説明

5−HT2A拮抗剤としてのオキサゾリジン類

【課題】5−HT2A拮抗剤として働き、卒中及び脳虚血の後遺症をコントロールしたり、強迫性障害(OCD)、不安状態、パニック発作、うつ病、精神病、精神分裂病及びパーキンソン氏病の治療に対して有効な化合物を提供する。
【解決手段】式(I)


[式中、Rは、H、CN、Hal又はOAであり、R及びRは、それぞれ互いに独立してH、CN、Hal又はOAであり、一緒になってメチレンジオキシであってもよく、Aは、H、CF3、又は1個から6個のC原子をもつアルキル、そしてHalは、F、Cl、Br、Iである]の新規なオキサゾリジン誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は式I
【化1】

[式中、Rは、H、CN、Hal又はOAであり、
、Rは、それぞれ互いに独立してH、CN、Hal又はOAであり、
及びRは、一緒になってメチレンジオキシであってもよく、
Aは、 H、 CF 、又は1個から6個のC原子をもつアルキル、そして
Halは、F、Cl、Br、Iである]の化合物及びそれらの塩に関する。
【0002】
中枢神経系に作用のある5−[(2−オキソベンズイミダゾリン−1−イル)ピペリジノメチル]オキサゾリジン−2−オン類が、例えばEP 0 443 197に開示されている。インドールアルキル基によってNアルキル化されたインドールピペリジンが、 例えばEP 0 683 16に記載されている。3−フェニル−5−[(4−R−X−ピペリジノ)アルキル]オキサゾリジン−2−オン誘導体であって、Rはフェニルであり、Xは−O−、−S−、−SO−または−SO−であり、そして中枢神経系に作用のあるものが、例えばEP 0 635 505に開示されている。三環性基と中枢神経系への作用をもつインドールピペリジン誘導体が、例えばEP 0 722 942に記載されている。セロトニン伝達およびドパミン伝達への作用そして5−HT再取り込みへの阻害作用をもつ4−アリール−1−(インダン−,ジヒドロベンゾフラン−またはジヒドロベンゾチオフェンメチル)ピペリジン誘導体が、例えばWO 95/33721に記載されている。
【0003】
本発明は、価値ある性質、特に医薬品を生産するために使用できる性質をもつ新規化合物を発見するという目的に基ずくものであった。
式Iの化合物およびそれらの塩は、十分許容性がありながら、セロトニン伝達およびドパミン伝達の両方に影響することにより、中枢神経系への作用、特にドパミン拮抗作用および5−HT再取り込み阻害作用を示すので、特に価値ある薬理学的性質を有することが見い出された。特に、それらは5−HT1Aおよび/または5−HT2Aへの親和性を有する。
【0004】
式Iの化合物は、海馬受容体へのトリチウム化セロトニン受容体リガンドの結合を阻害し(Cossery et al.,European J.Pharmacol.140(1987),143−155)、およびシナプトソームのセロトニン再取り込みを阻害する(Sherman et al.,Life Sci.23(1978),1863−1870)。特に、それらは5−HT2AおよびD受容体に結合する。さらに、線条体におけるDOPA蓄積の変化および縫線核における5−HPT蓄積の変化が起る(Seyfried et al.,European J.Pharmacol.160,(1989)31−41)。5−HT1A拮抗作用が、例えば、モルモット回腸の電気的に誘発された収縮における8−OH−DPATによって起される廃止の阻害によってインヴィトロで見つけられている(Fozard and Kilbinger,Br.J.Pharmacol.86(1985)601P)。5−HT1A拮抗作用が、8−OH−DPATによって減少させられる5−HPT蓄積の阻害によってエクスヴィボ(ex vivo)で見つけられている( Seyfried et al.,European J.Pharmacol.160,(1989)31−41)。
【0005】
セロトニン再取り込みのエクスヴィボ阻害が、シナプトソームの取り込み阻害(Wong et al.,Neuropsychopharmacol.8,(1993),23−33)およびp−クロロアンフェタミン拮抗(Fuller et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.212(1980),115−119)によって見つけられている。薬理試験を、 さらにWO 95/33721に記載されている方法に類似して行うことができる。
【0006】
式Iの化合物は、従って中枢神経系機能障害を治療するための獣医薬およびヒト医薬共に適している。それらは、卒中および脳虚血等の脳梗塞(apoplexia cerebri)の後遺症の予防および抑制、神経遮断薬の錐体外路系運動障害およびパーキンソン氏病の治療のために使用できる。しかし、それらは、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神薬に対し、および/または強迫性障害(OCD)、不安状態、パニック発作、うつ病、精神病、精神分裂病、妄想性強迫観念症、アルツハイマー病、片頭痛、食欲不振症、睡眠障害、遅発性ジスキネジア、学習障害、年齢に関連した記憶障害、大食病のような摂食障害、精神活性物質の乱用および/または性機能障害の治療のための医薬的に活性な物質として、特に適する。
【0007】
式Iの化合物およびそれらの生理学的に許容される酸付加塩は、従って抗不安薬、抗うつ薬、抗精神薬、神経遮断薬および/または抗高血圧薬、そして強迫性障害、大食病のような摂食障害、遅発性ジスキネジア、学習障害および年齢に関連した記憶障害に有利にはたらくための医薬活性物質として使用できる。それらは、さらに他の医薬活性物質を製造するための中間体として用いることができる。
【0008】
本発明は従って、式Iの化合物およびそれらの生理学的に許容できる酸付加塩に関する。
【0009】
本発明は、従って式Iの化合物及び式Iの化合物の製造方法、即ち、
a) 式II
【化2】

