説明

2色成形用金型及び2色成形品の成形方法

【課題】1次成形部を凹状に成形することなく、かつ、1次成形部が可動側金型とともに第1のキャビティから移動可能な2色射出成形金型及び2色射出成形方法を提供すること。
【解決手段】2色射出成形金型1は、可動側金型3と、第1のキャビティ41を可動側金型3との間に規定する第1の固定側金型5と、可動側金型3とともに1次成形部45が第1のキャビティ41から移動した際に、第2のキャビティ61を可動側金型3との間に規定する第2の固定側金型7とを備える。可動側金型3は、1次成形部45の成形時に第1の固定側金型5の固定側ランナ51から第1の樹脂43が流入する可動側ランナ55と、可動側ランナ55からの第1の樹脂43を第1のキャビティ41に射出し、第2のキャビティ61で2次成形部65が成形されるまで、1次成形部45と可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43とが一体化された状態が保持されるゲート57,71とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2色成形用金型及び2色成形品の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2種類の樹脂から製品を成形する方法として、2色射出成形がある。この方法では、可動側金型と第1の固定側金型とにより規定される第1のキャビティで第1の樹脂を用いて1次成形を行った後に、1次成形部を可動側金型とともに移動する。そして、可動側金型と第2の固定側金型とにより規定される第2のキャビティで第2の樹脂を用いて2次成形を行い、2次成形部を1次成形部と一体化する。
【0003】
特許文献1には、2色射出成形により、成形品であるキートップを成形する2色射出成形金型が開示されている。この2色射出成形金型では、可動側金型は、第1の固定側金型に向かって突出する凸部を備える。そして、可動側金型の凸部と第1の固定側金型との間に、1次成形を行う第1のキャビティが規定されている。第1のキャビティでは、第1の樹脂を用いた1次成形により、凸部に対応する凹状の1次成形部が成形される。冷却によって第1の樹脂が収縮することにより、1次成形部により可動側金型の凸部が締付けられる。このため、1次成形部が凸部に密着する。可動側金型の凸部に密着した状態で、1次成形部が可動側金型とともに移動する。そして、可動側金型と第2の固定側金型により規定される第2のキャビティで、2次成形が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−226780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、1次成形部により可動側金型の凸部が締め付けられることにより、1次成形部が凸部に密着する。これは、次工程である2次成形工程を実施するまでの間、1次成形部を金型に対して保持するためである。このため、1次成形部は凸部に対応する凹状に成形する必要がある。
【0006】
近年、平レンズユニット、凸レンズユニット等の様々な成形品が2色射出成形により成形されている。例えば上記特許文献1の2色射出成形方法により平レンズユニットを成形する場合、1次成形で平レンズが成形され、2次成形でレンズ枠が成形される。この場合、1次成形部である平レンズを凸部に密着させるため、平レンズを平板状ではなく凹状に成形する必要がある。すなわち、成形品の構成及び機能の観点からは1次成形部を凹状に成形する必要のない場合であっても、凸部に密着させるために1次成形部が凹状に成形される。また、1次成形部が凹状に成形されることにより、成形品の形状、寸法等の設計事項が制約を受ける。
【0007】
本発明は上記課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、1次成形部を凹状に成形することなく、かつ、1次成形部が可動側金型とともに第1のキャビティから移動可能な2色射出成形金型及び2色射出成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のある態様では、可動側金型と、第1の樹脂が通る第1の固定側ランナを備え、前記第1の樹脂によって1次成形部を成形する第1のキャビティを、前記可動側金型との間に規定する第1の固定側金型と、成形された前記1次成形部に対して、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂によって2次成形部を成形する第2のキャビティを、前記可動側金型との間に規定する第2の固定側金型と、により2色成形品を成形する2色成形用金型であって、前記可動側金型は、前記1次成形部の成形時に、前記第1の固定側ランナと前記第1のキャビティとに連通する可動側ランナと、を有し、
前記1次成形部の成形時に前記可動側ランナから流入した前記樹脂を前記第1のキャビティに射出し、前記第2のキャビティで前記2次成形部が成形されるまで、前記1次成形部と前記1次成形部の成形時に前記可動側ランナに残留した前記樹脂とが一体化された状態が保持される、ことを特徴とする2色成形用金型を提供する。
