説明

6,7−ジヒドロ−5H−イミダゾ[1,2−a]イミダゾール−3−スルホン酸

CAMとロイコインテグリンの相互作用に対して良い阻害効果を示すので、炎症性疾患の治療に有用な6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホン酸の誘導体。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この出願は、2005年5月19日提出の米国仮出願第60/682,462号の利益を主張する。
〔発明の背景〕
1.技術分野
本発明は、一般的に、6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホン酸の誘導体類、これら化合物の合成、炎症性疾患の治療におけるその使用、及びこれら化合物を含む医薬組成物に関する。
【0002】
2.背景情報
最近10年にわたる研究は、体内の細胞-細胞相互作用を伴う分子事象、特に免疫系における細胞の移動及び活性化に関与する当該事象の解明に役立っている。一般的にSpringer, T. Nature, 1990, 346, 425-434を参照されたい。それに対応して、細胞表面タンパク質、特に細胞接着分子(Cellular Adhesion Molecules)(“CAM”)及び“ロイコインテグリン(Leukointegrin)”、例えばLFA-1、MAC-1及びp150,95(WHO命名法ではそれぞれCD18/CD11a、CD18/CD11b、及びCD18/CD11cと称する)は、損傷部位への白血球の血管外遊走及び別個の標的への白血球の移動プロセスにおける介在をその目標とする医薬品の研究と開発の主題であった。例えば、現在では、炎症反応の必須構成要素である白血球の血管外遊走前に、白血球上で恒常的に発現されるインテグリンの活性化が起こり、インテグリン(例えば、LFA-1)と1又は数個の別の細胞間接着分子(ICAM)(ICAM-1、ICAM-2、ICAM-3又はICAM-4と呼ばれ、血管の内皮細胞表面上及び他の白血球上で発現される)との間の密接したリガンド/受容体相互作用が続くと考えられている。CAMとロイコインテグリンの相互作用は、免疫系が正常に作用するのにきわめて重要なステップである。抗原提示、T-細胞媒介細胞傷害及び白血球の血管外遊走のような免疫プロセスはすべてロイコインテグリンと相互作用するICAMによって媒介される細胞接着を必要とする。一般的に、Kishimoto, T. K.; Rothlein; R. R. Adv. Pharmacol. 1994, 25, 117-138 及び Diamond, M.; Springer, T. Current Biology, 1994, 4, 506-517を参照されたい。
【0003】
ロイコインテグリンの適切な発現を欠く個体群、すなわち“ロイコインテグリン接着欠陥(Leukocyte Adhesion Deficiency)”と呼ばれる状態が同定された(Anderson, D. C.; et al., Fed. Proc. 1985, 44, 2671-2677 and Anderson, D. C.; et al., J. Infect. Dis. 1985, 152, 668-689)。これらの個体は、その細胞が細胞基質に接着できないため、正常な炎症反応及び/又は免疫反応を開始できない。これらのデータは、CD18ファミリーの機能性接着分子を欠くためリンパ球が正常な様式で接着できないと、免疫反応が緩和されることを示している。CD18を欠くLAD患者が炎症反応を開始できないという事実のため、CD18、CD11/ICAM相互作用の拮抗が炎症反応も阻害するだろうと考えられる。
【0004】
CAMとロイコインテグリンの相互作用の拮抗は、どちらかの成分に向けられた薬剤によって実現化できることが実証されている。詳細には、例えばICAM-1のようなCAM、又は例えばLFA-1のようなロイコインテグリンの、これら分子のどちらか又は両方に向けられた抗体による遮断は炎症反応を効率的に阻害する。CAM又はロイコインテグリンに対する抗体によって阻害される炎症反応と免疫反応のin vitroモデルは、抗原又はマイトジェンに誘発されるリンパ球の増殖、リンパ球のホモタイプな凝集、T-細胞に媒介される細胞溶解及び抗原特異的に誘発される耐性を含む。in vitro研究の妥当性は、ICAM-1又はLFA-1に向けられた抗体によるin vivo研究によって支持される。例えば、LFA-1に向けられた抗体は、マウスで甲状腺移植片拒絶を阻止し、心臓の同種移植片の生存を延長することができる(Gorski, A.; Immunology Today, 1994, 15, 251-255)。さらに重大なことに、ICAM-1に向けられた抗体は、腎臓の同種移植片の拒絶及びリウマチ性関節炎などのヒトの疾患で抗炎症薬としてin vivo効力を示し(Rothlein, R. R.; Scharschmidt, L., in: Adhesion Molecules, Wegner, C. D., Ed., 1994, 1-8; Cosimi, C. B., et al., J. Immunol. 1990, 144, 4604-4612及びKavanaugh, A. et al., Arthritis Rheum. 1994, 37, 992-1004)、LFA-1に向けられた抗体は、骨髄移植及び腎臓の同種移植の早期拒絶の阻止において免疫抑制効果を実証した(Fischer, A.; et al., Lancet, 1989, 2, 1058-1060及びLe Mauff, B.; et al., Transplantation, 1991, 52, 291-295)。
ICAM-1の可溶性組換え型は、ICAM-1のLFA-1との相互作用のインヒビターとして作用しうることも実証された。可溶性ICAM-1は、細胞上のCD18、CD11/ICAM-1相互作用の直接的なアンタゴニストとして作用し、また、膵島細胞に応答して糖尿病患者から生じるヒトの混合型リンパ球反応、すなわち細胞傷害性T細胞反応とT細胞増殖のような免疫反応のin vitroモデルで阻害活性を示す(Becker, J. C.; et al., J. Immunol. 1993, 151, 7224 and Roep, B. O.; et al., Lancet, 1994, 343, 1590)。
