート又はメタクリレート末端ポリエステル等が好ましい。
【0049】
中でも、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトール、テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ヘキサンジオール−1,6−ジメタクリレート又はジエチレングリコールジメタクリレート等が特に好ましい。前記光重合性モノマーDの分子量としては、約100〜約5000が好ましく、約300〜約2000がより好ましい。
【0050】
前記光重合性モノマーDとしては、例えば、スチレンスルホニルアミノサリチル酸、ビニルベンジルオキシフタル酸、β−メタクリロキシエトキシサリチル酸亜鉛、β−アクリロキシエトキシサリチル酸亜鉛、ビニロキシエチルオキシ安息香酸、β−メタクリロキシエチルオルセリネート、β−アクリロキシエチルオルセリネート、β−メタクリロキシエトキシフェノール、β−アクリロキシエトキシフェノール、β−メタクリロキシエチル−β−レゾルシネート、β−アクリロキシエチル−β−レゾルシネート、ヒドロキシスチレンスルホン酸−N−エチルアミド、β−メタクリロキシプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、β−アクリロキシプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、メタクリロキシメチルフェノール、アクリロキシメチルフェノール、メタクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、β−メタクリロキシエトキシ−ジヒドロキシベンゼン、β−アクリロキシエトキシ−ジヒドロキシベンゼン、γ−スチレンスルホニルオキシ−β−メタクリロキシプロパンカルボン酸、
【0051】
γ−アクリロキシプロピル−α−ヒドロキシエチルオキシサリチル酸、β−ヒドロキシエトキニルフェノール、β−メタクリロキシエチル−p−ヒドロキシシンナメート、β−アクリロキシエチル−p−ヒドロキシシンナメート、3,5ジスチレンスルホン酸アミドフェノール、メタクリロキシエトキシフタル酸、アクリロキシエトキシフタル酸、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリロキシエトキシヒドロキシナフトエ酸、アクリロキシエトキシヒドロキシナフトエ酸、3−β−ヒドロキシエトキシフェノール、β−メタクリロキシエチル−p−ヒドロキシベンゾエート、β−アクリロキシエチル−p−ヒドロキシベンゾエート、
【0052】
β’−メタクリロキシエチル−β−レゾルシネート、β−メタクリロキシエチルオキシカルボニルヒドロキシ安息香酸、β−アクリロキシエチルオキシカルボニルヒドロキシ安息香酸、N,N’−ジ−β−メタクリロキシエチルアミノサリチル酸、N,N’−ジ−β−アクリロキシエチルアミノサリチル酸、N,N’−ジ−β−メタクリロキシエチルアミノスルホニルサリチル酸、N,N’−ジ−β−アクリロキシエチルアミノスルホニルサリチル酸等が好適に挙げられる。
【0053】
−光重合開始剤−
前記光重合開始剤は、光照射によりラジカルを発生して層内で重合反応を起こし、かつその反応を促進させることができる。この重合反応により記録層膜は硬化し、2光子吸収により生成する潜像を形成することができる。
【0054】
前記光重合開始剤は、公知のものの中から適宜選択することができ、中でも、300〜800nmに最大吸収波長を有する分光増感色素と、該分光増感色素と相互作用する化合物と、を含有するものであることが好ましい。但し、前記分光増感色素と相互作用する化合物が、その構造内に300〜800nmに最大吸収波長を有する色素部とボレート部との両構造を併せ持つ化合物であれば、それが前記分光増感色素を兼ねてよい。
【0055】
公知の光重合開始剤として、例えば、米国特許第4950581号(第20欄、第35行〜第21欄、第35行)に記載のものを挙げることができる。また、例えば、EP−A−137452、DE−A−2718254、DE−A−2243621、米国特許第4950581号(第14欄第60行〜第18欄第44行)に記載のトリアジン;2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−スチルフェニル)−s−トリアジン等のトリハロメチルトリアジン等のトリアジン化合物が挙げられる。前記光重合開始剤をハイブリッド系で使用 する場合には、フリーラジカル硬化剤に加えて、カチオン系光重合開始剤を挙げることもできる。前記カチオン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、米国特許第4950581号(第19欄、第17〜25行)に記載のパーオキサイド等のパーオキサイド化合物;米国特許第4950581号(第18欄、第60行〜第19欄10行)に記載の芳香族スルホニウム若しくはヨードニウム塩;(η6−イソプロピルベンゼン)−(η5−シクロペンタジエニル)−鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等のシクロペンタジエニル−アレーン鉄(II)錯塩等を好適に挙げることができる。
【0056】
さらに、前記色素/ホウ素化合物の例としては、特開昭62−143044号、特開平1−138204号、特表平6−505287号、特開平4−261406号等に記載のものも好適に挙げられる。
【0057】
本発明の2光子吸収記録材料において、前記300〜800nmに最大吸収波長を有する分光増感色素が2光子吸収化合物であることが好ましい。
本発明の2光子吸収化合物は、非共鳴2光子吸収(化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2つの光子を同時に吸収して励起される現象)を行う化合物である。
2光子吸収記録材料、特に2光子吸収3次元光記録材料に応用する際は、速い転送(記録)速度達成のために、高感度にて2光子吸収を行って励起状態を効率良く生成することができる2光子吸収化合物が必要である。
2光子吸収化合物が2光子吸収を行う効率は2光子吸収断面積δで表され、1GM=1×10-50 cms/photonで定義される。本発明の2光子吸収記録材料における2光子吸収化合物の2光子吸収断面積δは100GM以上であることが、書き込み速度向上、レーザー小型化・安価化等の点で好ましく、1000GM以上であることがより好ましく、5000GM以上であることがより好ましく、10000GM以上であることが最も好ましい。
【0058】
本発明の2光子吸収化合物である分光増感色素として好ましくは、波長200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかを2光子吸収して励起状態を生成するものであり、より好ましくは波長400〜1100nmの可視光または赤外光を吸収して励起状態を生成するものであり、さらに好ましくは400〜800nmの可視光または赤外光を吸収して励起状態を生成するものである。
【0059】
本発明の2光子吸収化合物である分光増感色素は、波長300〜800nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかに線形吸収を有すること、つまり色素であることが好ましく、波長300〜700nmの紫外光、可視光のいずれかに線形吸収を有することがより好ましい。
【0060】
本発明における2光子吸収化合物である分光増感色素としてはいかなるものでも良いが、例えば、例えば、後述の「分光増感色素と相互作用する化合物」に関する特許公報や、「Research Disclogure,Vol.200,1980年12月、Item 2003 6」や「増感剤」(p.160〜p.163、講談社;徳丸 克己・大河原信/編、1987年)等に記載のものが挙げられる。
【0061】
具体的には、特開昭58−15603号に記載の3−ケトクマリン化合物、特開昭58−40302号に記載のチオピリリウム塩、特公昭59−28328号、同60−53300号に記載のナフトチアゾールメロシアニン化合物、特公昭61−9621号、同62−3842号、特開昭59−89303号、同60−60104号に記載のメロシアニン化合物等が挙げられる。
【0062】
また、「機能性色素の化学」(1981年、CMC出版社、p.393〜p.416)や「色材」(60〔4〕212−224(1987))等に記載された色素も挙げることができ、具体的には、カチオン性メチン色素、カチオン性カルボニウム色素、カチオン性キノンイミン色素、カチオン性インドリン色素、カチオン性スチリル色素等が挙げられる。
【0063】
前記分光増感色素、つまり2光子吸収化合物には、クマリン(ケトクマリン又はスルホノクマリンを含む。)色素、メロスチリル色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等のケト色素;非ケトポリメチン色素、トリアリールメタン色素、キサンテン色素、アントラセン色素、ローダミン色素、アクリジン色素、アニリン色素、アゾ色素等の非ケト色素;アゾメチン色素、シアニン色素、カルボシアニン色素、ジカルボシアニン色素、トリカルボシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素等の非ケトポリメチン色素;アジン色素、オキサジン色素、チアジン 色素、キノリン色素、チアゾール色素等のキノンイミン色素等が含まれる。
【0064】
前記分光増感色素を適宜使用することにより、2光子吸収記録材料に用いる光重合開始剤の分光感度を紫外〜赤外域に得ることが可能となる。また、前記各種分光増感色素は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
前記分光増感色素の使用量としては、光重合性組成物中の光重合性モノマー(質量)に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0066】
前記分光増感色素と相互作用する化合物としては、前記光重合性モノマー(D,D)と光重合反応を開始しうる公知の化合物の中から、1種又は2種以上の化合物を適宜選択して使用することができる。この化合物を前記分光増感色素と共存させることにより、その分光吸収波長領域の照射光に敏感に感応し、高効率にラジカルを発生させうることから、高感度化が図れ、かつ紫外〜赤外領域にある任意の光源を用いてラジカルの発生を制御することができる。前記分光増感色素と相互作用する化合物としては、有機系ボレート塩化合物又は以下の化合物等が挙げられる。
【0067】
ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、キサントン、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、フルオレノン、アクリドン、CIBA社のビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類、等の芳香族ケトン類;
【0068】
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾイン及びベンゾインエーテル類;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二重体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二重体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二重体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダ ゾール二重体等の2,4,6−トリアリールイミダゾール二重体;四臭化炭素、フェニルトリブロモメチルスルホン、フェニルトリクロロメチルケトン等のポリハロゲン化合物;特開昭59−133428号、特公昭57−1819号、特公昭57−6096号、米国特許第3615455号に記載の化合物;
【0069】
2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−(P−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン等の特開昭58−29803号記載のトリハロゲン置換メチル基を有するS−トリアジン誘導体;
【0070】
メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリ−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ターシャリ−ブチルパーオキシベンゾエート、a,a’−ビス(ターシャリ−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、3,3’,4,4’−テトラ−(ターシャリイブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等の特開昭59−189340号記載の有機過酸化物;
【0071】
米国特許第4743530号に記載のアジニウム塩化合物;トリフェニールブチールボレートのテトラメチルアンモニウム塩、トリフェニールブチールボレートのテトラブチルアンモニウム塩、トリ(P−メトキシフェニール)ブチールボレートのテトラメチルアンモニウム塩等のヨーロッパ特許第0223587号に記載の有機ホウ素化合物;その他ジアリールヨードニウム塩類や鉄アレン錯体等が挙げられる。
【0072】
また、二種又はそれ以上の化合物を組合わせたものも知られており、これらも使用することができる。二種又はそれ以上の化合物の組合せとしては、例えば、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体とメルカプトベンズオキサゾール等との組合せ、米国特許第3427161号明細書に記載の4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンとベンゾフェノンとベンゾインメチルエーテルとの組合せ、米国特許第4239850号明細書に記載のベンゾイル−N−メチルナフトチアゾリンと2,4−ビス(トリクロロメルチ)−6−(4’−メトキシフェニル)−トリアゾールとの組合せ、特開昭57−23602号明細書に記載のジアルキルアミノ安息香酸エステルとジメチルチオキサントンと の組合せ、特開昭59−78339号明細書の4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンとベンゾフェノンとポリハロゲン化メチル化合物との三種組合わせ、等が挙げられる。
【0073】
中でも、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンとベンゾフェノンとの組合せ、2,4−ジエチルチオキサントンと4−ジメチルアミノ安息香酸エチルとの組合せ、又は4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体との組合せが好ましい。
【0074】
前記「分光増感色素と相互作用する化合物」のうち、有機系ボレート塩化合物、ベンゾインエーテル類、トリハロゲン置換メチル基を有するS−トリアジン誘導体、有機過酸化物又はアジニウム塩化合物が好ましく、有機系ボレート塩化合物がより好ましい。この「分光増感色素と相互作用する化合物」を前記分光増感色素と併用して用いることにより、2光子吸収した部分に局所的に、かつ効果的にラジカルを発生させることができ、高感度化を達成することができる。
【0075】
前記有機系ボレート塩化合物としては、特開昭62−143044号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号等に記載の有機ボレート化合物(以下、「ボレート化合物I」という場合がある。)、又はカチオン性色素から得られる分光増感色素系ボレート化合物(以下、「ボレート化合物II」という場合がある。)等が挙げられる。前記ボレート化合物Iの具体例を以下に挙げるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0076】
【化1】

