説明

5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミドの新規多形および無定形

本発明は、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェン−カルボキサミドの新規多形および無定形、それらの製造方法、それらを含有する医薬、および疾患と闘うためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェン−カルボキサミドの新規多形および無定形、それらの製造方法、これらの形態を含む医薬、および疾患の制御におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミドは、WO01/47949およびWO2004/060887から知られており、式(I):
【化1】

に相当する。
【0003】
式(I)の化合物は、低分子量の経口投与できる血液凝固因子Xaの阻害剤であり、様々な血栓塞栓性疾患、特に心筋梗塞、狭心症(不安定狭心症を含む)、血管形成術または大動脈冠動脈バイパス術後の再閉塞および再狭窄、脳卒中、一過性虚血発作、末梢動脈閉塞性疾患、肺塞栓症または深部静脈血栓症の予防、二次予防および/または処置に用いることができる(このために、WO01/47919を参照、その開示を出典明示により本明細書の一部とする)。
【0004】
式(I)の化合物は、WO01/47949およびWO2004/060887に記載の通りに製造できる。ここで、式(I)の化合物は、下記で変態Iと称する結晶変態で得られる。変態Iは、230℃の融点および特徴的なX線回折図、IRスペクトル、ラマンスペクトル、FIRスペクトルおよびNIRスペクトルを有する(表1−6、図1−6)。この度、変態Iは、変態IIと比較して4倍低い溶解度を有することが判明した。
【0005】
驚くべきことに、式(I)の化合物の2つのさらなる変態、水和物、NMP溶媒和物およびTHFとの包接化合物が見出された。変態IIの式(I)の化合物は、約203℃で融解し、約195℃の転移点を有し、変態IIIの式(I)の化合物は、約127℃の転移点を有する。水和物は、約4%の水を含有し、NMP溶媒和物は、18.5%のN−メチルピロリドンを含有し、THFとの包接化合物は、約5−7%のテトラヒドロフランを含有する。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、変態IIの式(I)の化合物に関する。本発明によると、変態IIの式(I)の化合物の使用により、既知の変態と比較してより高い溶解度の達成が保証される。
【0007】
式(I)の化合物の変態IIは、変態I、変態III、水和物形、NMP溶媒和物およびTHFとの包接化合物と比較して、明らかに区別できるX線回折図、IRスペクトル、NIRスペクトル、FIRスペクトルおよびラマンスペクトルを有する(図2−6)。変態IIの式(I)の化合物は、203℃で融解し、約195℃で転換し、従って変態I(融点230℃)および変態III(転移点約127℃)と明らかに区別できる。これらの無溶媒形態と対照的に、式(I)の化合物の水和物、式(I)の化合物のNMP溶媒和物および式(I)の化合物のTHFとの包接化合物は、熱重量分析(TGA)において、各々4%、18.5%および5−7%の質量減少を示す(図1)。
【0008】
結晶多形は無定形よりも乏しい水溶解性を有することが、一般的に知られている。これは、無定形と比較して低いバイオアベイラビリティーを導く。
【0009】
本発明は、さらに、無定形の式(I)の化合物に関する。本発明によると、無定形の式(I)の化合物の使用により、最大のバイオアベイラビリティーの達成が保証される。
【0010】
式(I)の化合物の無定形は、特徴的なX線回折図、NIRスペクトル、FIRスペクトルおよびラマンスペクトルを有する(図8−12)。無定形の式(I)の化合物は、約83℃のガラス転移温度を有する(DSC、図7)。
【0011】
本発明によると、変態IIまたは無定形の式(I)の化合物は、医薬製剤において高純度で用いられる。安定性の理由で、医薬製剤は、主に変態IIまたは無定形の式(I)の化合物を含有し、比較的大きい割合の他の形態、例えば、式(I)の化合物の他の変態または溶媒和物を含有しない。好ましくは、医薬は、含有される式(I)の化合物の総量を基準として、90重量パーセントより多い、特に好ましくは95重量パーセントより多い変態IIまたは無定形の式(I)の化合物を含有する。
【0012】
本発明は、さらに、疾患、好ましくは血栓塞栓性疾患および/または血栓塞栓性合併症の処置および/または予防のための、変態IIまたは無定形の式(I)の化合物の使用に関する。
【0013】
