説明

ABT−263カプセル剤

医薬カプセル剤は、医薬的に許容可能な賦形剤として(a)少なくとも1種のリン脂質、(b)少なくとも1種のリン脂質の溶解補助剤としてグリコール、グリセリド及びその混合物から構成される群から選択される少なくとも1種の溶解補助剤、(c)少なくとも1種の非リン脂質界面活性剤、および(d)少なくとも1種の含硫黄酸化防止剤を含有する実質的に非エタノール性の担体にABT−263又はその医薬的に許容可能な塩を溶解した溶液をシェルの内部に封入したものである。前記カプセル剤は1種以上の抗アポトーシスBcl−2ファミリー蛋白質の過剰発現を特徴とする疾患(例えば癌)の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアポトーシス促進性物質ABT−263、ABT−263を含有する製剤、及び抗アポトーシスBcl−2ファミリー蛋白質の過剰発現を特徴とする疾患の治療用としてのその使用方法に関する。より詳細には、本発明はABT−263を必要とする対象に経口投与するのに有用なカプセル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスの回避は癌の特徴である(Hanahan & Weinberg(2000)Cell 100:57−70)。癌細胞はDNA損傷、癌遺伝子活性化、異常な細胞周期進行及び正常細胞にアポトーシスを生じさせる苛酷な微小環境等の細胞ストレスによる不断の攻撃を克服しなければならない。癌細胞がアポトーシスを回避する主要な手段の1つはBcl−2ファミリーの抗アポトーシス蛋白質のアップレギュレーションである。
【0003】
Bcl−2蛋白質のBH3結合溝を塞ぐ化合物が例えばBruncko et al.(2007)J.Med.Chem.50:641−662に記載されている。これらの化合物には、式:
【0004】
【化1】

を有するN−(4−(4−((4’−クロロ−(1,1’−ビフェニル)−2−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(ジメチルアミノ)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ)−3−ニトロベンゼンスルホンアミド(別称ABT−737)が含まれている。
【0005】
ABT−737はBcl−2ファミリーの蛋白質(特にBcl−2、Bcl−X及びBcl−w)と高親和性(<1nM)で結合する。この化合物は小細胞肺癌(SCLC)と悪性リンパ腫に対して単剤活性を示し、他の化学療法剤のアポトーシス促進作用を助長する。ABT−737及び関連化合物とこのような化合物の製造方法はBrunckoらの米国特許出願公開第2007/0072860号に開示されている。
【0006】
更に最近では、Bcl−2ファミリー蛋白質に対して高い結合親和性をもつ別の化合物群が同定されている。これらの化合物とその製造方法はその開示内容全体を本願に組み込むBrunckoらの米国特許出願公開第2007/0027135号(本願では「’135公開」と言う)に開示されており、その式からABT−737と構造的に関連するとみなすことができる。
【0007】
’135公開において「実施例1」と呼称される1種の化合物はN−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチル−1−シクロヘキサ−1−エン−1−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(モルホリン−4−イル)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ)−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミド(別称ABT−263)である。この化合物は分子量974.6g/molであり、式:
【0008】
【化2】

を有する。
【0009】
Cancer Research Online(cancerres.aacrjournals.org/)で閲覧可能なTse et al.(2008)Cancer Res.68:3421−3428とその補足データには、’135公開に記載されているように合成されたABT−263の動物薬物動態試験が報告されている。この薬剤は10%ジメチルスルホキシド(DMSO)/ポリエチレングリコール(PEG)400又は10%エタノール/30% PEG400/60% Phosal 50 PG(登録商標)を溶媒とする溶液として製剤化されている。
【0010】
(例えば静脈内投与後のAUCの百分率としての経口投与後のAUCにより表される)経口バイオアベイラビリティは’135公開には報告されていないが、この文献からABT−263のほうがABT−737よりも実質的に高いと推論することができる。しかし、経口バイオアベイラビリティを更に改善できるならば有利であろう。経口バイオアベイラビリティが低いという課題に対して種々の解決方法が文献に提案されている。例えば、Lacyらの米国特許第5,645,856号は(a)油と、(b)親水性界面活性剤と、(c)薬剤のバイオアベイラビリティを促進する因子であるとされる油のインビボリポリシスに及ぼす親水性界面活性剤の阻害作用を実質的に抑制する親油性界面活性剤を使用して疎水性薬剤を製剤化することを提案している。多数の分類の親水性界面活性剤が例示されているが、その中にはレシチン等のリン脂質も含まれている。
【0011】
ChenとPatelの米国特許第6,267,985号は特に、(a)トリグリセリドと、(b)1種が親水性である少なくとも2種類の界面活性剤を含む担体と、(c)トリグリセリド、担体又は両者に可溶化することが可能な治療剤を含有する医薬組成物に関する。この文献には、トリグリセリドと界面活性剤は組成物を指定条件下で水溶液と混合したときに透明な水分散液となるような量で存在する必要があると記載されている。成分毎に多数の代表的な原料が例示されているが、そのうち、トリグリセリドとして「トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル」が挙げられ、界面活性剤としてホスファチジルコリンを含むリン脂質が挙げられている。
【0012】
PatelとChenの米国特許第6,451,339号はこのような組成物中にトリグリセリドが存在すると不利であると述べており、トリグリセリドを実質的に含まない以外は同様の組成物であって、同様に透明な水分散液となるものを提案している。
【0013】
PatelとChenの米国特許第6,309,663号は親水性治療剤の生体吸収性を高めるとされる界面活性剤の組合せを含む医薬組成物を提案している。ここでも代表的な界面活性剤としてホスファチジルコリン等のリン脂質が挙げられている。
【0014】
Fanaraらの米国特許第6,464,987号は有効物質と、3から55重量%のリン脂質と、16から72重量%の溶媒と、4から52重量%の脂肪酸を含有する液体医薬組成物を提案している。(ホスファチジルコリンとプロピレングリコールを主成分とする)Phosal 50 PG(登録商標)を含有し、場合によっては(ホスファチジルコリンと中鎖トリグリセリドを主成分とする)Phosal 53 MCT(登録商標)も含有する組成物が具体的に例示されている。このような組成物は水相の存在下で瞬時にゲル化する性質をもつと共に有効物質の制御下の放出を可能にすると述べられている。
【0015】
Leonardらの米国特許第5,538,737号は水溶性薬剤塩をエマルションの水相に溶解し、油相を油と乳化剤から構成した油中水エマルションを含むカプセル剤を提案している。油としては中鎖トリグリセリドが挙げられ、乳化剤としてはホスファチジルコリン等のリン脂質が挙げられている。この文献の各種実施例によると、ホスファチジルコリンと中鎖トリグリセリドを含有するPhosal 53 MCT(登録商標)が使用されていると報告されている。
【0016】
WaranisとLeonardの米国特許第5,536,729号はリン脂質溶液を含む担体中に約0.1から約50mg/mlの濃度でラパマイシンを含有する経口製剤を提案している。この文献には、Phosal 50 PG(登録商標)をリン脂質溶液として使用して好ましい製剤を製造することができると述べられている。代替リン脂質溶液としてPhosal 50 MCT(登録商標)が挙げられている。
【0017】
Harrisonらの米国特許第5,559,121号はN,N−ジメチルアセトアミドとリン脂質溶液を含む担体中に約0.1から約100mg/mlの濃度でラパマイシンを含有する経口製剤を提案している。より好ましい実施形態の例がPhosal 50 PG(登録商標)を使用して製造されることが示されている。代替リン脂質溶液としてPhosal 50 MCT(登録商標)が挙げられている。
【0018】
Lipariらの米国特許出願公開第2007/0104780号は少なくとも1種のリン脂質と医薬的に許容可能な溶解補助剤を含有する実質的に非水性の担体を溶媒とする溶液として低水溶性の小分子薬剤(この文献では塩の場合の対イオンを除き、約750g/mol以下、典型的には約500g/mol以下の分子量をもつものとして定義されている)を製剤化できることを開示している。溶液は水相と混合すると、実質的に不透明な非ゲル化性水分散液を形成すると述べられている。この文献には、例えば、Phosal 53 MCT(登録商標)及び他の原料を含有するN−(4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル)−N’−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素(蛋白質チロシンキナーゼ阻害剤ABT−869)の製剤が記載されている。
【0019】
最近では、本発明の先行技術を構成するものとは認めずにその開示内容全体を本願に組み込むKrivoshikの米国特許出願公開第2009/0149461号にABT−263の臨床試験が開示されている。この文献には、投与した製剤は「経口溶液用粉末(ボトル1本当たり塩基相当量2.0グラム、混合時25mg/ml)」であると記載されており、再構成用希釈剤は「ボトル1本当たり120グラムのPhosal(登録商標)53中鎖トリグリセリド(MCT)」と「脱水アルコール(エタノール)、USP/EP/JP 200プルーフ」であると記載されている。
【0020】
治療法の改善が必要とされている特定種の疾患は非ホジキンリンパ腫(NHL)である。NHLは米国において新規癌種では有病率が第6位であり、主に60から70歳代の患者に発症する。NHLは単一疾患ではなく、臨床属性や組織学的所見を含む数種の特徴に基づいて分類される関連疾患の併発である。
【0021】
1つの分類方法は疾患の自然誌、即ち疾患が無痛性であるか又は侵襲性であるかに基づいて種々の組織サブタイプを主要な2分類に分類する。一般に、無痛性サブタイプはゆっくりと増殖し、一般に難治性であるが、侵襲性サブタイプは迅速に増殖し、潜在的に治癒性である。濾胞性リンパ腫は最も広く知られている無痛性サブタイプであり、びまん性大細胞型リンパ腫は最も広く知られている侵襲性サブタイプである。癌蛋白質Bcl−2は非ホジキンB細胞リンパ腫で最初に同定された。
【0022】
濾胞性リンパ腫の治療は通例では生物化学療法又は併用化学療法から構成される。リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(R−CHOP)による併用療法と、リツキシマブ、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾン(RCVP)による併用療法が日常的に使用されている。(B細胞の表面で均一に発現されるリン蛋白質であるCD20を標的とする)リツキシマブ又はフルダラビンによる単剤療法も使用されている。リツキシマブを化学療法レジメンに加えると、応答速度の改善と無進行生存率の上昇が得られる。
【0023】
難治性又は再発性非ホジキンリンパ腫を治療するには放射免疫療法剤、高用量化学療法及び幹細胞移植を使用することができる。現在、治癒をもたらす認可済みの治療レジメンは存在せず、現行ガイドラインは第一選択療法でも患者を臨床試験の枠内で治療することを推奨している。
【0024】
侵襲性大細胞型B細胞リンパ腫患者の第一選択療法は通例ではリツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(R−CHOP)、又は用量調整したエトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン及びリツキシマブ(DA−EPOCH−R)から構成される。
【0025】
大半のリンパ腫は先ずこれらの療法のいずれか1種に応答するが、通例では腫瘍が再発し、最終的に耐性になる。患者が受けるレジメン数が増すにつれて疾患は化学療法耐性を増す。第一選択療法に対する平均応答率は約75%であるが、第二選択療法では60%、第三選択療法では50%、第四選択療法では約35から40%となる。複数回再発症例で単剤応答率が20%に近づく場合には陽性とみなされ、再検査が必要になる。
【0026】
治療法の改善が必要とされている他の新生物疾患としては、慢性リンパ球性白血病(例えばNHL、B細胞リンパ腫)や急性リンパ球性白血病等の白血病が挙げられる。
【0027】
慢性リンパ性白血病(CLL)は最も広く知られている種類の白血病である。CLLは主に成人の疾患であり、新規に診断される患者の75%超が50歳を越えているが、稀な症例では幼児にも認められる。併用化学療法が主要な治療法であり、例えばフルダラビンとシクロホスファミド及び/又はリツキシマブ、あるいはCHOPやR−CHOP等の更に複雑な併用剤が挙げられる。
【0028】
急性リンパ球性白血病は急性リンパ芽球性白血病(ALL)とも呼ばれ、主に幼児疾患であり、以前は生存率がほぼゼロであったが、現在では上記と同様の併用化学療法により75%まで上がっている。生存率を更に改善するために新規治療法が依然として必要である。
【0029】
現行の化学療法剤は各種メカニズムを介してアポトーシスを誘導することによりその抗腫瘍応答を誘発する。しかし、多くの腫瘍は最終的にこれらの治療剤に耐性になる。Bcl−2とBcl−Xは短期生存率アッセイで化学療法耐性を付与することがインビトロで報告されており、より最近ではインビボでも報告されている。従って、Bcl−2とBcl−Xの機能を抑制することを目的とする改良型治療法を開発できるならば、このような化学療法耐性を首尾よく克服できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0072860号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0027135号明細書
【特許文献3】米国特許第5,645,856号明細書
【特許文献4】米国特許第6,267,985号明細書
【特許文献5】米国特許第6,451,339号明細書
【特許文献6】米国特許第6,309,663号明細書
【特許文献7】米国特許第6,464,987号明細書
【特許文献8】米国特許第5,538,737号明細書
【特許文献9】米国特許第5,536,729号明細書
【特許文献10】米国特許第5,559,121号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2007/0104780号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2009/0149461号明細書
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】Hanahan & Weinberg(2000)Cell 100:57−70
【非特許文献2】Bruncko et al.(2007)J.Med.Chem.50:641−662
【非特許文献3】Tse et al.(2008)Cancer Res.68:3421−3428
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
これまでに経口投与に有用であるとして開示されている唯一のABT−263製剤は希釈液であり、例えばTse et al.(2008),前出により投与されているような10% DMSO/PEG400又は10%エタノール/30% PEG400/60% Phosal 50 PG(登録商標)を溶媒とするABT−263の溶液や、上記米国特許出願公開第2009/0149461号(「’461公開」)に開示されているようなPhosal 53 MCT(登録商標)とエタノールを溶媒とするABT−263の25mg/ml溶液が挙げられる。
【0033】
カプセル剤等の個別型剤形は薬剤の用量が厳密に予め計量され、剤形を投与し易いため、患者コンプライアンスを高めることができ、長期保存期間が可能になるという点で液体よりも有利である。更に、有効成分又は賦形剤の味が悪い場合には、製剤のカプセル化はこれを患者に問題とならないようにすることができる。液体製剤を例えばゼラチンカプセルに封入することは知られているが、ABT−263はこの点で課題がある。
【0034】
第一に、大半の適応症に使用されるABT−263の典型的な単位用量は比較的高い(約500mgまで又はそれ以上)ため、’461公開により記載されている25mg/ml溶液等のABT−263の希溶液を容易にカプセル化することはできない。200mgの用量でも、各々25mgのABT−263を収容する大型(1ml)カプセル8個が必要になる。ABT−263は大半の医薬的に許容可能な溶媒への溶解度が低いため、許容可能な保存安定性を示す高濃度溶液はこれまでに開発されていない。
【0035】
第二に、ABT−263はPhosal 50 PG(登録商標)やPhosal 53 MCT(登録商標)等のリン脂質系製品に溶解することができるが、エタノール等の減粘剤を添加しない限り、得られる溶液は高粘度である。エタノール及び他の減粘剤(例えばグリセロール)は大半のカプセルシェル材料、特にハードゼラチンカプセルシェル等のハードカプセルシェル材料に非適合性である。
【0036】
第三に、ABT−263は酸化し易く、スルホキシドを含む分解生成物を形成することが分かっている。これは即時調合可能な液体製剤には必ずしも深刻な問題とならないが、カプセル剤等の既製剤形では、酸化的分解は許容できないほど短い保存期間に繋がりかねない。そこで、カプセル封入用のABT−263の液体製剤には酸化防止剤を加えることが重要であるが、本願に示すように、多くの広く使用されている酸化防止剤はABT−263製剤中のスルホキシド形成を防ぐには無効である。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本願に記載する本発明の実施により、ABT−263の医薬的に許容可能な液体充填カプセル製剤を提供するという課題を達成できることが今般判明した。
【0038】
1実施形態において、本発明は医薬的に許容可能な賦形剤として、
(a)少なくとも1種のリン脂質、
(b)少なくとも1種のリン脂質の溶解補助剤としてグリコール、グリコリド、グリセリド及びその混合物から構成される群から選択される少なくとも1種の溶解補助剤、
(c)少なくとも1種の非リン脂質界面活性剤、および
(d)保存後のABT−263の酸化的分解を抑制するために有効な量の少なくとも1種の含硫黄酸化防止剤
を含有する実質的に非エタノール性の担体にABT−263又はその医薬的に許容可能な塩を少なくとも約40mg/mlのABT−263遊離塩基相当濃度で溶解した溶液をカプセル当たり約1000mg以下の量でカプセルシェルの内部に封入した医薬カプセル剤を提供する。
【0039】
より特定的な実施形態において、ABT−263は塩形態ではなく、遊離塩基形態でカプセル剤中に存在する。
【0040】
別のより特定的な実施形態において、含硫黄酸化防止剤は低脂溶性であり、従って、酸化防止剤をストック水溶液として導入する結果として、この実施形態による封入溶液は水分を含有する。過剰な水分の存在は脂質溶液の物理的安定性を脅かす恐れがあり、また、スルホキシド形成速度を増し、酸化防止剤添加の効果を打ち消す恐れもある。従って、この実施形態の封入溶液は含水量を約1重量%以下とすることが重要である。
【0041】
含水量の制限による含硫黄酸化防止剤の量の制限は別の課題を生じる。通例では、含硫黄酸化防止剤は過酸化物等の酸化種の競合的基質として作用することにより薬剤のスルホキシド副生物の形成を抑えるが、このような作用方式では、酸化防止剤が少なくとも薬剤の量と等モルに近い量で存在する必要がある。驚くべきことに、本発明者らはABT−263の濃度に対して1:20又はそれ以下という低いモル比でも所定の含硫黄酸化防止剤が各種保存条件下でスルホキシド形成速度を抑えるのに著しく有効であることを見出した。この実施形態による適切な含硫黄酸化防止剤としては、限定されないが、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及びチオ硫酸塩が挙げられる。
【0042】
例えば、この実施形態のプロトタイプカプセル剤は、
約50mgのABT−263遊離塩基と、
約150mgのホスファチジルコリンと、
約75mgの中鎖トリグリセリドと、
約90mgの中鎖モノ及びジグリセリドと、
約90mgのポリソルベート80界面活性剤と、
約0.25mgのメタ重亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸カリウムと、
約0.025mgのEDTA(キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸)又はその塩と、
約2.5mgの水
を含有する溶液をサイズ0のハードゼラチンカプセルシェルの内部に封入したものである。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、
ABT−263又はその塩から本質的に構成されるAPI(医薬品有効成分)を少なくともリン脂質と溶解補助剤に溶解し、脂質溶液を得ること、
非リン脂質界面活性剤を溶解補助剤又は脂質溶液と混合すること、
低脂溶性含硫黄酸化防止剤を水に溶解し、ストック水溶液を調製すること、
ストック水溶液を脂質溶液と混合し、封入用溶液を得ること、
溶液をカプセルシェルに封入すること
を含む上記カプセル剤の製造方法を提供する。
【0044】
更に別の実施形態において、本発明はアポトーシス不全及び/又は抗アポトーシスBcl−2ファミリー蛋白質の過剰発現を特徴とする疾患の治療方法として、本願に記載するようにカプセル剤として製剤化された治療有効量のABT−263を疾患に罹患した対象に経口投与する段階を含む方法を提供する。このような疾患の例としては癌を含む多数の新生物疾患が挙げられる。本発明の方法により治療することができる特定の具体的な癌種は非ホジキンリンパ腫である。本発明の方法により治療することができる別の特定の具体的な癌種は慢性リンパ球性白血病(CLL)である。本発明の方法により治療することができる更に別の特定の具体的な癌種は例えば幼児患者における急性リンパ球性白血病(ALL)である。
【0045】
更に別の実施形態において、本発明はABT−263及び/又は1種以上のその代謝物の治療有効血漿中濃度をヒト癌患者(例えば非ホジキンリンパ腫、CLL又はALLに罹患した患者)の血流中に維持する方法として、本願に記載するように製剤化されたABT−263を含有する1錠から複数錠のカプセル剤を、1日当たり約50から約1000mgのABT−263の用量で約3時間から約7日間の投与間隔で対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0046】
上記方法によると、投与するカプセル剤は例えば上記プロトタイプカプセル剤又はこれと経口で実質的に生物学的に同等な本発明の別のカプセル剤とすることができる。
【0047】
上記実施形態のより特定的な態様を含めた本発明の他の実施形態は以下の詳細な説明から確認又は明瞭に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例8に記載するような三元「IPT」脂質系を溶媒とするABT−263遊離塩基溶液の模式的相図である。図の斜線部分は最適製剤組成領域を表す。
【図2】実施例8に記載するような三元「IST」脂質系を溶媒とするABT−263遊離塩基溶液の模式的相図である。図の斜線部分は最適製剤組成領域を表す。
【図3】実施例14に記載するように本発明の液体充填カプセル剤をヒト癌患者に投与後のABT−263平均血漿中濃度を脂質溶液製剤と比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は経口投与に適したABT−263又はその塩の液体充填カプセル製剤を提供する。本願において「経口投与」及び「経口投与する」なる用語は対象に口から(p.o.)投与すること、即ち、例えば適切な体積の水又は他の飲用液体と共に組成物を直接嚥下する投与を意味する。「経口投与」は本願では組成物の直接嚥下を伴わない口腔内投与(例えば舌下又は頬側投与)又は口腔内組織(例えば歯周組織)への局所投与から区別される。
【0050】
本願において「ABT−263」とは、化合物N−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチル−1−シクロヘキサ−1−エン−1−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(モルホリン−4−イル)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ)−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミドを意味する。その親化合物形態において、ABT−263は式:
【0051】
【化3】