【0077】
【化2】

【0078】
【化3】

【0079】
【化4】

【0080】
【化5】

【0081】
【化6】

【0082】
【化7】

【0083】
【化8】

【0084】
【化9】

【0085】
【化10】

【0086】
また、前記「機能性色素の化学」(1981年、CMC出版社、p.393〜p.416)や「色材」(60〔4〕212−224(1987))等に記載のカチオン性色素より得ることのできる分光増感色素系有機ボレート化合物(ボレート化合物II、2光子吸収化合物)も挙げることができる。このボレート化合物IIは、その構造内に色素部(2光子吸収部)とボレート部とを併せ持つ化合物であり、2光子記録時に、色素部の2光子吸収機能により効果的に2光子吸収により励起状態を生成し、かつボレート部のラジカル放出機能により重合反応を促進すると同時に、併存する分光増感色素(2光子吸収化合物)を消色するという3つの機能を有するものである。
【0087】
具体的には、300nm以上の波長領域、好ましくは300〜1100nm、より好ましくは300〜800nmの波長領域に最大吸収波長を有するカチオン性色素であれば、分光増感有機色素、つまり2光子吸収化合物としていずれも好適に用いることができる。中でも、カチオン性のメチン色素、ポリメチン色素、トリアリールメタン色素、インドリン色素、アジン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ローダミン色素、アザメチン色素、オキサジン色素、フェノチアジン色素、アクリジン色素、ピリリウム色素、スチリル色素等が好ましく、カチオン性のシアニン色素、ヘミシアニン色素、ローダミン色素、アザメチン色素等がより好ましい。
また、色素そのものは中性もしくはアニオン性であっても、他にカチオン性基を有することでカチオン性色素となるスクワリリウムシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、スチリル色素、ベンジリデン色素、シンナミリデン色素、クマリン色素、ケトクマリン色素、スチリルクマリン色素、ピラン色素、スチリル色素等が挙げられ、より好ましくはカチオン性基を有するメロシアニン色素、オキソノール色素、ベンジリデン色素、スチリル色素等が挙げられる。
【0088】
前記有機カチオン性色素から得られるボレート化合物IIは、有機カチオン性色素と有機ホウ素化合物アニオンとを用い、欧州特許第223,587A1号に記載の方法を参考にして得ることができる。
【0089】
以下に、カチオン性色素から得られるボレート化合物II(2光子吸収化合物)の具体例を挙げるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0090】
【化11】

【0091】
【化12】

【0092】
【化13】

【0093】
【化14】

【0094】
【化15】

【0095】
【化16】

【0096】
【化17】

【0097】
【化18】

【0098】
【化19】

【0099】
前記ボレート化合物IIは、上記の通り、多機能な化合物であるが、高い感度と十分な消色性を得る観点から、前記光重合開始剤には、分光増感色素と、該分光増感色素と相互作用する化合物と、を適宜組合わせて構成することが好ましい。この場合、光重合開始剤としては、前記分光増感色素とボレート化合物Iとを組合わせた光重合開始剤(1)、又は前記ボレート化合物Iとボレート化合物IIとを組合わせた光重合開始剤(2)であることがより好ましい。
【0100】
この時、光重合開始剤中に存在する分光増感色素と有機ボレート化合物との使用比率が、高感度化と定着工程の光照射による十分な消色性を得る点で非常に重要となる。前記光重合開始剤(1)の場合、光重合開始剤中には、光重合反応に必要な分光増感色素/ボレート化合物Iの比(=1/1:モル比)に加え、さらに層内に残存する分光増感色素を十分に消色するのに必要な量のボレート化合物Iを添加することが十分な高感度化と消色性能を得る点から特に好ましい。即ち、分光増感色素/ボレート化合物Iの比は、1/1〜1/50の範囲で使用することが好ましく、1/1.2〜1/30の範囲で使用することがより好ましいが、1/1.2〜1/20の範囲で使用することが最も好ましい。前記の比が、1/1未満では十分な重合反応性と消色性を得ることができず、1/50を越えると、塗布適性が劣化するため好ましくない。
【0101】
また、前記光重合開始剤(2)の場合には、ボレート化合物Iとボレート化合物IIとを、ボレート部位が色素部位に対して等モル比以上となるように組合わせて用いることが、十分な高感度化と消色性能を得る点から特に好ましい。ボレート化合物I/ボレート化合物IIの比は、1/1〜50/1の範囲で使用することが好ましく、1.2/1〜30/1の範囲で使用することがより好ましいが、1.2/1〜20/1の範囲で使用することが最も好ましい。前記の比が、1/1未満ではラジカルの発生が少なく、十分な重合反応性と消色性能が得られず、50/1を越えると、十分な感度を得られなくなるため好ましくない。
【0102】
光重合開始剤中の分光増感色素と有機ボレート化合物との総量は、重合性基を有する化合物の使用量に対し、0.1〜10質量%の範囲で使用することが好ましく、0.1〜5質量%の範囲で使用することがより好ましいが、0.1〜1質量%の範囲で使用することが最も好ましい。前記使用量が、0.1質量%未満であると、本発明の効果を得ることができないことがあり、10質量%を越えると、保存安定性が低下するとともに、塗布適性が低下することがある。
【0103】
他の2光子吸収化合物の好ましい例、2光子吸収化合物の合成例としては、特開2004−123668号、特開2004−224864号、特開2003−183213号、特開2005−25152号、特開2004−279795号、特開2004−279794号、特開2004−250545号、特開2004−279646号、特開2004−339435号、特開2004−341425号、特開2004−126440号、特開2004−149517号、特開2005−71570号等に記載されている。
【0104】
−他の成分−
前記光重合性組成物には、必要に応じて以下の成分を含有してもよい。即ち、助剤として、重合反応を促進する目的で、酸素除去剤(oxygen scavenger)又は活性水素ドナーの連鎖移動剤等の還元剤や連鎖移動的に重合を促進するその他の化合物を添加することもできる。前記酸素除去剤としては、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト、第1銀塩、又は酸素により容易に酸化されるその他の化合物が挙げられ、具体的には、N−フエニルグリシン、トリメチルパルビツール酸、N,N−ジメチル−2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリン酸が挙げられる。さらに、チオール類、チオケトン類、トリハロメチル化合物、ロフィンダイマー化合物、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類、アジニウム塩類、有機過酸化物、アジド類等も重合促進剤として有用である。
【0105】
(感光感熱性の2光子吸収記録材料)
前記感光感熱性の2光子吸収記録材料は、既述の光重合性組成物を含んでなるもののであればその構成上特に制限はなく、例えば、支持体上に光重合性組成物を含む記録層を有する2光子吸収記録材料等、目的に応じて適宜選択して構成することができる。中でも、基本的な構成として、下記(a)又は(b)に示すように構成された感光感熱2光子吸収記録材料が好ましい。即ち、
【0106】
(a)支持体上に、発色または消色成分Aを内包した熱応答性マイクロカプセルと、該マイクロカプセル外部に、少なくとも、同一分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する重合性基と前記発色または消色成分Aと反応して発色または消色させる部位とを有する実質的に無色の化合物Bと、光重合開始剤と、からなる光重合性組成物と、を含有する感光感熱記録層を有する感光感熱2光子吸収記録材料、
【0107】
(b)支持体上に、発色または消色成分Aを内包した熱応答性マイクロカプセルと、該マイクロカプセル外部に、少なくとも、前記発色または消色成分Aと反応して発色または消色させる実質的に無色の化合物Cと、同一分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する重合性基と前記発色または消色成分Aと化合物Cとの反応を抑制する部位とを有する実質的に無色の化合物Dと、光重合開始剤とからなる光重合性組成物と、を含有する感光感熱記録層を有する感光感熱2光子吸収記録材料、である。
【0108】
前記感光感熱2光子吸収記録材料(a)は、レーザー焦点部にて、マイクロカプセル外部にある光重合性組成物が、2光子吸収により光重合開始剤から発生するラジカルにより重合反応を起こして硬化し、所望の潜像を形成する。次いで、加熱することによりレーザー非焦点部に存在する前記化合物Bが2光子吸収記録材料内を移動し、カプセル内の発色または消色成分Aと反応し発色または消色する。従って、レーザー焦点部では発色または消色せず、レーザー非焦点部の硬化されなかった部分が発色または消色することで屈折率、吸収率または発光強度の変調による記録を形成する型の感光感熱2光子吸収記録材料である。
【0109】
この態様の具体的構成としては、例えば、特開平3−87827号に記載の、マイクロカプセル外部に、電子受容性基と重合性基を同一分子内に有する化合物、光重合開始剤を含有する光硬化性組成物及びマイクロカプセルに内包された電子供与性無色染料を含有する感光感熱記録層を有するポジ型の感光感熱記録材料を用いた2光子吸収記録材料が挙げられる。この場合、前記第一の工程において、2光子吸収によりマイクロカプセル外部にある光硬化性組成物が重合して硬化し、潜像が形成される。次いで、第二の工程で加熱され、レーザー非焦点部に存在する前記電子受容性基と 重合性基を同一分子内に有する化合物が2光子吸収記録材料内を移動し、マイクロカプセル内の電子供与性無色染料と反応し発色または消色することで屈折率、吸収率または発光強度変調による記録が形成される。さらに、第三の工程で、前記第一の工程で用いた光源により光照射されると、屈折率、吸収率または発光強度変調による記録が定着されるとともに、残存する光重合開始剤成分は消色される。従って、レーザー焦点部の2光子吸収が起きた部分に当る硬化した潜像部分は発色または消色せず、硬化されなかったレーザー非焦点部にあたる部分のみが発色または消色し、コントラストの高い鮮明な屈折率、吸収率または発光強度変調による記録、すなわち2光子記録を形成することができる。
【0110】
前記感光感熱2光子吸収記録材料(b)は、レーザー焦点部にて、重合性基を有する前記化合物Dが、2光子吸収により反応した光重合開始剤から発生するラジカルにより重合して膜が硬化し、所望の潜像を形成する。この潜像(硬化部)の持つ膜性に依存して、前記化合物Cが移動し、カプセル内の発色または消色成分Aと反応して屈折率、吸収率または発光強度の変調による記録を形成する。従って、2光子吸収を起こしたレーザー焦点部が発色または消色して屈折率、吸収率または発光強度の変調による記録を形成する型の感光感熱2光子吸収記録材料である。
【0111】
この態様の具体的構成としては、例えば、特開平4−211252号に記載の、マイクロカプセル外部に電子受容性化合物、重合性ビニルモノマー、光重合開始剤及びマイクロカプセルに内包された電子供与性無色染料を含有する感光感熱記録層を有してなる態様のネガ型の感光感熱記録材料を用いた2光子吸収記録材料が挙げられる。
【0112】
この屈折率、吸収率または発光強度変調による記録形成機構は明確ではないが、以下のように推察できる。即ち、前記第一の工程で2光子吸収が起こると、マイクロカプセル外部に存在するビニルモノマーが重合される一方、レーザー焦点部に共存する電子受容性化合物は、形成された重合体には全く取り込まれず、むしろビニルモノマーとの相互作用が低下して拡散速度の高い移動可能な状態で存在する。一方、レーザー非焦点部の電子受容性化合物は、共存するビニルモノマーにトラップされて存在する。そのため、第二の工程で加熱した際、レーザー焦点部における電子受容性化合物が優先的に2光子吸収記録材料内で移動し、マイクロカプセル内の電子供与性無色染料と反応し発色または消色して屈折率、吸収率または発光強度変調による記録が形成されるが、レーザー非焦点部の電子受容性化合物は、加熱してもカプセル壁を透過できず、電子供与性無色染料と反応せず発色または消色に寄与できないものと考えられる。次いで、第三の工程で、全面光照射されると、発色または消色反応による屈折率、吸収率または発光強度変調による記録が定着されるとともに、残存する光重合開始剤成分は消色される。従って、この感光感熱2光子吸収記録材料では、2光子吸収を起こしたレーザー焦点部が発色または消色し、レーザー非焦点部では発色または消色しないことで、屈折率、吸収率または発光強度の変調による記録を形成するため、コントラストの高い鮮明な2光子記録を形成することができる。
【0113】
また、支持体上に、複数の記録層を形成して構成される感光感熱記録層を有してなる感光感熱2光子吸収記録材料としてもよい。
【0114】
次に、感光感熱性の2光子吸収記録材料を構成する各構成成分について以下に詳述する。感光感熱性の2光子吸収記録材料中には、発色または消色源として、マイクロカプセルに内包した発色または消色成分A及び前記発色または消色成分Aと反応して発色または消色させる実質的に無色の化合物(前記化合物B又は化合物C;以下、「発色または消色させる化合物」という場合がある。)を含有させる。
【0115】
まず本発明の2光子吸収記録材料が発色反応を用いる場合から説明する。
【0116】
前記発色源としての二成分(発色成分A及び発色させる化合物)の組合せとしては、下記(ア)〜(ツ)の組合せを好適に挙げることができる(下記例において、それぞれ前者が発色成分、後者が発色させる化合物を表す。)。
【0117】
(ア)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ。
(イ)ジアゾニウム塩化合物とカップリング成分(以下、適宜「カプラー化合物」と称する。)との組合せ。
(ウ)ベヘン酸銀、ステアリン酸銀等の有機酸金属塩と、プロトカテキン酸、スピロインダン、ハイドロキノン等の還元剤との組合せ。
(エ)ステアリン酸第二鉄、ミリスチン酸第二鉄等の長鎖脂肪酸鉄塩と、タンニン酸、没食子酸、サリチル酸アンモニウム等のフェノール類との組合せ。
(オ)酢酸、ステアリン酸、パルミチン酸等のニッケル、コバルト、鉛、銅、鉄、水銀、銀塩のような有機酸重金属塩と、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化カリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属硫化物との組合せ、又は前記有機酸重金属塩と、s−ジフェニルカルバジド、ジフェニルカルバゾン等の有機キレート剤との組合せ。
【0118】
(カ)銀、鉛、水銀、ナトリウム等の硫酸塩等の重金属硫酸塩と、ナトリウムテトラチオネート、チオ硫酸ソーダ、チオ尿素等の硫黄化合物との組合せ。
(キ)ステアリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、3,4−ヒドロキシテトラフェニルメタン等の芳香族ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(ク)シュウ酸銀、シュウ酸水銀等の有機酸金属塩と、ポリヒドロキシアルコール、グリセリン、グリコール等の有機ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(ケ)ペラルゴン酸第二鉄、ラウリン酸第二鉄等の脂肪酸第二鉄塩と、チオセシルカルバミドやイソチオセシルカルバミド誘導体との組合せ。
(コ)カプロン酸鉛、ペラルゴン酸鉛、ベヘン酸鉛等の有機酸鉛塩と、エチレンチオ尿素、N−ドデシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体との組合せ。
【0119】
(サ)ステアリン酸第二鉄、ステアリン酸銅等の高級脂肪族重金属塩とジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛との組合せ。
(シ)レゾルシンとニトロソ化合物との組合せのようなオキサジン染料を形成するもの。
(ス)ホルマザン化合物と還元剤および/又は金属塩との組合せ。
(セ)保護された色素(又はロイコ色素)プレカーサと脱保護剤との組合せ。
(ソ)酸化型発色剤と酸化剤との組合せ。
(タ)フタロニトリル類とジイミノイソインドリン類との組合せ。(フタロシアニンが生成する組合せ。)
(チ)イソシアナート類とジイミノイソインドリン類との組合せ(着色顔料が生成する組合せ)。
(ツ)顔料プレカーサーと酸または塩基との組合せ(顔料が形成する組合せ)。
【0120】
前記発色成分Aのうち、マイクロカプセルに内包する発色成分としては、実質的に無色の電子供与性染料前駆体(以下、「電子供与性無色染料」という。)又はジアゾニウム塩化合物が好ましい。
【0121】
前記電子供与性無色染料としては、従来より公知のものを使用することができ、前記化合物B又は化合物Cと反応して発色または消色するものであれば全て使用することができる。以下に、その具体例を示すが、本発明に使用することができる電子供与性無色染料は、これらに限定されるものではない。具体的には、フタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、ピリジン系、ピラジン系化合物、フルオレン系化合物、シアニンベース系化合物(ロイコシアニン化合物)等の各種化合物を挙げることができる。
【0122】
フタリド系化合物としては、例えば、米国再発行特許第23,024号、米国特許第3,491,111号、同第3,491,112号、同第3,491,116号及び同第3,509,174号に記載の化合物が挙げられ、具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジエチルアミノ−o−ブトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−(p−ジエチルアミノ−o−ブトキシフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(p−ジプロピルアミノ−o−メチルフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−5−アザ(又は−6−アザ、又は−7−アザ)フタリド等が挙げられる。
【0123】
フルオラン系化合物としては、例えば、米国特許第3,624,107号、同第3,627,787号、同第3,641,011号、同第3,462,828号、同第3,681,390号、同第3,920,510号、同第3959,571号に記載の化合物が挙げられ、具体的には、2−(ジベンジルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−イソブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ピペリジノアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(3,4−ジクロルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン等が挙げられる。
【0124】
チアジン系化合物としては、例えば、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー等が挙げられる。ロイコオーラミン系化合物としては、例えば、4,4’−ビス−ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニル−ロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等が挙げられる。
【0125】
ローダミンラクタム系化合物としては、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン−(p−ニトリノ)ラクタム等が挙げられる。スピロピラン系化合物としては、例えば、米国特許第3,971,808号に記載の化合物が挙げられ、具体的には、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン3,3’−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルスピロ−ジナフトピラン、3−メチル−ナフト−(3−メトキシ−ベンゾ)スピロピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン等が挙げられる。
【0126】
ピリジン系、ピラジン系化合物類としては、例えば、米国特許第3,775,424号、同第3,853,869号、同第4,246,318号に記載の化合物が挙げられる。フルオレン系化合物としては、例えば、特開昭63−94878号(特願昭61−240989号)等に記載の化合物が挙げられる。
【0127】
以上の電子供与性無色染料としての好ましい具体例としては以下のような化合物が挙げられるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0128】
【化20】

