ADDL受容体を含む組成物、関連する組成物、および関連する方法
ADDL受容体を含む組成物、関連する組成物、および関連する方法を本明細書中に開示し、特許請求の範囲に記載する。ADDL受容体は、典型的には、ニューロン細胞のシナプス後膜肥厚(PSD)に局在するが、おそらくこれに限定されない。関連する組成物には、シナプス後膜肥厚(PSD)に局在した1又は複数の受容体またはそれ以外のいずれかを介してニューロン細胞へのADDL結合に正または負の影響を与える化合物が含まれるが、これらに限定されない。関連する方法には、シナプス後膜肥厚(PSD)に局在した1又は複数の受容体またはそれ以外のいずれかを介してニューロン細胞へのADDL結合に正または負の影響を与える化合物のスクリーニング手順が含まれるが、これらに限定されない。他の関連する方法には、ニューロン細胞のシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDL結合を阻害するか、遮断するか、そうでなければ妨害する組成物を使用したアルツハイマー病、軽度認知障害、およびダウン症候群などのADDL関連疾患の防止および治療が含まれるが、これらに限定されない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援の記述
本明細書中に記載の本発明の一部を、保健社会福祉省の国立衛生研究所からの助成金(助成金番号NIHR01−AG18877、NIH R01−AG22547、およびNIH R03−AG22237)を使用して行った。したがって、政府は、本発明において一定の権利を有し得る。さらに、本発明の一部を、イリノイ州公衆衛生局の助成金(ADRF助成金番号33280010および43280003)を使用して行った。
【0002】
本発明は、生物学および薬物の分野に関する。具体的には、本発明は、神経変性疾患(アルツハイマー病、軽度認知障害、およびダウン症候群などのADDL関連疾患が含まれるが、これらに限定されない)の防止、診断、および治療に関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、剖検で病理学的特性(脳質量の減少、特定のニューロン小集団の喪失、ならびに老人斑および神経原線維変化の蔓延が含まれるが、これらに限定されない)によって特徴づけられる進行性の変性認知症である(例えば、Terry,R.D.,et al.(1991)Ann.Neurol.,vol.30,pp.572−580;Coyle,J.T.(1987)Alzheimer’s Disease.In:Encyclopedia of Neuroscience(Adelman G,ed),pp 29−31.Boston−Basel−Stuttgart:Birkhaeuser;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。しかし、その初期段階では、ADは、主に、新たな記憶形成が著しく不可能になることによって発症する(例えば、Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.298,pp.789−791;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。この特定の影響についての根拠は知られていないが、現在、アミロイドβ(Aβ)ペプチド由来の神経毒の関与が支持されている。Aβは、両親媒性ペプチドであり、そのより長い凝集傾向のある42アミノ酸形態が豊富なことにより、遺伝子の変異およびADに関連する危険因子が増加する。Aβ 1〜42は原線維に容易にアセンブリし、ADの病理学的特性の1つであるアミロイド斑としてAD脳組織に沈着する(用語「アミロイド」は、特色のある複屈折コンゴレッド染色性を有するタンパク質沈着物に与えられた一般名である)。アミロイド斑の蔓延およびAβ1〜42原線維のインビトロ神経毒性により、元のアミロイドカスケード仮説についての中心となる論理的根拠が得られ、原線維Aβの沈着がニューロンの死滅ならびにその後の記憶喪失および認知低下の原因とされた。
【0004】
その強力な実験による裏付けおよび直感的な魅力(appeal)にも関わらず、元のアミロイドカスケード仮説は、鍵となる所見との矛盾(認知症とアミロイド斑負荷との間の相関が低いことが含まれる)が証明された(例えば、Katzman,R.et al.(1988)Ann.Neurol.,vol.23,pp.138−144;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。特に、最近の研究で、トランスジェニックhAPPマウスを使用して実施したADワクチン実験が報告されている(例えば、Dodart,J.C.et al.(2002)Nat.Neurosci.,vol.5,pp.452−457;Kotilinek,L.A.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.6331−6335;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。これらのマウスにより、発症年齢依存性アミロイド斑、最も重要には、発症年齢依存性記憶機能障害を発症する初期ADの良好なモデルが得られる。マウスをAβに対するモノクローナル抗体で処置した場合に、以下の2つの驚くべき所見が得られた。(1)ワクチン接種したマウスは記憶喪失の逆転が認められ、24時間で明らかに回復したこと、(2)プラークレベルは変化しないにもかかわらず、ワクチン接種の認知に対する利点が生じた。このような所見は、アミロイド原線維に起因するニューロン死に依存的な記憶喪失機構と一致しない。
【0005】
元の仮説の主な欠点を、Aβ自己組織化によって形成された非原線維性の(non−fibrillar)神経学的に活性な分子が果たす役割を組み込んだ最新の仮説で解決しようと努力している(例えば、Klein,W.L.et al.(2001)Trends Neurosci.,vol.24,pp.219−224;およびその参考文献などを参照のこと)。このような分子を、ADDLといい、42アミノ酸Aβペプチドの可溶性神経毒性アセンブリである。ADDLは、AD関連アミロイド斑で見出される不溶性Aβ原線維と基本的に構造が異なり(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、ADDLは、記憶機能不全の根本にある原因としてAβ原線維に対する概念的サロゲートである。プラークに起因する非特異的細胞損傷と対照的に、ADDLはニューロンの特定のサブセットにおける異常なシグナル伝達を誘発し、細胞死に遥か先立って記憶機能を危うくする(例えば、Kirkitadze,M.D.et al.(2002)J,Neurosci,Res.,vol.69,pp.567−577;Klein,W.L.et al.(2001)Trends Neurosci.,vol.24,pp.219−224;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。Aβ1−42オリゴマーはSDSに対して安定であり、低濃度のAβ42で形成される(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;およびその参考文献などを参照のこと)。本質的に、元のカスケードの連鎖の喪失により、動物および脳組織スライス培養物の両方において、ADDLが急速に長期電位(LTP)を阻害する。LTPは、記憶およびシナプス可塑性についての古典的な実験パラダイムである。したがって、ADDLは特異的な神経薬理学的リガンドであり、その作用は、適切な治療介入によって可逆的なはずであり、これは本出願の主題である。ADについての最新のADDL仮説により、以下のように結論づけられている。(1)記憶喪失は、ニューロン死前のシナプス不全に起因すること、および(2)シナプス不全は原線維ではなくADDLに起因すること(例えば、Hardy,J.& Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.297;pp.353−356;およびその参考文献などを参照のこと)。この仮説は、脳組織内に可溶性オリゴマーが生じ、これがAD(例えば、Kayed,R.et al.(2003)Science,vol.300,pp.486−489;Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)およびhAPPトランスジェニックマウスADモデル(Kotilinek,L.A.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.6331−6335;Chang,L.et al.(2003)J.Mol.Neurosci.,vol.20,pp.305−313;および上記のいずれかにおける参考文献など)で著しく上昇し得るという最近の報告で支持され得る。ADDLはまた、年齢適合コントロールでのレベルと比較してAD患者の脳脊髄液(CSF)で上昇する(Georganopoulou,D.G.et al.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.102,no.7,pp.2273−2276;およびその参考文献など)。
【0006】
現在、ADDLオリゴマーがニューロンと相互作用する機構が非常に注目されている(例えば、Caughey,B.& Lansbury,P.T.(2003)Annu.Rev.Neurosci.,vol.26,pp.267−298;およびその参考文献などを参照のこと)。以前の仮説は、Aβ単量体またはオリゴマーの膜挿入または細胞傷害性の孔の形成が思い出されるが、これらの過程は非特異的であり、ADで認められた損傷した神経細胞の選択性の高いパターンを説明することができない。あるいは、ADDLは、特異性の高いリガンドとして特定の膜標的に結合し、それにより、ADで見出される高度に選択的なシナプス病変および異なるパターンの症状が生じ得る。本明細書中では、ADDLと培養した海馬ニューロンの小集団との間の高度に特異的な結合相互作用を報告するために結果を示す。これらの相互作用は、AD脳組織から抽出したADDLおよび合成Aβ1−42からインビトロで調製したADDLで同一なようである。細胞表面でのADDL結合は、シナプス終末の小集団とほとんど排他的に同時局在化された小さな点状のクラスターとして出現する。高特異的シナプス結合は、その過剰発現が学習機能障害に関連しているArc(最初期遺伝子)の異所性誘導に付随して起こる。ADDLによる特定のシナプスの選択的ターゲティングおよび機能崩壊が初期ADおよび軽度認知障害における記憶機能の特異的喪失の根底にあり得る可能性がある。この事象では、これらのADDL関連疾患の治療介入は、ADDL形成、ADDLシグナル伝達、またはADDL受容体結合を妨害する薬剤(本出願の主題)に注目すべきである。
【0007】
本出願は、米国特許第6,218,506号;国際特許公開番号WO 98/33815号;米国特許出願番号第60/086,582号;米国特許出願番号第09/369,236号;国際特許出願番号PCT/US00/21458号;米国特許出願番号第09/745,057;米国特許出願番号第10/166,856;国際特許出願番号PCT/US03/19640;米国特許出願番号第60/095,264;米国特許出願番号第60/415,074号;米国特許出願番号第10/676,871号;米国特許出願番号第10/924,372号;国際特許出願番号PCT/US03/30930;米国特許出願番号第60/568,449号;米国特許出願番号第60/571,267号;米国特許出願番号第60/584,695号;米国特許出願番号第60/621,776号;米国特許出願番号第60/636,466号;米国特許出願番号第2003/0068316号;国際特許公開番号WO 04/031400;国際特許公開番号WO 01/10900;および国際特許公開番号WO 98/33815などに関連する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書中に開示され、且つ特許請求の範囲に記載の発明の実施形態は、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体であって、前記1又は複数の受容体がADDLに結合する1又は複数の受容体を含む組成物を含む。当該1又は複数の受容体は、synGAP、proSAP2/Shank3、グルタミン酸受容体、カイニン酸サブタイプグルタミン酸受容体、GluR6、AMPAサブタイプグルタミン酸受容体、GluR2、mGluR1a、mGluR1b、mGluR1c、mGluR1d、mGluR5a、mGluR5b、NMDAサブタイプグルタミン酸受容体、インテグリン受容体、接着受容体、NCAM、L1、カドヘリン、栄養因子受容体、線維芽細胞成長因子受容体1、線維芽細胞成長因子受容体2、TrkA受容体、TrkB受容体、erbB4受容体、erbB/EGF受容体ファミリーの近接な(close)ホモログ、トロフィン(trophin)に結合する受容体、インスリン受容体(IR)、インスリン成長因子受容体1(IGF−1)で、GABA受容体、ナトリウム/カリウムATPアーゼ(Na+/K-ATPアーゼ)、CAMキナーゼII、PrPタンパク質、タンパク質チロシンホスファターゼα(RPTPα)タンパク質、ソマトスタチン受容体、カンナビノイド受容体、σ受容体、および/またはVIP/PACAL受容体であり得る。本発明はまた、上記受容体の任意の組み合わせおよび全ての組み合わせを含む。
【0009】
本発明の別の実施形態は、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を含む組成物を含む。本発明は、さらに、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を含む医薬調製物を含む。別の実施形態は、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を阻害する1又は複数の化合物を含む組成物を含む。別の実施形態は、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を阻害する1又は複数の化合物を含む組成物であって、前記1又は複数の化合物がCNQXである、組成物を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態は、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を投与する工程を含む、ADDL関連疾患の治療方法を含む。特に、ADDL関連疾患には、アルツハイマー病(AD)、軽度認知障害(MCI)、およびダウン症候群などが含まれるが、これらに限定されない。本発明の別の実施形態は、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を投与する工程と、前記1又は複数の化合物が、CNQXまたはCNQXの医薬として許容される誘導体であることとを含む、ADDL関連疾患の治療方法を含む。本発明の別の実施形態は、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を投与する工程と、前記1又は複数の受容体が、synGAP、proSAP2/Shank3、グルタミン酸受容体、カイニン酸サブタイプグルタミン酸受容体、GluR6、AMPAサブタイプグルタミン酸受容体、GluR2、mGluR1a、mGluR1b、mGluR1c、mGluR1d、mGluR5a、mGluR5b、NMDAサブタイプグルタミン酸受容体、インテグリン受容体、接着受容体、NCAM、L1、カドヘリン、栄養因子受容体、線維芽細胞成長因子受容体1、線維芽細胞成長因子受容体2、TrkA受容体、TrkB受容体、erbB4受容体、erbB/EGF受容体ファミリーの近接な(close)ホモログ、トロフィン(trophin)に結合する受容体、インスリン受容体(IR)、インスリン成長因子受容体1(IGF−1)で、GABA受容体、ナトリウム/カリウムATPアーゼ(Na+/K-ATPアーゼ)、CAMキナーゼII、PrPタンパク質、受容体タンパク質チロシンホスファターゼα(RPTPα)タンパク質、ソマトスタチン受容体、カンナビノイド受容体、σ受容体、および/またはVIP/PACAL受容体であることとを含む、ADDL関連疾患の治療方法を含む。本発明は、さらに、これらの受容体の任意の組み合わせおよび全ての組み合わせを含むこのような方法を含む。
【0011】
本発明は、さらに、ビオチン標識ADDLを含む組成物を含む。特に、当該組成物は、1又は複数のビオチン部分を含むADDLを含む。より具体的には、当該組成物は、抗体によって認識される1又は複数のエピトープを含むADDLを含む。特に、当該エピトープはペプチド配列である。より具体的には、当該エピトープは有機小分子である。
【0012】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートである、組成物を含む。
【0013】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、前記サロゲートが、内部βシートを形成することができる特定の構造エレメントを含むペプチドまたはペプチド模倣物を含み、その形成によってオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0014】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、内部C末端βシートを形成することができる特定の構造エレメントを含むペプチドまたはペプチド模倣物を含み、その形成によってオリゴマーにアセンブリすることができ、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0015】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、モチーフ:
【化1】
(式中、Zは、グリシル−グリシル、プロリル−グリシル、グリシル−プロリル、またはβターンを形成することができる任意の他のジペプチドもしくはジペプチド模倣物または任意の他のβターン模倣物であり、Xは任意のアミノ酸またはアミノ酸模倣物である)を含むペプチドまたはペプチド模倣物を含み、その存在によって内部βシートを形成することができ、その形成によってオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0016】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、オリゴマーにアセンブリすることができるジペプチド官能化βターン模倣物を含み、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0017】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化2】
(式中、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基である)を含み、前記ペプチドがオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0018】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化3】
(式中、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基であり、Xは任意の疎水性アミノ酸である)を含み、前記ペプチドがオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0019】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化4】
(式中、Rは任意のペプチドであり、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基である)を含み、前記ペプチドがオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0020】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化5】
(式中、Rは任意のペプチドであり、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基であり、Xは任意の疎水性アミノ酸である)を含み、前記ペプチドがオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0021】
本発明は、さらに、蛍光標識ADDLを含む、組成物を含む。特に、蛍光標識は、フルオレセイン、テトラメチルローダミンおよび/またはAlexa(登録商標)色素である。
【0022】
本発明は、さらに、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を妨害する化合物のスクリーニング方法であって、a)ADDLを生成する工程と、b)工程a)で生成したADDLを、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、c)シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合に及ぼす1又は複数の化合物の影響を測定する工程とを含む方法を含む。特に、ADDLは、ビオチン標識ADDL、蛍光標識ADDL、またはビオチン標識ADDLと蛍光標識ADDLとの組み合わせである。さらにより具体的には、1又は複数のシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体に結合した場合にADDLを認識する抗体を測定(または検出)に使用する。さらにより具体的には、組成物が1又は複数のニューロンのシナプス後膜肥厚に局在した受容体に結合する場合、ビオチン標識ADDL内でビオチンを認識するアビジンまたはストレプトアビジンを測定(または検出)に使用する。また、特に、検出によって抗ADDL抗体を認識する蛍光標識二次抗体に会合した蛍光量を測定(または検出)する。特に、測定(または検出)によって酵素−抗体抱合体または酵素−ストレプトアビジン抱合体によって生成された蛍光シグナルまたは発光シグナルを測定する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する化合物の同定方法であって、a)ADDLサロゲートを生成する工程と、b)工程a)で生成したADDLサロゲートを、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、c)シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合に及ぼす1又は複数の化合物の影響を測定する工程とを含む方法を含む。
【0024】
本発明の別の実施形態は、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する化合物の同定方法であって、a)ADDLサロゲートを生成する工程と、b)工程a)で生成したADDLサロゲートを、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、c)抗arc抗体を使用して、ニューロン内で産生されたarcタンパク質量を測定する工程と
を含む方法を含む。
【0025】
本発明の別の実施形態は、シナプス後膜肥厚へのADDL結合を測定する方法であって、a)ADDLを生成する工程と、b)工程a)で生成したADDLを、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、c)シナプス後膜肥厚へのADDL結合に特徴的な点状の結合を測定する工程とを含む方法を含む。
【0026】
本発明の別の実施形態は、シナプス後膜肥厚へのADDL結合を妨害する化合物の同定方法であって、a)ADDLを生成する工程と、b)工程a)で生成したADDLを、シナプス後膜肥厚へのADDLの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、c)シナプス後膜肥厚へのADDL結合に特徴的な点状の結合に及ぼす1又は複数の化合物の影響を測定する工程とを含む方法を含む。
【0027】
別の実施形態は、ADDLとシナプス後樹状突起棘との間の相互作用を媒介するADDL結合タンパク質を含む。本発明の1つの実施形態は、ADDL(synGAPとグルタミン酸受容体とで共有されるアミノ酸配列)に結合するsynGAPタンパク質である。当該配列は、synGAPのアミノ酸
【化6】
またはその活性なフラグメントを含み得る。当該配列は、GluR2のアミノ酸
【化7】
またはその活性なフラグメントを含み得る。当該配列は、GluR5のアミノ酸
【化8】
またはその活性なフラグメントを含み得る。当該配列は、GluR6のアミノ酸
【化9】
またはその活性なフラグメントを含み得る。当該配列は、1又は複数のこれらの配列と95%相同、1又は複数のこれらの配列と90%相同、1又は複数のこれらの配列と85%相同、1又は複数のこれらの配列と80%相同、1又は複数のこれらの配列と75%相同、および1又は複数のこれらの配列と70%相同である他の配列を含み得る。
【0028】
本発明の別の実施形態は、1又は複数のグルタミン酸受容体および1又は複数のシナプス後膜肥厚(PSD)足場タンパク質(proSAP2/shank3が含まれるが、これらに限定されない)を含むADDL受容体複合体である。ADDLがこのような受容体複合体に結合する場合、グルタミン酸受容体シグナル伝達が活性化され、LTPが遮断される。
【0029】
本発明のさらなる実施形態は、ADDL受容体複合体へのADDLの結合を無効にし、LTPのADDL遮断を防止するアンタゴニスト分子を含む。本発明のさらなる実施形態は、アルツハイマー病、軽度認知障害、虚血および脳卒中誘導性認知症、ならびにダウン症候群などのADDL関連疾患を治療するための抗ADDL化合物を発見する方法および抗ADDL化合物の使用方法を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
従来の研究技術および手順を、一般に、当分野で周知であり、本明細書中のいたるところで引用し、考察した種々の一般的な文献およびより特有の文献にしたがって行うことができる。例えば、Sambrook et al.(2001,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)(任意の目的のために本明細書中で参考として組み込まれる)を参照のこと。特に定義しない限り、本明細書中に記載の分子生物学、遺伝子操作、分析化学、有機合成化学、医化学、および薬化学に関連して使用した用語ならびにこれらの実験手順および技術は、当業者に周知であり、当分野で一般的に使用されている。化学合成、化学分析、医薬品、製剤、および送達、ならびに患者の治療のための標準的技術を使用することができる。
【0031】
実施形態によっては、本発明は、治療有効量(すなわち、用量)のニューロン後膜肥厚へのADDL結合を阻害する化合物を含む医薬組成物を提供する。当分野で周知のように、このような組成物を、医薬として許容される希釈剤、キャリア、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、および/またはアジュバントと共に調製することができる。
【0032】
本明細書中で使用される、用語「薬剤」は、化合物、化合物の混合物、生体高分子、または生体物質から作製した抽出物を示す。
【0033】
本明細書中で使用される、用語「医薬組成物」は、患者に適切に投与された場合に所望の治療効果を誘導することができる本明細書中に記載の医薬として許容されるキャリア、賦形剤、または希釈剤および化合物、ペプチド、または組成物を含む組成物をいう。
【0034】
本明細書中で使用される、用語「治療有効量」は、哺乳動物で治療反応が得られると判断された本発明のスクリーニング法で同定された本発明の医薬組成物または化合物の量をいう。このような治療有効量は、当業者によって本明細書中に記載の方法を使用して容易に突き止められる。
【0035】
本明細書中で使用される、用語「実質的に純粋な」は、対象となる種が支配的に存在する種であることを意味する(すなわち、モルをベースとして、組成物の任意の他のそれぞれの種よりも豊富である)。実施形態によっては、実質的に精製された画分は、存在する全ての高分子種の少なくとも約50%(モルをベースとして、重量、または数をベースとする)の対象となる種を含む組成物である。実施形態によっては、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種の約80%、85%、90%、95%、または99%超を含む。実施形態によっては、対象となる種を本質的に均一に精製し(従来の検出方法によって組成物中に夾雑する種を検出することができない)、組成物が本質的に単一の高分子種からなる。
【0036】
本明細書中で使用される、用語「患者」には、ヒトおよび動物の被験体が含まれる。
【0037】
文脈上他で必要とされない限り、単数形は複数形を含み、複数形は単数形を含む。
【0038】
本明細書中で意図される投与経路は、任意の全身手段(経口、腹腔内、皮下、静脈内、筋肉内、経皮、吸入、または他の投与経路が含まれる)であり得る。浸透圧ミニポンプおよび徐放性ペレット、または他のデポー投与形態も使用することができる。許容可能な処方材料は、好ましくは、使用される投薬量および濃度でレシピエントに無毒である。医薬組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧、粘度、透明度、色、等張性、臭い、無菌性、安定性、溶解および放出速度、吸着、または浸透の改変、維持、または保存のための処方材料(formulation material)を含み得る。適切な処方材料には、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなど);抗菌薬;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝液(ホウ酸、重炭酸、Tris−HCl、クエン酸、リン酸、または他の有機酸の緩衝液など);増量剤(マンニトールまたはグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β−シクロデキストリン、またはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類、二糖類、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);着色料、香味物質、および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、または過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);懸濁剤;界面活性剤または湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート(ポリソルベート20およびポリソルベート80など)、Triton、トリメタミン、レシチン、コレステロール、またはチロキサポールなど);安定増強剤(スクロースまたはソルビトールなど);等張化剤(アルカリ金属ハライド(好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)、マンニトール、またはソルビトールなど);送達媒体(delivery vehicle);希釈剤;賦形剤;および/または医薬アジュバントが含まれるが、これらに限定されない。例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition,(A.R.Gennaro,ed.),1990,Mack Publishing Companyを参照のこと。
【0039】
当業者は、本明細書中で考察した化合物に関して、このような化合物はキラル中心を含み得ることを認識している。したがって、このような薬剤は、異なる鏡像異性体または鏡像異性体混合物として存在し得る。いずれか1つの鏡像異性体のみまたは1又は複数の立体異性体との鏡像異性体混合物内に含まれる鏡像異性体の使用は、本発明で意図される。
【0040】
当業者は、最適な医薬組成物を、例えば、意図する投与経路、送達形式、および所望の投薬量に依存して決定することができる。例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,Idを参照のこと。このような組成物は、本発明の抗体の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響を与え得る。
【0041】
医薬組成物中の主要な媒体またはキャリアは、事実上水性または非水性であり得る。例えば、適切な媒体またはキャリアは、場合によって非経口投与用組成物に共通の他の材料を補足した注射用の水、生理食塩水、または人工脳脊髄液であり得る。中性緩衝化生理食塩水または血清アルブミンと混合した生理食塩水は、さらなる例示的な媒体である。医薬組成物は、約pH7.0〜8.5のTris緩衝液または約pH4.0〜5.5の酢酸緩衝液を含むことができ、ソルビトールまたは適切なそのサロゲートをさらに含み得る。本発明の医薬組成物を、保存のために凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で所望の精製度の選択された組成物と任意選択的な製剤(formulation agent)(REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,Id)との混合によって調製することができる。さらに、組成物を、スクロースなどの適切な賦形剤を使用して凍結乾燥物として処方することができる。
【0042】
処方成分は、投与部位に許容可能な濃縮物中に存在する。緩衝液を有利に使用して、生理学的pHまたは僅かに低いpH、典型的には約5〜約8のpH範囲に組成物を維持する。
【0043】
本発明の医薬組成物を、非経口送達させることができる。非経口投与を意図する場合、本発明で使用される治療組成物は、医薬として許容される媒体中に本発明のスクリーニング法で同定された所望の化合物を含む無発熱物質の非経口に許容可能な水溶液の形態であり得る。特に適切な非経口注射用媒体は、本発明のスクリーニング法で同定された化合物が適切に保存される滅菌等張溶液として配合される滅菌蒸留水である。調製物は、注射可能なミクロスフェア、生体侵食粒子、高分子化合物(ポリ乳酸またはポリグリコール酸など)、生成物を制御放出させるか徐放させ、その後にデポー注射によって送達することができるビーズまたはリポソームなどの薬剤を含む所望の分子の製剤を含み得る。ヒアルロン酸を含む製剤は、循環血液中での徐放を促進する効果がある。植え込み型薬物送達デバイスを使用して、所望の分子を移入することができる。
【0044】
組成物を、吸入のために処方することができる。これらの実施形態では、本明細書中に開示の組成物を、吸入用の乾燥粉末として処方することができるか、噴霧化によるなどのエアゾール送達のための噴射剤を使用して吸入溶液を処方することもできる。肺投与は、PCT出願番号PCT/US94/001875にさらに記載されており、肺送達を記載しており、参考として組み込まれる。
【0045】