【0005】
このように、先行技術は、CAMのロイコインテグリンへの結合をアンタゴナイズする大型タンパク質分子は、多くの自己免疫性又は炎症性疾患の病原と関連することが多い炎症反応及び免疫反応の緩和において治療薬としての可能性を有することを実証した。しかしながら、タンパク質は経口送達できない、慢性投与のためのタンパク質分子の利用を制限する潜在的な免疫反応性といった治療薬として重大な欠点を有する。さらに、タンパク質ベースの治療薬は一般的に製造に費用がかかる。
CAMのロイコインテグリンへの結合を直接的かつ選択的にアンタゴナイズする大型タンパク質分子と同様の活性を有する小型分子は好ましい治療薬を生じさせるであろうということになる。
CAMとロイコインテグリンの相互作用に影響を与えるいくつかの小型分子が文献に記載されている。例えば、米国特許第6,355,664号と対応するWO 98/39303はLFA-1とICAM-1の相互作用のインヒビターである、ヒダントインコアを有する小型分子類を開示している。本発明にさらに関連性のある文献は米国特許第6,492,408号であり、ヒダントインコアの代わりに6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾールコアを有する化合物を開示している。米国特許第6,492,408号で特に詳しく記載されている化合物は米国特許第6,355,664号と対応するWO9839303のヒダントインよりもCAMとロイコインテグリンの相互作用に対して強力な阻害作用を有するにもかかわらず、該化合物が代謝される速度が望ましくないほどに高いことから理想的な治療薬でない。米国特許第6,844,360号と第6,852,748号では、6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾールコア構造を有する、LFA-1とICAM-1の相互作用のさらなるインヒビターが開示されている。
本発明で解決すべき課題は、CAMとロイコインテグリンの相互作用に良い阻害効果を有しながら許容しうる代謝プロフィールをも有するさらなる小型分子を見出すことである。
【0006】
〔発明の簡単な概要〕
本発明の化合物は、米国特許第6,492,408号に特定的ではないが総称的に記載されている6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾールのサブセット又は精選品である。本発明の化合物は、LFA-1とICAM-1の相互作用の強力なインヒビターなので、炎症性疾患の治療に有用である。さらに、本発明の代表化合物は、改良された代謝プロフィール、例えば、改良された代謝安定性を有することが分かり、或いは有すると予想される。本発明の特定の実施形態は、式(I)の化合物及びその医薬的に許容しうる塩;式(I)の化合物、又はその医薬的に許容しうる塩と、1又は2以上の医薬的に許容しうる担体又はアジュバントとを含む医薬組成物;及び本明細書で述べるような炎症状態の治療方法であって、治療が必要な患者に、治療的に有効な量の式(I)の化合物、又はその医薬的に許容しうる塩を投与することを含む方法を包含する。
【0007】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、下記式(I)の化合物、又はその医薬的に許容しうる塩を含む。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、
R1は、OH又はNH2であり;
R2は、
(A)ピリジル及びピリミジルから成る群より選択されるアリール(前記アリール基の1又は2以上の水素原子は独立に、以下の基:
(i)シアノ、
(ii)ハロゲン及び
(iii)式-NR13R14(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に水素、又は1〜3の炭素原子の直鎖若しくは分岐アルキルである)
から成る群より選択される基で置換されている);
(B)トリフルオロメトキシ又は、
(C)シアノであり;
R3は、1〜3の炭素原子の直鎖若しくは分岐アルキルであり;
R4aは、ハロゲン、又は1〜2の炭素原子のアルキル(1又は2以上のハロゲン原子で置換されている)であり;
R4bは、ハロゲン、又は1〜2の炭素原子のアルキル(1又は2以上のハロゲン原子で置換されている)であり;
Xは、-CH=又は-N=であり;かつ
Yは、酸素又はイオウ原子である。)
【0010】
以下は、式(I)の化合物の種々の可変基のいくつかの好ましい実施形態である。
(A)R1の定義:
(Ai)R1がOH
(Aii)R1がNH2
(B)R2の定義:
(Bi)R2が、
(A)3-ピリジル及び5-ピリミジルから成る群より選択されるアリール(前記アリール基は、以下の基:
(i)シアノ、
(ii)ハロゲン、又は
(iii)NH2
で一置換、二置換又は三置換されている);
(B)トリフルオロメトキシ;又は
(C)シアノ;
(Bii)R2が、
(A)3-ピリジル及び5-ピリミジルから成る群より選択されるアリール(前記アリールは、以下の基:
(i)シアノ、又は
(ii)NH2
で一置換されている);
(B)トリフルオロメトキシ;又は
(C)シアノ;
(Biii)R2が、
(A)NH2で一置換されている5-ピリミジル;
(B)トリフルオロメトキシ;又は
(C)シアノ;
(C)R3の定義:
(Ci)R3がメチル又はエチル;
(Cii)R3がメチル;
(D)R4aの定義:
(Di)R4aがCl又はCF3
(Dii)R4aがCl;
(Diii)R4aがCF3
(E)R4bの定義:
(Ei)R4bがCl又はCF3
(Eii)R4bがCl:
(Eiii)R4bがCF3
(F)Xの定義:
(Fi)Xが-CH-;
(Fii)Xが-N=;
(G)Yの定義:
(Gi)Yが酸素;
(Gii)Yがイオウ。
上記定義(Ai)〜(Gii)のいずれもそれぞれいずれの組合せで相互に組み合わせても式(I)の化合物の特定の下位概念の定義を得ることができる。
以下の表は、式(I)の化合物のさらなる下位概念の実施形態I-1〜I-45を示し、表中の可変基は上記定義(Ai)〜(Gii)に従って定義される。















