説明

7F4遺伝子トランスジェニック動物

【課題】本発明は、7F4遺伝子の発現が人為的に改変された非ヒト動物の提供を課題とする。また、本発明は、該動物を利用した骨関連疾患または糖脂質代謝関連疾患の治療のための医薬品候補化合物のスクリーニング方法、および該スクリーニング方法によって得られる医薬品化合物の提供を課題とする。
【解決手段】本発明者らは、7F4遺伝子が生体内の骨代謝を調節することを証明し、さらに7F4が骨代謝だけでなく糖脂質代謝にも関連することを示し、7F4が骨疾患や糖脂質代謝性疾患の治療薬開発の標的になることを明らかにした。本発明の7F4トランスジェニック動物は、上記疾患のための治療薬のスクリーニングに使用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、7F4タンパク質の発現が人為的に改変されたトランスジェニック非ヒト動物、および該動物から樹立された細胞に関する。また、本発明は、骨密度、体重、または脂肪組織量の変化を呈する疾患の治療または予防のための薬剤、並びに、その候補化合物のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
7F4はマウス骨髄由来の未分化間葉系細胞であるKUSA細胞(非特許文献1参照)から単離・同定されたTNF受容体ファミリーに属する新規遺伝子であり(特許文献1参照)、アミノ酸176個からなるGPIアンカー型のタンパク質をコードしている。
【0003】
本ファミリーに属する遺伝子にはOPG、RANKのように破骨細胞の形成と維持に重要であり骨代謝に大きな影響を与える遺伝子が見つかっている(非特許文献2〜4参照)。また、TNF-αは脂質合成にかかわる酵素の発現を阻害して脂質代謝の変化を引き起こすとともに、インスリン感受性を減弱させることが知られている(非特許文献5〜8参照)。さらに、TNF受容体の遺伝子多型と肥満、2型糖尿病との関係も示されている(非特許文献9参照)。
【0004】
このように、TNF/TNF受容体ファミリーの骨代謝、糖脂質代謝への関与は広く報告されている。7F4の機能についてはin vitroのレベルで骨芽細胞の増殖や分化に関与していることが示唆されている。しかし、7F4が骨代謝や糖脂質代謝に作用することは、生体レベルでは証明されておらず、糖脂質代謝についての知見は全く得られていないのが現状であった。
【0005】
【特許文献1】
国際公開第98/43998号
【非特許文献1】
Umezawa A.ら著 「Journal of Cell Physiology」 1992年、Vol.151、p.197-205
【非特許文献2】
Simonet W. S.ら著「Cell」1997年、Vol.89、p.309-319
【非特許文献3】
Yasuda H.ら著「Proc. Natl. Acad. Sci. USA」1998年、Vol.95、p.3597-3602
【非特許文献4】
Suda T.ら著「Endocr. Rev.」1999年、Vol.20、p.345-357
【非特許文献5】
Semb H.ら著「J. Biol. Chem.」1987年、Vol.262、p.8390-8394
【非特許文献6】
Pape M. E.ら著「Mol. Endocrinol.」1988年、Vol.2、p.395-403
【非特許文献7】
Pekala P. H.ら著「Proc. Natl. Acad. Sci. USA」1983年、Vol.80、p.2743-2747
【非特許文献8】
Torti F. M. ら著「Science」1985年、Vol.229、p.867-869
【非特許文献9】
Fernandez-Real J. M.ら著「Diabetes Care」2000年、Vol.23、p.831-837
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、7F4タンパク質が骨代謝や糖脂質代謝に作用することを生体レベルにおいて明らかにすることを目的とする。さらに本発明は得られた知見を基に、骨代謝および糖脂質代謝に関連する疾患の治療剤のスクリーニング方法の提供を課題とする。より具体的には、本発明は、7F4タンパク質の発現が人為的に改変されたトランスジェニック非ヒト動物、並びに、該動物を利用した骨代謝および糖脂質代謝に関連する疾患に治療剤のスクリーニング方法、および該疾患の治療剤の提供を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。まず本発明者らは、7F4の機能を明らかにするために、7F4タンパク質を全身性に過剰発現するトランスジェニックマウスを作出した。そして、該マウスの表現型を肉眼的およびX線所見にて観察したところ、7F4トランスジェニックマウスは野生型に比較して体が小さく、脂肪組織が少ないことが観察された。これらの現象を定量的に表現するために、腎臓周囲脂肪と生殖器周囲脂肪を摘出しその湿重量を測定した。また、大腿骨、椎体骨の骨密度を二重X線骨密度測定装置にて測定した。その結果、7F4トランスジェニックマウスでは、明らかに腎臓および生殖器周囲の脂肪組織量が低下し、さらに、大腿骨と椎体骨の骨密度も低値を示した。この結果から、7F4が骨関連疾患や糖脂質代謝関連疾患の治療薬開発の標的分子になる可能性が示されたとともに、本発明で作出したトランスジェニックマウスは、上記治療薬のスクリーニング系としても使用できることが期待される。上記のように骨代謝および糖脂質代謝における異常を呈する、7F4遺伝子トランスジェニック動物は、本発明者らによって初めて作製されたものである。