【0129】
またシアニンベース系化合物(ロイコシアニン化合物)は、酸(プロトン)付加によりシアニン色素となって発色(長波長化)する化合物であり、これらも電子供与性染料として好ましく用いられる。シアニンベースは可視光またはUV発色することが好ましい。
シアニンベースの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0130】
【化21】

【0131】
前記電子供与性無色染料の使用量としては、感光感熱記録層中に、0.01〜3g/mが好ましく、0.1〜1g/mがより好ましい。前記使用量が、0.01g/m未満であると、十分な発色濃度を得ることができないことがあり、3g/mを超えると、塗布適性が劣化することがある。多層記録層の場合には、前記使用量の電子供与性無色染料を含有する記録層を複数積層して構成する。
【0132】
前記ジアゾニウム塩化合物としては、下記式で表される化合物を挙げることができる。
Ar−N-
〔式中、Arは芳香族環基を表し、X-は酸アニオンを表す。〕
【0133】
このジアゾニウム塩化合物は加熱によりカプラーとカップリング反応を起こして発色したり、また光によって分解する化合物である。これらはAr部分の置換基の位置や種類によって、その最大吸収波長を制御することが可能である。
【0134】
前記式において、Arは、置換又は無置換のアリール基を表す。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボアミド基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、ウレイド基、ハロゲン基、アミノ基、ヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられ、これら置換基は、更に置換されていてもよい。
【0135】
また、アリール基としては、炭素原子数6〜30のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、2−ブトキシフェニル基、2−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基、2−オクチルオキシフェニル基、3−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシエトキシ)フェニル基、4−クロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3−クロロフェニル基、3−メチルフェニル基、3−メトキシフェニル基、3−ブトキシフェニル基、3−シアノフェニル基、3−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、
【0136】
3−(ジブチルアミノカルボニルメトキシ)フェニル基、4−シアノフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基、4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基、4−ベンジルフェニル基、4−アミノスルホニルフェニル基、4−N,N−ジブチルアミノスルホニルフェニル基、4−エトキシカルボニルフェニル基、4−(2−エチルヘキシルカルボニル)フェニル基、4−フルオロフェニル基、3−アセチルフェニル基、2−アセチルアミノフェニル基、4−(4−クロロフェニルチオ)フェニル基、4−(4−メチルフェニル)チオ−2,5−ブトキシフェニル基、4−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)−2−ドデシルオキシカルボニルフェニル基、等が挙げられる。
【0137】
また、これらの基は、さらに、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、置換フェニル基、シアノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ヘテロ環基等により置換されていてもよい。
【0138】
本発明に用いるジアゾニウム塩化合物の最大吸収波長λmaxとしては、効果の点から450nm以下であることが好ましく、290〜440nmであることがより好ましい。また、本発明に用いるジアゾニウム塩化合物としては、炭素数12以上で、水に対する溶解度が1%以下かつ酢酸エチルに対する溶解度が5%以上のジアゾニウム塩化合物が好ましい。
【0139】
以下に、好適なジアゾニウム塩化合物の具体例を示すが、本発明おいてはこれに限定されるものではない。
【0140】
【化22】