【0011】







【0012】
式Iの化合物が1つのキラル中心を有することは明かだろう。究極的に好ましい一般的態様では、本発明は下記式I*で示される絶対的な立体化学を有する式Iの化合物を包含する。
【0013】
【化2】

【0014】
下表Iの化合物から選択される式Iの化合物が特に好ましい。



















【0015】
【表1】



【0016】
【表2】



【0017】
【表3】



【0018】
【表4】



【0019】
【表5】



【0020】
【表6】

【0021】
本発明は、式Iの化合物の医薬的に許容しうるすべての塩をも包含する。医薬的に許容しうる塩には、当業者に理解されるであろういずれの医薬的に許容しうる酸付加塩及び医薬的に許容しうる塩基付加塩をも含まれる。従って、本発明の化合物は、その遊離塩基又は遊離酸、その医薬的に許容しうる塩を包含し、また、明確に記述又は示されていなくても、その構造中に酸化されたイオウ原子又は四級化された窒素原子、特に医薬的に許容しうる形態をも包含しうる。本発明は、このような形態、特に医薬的に許容しうる形態を包含することを意図している。
本発明の化合物は、1つより多くの互変異性形で存在するものもあり、従って、本発明はこのようなすべての互変異性体を包含する。一般に、化合物の名称又は構造で特定の立体化学又は異性形を特に指定していない限り、化学構造又は化合物の、個々の幾何異性体若しくは立体異性体又は異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物であれ、すべての互変異性形及び異性形並びに混合物を意図している。
また、本発明の範囲には、式(I)の化合物が、その下位概念及び特定の実施形態を含め、実質的に純粋な形態で包含される。本発明の文脈では、用語“実質的に純粋”とは、約5%未満、さらに好ましくは約1%未満の他の化合物又は不純物を含有する単離形態の式(I)の化合物を意味する。式(I)の粗生成物が本明細書で述べる合成法で一旦得られれば、技術上周知の通常の単離及び精製法を用いて容易に該単離形態を得ることができる。このような通常の単離及び精製法として、例えば、再結晶、ろ過、洗浄、シリカゲル上クロマトグラフィー、HPLC等が挙げられる。
【0022】
〔一般的な合成法〕
以下に示す一般法で本発明の化合物を調製することができる。個々の各工程に最適な反応条件と反応時間は、使用する特定の反応物によって変化しうる。特に断らない限り、溶媒、温度及び他の反応条件は、当業者によって容易に選択される。合成例セクションでは、具体的な手順を提供する。典型的に、所望により反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)でモニターすることができる。所望により、シリカゲル上クロマトグラフィー及び/又は再結晶によって中間体及び生成物を精製し、1又は2以上の下記方法で特徴づけうる:NMR、質量スペクトル及び融点。出発原料と試薬は商業的に入手可能であり、或いは化学文献記載の方法を用いて市販材料から当業者によって調製される。
後述する手順によって、下記中間体IIから式Iの化合物を調製することができる。
【0023】
【化3】

【0024】
〔中間体IIの調製法〕
下記スキームIに示される手順によって中間体IIを調製しうる。この手順は、米国特許第6,844,360号にも記載されている。
スキームI
【0025】
【化4】

【0026】
上記のように、中間体IIIをリチウムビス(トリメチルシリル)アミド等の適切な塩基で約-20℃〜-30℃にて脱プロトンしてからハロゲン化置換ベンジル、好ましくは臭化ベンジル(IV)でアルキル化してVを生成する。例えば、ジオキサン/50% NaOH中の40%の水性ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドによる処理後、HCl等の酸で処理してVのトリフルオロアセトアミド基を加水分解してVIを得る。4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン等の塩基の存在下でのVIのチオカルボニルジイミダゾールによる処理がVIIを与える。VIIのアミノアセトアルデヒドジメチルアセタールとt-ブチルヒドロペルオキシド溶液による処理後、その中間体アセタールのp-トルエンスルホン酸等の酸による処理がVIIIを与える。VIIIのN-ヨードスクシンイミド等のハロゲン化剤によるハロゲン化がIIを与える。
中間体IIIの調製、N-Boc-D-アラニンと3,5-ジクロロアニリンからトリフルオロ酢酸でBoc-基を除去後、ピバルアルデヒドで処理して形成されるアミドの処理、及び結果として生じるイミダゾロドンの無水トリフルオロ酢酸によるアシル化のために使用する方法は、前出の米国特許第6,414,161号、及び化学文献(N.Yee, Org. Lett., 2000, 2, 2781-2783)に記載されている。
【0027】
〔中間体IIの別の調製法〕
中間体IIの合成は、Wuらの米国特許第6,492,408号、Frutosらの米国特許第6,414,161号、及びWangらの米国特許出願公開第2006/0025447(A1)号でも報告されている。
〔R1がNH2の式Iの化合物の合成〕
中間体IIから、R1がNH2の式Iの化合物の合成は、下記スキームIIに示される。
スキームII
【0028】
【化5】

【0029】
上記のように、IIを式RdMgY(式中、RdはC1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり、Yはハライドである)のグリニャール試薬化合物で処理後、結果として生じるマグネシウム塩をSO2で処理してからN-クロロスクシンイミドで処理して塩化スルホニルIXを与える。適切な溶媒中、適切な塩基の存在下でIXを(例えば、水酸化アンモニウムの添加によって)アンモニアで処理して式Iの所望生成物を与える。或いは、この2-工程プロセスを、中間生成物IXを単離せずにワンポットで効率的に行うことができる。このワンポット変形は、式IIの化合物を式RdMgY(式中、RdとYは前記定義どおり)の化合物、二酸化イオウ及びN-クロロスクシンイミドと反応させた後、適切な溶媒中で適切な塩基及びアンモニア(例えば、水酸化アンモニウムの添加により)と反応させて、中間体を単離せずに式Iの化合物を形成する工程を含む。
適切なRdMgYとして、例えば、塩化イソプロピルマグネシウム、臭化イソプロピルマグネシウム、塩化シクロペンチルマグネシウム及び臭化シクロペンチルマグネシウムが挙げられる。
R2基が5-ピリミジルの場合、式IIの化合物と反応させる前に、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン等の有機塩基をRdMgYと予混合する必要がある。これは、RdMgYの5-ピリミジル基への付加を阻止するだろう。
この反応に好適な溶媒として、テトラヒドロフラン等の非プロトン性有機溶媒が挙げられる。
この反応の第2工程で使うのに好適な塩基として、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸セシウム及び炭酸ナトリウムが挙げられる。
RdMgYの添加は、約-40℃〜約-15℃、好ましくは約-25℃〜約-15℃の温度で行われる。二酸化イオウとN-クロロスクシンイミドの添加は、約-40℃〜約-5℃、好ましくは約-15℃〜約-5℃の温度で行われる。
【0030】
〔R1がOHの式Iの化合物の合成〕
中間体IX(スキームIIの通りに調製)から、R1がOHの式Iの化合物の合成を下記スキームIIIに示す。
スキームIII
【0031】
【化6】