【0009】
この2色成形用金型では、前記可動側金型は、前記可動側ランナと前記第1のキャビティとが連通する位置に配置されるゲートと、を備え、前記2色成形品が成形された後に、前記ゲートによって前記第1のキャビティに流入した樹脂と前記可動側ランナに流入した樹脂とがゲートカットされることが好ましい。
【0010】
また、前記ゲートは、バナナゲートであってもよく、サブマリーンゲートであってもよい。
【0011】
また、本発明の別のある態様では、可動側金型と第1の固定側金型との間に規定される第1のキャビティで、成形品の1次成形部を成形する1次成形ステップと、前記可動側金型の移動にともなって、前記可動側金型と第2の固定側金型との間に規定される第2のキャビティへ前記第1のキャビティから前記1次成形部を移動させる可動側金型移動ステップと、前記第2のキャビティで前記成形品の2次成形部を成形し、移動後の前記1次成形部に前記2次成形部を一体化させる2次成形ステップと、により2色成形品を成形する2色成形品の成形方法であって、前記1次成形ステップは、前記第1の樹脂を、前記第1の固定側金型が備える固定側ランナ及び前記可動側金型が備える可動側ランナを通って前記第1のキャビティに射出する1次射出ステップを備え、前記固定金型移動ステップによって前記第1のキャビティから前記第2のキャビティへ前記1次成形部を移動させる際、少なくとも、前記1次射出ステップによって射出成形された前記1次成形部と当該1次成形部の成形時に前記可動側ランナに残留した前記樹脂とが一体化された状態が保持されることを特徴とする2色成形品の成形方法を提供する。
【0012】
この2色成形品の成形方法は、前記第2のキャビティで前記1次成形部への前記2次成形部の一体化が完了した後に、前記2色成形品を前記可動側金型から突出す突出しステップを備え、前記突き出しステップにより、前記可動側ランナと前記第1のキャビティとが連通する位置に配置されたゲートによりゲートカットされることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1次成形部を凹状に成形することなく、かつ、1次成形部が可動側金型とともに第1のキャビティから移動可能な2色射出成形金型及び2色射出成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る2色射出成形金型の、第1のキャビティで1次成形部の成形が行われている状態、及び、第2のキャビティで2次成形部の成形が行われている状態を示す断面図。
【図2】第1の実施形態に係る2色射出成形金型の、可動側金型と第1の固定側金型との間の型開きが行われている状態、及び、可動側金型と第2の固定側金型との間の型開きが行われている状態を示す断面図。
【図3】第1の実施形態に係る2色射出成形金型の、可動側金型と第1の固定側金型との間の型開きが行われている状態、及び、可動側金型から成形品の突出しが行われている状態を示す断面図。
【図4】第1の実施形態に係る2色射出成形金型の可動側金型と第1の固定側金型との間の構成を示す断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る2色射出成形金型の可動側金型と第1の固定側金型との間の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0016】
図1乃至図3は、成形品59を2色射出成形する2色射出成形金型1を示す図である。図1乃至図3に示すように、2色射出成形金型1は、可動側金型3と、第1の固定側金型5と、第2の固定側金型7とを備える。また、2色射出成形金型1は、可動側金型3を移動する駆動部9を備える。駆動部9により、第1の固定側金型5と対向する1次成形時の位置と第2の固定側金型7と対向する2次成形時の位置との間で、可動側金型3が移動する。なお、本実施形態での駆動部9は、例えば円盤状に形成されており、円盤の中心軸から等間隔に可動側金型3を二つ配置され、当該円盤の中心軸を回転させることで、可動側金型3が、第1の固定側金型5及び第2の固定側金型7と対向する位置に移動可能となっている。さらに、駆動部9は、第1の固定側金型5及び第2の固定側金型7に対して近接及び離間する方向に移動可能に構成され、型閉じ及び型開きの動作も行うことが可能となっている。
【0017】
可動側金型3は、可動側取付け板11、スペーサブロック13、可動側型板15、突出し板17で構成されている。駆動部9に取付けられる可動側取付け板11を備える。可動側取付け板11には、スペーサブロック13が固定されている。スペーサブロック13には、可動側型板15が固定されている。また、スペーサブロック13には、突出し板17が取付けられている。突出し板17には、3つのエジェクトピン19A〜19Cが固定されている。突出し板17及びエジェクトピン19A〜19Cは、可動側取付け板11、スペーサブロック13及び可動側型板15に対して移動可能である。なお、本実施形態では、エジェクトピンは3本で構成したが、成形品を取り出すことができれば、本数は何本であっても構わない。