【0141】
【化23】

【0142】
【化24】

【0143】
【化25】

【0144】
【化26】

【0145】
【化27】

【0146】
前記ジアゾニウム塩化合物は、単独で用いてもよいし、色相調整等の諸目的に応じて2種以上併用して使用してもよい。
【0147】
前記ジアゾニウム塩化合物の使用量としては、感光感熱記録層中に0.01〜3g/mが好ましく、0.02〜1.0g/mがより好ましい。前記使用量が、0.01g/m未満であると、十分な発色性を得ることができないことがあり、3g/mを超えると、感度が低下したり、定着時間を長くする必要が生じることがある。多層記録層の場合には、前記使用量の電子供与性無色染料を含有する記録層を複数積層して構成する。
【0148】
次に、本発明の2光子吸収記録材料が消色反応を用いる場合を説明する。
【0149】
前記消色源としての二成分(消色成分A及び消色させる化合物)の組合せとしては、前記(ア)〜(ツ)の組合せの発色反応を消色反応に変更すれば良いが、その中でも、あるいはそれ以外であっても特に好ましい組み合わせとしては以下を挙げることができる(下記例において、それぞれ前者が消色成分、後者が消色させる化合物を表す。)。
【0150】
(テ)酸化型消色剤と酸化剤との組合せ。
(ト)解離型色素解離体(酸消色性色素)と電子供与性化合物(酸)との組み合わせ
(ナ)電子供与性染料前駆体発色体と電子供与性化合物(塩基)との組合せ。
(ニ)ラジカル消色性色素とラジカル発生剤の組み合わせ
【0151】
特に、(ト)の解離型色素解離体(酸消色性色素)と電子供与性化合物(酸)との組み合わせが好ましい。解離型色素解離体(酸消色性色素)としては、解離型ベンジリデン色素、解離型オキソノール色素、解離型キサンテン色素、解離型アゾ色素の解離体であることが好ましく、解離型ベンジリデン色素、解離型オキソノール色素、解離型アゾ色素の解離体であることがより好ましい。ここで解離型色素とは−OH基、−SH基、−COOH基、−NHSOR基や−CONHSOR基等、pKaが2〜14程度の範囲内にある活性水素を有し、プロトンが解離することによって、吸収が長波長化または高ε化する色素の総称である。したがって、解離型色素をあらかじめ塩基で処理して解離型としておけば、あらかじめ長波長化または高ε化した色素を調製することができ、光酸発生により非解離型に変化させ消色(短波長化または低ε化)することが可能となる。
【0152】
以下に本発明の解離型色素解離体(酸消色性色素)の具体的な例を挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0153】
【化28】

【0154】
本発明の2光子吸収記録材料では、用いる電子供与性無色染料またはジアゾニウム塩化合物(以下、「発色成分」ということがある。)、あるいは解離型色素解離体(以下、「消色成分」ということがある。)等をマイクロカプセルに内包して使用することが好ましい。マイクロカプセル化する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、米国特許第2800457号、同28000458号に記載の親水性壁形成材料のコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号、英国特許第990443号、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−771号等に記載の界面重合法、米国特許第3418250号、同3660304号に記載のポリマー析出による方法、米国特許第3796669号に記載のイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号に記載のイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同4087376号、同4089802号に記載の尿素−ホルムアルデヒド系、尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025455号に記載のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシブロビルセルロース等の壁形成材料を用いる方法、特公昭36−9168号、特開昭51−9079号に記載のモノマーの重合によるin situ法、英国特許第952807号、同965074号に記載の電解分散冷却法、米国特許第3111407号、英国特許第930422号に記載のスプレードライング法、特公平7−73069号、特開平4−101885号、特開平9−263057号に記載の方法等が挙げられる。
【0155】
マイクロカプセル化する方法としては、これらに限定されるものではないが、特に、発色または消色成分をカプセルの芯となる疎水性の有機溶媒に溶解又は分散させ調製した油相を、水溶性高分子を溶解した水相と混合し、ホモジナイザー等の手段により乳化分散した後、加温することによりその油滴界面で高分子形成反応を起こし、高分子物質のマイクロカプセル壁を形成させる界面重合法を採用することが好ましい。前記界面重合法は、短時間内に均一な粒径のカプセルを形成することができ、生保存性に優れた2光子吸収記録材料を得ることができる。
【0156】
本発明において好ましいマイクロカプセルは、常温では、マイクロカプセル壁(以下、単に「カプセル壁」という。)の物質隔離作用によりカプセル内外の物質の接触が妨げられ、ある値以上に熱及び/又は圧力が加えられた場合のみ、カプセル内外の物質の接触が可能となるようなものである。この現象は、カプセル壁の材料、カプセル芯物質(カプセルに内包する物質)、添加剤等を適宜選択することにより、カプセルの物性の変化として自由にコントロールすることができる。
【0157】
本発明において使用しうるカプセル壁の材料は、油滴内部及び/又は油滴外部に添加される。前記カプセル壁の材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましく、ポリウレタン、ポリウレアがより好ましい。前記高分子物質は、2種以上併用して用いることもできる。
【0158】
例えば、ポリウレタンをカプセル壁材として用いる場合には、多価イソシアネート及びそれと反応してカプセル壁を形成する第2物質(例えば、ポリオール、ポリアミン)を水溶性高分子水溶液(水相)又はカプセル化すべき油性媒体(油相)中に混合し、水中に乳化分散した後、加温することにより油滴界面で高分子形成反応が起こし、マイクロカプセル壁を形成する。前記多価イソシアネート及びそれと反応する相手のポリオール、ポリアミンとしては、米国特許第3281383号、同3773695号、同3793268号、特公昭48−40347号、同49−24159号、特開昭48−80191号、同48−84086号に記載のものを使用することもできる。
【0159】
マイクロカプセルを形成する際、内包する発色または消色成分は、該カプセル中に溶液状態で存在していても、固体状態で存在していてもよい。溶液状態でカプセルに内包させる場合には、発色成分である電子供与性無色染料又はジアゾニウム塩化合物、消色成分である解離型色素解離体を有機溶媒に溶解した状態でカプセル化すればよい。
【0160】
前記有機溶媒としては、一般に、高沸点溶媒の中から適宜選択することができ、例えば、リン酸エステル、フタル酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、その他のカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、アルキル化ビフェニル、アルキル化ターフェニル、塩素化パラフィン、アルキル化ナフタレン、ジアリルエタン、常温で固体の化合物、オリゴマーオイル、ポリマーオイル等が挙げられ、具体的には、特開昭59−178451〜同59−178455号、同59−178457号、同60−242094号、同63−85 633号、特開平6−194825号、同7−13310号〜同7−13311号、同9−106039号の各公報及び特開昭63−45084号(特願昭62−75409号)明細書に記載の有機溶剤が挙げられる。前記有機溶媒の使用量としては、電子供与性無色染料または解離型色素解離体100質量部に対し、1〜500質量部が好ましい。また、カプセル化の際、上記の有機溶媒を使用せずに、いわゆるオイルレスカプセルとしてもよい。
【0161】
また、内包しようとする電子供与性無色染料又はジアゾニウム塩化合物、解離型色素解離体等の前記有機溶媒に対する溶解性が低い場合には、さらに補助溶剤として溶解性の高い低沸点溶媒を併用することもできる。一方、前記有機溶媒を使用せずに前記低沸点溶媒を使用することもできる。前記低沸点溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチレンクロライド等が挙げられる。
【0162】
前記油相を乳化分散する水相には、水溶性高分子を溶解した水溶液を使用する。前記水相中に油相を投入した後、ホモジナイザー等の手段により乳化分散を行うが、前記水溶性高分子は、分散を均一かつ容易にしうる保護コロイドとしての作用を有するとともに、乳化分散した水溶液を安定化させる分散媒としても作用する。ここで、乳化分散をさらに均一に行い、より安定な分散液とするためには、油相或いは水相の少なくとも一方に界面活性剤を添加することができる。
【0163】
前記保護コロイドとして含有させる水溶性高分子としては、公知のアニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子の中から適宜選択することができる。
【0164】
アニオン性高分子としては、天然、合成のいずれのものも用いることができ、例えば、−COO−、−SO−等の連結基を有するものが挙げられる。具体的には、アラビヤゴム、アルギン酸、ベクチン等の天然物;カルボキシメチルセルロース、フタル化ゼラチン等のゼラチン誘導体、硫酸化デンプン、硫酸化セルロース、リグニンスルホン酸等の半合成品;無水マレイン酸系(加水分解物を含む)共重合体、アクリル酸系(メタクリル酸系)重合体及び共重合体、ビニルベンゼンスルホン酸系重合体及び共重合体、カルボキシ変成ポリビニルアルコール等の合成品が挙げられる。
【0165】
ノニオン性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。両性高分子としては、ゼラチン等が挙げられる。中でも、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコールが好ましい。前記水溶性高分子は、0.01〜10質量%の水溶液として用いられる。
【0166】
前記界面活性剤としては、公知の乳化用界面活性剤の中から適宜選択することができ、例えば、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤の中から、前記のように保護コロイドと作用し、沈殿や凝集を起こさないものを適宜選択して使用することができる。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)等が挙げられる。前記界面活性剤の添加量としては、油相質量に対し、0.1%〜5%が好ましく、0.5%〜2%がより好ましい。
【0167】
発色または消色成分をはじめとする全ての含有成分は、例えば、水溶性高分子、増感剤及びその他の発色または消色助剤等とともに、サンドミル等の手段により固体分散して用いることもできるが、予め水に難溶性又は不溶性の高沸点有機溶剤に溶解した後、これを界面活性剤及び/又は水溶性高分子を保護コロイドとして含有する高分子水溶液(水相)と混合し、ホモジナイザー等で乳化した乳化分散物として用いることが好ましい。この場合、必要に応じて、低沸点溶剤を溶解助剤として用いることができる。さらに、発色または消色成分をはじめとする全ての含有成分は、それぞれ別々に乳化分散することも、予め混合してから高沸点溶媒及び/又は低沸点溶媒に溶解し、乳化分散することも可能である。乳化分散して形成する乳化分散粒子径としては、1μm以下が好ましい。
【0168】
前記乳化分散は、前記成分を含有した油相と界面活性剤及び/又は保護コロイドとを含有する水相を、高速撹拌、超音波分散等の微粒子乳化に用いる手段、例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル等の公知の乳化装置を用いて容易に行うことができる。
【0169】
乳化後は、カプセル壁形成反応を促進させる目的で、乳化物を30〜70℃に加温する。また、反応中はカプセル同士の凝集を防止するために、加水してカプセル同士の衝突確率を低下させたり、十分な攪拌を行う等の必要がある。一方、反応中に、別途凝集防止用の分散物を添加することもできる。前記カプセル壁形成反応の終点は、重合反応の進行に伴って炭酸ガスの発生が観測され、その発生の終息をもっておよその終点とみなすことができる。通常、数時間反応を行うことにより、発色または消色成分を内包するマイクロカプセルを得ることができる。
【0170】
本発明において、マイクロカプセルの平均粒子径としては、高解像度を得る観点から、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.2μm以下であることが最も好ましい。
【0171】
本発明の2光子吸収記録材料における感光感熱記録層中に使用する、同一分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合性基と前記発色または消色成分Aと反応して発色または消色する部位とを有する実質的に無色の化合物Bとしては、重合性基を有する電子受容性化合物又は重合性基を有するカプラー化合物等の、前記発色または消色成分Aと反応して発色または消色し、かつ光に反応して重合、硬化するという両機能を有するものであれば全て使用することができる。
【0172】
前記重合性基を有する電子受容性化合物、即ち、同一分子中に電子受容性基と重合性基とを有する化合物としては、前記発色成分Aの一つである電子供与性無色染料と反応して発色し、あるいは前記消色成分Aの一つである解離型色素解離体と反応して消色し、かつ光重合して膜を硬化しうるものであれば全て使用することができる。前記電子受容性化合物としては、特開平4−226455号に記載の3−ハロ−4−ヒドロキシ安息香酸、特開昭63−173682号に記載のヒドロキシ基を有する安息香酸のメタアクリロキシエチルエステル、アクリロキシエチルエステル、特開昭59−83693号、同60−141 587号、同62−99190号に記載のヒドロキシ基を有する安息香酸とヒドロキシメチルスチレンとのエステル、欧州特許29323号に記載のヒドロキシスチレン、特開昭62−167077号、同62−16708号に記載のハロゲン化亜鉛のN−ビニルイミダゾール錯体、同63−317558号に記載の電子受容性化合物等を参考にして合成できる化合物等が挙げられる。これらの電子受容性基と重合性基とを同一分子内に有する化合物のうち、下記一般式で表される3−ハロ−4−ヒドロキシ安息香酸が好ましい。
【0173】
【化29】