【0032】
DMSO又はジオキサンのような適切な溶媒中、式IXの化合物を水と反応させてから加熱して式Iのスルホン酸化合物を得る。
R1がOHの式Iの化合物を調製する代替法を下記スキームIII'に示す。
スキームIII'
【0033】
【化7】

【0034】
式VIII(スキームI)の化合物をTHF等の適切な溶媒中、SO3ピリジン複合体等の適切なスルホン化剤と反応させてから加熱して式Iのスルホン化化合物を得る。
〔R2基の変形〕
式Iの化合物における所望のR2は、スキームIで適切に置換された中間体IVを選択することによって得られる。或いは、スキームIの手順に従うが、R2がBrである中間体VIII(VIIIa)を調製してから、例えば、下記スキームIVに示される手順によって、R2がCN又は置換5-ピリミジル基である中間体に変換してもよい。
スキームIV
【0035】
【化8】

【0036】
上記のように、臭化アリールVIIIaをシアン化物塩、好ましくはCuCNで処理し、DMF等の適切な溶媒中で加熱してシアノ-中間体VIIIbを与える。適切な溶媒、例えばジメトキシエタン中、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)・CH2Cl2(PdCl2(dppf)・CH2Cl2)等のパラジウム触媒と炭酸カリウム等の塩基の存在下、5-(4,4,5,5,-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ピリミジン等のピリミジンボロン酸エステルによるVIIIaの処理(Suzuki反応)がピリミジン中間体VIIIcを与える。次に、上記手順によって中間体VIIIb及びVIIIcを式Iの所望化合物に変換することができる。R2=Brの式Iの化合物(化合物Ia)についてR2=BrをR2=任意に置換されていてもよいピリミジンに変換するためSuzuki反応を行ってもよい。逆のやり方でSuzuki反応を行ってもよい。例えば、PdCl2(dppf)等のパラジウム触媒の存在下、ビス(ピナコラト)ジボロンで処理してから所望の臭化ピリミジルと反応させることによって、臭化物VIIIa(又はR2=Brの式Iの化合物)をボロン酸エステルに変換することができる。
式Iの最初の生成物をさらに技術上周知の方法で改変して本発明の別の化合物を与えることができる。
本発明の他の特徴及び利点は、例として本発明の原理を説明する以下の詳細な実施例から明らかになるだろう。
【0037】
〔合成例〕
実施例1:(R)-5-[4-(4-アミノ-ピリミジン-5-イル)-ベンジル]-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホン酸(1)の合成
【0038】
【化9】

【0039】
化合物(25)の合成は、Wuらの米国特許第6,492,408号及びWangらの米国特許出願公開第2006/0025447(A1)号によって報告されている(両文献を参照によってここに援用する)。
THF中の(R)-3-(4-ブロモ-ベンジル)-1-(3,5-ジクロロ-フェニル)-3-メチル-1H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-2-オン(25)の溶液(0.12M)をN-ヨードスクシンイミド(1.05当量)及びp-トルエンスルホン酸ピリジニウム(0.1当量)で処理する。混合物を室温で17時間撹拌してからEtOAcで希釈し、10% Na2S2O3溶液と水で洗浄する。混ぜ合わせた水層をEtOAcで抽出する。混ぜ合わせた有機相を食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮する。粗製油をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して所望のヨウ化物(26)を得る。
c-ペンチルマグネシウムクロライド(1.05当量)を10分にわたって滴加しながら上記ヨウ化物(26)のTHF中の溶液(0.12M)を-40℃で冷却する。-40℃で1時間撹拌後、反応混合物の表面の真上に入口針を置くことによって1.5分間SO2(g)を添加する。反応混合物を1時間にわたって-20℃に温めてから室温で1時間撹拌する。20分間混合物にN2(g)を通して泡立てた後、高真空下で12時間濃縮及びポンピングする。結果として生じる泡をTHFに溶かし(0.1M)、N-クロロスクシンイミド(1.2当量)のTHF中の溶液(0.3M)を5分にわたって滴加しながら-20℃で冷却する。-20℃で1時間撹拌後、混合物を氷上に注ぎ、EtOAcで2回抽出する。混ぜ合わせた有機層を氷冷食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮する。シリカゲルクロマトグラフィーによる精製が塩化スルホニル(27)を固体として与える。
塩化スルホニル(27)(727mg)をDMSO(4.4mL)と水(0.7mL)の混合物に添加してから80℃で3時間加熱する。結果の均一反応を室温に戻し、15mLの水で希釈して沈殿物を生成する。この固体を真空ろ過で収集し、一晩空気乾燥させて定量的収率のスルホン酸(28)を得る。
スルホン酸(28)(826mg)を無水ジオキサン(15.6mL)に溶かし、この溶液に20分間N2を通して泡立てる。ビス(ピナコラト)ジボロン(474mg)、PdCl2(dppf)・CH2Cl2(127mg)及びKOAc(610mg)を一緒に固体混合物として加える。反応にN2を流し、N2雰囲気下で16時間80℃で加熱する。室温に冷却後、反応を水で希釈し、10% EtOAc/ヘキサンで抽出して極性の低い物質を除去する。次に、水相をEtOAcで抽出する。混ぜ合わせたEtOAc層をMgSO4で乾燥させ、濃縮して953mgのピナコールボロネート(29)を暗泡として得、さらに精製せずに使用する。
ジオキサン(5.2mL)と水(2.6mL)中のピナコールボロネート(29)(506mg)、4-アミノ-5-ブロモピリミジン(189mg)及びNa2CO3(123mg)の混合物をN2で20分間脱気する。PdCl2(dppf)・CH2Cl2(59mg)を添加し、反応混合物にN2を流す。反応を80℃に15時間加熱してから室温に戻し、水(10mL)と食塩水(10mL)で希釈し、EtOAcで抽出する。混ぜ合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、ろ過かつ濃縮する。得られた物質を逆相HPLCで精製する。凍結乾燥によって溶媒を除去して120mgの表題化合物(1)を白色固体として得る。(MS 544.95 M+1)
【0040】
実施例2:(R)-5-[4-(4-アミノ-ピリミジン-5-イル)-ベンジル]-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホン酸アミド(2)の合成
【0041】
【化10】

