説明

AD変換装置、AD変換装置を用いた電流検出器及び電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置

【課題】予定外に連続して割り込みが発生した場合に、後に発生した不要な割込みをマスクして正常に割込みを行い、AD変換データを読み込むことができる回路構成とし、より信頼性の高いAD変換装置、電流検出器およびディジタルサーボ制御装置を提供する。
【解決手段】割込み信号セレクタ19の後段にカウンタ24によるマスク信号25とOR素子26で構成された割込み信号マスク回路27を備え、割込み信号発生後の一定時間、割込み信号をマスクする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ信号をディジタル信号に変換するAD変換装置、前記AD変換装置を用いて電流の検出を行う電流検出器及び前記電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にΔΣ型AD変換器は、AD変換器でサンプリングを行い、平均化処理によりAD変換データを得る方式であるため、AD変換データには量子化誤差が含まれており、サンプリング回数が少ない程、AD変換精度が悪いという課題があった。
本願出願人はこの課題を解決するために、AD変換データ生成部を複数チャネル並列化した構成としてサンプリング回数を増やし、AD変換精度を向上させるようにしたAD変換装置を提案した(例えば、特許文献1参照)。
すなわち、AD変換装置はΔΣ型変調器、AD変換データおよびAD変換完了信号を出力する複数のAD変換データ生成部、AD変換時間の計測部などを含むΔΣ型AD変換器を複数チャンネル有し、最もAD変換に時間がかかるΔΣ型AD変換器からのAD変換完了信号が割込み信号として選択されるので、全てのAD変換が完了したときにディジタル信号処理手段に割込みをかけ、AD変換データを読み込むことができる。このため、AD変換器が製造ばらつきによりAD変換時間に差がある場合でも問題なく、また、割込みが発生する間に1チャネルあたりAD変換を1回完了すればよいので、1チャネルあたりのAD変換時間を長く取ることができ、その分変換精度を向上させるためにサンプリング回数を増やすことが出来、AD変換精度の向上を実現した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2009−050136号公報(第6頁―7頁 図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のAD変換装置は、全てのΔΣ型AD変換器が製造バラツキによりAD変換時間に大きな差が有ること、即ち割込み選択信号が常に同じΔΣ型AD変換器からの信号を選択することを想定しており、選択されたAD変換完了信号がディジタル信号処理手段への割込み信号としてそのまま使用されていた。ところが、中にはAD変換時間にほとんど差が無いΔΣ型AD変換器同士も存在する。偶然にも、最も遅いΔΣ型AD変換器と、次に遅いΔΣ型AD変換器のAD変換時間にほとんど差が無い場合、割込み選択信号により選択されるAD変換完了信号が、温度変動や電圧変動等により時々入れ替わり、予定外に連続してディジタル信号処理手段への割込みが発生し、割込み処理が2度実行され、割込み処理時間が延び、制御周期に乱れが生じ、その結果モータが異常な動作をするといった誤動作を引き起こすという問題があった。
即ち、図2において説明すれば、初めの方では、AD変換時間81が82usでAD変換時間82が83usであり、AD変換時間82が遅いため、割込み選択信号8は“2”となり、AD変換完了信号72が選択されている。ところが、AD変換時間82が83usから81usに変化した前後で、AD変換完了信号72のLowパルスが出力された直後に割込み選択信号8が“2”から“1”へと変化し、AD変換完了信号71に選択が切り替わるため、続けてAD変換完了信号71のLowパルスが出力され、割込み信号として従来の方法では、予定外に連続してLowパルスが発生するような出力信号となっていた。このため、最初のLowパルスで1度目の割込み処理が実行を開始し、その実行中に次のLowパルスにより2度目の割込み発生のステータスが保持され、1度目の割込み処理が完了すると、続けて2度目の割込み処理が実行される。その結果、本来実行されないはずの2度目の割込み処理により割込み処理時間が2倍に延び、その間、別の処理が実行できずに待たされることでスケジュール通りに処理が完了せず、制御周期に乱れが生じ、モータが異常な動作をするようなことがあった。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、AD変換時間のほとんど差がないΔΣ型AD変換器同士を用いた場合でもより信頼性の高いAD変換装置、前記AD変換装置を用いた電流検出器及び前記電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本発明における代表的な構成は次の通りである。