【0018】
第1の固定側金型5は、第1の固定側取付け板21、第1の落下板23、第1の固定側型板27で構成されている。第1の固定側取付け板21には、第1の落下板23が固定されている。第1の固定側取付け板21及び第1の落下板23には、第1の連結ピン25が挿通されている。ショルダーボルトとして機能する第1の連結ピン25には、第1の固定側型板27が取付けられている。第1の固定側型板27は、第1の連結ピン25に沿って、第1の固定側取付け板21及び第1の落下板23に対して移動可能である。1次成形時には、第1の連結ピン25を介して、可動側金型3と第1の固定側金型5とが連結される。
【0019】
第2の固定側金型7は、第2の固定側取付け板31、第2の落下板33、第2の固定側型板37で構成されている。第2の固定側取付け板31には、第2の落下板33が固定されている。第2の固定側取付け板31及び第2の落下板33には、第2の連結ピン35が挿通されている。ショルダーボルトとして機能する第2の連結ピン35には、第2の固定側型板37が取付けられている。第2の固定側型板37は、第2の連結ピン35に沿って、第2の固定側取付け板31及び第2の落下板33に対して移動可能である。2次成形時には、第2の連結ピン35を介して、可動側金型3と第2の固定側金型7とが連結される。
【0020】
図4は、可動側金型3と第1の固定側金型5との間の構成を示す図である。図1及び図4に示すように、1次成形時には、可動側型板15と第1の固定側型板27との間に第1のキャビティ41が規定されている。第1のキャビティ41では、第1の樹脂43を用いて成形品59の1次成形部45が成形される。1次成形部45は、例えば成形品59である平レンズユニットの平レンズである。以上のように、可動側金型3と第1の固定側金型5との間に、1次成形部45を成形する第1のキャビティ41が規定されている。
【0021】
また、可動側金型3の可動側型板15には、可動側金型3と第1の固定側金型5とのパーティングラインから凹んだ穴状のボス成形部47が形成されている。1次成形部45の成形時に、ボス成形部47は第1のキャビティ41と連通する。ボス成形部47では、第1の樹脂43を用いてボス49が成形される。
【0022】
第1の固定側金型5は、成形品59の1次成形部45の成形時に第1の樹脂43が通る第1の固定側ランナ51を備える。また、第1の固定側金型5は、第1の固定側ランナ51に連通する第1のピンゲート53を備える。
【0023】
可動側金型3は、1次成形部45の成形時に第1のピンゲート53から第1の樹脂43が射出される可動側ランナ55を備える。すなわち、可動側ランナ55は、1次成形部45の成形時に、第1のピンゲート53を介して第1の固定側ランナ51と連通している。このため、1次成形部45の成形時に、第1の固定側ランナ51から可動側ランナ55へ第1の樹脂43が流入する。ここで、可動側ランナ55は可動側金型3に設けられているため、可動側ランナ55は可動側金型3と第1の固定側金型5とのパーティングラインより可動側金型3が位置する側に配置されている。
【0024】
また、可動側金型3は、可動側ランナ55と連通するゲートであるサブマリーンゲート(トンネルゲート)57を備える。サブマリーンゲート57は、第1のキャビティ41に連通しており、1次成形部45の成形時に、可動側ランナ55から流入した第1の樹脂43を第1のキャビティ41に射出する。第1の樹脂43は、サブマリーンゲート57から、ボス成形部47を通って、第1のキャビティ41に射出される。1次成形部45の成形時には、可動側ランナ55に第1の樹脂43が残留している。この際、サブマリーンゲート57では、可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43と成形品59の1次成形部45とが一体化された状態が保持されている。
【0025】
図1に示すように、2次成形時には、可動側型板15と第2の固定側型板37との間に第2のキャビティ61が規定されている。第2のキャビティ61では、第2の樹脂63を用いて成形品59の2次成形部65が成形される。2次成形部65は、例えば成形品59である平レンズユニットのレンズ枠である。また、第2のキャビティ61では、1次成形部45に2次成形部65が一体化される。以上のように、可動側金型3と第2の固定側金型7との間に、2次成形部65を成形し、移動後の1次成形部45に2次成形部65を一体化させる第2のキャビティ61が規定されている。
【0026】
第2の固定側金型7は、成形品59の2次成形部65の成形時に第2の樹脂63が通る第2の固定側ランナ67を備える。また、第2の固定側金型7は、第2の固定側ランナ67に連通する第2のピンゲート69を備える。第2のピンゲート69は、2次成形部65の成形時に、第2の固定側ランナ67から流入した第2の樹脂63を第2のキャビティ61に射出する。
【0027】