【0008】
上記の如く本発明者らは7F4が生体内の骨代謝を調節することを証明し、さらに7F4が骨代謝だけでなく糖脂質代謝にも作用することを示し、7F4が骨疾患や糖脂質代謝疾患の治療薬開発の標的となることを明らかにし、本発明を完成させた。
【0009】
即ち本発明は、7F4タンパク質の発現が人為的に改変されたトランスジェニック非ヒト動物、並びに、該動物を利用した骨代謝および糖脂質代謝に関連する疾患のための治療剤のスクリーニング方法、および該疾患の治療剤に関し、より具体的には、
〔1〕 7F4タンパク質の発現が人為的に改変されたトランスジェニック非ヒト動物、
〔2〕 7F4タンパク質をコードする外来DNAが導入されたトランスジェニック非ヒト動物、
〔3〕 非ヒト動物がげっ歯類である〔1〕または〔2〕に記載のトランスジェニック動物、
〔4〕 げっ歯類がマウスである〔3〕に記載のトランスジェニック動物、
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物から樹立された細胞、
〔6〕 以下の(a)〜(c)の工程を含む、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかを増減させる活性を有する化合物のスクリーニング方法、
(a)被検化合物を〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物に投与する工程
(b)上記動物の骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかを測定する工程
(c)被検化合物を投与していない場合と比較して、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかを増減させる化合物を選択する工程
〔7〕 以下の(a)〜(c)の工程を含む、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかの変化を特徴とする疾患の治療または予防のための薬剤の候補化合物のスクリーニング方法、
(a)〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のトランスジェニック動物、または7F4タンパク質を発現する細胞へ被検化合物を投与する工程
(b)上記動物または細胞について、7F4タンパク質の発現量または活性を測定する工程
(c)被検化合物を投与していない場合と比較して、上記発現量または活性を変化させる化合物を選択する工程
〔8〕 疾患が、骨粗鬆症、肥満および糖尿病からなる群より選択される、〔7〕に記載のスクリーニング方法、
〔9〕 〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載のスクリーニング方法によって取得される化合物、
〔10〕 〔6〕または〔7〕に記載のスクリーニング方法によって取得される化合物を有効成分とする、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかの変化を特徴とする疾患の治療もしくは予防のための薬剤、
〔11〕 疾患が、骨粗鬆症、肥満および糖尿病からなる群より選択される、〔10〕に記載の薬剤、
を、提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、7F4タンパク質の発現が人為的に改変されたトランスジェニック非ヒト動物を提供する。
【0011】
本発明の7F4遺伝子は、マウス骨髄由来の未分化間葉系細胞であるKUSA細胞(Umezawa A et al. Journal of Cell Physiology 1992;151:197-205)から単離・同定されたTNF受容体ファミリーに属する遺伝子であり(特許国際出願、国際公開番号WO98/43998)、アミノ酸176個からなるGPIアンカー型のタンパク質である。7F4遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号:1に、該cDNAによりコードされるタンパク質のうちシグナルペプチドを含むタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:2に、N末端側のシグナルペプチドが除去された成熟タンパク質のアミノ酸配列を配列番号:3に示す。
【0012】
本発明において、「7F4遺伝子の発現が人為的に改変された」とは、通常、7F4遺伝子上に、ヌクレオチドの挿入、欠失、置換等の遺伝子変異を有することにより該遺伝子の発現量が変化した状態、該7F4遺伝子のコピー数が変化した状態、あるいは、7F4をコードする外来性のDNAが導入された状態を指す。遺伝子変異が存在する部位は、該遺伝子の発現が改変され得る部位であれば特に制限されず、例えばエクソン部位、プロモーター部位等を挙げることができる。
【0013】
また、正常な7F4タンパク質としての機能が亢進あるいは低下している変異7F4タンパク質が発現している場合も、この7F4遺伝子の発現の「改変」に含まれる。本発明の「改変」においては、7F4遺伝子が過剰に発現している場合が好ましい。通常、遺伝子の発現制御領域、例えばプロモーター部位に変異を有すると、遺伝子の発現が亢進する場合があることが知られている。従って、本発明の「改変」の一つの態様としては、7F4遺伝子の発現制御領域が、7F4遺伝子の発現が亢進するように変異が導入された状態を示すことができる。