本発明の医薬組成物を、経口などの消化管を介して送達させることができる。このような医薬として許容される組成物の調製は、当業者の範囲内である。この様式で投与すべき本明細書中に開示の組成物を、錠剤およびカプセルなどの固体剤形の配合で習慣的に使用卯されるキャリアを使用するか使用しないで処方することができる。カプセルを、生物学的利用能が最大になり、且つ事前の全身分解が最小になる場合に胃腸管で製剤の活性部分が放出されるようにデザインすることができる。本明細書中に開示のアンタゴニストまたはアゴニストの吸収を促進するためのさらなる薬剤を含めることができる。希釈剤、香味物質、低融点のワックス、植物油、潤滑剤、懸濁剤、錠剤の崩壊剤、および結合剤も使用することができる。
【0046】
医薬組成物は、錠剤の製造に適切な非毒性賦形剤と組み合わせた本明細書中に開示の有効量の化合物を含み得る。滅菌水または他の適切な媒体への錠剤の溶解により、溶液を単位剤形で調製することができる。適切な賦形剤には、不活性希釈剤(炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ラクトース、またはリン酸カルシウムなど)、結合剤(デンプン、ゼラチン、またはアカシアなど)、または潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
追加の医薬組成物は当業者にとって自明であり、徐放性製剤または制御送達製剤中に本明細書中に開示の化合物を含む製剤が含まれる。リポソームキャリア、生体侵食性微粒子または多孔質ビーズおよびデポー注射などの種々の他の徐放性送達手段または制御送達手段の処方技術も当業者に公知である。例えば、医薬組成物の送達のための多孔質高分子微粒子の制御放出を記載しているPCT出願番号PCT/US93/00829を参照のこと。徐放性調製物は、造形品(例えば、フィルム、またはマイクロカプセル、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド)(例えば、米国特許第3,773,919号および欧州特許第058,481号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートとのコポリマー(Sidman et al.,1983,Biopolymers,vol.22,pp.547−556)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langer et al.,1981,J.Biomed.Mater.Res.,vol.15,pp.167−277)およびLanger,1982,Chem.Tech.,vol.12,pp.98−105)、エチレン酢酸ビニル(Langer et al.,id.)、またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)の形態の半透性ポリマーマトリクスを含み得る。徐放性組成物はまた、当分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって調製することができるリポソームを含み得る。例えば、Eppstein et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.82,pp.3688−3692;欧州特許第036,676号;欧州特許第088,046号、および欧州特許第143,949号を参照のこと。
【0048】
インビボ投与のために使用すべき医薬組成物は、典型的には滅菌されている。実施形態によっては、濾過滅菌膜での濾過によってこれを行うことができる。実施形態によっては、組成物を凍結乾燥させる場合に、この方法を使用した滅菌を、凍結乾燥および再構成の前または後のいずれかに行うことができる。実施形態によっては、非経口投与用組成物を、凍結乾燥形態か溶液中に保存することができる。実施形態によっては、非経口組成物を、一般に、滅菌アクセスポート(access port)(例えば、皮下注射針を突き刺すことができるストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアル)を有する容器に入れる。
【0049】
一旦本発明の医薬組成物が処方されると、これを、溶液、懸濁液、ゲル、乳濁液、固体、または脱水粉末もしくは凍結乾燥粉末として滅菌バイアル中に保存することができる。このような製剤を、すぐに使用できる形態または投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥形態)のいずれかで保存することができる。
【0050】
本発明は、単回用量投与単位を生成するためのキットを含み得る。本発明のキットは、それぞれ、本明細書中に開示の乾燥アンタゴニスト化合物またはアゴニスト化合物を有する第1の容器および水性製剤(例えば、一室および多室の事前に充填したシリンジ(例えば、液体シリンジ、リオシリンジ(lyosyringe)、または無針シリンジが含まれる)が含まれる)を有する第2の容器の両方を含み得る。
【0051】
治療で使用すべき本発明の医薬組成物の有効量は、例えば、治療の状況および対象に依存する。したがって、当業者は、実施形態により、治療のための適切な投薬量レベルが、送達されるアンタゴニストまたはアゴニスト(医薬組成物が使用される指標)、投与経路、患者のサイズ(体重、体表面、または臓器サイズ)、および/または容態(年齢および全体的な健康状態)に一部依存して変化することを認識する。臨床者は、至適な治療効果を得るために、投薬量を判定し(titer)、投与経路を修正することができる。典型的な投薬量は、上記の要因に依存して、約0.1μg/kg〜約100mg/kg以上までの範囲である。実施形態によっては、投薬量は、0.1μg/kg〜約100mg/kgまで、1μg/kg〜約100mg/kgまで、または5μg/kg〜約100mg/kgまでの範囲であり得る。
【0052】
投与頻度は、製剤中の本明細書中に開示のアンタゴニストまたはアゴニストの薬物動態学的パラメーターに依存する。例えば、臨床者は、所望の効果を達成する投薬量に到達するまで組成物を投与する。したがって、組成物を、単回用量または2回以上の用量(同量の所望の分子を含んでも含まなくてもよい)を長期にわたって投与することができるか、移植デバイスまたはカテーテルを介した連続的注入として投与することができる。当業者は、適切な投薬量を日常的にさらに改良し、これは、当業者の日常的作業の範囲内である。適切な投薬量を、適切な用量−応答データの使用によって確認することができる。
【0053】
本発明の医薬組成物の投与経路には、経口、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、または病変内経路による注射、徐放システム、または移植デバイスが含まれる。医薬組成物を、ボーラス注射によって投与するか、注入によって、または移植デバイスによって継続的に投与することができる。医薬組成物を、所望の分子が吸収されるかカプセル化される膜、スポンジ、または別の適切な材料の移植によって局所的に投与することもできる。移植デバイスを使用する場合、デバイスを、任意の適切な組織または器官に移植することができ、拡散、徐放性ボーラス、または連続投与によって所望の分子を送達することができる。
【0054】
本発明の医薬組成物を、単独または他の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【実施例1】
【0055】
ADDLの局在化およびターゲティング
材料と方法
ADDLおよび分画:確立されたプロトコールにしたがって、Aβ1-42ペプチド(California Peptide Research,Napa,CA)またはビオチンAβ1-42ペプチド(Recombinant Peptide,Athens,GA)を使用して、合成ADDLまたはビオチン化ADDLを調製した(例えば、Lambert,M.P.et al.(2001)J.Neurochem.,vol.79,pp.595−605;Klein,W.L.(2002)Neurochem.Int.,vol.41,pp.345−352;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。製造者の説明書にしたがってCentricon YM−100およびYM−10濃縮器(Millipore,Bedford,MA)を使用して、オリゴマー種の分子量を分画した。Superdex75 HR 10/30カラムを使用したAkta Explorer HPLC装置を使用したサイズ排除クロマトグラフィを、確立されたプロトコールにしたがって行った(例えば、Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760およびその参考文献などを参照のこと)。
【0056】
組織抽出物およびCSF:アルツハイマー病および非認知症コントロール被験体由来の前頭葉皮質、小脳、およびCSFを、Northwestern Alzheimer’s Disease Center Neuropathology Core(Chicago,IL)から得た。脳組織由来の可溶性抽出物を、以前に記載のように調製した(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献などを参照のこと)。
【0057】
細胞培養:以前に記載のように、海馬ニューロンを、B27(Invitrogen,Carlsbad,CA)を補足した神経基本培地中で少なくとも3週間維持した(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献を参照のこと)。細胞を、媒体、合成もしくはビオチン化ADDL(500nM)、粗ヒトCSF(100μl)、またはF12抽出ヒト皮質(1.0mgタンパク質/ml)と表示の時間インキュベートした。
【0058】
免疫細胞化学:記載のように免疫細胞化学を行った(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献を参照のこと)。いくつかの細胞を、0.1%Tritonを含む10%正常ヤギ血清およびリン酸緩衝化生理食塩水(NGS:PBS)にて室温(RT)で1時間透過処理を行った。細胞を、M94(前に特徴づけられたAβオリゴマー生成ポリクローナル抗体(例えば、Lambert,M.P.et al.(2001)J.Neurochem.,vol.79,pp.595−605;Klein,W.L.(2002)Neurochem.Int.,vol.41,pp.345−352;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)(1:500)および抗αCaMKII(1:250)もしくは抗PSD−95(1:500)モノクローナル抗体(Affinity BioReagents,Golden,CO)またはヤギポリクローナル抗Arc抗体(1:200)(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)、NMDA−R1(C−term,1:200)(Upstate,Lake placid,NY)、またはシナプトフィジン(SVP−38,1:500)(Sigma,Saint Louis,MO)のいずれかと4℃で一晩二重免疫標識し、その後、適切なAlexaFluor(登録商標)488または594抱合IgG(Molecular Probes,Eugene,OR)(2μg/ml)と室温で2時間インキュベートした。ADDLおよびNMDA−グルタミン酸受容体サブユニットNR1(1:200)またはAMPA−グルタミン酸受容体サブユニットGluRl(1:200)(Upstate Biotechnology,Lake Placid,NY)いずれかのための二重標識には、合成ビオチン化ADDLおよびストレプトアビジン−AlexaFluor(登録商標)488抱合体を使用した。細胞を、一定の設定(レーザー出力、検出器の感度、増幅率、および補正)を行ったLeica TCS SP2供焦点スキャナDMRXE7顕微鏡(Bannockburn,IL)を使用して視覚化した。z軸方向の個々の視野の0.5μm間隔のスキャンによって画像を取得して、ADDLがαCaMKII、PSD−95、SVP−38、NR1、GluR1、またはArcと同時局在化するかどうかを決定した。形態計測による定量を、MetaMorph画像化ソフトウェア(Universal Imaging Corp,West Chester,PA)を使用して行った。
【0059】
免疫組織化学:7症例のAD由来の剖検脳(59〜87歳)および7つの非認知症の高齢コントロール(68〜78歳)を、10%緩衝化ホルマリン中で30〜48時間浸漬固定し、その後、10〜40%スクロース勾配に移した。前頭葉皮質から厚さ40μmの浮遊性の連続切片が得られ、免疫標識を行うまで細胞保護剤中にて4℃で維持した。切片をTBSでリンスし、2%m−過ヨウ素酸ナトリウムを含むTBSで20分間予め処置し、0.25%TritonX−100を含む(TBS)(TBST)で透過処理を行った。特異的免疫反応性を、5%ウマ血清を含むTBSTで40分間および1%脱脂粉乳を含むTBSTで30分間遮断した。その後、切片を、M94(1:1000)と4℃で一晩インキュベートし、AlexaFluor488抗ウサギIgG(1:500)と室温で90分間インキュベートした。連続切片を、0.5%チオフラビン−Sを含む50%エタノールで染色した。共焦点画像を、上記のようにLeica供焦点顕微鏡にてz軸方向の1μm間隔のスキャンを使用して取得した。類似の切片を、M94抗体および二次抗体/ABC複合体ならびにジアミノベンジジン(DAB)で標識した。切片を、ヘマトキシリンで対比染色した。一次抗体または二次抗体を省略したコントロール切片は陰性であった。
【0060】
免疫ブロット:細胞を1倍量のPBS/プロテアーゼインヒビターカクテル溶液および1倍量の2×ローディング緩衝液(pH 6.8)(80 mM Tris−HCl、16.7%グリセロール、1.67% SDS、1.67%β−メルカプトエタノール)中で溶解し、短時間超音波処理を行った。タンパク質を、4〜20%Tris−グリシンゲル(BioRad,Hercules,CA)にて100Vで分離し、移動緩衝液(25 mM Tris−HCI(pH 8.3)、192 mMグリシン、20% v/vメタノール)中、4℃で1時間100Vでニトロセルロース膜に移した。ブロットを、5%脱脂粉乳を含む0.1%Tween20含有10mM Tris緩衝化生理食塩水(pH7.5)で2時間ブロッキングした。ブロットを、抗Arc抗体(1:250)と4℃で一晩およびHRP抱合IgG(1:100,000)と2時間インキュベートした。膜を、SuperSignal West Femto化学発光キット(Pierce Biotechnology,Rockford,IL)を使用して発色させ、その後、洗浄し、ブロッキングし、タンパク質ローディングのコントロールとして使用した抗シクロフィリンB抗体(1:40,000)で再ブロットした。タンパク質を視覚化し、Kodak IS440CF Image Station(New Haven,CT)を使用して定量した。
【0061】
ドットブロットアッセイ:以前に記載されているドットブロットアッセイを使用して、ヒト前頭葉皮質および小脳の可溶性抽出物中のAβのアセンブリ形態を測定した(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献を参照のこと)。9つのADサンプル(Braak & Braak,CERAD and NIA/Reagan Institute Criteriaに基づいた病理学的診断)を、15の非ADコントロールサンプルと比較した。組織(100mg)を、組織剪断器(Tissue Tearor)(Biospec Products,Bartlesville,OK)を使用して、氷上のプロテアーゼインヒビター(Complete mini EDTA free tablet;Roche,Indianapolis,IN)を含む1mlのHam’s F12無フェノール培地(BioSource,Camarillo,CA)中でホモジナイズした。20,000gで10分間の遠心分離後、上清を、100,000gで60分間遠心分離した。100,000gの上清のタンパク質濃度を、標準的なBCAアッセイによって決定した。ドットブロットアッセイのために、ニトロセルロースを、TBS(20mM Tris−HCI(pH7.6)、137mM NaCl)で予め湿らせ、完全に乾燥させた。抽出物(総タンパク質は2μl、1μl)をニトロセルロースにアプライし、完全に風乾させた。次いで、ニトロセルロース膜を、5%脱脂粉乳を含有する0.1%Tween20を含むTBS(TBS−T)中にて室温で1時間ブロッキングした。膜を、一次抗体M93/3を含むブロッキング緩衝液(1:1000)と1時間インキュベートし、TBS−Tで3×15分間洗浄した。HRP抱合二次抗体(1:50,000,Amersham,Piscataway,NJ)を含むTBS−Tとの室温で1時間のインキュベーション後に洗浄した。タンパク質を化学発光を使用して視覚化し、Kodak 1D画像ソフトウェアを使用したKodak IS440CF Imaging Stationで分析した。
【0062】
結果
Aβオリゴマー惹起抗体によって検出された可溶性Aβ種は、ニューロン細胞体周囲に沈着し、AD皮質で増加する。
第1の目的は、AD脳内のADDLの存在を確証することおよびその後の細胞生物学実験で使用した抗体がアルツハイマー病の病理学に特異的であることを確立することであった。したがって、ヒト前頭葉皮質(7人のAD患者および非認知症年齢適合コントロール)由来の切片を、M94(オリゴマー選択性抗体)で免疫標識し(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献などを参照のこと)、チオフラビン−Sを使用して線維性アミロイド沈着を評価した。免疫標識AD脳切片は、老人性神経炎および拡散性アミロイド斑の形態の特徴的なAβ沈着も示す領域中の細胞体を選択的に取り囲む局在化免疫反応性沈着物を示した。しかし、全AD症例で見出された細胞周囲の拡散性免疫応答は、線維性アミロイド沈着物(チオフラビン−S染色によって検出、示さず)と明らかに異なった。免疫蛍光(図1A)およびHRP染色(図1B)によって標識した皮質層IIIに存在するそれぞれの錐体ニューロンの代表的な画像を示す。(7つのうちの)1つのコントロールは、類似の構造を示し、この特定のコントロールの脳は、軽度認知障害を罹患した個体由来の低レベルの斑を有するブラーク病期0であった。非認知症年齢適合コントロール前頭葉では免疫応答は認められなかった(示さず)。全体として、AD切片の拡散したオリゴマー染色は、細胞内よりもむしろ細胞周囲に認められ、プリオン関連疾患で認められる拡散性のシナプス型沈着物の記載を連想させた(例えば、Hainfellner,J.A.et al.(1997)Brain Pathol.,vol.7,pp.547−553;Kovacs,G.G.et al.(2002)Brain Pathol.,vol.12,pp.1−11および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【0063】
ADの診断を使用するか使用しないでドットブロット免疫アッセイを使用して、ヒト前頭葉皮質および小脳(図1C、ドットブロット)の可溶性抽出物中のオリゴマーAβの存在を確証した。免疫反応性は、全てのAD前頭葉皮質抽出物で強かった。コントロールでは、免疫反応性は、低レベルのプラークおよび線維濃縮体(tangle)を有する被験体由来の2つの皮質サンプル以外の全ての皮質および小脳サンプルについてアッセイバックグラウンドと類似していた(プラーク重症度1、CERAD A、BraakII、低NIA/Reagan)。AD皮質サンプル中の平均シグナルは約11倍に上昇したが(p<0.0001)、多数のコントロールサンプルがアッセイバックグラウンドと類似していることにより、この比の大きさを不正確にしている。皮質サンプルと対照的に、AD小脳中の可溶性オリゴマーレベルは、非認知症コントロールよりも最低限に高かったが、有意ではなかった(p=0.1316)(図1C、散布図)。
【0064】
これらの結果により、可溶性オリゴマーがAD病変の真の構成要素であるという報告が確認および拡大適用される(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献を参照のこと)。これらの結果は、さらに、AD脳由来の可溶性オリゴマーを特徴づけるために以前に使用した抗体がAD脳の病変を特異的に認識することが確証される。したがって、データにより、下記のADDLとニューロンとの間の相互作用の性質を特徴づけるためにデザインされた細胞生物学的実験でのこれらの抗体および可溶性AD脳抽出物の使用が有効になる。
【0065】
AD脳から抽出したAβオリゴマー(ADDL)は、クラスター化部位に特異的に結合する。
ADDLは、Aβ1〜42の小さな拡散性のオリゴマー(両親媒性ペプチド)である。Aβ1〜42単量体と比較したその相対的に好ましい水溶性を考えると、オリゴマーはその疎水性ドメインを隠す一方で、その親水性ドメインを水性環境に示す可能性が高い。このような配向は、高次構造感受性抗体による溶液中のADDLの免疫中和と一致する(例えば、Lambert,M.P.et al.(2001)J.Neurochem.,vol.79,pp.595−605およびその参考文献を参照のこと)。したがって、ADDL構造は、理論的に、人工脂質二重層へのAβ単量体の報告された挿入に関連する比較的非特異的な結合と対照的に、記憶関連ニューロンに対するリガンド様特異性に適合する能力を有する(例えば、McLaurin,J.& Chakrabartty,A.(1996)J.Biol.Chem.,vol.271,pp.26482−26489およびその参考文献を参照のこと)。
【0066】
この高特異性ADDL結合様式を確認するために、本発明者らは、本発明者らの実験モデルとして培養物中に少なくとも3週間維持したラットの海馬ニューロンを使用して、生理学的に関連する条件下でADDLのニューロンとの相互作用を調査した。これらの培養物はシナプスを生成し(例えば、Fong,D.K.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.2153−2164およびその参考文献を参照のこと)、成熟した複雑な分枝を有する高度に分化したニューロンを産生する。
【0067】
第1の結合実験を、ヒト脳の抽出物およびヒトCSFを使用して行った。インビトロで調製したオリゴマーと構造が等価なオリゴマーを含むことが以前に示されているAD抽出物の可溶性抽出物(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献を参照のこと)を、培養ニューロンとインキュベートした。非結合物質を洗浄によって除去し、細胞を免疫蛍光顕微鏡法によって試験した。ADDL分布を、合成Aβオリゴマーのワクチン接種によって生成されたポリクローナル抗体(M94)を使用して決定した。これらの抗体は、低容量の病原性Aβオリゴマーに結合するが、生理学的単量体に結合せず(例えば、Chang,L.et al.(2003)J.Mol.Neurosci.,vol.20,pp.305−313;Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422;Lambert,M.P.et al.(2001)J.Neurochem.,vol.79,pp.595−605および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、上記のように、AD脳組織に特異的である。
【0068】
ラット海馬細胞の十分に分化した培養物との抽出物のインキュベーションにより、5分ほどの時間でさえも、細胞体および神経突起に沿って膜型に標識された(図2A)。同一条件下で、年齢適合非認知症コントロール由来の抽出物によってシグナルは得られなかった(図2B)。抗体がAβ単量体またはアミロイド前駆体タンパク質などの生理学的分子を認識することは示されなかった。Aβ1〜42は、ADおよびADのトランスジェニックマウスモデルにおいて細胞内に蓄積されることが報告されているが(例えば、Oddo,S.et al.(2003)Neuron,vol.39,pp.409−421;Gouras,G.K.et al.(2000)Am.J.Pathol.,vol.156,pp.15−20および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、ニューロンに対するADDLの免疫反応性は、透過処理後でさえも細胞表面に排他的に蓄積した。分布は、事実上明確に点状であった。AD抽出物のCentriconフィルター分画は、結合活性が10〜100kDの分子量のオリゴマーと共に存在し、これは、以前の特徴づけと一致することを示した(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献を参照のこと)(図2C、D)。ヒトCSFの非分画抽出物はまた、AD依存性の結合活性を示した(図2E、F)。細胞分泌経路内でAβが高度に過剰産生および蓄積されるので、トランスジェニックADモデルで認められた細胞内Aβが生じる可能性が高い。
【0069】
結果は、アルツハイマー病の脳およびCSF由来のヒト由来ADDLが神経突起分枝内に豊富に見出される結合部位の点状クラスターによって特徴づけられるニューロン細胞表面に高い選択性で結合することができることを示す。
【0070】
合成Aβ1〜42から生成したADDLは、クラスター化部位に特異的に結合する。
インビトロで生成したADDLの結合特性を調査した。このような調製物は、オリゴマーの神経学的影響を調査するための標準を構成する。これらの定義された調製物の使用により、結合およびその結果に寄与し得る抽出物およびCSFの未知の要因を排除される。さらに、広範な使用および研究所間での都合のよい比較のためのツールとして、合成ADDLは、ヒト脳抽出物またはCSFよりも遥かに利用しやすい調製物を提供する。
【0071】
ヒト調製物を使用して認められるように、インビトロで調製し、成熟海馬ニューロン培養物とインキュベートしたADDLにより、ニューロン分枝内に豊富な点部位を示す特異的結合パターンが得られた。抗体の合成オリゴマー予備吸収によって検出可能なシグナルは得られず(示さず)、非特異的抗体会合が除外された。オリゴマー特異的モノクローナル抗体を使用した免疫標識により(例えば、Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760およびその参考文献を参照のこと)、リガンドが単量体や原線維(示さず)ではない(Centriconフィルター分画実験によって立証された結論)ことが示された。10〜100kDaのCentricon画分(図3A)は、ニューロン表面に結合することができるオリゴマーを含んでいたが、10kDa未満の画分(図3B)は含んでいなかった。図3Cに示すように、海馬細胞とのインキュベーション時に(6時間まで)培養培地中に存在するAβ種は変化しない。典型的な合成ADDL調製物は、分子量が24量体までであり、主に12量体の種を含むSDS安定性アセンブリを含む一方で、AD脳抽出物は一般的な12量体(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−1042248を参照のこと)および48量体(データ示さず)を含む。
【0072】
さらに、Superdex75でのHPLCサイズ排除クロマトグラフィによる分離後にAβ種のニューロン結合を試験した(Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760に記載)。ビオチン−Aβ1-42ペプチドから調製したビオチン化ADDLは、2つのピークで溶離された(図3D)。既知の分子量標準に対する較正により、ピーク1は、12量体およびより大きな種と一致する見かけの分子量が50kDaを超える種を含む一方で、ピーク2は単量体および小さなオリゴマーを含んでいた。図1のように、最高レベルの免疫反応性物質を含む画分を同定するために、溶離画分に対してドットブロット(アセンブリした全Aβ形態を検出する方法)を行った(示さず)。次いで、これらの画分を、成熟海馬細胞培養物に対する結合能力について試験した。ピーク1に含まれる高分子量のAβ種は、海馬樹状突起樹への結合を示す一方で(図3E)、ピーク2由来の低分子量の種は結合しなかった(図3F)。
【0073】
したがって、Centriconフィルターまたはクロマトグラフィによる分画由来の結果は、ニューロン上に画像化された免疫反応性はプロトフィブリルなどの巨大分子や単量体または二量体などの小分子に起因しないことを示す。
【0074】
実験によって生成されたオリゴマーによる選択的結合−結合部位のクラスターおよび細胞−細胞特異性:
ADDLが非選択性膜の吸着または挿入によって結合されると予想していることに反して、全細胞は結合部位の点クラスターを示さなかった。二重標識実験における細胞−細胞特異性を、αCaMKII陽性ニューロン対について示し(図4A、B)、その1つだけがADDL結合を示す。多くの実験により、ADDLに結合した培養海馬ニューロンの小集団は、典型的には、所与の培養物中に30〜50%含まれた。これらの結果により、細胞レベルでのADDL結合の特異性が確立される。
【0075】
ADDL結合部位のクラスターは、シナプスと一致する。
細胞内レベルでは、ADDLが特異的にシナプスに結合するかどうかは、ADにおける記憶喪失がオリゴマー誘導性シナプス不全であるという仮説に対して非常に重要である(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.298,pp.789−791;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。ADDLシナプス可塑性を阻害する速度により(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;Walsh,D.M.et al.(2002)Nature,vol.416,pp.535−539;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、神経学的に関連する結合がシナプス付近で起こり得る一方で、特定のシナプスを特異的にターゲティングする結合がADにおける記憶特異性の主な原因となるだけでなく、機構に相当な制限を与えることが示唆される。上記の樹状分枝内の点状結合部位へのADDLの局在化は、ADDLがシナプス特異的リガンドであるという仮説と明確に一致する。しかし、点状結合部位の形態もまた、膜ラフトまたは接触点などの他の細胞内特殊化(subcellular specialization)と一致する。
【0076】
オリゴマー結合部位の性質をさらに試験するために、PSD−95との同時局在化を試験した。PSD−95は、興奮性CNSシグナル伝達経路で見出されるシナプス後膜肥厚の重要な足場成分であり(例えば、Sheng,M.& Pak,D.T.(1999)Ann.N.Y.Acad.Sci.,vol.868,pp.483−493;およびその参考文献を参照のこと)、PSD−95のクラスターは、シナプス後終末の決定的なマーカーとして確立されている(例えば、Rao,A.et al.(1998)J.Neurosci.,vol.18,pp.1217−1229;およびその参考文献を参照のこと)。成熟海馬細胞培養物(本明細書中で使用される者など)では、本質的に全てのPSD−95のクラスターがシナプスで生じる(例えば、Allison,D.W.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.4545−4554;およびその参考文献を参照のこと)。予想するように、ADDL結合部位は、低倍率での重ね合わせで認められるPSD−95点と非常に一致する(図4C)。より高い倍率での重ね合わせ分析により、ADDL結合部位がほとんど排他的にPSD−95の点と同時局在化することが示された(図5A〜C)。AD脳の抽出物で同一パターンが得られた(示さず)。ADDL結合部位はまた、シナプトフィジン陽性シナプス前末端と並列したが(図5D)、ADDLとシナプトフィジンの免疫反応性の完全な一致は稀であった。ADDLによる明らかなシナプスターゲティングを確証するために、ADDLとPSD−95との間の同時局在化範囲を、画像分析によって定量した。14の視野の定量により、部位の93+/−2%で、合成ADDLがPSD−95と同時局在化することが示された(図5F、H)。したがって、ADDL結合部位は、ほとんど完全にシナプスと共に局在した。形態計測定量に基づいて、これらの部位は、さらに、シナプス小集団に対しても選択的なようであった。ADDL点の検出のための一定の閾値レベルでは、PSD−95点の約半分がADDLと同時局在化するが(図5E、G)、ADDLクラスター検出のためのより高い閾値では、全てのPSD−95陽性樹状突起棘がADDLに結合することが可能なようである。
【0077】
ADDL結合部位は、さらに、NMDA受容体(NR1)免疫反応性と重複することが見出され(示さず)、これは、興奮性海馬シグナル伝達経路中のPSD−95とNMDAグルタミン酸受容体との会合と一致する(例えば、Sheng,M.& Pak,D.T.(1999)Ann.N.Y.Acad.Sci.,vol.868,pp.483−493;およびその参考文献を参照のこと)。ADDLはまた、PSD−ファミリータンパク質およびスピノフィリンと高度に同時局在化した(示さず)。ADDLとGluRl(樹状軸中で発現した受容体を認識するGluR1のC末端抗体)、リン酸化τ(τ−1(軸索マーカー)を使用する)、およびSorLa(アポリポタンパク質E受容体LR11とも呼ばれるLDLRクラスA反復を含む選別タンパク質(sorting protein)関連受容体;Dr.H.C.Schallerから贈与)との間の重複は明らかではなかった。したがって、同時局在化はシナプスマーカーに選択的であった。
【0078】
ADDLによる特異的シナプスターゲティングの分子基盤は知られていないが、B103 CNSニューロン細胞株を使用した初期の研究では、フローサイトメトリー実験においてトリプシン感受性細胞表面タンパク質への特異的結合が示された(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;およびその参考文献を参照のこと)。広範な候補タンパク質(神経伝達物質の受容体、栄養因子、接着分子、および細胞外基質タンパク質が含まれる)が、PSD−95シナプスで蓄積する。SDS−PAGEによって分離された特定のタンパク質への結合を検出する可能性があるリガンド重ね合わせアッセイでは、ADDLは、高親和性で、海馬および皮質由来の2つの膜結合タンパク質(分子量140および260kDa)に結合する(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422;およびその参考文献を参照のこと)。これらのタンパク質はまた、単離シナプトソームで有意に富化される(800〜900%;D.Khuon,personal communication)。これら2つの分子量に対応するタンパク質を、質量分析によって同定した。P140は、主に、シナプス後タンパク質synGAP(rasGTPアーゼ活性を刺激することが公知の135kDaタンパク質)に対応する。P260は、主に、proSAP2またはShank3として公知のシナプス後足場タンパク質に対応する。synGAPはPSD−95に会合することが公知である一方で、shank3はグルタミン酸受容体に会合することが公知である。