AD変換装置は、アナログ信号がそれぞれ入力され、AD変換スタート信号によりAD変換を開始し、AD変換の終了によりAD変換完了信号をそれぞれ出力する複数のΔΣ型AD変換器511、512、51nと、複数のΔΣ型AD変換器から出力されるAD変換完了信号71、72、7nから1つの割込み信号7を生成する論理回路と、割込み信号7の受信により複数のΔΣ型AD変換器511、512、51nのAD変換データ61、62、6nを読み込み演算処理を行うディジタル信号処理手段21と、ΔΣ型AD変換器511、512、51nはΔΣ変調器41とΔΣ変調器41の出力EOに複数並列に接続されたAD変換データ生成部181、182、18mと、ディジタル信号処理手段21から出力される起動トリガ23により動作を開始するタイミング生成回路20と、タイミング生成回路20から時間差をもって出力される複数のAD変換スタート信号121、122、12mと、AD変換スタート信号に基づきAD変換データ生成部181、182、18mから出力される複数のAD変換データ161、162、16mと、タイミング生成回路20から出力されるチャネル選択信号91に基づき前記複数のAD変換データ161、162、16mから1つのAD変換データ61を選択するAD変換データセレクタ241と、複数のAD変換データ生成部から出力される複数のAD変換完了信号171、172、17mと、前記タイミング生成回路20から出力されるチャネル選択信号91に基づき複数のAD変換完了信号171、172、17mから1つのAD変換完了信号71を選択するAD変換完了信号セレクタ251と、AD変換スタート信号121入力によりカウントを開始するAD変換時間計測カウンタ221と、AD変換完了信号171によりAD変換時間を保持するAD変換時間保持部231と、論理回路は複数のΔΣ型AD変換器511、512、51nより出力される複数のAD変換時間81を比較し、AD変換時間が最も長いΔΣ型AD変換器を選択する比較器22と、比較器22から出力される割込み選択信号8に基づき複数のΔΣ型AD変換器511、512、51mより出力される複数のAD変換完了信号71、72、77nから1つの割込み信号を選択する割込み信号セレクタ19と、割込み信号セレクタ19の後段に割込み信号発生後の一定時間、割込み信号の発生をマスクする割込み信号マスク回路27と、を備えたことを特徴とするものである。
本発明における他の代表的な構成は次の通りである。
電流検出器は電動機11に供給される電流を検出し検出電流信号とディジタル指令信号C1に基づき演算処理を行うディジタル信号処理手段9と、前記ディジタル信号処理手段の演算処理結果に基づき電動機印加電圧をPWM制御する電力変換手段10とを備え電動機11に供給される電流をアナログで検出して電流検出信号iA1、iA2を出力する電流検出手段13と、前記電流検出信号をディジタル化してディジタル電流検出信号iD1、iD2を出力し前記ディジタル信号処理手段への割込み信号7を出力する請求項1記載のAD変換装置と、から構成されたことを特徴とするものである。
本発明における他の代表的な構成は次の通りである。
ディジタルサーボ制御装置は電動機11と、電動機の回転子と固定子の相対的な位置を検出する位置検出手段と、電動機に供給される電流を検出する請求項4記載の電流検出器と、検出電流信号とディジタル指令信号C1に基づき演算処理を行うディジタル信号処理手段9と、ディジタル信号処理手段の演算処理結果に基づき電動機印加電圧をPWM制御する電力変換手段10とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1、請求項2に記載の発明によると、予定外に連続して割込み信号が発生して誤動作が生じるのを未然に防止することができ、信頼性の高いAD変換処理を行うことができる。
また、請求項3に記載の発明によると、マスク時間を任意に設定することが可能であるので、ΔΣ型AD変換器の種類により、製造バラツキの度合いやAD変換時間が変わっても、マスク時間の設定を所望の値に変更して、柔軟に対応することができる。
また、請求項4に記載の発明によると、信頼性の高いAD変換装置を用いているので、信頼性の高い電流検出処理を行うことができる。
また、請求項5に記載の発明によると、信頼性の高い電流検出器を用いているので、安全で信頼性の高いディジタルサーボ制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施例を示すAD変換装置の回路図
【図2】第1実施例における動作を示すタイミング図