次に、本実施形態の2色射出成形金型1の作用について説明する。成形品59を2色射出成形する際は、まず、図1に示すように、第1の連結ピン25を介して可動側金型3と第1の固定側金型5とを連結する。この際、可動側型板15と第1の固定側型板27とが接触し、可動側金型3と第1の固定側金型5との間に第1のキャビティ41が規定されている。第1のキャビティ41では、第1の樹脂43を用いて成形品59の1次成形部45が成形される。第1の樹脂43は、不図示のノズルから射出され、第1の固定側金型5の第1の固定側ランナ51を通って、第1のピンゲート53から可動側金型3の可動側ランナ55に射出される。そして、サブマリーンゲート57により、可動側ランナ55から流入した第1の樹脂43が、ボス成形部47を通って第1のキャビティ41に射出される(1次射出ステップ)。
【0028】
そして、図2に示すように、駆動部9と共に可動側金型3が第1の固定側金型5に対して離間する方向(第1の連結ピン25の軸方向)に移動することで、可動側金型3と第1の固定側金型5との間の型開きを行う。この際、可動側型板15と第1の固定側型板27とは接触していない。また、第1の固定側金型5では、第1の固定側型板27が第1の固定側取付け板21及び第1の落下板23に対して移動する。これにより、第1の固定側型板27が第1の落下板23と接触しない状態となる。以上のように可動側金型3と第1の固定側金型5との間の型開きを行うことにより、第1のピンゲート53と可動側ランナ55との間で第1の樹脂43がゲートカットされる(1次成形ステップ)。すなわち、第1のピンゲート53と可動側ランナ55との間で第1の樹脂43が切断された状態となる。この際、サブマリーンゲート57では、可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43と成形品59の1次成形部45とが一体化された状態が保持されている。
【0029】
そして、駆動部9により、第1の固定側金型5と対向する1次成形時の位置から第2の固定側金型7と対向する2次成形時の位置へ、可動側金型3が移動する(可動側金型移動ステップ)。この際、1次成形部45は可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43と一体化されているため、可動側金型3とともに移動する。また、1次成形部45は可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43と一体化されているため、可動側金型3の移動時に、1次成形部45が落下、位置ずれ等することなく保持される。
【0030】
そして、図1に示すように、第2の連結ピン35を介して可動側金型3と第2の固定側金型7とを連結する。この際、可動側型板15と第2の固定側型板37とが接触し、可動側金型3と第2の固定側金型7との間に第2のキャビティ61が規定されている。すなわち、成形品59の1次成形部45は、可動側金型3の移動にともなって第1のキャビティ41から第2のキャビティ61へ移動する。第2のキャビティ61では、第2の樹脂63を用いて成形品59の2次成形部65が成形される。そして、1次成形部45に2次成形部65が一体化される。第2の樹脂63は、第2の固定側金型7の第2の固定側ランナ67を通って、第2のピンゲート69から第2のキャビティ61に射出される(2次射出ステップ)。
【0031】
そして、図2に示すように、駆動部9と共に可動側金型3が第2の固定側金型7に対して離間する方向(第2の連結ピン35の軸方向)に移動することで、可動側金型3と第2の固定側金型7との間の型開きを行う。この際、可動側型板15と第2の固定側型板37とは接触していない。また、第2の固定側金型7では、第2の固定側型板37が第2の固定側取付け板31及び第2の落下板33に対して移動する。これにより、第2の固定側型板37が第2の落下板33と接触しない状態となる。以上のように可動側金型3と第2の固定側金型7との間の型開きを行うことにより、第2のピンゲート69と第2のキャビティ61との間で第2の樹脂63がゲートカットされる(2次成形ステップ)。すなわち、第2のピンゲート69と第2のキャビティ61との間で第2の樹脂63が切断された状態となる。
【0032】
そして、図3に示すように、突出し板17及びエジェクトピン19A〜19Cを、可動側取付け板11、スペーサブロック13及び可動側型板15に対して移動する。これにより、成形品59及び1次成形部45の成形時に可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43が、可動側金型3の可動側型板15から突出される。すなわち、突出し板17及びエジェクトピン19A〜19Cが、成形品59を可動側金型3から突出す突出し部となっている。この際、エジェクトピン19Aは成形品59を、エジェクトピン19Bはボス49を、エジェクトピン19Cは可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43を、それぞれ突出す(突出しステップ)。
【0033】