【0079】
ADDLは、シナプス記憶関連IEGタンパク質「Arc」を異所性に上方制御する。
点のシナプス関連性は、図6Aに示す高度に分枝したαCaMKII陽性ニューロンへのADDL結合の顕著な特異性と一致する。このニューロンは、主に樹状突起上で見出される個別にクラスター化した部位を示し、点結合は細胞体上で検出可能であるが、密度は遥かに低い。より高倍率では(図6B)、合成画像の重ね合わせは、αCaMKII陽性樹状突起棘をキャッピングする多数のオリゴマーの点を示す。αCaMKIIは、記憶機能に関連するニューロンのシナプス後末端に蓄積することが公知であり、突起のあるシナプス後末端中のタンパク質の30%超を含む(例えば、Inagaki,N.et al.(2000)J.Biol.Chem.,vol.275,pp.27165−27171;およびその参考文献を参照のこと)。樹状突起棘へのADDL結合部位の頻繁な局在化により、棘分子に急速に影響を与える可能性が示唆される。
【0080】
この可能性を調査するために、長期記憶形成に非常に関連するシナプス最初期遺伝子機構に及ぼすADDL結合の影響を試験した。目的の遺伝子は、Arc(活性調節細胞骨格関連)タンパク質をコードする(例えば、Guzowski,J.F.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.3993−4001;およびその参考文献を参照のこと)。生理学的にタンパク質がシナプス活性によって一過性に誘導される場合、Arc mRNAがシナプスにターゲティングされる(例えば、Lyford,G.L.et al.(1995)Neuron,vol.14,pp.433−445;Link,W.et al.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.92,pp.5734−5738;Steward,O.& Worley,P.F.(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.98,pp.7062−7068;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。動物モデル研究により、適切なArc発現がLTPおよび長期記憶形成に必須であることを示された(例えば、Guzowski,J.F.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.3993−4001;およびその参考文献を参照のこと)。薬物乱用および睡眠妨害との関連に加えて(例えば、Freeman,W.M.et al.(2002)Brain Res.Mol.Brain Res.,vol.104,pp.11−20;Cirelli,C.& Tononi,G.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.9187−9194;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、Arcの異所性および異常な発現は、長期記憶形成不全の原因であると予想されている(例えば、Guzowski,J.F.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.3993−4001;およびその参考文献を参照のこと)。
【0081】
海馬ニューロンを、インビトロで生成したADDLまたは媒体と5分間、1時間、および6時間処置し、Arcタンパク質に及ぼす影響を、免疫蛍光および免疫ブロットによって決定した。前に考察しているように、合成ADDLは、AD由来の種よりも容易に得ることができ、且つ可溶性脳抽出物中に存在する多数の未知の物質(myriad)によって汚染されていないので、合成ADDLを使用した。最も初期の時点(5分)で、二重標識免疫蛍光により、オリゴマー結合が樹状点Arc発現と同時局在化することが明らかとなった(図7)。構成性に発現する低レベルのArcタンパク質はシナプスではなく細胞体に局在することが公知であるので、この位置は異所性誘導のようである(例えば、Steward,O.& Worley,P.F.(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.98,pp.7062−7068;およびその参考文献を参照のこと)。
【0082】
ADDLへのより長い曝露後、Arc発現は、強い上方制御を示した。棘および樹状突起の至る所でのArc発現は、媒体処置コントロール(図8Aおよび8C)と比較して、1時間後に顕著であり(図8B)、6時間後もそのままであった(図8D)。免疫ブロットにおいてArc発現の上昇も明らかであり(図8A〜B)、コントロールにおける低レベルのArc−IRはニューロン細胞体における最小基本Arc発現と一致した。ADDL誘導性のArc増加は、媒体処置培養物の5倍であった。
【0083】
Arcタンパク質はF−アクチンと結合して棘の形態に機能的に関与し、その慢性過剰発現により、異常な棘構造が生成されることが示唆されている(例えば、Kelly,M.P.& Deadwyler,S.A.(2003)J.Neurosci.,vol.23,pp.6443−6451;およびその参考文献を参照のこと)。本実験における棘形態の試験により、オリゴマー処置群中のArc陽性棘がコントロール群中の少数のArc陽性棘と異なることが示された。低レベルのArcを発現するコントロール棘は切り株状であり、密接に樹状軸に沿って存在するのに対して(図8C)、ADDL処置棘はより長く、且つ樹状軸から伸長しているようであった(図8D)。類似の突出した棘構造は、抗スピノフィリンで免疫標識した処置培養物で明らかであった(示さず)。
【0084】
考察
ADDLは、AD脳内に蓄積する神経学的に有害な分子である(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422;およびその参考文献を参照のこと)。この開示は、ADDL作用の細胞生物学に取り組み、ADDLがシナプス終末に特異的なリガンドとして作用し、ADDLが長期記憶形成に必須のシナプス最初期遺伝子の正常な発現を破壊することを示す。データは、初期AD記憶喪失が、ニューロンの死滅およびアミロイド原線維と無関係にADDL誘導性シナプス不全に起因するという新規の仮説を支持するための新規の分子機構を提供する(例えば、Hardy,J.&Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.297,pp.353−356;Kirkitadze,M.D.et al.(2002)J.Neurosci.Res.,vol.69,pp.567−577;Klein,W.L.et al.(2001)Trends Neurosci.,vol.24,pp.219−224;Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.298,pp.789−791;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【0085】
種々の実験パラダイムにおける神経学的影響の研究と組み合わせた以前の臨床データおよびマウスモデルデータは、AD記憶喪失における非原線維Aβ神経毒に強く関与している(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;Mucke,L.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.4050−4058;Walsh,D.M.et al.(2002)Nature,vol.416,pp.535−539;Walsh,D.M.& Selkoe,D.J.(2004)Protein Pept.Lett.,vol.11,pp.213−228;Wang,H.W.et al.(2002)Brain Res.,vol.924,pp.133−140;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。Roher and colleaguesは、可溶性Aβに量体はAD中で上昇するが、これらは当初は神経学的に無関係であると考えられ、有毒なアミロイド原線維の形成の途中の一過性の種としてのみ存在することを示した(例えば、Lue,L.F.et al.(1999)Am.J.Pathol.,vol.155,pp.853−862;およびその参考文献を参照のこと)。Aβオリゴマーは、現在、原線維構造に変換することなく長期間存在する安定な分子構成要素(entity)として確立されている(例えば、Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760;およびその参考文献を参照のこと)。さらに、ADDLは、強力なCNS神経毒であることが公知である(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;およびその参考文献を参照のこと)。初期ADに最も関連するADDLはLTPを阻害する。ex vivoおよびインビボで認められるように、阻害は急速であり、非変性であり、且つ高い選択性を示す。シナプス可塑性に及ぼすADDLの影響は、年齢、領域、および導入遺伝子に依存する様式でADDLを蓄積する(例えば、Chang,L.et al.(2003)J.Mol.Neurosci.,vol.20,pp.305−313;およびその参考文献を参照のこと)hAPPトランスジェニックマウスで認められるプラーク独立性認知不全の主な原因である可能性が高い(例えば、Hsia,A.Y.et al.(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.96,pp.3228−3233;Mucke,L et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.4050−4058;Buttini,M.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.10539−10548;Van Dam,D.et al.(2003)Eur.J.Neurosci.,vol.17,pp.388−396;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。ADDLは、hAPPマウスにおける記憶喪失を逆転する(急速且つプラーク負荷に無関係の回復)治療抗体の標的である可能性が高い。
【0086】
オリゴマー特異的抗体によって検出された抗原の存在も、AD脳切片で見出されている(例えば、Kayed,R.et al.(2003)Science,vol.300,pp.486−489;およびその参考文献を参照のこと)。これらの抗原の局在化は神経炎斑と異なり、原線維と無関係のオリゴマーのインサイチューでの存在が確立された。この調査で認められたパターンは、この初期の報告と一致する。ここで認められたニューロン周囲の分布により、さらに、樹状分枝へのADDLの局在化が示唆される。AD脳組織から抽出されたADDLによる樹状突起結合は、以前に、培養海馬ニューロンを使用した実験で認められている(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422;およびその参考文献を参照のこと)。本結果は、AD脳抽出物中のリガンドが10kDaと100kDaとの間であり、主に12量体(56kDa)の種が確立される二次元ゲル免疫ブロットによる可溶性AD脳抽出物の分析と一致することを示す。12量体のAD脳は、インビトロで生成したADDL調製物で見出された12量体と、等電点、高次構造感受性抗体による認識、および樹状分枝に選択的に結合する能力に関して区別できない。
【0087】
本明細書中に示した新規のデータは、ADDLの樹状突起標的がシナプス終末であることを証明する。この所見が、ADDLがシナプス不全の原因であるという仮説と調和するにもかかわらず、点状結合部位のサイズおよび分布を膜ラフトまたは接触点への結合によって説明することもできる。本実験では、共焦点免疫蛍光顕微鏡法を使用して、オリゴマーの局在化を十分に確立されたシナプスマーカー(PSD−95)と比較した。成熟海馬培養物では、本明細書中で使用される場合、PSD−95点は、本質的に100%シナプスである(例えば、Rao,A.et al.(1998)J.Neurosci.,vol.18,pp.1217−1229;およびその参考文献を参照のこと)。インビトロまたはAD脳のいずれかから生成されたADDLは、ほとんど排他的にシナプスと同時局在化することが見出された。オリゴマーが全てのニューロンおよびシナプスに結合するわけではないが、ターゲティングされる特定の表現型が解明されることは注目に値する。しかし、予備実験は、ターゲティングしたシナプスがグルタミン酸受容体を含むことを示す。別の未解決の問題は、培養物中のシナプスへの結合とAD脳切片中のオリゴマーによって認められる拡散性の染色との間の関係である。データは、インサイチューでの拡散性染色がシナプスに由来するであろうという仮説と一致し、この仮説は、現在、EM免疫金分析によって調査中である。
【0088】
シナプスがインサイチューでターゲティングされた場合、記憶に及ぼす影響は、最終的に、ターゲティングされたシナプス数、各シナプスが影響を受ける範囲、記憶形成過程全体に対する罹患シナプスの関連に依存するであろう。リガンドが解離するかその結合部位の向きが変わった場合、シナプスの影響は自発的に逆になり得る。このような複雑さにより、シナプスの逆転および認知機能の日によるばらつきと調和するにもかかわらず、オリゴマーレベルと記憶喪失との間の単純な関係の予想が困難になる。しかし、記憶喪失が現れる前に占有閾値(threshold of occupancy)を上回る可能性が高いようである。
【0089】
Arcが長期記憶形成に関与すると予想されるので、ADDLに対するArcの応答が特に興味深い(例えば、Guzowski,J.F.(2002)Hippocampus,vol.12,pp.86−104;およびその参考文献を参照のこと)。生理学的に、Arc発現は、パターン化されたシナプス活性によって調節され(例えば、Lyford,G.L.et al.(1995)Neuron,vol.14,pp.433−445;Link,W.et al.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.92,pp.5734−5738;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、最近活性化された樹状突起棘で発現する(例えば、Moga,D.E.et al.(2004)Neuroscience,vol.125,pp.7−11;およびその参考文献を参照のこと)。樹状突起では、Arc mRNAはシナプス棘(synaptic spine)に局在し、初期測定点でのArcおよびオリゴマーの同時局在化と一致する。このモデルにおけるシナプスArcタンパク質発現との関係が決定されていないにも関わらず、tg−マウスADモデルにおいてArc mRNAが加齢に伴って減少することが以前に留意されている(例えば、Dickey,C.A.et al.(2003)J.Neurosci.,vol.23,pp.5219−5226;およびその参考文献を参照のこと)。本研究では、ADDLによってArc誘導が保持され、それにより、樹状分枝全体にタンパク質が異所性に拡散する。通常、Arcタンパク質が拍動(pulsate)様式または一過性様式で機能し、保持されたArc発現によってシナプス雑音が生じ、それにより、長期記憶形成が阻害されると提案されている(例えば、Guzowski,J.F.(2002)Hippocampus,vol.12,pp.86−104;およびその参考文献を参照のこと)。この予想は、Arcの上昇と学習能力の低下との間の相関関係を示したtg−マウス由来の所見によって支持される(例えば、Kelly,M.P.& Deadwyler,S.A.(2003)J.Neurosci.,vol.23,pp.6443−6451;およびその参考文献を参照のこと)。
【0090】
どのようにして異所性Arcの影響によってシナプス不全が起こるのかについては、棘の形状および受容体輸送が関与し得る(図9)。Arcは、細胞骨格およびシナプス後タンパク質に関連し(例えば、Lyford,G.L.et al.(1995)Neuron,vol.14,pp.433−445;Fujimoto,T.et al.(2004)J.Neurosci.Res.,vol.76,pp.51−63;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、tg−マウスにおけるArcの上昇によってシナプス棘が硬化し、これが、構造の可塑性を妨害し、学習を遅延させると提案されている(例えば、Kelly,M.P.& Deadwyler,S.A.(2003)J.Neurosci.,vol.23,pp.6443−6451;およびその参考文献を参照のこと)。シナプス棘の異常は、種々の脳機能障害に共通し(例えば、Fiala,J.C.et al.(2002)Brain Res.Brain Res.Rev.,vol.39,pp.29−54;およびその参考文献を参照のこと)、棘が異常に曲がって突出する精神発達障害が含まれる(例えば、Kaufmann,W.E.& Moser,H.W.(2000)Cereb.Cortex.,vol.10,pp.981−991;およびその参考文献を参照のこと)。棘の異常は、シナプスシグナル処理および関連する情報の保存を急速に変化させ得る(例えば、Crick,F.(1982)Trends Neurosci.,vol.5,pp.44−46;Rao,A.& Craig,A.M.(2000)Hippocampus,vol.10;pp.527−541;Yuste,R.& Bonhoeffer,T.(2001)Annu.Rev.Neurosci.,vol.24,pp.1071−1089;およびその参考文献を参照のこと)。Arcの上昇により、シナプス可塑性に必要な受容体の循環も破壊され得る(例えば、AMPA受容体の上方制御の遮断)。Arcの細胞生物学と一致して、この破壊は、棘構造を同時に変化させ得る機構を介した細胞骨格の組織化(例えば、f−アクチンまたはPSD)またはシグナル伝達経路(例えば、CaMKIIを介する)に及ぼす影響に由来し得る。
【0091】
他のシナプスシグナル伝達経路は、培養モデル中のオリゴマーにも影響を受ける。皮質培養物では、低濃度のオリゴマー(致死量以下)は、グルタミン酸のCREBリン酸化を誘導する能力(例えば、Tong,L.et al.(2001)J.Biol.Chem.,vol.276,pp.17301−17306;およびその参考文献を参照のこと)、シナプス可塑性に関連するシグナル伝達経路(例えば、Sweatt,J.D.(2001)J.Neurochem.,vol.76,pp.1−10;およびその参考文献を参照のこと)を阻害する。海馬スライス培養では、最近の薬理学的研究により、オリゴマーによるLTP阻害に特定のキナーゼが関与することが示されている。代謝調節型グルタミン酸受容体5型のアンタゴニストが行うように、p38MAPK、JNK、およびcdk5のインヒビターがオリゴマーのLTPへの影響を遮断することが潜在的に非常に興味深い(例えば、Wang,Z,et al.(2004)J.Med.Chem.,vol.47,pp.3329−3333;およびその参考文献を参照のこと)。本発明者らはまた、オリゴマー作用における受容体の推定される関与を示唆し、公開されたデータはシナプスADDL結合を媒介する受容体タンパク質の同一性を確立していない(例えば、Verdier,Y.et al.(2004)J.Pept.Sci.,vol.10,pp.229−248;およびその参考文献を参照のこと)。上記のシグナル伝達事象およびArc誘導がArcに及ぼすADDLの影響に関して並行しているのかまたは連続しているかについては、依然として決定されていない。
【0092】
破壊的シナプスリガンドとしてのADDLの作用により、ADシナプス不全についての直感的に魅力的な機構が得られる。手掛かりは、シナプス自体がターゲティングされることである。どのようにし記憶特異的喪失が非特異的細胞会合に由来するのかを説明する必要はない(例えば、細胞膜への無作為な挿入(例えば、 Gibson,W.W.et al.(2003)Biochim.Biophys.Acta,vol.1610,pp.281−290;およびその参考文献を参照のこと))。本データにより、記憶開始事象がシナプスで局所的に破壊される倹約機構(parsimonious mechanism)が示唆される。最終的に、曝露の延長により、オリゴマーによってターゲティングされたシナプスが、関連するシナプスシグナル伝達分子(例えば、Fynなど)によって媒介される物理的分解を受け得る(例えば、Chin,J et al.(2004)J.Neurosci.,vol.24,pp.4692−4697;およびその参考文献を参照のこと)。ADDLは、いくつかの初期ADのトランスジェニックモデルにおける終末のプラーク依存性喪失を説明するために提案されている(例えば、Mucke,L.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.4050−4058;およびその参考文献を参照のこと)。tg−マウスにおけるArc mRNAの年齢依存性の減少の報告は、シナプス劣化の初期段階の可能性と一致するが、明らかな終末の喪失は、これらの系統で生じないようである(例えば、Dickey,C.A.et al.(2003)J.Neurosci.,vol.23,pp.5219−5226;およびその参考文献を参照のこと)。
【0093】
末期ADでは、認知変性は、記憶喪失を遥かに超えて拡大する(例えば、Coyle,J.T.(1987)Alzheimer’s Disease.In:Encyclopedia of Neuroscience(Adelman G,ed),pp 29−31.Boston−Basel−Stuttgart:Birkhaeuser;およびその参考文献を参照のこと)。初期発病事象の遮断によってこの壊滅的な下流カスケードに決して到達させないことが望ましいであろう。ヒトワクチン試験の結果は、Aβ由来の神経毒をターゲティングする治療抗体が実際に疾患の進行を食い止めることを示すが(例えば、Hock,C.et al.(2003)Neuron,vol.38,pp.547−554;およびその参考文献を参照のこと)、能動ワクチンでの有意な脳炎の発生率がこのストラテジーを複雑にしている(例えば、Schenk,D.(2002)Nat.Rev.Neurosci.,vol.3,pp.824−828;Weiner,H.L.& Selkoe,D.J.(2002)Nature,vol.420,pp.879−884;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。受動的ワクチン接種は、より高価であるが、副作用がより少なく、さらに、高齢者に共通する免疫応答障害の問題が克服される。可溶性Aβ種を免疫中和するモノクローナル抗体は、2つの独立した研究で、初期ADのtg−マウスモデルで記憶喪失を逆転することが示されている(例えば、Dodart,J.C.et al.(2002)Nat.Neurosci.,vol.5,pp.452−457;Kotilinek,L.A.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.6331−6335;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。さらに、生理学的単量体に対する親和性が最小の毒性Aβ型に特異的な抗体を作製するためにADDLを使用することが可能であった(例えば、Lambert,M.P.et al.(2001)J.Neurochem.,vol.79,pp.595−605;およびその参考文献を参照のこと)。さらに、最近のハイブリドーマ研究では、オリゴマーに結合するがアミロイド原線維に結合せず、プラークに結合した抗体に起因する炎症の懸念が減少した抗体を生成することが可能であることが示されている(例えば、Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760;およびその参考文献を参照のこと)(Chromy et al.,2003)。したがって、記憶関連Aβアセンブリをターゲティングするヒト治療抗体が開発される見込みがあるようである。
【実施例2】
【0094】
受容体−ADDLの付着および同時局在化
本質的にLacor,P.N.et al.(2004)J.Neurosci.,vol.24,no.45,pp.10191−10200に記載のように、受容体−ADDLの付着および同時局在化を行った。簡単に述べれば、3週間培養した海馬(HP)細胞を、500nM ADDLで30分間で処置し、固定し、5回洗浄した。使用した抗体に依存して、0.1% Triton X−100透過処理を使用するか使用しないで免疫標識を行った(すなわち、抗Aβ N末端抗体を使用する場合、非透過処理条件を使用した)。抗グルタミン酸−受容体モノクローナル抗体+M71抗ADDLポリクローナル抗体またはポリクローナルグルタミン酸−受容体抗体+20C2抗ADDLモノクローナル抗体のいずれかを使用して、二重標識を行った(例えば、2004年10月25日出願の米国特許出願番号第60/621,776号を参照のこと)。共焦点顕微鏡法を使用して、免疫反応性を画像化した。
【0095】
図11−1についての言及:パネル中に示したグルタミン酸(AMPAまたはKAINATE)受容体抗体の色は、免疫反応(IR)の色に適合する。ADDL−IRは、反対色である。ADDLとグルタミン酸受容体の同時局在化は、黄色で認められる。画像は、表示の受容体およびADDLについての二重標識した3週齢のHP細胞の樹状突起樹の一部を示す。画像を、100倍の対物レンズおよびデジタル3.5倍ズームで取得した。スケールバーは、4μm(ミクロン)を示す。示したデータは、捕捉した条件あたりの6視野の2つの異なる実験を代表する。
【0096】
図11−2についての言及:パネル中に示したグルタミン酸(NMDA)受容体抗体の色は、免疫反応(IR)の色に適合する。ADDL−IRは、反対色である。同時局在化は、黄色で認められる。画像は、表示の受容体およびADDLについての二重標識した3週齢のHP細胞の樹状突起樹の一部を示す。画像を、デジタルズームを行っていないパネル標識「NR2A/B Chem」以外は100倍の対物レンズおよびデジタル3.5倍ズームで取得した。示したデータは、捕捉した条件あたりの6視野の1つの実験を代表する。
【0097】
分析:この情報は、特異的グルタミン酸受容体とADDLとの間の同時局在化の質的描写を示す。どの解釈にも拘束されないが、予備実験の結果により、AMPA−RがNMDA−Rよりも頻繁にADDLと同時局在化することが示唆される。ADDLは、グルタミン酸受容体(AMPA−RまたはNMDA−R)を発現する樹状突起で常に見出され、しばしばこれらの受容体に並列する。
【実施例3】
【0098】
受容体に及ぼすADDLの影響
図12に示すように、NR2B膜発現は、ADDL曝露後に減少する。非透過処理条件下では、NR2B膜発現量を、細胞外エピトープに対する抗体を使用して評価した。NR2B標識の比較分析を行うために等しい密度の神経網を画像化した。標識されたピクセルの総数の有意な減少が認められ、これはNR2B点数の減少と一致した(p<0.001、n=4、2つの異なる実験で認められた1実験由来の神経網画像)。神経突起に沿って標識したNR2Bの例は、定量のために画像化した神経網中のADDL処置後のNR2B標識の認められた減少の代表である(C、D、スケールバーは8μmを示す)。
【実施例4】
【0099】
棘幾何学に及ぼすADDLの影響
図13に示すように、ADDLでの海馬ニューロンの経時処置により、スピノフィリン免疫蛍光(IF)強度および棘の形態によってモニタリングしたところ、一過性にシナプス後応答が得られる。ADDLでの海馬ニューロンの経時処置により、1時間後にスピノフィリン蛍光の減少が明らかとなり、3時間後に有意にピークとなり、その後コントロールレベルに戻る(A、p<0.05、グラフにしたデータは、1つの実験から画像化した5つのニューロンの平均および対応するSEMである)。ADDL曝露後のスピノフィリンIFの代表的画像を示す。(B、スケールバーは30μmを示す)。ADDLでの経時処置後の棘の長さも測定し、ADDLとの3時間のインキュベーション後に棘の長さの有意な増加が認められた(C、p<0.005、グラフにしたデータは、1つの実験から画像化した異なるニューロン由来の10の樹状突起の枝部から得た棘の長さの平均である)。棘の長さの測定値の分布により、より長い棘に向かうADDL誘導性のシフトが証明される(D)。スピノフィリンIFの高倍率画像を、棘の長さの定量に使用した(E、F、3時間のADDL/媒体インキュベーション後の代表的画像、スケールバーは8μmを示す)。
【実施例5】
【0100】
Erb−B4受容体に及ぼすADDLの影響
図14に示すように、1時間のADDL曝露後にErb−B4 IF染色強度が減少する。成熟海馬ニューロンを、媒体(A)およびADDL(B)で処置し、その後、Erb−B4について免疫標識した。Erb−B4(赤色)は、ADDLによってターゲティングされない一握りの細胞で強く発現され、これは、ErbB4とADDL(緑色)の免疫反応性の画像の組み合わせによって証明される(C)。挿入図は、ADDL結合神経網のより高倍率の拡大画像であり、Erb−B4とADDL点との間で同時局在化を欠くことが示されている。等しい密度の神経網におけるErbB4 IFの定量により、標識ピクセルおよび点の数の有意な増加が明らかとなった(D、E、p<0.05、グラフは1つの実験から得られた4つの画像の平均および対応するSEMを示す)。スケールバーは40μmを示す。
【実施例6】
【0101】
シナプス後膜肥厚(PSD)へのADDLの結合
図15に示すように、ELISAアッセイを使用して決定したところ、ADDLは、シナプス後膜肥厚(PSD)に結合するが活性帯(AZ)に結合しない。PSDへのADDLの結合を、ADDLを含むELISAプレートに付着した単離PSDのインキュベーションによってアッセイした。コントロールとして活性帯(AZ)を使用した。図15中のパネルAは、PSDへのADDL結合のアッセイのための典型的なプロトコールを概説する。パネルAの上部に示すように、最初に、標準的なプロトコールにしたがって、シナプトソームを使用してPSDおよびAZを生成する(例えば、Phillips,G.R.et al.(2001),Neuron,vol.32,pp.63−77;およびその参考文献を参照のこと)。図では、本明細書中の他の場所に示すように、TX100は、Triton X−100を示す。M71/2は、以前に開示のM93およびM94に類似のADDL特異的ポリクローナル抗体を示す(例えば、2002年6月11日出願の米国特許出願番号第10/166,856号)。図15中のパネルBは、このようなアッセイの典型的な結果を示す。
【0102】
図16に示すように、CNQXはシナプトソームへのADDLの結合を遮断する。図16中のパネルAは、CNQXの存在下でのシナプトソームへのADDL結合のアッセイのための典型的なプロトコールを概説する。図16中のパネルBは、このようなアッセイの典型的な結果を示す。WBは、この場合は6E10抗体を使用したウェスタンブロットを示す。
【0103】
図17に示すように、ADDL免疫沈降アッセイにおいて、CNQXは、PSD−95の共沈量を減少させる。図17のパネルAは、CNQXの存在下でのPSD−95へのADDL結合のアッセイのための典型的なプロトコールを概説する。図17中のパネルBは、このようなアッセイの典型的な結果を示す。PSD−95 WBは、標準的なプロトコールにしたがって行ったPSD−95ウェスタンブロットを示す。
【0104】
図18に示すように、CNQXは、ニューロン表面へのADDL結合を遮断する。ADDLまたはADDL+CNQXを、本明細書中に記載の培養物中でニューロン細胞とインキュベートした。典型的なADDL点状結合が認められ、所与の突起長あたりの各点を計数した。CNQXの存在下でADDL点状結合部位数は減少する。
【実施例7】
【0105】
ニューロンへのADDL結合の定量
図19および20に示すように、ニューロンへのADDL結合を定量することができる。
【0106】
標準的なプロトコールにしたがって、ビオチン化ADDLを調製した。
【0107】
漸増量のビオチン−ADDL(.07μM〜17.8μM)を、初代海馬培養物に添加し、37℃で15分間インキュベートした。その後、ニューロンを、加温したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄し、4%パラホルムアルデヒドにて4Cで20分間固定した。PBSで細胞を数回洗浄することによってパラホルムアルデヒドを除去した。非特異的結合を、2%BSA(ウシ血清アルブミン)を含むPBSをを使用した室温で30分間のインキュベーションによって遮断した。ニューロンを、アルカリホスファターゼ(Molecular Probes,1:1500)にカップリングしたストレプトアビジンと室温で1時間インキュベートした。PBSで細胞を数回洗浄することによって非特異的結合を除去した。アルカリホスファターゼの基質としてSapphine−IIを使用したCDP Starを使用して、ADDL結合を検出した。終点発光を、Tecan GENios proを使用して室温で30分間のインキュベーション後に測定した(例えば、図19を参照のこと)。
【0108】
ADDL結合の免疫細胞化学:初代海馬ニューロンを、2.5μM ADDLと共に37Cで15分間インキュベートした。その後、ニューロンを加温PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、その後、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4)で洗浄した。非特異的結合を、2%正常ヤギ血清を含むPBSを使用して室温で30分間遮断した。一次抗体を、4Cで一晩インキュベートした(ウサギ抗微小管関連タンパク質(MAP2)の700倍希釈物およびマウス抗ADDL抗体の2000倍希釈物)。翌日、培養物をPBSで洗浄し、その後、適切なAlexaFluor 488または594抱合IgG(Molecular Probes,Eugene,OR)(2μg/ml)と共に室温で2時間インキュベートした。さらに、300nMのDAPI核色素を含むPBSを30分間添加した。その後、培養物を、PBSで4回洗浄し、Cellomics Arrayscanプラットフォームを使用して画像化した。
【0109】
Arrayscan:Arrayscan Compartmental Analysis BioApplicationを、ADDL陽性初代海馬培養物の画像分析のために修正して使用した。蛍光強度を測定するために、3チャネルを使用して対象物を同定した。チャネル1は、第1の対象物(DAPI色素によって視覚化した核)のためであり、この対象物の平均強度および総強度を測定した。チャネル2および3は従属チャネルであるので、チャネル2をニューロンMAP2染色(AlexaFluor 594によって視覚化)に割り当て、チャネル3をADDL染色(AlexaFluor 488によって視覚化)に割り当てた。10倍対物レンズを使用して画像を取得し、1ウェルあたり全部で15視野をスキャニングした。(例えば、図20のパネルAおよびBを参照のこと)。
【実施例8】
【0110】
ADDL受容体