【図3】本発明の第2実施例を示す電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置のシステム構成図
【図4】第2実施例における動作を示すタイミング図
【図5】第1実施例および第2実施例における割込み信号マスク回路のマスク時間設定レジスタを備えた場合の構成例
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の第一実施例を示すAD変換装置の回路図である。
図1において、511はΔΣ型AD変換器で、アナログ信号101を入力しΔΣ変調器41にてΔΣ変調を行い、符号パルスEOを出力する。また、ΔΣ型変調器41はアナログ信号101とEOの減算を行う減算回路401と、この減算結果を積分する積分回路411と、この積分結果と基準レベルを比較し、クロック421に同期して符号パルスEOを出力する比較回路431から構成される。
141はディジタルフィルタであり、符号パルスEOを入力しフィルタリングしてディジタル信号として出力する。151は平均化回路であり、ディジタルフィルタ141から出力されるディジタル信号の、AD変換スタート信号121の入力からAD変換が完了しAD変換完了信号171が出力されるまでの期間での平均値を求め、AD変換データ161として出力する。181はAD変換データ生成部で、ディジタルフィルタ141と平均化回路151で構成される。
また、AD変換データ生成部181と同じ構成の回路が181、182、・・・、18mと複数チャネル並列に比較回路431の出力EOに接続されており、AD変換データ生成部182はAD変換スタート信号122を受けてAD変換完了信号172およびAD変換データ162を出力し、AD変換データ生成部18mはAD変換スタート信号12mを受けてAD変換完了信号17mおよびAD変換データ16mを出力する。20はタイミング生成回路であり、ディジタル信号処理手段21から入力される起動トリガ23により動作を開始し、AD変換スタート信号121、122、・・・、12mおよびチャネル選択信号91を出力する。241はAD変換データセレクタで、チャネル選択信号91 が1の時にAD変換データ161を、2の時にAD変換データ162を、・・・、mの時にAD変換データ16mを選択し、AD変換データ61を出力する。251はAD変換完了信号セレクタで、チャネル選択信号91が1の時に AD変換完了信号171を、2の時にAD変換完了信号172を、・・・、mの時にAD変換完了信号17mを選択し、AD変換完了信号71を出力する。221はAD変換時間計測カウンタであり、AD変換スタート信号121の立ち上がりで0値に一度クリアされ、その後システムクロックCPによりカウントアップを行い、AD変換完了信号171の立ち上がりでAD変換時間保持部231にカウンタ値を保持し、AD変換時間81を出力する。
同様にΔΣ型AD変換器511と同じ構成の回路が511、512、・・・、51nと複数個並列に並んでおり、ΔΣ型AD変換器512はアナログ信号102と起動トリガ23を入力し、AD変換データ62とAD変換完了信号72とAD変換時間82を出力し、ΔΣ型AD変換器51nはアナログ信号10nと起動トリガ23を入力し、AD変換データ6nとAD変換完了信号7nとAD変換時間8nを出力する。
22は比較器で、AD変換時間81、82、・・・、8nを比較し、最もAD変換時間の遅いものを判別し、割込み選択信号8を出力する。19は割込み信号セレクタで、割込み信号8が1の時にAD変換完了信号71を、2の時にAD変換完了信号72、・・・、nの時にAD変換完了信号7nを選択し、割込み信号7aを出力する。割込み信号マスク回路27はカウンタ24とOR素子26で構成され、カウンタ24より出力されるマスク信号25と割込み信号7aとの論理和をとり、割込み信号7を出力する。ディジタル信号処理手段21は割込み信号7の立ち下がりを受けると、AD変換データ61、62、・・・、6nを読み込み、演算処理を行う。
【0011】
次に本発明の動作について説明する。
図2は第一実施例における動作を示すタイミング図である。
図2において、AD変換スタート信号121の立ち上がりでΔΣ型AD変換器511における1チャネル目のAD変換が開始する。同様にAD変換スタート信号121から一定の時間差をもってAD変換スタート信号122、・・・、12mが発生し、2チャネル目、・・・、mチャネル目のAD変換が順次開始する。
1チャネル目のAD変換が完了した時、チャネル選択信号91は1チャネル目を選択しており、AD変換データ161はAD変換データ61へ、AD変換完了信号171はAD変換完了信号71へ出力される。
同様に2チャネル目、・・・、mチャネル目のAD変換が完了した時、チャネル選択信号91は2チャネル目、・・・、mチャネル目を選択しており、AD変換データ162、・・・、16mはAD変換データ61へ、AD変換完了信号172、・・・、17mはAD変換完了信号71へ出力される。また、AD変換時間81はAD変換完了信号171の立ち上がりで保持される。