[式中、 Rは、請求項1において述べられる意味を有し、LはCl、Br、I又は遊離のOH基又は反応機能的に修飾されたOH基である]の化合物を、式III
【化3】

[式中、 R及び Rは、請求項1に与えられる意味を有する]の化合物と反応させるか、又は
【0010】
b) 式IV
【化4】

[式中、 R 、R及び Rは、請求項1に与えられる意味を有する]の化合物を、式V
【化5】

[式中、 L及びL′は、それぞれ互いに独立してCl、Br、I又は遊離のOH基又は反応機能的に修飾されたOH基である]の化合物と反応させるか、又は
【0011】
c) 式VI
【化6】

[式中、 R 、R及び Rは、請求項1に述べられた意味を有する]の化合物を水素添加する、
及び/又は式Iの塩基性化合物を酸と処理してその塩に変換することを特徴とする、式Iの化合物の製造方法に関する。
【0012】
前記及び後記において、基R 、R 、R及びLは、特段断りがなければ、式I、II、III、IVおよびVに述べられた意味を有する。
本発明は、同様に、5−HT1A−および5−HT2A−拮抗作用および5−HT再取り込み阻害作用をもつ式Iの医薬品およびそれらの生理学的に許容できる塩に関する。
【0013】
本発明は、請求項1に記載の式Iの化合物およびそれらのエナンチオマーおよびそれらの塩に関する。
【0014】
例えば、Aのように1度以上おきる全ての基について、それらの意味は互いに独立していることになる。
【0015】
アルキルは、1個から10個のC原子、好ましくは1、2、3、4、5または6個のC原子を有する。アルキルは、従って、特に例えば、メチル、さらにエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、またペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチルまたは3−メチルブチル,1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピルまたは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチルまたは4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチルまたは3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチルまたは2−エチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−トリメチルプロピルまたは1,2,2−トリメチルプロピル、またフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1,1,1−トリクロロエチルまたはペンタフルオロエチルである。
【0016】
A−Oは、ヒドロキシルまたはアルコキシ、特に例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブチルオキシである。
【0017】
式Iの化合物およびそれらを製造するための原料はさらに、文献[例えばHouben−Weyl,Methoden der Organischen Chemie(Methods in Organic chemistry)Georg−Thieme−Verlag, Stuttgart]のような標準的な出版物]に記載されているそれ自体公知の方法により、具体的には、公知で上記反応に対して適当な反応条件下に製造される。さらに、それ自体公知でここでは詳しく述べられていない変法を利用することもできる。
【0018】
式IIの化合物のL、そして式Vの化合物のLおよびL′は、各々の場合互いに独立して、 Cl、Br、I又は遊離のOH基又は反応性エステル化OH基である。
もし、Lが反応性エステル化OH基であるならば、これは好ましくは、トリクロロメトキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシ等のアルコキシ、さらにフェノキシ、1個から6個のC原子をもつアルキルスルホニルオキシ(好ましくはメチルスルホニルオキシ)または6個から10個のC原子をもつアリールスルホニルオキシ(好ましくはフェニルスルホニルオキシまたはp−トリルスルホニルオキシ、また2−ナフタレンスルホニルオキシ)である。特に式Vの化合物のLは、Cl、1−イミダゾリル、エトキシ、トリクロロメトキシ、フェノキシまたはニトロフェノキシである。
【0019】
原料は、必要により、それらを反応混合物から単離しないが、直ちにさらに反応させて式Iの化合物を与えるように、インシチィウ(in situ)で生成することもできる。他方、反応を段階的に行うことは可能である。
【0020】
式Iの化合物は、好ましくは式IIの化合物を式IIIの化合物と反応することにより得ることができる。
式IIおよびIIIの原料のいくつかは公知である。それらが知られていない場合は、それらをそれ自体公知の方法で製造できる。
式IIの1級アルコールは、例えば対応するカルボン酸またはそれらのエステルを還元することにより得ることができる。塩化チオニル、臭化水素、三臭化リンまたは類似ハロゲン化化合物での処理が、式IIの対応するハロゲン化物を与える。
式IIIの3−(4−ピペリジル)インドールは、例えば、4−ピペリドンをインドールまたは対応するR−および/またはR−置換誘導体と反応させ、次いで酸処理および水素化によって製造できる。
【0021】
式IIの化合物と式IIIの化合物との反応は、通常不活性溶媒中、酸結合剤、好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩、またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属、好ましくはカリウム、ナトリウム、カルシウムまたはセシウムの別の弱酸塩の存在下に行われる。トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、またはキノリン等の有機塩基の添加も有用であろう。反応時間は、用いられる条件により、数分から14日の間であり、反応温度は、約0°と150°の間であり、通常20°と130°の間である。