膜の調製
(1)いくつかの工程で示した操作以外は、全ての操作を4℃で行った。氷上で成体ラットから全脳を除去した。
(2)小脳、皮質、および海馬をPBS中で分離した。望ましくない白質の切除後、大血管を除去した。
(3)冠状断面を、0.32Mスクロース、50mM HEPS、25mM MgCl2、0.5mMジチオスレイトール、200μg/ml PMSF、2μg/mlペプスタチンA、4μg/mlロイペプチン、および30μg/ml塩酸ベンズアミジンを含むPBS(pH7.4)を含む3倍量の緩衝液Aで3回洗浄した。
(4)1gの組織を、20倍量の緩衝液Aで20分間ホモジナイズし、混合物を、1,000×gで10分間遠心分離した。
(5)ペレットを15倍量の緩衝液Aに再懸濁し、工程4を繰り返した。
(6)合わせた上清を、100,000×gで1時間遠心分離した。
(7)ペレットを30mlPBSに懸濁し、100,000×gで45分間再度遠心分離した。
(8)ペレットを2mlPBSに再懸濁し、細胞膜として使用し、−83℃で維持した。
【0111】
界面活性剤処置によるADDL受容体の富化および線形勾配超遠心
界面活性剤処置
成体ラット皮質の40mg×6の皮質膜タンパク質を、0.4%双性イオンを含む120mlの5mM Tris−HCl(pH9.5)に室温で1時間溶解した。
【0112】
線形スクロース勾配超遠心
30〜60%スクロース線形勾配を含む10mlの5mM Tris−HCl(pH7.4)を調製し、1つの超遠心管の底に誘導した。20mlの界面活性剤処置溶液を、このスクロース線形勾配の上部に適用した。100,000gで18時間超遠心を行った。底のペレットを、p140およびp260を含む粗サンプルとして使用した。このサンプルを、3ml 10%SDSに溶解し、10mMリン酸ナトリウムによって室温で1時間1%SDSに再度希釈した。この溶液を、100,000gにて21℃で1時間遠心分離した。上清を、CHT HPLCにアプライした。
【0113】
CHTカラムによるADDL受容体の富化
上清(すなわち、ADDL受容体の粗抽出物)を、10mMリン酸緩衝液(pH7.2)、1%SDS、および0.5mM DTTで平衡化したEcono−Pac CHT−IIカートリッジにアプライした。平衡化緩衝液での洗浄後、同一緩衝液中のリン酸ナトリウムの線形勾配(10〜700mM)を使用してクロマトグラフィを行った。SDSの沈殿を防止するために緩衝液およびカラムを28℃に保持した。200μlの溶離画分を、1%SDSを含む10mM Tris−HCl(pH7.4)に対して一晩透析した。これらの画分を、Centricon(Amicon、10kDaカットオフ)での限外濾過によって60μlに濃縮し、100%PEGによって25μlに再度濃縮した。
【0114】
カラム由来の画分中のADDL受容体の同定
リガンドとして合成ADDLを使用した。ラット皮質の75μgタンパク質を、コントロールのために、30μlの電気泳動サンプル緩衝液に溶解した。濃縮された画分を、25μlの電気泳動サンプル緩衝液と混合した。電気泳動条件は以下の通りである。4〜20% Tris−HClゲル、120V、室温で1.5時間および冷所で2.5時間。移動:100Vで1時間。ニトロセルロース膜を、5%無脂肪粉乳を含むTBS.T1で一晩ブロッキングし、TBS.T1にて室温で3回×15分間洗浄した。ニトロセルロース膜上のタンパク質を、10nM ADDLを含む10ml F12培地と冷所で3時間インキュベートした。ニトロセルロース膜を、TBS.T1にて室温で3回×15分間洗浄し、一次抗体M71/2(1:4,000)を含む5%ミルク含有TBS.T1と室温で1時間インキュベートした。膜を、TBS.T1にて室温で3回×15分間洗浄し、5%ミルクと共にM71/2に対する二次抗体Igウサギ(1:160,000)と室温で1時間インキュベートし、その後、TBS.T1にて室温で3回×15分間洗浄した。画像を、ECL,Femto Kit(各0.5mlおよび1.0ml水)によって現像した。
【0115】
電気泳動によるp140およびp260の分離
CHT−カラム由来のp140およびp260を含む画分を濃縮し、SDS−PAGEによって分離した。ADDLリガンドブロットのために、コントロールの膜タンパク質をニトロセルロースに移した。他のラインのゲルを、クーマジーブルーR250で染色した。コントロールとの比較後、p140およびp260を切り出し、配列決定のためにミシガン州立大学に送った。
【0116】
LC−MS/MSまたはN末端配列:
LC−MS/MS:SDS−PAGEゲル中のタンパク質を、クーマジーブルーR−250で染色する。バンドを切り出し、ゲル中のタンパク質をトリプシンで消化し、HPLCによってペプチドを溶離および分画し、質量分析計に導入する。Mascotでペプチド配列を検索した。
【0117】
N末端配列:
タンパク質をPVDF膜に移した後、タンパク質をクーマジーブルーR−250で染色した。タンパク質バンドを切り出し、Edman化学によってタンパク質のN末端配列を決定した。
【0118】
p140およびp260と同定された2つのタンパク質がsynGAPと呼ばれるタンパク質およびProSAP/Shankと呼ばれるタンパク質であるとさらに決定した(例えば、米国特許第6,723,838号;Park,E.et al.(2003)J.Biol.Chem.,vol.278,no.21,pp.19220−19229;Roussignol,G.et al.(2005)J.Neurosci.,vol.25,no.14,pp.3560−3570;Sala,C.et al.(2005)J.Neurosci.,vol.25,no.18,4587−4592;Soltau,M.et al.(2004)J.Neurochem.,vol.90,pp.659−665;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。これらは、シナプス後膜肥厚(PSD)中に存在し、種々の受容体およびチャネルを固定する働きをする足場タンパク質である。ADDLは、両方と相互作用するようである。依然として同定されていない他の膜貫通ADDL受容体タンパク質が存在する可能性が高い。このような受容体には、シナプス後膜肥厚(PSD)受容体、グルタミン酸受容体(例えば、mGluR、AMPA、NMDA、GluR2、GluR5、およびGluR6など)、ナトリウム/カリウムATPアーゼ(すなわち、Na+/K-ATPアーゼ)、インテグリン受容体、接着受容体、栄養因子受容体(例えば、トロフィン受容体)、GABA受容体、およびCAMキナーゼなどが含まれ得るが、これらに限定されない(例えば、米国特許第4,975,430号;Wang,Q.et al.(2004)J.Neurosci.,vol.24,no.13,pp.3370−3378;Maj,M.et al.(2003)Neuropharmacol.,vol.45,no.7,pp.895−906;Blanchard,B.J.et al.(2002)Biochem.Biophys.Res.Comm.,vol.293,no.4,pp.1197−1203;Blanchard,B.J.et al.(2002)Biochem.Biophys.Res.Comm.,vol.293,no.4,pp.1204−1208;Allen,J.W.et al.(1999)Neuropharmacol.,vol.38,no.8,pp.1243−1252;Oka,A.& Takashima,S.(1999)Acta Neuropathol.(Berl.),vol.97,no.3,pp.275−278;Copani,A.et al.(1995)Mol.Pharmacol.,vol.47,no.5,pp.890−897;Louzada,P.R.et al.(2001)Neurosci.Lett.,vol.301,pp.59−63;Lavreysen,H.et al.(2003)Mol.Pharmacol.,vol.63,no.5,pp.1082−1093;Conquet,F.et al.(1994)Nature,vol.372,pp.237−243;Battaglia,G.et al.(2001)Mol.Cell.Neurosci.,vol.17,pp.1071−1083;Bruno,V.et al.(2001)vol.21,pp.1013−1033;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【実施例9】
【0119】
synGAP、shank3、およびグルタミン酸受容体
初期アルツハイマー病におけるシナプス
歯状回中のシナプス前部位から放出され、細胞外斑中に沈着するアミロイドβ[ベータ](Aベータ)ペプチドは、シナプス機能に影響を与え得る(例えば、Lazarov,O.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.9785−9793;およびその参考文献を参照のこと)。アルツハイマー病(AD)を罹患していると同定された脳内の新皮質および海馬の多くの領域でシナプス結合性およびシナプス小胞が有意に喪失し、シナプス数およびシナプス機能が変化する(例えば、Scheff,S.W.& Price,D.A.(2003)Neurobiol.Aging,vol.24,pp.1029−1046;Coleman,P.D.& Yao,P.J.(2003)Neurobiol.Aging,vol.24,pp.1023−1027;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。シナプス後膜肥厚は、AD脳で約50%減少する(例えば、Brun,A.et al.(1995)Neurodegeneration,vol.4,pp.171−177;およびその参考文献を参照のこと)。
【0120】
可溶性アミロイドおよびアルツハイマー病
Aβ(Aベータ)は、プラークの不在下でシナプス毒性である(例えば、Mucke,L.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.4050−4058;およびその参考文献を参照のこと)。ニューロン生成前の海馬シナプス有効性の変化およびシナプス機能障害は、アミロイドβタンパク質の拡散性のオリゴマーアセンブリに起因する(例えば、Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.298,pp.789−791;およびその参考文献を参照のこと)。β[ベータ]アミロイドペプチド1〜40および1〜42の水溶性オリゴマーは、正常およびアルツハイマー病の脳の大脳皮質中に存在する。AD脳は、コントロール脳より水溶性の高いAβ(Aベータ)を含む(例えば、Kuo,Y.M.(1996)J.Biol.Chem.,vol.271,pp.4077−4081;およびその参考文献を参照のこと)。AD患者由来の可溶性Aベータの濃度は、シナプス喪失と強く相関する(例えば、Lue,L.F.et al.(1999)Am.J.Pathol.,vol.155,pp.853−862;およびその参考文献を参照のこと)。LRPは、Aベータの小さな可溶性形態のプールの調整によってアルツハイマー病に典型的な記憶障害に寄与し得る(例えば、Zerbinatti,C.V.et al.(2004)Proc.Nat’1.Acad.Sci.USA,vol.101,pp.1075−1080;およびその参考文献を参照のこと)。
【0121】
アルツハイマー病におけるADDL
Aベータ(1〜42)の自己アセンブリによって、球状の神経毒性ADDLが形成される(例えば、Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760;およびその参考文献を参照のこと)。ADDLは初期段階のアルツハイマー病のシナプス可塑性を低下させて記憶機能障害と結び付け、それにより、末期に細胞を変性させて認知症を発症する(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;およびその参考文献を参照のこと)。オリゴマーAベータリガンド(ADDL、アミロイドβ由来の拡散性リガンド)は、AD前頭葉皮質で70倍に増加した(例えば、Gong,Y.S.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422;およびその参考文献を参照のこと)。小Aベータオリゴマーのターゲティングは、アルツハイマー病という難題の解決法であり得る(例えば、Klein,W.L.et al.(2001)Trends Neurosci.,vol.24,pp.219−224;およびその参考文献を参照のこと)。
【0122】
アルツハイマー病におけるグルタミン酸受容体
複数の神経受容体の変化が、アルツハイマー病で存在する。興味深いことに、アルツハイマー病の脳皮質組織中でカイナイト受容体数が増加する一方で、NMDA受容体が減少する。ムスカリン性受容体(M1)、カイナイト受容体、およびCRF受容体は、おそらくアルツハイマー病における変性反応に起因する受容体代償反応を示す(例えば、Guan,Z.Z.et al.(2003)J.Neurosci.Res.,vol.71,no.3,pp.397−406;Nordberg,A.et al.(1992)J.Neurosci.Res.,vol.31,no.1,pp.103−111;Nordberg,A.(1992)Cerebrovasc.Brain Metab.Rev.,vol.4,no.4,pp.303−328;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【0123】
グルタミン酸受容体
グルタミン酸受容体は、7回膜貫通ドメインGタンパク質共役受容体(代謝調節型)およびリガンド依存性イオンチャネル(向イオン性)の両方である。向イオン性受容体は、以下の3つの定義可能なファミリーにクラスター形成する。NMDA型、AMPA型(例えば、GluR1、GluR2、GluR3、およびGluR4)、ならびにカイニン酸型(例えば、GluR5、GluR6、およびGluR7)。これらの受容体は、特定のサブユニットの多量体会合物(associations)であり、最終受容体複合体上に特異的結合ドメインを有する(例えば、Meador−Woodruff,J.H.et al.(2003)Ann.N.Y.Acad.Sci.,vol.1003,pp.75−93;およびその参考文献を参照のこと)。
【0124】
カイニン酸受容体サブユニットの相同性
GluR5は、AMPA受容体サブユニットGluR1−GluR4と約40%の配列相同性を示すクローン化すべき第1のカイニン酸受容体サブユニットであった。別の4つのカイニン酸受容体サブユニット(GluR6、GluR7、KA1、およびKA2)を、その構造相同性および[3H]カイニン酸塩に対する親和性に基づいて、2つの群に分類することができる。カイニン酸受容体複合体は、5つの異なるタンパク質サブユニット(KA1およびKA2(高親和性カイニン酸を好む)およびGluR5−GluR7(低親和性カイニン酸を好む)が含まれる)から形成される。低親和性サブユニット(GluR5−GluR7)は約75%相同である一方で、高親和性サブユニット(KA1およびKA2)は約68%相同である。GluR5−GluR7とKAl/KA2との間の相同性は、約45%と遥かに低い。AMPA受容体サブユニットと同様に、各カイニン酸受容体サブユニットは、相対分子量(Mr)が約100kDaの約900個のアミノ酸を含む(例えば、Chittajallu,R.et al.(1999)Trends Pharmacol.Sci.,vol.20,no.l,pp.26−35;およびその参考文献を参照のこと)。
【0125】
カイニン酸受容体および長期増強(LTP)
カイニン酸受容体は、海馬中の苔状線維シナプスでの長期増強(LTP)の誘導で役割を果たす。カイニン酸受容体ノックアウトマウスでは、GluR6を欠くマウスでLTPが減少するが、GluR5(カイニン酸受容体サブユニット)では減少しない。これらの事実は、GluR6サブユニットを含むカイニン酸受容体が苔状線維シナプス強度の調整因子であることを証明している(例えば、Contractor,A.et al.(2001)Neuron,vol.29,pp.209−216;およびその参考文献を参照のこと)。
【0126】
グルタミン酸受容体、synGAP、およびシナプス後膜肥厚(PSD)
向イオン性受容体および代謝調節型受容体の両方の場合、両受容体型と特異的に会合するシナプス後膜肥厚に会合する細胞内タンパク質が同定された。PSD95は、NMDA(NR2)およびGluR5,6/KA2と特異的に会合する(例えば、Meador−Woodruff,J.H.et al.(2003)Ann.N.Y.Acad.Sci.,vol.1003,pp.75−93;Hirbec,H.et al.(2003)Neuron,vol.37,pp.625−638;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【0127】
PSD95およびNMDA受容体との巨大な高分子複合体中に存在する場合、SynGAPは脳内で選択的に発現し、興奮性シナプスで高度に富化される。synGAPは、RasのGTPアーゼ活性を刺激するので、興奮性シナプスでのRas活性を負に調節することが示唆される。シナプス後膜でのRasシグナル伝達は、NMDA受容体およびニューロトロフィンによる興奮性シナプス伝達の調整に関与し得る。(例えば、Kim,J.H.et al.(1998)Neuron,vol.20,pp.683−691;およびその参考文献を参照のこと)。興奮性シナプスのシナプス後膜で、神経伝達物質受容体は巨大タンパク質の「シグナル伝達機構」(情報処理および記憶の形成に寄与するシナプス後膜肥厚)に付着する(例えば、Kennedy,M.B.(2000)Science,vol.290,pp.750−754;Walikonis,R.S.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,no.11,pp.4069−4080;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【0128】
興奮性シナプスでは、シナプス後足場タンパク質であるシナプス後膜肥厚95(PSD95)により、NMDA受容体(NMDAR)をRas GTPアーゼ活性化タンパク質synGAPと共役させる(例えば、Komiyama,N.H.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.972109732;およびその参考文献を参照のこと)。synGAPによるシナプスRasシグナル伝達の調節は適切なニューロン発達およびグルタミン酸受容体輸送に重要であり、LTPの誘導に重要である。変異マウスでは、synGAPによってRasを適切に調節することなく、シナプスでのRasの活性化により、Rasシグナル伝達を増加させることができる(MAPキナーゼカスケードの活性化が含まれる)(例えば、Kim,J.H.et al.(2003)J.Neurosci.,vol.23,pp.1119−1124;およびその参考文献を参照のこと)。synGAPはまた、ERK/MAPKシグナル伝達を調節する(例えば、Komiyama,N.H.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.972109732;およびその参考文献を参照のこと)。CaMKIIによるsynGAPの阻害により、GTP結合Rasの不活化が停止され、NMDA受容体の活性化の際に海馬ニューロン中で分裂促進因子活性化タンパク質(MAP)キナーゼ経路を活性することができる(例えば、Chen,H.J.et al.(1998)Neuron,vol.20,pp.895−904;Komiyama,N.H.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.972109732;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【0129】
ADDL、shank3、およびグルタミン酸受容体
ニューロン細胞では、Shankタンパク質はシナプス後膜肥厚(PSD)に局在し、シナプス後シグナル伝達機能を皮質細胞骨格に関連させることによって樹状突起棘の形態を調節することが示されている(Naisbitt et al.,1999;Tu et al.,1999;Sheng and Kim,2000;Sala et al.,2001;Boeckers et al.,2002)。グルタミン酸受容体は、シナプス後シグナル伝達機構の鍵となる要素であり、shankタンパク質は、PSD−95、GKAP、およびタンパク質のホーマーファミリーなどの他のPSD足場タンパク質を介してmGluRとGluRとの間の結合を確立する。ADDLは、ProSAP2/shank3(海馬シナプトソームから単離され、質量分析によって同定されたp260タンパク質バンド)に結合することができる。shank3と群ImGlu受容体(mGluR1およびmGluR5)との複合体へのADDL結合により、mGluシグナル伝達を誘発し、それにより、LTPを妨害することができる(Wang et al.,2004)。
【0130】
ADDLおよびLTP
ADDLは、初期アルツハイマー病においてシナプス可塑性を低下させてLTPを阻害し、末期に細胞を変性させて認知症を発症させることができる(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;およびその参考文献を参照のこと)。アミロイドβタンパク質のオリゴマーは、潜在的にインビボで海馬の長期増強を阻害する(例えば、Walsh,D.M.et al.(2002)Nature,vol.416,pp.535−539;およびその参考文献を参照のこと)。Aベータの可溶性オリゴマー(1〜42)は、ラット歯状回における長期増強を阻害するが、長期低下を阻害しなかった(例えば、Wang,et al.(2002)Brain Res.,vol.924,pp.133−140;およびその参考文献を参照のこと)。
【0131】
他の基礎的情報には、以下が含まれるが、これらに限定されない:米国特許第6,811,992号;米国特許第6,723,838号;米国特許第6,653,102号;米国特許第6,515,107号;米国特許第6,500,624号;米国特許第6,228,610号;米国特許第6,221,609号;米国特許第6,051,688号;米国特許第6,040,175号;米国特許第6,033,865号;米国特許第5,912,122号;米国特許第5,888,996号;米国特許第5,783,575号;米国公開特許番号第2003/0176651号;Fleck,M.W.et al.(2003)J.Neurosci.,vol.23,no.4,pp.1219−1227;Meldrum,B.S.(2000)J.Nutr.,vol.130,pp.1007S−1015S;Senkowska,A.& Ossowska,K.(2003)Pol.J.Pharmacol.,vol.55,no.935−950;Ronnback,L.& Hansson,E.(2004)J.Neuroinflammation,vol.1,no.1,pp.22−30;Lee,J.−M.et al.(2000)J.Clin.Invest.,vol.106,no.6,pp.723−731;and Tao,H.W.et al.(2001)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,vol.98,no.20,pp.11009−11015;および上記の全てにおける参考文献などを参照のこと。
【0132】
2つのタンパク質(p140およびp260)は、高親和性でADDLに結合することができ、これらは共に皮質および海馬のみで見出される。質量分析(MS)データから、p140由来の55個のペプチドがPSD中でsynGAPと適合する。p140の分子サイズは、synGAPの分子サイズと近似する。免疫細胞化学実験では、ADDL「ホットスポット」は、synGAPと同時局在化する。ADDLを最初にニトロセルロース上でp140とインキュベートする場合、ADDLは、synGAPへのN末端特異的抗体の結合を遮断することができる。しかし、類似の条件下で、ADDLは、synGAPへのC末端特異的抗体の結合を遮断することができない。これにより、ADDLはsynGAPのN末端またはN末端付近でsynGAPに結合することができる可能性が高く、N末端抗体の1又は複数のエピトープを遮断または被覆することができることが証明される。(例えば、Lacor,P.et al.(2004)J.Neurosci.,vol.24,pp.10191−10200;およびその参考文献を参照のこと)。
【0133】
synGAPおよびグルタミン酸受容体の相同配列
synGAP(配列番号_)およびグルタミン酸受容体(配列番号_)との間の以前に認識されていない配列相同性を本明細書中に開示する。
【化10】
(「|」は、2配列間の同一アミノ酸を示し、「^」は、グルタミン酸受容体中の特異的リガンド結合アミノ酸を示す。)
【0134】
ClustalWアルゴリズムを使用して同一領域をアラインメントする場合、アラインメントは以下である。
【化11】
(コンセンサス中の「*」は同一アミノ酸を示し、「:」は非常に類似したアミノ酸を示し、「.」は類似性の低いアミノ酸を示す)
【0135】
同一のGluR5前駆体タンパク質領域の配列(N.C.B.I Entrez Proteinでのアクセッション番号P39086)をアラインメントに加える場合、類似の相同性が存在する。
【化12】
(同様に、コンセンサス中の「*」は同一アミノ酸を示し、「:」は非常に類似したアミノ酸を示し、「.」は類似性の低いアミノ酸を示す。)
【0136】
この相同性は、グルタミン酸受容体のリガンド結合領域に局在し、ADDLがグルタミン酸受容体中の相同配列に結合し、それにより、LTPを阻害することを示し得る。Armstrong,N.et al.(1998)Nature,vol.395,pp.913−917)に示すようにキナーゼに結合したグルタミン酸受容体(GluR2 S1S2)の結晶構造の表示を考慮すると、グルタミン酸受容体とsynGAPとの間の相同領域は、GluR2 S1S2結晶構造のJヘリックス付近に存在するであろう。
【0137】
図21(パネルA〜C)は、ヒトsynGAP(N.C.B.I.Entrez Proteinでのアクセッション番号NP 006763およびQ96PVO)、ヒトグルタミン酸受容体2前駆体(N.C.B.I.Entrez Proteinでのアクセッション番号P42262)、およびヒトグルタミン酸受容体6イソ型1前駆体(N.C.B.I.Entrez Proteinでのアクセッション番号NP 068775)の配列のClustalWアラインメントの結果を示す。NPS@:Network Protein Sequence Analysis,Combet,C.et al.(2000)TIBS,vol.25,no.3,pp.147−150によって配列アラインメントを行った(<http://npsa−pbil.ibcp.fr/egi−bin/npsa_automat.pl?page=npsa_clustalw.html>;最終閲覧日2004年12月15日)。
【0138】
グルタミン酸およびグルタミン酸受容体リガンド(CNQXおよびNS−102)は、樹状受容体へのADDL結合を遮断する。
【0139】
図22のパネルAおよびBに示すように、グルタミン酸およびグルタミン酸受容体リガンド(CNQXおよびNS−102)の添加によってシナプス後局在受容体または受容体の複合体へのADDL結合を遮断することができる。結果としてADDL結合が減少するのは、ADDLが1又は複数のグルタミン酸受容体に直接結合するか、グルタミン酸受容体リガンドがグルタミン酸受容体を介した変化を誘導し、それにより、ADDLに対するADDL受容体の結合親和性が減少するからである。
【0140】
グルタミン酸受容体は、2つのクラス(代謝調節型および向イオン性)に分類される。シナプス後部位に局在する群ImGlu受容体はmGluR1およびmGluR5であり、ADDLがこれらの受容体またはこれらの受容体および他のシナプス後膜肥厚固定タンパク質を含む複合体に直接結合する可能性が高い。
【0141】
向イオン性グルタミン酸受容体(GluR)は、イオンチャネルにゲーティングし、AMPAおよびカイナイト受容体が含まれる。これらは、GluR1−4サブユニットおよびGluR5−7サブユニットをそれぞれ含む四量体アセンブリである。機能的四量体チャネル内の異なるサブユニットの正確な組み合わせにより、特定の結合特性およびイオン輸送特性が決定される。ADDLは、グルタミン酸リガンドによるシナプス結合の遮断を考慮してAMPA受容体に結合する可能性が最も高いが、GluRとのリガンド結合によって誘発されるADDL受容体の高次構造の変化およびその後のADDL受容体に及ぼす間接的影響によってADDL受容体へのADDLの結合を間接的に遮断することもできる。
【0142】
ADDLは、シナプス後膜肥厚固定タンパク質SHANK3(mGluR5受容体と直接相互作用することが公知のタンパク質)に結合することが公知である。
【0143】
海馬細胞へのADDL結合に及ぼすGluR遮断剤の影響についての免疫蛍光試験。
以前の実験は、一部がADDLと同時局在化したGluR6およびシナプトソームへのADDL結合を少なくとも一部遮断するグルタミンを示した。したがって、GluR遮断剤がニューロン細胞へのADDL結合を遮断する能力を評価した。
【0144】
海馬細胞を、ポリ−L−リジンをコーティングしたスライドガラス上にプレートし、Saraによって25日間成長させた。Daliyaによって9/21/04に濃度54.2μMのADDLを作製した。培養皿にL−グルタミン酸(5mM)、NS−102(50μM)、CNQX(100μM)を添加するか何も添加せず、その直後にADDL(0.5μM)を添加し、37℃で15分間インキュベートした。コントロールとして1つの皿に媒体を添加した。培地への同体積の3.7%ホルムアルデヒドの添加によって細胞を5分間固定し、その後、全ての固定培地溶液を除去し、10分間のみ3.7%ホルムアルデヒドと置換した。細胞を、PBSで4回リンスし、次いで、PBS:10%NGSと8℃で一晩インキュベートした。細胞を、PBS:NGSで希釈した20C2(1:1000)にて室温で3時間免疫標識した。細胞を、PBSで4回リンスし、次いで、PBS:NGSで希釈したAlexa Fluor 488抗マウス(1:500)と室温で3時間インキュベートした。細胞をPBSで5回リンスし、ProLong anti−fadeマウンティング培地を使用してマウントした。細胞を、MetaMorphを備えたNikonで視覚化した。結果:CNQXおよびグルタミン酸は、海馬細胞へのADDL結合を選択的に減少させる。NS−102は、ADDL結合をいくらか減少させる。
【0145】
グルタミン酸は、興奮性神経伝達で重要な役割を果たし、且つLTP生成および正常な脳機能に必要な3つの主な向イオン性受容体クラスおよび3つの主な代謝調節型受容体クラスのリガンドである(Meldrum 2000)。グルタミン酸はまた、神経変性からの防御で主な役割を果たす2つのグリア型輸送体(GLASTおよびGLT)および3つの神経輸送体(EAAC1、EAAT4および5)に結合する(Kanai and Hediger 2003)。
【0146】
グルタミン酸は、高親和性(例えば、高親和性Na+依存性グルタミン酸輸送体(Km=5〜20μM))から低親和性(低親和性グルタミン酸輸送体(1〜2mM))までの範囲の種々の親和性でその基質と結合する(表1を参照のこと)。
【0147】
5mMグルタミン酸は、ニューロンへのADDL結合を阻害することができる。高濃度は、ADDLが、グルタミン酸が同一部位に結合する親和性よりもはるかに高い親和性を有することを意味する。
【0148】
【表1】
【0149】
海馬細胞へのADDL結合に及ぼすグルタミン酸受容体(GluR)遮断剤の影響についての免疫蛍光試験
前文で開示したように、図23が海馬培養物中のニューロンへの点状ADDL結合(前にシナプス結合であると示されている)は、グルタミン酸およびCNQX(AMPAおよびキナーゼ型グルタミン酸受容体の公知のアンタゴニスト)によって遮断されることを示す。前の実験により、GluR6がADDLと一部同時局在化し、グルタミンがシナプトソームへのADDL結合を少なくとも一部遮断することが示されている。したがって、GluR遮断剤が細胞へのADDL結合を遮断することができるかどうかを決定するための試験に取り掛かった。海馬細胞を、標準的な条件下で25日間成長させた。培養培地を含む個別の皿にL−グルタミン酸(5mM)、CNQX(100μM)、NS−102(50μM)、メマンチン(50μM)を添加するか何も添加せず、その直後にADDL(0.1μM)を添加し、37℃で15分間インキュベートした。コントロールとして1つの皿に媒体を添加した。細胞を固定し、ADDL(20C2)に特異的なモノクローナル抗体およびその後にAlexa Fluor 488抗マウス抗体で免疫標識した。細胞を、落射蛍光アタッチメントおよびMetaMorph画像化ソフトウェアを備えたNikon Optiphotを使用して視覚化した。データは、グルタミン酸およびCNQXがADDL結合の遮断で有効であり、NS−102は部分的遮断を示し、メマンチンはADDL結合に及ぼす影響はごく小さいことを示す。
【0150】
パニングアッセイにおいて、5mMグルタミン酸は、100nM ADDLの約75%のシナプトソームへの結合を遮断/防止する
パラメーター:シナプトソームを、グルタミン酸、ADDL、および20C2モノクローナル抗体に連続的に結合させ、抗マウスIgGでコーティングしたアッセイプレートウェル中でインキュベートし、20C2抗体について探索した。
【0151】
原理:本明細書中に開示されるように、GluR6とSynGAPとの間には配列相同性が存在する。ADDLがグルタミン酸受容体に結合することが可能である。したがって、グルタミン酸を使用してADDL結合を遮断することができるかどうかを決定した。
【0152】
処置:ヤギ抗マウスIgG(Fcフラグメント特異的(Jackson))を、50mM Tris−HCI(pH 9.5)で10mg/mlに希釈し、100ml/ウェル(1mg)をImmulon 4 Removawellストリップ(Dynatech Labs)に室温で7時間結合させた。非結合部位を、200ml 2%BSAを含むTBS(20mM Tris−HCI(pH 7.5)、0.8%NaCl)にて室温で10分間の遮断を3回行った。シナプトソームを、1ml/チューブの1%BSAを含むF12と混合し、4℃にて5,000gで5分間遠心分離し、各ペレットを1mlのBSA/F12で洗浄し、1ml BSA/F12に再懸濁した。シナプトソームを分割し、1つのチューブに5mMグルタミン酸を含む1mlのBSA/F12を添加し、室温で2時間インキュベートした。非結合グルタミン酸を、1mlのBSA/F12で3回洗浄した。シナプトソームを再度分割し、100nM ADDLを含むBSA/F12をグルタミン酸に結合しているシナプトソームおよび結合していないシナプトソームに添加し、37℃で1時間インキュベートした。上記のようにサンプルをペレット化し、1ml BSA/F12で3回洗浄した。各ペレットを、1.52mgモノクローナル20C2 IgGを含む1ml BSA/F12に再懸濁した。サンプルを、回転震盪器にいれ、4℃で2時間インキュベートした。上記のようにサンプルをペレット化し、1ml BSA/F12で3回洗浄した。各ペレットを、220ml BSA/F12に再懸濁し、100ml/ウェルを準備したアッセイプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした。ウェルを200mlのBSA/TBSで10分間の洗浄を3回行った。HRP結合抗マウスIgG(Amersham)をBSA/TBSで2000倍に希釈し、100ml/ウェルを室温で1時間インキュベートした。上記のBSA/TBSでの洗浄および流れているdH2Oでの3回のリンス後、100 ml/ウェルのBio−Radペルオキシダーゼ基質を使用して結合を視覚化した。室温で発色させ、Dynex MRX Microplate Readerにて405nmを読み取った。統計:データは、2つの値の平均として示し、エラーバーはSEMを示す。
