説明

3次元超音波検査装置

【課題】複雑な曲面形状を有する検査対象物の内部検査を効率よく、非破壊で正確に行なうことができる3次元超音波検査装置を提供する。
【解決手段】マトリクス状またはリニア状一列に配設したアレイ圧電振動子21を有する超音波トランスジューサ11と、圧電振動子21iから発振される超音波を遅延材22を介して検査対象物14に入射させ、その反射エコーの電気信号を検出する信号検出回路15と、検査対象物14の内部を予め区画された3次元画像化領域内のメッシュに対応させて3次元画像化データIを生成する信号処理部16と、この3次元画像データIを、メッシュ化された検査対象物14の3次元座標に応じて表示する表示処理装置18とを備え、前記超音波トランスジューサ11は、検査対象物14の表面形状に沿うように変形可能な柔軟性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の内部構造、接合部の状態、内部欠陥の状態を超音波を用いて非破壊検査する3次元超音波検査技術に係り、特に、曲面形状を有する検査対象物内の欠陥、剥離、酸化膜、ボイド等の異物や接合部の剥れの状態を3次元的に可視化し、検査することができる3次元超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の3次元超音波検査技術には、特開2000−28589号公報(特許文献1)、特開2003−149213号公報(特許文献2)および特開2004−53360号公報(特許文献3)に開示された立体的な3次元超音波検査装置がある。
【0003】
この3次元超音波検査装置は、多数の圧電振動子をマトリクス状またはリニア状に平面配置された超音波トランスジューサを備え、この超音波トランスジューサから被検査物である検査対象物に送受信される超音波を用いて検査対象物の内部構造や欠陥、ボイド、剥れ等の状態を3次元的に可視化し、検査対象物の非破壊にて検査することができるようになっている。
【0004】
多数の圧電振動子をマトリクス状あるいはリニア状一列に配列した超音波トランスジューサを備えた3次元超音波検査装置では、検査対象物表面が平面形状を有する場合には、検査対象物内の欠陥やボイド、剥れ等の状態を超音波により立体的に可視化することができる。
【0005】
しかし、被検査物である検査対象物の表面が複雑な曲面形状を有する場合には、超音波トランスジューサを検査対象物の曲面形状に密着状態で接触させることができず、検査対象物内を3次元的に可視化し、画像化することが困難であった。
【特許文献1】特開2000−28589号公報
【特許文献2】特開2003−149213号公報
【特許文献3】特開2004−53360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の3次元超音波検査装置においては、超音波トランスジューサを、複雑な曲面形状を有する被検査物(検査対象物)に密着させることができず、自動車部品などの複雑な表面形状をした検査対象物の部品内部を超音波で画像化処理することが難しい。
【0007】
また、検査対象物を水中や液体金属ナトリウムの液体媒質中に浸漬させて設置し、液体媒質中の検査対象物に超音波トランスジューサから超音波を送受信して信号処理しても、検査対象物の外表面形状の画像化ができても、検査対象物の内部構造や内部欠陥が画像化することは困難であった。
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、複雑な曲面形状を有する検査対象物の内部検査を効率よく、正確にしかも非破壊で行なうことができる3次元超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る3次元超音波検査装置は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、複数の圧電振動子をマトリクス状またはリニア状一列に配設したアレイ圧電振動子を有する超音波トランスジューサと、この超音波トランスジューサの各圧電振動子に接続され、上記アレイ圧電振動子のうち超音波を発振させる圧電振動子を選択する駆動素子選択部と、この駆動素子選択部に選択された圧電振動子から発振される超音波を遅延材を介して検査対象物に入射させ、この検査対象物からの反射エコーを受信し、その反射エコーの電気信号を検出する信号検出回路と、検出された反射エコーの電気信号を並列演算処理により、検査対象物の内部を予め区画された3次元画像化領域内のメッシュに対応させて3次元画像化データを生成する信号処理部と、この信号処理部から3次元画像化データを取り込み、この3次元画像データを、メッシュ化された検査対象物の3次元座標に応じて表示する表示処理装置とを備え、前記超音波トランスジューサは、検査対象物の表面形状に沿うように変形可能な柔軟性を有するものである。