【0042】
塩化スルホニル(27)(750mg)をTHF(2.5mL)とDMF(0.5mL)の混合物に室温で溶かす。CsCO3(667mg)を一度に加え、NH4OH(0.6mL)を添加する。結果として生じる溶液を室温で1時間撹拌する。反応を水で希釈し、EtOAcで抽出する。混ぜ合わせた有機層を濃縮し、クロマトグラフィーで精製して495mgのスルホンアミド(30)を得る。
ネジ蓋バイアル中でスルホンアミド(30)(495mg)を無水ジオキサン(9.3mL)に溶かす。溶液を凍らせてから真空下に25分置いて一部解凍させる。溶液をN2下に置き、ビス(ピナコラト)ジボロン(284mg)、Pd触媒(38mg)及びKOAc(275mg)を一緒に固体混合物として加える。反応にN2を流し、蓋とパラフィルムで封止して80℃で20時間加熱する。溶媒を凍結乾燥させ、残留物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して407mgのピナコールボロネート(31)を泡として得る。
バイアル中でジオキサン(2.2mL)と水(1.1mL)にピナコールボロネート(31)(204mg)、4-アミノ-5-ブロモピリミジン(92mg)及びNa2CO3(52mg)を懸濁させる。20分間混合物にN2を通して泡立てる。Pd触媒(2.9mg)を加え、バイアルにN2を流し、蓋をしてパラフィルムで封止する。反応を80℃に18時間加熱する。反応を室温に冷まし、水(8mL)で希釈し、EtOAcで抽出する。混ぜ合わせた有機層をMgSO4で乾燥させて濃縮する。残留物をクロマトグラフィーで精製して49.0mgの表題化合物を得る。この物質をさらに逆相HPLCで精製する。凍結乾燥で溶媒を除去して44.3mgの所望アミノピリジン(2)のトリフルオロ酢酸塩を白色粉末として得る。(MS 544.23 M+1)
上表Iに示した化合物(3)〜(16)は、化合物(1)と(2)について上述した方法と類似の方法で調製される。
上表Iに示した化合物(21)〜(24)は、化合物(1)と(2)について上述した方法と類似の方法で必要な試薬を用いて調製される。
【0043】
実施例3:(R)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホン酸(17)の合成
【0044】
【化11】

【0045】
化合物(32)は、化合物(25)について述べた方法と類似の方法で調製される。
(R)-1-(3,5-ジクロロ-フェニル)-3-メチル-3-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-1H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-2-オン(32)(1.54g)のTHF(30mL)中の溶液をN-ヨードスクシンイミド(0.846g)とp-トルエンスルホン酸ピリジニウム(0.086g)で処理する。混合物を室温で17時間撹拌してからEtOAcで希釈し、10% Na2S2O3溶液と水で洗浄する。混ぜ合わせた水層をEtOAcで抽出する。混ぜ合わせた有機相を食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮する。粗製油をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して1.27gの化合物(33)を油として得る。(MS 582.0, M+1)
10分にわたって塩化シクロペンチルマグネシウム(1.17mL,ジエチルエーテル中2M)を滴加しながら、ヨウ化物(33)(1.24g)のTHF(16mL)中の溶液を-40℃で冷却する。-40℃で1時間撹拌後、反応混合物の表面の真上に入口針を置くことによって1.5分間SO2(g)を加える。1時間にわたって反応混合物を-20℃に温めてから室温で1時間撹拌する。20分間混合物にN2(g)を通して泡立ててから高真空下で12時間濃縮及びポンピングする。結果として生じる泡をTHF(16mL)に溶かし、5分にわたってN-クロロスクシンイミド(0.341g)のTHF(8mL)中の溶液を滴加しながら-20℃で冷却する。-20℃で1時間撹拌後、混合物を氷上に注ぎ、EtOAcで抽出する。混ぜ合わせた有機層を氷冷食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮する。シリカゲルクロマトグラフィーによる精製が濃厚油として0.975gの化合物(34)を与える。(MS 554.2, M+1)
塩化スルホニル(34)(500mg)をDMSO(4.4mL)と水(0.7mL)の混合物に添加してから3時間80℃で加熱する。結果として生じる均一反応を室温に冷まし、15mLの水で希釈すると、沈殿が生じる。この固体を真空ろ過で収集し、一晩空気乾燥させて462mgのスルホン酸(17)を得る。(MS 535.9 M+1)
【0046】
実施例4:(R)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホン酸アミド(18)の合成
【0047】
【化12】

【0048】
THFとDMFの混合物(4.0ml,体積で5:1)中の塩化スルホニル(34)(1.0g)の溶液にCs2CO3(0.89g)を添加後、水酸化アンモニウム(0.9ml,28%水溶液)を室温で加える。30分後、混合物を水で処理し、EtOAcで抽出する。抽出液を濃縮し、残留物をシリカゲル上クロマトグラフィーで精製して647mgのスルホンアミド(18)を得る。(MS 534 M+1)
【0049】
実施例5:(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホン酸(19)の合成
【0050】
【化13】