を有する。
【0052】
所定実施形態において、ABT−263はその親化合物形態で製剤中に存在する。親化合物は厳密に言えば両性イオン性であるため、必ずしも真の塩基として挙動しないことは承知しているが、本願では便宜上、親化合物の意味で「遊離塩基」なる用語を使用する。
【0053】
ABT−263は酸付加塩、塩基付加塩又は両性イオンを形成することができる。式Iの化合物の塩は化合物の単離中又は精製後に製造することができる。酸付加塩はABT−263と酸の反応から誘導される塩である。例えば、ABT−263の酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリセロリン酸塩、グルタミン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、蓚酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、プロピオン酸塩、琥珀酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、パラトルエンスルホン酸塩及びウンデカン酸塩を含む塩を本発明の組成物で使用することができる。ABT−263とリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウム等のカチオンの重炭酸塩、炭酸塩、水酸化物又はリン酸塩の反応から誘導される塩を含む塩基付加塩も使用することができる。
【0054】
ABT−263は少なくとも2個のプロトン化可能な窒素原子をもつため、1当量のABT−263に対して>1当量、例えば約1.2から約2当量、約1.5から約2当量又は約1.8から約2当量の酸と酸付加塩を形成することができる。
【0055】
例えば、ABT−263のビス塩を形成することができ、例えばビス塩酸塩(ビスHCl)やビス臭化水素酸塩(ビスHBr)が挙げられる。
【0056】
例えば、式:
【0057】
【化4】

により表されるABT−263ビスHClを各種手順(例えば以下に概説することができる方法)により製造することができる。
【0058】
例えばその開示内容全体を本願に組み込む上記米国特許出願公開第2007/0027135号の実施例1に記載されているようにABT−263遊離塩基を製造する。適切な重量のABT−263遊離塩基を酢酸エチルに溶解する。1モルのABT−263に対して少なくとも2モルのHClを提供すると共に得られるABT−263ビスHCl塩の結晶化に十分なEtOH(少なくとも約20vol)を提供する量の(例えばHCl 約4.3kgをEtOH 80gに溶解した)塩酸のエタノール溶液をABT−263溶液に加える。溶液を撹拌下に約45℃まで加熱し、EtOHスラリーとしてシードを加える。約6時間後に、得られたスラリーを約1時間かけて約20℃まで冷却し、この温度で約36時間混合する。スラリーを濾過し、ABT−263ビスHClのエタノール溶媒和物である結晶質固体を回収する。この固体を約8日間温和に撹拌しながら窒素下に減圧乾燥すると、白色脱溶媒和ABT−263ビスHCl結晶が得られる。この物質は本発明のABT−263ビスHCl製剤の製造に適している。
【0059】
従って、本発明のカプセル剤はABT−263遊離塩基又はその医薬的に許容可能な塩(例えばABT−263ビスHCl)を含む。より特定的な実施形態において、組成物はABT−263遊離塩基を含む。
【0060】
上記のように、ABT−263遊離塩基は上記’135公開の実施例1に記載されているような方法により製造することができる。この方法の生成物は非晶質ガラス状固体である。例えば凍結乾燥、噴霧乾燥又は沈降法によりこの生成物から粉末を製造することができる。このような粉末を本発明のカプセル剤の製造におけるAPIとして使用してもよいが、一般には結晶形態のABT−263遊離塩基をAPIとして使用することが好ましいと判断されよう。このような結晶形態としては、溶媒和物と無溶媒結晶形態が挙げられる。
【0061】
ABT−263遊離塩基の溶媒和物は以下のように製造することができる。出発物質は任意の固体形態のABT−263遊離塩基とすることができ、’135公開に従って製造された非晶質形態が挙げられる。
【0062】
計量したABT−263遊離塩基(上記のように、任意の固体形態を使用することができる)を多数の溶媒又は溶媒混合物(限定されないが、2−プロパノール、1−プロパノール、酢酸エチル/エタノール1:3v/v、酢酸メチル/ヘキサン1:1v/v、クロロホルム、メタノール、1,4−ジオキサン/ヘキサン1:2v/v、トルエン及びベンゼンが挙げられる)のいずれかに懸濁する。得られた懸濁液を遮光下に周囲温度で撹拌する。各場合にABT−263遊離塩基の溶媒和を可能にするために十分な時間後に、結晶を遠心濾過により回収する。例えば湾曲型位置感応型検出器と平行ビーム光学系を搭載したG3000回折計(Inel Corp.,Artenay,France)を使用して粉末X線回折法(PXRD)により、得られた溶媒和物を性状決定することができる。回折計は銅陰極管(1.5kW高精度焦点)を使用して40kV及び30mAで作動させる。入射ビームゲルマニウムモノクロメーターにより単色光を得る。1°間隔で減衰直射ビームを使用して回折計を校正する。シリコン粉末の回折線位置参照標準(NIST 640c)を使用して校正をチェックする。Symphonixソフトウェア(Inel Corp.,Artenay,France)を使用して計器をコンピュータ制御し、Jadeソフトウェア(バージョン6.5,Materials Data,Inc.,Livermore,CA)を使用してデータを解析する。サンプルをアルミニウムサンプルホルダーにセットし、ガラススライドで平らにする。
【0063】
例えば風乾により酢酸エチル/エタノール溶媒和物を脱溶媒和すると、ABT−263遊離塩基の無溶媒結晶形態が得られる。I型ABT−263遊離塩基のPXRDピークを表1に示す。実質的に同表に示すようなピークをもつPXRDパターンを使用し、結晶性ABT−263遊離塩基、より特定的にはI型ABT−263遊離塩基を同定することができる。この文脈で「実質的に示すような」なる用語は指定位置から約0.2°2θを越えてシフトしないピークをもつことを意味する。
【0064】
【表1】

【0065】
1−プロパノール、2−プロパノール、メタノール、ベンゼン、トルエン、ジオキサン/ヘキサン、酢酸メチル/ヘキサン及びクロロホルム溶媒和物を含む大半の溶媒和物を脱溶媒和すると、酢酸エチル/エタノール溶媒和物の脱溶媒和により生じる結晶形態と同一であることがPXRDにより明らかなABT−263遊離塩基の無溶媒結晶形態が得られる。
【0066】
ピリジン及びアニソール溶媒和物を脱溶媒和すると、酢酸エチル/エタノール溶媒和物の脱溶媒和により生じる形態とは異なることがPXRDにより明らかなABT−263遊離塩基の無溶媒結晶形態が得られる。ピリジン又はアニソール溶媒和物の脱溶媒和から得られる結晶形態をII型と言う。II型ABT−263遊離塩基のPXRDピークを表2に示す。実質的に同表に示すようなピークをもつPXRDパターンを使用し、結晶性ABT−263遊離塩基、より特定的にはII型ABT−263遊離塩基を同定することができる。
【0067】
【表2】