【0014】
また、本発明は、内因性の7F4遺伝子の発現が亢進した非ヒト動物以外に、例えば、発現可能な状態の7F4タンパク質をコードする外来DNAが導入された非ヒト動物を好適に示すことができる。即ち、本発明の好ましい態様においては、7F4タンパク質をコードする外来DNAが導入されたトランスジェニック非ヒト動物を提供する。
【0015】
本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、後述の骨関連疾患や糖脂質代謝関連疾患のための治療薬のスクリーニング方法に利用することが可能であり、非常に有用である。
【0016】
本方法における「非ヒト動物」とは、ヒトを含まない脊椎動物や無脊椎動物を意味する。遺伝子改変技術を用いて遺伝子の発現を人為的に改変するのに適した非ヒト動物としては、非ヒト哺乳動物や昆虫等が挙げられるが、より好適には、非ヒト哺乳動物(例えば、マウスやラットなどのげっ歯類)であり、最も好ましくはマウスである。
【0017】
トランスジェニック動物の作製方法は公知である。例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:7380-7384(1980)に記載の方法により、トランスジェニック動物を得ることができる。具体的には、7F4をコードするDNAを動物の全能細胞に導入し、この細胞を個体へと発生させる。得られた個体のうち、体細胞および生殖細胞中に導入遺伝子が組み込まれた個体を選別することによって、目的とするトランスジェニックマウスを作製することができる。遺伝子を導入する全能細胞としては、受精卵や初期胚のほか、多分化能を有するES細胞のような培養細胞などが挙げられる。より詳細には、後述の実施例に記載の方法により、トランスジェニック動物の作製を行うことができる。当業者においては、上記の方法を適宜改変して、所望の遺伝子の発現が改変されたトランスジェニック動物を作製することが可能である。
【0018】
上記の「7F4をコードするDNA」は、該DNAを導入すべき動物の細胞において発現可能なプロモーターに連結した組み換え遺伝子コンストラクト(発現ベクター)とするのが一般的である。本発明の組み換え遺伝子コンストラクトは、適当な宿主を利用してクローニング可能なベクターに、前記7F4をコードするDNAと、その上流にプロモーターとを挿入し、クローニングすることによって構築することができる。
【0019】
本発明に利用することができるプロモーターとしては、動物細胞で発現可能なプロモーターであれば特に制限されず、例えば、哺乳動物細胞由来のプロモーターや、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーターを挙げることができる。例えば、SV40のプロモーターを使用する場合は、Mulliganらの方法(Nature (1990) 277, 108)に従って、上記コンストラクトを作製することができる。
【0020】
また、本発明に使用可能なベクターとしては、好ましくは、CAGベクター(例えば、pCAGGS)を挙げることができる。このベクター以外でも、導入遺伝子を動物の生体内で広範囲に発現誘導でき得るものであればよく、当業者において周知の発現ベクターを利用することができる。具体的には、pCAGGS以外では、human polypeptide chain elongation factor 1 alpha (hEF1α)のプロモーター(Hanaoka K et al.:Differentiation 1991;48:183-189)やCMVのプロモーター−エンハンサーを有するベクター(Schmidt E. V. et al.:Mol. Cell. Biol. 1990:10:4406-4411)等を好適に用いることができる。
【0021】
また、CMVに由来するエンハンサーは、哺乳動物における外来遺伝子の発現を増強することが知られている。従って本発明の上記コンストラクトには、外来遺伝子の発現を増強するために、エンハンサーを組み合わせることができる。
【0022】
これらの遺伝子から構成される組み換え遺伝子コンストラクトの構築にあたり、エンハンサーとプロモーターを備え、さらにその下流に外来遺伝子挿入用のマルチクローニングサイトを配置したベクターを用いることができる。このような構造を持つベクターは、たとえばpCAGGS等をもとに構築することができる。
【0023】
適当な制限酵素によって前記ベクターから切り出した組み換え遺伝子コンストラクトは、十分に精製されトランスジェニック動物の作製に用いられる。通常、トランスジェニック動物は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに、前記コンストラクトを導入することによって作製される。コンストラクトを導入する細胞としては、通常、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階、より具体的には単細胞あるいは受精卵細胞の段階で、通常8細胞期以前のものが利用される。上記コンストラクトの導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法等が公知である。さらに、こうして得られた形質転換細胞を上述の胚芽細胞と融合させることによりトランスジェニック動物を作製することも可能である。
【0024】