【0010】
また、本発明に係る3次元超音波検査装置は、上述した課題を解決するために、請求項6に記載したように、前記超音波トランスジューサは、多数の圧電振動子を備えたアレイ圧電振動子と、このアレイ圧電振動子の前面に装着され、超音波伝達機能と柔軟性を有する遅延材と、この遅延材の前面に装着され、物理的強度と柔軟性を有する保護膜と、前記アレイ圧電振動子の背面に装着され、超音波の背面側への漏出を防止するバッキング材とを一体的に積層されて構成し、前記超音波トランスジューサは、検査対象物の表面形状に倣うように密着し、柔軟性を有して変形可能な多層構造に構成されたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る3次元超音波検査装置は、多数の圧電振動子をマトリクス状あるいはリニア状(アレイ状)一列に配列したアレイ圧電振動子を備えた超音波トランスジューサを有し、この超音波トランスジューサを検査対象物の表面形状に沿うように、変形可能な柔軟性を有する構成としたので、検査対象物が複雑な表面形状であっても、超音波トランスジューサを検査対象物の表面に密着させることができ、複雑な表面形状の検査対象物の内部構造を3次元座標に応じた3次元画像で表示することができ、複雑な表面形状を有する検査対象物の内部構造を効率よく、正確に、非破壊で検査をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る3次元超音波検査装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る3次元超音波検査装置の一実施形態を概略的に示す全体構成図である。この3次元超音波検査装置10は、複雑な表面形状を有する検査対象物の内部検査を3次元的に円滑かつ効率よく行なうことができる3次元超音波画像化装置である。
【0014】
この3次元超音波検査装置10は、自動車業界、航空業界、鉄道業界、プラント業界および造船業界等で用いられる複雑な曲面形状の部品を検査対象物14として、その内部欠陥や溶接欠陥、構造欠陥等の内部検査を、3次元画像化処理で簡単かつ容易に非破壊で行なうことができる超音波検査技術である。
【0015】
3次元超音波検査装置10は、複雑な曲面形状を有する被検査物としての検査対象物14の内部構造や欠陥形状を精細に立体画像化できる超音波カメラとして機能する超音波トランスジューサ11を有する。
【0016】
3次元超音波検査装置10は、超音波と電気信号を相互変換させ、所要周波数の超音波を送受信される可撓性の超音波トランスジューサ11と、この超音波トランスジューサ11を駆動させる駆動信号を発生させる信号発生部12と、この信号発生部12からの駆動信号を選択し、超音波トランスジューサ11のアレイ圧電振動子21を選択的に駆動させる駆動素子選択部13と、超音波トランスジューサ11から発振される超音波を検査対象物14の検査領域に照射し、検査対象物14の表面や検査領域内部から反射する超音波エコーを超音波トランスジューサ11を介して電気信号として検出する信号検出回路15と、この信号検出回路15で検出された超音波反射エコーの電気信号を並列演算処理して3次元(3D)超音波画像データIを生成させる信号処理部16と、この信号処理部16で処理された3次元超音波画像データIの補正処理および比較処理を行ない、検査対象物14の内部欠陥17の状態を自動的に精度よく判定し、判定結果を表示させる表示処理装置18とを有する。
【0017】
3次元超音波検査装置10は、被検査物である複雑な曲面形状の検査対象物14の内部構造を高密度、高感度、高解像度の3次元超音波画像として迅速に表示させることができる。この3次元超音波検査装置10は、1画像当たりの3次元超音波画像が1秒から数10秒で得られ、高速検査が可能な超音波センサ装置20を備える。
【0018】
