説明

4’−アジドシチジン誘導体の製造方法

本発明は、式(I)の4’−アジドシチジンの、その水和物の、又は薬剤学的に許容しうるその塩の新規な製造方法に関する。式(I)の4’−アジドシチジンは、ウイルス介在性疾患の処置に、特にHCV介在性疾患の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【0002】
【化1】


で示される4’−アジドシチジンの、その水和物の、又は薬剤学的に許容しうるその塩の新規な製造方法に関する。式(I)の4’−アジドシチジンは、ウイルス介在性疾患の処置に、特にHCV介在性疾患の処置に有用である。
【背景技術】
【0003】
式(I)の4’−アジドシチジン、及びその製造のための2通りの合成経路は、PCT公報WO 2004/046159 A1及びWO 2005/000864 A1に記載されている。
【0004】
目的の4’−アジドシチジンへの4’−アジド−トリアシルウリジンの変換には、トリアゾール、オキシ塩化リン及びトリエチルアミンの存在下での反応を行うことが示唆された。しかしトリアゾールの使用は、その低い生分解性のため技術的規模の製造法には不都合であることが分かった。
【0005】
よって本発明の目的は、技術的規模で実行することができ、そして上に略述されたような欠点のない製造法を提供することである。
【0006】
本発明の製造法により、この欠点を克服できることが分かった。
【0007】
本発明の製造法は、式(I):
【0008】
【化2】


で示される4’−アジドシチジンの、その水和物の、又は薬剤学的に許容しうるその塩の調製であって、
a) 式(II):
【0009】
【化3】


[式中、
及びRは、COR及びC(=O)ORから独立に選択されるか、あるいはR及びRは、一緒にCH−、C(CH−、CH−フェニル−、又は下記式:
【0010】
【化4】


で示される架橋を形成し;
は、COR及びC(=O)ORから選択され、そして
は、独立に、C1−12−アルキル、1〜3個の置換基(C1−6−アルキル、C1−6−アルコキシ、ハロゲン、ニトロ又はシアノよりなる群から選択される)で場合により置換されているフェニルである]で示される保護4’−アジド−トリアシルヌクレオシドを、イミダゾール、オキシ塩化リン及びトリエチルアミンと反応させることにより、式(IIIa):
【0011】
【化5】


[式中、R、R及びRは、上記と同義である]で示されるイミダゾール化合物を形成すること;
b) 式(IIIa)のイミダゾール化合物を、水性アンモニアによるアンモノリシスに付すことにより、式(IIIb):
【0012】
【化6】


[式中、R、R及びRは、上記と同義である]で示されるアミンを形成すること、及び
c) 式(IIIb)のアミンを最後に式(I)の4’−アジド−シチジンに変換することを特徴とする調製を含む。
【0013】
「C1−12−アルキル」という用語は、本明細書において使用されるとき、1〜12個の炭素原子を含有する非分岐又は分岐鎖の炭化水素残基を意味する。代表的なC1−12−アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル又はヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル又はドデシルを包含する。
【0014】
「C1−6−アルコキシ」という用語は、本明細書において使用されるとき、1〜6個の炭素原子を含有する非分岐又は分岐鎖のC1−6−アルキルオキシ残基を意味する。代表的なC1−6−アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、n−ブチルオキシ、i−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ又はヘキシルオキシを包含する。
【0015】
「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード、好ましくはクロロのことをいう。
【0016】
「水和物」という用語は、本明細書において使用されるとき、式(I)の4’−アジド−シチジンが、非共有分子間力により結合した、化学量論又は非化学量論量の水を包含することを意味する。
【0017】
薬剤学的に許容しうる塩という用語は、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸及び臭化水素酸)、硫酸、硝酸及びリン酸などのような無機酸との、並びに有機酸との(例えば、酢酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸などとの)、式(I)の4’−アジド−シチジンの塩のことをいう。このような塩の形成及び単離は、当該分野において既知の方法により実施することができる。
【0018】
工程a)
工程aは、式(II):
【0019】
【化7】


[式中、R、R及びRは、上記と同義である]で示される保護4’−アジド−ウリジン誘導体の、イミダゾール、オキシ塩化リン及びトリエチルアミンとの式(IIIa):
【0020】
【化8】