【0051】
(R)-3-(4-ブロモ-ベンジル)-1-(3,5-ジクロロ-フェニル)-3-メチル-1H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-2-オン(25)(10.0g)のDMF(200mL)中の溶液にZn(CN2)(1.58g)を加える。結果溶液をN2の気流で2時間脱気する。Pd2dba3(1.02g)とdppf(1.48g)を加え、反応混合物を2時間120℃に加熱する。溶媒を蒸発させ、残留物をEtOAcに溶かしてから水と食塩水で洗浄し、乾燥させ、ろ過し、残留物をフロリジル上で精製して7.0gの化合物(35)を得る。
CH2Cl2(80mL)中の化合物(35)(4.0g)の冷却(-30℃)撹拌溶液に、30分にわたってp-トルエンスルホン酸ピリジニウム(0.25g)とN-ヨードスクシンイミド(2.9g)を少しずつ加える。浴の温度を緩徐に室温に上げて一晩撹拌する。反応混合物を10% NaHSO3と水で洗浄する。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮する。結果として生じる粗生成物をクロマトグラフィーで精製して3.5gのヨウ化物(36)を得る。
ヨウ化物(36)(1.0g)のTHF(10mL)中の氷冷(-40℃)溶液に、10分にわたって塩化c-ペンチルマグネシウム(1.5mL,Et2O中2M)を一滴ずつ添加する。混合物を-40℃で1時間撹拌してから、反応混合物の表面の真上に入口針を置くことによって、1分間SO2(g)を加える。結果として生じる溶液を1時間にわたって-20℃に温めてから室温でさらに1時間撹拌する。20分間混合物にN2(g)を通して泡立てた後、高真空下で12時間濃縮及びポンピングする。結果として生じる泡をTHF(10mL)に溶かし、N-クロロスクシンイミド(0.3g)のTHF(10mL)中の溶液を1分にわたって添加しながら-20℃で冷却する。混合物を-20℃で1時間撹拌してから氷/水上に注ぎ、EtOAcで抽出する。混ぜ合わせた有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮する。粗生成物をクロマトグラフィーで精製して0.65gの塩化スルホニル(37)を得る。
塩化スルホニル(37)(70mg)をDMSO(1mL)と水(0.2mL)の混合物に加えてから80℃で3時間加熱する。結果として生じる均一反応を室温に冷まし、水で希釈し、水層をEtOAcで抽出する。混ぜ合わせた有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮する。残留物をクロマトグラフィーで精製して58mgのスルホン酸(19)を得る。(MS 477 M+1)
【0052】
実施例6:(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホン酸アミド(20)の合成
【0053】
【化14】