【0068】
特にI型をII型から区別するために、特にI型ABT−263遊離塩基の診断に用いられるPXRDピークとしては、6.21、6.72、12.17、18.03及び20.10°2θにおけるピークが挙げられ、各場合に±0.2°2θである。1実施形態において、I型ABT−263遊離塩基はこれらの位置のいずれか1個以上におけるピークを少なくとも特徴とする。別の実施形態において、I型ABT−263遊離塩基はこれらの位置の各々におけるピークを少なくとも特徴とする。更に別の実施形態において、I型ABT−263遊離塩基は表1に示す位置の各々におけるピークを特徴とする。
【0069】
特にII型をI型から区別するために、特にII型ABT−263遊離塩基の診断に用いられるPXRDピークとしては、5.79、8.60、12.76、15.00及び20.56°2θにおけるピークが挙げられ、各場合に±0.2°2θである。1実施形態において、II型ABT−263遊離塩基はこれらの位置のいずれか1個以上におけるピークを少なくとも特徴とする。別の実施形態において、II型ABT−263遊離塩基はこれらの位置の各々におけるピークを少なくとも特徴とする。更に別の実施形態において、II型ABT−263遊離塩基は表2に示す位置の各々におけるピークを特徴とする。
【0070】
溶媒和形態を含むABT−263遊離塩基の結晶形態の任意のものが本発明のカプセル剤の製造用APIとして有用であると考えられる。但し、この目的には一般にI型及びII型等の無溶媒形態が好ましい。
【0071】
文脈からそうでないことが必要な場合を除き、本願では投与量を遊離塩基相当量で表す。典型的には、適切な頻度(例えば1日2回から週1回まで)で投与することができる単位用量(一度に投与する量)は約25から約1,000mg、より典型的には約50から約500mg、例えば約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450又は約500mgである。カプセル剤1錠又は複数錠(例えば1から約10錠、より典型的には1から約5錠)で1単位用量を送達できると考えられる。
【0072】
単位用量が高いほど、比較的高濃度の薬剤を溶解できる賦形剤のブレンドを選択することが望ましくなる。ABT−263の適切な濃度は少なくとも約40mg/ml、例えば約50から約200mg/ml、例えば約50、約75、約100、約125、約150又は約200mg/mlである。重量/重量で表すと、ABT−263の適切な濃度は少なくとも約4重量%、例えば約5から約20重量%、例えば約5重量%、約7.5重量%、約10重量%、約12.5重量%、約15重量%又は約20重量%である。
【0073】
本発明のカプセル剤において、ABT−263は封入液に「溶解」している。これは当然のことながら、ABT−263の実質的に全部が溶解しており、即ち分散(例えば懸濁液)しているか否か関係なく、固体(例えば結晶)形態ではABT−263の実質的部分が存在せず、例えば約2%以下、又は約1%以下であることを意味する。実際面では、これは通常では使用する賦形剤ブレンドへのその溶解度の限界未満の濃度でABT−263を製剤化する必要があることを意味する。当然のことながら溶解度の限界は温度依存性であり得るため、適切な濃度の選択には組成物が通常の保存、輸送及び使用時に暴露され易い温度範囲を考慮すべきである。
【0074】
封入液は「実質的に非エタノール性」であり、即ちエタノールを含有しないか、又は実際面ではカプセル剤の性能もしくは性質に本質的に無害であるために十分に少量しかエタノールを含有しないことを意味する。より特定的には、エタノールは存在するとしてもカプセルシェルの完全性が損なわれる閾値濃度未満でなければならない。典型的には、封入液は0から約5重量%未満までのエタノールを含有する。これはハードカプセルシェル(例えばハードゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルシェル)を使用する場合に特に重要である。ソフトカプセルシェル(例えばソフトゼラチン又は可塑剤を添加した澱粉系シェル)はエタノール量が多少多くても耐えることができる。本願で有用な所定の予混合リン脂質製品はハードゼラチンカプセルにも無害な少量のエタノールを含有しており、例えばPhosal 53 MCT(登録商標)はエタノール含有量を約6%までとすることができる。例えば封入液の約75重量%以下の量で使用する場合、Phosal 53 MCT(登録商標)は封入液の約4.5重量%以下の量のエタノールを提供することが認められるため、封入液は本願で定義するような「実質的に非エタノール性」に維持される。
【0075】
大半の実施形態において、封入液は更に「実質的に非水性」であり、即ち水分を含有しないか、又は実際面では組成物の性能もしくは性質に本質的に無害であるために十分に少量しか水分を含有しないことを意味する。典型的には、封入液は0から約5重量%未満までの水分を含有する。当然のことながら本願で有用な所定の原料はその分子又は超分子構造上又はその内部で少量の水と結合する場合があり、結合水が存在する場合には、本願に定義するような担体の「実質的に非水性」特徴に影響を与えない。更に、低脂溶性酸化防止剤を使用する実施形態によると、少量(一般に封入液の約1重量%以下)の水分が一般に必要である。
【0076】
上記のように、封入液は特にリン脂質とリン脂質の医薬的に許容可能な溶解補助剤を含有する。当然のことながら本願でリン脂質、溶解補助剤又は他の製剤原料を単数形で記載する場合には複数形も包含し、従って、本願では2種以上のリン脂質又は2種以上の溶解補助剤の組合せ(例えば混合物)も明白に想定する。溶解補助剤又は溶解補助剤とリン脂質の組合せは非リン脂質界面活性剤等の他の原料と同様にABT−263の可溶化も助長すると思われる。
【0077】
任意の医薬的に許容可能なリン脂質又はリン脂質混合物を使用することができる。一般に、このようなリン脂質は加水分解後にリン酸、脂肪酸、アルコール及び窒素性塩基となるリン酸エステルである。医薬的に許容可能なリン脂質としては、限定されないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン及びホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。1実施形態において、組成物は例えば天然レシチンに由来するホスファチジルコリンを含有する。卵黄等の動物源を含む任意レシチン源を使用することができるが、一般には植物源が好ましい。大豆は本発明で使用するホスファチジルコリンを提供することができる特に豊かなレシチン源である。
【0078】
例えば、リン脂質の適量は封入液の重量に対して約15%から約60%、例えば約20%から約45%であるが、特定状況ではこの範囲を上回る量又は下回る量が有用な場合もある。
【0079】
溶解補助剤の成分として有用な原料としては、グリコール、グリコリド及びグリセリドが挙げられる。
【0080】
グリコールは一般にソフトカプセルシェルを使用する場合のみに適しており、ハードゼラチンシェル等のハードシェルには不適合性となる傾向がある。本発明のソフトカプセル剤に適したグリコールとしては、プロピレングリコールと分子量約200から約1,000g/molのポリエチレングリコール(PEG)(例えば平均分子量約400g/molのPEG400)が挙げられる。このようなグリコールはABT−263の溶解度を比較的高くすることができるが、場合により、ABT−263はこのようなグリコールの存在下で溶解している時にある程度まで化学的分解(例えばスルホキシド形成)を示す場合がある。これは溶液の経時変色により明白に確認できる。担体のグリコール濃度が高いほど、ABT−263の分解傾向は高まると思われる。従って、1実施形態では、封入液の重量に対して少なくとも約1%から約50%未満、例えば約30%未満、約20%未満、約15%未満又は約10%未満の総グリコール量で1種以上のグリコールが存在する。別の実施形態において、担体は実質的にグリコールを含有しない。
【0081】
グリコリドは1種以上の有機酸(例えば中鎖から長鎖脂肪酸)でエステル化されたプロピレングリコールやPEG等のグリコールである。適切な例としては、モノカプリル酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール及びジラウリン酸プロピレングリコール製品が挙げられ、例えば夫々Abitec Corp.の製品であるCapmul PG−8(登録商標)、Capmul PG−12(登録商標)及びCapmul PG−2L(登録商標)、並びにこれらと実質的に同等の製品が挙げられる。
【0082】
適切なグリセリドとしては、限定されないが、中鎖から長鎖モノ、ジ及びトリグリセリドが挙げられる。本願で「中鎖」なる用語は各々炭素原子数が約6よりも多く、約12よりも少ない炭化水素鎖(例えばCからC10鎖)を意味する。従って、カプリリル鎖とカプリル鎖を含むグリセリド材料(例えばカプリル酸/カプリン酸モノ、ジ及び/又はトリグリセリド)が本願の「中鎖」グリセリド材料の例である。本願の「長鎖」なる用語は各々炭素原子数が少なくとも約12(例えば約12から約18)の炭化水素鎖を意味し、例えばラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、オレイル、リノレイル及びリノレニル鎖が挙げられる。グリセリド材料内の中から長鎖炭化水素基は飽和でもよいし、モノ又はポリ不飽和でもよい。
【0083】
1実施形態において、封入液は溶解補助剤の主成分として1種以上の中鎖トリグリセリドを含有する。中鎖トリグリセリド材料の適切な1例はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド製品であり、例えばAbitec Corp.の製品であるCaptex 355 EP(登録商標)及びこれと実質的に同等の製品が挙げられる。場合により、この実施形態の溶解補助剤の別の主成分として、封入液は更に1種以上の中鎖モノ及び/又はジグリセリドを含有する。このような成分の適切な1例はカプリル酸/カプリン酸モノ及びジグリセリド製品であり、例えばSasol Germany GmbHの製品であるImwitor 742(登録商標)及びこれと実質的に同等の製品が挙げられる。
【0084】
溶解補助剤の主成分として1種以上のグリセリドが存在する場合には、グリセリドの適切な合計量はリン脂質を可溶化するために有効であり且つ他の賦形剤と共にABT−263を溶解状態に維持するために有効な量である。例えば、封入液の重量に対して約15%から約60%、例えば約20%から約45%の総グリセリド量で中鎖モノ、ジ及びトリグリセリド等のグリセリドが存在することができるが、特定状況ではこの範囲を上回る量又は下回る量が有用な場合もある。1実施形態において、封入液は約7から約30重量%、例えば約10から約25重量%の中鎖トリグリセリドと、約7から約30重量%、例えば約10から約25重量%の中鎖モノ及びジグリセリドを含有する。
【0085】
好都合なことに、本発明の組成物で使用するのに適したリン脂質/溶解補助剤組合せを含む予混合製品が入手可能である。なお、このような製品を含有する組成物も本発明により採用されるが、このような組成物に限定するものではない。本発明の組成物の製造し易さを改善するには予混合リン脂質/溶解補助剤製品が有利であると思われる。
【0086】
予混合リン脂質+溶解補助剤製品の具体例は、重量換算で53%以上のホスファチジルコリンと、6%以下のリゾホスファチジルコリンと、約29%の中鎖トリグリセリドと、3〜6%(典型的には約5%)のエタノールと、約3%のヒマワリ油由来モノ及びジグリセリドと、約2%のオレイン酸と、約0.2%のパルミチン酸アスコルビルを含有するPhospholipid GmbHの製品であるPhosal 53 MCT(登録商標)である。
【0087】
別の具体例は、可溶化剤系中に70重量%以上のホスファチジルコリンを含有するLipoid GmbHの製品であるLipoid S75(登録商標)である。これを更に例えば30/70重量/重量混合物として中鎖トリグリセリドとブレンドすると、重量換算で20%以上のホスファチジルコリンと、2〜4%のホスファチジルエタノールアミンと、1.5%以下のリゾホスファチジルコリンと、67から73%の中鎖トリグリセリドを含有する製品(「Lipoid S75(登録商標)MCT」)が得られる。
【0088】
予混合リン脂質+溶解補助剤製品の更に別の具体例は、重量換算で50%以上のホスファチジルコリンと、6%以下のリゾホスファチジルコリンと、約35%のプロピレングリコールと、約3%のヒマワリ油由来モノ及びジグリセリドと、約2%の大豆脂肪酸と、約2%のエタノールと、約0.2%のパルミチン酸アスコルビルを含有するPhospholipid GmbHの製品であるPhosal 50 PG(登録商標)であり、この場合には本発明のソフトカプセル剤のみに適している。
【0089】
これらの予混合製品の各々のホスファチジルコリン成分は大豆レシチンに由来する。実質的に同等の組成をもつ製品も他の業者から入手可能であると思われる。この文脈で「実質的に同等の組成」をもつ製品とは、本願に記載する製品の利用に関して性質に実質的な相違を示さないようにその原料リスト及び原料の相対量において参照組成と十分に類似する組成をもつことを意味する。
【0090】
封入液は更に医薬的に許容可能な非リン脂質界面活性剤を含有する。当業者は本願に記載する情報に基づいて本発明のカプセル剤で使用するのに適した界面活性剤を選択することができよう。このような界面活性剤は例えばカプセル剤から胃腸管の水性環境への放出後の封入液の分散の向上を含む各種機能を発揮することができる。従って、1実施形態において、非リン脂質界面活性剤は実際の胃腸液又は擬似胃腸液への分散及び/又は乳化を強化する分散剤及び/又は乳化剤である。例えば、封入液の重量に対して約7%から約30%、例えば約10%から約25%の量のポリソルベート(ポリオキシエチレンソルビタンエステル)(例えばポリソルベート80(例えばUniqemaからTween(登録商標)80として市販されているもの))等の界面活性剤を加えることができる。
【0091】
ABT−263は酸化環境でスルホキシドの形成を含めて分解を受け易いため、酸化防止剤を組成物に加えることが望ましい。医薬組成物中で使用される酸化防止剤は最も典型的には三重項もしくは一重項酸素、スーパーオキシド、過酸化物及び遊離ヒドロキシルラジカル等の酸化種の生成を抑制する物質、又はこのような酸化種を生成につれて捕捉する物質である。これらの類の広く使用されている酸化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、パルミチン酸レチニル、トコフェロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸及びパルミチン酸アスコルビルが挙げられる。しかし、本発明者らは少なくとも一部の広く使用されている酸化防止剤が本願に記載するようなカプセル封入液体製剤中の過剰のスルホキシド形成からABT−263を防ぐためには無効であることを見出した。
【0092】
例えば、表3に示すように、本願で「IPT−253」と呼ぶ溶媒(20% Imwitor 742(登録商標)、50% Phosal 53 MCT(登録商標)、30% Tween(登録商標)80)に溶解したABT−263遊離塩基の15重量%溶液に0.2重量%のBHAを加えた場合、ヘッドスペースの窒素パージを実施しない40℃の4週間安定性試験ではスルホキシド形成に無効であることが判明した。この試験の詳細な報告については本願の実施例7に記載する。
【0093】
【表3】

【0094】
これに対して、有効であることが判明した酸化防止剤は含硫黄化合物であり、式:
【0095】
【化5】

(式中、
nは0、1又は2であり;
はSであり;
はNHR、OH又はHであり、ここでRはアルキル又はアルキルカルボニルであり;
はCOOR又はCHOHであり、ここでRはH又はアルキルであり;
はH又はアルキルであり;
上記アルキル基は独立して、場合により独立してカルボキシル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノ及びアルキルカルボニルアミノから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換されている)の化合物;その医薬的に許容可能な塩;又はYがSであり、RがHである場合にはその−S−S−二量体もしくはこのような二量体の医薬的に許容可能な塩;あるいは式:
【0096】
【化6】