同様に、ΔΣ型AD変換器512、・・・、51nよりそれぞれAD変換データ62、・・・、6nおよびAD変換完了信号72、・・・、7nおよびAD変換時間82、・・・、8nが出力される。ここで、ΔΣ型AD変換器511、512、・・・、51nは製造バラツキによりAD変換時間に差が有るが、割込み選択信号8により最も遅いAD変換完了信号が割込み信号7aとして選択される。但し、割込み選択信号8により選択されるAD変換完了信号が入れ替わった場合、図2の割込み信号7aの中間部に示すように、予定外に連続して割込みが発生することがある。
割込み信号マスク回路27のカウンタ24は割込み信号7aの立ち上がり直後にカウンタ値が0値に一度クリアされた後、システムクロックCPに同期してカウントアップを開始し、フルカウントするとカウントアップを停止する。カウント停止するまでの一定時間、マスク信号25がHighレベルとなり、その間は割込み信号7aをマスクする。このため連続して発生した後続の割込み信号7aは割込み信号7としてディジタル信号処理手段21へ出力されることはない。ここで、マスク時間は、割込み信号7のLowパルスの間隔のおよそ半分程度にしておくと、問題なく動作を行うことができる。
以上のように、予定外に連続して割り込みが発生した場合には、後に発生した不要な割込みがマスクされ、割込み信号7としてディジタル信号処理手段21へ出力されるので、正常に割込みを行い、AD変換データ61、62、・・・、6nを読み込むことができる。
【実施例2】
【0012】
図3は、本発明の第二実施例を示す電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置のシステム構成図である。
図3において、電動機11は、三相電動機を例にとって以下説明を行う。
まず、電流検出手段13は、三相電動機11に供給される三相の内2つの電流をアナログ的に検出し、第一の電流検出信号iA1、第二の電流検出信号iA2を出力する。
第一のΔΣ型AD変換器511と第二のΔΣ型AD変換器512はそれぞれ第一の電流検出信号iA1、第二の電流検出信号iA2を入力し、それぞれディジタル化を行い、第一のディジタル電流検出信号iD1、第二のディジタル電流検出信号iD2を出力する。
位置検出手段12は、電動機11の回転子と固定子の相対的な位置を検出し、その位置検出信号S1を出力する。
22は比較器で、AD変換時間81、82を比較し、AD変換時間の遅いものを判別し、割込み選択信号8を出力する。19は割込み信号セレクタで、割込み選択信号8が1の時にAD変換完了信号71を、2の時にAD変換完了信号72を選択し、割込み信号7aを出力する。割込み信号マスク回路27はカウンタ24とOR素子26で構成され、カウンタ24より出力されるマスク信号25と割込み信号7aとの論理和をとり、割込み信号7を出力する。ディジタル信号処理手段9は第一のディジタル電流検出信号iD1、第二のディジタル電流検出信号iD2、位置検出信号S1およびディジタル指令信号C1を入力し、割込み信号7の立ち下がりを受けると、これらを演算処理することにより第一のPWM指令信号P1、第二のPWM指令信号P2、第三のPWM指令信号P3、第四のPWM指令信号P4、第五のPWM指令信号P5、第六のPWM指令信号P6を出力する。また、ディジタル信号処理手段9は電流アンプ、速度アンプ、位置アンプとPWM発生回路とを含んだ回路をディジタル回路、またはDSP、マイコン等を用いたソフトウェアにより構成される。
電力変換手段10は、三相ブリッジ構成の6組のパワー素子と還流ダイオードにより構成され、それぞれに対応した第一、第二、第三、第四、第五、第六のPWM指令信号P1、P2、P3、P4、P5、P6に応じて電動機印加電圧をPWM制御する。
次に本発明の動作について説明する。
図4は第二実施例における動作を示すタイミング図である。
図4において、第一のΔΣ型AD変換器511と第二のΔΣ型AD変換器512は、AD変換データ生成部181、182、183、184を4チャネル並列化した場合を例にとって以下説明を行う。
AD変換スタート信号121の立ち上がりでΔΣ型AD変換器511における1チャネル目のAD変換が開始する。同様にAD変換スタート信号121から一定の時間差をもってAD変換スタート信号122、・・・、124が発生し、2チャネル目、・・・、4チャネル目のAD変換が順次開始する。予めAD変換時間を予測して周期を設定しておき、設定値に従いチャネルを切り換えることによって1チャネル目のAD変換が完了した時、チャネル選択信号91は1チャネル目を選択し、AD変換データ161はAD変換データ61へ、AD変換完了信号171はAD変換完了信号71へ出力される。