【0022】
適当な不活性溶媒の例は、ヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンまたはキシレン等の炭化水素、トリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロメタン、クロロホルムまたはジクロロメタン等の塩素化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、 n−ブタノールまたはtert−ブタノール等のアルコール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサン等のエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルまたはエチレングリコールモノエチルエーテル(メチルグリコールまたはエチルグリコール)等のグリコールエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグリーム)、アセトンまたはブタノン等のケトン、アセトアミド、ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド、アセトニトリル等のニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド、二硫化炭素、ギ酸または酢酸等のカルボン酸、ニトロメタンまたはニトロベンゼン等のニトロ化合物、酢酸エチル等のエステル、または述べられた溶媒の混合物である。
【0023】
式Iの化合物はさらに、式IVの化合物を式Vの化合物と反応することにより好ましく得ることができる。式Vの適当且つ好ましい化合物は、炭酸ジメチル、炭酸ジトリクロロメチルまたは炭酸ジエチル等の炭酸ジアルキル、またはクロロギ酸メチルまたはクロロギ酸エチル等のクロロギ酸エステル、N,N′−カルボニルイミダゾールまたはホスゲンである。
【0024】
式IVおよびのVのいくつかの原料は知られている。それらが知られていないならば、それらはそれ自体公知の方法で製造できる。反応は溶媒中、上記の温度で起る。
式VIの化合物を、さらに還元によって式Iの化合物へ変換できる。これは好ましくは、例えば、活性炭上のパラジウムと水素の触媒水素化によって行われる。
式VIのいくつかの原料は知られている。それらが知られていないならば、それらはそれ自体公知の方法で製造できる。還元は溶媒中、上記の温度で起る。
【0025】
さらに、RがOHである式Iの化合物を、アルキル化によってRがアルコキシである式Iのエーテル化合物へ変換することができる。
【0026】
式Iの塩基は、酸と、例えばエタノール等の不活性溶媒中酸および塩基の等量を反応させ、次いで蒸発させることによって、その酸付加塩へ変換できる。この反応に特に適当な酸は、生理学的に許容できる塩を与えるものである。従って、無機酸、例えば、硫酸、硝酸、塩酸または臭化水素酸のようなハロゲン化水素酸、オルトリン酸等のリン酸、スルファミン酸、また有機酸、特に、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマール酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタンスルホン酸またはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、P−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノスルホン酸およびナフタレンジスルホン酸、およびラウリルスルホン酸等の脂肪族、脂環式、芳香族脂式、芳香族または複素環式モノ塩基性カルボン酸または多塩基性カルボン酸、スルホン酸またはスルフリル酸を用いることができる。
【0027】
本発明による式Iの化合物は、それらの分子構造のために、キラルであることができ、2つの鏡像異性型で存在してもよい。それらは、従ってラセミ型または光学活性型で存在してもよい。
【0028】
本発明による化合物のラセミ体および立体異性体は、医薬活性が異なるから、鏡像異性体を使用することが望ましいであろう。これらの場合、最終製造物または他に中間体を、当業者に知られている化学的または物理的操作により鏡像異性化合物へ分画するか、またはそれとして合成に用いることが可能である。
【0029】
ラセミのアミンの場合、ジアステレオマーを、光学活性分離剤との反応の混合物から生成する。適当な分離剤の例は、RまたはS型の酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸、適当なN−保護アミノ酸(例えばN−ベンゾイルプロリンまたはN−ベンゼンスルホニルプロリン)または種々の光学活性カンファースルホン酸のRまたはS型等の光学活性酸である。光学活性分離剤(例えば、シリカゲルに固定化されたジニトロベンゾイルフェニルグリシン、セルローストリアセテートまたは炭水化物の他の誘導体、またはキラルに誘導されたメタクリレートポリマー)用いるクロマトグラフィーによって鏡像異性体を分離することも有利である。この目的のための適当な移動相は、例えば82:15:3の比のヘキサン/イソプロパノール/アセトニトリル等の水性またはアルコール性溶媒混合物である。
【0030】
生理学的に許容できない酸、例えばピクリン酸との塩は、式Iの化合物を単離したり、および/または精製するために使用できる。
本発明は、さらに式Iの化合物および/またはそれらの生理学的に許容される塩の、特に非化学方法による医薬組成物の製造ための使用に関する。この目的のため、それらは、少なくとも1つの固体または液体および/または半固体の賦形剤または補助剤と一緒に、そして適宜1つまたは2つ以上の活性成分と組み合わせて、適当な投薬剤形に変換することができる。
【0031】
本発明はさらに、少なくとも1つの式Iの化合物および/またはその生理学的に許容される塩の1つを含む医薬組成物に関する。
【0032】