[式中、
YはS又はS−Sであり;
及びRは独立してH、アルキル及び(CHから選択され、ここでnは0〜10であり、Rはアリールカルボニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、カルボキシル又はCHRで置換されたアルキルであり、ここでR及びRは独立してCO、CHOH、水素又はNHR10であり、ここでRはH、アルキル、置換のアルキル又はアリールアルキルであり、R10は水素、アルキル、アルキルカルボニル又はアルコキシカルボニルである]の化合物が挙げられる。
【0097】
「アルキル」置換基又は置換基の「アルキル」もしくは「アルコキシ」基形成部分は炭素原子数1から約18であり、直鎖又は分岐鎖から構成することができる。置換基の「アリール」基形成部分はフェニル基であり、置換されていなくてもよいし、1個以上のヒドロキシ、アルコキシ又はアルキル基で置換されていてもよい。
【0098】
は例えばC1−4アルキル(例えばメチル又はエチル)又は(C1−4アルキル)カルボニル(例えばアセチル)である。
【0099】
は例えばH又はC1−18アルキルであり、例えばメチル、エチル、プロピル(例えばn−プロピル又はイソプロピル)、ブチル(例えばn−ブチル、イソブチル又はt−ブチル)、オクチル(例えばn−オクチル又は2−エチルヘキシル)、ドデシル(例えばラウリル)、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル又はオクタデシル(例えばステアリル)である。
【0100】
は典型的にはH又はC1−4アルキル(例えばメチル又はエチル)である。
【0101】
上記式のいずれかの含硫黄酸化防止剤は例えば、天然もしくは合成アミノ酸又はその誘導体(例えばアルキルエステル又はN−アシル誘導体)あるいはこのようなアミノ酸又は誘導体の塩とすることができる。アミノ酸又はその誘導体が天然源に由来する場合には、典型的にはL配置であるが、当然のことながら、必要に応じてD体及びD,L体混合物でもよい。
【0102】
本願で有用なこのような含硫黄化合物の非限定的な例としては、β−アルキルメルカプトケトン、システイン、シスチン、ホモシステイン、メチオニン、チオグリコール酸、チオジプロピオン酸、チオグリセロールとその塩、エステル、アミド及びチオエーテル並びにその組合せが挙げられる。より特定的には、N−アセチルシステイン、N−アセチルシステインブチルエステル、N−アセチルシステインドデシルエステル、N−アセチルシステインエチルエステル、N−アセチルシステインメチルエステル、N−アセチルシステインオクチルエステル、N−アセチルシステインプロピルエステル、N−アセチルシステインステアリルエステル、N−アセチルシステインテトラデシルエステル、N−アセチルシステイントリデシルエステル、N−アセチルメチオニン、N−アセチルメチオニンブチルエステル、N−アセチルメチオニンドデシルエステル、N−アセチルメチオニンエチルエステル、N−アセチルメチオニンメチルエステル、N−アセチルメチオニンオクチルエステル、N−アセチルメチオニンプロピルエステル、N−アセチルメチオニンステアリルエステル、N−アセチルメチオニンテトラデシルエステル、N−アセチルメチオニントリデシルエステル、システイン、システインブチルエステル、システインドデシルエステル、システインエチルエステル、システインメチルエステル、システインオクチルエステル、システインプロピルエステル、システインステアリルエステル、システインテトラデシルエステル、システイントリデシルエステル、シスチン、シスチンジブチルエステル、シスチンジ(ドデシル)エステル、シスチンジエチルエステル、シスチンジメチルエステル、シスチンジオクチルエステル、シスチンジプロピルエステル、シスチンジステアリルエステル、シスチンジ(テトラデシル)エステル、シスチンジ(トリデシル)エステル、N,N−ジアセチルシスチン、N,N−ジアセチルシスチンジブチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジエチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジ(ドデシル)エステル、N,N−ジアセチルシスチンジメチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジオクチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジプロピルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジステアリルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジ(テトラデシル)エステル、N,N−ジアセチルシスチンジ(トリデシル)エステル、チオジグリコール酸ジブチル、チオジプロピオン酸ジブチル、チオジグリコール酸ジ(ドデシル)、チオジプロピオン酸ジ(ドデシル)、チオジグリコール酸ジエチル、チオジプロピオン酸ジエチル、チオジグリコール酸ジメチル、チオジプロピオン酸ジメチル、チオジグリコール酸ジオクチル、チオジプロピオン酸ジオクチル、チオジグリコール酸ジプロピル、チオジプロピオン酸ジプロピル、チオジグリコール酸ジステアリル、チオジプロピオン酸ジステアリル、チオジグリコール酸ジ(テトラデシル)、チオジプロピオン酸ジ(テトラデシル)、ホモシステイン、ホモシステインブチルエステル、ホモシステインドデシルエステル、ホモシステインエチルエステル、ホモシステインメチルエステル、ホモシステインオクチルエステル、ホモシステインプロピルエステル、ホモシステインステアリルエステル、ホモシステインテトラデシルエステル、ホモシステイントリデシルエステル、メチオニン、メチオニンブチルエステル、メチオニンドデシルエステル、メチオニンエチルエステル、メチオニンメチルエステル、メチオニンオクチルエステル、メチオニンプロピルエステル、メチオニンステアリルエステル、メチオニンテトラデシルエステル、メチオニントリデシルエステル、S−メチルシステイン、S−メチルシステインブチルエステル、S−メチルシステインドデシルエステル、S−メチルシステインエチルエステル、S−メチルシステインメチルエステル、S−メチルシステインオクチルエステル、S−メチルシステインプロピルエステル、S−メチルシステインステアリルエステル、S−メチルシステインテトラデシルエステル、S−メチルシステイントリデシルエステル、チオジグリコール酸、チオジプロピオン酸、チオグリセロール、その異性体及び異性体混合物、並びにその塩からこのような化合物の1種以上を選択することができる。
【0103】
上記化合物の塩は酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリセロリン酸塩、グルタミン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、蓚酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、プロピオン酸塩、琥珀酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、パラトルエンスルホン酸塩及びウンデカン酸塩等の酸付加塩とすることができる。
【0104】
理論に拘束するものではないが、上記に例示したもの等の含硫黄酸化防止剤はそれ自体易酸化性であるため、ABT−263よりも優先的に酸化されることによりABT−263を保護すると一般に考えられる。一般に、ABT−263に許容可能な程度の保護を提供するためのこの作用方式では、酸化防止剤は実質的な量(例えばABT−263に対して少なくとも約1:10のモル比)で存在する必要がある。所定実施形態において、酸化防止剤とABT−263のモル比は約1:10から約2:1、例えば約1:5から約1.5:1である。場合によってはモル比が約1:1、即ち約8:10から約10:8のときに最良の結果が得られよう。
【0105】
上記式の含硫黄酸化防止剤の酸化防止剤効果にも拘わらず、本発明者らはABT−263をその遊離塩基形態で使用する場合に約1:1のモル比ではこのような酸化防止剤が保存後に濁った溶液となる傾向があることを見出した。ABT−263をそのビスHCl塩として含有する溶液では、この傾向はないか又は少なくとも目立たない。
【0106】
しかし、更に別の予想外の発見では、表6(下記実施例3参照)に示すように、ABT−263遊離塩基は脂質溶液中(但し、酸化防止剤の不在下)で製剤化した場合にABT−263ビスHClよりもスルホキシド形成しにくいことが判明した。溶液Aにおける溶媒系はPhosal 53 MCT(登録商標)/エタノール,9:1v/vであり、溶液Bにおける溶媒はLabrafil M 1944 CS(登録商標)/オレイン酸/ポリソルベート80,30%/40%/30%(重量換算)である。(Gattefosseの製品であるLabrafil M 1944 CS(登録商標)はモノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリルを含有する。)ヘッドスペースの窒素パージを実施せずに40℃で3週間試験を実施した。
【0107】
ABT−263はその遊離塩基形態のほうが塩形態よりもスルホキシド形成しにくいという予想外の発見を利用するために、本発明者らは別の類の含硫黄酸化防止剤、即ち亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及びチオ硫酸塩の類の無機酸化防止剤に着目した。面倒なことに、これらの酸化防止剤は低脂溶性であるため、水溶液として封入用溶液に導入しなければならない。水分の存在は最小限にすることが求められる現象に他ならないABT−263溶液中のスルホキシド形成を促進する。水分の添加量を制限するために、本発明の1実施形態では、ABT−263の濃度と等モルになる濃度よりも著しく低い濃度で低脂溶性酸化防止剤を加える。
【0108】
亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩又はチオ硫酸塩酸化防止剤等の低脂溶性酸化防止剤を使用する場合には、封入用溶液中に約1重量%以下、例えば約0.2から約0.8重量%の量の水を添加する。このような少量の水に導入することができる上記のような酸化防止剤の量は典型的には封入用溶液の約0.2重量%以下であり、例えば約0.02から約0.2重量%、又は約0.05から約0.15重量%の量である。
【0109】
製剤に加える水の量を最小限にするためには、例えば少なくとも約10重量%の酸化防止剤を含有する比較的高濃度のストック水溶液として酸化防止剤を提供することが望ましい。しかし、過度に高濃度のストック溶液(例えば約20%以上)を使用すると、その結果、製剤中に固形分の望ましくない沈殿が生じる可能性があることが判明した。ストック溶液中の酸化防止剤の適切な濃度は典型的には約10から約18重量%、例えば約15重量%である。
【0110】
亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及びチオ硫酸塩のナトリウム及びカリウム塩、特にメタ重亜硫酸ナトリウムとメタ重亜硫酸カリウムがこの実施形態による有用な酸化防止剤である。
【0111】
場合により、本発明の組成物は更にキレート剤を含有する。状況によっては、エチレンジアミン四酢酸(EDTAないしエデト酸塩)、カルベジロール、クエン酸とその塩、クエン酸コリン、酒石酸とその塩等のキレート剤は製剤の保存安定性を更に改善することができる。理論に拘束するものではないが、キレート剤は薬剤化合物の酸化的分解を触媒又は他の方法で促進する金属イオンを封鎖することにより酸化防止剤の効力を増強できると考えられる。
【0112】
1実施形態では、場合により例えば封入用溶液の約0.002から約0.02重量%量のEDTA又はその塩(例えばEDTA二ナトリウム又はEDTAカルシウム二ナトリウム)を加える。EDTAは酸化防止剤と同様にストック水溶液として加えることができる。酸化防止剤とEDTAは所望により、同一ストック溶液の成分として加えることができる。
【0113】
驚くべきことに、本願で想定するメタ重亜硫酸ナトリウム等の低脂溶性酸化防止剤の濃度が非常に低いときには(典型的には、この実施形態によるこのような酸化防止剤とABT−263のモル比は約1:20以下である)、本願の実施例12に例証するように、スルホキシド形成は許容可能な限度内に止まることが判明した。
【0114】
過酸化物価の低い製剤原料を選択することによりスルホキシド形成を更に最小限にすることができる。過酸化物価は医薬品賦形剤の周知の特性であり、一般に(本願に示すように)賦形剤1キログラム当たりの過酸化物のミリ当量に対応する単位(meq/kg)で表される。賦形剤によっては過酸化物価が元々低いものもあるが、例えばオレイル部分及び/又はポリオキシエチレン鎖等の不飽和脂肪酸を含有するものは過酸化物源となり得る。例えばポリソルベート80の場合には、過酸化物価が約5以下、例えば約2以下のポリソルベート80源を選択することが好ましい。適切なポリソルベート80源としては、いずれもCrodaの製品であるCrillet 4HP(登録商標)及び超高純度Tween 80(登録商標)が挙げられる。
【0115】
例えば、この実施形態の封入溶液は、
約5から約20重量%のABT−263遊離塩基、
約15から約60重量%のホスファチジルコリン、
約7から約30重量%の中鎖トリグリセリド、
約7から約30重量%の中鎖モノ及びジグリセリド、
約7%から約30%のポリソルベート80界面活性剤、
約0.02から約0.2重量%のメタ重亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸カリウム、
約0.003%から約0.01%のEDTA又はその塩、および
約0.2%から約0.8%の水分を含有する。
【0116】
カプセル剤の保存安定性、安全性又は治療効力に許容不能な程度まで悪影響を与えない限り、場合により他の賦形剤を封入溶液に加えてもよい。しかし、より特定的な実施形態において、封入溶液は上記原料から本質的に構成される。
【0117】
カプセルシェルはハード又はソフトゼラチンを含む任意の医薬的に許容可能な材料とすることができる。カプセルシェルサイズは封入する液体の量に合わせて選択される。例えば、約600mgまでの液体を封入するためにはサイズ0のカプセルシェルを使用することができ、約900mgまでの液体を封入するためにはサイズ00のカプセルシェルを使用することができる。
【0118】
本発明のプロトタイプカプセル剤は、
約50mgのABT−263遊離塩基、
約150mgのホスファチジルコリン、
約75mgの中鎖トリグリセリド、
約90mgの中鎖モノ及びジグリセリド、
約90mgのポリソルベート80界面活性剤、
約0.25mgのメタ重亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸カリウム、
約0.025mgのEDTA又はその塩、および
約2.5mgの水
を含有する溶液をサイズ0のハードゼラチンカプセルシェルの内部に封入したものである。
【0119】
プロトタイプカプセル剤に関する前段落の記載において「約」なる用語は当然のことながら指定量が医薬産業で許容される通常の製造許容差の範囲内で変動可能であることを意味する。
【0120】
本発明のカプセル剤に伴う化学的及び物理的安定性の制約は経口投与時のバイオアベイラビリティに関する更に別の課題となり得る。許容可能なバイオアベイラビリティは例えば最高血漿中濃度(Cmax)及び投与後0時間から24時間まで(AUC0−24)又は0時間から無限大時間まで(AUC0−∞)計算した血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)を含む薬物動態(PK)パラメーターにより表すことができる。例えば、バイオアベイラビリティは例えば経口用量と静脈内(i.v.)用量の差を考慮して適切な溶媒による薬剤のi.v.送達のAUCの百分率として試験組成物の経口送達のAUCを計算するパラメーターFを使用して、百分率として表すことができる。
【0121】
バイオアベイラビリティはヒト又は任意の適切なモデル種でPK試験により測定することができる。この目的には、下記実施例11に例示するようなイヌモデルが一般に適切である。具体的な各種実施形態において、本発明のカプセル剤はイヌモデルで空腹時又は非空腹時の動物に約2.5から約10mg/kgのABT−263を単回投与した場合に少なくとも約30%、少なくとも約35%又は少なくとも約40%から約50%以上までの経口ABT−263バイオアベイラビリティを示す。
【0122】
1例において、カプセル剤は遊離塩基又は塩形態のABT−263と、(a)約25℃で少なくとも約40mg/g、例えば少なくとも約50mg/g、少なくとも約60mg/g、少なくとも約70mg/g、少なくとも約80mg/g又は少なくとも約100mg/gのABT−263の溶解度と、(b)イヌモデルにおける組成物の経口投与後のPKプロファイルとして少なくとも約30%のバイオアベイラビリティを示すPKプロファイルを提供するように選択された賦形剤を含有する。
【0123】
特定実施形態において、カプセル剤は上記のようなプロトタイプカプセル剤又はこれと実質的に生物学的に同等の本発明の別のカプセル剤である。
【0124】
本願で「実質的に生物学的に同等」なる用語は空腹又は非空腹条件下のヒトPK単回又は複数回投与試験で実質的に等しいCmaxと、AUC(例えばAUC0−24又はAUC0−∞)として測定した場合の実質的に等しい暴露量を示すことを意味する。実質的に生物学的に同等であるか否かを比較する組成物は同一用量(ABT−263の場合には遊離塩基相当量として表される)で投与すべきである。比較を行うために複数回投与試験を使用する場合には、Cmax及びAUCの定常状態値を使用する。この文脈において、試験組成物のCmax又はAUCは参照組成物(例えば上記プロトタイプカプセル剤)における対応するパラメーターの80%以上かつ125%以下である場合に「実質的に等しい」。
【0125】
本発明は本願で採用又は記載するようなカプセル剤を製造するために使用される方法に限定されない。任意の適切な製薬法を使用することができる。例えば、上記原料を単に混合(添加順序は重要ではない)して封入用溶液を形成した後、前記溶液をカプセルシェル(例えばハード又はソフトゼラチンカプセルシェル)に封入し、カプセル剤を形成する方法により、本発明のカプセル剤を製造することができる。なお、リン脂質をその固体状態(例えば大豆レシチンの形態)で使用する場合には、先ずリン脂質を溶解補助剤又はその一部で可溶化することが一般に望ましいであろう。その後、必要に応じて撹拌下に単なる混合により他の賦形剤とABT−263を加えればよい。リン脂質と溶解補助剤を含有する予混合製品を使用すると、組成物の製造を簡略化することができる。例えば、Phosal 53 MCT(登録商標)又はLipoid S75(登録商標)MCTの場合のように、リン脂質はホスファチジルコリンを含むことができ、これと予混合された溶解補助剤は中鎖トリグリセリドを含むことができる。例えば、予混合製品は約50%から約75%のホスファチジルコリンと、約15%から約30%の中鎖トリグリセリドを含有する。
【0126】
封入用溶液がメタ重亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸カリウム等の低脂溶性含硫黄酸化防止剤を含有する場合には、製法を調整する必要がある。このような溶液を充填したカプセル剤の具体的な製造方法は以下の工程を含む。
【0127】
リン脂質と溶解補助剤の少なくとも一部を含有する溶媒にABT−263遊離塩基又はその医薬的に許容可能な塩(例えばABT−263ビスHCl)から本質的に構成されるAPI(医薬品有効成分)を溶解し、ABT−263の脂質溶液を得る。上記のように、リン脂質と溶解補助剤を含有する予混合製品をAPIの溶解用溶媒として使用することができる。
【0128】
ABT−263をその遊離塩基形態で製剤化しようとする場合には、任意の固体形態のABT−263遊離塩基をAPIとして利用することができる。しかし、結晶形態(例えば溶媒和又は非溶媒和結晶形態)のABT−263遊離塩基をAPIとして使用することが好ましいと一般に判断されよう。この方法の特定実施形態では、本願に記載するようなI型又はII型結晶ABT−263等の非溶媒和結晶形態をAPIとして使用する。
【0129】
非リン脂質界面活性剤と場合により溶解補助剤の残余を(APIの溶解前又はそれと同時に)溶解補助剤又は(APIの溶解後に)脂質溶液と混合する。上記のように、非リン脂質界面活性剤は例えばポリソルベート80等のポリソルベートである。溶解補助剤の残余はABT−263を溶解するためにリン脂質と共に使用される溶解補助剤の部分と同一材料でもよいし、あるいは別の材料でもよい。例えば、ABT−263を溶解するためにリン脂質と共に使用される溶解補助剤の部分は1種以上の中鎖トリグリセリドを含むことができ、この工程で混合される溶解補助剤の残余は1種以上の中鎖モノ及び/又はジグリセリド(例えばImwitor 742(登録商標)等のカプリル酸/カプリン酸モノ及びジグリセリド製品)を含むことができる。
【0130】
別に、低脂溶性含硫黄酸化防止剤を水に溶解し、ストック水溶液を調製する。上記に説明したように、約10から約18重量%濃度のストック溶液が一般に適切であると判断されよう。
【0131】
次に、典型的には非リン脂質界面活性剤の添加後にストック水溶液を脂質溶液と混合し、封入用溶液を得る。
【0132】
最終工程で、得られた溶液を任意の公知カプセル化方法によりカプセルシェルに封入する。
【0133】
本願に概説又は具体的に記載する組成物を含めて本願で採用される組成物はABT−263を対象に経口送達するために有用である。従って、ABT−263を対象に送達するための本発明の方法は上記のようなカプセル剤を1錠から複数錠経口投与する段階を含む。
【0134】
対象はヒト又は非ヒト(例えば家畜、動物園飼育動物、使役動物、コンパニオン動物、又はモデルとして使用される実験用動物)とすることができるが、重要な1実施形態において、対象は例えばアポトーシス不全及び/又は抗アポトーシスBcl−2ファミリー蛋白質の過剰発現を特徴とする疾患を治療するために薬剤を必要とするヒト患者である。ヒト対象は男性でも女性でもよく、年齢を問わないが、典型的には成人である。
【0135】
組成物は通常では治療有効1日用量のABT−263を提供する量を投与される。本願で「1日用量」なる用語は投与頻度に関係なく、1日当たりの薬剤投与量を意味する。例えば、対象に150mgの単位用量を1日2回投与する場合には、1日用量は300mgである。「1日用量」なる用語の使用は当然のことながら指定投与量を必ず1日1回投与するという意味ではない。しかし、特定実施形態では、投与頻度は1日1回(q.d.)であり、この実施形態では1日用量と単位用量は同一である。
【0136】
治療有効用量を構成する数値は対象(対象の種及び体重を含む)、治療しようとする疾患(例えば特定種の癌)、疾患のステージ及び/又は重篤度、個々の対象の薬剤耐性、薬剤を単独療法で投与するか又は1種以上の他の薬剤(例えば他の癌治療用化学療法剤)と併用投与するか、並びに他の因子により異なる。従って、ABT−263の1日用量は広い範囲をとることができ、例えば約10から約1,000mgが挙げられる。特定状況ではこの範囲を上回る量又は下回る量の1日用量が適切な場合もある。当然のことながら、本願で「治療有効」用量と言うときには、必ずしもこのような用量を1回だけ投与した場合に薬剤が治療に有効である必要はなく、典型的には治療効力は適切な投与頻度及び期間を含むレジメンに従って反復投与される組成物により異なる。選択される1日用量は癌治療に関して効果を生じるために十分であるが、許容できない程度又は耐えられない程度まで副作用を生じるために十分とならないことが非常に好ましい。適切な治療有効用量は上記因子等の因子を考慮して本願の開示と本願に引用する技術に基づいて過度の実験を行わずに通常の知識をもつ医師が選択することができる。医師は例えば治療中の癌患者に先ず比較的少量の1日用量を処方し、数日間又は数週間かけて用量を漸増し、副作用の危険を減らすことができる。
【0137】
例えば、ABT−263の適切な用量は一般に約25から約1、000mg/日、より典型的には約50から約500mg/日又は約200から約400mg/日、例えば約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450又は約500mg/日を約3時間から約7日間、例えば約8時間から約3日間、又は約12時間から約2日間の平均投与間隔で投与する。大半の場合には、1日1回(q.d.)投与レジメンが適切である。
【0138】
本願で「平均投与間隔」とは所定期間(例えば1日又は1週間)をこの所定期間に投与される単位用量の投与回数で割った値として定義される。例えば、薬剤を午前8時頃と、正午頃と、午後6時頃の1日3回投与する場合には、平均投与間隔は8時間である(24時間÷3)。平均投与間隔を定義する目的では、一度に投与される1錠又は複数錠(例えば2から約10錠)のカプセル剤を単位用量とみなす。
【0139】
1日投与量と投与間隔は、所定実施形態ではABT−263の血漿中濃度を約0.5から約10μg/mlの範囲に維持するように選択することができる。従って、このような実施形態によるABT−263療法中では、定常状態最高血漿中濃度(Cmax)を一般に約10μg/ml以下とすべきであり、定常状態最低血漿中濃度(Cmin)を一般に約0.5μg/ml以上とすべきである。更に、定常状態で約5以下、例えば約3以下のCmax/Cmin比を得るために有効な1日投与量と平均投与間隔を上記範囲内で選択することが望ましいと判断されよう。当然のことながら、投与間隔が長いほどCmax/Cmin比は大きくなる傾向がある。例えば、この方法では定常状態で約3から約8μg/mlのABT−263のCmaxと約1から約5μg/mlのCminを目標とすることができる。CmaxとCminの定常状態値は、限定されないが、例えば米国食品医薬品局(FDA)等の規制当局で公認されるプロトコルを含む標準プロトコルに従って実施されるヒトPK試験で測定することができる。
【0140】
典型的には嚥下プロセスを容易にするために水又は他の飲用液体と共に1錠から複数錠のカプセル剤を丸ごと嚥下することができる。
【0141】
本発明の組成物は典型的には食事の影響を僅かしか示さないので、この実施形態による投与は食事の有無を問わず、即ち非空腹状態でも空腹状態でもよい。一般には非空腹時の患者に本発明の組成物を投与することが好ましい。
【0142】
理論に拘束するものではないが、ABT−263の治療効力は例えばBcl−2、Bcl−X又はBcl−w等のBcl−2ファミリー蛋白質のBH3結合溝を塞ぐことにより、この蛋白質の抗アポトーシス作用を抑制するようにこの蛋白質と結合できることが少なくとも一因であると考えられる。
【0143】
本発明の更に他の実施形態では、アポトーシス不全及び/又は抗アポトーシスBcl−2ファミリー蛋白質の過剰発現を特徴とする疾患の治療方法として、疾患に罹患した患者に本願に記載するように液体充填カプセル剤に製剤化した治療有効量のABT−263を投与する段階を含む方法が提供される。
【0144】
本発明のカプセル製剤は単独療法又は例えば他の化学療法剤や電離放射線との併用療法で使用するのに適している。本発明は1日1回レジメンで他の経口投与薬で治療中の患者に好都合なレジメンである1日1回の経口投与を可能にするという点で特に有利である。経口投与は患者自身又は患者の家庭の介護者により容易に実施され、病院又は居宅介護施設でも患者に好都合な投与経路である。
【0145】
併用療法としては、例えばボルテゾミブ、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、フルダラビン、ヒドロキシドキソルビシン、イリノテカン、パクリタキセル、ラパマイシン、リツキシマブ、ビンクリスチン等の1種以上、例えばCHOP(シクロホスファミド+ヒドロキシドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン)、RCVP(リツキシマブ+シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾン)、R−CHOP(リツキシマブ+CHOP)又はDA−EPOCH−R(用量調整したエトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン及びリツキシマブ)等の多剤療法と本発明のABT−263組成物の併用投与が挙げられる。
【0146】