[式中、R、R及びRは、上記と同義である]で示されるイミダゾール化合物への変換を含む。
【0021】
通常、本製造法は、有機溶媒の存在下で、好ましくは塩化メチレン、THF又は2−メチルテトラヒドロフラン中で、0℃〜80℃、好ましくは20℃〜65℃の反応温度で実行される。
【0022】
イミダゾールは、概して過剰に、即ち、式(II)の4’−アジド−トリアシルヌクレオシド1当量に対して4.0当量〜10.0当量、好ましくは5.0当量〜8.0当量で使用される。
【0023】
オキシ塩化リンは、概して過剰に、即ち、式(II)の4’−アジド−トリアシルヌクレオシド1当量に対して1.0当量〜2.0当量、好ましくは1.4当量〜1.7当量で使用される。
【0024】
式(II)の4’−アジド−トリアシルヌクレオシドは、例えば、PCT公報WO 2005/000864 A1の実施例1〜5に開示される手順により、合成することができる。
【0025】
式(IIIa)のイミダゾール化合物は、新規化合物であり、よって本発明の更なる実施態様である。
【0026】
特に好ましいのは、R及びRが、ベンゾイルであるか、又はR及びRが、一緒に下記式:
【0027】
【化9】


で示される構造を形成し、そしてRが、3−クロロベンゾイルである、式(IIIa)のイミダゾール化合物である。
【0028】
式(IIIa)のイミダゾール化合物は、当業者には知られている手順により、例えば、有機相からそれを、例えば、蒸発によって回収することにより、反応混合物から単離することができる。
【0029】
概して式(IIIa)のイミダゾール化合物は、有機相からそれを単離することなく、工程b)のアンモノリシスに直接付される。
【0030】
工程b)
工程b)は、水性アンモニアによる式(IIIa)のイミダゾール化合物のアンモノリシス(これによって式(IIIb)のアミンが生成する)を含む。
【0031】
このアンモノリシスは、普通、塩化メチレン、テトラヒドロフラン又は2−メチルテトラヒドロフラン、好ましくはテトラヒドロフラン又は2−メチルテトラヒドロフランのような有機溶媒中で、20℃〜60℃、好ましくは25℃〜45℃の温度で実行される。
【0032】
適切なアンモニア水溶液は、20%〜30%の、概して約25%のアンモニア含量を有する。
【0033】
アンモノリシスの所要時間は、アンモニアの量及び反応温度に大きく依存する。
【0034】
式(IIIb)のアミンは、当業者には知られている方法により単離することができるが、概して工程c)に直接使用される。
【0035】
工程c)
工程c)は、式(I)の4’−アジドシチジンへの式(IIIb)のアミンの変換を含む。
【0036】
、R及びRが、COR及びC(=O)ORから独立に選択される場合に、工程c)の変換は、水性アンモニア及びメタノール中で20℃〜60℃の温度で実行されるメタノリシスである。
【0037】
メタノールへの移行は、工程b)で使用された溶媒を反応混合物から留去し、そしてメタノールによって置換することにより起こしうる。
【0038】
次にメタノリシスは、水性アンモニアの溶液の添加、及び20℃〜60℃、好ましくは25℃〜45℃の温度での反応の実行によって達成することができる。
【0039】
適切なアンモニア水溶液に関しては、上記工程b)の説明を参照されたい。
【0040】
及びRが、一緒になってCH−、C(CH−、CH−フェニル−、又は下記式:
【0041】
【化10】


で示されるアセタール架橋を形成し、そしてRが、COR及びC(=O)ORから独立に選択される(ここで、Rは、上記と同義である)場合に、工程c)の変換は、水性アンモニア及びメタノール中で20℃〜60℃の温度で実行されるアシル基Rを開裂するためのメタノリシス、並びにR及びRにより形成されるアセタールを開裂するための酸処理を含む。
【0042】
このメタノリシスは、上述のとおり実行することができる。
【0043】
酸処理には、塩酸若しくは硫酸のような鉱酸、又はギ酸若しくは酢酸のような短鎖カルボン酸を使用することができる。R及びRにより形成される環状アセタールは、好ましくはギ酸により室温で開裂される。
【0044】
目的の式(I)の4’−アジドシチジンの単離は、当業者には知られている方法を適用することにより、例えば、メタノールから溶媒を、例えば、アセトン/酢酸エチルに交換し、そして沈殿生成物を濾別することにより行うことができる。
【0045】
本発明の更なる実施態様において、上述のような本発明の製造法は、式(IV):
【0046】
【化11】