上記コンストラクトを導入する細胞は、トランスジェニック動物の作製が可能なあらゆる非ヒト動物に由来する細胞であることができる。具体的には、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、イヌ、あるいはネコ等の細胞を利用することができる。マウスの場合、例えば、排卵誘発剤を投与したメスのマウスに正常なオスのマウスを交配させることにより、コンストラクトの導入が可能な受精卵を回収することができる。マウス受精卵では、一般に雄性前核へのマイクロインジェクションによりコンストラクトが導入される。コンストラクトを導入した細胞は、体外での培養の後、導入に成功したと思われる細胞が代理母の卵管に移植され、トランスジェニックキメラ動物が誕生する。代理母には、通常、精管を切断したオスと交配させて偽妊娠状態としたメスが利用される。
【0025】
生まれたトランスジェニックキメラ動物は、7F4をコードするDNAが組み込まれていることを確認した上で、F1動物の誕生のために正常な動物と交配させる。一般にコンストラクトとして導入した外来DNAは、ゲノムの同一の部分に複数コピーが直列に組み込まれる。通常はこの組み込みコピー数が多いほど、多量の遺伝子発現につながり、より明瞭な表現型が期待できるためである。体細胞ゲノムにおいて、7F4をコードするDNAが正しい方向で組み込まれていることは、コンストラクトに特異的なプライマーを用いたPCRや特異的なプローブを用いたサザンブロット法によって確認することができる。
【0026】
この交配の結果誕生するF1動物の中で、体細胞に外来遺伝子(7F4をコードするDNA)を有するもの(ヘテロザイゴート)は、生殖細胞に外来遺伝子(7F4をコードするDNA)を伝えることができるトランスジェニック動物である。F1動物の中から体細胞に外来遺伝子(7F4をコードするDNA)を保持するものを選び、これらを両親とすることによって、F2動物であるホモザイゴートを得ることができる。
【0027】
本発明の7F4トランスジェニック動物は、7F4の発現が改変されたものであれば、上記のトランスジェニック動物のいずれの世代の動物であってもよい。例えば、7F4の外来DNAをヘテロで保持するトランスジェニック動物であっても、この外来性の7F4が発現しているものであれば、本発明の7F4トランスジェニック動物として利用可能である。
【0028】
また、本発明は、本発明のトランスジェニック動物から樹立された細胞を提供する。本発明のトランスジェニック動物由来の細胞株を樹立する方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、げっ歯類においては、胎仔細胞の初代培養の方法(新生化学実験講座、18巻、125頁〜129頁東京化学同人、およびマウス胚の操作マニュアル、262頁〜264頁、近代出版)に従って細胞株を樹立することが可能である。
【0029】
本発明のトランスジェニック動物、および該動物から樹立した細胞株は、例えば、7F4遺伝子の詳細な機能の解析に利用することができる。例えば、7F4遺伝子の発現を調節する化合物の作用機序の解析等に利用することができる。トランスジェニック動物の組識から樹立された細胞を用いることで、各組識における被検化合物の作用をより詳細に検討することが可能である。
【0030】
また、本発明は、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかを増減させる活性を有することを特徴とする化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0031】
本発明の好ましい態様においては、7F4遺伝子の発現が人為的に改変されているトランスジェニック非ヒト動物における、骨密度、体重、または脂肪組織量の変化を指標とするスクリーニング方法である。この方法においては、まず、被検化合物を本発明のトランスジェニック非ヒト動物に投与する(工程(a))。
【0032】
本方法に用いる被検化合物としては、例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチドなどの単一化合物、並びに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物等を挙げることができる。
【0033】
上記工程(a)における、本発明のトランスジェニック動物への被検化合物の投与は、例えば、経口的に、また注射等により行うことができるが、それらに限定されない。被験化合物がタンパク質である場合には、例えば、該タンパク質をコードする遺伝子を有するウイルスベクターを構築し、その感染力を利用して、本発明のトランスジェニック動物に該遺伝子を導入することも可能である。
【0034】
上記方法においては、次いで、本発明の上記トランスジェニック動物の骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかを測定する(工程(b))。
上記工程(b)における、骨密度の測定は、例えば、上記トランスジェニック動物の大腿骨または椎体骨の骨密度を、二重X線骨密度測定装置によって測定する方法(DXA法)、骨X線像の読影、シングルフォトン吸収法、定量的CT法等により実施することができる。また、上記工程においてトランスジェニック動物の体重は、例えば、動物天秤上で測定することができる。上記工程において脂肪組織量の測定は、例えば、本発明のトランスジェニック動物における腎臓周囲または生殖器周囲にある脂肪組織を採取し、重量を測定する方法、MRI法、DXA法、CT法等により実施することができる。