ABT−263組成物は、限定されないが、血管新生阻害剤、抗増殖剤、他のアポトーシス促進剤(例えば、Bcl−xL、Bcl−w及びBfl−1阻害剤)、細胞死受容体経路のアクチベーター、BiTE(二重特異性T細胞誘引)抗体、二重可変領域結合性蛋白質(DVD)、アポトーシス蛋白質阻害剤(IAP)、マイクロRNA、マイトジェン活性化細胞外シグナル制御キナーゼ阻害剤、多価結合性蛋白質、ポリADP(アデノシン二リン酸)リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、低分子干渉リボ核酸(siRNA)、キナーゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、ポロ様キナーゼ阻害剤、bcr−ablキナーゼ阻害剤、増殖因子阻害剤、COX−2阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、抗代謝剤、インターカレーティング抗生物質、白金含有化学療法剤、増殖因子阻害剤、電離放射線、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答調節剤、免疫療法剤、抗体、ホルモン療法剤、レチノイド、デルトイド、植物アルカロイド、プロテオソーム阻害剤、HSP−90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、MEK阻害剤、CDK阻害剤、ErbB2受容体阻害剤、mTOR阻害剤及び他の抗腫瘍剤を含む1種以上の治療剤との併用療法で投与することができる。
【0147】
血管新生阻害剤としては、限定されないが、EGFR阻害剤、PDGFR阻害剤、VEGFR阻害剤、TIE2阻害剤、IGF1R阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP−2)阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP−9)阻害剤及びトロンボスポンジンアナログが挙げられる。
【0148】
EGFR阻害剤の例としては、限定されないが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ、EMD−7200、ABX−EGF、HR3、IgA抗体、TP−38(IVAX)、EGFR融合蛋白質、EGFワクチン、抗EGFRイムノリポソーム及びラパチニブが挙げられる。
【0149】
PDGFR阻害剤の例としては、限定されないが、CP−673451とCP−868596が挙げられる。
【0150】
VEGFR阻害剤の例としては、限定されないが、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、CP−547632、アキシチニブ、バンデタニブ、AEE788、AZD−2171、VEGFトラップ、バタラニブ、ペガプタニブ、IM862、パゾパニブ、ABT−869及びアンギオザイムが挙げられる。
【0151】
ABT−263以外のBcl−2ファミリー蛋白質阻害剤としては、限定されないが、AT−101((−)ゴシポール)、Genasense(登録商標)Bcl−2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(G3139ないしオブリメルセン)、IPI−194、IPI−565、ABT−737、GX−070(オバトクラックス)等が挙げられる。
【0152】
細胞死受容体経路のアクチベーターとしては、限定されないが、TRAIL、細胞死受容体(例えばDR4及びDR5)を標的とする抗体又は他の物質(例えばアポマブ)、コナツムマブ、ETR2−ST01、GDC0145(レキサツムマブ)、HGS−1029、LBY−135、PRO−1762及びトラスツズマブが挙げられる。
【0153】
トロンボスポンジンアナログの例としては、限定されないが、TSP−1、ABT−510、ABT−567及びABT−898が挙げられる。
【0154】
オーロラキナーゼ阻害剤の例としては、限定されないが、VX−680、AZD−1152及びMLN−8054が挙げられる。
【0155】
ポロ様キナーゼ阻害剤の1例としては、限定されないが、BI−2536等が挙げられる。
【0156】
bcr−ablキナーゼ阻害剤の例としては、限定されないが、イマチニブとダサチニブが挙げられる。
【0157】
白金含有剤の例としては、限定されないが、シスプラチン、カルボプラチン、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン及びサトラプラチンが挙げられる。
【0158】
mTOR阻害剤の例としては、限定されないが、CCI−779、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、RAD001及びAP−23573が挙げられる。
【0159】
HSP−90阻害剤の例としては、限定されないが、ゲルダナマイシン、ラディシコール、17−AAG、KOS−953、17−DMAG、CNF−101、CNF−1010、17−AAG−nab、NCS−683664、エフングマブ、CNF−2024、PU3、PU24FC1、VER−49009、IPI−504、SNX−2112及びSTA−9090が挙げられる。
【0160】
HDAC阻害剤の例としては、限定されないが、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、MS−275、バルプロ酸、TSA、LAQ−824、トラポキシン及びデプシペプチドが挙げられる。
【0161】
MEK阻害剤の例としては、限定されないが、PD−325901、ARRY−142886、ARRY−438162及びPD−98059が挙げられる。
【0162】
CDK阻害剤の例としては、限定されないが、フラボピリドール、MCS−5A、CVT−2584、セリシクリブ、ZK−304709、PHA−690509、BMI−1040、GPC−286199、BMS−387032、PD−332991及びAZD−5438が挙げられる。
【0163】
COX−2阻害剤の例としては、限定されないが、セレコキシブ、パレコキシブ、デラコキシブ、ABT−963、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、BMS−347070、RS57067、NS−398、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、SD−8381、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロール、T−614、JTE−522、S−2474、SVT−2016、CT−3及びSC−58125が挙げられる。
【0164】
NSAIDの例としては、限定されないが、サルサレート、ジフルニサル、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、ピロキシカム、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ケトロラク及びオキサプロジンが挙げられる。
【0165】
ErbB2受容体阻害剤の例としては、限定されないが、CP−724714、カネルチニブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、TAK−165、ロナファルニブ、GW−282974、EKB−569、PI−166、dHER2、APC−8024、抗HER/2neu二重特異性抗体、B7.her2IgG3、HER2三官能性二重特異性抗体、mAB AR−209及びmAB 2B−1が挙げられる。
【0166】
アルキル化剤の例としては、限定されないが、窒素マスタードN−オキシド、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、ブスルファン、ミトブロニトール、カルボコン、チオテパ、ラニムスチン、ニムスチン、Cloretazine(登録商標)(ラロムスチン)、AMD−473、アルトレタミン、AP−5280、アパジコン、ブロスタリシン、ベンダムスチン、カルムスチン、エストラムスチン、フォテムスチン、グルホスファミド、KW−2170、マホスファミド、ミトラクトール、ロムスチン、トレオスルファン、ダカルバジン及びテモゾロミドが挙げられる。
【0167】
抗代謝剤の例としては、限定されないが、メトトレキサート、6−メルカプトプリンリボシド、メルカプトプリン、5−フルオロウラシル(5−FU)単剤又はロイコボリンとの併用、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、エノシタビン、S−1、ペメトレキセド、ゲムシタビン、フルダラビン、5−アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、デシタビン、エフロルニチン、エチニルシチジン、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、TS−1、メルファラン、ネララビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド二ナトリウム、ペントスタチン、ペリトレキソール、ラルチトレキセド、トリアピン、トリメトレキサート、ビダラビン、ミコフェノール酸、オクホスファート、ペントスタチン、チアゾフリン、リバビリン、EICAR、ヒドロキシ尿素及びデフェロキサミンが挙げられる。
【0168】
抗生物質の例としては、限定されないが、インターカレーティング抗生物質であるアクラルビシン、アクチノマイシンD、アムルビシン、アナマイシン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(リポソームドキソルビシンを含む)、エルサミトルシン、エピルビシン、ガラルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ネモルビシン、ネオカルジノスタチン、ペプロマイシン、ピラルビシン、レベッカマイシン、スチマラマー、ストレプトゾシン、バルルビシン、ジノスタチン及びその組合せが挙げられる。
【0169】
トポイソメラーゼ阻害剤の例としては、限定されないが、アクラルビシン、アモナフィド、ベロテカン、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、アムサクリン、デクスラゾキサン、ジフロモテカン、塩酸イリノテカン、エドテカリン、エピルビシン、エトポシド、エクサテカン、ベカテカリン、ギマテカン、ルルトテカン、オラテシン、BN−80915、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピクサントロン、ルビテカン、ソブゾキサン、SN−38、タフルポシド及びトポテカンが挙げられる。
【0170】
抗体の例としては、限定されないが、リツキシマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブ、CD40特異抗体及びIGF1R特異抗体、chTNT−1/B、デノスマブ、エドレコロマブ、WXG250、ザノリムマブ、リンツズマブ並びにチシリムマブが挙げられる。
【0171】
ホルモン療法剤の例としては、限定されないが、炭酸セベラマー、トリロスタン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、モドラスタン、エクセメスタン、酢酸ロイプロリド、ブセレリン、セトロレリクス、デスロレリン、ヒストレリン、アナストロゾール、フォスレリン、ゴセレリン、デガレリクス、ドキセルカルシフェロール、ファドロゾール、フォルメスタン、タモキシフェン、アルゾキシフェン、ビカルタミド、アバレリクス、トリプトレリン、フィナステリド、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、トリロスタン、ラソフォキシフェン、レトロゾール、フルタミド、メゲストロール、ミフェプリストン、ニルタミド、デキサメタゾン、プレドニゾン及び他のグルココルチコイドが挙げられる。
【0172】
レチノイド又はデルトイドの例としては、限定されないが、セオカルシトール、レキサカルシトール、フェンレチニド、アリトレチノイン、トレチノイン、ベキサロテン及びLGD−1550が挙げられる。
【0173】
植物アルカノイドの例としては、限定されないが、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン及びビノレルビンが挙げられる。
【0174】
プロテオソーム阻害剤の例としては、限定されないが、ボルテゾミブ、MG−132、NPI−0052及びPR−171が挙げられる。
【0175】
免疫療法剤の例としては、限定されないが、インターフェロン及び多数の他の免疫増強剤が挙げられる。インターフェロンとしては、インターフェロンα、インターフェロンα2a、インターフェロンα2b、インターフェロンβ、インターフェロンγ1a、インターフェロンγ1b、インターフェロンγ−n1及びその組合せ等が挙げられる。他の免疫療法剤としては、フィルグラスチム、レンチナン、シゾフィラン、BCG生ワクチン、ウベニメクス、WF−10(テトラクロロデカオキシドないしTCDO)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、BAM−002、ダカルバジン、ダクリズマブ、デニロイキン、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブ、イミキモド、レノグラスチム、メラノーマワクチン、モルグラモスチム、サルグラモスチム、タソネルミン、テセロイキン、サイマルファシン、トシツモマブ、Lorus Pharmaceuticalsの免疫療法剤であるVirulizin(登録商標)、Z−100(丸山ワクチンないしSSM)、Zevalin(登録商標)(90Y−イブリツモマブチウキセタン)、エプラツズマブ、ミツモマブ、オレゴボマブ、ペムツモマブ、Provenge(登録商標)(シプロイセル−T)、テセロイキン、Therocys(登録商標)(Bacillus Calmette−Guerin)、細胞傷害性リンパ球抗原4(CTLA4)抗体及びCTLA4を阻害することが可能な物質(例えばMDX−010)が挙げられる。
【0176】
生体応答調節剤の例は組織細胞に抗腫瘍活性をもたせるように生存、増殖又は分化等の生体の防御メカニズムないし生体応答を調節する物質である。このような物質としては、限定されないが、クレスチン、レンチナン、シゾフィラン、ピシバニール、PF−3512676及びウベニメクスが挙げられる。
【0177】
ピリミジンアナログの例としては、限定されないが、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラルチトレキセド、シタラビン、シトシンアラビノシド、フルダラビン、トリアセチルウリジン、トロキサシタビン及びゲムシタビンが挙げられる。
【0178】
プリンアナログの例としては、限定されないが、メルカプトプリンとチオグアニンが挙げられる。
【0179】
抗有糸分裂剤の例としては、限定されないが、N−(2−((4−ヒドロキシフェニル)アミノ)ピリジン−3−イル)−4−メトキシベンゼンスルホンアミド、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、エポチロンD、PNU−100940、バタブリン、イクサベピロン、パツピロン、XRP−9881、ビンフルニン及びZK−EPO(合成エポチロン)が挙げられる。
【0180】
放射線療法の例としては、限定されないが、外照射療法(XBRT)、遠隔照射療法、近接照射療法、密封線源放射線療法及び非密封線源放射線療法が挙げられる。
【0181】
BiTE抗体は同時に2つの細胞と結合することによりT細胞に癌細胞を攻撃させる二重特異性抗体である。従って、T細胞は標的癌細胞を攻撃する。BiTE抗体の例としては、限定されないが、アデカツムマブ(Micromet MT201)、ブリナツモマブ(Micromet MT103)等が挙げられる。理論に拘束するものではないが、T細胞が標的癌細胞のアポトーシスを誘発するメカニズムの1つはパーフォリンとグランザイムBを含む細胞溶解性顆粒成分のエキソサイトーシスによる。この点で、Bcl−2はパーフォリンとグランザイムBの両方によるアポトーシスの誘導を弱めることが分かっている。これらのデータは、Bcl−2の阻害が癌細胞を標的とした場合にT細胞により誘発される細胞傷害作用を強化し得ることを示唆している(Sutton et al.(1997)J.Immunol.158:5783−5790)。
【0182】
SiRNAは内在性RNA塩基又は化学的に修飾されたヌクレオチドをもつ分子である。修飾は細胞活性を損なわず、高い安定性及び/又は高い細胞効力を付与する。化学修飾の例としては、ホスホロチオエート基、2’−デオキシヌクレオチド、2’−OCH含有リボヌクレオチド、2’−F−リボヌクレオチド、2’−メトキシエチルリボヌクレオチド、その組合せ等が挙げられる。siRNAは種々の長さ(例えば10から200bp)と構造(例えばヘアピン、1本/2本鎖、バルジ、ニック/ギャップ、ミスマッチ)をとることができ、強い遺伝子サイレンシングを起こすように細胞内でプロセシングされる。2本鎖siRNA(dsRNA)は各鎖のヌクレオチド数が同一(平滑末端)でもよいし、不斉末端(オーバーハング)でもよい。1〜2ヌクレオチドのオーバーハングがセンス及び/又はアンチセンス鎖上に存在してもよいし、所与鎖の5’末端及び/又は3’末端に存在してもよい。例えば、Mcl−1を標的とするsiRNAはABT−263の活性を増強することが分かっている(Tse et al.(2008),前出,及びその引用文献)。
【0183】
多価結合性蛋白質は2個以上の抗原結合部位を含む結合性蛋白質である。多価結合性蛋白質は3個以上の抗原結合部位をもつように作製され、一般に天然に存在しない抗体である。「多重特異性結合性蛋白質」なる用語は2個以上の相互に関連する標的又は関連しない標的と結合することが可能な結合性蛋白質を意味する。二重可変領域(DVD)結合性蛋白質は2個以上の抗原結合部位を含む四価以上の結合性蛋白質である。このようなDVDは単一特異性(即ち1個の抗原と結合可能)でもよいし、多重特異性(即ち2個以上の抗原と結合可能)でもよい。2本の重鎖DVDポリペプチドと2本の軽鎖DVDポリペプチドを含むDVD結合性蛋白質をDVDIgと言う。DVDIgの各半分は重鎖DVDポリペプチドと、軽鎖DVDポリペプチドと、2個の抗原結合部位を含む。各結合部位は重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、抗原結合部位当たり合計6個のCDRが抗原結合に関与する。
【0184】
PARP阻害剤としては、限定されないが、ABT−888、オラパリブ、KU−59436、AZD−2281、AG−014699、BSI−201、BGP−15、INO−1001、ONO−2231等が挙げられる。
【0185】
上記の追加又は代用として、本発明の組成物はABT−100、N−アセチルコルヒノール−O−ホスファート、アシトレチン、AE−941、アグリコンプロトパナキサジオール、アルグラビン、三酸化ヒ素、AS04アジュバント吸着HPVワクチン、L−アスパラギナーゼ、アタメスタン、アトラセンタン、AVE−8062、ボセンタン、カンホスファミド、Canvaxin(登録商標)、カツマキソマブ、CeaVac(登録商標)、セルモロイキン、コンブレタスタチンA4P、コンツスゲンラデノベク、Cotara(登録商標)、シプロテロン、デオキシコホルマイシン、デクスラゾキサン、N,N−ジエチル−2−(4−(フェニルメチル)フェノキシ)エタンアミン、5,6−ジメチルキサンテノン−4−酢酸、ドコサヘキサエン酸/パクリタキセル、ジスコデルモリド、エファプロキシラル、エンザスタウリン、エポチロンB、エチニルウラシル、エクシスリンド、ファリマレブ、Gastrimmune(登録商標)、GMKワクチン、GVAX(登録商標)、ハロフジノン、ヒスタミン、ヒドロキシカルバミド、イバンドロン酸、イブリツモマブチウキセタン、IL−13−PE38、イナリマレブ、インターロイキン4、KSB−311、ランレオチド、レナリドミド、ロナファルニブ、ロバスタチン、5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸、ミファムルチド、ミルテフォシン、モテキサフィン、オブリメルセン、OncoVAX(登録商標)、Osidem(登録商標)、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子、パクリタキセルポリグルメクス、パミドロン酸、パニツムマブ、ペグインターフェロンα、ペグアスパラガーゼ、フェノキソジオール、ポリ(I)−ポリ(C12U)、プロカルバジン、ランピルナーゼ、レビマスタット、組換え四価HPVワクチン、スクアラミン、スタウロスポリン、STn−KLHワクチン、T4エンドヌクレアーゼV、タザロテン、6,6’,7,12−テトラメトキシ−2,2’−ジメチル−1β−ベルバマン、サリドマイド、TNFerade(登録商標)、131I−トシツモマブ、トラベクテジン、トリアゾン、腫瘍壊死因子、Ukrain(登録商標)、ワクシニア−MUC−1ワクチン、L−バリン−L−ボロプロリン、Vitaxin(登録商標)、ビテスペン、ゾレンドロン酸及びゾルビシンから選択される1種以上の抗腫瘍剤との併用療法で投与することもできる。
【0186】
1実施形態では、疾病期間中に抗アポトーシスBcl−2蛋白質、抗アポトーシスBcl−X蛋白質及び抗アポトーシスBcl−w蛋白質の1種以上が過剰発現される疾病を治療するために本発明の組成物を必要とする対象に治療有効量の本発明の組成物を投与する。
【0187】
別の実施形態では、異常細胞増殖及び/又はアポトーシス調節異常の疾病を治療するために本発明の組成物を必要とする対象に治療有効量の本発明の組成物を投与する。
【0188】
このような疾病の例としては、限定されないが、癌、中皮腫、膀胱癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内メラノーマ、卵巣癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、骨癌、結腸癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、胃腸(胃、結腸・直腸及び/又は十二指腸)癌、慢性リンパ球性白血病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、精巣癌、肝細胞(肝細胞及び/又は胆管細胞)癌、原発性もしくは二次性中枢神経系腫瘍、原発性もしくは二次性脳腫瘍、ホジキン病、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞もしくはB細胞性悪性リンパ腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、口腔癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、小細胞肺癌、腎臓及び/もしくは尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊椎腫瘍、脳幹部神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質癌、胆嚢癌、脾臓癌、胆管癌、線維肉腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫又はその併発が挙げられる。
【0189】
より特定的な実施形態では、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、骨髄癌、子宮頚癌、慢性リンパ球性白血病、結腸・直腸癌、食道癌、肝細胞癌、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞もしくはB細胞性悪性リンパ腫、メラノーマ、骨髄性白血病、骨髄腫、口腔癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、小細胞肺癌又は脾臓癌を治療するために本発明の組成物を必要とする対象に治療有効量の本発明の組成物を投与する。
【0190】
これらの実施形態のいずれかに従い、1種以上の他の治療剤との併用療法で組成物を投与することができる。
【0191】
例えば、対象における中皮腫、膀胱癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内メラノーマ、卵巣癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、骨癌、結腸癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、胃腸(胃、結腸・直腸及び/又は十二指腸)癌、慢性リンパ球性白血病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、精巣癌、肝細胞(肝細胞及び/又は胆管細胞)癌、原発性もしくは二次性中枢神経系腫瘍、原発性もしくは二次性脳腫瘍、ホジキン病、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞もしくはB細胞性悪性リンパ腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、口腔癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、小細胞肺癌、腎臓及び/もしくは尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊椎腫瘍、脳幹部神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質癌、胆嚢癌、脾臓癌、胆管癌、線維肉腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫又はその併発の治療方法は、治療有効量の(a)本発明のABT−263組成物と、(b)エトポシド、ビンクリスチン、CHOP、リツキシマブ、ラパマイシン、R−CHOP、RCVP、DA−EPOCH−R又はボルテゾミブの1種以上を対象に投与する段階を含む。
【0192】
特定実施形態では、B細胞リンパ腫や非ホジキンリンパ腫等の悪性リンパ腫を治療するために、治療有効量のエトポシド、ビンクリスチン、CHOP、リツキシマブ、ラパマイシン、R−CHOP、RCVP、DA−EPOCH−R又はボルテゾミブとの併用療法で本発明の組成物を必要とする対象に治療有効量の本発明の組成物を投与する。
【0193】
本発明は更に治療有効血漿中濃度のABT−263及び/又は1種以上のその代謝物をヒト癌患者の血流中に維持する方法として、1日当たり約50から約500mgのABT−263に相当する投与量で、1錠から複数錠の本願に記載するカプセル剤を約3時間から約7日間の平均投与間隔で対象に投与する段階を含む方法も提供する。
【0194】
治療有効血漿中濃度を構成する数値は特に患者に存在する特定の癌、癌のステージ、重篤度及び悪性度、並びに求められる転帰(例えば安定化、腫瘍増殖抑制、腫瘍退縮、転移の危険低減等)により異なる。血漿中濃度は癌治療に関して効果を生じるために十分であるが、許容できない程度又は耐えられない程度まで副作用を生じるために十分とならないことが非常に好ましい。
【実施例】
【0195】
以下の実施例は本発明又は本発明により解決される問題を例証するものであり、限定的であるとみなすべきではない。特定実施形態がプロトタイプ製剤の製造に不利又は選択されないと記載する場合には、このような実施形態が全く無効であること、又は本発明の範囲外であることを必ずしも意味しない。当業者は本願の全開示を踏まえるならば、次善案として本願に示す原料を使用しても許容可能な製剤を製造することができる。
【0196】
[実施例1]
脂質溶媒へのABT−263親及びビスHCl塩の溶解度
周囲条件下で各種脂質溶媒及び溶媒混合物へのABT−263親(遊離塩基、I型結晶)及びABT−263ビスHCl塩の溶解度を試験した。上記に挙げたものを除き、本試験における商標登録溶媒は以下の通りである(他の製造業者の実質的に同等の製品が入手可能な場合には代用してもよい):
Sasol製品Miglyol 810(登録商標):カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;
Abitec製品Capmul MCM(登録商標):カプリル酸/カプリン酸グリセリル;
Abitec製品Captex 300(登録商標):カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;
Gattefosse製品Labrafil M 2125 CS(登録商標):リノール酸ポリオキシエチレングリセリル;
Uniqema製品Tween 20(登録商標):ポリソルベート20;
Gattefosse製品Labrasol(登録商標):カプリル酸/カプリン酸ポリオキシエチレングリセリル;
Cremophor RH40(登録商標):ポリオキシエチレン(40)水添ヒマシ油。
【0197】
「PE−91」は体積比9:1のPhosal 53 MCT(登録商標)+エタノールである。「LOT−343」は重量比30:40:30のLabrafil M 1944 CS(登録商標)+オレイン酸+Tween 80(登録商標)である。
【0198】
溶解度データを表4に示す。場合により(表4にアステリスク(*)で示すもの)、初期は溶解度が高かったが、放置後に沈殿が生じたものもある。
【0199】
【表4】

