説明

3次元形状測定システムおよび強度評価システム

【課題】被測定対象物の周囲に障害物がある場合においても正確に3次元形状を測定することのできる3次元形状測定システムおよび測定された3次元形状によって容易に強度を評価することのできる評価強度評価システムを得ることにある。
【解決手段】被測定対象物の3次元表面形状を測定する表面形状測定装置1と、被測定対象物の3次元内面形状を測定する内面形状測定装置2と、被測定対象物の構造材内部の状態を測定する非破壊測定装置3と、この表面形状測定装置、内面形状測定装置、非破壊測定装置によって計測された3次元点群データを入力合成する点群データ変換入力合成装置4と、この点群データ変換入力合成装置によって合成処理した点群データから3次元形状を作成する3次元形状変換処理装置5を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定対象物の3次元形状の測定に基づいて上記被測定対象物の解析を行なう3次元形状測定方法および強度評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リバースエンジニアリングにおいては、図面から製品を製作するのではなく、製品から逆にCAD(computer-aided design)データ等の設計および製造に必要なデータを作成するものであり通常の製造工程とは逆の工程となる。
【0003】
このようなリバースエンジニアリングとしては、製品の立体モデルから3次元測定器で形状を測定し、設計より得られたCADデータを補正するものや(例えば特許文献1参照)、2次元の図面およびその実物の3次元データを用いて3次元モデルを生成するもの(例えば特許文献2参照)がある。またX線を用いた試料の断面画像から形状測定を行う方法(例えば特許文献3)もある。
【特許文献1】特開2003-242186
【特許文献2】特開2001-184527
【特許文献3】特開2004-317457
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したリバースエンジニアリングは被測定対象物を覆う部材などがなく、周囲がある程度広い空間に設置されている条件が必要である。また、データを合成する時に必要となる基準マーカ等を被測定対象物に接着あるいは塗布する作業において、電機機械のような精密製品によっては損傷を与える恐れがある。また、X線を用いての断面形状測定の方法も検討されているが、大型X線装置に被測定対象物を設置することが必要で、現地での測定は不可能なものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る3次元形状測定システムは、被測定対象物の3次元表面形状を測定する表面形状測定装置と、前記被測定対象物の3次元内面形状を測定する内面形状測定装置と、前記被測定対象物の構造材内部の状態を測定する非破壊測定装置と、この表面形状測定装置、内面形状測定装置、非破壊測定装置によって計測された3次元点群データを入力合成する点群データ変換入力合成装置と、この点群データ変換入力合成装置によって合成処理した点群データから3次元形状を作成する3次元形状変換処理装置を有することを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る強度評価システムは、上記3次元形状測定システムによって作成された3次元形状は3次元CADモデルであり、この3次元CADモデルを用いて有限要素法解析モデルを作成する有限要素法解析モデル作成装置と、この有限要素法解析モデル作成装置によって作成された有限要素法解析モデルによって構造解析を行ないその解析結果から強度評価する解析結果評価装置と、解析結果評価装置から出力された評価データを格納するデータベースとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る3次元形状測定システムおよび強度評価システムにおいては、被測定対象物の周囲に障害物がある場合においても正確に3次元形状を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る3次元形状測定システムと強度評価システムの実施の形態について、以下図面を参照して説明する。
【0009】
(実施例1)
まず、図1を参照して本発明の実施例1を説明する。図1において本実施例に係る3次元形状測定装置15は、被測定対象物の3次元表面形状を測定する表面形状測定装置1と、被測定対象物の3次元内部形状を測定する内部形状測定装置2および非破壊計測を行なう非破壊測定装置3を備えている。
【0010】
この表面形状測定装置1、内部形状測定装置2および非破壊測定装置3によって得られた各測定3次元画像は、点群データ変換入力合成装置4において点群データとして図示しないデータベースに変換入力され、各測定画像は作業領域に決められた3次元全体座標系を基準に合成される。上記3次元測定画像の範囲は各計測器間で重複する部分を設け、上記データ合成においては上記重複部分を重ね合わせることにより複数の測定データから一つの被測定対象物の形状データを作成する。また、上記合成においては、被測定対象物の複数箇所に形状寸法の基準となる丸棒の如きマーカーを装着しておき、そのマーカーの中心を基準にして合成することにより、さらに複雑な被測定対象物のデータ合成を簡便にかつ迅速に実施することができる。特に、マーカーを丸棒とした場合には、どの方位から見てもその丸棒の高さ中心と幅中心の交点を中心基準とすることにより、異なった方位から測定されたデータを簡便に重ね合わせることが可能となる。
