説明

2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤

【課題】ヘアカラー施術後の毛髪の強度低下を抑制し、カチオン性高分子を配合しない場合でも施術後の毛髪に、「ツヤ感」と「滑らかさ」を付与することができる2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤を提供する。
【解決手段】本発明の酸化染毛・脱色剤用第2剤は、少なくとも酸化剤を含み、毛髪を酸化染毛または脱色する際に用いる2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤において、(a)吸着精製ラノリン、(b)コレステロール誘導体を含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪を酸化染毛や脱色する際に用いる2剤式酸化染毛・脱色剤用の第2剤に関するものであり、特にヘアカラー等を施した毛髪の強度低下を抑制し、染毛・脱色後の毛髪に「ツヤ感」や「滑らかさ」を付与することができる2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化染毛剤は、従来から様々なものが使用されているが、染料中間体、カップラーおよびアルカリ剤を主成分とする第1剤と、酸化剤を主成分とする第2剤とからなる2剤式酸化染毛剤が汎用されている。こうした、2剤式酸化染毛剤は、使用時に第1剤と第2剤を混合して用いる。また、2剤式酸化染毛剤において、第1剤に酸化染料を含有させずに構成される脱色剤(2剤式脱色剤用第1剤)も、上記と同様にして第2剤と混合して用いる。
【0003】
本発明では酸化染毛剤用第2剤および脱色剤用第2剤の両方を含むものであるが、これらを総称して2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤(以下、単に「第2剤」と呼ぶことがある)と呼んでいる。
【0004】
2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤での主成分となる酸化剤としては、過酸化水素、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等)、過ホウ酸塩(例えば、過ホウ酸ナトリウム等)、過炭酸塩(例えば、過炭酸ナトリウム等)、臭素酸塩(例えば、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等)等が知られているが、このうち特に過酸化水素が汎用されている。
【0005】
過酸化水素を酸化剤として用いた2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤は、過酸化水素の配合量が6.0質量%以下(0%を含まない)で含有しているものが通常であり、pHは2.5〜3.5であることが好ましいとされている。
【0006】
酸化染毛剤や脱色剤は、毛髪損傷を引き起こし易く、毛髪の艶がなくなったり、毛髪強度低下による枝毛、切毛の発生、パサツキ等の現象として現われてくる。特に、染毛後における染色液の洗い流し時、シャンプー時、乾燥時等において毛髪の傷みが顕著になり、仕上がり後のしっとり感、櫛通りが悪くなる傾向がある。
【0007】
毛髪の損傷を防止するために、2剤式酸化染毛・脱色剤における第2剤に、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、カチオン化セルロースなどのカチオン性高分子を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、カチオン性高分子は、過酸化水素の分解を促進してしまうという問題点もあり、毛髪強度低下を抑制するために十分なものではなかった。このため、カチオン性高分子を配合しなくとも染毛後の毛髪の強度低下を抑制できる第2剤の開発が望まれている。
【0008】
一方、ラノリンは、毛髪や皮膚に対し、しっとり感、適度の油性感、ツヤ等を付与することができるものとして知られている。またラノリンは、乳化安定性やエモリエント性に優れるため、乳化助剤や安定剤、軟化剤としてヘアケアやスキンケアなどの分野において幅広く使用されている。
【0009】
上記のラノリンは2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤では、その配合例はあまり知られておらず、一部パーネントウェーブ用第2剤において配合された例が一部あるだけである(例えば、特許文献2)。しかしながら、ラノリンは、酸素との接触により容易に自動酸化され、本来の性質が減退することが知られており、過酸化水素などの酸化剤を含有する場合においては、経時的にその特有の性質を保持させることは難しかった。また、ラノリンは固有の臭気があり、更にはアレルギーを惹き起こすなどの問題点もある。
【0010】
これに対して、吸着精製ラノリンは、ラノリンのアレルギー起因物質と考えられているラノリン中の遊離アルコール(極性物質)をカラム吸着精製技術により分別したラノリン(非極性ラノリン)であり、ラノリンが有する特異な臭い・色が除去され、皮膚への安全性も高く、更には酸化安定性、加水分解安定性などの安定性にも優れた性質を有している(例えば、非特許文献1)。
【0011】
また、吸着精製ラノリンは、毛髪への収着効果が高く、ヘアトリートメント剤などの毛髪処理剤に応用されている(特許文献3)。しかしながら、吸着精製ラノリンは、ラノリンと比較して構造中に水酸基が少ないため、抱水力は小さいことも知られている。
【0012】