【0200】
[実施例2]
ABT−263親及びビスHCl塩に対する三元賦形剤系の混和性
20重量%のABT−263遊離塩基又は10重量%のABT−263ビスHCl塩を使用して2種類の溶媒と1種類の界面活性剤から構成される三元系を混和性と薬剤溶解性について評価した。評価した溶媒はLabrafil M 1944 CS(登録商標)、Imwitor 742(登録商標)、オレイン酸、Capmul PG−8(登録商標)、Capmul PG−12(登録商標)、Lauroglycol 90(登録商標)(Gattefosse製品であるモノラウリン酸プロピレングリコール)及びPhosal 53 MCT(登録商標)であった。評価した界面活性剤はTween 80(登録商標)、Cremophor RH40(登録商標)、Gelucire 44/14(登録商標)(Gattefosse製品であるラウリン酸ポリオキシエチレングリセリル)及びLabrasol(登録商標)であった。データを表5に示す。
【0201】
【表5】


【0202】
試験した三元賦形剤系のうちで10〜20%のGelucire 44/14(登録商標)を含有するものは全て不混和性を示した。試験した系のうちで20%を上回るCremophor RH40(登録商標)を含有する大半の系も不混和性を示した。賦形剤が混和性であった所定の系のみで、遊離塩基又はビスHCl塩形態のABT−263は試験した濃度で可溶性であった。
【0203】
ホスファチジルコリン系賦形剤を含有する他の三元系のデータを実施例8、表10及び11に示す。
【0204】
[実施例3]
脂質溶液中のABT−263遊離塩基及びビスHCl塩の化学的安定性
ビスHCl塩及び遊離塩基形態のABT−263の脂質溶液を並行比較するために予備安定性試験を実施した。Phosal 53 MCT(登録商標)/エタノール(9:1体積比;「PE−91」)とLabrafil M 1944 CS(登録商標)/オレイン酸/Tween 80(登録商標)(30:40:30重量比;「LOT−343」)の2種類の別個の脂質溶媒組合せにABT−263を溶解した。酸化防止剤は加えず、ヘッドスペース窒素パージも実施しなかった。40℃(ストレス条件)で3週間までサンプルのエージング後、総スルホキシドを分析した処、試験した溶液中で遊離塩基はビスHCl塩よりも著しく安定していることが判明した(表6)。総分解物濃度も同様の傾向を示した(データは示さず)。分解物濃度の上昇は変色を伴った。ビスHCl塩溶液はエージング後に顕著な暗色化を示したが、遊離塩基溶液は殆ど変色を示さなかった。
【0205】
【表6】