【0011】
このデータベースに入力された合成された点群データは3次元形状変換処理装置である3次元CADモデル変換処理装置5において、3点を基準としたポリゴンデータ等に自動的に変換され、使用目的によりさらにCADデータ等に変換される。この3次元CADモデル変換処理装置5において変換されたCADデータは、有限要素法(FEM(Finite Element Method)解析モデル作成装置6によってFEM構造解析用のモデルに変更され、このモデルを使用して解析結果評価装置7によって構造解析が行なわれその解析結果が表示される。また、この解析結果評価装置7によって解析された解析結果、評価データは図示しないデータベースに格納される。
【0012】
なお、3次元CADモデル変換処理装置としてはポリゴンデータ以外に通常の画像に変換し、作業員がその場で確認する画像データとすることも可能である。
【0013】
図2に示すように火力発電所等で使用するタービン発電機16のリプレースのため、ロータ17等の各部分の形状測定を行う場合、一般的に一時停止から部分分解、形状測定、運転再開、リプレースのための停止という順序となる。ここでの重要部分は発電機を停止している期間を極力少なくすることで、特に形状測定時の発電機の停止はベアリングブラケット18の上半部分程度を取り外す程度とし、部分的にはベアリングブラケット18内に作業者が立ち入って測定する必要がある。
【0014】
通常のレーザーによる3次元形状計測はレーザー発信機(図示せず)を被測定対象部物に照射し、スキャニングすることによって点群データを得るが、上述の発電機のリプレースには一般的な据え置き型スキャナーの適用は空間配置上困難である。そこで本発明では見える部分については作業員が保持できるハンディタイプのレーザースキャナーを用いて非接触により形状を測定する。また対象物の大きさ、形状によってハンディタイプでの測定が困難な場合は、より高精度な測定を実施するために多関節アームの先にレーザーを取り付けて測定を行う。
【0015】
また見えない部分に関しては、内部形状測定装置および非破壊測定装置を組み合わせて用いることもできる。
【0016】
よって、この本発明に係る3次元形状測定システムにおいては、被測定対象物の周囲に障害物がある場合においても正確に3次元形状を測定することができる。
【0017】
また、この3次元形状測定システムによって作成されたCADデータを用いて、各種の構造解析を行うことによりねじり剛性や振動特性を確実に精度良く把握することが可能となる。
【0018】
(実施例2)
次に、本発明に係る3次元形状測定システムと強度評価システムの第2の実施の形態について、図3を参照して説明する。
【0019】
なお、本実施例において実施例1にて示された点群データ変換入力合成装置4以降の構成は同一であるのでそれ以降の構成の説明は省略する。
【0020】
本実施例は測定器によるデータ合成の基準座標は被測定対象物が設置された測定場所の壁および天井等に設置した複数のレーザー発信機10と被測定対象物9の見える部分に取り付けた複数のレーザー受信機11により、作業施設全体で共通の座標系を利用する室内GPS方式を活用したことを特徴とする、3次元形状測定システムである。
【0021】
一般的にはレーザーやCCDカメラ等により測定された点群データはある基準をもとに合成される。例えばレーザーでは球形の基準マーカーやCCDカメラでは直径15mm程度の円形シールやさらに反射防止用のスプレーが用いられる。これらは測定物の周囲に十分のスペースが確保されている場合や、シールおよびスプレーを塗布しても問題ない廃却予定品や電機器械器具以外のものには有効であるが、実際のプラントに設置されている機械には絶縁不良やその他の損傷を与える危険性があり不可能である。
【0022】
そこで本発明では人口衛星を用いたGPSと同様な原理を用いて、周囲の壁、天井等に複数のレーザー発信機10、被測定対象物9周囲に複数のレーザー受信機11を設置し、その作業域全体を共通の座標系の設定することにより、合成する点群データの基準とするものである。この方法により被測定対象物に損傷を与えることなく、測定した各種点群データの合成を行なうことができる。
【0023】
(実施例3)
次に、本発明に係る3次元形状測定システムと強度評価システムの第3の実施の形態について、図4を参照して説明する。
【0024】
なお、本実施例において実施例1にて示された点群データ変換入力合成装置4以降の構成は同一であるのでそれ以降の構成の説明は省略する。
【0025】
本実施例3は、内部形状測定装置において、被測定対象物9の微小部分の隙間9aから挿入可能なマイクロCCDスコープ13を複数利用したことを特徴とする3次元形状測定システムである。マイクロCCDスコープ13は超小型では直径5mm程度のものであるため、被測定対象物9の僅かな隙間でもマイクロCCDスコープ13のスコープヘッドを挿入して詳細形状を測定できる。この測定においては、まず概略の全体形状を撮影によって把握した後、測定部分を検討し測定を行う。マイクロCCDスコープ13の測定範囲は微小なため、複数のマイクロスコープを同時に用いるほか、同時方向のみではなく、複数の視点から撮影することが、測定時間の短縮および高精度化につながる。また測定画面を1画面に写すことによって、それぞれの撮影状況が把握でき合成を容易に行なうことができる。