本発明の意味において、「血栓塞栓性疾患」には、特に、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)または非ST上昇型心筋梗塞(非STEMI)、安定狭心症、不安定狭心症、血管形成術または大動脈冠動脈バイパス術などの冠動脈介入後の再閉塞および再狭窄、末梢動脈閉塞疾患、肺栓塞症、深部静脈血栓および腎静脈血栓、一過性虚血発作および血栓性および血栓塞栓性脳卒中などの疾患が含まれる。
【0014】
従って、本発明による化合物は、例えば心房細動などの急性、間欠性または持続性心不整脈を有する患者、および電気的除細動を受けている者、さらに、心臓弁疾患または人工心臓弁を有する患者の場合において、心原性血栓塞栓症、例えば、脳虚血、卒中および全身性血栓塞栓症、並びに、虚血の予防および処置にも適する。さらに、本発明による化合物は、汎発性血管内凝固症候群(DIC)の処置に適する。
【0015】
血栓塞栓性合併症は、さらに、微小血管障害性溶血性貧血、血液透析などの体外血液循環、および心臓代用弁において起こる。
【0016】
さらに、本発明による化合物は、アテローム硬化性血管疾患および炎症性疾患、例えば運動器のリウマチ性疾患の予防および/または処置にも、そしてさらに、アルツハイマー病の予防および/または処置にも適する。さらに、本発明による化合物は、腫瘍成長および転移形成の阻害、微小血管障害、加齢に伴う黄斑変性症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症および他の微小血管の疾患、および、例えば、腫瘍患者における、特に比較的大きい外科的介入または化学もしくは放射線治療を受けている者における、静脈血栓塞栓症などの血栓塞栓性合併症の予防および処置にも用いることができる。
【0017】
本発明による化合物は、さらに、エクスビボの凝血の防止に、例えば、血液および血清製品の保存に、カテーテルおよび他の医療器具および装置の清浄化/予処理に、インビボまたはエクスビボで用いられる医療器具および装置の人工的表面の被覆に、または、Xa因子を含有する生物学的サンプルにおいて、用いることができる。
【0018】
本発明は、さらに、疾患、特に上述の疾患の処置および/または予防のための、本発明による化合物の使用に関する。
【0019】
本発明は、さらに、疾患、特に上述の疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するための、本発明による化合物の使用に関する。
【0020】
本発明は、さらに、抗凝血活性を有する量の本発明による化合物を使用する、疾患、特に上述の疾患の処置および/または予防方法に関する。
【0021】
本発明は、さらに、抗凝血活性を有する量の本発明による化合物を添加することを特徴とする、インビトロの、特に、保存血液またはXa因子を含む生物学的サンプルにおける、血液凝固の防止方法に関する。
【0022】
本発明は、さらに、特に上述の障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物および1種またはそれ以上の他の活性物質を含む医薬に関する。例として、そして好ましく言及し得る、適する組合せの活性物質は、以下のものである:
・脂質低下剤、特にHMG−CoA(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A)リダクターゼ阻害剤;
・冠血管治療剤/血管拡張剤、特にACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤;AII(アンジオテンシンII)受容体アンタゴニスト;β−アドレナリン受容体アンタゴニスト;アルファ−1−アドレナリン受容体アンタゴニスト;利尿剤;カルシウムチャネル遮断剤;環状グアノシン一リン酸(cGMP)の増加をもたらす物質、例えば、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤;
・プラスミノーゲン活性化剤(血栓溶解剤/線維素溶解剤)および血栓溶解/線維素溶解を高める化合物、例えば、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子の阻害剤(PAI阻害剤)またはトロンビン活性型繊維素溶解阻害因子の阻害剤(TAFI阻害剤);
・抗凝血活性を有する物質(抗凝血剤);
・血小板凝集を阻害する物質(血小板凝集阻害剤、栓球凝集阻害剤);
・およびフィブリノーゲン受容体アンタゴニスト(糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニスト)。
【0023】
本発明は、さらに、本発明による化合物を、通常1種またはそれ以上の不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と共に含有する医薬、および上述の目的でのそれらの使用に関する。
【0024】
本発明による化合物は、全身的および/または局所的に作用できる。この目的で、それらは、適する方法で、例えば、経口で、非経腸で、肺に、鼻腔に、舌下に、舌に、頬側に、直腸に、皮膚に、経皮で、結膜に、耳に、またはインプラントもしくはステントとして、投与できる。