【0206】
[実施例4]
各種脂質溶液中のABT−263遊離塩基の化学的安定性
酸化防止剤又は窒素パージの不在下で40℃にて2週間ストレス試験を実施することにより各種脂質賦形剤溶液中のABT−263遊離塩基の化学的安定性を評価した。結果を表7に示す。
【0207】
【表7】

【0208】
上記試験から以下のようにまとめることができる。
・Phosal 53 MCT(登録商標)やLipoid S75(登録商標)MCT等のホスファチジルコリン系脂質賦形剤中ではスルホキシド成長が殆ど又はほんの僅かしか認められなかった。
・Imwitor 742(登録商標)、Capmul PG−8(登録商標)及びオレイン酸(超高純度グレード)中ではスルホキシド成長が殆ど又はほんの僅かしか認められなかった。
・Tween 80(登録商標)中では中度のスルホキシド成長が認められた。より高純度グレードのポリソルベート80(Crillet 4HP(登録商標))を使用した場合には分解速度が遅くなった。
・Labrafil M 1944 CS(登録商標)とPlurol Oleique CC497(登録商標)はいずれもABT−263の有意分解が伴った。これらの賦形剤はいずれもその構造中にオレイン酸を含んでおり、オレイン酸の不飽和性は酸化反応を促進することが知られている。これらの賦形剤中で薬剤が化学的に不安定であったのはこのためであると思われる。
【0209】
[実施例5]
三元脂質溶液系中のABT−263遊離塩基の化学的安定性
ABT−263は実施例4の2週間ストレス試験時に超高純度オレイン酸中で安定であるように見えたが、多成分溶媒を使用した後続試験の結果、オレイン酸を含有する薬剤溶液は放置後に変色することが分かった。Imwitor 742(登録商標)/オレイン酸/Tween 80(登録商標)(30:40:30重量比;「IOT−343」)とImwitor 742(登録商標)/Phosal 53 MCT(登録商標)/Tween 80(登録商標)(40:40:20重量比;「IPT−442」)を溶媒とするABT−263の溶液を使用して周囲温度で比較保存試験を実施した。IOT−343溶媒自体は無色であり、この溶媒に10重量%のABT−263遊離塩基を加えると、ほんの僅かに黄みがかったが、得られたABT−263溶液の色は保存後に著しく暗色化した。これとは対照的に、ABT−263遊離塩基をIPT−442溶液に10重量%で溶解した溶液は当初の溶媒が黄色であったが、保存後も僅かしか暗色化しなかった。周囲条件で3カ月間保存後のこれらの2種類の薬剤溶液のHPLC分析の結果、変色は分解に相関することが確認された(総スルホキシド値はIOT−343系では1.3%であり、IPT−442系では0.5%であった)。従って、オレイン酸はABT−263液体充填カプセル製剤に使用する脂質賦形剤から除外した。
【0210】
異なる三元脂質組合せを使用してABT−263遊離塩基脂質溶液で更にストレス試験を実施した結果、Labrafil M 1944 CS(登録商標)もABT−263の有意酸化的分解に結び付けられることが判明した。表8に示す3週間ストレス試験の結果から明らかなように、Labrafil M 1944 CS(登録商標)を含有する製剤は酸化防止剤又は窒素パージの不在下で40℃にて保存後に有意なスルホキシド成長を示した。他方、オレイン酸もLabrafil M 1944 CS(登録商標)も加えなかったABT−263のImwitor 742(登録商標)/Phosal 53 MCT(登録商標)/Tween 80(登録商標)(20:50:30重量比;「IPT−253」)溶液は試験した他の製剤、即ちLabrafil M 1944 CS(登録商標)/オレイン酸/Tween 80(登録商標)(30:40:30重量比;「LOT−343」)及びLabrafil M 1944 CS(登録商標)/Imwitor 742(登録商標)/Tween 80(登録商標)(40:30:30重量比;「LIT−433」)に比較して著しく高い化学的安定性を示した。従って、ABT−263液体充填カプセル製剤に使用する脂質賦形剤からLabrafil M 1944 CS(登録商標)とオレイン酸の両者を除外した。
【0211】
【表8】

【0212】
[実施例6]
脂質溶液系におけるABT−263遊離塩基の酸化防止剤試験
(1)Lipoid S75(登録商標)MCTと(2)三元脂質系(LIT−433;上記参照)の2種類の異なる脂質溶液系中に100mg/gのABT−263遊離塩基を含有する脂質溶液において種々の酸化防止剤が酸化的分解を抑制する効果を評価した。後者脂質溶液系は酸化防止剤スクリーニングとして短時間に有意分解を促進する系として意図的に選択した。窒素パージ下で40℃の2週間ストレス試験中のスルホキシド形成を表9に示す。
【0213】
【表9】

【0214】
ABT−263遊離塩基はLIT−433溶媒系中よりもLipoid S75(登録商標)MCT溶媒中のほうが著しく分解の程度が低かった。チオグリセロールはどちらの溶媒系でも薬剤酸化の有効な抑制を生じた。LIT−433溶媒系において、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、メタ重亜硫酸ナトリウム及びチオ硫酸ナトリウムは試験した濃度で酸化的分解をある程度まで抑制したが、αトコフェロールは無効であった。なお、メタ重亜硫酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムの濃度はABT−263と等モルとなる濃度よりも著しく低かった。使用した低濃度でも、これらの酸化防止剤と共に水を加えると濁った溶液となった。パルミチン酸アスコルビル、BHA及びBHTの濃度は酸化防止剤として典型的に使用される濃度よりも著しく高かった。
【0215】
[実施例7]
三元脂質溶液系におけるABT−263遊離塩基の酸化防止剤としてのBHA
BHAは有利な親油性であると共に脂質系で酸化防止剤として広く使用されているため、150mg/gのABT−263を含有するIPT−253及びLIT−433の更に2種類の三元溶媒系においてBHAにより典型的な濃度でBHAの酸化防止剤効果を試験した。窒素パージを実施せずに40℃のストレス条件下で試験を実施した。表10に示すように、どちらの系でも0.2%w/w BHAを加えた場合にスルホキシド形成の抑制は生じなかった。BHAやBHT等のフリーラジカル捕捉剤型の酸化防止剤は脂質溶液中でABT−263を酸化的分解から防ぐのに有用とは思われないと推測された。
【0216】
【表10】

【0217】
[実施例8]
ABT−263遊離塩基のリン脂質溶液系
上記試験によると、ホスファチジルコリンを含有する賦形剤であるPhosal 53 MCT(登録商標)とLipoid S75(登録商標)MCTはABT−263遊離塩基に良好な化学的安定性と薬剤溶解性をもたらすと推測された。しかし、これらの予混合賦形剤は高粘度(Phosal 53 MCT(登録商標))又は薬剤溶解性が不十分(Lipoid S75(登録商標)MCT)であるため、ABT−263液体充填カプセル剤の溶媒として単独で使用するには適していない。溶媒への薬剤溶解性を増すためにはポリソルベート80を使用することができる。脂質溶液の粘度を下げるためにはCapmul PG−8(登録商標)やImwitor 742(登録商標)等の賦形剤を使用することができる。どちらもABT−263と化学的に適合性であることが分かった。FDA認可薬品における従来の経験によると、Imwitor 742(登録商標)のほうがCapmul PG−8(登録商標)よりも好適であった。
【0218】
従って、プロトタイプ液体充填カプセル剤を開発するに当たり、Phosal 53 MCT(登録商標)、Lipoid S75(登録商標)MCT、ポリソルベート80(Crillet 4HP(登録商標)や超高純度Tween 80(登録商標)等の高純度製品が好ましい)及びImwitor 742(登録商標)等の賦形剤に注目した。
【0219】
Imwitor 742(登録商標)/Phosal 53 MCT(登録商標)/Tween 80(登録商標)(略称「IPT」)系又はImwitor 742(登録商標)/Lipoid S75(登録商標)MCT/Tween 80(登録商標)(略称「IST」)系を種々の賦形剤比で含有する2種類の三元脂質溶媒系をプロトタイプカプセル製剤のスクリーニングで試験した。三元ブレンド中のImwitor 742(登録商標)の濃度は40%以下に制限し、ポリソルベート80の濃度は20%以下に制限した。「IPT」又は「IST」に続く3桁の数字は3種類の賦形剤原料の夫々の百分率を表し、各場合に最後のゼロを省略した。
【0220】
夫々IPT系とIST系について表10及び11にまとめるように、溶媒混和性、溶媒へのABT−263遊離塩基溶解性、得られる溶液の粘度(スポイドから放出時の糸引きの程度により判定)及び薬剤溶液(薬剤添加量10重量%)の自己分散性に基づいてプロトタイプ製剤の選択を行った。IPT系とIST系の模式的相図(図1及び2)は更に選択プロセスを示す。
【0221】
表10及び11と図1及び2の相図から明らかなように、IPT系は一般に対応するIST系よりも良好な溶媒混和性、薬剤溶解性及び分散性を生じた。以下の根拠に基づき、IPT−262及びIST−262(後にIST−172に交換)をプロトタイプ溶媒系として選択した。
【0222】
カプセル製剤の化学的安定性とバイオアベイラビリティ(下記参照)の両方を確保するためには(例えばPhosal 53 MCT(登録商標)又はLipoid S75(登録商標)MCTの形態の)ホスファチジルコリン系溶媒が必要である。経口製剤で使用されるレシチンは毒性が低く、許容量が高いため、このような溶媒の量はほぼ無制限である。
【0223】
溶媒への薬剤溶解性を助長すると共に脂質製剤の自己分散性を増すためにはポリソルベート80(特に高純度グレード)が必要である。ABT−263の典型的な1日用量(例えば200〜250mg)とポリソルベート80の最大1日用量(418mg)を踏まえると、薬剤添加量が10%のプロトタイプ製剤ではポリソルベート80の濃度を溶媒中で20%以下に制限すると妥当である。ポリソルベート80の濃度をこれよりも高くするのは化学的安定性の理由からも好ましくない。
【0224】
IPT系では、機械によるカプセル充填を可能にするレベルまで最終薬剤溶液の粘度を下げるためにImwitor 742(登録商標)が必要である。IST系でも、Lipoid S75(登録商標)MCTとポリソルベート80は全比で不混和性であるので、溶媒系の混和性を増すためにImwitor 742(登録商標)が必要である。しかし、Imwitor 742(登録商標)の量はどちらのプロトタイプ系でも20%以下に制限される。
【0225】
表11から明らかなように、IST−172系は溶媒混和性が低い。しかし、ABT−263遊離塩基を添加すると、系全体の混和性は許容可能になるため、IST−172製剤は許容可能なカプセル封入用プロトタイプ液となることが判明した。
【0226】
【表11】