組成物は、ヒトまたは動物の臨床における医薬品として使用することができる。適当な賦形剤は、経腸(例えば経口)、非経腸または局所投与に適し、この新規化合物と反応しない有機物質または無機物質であり、例えば水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、ゼラチン、乳糖またはデンプンのような炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはペトロラタムである。経口投与には、特に、錠剤、ピル剤、被覆錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、シロップ剤またはドロップ剤、直腸投与には座剤、非経腸投与には溶液剤、好ましくは油性または水性溶液剤であり、また懸濁剤、乳剤または埋め込み剤、局所投与には軟膏剤、クリーム剤または振りかける粉剤が使用される。本新規化合物はまた、凍結乾燥され、得られた該凍結乾燥体は、例えば注射剤の製造に使用できる。上述の組成物はまた、滅菌することができ、および/または滑沢剤、保存料、安定剤および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、緩衝剤、着色料、矯味剤および/またはいくつかの他の活性成分、例えば1または2以上のビタミンを含んでいてもよい。
【0033】
本発明に記載の式Iの化合物は通常、述べらている適応症の他の市販製品(例えば、イミプラミン、フルオキセチン、クロミプラミン)と同様にして、好ましくは、用量単位当たり0.1−500mg、特に5−300mgの用量で投与される。1日用量は、好ましくは約0.01−250mg/kg体重、特に0.02−100mg/kg体重である。
【0034】
しかし、個々の患者に対する具体的な用量は、様々の因子、例えば用いられる具体的化合物の活性、年齢、体重、一般健康状態、性、食事、投与の時間および経路、排泄速度、医薬活性成分の組み合わせ、そして治療の対象である問題の疾患の重症度による。経口投与が好ましい。
【0035】
全ての温度は、前記および後記において、℃を意味する。以下の実施例で、“通常の処理”とは、必要であれば水を加え、最終製造物の構成によって、必要であれば2〜10の値にpHを調節し、抽出を酢酸エチルまたはジクロロメタンで行い、そして有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、留去してシリカゲルクロマトにより精製し、また下記の異性体の分離、および/または結晶化することを意味する。シリカゲル上のRf値;移動相:酢酸エチル:メタノール 9:1。
質量分析: EI(電子衝撃イオン化):M
FAB(高速原子衝撃):(M+H)
【実施例】
【0036】
実施例1
アセトニトリル中の5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−メトキシフェニルオキサゾリジン−2−オン[2,3−エポキシプロパノールをN−ベンジル−p−メトキシアニリンと反応し、1−(N−ベンジル−p−メトキシアニリノ)プロパン−2,3−ジオールを与え、水素化で1−p−メトキシアニリノプロパン−2,3−ジオールを与え、炭酸ジエチルと反応して、5−ヒドロキシメチル−3−p−メトキシフェニルオキサゾリジン−2−オンを与え、そしてCHSOClと反応して得られる]の溶液を、当モル量の4−(3−インドリル)ピペリジン(“A”)、ヨウ化カリウムおよび炭酸カリウムと混合し、16時間加熱環流し、次いで通常の処理に付す。これにより、
【0037】
3−(4−メトキシフェニル)−5−[4−(3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、 m.p.151−153°を生じる。
“A”の同様の反応は、
(5S)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−メトキシフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5S)−(−)3−(4−メトキシフェニル)−5−[4−(3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.234−236°、α20−56°(c=1、メタノール)を生じ;
(5S)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−クロロフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5S)−(−)3−(4−クロロフェニル)−5−[4−(3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、 m.p.188−189°、α20−28°(c=1、DMSO);塩酸塩、m.p.260−263°を生じ;
5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−シアノフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オンを生じ;
5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−フェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
3−フェニル−5−[4−(3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オンを生じ;
5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−フルオロフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
3−(4−フルオロフェニル)−5−[4−(3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オンを生じる。
【0038】
4−(5H−1,3−ジオキソロ[4,5−f]インドール−7−イル)ピペリジン(“B”)の同様の反応は、
(5S)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−メトキシフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5S)−(−)3−(4−メトキシフェニル)−5−[4−(5H−1,3−ジオキソロ[4,5−f]インドール−7−イル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.232−234°、α20−50.5°(c=1、メタノール)を生じ;