【0174】
〔式中、Xは、ハロゲン原子を表し、中でも、塩素原子が好ましい。Yは、重合性エチレン基を有する1価の基を表し、中でも、ビニル基を有するアラルキル基、アクリロイルオキシアルキル基又はメタクリロイルオキシアルキル基が好ましく、炭素数5〜11のアクリロイルオキシアルキル基又は炭素数6〜12のメタクリロイルオキシアルキル基がより好ましい。Zは、水素原子、アルキル基又はアルコキシル基を表す。〕
【0175】
前記3−ハロ−4−ヒドロキシ安息香酸としては、例えば、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸エステルビニルフェネチルエステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸ビニルフェニルプロピルエステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(2−アクリロイルオキシエチル)エステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(2−メタクリロイルオキシエチル)エステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(2−アクリロイルオキシプロピル)エステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(2−メタクリロイルオキシプロピル)エステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(3−アクリロイルオキシプロピル)エステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(3−メタクリロイルオキシプロピル)エステル、
【0176】
3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(4−アクリロイルオキシブチル)エステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(4−メタクリロイルオキシブチル)エステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(5−アクリロイルオキシペンチル)エステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(5−メタクリロイルオキシペンチル)エステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(6−アクリロイルオキシヘキシル)エステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(6−メタクリロイルオキシヘキシル)エステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(8−アクリロイルオキシオクチル)エステル、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸−(8−メタクリロイルオキシオクチル)エステル等が挙げられる。
【0177】
さらに、前記電子受容性基と重合性基とを同一分子内に有する化合物として、以下の化合物も好適に挙げることができる。即ち、例えば、スチレンスルホニルアミノサリチル酸、ビニルベンジルオキシフタル酸、β−メタクリロキシエトキシサリチル酸亜鉛、β−アクリロキシエトキシサリチル酸亜鉛、ビニロキシエチルオキシ安息香酸、β−メタクリロキシエチルオルセリネート、β−アクリロキシエチルオルセリネート、β−メタクリロキシエトキシフェノール、β−アクリロキシエトキシフェノール、
【0178】
β−メタクリロキシエチル−β−レゾルシネート、β−アクリロキシエチル−β−レゾルシネート、ヒドロキシスチレンスルホン酸−N−エチルアミド、β−メタクリロキシプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、β−アクリロキシプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、メタクリロキシメチルフェノール、アクリロキシメチルフェノール、メタクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、β−メタクリロキシエトキシ−ジヒドロキシベンゼン、β−アクリロキシエトキシ−ジヒドロキシベンゼン、γ−スチレンスルホニルオキシ−β−メタクリロキシプロパンカルボン酸、
【0179】
γ−アクリロキシプロピル−α−ヒドロキシエチルオキシサリチル酸、β−ヒドロキシエトキニルフェノール、β−メタクリロキシエチル−p−ヒドロキシシンナメート、β−アクリロキシエチル−p−ヒドロキシシンナメート、3,5ジスチレンスルホン酸アミドフェノール、メタクリロキシエトキシフタル酸、アクリロキシエトキシフタル酸、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリロキシエトキシヒドロキシナフトエ酸、アクリロキシエトキシヒドロキシナフトエ酸、
【0180】
3−β−ヒドロキシエトキシフェノール、β−メタクリロキシエチル−p−ヒドロキシベンゾエート、β−アクリロキシエチル−p−ヒドロキシベンゾエート、β’−メタクリロキシエチル−β−レゾルシネート、β−メタクリロキシエチルオキシカルボニルヒドロキシ安息香酸、β−アクリロキシエチルオキシカルボニルヒドロキシ安息香酸、N,N’−ジ−β−メタクリロキシエチルアミノサリチル酸、N,N’−ジ−β−アクリロキシエチルアミノサリチル酸、N,N’−ジ−β−メタクリロキシエチルアミノスルホニルサリチル酸、N,N’−ジ−β−アクリロキシエチルアミノスルホニルサリチル酸、及びこれらの金属塩(例えば、亜鉛塩等)等も好適に挙げることができる。
【0181】
前記重合性基を有する電子受容性化合物は、前記電子供与性無色染料または解離型色素解離体と組合わせて用いられる。この場合、電子受容性化合物の使用量としては、使用する電子供与性無色染料または解離型色素解離体1質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましい。0.5質量部未満であると、十分な発色または消色濃度つまり屈折率変調量を得ることができないことがあり、20質量部を超えると、感度の低下や塗布適性の劣化を招くことがある。
【0182】
また、前記重合性基を有するカプラー化合物としては、重合性基を有し、かつ前記発色成分Aの一つであるジアゾニウム塩化合物と反応して発色し、かつ光重合して膜を硬化しうるものであれば全て使用することができる。カプラー化合物は、塩基性雰囲気及び/又は中性雰囲気でジアゾ化合物とカップリングして色素を形成するものであり、色相調整等種々の目的に応じて、複数種を併用して用いることができる。以下に、カプラー化合物の具体例を示すが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0183】
【化30】