【0026】
(実施例4)
次に、本発明に係る3次元形状測定システムと強度評価システムの第4の実施の形態について、図5を参照して説明する。
【0027】
なお、本実施例において実施例1にて示された点群データ変換入力合成装置4以降の構成は同一であるのでそれ以降の構成の説明は省略する。
【0028】
本実施例4は、非破壊計測で内部構造を測定する非破壊測定装置において、作業員が保持できるハンディタイプの超音波測定装置8と作業員が保持できるハンディタイプのX線測定装置19を組み合わせて利用した測定装置としたことを特徴とする3次元形状測定方法と強度評価システムである。
【0029】
表面から測定可能な状況ではハンディタイプの超音波測定装置8を使用するもので、このプローブには発信、受信共に複数のセンサー14が設置されているフェーズドアレイ技術を用いることによって、1回の測定において広範囲な形状測定が可能となるものである。
【0030】
また超音波センサー14はスキャンする表面12の凹凸状況に大きく左右されるため、超音波センサーが困難な部位についてはX線による測定を実施し、超音波センサーの測定データと組み合わせて形状を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す3次元形状測定システムおよび強度評価システムのブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態を説明するタービン発電機のリプレース状態を示す側面図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す3次元形状測定システムおよび強度評価システムの要部斜視図。
【図4】本発明の第3の実施形態を示す3次元形状測定システムおよび強度評価システムの要部説明図。
【図5】本発明の第4の実施形態を示す3次元形状測定システムおよび強度評価システムの要部縦断面図。
【符号の説明】
【0032】
1…表面形状測定装置、2…内部形状測定装置、3…非破壊測定装置、 4…点群データ変換入力合成装置、5…3次元CADモデル変換処理装置、6…有限要素法解析モデル作成装置、7…解析結果評価装置、8…超音波測定装置、9…被測定対象物、10…レーザー発信機、11…レーザー受信機、12…表面、13…マイクロCCDスコープ、14…超音波センサー、15…3次元形状測定装置、16…タービン発電機、17…ロータ、18…ベアリングブラケット、19…X線測定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象物の3次元表面形状を測定する表面形状測定装置と、前記被測定対象物の3次元内面形状を測定する内面形状測定装置と、前記被測定対象物の構造材内部の状態を測定する非破壊測定装置と、この表面形状測定装置、内面形状測定装置、非破壊測定装置によって計測された3次元点群データを入力合成する点群データ変換入力合成装置と、この点群データ変換入力合成装置によって合成処理した点群データから3次元形状を作成する3次元形状変換処理装置を有することを特徴とする、3次元形状測定システム。
【請求項2】
前記表面形状測定装置または内面形状測定装置は、作業員が保持可能なレーザー3次元計測装置または多間接アームであることを特徴とする請求項1記載の3次元形状測定システム。
【請求項3】
前記点群データ変換入力合成装置で3次元点群データを入力合成するための基準座標は被測定対象物が設置された測定場所の壁または天井に設置した複数のレーザー送信機と、前記被測定対象物または被測定対象物の周囲に取り付けた複数のレーザー受信機により、作業施設全体で共通の座標系を利用することを特徴とする請求項1または2記載の3次元形状測定システム。
【請求項4】
前記内部形状測定装置は、被測定対象物の隙間から挿入可能な複数のマイクロCCDスコープから構成されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の3次元形状測定システム。
【請求項5】
前記非破壊測定装置は、作業員が保持可能な超音波測定装置と、作業員が保持可能なX線測定装置とを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の3次元形状測定システム。
【請求項6】
請求項1から5記載の3次元形状測定システムによって作成された3次元形状は3次元CADモデルであり、この3次元CADモデルを用いて有限要素法解析モデルを作成する有限要素法解析モデル作成装置と、この有限要素法解析モデル作成装置によって作成された有限要素法解析モデルによって構造解析を行ないその解析結果から強度評価する解析結果評価装置と、解析結果評価装置から出力された評価データを格納するデータベースとを有することを特徴とする、強度評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−66169(P2010−66169A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233940(P2008−233940)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】