(5S)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−クロロフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5S)−(−)3−(4−クロロフェニル)−5−[4−(5H−1,3−ジオキソロ[4,5−f]インドール−7−イル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オンを生じる。
【0039】
4−(5−フルオロ−3−インドリル)ピペリジン(“C”)の同様の反応は、
(5S)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−メトキシフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5S)−(−)3−(4−メトキシフェニル)−5−[4−(5−フルオロ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.233−234°、α20−58.5°(c=1、DMSO)を生じ;
5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−シアノフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(5−フルオロ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.290−292°を生じ;
(5S)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−シアノフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5S)−(−)3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(5−フルオロ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.203−204°、α20−36.5°(c=1、DMSO)を生じ;
(5R)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−シアノフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5R)−(+)3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(5−フルオロ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.286−287°、α20+41.5°(c=1、DMSO)を生じる。
【0040】
4−(5−シアノ−3−インドリル)ピペリジン(“D”)の同様の反応は、
5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−シアノフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(5−シアノ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.290°を生じ;
(5S)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−フルオロフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5S)−(−)−3−(4−フルオロフェニル)−5−[4−(5−シアノ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.252−253°を生じ;
(5S)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−シアノフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5S)−(−)−3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(5−シアノ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.270−271°、α20−38.7°(c=1、DMSO)を生じ;
(5R)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−シアノフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5R)−(+)−3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(5−シアノ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.270−272°、α20+37.7°(c=1、DMSO)を生じ;
5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−フルオロフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
3−(4−フルオロフェニル)−5−[4−(5−シアノ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.264−268°を生じ;
5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−フェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
3−フェニル−5−[4−(5−シアノ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩水和物、m.p.183−185°を生じ;