これらの投与経路のために、本発明による化合物を適する投与形で投与できる。
【0025】
経口投与のために、先行技術に準じて機能し、本発明による化合物を迅速におよび/または改変された形態で放出し、変態IIまたは無定形の式(I)の化合物を含有する投与形、例えば、錠剤(非被覆または被覆錠剤、例えば、腸溶性被覆、または、遅れて溶解するか、もしくは不溶であり、本発明による化合物の放出を制御する被覆を有するもの)、口腔中で迅速に崩壊する錠剤、またはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、散剤、懸濁剤またはエアゾール剤が適する。
【0026】
非経腸投与は、吸収段階を回避して(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内に)、または吸収を介して(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)、行うことができる。非経腸投与のために、適する投与形は、とりわけ、懸濁剤、凍結乾燥剤または滅菌粉末剤の形態の注射および点滴用製剤である。
【0027】
他の投与経路のために、例えば、吸入用医薬形態(とりわけ、粉末吸入器、噴霧器)、舌、舌下または頬側投与用の錠剤、フィルム/オブラートまたはカプセル剤、坐剤、耳または眼用製剤、膣用カプセル剤、水性懸濁剤(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、パッチ)、ミルク、ペースト、フォーム、散布用粉末剤(dusting powder)、インプラントまたはステントが適する。
経口または非経腸投与、特に経口投与が好ましい。
【0028】
本発明による化合物は、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤と混合することにより、それ自体既知の方法で行うことができる。これらの補助剤には、とりわけ、媒体(例えば微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定化剤(例えば抗酸化剤、例えばアスコルビン酸など)、着色料(例えば無機色素、例えば酸化鉄など)および香味および/または臭気の矯正剤が含まれる。
【0029】
一般に、非経腸投与の場合で約0.001ないし1mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし0.5mg/体重kgの量を投与するのが、有効な結果を達成するために有利であると明らかになった。経口投与の場合、投与量は、約0.01ないし100mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし20mg/体重kg、ことさら特に好ましくは約0.1ないし10mg/体重kgである。
【0030】
それにも拘わらず、場合により、体重、投与経路、医薬に対する個体の挙動、製剤のタイプおよび投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが必要であり得る。従って、上述の最小量より少なくしても十分な場合があり、一方上述の上限を超えなければならない場合もある。比較的大量に投与する場合、これらを1日に亘る数回の個別投与に分割するのが望ましいことがある。
【0031】
本発明は、さらに、変態Iの式(I)の化合物を不活性溶媒に溶解し、0℃ないし80℃、好ましくは20ないし25℃の温度での沈殿剤の添加によって活性物質を沈殿させることによる、変態IIの式(I)の化合物の製造方法に関する。沈殿を単離し、乾燥させる。かくして、式(I)の化合物は、変態IIで得られる。
【0032】
同様に、本発明は、変態Iの式(I)の化合物を不活性溶媒に溶解し、それを、好ましくは高温、特に30℃から溶媒の還流温度までの温度で、溶媒の蒸発および活性物質の結晶化が完了するまで保存することによる、変態IIの式(I)の化合物の製造方法に関する。かくして、式(I)の化合物は、変態IIで得られる。
【0033】
同様に、本発明は、無定形の式(I)の化合物を、無水不活性溶媒に懸濁し、それを変態IIへの所望の転換度が達成されるまで、特に、定量的転換まで、撹拌または振盪することによる、変態IIの式(I)の化合物の製造方法に関する。得られた晶出物を単離し、乾燥させる。かくして、式(I)の化合物は、変態IIで得られる。
【0034】
適する不活性溶媒は、低級アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、または、ケトン類、例えば、アセトン、または、アルカン類、例えば、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、または、テトラヒドロフラン、または、アセトニトリル、または、トルエン、または、酢酸エチル、または、1,4−ジオキサン、または、上述の溶媒の混合物、または、上述の溶媒の水との混合物である。アセトン、テトラヒドロフラン、1−ペンタノールまたは上述の溶媒の混合物が好ましい。適する沈殿剤は、その中で活性物質が不十分に可溶である不活性無水溶媒、例えば、n−へプタン、シクロヘキサンまたはトルエンである。n−へプタンが好ましい。