【0184】
【化31】

【0185】
【化32】

【0186】
【化33】

【0187】
【化34】

【0188】
【化35】

【0189】
【化36】

【0190】
前記カプラー化合物は、ジアゾニウム塩化合物と組合わせて用いる。本発明の2光子吸収記録材料の感光感熱記録層中における、前記カプラー化合物の使用量としては、0.02〜5g/mが好ましく、効果の点から、0.1〜4g/mがより好ましい。前記添加量が、0.02g/m未満であると、発色性に劣ることがあり、5g/mを越えると、塗布適性が悪くなることがある。
【0191】
また、カプラー化合物の使用量としては、ジアゾニウム塩化合物1質量部に対し、0.5〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。前記使用量が、0.5質量部未満であると、十分な発色性、つまり屈折率変調量を得られないことがあり、20質量部を超えると、塗布適性が劣化することがある。
【0192】
カプラー化合物は、その他の成分とともに水溶性高分子を添加して、サンドミル等により固体分散して用いることもできるが、適当な乳化助剤とともに乳化し、乳化物として用いることもできる。ここで、固体分散又は乳化する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法の中から適宜選択することができる。方法の詳細については、特開昭59−190886号、特開平2−141279号、特開平7−17145号に記載されている。
【0193】
また、カップリング反応を促進する目的で、有機塩基を用いることが好ましい。該有機塩基としては、例えば、特開昭57−123086号、特開昭60−49991号、特開昭60−94381号、特開平9−71048号(特願平7−228731号)、特開平9−77729号(特願平7−235157号)、特開平9−77737号(特願平7−235158号)等に記載の、第3級アミン類、ピペリジン類、ピペラジン類、アミジン類、フォルムアミジン類、ピリジン類、グアニジン類、モルホリン類等が挙げられる。前記有機塩基は、単独で用いてよいし、2種以上併用して用いてもよい。有機塩基の使用量としては特に限定はないが、ジアゾニウム塩1モルに対し、1〜30モルが好ましい。
【0194】
さらに、発色または消色反応を促進させる目的で、発色または消色助剤を加えることもできる。前記発色または消色助剤としては、フェノール誘導体、ナフトール誘導体、アルコキシ置換ベンゼン類、アルコキシ置換ナフタレン類、ヒドロキシ化合物、カルボン酸アミド化合物、スルホンアミド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、カプラー化合物又は塩基性物質の融点を低下させる、或いは、マイクロカプセル壁の熱透過性を向上させる作用を有することから、高い発色または消色濃度つまり、大きな屈折率、吸収率または発光強度変調量が得られるものと考えられる。
【0195】
本発明においては、前記発色または消色成分Aと反応して発色または消色させる化合物として、上述の重合性基を有する化合物Bに代えて、重合性基を有しない、発色または消色成分Aと反応して発色または消色させる実質的に無色の化合物Cを使用することもできる。但し、前記化合物Cは重合性基を有しないため、記録層に光重合による膜硬化作用を付与する目的で、同一分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する重合性基と前記発色または消色成分Aと化合物Cとの反応を抑制する部位とを有する実質的に無色の化合物D(以下、「重合性基を有する化合物D」ということがある。)を併用して用いる。
【0196】
前記重合性基を有する化合物Dとしては、既述の光重合性モノマーD若しくはDが挙げられ、発色または消色成分として含む化合物Cの種類に応じて、適宜適合する化合物Dを選択して用いる。発色または消色成分として含む化合物Cと、該化合物Cに適合する化合物Dとの組合せについては逐次後述する。
【0197】
前記化合物Cとしては、重合性基を有しない全ての電子受容性化合物又はカプラー化合物を使用することができる。重合性基を有しない電子受容性化合物としては、前記発色または消色成分Aの一つである電子供与性無色染料または解離型色素解離体と反応して発色または消色しうるものであれば、全て使用することができる。
【0198】
重合性基を有しない電子受容性化合物としては、例えば、フェノール誘導体、サリチル酸誘導体、芳香族カルボン酸の金属塩、酸性白土、ペントナイト、ノボラック樹脂、金属処理ノボラック樹脂、金属錯体等が挙げられる。具体的には、特公昭40−9309号、特公昭45−14039号、特開昭52−140483号、特開昭48−51510号、特開昭57−210886号、特開昭58−87089号、特開昭59−11286号、特開昭60−176795号、特開昭61−95988号等に記載されている。
【0199】
上記のうち、具体的には、下記化合物を挙げることができる。フェノール誘導体としては、例えば、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4−t−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシジフェノキシド、1,1’−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1’−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルブタン、4,4’−sec−イソオクチリデンジフェノール、4,4’−sec−ブチリデンジフェノール、4−tert−オクチルフェノール、4−p−メチルフェニルフェノール、4,4’−メチルシクロヘキシリデンフェノール、4,4’−イソペンチリデンフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0200】
サリチル酸誘導体としては、例えば、4−ペンタデシルサリチル酸、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ(tert−オクチル)サリチル酸、5−オクタデシルサリチル酸、5−α−(p−α−メチルベンジルフェニル)エチルサリチル酸、3−α−メチルベンジル−5−tert−オクチルサリチル酸、5−テトラデシルサリチル酸、4−ヘキシルオキシサリチル酸、4−シクロヘキシルオキシサリチル酸、4−デシルオキシサリチル酸、4−ドデシルオキシサリチル酸、4−ペンタデシルオキシサリチル酸、4−オクタデシルオキシサリチル酸等、及びこれらの亜鉛、アルミニウム、カルシウム、銅、鉛塩等が挙げられる。
【0201】
前記重合性基を有しない電子受容性化合物の使用量としては、電子供与性無色染料の使用量に対し、5〜1000質量%が好ましい。
【0202】
前記重合性基を有しない電子受容性化合物を用いる場合には、重合性基を有する化合物Dとして、既述の光重合性モノマーDを併用する。前記光重合性モノマーDとしては、電子供与性無色染料と電子受容性化合物との反応抑制機能を有し、分子内に少なくとも1個のビニル基を有する光重合性モノマーであることが好ましい。
【0203】
本発明の2光子吸収記録材料の感光感熱記録層中における、前記光重合性モノマーDの使用量としては、前記発色または消色成分Aと反応して発色または消色する実質的に無色の化合物C1質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。前記使用量が、0.1質量部未満であると、2光子吸収工程で潜像を形成することができないことがあり、10質量部を超えると、発色または消色濃度が低下、つまり屈折率、吸収率または発光強度変調量が低下することがある。
【0204】
前記重合性基を有しないカプラー化合物としては、前記発色成分Aの1つであるジアゾニウム塩化合物と反応して発色しうるものであれば全て使用することができる。前記重合性基を有しないカプラー化合物は、塩基性雰囲気及び/又は中性雰囲気でジアゾニウム塩化合物とカップリングして色素を形成するものであり、色相調整等種々目的に応じて、複数種を併用することが可能である。
【0205】
重合性基を有しないカプラー化合物としては、カルボニル基の隣にメチレン基を有するいわゆる活性メチレン化合物、フェノール誘導体、ナフトール誘導体などを挙げることができ、本発明の目的に合致する範囲で適宜、選択して使用することができる。
【0206】
前記重合性基を有しないカプラー化合物としては、レゾルシン、フロログルシン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルオキシプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3 −ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミド、5−アセトアミド−1−ナフトール、
【0207】
1−ヒドロキシ−8−アセトアミドナフタレン−3,6−ジスルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−8−アセトアミドナフタレン−3,6−ジスルホン酸ジアニリド、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸オクチルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−シクロペンタンジオン、5−(2−n−テトラデシルオキシフェニル)−1,3−シクロヘキサンジオン、5−フェニル−4−メトキシカルボニル−1,3−シクロヘキサンジオン、5−(2,5−ジ−n−オクチルオキシフェニル)−1,3−シクロヘキサンジオン、N,N’−ジシクロヘキシルバルビツール酸、N,N’−ジ−n−ドデシルバルビツール酸、
【0208】
N−n−オクチル−N’−n−オクタデシルバルビツール酸、N−フェニル−N’−(2,5−ジ−n−オクチルオキシフェニル)バルビツール酸、N,N’−ビス(オクタデシルオキシカルボニルメチル)バルビツール酸、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−3−アニリノ−5−ピラゾロン、1−(2,4,6−トリク ロロフェニル)−3−ベンズアミド−5−ピラゾロン、6−ヒドロキシ−4−メチル−3−シアノ−1−(2−エチルヘキシル)−2−ピリドン、2,4−ビス−(ベンゾイルアセトアミド)トルエン、1,3−ビス−(ピバロイルアセトアミドメチル)ベンゼン、ベンゾイルアセトニトリル、テノイルアセトニトリル、アセトアセトアニリド、ベンゾイルアセトアニリド、ピバロイルアセトアニリド、2−クロロ−5−(N−n−ブチルスルファモイル)−1−ピバロイルアセトアミドベンゼン、1−(2−エチルヘキシルオキシプロピル)−3−シアノ−4−メチル−6−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、1−(ドデシルオキシプロピル)−3−アセチル−4−メチル−6−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、1−(4−n−オクチルオキシフェニル)−3−tert−ブチル−5−アミノピラゾール等が挙げられる。
【0209】
重合性基を有しないカプラー化合物の詳細は、特開平4−201483号、特開平7−223367号、特開平7−223368号、特開平7−323660号、特開平5−278608号、特開平5−297024号、特開平6−18669号、特開平6−18670号、特開平7−316280号等の公報に記載されている。本出願人が、先に提出した特開平9−216468号(特願平8−027095号)、特開平9−216469号(特願平8−027096号)、特願平8−030799号、特開平9−319025号(特願平8−132394号)、特開平10−35113号(特願平8−358755号)、特開平10−193801号(特願平8−358756号)、特開平10−264532号(特願平9−069990号)等に記載ししたものも参照できる。
【0210】
本発明の2光子吸収記録材料の感光感熱記録層中における、重合性基を有しないカプラー化合物の使用量としては、重合性基を有するカプラー化合物の場合と同様である。また、重合性基を有しないカプラー化合物は、前記重合性基を有するカプラー化合物の場合と同様、固体分散又は乳化して用いることができる。前記固体分散又は乳化の方法としては、前記重合性基を有するカプラー化合物の場合と同様である。さらに、カップリング反応を促進する目的で、前記重合性基を有するカプラー化合物の場合と同様の有機塩基を、同量の範囲で使用することができる。発色反応を促進させる目的で用いる発色助剤も、前記重合性基を有するカプラー化合物の場合と同様のものを使用できる。
【0211】
前記重合性基を有しないカプラー化合物を用いる場合には、重合性基を有する化合物Dとして、既述の光重合性モノマーDを併用する。前記光重合性モノマーDとしては、カップリング反応の抑制効果を有する酸性基を有し、金属塩化合物でない光重合性モノマーであることが好ましい。感光感熱記録層中における、前記光重合性モノマーDの使用量としては、前記光重合性モノマーDの場合と同様である。
【0212】
本発明に用いる2光子吸収記録材料の感光感熱記録層中には、上記した発色または消色成分A、化合物B若しくは化合物C、化合物Dのほか、光重合開始剤が含有される。該光重合開始剤としては、前記光重合性組成物において使用可能な光重合開始剤と同様のものを用いることができる。感光感熱記録層中における、分光増感色素の使用量としては、該層の総乾燥質量に対して、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜2質量%がより好ましい。
【0213】
また、光重合開始剤中の、分光増感色素と相互作用する化合物は、前記化合物B中の光重合性基又は化合物D(光重合性モノマーD,D)と光重合反応を開始しうる公知の化合物の中から、1種又は2種以上の化合物を適宜選択して使用することができ、具体的には、既述の化合物の中から適宜選択できる。該分光増感色素と相互作用する化合物の使用量としては、既述の通り、前記光重合性組成物に含まれる光重合開始剤中における分光増感色素との混合比率に従って使用することができる。さらに、感光感熱記録層には、光重合性組成物に使用可能な既述の他の成分をも使用できる。
【0214】
上記のように、支持体上に感光感熱記録層を有してなる2光子吸収記録材料の場合、その態様としては、前記感光感熱2光子吸収記録材料(a)又は(b)のように構成されたものに限定されず、その目的に応じて、様々な態様の構成とすることができる。即ち、2光子吸収記録材料は、単色のみならず多色による吸収率、屈折率、発光強度の変調であってもよいし、また、必要に応じて照射光の入射面側であって感光感熱記録層上となる最外層に保護層が設けられていてもよい。前記多色の2光子吸収記録材料としては、単色の記録層を複数積層した多層構造の2光子吸収記録材料であってもよく、また、同じ記録層を複数積層した多層構造の2光子吸収記録材料であってもよい。
さらに各記録層間には、中間層を設けることもできる。前記保護層としては、単層構造であってもよいし、二層以上の積層構造であってもよい。
【0215】
前記保護層に用いる材料としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、酢酸ビニル−アクリルアミド共重合体、珪素変性ポリビニルアルコール、澱粉、変性澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン類、アラビアゴム、カゼイン、スチレン−マレイン酸共重合体加水分解物、スチレン−マレイン酸共重合物ハーフエステル加水分解物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリアクリルアミド誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、アルギン酸ソーダなどの水溶性高分子化合物、及びスチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等のラテックス類などが挙げられる。
【0216】
前記保護層に用いる水溶性高分子化合物を架橋することにより、保存安定性をより一層向上させることもできる。前記架橋に用いる架橋剤としては、公知の架橋剤を使用することができ、具体的にはN−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、尿素−ホルマリン等の水溶性初期縮合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物類、硼酸、硼砂等の無機系架橋剤、ポリアミドエピクロルヒドリンなどが挙げられる。
【0217】