【0054】
THF(1mL)とDMF(0.2mL)の混合物中の塩化スルホニル(37)(495mg)の溶液にCsCO3(0.24g)を添加後、NH4OH(0.24mL)を加える。反応混合物を室温で30分間撹拌してから水で処理する。水層をEt2Oで抽出し、有機相を水と食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮する。粗生成物をクロマトグラフィーで精製して100mgの表題化合物を得る。(MS 475.9 M+1)
【0055】
〔生物学的性質の説明〕
以下の実験プロトコルによって、式Iの化合物の生物学的性質を調べることができる。
〔ICAM-1へのLFA-1の結合の阻害を決定するためのアッセイ〕
アッセイの目的:
このアッセイプロトコルは、CAM、ICAM-1のロイコインテグリンCD18/CD11a(LFA-1)との相互作用の、試験化合物による直接的な拮抗を研究するために設計される。
アッセイプロトコルの説明:
以前に記載されたプロトコル(Dustin, M. J.; et al., J. Immunol. 1992, 148, 2654-2660)を利用して、ヒトのJY又はSKW3細胞の20gのペレットから得たTS2/4抗体でLFA-1を免疫精製する。TS2/4 LFA-1 mAbセファロース上の免疫親和性クロマトグラフィーでSKW3ライセートからLFA-1を精製し、2mMのMgCl2と1%のオクチルグルコシドの存在下でpH 11.5にて溶出する。TS2/4カラムからフラクションを収集及び中和後、サンプルをプールし、プロテインGアガロースで前もってクリアにする。
以前に記載されているように(Marlin, S.; et al., Nature, 1990, 344, 70-72、また、Arruda, A.; et al., Antimicrob. Agents Chemother. 1992, 36, 1186-1192参照)可溶性形態のICAM-1を構築し、発現させ、精製して特徴づける。要するに、外部ドメインのドメイン5と膜貫通ドメインの間の推定上の境界線にあるイソロイシン454を、標準的なオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発を用いて終止コドンに変える。この構成は、膜結合型ICAM-1の最初の453個のアミノ酸が同一の分子を生じさせる。プロモーター、スプライスシグナル、及びSV初期領域のポリアデニル化シグナルと共に、ハムスターのジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、ネオマイシン耐性マーカー、及び上記sICAM-1構成物を用いて発現ベクターを作製する。標準的なリン酸カルシウム法で組換えプラスミドをCHO DUX細胞にトランスフェクトする。選択培地(G418)で細胞を継代し、sICAM-1を分泌するコロニーをメトトレキセートで増幅する。伝統的な非親和性クロマトグラフィー法、例えばイオン交換及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて血清フリー培地からsICAM-1を精製する。
【0056】
まず、96-ウェルプレート中、カルシウム及びマグネシウムとさらに2mMのMgCl2と0.1mMのPMSFを有するダルベッコのリン酸緩衝食塩水(希釈緩衝液)中40μg/mLでsICAM-1を30分間室温にてインキュベートすることによって、LFA-1のICAM-1への結合をモニターする。次に、希釈緩衝液中2%(w/v)のウシ血清アルブミンを37℃で1時間添加してプレートを遮断する。遮断溶液をウェルから除去し、試験化合物を希釈してから添加後、約25ngの免疫親和性精製LFA-1を加える。このLFA-1を試験化合物とICAM-1の存在下で37℃にて1時間インキュベートする。ウェルを希釈緩衝液で3回洗浄する。結合したLFA-1を、CD18細胞質側末端に相当するペプチドに向けられたポリクロナール抗体を希釈緩衝液と1%のBSAで1:100希釈して添加することによって検出し、37℃で45分間インキュベートする。ウェルを希釈緩衝液で3回洗浄し、ウサギ免疫グロブリンに向けられたヤギ免疫グロブリンに接合した西洋わさびペルオキシダーゼの1:4000希釈液を添加して、結合したポリクロナール抗体を検出する。この試薬を37℃で20分間インキュベートし、ウェルを上述したように洗浄し、各ウェルに西洋わさびペルオキシダーゼの基質を加えて、sICAM-1に結合したLFA-1の量に比例する定量的な比色シグナルを発生させる。LFA-1/ICAM-1相互作用の阻害のポジティブコントロールとして可溶性ICAM-1(60μg/mL)を使用する。全サンプルのバックグラウンドコントロールとして、結合アッセイにLFA-1を添加しないものを使用する。すべての試験化合物について用量応答曲線を得る。
上表Iに示した化合物から選択した代表化合物についてこのアッセイを試験し、それぞれ10μM未満のKdを有することが分かった。
【0057】
〔治療用途の説明〕
本発明で提供される式Iの新規な小型分子は、ICAM-1/LFA-1依存性のホモタイプなヒトリンパ球の凝集及びICAM-1へのヒトリンパ球の付着を阻害する。これら化合物は、免疫細胞の活性化/増殖の調節、例えば、CAMとロイコインテグリンが関与する細胞間リガンド/受容体結合反応の競合インヒビターとして治療用途を有する。さらに詳細には、本発明の化合物を用いて特定の炎症状態を治療しうる。特定の炎症状態として、哺乳動物の免疫系に特異的でない反応から生じる状態(例えば、成人呼吸窮迫症候群、ショック、酸素毒性、敗血症続発性多臓器損傷症候群、外傷続発性多臓器損傷症候群、人工心肺、心筋梗塞又は血栓溶解薬の使用に起因する組織の再潅流傷害、急性糸球体腎炎、脈管炎、反応性関節炎、急性炎症成分による皮膚疾患、脳卒中、熱傷害、血液透析、白血球アフェレーシス、潰瘍性結腸炎、壊死性全腸炎及び顆粒球輸血関連症候群)、並びに哺乳動物の免疫系に特異的なの反応から生じる状態(例えば、乾癬、臓器/組織移植片拒絶、移植片対宿主反応及び自己免疫性疾患、例えばレイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、インスリン-依存性糖尿病、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性結腸炎)、及び全身性エリテマトーデス)が挙げられる。本発明の化合物を喘息の治療で使用することもでき、或いは癌の治療でサイトカイン療法による毒性を最小限にするための補助剤としても使用しうる。一般的に、現在ステロイド療法で治療可能な当該疾患の治療でこれら化合物を使用することができる。
【0058】
従って、本発明の別の態様は、治療量又は予防量の式Iの1又は2以上の化合物の投与によって、上記状態を治療又は予防する方法の提供である。
本発明で提供される方法によれば、予防又は治療目的で、式Iの新規化合物を単独で、又は他の免疫抑制薬若しくは抗炎症薬と共に投与することができる。予防的に与える場合、いずれの炎症反応又は徴候よりも前に(例えば、臓器若しくは組織移植の前、移植時、又は直後であるが、いずれの臓器拒絶反応の徴候の前に)、本発明の免疫抑制化合物を与える。式Iの化合物の治療的投与が働いて、いずれのその後の炎症反応(例えば、移植された臓器又は組織の拒絶など)も阻止又は減弱する。式Iの化合物の治療的投与は、実際の炎症(例えば、移植された臓器又は組織の拒絶など)の減弱に役立つ。従って、本発明によれば、式Iの化合物を炎症の発生の前に投与し(予想される炎症を抑制するため)、或いは炎症の開始後に投与することができる。
本発明により、式Iの新規化合物を経口、非経口又は局所経路で単一用量又は分割用量で投与することができる。式Iの化合物に適した経口用量は、1日当たり約0.1mg〜10gの範囲であろう。非経口製剤では、好適な用量単位は0.1〜250mgの前記化合物を含み、局所投与では、0.01〜1%の活性成分を含む製剤が好ましい。しかし、患者毎に投与量は変わり、個々の患者の用量は、臨床医の判断によって決まり、臨床医は正確な用量を決定するための基準として患者のサイズと状態及びその薬物に対する患者の応答を使用するものと解釈すべきである。
【0059】
式Iの化合物は、典型的に、さらに少なくとも1種の医薬的に許容しうる担体又はアジュバントを含有するその医薬組成物の形態で投与される。本発明の化合物を経口投与する場合、少なくとも1種の適合しうる医薬用担体材料と共に本発明の化合物を含有する医薬組成物の形態の薬物として本発明の化合物を投与することができる。このような担体材料は経口投与に適した不活性な有機又は無機の担体材料でよい。該担体材料の例は、水、ゼラチン、タルク、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレン-グリコール、石油ゼリー等である。
常法で医薬組成物を調製でき、完成剤形は固体剤形、例えば、錠剤、糖衣錠、カプセル剤など、又は液体剤形、例えば溶液、懸濁液、エマルジョン等でよい。医薬組成物を滅菌などの通常の製薬操作に供してよい。さらに、医薬組成物は、1又は2以上の通常のアジュバント、例えば保存剤、安定剤、乳化剤、風味改良剤、湿潤剤、緩衝液、浸透圧を変えるための食塩水などを含有しうる。使用しうる固形担体材料として、例えば、デンプン、ラクトース、マンニトール、メチルセルロース、微結晶性セルロース、タルク、シリカ、二塩基性リン酸カルシウム、及び高分子量ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)が挙げられる。
非経口用途では、医薬的に許容しうる油又は液体混合物中の水性若しくは非水性溶液、懸濁液又はエマルジョン中で式Iの化合物を投与することができ、静菌剤、抗酸化剤、保存剤、該溶液を血液と等張させるための緩衝液若しくは他の溶質、増粘剤、懸濁剤又は他の医薬的に許容しうる添加剤を含んでよい。このタイプの添加剤として、例えば、酒石酸緩衝液、クエン酸緩衝液及び酢酸緩衝液、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、錯体形成剤(例えばEDTA)、抗酸化剤(例えば亜硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、及びアスコルビン酸)、粘度調節用高分子量ポリマー(液状ポリエチレンオキシド)及び無水ソルビトールのポリエチレン誘導体が挙げられる。必要な場合、保存剤、例えば安息香酸、メチル若しくはプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム及び他の四級アンモニウム化合物などを添加してもよい。
この発明の化合物を経鼻適用溶液として投与することもでき、この発明の化合物に加え、水性ビヒクル中の適切な緩衝液、緊張度調整剤、微生物防腐剤、抗酸化剤及び増粘剤を含むことができる。粘度を上げるために使用する薬剤の例はポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート又はグリセリンである。微生物防腐剤として、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール又はフェニルエチルアルコールが挙げられる。
さらに、本発明で提供される化合物を局所又は座剤によって投与することもできる。
【0060】
〔製剤〕
いくつかの方法で式Iの化合物を治療投与用に製剤化することができる。
〔実施例A〕