この超音波センサ装置20は、超音波を送受信させる超音波センサあるいは超音波カメラとして可撓性を有する超音波トランスジューサ11を備える。この超音波トランスジューサ11は変形可能な柔軟性を有し、その表面側にセンサ面である発受信面が形成される。
【0019】
超音波トランスジューサ11は、多数の圧電振動子21a,21b,…,21i,…,21nがm行n列のマトリクス状に、また、リニア状(アレイ状)一列に独立して整列配置されたアレイ圧電振動子21を有する。アレイ圧電振動子21を構成する各圧電振動子は、柔軟性を有するコンポジット材や圧電フィルム材の圧電材料で形成される。
【0020】
アレイ圧電振動子21の前面側のセンサ面にシリコンゴム等の柔軟性を有する遅延材22が密着して装着され、この遅延材22の前面側は機械的・物理的強度と柔軟性を有する保護膜23で被覆される。遅延材22は、数mm〜10数mmの厚さを有し、音響伝播媒体として機能する一方、この遅延材22の機械的・物理的強度は、保護膜23を被覆することで補強される。保護膜23は、ポリイミドフィルムあるいはビニール樹脂フィルム、ポリアミド繊維フィルム等の柔軟性および物理的強度を有する強度フィルムで構成され、数10μm〜1mm程度の膜厚を有する。保護膜23は、アレイ圧電振動子21の前面側のセンサ面に直接密着状態で装着させてもよい。
【0021】
超音波トランスジューサ11は、アレイ圧電振動子21の前面側に音響伝達媒体機能を有する遅延材22を貼り付け、その前面側を、柔軟性と強度を有する保護膜23を貼り付け、被覆することで、超音波トランスジューサ11を検査対象物14の表面に密着させ、送信波ノイズの影響を受けずに、精度のよい超音波検査を行なうことができる。
【0022】
超音波トランスジューサ11のアレイ圧電振動子21は超音波センサあるいは超音波カメラを構成しており、アレイ圧電振動子21が数MHz、例えば5MHzの超音波をマトリクス配列のマトリクスセンサで発振させる場合、m行n列の各圧電振動子は1〜数mm、好ましくは2〜3mm角または丸形圧電振動子が用いられ、一列直線状のリニア配列のリニアセンサの場合、例えば1mm×10mm程度の短冊状をなす矩形の圧電振動子が用いられる。
【0023】
また、アレイ圧電振動子21の背面側に柔軟性を有するバッキング材24が密着される。バッキング材21は多数の圧電振動子からなるアレイ圧電振動子21をサポートする一方、アレイ圧電振動子21の背面側に超音波(音)がノイズとなって漏出するのを防止している。バッキング材24は、金属粉やセラミック粉を混合したシリコンゴム等で構成され、柔軟性を有する。バッキング材24は、好ましくは、遅延材22より肉厚に形成される。バッキング材24をアレイ圧電振動子21の背面側に貼り付ける(装着する)ことにより、柔軟性を残したまま、波数等の超音波特性を改善することができる。
【0024】
このようにして、超音波トランスジューサ11は、アレイ圧電振動子21と遅延材22、保護膜23およびバッキング材24とを層状に重ね合せて互いに貼着させ、密着させることで一体化した多層構造に構成され、検査対象物14の表面形状に倣って変形可能な柔軟性を有する。
【0025】
超音波トランスジューサ11は、高い柔軟性を有し、複雑な表面形状の検査対象物14上に設置すると、検査対象物14の表面形状に倣って変形し、検査対象物14の表面上に密着せしめられる。その際、超音波トランスジューサ11と検査対象物14の表面との間の音響的結合を良好にするため、ゼリ状等の液状あるいは変形可能な可撓性を有する固体シート状のカップラント25が介在され、音響的結合が図られる。液状のカップラント25は、被検査物である検査対象物14の表面に塗布される。
【0026】
超音波トランスジューサ11は、アレイ圧電振動子21内の各圧電振動子21a,…,21nのうちも駆動素子選択部13により所要の圧電振動子21iが1つ(または複数個)選択されると、選択された圧電振動子21iに信号発生部12からの駆動信号が導線で導かれ、印加される。
【0027】
信号発生部12は、パルス状あるいは連続した駆動信号を発生させており、この駆動信号が選択された圧電振動子21iに加えられると、圧電振動子21iは圧電体としての性質から超音波を発生させる。発生した超音波は、遅延材22を経て検査対象物14の検査領域に向けて発振され、検査対象物14の内部に照射され、検査対象物14の内部欠陥17等の検査に供される。
【0028】