ここで、サブマリーンゲート57は、可動側型板15に設けられ、可動側金型3と第2の固定側金型7(第1の固定側金型5)とのパーティングラインより可動側金型3が位置する側に配置されている。このため、突出し板17及びエジェクトピン19A〜19Cによる突出しにより、サブマリーンゲート57では1次成形部45と可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43とに、第1の樹脂43がゲートカットされる。すなわち、サブマリーンゲート57で第1の樹脂43が切断された状態となる。これにより、1次成形部45の成形時に可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43とは別体の状態で、成形品59が突出される。
【0034】
なお、突出された成形品59は、ボス49と一体である。ボス49は、成形品59の突出しの後に切除され、成形品59から切り離される。
【0035】
そこで上記構成の2色射出成形金型1及び2色射出成形方法では、以下の効果を奏する。すなわち、2色射出成形金型1では、第1のキャビティ41で1次成形部45が成形される際に、第1の樹脂43は、第1の固定側金型5の第1の固定側ランナ51、可動側金型3の可動側ランナ55を通って、サブマリーンゲート57から第1のキャビティ41に射出される。そして、第2のキャビティ61で2次成形部65が成形されるまで、サブマリーンゲート57では1次成形部45と可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43とが一体化した状態が保持されている。このため、第1のキャビティ41から第2のキャビティ61への移動時に、1次成形部45は可動側金型3とともに移動する。この際、1次成形部45は可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43と一体化されているため、可動側金型3の移動時に、1次成形部45が落下、位置ずれ等することなく保持される。すなわち、1次成形部45を凹状に成形することなく、1次成形部45を可動側金型3とともに第1のキャビティ41から移動させることができる。これにより、成形品59の形状、寸法等の設計事項の自由度を向上させることができる。
【0036】
また、2色射出成形金型1では、第2のキャビティ61で1次成形部45への2次成形部65の一体化が完了し、可動側金型3と第2の固定側金型7との間の型開きが行われた後、突出し板17及びエジェクトピン19A〜19Cにより成形品59が可動側金型3から突出される。サブマリーンゲート57は、可動側型板15に設けられ、可動側金型3と第2の固定側金型7(第1の固定側金型5)とのパーティングラインより可動側金型3が位置する側に配置されている。このため、突出し板17及びエジェクトピン19A〜19Cによる突出しにより、サブマリーンゲート57では1次成形部45と可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43とに、第1の樹脂43がゲートカットされる。これにより、1次成形部45の成形時に可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43とは別体の状態で、成形品59を突出すことができる。また、金型内に樹脂43が残留することが無い。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、図5を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一の部分及び同一の機能を有する部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0038】
図5は、可動側金型3と第1の固定側金型5との間の構成を示す図である。図5に示すように、1次成形時には、第1の実施形態と同様に、可動側型板15と第1の固定側型板27との間に第1のキャビティ41が規定されている。すなわち、可動側金型3と第1の固定側金型5との間に、1次成形部45を成形する第1のキャビティ41が規定されている。
【0039】
また、本実施形態では、ゲートとしてサブマリーンゲート57の代わりにバナナゲート71が設けられている。バナナゲート71は、可動側ランナ55と連通している。また、バナナゲート71は、1次成形部45の成形時に、可動側ランナ55から流入した第1の樹脂43を第1のキャビティ41に射出する。本実施形態では、ボス49を成形するボス成形部47が設けられていない。このため、第1の樹脂43は、バナナゲート71から、直接第1のキャビティ41に射出される。1次成形部45の成形時には、可動側ランナ55に第1の樹脂43が残留している。この際、バナナゲート71では、可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43と成形品59の1次成形部45とが一体化された状態が保持されている。
【0040】