このような点に関して、コレステロールやその誘導体、或は炭化水素(パラフィン)、高級アルコール等との併用によりその抱水力を増加させることも提案されている(特許文献3、非特許文献2)が、こうした方法はヘアカラーでの毛髪損傷を改善するための手段としては不十分である。
【0013】
ところで、上記のような2剤式酸化染毛・脱色剤では、第1剤と第2剤が不均一で塗布された場合、色ムラや毛髪損傷の原因となる。また、塗布時の操作性が悪い場合は、物理的な毛髪損傷(裂毛)を引き起こすことがある。このように、第1剤と第2剤との混合性・塗布性(これを「操作性」と単に呼ぶことがある)が重要な因子となり、より良好な操作性が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−63264号公報 特許請求の範囲等
【特許文献2】特開2005−145870号公報 特許請求の範囲等
【特許文献3】特開平11−322571号公報 特許請求の範囲等
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「化粧品用油脂の科学」 第49〜50頁、フレグランスジャーナル社 1997年発行
【非特許文献2】「化粧品用油脂の科学」 第137頁、フレグランスジャーナル社 1997年発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明はこうした状況の下でなされたものであり、その目的は、ヘアカラー等の施術後の毛髪における強度低下を抑制し、カチオン性高分子等を配合しない場合でも施術後の毛髪に、「ツヤ感」と「滑らかさ」を付与することができる酸化染毛・脱色剤用第2剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成することができた本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤とは、少なくとも酸化剤を含み、毛髪を酸化染毛または脱色する際に用いる2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤において、(a)吸着精製ラノリン、(b)コレステロール誘導体を含有する点に要旨を有するものである。
【0018】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤においては、(a)吸着精製ラノリンは、その含有量が0.01〜10質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)であることが好ましい。また(b)コレステロール誘導体は、その含有量が0.01〜10質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)であることが好ましい。
【0019】
上記(a)吸着精製ラノリンと(b)コレステロール誘導体の配合比[(a):(b)]は1:1〜10:1(質量比)であることが好ましい。
【0020】
本発明の酸化染毛・脱色剤用第2剤において用いるコレステロール誘導体としては、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリルおよびヒドロキシステアリン酸コレステリルよりなる群から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。また本発明の酸化染毛・脱色剤用2剤においては、必要によって、アニオン性界面活性剤を含有させることもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、少なくとも酸化剤を含み、毛髪を酸化染毛または脱色する際に用いる2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤において、(a)吸着精製ラノリン、(b)コレステロール誘導体を含有するものとすることによって、酸化染毛・脱色後の毛髪の強度低下を抑制すると共に、酸化染毛・脱色後の毛髪に「ツヤ感」と「滑らかさ」を付与することのできる2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤が実現できた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者らは、酸化染毛や脱色後の毛髪強度低下の抑制作用を発揮すると共に、「ツヤ感」や「滑らかさ」を付与することのできる2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤を実現するべく、様々な角度から検討した。その結果、(a)吸着精製ラノリンと、(b)コレステロール誘導体を含有させることで、酸化染毛または脱色後の毛髪の強度低下が抑制され、毛髪に「ツヤ感」と「滑らかさ」を付与できることを見出し、本発明を完成した。
【0023】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤に含有される酸化剤としては、過酸化水素、過硫酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、臭素酸塩等、様々なものが適用できるが、代表的なものとして過酸化水素が挙げられる。過酸化水素を用いる場合の濃度は、通常6.0質量%以下(0%を含まない)で用いられるが、6.0質量%以下の過酸化水素ではメラニン分解能力に限界があり、できるだけ高い含有量で過酸化水素を含有させた第2剤も望まれるようになっている。この点、米国等では過酸化水素を12質量%程度まで配合させた第2剤が使用されており、毛髪の明色化に活用されている。このように過酸化水素の含有量を多くすることによって、短時間での処理でメラニン分解効果が達成され、ブリーチ力が増大して短時間で明るいヘアカラー施術が可能になることが期待される。しかしながら、過酸化水素の含有量を多くすればするほど、毛髪のコンディションが低下し、上記の不都合も発生しやすくなる傾向がある。