【0035】
好ましくは、変態Iの式(I)の化合物をアセトンまたはテトラヒドロフランに溶解し、0ないし80℃の温度、好ましくは20ないし25℃の温度でのn−へプタンの添加によって活性物質を沈殿させることにより、式(I)の化合物を変態IIで製造する。沈殿を単離し、乾燥させる。かくして、式(I)の化合物は、変態IIで得られる。
【0036】
同様に、好ましくは、変態Iの式(I)の化合物を1,4−ジオキサンに溶解し、高温、特に30℃から溶媒の還流温度まで、例えば50℃の温度で、溶媒の蒸発および活性物質の結晶化が完了するまで保存することにより、式(I)の化合物を変態IIで製造する。かくして、式(I)の化合物は、変態IIで得られる。
【0037】
同様に、好ましくは、無定形の式(I)の化合物を、不活性無水溶媒に懸濁し、温度20ないし25℃の温度で、変態IIへの所望の転換度が達成されるまで撹拌または振盪することにより、式(I)の化合物を変態IIで製造する。得られた晶出物を単離し、乾燥させる。かくして、式(I)の化合物は、変態IIで得られる。
【0038】
本発明は、さらに、無定形の式(I)の化合物の製造方法に関し、その方法では、結晶形の式(I)の化合物を溶融し、続いて急速に冷却する。かくして、式(I)の化合物は、無定形で得られる。
【0039】
好ましくは、結晶形の式(I)の化合物を少なくとも230℃の温度、特に240ないし250℃の温度で溶融し、続いてそれを急速に冷却することにより、式(I)の化合物を無定形で製造する。かくして、式(I)の化合物は、無定形で得られる。
【0040】
結晶形の変態I、IIおよびIIIの中で、好ましくは変態IまたはII、特に変態Iをここで用いる。
【0041】
急速な冷却により、化合物(I)の温度は、好ましくは、室温またはその前後に、例えば約15ないし30℃、特に約20ないし25℃の温度にする。急速な冷却は、好ましくは、数秒の間に、例えば約5秒の間に実施する。急速冷却には、好ましくは衝撃冷却(shock cooling)を用いる。
【0042】
変態IIIの式(I)の化合物は、変態Iの式(I)の化合物を、不活性溶媒、例えばアセトンに溶解することにより製造できる。溶液を水で処理し、溶媒が完全に蒸発するまで室温で静置する。かくして、式(I)の化合物は、変態IIIで得られる。
【0043】
式(I)の化合物の水和物は、変態Iの式(I)の化合物をエタノール:水(1:1)に溶解することにより製造できる。約−20℃の温度で、溶媒が蒸発するまで、溶液を保存する。かくして、式(I)の化合物の水和物が得られる。
【0044】
式(I)の化合物のNMP溶媒和物は、変態Iの式(I)の化合物を1−メチル−2−ピロリドンに懸濁し、室温で撹拌することにより製造できる。2日後、懸濁液を濾過し、生成物を乾燥させる。かくして、NMP含量18.5重量パーセントの式(I)の化合物のNMP溶媒和物が得られる。
【0045】
式(I)の化合物のTHFとの包接化合物は、変態Iの式(I)の化合物をテトラヒドロフランに溶解することにより製造できる。溶媒が蒸発するまで、室温で溶液を保存する。かくして、式(I)の化合物のTHFとの包接化合物が得られる。
【0046】
以下の試験および実施例における百分率は、断りの無い限り、重量パーセントである;部は、重量部である。液体/液体溶液の溶媒比、希釈比および濃度のデータは、各場合で体積に関する。
【実施例】
【0047】
実施例
Perkin-Elmer の DSC 7 または Pyris-1 示差走査熱量計および TGA 7 熱重量分析計を使用して、サーモグラムを得た。Stoe 透過型回折装置でX線回折図を記録した。Bruker の IFS 66v Fourier IR(IR、FIR)、IFS 28/N(NIR)および RFS 100 (ラマン) 分光計を使用して、IR、FIR、NIRおよびラマンスペクトルを記録した。
【0048】
実施例1:変態Iの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミド
表題化合物の変態Iの製造は、WO01/47949およびWO2004/060887に記載されている。
【0049】
実施例2:変態IIの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミドの製造
実施例2.1
クロロチオフェンカルボン酸208gを、トルエン1100mlに懸濁し、75ないし80℃に加熱した。塩化チオニル112mlを、この温度で2時間かけて滴下して添加した。得られた反応溶液をさらに2時間、ガスの発生が終了するまで撹拌した。この間に、内部温度を5°ずつ100−110℃まで上昇させた。混合物を冷却し、酸塩化物の溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した。