【0035】
本発明においては、次いで、被検化合物を投与していない場合と比較して、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかを増減させる化合物を選択する(工程(c))。このようにして選択された化合物は、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかの変化を特徴とする疾患の治療または予防のための医薬品候補化合物となるものと期待される。
【0036】
また本発明は、7F4タンパク質の発現量または活性を指標とする、骨密度、体重、または脂肪組識量いずれかの変化を特徴とする疾患の治療または予防のための薬剤の候補化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0037】
上記スクリーニング方法の一つの態様においては、まず、本発明のトランスジェニック動物または本発明の細胞へ被検化合物を投与する。次いで、上記動物または細胞について、7F4タンパク質の発現量または活性を測定する。
【0038】
上記の本発明の細胞とは、好ましくは、本発明のトランスジェニック非ヒト動物から樹立された細胞を指すが、7F4を発現する細胞であれば特に限定されず、例えば、7F4を発現するKUSA細胞等を用いることも可能である。
【0039】
上記方法における被検化合物の細胞への「投与」とは、通常、被検化合物と細胞とを接触させることを意味する。この「接触」は、一般的に本発明の細胞の培養液に被検化合物を添加することによって行うが、この方法に特に限定されない。被験化合物がタンパク質等の場合には、例えば、該タンパク質を発現するDNAベクターを、該細胞へ導入することにより、「接触」を行うことができる。
【0040】
上記方法における「7F4タンパク質の発現」には、7F4遺伝子の転写および翻訳の双方が含まれる。
【0041】
本方法における発現量の測定は、当業者に公知の方法によって行うことができる。例えば、7F4遺伝子を発現する本発明の細胞、あるいは、本発明のトランスジェニック動物の細胞からmRNAを定法に従って抽出し、このmRNAを鋳型としたノーザンハイブリダイゼーション法またはRT-PCR法を実施することによって該遺伝子の転写レベルの測定を行うことができる。また、7F4遺伝子を発現する細胞からタンパク質画分を回収し、7F4タンパク質の発現をSDS-PAGE等の電気泳動法で検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うこともできる。さらに、7F4タンパク質に対する抗体を用いて、ウェスタンブロッティング法を実施することにより該タンパク質の発現を検出することにより、遺伝子の翻訳量の測定を行うことも可能である。7F4タンパク質の検出に用いる抗体としては、検出可能な抗体であれば、特に制限はないが、例えばモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体の両方を利用することができる。
【0042】
上記方法に利用可能な7F4タンパク質と結合する抗体は、当業者に公知の方法により調製することが可能である。ポリクローナル抗体であれば、例えば、次のようにして得ることができる。天然の7F4タンパク質、あるいはGSTとの融合タンパク質として大腸菌等の微生物において発現させたリコンビナント7F4タンパク質、またはその部分ペプチドをウサギ等の小動物に免疫し血清を得る。これを、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、7F4タンパク質や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することにより調製する。また、モノクローナル抗体であれば、例えば、7F4タンパク質もしくはその部分ペプチドをマウスなどの小動物に免疫を行い、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞を分離し、該細胞とマウスミエローマ細胞とをポリエチレングリコール等の試薬を用いて融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、7F4タンパク質に結合する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、7F4タンパク質や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することで、調製することが可能である。
【0043】
また上記方法における、7F4タンパク質の「活性」とは、例えば、骨細胞の分化を誘導する活性を挙げることができる。骨細胞の分化を誘導する活性とは、骨細胞の細胞増殖速度の低下をもたらし、該細胞の形態を変化させる活性を指す。該活性は、例えば、顕微鏡による骨細胞の形態学的観察や、骨細胞の分化マーカーとして一般に用いられているアルカリフォスファターゼの活性測定等の方法(N.C.Partrige,D.Alcorn,V.P.Michelangeli,G.Ryan & T.J.Martin(1983) Cancer Res 43 4308-14.Morphological and biochemical characterization of four clonal osteogenic sarcoma cell lines of rat origin、J.K.Burns & W.A.Peck(1978) Science 199 542-4.Bone cells:a serum-free medium supports proliferation in primary culture)により検出することが可能である。アルカリフォスファターゼの活性の測定は、例えば、細胞を超音波破砕により破壊し、細胞抽出液を得て、これをアルカリフォスファターゼの基質であるp-ニトロフェニルフォスフェート(p-nitrophenyl phosphate)とインキュベートしたのち、分解されて産生したp-ニトロフェノール(p-nitrophenol)の量を分光光度計により定量する方法等で行うことが可能である。また、オステオカルシン(Osteocalcine)やコラーゲンタイプIを指標に検出することも可能である。