【0153】
結果:図24に示すように、ADDLで標識していないシナプトソームは、低バックグラウンド結合を示した。反復洗浄および遠心分離に起因するシナプトソームのいくつかの劣化にもかかわらず、ADDLに結合したシナプトソームは、15分および30分で良好なシグナルを示した(30分のデータを示す)。グルタミン酸が存在する場合、ADDLシグナルがかなり減少する(約75%)。
【0154】
確証:パニングアッセイにおいて、グルタミン酸の存在は、シナプトソームへのADDL結合に影響を及ぼす。いかなる1つの可能な機構にも拘束されないが、1又は複数のグルタミン酸受容体へのADDL結合を直接遮断することができるか、グルタミン酸はADDL受容体に影響を与え、そして/または修飾することができる。本明細書全体に開示のように、これらの結果は、グルタミン酸とADDL結合が関連することを示す。
【0155】
アルツハイマー病を治療するためのsynGAP/グルタミン酸受容体の配列相同性
本明細書中に開示のsynGAPとグルタミン酸受容体との間の相同配列を使用して、ADDLの神経毒性の遮断によってアルツハイマー病を治療することができる。本明細書中に開示の相同配列を含むペプチドおよびタンパク質フラグメントなどを使用して、ニューロンへのADDLの結合を遮断し、それにより、アルツハイマー病を防止または治療することができる。
【0156】
抗ADDL治療薬の標的は、グルタミン酸受容体(カイニン酸、AMPA、およびNMDAサブタイプが含まれる)を含み得る。GluR6サブタイプ(いわゆるカイニン酸受容体)は、synGAPとの配列相同性を有する受容体サブタイプを例示する。他の配列相同性もAMPA受容体(例えば、GluR2)およびNMDA受容体内に存在する。
【実施例10】
【0157】
ADDL−シナプトソーム結合
シナプトソームパニングは、ADDL結合がシナプトソーム濃度に依存することを示す
パラメーター:シナプトソームを、ADDLおよびモノクローナル20C2抗体で連続的に標識し(例えば、2004年10月25日出願の米国特許第60/621,776号を参照のこと)、抗マウスIgGでコーティングしたアッセイプレートウェル中でインキュベートし、20C2抗体について探索した。
【0158】
原理:前のシナプトソームパニングの結果は、ADDLで標識したシナプトソームを抗体コーティングウェル中で補足することができることを示した。時折、バックグラウンド蛍光シグナルが存在したが、おそらくプレートの選択に起因する(すなわち、ELISAプレートではない)。
【0159】
処置:ヤギ抗マウスIgG(Fcフラグメント特異的(Jackson))を、50mM Tris−HCI(pH 9.5)で10mg/mlに希釈し、100ml/ウェル(1mg)をImmulon 3 Removawellストリップ(Dynatech Labs)に室温で7時間結合させた。非結合部位を、200ml 2%BSAを含むTBS(20mM Tris−HCI(pH 7.5)、0.8%NaCl)にて室温で10分間の遮断を3回行った。シナプトソームを、1ml/チューブの1%BSAを含むF12と混合し、4℃にて5,000gで5分間遠心分離し、各ペレットを1mlのBSA/F12で洗浄し、1ml BSA/F12に再懸濁した。チューブにADDL(50nM、100nM、および200nM)を添加し、シナプトソームを37℃で1時間インキュベートした。上記のようにサンプルをペレット化し、1ml BSA/F12で3回洗浄した。各ペレットを、420mlのBSA/F12に再懸濁し、200mlアリコートを1.52mgモノクローナル20C2 IgGを含む800ml BSA/F12と混合した。サンプルを、回転震盪器にいれ、4℃で2時間インキュベートした。上記のようにサンプルをペレット化し、1ml BSA/F12で3回洗浄した。各ペレットを、220ml BSA/F12に再懸濁し、100ml/ウェルを準備したアッセイプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした。BSA/F12で希釈したモノクローナル20C2(1.5〜15ng/100ml)も準備したウェル中でインキュベートした。ウェルを200mlのBSA/TBSで10分間の洗浄を3回行った。HRP結合抗マウスIgG(Amersham)をBSA/TBSで2000倍に希釈し、100ml/ウェルを室温で1時間インキュベートした。上記のBSA/TBSでの洗浄および流れているdH2Oでの3回のリンス後、100 ml/ウェルのBio−Radペルオキシダーゼ基質を使用して結合を視覚化した。室温で発色させ、Dynex MRX Microplate Readerにて405nmを読み取った。
【0160】
結果:図25に示すように、ADDLおよび20C2で標識したシナプトソームは、抗マウスIgGコーティングアッセイプレートに結合するようであった。シナプトソームコントロールはいかなるシグナルも示さなかった。20C2は、抗マウスIgGコーティングアッセイプレートへの良好な線形結合を示した。80mg/ウェルで予想されるような飽和は認められなかった。統計:データは、2つの値の平均として示し、エラーバーはSEMを示す。
【0161】
確証:これらの結果は、本明細書中に開示の他の情報をさらに支持する。
【実施例11】
【0162】
ADDL−シナプトソーム結合
シナプトソームを固定するためのコレラ毒素サブユニットBの使用は、ADDLおよびシナプトソーム濃縮依存性結合を示す
パラメーター:アッセイプレートウェルを、コレラ毒素サブユニットBでコーティングした。シナプトソームが結合され、ADDLおよび20C2抗体を使用して視覚化した。
【0163】
原理:以前の手順は、シナプトソームの有意なプロセシングを含み、シナプトソームを喪失させ、且つ時間がかかる。CT−Bが脂質ラフトに結合するので、これは、アッセイウェルにシナプトソームを固定するための代替法であり得る。
【0164】
処置:コレラ毒素サブユニットB(CT−B,Sigma)を、TBS(20mM Tris−HCI(pH 7.5)、0.8%NaCl)で10mg/mlに希釈し、100ml/ウェル(1mg)をImmulon 4 Removawellストリップ(Dynatech Labs)に冷所で一晩結合させた。非結合部位を、200ml 2%BSAを含むTBS(20mM Tris−HCI(pH 7.5)、0.8%NaCl)にて室温で10分間の遮断を3回行った。シナプトソームを、4℃にて5,000gで5分間遠心分離し、1mlのBSA/F12で2回洗浄し、BSA/F12に再懸濁した。シナプトソームを適切な体積に希釈し、0、10、20、40、および80mg/ウェルをウェルに添加し、シナプトソームを4℃で1時間結合させた。シナプトソームを、200mlのBSA/F12で3回洗浄する。ADDLを希釈し(10nM、50nM、および100μnM)、ウェルに添加し、37℃で1時間結合させた。上記のように、サンプルをBSA/F12で洗浄した。モノクローナル20C2IgG(1.52mg/ml)をBSA/F12で1000倍希釈し、100ml/ウェルを準備したアッセイプレートに添加した。プレートを4℃で2時間インキュベートした。サンプルを、上記のようにBSA/F12で洗浄した。HRP結合抗マウスIgG(Amersham)をBSA/FTBSで2000倍に希釈し、100ml/ウェルを室温で1時間インキュベートした。上記のBSA/TBSでの洗浄および流れているdH2Oでの3回のリンス後、100 ml/ウェルのBio−Radペルオキシダーゼ基質を使用して結合を視覚化した。室温で発色させ、Dynex MRX Microplate Readerにて405nmを読み取った。統計:データは、2つの値の平均として示し、エラーバーはSEMを示す。
【0165】
結果:図26に示すように、吸光度は、ADDL濃度およびシナプトソーム濃度に依存する。2連のウェルは、1つのデータポイント以外は、良好な再生性を示した。
【0166】
確証:CT−Bを使用して、シナプトソームを固定することができる。
【実施例12】
【0167】
ADDL−シナプトソーム免疫沈降
抗ADDLモノクローナル抗体(20C2)でコーティングした磁性ビーズを使用したADDL処置シナプトソームの免疫沈降
シナプトソームを、ADDLまたは媒体を含むF12/FBS(F12培地、5%FBS)とインキュベートした。処置したシナプトソームを、抗ADDLモノクローナル抗体(Dyna−20C2)を含むF12/FBSでコーティングした磁性ビーズを使用して免疫沈降を行った。標準的なウェスタンブロットで抗PSD95抗体を使用して、異なる画分中のシナプスマーカーの存在を評価した。
【0168】
パラメーター:Dyna−20C2を使用してADDL処置シナプトソームを免疫沈降する。
【0169】
根拠:ADDLに特異的なM71/2抗体を使用して得た以前の情報を、抗ADDLモノクローナル抗体(20C2)を使用して確認した。さらに、20C2は、生物活性を示す高分子量のADDLを認識する。したがって、20C2は、本明細書中に開示の他の情報を与えられたシナプトソームへのADDL結合を認識すると予想されるであろう。
【0170】
処置:シナプトソームとのADDLのインキュベーション:標準的なプロトコールにしたがって、シナプトソームを調製した。75μgのシナプトソームを、300nM ADDL(2.5μl ADDL 1/10/05)または賦形剤を含む500μl F12/FBS(F12培地、5%FBS)と回転しながら4℃で3時間インキュベートした。溶液中のADDLを除去するために、サンプルを、5000gにて4℃で10分間遠心分離し、1ml F12/FBSで5分間の洗浄を3回行った。上清を4℃で保存した。Dyna−20C2を使用した免疫沈降:製造者によって提供された手順にしたがって、DynabeadsM−500subcellularを、20C2でコーティングした。処置したシナプトソームを、300μlのF12/FBSに再懸濁した。0.250mgのDyna−M71.2をPBS中で洗浄し、シナプトソームに添加し、これらを回転させながら4℃で一晩インキュベートした。磁石でビーズを取り出した。ビーズを、1ml F12/FBSで12分間の洗浄を9回および1ml F12での12分間の洗浄を2回行った。上清を、「非結合」および「洗浄」として保存した。ペレット(「結合」)を、50μl SLB中に溶解した。「非結合」、「W1」、および「W2」を、20,000gで20分間遠心分離し、そのペレットを、60μl SLBに溶解させた。免疫ブロッティング:15μlの各サンプルを、4〜20%のTris−グリシンゲルにロードした。ゲルを、180Vで45分間泳動し、100V、4℃で1時間ニトロセルロース膜に移した。膜を、5%ミルクを含むTBS−Tにて室温で1時間ブロッキングし、PSD95抗体と室温で1時間インキュベートした。PSD95(ABRのMA1−045):1:4,000マウス−HRP:1:50,000。膜を、TBS−T中で10分間の洗浄を3回行い、抗マウスIgG−HRPと室温で1時間インキュベートした。TBS−Tで10分間の洗浄を3回行った後、ゲルを高感度化学発光(ECL)を使用して発色させた。
【0171】
結果:図27に示すように、PSD95を、ADDL−シナプトソームの結合画分中で検出することができるが、媒体−シナプトソームでは検出できない。
【0172】
確証:ADDL−シナプトソームを、20C2を使用して免疫沈降を行うことができる。
【実施例13】
【0173】
皮質PSDへのADDL結合
パラメーター:単離皮質PSDおよび/またはAZへのADDLの結合を評価する
【0174】
原理:ファーウェスタンブロットおよびAnt2.041の実験では、ADDLは、PSDに結合するが、活性帯に結合しないようである。単離PSDまたはAZをADDLとインキュベートし、YM−100で濾過した。
【0175】
処置:シナプトソームの分画:皮質シナプトソームを、少し修正した標準的な手順にしたがって調製した(例えば、Phillips et al.Neuron,vol.32,pp.63−77を参照のこと)。900μgシナプトソームを、5mlの0.1mM CaCl2で希釈し、浸透圧溶解を30分間行った。混合物を、20mM Tris(pH6)および1%TX−100(5ml溶液2×)に入れ、膜を氷中で30分間可溶化した。不溶性物質(シナプス接合部)を、30,000gで45分間の遠心分離によってペレット化した。シナプス接合部(SJ)を、3.5mlの20mM Tris(pH8.8)および1% TX100(Triton X−100)に再懸濁した。4℃で一晩のインキュベーション後、サンプルを40,000gで45分間遠心分離した(TLA 1300ローターにて25krpm)。ペレットは、PSDを含んでいた。上清を、O.1mM CaCl2、20mM Tris(pH6)、および1%TX−100に対して透析し(3×10時間)、上記のように40,000gで45分間遠心分離した。このペレットは、活性帯(AZ)を含んでいた。AZおよびPSDを、プロテアーゼインヒビターを含む30μl TBS中に再懸濁した。サンプルを短時間超音波処理し、BSAアッセイを使用してタンパク質濃度を得た。両サンプルについて3μg/μl。ELISA:少し修正した標準的プロトコルにしたがってELISAを行った。0.25、0、5、1、2.5、または5μgのサンプルをコーティングしたウェルを、100μl TBS+2%BSA(TBS/BSA)中に4℃で一晩溶解した。プレートを、200μl TBS/BSAにて室温で20分間のブロッキングを3回行った。100nM ADDLを、100μl TBS−T/BSAを含む各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。プレートを、TBS−Tでの室温で10分間の洗浄を3回行った。検出のために、1000倍希釈したM71/2ポリクローナル抗体(ADDL特異的)を含む100μlのTBS−T/BSAを使用した。室温で1時間インキュベートし、200μl TBS−Tにて室温で10分間の洗浄を3回行った。2000倍希釈のウサギ−HRP(Amersham)を、二次抗体として100μl TBS−T中で使用した。室温で1時間インキュベートし、200μl TBS−Tにて10分間の洗浄を3回行った。100μlの新たに調製したHRP基質(Bio−Radの「ペルオキシダーゼ基質キット」172−1064)を添加し、室温で45分間発色させた。色を、405nmで測定した。ネイティブウェスタンブロット(WB):9μgのPSDまたは活性帯を、15μlネイティブサンプル緩衝液中に溶解し、Tris−グリシン 4〜20%ゲルにロードした。β−メルカプトエタノール、サンプルのボイル、および泳動緩衝液中のSDSを使用しなかった。ゲルを100Vで泳動し、4℃、120Vで1.5時間ニトロセルロース膜に移した。移動後、膜を、5%ミルクを含むTBS−Tにて室温で1時間ブロッキングし、一次抗体(Ab)と4℃で一晩インキュベートした。PSD95(ABR−Affinity BioReagents−のMAI−045):1:4,000、マウス−HRP:1:50,000。Syntaxin(CHEMICONのMAB336):1:4,000、マウス−HRP:1:10,000。TBS−T中で10分間の洗浄を3回行い、抗マウスIgG−HRPと室温で1時間インキュベートした。TBS−T中で10分間の洗浄を3回行った後、ゲルをECLで発色させた。
【0176】
結果:図28のパネルAおよびBに示すように、ADDLは、PSDのみに結合し、AZに結合しない。活性帯およびPSDは共に、本明細書中に記載の調製後(すなわち、超音波処理)に多タンパク質複合体として残存する。したがって、これらは、ネイティブゲル電気泳動のウェル中に残存し、ゲルマトリクスに侵入することができない。
【実施例14】
【0177】
生化学的および細胞生物学的測定で使用するためのビオチン標識ADDLの形成
図29に示すように、ADDLへのビオチンの組み込みにより、LMWおよびHMWオリゴマーが産生される。ビオチン−Aベータ(1〜42)により、ストレプトアビジン結合試薬を使用してADDLが直接検出される。
【0178】
図29を参照すると、ビオチン−ADDL(すなわち、b−ADDL、B−ADDL、および/またはBADDL)は、三量体/四量体およびHMWアセンブリにオリゴマー化する。1:4の比率でAベータを使用した場合、ビオチン−Aベータ(1〜42)により、ADDLアセンブリの正確なプロフィールが得られる(例えば、米国特許第6,218,506号などを参照のこと)。1×PBS(w/o CaおよびMg)中にて37℃で1時間の100μMの総ペプチド(20μMビオチン化、80μM未変性)のインキュベーションにより、時間0での新たなペプチド単量体希釈物と比較して、可溶性オリゴマーが有意に形成される。HFIP蒸発およびDMSO再懸濁後にF−12組織培養培地の代わりに希釈剤としてPBSを使用した標準的なADDL調製法を使用して1mlのサンプルを生成した。図中の実線の曲線は、220nmでのペプチドおよびペプチドアセンブリの吸光度を示す。これらの曲線を、室温で1×PBS(w/o CaおよびMg)を含むSuperdex−200HR 10/30カラムに流速0.5ml/分で注入した300μlのサンプルの吸光度のモニタリングによって得た。Unicornソフトウェアを使用してAKTA基本クロマトグラフィシステムを操作し、データを収集した。点線の曲線は、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)によって決定した分子量(MW)値を示す。Wyatt Technologies DAWN EOS MALLS装置を、HPLCカラムおよび吸収フローセルとオンラインで接続し、Optilab rEX装置を使用して、溶離種のタンパク質濃度を決定した。Wyatt Technologies’のASTRA Vソフトウェアを使用して、MWプロフィールを記録し、フィッティングした。時間0における新たな単量体サンプルで認められるように、単量体に対応するMWが、約20〜19分で溶離された第2のピークで認められた。1時間のサンプルは、有意にオリゴマー化した。8ml〜15mlに有意に軌跡を描く第1のピークは、100万ダルトンから10万ダルトンまでの範囲の種を含む。むしろ単量体ペプチドを主に含む第2のピークは、三量体および四量体の範囲の種を含む。単量体MWは約4800Daであり、1時間のサンプルは、15000〜20000の範囲の低分子量(LMW)オリゴマーを含み、これらの種の安定な形成を示す。
【0179】
ビオチン標識ADDLと同様に、フルオレセイン標識ADDLがアセンブリする(データ示さず)。
【実施例15】
【0180】
ビオチンで標識されたADDLの特徴づけ
パラメーター:ビオチンかおよび非標識Ab1〜42の混合物由来のADDLを、SECによって分画し、ネイティブおよびSDS−PAGEウェスタンブロットによって分析し、ビオチン標識またはモノクローナル6E10抗体および20C2抗体を使用して探索した。
【0181】
原理:ビオチン化ADDLは、抗体と無関係の別の研究用ツールを提供する。ビオチン標識がオリゴマーのアセンブリ、構造、または機能に影響を与えるかどうかを調査するためにビオチン化Ab1〜42を使用して産生されたADDLを分析する必要がある。
【0182】
処置:2つのペプチドのHFIP溶液の混合および一晩の風乾、その後のSavantSpeed−Vac乾燥機での乾燥によって、ビオチン化および非標識Ab1〜42の混合物(1:4.7 mol:mol)からADDLを調製した。HFIPフィルムを約5mMにDMSOに溶解し、氷冷F12で約100μMに希釈し、短時間ボルテックスし、4℃で一晩静置した。サンプルを、14,000gにて4℃で10分間遠心分離し、清潔なチューブに移した。タンパク質濃度を、BSA標準を使用したCoomassie Plusタンパク質アッセイ(Pierce)によって決定した。ビオチン化ADDLを、Superdex75HR/10/30カラムによるSECに供し、画分を、ドットブロットによってビオチン標識について分析した。ビオチン化ADDLおよびSEC画分を、F12およびネイティブサンプル緩衝液(最終濃度は以下の通りである。5mM Tris−HCl(pH6.8)、38.3mMグリシン、10%グリセロール、0.017%ブロモフェノールブルー)またはTricineサンプル緩衝液(Bio−Rad)で希釈し、PAGEによって分析した(銀染色用の約60pmolまたはウェスタンブロット用の約20pmol)。比較のために非標識ADDLを泳動した。ネイティブゲル(10%Tアクリルアミド、5%C分離ゲル)は、5mM Tris、38.4mMグリシン(pH 8.3)(Betts et al.(1999)Meth.Enzymol.,vol.309,pp.333−350)の泳動緩衝液を120Vにて4℃で約3時間使用した。SDSゲル(10〜20%Tris−Tricineプレキャストゲル、Bio−Rad)を、Tris/グリシン/SDS緩衝液(Bio−Rad)を使用して120Vにて室温で80分間泳動した。Tricineゲルプロトコールを使用し、SilverXpress銀染色キット(Invitrogen)を使用して銀染色を行った。あるいは、ゲルを、25mM Tris−192mMグリシン、20% v/vメタノール(pH 8.3)を使用して、ゲルをHybondECLニトロセルロース上に100Vにて4℃で1時間エレクトロブロッティングを行った。ブロットを、5%ミルクを含むTBS−T(0.1%Tween−20を含む20mM Tris−HCI(pH7.5)、0.8%NaCl)にて室温で1時間ブロッキングした。
【0183】
ビオチンプローブ:アビジン−ビオチン化HRP複合体(Vectastain ABC standard kit;Vector Labs)を、試薬AおよびBの5%ミルク/TBS−Tでの500倍希釈および室温で30分間のプレインキュベーションによって形成させた。ブロットを、予め形成させた複合体と1時間インキュベートし、TBS−Tでの10分間の洗浄を3回行い、dH20で2回リンスし、SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity基質(Pierce;ddH2Oでの1:1希釈)で発色させ、Kodak Image Stationで読み取った。
【0184】
免疫染色:モノクローナル抗Ab(6E10,Signet)または抗ADDL(20C2;M.Lambert;IgG PV02−109,1.52 mg/ml)を、ミルク/TBSで1000倍希釈し、ブロットと室温で90分間インキュベートした。TBS−Tで10分間の洗浄を3回行った後、ブロットを、HRP結合抗マウスIg(ミルク/TBSTで40,000倍希釈;Amersham)と室温で90分間インキュベートした。ブロットを、TBS−Tで10分間の洗浄を3回行い、dH2Oで2回リンスし、SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity基質(Pierce;ddH2Oでの1:1希釈)で発色させ、Kodak Image Stationで読み取った。
【0185】
結果:ビオチン化ADDLは、非標識ADDLを使用して前に認められたSECプロフィールと類似のSECプロフィールを有する(図30、左上のパネル)。ビオチン標識についてのドットブロットは、280nmで読み取った吸光度と類似のプロフィールを示す。ビオチン標識のためのプローブを使用したSEC画分のネイティブPAGEウェスタンブロット(図30、右上のパネル)は、ピーク1のオリゴマーよりも遅く移動する。主なネイティブ種のほとんど(*)およびより速く移動するバンドはピーク2に存在していた。ピーク3の画分は染色されなかった。SDS−PAGE後のビオチン化ADDLの銀染色は、非標識ADDLと類似のパターンを示した(図30、左下のパネル)。ビオチン化ADDL中に約52kDaの単一の小さなバンドが存在した。ビオチン化および非標識ADDLのSDS−PAGE後のウェスタンブロット(図30、右下のパネル)は、ビオチンについてのプローブの特異性を示した。6E10および20C2は共にビオチン化および非標識ADDLについて類似の免疫染色パターンを示した。銀染色物中の約52kDaのバンドは、いかなるウェスタンブロットでも認められない。
【0186】
確証:ビオチン化および非標識Ab1〜42の混合物は、ネイティブゲルおよびSDSゲルの両方で典型的な電気泳動プロフィールのADDLを形成する。ビオチン標識の探索により、抗体と共に得られるエピトープ特異的免疫染色と無関係に、種々のオリゴマー種の分布を検出することができる。ビオチン化ADDLも、非標識ADDLと類似のパターンでサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)にて分画される。
【0187】
参考文献
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【0188】
本書類で言及した特許、特許出願、ならびに任意の他の科学文献および技術文献は、これらが矛盾しない範囲で引用により組み入れられる。
【0189】
本発明の好ましい実施形態の上記開示は、例示および説明を目的として示している。厳密な形態または開示の形態は網羅的でなく、本発明を制限することを意図しない。意図する特定の用途に合わせる場合に当業者が種々の実施形態および種々の修正形態で本発明を最良に実施することができるようにするために本発明の原理およびこれらの原理の実際の適用を最良に説明するために説明を選択した。意図する特定の用途に適している。本発明の範囲は、明細書によって制限されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】Aβオリゴマーが細胞外にニューロンを取り囲んで沈着しており、アルツハイマー病の大脳皮質で非常に増加している。AD脳の前頭葉の切片を、M94抗体を使用してADDLについて免疫標識し、蛍光またはペルオキシダーゼ抱合二次抗体(それぞれ、AおよびB)のいずれかで視覚化した。両方の標識条件における単一のピラミッド型のニューロンの細胞体周囲の拡散したシナプス型標識に留意のこと。非認知症のコントロールではIR沈着は認められない(示さず)。画像AおよびB中のスケールバーは、10μmを示す。(C)は、ADと診断された9人の被験体(黒塗りの記号)またはADと診断されなかった15人の被験体(白抜きの記号)の2つの脳領域[皮質(四角)および小脳(三角)]由来のドットブロットによって測定された可溶性Aβレベルの散布図を示す。脳サンプルを、ドットブロット(挿入図)によってアッセイし、デンシトメトリーによって分析した。各ポイントは、2つの測定の相対強度の平均であれる。バーは、各群の平均を示す(AD皮質:2.281+/−0.202;CTL皮質:0.206+/−0.083;AD小脳:0.263+/−0.090およびCTL小脳:0.097+/−0.013;値は、平均+/−SEMを示す)。このプロットは、AD皮質中のAβレベルの散乱がコントロール皮質よりも大きく、コントロールよりも有意に高い(p<0.0001、AD対CTL)ことを示す。しかし、小脳について、ADとCTLの間のAβレベルの相違は明白でなく、あまり有意ではなかった(p=0.1316、AD対CTL)。Mann−Whitney検定を使用し、GraphPad InS(登録商標)tat3ソフトウェアを使用して、有意性を試験するための片側検定のp値を確立した。
【図2】AD脳由来のAβオリゴマー(ADDL)は、点状の特異性を有するニューロンに結合する。一次海馬ニューロンを、AD前頭葉(A)またはAD CSF(E)由来の可溶性抽出物と30分間インキュベートした。いくつかの培養物を、年齢適合コントロールの皮質抽出物(B)またはCSF(F)とインキュベートした。いくつかの実験では、海馬ニューロンを、同様に、10kDa〜100kDaとの間の質量の種(C)または10kDa以下の質量の種(D)を含むCentricon分画可溶性AD抽出物(方法を参照のこと)をインキュベートした。非結合種を洗い流し、ADDLの付着を、ウサギポリクローナルオリゴマー特異的M94抗体を使用した非透過処理免疫標識条件下で評価した(Lambert et al.,2001に記載)。AD脳(A)およびCSF(E)由来の可溶性抽出物は、点状に分布してニューロン表面に選択的に結合するADDLを含む。年齢適合コントロール由来の皮質抽出物(B)およびCSF(F)で標識は検出されなかった。10kDa〜100kDaの質量範囲の種を含むAD抽出物のCentricon(登録商標)フィルター分画物は、非分画可溶性抽出物と区別可能な点状の染色を示す一方で、10kD以下の質量の種を含む画分には結合種は存在しなかった。3つの独立した実験で同様の所見が得られた。
【図3】合成ADDL(しかし、低分子量でない種)は、AD由来の種と同様に、ニューロンに結合する。一次海馬ニューロンを、Centricon(登録商標)フィルター(A、B)によって分画された合成ADDLまたはサイズ排除クロマトグラフィ(E、F)によって分離したビオチン化ADDLと30分間インキュベートした(Chromy et al.,2003に記載)。新鮮な培地での洗浄による非結合種の除去後、細胞結合ADDLを、M94およびAlexa−488抱合抗ウサギ二次抗体(A、B)またはAlexa488抱合ストレプトアビジン(E、F)を使用した非透過処理免疫標識条件下で評価した。共焦点画像は、いくつかの細胞体への結合も明らかであるにも関わらず、オリゴマーの免疫反応性がニューロンの原形質膜および主に樹状分枝(dendritic arbor)内に存在することを証明する。点状の結合は受容体クラスターを連想させ、アルツハイマー病のAβオリゴマーの受容体クラスターに類似している(図2)。AD脳由来の分画された可溶性オリゴマーと同様に、100〜10kDの範囲の合成ADDL種との海馬ニューロンのインキュベーションは免疫反応の点を示す一方で(A)、10kDa以下の種(単量体および二量体を含むであろう)は示さない(B)。(挿入図)海馬ニューロンとの6時間のインキュベーション後の培養培地中に存在するADDLのウェスタンブロットにより、ADDLが安定であり、且つ100kDaより高い分子量の種を含まないことが証明された(C)。レーンは、2つの異なる培養培地を示す。Superdex 75におけるサイズ排除クロマトグラフィによるビオチン化ADDL(約14nmolの70μM ADDL調製物)の分離により、2つのピークが得られた(D)。溶離体積対280nmでの吸光度のヒストグラムは、16.9mAUで吸収を示す8.1mlでのピーク1および11.7mAUで吸収を示す13.9mlでのピーク2を示した。それぞれのタンパク質濃度が6.5μMおよび4μMである画分B1およびD6を、(ピーク1と2との間で採取した)SECコントロール画分と並行して500nMの最終濃度で成熟海馬細胞と1時間インキュベートした。ビオチン化種の結合を、Alexa−Fluor488抱合ストレプトアビジンを使用して検出した。ピーク1の画分B1(E)で蛍光のホットスポットが排他的に認められ、これは、十二量体などの50kDaを超える分子量の種と一致する。ピーク2の画分D6(F)またはコントロール画分(示さず)では蛍光は認められなかった。共焦点顕微鏡設定(レーザー出力、フィルター、検出器の感度、増幅率、および増幅補正)を常時使用して共焦点画像を得た。画像は、3つの異なる実験の代表である。スケールバーは、40μmを示す。
【図4】ADDL結合は細胞特異的である。二重標識免疫蛍光研究を、マウスモノクローナル抗αCaMキナーゼIIおよびウサギポリクローナル抗ADDL(M94)を使用して、成熟海馬ニューロン(21 DIV)に対して行い、Alexa Fluor 594(赤)二次抗体およびAlexa Fluor 488(緑)二次抗体でそれぞれ視覚化した(A、B)。類似の二重標識実験を、マウスモノクローナル抗PSD−95(C、赤)および抗ADDL(緑)を使用して行った。z軸方向の共焦点スキャン(0.5μm間隔で取り込む)による三次元再構築画像の重ね合わせ(B、C)は、ADDLがいくつかのαCaMキナーゼII陽性ニューロンに選択的に結合する(重複により黄色が出現する)ことを示した(ここでは、ADDLとの6時間のインキュベーション後に示した)。PSD−95標識を使用して、類似の細胞選択性が認められた。2つのニューロンのうちの1つのみがADDLによってターゲティングされることに留意のこと。30分のインキュベーション後にADDLとαCaMキナーゼIIまたはPSD−95陽性ニューロンとの間の類似の細胞特異的結合および同時局在化が認められた(示さず)。スケールバーは、20μmを示す。
【図5】ADDLは、PSD−95陽性末端のサブセットを特異的にターゲティングする。ADDLで処置した海馬ニューロンを、PSD−95(赤、A)およびADDL(緑、B)で二重免疫標識した。再構築したz軸方向の共焦点スキャンの重ね合わせは、組み合わせた画像における黄色の点の量によって認められるように、ADDL−IR点の樹状クラスターがPSD−95とほとんど完全に同時局在化していることを示す(C)。ADDLとPSD−95との間の同時局在化の程度を、Metamorphソフトウェアを使用して定量した。棒グラフは、14の異なる視野についてのADDLによってターゲティングされたPSD−95数(E)およびPSD−95と同時局在化したADDL結合部位数(F)を示す(40倍の対物レンズ)。グラフ(E)は、多数のPSD−95部位がADDLによって占有されていないことを示す(黄色のバー:ADDLと同時局在化したPSD−95;赤色のバー:ADDLを含まないPSD−95)(1視野あたりの平均総オリゴマー結合部位は、1062+/−125であった;PSD−95と同時局在化した平均オリゴマー部位は、971+/−105であった)。グラフ(F)は、各視野についてのPSD−95シナプス部位に局在したADDL点の比率を示す。PSD−95部位でのADDL数(黄色のバー)は、非シナプス部位でのADDL数(緑色)よりも遥かに多かった。円グラフは、ADDLによって占められるPSD−95画分(G)およびPSD−95と同時局在化したADDL結合部位画分(H)を示す、全視野をまとめた分布を示す。結果を、14の異なる全視野についての平均+/−SEMとして示す(1視野あたりの総部位の平均は1960+/−174であり、50+/−2%はオリゴマー結合部位に結合しなかった)。まとめると、PSD−95点の半分はADDLによってターゲティングされる(G)が、90%を超えるADDL点はPSD−95と同時局在化する(H)。分析により、ADDLがシナプス部位に特異的に局在することが立証される。スケールバーは、10μmを示す。(挿入図;D)シナプス前マーカー(シナプトフィジン)(赤色)が重なり合うよりもむしろ並列しているADDL(緑色)を示す海馬ニューロンの画像。