また、本実施形態ではボス成形部47が設けられていないため、第1の樹脂43からボス49は成形されない。このため、成形品59を可動側金型3から突出す際にボス49を突出すエジェクトピン19Bを設ける必要はない。したがって、本実施形態では、成形品59を突出すエジェクトピン19A、及び、可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43を突出すエジェクトピン19Cの2つのエジェクトピン19A,19Cが設けられている。なお、本実施形態では、エジェクトピンは2本で構成したが、成形品を取り出すことができれば、本数は何本であっても構わない。
【0041】
次に、本実施形態の2色射出成形金型1の作用について説明する。成形品59を2色射出成形する際は、第1の実施形態と同様に、第1の連結ピン25を介して可動側金型3と第1の固定側金型5とを連結する。そして、可動側金型3と第1の固定側金型5との間に規定される第1のキャビティ41で、第1の樹脂43を用いて成形品59の1次成形部45が成形される。第1の樹脂43は、第1の固定側金型5の第1の固定側ランナ51を通って、第1のピンゲート53から可動側金型3の可動側ランナ55に射出される。そして、バナナゲート71により、可動側ランナ55から流入した第1の樹脂43が、第1のキャビティ41に射出される。
【0042】
そして、第1の実施形態と同様に、可動側金型3と第1の固定側金型5との間の型開きを行う。これにより、第1のピンゲート53と可動側ランナ55との間で第1の樹脂43がゲートカットされ、第1のピンゲート53と可動側ランナ55との間で第1の樹脂43が切断された状態となる。この際、バナナゲート71では、可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43と成形品59の1次成形部45とが一体化された状態が保持されている。
【0043】
そして、駆動部9により、第1の固定側金型5と対向する1次成形時の位置から第2の固定側金型7と対向する2次成形時の位置へ、可動側金型3が移動する。1次成形部45は可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43と一体化されているため、可動側金型3とともに移動する。また、1次成形部45は可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43と一体化されているため、可動側金型3の移動時に、1次成形部45が落下、位置ずれ等することなく保持される。
【0044】
そして、第1の実施形態と同様に、第2の連結ピン35を介して可動側金型3と第2の固定側金型7とを連結する。この際、可動側金型3と第2の固定側金型7との間に第2のキャビティ61が規定され、成形品59の1次成形部45は、可動側金型3の移動にともなって第1のキャビティ41から第2のキャビティ61へ移動する。第2のキャビティ61では、第2の樹脂63を用いて成形品59の2次成形部65が成形される。そして、1次成形部45に2次成形部65が一体化される。第2の樹脂63は、第2の固定側金型7の第2の固定側ランナ67を通って、第2のピンゲート69から第2のキャビティ61に射出される。
【0045】
そして、第1の実施形態と同様に、可動側金型3と第2の固定側金型7との間の型開きを行う。これにより、第2のピンゲート69と第2のキャビティ61との間で第2の樹脂63がゲートカットされ、第2のピンゲート69と第2のキャビティ61との間で第2の樹脂63が切断された状態となる。
【0046】
そして、第1の実施形態と同様に、突出し板17及びエジェクトピン19A,19Cを、可動側取付け板11、スペーサブロック13及び可動側型板15に対して移動する。これにより、成形品59及び1次成形部45の成形時に可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43が、可動側金型3の可動側型板15から突出される。この際、エジェクトピン19Aは成形品59を、エジェクトピン19Cは可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43を、それぞれ突出す。
【0047】
ここで、バナナゲート71は可動側型板15に設けられ、可動側金型3と第2の固定側金型7(第1の固定側金型5)とのパーティングラインより可動側金型3が位置する側に配置されている。このため、突出し板17及びエジェクトピン19A,19Cによる突出しにより、バナナゲート71では1次成形部45と可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43とに第1の樹脂43がゲートカットされる。すなわち、バナナゲート71で第1の樹脂43が切断された状態となる。これにより、1次成形部45の成形時に可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43とは別体の状態で、成形品59が突出される。
【0048】