同様に2チャネル目、・・・、4チャネル目のAD変換が完了した時、チャネル選択信号91は2チャネル目、・・・、4チャネル目を選択しており、AD変換データ162、・・・、164はAD変換データ61へAD変換完了信号172、・・・、174はAD変換完了信号71へ出力される。また、AD変換時間81はAD変換完了信号171の立ち上がりで保持される。
同様に、ΔΣ型AD変換器512よりAD変換データ62およびAD変換完了信号72およびAD変換時間82が出力される。ここで、ΔΣ型AD変換器511、512は製造バラツキによりAD変換時間に差が有るが、割込み選択信号8により遅い方のAD変換完了信号が割込み信号7aとして選択される。但し、図に示すように、割込み選択信号8により選択されるAD変換完了信号が入れ替わった場合、予定外に連続して割込みが発生することがある。
カウンタ24は割込み信号7aの立ち上がり直後にカウンタ値が0値に一度クリアされた後、システムクロックCPに同期してカウントアップを開始し、フルカウントするとカウントアップを停止する。カウント停止するまでの一定時間、マスク信号25がHighレベルとなり、その間、割込み信号7aをマスクし、割込み信号7としてディジタル信号処理手段9へ出力される。
第一のPWM指令信号P1は、PWMキャリア毎に生成されるPWM信号であり、電流は第一の電流検出信号iA1である。
ΔΣ型AD変換器511は、上記PWMキャリアの周期にADデータ生成部のチャネル数を掛けた期間に、iA1をディジタル化したディジタル信号を複数回サンプリングする。この図4では、例としてPWMキャリアの周期の4倍の期間に16回のサンプリングを行う場合について示している。
すなわち、iA1のディジタル化したディジタル信号を16回サンプリングし、その16回のサンプリングの平均値を平均化回路151が求め、これをディジタル電流検出信号iD1としている。
以上のように、予定外に連続して割り込みが発生した場合には、後に発生した不要な割込みがマスクされ、割込み信号7としてディジタル信号処理手段9へ出力されるので、正常に割込みを行い、ディジタル電流検出信号iD1、iD2を読み込むことができる。
図5は第1実施例および第2実施例における割込み信号マスク回路のマスク時間設定レジスタを備えた場合の構成例である。
図5において、割込み信号マスク回路27はカウンタ24とOR素子26とマスク時間設定レジスタ28で構成され、カウンタ24より出力されるマスク信号25と割込み信号7aとの論理和をとり、割込み信号7を出力する。
マスク時間設定レジスタ28には、CPU等により予め任意の値に設定しておき、割込み信号7aの立ち上がり直後にカウンタ値が0値に一度クリアされた後、システムクロックCPに同期してカウントアップを開始し、カウンタ24のカウンタ値とマスク時間設定レジスタ28に設定されたマスク時間設定値が等しくなったところで、カウントアップを停止する。その間は割込み信号7aをマスクし、連続して発生した後続の割込み信号7aは割込み信号7としてディジタル信号処理手段21へ出力されることはない。
なお、以上の実施例では、割込み信号マスク回路27がカウンタ24とOR素子26で構成されたものを例に説明を行っているが、同様の動作を行う回路であれば何でもよい。
【符号の説明】
【0013】
511、512、513 ΔΣ型AD変換器
7、7a 割込み信号
8 割込み選択信号
9、21 ディジタル信号処理手段
10 電力変換手段
11 電動機
12 位置検出手段
13 電流検出手段
19 割込み信号セレクタ
20 タイミング生成回路
21 ディジタル信号処理手段
22 比較器
23 起動トリガ
24 カウンタ
25 マスク信号
26 OR素子
27 割込み信号マスク回路
28 マスク時間設定レジスタ
41 ΔΣ変調器
61、62、・・・、6n、161、162、・・・、16m AD変換データ
71、72、・・・、7n AD変換完了信号
81、82、・・・、8n AD変換時間
91 チャネル選択信号
101、102、・・・、10n アナログ信号
121、122、・・・、12m AD変換スタート信号
141 ディジタルフィルタ
151 平均化回路
171、172、・・・、17m AD変換完了信号
181、182、・・・、18m AD変換データ生成部
221 AD変換時間計測カウンタ
231 AD変換時間保持部
241 AD変換データセレクタ
251 AD変換完了信号セレクタ
401 減算回路
411 積分回路
421 クロック