前記保護層には、更に公知の顔料、金属石鹸、ワックス、界面活性剤、蛍光増白剤等を使用することもでき、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系、ヒドロキシベンゾフェノン系、ヒドロキシフェニルトリアジン系等の公知のUV吸収剤やUV吸収剤プレカーサーを添加することもできる。
【0218】
前記保護層の塗布量(乾燥)としては、0.2〜5g/mが好ましく、0.5〜3g/mがより好ましい。
【0219】
多色の2光子吸収記録材料とする場合、例えば、支持体上に、複数の単色の記録層を積層して構成することもでき、各記録層中に、それぞれ発色または消色色相の異なる発色または消色成分を含有するマイクロカプセルと、それぞれ異なる波長の光に感光する光重合性組成物と、を含有させることにより多色の多層2光子吸収記録材料とすることができ、光照射した際、その光源波長の違いにより各記録層が感光して全体として多色発色による屈折率、吸収率または発光強度変調による記録を構成する。前記光重合性組成物は、それぞれ異なる吸収波長を有する分光増感色素を使用することにより、異なる波長の光に感光する光重合性組成物とすることができる。この場合、既述の通り、各単色の記録層間に中間層を設けることもできる。
【0220】
各単色の記録層間に設ける中間層は、主にバインダーにより構成され、必要に応じて、硬化剤、ポリマーラテックス、フィルター色素、雲母、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0221】
水中油滴分散法では、沸点が175℃以上の高沸点溶媒又は30〜160℃の低沸点溶媒のいずれか一方の単独液、又は両者混合液中に前記フィルター色素を溶解した後、界面活性剤の存在下、水、ゼラチン水溶液又はポリビニルアルコール水溶液等の水溶液中に微細分散する。前記高沸点溶媒としては、米国特許第2322027号等に記載の溶媒が挙げられる。また、高沸点溶媒、低沸点溶媒は、前述のマイクロカプセルの製造時に用いた溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
【0222】
ポリマー分散法の工程、硬化及び含浸用のラテックスの具体例としては、米国特許第4199383号、西独特許出願公開(OLS)第2541274号、同第2541230号、特開昭49−74538号、同51−59943号、同54−32552号や「Research Disclosure Vol.148」(1976年8月、Item 14850)等に記載のものを挙げることができる。
【0223】
中でも、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート等のアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステル;アクリル酸;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の酸モノマーの共重合ラテックスが好ましい。
【0224】
−他の成分−2光子吸収記録材料を構成する保護層、感光感熱記録層、中間層等の各層には、一般にバインダーが用いられ、前記光重合性組成物の乳化分散に用いるバインダーと同様のもの、発色または消色成分をカプセル化する際に用いる水溶性高分子(詳細は後述する)のほか、ポリスチレン、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリメチルアクリレート,ポリブチルアクリレート,ポリメチルメタクリレート,ポリブチルメタクリレートやそれらの共重合体等のアクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エチルセルロース、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の溶剤可溶性高分子、又はこれらの高分子ラテックスを用いることもできる。中でも、ゼラチン及びポリビニルアルコールが好ましい。
【0225】
また、2光子吸収記録材料を構成する各記録層中には、塗布助剤、帯電防止、スベリ性改良、乳化分散、接着防止等の種々の目的で、種々の界面活性剤を用いてもよい。前記界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤であるサポニン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドのアルキルエーテル等のポリエチレンオキサイド誘導体やアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル、N−アシル−N−アルキルタウリン類、スルホコハク酸エステル類、スルホアルキルポリオキシエチレナルキルフェニルエーテル類等のアニオン性界面活性剤、アルキルベタイン類、アルキルスルホベタイン類等の両性界面活性剤、脂肪族又は芳香族第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0226】
さらに、必要に応じて、例えば、染料、紫外線吸収剤、可塑剤、蛍光増白剤、マット剤、塗布助剤、硬化剤、帯電防止剤、滑り性改良剤等の添加剤を使用することもできる。前記添加剤の具体例は、「Research Disclosure,Vol.176」(1978年12月、Item 17643)及び「同Vol.187」(1979年11月、Item 18716)に記載されている。
【0227】
本発明に用いる2光子吸収記録材料においては、感光感熱記録層、中間層、保護層等の各層に硬化剤を併用することが好ましい。特に、保護層中に硬化剤を併用し、保護層の粘着性を低減させることが好ましい。前記硬化剤としては、例えば、写真感光材料の製造に用いられる「ゼラチン硬化剤」が有用であり、そのほか、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド等のアルデヒド系の化合物、米国特許第3635718号等に記載の、反応性のハロゲン化合物、米国特許第3635718号等に記載の、反応性のエチレン性不飽和基を有する化合物、米国特許第3017280号等に記載のアジリジン系化合物、米国特許第3091537号等に記載の、エポキシ系化合物、ムコクロル酸等のハロゲノカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサン、ジクロロジオキサン等のジオキサン類、米国特許第3642486号や米国特許第3687707号に記載のビニルスルホン類、米国特許第3841872号に記載のビニルスルホンブレカーサー類、米国特許第3640720号に記載のケトビニル類が挙げられる。また、無機硬化剤として、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、硼酸等も用いることができる。
【0228】
中でも、1,3,5−トリアクロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,2−ピスピニルスルホニルメタン、1,3−ビス(ビニルスルホニルメチル)プロパノール−2、ビス(α−ビニルスルホニルアセトアミド)エタン、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム塩、2,4,6−トリエチレニミノ−s−トリアジンや硼酸等の化合物が好ましい。前記硬化剤の添加量としては、バインダー量に対し、0.5〜5質量%が好ましい。
【0229】
本発明の2光子吸収記録材料は、前記各成分を必要に応じて溶媒中に溶解して感光感熱記録層用塗布液や保護層用塗布液等を調製し、所望の支持体上に塗布、乾燥して作製することができる。前記溶媒としては、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、メチルセロソルプ、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライド等のハロゲン系溶剤;アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル;トルエン;キシレン等の単独物、及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。中でも、水が特に好ましい。
【0230】
感光感熱記録層用塗布液を塗布する際の塗布手段としては、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、ロールドクターコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター等が挙げられ、該塗布は、「Rcscarch Disclosurc,Vol.200」(1980年12月,Item 20036 XV項)に記載の方法を参考にして行える。感光感熱記録層の層厚としては、0.1〜50μmが好ましく、5〜35μmがより好ましい。
【0231】
本発明の2光子吸収記録材料に用いる支持体としては、中性紙、酸性紙、コーティツドペーパー、ラミネート紙等の合成紙;ポリエチレンテレフタレートフィルム、3酢酸セルロースフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のフィルム;アルミニウム、亜鉛、銅等の金属板;、ガラス乾板;又は、これらの支持体表面に表面処理、下塗、金属蒸着処理等の各種処理を施したもの等が挙げられる。「Research Disclosure,Vol.200」(1980年12月、Item 20036 XVII項)に記載の支持体も用いることができる。前記各種支持体には、蛍光増白剤、青み付け染料、顔料等を含有させることもできる。
なお、特に反射型ホログラムを作成する際には、本発明の2光子吸収記録材料に用いる支持体としては、透明であることが好ましく、好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルム、3酢酸セルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、ガラス乾板などが挙げられる。
【0232】
また、必要に応じて、支持体と感光感熱記録層との間に、アンチハレーション層を、その裏側(支持体の感光感熱記録層の設けられていない側)の表面にはスベリ層、アンチスタチック層、カール防止層、粘着剤層等を設けてもよい。また、支持体と感光感熱記録層との間に接着層を設けて、用いた支持体を剥離紙として使用するシール状の態様に構成することもできる。
【0233】
支持体と感光感熱記録層との間、或いは、透明支持体の場合は、感光感熱記録層の設けられていない側の支持体の表面、に前記アンチハレーション層を設ける場合には、光照射又は熱により漂白可能なアンチハレーション層を設けることもできる。
【0234】
光照射により漂白可能な層とする場合には、例えば、前述の分光増感色素とボレート塩化合物とを組合わせたもの(前記分光増感色素とボレート化合物Iとの組合せ又はボレート化合物Iとボレート化合物IIとの組合せ)を利用することができ、熱により漂白可能な層とする場合には、例えば、熱により塩基又は求核剤が発生し、共存する分光増感色素を漂白しうるような構成が利用できる。
【0235】
前記支持体と感光感熱記録層との間には、酸素透過性の低い、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)等のポリマーを含有してなる層を設けることもでき、該層により、屈折率、吸収率または発光強度変調による記録の光酸化に起因する退色を効果的に防止することができる。
【0236】
以上のように、本発明の2光子吸収記録材料は、前述の課題を抜本的に解決した、とりわけ高感度と良保存性、乾式処理、高記録密度を両立できる全く新しい記録方式を与えるものであり、特に、光記録媒体に用いることが好ましい。
【0237】
さらに、本発明の2光子吸収記録材料は、光記録媒体の他にも、3次元ボリュームディスプレイ、光学材料、レンズ、セキュリティ用途等にも好ましく用いることができる。
【0238】
[実施例]
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、実施例中の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【実施例1】
【0239】
実施例1:2光子吸収記録材料の作成、評価
【0240】
<電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液の調製>
(1−a)電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(I)の調製
酢酸エチル16.9gに、イエロー発色の既に例示した電子供与性無色染料(L−1)8.9gを溶解し、カプセル壁材(商品名:タケネートD−110N,武田薬品工業(株)製)20gとカプセル壁材(商品名:ミリオネートMR200,日本ポリウレタン工業(株)製)2gとを添加した。得られた溶液を、8%フタル化ゼラチン42gと10%ドデシルベンゼンルスルホン酸ナトリウム溶液1.4gとの混合液中に添加した後、温度20℃で乳化分散し、乳化液を得た。次いで、得られた乳化液に水14gと2.9%テトラエチレンペンタミン水溶液72gとを加え、攪拌しながら60℃に加温し、2時間経過後、前記電子供与性無色染料(L−1)を芯とする、平均粒径0.2μmのマイクロカプセル液(I)を得た。
【0241】
(1−b)電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(II)の調製
前記(1−a)で用いた前記電子供与性無色染料(L−1)に代えて、マゼンタ発色の下記電子供与性無色染料(2)を用いたこと以外、前記(1−a)と同様の方法により、下記電子供与性無色染料(2)を芯とする、平均粒径0.2μmのマイクロカプセル液(II)を得た。
【0242】
(1−c)電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(III)調製
前記(1−a)で用いた前記電子供与性無色染料(L−1)に代えて、シアン発色の下記電子供与性無色染料(3)を用いたこと以外、前記(1−a)と同様の方法により、下記電子供与性無色染料(3)を芯とする、平均粒径0.2μmのマイクロカプセル液(III)得た。
【0243】
(1−d)解離型色素解離体内包マイクロカプセル液(IV)の調製
前記(1−a)で用いた前記電子供与性無色染料(L−1)に代えて、イエロー色素でかつ消色性の既に例示した解離型色素解離体(G−23)を用いたこと以外、前記(1−a)と同様の方法により、前記解離型色素解離体(G−23)を芯とする、平均粒径0.2μmのマイクロカプセル液(IV)を得た。
【0244】
(1−e)解離型色素解離体内包マイクロカプセル液(V)の調製
前記(1−a)で用いた前記電子供与性無色染料(L−1)に代えて、マゼンタ色素でかつ消色性の既に例示した解離型色素解離体(G−5)を用いたこと以外、前記(1−a)と同様の方法により、前記解離型色素解離体(G−5)を芯とする、平均粒径0.2μmのマイクロカプセル液(V)を得た。
【0245】
(1−f)シアニンベース内包マイクロカプセル液(VI)の調製
前記(1−a)で用いた前記電子供与性無色染料(L−1)に代えて、イエロー発色の下記シアニンベース(LC−10)を用いたこと以外、前記(1−a)と同様の方法により、下記シアニンベース(LC−10)を芯とする、平均粒径0.2μmのマイクロカプセル液(VI)を得た。
【0246】
(1−g)シアニンベース内包マイクロカプセル液(VII)調製
前記(1−a)で用いた前記電子供与性無色染料(L−1)に代えて、マゼンタ発色の下記シアニンベース(LC−11)を用いたこと以外、前記(1−a)と同様の方法により、下記シアニンベース(LC−11)を芯とする、平均粒径0.2μmのマイクロカプセル液(VII)得た。
【0247】
(1−h)シアニンベース内包マイクロカプセル液(VIII)調製
前記(1−a)で用いた前記電子供与性無色染料(L−1)に代えて、シアン発色の下記シアニンベース(LC−3)を用いたこと以外、前記(1−a)と同様の方法により、下記シアニンベース(LC−3)を芯とする、平均粒径0.2μmのマイクロカプセル液(VIII)得た。
【0248】
<光重合性組成物乳化液の調製>
(2−a)光重合性組成物乳化液(1)の調製
既に例示した、有機ボレート化合物(29)(ボレート化合物I)0.6gと、分光増感色素系ボレート化合物(26)(ボレート化合物II)0.1gと、高感度化を目的とした下記助剤(1)0.1gと、酢酸イソプロピル(水への溶解度約4.3%)3gと、の混合溶液中に、重合性基を有する下記電子受容性化合物(1)5gを添加した。得られた溶液を、13%ゼラチン水溶液13gと、下記2%界面活性剤(1)水溶液0.8gと、下記2%界面活性剤(2)水溶液0.8gと、の混合溶液中に添加し、ホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数10000回転で5分間乳化し、光重合性組成物の乳化液(1)を得た。
【0249】
【化37】