検査対象物14の表面や内部欠陥17等で反射した超音波エコーは、再び遅延材22を介してアレイ圧電振動子21内の各圧電振動子21a〜21nにより、入力された超音波反射エコーに見合う電気信号が発生する。この電気信号は導線により信号検出回路15に導かれる。
【0029】
信号検出回路15は、圧電振動子21a〜21nで発生する電気信号を検出するものであり、検出された電気信号のうち検査に必要な複数のものは、信号処理部16内の増幅器30a〜30nに導かれる。この増幅器16は信号検出回路15側に設けてもよい。
【0030】
増幅器30a〜30nは、導かれた電気信号を増幅回路で増幅してA/D変換器31a〜31nに供給している。A/D変換器31a〜31nは増幅された電気信号をA/D変換し、変換されたディジタル電気信号を信号処理部16内の並列プロセッサ33に導いている。
【0031】
並列プロセッサ33は、A/D変換器31a〜31nから導かれたディジタル電気信号を並列演算処理し、検査対象物14の内部状態を可視化し、3次元画像化データIを生成するものであり、生成された画像化データIは表示処理装置18に導かれる。
【0032】
表示処理装置18は、3次元画像化データIを特願2004−175873号に示すように補正処理および比較処理を行なう処理部34を有する。表示処理装置18の処理部34は、信号処理部16から導かれた3次元画像化データIの画像輝度分布を補正したり、検査対象物14の異常部の位置検出を行なったり、異常部である内部欠陥17の位置と面積または体積を計算し、検査対象物14の品質の良否を判定する処理機能が備えられており、輝度補正された3次元画像化データIや検査対象物14の自動判定結果は表示部35に表示されるようになっている。
【0033】
次に、3次元超音波検査装置10の作用を説明する。
【0034】
この3次元超音波検査装置10は、複雑な曲面形状を有する検査対象物14の内部状態を非破壊で3次元検査するのに適したものである。検査対象物14の内部状態の3次元検査に際し、検査対象物14の表面上に、カップラント25を塗布し、このカップラント25を介して超音波トランスジューサ11を検査対象物14の表面上に設置し、密着させる。
【0035】
超音波トランスジューサ11を検査対象物14上に設置すると、超音波トランスジューサ11の高い柔軟性により、超音波トランスジューサ11は検査対象物14の表面形状に倣って変形し、検査対象物14の表面上に密着せしめられる。
【0036】
検査対象物14の表面形状に沿って蜜着された状態で、超音波トランスジューサ11をその駆動部12,13側および信号処理部16側に電気的に接続すると、検査対象物14の内部状態を3次元超音波検査可能なセット状態となる。
【0037】
このセット状態で、信号発生部12から駆動信号を発生させ、この駆動信号を駆動素子選択部13を介して超音波トランスジューサ11のアレイ圧電振動子21に選択的に作用させる。駆動素子選択部13は、アレイ圧電振動子21のうち所要の圧電振動子21i(21mi)を選択すると、選択された1つまたは複数の圧電振動子に所要のタイミングで駆動信号が導かれる。
【0038】
駆動素子選択部13は、駆動すべき1つまたは複数の圧電振動子を所要のタイミングで順次選択しており、選択された圧電振動子21i(21mi)に信号発生部12から駆動信号が加えられると、圧電振動子21i(21mi)は駆動され、検査対象物14に向けて超音波を発振させるようになっている。
【0039】
超音波トランスジューサ11の各圧電振動子21i(21mi)から順次発振された超音波は、遅延材22および保護膜23を通り、カップラント25を経て検査対象物14の検査領域に入射され、検査領域の表面や各境界層、内部欠陥部で反射する。遅延材22や保護膜23およびカップラント25は、互いに超音波の音響的整合あるいは結合が図られている。
【0040】
被検査体である検査対象物14の表面、各境界層や内部欠陥で反射した超音波の反射エコーは、検査対象物14から保護膜23および遅延材22を経て超音波センサである超音波トランスジューサ11の各圧電振動子21a,21b,…,21n(21mn)に時間差を持ってそれぞれ受信され、アレイ圧電振動子21の各圧電振動子21a,21b,…,21n(21mn)により反射エコーの電気信号に変換せしめられる。反射エコーの電気信号は、信号検出回路15に送られ、検出される。
【0041】