431 比較回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号がそれぞれ入力され、AD変換スタート信号によりAD変換を開始し、AD変換の終了によりAD変換完了信号をそれぞれ出力する複数のΔΣ型AD変換器511、512、51nと、前記複数のΔΣ型AD変換器から出力されるAD変換完了信号71、72、7nから1つの割込み信号7を生成する論理回路と、前記割込み信号7の受信により前記複数のΔΣ型AD変換器511、512、51nのAD変換データ61、62、6nを読み込み演算処理を行うディジタル信号処理手段21と、
前記ΔΣ型AD変換器511、512、51nはΔΣ変調器41と前記ΔΣ変調器41の出力EOに複数並列に接続されたAD変換データ生成部181、182、18mと、前記ディジタル信号処理手段21から出力される起動トリガ23により動作を開始するタイミング生成回路20と、
前記タイミング生成回路20から時間差をもって出力される複数のAD変換スタート信号121、122、12mと、前記AD変換スタート信号に基づき前記AD変換データ生成部181、182、18mから出力される複数のAD変換データ161、162、16mと、前記タイミング生成回路20から出力されるチャネル選択信号91に基づき前記複数のAD変換データ161、162、16mから1つのAD変換データ61を選択するAD変換データセレクタ241と、
前記複数のAD変換データ生成部から出力される複数のAD変換完了信号171、172、17mと、前記タイミング生成回路20から出力されるチャネル選択信号91に基づき前記複数のAD変換完了信号171、172、17mから1つのAD変換完了信号71を選択するAD変換完了信号セレクタ251と、
前記AD変換スタート信号121入力によりカウントを開始するAD変換時間計測カウンタ221と、
前記AD変換完了信号171によりAD変換時間を保持するAD変換時間保持部231と、
前記論理回路は前記複数のΔΣ型AD変換器511、512、51nより出力される複数のAD変換時間81を比較し、前記AD変換時間が最も長いΔΣ型AD変換器を選択する比較器22と、
前記比較器22から出力される割込み選択信号8に基づき前記複数のΔΣ型AD変換器511、512、51mより出力される複数のAD変換完了信号71、72、77nから1つの割込み信号を選択する割込み信号セレクタ19を備えたAD変換装置であって、
前記割込み信号セレクタ19の後段に割込み信号発生後の一定時間、割込み信号の発生をマスクする割込み信号マスク回路27を備えたことを特徴とするAD変換装置。
【請求項2】
前記割込み信号マスク回路27はカウンタ24とOR素子26で構成され、割込み信号が発生した直後にカウンタ値が0値に一度クリアされてカウントを開始し、カウント停止するまでの一定時間、割込み信号をマスクすることを特徴とする請求項1記載のAD変換装置。
【請求項3】
前記割込み信号マスク回路27はカウンタ24とOR素子26とマスク時間設定レジスタ28で構成され、マスク時間設定レジスタ28にカウンタ24が停止するカウンタ値を予め任意の値に設定し、割込み信号が発生した直後にカウンタ値が0値に一度クリアされてカウントを開始し、カウンタ値とマスク時間設定値が等しくなりカウント停止するまでの一定時間、割込み信号をマスクすることを特徴とする請求項1記載のAD変換装置。
【請求項4】
電動機11に供給される電流を検出し検出電流信号とディジタル指令信号C1に基づき演算処理を行うディジタル信号処理手段9と、前記ディジタル信号処理手段9の演算処理結果に基づき電動機印加電圧をPWM制御する電力変換手段10とを備えたディジタルサーボ制御装置における電流検出器であって、
前記電流検出器は前記電動機11に供給される電流をアナログで検出して電流検出信号iA1、iA2を出力する電流検出手段13と、前記電流検出信号をディジタル化してディジタル電流検出信号iD1、iD2を出力し前記ディジタル信号処理手段への割込み信号7を出力するAD変換装置からなり、前記AD変換装置が請求項1記載のAD変換装置から構成されたことを特徴とする電流検出器。
【請求項5】
電動機11と、前記電動機の回転子と固定子の相対的な位置を検出する位置検出手段と、前記電動機に供給される電流を検出する電流検出器と、検出電流信号とディジタル指令信号C1に基づき演算処理を行うディジタル信号処理手段9と、前記ディジタル信号処理手段の演算処理結果に基づき電動機印加電圧をPWM制御する電力変換手段10とを備えたディジタルサーボ制御装置であって、
前記電流検出器が請求項4記載の電流検出器からなることを特徴とするディジタルサーボ制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−188236(P2011−188236A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51448(P2010−51448)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】