そこで上記構成の2色射出成形金型1及び2色射出成形方法では、以下の効果を奏する。すなわち、2色射出成形金型1では、第1のキャビティ41で1次成形部45が成形される際に、第1の樹脂43は、第1の固定側金型5の第1の固定側ランナ51、可動側金型3の可動側ランナ55を通って、バナナゲート71から第1のキャビティ41に射出される。そして、第2のキャビティ61で2次成形部65が成形されるまで、バナナゲート71では1次成形部45と可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43とが一体化した状態が保持されている。このため、第1のキャビティ41から第2のキャビティ61への移動時に、1次成形部45は可動側金型3とともに移動する。この際、1次成形部45は可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43と一体化されているため、可動側金型3の移動時に、1次成形部45が落下、位置ずれ等することなく保持される。すなわち、1次成形部45を凹状に成形することなく、1次成形部45を可動側金型3とともに第1のキャビティ41から移動させることができる。これにより、成形品59の形状、寸法等の設計事項の自由度を向上させることができる。
【0049】
また、2色射出成形金型1では、第2のキャビティ61で1次成形部45への2次成形部65の一体化が完了し、可動側金型3と第2の固定側金型7との間の型開きが行われた後、突出し板17及びエジェクトピン19A,19Cにより成形品59が可動側金型3から突出される。バナナゲート71は、可動側型板15に設けられ、可動側金型3と第2の固定側金型7(第1の固定側金型5)とのパーティングラインより可動側金型3が位置する側に配置されている。このため、突出し板17及びエジェクトピン19A,19Cによる突出しにより、バナナゲート71では1次成形部45と可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43とに第1の樹脂43がゲートカットされる。これにより、1次成形部45の成形時に可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43とは別体の状態で、成形品59を突出すことができる。
【0050】
(変形例)
なお、第1の実施形態では可動側金型3にゲートとしてサブマリーンゲート57が設けられ、第2の実施形態では可動側金型3にゲートとしてバナナゲート71が設けられているが、これに限るものではない。すなわち、可動側金型3は、1次成形部45の成形時に可動側ランナ55から流入した第1の樹脂43を第1のキャビティ41に射出するゲート(57,71)を備えればよい。そして、ゲート(57,71)で、第2のキャビティ61で2次成形部65が成形されるまで、1次成形部45と1次成形部45の成形時に可動側ランナ55に残留した第1の樹脂43とが一体化された状態が保持されていればよい。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形ができることは勿論である。
【0052】
以下、本発明の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。

(付記項1)
可動側金型と、
成形品の1次成形部を成形する第1のキャビティを、前記可動側金型との間に規定する第1の固定側金型と、
前記可動側金型の移動にともなって前記1次成形部が前記第1のキャビティから移動した際に、前記成形品の2次成形部を成形し、移動後の前記1次成形部に前記2次成形部を一体化させる第2のキャビティを、前記可動側金型との間に規定する第2の固定側金型と、
を具備し、
前記第1の固定側金型は、前記1次成形部の成形時に樹脂が通る固定側ランナを備え、
前記可動側金型は、
前記1次成形部の成形時に前記固定側ランナと連通し、前記固定側ランナから前記樹脂が流入する可動側ランナと、
前記1次成形部の成形時に前記可動側ランナから流入した前記樹脂を前記第1のキャビティに射出し、前記第2のキャビティで前記2次成形部が成形されるまで、前記1次成形部と前記1次成形部の成形時に前記可動側ランナに残留した前記樹脂とが一体化された状態が保持されるゲートと、
を備える2色射出成形金型。
【0053】
(付記項2)
前記可動側金型は、前記第2のキャビティで前記1次成形部への前記2次成形部の一体化が完了した後に、前記1次成形部と前記可動側ランナに残留した前記樹脂とに前記ゲートで前記樹脂がゲートカットされた状態で、前記成形品を前記可動側金型から突出す突出し部を備える付記項1の2色射出成形金型。
【0054】
(付記項3)
前記ゲートは、サブマリーンゲートである付記項1の2色射出成形金型。
【0055】
(付記項4)
前記ゲートは、バナナゲートである付記項1の2色射出成形金型。
【0056】
(付記項5)
可動側金型と第1の固定側金型との間に規定される第1のキャビティで、成形品の1次成形部を成形することと、
前記可動側金型の移動にともなって、前記可動側金型と第2の固定側金型との間に規定される第2のキャビティへ前記第1のキャビティから前記1次成形部を移動させることと、