【図6】樹状突起棘へのADDL結合部位の局在化。合成ADDLで1時間処置した高度に分化した海馬細胞(21 DIV)を、ADDL(緑色)およびαCaMキナーゼII(赤色)について二重免疫標識した。ADDL結合αCaMキナーゼII陽性ニューロンを描写する(A)。高倍率の画像は、多数のADDL−IR点がαCaMキナーゼII富化樹状突起棘と同時分布していることを示す(B)。矢印で示すように、ADDLは主に樹状突起棘をターゲティングした。画像は、3つの異なる試験の代表である。スケールバーは、40μm(A)および8μm(B)を示す。
【図7】最初期遺伝子Arcの急速なADDL誘導性シナプス発現。海馬ニューロンを、合成ADDLに5分間曝露し、その後、Arc(赤色)およびADDL(緑色)について標識する。画像の組み合わせは、ADDL点とArc陽性シナプスとの同時局在化点を示す(黄色)。スケールバーは、8μmを示す。
【図8】ADDLは、Arcの上方制御の維持を促進する。賦形剤(A、C)またはADDL(B、D)で1時間(A、B)または6時間(C、D)処置した海馬細胞を固定し、透過処理し、Arcタンパク質について標識した。免疫蛍光により、ニューロンサブセットの樹状突起および樹状突起棘全体でADDL誘導性のArc発現が非常に増加することが明らかになった。賦形剤処置細胞では、Arc発現はニューロン細胞体に限定される。挿入図は、Arcポリクローナル抗体を使用したSDS−PAGE後に免疫ブロッティングを行った賦形剤(−)またはADDL(+)で1時間処置した海馬細胞由来の抽出物を示す。免疫ブロットは、賦形剤処置(−)細胞抽出物と比較して、ADDL処置(+)細胞抽出物でのArc濃度の増加を示す。サイロフィリンB(cylophilin B)(シクロ)を使用して、タンパク質ローディングに関して正規化し、Arc/シクロIR比は、コントロールで0.70+/−0.11であり、オリゴマー処置サンプルでは3.51+/−0.76であった(n=4、t検定を使用してp=0.01(対応する2サンプルについての平均値))。ブロットは、4つの独立した実験の代表である。また、海馬細胞を、賦形剤(C)またはADDL(D)で6時間処置し、透過処理し、Arcについて標識した。賦形剤処置ニューロンの高倍率の共焦点画像は、Arc−IR点が樹状軸(dendritic shaft)に局在していることを示し、少数の棘の頭部(head)のみが樹状軸で見出された強度レベルよりも高い強度レベルに到達している。ADDL処置ニューロンの樹状突起は、樹状突起棘の頭部に集中した強いArc−IRの点パターンおよび樹状軸および棘全体に上方制御されたArc−IRを示す。一次抗体についてのコントロールは標識されなかった。3つの独立した試験で同一の結果が得られた。スケールバーは、20μm(A、B)および6μm(C、D)を示す。
【図9】ADDL誘導性シナプス不全および記憶喪失における仮説に基づくArcの役割。実施例1の考察の部を参照のこと。
【図10】成熟Ca++/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼIIα(CaMKIIα)陽性海馬ニューロン(桃色−赤色)の樹状突起の枝部(dendritic branch)上のAβ可溶性オリゴマーの蛍光分布(緑色)を示す共焦点免疫蛍光画像。Aβ可溶性オリゴマーは、CaMKIIαを高度に発現する樹状突起棘を特異的にターゲティングした(重複は黄色である)。ボックスは、樹状突起棘の拡大図を示す。
【図11−1】受容体−ADDLの付加および同時局在化。
【図11−2】受容体−ADDLの付加および同時局在化。
【図12】ADDL曝露後にNR2B膜発現が減少する。
【図13】ADDLでの海馬ニューロン処置の経時変化により、スピノフィリン免疫蛍光(IF)強度および棘の形態によってモニタリングしたところ、一過性シナプス後応答が得られる。
【図14】Erb−B4 IF染色強度は、ADDL曝露の1時間後に増加する。
【図15】(パネルAおよびB):ELISAアッセイにおいて、ADDLはシナプス後膜肥厚(PSD)に結合するが、活性帯に結合しない。
【図16】(パネルAおよびB):CNQXはシナプトソームへのADDLの結合を遮断する。CNQXは、シナプトソームに結合したADDLの量を減少させる。
【図17】(パネルAおよびB):CNQXはシナプトソームへのADDLの結合を遮断する。CNQXは、ADDL免疫沈降(IP)中のPSD95を減少させる。
【図18】CNQXは、ニューロン表面へのADDLの結合を遮断する。
【図19】パネルA:区画分析を使用した対象物(Object)の同定。チャネル1は核染色を示し(DAPI)、チャネル2はMAP2抗体を使用したニューロン染色を示し、チャネル3は抗ADDL抗体を使用したADDL染色を示す。ニューロンのみがDAPI陽性核およびMAP2陽性細胞体の両方を含む。ニューロン中の近位樹状突起へのADDL結合の平均強度を測定する(チャネル3中の緑色のピクセル)。パネルB:一次海馬ニューロンへのADDL結合の定量。ウェル1−10、13−22、25−34、および37−42中でADDLに曝露したニューロンは、賦形剤コントロールウェルよりも非常に強いADDL結合を示すニューロンの比率がはるかに高い。
【図20】一次海馬ニューロンへのADDL結合。ストレプトアビジンにカップリングしたアルカリホスファターゼを使用したニューロン細胞に結合したビオチン化ADDL量の増加の検出。
【図21A】標準的な手順によるヒトsynGAP、ヒトGluR2前駆体、およびヒトGluR6前駆体のClustalW配列アラインメント。
【図21B】標準的な手順によるヒトsynGAP、ヒトGluR2前駆体、およびヒトGluR6前駆体のClustalW配列アラインメント。
【図21C】標準的な手順によるヒトsynGAP、ヒトGluR2前駆体、およびヒトGluR6前駆体のClustalW配列アラインメント。
【図22】グルタミン酸およびグルタミン酸受容体リガンドCNQXおよびNS−102は、樹状突起受容体へのADDL結合を遮断する。
【図23】海馬細胞へのADDL結合に及ぼすグルタミン酸受容体(GluR)遮断薬の影響についての免疫蛍光試験。
【図24】パニングアッセイにおいて、グルタミン酸塩はシナプトソームへのADDL結合を遮断する。
【図25】シナプトソームパニングは、ADDL結合がシナプトソーム濃度に依存することを示す。
【図26】シナプトソームを免疫化するためのコレラ毒素サブユニットBの使用は、ADDLおよびシナプトソーム濃度依存性結合を示す。
【図27】ADDL−シナプトソーム免疫沈降。シナプトソームを、ADDLまたは賦形剤を含むF12/FBS(F12培地、5%FBS)とインキュベートした。処置したシナプトソームを、抗ADDLモノクローナル抗体(Dyna−20C2)でコーティングした磁性ビーズを含むF12/FBSを使用して免疫沈降を行った。異なる画分中のシナプスマーカーの存在を、標準的なウェスタンブロットで抗PSD95抗体を使用してアッセイした。
【図28】ADDLはPSDに結合するが、皮質シナプトソームの活性帯に結合しない。
【図29】ビオチン標識ADDLの特徴づけ。ビオチン化ADDL(b−ADDL)は、低分子量(LMW)ピーク中に出現する。
【図30】パネルA:ビオチン化および非標識Ab1−42の混合物由来のADDLを、SECにて分画し(ADDL31、左上のパネル)、ピーク画分を、ビオチン標識のプローブを使用したネイティブ−PAGEウェスタンブロットによって分析した(右上のパネル)。パネルB:ビオチン化および非標識Ab1−42の混合物由来のADDLをSDS−PAGEに供し、銀染色(左下のパネル)およびウェスタンブロット(右下のパネル)によって分析した。ブロットを、ビオチンについて探索するか、モノクローナル抗体で免疫染色した(6E10および20C2)。比較のために非標識ADDLを含んでいた。
【技術分野】
【0001】
政府支援の記述
本明細書中に記載の本発明の一部を、保健社会福祉省の国立衛生研究所からの助成金(助成金番号NIHR01−AG18877、NIH R01−AG22547、およびNIH R03−AG22237)を使用して行った。したがって、政府は、本発明において一定の権利を有し得る。さらに、本発明の一部を、イリノイ州公衆衛生局の助成金(ADRF助成金番号33280010および43280003)を使用して行った。
【0002】
本発明は、生物学および薬物の分野に関する。具体的には、本発明は、神経変性疾患(アルツハイマー病、軽度認知障害、およびダウン症候群などのADDL関連疾患が含まれるが、これらに限定されない)の防止、診断、および治療に関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、剖検で病理学的特性(脳質量の減少、特定のニューロン小集団の喪失、ならびに老人斑および神経原線維変化の蔓延が含まれるが、これらに限定されない)によって特徴づけられる進行性の変性認知症である(例えば、Terry,R.D.,et al.(1991)Ann.Neurol.,vol.30,pp.572−580;Coyle,J.T.(1987)Alzheimer’s Disease.In:Encyclopedia of Neuroscience(Adelman G,ed),pp 29−31.Boston−Basel−Stuttgart:Birkhaeuser;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。しかし、その初期段階では、ADは、主に、新たな記憶形成が著しく不可能になることによって発症する(例えば、Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.298,pp.789−791;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。この特定の影響についての根拠は知られていないが、現在、アミロイドβ(Aβ)ペプチド由来の神経毒の関与が支持されている。Aβは、両親媒性ペプチドであり、そのより長い凝集傾向のある42アミノ酸形態が豊富なことにより、遺伝子の変異およびADに関連する危険因子が増加する。Aβ 1〜42は原線維に容易にアセンブリし、ADの病理学的特性の1つであるアミロイド斑としてAD脳組織に沈着する(用語「アミロイド」は、特色のある複屈折コンゴレッド染色性を有するタンパク質沈着物に与えられた一般名である)。アミロイド斑の蔓延およびAβ1〜42原線維のインビトロ神経毒性により、元のアミロイドカスケード仮説についての中心となる論理的根拠が得られ、原線維Aβの沈着がニューロンの死滅ならびにその後の記憶喪失および認知低下の原因とされた。
【0004】
その強力な実験による裏付けおよび直感的な魅力(appeal)にも関わらず、元のアミロイドカスケード仮説は、鍵となる所見との矛盾(認知症とアミロイド斑負荷との間の相関が低いことが含まれる)が証明された(例えば、Katzman,R.et al.(1988)Ann.Neurol.,vol.23,pp.138−144;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。特に、最近の研究で、トランスジェニックhAPPマウスを使用して実施したADワクチン実験が報告されている(例えば、Dodart,J.C.et al.(2002)Nat.Neurosci.,vol.5,pp.452−457;Kotilinek,L.A.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.6331−6335;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。これらのマウスにより、発症年齢依存性アミロイド斑、最も重要には、発症年齢依存性記憶機能障害を発症する初期ADの良好なモデルが得られる。マウスをAβに対するモノクローナル抗体で処置した場合に、以下の2つの驚くべき所見が得られた。(1)ワクチン接種したマウスは記憶喪失の逆転が認められ、24時間で明らかに回復したこと、(2)プラークレベルは変化しないにもかかわらず、ワクチン接種の認知に対する利点が生じた。このような所見は、アミロイド原線維に起因するニューロン死に依存的な記憶喪失機構と一致しない。
【0005】
元の仮説の主な欠点を、Aβ自己組織化によって形成された非原線維性の(non−fibrillar)神経学的に活性な分子が果たす役割を組み込んだ最新の仮説で解決しようと努力している(例えば、Klein,W.L.et al.(2001)Trends Neurosci.,vol.24,pp.219−224;およびその参考文献などを参照のこと)。このような分子を、ADDLといい、42アミノ酸Aβペプチドの可溶性神経毒性アセンブリである。ADDLは、AD関連アミロイド斑で見出される不溶性Aβ原線維と基本的に構造が異なり(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、ADDLは、記憶機能不全の根本にある原因としてAβ原線維に対する概念的サロゲートである。プラークに起因する非特異的細胞損傷と対照的に、ADDLはニューロンの特定のサブセットにおける異常なシグナル伝達を誘発し、細胞死に遥か先立って記憶機能を危うくする(例えば、Kirkitadze,M.D.et al.(2002)J,Neurosci,Res.,vol.69,pp.567−577;Klein,W.L.et al.(2001)Trends Neurosci.,vol.24,pp.219−224;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。Aβ1−42オリゴマーはSDSに対して安定であり、低濃度のAβ42で形成される(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;およびその参考文献などを参照のこと)。本質的に、元のカスケードの連鎖の喪失により、動物および脳組織スライス培養物の両方において、ADDLが急速に長期電位(LTP)を阻害する。LTPは、記憶およびシナプス可塑性についての古典的な実験パラダイムである。したがって、ADDLは特異的な神経薬理学的リガンドであり、その作用は、適切な治療介入によって可逆的なはずであり、これは本出願の主題である。ADについての最新のADDL仮説により、以下のように結論づけられている。(1)記憶喪失は、ニューロン死前のシナプス不全に起因すること、および(2)シナプス不全は原線維ではなくADDLに起因すること(例えば、Hardy,J.& Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.297;pp.353−356;およびその参考文献などを参照のこと)。この仮説は、脳組織内に可溶性オリゴマーが生じ、これがAD(例えば、Kayed,R.et al.(2003)Science,vol.300,pp.486−489;Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)およびhAPPトランスジェニックマウスADモデル(Kotilinek,L.A.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.6331−6335;Chang,L.et al.(2003)J.Mol.Neurosci.,vol.20,pp.305−313;および上記のいずれかにおける参考文献など)で著しく上昇し得るという最近の報告で支持され得る。ADDLはまた、年齢適合コントロールでのレベルと比較してAD患者の脳脊髄液(CSF)で上昇する(Georganopoulou,D.G.et al.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.102,no.7,pp.2273−2276;およびその参考文献など)。
【0006】
現在、ADDLオリゴマーがニューロンと相互作用する機構が非常に注目されている(例えば、Caughey,B.& Lansbury,P.T.(2003)Annu.Rev.Neurosci.,vol.26,pp.267−298;およびその参考文献などを参照のこと)。以前の仮説は、Aβ単量体またはオリゴマーの膜挿入または細胞傷害性の孔の形成が思い出されるが、これらの過程は非特異的であり、ADで認められた損傷した神経細胞の選択性の高いパターンを説明することができない。あるいは、ADDLは、特異性の高いリガンドとして特定の膜標的に結合し、それにより、ADで見出される高度に選択的なシナプス病変および異なるパターンの症状が生じ得る。本明細書中では、ADDLと培養した海馬ニューロンの小集団との間の高度に特異的な結合相互作用を報告するために結果を示す。これらの相互作用は、AD脳組織から抽出したADDLおよび合成Aβ1−42からインビトロで調製したADDLで同一なようである。細胞表面でのADDL結合は、シナプス終末の小集団とほとんど排他的に同時局在化された小さな点状のクラスターとして出現する。高特異的シナプス結合は、その過剰発現が学習機能障害に関連しているArc(最初期遺伝子)の異所性誘導に付随して起こる。ADDLによる特定のシナプスの選択的ターゲティングおよび機能崩壊が初期ADおよび軽度認知障害における記憶機能の特異的喪失の根底にあり得る可能性がある。この事象では、これらのADDL関連疾患の治療介入は、ADDL形成、ADDLシグナル伝達、またはADDL受容体結合を妨害する薬剤(本出願の主題)に注目すべきである。
【0007】
本出願は、米国特許第6,218,506号;国際特許公開番号WO 98/33815号;米国特許出願番号第60/086,582号;米国特許出願番号第09/369,236号;国際特許出願番号PCT/US00/21458号;米国特許出願番号第09/745,057;米国特許出願番号第10/166,856;国際特許出願番号PCT/US03/19640;米国特許出願番号第60/095,264;米国特許出願番号第60/415,074号;米国特許出願番号第10/676,871号;米国特許出願番号第10/924,372号;国際特許出願番号PCT/US03/30930;米国特許出願番号第60/568,449号;米国特許出願番号第60/571,267号;米国特許出願番号第60/584,695号;米国特許出願番号第60/621,776号;米国特許出願番号第60/636,466号;米国特許出願番号第2003/0068316号;国際特許公開番号WO 04/031400;国際特許公開番号WO 01/10900;および国際特許公開番号WO 98/33815などに関連する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書中に開示され、且つ特許請求の範囲に記載の発明の実施形態は、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体であって、前記1又は複数の受容体がADDLに結合する1又は複数の受容体を含む組成物を含む。当該1又は複数の受容体は、synGAP、proSAP2/Shank3、グルタミン酸受容体、カイニン酸サブタイプグルタミン酸受容体、GluR6、AMPAサブタイプグルタミン酸受容体、GluR2、mGluR1a、mGluR1b、mGluR1c、mGluR1d、mGluR5a、mGluR5b、NMDAサブタイプグルタミン酸受容体、インテグリン受容体、接着受容体、NCAM、L1、カドヘリン、栄養因子受容体、線維芽細胞成長因子受容体1、線維芽細胞成長因子受容体2、TrkA受容体、TrkB受容体、erbB4受容体、erbB/EGF受容体ファミリーの近接な(close)ホモログ、トロフィン(trophin)に結合する受容体、インスリン受容体(IR)、インスリン成長因子受容体1(IGF−1)で、GABA受容体、ナトリウム/カリウムATPアーゼ(Na+/K-ATPアーゼ)、CAMキナーゼII、PrPタンパク質、タンパク質チロシンホスファターゼα(RPTPα)タンパク質、ソマトスタチン受容体、カンナビノイド受容体、σ受容体、および/またはVIP/PACAL受容体であり得る。本発明はまた、上記受容体の任意の組み合わせおよび全ての組み合わせを含む。
【0009】
本発明の別の実施形態は、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を含む組成物を含む。本発明は、さらに、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を含む医薬調製物を含む。別の実施形態は、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を阻害する1又は複数の化合物を含む組成物を含む。別の実施形態は、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を阻害する1又は複数の化合物を含む組成物であって、前記1又は複数の化合物がCNQXである、組成物を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態は、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を投与する工程を含む、ADDL関連疾患の治療方法を含む。特に、ADDL関連疾患には、アルツハイマー病(AD)、軽度認知障害(MCI)、およびダウン症候群などが含まれるが、これらに限定されない。本発明の別の実施形態は、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を投与する工程と、前記1又は複数の化合物が、CNQXまたはCNQXの医薬として許容される誘導体であることとを含む、ADDL関連疾患の治療方法を含む。本発明の別の実施形態は、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を投与する工程と、前記1又は複数の受容体が、synGAP、proSAP2/Shank3、グルタミン酸受容体、カイニン酸サブタイプグルタミン酸受容体、GluR6、AMPAサブタイプグルタミン酸受容体、GluR2、mGluR1a、mGluR1b、mGluR1c、mGluR1d、mGluR5a、mGluR5b、NMDAサブタイプグルタミン酸受容体、インテグリン受容体、接着受容体、NCAM、L1、カドヘリン、栄養因子受容体、線維芽細胞成長因子受容体1、線維芽細胞成長因子受容体2、TrkA受容体、TrkB受容体、erbB4受容体、erbB/EGF受容体ファミリーの近接な(close)ホモログ、トロフィン(trophin)に結合する受容体、インスリン受容体(IR)、インスリン成長因子受容体1(IGF−1)で、GABA受容体、ナトリウム/カリウムATPアーゼ(Na+/K-ATPアーゼ)、CAMキナーゼII、PrPタンパク質、受容体タンパク質チロシンホスファターゼα(RPTPα)タンパク質、ソマトスタチン受容体、カンナビノイド受容体、σ受容体、および/またはVIP/PACAL受容体であることとを含む、ADDL関連疾患の治療方法を含む。本発明は、さらに、これらの受容体の任意の組み合わせおよび全ての組み合わせを含むこのような方法を含む。
【0011】
本発明は、さらに、ビオチン標識ADDLを含む組成物を含む。特に、当該組成物は、1又は複数のビオチン部分を含むADDLを含む。より具体的には、当該組成物は、抗体によって認識される1又は複数のエピトープを含むADDLを含む。特に、当該エピトープはペプチド配列である。より具体的には、当該エピトープは有機小分子である。
【0012】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートである、組成物を含む。
【0013】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、前記サロゲートが、内部βシートを形成することができる特定の構造エレメントを含むペプチドまたはペプチド模倣物を含み、その形成によってオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0014】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、内部C末端βシートを形成することができる特定の構造エレメントを含むペプチドまたはペプチド模倣物を含み、その形成によってオリゴマーにアセンブリすることができ、ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0015】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、モチーフ:
【化1】
(式中、Zは、グリシル−グリシル、プロリル−グリシル、グリシル−プロリル、またはβターンを形成することができる任意の他のジペプチドもしくはジペプチド模倣物または任意の他のβターン模倣物であり、Xは任意のアミノ酸またはアミノ酸模倣物である)を含むペプチドまたはペプチド模倣物を含み、その存在によって内部βシートを形成することができ、その形成によってオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0016】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、オリゴマーにアセンブリすることができるジペプチド官能化βターン模倣物を含み、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0017】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化2】
(式中、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基である)を含み、前記ペプチドがオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0018】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化3】
(式中、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基であり、Xは任意の疎水性アミノ酸である)を含み、前記ペプチドがオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0019】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化4】
(式中、Rは任意のペプチドであり、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基である)を含み、前記ペプチドがオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0020】
本発明は、さらに、1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化5】
(式中、Rは任意のペプチドであり、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基であり、Xは任意の疎水性アミノ酸である)を含み、前記ペプチドがオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーがニューロンのシナプス後膜肥厚に局在したADDL受容体に結合することができる、組成物を含む。
【0021】
本発明は、さらに、蛍光標識ADDLを含む、組成物を含む。特に、蛍光標識は、フルオレセイン、テトラメチルローダミンおよび/またはAlexa(登録商標)色素である。
【0022】
本発明は、さらに、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を妨害する化合物のスクリーニング方法であって、a)ADDLを生成する工程と、b)工程a)で生成したADDLを、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、c)シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合に及ぼす1又は複数の化合物の影響を測定する工程とを含む方法を含む。特に、ADDLは、ビオチン標識ADDL、蛍光標識ADDL、またはビオチン標識ADDLと蛍光標識ADDLとの組み合わせである。さらにより具体的には、1又は複数のシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体に結合した場合にADDLを認識する抗体を測定(または検出)に使用する。さらにより具体的には、組成物が1又は複数のニューロンのシナプス後膜肥厚に局在した受容体に結合する場合、ビオチン標識ADDL内でビオチンを認識するアビジンまたはストレプトアビジンを測定(または検出)に使用する。また、特に、検出によって抗ADDL抗体を認識する蛍光標識二次抗体に会合した蛍光量を測定(または検出)する。特に、測定(または検出)によって酵素−抗体抱合体または酵素−ストレプトアビジン抱合体によって生成された蛍光シグナルまたは発光シグナルを測定する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する化合物の同定方法であって、a)ADDLサロゲートを生成する工程と、b)工程a)で生成したADDLサロゲートを、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、c)シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合に及ぼす1又は複数の化合物の影響を測定する工程とを含む方法を含む。
【0024】
本発明の別の実施形態は、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する化合物の同定方法であって、a)ADDLサロゲートを生成する工程と、b)工程a)で生成したADDLサロゲートを、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、c)抗arc抗体を使用して、ニューロン内で産生されたarcタンパク質量を測定する工程と
を含む方法を含む。
【0025】
本発明の別の実施形態は、シナプス後膜肥厚へのADDL結合を測定する方法であって、a)ADDLを生成する工程と、b)工程a)で生成したADDLを、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、c)シナプス後膜肥厚へのADDL結合に特徴的な点状の結合を測定する工程とを含む方法を含む。
【0026】
本発明の別の実施形態は、シナプス後膜肥厚へのADDL結合を妨害する化合物の同定方法であって、a)ADDLを生成する工程と、b)工程a)で生成したADDLを、シナプス後膜肥厚へのADDLの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、c)シナプス後膜肥厚へのADDL結合に特徴的な点状の結合に及ぼす1又は複数の化合物の影響を測定する工程とを含む方法を含む。
【0027】
別の実施形態は、ADDLとシナプス後樹状突起棘との間の相互作用を媒介するADDL結合タンパク質を含む。本発明の1つの実施形態は、ADDL(synGAPとグルタミン酸受容体とで共有されるアミノ酸配列)に結合するsynGAPタンパク質である。当該配列は、synGAPのアミノ酸
【化6】
またはその活性なフラグメントを含み得る。当該配列は、GluR2のアミノ酸
【化7】
またはその活性なフラグメントを含み得る。当該配列は、GluR5のアミノ酸
【化8】
またはその活性なフラグメントを含み得る。当該配列は、GluR6のアミノ酸
【化9】
またはその活性なフラグメントを含み得る。当該配列は、1又は複数のこれらの配列と95%相同、1又は複数のこれらの配列と90%相同、1又は複数のこれらの配列と85%相同、1又は複数のこれらの配列と80%相同、1又は複数のこれらの配列と75%相同、および1又は複数のこれらの配列と70%相同である他の配列を含み得る。
【0028】
本発明の別の実施形態は、1又は複数のグルタミン酸受容体および1又は複数のシナプス後膜肥厚(PSD)足場タンパク質(proSAP2/shank3が含まれるが、これらに限定されない)を含むADDL受容体複合体である。ADDLがこのような受容体複合体に結合する場合、グルタミン酸受容体シグナル伝達が活性化され、LTPが遮断される。
【0029】
本発明のさらなる実施形態は、ADDL受容体複合体へのADDLの結合を無効にし、LTPのADDL遮断を防止するアンタゴニスト分子を含む。本発明のさらなる実施形態は、アルツハイマー病、軽度認知障害、虚血および脳卒中誘導性認知症、ならびにダウン症候群などのADDL関連疾患を治療するための抗ADDL化合物を発見する方法および抗ADDL化合物の使用方法を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
従来の研究技術および手順を、一般に、当分野で周知であり、本明細書中のいたるところで引用し、考察した種々の一般的な文献およびより特有の文献にしたがって行うことができる。例えば、Sambrook et al.(2001,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)(任意の目的のために本明細書中で参考として組み込まれる)を参照のこと。特に定義しない限り、本明細書中に記載の分子生物学、遺伝子操作、分析化学、有機合成化学、医化学、および薬化学に関連して使用した用語ならびにこれらの実験手順および技術は、当業者に周知であり、当分野で一般的に使用されている。化学合成、化学分析、医薬品、製剤、および送達、ならびに患者の治療のための標準的技術を使用することができる。
【0031】
実施形態によっては、本発明は、治療有効量(すなわち、用量)のニューロン後膜肥厚へのADDL結合を阻害する化合物を含む医薬組成物を提供する。当分野で周知のように、このような組成物を、医薬として許容される希釈剤、キャリア、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、および/またはアジュバントと共に調製することができる。
【0032】
本明細書中で使用される、用語「薬剤」は、化合物、化合物の混合物、生体高分子、または生体物質から作製した抽出物を示す。
【0033】
本明細書中で使用される、用語「医薬組成物」は、患者に適切に投与された場合に所望の治療効果を誘導することができる本明細書中に記載の医薬として許容されるキャリア、賦形剤、または希釈剤および化合物、ペプチド、または組成物を含む組成物をいう。
【0034】
本明細書中で使用される、用語「治療有効量」は、哺乳動物で治療反応が得られると判断された本発明のスクリーニング法で同定された本発明の医薬組成物または化合物の量をいう。このような治療有効量は、当業者によって本明細書中に記載の方法を使用して容易に突き止められる。
【0035】
本明細書中で使用される、用語「実質的に純粋な」は、対象となる種が支配的に存在する種であることを意味する(すなわち、モルをベースとして、組成物の任意の他のそれぞれの種よりも豊富である)。実施形態によっては、実質的に精製された画分は、存在する全ての高分子種の少なくとも約50%(モルをベースとして、重量、または数をベースとする)の対象となる種を含む組成物である。実施形態によっては、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種の約80%、85%、90%、95%、または99%超を含む。実施形態によっては、対象となる種を本質的に均一に精製し(従来の検出方法によって組成物中に夾雑する種を検出することができない)、組成物が本質的に単一の高分子種からなる。
【0036】
本明細書中で使用される、用語「患者」には、ヒトおよび動物の被験体が含まれる。
【0037】
文脈上他で必要とされない限り、単数形は複数形を含み、複数形は単数形を含む。