【0044】
次いで、本発明は、被検化合物を投与していない場合と比較して、上記発現量または活性を変化させる化合物を選択する。このようにして選択された化合物は、骨密度、体重または脂肪組織量のいずれかの変化を特徴とする疾患の治療または予防のための医薬品候補化合物となる。
【0045】
本発明における上記の「疾患」としては、骨関連疾患、糖脂質代謝関連疾患等を挙げることができる。より具体的には、骨粗鬆症、高脂血症、肥満、肥満に伴う合併症(例えば高血圧、動脈硬化、心筋梗塞、狭心症、脂肪肝)、糖尿病等を例示することができるが、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかにおいて変化を呈する疾患であれば、特にこれらに限定されない。
【0046】
本発明者らは7F4遺伝子が過剰発現したマウスにおいて、該マウスの骨密度、および脂肪組織量が低下していることを見出した。従って本発明の一つの態様においては、例えば、上記スクリーニング方法によって、7F4の発現もしくは活性を低下させる化合物は、骨粗鬆症等の骨密度の低下を伴う疾患に対する予防または治療効果を有するものと期待される。また、7F4の発現もしくは活性を上昇させる化合物は、例えば、肥満患者に対して脂肪組織量を低下させることによって、上記疾患に対する予防または治療効果を有するものと大いに期待される。
【0047】
また、本発明のスクリーニング方法によって取得される化合物もまた本発明に含まれる。本発明のスクリーニング方法によって得られた化合物を、例えば、骨粗鬆症モデル動物に投与し、骨密度を測定することで骨粗鬆症に対する効果を確認することができる。骨粗鬆症モデル動物として、例えば、卵巣摘除モデル等を使用することが可能であり、骨密度の測定方法としては上記のDXA法等を用いればよい。
【0048】
また、上記のようなスクリーニングによって得られた化合物を、例えば、高カロリー食負荷による肥満モデル動物に投与し、体重や脂肪組織重量を測定することで抗肥満作用効果を確認することができる。この他にも、糖脂質代謝マーカーとして一般に知られている血中のグルコース、中性脂肪、コレステロール濃度などを測定することによっても、被検化合物の糖脂質代謝に対する効果の確認が可能である。
【0049】
また7F4タンパク質は、骨関連疾患や糖脂質代謝関連疾患の医薬品開発のためのターゲットになりうるものと考えられる。本発明は、本発明のスクリーニング方法により取得される化合物を有効成分とする、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかの変化を特徴とする疾患の治療もしくは予防のための薬剤を提供する。上記の「疾患」としては、上述した例えば、骨関連疾患(例えば、骨粗鬆症)、糖脂質代謝関連疾患(例えば、肥満、糖尿病)等を挙げることができる。
【0050】
本発明のスクリーニング方法により取得される化合物をヒトや他の動物のための薬剤として使用する場合には、本発明の化合物自体を直接患者に投与する以外に、公知の製剤学的方法により製剤化して投与を行うことも可能である。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤として経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0051】
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0052】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用してもよい。
【0053】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
【0054】
患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などのほか、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、または経口的に当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0055】
化合物の投与量は、症状により差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.1から100mg、好ましくは約1.0から50mg、より好ましくは約1.0から20mgであると考えられる。
【0056】