【0250】
【化38】

【0251】
(2−b)光重合性組成物乳化液(2)の調製
前記(2−a)で用いた分光増感色素系ボレート化合物(26)に代えて、既に例示した分光増感色素系ボレート化合物(28)(ボレート化合物II)0.1gを用いたこと以外、前記(2−a)と同様にして光重合性組成物乳化液(2)を得た。
【0252】
<感光感熱記録層用塗布液の調製>
(3−a)感光感熱記録層用塗布液(1)の調製−〔イエロー発色〕
電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(I)4gと、光重合性組成物乳化液(1)12gと、15%ゼラチン水溶液12gと、を混合し、感光感熱記録層用塗布液(1)を調製した。
【0253】
(3−b)感光感熱記録層用塗布液(2)の調製−〔イエロー消色〕
解離型色素解離体内包マイクロカプセル液(IV)4gと、光重合性組成物乳化液(1)12gと、15%ゼラチン水溶液12gと、を混合し、感光感熱記録層用塗布液(2)を調製した。
【0254】
(3−c)感光感熱記録層用塗布液(3)の調製−〔イエロー発色〕
シアニンベース内包マイクロカプセル液(VI)4gと、光重合性組成物乳化液(1)12gと、15%ゼラチン水溶液12gと、を混合し、感光感熱記録層用塗布液(3)を調製した。
【0255】
(3−d)感光感熱記録層用塗布液(4)の調製−〔マゼンタ発色〕
電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(II)4gと、光重合性組成物乳化液(2)12gと、15%ゼラチン水溶液12gと、を混合し、感光感熱記録層用塗布液(4)を調製した。
【0256】
(3−e)感光感熱記録層用塗布液(5)の調製−〔マゼンタ消色〕
解離型色素解離体内包マイクロカプセル液(V)4gと、光重合性組成物乳化液(2)12gと、15%ゼラチン水溶液12gと、を混合し、感光感熱記録層用塗布液(5)を調製した。
【0257】
(3−f)感光感熱記録層用塗布液(6)の調製−〔マゼンタ発色〕
シアニンベース内包マイクロカプセル液(VII)4gと、光重合性組成物乳化液(2)12gと、15%ゼラチン水溶液12gと、を混合し、感光感熱記録層用塗布液(6)を調製した。
【0258】
(3−g)感光感熱記録層用塗布液(7)の調製−〔シアン発色〕
電子供与性無色染料内包マイクロカプセル液(III)4gと、光重合性組成物乳化液(2)12gと、15%ゼラチン水溶液12gと、を混合し、感光感熱記録層用塗布液(7)を調製した。
【0259】
(3−h)感光感熱記録層用塗布液(8)の調製−〔シアン発色〕
シアニンベース内包マイクロカプセル液(VIII)4gと、光重合性組成物乳化液(2)12gと、15%ゼラチン水溶液12gと、を混合し、感光感熱記録層用塗布液(8)を調製した。
【0260】
<本発明101〜108の作成>
厚さ200μmの3酢酸セルロース(TAC)支持体上に、前記感光感熱記録層用塗布液(1)をコーティングバーを用いて、乾燥後の膜厚が約20μmとなるように塗布し、乾燥して感光感熱性2光子吸収記録材料(101)を得た。同様に前記感光感熱記録層用塗布液(1)をそれぞれ前記感光感熱記録塗布液(2)〜(8)に替え、感光感熱性2光子吸収記録材料102〜108を得た。
【0261】
<2光子記録再生評価>
本発明の2光子吸収記録材料104〜108の2光子吸収記録材料の性能評価には、700nmから1000nmの波長範囲で測定可能なTi:sapphireパルスレーザー(パルス幅:100fs、繰り返し:80MHz、平均出力:1W、ピークパワー:100kW)を用い、本発明の2光子吸収記録材料に該レーザー光をNA0.6のレンズで集光して照射した(第一の工程)。潜像が形成された上記試料に120℃の熱板で5秒間加熱した(第二の工程)後、上記試料の表面全体に550−650nmの光を照射し、記録部を定着すると共に分光増感色素の着色を消色した(第三の工程)。
また本発明の2光子吸収記録材料101〜103の2光子吸収記録材料の性能評価には、DVD用の660nm半導体レーザー(出力200mW)を用いて同様に2光子吸収を起こした(第一の工程)。潜像が形成された上記試料に120℃の熱板で5秒間加熱した(第二の工程)後、上記試料の表面全体に450−550nmの光を照射し、記録部を定着すると共に分光増感色素の着色を消色した(第三の工程)。
その結果、試料101〜108いずれにおいても、光照射部のレーザー焦点部(記録部)にて発色または消色を確認できた。記録部と非記録部(レーザー非焦点部)の吸収率の変化は光学顕微鏡等を用い目視にて確認できた。記録部の屈折率を測定した所、非記録部に比較して、発色方式(試料101、103、104、106〜108)では増加し、消色方式(試料102、105)では減少した。試料101〜108に反射型共焦点顕微鏡を用い、発色または消色色素の吸収の無い780nmのレーザー光を照射した所、記録部と非記録部にて屈折率の違いによる反射率の違いを確認できた。
また、記録した試料101〜108に透過型共焦点顕微鏡を用い、それぞれ発色または消色色素の吸収のある波長のレーザーを照射した所、記録部と非記録部にて、吸収率の違いによる透過率の違いを確認できた。
また、試料104〜108においては発光強度の違いも確認できた。
【0262】
また、レーザー焦点位置を水平及び深さ方向に走査することにより、3次元方向の任意の場所に発色または消色させることができた。さらに、発色または消色色素の吸収の無い780nmのレーザー照射により屈折率変調による3次元的な反射率変調が確認できた。発色または消色色素の吸収のある波長のレーザー照射により吸収率変調による3次元的な透過率変調または3次元的な発光強度変調が可能であることが確認できた。
【0263】
さらに試料101〜108を記録後蛍光灯下に2週間放置しても再生は同様に可能であり、光に対する保存性に優れていることがわかった。
【0264】
なお、本発明の試料101にて電子供与性無色染料をLC−2に変更しても、試料104にて電子供与性無色染料をL−6に変更しても、試料107にて電子供与性無色染料をL−4、L−5,L−8、L−9,L−12に変更しても同様な効果が得られた。
また、本発明の試料102にて解離型色素解離体をG−1、G−3、G−7、G−17、G−18、G−22に変更しても、試料105にて解離型色素解離体をG−2、G−4、G−6、G−8、G−14に変更しても同様な効果が得られた。
また、本発明の試料103にて、シアニンベースをLC−1に変更しても、試料106にてシアニンベースをLC−2、LC−8、LC−13〜LC−15に変更しても、試料108にてシアニンベースをLC−12、LC−16に変更しても、同様な効果が得られた。
また本発明の2光子吸収記録材料101〜108にて分光増感色素(2光子吸収化合物)を含む光重合開始剤を(34)、(42)、(44)、(45)に変更しても同様な効果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2光子吸収により2光子吸収記録材料に潜像を形成する第一の工程と、潜像が形成された2光子吸収記録材料に熱処理を施し、潜像に従い屈折率、吸収率または発光強度を変調して記録する第二の工程と、熱処理後の2光子吸収記録材料をさらに全面光照射して形成した記録を定着する第三の工程と、を含み、記録を消去することなく再生可能とできることを特徴とする2光子記録方法。
【請求項2】
前記第一の工程において2光子吸収記録材料に2光子吸収させる光源がレーザーであることを特徴とする請求項1に記載の2光子記録方法。
【請求項3】
前記第三の工程における光照射の光源が、レーザー、LED、フラッシュランプ、蛍光灯、キセノンランプ及び水銀灯より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載の2光子記録方法。
【請求項4】
前記2光子吸収記録材料が、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有し、光重合可能な化合物と、光重合開始剤と、を含有する光重合性組成物を含む請求項1〜3のいずれかに記載の2光子記録方法。
【請求項5】
前記2光子吸収記録材料が、支持体上に、熱応答性マイクロカプセルに内包された発色または消色成分Aと、熱応答性マイクロカプセル外部に、少なくとも、同一分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する重合性基と前記発色または消色成分Aと反応して発色または消色させる部位とを有する実質的に無色の化合物Bと、光重合開始剤と、からなる光重合性組成物と、を含有する感光感熱記録層を有する感光感熱2光子吸収記録材料であり、第一の工程において、前記光重合性組成物が2光子吸収により潜像を形成し、第二の工程において、前記発色または消色成分Aが熱処理により潜像に従って発色または消色することで屈折率、吸収率または発光強度を変調して記録を行い、第三の工程において、前記感光感熱記録層を全面光照射して光重合開始剤成分を消色し、記録を定着することで、記録を消去することなく再生可能とできることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の2光子記録方法。
【請求項6】
前記2光子吸収記録材料が、支持体上に、熱応答性マイクロカプセルに内包された発色または消色成分Aと、熱応答性マイクロカプセル外部に、少なくとも、前記発色または消色成分Aと反応して発色または消色させる実質的に無色の化合物Cと、同一分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する重合性基と前記発色または消色成分Aと化合物Cとの反応を抑制する部位とを有する実質的に無色の化合物Dと、光重合開始剤と、からなる光重合性組成物と、を含有する感光感熱記録層を有する2光子吸収記録材料であり、第一の工程において、前記光重合性組成物が2光子吸収により潜像を形成し、第二の工程において、前記発色または消色成分Aが熱処理により潜像に従って発色または消色することで屈折率、吸収率または発光強度を変調して記録を行い、第三の工程において、前記感光感熱記録層を全面光照射して光重合開始剤成分を消色し、記録を定着することで、記録を消去することなく再生可能とできることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の2光子記録方法。
【請求項7】
前記光重合開始剤が、300〜800nmに最大吸収波長を有する分光増感色素と、該分光増感色素と相互作用する化合物と、を含有する請求項4〜6のいずれかに記載の2光子記録方法。
【請求項8】
請求項7記載の分光増感色素が2光子吸収を行う2光子吸収化合物であることを特徴とする請求項7に記載の2光子記録方法。
【請求項9】
前記2光子吸収記録材料に、2光子吸収化合物である分光増感化合物の有する線形吸収帯よりも長波長でかつ線形吸収のモル吸光係数が10以下の波長のレーザー光を照射して誘起された2光子吸収を利用して記録を起こすことを特徴とする請求項7または8記載の2光子記録方法。
【請求項10】
前記の、分光増感色素と相互作用する化合物の少なくとも1つが、有機系ボレート塩化合物である請求項7〜9のいずれかに記載の2光子記録方法。
【請求項11】
前記2光子吸収を利用した記録が書き換えできない方式であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の2光子吸収記録材料。
【請求項12】
前記2光子吸収記録材料が、複数の記録層を積層してなる多層構成の2光子吸収記録材料であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の2光子記録方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の2光子記録方法が可能な2光子吸収記録材料。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の2光子吸収記録材料に、2光子吸収を利用して屈折率変調または吸収率変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその反射率または透過率の違いを検出することにより再生することを特徴とする2光子記録再生方法。
【請求項15】
前記2光子吸収記録材料に、2光子吸収を利用して発光能変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその発光強度の違いを検出することにより再生することを特徴とする請求項14記載の2光子記録再生方法。
【請求項16】
請求項13記載の2光子吸収記録材料から成る2光子吸収3次元光記録媒体。
【請求項17】
請求項13記載の2光子吸収記録材料が保存時に遮光カートリッジ内に保存されていることを特徴とする2光子吸収光記録媒体。
【請求項18】
請求項14、または15記載の2光子記録再生方法から成る2光子吸収3次元光記録再生方法。
【請求項19】
請求項13記載の2光子吸収記録材料から成る3次元ボリュームディスプレイ。
【請求項20】
請求項1〜12のいずれかに記載の2光子記録方法を用いた3次元ボリュームディスプレイの製造方法。

【公開番号】特開2007−59025(P2007−59025A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246314(P2005−246314)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】