【0038】
本明細書中で意図される投与経路は、任意の全身手段(経口、腹腔内、皮下、静脈内、筋肉内、経皮、吸入、または他の投与経路が含まれる)であり得る。浸透圧ミニポンプおよび徐放性ペレット、または他のデポー投与形態も使用することができる。許容可能な処方材料は、好ましくは、使用される投薬量および濃度でレシピエントに無毒である。医薬組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧、粘度、透明度、色、等張性、臭い、無菌性、安定性、溶解および放出速度、吸着、または浸透の改変、維持、または保存のための処方材料(formulation material)を含み得る。適切な処方材料には、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなど);抗菌薬;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝液(ホウ酸、重炭酸、Tris−HCl、クエン酸、リン酸、または他の有機酸の緩衝液など);増量剤(マンニトールまたはグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β−シクロデキストリン、またはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類、二糖類、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);着色料、香味物質、および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、または過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);懸濁剤;界面活性剤または湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート(ポリソルベート20およびポリソルベート80など)、Triton、トリメタミン、レシチン、コレステロール、またはチロキサポールなど);安定増強剤(スクロースまたはソルビトールなど);等張化剤(アルカリ金属ハライド(好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)、マンニトール、またはソルビトールなど);送達媒体(delivery vehicle);希釈剤;賦形剤;および/または医薬アジュバントが含まれるが、これらに限定されない。例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition,(A.R.Gennaro,ed.),1990,Mack Publishing Companyを参照のこと。
【0039】
当業者は、本明細書中で考察した化合物に関して、このような化合物はキラル中心を含み得ることを認識している。したがって、このような薬剤は、異なる鏡像異性体または鏡像異性体混合物として存在し得る。いずれか1つの鏡像異性体のみまたは1又は複数の立体異性体との鏡像異性体混合物内に含まれる鏡像異性体の使用は、本発明で意図される。
【0040】
当業者は、最適な医薬組成物を、例えば、意図する投与経路、送達形式、および所望の投薬量に依存して決定することができる。例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,Idを参照のこと。このような組成物は、本発明の抗体の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響を与え得る。
【0041】
医薬組成物中の主要な媒体またはキャリアは、事実上水性または非水性であり得る。例えば、適切な媒体またはキャリアは、場合によって非経口投与用組成物に共通の他の材料を補足した注射用の水、生理食塩水、または人工脳脊髄液であり得る。中性緩衝化生理食塩水または血清アルブミンと混合した生理食塩水は、さらなる例示的な媒体である。医薬組成物は、約pH7.0〜8.5のTris緩衝液または約pH4.0〜5.5の酢酸緩衝液を含むことができ、ソルビトールまたは適切なそのサロゲートをさらに含み得る。本発明の医薬組成物を、保存のために凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で所望の精製度の選択された組成物と任意選択的な製剤(formulation agent)(REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,Id)との混合によって調製することができる。さらに、組成物を、スクロースなどの適切な賦形剤を使用して凍結乾燥物として処方することができる。
【0042】
処方成分は、投与部位に許容可能な濃縮物中に存在する。緩衝液を有利に使用して、生理学的pHまたは僅かに低いpH、典型的には約5〜約8のpH範囲に組成物を維持する。
【0043】
本発明の医薬組成物を、非経口送達させることができる。非経口投与を意図する場合、本発明で使用される治療組成物は、医薬として許容される媒体中に本発明のスクリーニング法で同定された所望の化合物を含む無発熱物質の非経口に許容可能な水溶液の形態であり得る。特に適切な非経口注射用媒体は、本発明のスクリーニング法で同定された化合物が適切に保存される滅菌等張溶液として配合される滅菌蒸留水である。調製物は、注射可能なミクロスフェア、生体侵食粒子、高分子化合物(ポリ乳酸またはポリグリコール酸など)、生成物を制御放出させるか徐放させ、その後にデポー注射によって送達することができるビーズまたはリポソームなどの薬剤を含む所望の分子の製剤を含み得る。ヒアルロン酸を含む製剤は、循環血液中での徐放を促進する効果がある。植え込み型薬物送達デバイスを使用して、所望の分子を移入することができる。
【0044】
組成物を、吸入のために処方することができる。これらの実施形態では、本明細書中に開示の組成物を、吸入用の乾燥粉末として処方することができるか、噴霧化によるなどのエアゾール送達のための噴射剤を使用して吸入溶液を処方することもできる。肺投与は、PCT出願番号PCT/US94/001875にさらに記載されており、肺送達を記載しており、参考として組み込まれる。
【0045】
本発明の医薬組成物を、経口などの消化管を介して送達させることができる。このような医薬として許容される組成物の調製は、当業者の範囲内である。この様式で投与すべき本明細書中に開示の組成物を、錠剤およびカプセルなどの固体剤形の配合で習慣的に使用卯されるキャリアを使用するか使用しないで処方することができる。カプセルを、生物学的利用能が最大になり、且つ事前の全身分解が最小になる場合に胃腸管で製剤の活性部分が放出されるようにデザインすることができる。本明細書中に開示のアンタゴニストまたはアゴニストの吸収を促進するためのさらなる薬剤を含めることができる。希釈剤、香味物質、低融点のワックス、植物油、潤滑剤、懸濁剤、錠剤の崩壊剤、および結合剤も使用することができる。
【0046】
医薬組成物は、錠剤の製造に適切な非毒性賦形剤と組み合わせた本明細書中に開示の有効量の化合物を含み得る。滅菌水または他の適切な媒体への錠剤の溶解により、溶液を単位剤形で調製することができる。適切な賦形剤には、不活性希釈剤(炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ラクトース、またはリン酸カルシウムなど)、結合剤(デンプン、ゼラチン、またはアカシアなど)、または潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
追加の医薬組成物は当業者にとって自明であり、徐放性製剤または制御送達製剤中に本明細書中に開示の化合物を含む製剤が含まれる。リポソームキャリア、生体侵食性微粒子または多孔質ビーズおよびデポー注射などの種々の他の徐放性送達手段または制御送達手段の処方技術も当業者に公知である。例えば、医薬組成物の送達のための多孔質高分子微粒子の制御放出を記載しているPCT出願番号PCT/US93/00829を参照のこと。徐放性調製物は、造形品(例えば、フィルム、またはマイクロカプセル、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド)(例えば、米国特許第3,773,919号および欧州特許第058,481号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートとのコポリマー(Sidman et al.,1983,Biopolymers,vol.22,pp.547−556)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langer et al.,1981,J.Biomed.Mater.Res.,vol.15,pp.167−277)およびLanger,1982,Chem.Tech.,vol.12,pp.98−105)、エチレン酢酸ビニル(Langer et al.,id.)、またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)の形態の半透性ポリマーマトリクスを含み得る。徐放性組成物はまた、当分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって調製することができるリポソームを含み得る。例えば、Eppstein et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.82,pp.3688−3692;欧州特許第036,676号;欧州特許第088,046号、および欧州特許第143,949号を参照のこと。
【0048】
インビボ投与のために使用すべき医薬組成物は、典型的には滅菌されている。実施形態によっては、濾過滅菌膜での濾過によってこれを行うことができる。実施形態によっては、組成物を凍結乾燥させる場合に、この方法を使用した滅菌を、凍結乾燥および再構成の前または後のいずれかに行うことができる。実施形態によっては、非経口投与用組成物を、凍結乾燥形態か溶液中に保存することができる。実施形態によっては、非経口組成物を、一般に、滅菌アクセスポート(access port)(例えば、皮下注射針を突き刺すことができるストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアル)を有する容器に入れる。
【0049】
一旦本発明の医薬組成物が処方されると、これを、溶液、懸濁液、ゲル、乳濁液、固体、または脱水粉末もしくは凍結乾燥粉末として滅菌バイアル中に保存することができる。このような製剤を、すぐに使用できる形態または投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥形態)のいずれかで保存することができる。
【0050】
本発明は、単回用量投与単位を生成するためのキットを含み得る。本発明のキットは、それぞれ、本明細書中に開示の乾燥アンタゴニスト化合物またはアゴニスト化合物を有する第1の容器および水性製剤(例えば、一室および多室の事前に充填したシリンジ(例えば、液体シリンジ、リオシリンジ(lyosyringe)、または無針シリンジが含まれる)が含まれる)を有する第2の容器の両方を含み得る。
【0051】
治療で使用すべき本発明の医薬組成物の有効量は、例えば、治療の状況および対象に依存する。したがって、当業者は、実施形態により、治療のための適切な投薬量レベルが、送達されるアンタゴニストまたはアゴニスト(医薬組成物が使用される指標)、投与経路、患者のサイズ(体重、体表面、または臓器サイズ)、および/または容態(年齢および全体的な健康状態)に一部依存して変化することを認識する。臨床者は、至適な治療効果を得るために、投薬量を判定し(titer)、投与経路を修正することができる。典型的な投薬量は、上記の要因に依存して、約0.1μg/kg〜約100mg/kg以上までの範囲である。実施形態によっては、投薬量は、0.1μg/kg〜約100mg/kgまで、1μg/kg〜約100mg/kgまで、または5μg/kg〜約100mg/kgまでの範囲であり得る。
【0052】
投与頻度は、製剤中の本明細書中に開示のアンタゴニストまたはアゴニストの薬物動態学的パラメーターに依存する。例えば、臨床者は、所望の効果を達成する投薬量に到達するまで組成物を投与する。したがって、組成物を、単回用量または2回以上の用量(同量の所望の分子を含んでも含まなくてもよい)を長期にわたって投与することができるか、移植デバイスまたはカテーテルを介した連続的注入として投与することができる。当業者は、適切な投薬量を日常的にさらに改良し、これは、当業者の日常的作業の範囲内である。適切な投薬量を、適切な用量−応答データの使用によって確認することができる。
【0053】
本発明の医薬組成物の投与経路には、経口、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、または病変内経路による注射、徐放システム、または移植デバイスが含まれる。医薬組成物を、ボーラス注射によって投与するか、注入によって、または移植デバイスによって継続的に投与することができる。医薬組成物を、所望の分子が吸収されるかカプセル化される膜、スポンジ、または別の適切な材料の移植によって局所的に投与することもできる。移植デバイスを使用する場合、デバイスを、任意の適切な組織または器官に移植することができ、拡散、徐放性ボーラス、または連続投与によって所望の分子を送達することができる。
【0054】
本発明の医薬組成物を、単独または他の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【実施例1】
【0055】
ADDLの局在化およびターゲティング
材料と方法
ADDLおよび分画:確立されたプロトコールにしたがって、Aβ1-42ペプチド(California Peptide Research,Napa,CA)またはビオチンAβ1-42ペプチド(Recombinant Peptide,Athens,GA)を使用して、合成ADDLまたはビオチン化ADDLを調製した(例えば、Lambert,M.P.et al.(2001)J.Neurochem.,vol.79,pp.595−605;Klein,W.L.(2002)Neurochem.Int.,vol.41,pp.345−352;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。製造者の説明書にしたがってCentricon YM−100およびYM−10濃縮器(Millipore,Bedford,MA)を使用して、オリゴマー種の分子量を分画した。Superdex75 HR 10/30カラムを使用したAkta Explorer HPLC装置を使用したサイズ排除クロマトグラフィを、確立されたプロトコールにしたがって行った(例えば、Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760およびその参考文献などを参照のこと)。
【0056】
組織抽出物およびCSF:アルツハイマー病および非認知症コントロール被験体由来の前頭葉皮質、小脳、およびCSFを、Northwestern Alzheimer’s Disease Center Neuropathology Core(Chicago,IL)から得た。脳組織由来の可溶性抽出物を、以前に記載のように調製した(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献などを参照のこと)。
【0057】
細胞培養:以前に記載のように、海馬ニューロンを、B27(Invitrogen,Carlsbad,CA)を補足した神経基本培地中で少なくとも3週間維持した(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献を参照のこと)。細胞を、媒体、合成もしくはビオチン化ADDL(500nM)、粗ヒトCSF(100μl)、またはF12抽出ヒト皮質(1.0mgタンパク質/ml)と表示の時間インキュベートした。
【0058】
免疫細胞化学:記載のように免疫細胞化学を行った(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献を参照のこと)。いくつかの細胞を、0.1%Tritonを含む10%正常ヤギ血清およびリン酸緩衝化生理食塩水(NGS:PBS)にて室温(RT)で1時間透過処理を行った。細胞を、M94(前に特徴づけられたAβオリゴマー生成ポリクローナル抗体(例えば、Lambert,M.P.et al.(2001)J.Neurochem.,vol.79,pp.595−605;Klein,W.L.(2002)Neurochem.Int.,vol.41,pp.345−352;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)(1:500)および抗αCaMKII(1:250)もしくは抗PSD−95(1:500)モノクローナル抗体(Affinity BioReagents,Golden,CO)またはヤギポリクローナル抗Arc抗体(1:200)(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)、NMDA−R1(C−term,1:200)(Upstate,Lake placid,NY)、またはシナプトフィジン(SVP−38,1:500)(Sigma,Saint Louis,MO)のいずれかと4℃で一晩二重免疫標識し、その後、適切なAlexaFluor(登録商標)488または594抱合IgG(Molecular Probes,Eugene,OR)(2μg/ml)と室温で2時間インキュベートした。ADDLおよびNMDA−グルタミン酸受容体サブユニットNR1(1:200)またはAMPA−グルタミン酸受容体サブユニットGluRl(1:200)(Upstate Biotechnology,Lake Placid,NY)いずれかのための二重標識には、合成ビオチン化ADDLおよびストレプトアビジン−AlexaFluor(登録商標)488抱合体を使用した。細胞を、一定の設定(レーザー出力、検出器の感度、増幅率、および補正)を行ったLeica TCS SP2供焦点スキャナDMRXE7顕微鏡(Bannockburn,IL)を使用して視覚化した。z軸方向の個々の視野の0.5μm間隔のスキャンによって画像を取得して、ADDLがαCaMKII、PSD−95、SVP−38、NR1、GluR1、またはArcと同時局在化するかどうかを決定した。形態計測による定量を、MetaMorph画像化ソフトウェア(Universal Imaging Corp,West Chester,PA)を使用して行った。
【0059】
免疫組織化学:7症例のAD由来の剖検脳(59〜87歳)および7つの非認知症の高齢コントロール(68〜78歳)を、10%緩衝化ホルマリン中で30〜48時間浸漬固定し、その後、10〜40%スクロース勾配に移した。前頭葉皮質から厚さ40μmの浮遊性の連続切片が得られ、免疫標識を行うまで細胞保護剤中にて4℃で維持した。切片をTBSでリンスし、2%m−過ヨウ素酸ナトリウムを含むTBSで20分間予め処置し、0.25%TritonX−100を含む(TBS)(TBST)で透過処理を行った。特異的免疫反応性を、5%ウマ血清を含むTBSTで40分間および1%脱脂粉乳を含むTBSTで30分間遮断した。その後、切片を、M94(1:1000)と4℃で一晩インキュベートし、AlexaFluor488抗ウサギIgG(1:500)と室温で90分間インキュベートした。連続切片を、0.5%チオフラビン−Sを含む50%エタノールで染色した。共焦点画像を、上記のようにLeica供焦点顕微鏡にてz軸方向の1μm間隔のスキャンを使用して取得した。類似の切片を、M94抗体および二次抗体/ABC複合体ならびにジアミノベンジジン(DAB)で標識した。切片を、ヘマトキシリンで対比染色した。一次抗体または二次抗体を省略したコントロール切片は陰性であった。
【0060】
免疫ブロット:細胞を1倍量のPBS/プロテアーゼインヒビターカクテル溶液および1倍量の2×ローディング緩衝液(pH 6.8)(80 mM Tris−HCl、16.7%グリセロール、1.67% SDS、1.67%β−メルカプトエタノール)中で溶解し、短時間超音波処理を行った。タンパク質を、4〜20%Tris−グリシンゲル(BioRad,Hercules,CA)にて100Vで分離し、移動緩衝液(25 mM Tris−HCI(pH 8.3)、192 mMグリシン、20% v/vメタノール)中、4℃で1時間100Vでニトロセルロース膜に移した。ブロットを、5%脱脂粉乳を含む0.1%Tween20含有10mM Tris緩衝化生理食塩水(pH7.5)で2時間ブロッキングした。ブロットを、抗Arc抗体(1:250)と4℃で一晩およびHRP抱合IgG(1:100,000)と2時間インキュベートした。膜を、SuperSignal West Femto化学発光キット(Pierce Biotechnology,Rockford,IL)を使用して発色させ、その後、洗浄し、ブロッキングし、タンパク質ローディングのコントロールとして使用した抗シクロフィリンB抗体(1:40,000)で再ブロットした。タンパク質を視覚化し、Kodak IS440CF Image Station(New Haven,CT)を使用して定量した。
【0061】
ドットブロットアッセイ:以前に記載されているドットブロットアッセイを使用して、ヒト前頭葉皮質および小脳の可溶性抽出物中のAβのアセンブリ形態を測定した(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献を参照のこと)。9つのADサンプル(Braak & Braak,CERAD and NIA/Reagan Institute Criteriaに基づいた病理学的診断)を、15の非ADコントロールサンプルと比較した。組織(100mg)を、組織剪断器(Tissue Tearor)(Biospec Products,Bartlesville,OK)を使用して、氷上のプロテアーゼインヒビター(Complete mini EDTA free tablet;Roche,Indianapolis,IN)を含む1mlのHam’s F12無フェノール培地(BioSource,Camarillo,CA)中でホモジナイズした。20,000gで10分間の遠心分離後、上清を、100,000gで60分間遠心分離した。100,000gの上清のタンパク質濃度を、標準的なBCAアッセイによって決定した。ドットブロットアッセイのために、ニトロセルロースを、TBS(20mM Tris−HCI(pH7.6)、137mM NaCl)で予め湿らせ、完全に乾燥させた。抽出物(総タンパク質は2μl、1μl)をニトロセルロースにアプライし、完全に風乾させた。次いで、ニトロセルロース膜を、5%脱脂粉乳を含有する0.1%Tween20を含むTBS(TBS−T)中にて室温で1時間ブロッキングした。膜を、一次抗体M93/3を含むブロッキング緩衝液(1:1000)と1時間インキュベートし、TBS−Tで3×15分間洗浄した。HRP抱合二次抗体(1:50,000,Amersham,Piscataway,NJ)を含むTBS−Tとの室温で1時間のインキュベーション後に洗浄した。タンパク質を化学発光を使用して視覚化し、Kodak 1D画像ソフトウェアを使用したKodak IS440CF Imaging Stationで分析した。
【0062】
結果
Aβオリゴマー惹起抗体によって検出された可溶性Aβ種は、ニューロン細胞体周囲に沈着し、AD皮質で増加する。
第1の目的は、AD脳内のADDLの存在を確証することおよびその後の細胞生物学実験で使用した抗体がアルツハイマー病の病理学に特異的であることを確立することであった。したがって、ヒト前頭葉皮質(7人のAD患者および非認知症年齢適合コントロール)由来の切片を、M94(オリゴマー選択性抗体)で免疫標識し(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献などを参照のこと)、チオフラビン−Sを使用して線維性アミロイド沈着を評価した。免疫標識AD脳切片は、老人性神経炎および拡散性アミロイド斑の形態の特徴的なAβ沈着も示す領域中の細胞体を選択的に取り囲む局在化免疫反応性沈着物を示した。しかし、全AD症例で見出された細胞周囲の拡散性免疫応答は、線維性アミロイド沈着物(チオフラビン−S染色によって検出、示さず)と明らかに異なった。免疫蛍光(図1A)およびHRP染色(図1B)によって標識した皮質層IIIに存在するそれぞれの錐体ニューロンの代表的な画像を示す。(7つのうちの)1つのコントロールは、類似の構造を示し、この特定のコントロールの脳は、軽度認知障害を罹患した個体由来の低レベルの斑を有するブラーク病期0であった。非認知症年齢適合コントロール前頭葉では免疫応答は認められなかった(示さず)。全体として、AD切片の拡散したオリゴマー染色は、細胞内よりもむしろ細胞周囲に認められ、プリオン関連疾患で認められる拡散性のシナプス型沈着物の記載を連想させた(例えば、Hainfellner,J.A.et al.(1997)Brain Pathol.,vol.7,pp.547−553;Kovacs,G.G.et al.(2002)Brain Pathol.,vol.12,pp.1−11および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【0063】
ADの診断を使用するか使用しないでドットブロット免疫アッセイを使用して、ヒト前頭葉皮質および小脳(図1C、ドットブロット)の可溶性抽出物中のオリゴマーAβの存在を確証した。免疫反応性は、全てのAD前頭葉皮質抽出物で強かった。コントロールでは、免疫反応性は、低レベルのプラークおよび線維濃縮体(tangle)を有する被験体由来の2つの皮質サンプル以外の全ての皮質および小脳サンプルについてアッセイバックグラウンドと類似していた(プラーク重症度1、CERAD A、BraakII、低NIA/Reagan)。AD皮質サンプル中の平均シグナルは約11倍に上昇したが(p<0.0001)、多数のコントロールサンプルがアッセイバックグラウンドと類似していることにより、この比の大きさを不正確にしている。皮質サンプルと対照的に、AD小脳中の可溶性オリゴマーレベルは、非認知症コントロールよりも最低限に高かったが、有意ではなかった(p=0.1316)(図1C、散布図)。
【0064】
これらの結果により、可溶性オリゴマーがAD病変の真の構成要素であるという報告が確認および拡大適用される(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献を参照のこと)。これらの結果は、さらに、AD脳由来の可溶性オリゴマーを特徴づけるために以前に使用した抗体がAD脳の病変を特異的に認識することが確証される。したがって、データにより、下記のADDLとニューロンとの間の相互作用の性質を特徴づけるためにデザインされた細胞生物学的実験でのこれらの抗体および可溶性AD脳抽出物の使用が有効になる。
【0065】
AD脳から抽出したAβオリゴマー(ADDL)は、クラスター化部位に特異的に結合する。
ADDLは、Aβ1〜42の小さな拡散性のオリゴマー(両親媒性ペプチド)である。Aβ1〜42単量体と比較したその相対的に好ましい水溶性を考えると、オリゴマーはその疎水性ドメインを隠す一方で、その親水性ドメインを水性環境に示す可能性が高い。このような配向は、高次構造感受性抗体による溶液中のADDLの免疫中和と一致する(例えば、Lambert,M.P.et al.(2001)J.Neurochem.,vol.79,pp.595−605およびその参考文献を参照のこと)。したがって、ADDL構造は、理論的に、人工脂質二重層へのAβ単量体の報告された挿入に関連する比較的非特異的な結合と対照的に、記憶関連ニューロンに対するリガンド様特異性に適合する能力を有する(例えば、McLaurin,J.& Chakrabartty,A.(1996)J.Biol.Chem.,vol.271,pp.26482−26489およびその参考文献を参照のこと)。
【0066】
この高特異性ADDL結合様式を確認するために、本発明者らは、本発明者らの実験モデルとして培養物中に少なくとも3週間維持したラットの海馬ニューロンを使用して、生理学的に関連する条件下でADDLのニューロンとの相互作用を調査した。これらの培養物はシナプスを生成し(例えば、Fong,D.K.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.2153−2164およびその参考文献を参照のこと)、成熟した複雑な分枝を有する高度に分化したニューロンを産生する。
【0067】
第1の結合実験を、ヒト脳の抽出物およびヒトCSFを使用して行った。インビトロで調製したオリゴマーと構造が等価なオリゴマーを含むことが以前に示されているAD抽出物の可溶性抽出物(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献を参照のこと)を、培養ニューロンとインキュベートした。非結合物質を洗浄によって除去し、細胞を免疫蛍光顕微鏡法によって試験した。ADDL分布を、合成Aβオリゴマーのワクチン接種によって生成されたポリクローナル抗体(M94)を使用して決定した。これらの抗体は、低容量の病原性Aβオリゴマーに結合するが、生理学的単量体に結合せず(例えば、Chang,L.et al.(2003)J.Mol.Neurosci.,vol.20,pp.305−313;Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422;Lambert,M.P.et al.(2001)J.Neurochem.,vol.79,pp.595−605および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、上記のように、AD脳組織に特異的である。
【0068】
ラット海馬細胞の十分に分化した培養物との抽出物のインキュベーションにより、5分ほどの時間でさえも、細胞体および神経突起に沿って膜型に標識された(図2A)。同一条件下で、年齢適合非認知症コントロール由来の抽出物によってシグナルは得られなかった(図2B)。抗体がAβ単量体またはアミロイド前駆体タンパク質などの生理学的分子を認識することは示されなかった。Aβ1〜42は、ADおよびADのトランスジェニックマウスモデルにおいて細胞内に蓄積されることが報告されているが(例えば、Oddo,S.et al.(2003)Neuron,vol.39,pp.409−421;Gouras,G.K.et al.(2000)Am.J.Pathol.,vol.156,pp.15−20および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、ニューロンに対するADDLの免疫反応性は、透過処理後でさえも細胞表面に排他的に蓄積した。分布は、事実上明確に点状であった。AD抽出物のCentriconフィルター分画は、結合活性が10〜100kDの分子量のオリゴマーと共に存在し、これは、以前の特徴づけと一致することを示した(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422およびその参考文献を参照のこと)(図2C、D)。ヒトCSFの非分画抽出物はまた、AD依存性の結合活性を示した(図2E、F)。細胞分泌経路内でAβが高度に過剰産生および蓄積されるので、トランスジェニックADモデルで認められた細胞内Aβが生じる可能性が高い。
【0069】
結果は、アルツハイマー病の脳およびCSF由来のヒト由来ADDLが神経突起分枝内に豊富に見出される結合部位の点状クラスターによって特徴づけられるニューロン細胞表面に高い選択性で結合することができることを示す。
【0070】
合成Aβ1〜42から生成したADDLは、クラスター化部位に特異的に結合する。
インビトロで生成したADDLの結合特性を調査した。このような調製物は、オリゴマーの神経学的影響を調査するための標準を構成する。これらの定義された調製物の使用により、結合およびその結果に寄与し得る抽出物およびCSFの未知の要因を排除される。さらに、広範な使用および研究所間での都合のよい比較のためのツールとして、合成ADDLは、ヒト脳抽出物またはCSFよりも遥かに利用しやすい調製物を提供する。
【0071】
ヒト調製物を使用して認められるように、インビトロで調製し、成熟海馬ニューロン培養物とインキュベートしたADDLにより、ニューロン分枝内に豊富な点部位を示す特異的結合パターンが得られた。抗体の合成オリゴマー予備吸収によって検出可能なシグナルは得られず(示さず)、非特異的抗体会合が除外された。オリゴマー特異的モノクローナル抗体を使用した免疫標識により(例えば、Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760およびその参考文献を参照のこと)、リガンドが単量体や原線維(示さず)ではない(Centriconフィルター分画実験によって立証された結論)ことが示された。10〜100kDaのCentricon画分(図3A)は、ニューロン表面に結合することができるオリゴマーを含んでいたが、10kDa未満の画分(図3B)は含んでいなかった。図3Cに示すように、海馬細胞とのインキュベーション時に(6時間まで)培養培地中に存在するAβ種は変化しない。典型的な合成ADDL調製物は、分子量が24量体までであり、主に12量体の種を含むSDS安定性アセンブリを含む一方で、AD脳抽出物は一般的な12量体(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−1042248を参照のこと)および48量体(データ示さず)を含む。
【0072】
さらに、Superdex75でのHPLCサイズ排除クロマトグラフィによる分離後にAβ種のニューロン結合を試験した(Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760に記載)。ビオチン−Aβ1-42ペプチドから調製したビオチン化ADDLは、2つのピークで溶離された(図3D)。既知の分子量標準に対する較正により、ピーク1は、12量体およびより大きな種と一致する見かけの分子量が50kDaを超える種を含む一方で、ピーク2は単量体および小さなオリゴマーを含んでいた。図1のように、最高レベルの免疫反応性物質を含む画分を同定するために、溶離画分に対してドットブロット(アセンブリした全Aβ形態を検出する方法)を行った(示さず)。次いで、これらの画分を、成熟海馬細胞培養物に対する結合能力について試験した。ピーク1に含まれる高分子量のAβ種は、海馬樹状突起樹への結合を示す一方で(図3E)、ピーク2由来の低分子量の種は結合しなかった(図3F)。
【0073】
したがって、Centriconフィルターまたはクロマトグラフィによる分画由来の結果は、ニューロン上に画像化された免疫反応性はプロトフィブリルなどの巨大分子や単量体または二量体などの小分子に起因しないことを示す。
【0074】
実験によって生成されたオリゴマーによる選択的結合−結合部位のクラスターおよび細胞−細胞特異性:
ADDLが非選択性膜の吸着または挿入によって結合されると予想していることに反して、全細胞は結合部位の点クラスターを示さなかった。二重標識実験における細胞−細胞特異性を、αCaMKII陽性ニューロン対について示し(図4A、B)、その1つだけがADDL結合を示す。多くの実験により、ADDLに結合した培養海馬ニューロンの小集団は、典型的には、所与の培養物中に30〜50%含まれた。これらの結果により、細胞レベルでのADDL結合の特異性が確立される。