で示されるトリ−イソブチリルオキシ化合物の調製に使用することができる。
【0047】
これは、式(I)の4’−アジド−シチジンを塩化イソブチリルで、水及び有機溶媒の混合物中で、4−(ジメチルアミノ)−ピリジン及びトリエチルアミンの存在下で変換することにより達成することができる。適切な有機溶媒は、テトラヒドロフランである。この反応温度は、通常−5℃〜30℃の範囲で選択される。式(IV)のトリ−イソブチリルオキシ化合物の単離は、水性処理、続いてイソプロパノール/ヘプチルへの溶媒交換、及び塩酸での酸性化によって起こすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下の実施例は、本発明の製造法を限定することなく、これを説明するものである。
実施例
略語:Bz=ベンゾイル;(Cl)Bz=m−クロロベンゾイル;MeTHF=2−メチルテトラヒドロフラン;DMAP=4−(ジメチルアミノ)−ピリジン;THF=テトラヒドロフラン
【0049】
実施例1
4−アミノ−1−((2R,3R,4S,5R)−5−アジド−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1H−ピリミジン−2−オンの調製。
【0050】
【化12】


MeTHF 500ml中の3−クロロ安息香酸(2R,3S,4R,5R)−2−アジド−3,4−ビス−ベンゾイルオキシ−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イル)−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル100g(0.158mol)及びイミダゾール86.6g(1.266mol)の懸濁液を、室温でトリエチルアミン64g(0.632mol)で処理した。生じた混合物を20〜45℃で30〜120分以内にオキシ塩化リン36.8g(0.238mol)で処理した。添加後、この混合物を55〜65℃に加熱して、この温度で5〜6時間撹拌した。次にこの混合物を15〜25℃に冷却して、この温度で水300mlで処理した。層を分離して、水層をMeTHF(1×50ml)で抽出した。合わせた有機層を20〜30℃で10〜20分以内にアンモニア(25%水溶液)54gで処理した。この混合物を40℃に加熱して、この温度で7〜9時間撹拌した。完全な変換後、下部の水層を分離して、有機層からMeTHFを留去して、メタノールにより置換した。このメタノール溶液(約400ml)を次に30〜40℃でアンモニア(25%水溶液)108gで処理して、生じた混合物を35〜40℃で5時間撹拌した。次にメタノールを留去して、アセトン400mlによって連続置換することにより、生成物を沈殿させた。沈殿を完了させるために、酢酸エチル500mlを室温で加えた。生じた懸濁液を2〜4時間以内に0〜5℃に冷却して、この温度で更に2時間撹拌した。結晶を濾過し、酢酸エチル124ml及びアセトン62mlの予冷した混合物で2回に分けて洗浄して、45℃/<30mbarで5時間乾燥することにより、4−アミノ−1−((2R,3S,4S,5R)−5−アジド−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1H−ピリミジン−2−オン43.3g(90.5%)を99.4%(m/m)の含有率の一水和物として得た。
【0051】
実施例2
3−クロロ安息香酸(2R,3S,4R,5R)−2−アジド−3,4−ビス−ベンゾイルオキシ−5−(4−イミダゾール−1−イル−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステルの調製
【0052】
【化13】


MeTHF 110ml中の3−クロロ安息香酸(2R,3S,4R,5R)−2−アジド−3,4−ビス−ベンゾイルオキシ−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イル)−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル30.0g(47.5mmol)及びイミダゾール26.0g(380mmol)の懸濁液を、室温でトリエチルアミン19.2g(189mmol)で処理した。生じた混合物を10〜20℃で30分以内にオキシ塩化リン11.03g(71.2mmol)で処理した。この混合物を60℃に加熱して、この温度で5時間撹拌した。次にこの混合物を15℃に冷却して、この温度で水125mlで処理した。層を分離して、水層をMeTHF(1×30ml)で抽出した。有機層からMeTHFを蒸留により完全に除去して、アセトニトリル250mlにより置換した。水(50ml)及び塩化メチレン(100ml)を加えて層を分離した。水層を塩化メチレン(1×100ml)で抽出した。有機層を濾過し、溶媒を留去して、残渣(34.2g)を40℃/<30mbarで16時間乾燥することにより、3−クロロ安息香酸(2R,3S,4R,5R)−2−アジド−3,4−ビス−ベンゾイルオキシ−5−(4−イミダゾール−1−イル−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル29.7g(90.8%)を99.3%(面積)の含有率で得た。
【0053】
H−NMR(CDCl)δ4.87 (s, 2H); 6.04-6.07 (m, 2H); 6.33 (dd, 1H); 6.51 (d, 1H); 7.20-7.41 (m, 6H); 7.49-7.60 (m, 3H); 7.69 (s, 1H); 7.89-8.06 (m, 7H); 8.37 (s, 1H)
IR: 2923, 2854, 2120 (−N), 1730, 1678, 1633, 1545, 1469, 1247, 1127, 929, 709, 476 cm−1
MS: 682(M+1)
【0054】
実施例3
4−アミノ−1−((3aR,4R,6aS,6R)−6−アジド−6−ヒドロキシメチル−2−メトキシ−テトラヒドロフロ[3,4−d]−1,3−ジオキソール−4−イル)−1H−ピリミジン−2−オンの調製。
【0055】
【化14】