非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)においては、通常、1日当り約0.01から30mg、好ましくは約0.1から20mg、より好ましくは約0.1から10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合であると考えられる。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量、あるいは体表面積あたりに換算した量を投与することができる。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0058】
〔実施例1〕 7F4タンパク質を過剰発現したトランスジェニックマウス(7F4トランスジェニックマウス)の作製
(1)インジェクションベクター(pCAGGS-7F4)の構築
7F4全長が組み込まれたクローニングベクター(pCHOI-7F4:株式会社中外分子医学研究所(CMM)から入手)を鋳型としてLA Taq PCR kit (TaKaRa)を用いてPCRを行い、EcoRIサイト (GAATTC)とKOZAK配列 (CACC)を5'側に、3'側にEcoRIサイトを付加した。フォワードプライマーとして7F412-36: 5'-CCGAATTCCACCATGGTTACCTTCAGCACGTCTCC-3'(配列番号:4)、リバースプライマーとして7F4RV: 5'-CCGAATTCTCAGATACAGAAGACAATTAGCATCAG-3'(配列番号:5)を使用した。PCRの条件は以下の通りである。
初期反応: 96℃ x 2分
変性: 96℃ x 1分
アニーリング: 60℃ x 1分
伸長反応: 72℃ x 1分
サイクル数: 30回
終結反応: 4℃
反応終了後、アガロースゲル電気泳動にかけてDNA Gel Extraction Kit (QIAGEN)を用いてPCR産物を回収し、これをEcoRIで消化して再度精製した。得られたDNAフラグメントをpCAGGS3ベクターのEcoRIサイトに挿入し、pCAGGS-7F4を構築した。構築したベクターのDNA配列は310 Genetic Analyzer (PE Applied Biosystems)で確認した。
【0059】
(2)ベクターの受精卵へのインジェクションとマウス系統化
pCAGGS-7F4をSal IとPst Iで消化し、ニワトリβアクチンプロモーター、CMVエンハンサー、7F4遺伝子を含む約2.7kbpのDNAフラグメントを切り出した。切り出したDNAフラグメントはC57BL/6J系統の前核期受精卵にインジェクションした。DNAフラグメントの受精卵へのインジェクションは上田らの方法に従った(上田乙也ら:ジーンターゲティングの最新技術:2000:190-207)。インジェクションに由来する産仔からサザンブロット法による遺伝子型解析でトランスジェニックマウス(Founder)を見出し、このFounderをC57BL/6Jと交配して系統化を行った。7F4トランスジェニックマウスを2系統(iF37、iF43)樹立した。
【0060】
(3)遺伝子型解析(サザンブロッティング)
マウスの尾(約1.5cm)をプロテイナーゼ(proteinase) K処理した溶解液500μLをゲノムDNA自動抽出機(KURABO NA-1000)にかけてゲノムDNAを調製した。15μgのゲノムDNAをEcoRI消化し、アガロースゲル電気泳動後、ナイロンメンブレンにブロッティングした。これを32P標識したプローブとハイブリダゼーション処理し、洗浄後にBAS2000でシグナルを検出した。プローブには7F4遺伝子のcDNAを用いた。
【0061】
(4)遺伝子発現解析(ウエスタンブロットおよびRT-PCR)
マウスの臓器からISOGEN(ニッポンジーン)を用いてRNAとタンパク質画分を調製した。得られたRNAとタンパク質画分を用いて、ウエスタンブロット、および定量性のあるRT-PCR(PRISM)を行い、導入遺伝子の発現を解析した。
【0062】
(4−1)ウエスタンブロット
タンパク量50〜200mgをSDS-PAGEにて分離した後、イモビロンP膜(ミリポア)に対してセミドライ法でトランスファーした。室温一晩ブロッキング、1次抗体としてウサギ抗7F4ポリクローナル抗体、2次抗体としてアルカリフォスファターゼ(ALP)結合ヤギ抗ウサギIgG抗体を用いた。
結果を表1に示す。iF37、iF43いずれの系統でも解析した臓器(脳、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、骨、骨髄)全てにおいて7F4タンパク質の発現が亢進していた。
【0063】
【表1】

【0064】
(4−2)PRISM
各臓器から精製されたRNA 40ngを使用して定量的RT-PCRを行った。以下に反応条件を示す。

内部コントロールとしてGAPDHを同時に測定し、補正を行った。同一試料をtriplicateで測定した。
結果、ウエスタンブロット法と一致する結果が得られた。以降の7F4トランスジェニックマウスの解析には主にiF37を用いた。
【0065】
〔実施例2〕 7F4トランスジェニックマウスの肉眼所見および脂肪組織重量の測定
マウスをエーテルで麻酔し、腹部大静脈から採血して放血死させた後に、各臓器の肉眼による解剖学的所見を取った。その後、腹腔内脂肪組織として腎臓周囲および生殖器周囲にある脂肪組織を全て採取し、それぞれ重量を測定した。