【0024】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤は、(a)吸着精製ラノリンと(b)コレステロール誘導体を含有させたものであり、これによって酸化剤として過酸化水素を用いた場合であっても毛髪のコンディションを良好にできるものであるが、各成分による作用について説明する。
【0025】
吸着精製ラノリン[上記成分(a)]は、染毛後の毛髪に「滑らかさ」を付与し、若しくは摩擦感を低減する上で必要な成分である。こうした効果を発揮させるためには、0.01質量%以上(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)含有させることが好ましいが、10質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)を超えると却ってべとつき感が生じることになる。特に0.5〜5質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)であることが好ましい。
【0026】
一方、コレステロール誘導体[上記成分(b)]は、抱水性を有する細胞間脂質であるため、これまでスキンケアの分野において保湿感と細胞膜の修復という機能を付与させるために用いられていた。本発明では、このようなコレステロール誘導体を含有させることによって、染毛後に「ツヤ感」を付与するという効果を発揮する。こうした効果を発揮させるためには、コレステロール誘導体の含有量は、0.01質量%以上(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)であることが好ましいが、その含有量が10質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)を超えると却ってべとつき感が生じる。特に、0.1〜1質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)にすることが好ましい。
【0027】
上記のようなコレステロール誘導体としては、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル等が挙げられるが、特に好ましいのはヒドロキシステアリン酸コレステリルである。
【0028】
上記のような吸着精製ラノリンおよびコレステロール誘導体を含有させることによって、酸化染毛や脱色後の毛髪強度低下の抑制作用を発揮すると共に、「ツヤ感」や「滑らかさ」を付与することのできる2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤が実現できたのであるが、こうした効果が発揮される理由については、その全てを明らかにした訳ではないが、おそらく次のように考えることができた。即ち、吸着精製ラノリンは、細胞間脂質である18−メチルエイコサン酸(18MEA)等を多く含むため、毛髪のキューティクルの浮きを防止し、毛髪の表面を平滑にすることで「滑らかさ」を付与できると考えられる。また、吸着精製ラノリンとコレステロール誘導体を組み合わせることによって、抱水性が向上し、染毛後の毛髪に「ツヤ感」を付与できるものと考えられる。更に、毛髪強度低下抑制は、コレステロール誘導体と吸着精製ラノリンが、毛髪中の結合脂質であるため、染毛処理によって毛髪に効果的に作用し、毛髪の強度の低下を抑制できるものと考えられる。
【0029】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤には、上記の成分の他にもアニオン性界面活性剤も含有することが出来る。このアニオン性界面活性剤を配合することにより、第2剤と第1剤との混合時の操作性を向上することが出来る。本発明の第2剤において使用できるアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ベヘニル硫酸ナトリウム、等を挙げることができ、0.01〜10質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)となるように含有させることが好ましい。また、脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等)を適当なアルカリ剤(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等)で中和して使用することも可能である。
【0030】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤は、通常含まれる添加剤を含むものであって良い。こうした添加剤としては、例えば、油脂類・ワセリン・ワックス類などの油剤、保湿剤、界面活性剤類(カチオン性界面活性剤類・ノニオン性界面活性剤類・両性界面活性剤類)、シリコーン類、カチオン化ポリマー、増粘・ゲル化剤、キレート剤、酸化防止剤、安定化剤、pH調整剤、溶剤、消炎剤、香料、色素等を通常程度配合することができる。
【0031】
本発明での2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤の剤型は、クリーム剤型やジェル状剤型が有用であるが、液状の剤型で用いることもできる。
【実施例】
【0032】
次に、実施例によって本発明をより具体的に示すが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは、全て本発明の技術的範囲に包含される。各実施例で用いた試験法について以降に記載する。また下記実施例の配合量は全て質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)である。