カプセル剤又は錠剤

【0061】
式Iの化合物を、潤沢剤以外の予混合した上記賦形剤材料とブレンドして粉末混合物とする。次に、潤沢剤をブレンドし、結果として生じるブレンドを圧縮して錠剤とし、或いは硬ゼラチンカプセルに詰める。
【0062】
〔実施例B〕
非経口溶液

【0063】
賦形剤材料を混合してから溶解に必要な体積で1種の式Iの化合物に加える。溶液が澄むまで混合を続ける。次に、溶液をろ過して適切なバイアル又はアンプルに入れ、オートクレーブ処理で滅菌する。
【0064】
〔実施例C〕
懸濁液

【0065】
賦形剤材料を水と混合後、1種の式Iの化合物を加え、懸濁液が均一になるまで混合を続ける。次に、懸濁液を適切なバイアル又はアンプルに移す。
【0066】
〔実施例D〕
局所製剤

【0067】
正確な量のTefose 63、Labrafil M 1944 CS、パラフィン油及び水を混合し、すべての化合物が融けるまで75℃で加熱する。次に、撹拌しながら混合物を50℃に冷ます。混合しながらメチルパラベンとプロピルパラベンを加え、混合物を周囲温度に冷ます。混合物に式Iの化合物を加えてよくブレンドする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物、又はその医薬的に許容しうる塩。
【化1】

(式中、
R1は、OH又はNH2であり;
R2は、
(A)ピリジル及びピリミジルから成る群より選択されるアリール(前記アリール基の1又は2以上の水素原子は独立に、以下の基:
(i)シアノ、
(ii)ハロゲン及び
(iii)式-NR13R14(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に水素、又は1〜3の炭素原子の直鎖若しくは分岐アルキルである)
から成る群より選択される基で置換されている);
(B)トリフルオロメトキシ又は、
(C)シアノであり;
R3は、1〜3の炭素原子の直鎖若しくは分岐アルキルであり;
R4aは、ハロゲン、又は1〜2の炭素原子のアルキル(1又は2以上のハロゲン原子で置換されている)であり;
R4bは、ハロゲン、又は1〜2の炭素原子のアルキル(1又は2以上のハロゲン原子で置換されている)であり;
Xは、-CH=又は-N=であり;かつ
Yは、酸素又はイオウ原子である。)
【請求項2】
R1がOHである、請求項1に記載の式Iの化合物、又はその医薬的に許容しうる塩。
【請求項3】
R1がNH2である、請求項1に記載の式Iの化合物、又はその医薬的に許容しうる塩。
【請求項4】
R2が、
(A)3-ピリジル及び5-ピリミジルから成る群より選択されるアリール(前記アリール基は、以下の基:
(iv)シアノ;
(v)ハロゲン;又は
(vi)NH2;
で一置換、二置換又は三置換されている);
(B)トリフルオロメトキシ;又は
(C)シアノ
である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の式Iの化合物、又はその医薬的に許容しうる塩。
【請求項5】
R2が、
(A)NH2で一置換されている5-ピリミジル;
(B)トリフルオロメトキシ;又は
(C)シアノ
である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの化合物、又はその医薬的に許容しうる塩。
【請求項6】
R3がメチル又はエチルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式Iの化合物、又はその医薬的に許容しうる塩。
【請求項7】
R3がメチルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の式Iの化合物、又はその医薬的に許容しうる塩。
【請求項8】
R4a及びR4bが、それぞれCl又はCF3から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iの化合物、又はその医薬的に許容しうる塩。
【請求項9】
Xが-CH-である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の式Iの化合物、又はその医薬的に許容しうる塩。
【請求項10】
Xが-N=である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式Iの化合物、又はその医薬的に許容しうる塩。
【請求項11】
以下の化合物から選択される請求項1に記載の式Iの化合物、又はその医薬的に許容しうる塩。
【化2】

【化3】

【化4】

【請求項12】
薬物として使用するための請求項1〜11のいずれか1項に記載の式Iの化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物と、少なくとも1種の医薬的に許容しうる担体又はアジュバントとを含む医薬組成物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の式Iの化合物の、炎症又は炎症状態の治療用薬物の調製のための使用。
【請求項15】
前記治療すべき状態が、成人呼吸窮迫症候群、ショック、酸素毒性、敗血症続発性多臓器損傷症候群、外傷続発性多臓器損傷症候群、人工心肺、心筋梗塞又は血栓溶解薬の使用に起因する組織の再潅流傷害、急性糸球体腎炎、脈管炎、反応性関節炎、急性炎症成分による皮膚疾患、脳卒中、熱傷害、血液透析、白血球アフェレーシス、潰瘍性結腸炎、壊死性全腸炎又は顆粒球輸血関連症候群、乾癬、臓器/組織移植片拒絶、移植片対宿主反応、自己免疫性疾患、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、インスリン-依存性糖尿病、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性結腸炎又は全身性エリテマトーデス、喘息又はサイトカイン療法の毒作用である、請求項14に記載の使用。

【公表番号】特表2008−540648(P2008−540648A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512319(P2008−512319)
【出願日】平成18年5月3日(2006.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/016903
【国際公開番号】WO2007/027233
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】