【0050】
オキサミン塩酸塩350gをNMP2450mlに懸濁し、トリエチルアミン385mlで処理し、15分間撹拌した。混合物を10℃に冷却し、酸塩化物の溶液およびトルエン70mlで処理し、撹拌した。水道水350mlを懸濁液に添加し、それを82℃に加熱した。濾過後、水3.5lを使用して活性物質を沈殿させ、続いて混合物を2時間撹拌した。70℃、真空で乾燥させた。
【0051】
実施例2.2
変態Iの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミド約200mgを、高温でテトラヒドロフラン約80mlに溶解した。溶液を濾過し、半分に分けた。2分の1を、室温で、n−へプタンにより、活性物質が沈殿するまで処理した。残渣を濾過し、室温で乾燥させた。それをX線回折法により調べた。それは、変態IIの表題化合物に相当した。
【0052】
実施例2.3
変態Iの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミド約200mgを、高温で1−ペンタノール約40mlに溶解した。溶液を濾過し、半分に分けた。2分の1をn−へプタンで活性物質が沈殿するまで処理した。残渣を濾過し、室温で乾燥させた。それをX線回折法により調べた。それは、変態IIの表題化合物に相当した。
【0053】
実施例2.4
変態Iの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミド約200mgを、高温で1,4−ジオキサン約40mlに溶解した。溶液を濾過し、半分に分けた。2分の1を、50℃で、乾燥オーブン中、溶媒が蒸発するまで保存した。残渣をX線回折法により調べた。それは、変態IIの表題化合物に相当した。
【0054】
実施例2.5
Kofler 加熱ベンチ上、約240℃で溶融し、続いて室温に衝撃冷却することにより製造した無定形の5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミド約50mgを、エタノール約2mlに懸濁し、25℃で0.5時間撹拌した。晶出物を単離し、乾燥した。残渣をX線回折法により調べた。それは、変態IIの表題化合物に相当した。
【0055】
実施例2.6
変態Iの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミド約100mgを、高温でアセトン約50mlに溶解した。溶液を濾過し、n−へプタンで、氷浴中、活性物質が沈殿するまで処理した。残渣を濾過し、室温で乾燥させた。それをX線回折法により調べた。それは、変態IIの表題化合物に相当した。
【0056】
実施例3:変態IIIの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミドの製造
変態Iの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミド約120mgを、高温でアセトン約50mlに溶解した。溶液を濾過し、水約50mlで処理し、溶媒が蒸発するまで室温で静置した。残渣を熱分析的に調べた。それは、変態IIIの表題化合物に相当した。
【0057】
実施例4:5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミドの水和物の製造
変態Iの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミド約400mgを、高温でエタノール:水(1:1)約60mlに溶解し、濾過した。溶液の一部を、冷凍庫中、約−20℃の温度で、溶媒が蒸発するまで保存した。残渣は表題化合物の水和物に相当した。
【0058】
実施例5:5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミドのNMP溶媒和物の製造
変態Iの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミド約3.5gを、1−メチル−2−ピロリドン10mlに懸濁し、室温で撹拌した。数時間後、NMP約20mlをさらに添加した。2日後、懸濁液を吸引濾過し、残渣を室温で乾燥させた。残渣を熱分析的に調べた。それは、NMP含量18.5重量パーセントを有する表題化合物のNMP溶媒和物に相当した。
【0059】
実施例6:5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミドのTHFとの包接化合物の製造
変態Iの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミド約400mgを、高温でテトラヒドロフラン約50mlに溶解し、濾過した。溶液の一部を室温で溶媒が蒸発するまで保存した。残渣を熱分析的に調べた。それは、表題化合物のTHFとの包接化合物に相当した。