【0033】
(実施例1)
(染毛後の「ツヤ感」および「滑らかさ」の評価方法)
染毛後の毛髪のツヤ感と滑らかさの評価は、下記表1に成分組成を示す2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤(以下、単に「第1剤」と呼ぶ)と、下記表2〜表6に示す第2剤を、1:1(質量比)となるように混合し、化学的処理(酸化染毛・脱色処理等)を受けていないヒト由来の毛髪の毛束(30cm、10g)に塗布、35℃、30分間放置した。尚、表1の第1剤で用いた染料は、公知の酸化染料(パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、レゾルシン等)である。
【0034】
次いで、水洗、通常のシャンプー、トリートメント(中野製薬株式会社キャラデコリコシャンプー、トリートメント使用)で処理した後風乾させた。そして、専門のパネラー(10名)により毛髪の「ツヤ感」と「滑らかさ」について、下記の基準によって評価した。その結果を、下記表2〜6に併記する。
【0035】
(「ツヤ感」の評価基準)
3点:非常に「ツヤ感」がある
2点:「ツヤ感」がある
1点:あまり「ツヤ感」を感じない
0点:「ツヤ感」がまったく感じられない
(合計値の評価基準)
◎:26点〜30点
○:21点〜25点
△:16点〜20点
×:10点〜15点
【0036】
(「滑らかさ」の評価基準)
3点:非常に滑らかである
2点:滑らかである
1点:少しざらつく
0点:ざらつく
(合計値の評価基準)
◎:26点〜30点
○:21点〜25点
△:16点〜20点
×:10点〜15点
【0037】
染毛後の毛髪の「滑らかさ」の評価は、染毛前と染毛後の毛髪の摩擦係数(μ)を測定することでも行った。その結果を、下記表2〜6に併記する。
【0038】
(摩擦係数測定方法)
(A)対象毛髪
摩擦係数の測定は、化学的処理を受けていない毛髪(10cm、1g)に上記の染毛処理を2回処理し、その過程において、ラウリル硫酸トリエタノールアミン10%水溶液を用いて洗浄後の湿時の摩擦係数を測定した。
【0039】
(B)初期値設定(初期値の測定は同特性の毛束を選択するために行った)
(i)毛髪の調湿:測定用毛束を20℃、湿度60%で24時間以上調湿した。
(ii)測定機器:測定には、摩擦感テスター「KES−SE」(カトーテック株式会社製)を用いた。
(iii)測定は、測定感度:H、摩擦静荷重:50gf、センサー:シリコンタイプの条件にて行った。走査は、順方向(根元からの毛束)にて行った。MIU値に係数0.1を掛け、摩擦係数(μ)を測定した。
【0040】
(「滑らかさ」の評価基準)
◎:摩擦係数μが0.50未満
○:摩擦係数μが0.50以上、0.60未満
△:摩擦係数μが0.60以上、0.70未満
×:摩擦係数μが0.70以上
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
表2の結果は、ラノリン、吸着精製ラノリン、コレステロール誘導体を単一で含有する2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤を調製し、染毛後のコンディション評価を行ったものである。この結果から明らかなように、通常のラノリンを配合したもの(処方例2)は、「ツヤ感」、「滑らかさ」、摩擦係数全てその他のものより悪くなった。また、この結果から吸着精製ラノリン(処方例1)が毛髪の「滑らかさ」や摩擦に関与し、コレステロール誘導体(処方例3)が「ツヤ感」に影響を及ぼすことが分かった。
【0048】
表3の結果は、吸着精製ラノリンと各種コレステロール誘導体(ヒドロキシステアリン酸コレステリル、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル)を配合した場合(処方例4〜7)の官能試験と摩擦係数測定を行ったものである。その結果から明らかなように、ヒドロキシステアリン酸コレステリルを配合した場合(処方例4)においてツヤ感が最も優れていることが分かる。これは、ヒドロキシステアリン酸コレステリルがその他のコレステロール誘導体と比較して分子内に水酸基を有することで抱水性が大きいためと考えられる。
【0049】
表4の結果は、(a)吸着精製ラノリンと、(b)ヒドロキシステアリン酸コレステリルの配合比を(a):(b)=1:1(質量比)として配合量を変化させた場合のコンディションについて比較したものである。これにより、各配合量を0.01%〜10%(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)のもの(処方例9〜11)は良いコンディションが得られていることが分かる。また処方例12については、「ツヤ感」が良い結果となっているが、染毛後のコンディションにべたつきが認められた。
【0050】
表5の結果は、(a)吸着精製ラノリンと、(b)ヒドロキシステアリン酸コレステリルの配合比[(a):(b)]を変化した場合について検討したものである。これにより、配合比が適切な範囲である処方例14〜16のものは良好な結果を示していることが分かる。また、処方例17は処方例12と同様に、染毛後の毛髪にべたつきが認められた。
【0051】
表6の結果は、過酸化水素濃度変化におけるコンディションについて検討したものである。これにより、吸着精製ラノリンとヒドロキシステアリン酸コレステリルを配合した2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤を用いたものでは、過酸化水素濃度に影響されずに良いコンディションを付与できることが分かる。
【0052】
(実施例2)