図1および図2に11週齢の7F4トランスジェニックマウス(iF37)と野生型マウスの生殖器周囲脂肪重量と腎臓周囲脂肪重量の測定結果を示す。7F4トランスジェニックマウスの脂肪重量は野生型マウスを100%とした場合、雌で25%程度、雄で70%程度減少していた。また、体重あたりに占める脂肪組織の割合である相対重量も野生型マウスを100%とした場合、7F4トランスジェニックマウスの雌では15%程度、雄では60%程度低下していた。以上のように、7F4トランスジェニックマウスは野生型マウスと比較して脂肪組織量が減少しており、雌よりも雄で顕著な減少が見られた。iF43でも同様の結果であった。
【0066】
〔実施例3〕 7F4トランスジェニックマウスの大腿骨および椎体骨の骨密度測定
マウス解剖時に大腿骨および椎体骨(第二腰椎から第四腰椎)を採取し、二重X線骨密度測定装置(DXA-600EX,Aloka社)にて骨密度を測定した。
図3に11週齢の7F4トランスジェニックマウス(iF37)と野生型マウスの大腿骨、椎体骨の骨密度測定結果を示す。7F4トランスジェニックマウスの大腿骨骨密度は野生型マウスを100%とした場合、雌で15%程度、雄で25%程度低下していた。また、7F4トランスジェニックマウスの椎体骨骨密度は雌雄とも20%程度低下していた。骨密度の低下に関しては、雌雄による差は見られなかった。iF43でも同様の結果であった。
【0067】
【発明の効果】
本発明者らは、7F4が骨代謝や糖脂質代謝に作用することを生体レベルで証明し、7F4が骨疾患や糖脂質代謝性疾患の治療薬開発の標的になることを示した。このことから、7F4の発現や活性を調節する物質は、骨粗鬆症患者に対しては骨密度の回復をもたらし、肥満患者に対しては脂肪組織量の低下による治療効果をもたらすことが期待できる。また、7F4トランスジェニック動物は、骨関連疾患あるいは糖脂質代謝関連疾患の治療薬のスクリーニングに利用できる。また、本発明のトランスジェニック動物は、上記疾患のメカニズムを解明するためのモデル動物としても大いに有用である。
【0068】
【配列表】










【図面の簡単な説明】
【図1】 7F4トランスジェニックマウス(iF37)と野生型マウスの生殖器周囲脂肪重量と腎臓周囲脂肪重量の測定結果を示す図である。
【図2】 図1と同じ条件における体重あたりに占める脂肪組織の割合である相対重量を示す図である。
【図3】 7F4トランスジェニックマウス(iF37)と野生型マウスの大腿骨、椎体骨の骨密度測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
7F4タンパク質の発現が人為的に改変されたトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項2】
7F4タンパク質をコードする外来DNAが導入されたトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項3】
非ヒト動物がげっ歯類である請求項1または2に記載のトランスジェニック動物。
【請求項4】
げっ歯類がマウスである請求項3に記載のトランスジェニック動物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物から樹立された細胞。
【請求項6】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかを増減させる活性を有する化合物のスクリーニング方法。
(a)被検化合物を請求項1〜4のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物に投与する工程
(b)上記動物の骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかを測定する工程
(c)被検化合物を投与していない場合と比較して、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかを増減させる化合物を選択する工程
【請求項7】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかの変化を特徴とする疾患の治療または予防のための薬剤の候補化合物のスクリーニング方法。
(a)請求項1〜4のいずれかに記載のトランスジェニック動物、または7F4タンパク質を発現する細胞へ被検化合物を投与する工程
(b)上記動物または細胞について、7F4タンパク質の発現量または活性を測定する工程
(c)被検化合物を投与していない場合と比較して、上記発現量または活性を変化させる化合物を選択する工程
【請求項8】
疾患が、骨粗鬆症、肥満および糖尿病からなる群より選択される、請求項7に記載のスクリーニング方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載のスクリーニング方法によって取得される化合物。
【請求項10】
請求項6または7に記載のスクリーニング方法によって取得される化合物を有効成分とする、骨密度、体重、または脂肪組織量のいずれかの変化を特徴とする疾患の治療もしくは予防のための薬剤。
【請求項11】
疾患が、骨粗鬆症、肥満および糖尿病からなる群より選択される、請求項10に記載の薬剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−94701(P2006−94701A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−270321(P2002−270321)
【出願日】平成14年9月17日(2002.9.17)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】