塩化メチレン9ml中のイミダゾール0.69g(10.11mmol)及びトリエチルアミン1.07g(10.5mmol)の懸濁液に、−5〜0℃で15分以内にオキシ塩化リン0.49g(3.22mmol)を滴下により加えた。−5℃で15分後、生じた懸濁液を3−クロロ−安息香酸4−アジド−6−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イル)−2−メチル−テトラヒドロ−フロ[3,4−d]−1,3−ジオキソール−4−イルメチルエステル1.00g(2.15mmol)で処理し、続いて塩化メチレン1mlで処理した。この懸濁液が15分以内に室温まで温まるのを待ち、次いで室温で69時間撹拌した。この懸濁液を0℃に冷却して、この温度で水10mlで処理した。懸濁液が室温まで温まるのを待ち、層を分離した。水層を塩化メチレン(2×5ml)で抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、真空で濃縮して、25℃/<10mbarで22時間乾燥することにより、3−クロロ安息香酸4−アジド−6−(4−イミダゾール−1−イル−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−2−メチル−テトラヒドロ−フロ[3,4−d]−1,3−ジオキソール−4−イルメチルエステル1.07g(96%)をベージュ色の泡状物として得た。
【0056】
H−NMR(500MHz, CDCl)δ3.36 (s, 3H); 4.71 (d, J=12.5 Hz, 1H); 4.77 (d, J=11.5 Hz, 1H); 5.04 (d, J=5.5 Hz, 1H); 5.44 (dd, J=5.5 Hz, J=1.5 Hz, 1H); 6.03 (m, 2H); 6.55 (d, J=7.0 Hz, 1H); 7.21 (dd, J=1.5 Hz, J=0.5 Hz, 1H); 7.42 (dd, J=7.5 Hz, J=7.5 Hz, 1H); 7.58 (m, 1H), 7.70 (dd, J=2.0 Hz, J=2.0 Hz, 1H), 7.96 (m, 1H), 8.02 (d, J=8.0 Hz, 1H); 8.04 (dd, J=2.0 Hz, J=2.0 Hz, 1H); 8.40 (dd, J=1.0 Hz, J=1.0 Hz, 1H)
【0057】
この泡状物1.055g(2.05mmol)をTHF 10mlに溶解して、アンモニア(28%水溶液)0.90gで処理した。生じた溶液を25℃で24時間撹拌した。次にこの溶液をロータリーエバポレーターで25℃及び70〜30mmHgで濃縮した。メタノール(10ml)を加え、続いてアンモニア(28%水溶液)0.90gを加えて、生じた溶液を25℃で22時間撹拌した。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、残渣を、最初に酢酸エチル、続いて酢酸エチル/メタノール(5:1)を溶離液として使用するシリカゲルの放射状クロマトグラフィーにより精製することによって、4−アミノ−1−((2S,4R,3aS,6aS,6R)−6−アジド−6−ヒドロキシメチル−2−メチル−テトラヒドロフロ[3,4−d]−1,3−ジオキソール−4−イル)−1H−ピリミジン−2−オン0.68g(102%)をベージュ色の固体として得た。
【0058】
実施例4
ドデカン酸(2R,3S,4R,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−2−アジド−3,4−ジヒドロキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステルの調製
【0059】
【化15】