(アニオン性界面活性剤を配合した場合の操作性(混合性と塗布性)の評価)
操作性は、上記表1の第1剤と、下記表7に成分組成を示した第2剤を1:1(質量比)で混合し、そのときの混ざりやすさ(混合性)と混合後の塗布性を、専門のパネラー(10名)により、下記の基準によって評価した。また実施例1と同様にツヤ感、滑らかさ、摩擦係数の評価も行った。その結果を、下記表7に併記する。
【0053】
(混合時の混合性の評価基準)
3点:非常に混合性が優れている
2点:混合性が優れている
1点:やや混合性が悪い
0点:混合性が悪い
(合計値の評価基準)
◎:26点〜30点
○:21点〜25点
△:16点〜20点
×:10点〜15点
【0054】
(塗布性の評価基準)
3点:非常に塗布性が優れている
2点:塗布性が優れている
1点:やや塗布性が悪い
0点:塗布性が悪い
(合計値の評価基準)
◎:26点〜30点
○:21点〜25点
△:16点〜20点
×:10点〜15点
【0055】
【表7】

【0056】
表7の結果から明らかなように、第2剤にアニオン性界面活性剤を配合すると操作性の向上が認められた。またコンディションも良いものとなった。ここで検討したアニオン性界面活性剤の中では、セチル硫酸ナトリウム(処方例24)が最も操作性に優れていた。
【0057】
(実施例3)
(毛髪損傷試験)
染毛後の毛髪の損傷度合いは、染毛後の毛髪の破断強度の測定から評価した。
【0058】
(破断強度測定方法)
上記表1の第1剤と、下記表8に成分組成を示した第2剤を質量比1:1で混合し、化学的処理(酸化染毛・脱色処理等)を受けていないヒト由来の毛髪の毛束(15cm、0.2g)に0.2gを塗布した。その後35℃にて30分間放置し、ラウリル硫酸トリエタノールアミン:10%水溶液で洗浄した。この一連の操作を5回行い、得られた処理毛髪から各試料毛髪を任意に選び、「毛髪直径計測システム」(カトーテック株式会社製)により毛髪の直径[直径(mm)および短径(mm)]を計測し、毛髪の横断面(mm2)を下記(1)式より求めた。次に卓上材料試験機[テンシロンSTA−1150](株式会社オリエンテック製)を用いて、上記試料毛髪の水中における引張り破断値(cN)の測定を行った。その後横断面(mm2)当たりの引張り破断値(cN)を算出することによって、破断強度(cN/mm2)を求めた(n=10)。このときの評価基準は下記の通りである。その結果を、下記表8に併記する。
横断面(mm2)=(π/4)×直径(mm)×短径(mm) …(1)
【0059】
(毛髪損傷度合いの評価基準)
◎:毛髪破断強度が1.70×10cN/mm2以上
○:毛髪破断強度が1.65×10cN/mm2以上、1.70×10cN/mm2未満
△:毛髪破断強度が1.60×10cN/mm2以上、1.65×10cN/mm2未満
×:毛髪破断強度が1.60×10cN/mm2未満
【0060】
【表8】

【0061】
表8の結果から明らかなように、吸着精製ラノリンとヒドロキシステアリン酸コレステリルを配合していることで、無配合のものよりも強度低下が抑制できていることが分かる。また、一般的にコンディショニング成分として用いられているカチオン性高分子(処方例28、29)よりも良い結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酸化剤を含み、毛髪を酸化染毛または脱色する際に用いる2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤において、(a)吸着精製ラノリン、(b)コレステロール誘導体を含有するものであることを特徴とする2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤。
【請求項2】
(a)吸着精製ラノリンは、その含有量が0.01〜10質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)である請求項1に記載の2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤。
【請求項3】
(b)コレステロール誘導体はその含有量が0.01〜10質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤全体に占める割合)である請求項1または2に記載の2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤。
【請求項4】
(a)吸着精製ラノリンと、(b)コレステロール誘導体の配合比[(a):(b)]が1:1〜10:1(質量比)である請求項1〜3のいずれかに記載の2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤。
【請求項5】
前記コレステロール誘導体は、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリルよりなる群から選ばれる1種または2種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤。
【請求項6】
更に、アニオン性界面活性剤を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の2剤式酸化染毛・脱色剤用第2剤。

【公開番号】特開2010−254634(P2010−254634A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108067(P2009−108067)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000213482)中野製薬株式会社 (57)
【Fターム(参考)】