【0227】
【表12】

【0228】
[実施例9]
ABT−263遊離塩基のリン脂質溶液の酸化防止剤選択
初期酸化防止剤スクリーニング(実施例6参照)に基づき、0.01%のEDTAと共に酸化防止剤としてメタ重亜硫酸ナトリウム(NaMTBS)又はチオグリセロールを使用した2種類のプロトタイプ製剤で加速安定性試験を更に実施した。
【0229】
10%のABT−263遊離塩基と(エデト酸カルシウム二ナトリウムとして)0.01%のEDTAを含有するIPT−262及びIST−262溶液への純液NaMTBSの溶解性を評価した。周囲温度条件下に5日間ロータリーミキサーで混合後に全溶液中の固形分残留値は0.05%w/wという低いNaMTBS固形分濃度(又はABT−263に対して約2%のモル濃度)であった。
【0230】
NaMTBSは脂質溶解性が低いため、NaMTBSの高濃度ストック水溶液を脂質溶液に加えることにより脂質溶液に導入する方法もある。例えば、Phosal 53 MCT(登録商標)/エタノール 9:1v/vを溶媒とする50mg/ml遊離塩基溶液を15%w/v NaMTBS溶液で9.67mg/mlの最終NaMTBS濃度(又はABT−263に対して100%のモル濃度)までスパイクすると、透明な溶液が得られた。しかし、15%w/vストック溶液を使用してNaMTBSの最終濃度を150%以上の相対モル濃度まで上げると、脂質溶液は再び濁った。20%を越える濃度のストック溶液を使用しても溶液は濁り、水分とNaMTBSの両方の過剰量が濁った溶液の原因になり得ると判断された。
【0231】
[実施例10]
酸化防止剤を含有するリン脂質製剤におけるスルホキシド形成
表12に示すような2週間加速安定性試験(ストレス条件:窒素パージ下で40℃)の結果からチオグリセロールはどちらのプロトタイプ製剤中でもスルホキシド形成を抑制するのにNaMTBSほど有効ではないことが判明した。
【0232】
他方、NaMTBSと共に水分が添加されると、薬剤溶液の化学的安定性に負の影響があり得ることも試験結果から判明し、ABT−263形態(遊離塩基であるか又はビスHCl塩であるか)又は使用する溶媒系に関係なく、そうであることが分かった(表13参照;窒素パージ下で40℃の2週間試験)。このため、0.05%(w/w)NaMTBSの最終濃度を選択したが、濁りを避けるためにはMTBSストック溶液の濃度も約15%w/v未満に保つべきである。
【0233】
【表13】

【0234】
【表14】

【0235】
[実施例11]
プロトタイプ液体充填カプセル剤のインビボ薬物動態
100mg/gのABT−263遊離塩基を含有する液体を充填したプロトタイプカプセル製剤2錠をイヌに(非空腹条件下で単回)投与し、Phosal 53 MCT(登録商標)/エタノール 9:1v/v+0.01% EDTAを溶媒とするABT−263遊離塩基及びビスHCl塩の50mg/ml経口溶液と比較してそのインビボ薬物動態を評価した。
【0236】
各製剤を6頭1組のイヌで1頭当たり50mgの用量で評価した。製剤A(IPT−262)及びB(IST−262)を同一組のイヌに順次投与し、製剤C及びDを別の組のイヌに順次投与した。投与前にイヌを一晩絶食させ、投与の30分前に餌を与えた。各試験の完了時に親薬剤の血漿中濃度をHPLC−MS/MSにより測定した。結果を表14に示す。
【0237】
製剤Aの最高血漿中濃度(Cmax)は製剤Bよりも若干低かったが、恐らく吸収が遅いという理由から、製剤AのAUCは製剤Bよりも高かった。製剤Bのほうが安定した短いTmaxを示し、投与後2から3時間であった。液体充填カプセル製剤Aは経口溶液(製剤C及びD)と同等の血漿Cmax、AUC及びバイオアベイラビリティ(F)を生じた。これらの結果を踏まえ、IPT−262プロトタイプ(製剤A)をヒト臨床試験用液体充填カプセル製剤として選択した。
【0238】
【表15】

【0239】
[実施例12]
NaMTBS添加時及び非添加時のプロトタイプ製剤の保存安定性
プロトタイプABT−263液体充填カプセル製剤の2種類の実験室規模バッチで予備物理的及び化学的安定性結果を得た。2種類のバッチの唯一の相違は酸化防止剤(メタ重亜硫酸ナトリウム)の有無である。2種類のバッチの組成を表15に示す。
【0240】
【表16】

【0241】
表15に示す組成の液体をサイズ0のハードゼラチンカプセルに封入し、カプセル剤を化学的安定性試験のためにブリスターパッケージ(Honeywell Aclar(登録商標)UltRx 3000ポリクロロトリフルオロエチレンバリアフィルムにプッシュスルー箔蓋材を組合せたもの)に包装した。各種条件下で1カ月間保存後のデータを表16に示す。表16に示す含水率は測定値であり、表15のようにNaMTBS及びエデト酸カルシウム二ナトリウムと共に添加される水分量と直接関連しない。
【0242】
【表17】

【0243】
表16から明かなように、酸化防止剤メタ重亜硫酸ナトリウムを加えると、特に40℃及び75%RHのストレス保存条件下で最初の1カ月間の保存中に総スルホキシドの形成は有意に抑制された。
【0244】
6カ月間まで保存後の総スルホキシドのデータを表17に示す。40℃及び75%RHのストレス保存条件下を除き、総スルホキシドの形成は少なくとも6カ月間抑制された。
【0245】
【表18】

【0246】
[実施例13]
NaMTBS添加時及び非添加時のプロトタイプ製剤の保存安定性
実施例12に記載したと同一のプロトタイプABT−263液体充填カプセル製剤の2種類の実験室規模バッチで9カ月間保存安定性試験を実施した。この場合も2種類のバッチの唯一の相違は酸化防止剤(メタ重亜硫酸ナトリウム)の有無である。2種類のバッチの組成を表15に示す。
【0247】
この試験では、小児安全対策用ポリプロピレンキャップ付き3オンスHDPE(高密度ポリエチレン)ボトルにカプセル剤を入れ、ボトルを誘導シールした。総スルホキシドのデータを表18に示す。40℃及び75%RHのストレス保存条件下を除き、総スルホキシドの形成は少なくとも6カ月間抑制された。
【0248】
【表19】

【0249】
[実施例14]
プロトタイプ液体充填カプセル剤のヒトインビボ薬物動態
Phosal 53 MCT(登録商標)/エタノール 9:1v/v+0.01% EDTAを溶媒とするABT−263ビスHCl塩の25mg/ml脂質溶液と比較して50mgのABT−263を含有するプロトタイプ液体充填カプセル剤(上記表15に示すバッチ1)のインビボ薬物動態をヒト癌患者ボランティアで試験した。食事の影響を評価するために、空腹時の被験者と高脂肪食を与えた被験者に液体充填カプセル剤を投与した。
【0250】
7人の被験者で無作為化3期間クロスオーバー試験デザインを使用した。合計6人の被験者が全3期間を完了し、評価可能とみなされた。各製剤を200mgのABT−263親化合物相当量で単回経口投与した。投与直前と投与から2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、24時間後、30時間後及び48時間後に血漿サンプルを採取した。試験の完了時に親薬剤の血漿サンプル中濃度をHPLC−MS/MSにより測定した。データ(6人の評価可能な被験者の平均)を図3に示す。計算した薬物動態パラメーターを表19に示す。
【0251】
【表20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬的に許容可能な賦形剤として(a)少なくとも1種のリン脂質、(b)少なくとも1種のリン脂質の溶解補助剤としてグリコール、グリコリド、グリセリド及びその混合物から構成される群から選択される少なくとも1種の溶解補助剤、(c)少なくとも1種の非リン脂質界面活性剤、および(d)保存時のABT−263の酸化的分解を抑制するために有効な量の少なくとも1種の含硫黄酸化防止剤を含有する実質的に非エタノール性の担体に、ABT−263又はその医薬的に許容可能な塩の、少なくとも約40mg/mlのABT−263遊離塩基相当濃度の溶液を、カプセル当たり約1000mg以下の量で内部に封入したカプセルシェルを含む、医薬カプセル剤。
【請求項2】
ABT−263が遊離塩基形態で存在する、請求項1のカプセル剤。
【請求項3】
前記賦形剤がカプセル当たり少なくとも約40mgのABT−263遊離塩基を溶液中に維持するために有効な量で選択及び添加される、請求項2のカプセル剤。
【請求項4】
前記封入溶液の量がカプセル当たり約300から約600mgである、請求項1から3のいずれかのカプセル剤。
【請求項5】
少なくとも1種のリン脂質がホスファチジルコリンを含む、請求項1から4のいずれかのカプセル剤。
【請求項6】
少なくとも1種の溶解補助剤が1種以上の中鎖トリグリセリドを含む、請求項1から5のいずれかのカプセル剤。
【請求項7】
少なくとも1種の溶解補助剤が更に1種以上の中鎖モノ及び/又はジグリセリドを含む、請求項6のカプセル剤。
【請求項8】
少なくとも1種の非リン脂質界面活性剤が1種以上のポリソルベートを含む、請求項1から7のいずれかのカプセル剤。
【請求項9】
1種以上のポリソルベートが約5未満の過酸化物価をもつ、請求項8のカプセル剤。
【請求項10】
少なくとも1種の含硫黄酸化防止剤が低脂溶性であり、ならびに封入溶液が酸化防止剤をストック水溶液として導入するために十分な約1重量%までの量の水を含有する、請求項1から9のいずれかのカプセル剤。
【請求項11】
少なくとも1種の低脂溶性酸化防止剤が封入溶液の約0.02から約0.2重量%の量で存在する、請求項10のカプセル剤。
【請求項12】
少なくとも1種の低脂溶性酸化防止剤が亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、チオ硫酸塩及びその混合物から構成される群から選択される、請求項10又は11のカプセル剤。
【請求項13】
少なくとも1種の低脂溶性酸化防止剤がメタ重亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸カリウムを含む、請求項10又は11のカプセル剤。
【請求項14】
更に少なくとも1種の医薬的に許容可能なキレート剤を含有する、請求項10から13のいずれかのカプセル剤。
【請求項15】
少なくとも1種のキレート剤がEDTA又はその塩を含む、請求項14のカプセル剤。
【請求項16】
封入溶液が約5から約20重量%のABT−263遊離塩基、約15から約60重量%のホスファチジルコリン、約7から約30重量%の中鎖トリグリセリド、約7から約30重量%の中鎖モノ及びジグリセリド、約7から約30%のポリソルベート80界面活性剤、約0.02から約0.2重量%のメタ重亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸カリウム、約0.003から約0.01%のEDTA又はその塩、および約0.2から約0.8%の水を含有する、請求項1のカプセル剤。
【請求項17】
封入溶液が約5から約20重量%のABT−263遊離塩基、約15から約60重量%のホスファチジルコリン、約7から約30重量%の中鎖トリグリセリド、約7から約30重量%の中鎖モノ及びジグリセリド、約7から約30%のポリソルベート80界面活性剤、約0.02から約0.2重量%のメタ重亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸カリウム、約0.003から約0.01%のEDTA又はその塩、および約0.2から約0.8%の水から本質的に構成される、請求項1のカプセル剤。
【請求項18】
賦形剤が空腹時又は非空腹時のイヌモデルに約50mgを単回投与した場合に少なくとも約30%のABT−263の経口バイオアベイラビリティを生じるように選択される、請求項1から15のいずれかのカプセル剤。
【請求項19】
請求項10のカプセル剤の製造方法であって、ABT−263又はその塩から本質的に構成されるAPI(医薬品有効成分)を少なくともリン脂質と溶解補助剤に溶解し、脂質溶液を得ること、非リン脂質界面活性剤を溶解補助剤又は脂質溶液と混合すること、低脂溶性含硫黄酸化防止剤を水に溶解し、ストック水溶液を調製すること、ストック水溶液を脂質溶液と混合し、封入用溶液を得ること、および溶液をカプセルシェルに封入することを含む、方法。
【請求項20】
リン脂質と溶解補助剤の少なくとも一部を予混合製品として提供する、請求項19の方法。
【請求項21】
リン脂質がホスファチジルコリンを含み、ならびにリン脂質と予混合された溶解補助剤が中鎖トリグリセリドを含む、請求項20の方法。
【請求項22】
予混合製品が約50%から約75%のホスファチジルコリンおよび約15%から約30%の中鎖トリグリセリドを含有する、請求項21の方法。
【請求項23】
APIがI型又はII型ABT−263結晶性遊離塩基から本質的に構成される、請求項19から22のいずれかの方法。
【請求項24】
アポトーシス不全及び/又は抗アポトーシスBcl−2ファミリー蛋白質の過剰発現を特徴とする疾患に罹患した対象に、カプセル剤として製剤化された治療有効量のABT−263を経口投与することによる、前記疾患の治療における使用のための請求項1から18のいずれかのカプセル剤。
【請求項25】
疾患が新生物疾患である、前記使用のための請求項24のカプセル剤。
【請求項26】
新生物疾患が癌、中皮腫、膀胱癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、卵巣癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、骨癌、結腸癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、胃腸(胃、結腸・直腸及び/又は十二指腸)癌、慢性リンパ球性白血病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、精巣癌、肝細胞(肝細胞及び/又は胆管細胞)癌、原発性又は二次性中枢神経系腫瘍、原発性又は二次性脳腫瘍、ホジキン病、慢性又は急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞又はB細胞性悪性リンパ腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、口腔癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、小細胞肺癌、腎臓及び/又は尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊椎腫瘍、脳幹部神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質癌、胆嚢癌、脾臓癌、胆管癌、線維肉腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫並びにその併発から構成される群から選択される、前記使用のための請求項25のカプセル剤。
【請求項27】
新生物疾患が悪性リンパ腫である、前記使用のための請求項25のカプセル剤。
【請求項28】
悪性リンパ腫が非ホジキンリンパ腫である、前記使用のための請求項27のカプセル剤。
【請求項29】
新生物疾患が慢性リンパ球性白血病又は急性リンパ球性白血病である、前記使用のための請求項25のカプセル剤。
【請求項30】
1日当たり約50から約500mgのABT−263遊離塩基相当量の用量で、1錠から複数錠のカプセル剤を約3時間から約7日間の平均治療間隔で投与する、前記使用のための請求項24から29のいずれかのカプセル剤。
【請求項31】
1日当たり約200から約400mgのABT−263遊離塩基相当量の用量で、1錠から複数錠のカプセル剤を1日1回投与する、前記使用のための請求項30のカプセル剤。
【請求項32】
(a)約50mgのABT−263遊離塩基、約150mgのホスファチジルコリン、約75mgの中鎖トリグリセリド、約90mgの中鎖モノ及びジグリセリド、約90mgのポリソルベート80界面活性剤、約0.25mgのメタ重亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸カリウム、約0.025%のEDTA又はその塩、および約2.5mgの水を含有する溶液をサイズ0のハードゼラチンカプセルシェルの内部に封入したプロトタイプカプセル剤;又は
(b)前記プロトタイプカプセル剤と経口で実質的に生物学的に同等なカプセル剤
である、前記使用のための請求項31のカプセル剤。
【請求項33】
1日当たり約50から約500mgのABT−263遊離塩基相当量の用量で、1錠から複数錠のカプセル剤を約3時間から約7日間の平均治療間隔で対象に経口投与することによる、ヒト対象におけるABT−263及び/又は1種以上のその代謝物の治療有効血漿中濃度の維持における使用のための、請求項1から18のいずれかのカプセル剤。
【請求項34】
維持される血漿中濃度が定常状態において約3から約8μg/mlのABT−263の最高値と約1から約5μg/mlのABT−263の最低値を示す、前記使用のための請求項33のカプセル剤。
【請求項35】
(a)約50mgのABT−263遊離塩基、約150mgのホスファチジルコリン、約75mgの中鎖トリグリセリド、約90mgの中鎖モノ及びジグリセリド、約90mgのポリソルベート80界面活性剤、約0.25mgのメタ重亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸カリウム、約0.025%のEDTA又はその塩、および約2.5mgの水を含有する溶液をサイズ0のハードゼラチンカプセルシェルの内部に封入したプロトタイプカプセル剤;又は
(b)前記プロトタイプカプセル剤と経口で実質的に生物学的に同等なカプセル剤
である、前記使用のための請求項33又は34のカプセル剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−515078(P2013−515078A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546155(P2012−546155)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061588
【国際公開番号】WO2011/079127
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】