塩化メチレン5ml中のオキシ塩化リン1.35g(8.83mmol)の溶液を、塩化メチレン20ml中のイミダゾール1.89g(27.7mmol)及びトリエチルアミン2.92g(28.9mmol)の懸濁液に0〜−5℃で15分以内に滴下により加え、生じた懸濁液を−5℃で15分間撹拌した。塩化メチレン12ml中のアジドエステル(3.00g、5.89mmol)の溶液を加え、生じた懸濁液が10分以内に0〜25℃に温まるのを待ち、次に25℃で69時間撹拌した。この懸濁液を0℃に冷却して、0〜5℃で水30mlを滴下により加えた。懸濁液が20℃まで温まるのを待ち、層を分離した。水層を塩化メチレン(2×5ml)で抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)し、濾過し、真空で濃縮して、25℃/<10mbarで5時間乾燥することにより、イミダゾール誘導体3.13g(95.0%)をベージュ色の泡状物として得た。この泡状物を無水THF 30mlに溶解して、生じた溶液をアンモニア(28%水溶液)2.49g(19.9mmol)で処理した。25℃で23時間後、この溶液を真空で濃縮して、25℃/<10mbarで10時間乾燥することにより、淡黄色の固体3.30gを得た。この固体を熱メタノール(50℃)から再結晶することにより、メトキシメチレン保護シチジン誘導体1.27gを無色の固体として得た。
【0060】
この固体1.20g(2.36mmol)をギ酸(96%)4.8mlで処理して、生じた懸濁液を25℃で4時間撹拌した。次に水(4.8ml)を加え、続いてアンモニア(28%水溶液)10.5mlを加えることにより、pHをpH9に調整した。25℃で1時間後、沈殿物を濾過し、水10mlで洗浄して、25℃/<10mbarで16時間乾燥することにより、ドデカン酸(2R,3R,4S,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−2−アジド−3,4−ジヒドロキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル1.10g(40%)を無色の固体として得た。
【0061】
分析用試料は、熱メタノールから再結晶によって得た。
H−NMR(500MHz, DMSO−d)δ0.85 (t, J=7.0 Hz, 3H); 1.18-1.30 (m, 16H); 1.53 (m, 2H); 2.33 (t, J=7.5 Hz, 2H); 3.78 (t, J=5.0 Hz, 1H); 4.29 (d, J=12.0 Hz, 1H); 4.41 (d, J=12.0 Hz, 1H); 4.53-4.57 (m, 1H); 5.60 (br, 1H); 5.83 (d, J=8.0 Hz, 1H); 5.98 (br, 1H); 6.17 (d, J=8.0 Hz, 1H), 7.33 (br, 2H), 7.65 (d, J=7.0 Hz, 1H)
13C NMR(125MHz,DMSO−d)δ173.0, 166.2, 156.2, 142.0, 97.9, 96.3, 89.6, 74.7, 72.1, 65.1, 34.0, 32.0, 29.7, 29.5, 29.4, 29.3, 29.0, 25.0, 22.8, 14.7.
IR(KBr): 3538, 3400, 3288, 2924, 2850, 2116, 1759, 1672, 1641, 1593, 1523 cm−1
【0062】
実施例5
イソ酪酸(2R,3S,4R,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−2−アジド−3,4−ビス−イソブチリルオキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル塩酸塩の調製
【0063】
【化16】


THF 102ml及び水40ml中の4−アミノ−1−((2R,3S,4S,5R)−5−アジド−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1H−ピリミジン−2−オン21.6g(0.070mol)及びDMAP 88mg(0.72mmol)の懸濁液を−5〜0℃でトリエチルアミン35.8g(0.354mol)で処理した。次にこの混合物を1〜2時間以内に−5〜20℃で塩化イソブチリル29.5g(0.271mol)で処理して、生じた混合物が室温まで温まるのを待ち、室温で1時間撹拌した。完全な変換後、酢酸エチル110ml、続いて水30mlを加え、塩酸(水中37%)約6.8gの添加によりpHをpH6.5〜7.0に調整した。層が分離するのを待ち、下部の水層を除去して、有機層を水(1×50ml)で洗浄した。有機層から酢酸エチル及びTHFを留去して、イソプロパノールにより完全に置換した。次にこのイソプロパノール溶液(約90ml)を20〜30℃で5〜10分以内にイソプロパノール中の塩酸の溶液(21.7%)13.2g(0.079mol)で処理した。ヘプタン120mlをゆっくり加えることにより、生成物の結晶化が起こった。生じた懸濁液を40℃で2時間撹拌し、次に2時間以内に0〜5℃に冷却した。0〜5℃で1時間後、結晶を濾過し、ヘプタン62ml及びイソプロパノール31mlの予冷した混合物で2回に分けて洗浄して、70℃/<30mbarで10時間乾燥することにより、イソ酪酸(2R,3S,4R,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−2−アジド−3,4−ビス−イソブチリルオキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル塩酸塩35.5g(93.5%)を99.5%(m/m)の含有率で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化17】