超音波トランスジューサ11は、各圧電振動子21i(21mi)を、駆動信号選択部13で選択して駆動信号を順次作用させることにより、各圧電振動子21i(21mi)は、所要のタイミングで順次駆動され、各圧電振動子21i(21mi)から超音波を発振させる。発振された超音波が検査対象物14に照射され、この検査対象物14の表面や内部欠陥17等から反射された反射エコーを、超音波センサであるアレイ圧電振動子21にそれぞれ受信している。
【0042】
アレイ圧電振動子21は各圧電振動子21a,21b,…,21n(21mn)のm行n列が、例えば10×10個のマトリクスセンサであるとすると、100個の圧電振動子がマトリクス状に配設され、各圧電振動子21i(21mi)が駆動素子選択部13により順次駆動される。各圧電振動子21i(21mi)に駆動信号が順次加えられるとその駆動タイミングで各圧電振動子21i(21mi)から超音波が順次発振せしめられる。各圧電振動子21i(21mi)から順次発振された超音波の反射エコーを超音波センサであるマトリクスセンサ21で順次受信し、その受信信号である反射エコーの電気信号をその都度信号検出回路16に送るようになっている。アレイ圧電振動子21はマトリクスセンサに代えて直線状一列のリニアセンサであってもよい。
【0043】
このため、信号検出回路16には、超音波トランスジューサ11の作動によりマトリクス状あるいはリニア状配列の個々の圧電振動子21i(21mi)から発振された超音波の反射エコーをマトリクスセンサあるいはリニアセンサのアレイ圧電振動子21で2次元的に受信する。アレイ圧電振動子21は超音波を発振する個々の超音波振動子21i分の反射エコーをそれぞれ受信して電気信号に変換し、反射エコーの電気信号として信号検出回路16に送り、この信号検出回路16を経て信号処理部17に送るようになっている。
【0044】
信号検出回路16は、マトリクスセンサ21で発生する反射エコーの電気信号を検出するものである。検出された電気信号のうち、検査に必要な複数のものは、増幅器30a,30b,…,30nを経て信号処理部17にそれぞれ導かれる。増幅器30a,30b,…,30nは信号検出回路15側に備えてもよい。
【0045】
増幅器30a,30b,…,30nは、導かれた反射エコーの電気信号を、信号処理可能なデシベル(dB)値に、例えば、約10000倍程度増幅し、反射エコーのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器31a,31b,…,31nにそれぞれ供給している。A/D変換器31a,31b,…,31nは、導かれた電気信号をA/D変換し、これを並列プロセッサ33,33a,33b,…,33nにそれぞれ導くものである。
【0046】
信号処理部17内の並列プロセッサ33は、統合プロセッサである3次元画像生成部を備えており、A/D変換器31a,31b,…,31nから導かれたディジタル信号を並列的にかつ迅速に並列演算処理し、それぞれ、検査領域(画像化領域)に予め区画された各メッシュからの反射強度を特定し、検査対象物14の内部状態を3次元のメッシュ化して可視化する3次元画像化データIを生成している。生成された3次元画像化データIは、並列プロセッサ33から表示処理装置18に送られる。
【0047】
信号処理部17の並列プロセッサ33は、A/D変換器31a,31b,…,31nから導かれたディジタル信号を検査領域のメッシュ毎に処理し検査対象物14の検査領域の状態を可視化する3次元超音波画像化データIを生成するものである。信号検出回路16により検出された反射エコーの電気信号から開口合成処理により、検査対象物14の内部に設定された3次元画像化領域内、すなわち検査領域の各メッシュに対応させて3次元画像化データIを生成する。
【0048】
信号処理部16で生成された3次元画像データIは、表示処理装置18の処理部34に導かれ、この処理部34で3次元画像化データIの画像輝度分布を補正したり、検査対象物14に内の内部欠陥17の異常位置を特定したり、また、内部欠陥17の異常部の位置と面積あるいは体積を計算して検査対象物14の品質良否を自動判定しており、輝度補正された3次元画像化データIや検査対象物14の自動判定結果は、表示部35に表示される。
【0049】
このようにして、表示処理装置18の表示部35には、輝度分布バラツキのない3次元画像化データIが表示され、立体的な3次元表示画像が均一な輝度分布で表示される。表示部35に表示される3次元表示画像は、輝度バラツキがなく、より均一で見易い処理画像として画面表示される。