前記第2のキャビティで前記成形品の2次成形部を成形し、移動後の前記1次成形部に前記2次成形部を一体化させることと、
を具備し、
前記1次成形部を成形することは、
前記第1の固定側金型の固定側ランナ及び前記可動側金型の可動側ランナへ樹脂を流入することと、
前記可動側金型のゲートにより前記可動側ランナから流入した前記樹脂を前記第1のキャビティに射出することと、
を備え、
前記第1のキャビティから前記第2のキャビティへ前記1次成形部を移動させることは、前記ゲートで前記1次成形部と前記1次成形部の成形時に前記可動側ランナに残留した前記樹脂とが一体化された状態が保持されることを備える2色射出成形方法。
【0057】
(付記項6)
前記第2のキャビティで前記1次成形部への前記2次成形部の一体化が完了した後に、前記1次成形部と前記可動側ランナに残留した前記樹脂とに前記樹脂が前記ゲートでゲートカットされた状態で、前記成形品を前記可動側金型から突出すことをさらに具備する付記項5の2色射出成形方法。
【符号の説明】
【0058】
1…2色射出成形金型、3…可動側金型、5…第1の固定側金型、7…第2の固定側金型、41…第1のキャビティ、43…第1の樹脂、45…1次成形部、51…固定側ランナ、55…可動側ランナ、57…サブマリーンゲート、59…成形品、61…第2のキャビティ、63…第2の樹脂、65…2次成形部、71…バナナゲート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動側金型と、
第1の樹脂が通る第1の固定側ランナを備え、前記第1の樹脂によって1次成形部を成形する第1のキャビティを、前記可動側金型との間に規定する第1の固定側金型と、
成形された前記1次成形部に対して、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂によって2次成形部を成形する第2のキャビティを、前記可動側金型との間に規定する第2の固定側金型と、
により2色成形品を成形する2色成形用金型であって、
前記可動側金型は、前記1次成形部の成形時に、前記第1の固定側ランナと前記第1のキャビティとに連通する可動側ランナと、を有し、
前記1次成形部の成形時に前記可動側ランナから流入した前記樹脂を前記第1のキャビティに射出し、前記第2のキャビティで前記2次成形部が成形されるまで、前記1次成形部と前記1次成形部の成形時に前記可動側ランナに残留した前記樹脂とが一体化された状態が保持される、
ことを特徴とする2色成形用金型。
【請求項2】
前記可動側金型は、前記可動側ランナと前記第1のキャビティとが連通する位置に配置されるゲートと、を備え、
前記2色成形品が成形された後に、前記ゲートによって前記第1のキャビティに流入した樹脂と前記可動側ランナに流入した樹脂とがゲートカットされる
ことを特徴とする請求項1の2色成形用金型。
【請求項3】
前記ゲートは、バナナゲートであることを特徴とする請求項2の2色成形用金型。
【請求項4】
前記ゲートは、サブマリーンゲートであることを特徴とする請求項2の2色成形用金型。
【請求項5】
可動側金型と第1の固定側金型との間に規定される第1のキャビティで、成形品の1次成形部を成形する1次成形ステップと、
前記可動側金型の移動にともなって、前記可動側金型と第2の固定側金型との間に規定される第2のキャビティへ前記第1のキャビティから前記1次成形部を移動させる可動側金型移動ステップと、
前記第2のキャビティで前記成形品の2次成形部を成形し、移動後の前記1次成形部に前記2次成形部を一体化させる2次成形ステップと、により2色成形品を成形する2色成形品の成形方法であって、
前記1次成形ステップは、
前記第1の樹脂を、前記第1の固定側金型が備える固定側ランナ及び前記可動側金型が備える可動側ランナを通って前記第1のキャビティに射出する1次射出ステップを備え、
前記固定金型移動ステップによって前記第1のキャビティから前記第2のキャビティへ前記1次成形部を移動させる際、少なくとも、前記1次射出ステップによって射出成形された前記1次成形部と当該1次成形部の成形時に前記可動側ランナに残留した前記樹脂とが一体化された状態が保持される
ことを特徴とする2色成形品の成形方法。
【請求項6】
前記第2のキャビティで前記1次成形部への前記2次成形部の一体化が完了した後に、前記2色成形品を前記可動側金型から突出す突出しステップを備え、
前記突き出しステップにより、前記可動側ランナと前記第1のキャビティとが連通する位置に配置されたゲートによりゲートカットされる
ことを特徴とする請求項5の2色成形品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−126079(P2012−126079A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281504(P2010−281504)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】