で示される4’−アジドシチジンの、その水和物の、又は薬剤学的に許容しうるその塩の製造方法であって、
a) 式(II):
【化18】


[式中、
及びRは、COR及びC(=O)ORから独立に選択されるか、あるいはR及びRは、一緒にCH−、C(CH−、CH−フェニル−、又は下記式:
【化19】


で示される架橋を形成し;
は、COR及びC(=O)ORから選択され、そして
は、独立に、C1−12−アルキルであるか、1〜3個の置換基(C1−6−アルキル、C1−6−アルコキシ、ハロゲン、ニトロ又はシアノよりなる群から選択される)で場合により置換されているフェニルである]で示される保護4’−アジド−トリアシルヌクレオシドを、イミダゾール、オキシ塩化リン及びトリエチルアミンと反応させることにより、式(IIIa):
【化20】


[式中、R、R及びRは、上記と同義である]で示されるイミダゾール化合物を形成すること、及び
b) 式(IIIa)のイミダゾール化合物を、水性アンモニアによるアンモノリシスに付すことにより、式(IIIb):
【化21】


[式中、R、R及びRは、上記と同義である]で示されるアミンを形成すること、及び
c) 式(IIIb)のアミンを最後に式(I)の4’−アジド−シチジンに変換することを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
工程a)の式(IIIa)のイミダゾール化合物の形成が、有機溶媒の存在下で0℃〜80℃で実行されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
有機溶媒として塩化メチレン、テトラヒドロフラン又は2−メチルテトラヒドロフランが使用されることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
式(IIIa)のイミダゾール化合物が、単離なしに工程b)のアンモノリシスに直接使用されることを特徴とする、請求項1〜3記載の方法。
【請求項5】
工程b)のアンモノリシスが、有機溶媒中で20℃〜60℃の温度で実行されることを特徴とする、請求項1〜4記載の方法。
【請求項6】
有機溶媒としてテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン又は塩化メチレンが使用されることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
式(IIIb)のアミンが、単離なしに工程c)の変換に直接使用されることを特徴とする、請求項1〜6記載の方法。
【請求項8】
、R及びRが、COR及びC(=O)ORから独立に選択される場合に、工程c)の変換が、水性アンモニア及びメタノール中で20℃〜60℃の温度で実行されるメタノリシスであることを特徴とする、請求項1〜7記載の方法。
【請求項9】
及びRが、一緒になってCH−、C(CH−、CH−フェニル−、又は下記式:
【化22】


で示されるアセタール架橋を形成し、そしてRが、COR及びC(=O)ORから独立に選択される(ここで、Rは、上記と同義である)場合に、工程c)の変換が、水性アンモニア及びメタノール中で20℃〜60℃の温度で実行されるアシル基Rを開裂するためのメタノリシス、並びにR及びRにより形成されるアセタールを開裂するための酸処理を含むことを特徴とする、請求項1〜7記載の方法。
【請求項10】
酸処理が、ギ酸により実行されることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
及びRが、ベンゾイルであるか、又はR及びRが、一緒に下記式:
【化23】


であり、そしてRが、3−クロロベンゾイルであることを特徴とする、請求項1〜10記載の方法。
【請求項12】
式(IIIa):
【化24】


[式中、
及びRは、COR及びC(=O)ORから独立に選択されるか、あるいはR及びRは、一緒にCH−、C(CH−、CH−フェニル−、又は下記式:
【化25】


で示される架橋を形成し;
は、COR及びC(=O)ORから選択され、そして
は、独立に、C1−12−アルキルであるか、1〜3個の置換基(C1−6−アルキル、C1−6−アルコキシ、ハロゲン、ニトロ又はシアノよりなる群から選択される)で場合により置換されているフェニルである]で示されるイミダゾール化合物。
【請求項13】
及びRが、ベンゾイルであるか、又はR及びRが、一緒に下記式:
【化26】


であり、そしてRが、3−クロロベンゾイルである、請求項12記載のイミダゾール化合物。
【請求項14】
式(IV):
【化27】


で示される化合物の製造のための、請求項1〜11記載の方法の使用。
【請求項15】
本明細書に前記の方法。

【公表番号】特表2010−512365(P2010−512365A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540706(P2009−540706)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063132
【国際公開番号】WO2008/071571
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】