(5R)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−フルオロフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5R)−(+)−3−(4−フルオロフェニル)−5−[4−(5−シアノ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.184−188°、α20+27.2°(c=1、DMSO)を生じる。
【0041】
4−(6−フルオロ−3−インドリル)ピペリジン(“E”)の同様の反応は、
(5S)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−シアノフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5S)−(−)−3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(6−フルオロ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、 m.p.287−288°、α20−38.4°(c=1、DMSO)を生じ;
5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−フルオロフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
3−(4−フルオロフェニル)−5−[4−(6−フルオロ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、 m.p.257−259°を生じ;
(5R)−5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−p−シアノフェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
(5R)−(+)−3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(6−フルオロ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、m.p.288−290°、α20+38.8°(c=1、DMSO)を生じ;
5−(メタンスルホニルオキシメチル)−3−フェニルオキサゾリジン−2−オンを用いて、
3−フェニル−5−[4−(6−フルオロ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、塩酸塩、 m.p.234−236°を生じる。
【0042】
実施例2
ジクロロメタン中の1−[4−(3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]−3−(4−メトキシアニリノ)−2−プロパノールの溶液を、炭酸ジトリクロロメチルの当モル量と混合し、5時間撹拌する。通常の処理が、3−(4−メトキシフェニル)−5−[4−(3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、 m.p.151−153°を生じる。
【0043】
実施例3
パラジウム(活性炭上10%)の存在下、メタノールの5−[4−(3−インドリル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−3−(4−メトキシフェニル)オキサゾリジン−2−オン[3−(4−メトキシフェニル)−5−[4−オキソ−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オンをインドールと反応して製造される3−(4−メトキシフェニル)−5−[4−(3−インドリル)−4−ヒドロキシ−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オンの脱水によって得られる]溶液に水素を1時間通じる。触媒を除き、通常の処理が、3−(4−メトキシフェニル)−5−[4−(3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン、 m.p.151−153°を生じる。
次の実施例は医薬組成物に関するものである。
【0044】
実施例A: バイアル剤
2回蒸留水3リットル中の式Iの活性物質100gおよび重リン酸ソーダ5gの溶液を2N塩酸によりpH6.5に調節し、濾過により滅菌し、バイアルに充填し、無菌条件下に凍結乾燥し、無菌的に封をする。各バイアルは5mgの活性物質を含有する。
【0045】
実施例B: 座剤
式Iの活性物質20g、大豆レシチン100gおよびココアバター1400gを混合したものを溶かし、型にながし、そして冷やす。各座剤は20mgの活性物質を含有する。
【0046】
実施例C: 溶液剤
式Iの活性物質1g、NaHPO2HO 9.38g、 NaHPO12HO 28.48gおよび塩化ベンザルコニウム0.1gを2回蒸留水940mlに溶かす。pHを6.8に調節し、溶液を1リットルとし、照射によって滅菌する。
【0047】
実施例D: 軟膏剤
式Iの活性物質500mgを無菌条件下にペトロラタム99.5gと混合する。
【0048】
実施例E: 錠剤
式Iの活性物質1kg、ラクトース4kg、ポテト澱粉1.2kg、タルク0.2kgおよびステアリン酸マグネシウム0.1kgの混合物を、各錠剤が10mgの活性物質を含有するような通常の方法で錠剤に圧縮する。
【0049】
実施例F: 被覆錠剤
錠剤を、実施例Eのようにして作り、次いで、ショ糖、トウモロコシ澱粉、タルク、トラガントおよび着色料の被覆を用いて通常の方法で与える。
【0050】
実施例G: カプセル剤
式Iの活性物質2kgを、各カプセルが活性物質20mgを含有するように、通常の方法で硬質ゼラチンカプセルに充填する。
【0051】
実施例H: アンプル剤
2回蒸留水60リットル中の式Iの活性物質1kgの溶液を、濾過により滅菌し、アンプルに充填し、無菌条件下に凍結乾燥し、滅菌的に封をする。各アンプルは10mgの活性物質を含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】