【0060】
表1:示差走査熱量測定および熱重量分析
【表1】

【0061】
表2:X線回折法
【表2】

【0062】
表3:IR分光法
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
表4:ラマン分光法
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
表5:FIR分光法
【表7】

【0067】
表6:NIR分光法
【表8】

【0068】
実施例7:無定形の5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミドの製造
実施例7.1
変態Iの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミド約50mgを、Kofler 加熱ベンチ上、約240℃で溶融し、続いて衝撃冷却により室温にした。活性物質をX線回折法により調べた。それは、無定形で存在した。
【0069】
実施例7.2
変態Iの5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)−フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}−メチル)−2−チオフェンカルボキサミド約3gを、乾燥オーブン中、約250℃で溶融し、続いて衝撃冷却により室温にした。活性化合物をX線回折により調べた。それは、無定形で存在した。
【0070】
表7:示差走査熱量測定および熱重量分析(無定形)
ガラス転移温度:約83℃
【0071】
表8:分光法(無定形)
【表9】

【0072】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0073】
該当する記載なし。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
変態IIまたは無定形の式(I)
【化1】

の化合物。
【請求項2】
変態Iの式(I)の化合物を不活性溶媒に溶解し、沈殿剤の添加により化合物を沈殿させることを特徴とする、変態IIの式(I)の化合物の製造方法。
【請求項3】
変態Iの式(I)の化合物を不活性溶媒に溶解し、溶媒の蒸発が完了するまで溶液を高温で保存することを特徴とする、変態IIの式(I)の化合物の製造方法。
【請求項4】
無定形の式(I)の化合物を無水不活性溶媒に懸濁し、変態IIへの定量的転換まで懸濁液を撹拌または振盪することを特徴とする、変態IIの式(I)の化合物の製造方法。
【請求項5】
結晶形の式(I)の化合物を完全に溶融し、続いて急速に冷却することを特徴とする、無定形の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項6】
結晶形の式(I)の化合物を完全に溶融し、それを急速に冷却することにより、無定形で入手できる式(I)の化合物。
【請求項7】
疾患の処置および/または予防のための、変態IIまたは無定形の式(I)の化合物。
【請求項8】
血栓塞栓性疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するための、変態IIまたは無定形の式(I)の化合物の使用。
【請求項9】
インビトロで血液凝固を防止するための、変態IIまたは無定形の式(I)の化合物の使用。
【請求項10】
変態IIまたは無定形の式(I)の化合物を、不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と組み合わせて含む医薬。
【請求項11】
変態IIまたは無定形の式(I)の化合物を、さらなる活性物質と組み合わせて含む医薬。
【請求項12】
血栓塞栓性疾患の処置および/または予防のための、請求項10または請求項11に記載の医薬。
【請求項13】
抗凝血活性を有する量の変態IIまたは無定形の式(I)の化合物または請求項10ないし請求項12のいずれかに記載の医薬を使用する、ヒトおよび動物における血栓塞栓性疾患の処置および/または予防方法。
【請求項14】
抗凝血活性を有する量の変態IIまたは無定形の式(I)の化合物を添加することを特徴とする、インビトロで血液凝固を防止する方法。

【公表番号】特表2009−510140(P2009−510140A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533895(P2008−533895)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009202
【国際公開番号】WO2007/039132
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】