【0050】
検査対象物の3次元表示画像に表示される処理画像は、検査対象物14に予め設定された立体的なメッシュ数に設定されており、処理画像からメッシュ数に対応するスライス画像を作成し、その画像化輝度が予め設定された設定値以上の画像化メッシュ数を計算することにより、内部欠陥17の位置や面積を求めることができ、検査対象物14の内部に発生するボイドや微小欠陥は、画像化メッシュ数のカウントにより、定量的に精度よく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る3次元超音波検査装置の一実施形態を概略的に示す全体構成図。
【符号の説明】
【0052】
10 3次元超音波検査装置(3次元超音波画像化装置)
11 超音波トランスジューサ
12 信号発生部
13 駆動素子選択部
14 検査対象物
15 信号検出回路
16 信号処理部
17 内部欠陥
18 表示処理装置
20 超音波センサ装置
21 アレイ圧電振動子(マトリクスセンサ、アレイセンサ)
22 遅延材
23 保護膜
24 バッキング材
25 カップラント(音響媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電振動子をマトリクス状またはリニア状一列に配設したアレイ圧電振動子を有する超音波トランスジューサと、
この超音波トランスジューサの各圧電振動子に接続され、上記アレイ圧電振動子のうち超音波を発振させる圧電振動子を選択する駆動素子選択部と、
この駆動素子選択部に選択された圧電振動子から発振される超音波を遅延材を介して検査対象物に入射させ、この検査対象物からの反射エコーを受信し、その反射エコーの電気信号を検出する信号検出回路と、
検出された反射エコーの電気信号を並列演算処理により、検査対象物の内部を予め区画された3次元画像化領域内のメッシュに対応させて3次元画像化データを生成する信号処理部と、
この信号処理部から3次元画像化データを取り込み、この3次元画像データを、メッシュ化された検査対象物の3次元座標に応じて表示する表示処理装置とを備え、
前記超音波トランスジューサは、検査対象物の表面形状に沿うように変形可能な柔軟性を有することを特徴とする3次元超音波検査装置。
【請求項2】
前記超音波トランスジューサに備えられるアレイ圧電振動子は、柔軟性を有するコンポジット材または圧電フィルム材等の圧電材料をマトリクス状あるいは直線状一列に独立して形成される複数の圧電振動子を備え、
前記アレイ圧電振動子の前面に柔軟性と物理的強度を有する保護膜が装着された請求項1記載の3次元超音波検査装置。
【請求項3】
前記超音波トランスジューサのアレイ圧電振動子の前面に、柔軟性を有する超音波伝達機能を有する遅延材が装着され、この遅延材の前面に柔軟性と物理的強度を有する保護膜が装着された請求項1記載の3次元超音波検査装置。
【請求項4】
前記超音波トランスジューサは、アレイ圧電振動子の背面に柔軟性を有するバッキング材が装着され、このバッキング材でアレイ圧電振動子の背面側に超音波が漏出するのを防止し、超音波特性を改善した請求項1記載の3次元超音波検査装置。
【請求項5】
前記バッキング材に金属粉およびセラミック粉が混合せしめられた請求項4記載の3次元超音波検査装置。
【請求項6】
前記超音波トランスジューサは、多数の圧電振動子を備えたアレイ圧電振動子と、
このアレイ圧電振動子の前面に装着され、超音波伝達機能と柔軟性を有する遅延材と、
この遅延材の前面に装着され、物理的強度と柔軟性を有する保護膜と、
前記アレイ圧電振動子の背面に装着され、超音波の背面側への漏出を防止するバッキング材とを一体的に積層して構成し、
前記超音波トランスジューサは、検査対象物の表面形状に倣うように密着し、柔軟性を有して変形可能な多層構造に構成された請求項1記載の3次元超音波検査装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−192649(P2007−192649A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10673(P2006−10673)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】