[式中、Rは、H、CN、Hal又はOAであり、
、Rは、それぞれ互いに独立してH、CN、Hal又はOAであり、
及びRは、一緒になってメチレンジオキシであってもよく、
Aは、 H、 CF 、又は1個から6個のC原子をもつアルキル、そして
Halは、F、Cl、Br、Iである]の化合物、及びそれらの塩。
【請求項2】
請求項1に記載の式Iの化合物のエナンチオマー。
【請求項3】
a)(5S)−(−)3−(4−クロロフェニル)−5−[4−(3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン;
b)3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(5−シアノ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン;
c)(5S)−(−)−3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(6−フルオロ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン;
d)(5R)−(+)−3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(5−フルオロ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン;
e)(5R)−(+)−3−(4−シアノフェニル)−5−[4−(6−フルオロ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン;
f)3−フェニル−5−[4−(5−シアノ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン;
g)3−フェニル−5−[4−(6−フルオロ−3−インドリル)−1−ピペリジニルメチル]オキサゾリジン−2−オン;
である、請求項1又は2に記載の式Iの化合物及びそれらの塩。
【請求項4】
請求項1に記載の式Iの化合物の製造方法であって、
a) 式II
【化2】


[式中、 Rは、請求項1において述べられる意味を有し、LはCl、Br、I又は遊離のOH基又は反応機能的に修飾されたOH基である]の化合物を、式III
【化3】


[式中、 R及び Rは、請求項1に与えられる意味を有する]の化合物と反応させるか、又は
b) 式IV
【化4】


[式中、 R 、R及び Rは、請求項1に与えられる意味を有する]の化合物を、式V
【化5】


[式中、 L及びL′は、それぞれ互いに独立してCl、Br、I又は遊離のOH基又は反応機能的に修飾されたOH基である]の化合物と反応させるか、又は
c) 式VI
【化6】


[式中、 R 、R及び Rは、請求項1に述べられた意味を有する]の化合物を水素添加するか、
及び/又は式Iの塩基性化合物を酸と処理してその塩に変換することを特徴とする、前記方法。
【請求項5】
医薬組成物の製造方法であって、請求項1に記載の式Iの化合物及び/又はその生理学的に許容される塩の1つ又はそのエナンチオマーの1つが、少なくとも1つの固体、液体又は半固体の賦形剤又は補助剤と一緒に、そして適宜1又は2以上の活性成分と組み合わせて、適当な投薬剤形に変換することを特徴とする、前記方法。
【請求項6】
請求項1又は2のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物、及び/又はその生理学的に許容できる塩の1つを含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項7】
卒中及び脳虚血の後遺症をコントロールしたり、強迫性障害(OCD)、不安状態、パニック発作、うつ病、精神病、精神分裂病及びパーキンソン氏病の治療に対する、請求項1に記載の式Iの化合物及びそれらの生理学的に許容できる塩。
【請求項8】
5−HT再取り込み阻害作用をもつ5−HT2A拮抗剤としての、請求項1に記載の式Iの医薬及びその生理学的に許容できる塩。
【請求項9】
請求項1に記載の式Iの化合物及び/又はそれらの生理学的に許容できる塩の、医薬を製造するための使用。
【請求項10】
請求項1に記載の式Iの化合物及び/又はそれらの生理学的に許容できる塩の、卒中及び脳虚血の後遺症をコントロールし、強迫性障害(OCD)、不安状態、パニック発作、うつ病、精神病、精神分裂病及びパーキンソン氏病の治療するための使用。

【公開番号】特開2009−256363(P2009−256363A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149274(P2009−149274)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【分割の表示】特願平10−537223の分割
【原出願日】平成10年2月6日(1998.2.6)
【出願人】(500141995)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1)
【Fターム(参考)】