【0075】
ADDL結合部位のクラスターは、シナプスと一致する。
細胞内レベルでは、ADDLが特異的にシナプスに結合するかどうかは、ADにおける記憶喪失がオリゴマー誘導性シナプス不全であるという仮説に対して非常に重要である(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.298,pp.789−791;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。ADDLシナプス可塑性を阻害する速度により(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;Walsh,D.M.et al.(2002)Nature,vol.416,pp.535−539;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、神経学的に関連する結合がシナプス付近で起こり得る一方で、特定のシナプスを特異的にターゲティングする結合がADにおける記憶特異性の主な原因となるだけでなく、機構に相当な制限を与えることが示唆される。上記の樹状分枝内の点状結合部位へのADDLの局在化は、ADDLがシナプス特異的リガンドであるという仮説と明確に一致する。しかし、点状結合部位の形態もまた、膜ラフトまたは接触点などの他の細胞内特殊化(subcellular specialization)と一致する。
【0076】
オリゴマー結合部位の性質をさらに試験するために、PSD−95との同時局在化を試験した。PSD−95は、興奮性CNSシグナル伝達経路で見出されるシナプス後膜肥厚の重要な足場成分であり(例えば、Sheng,M.& Pak,D.T.(1999)Ann.N.Y.Acad.Sci.,vol.868,pp.483−493;およびその参考文献を参照のこと)、PSD−95のクラスターは、シナプス後終末の決定的なマーカーとして確立されている(例えば、Rao,A.et al.(1998)J.Neurosci.,vol.18,pp.1217−1229;およびその参考文献を参照のこと)。成熟海馬細胞培養物(本明細書中で使用される者など)では、本質的に全てのPSD−95のクラスターがシナプスで生じる(例えば、Allison,D.W.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.4545−4554;およびその参考文献を参照のこと)。予想するように、ADDL結合部位は、低倍率での重ね合わせで認められるPSD−95点と非常に一致する(図4C)。より高い倍率での重ね合わせ分析により、ADDL結合部位がほとんど排他的にPSD−95の点と同時局在化することが示された(図5A〜C)。AD脳の抽出物で同一パターンが得られた(示さず)。ADDL結合部位はまた、シナプトフィジン陽性シナプス前末端と並列したが(図5D)、ADDLとシナプトフィジンの免疫反応性の完全な一致は稀であった。ADDLによる明らかなシナプスターゲティングを確証するために、ADDLとPSD−95との間の同時局在化範囲を、画像分析によって定量した。14の視野の定量により、部位の93+/−2%で、合成ADDLがPSD−95と同時局在化することが示された(図5F、H)。したがって、ADDL結合部位は、ほとんど完全にシナプスと共に局在した。形態計測定量に基づいて、これらの部位は、さらに、シナプス小集団に対しても選択的なようであった。ADDL点の検出のための一定の閾値レベルでは、PSD−95点の約半分がADDLと同時局在化するが(図5E、G)、ADDLクラスター検出のためのより高い閾値では、全てのPSD−95陽性樹状突起棘がADDLに結合することが可能なようである。
【0077】
ADDL結合部位は、さらに、NMDA受容体(NR1)免疫反応性と重複することが見出され(示さず)、これは、興奮性海馬シグナル伝達経路中のPSD−95とNMDAグルタミン酸受容体との会合と一致する(例えば、Sheng,M.& Pak,D.T.(1999)Ann.N.Y.Acad.Sci.,vol.868,pp.483−493;およびその参考文献を参照のこと)。ADDLはまた、PSD−ファミリータンパク質およびスピノフィリンと高度に同時局在化した(示さず)。ADDLとGluRl(樹状軸中で発現した受容体を認識するGluR1のC末端抗体)、リン酸化τ(τ−1(軸索マーカー)を使用する)、およびSorLa(アポリポタンパク質E受容体LR11とも呼ばれるLDLRクラスA反復を含む選別タンパク質(sorting protein)関連受容体;Dr.H.C.Schallerから贈与)との間の重複は明らかではなかった。したがって、同時局在化はシナプスマーカーに選択的であった。
【0078】
ADDLによる特異的シナプスターゲティングの分子基盤は知られていないが、B103 CNSニューロン細胞株を使用した初期の研究では、フローサイトメトリー実験においてトリプシン感受性細胞表面タンパク質への特異的結合が示された(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;およびその参考文献を参照のこと)。広範な候補タンパク質(神経伝達物質の受容体、栄養因子、接着分子、および細胞外基質タンパク質が含まれる)が、PSD−95シナプスで蓄積する。SDS−PAGEによって分離された特定のタンパク質への結合を検出する可能性があるリガンド重ね合わせアッセイでは、ADDLは、高親和性で、海馬および皮質由来の2つの膜結合タンパク質(分子量140および260kDa)に結合する(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422;およびその参考文献を参照のこと)。これらのタンパク質はまた、単離シナプトソームで有意に富化される(800〜900%;D.Khuon,personal communication)。これら2つの分子量に対応するタンパク質を、質量分析によって同定した。P140は、主に、シナプス後タンパク質synGAP(rasGTPアーゼ活性を刺激することが公知の135kDaタンパク質)に対応する。P260は、主に、proSAP2またはShank3として公知のシナプス後足場タンパク質に対応する。synGAPはPSD−95に会合することが公知である一方で、shank3はグルタミン酸受容体に会合することが公知である。
【0079】
ADDLは、シナプス記憶関連IEGタンパク質「Arc」を異所性に上方制御する。
点のシナプス関連性は、図6Aに示す高度に分枝したαCaMKII陽性ニューロンへのADDL結合の顕著な特異性と一致する。このニューロンは、主に樹状突起上で見出される個別にクラスター化した部位を示し、点結合は細胞体上で検出可能であるが、密度は遥かに低い。より高倍率では(図6B)、合成画像の重ね合わせは、αCaMKII陽性樹状突起棘をキャッピングする多数のオリゴマーの点を示す。αCaMKIIは、記憶機能に関連するニューロンのシナプス後末端に蓄積することが公知であり、突起のあるシナプス後末端中のタンパク質の30%超を含む(例えば、Inagaki,N.et al.(2000)J.Biol.Chem.,vol.275,pp.27165−27171;およびその参考文献を参照のこと)。樹状突起棘へのADDL結合部位の頻繁な局在化により、棘分子に急速に影響を与える可能性が示唆される。
【0080】
この可能性を調査するために、長期記憶形成に非常に関連するシナプス最初期遺伝子機構に及ぼすADDL結合の影響を試験した。目的の遺伝子は、Arc(活性調節細胞骨格関連)タンパク質をコードする(例えば、Guzowski,J.F.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.3993−4001;およびその参考文献を参照のこと)。生理学的にタンパク質がシナプス活性によって一過性に誘導される場合、Arc mRNAがシナプスにターゲティングされる(例えば、Lyford,G.L.et al.(1995)Neuron,vol.14,pp.433−445;Link,W.et al.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.92,pp.5734−5738;Steward,O.& Worley,P.F.(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.98,pp.7062−7068;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。動物モデル研究により、適切なArc発現がLTPおよび長期記憶形成に必須であることを示された(例えば、Guzowski,J.F.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.3993−4001;およびその参考文献を参照のこと)。薬物乱用および睡眠妨害との関連に加えて(例えば、Freeman,W.M.et al.(2002)Brain Res.Mol.Brain Res.,vol.104,pp.11−20;Cirelli,C.& Tononi,G.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.9187−9194;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、Arcの異所性および異常な発現は、長期記憶形成不全の原因であると予想されている(例えば、Guzowski,J.F.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.3993−4001;およびその参考文献を参照のこと)。
【0081】
海馬ニューロンを、インビトロで生成したADDLまたは媒体と5分間、1時間、および6時間処置し、Arcタンパク質に及ぼす影響を、免疫蛍光および免疫ブロットによって決定した。前に考察しているように、合成ADDLは、AD由来の種よりも容易に得ることができ、且つ可溶性脳抽出物中に存在する多数の未知の物質(myriad)によって汚染されていないので、合成ADDLを使用した。最も初期の時点(5分)で、二重標識免疫蛍光により、オリゴマー結合が樹状点Arc発現と同時局在化することが明らかとなった(図7)。構成性に発現する低レベルのArcタンパク質はシナプスではなく細胞体に局在することが公知であるので、この位置は異所性誘導のようである(例えば、Steward,O.& Worley,P.F.(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.98,pp.7062−7068;およびその参考文献を参照のこと)。
【0082】
ADDLへのより長い曝露後、Arc発現は、強い上方制御を示した。棘および樹状突起の至る所でのArc発現は、媒体処置コントロール(図8Aおよび8C)と比較して、1時間後に顕著であり(図8B)、6時間後もそのままであった(図8D)。免疫ブロットにおいてArc発現の上昇も明らかであり(図8A〜B)、コントロールにおける低レベルのArc−IRはニューロン細胞体における最小基本Arc発現と一致した。ADDL誘導性のArc増加は、媒体処置培養物の5倍であった。
【0083】
Arcタンパク質はF−アクチンと結合して棘の形態に機能的に関与し、その慢性過剰発現により、異常な棘構造が生成されることが示唆されている(例えば、Kelly,M.P.& Deadwyler,S.A.(2003)J.Neurosci.,vol.23,pp.6443−6451;およびその参考文献を参照のこと)。本実験における棘形態の試験により、オリゴマー処置群中のArc陽性棘がコントロール群中の少数のArc陽性棘と異なることが示された。低レベルのArcを発現するコントロール棘は切り株状であり、密接に樹状軸に沿って存在するのに対して(図8C)、ADDL処置棘はより長く、且つ樹状軸から伸長しているようであった(図8D)。類似の突出した棘構造は、抗スピノフィリンで免疫標識した処置培養物で明らかであった(示さず)。
【0084】
考察
ADDLは、AD脳内に蓄積する神経学的に有害な分子である(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422;およびその参考文献を参照のこと)。この開示は、ADDL作用の細胞生物学に取り組み、ADDLがシナプス終末に特異的なリガンドとして作用し、ADDLが長期記憶形成に必須のシナプス最初期遺伝子の正常な発現を破壊することを示す。データは、初期AD記憶喪失が、ニューロンの死滅およびアミロイド原線維と無関係にADDL誘導性シナプス不全に起因するという新規の仮説を支持するための新規の分子機構を提供する(例えば、Hardy,J.&Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.297,pp.353−356;Kirkitadze,M.D.et al.(2002)J.Neurosci.Res.,vol.69,pp.567−577;Klein,W.L.et al.(2001)Trends Neurosci.,vol.24,pp.219−224;Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.298,pp.789−791;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【0085】
種々の実験パラダイムにおける神経学的影響の研究と組み合わせた以前の臨床データおよびマウスモデルデータは、AD記憶喪失における非原線維Aβ神経毒に強く関与している(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;Mucke,L.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.4050−4058;Walsh,D.M.et al.(2002)Nature,vol.416,pp.535−539;Walsh,D.M.& Selkoe,D.J.(2004)Protein Pept.Lett.,vol.11,pp.213−228;Wang,H.W.et al.(2002)Brain Res.,vol.924,pp.133−140;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。Roher and colleaguesは、可溶性Aβに量体はAD中で上昇するが、これらは当初は神経学的に無関係であると考えられ、有毒なアミロイド原線維の形成の途中の一過性の種としてのみ存在することを示した(例えば、Lue,L.F.et al.(1999)Am.J.Pathol.,vol.155,pp.853−862;およびその参考文献を参照のこと)。Aβオリゴマーは、現在、原線維構造に変換することなく長期間存在する安定な分子構成要素(entity)として確立されている(例えば、Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760;およびその参考文献を参照のこと)。さらに、ADDLは、強力なCNS神経毒であることが公知である(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;およびその参考文献を参照のこと)。初期ADに最も関連するADDLはLTPを阻害する。ex vivoおよびインビボで認められるように、阻害は急速であり、非変性であり、且つ高い選択性を示す。シナプス可塑性に及ぼすADDLの影響は、年齢、領域、および導入遺伝子に依存する様式でADDLを蓄積する(例えば、Chang,L.et al.(2003)J.Mol.Neurosci.,vol.20,pp.305−313;およびその参考文献を参照のこと)hAPPトランスジェニックマウスで認められるプラーク独立性認知不全の主な原因である可能性が高い(例えば、Hsia,A.Y.et al.(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.96,pp.3228−3233;Mucke,L et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.4050−4058;Buttini,M.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.10539−10548;Van Dam,D.et al.(2003)Eur.J.Neurosci.,vol.17,pp.388−396;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。ADDLは、hAPPマウスにおける記憶喪失を逆転する(急速且つプラーク負荷に無関係の回復)治療抗体の標的である可能性が高い。
【0086】
オリゴマー特異的抗体によって検出された抗原の存在も、AD脳切片で見出されている(例えば、Kayed,R.et al.(2003)Science,vol.300,pp.486−489;およびその参考文献を参照のこと)。これらの抗原の局在化は神経炎斑と異なり、原線維と無関係のオリゴマーのインサイチューでの存在が確立された。この調査で認められたパターンは、この初期の報告と一致する。ここで認められたニューロン周囲の分布により、さらに、樹状分枝へのADDLの局在化が示唆される。AD脳組織から抽出されたADDLによる樹状突起結合は、以前に、培養海馬ニューロンを使用した実験で認められている(例えば、Gong,Y.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422;およびその参考文献を参照のこと)。本結果は、AD脳抽出物中のリガンドが10kDaと100kDaとの間であり、主に12量体(56kDa)の種が確立される二次元ゲル免疫ブロットによる可溶性AD脳抽出物の分析と一致することを示す。12量体のAD脳は、インビトロで生成したADDL調製物で見出された12量体と、等電点、高次構造感受性抗体による認識、および樹状分枝に選択的に結合する能力に関して区別できない。
【0087】
本明細書中に示した新規のデータは、ADDLの樹状突起標的がシナプス終末であることを証明する。この所見が、ADDLがシナプス不全の原因であるという仮説と調和するにもかかわらず、点状結合部位のサイズおよび分布を膜ラフトまたは接触点への結合によって説明することもできる。本実験では、共焦点免疫蛍光顕微鏡法を使用して、オリゴマーの局在化を十分に確立されたシナプスマーカー(PSD−95)と比較した。成熟海馬培養物では、本明細書中で使用される場合、PSD−95点は、本質的に100%シナプスである(例えば、Rao,A.et al.(1998)J.Neurosci.,vol.18,pp.1217−1229;およびその参考文献を参照のこと)。インビトロまたはAD脳のいずれかから生成されたADDLは、ほとんど排他的にシナプスと同時局在化することが見出された。オリゴマーが全てのニューロンおよびシナプスに結合するわけではないが、ターゲティングされる特定の表現型が解明されることは注目に値する。しかし、予備実験は、ターゲティングしたシナプスがグルタミン酸受容体を含むことを示す。別の未解決の問題は、培養物中のシナプスへの結合とAD脳切片中のオリゴマーによって認められる拡散性の染色との間の関係である。データは、インサイチューでの拡散性染色がシナプスに由来するであろうという仮説と一致し、この仮説は、現在、EM免疫金分析によって調査中である。
【0088】
シナプスがインサイチューでターゲティングされた場合、記憶に及ぼす影響は、最終的に、ターゲティングされたシナプス数、各シナプスが影響を受ける範囲、記憶形成過程全体に対する罹患シナプスの関連に依存するであろう。リガンドが解離するかその結合部位の向きが変わった場合、シナプスの影響は自発的に逆になり得る。このような複雑さにより、シナプスの逆転および認知機能の日によるばらつきと調和するにもかかわらず、オリゴマーレベルと記憶喪失との間の単純な関係の予想が困難になる。しかし、記憶喪失が現れる前に占有閾値(threshold of occupancy)を上回る可能性が高いようである。
【0089】
Arcが長期記憶形成に関与すると予想されるので、ADDLに対するArcの応答が特に興味深い(例えば、Guzowski,J.F.(2002)Hippocampus,vol.12,pp.86−104;およびその参考文献を参照のこと)。生理学的に、Arc発現は、パターン化されたシナプス活性によって調節され(例えば、Lyford,G.L.et al.(1995)Neuron,vol.14,pp.433−445;Link,W.et al.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.92,pp.5734−5738;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、最近活性化された樹状突起棘で発現する(例えば、Moga,D.E.et al.(2004)Neuroscience,vol.125,pp.7−11;およびその参考文献を参照のこと)。樹状突起では、Arc mRNAはシナプス棘(synaptic spine)に局在し、初期測定点でのArcおよびオリゴマーの同時局在化と一致する。このモデルにおけるシナプスArcタンパク質発現との関係が決定されていないにも関わらず、tg−マウスADモデルにおいてArc mRNAが加齢に伴って減少することが以前に留意されている(例えば、Dickey,C.A.et al.(2003)J.Neurosci.,vol.23,pp.5219−5226;およびその参考文献を参照のこと)。本研究では、ADDLによってArc誘導が保持され、それにより、樹状分枝全体にタンパク質が異所性に拡散する。通常、Arcタンパク質が拍動(pulsate)様式または一過性様式で機能し、保持されたArc発現によってシナプス雑音が生じ、それにより、長期記憶形成が阻害されると提案されている(例えば、Guzowski,J.F.(2002)Hippocampus,vol.12,pp.86−104;およびその参考文献を参照のこと)。この予想は、Arcの上昇と学習能力の低下との間の相関関係を示したtg−マウス由来の所見によって支持される(例えば、Kelly,M.P.& Deadwyler,S.A.(2003)J.Neurosci.,vol.23,pp.6443−6451;およびその参考文献を参照のこと)。
【0090】
どのようにして異所性Arcの影響によってシナプス不全が起こるのかについては、棘の形状および受容体輸送が関与し得る(図9)。Arcは、細胞骨格およびシナプス後タンパク質に関連し(例えば、Lyford,G.L.et al.(1995)Neuron,vol.14,pp.433−445;Fujimoto,T.et al.(2004)J.Neurosci.Res.,vol.76,pp.51−63;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)、tg−マウスにおけるArcの上昇によってシナプス棘が硬化し、これが、構造の可塑性を妨害し、学習を遅延させると提案されている(例えば、Kelly,M.P.& Deadwyler,S.A.(2003)J.Neurosci.,vol.23,pp.6443−6451;およびその参考文献を参照のこと)。シナプス棘の異常は、種々の脳機能障害に共通し(例えば、Fiala,J.C.et al.(2002)Brain Res.Brain Res.Rev.,vol.39,pp.29−54;およびその参考文献を参照のこと)、棘が異常に曲がって突出する精神発達障害が含まれる(例えば、Kaufmann,W.E.& Moser,H.W.(2000)Cereb.Cortex.,vol.10,pp.981−991;およびその参考文献を参照のこと)。棘の異常は、シナプスシグナル処理および関連する情報の保存を急速に変化させ得る(例えば、Crick,F.(1982)Trends Neurosci.,vol.5,pp.44−46;Rao,A.& Craig,A.M.(2000)Hippocampus,vol.10;pp.527−541;Yuste,R.& Bonhoeffer,T.(2001)Annu.Rev.Neurosci.,vol.24,pp.1071−1089;およびその参考文献を参照のこと)。Arcの上昇により、シナプス可塑性に必要な受容体の循環も破壊され得る(例えば、AMPA受容体の上方制御の遮断)。Arcの細胞生物学と一致して、この破壊は、棘構造を同時に変化させ得る機構を介した細胞骨格の組織化(例えば、f−アクチンまたはPSD)またはシグナル伝達経路(例えば、CaMKIIを介する)に及ぼす影響に由来し得る。
【0091】
他のシナプスシグナル伝達経路は、培養モデル中のオリゴマーにも影響を受ける。皮質培養物では、低濃度のオリゴマー(致死量以下)は、グルタミン酸のCREBリン酸化を誘導する能力(例えば、Tong,L.et al.(2001)J.Biol.Chem.,vol.276,pp.17301−17306;およびその参考文献を参照のこと)、シナプス可塑性に関連するシグナル伝達経路(例えば、Sweatt,J.D.(2001)J.Neurochem.,vol.76,pp.1−10;およびその参考文献を参照のこと)を阻害する。海馬スライス培養では、最近の薬理学的研究により、オリゴマーによるLTP阻害に特定のキナーゼが関与することが示されている。代謝調節型グルタミン酸受容体5型のアンタゴニストが行うように、p38MAPK、JNK、およびcdk5のインヒビターがオリゴマーのLTPへの影響を遮断することが潜在的に非常に興味深い(例えば、Wang,Z,et al.(2004)J.Med.Chem.,vol.47,pp.3329−3333;およびその参考文献を参照のこと)。本発明者らはまた、オリゴマー作用における受容体の推定される関与を示唆し、公開されたデータはシナプスADDL結合を媒介する受容体タンパク質の同一性を確立していない(例えば、Verdier,Y.et al.(2004)J.Pept.Sci.,vol.10,pp.229−248;およびその参考文献を参照のこと)。上記のシグナル伝達事象およびArc誘導がArcに及ぼすADDLの影響に関して並行しているのかまたは連続しているかについては、依然として決定されていない。
【0092】
破壊的シナプスリガンドとしてのADDLの作用により、ADシナプス不全についての直感的に魅力的な機構が得られる。手掛かりは、シナプス自体がターゲティングされることである。どのようにし記憶特異的喪失が非特異的細胞会合に由来するのかを説明する必要はない(例えば、細胞膜への無作為な挿入(例えば、 Gibson,W.W.et al.(2003)Biochim.Biophys.Acta,vol.1610,pp.281−290;およびその参考文献を参照のこと))。本データにより、記憶開始事象がシナプスで局所的に破壊される倹約機構(parsimonious mechanism)が示唆される。最終的に、曝露の延長により、オリゴマーによってターゲティングされたシナプスが、関連するシナプスシグナル伝達分子(例えば、Fynなど)によって媒介される物理的分解を受け得る(例えば、Chin,J et al.(2004)J.Neurosci.,vol.24,pp.4692−4697;およびその参考文献を参照のこと)。ADDLは、いくつかの初期ADのトランスジェニックモデルにおける終末のプラーク依存性喪失を説明するために提案されている(例えば、Mucke,L.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.4050−4058;およびその参考文献を参照のこと)。tg−マウスにおけるArc mRNAの年齢依存性の減少の報告は、シナプス劣化の初期段階の可能性と一致するが、明らかな終末の喪失は、これらの系統で生じないようである(例えば、Dickey,C.A.et al.(2003)J.Neurosci.,vol.23,pp.5219−5226;およびその参考文献を参照のこと)。
【0093】
末期ADでは、認知変性は、記憶喪失を遥かに超えて拡大する(例えば、Coyle,J.T.(1987)Alzheimer’s Disease.In:Encyclopedia of Neuroscience(Adelman G,ed),pp 29−31.Boston−Basel−Stuttgart:Birkhaeuser;およびその参考文献を参照のこと)。初期発病事象の遮断によってこの壊滅的な下流カスケードに決して到達させないことが望ましいであろう。ヒトワクチン試験の結果は、Aβ由来の神経毒をターゲティングする治療抗体が実際に疾患の進行を食い止めることを示すが(例えば、Hock,C.et al.(2003)Neuron,vol.38,pp.547−554;およびその参考文献を参照のこと)、能動ワクチンでの有意な脳炎の発生率がこのストラテジーを複雑にしている(例えば、Schenk,D.(2002)Nat.Rev.Neurosci.,vol.3,pp.824−828;Weiner,H.L.& Selkoe,D.J.(2002)Nature,vol.420,pp.879−884;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。受動的ワクチン接種は、より高価であるが、副作用がより少なく、さらに、高齢者に共通する免疫応答障害の問題が克服される。可溶性Aβ種を免疫中和するモノクローナル抗体は、2つの独立した研究で、初期ADのtg−マウスモデルで記憶喪失を逆転することが示されている(例えば、Dodart,J.C.et al.(2002)Nat.Neurosci.,vol.5,pp.452−457;Kotilinek,L.A.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.6331−6335;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。さらに、生理学的単量体に対する親和性が最小の毒性Aβ型に特異的な抗体を作製するためにADDLを使用することが可能であった(例えば、Lambert,M.P.et al.(2001)J.Neurochem.,vol.79,pp.595−605;およびその参考文献を参照のこと)。さらに、最近のハイブリドーマ研究では、オリゴマーに結合するがアミロイド原線維に結合せず、プラークに結合した抗体に起因する炎症の懸念が減少した抗体を生成することが可能であることが示されている(例えば、Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760;およびその参考文献を参照のこと)(Chromy et al.,2003)。したがって、記憶関連Aβアセンブリをターゲティングするヒト治療抗体が開発される見込みがあるようである。
【実施例2】
【0094】
受容体−ADDLの付着および同時局在化
本質的にLacor,P.N.et al.(2004)J.Neurosci.,vol.24,no.45,pp.10191−10200に記載のように、受容体−ADDLの付着および同時局在化を行った。簡単に述べれば、3週間培養した海馬(HP)細胞を、500nM ADDLで30分間で処置し、固定し、5回洗浄した。使用した抗体に依存して、0.1% Triton X−100透過処理を使用するか使用しないで免疫標識を行った(すなわち、抗Aβ N末端抗体を使用する場合、非透過処理条件を使用した)。抗グルタミン酸−受容体モノクローナル抗体+M71抗ADDLポリクローナル抗体またはポリクローナルグルタミン酸−受容体抗体+20C2抗ADDLモノクローナル抗体のいずれかを使用して、二重標識を行った(例えば、2004年10月25日出願の米国特許出願番号第60/621,776号を参照のこと)。共焦点顕微鏡法を使用して、免疫反応性を画像化した。
【0095】
図11−1についての言及:パネル中に示したグルタミン酸(AMPAまたはKAINATE)受容体抗体の色は、免疫反応(IR)の色に適合する。ADDL−IRは、反対色である。ADDLとグルタミン酸受容体の同時局在化は、黄色で認められる。画像は、表示の受容体およびADDLについての二重標識した3週齢のHP細胞の樹状突起樹の一部を示す。画像を、100倍の対物レンズおよびデジタル3.5倍ズームで取得した。スケールバーは、4μm(ミクロン)を示す。示したデータは、捕捉した条件あたりの6視野の2つの異なる実験を代表する。
【0096】
図11−2についての言及:パネル中に示したグルタミン酸(NMDA)受容体抗体の色は、免疫反応(IR)の色に適合する。ADDL−IRは、反対色である。同時局在化は、黄色で認められる。画像は、表示の受容体およびADDLについての二重標識した3週齢のHP細胞の樹状突起樹の一部を示す。画像を、デジタルズームを行っていないパネル標識「NR2A/B Chem」以外は100倍の対物レンズおよびデジタル3.5倍ズームで取得した。示したデータは、捕捉した条件あたりの6視野の1つの実験を代表する。
【0097】
分析:この情報は、特異的グルタミン酸受容体とADDLとの間の同時局在化の質的描写を示す。どの解釈にも拘束されないが、予備実験の結果により、AMPA−RがNMDA−Rよりも頻繁にADDLと同時局在化することが示唆される。ADDLは、グルタミン酸受容体(AMPA−RまたはNMDA−R)を発現する樹状突起で常に見出され、しばしばこれらの受容体に並列する。
【実施例3】
【0098】
受容体に及ぼすADDLの影響
図12に示すように、NR2B膜発現は、ADDL曝露後に減少する。非透過処理条件下では、NR2B膜発現量を、細胞外エピトープに対する抗体を使用して評価した。NR2B標識の比較分析を行うために等しい密度の神経網を画像化した。標識されたピクセルの総数の有意な減少が認められ、これはNR2B点数の減少と一致した(p<0.001、n=4、2つの異なる実験で認められた1実験由来の神経網画像)。神経突起に沿って標識したNR2Bの例は、定量のために画像化した神経網中のADDL処置後のNR2B標識の認められた減少の代表である(C、D、スケールバーは8μmを示す)。
【実施例4】
【0099】
棘幾何学に及ぼすADDLの影響
図13に示すように、ADDLでの海馬ニューロンの経時処置により、スピノフィリン免疫蛍光(IF)強度および棘の形態によってモニタリングしたところ、一過性にシナプス後応答が得られる。ADDLでの海馬ニューロンの経時処置により、1時間後にスピノフィリン蛍光の減少が明らかとなり、3時間後に有意にピークとなり、その後コントロールレベルに戻る(A、p<0.05、グラフにしたデータは、1つの実験から画像化した5つのニューロンの平均および対応するSEMである)。ADDL曝露後のスピノフィリンIFの代表的画像を示す。(B、スケールバーは30μmを示す)。ADDLでの経時処置後の棘の長さも測定し、ADDLとの3時間のインキュベーション後に棘の長さの有意な増加が認められた(C、p<0.005、グラフにしたデータは、1つの実験から画像化した異なるニューロン由来の10の樹状突起の枝部から得た棘の長さの平均である)。棘の長さの測定値の分布により、より長い棘に向かうADDL誘導性のシフトが証明される(D)。スピノフィリンIFの高倍率画像を、棘の長さの定量に使用した(E、F、3時間のADDL/媒体インキュベーション後の代表的画像、スケールバーは8μmを示す)。
【実施例5】
【0100】
Erb−B4受容体に及ぼすADDLの影響
図14に示すように、1時間のADDL曝露後にErb−B4 IF染色強度が減少する。成熟海馬ニューロンを、媒体(A)およびADDL(B)で処置し、その後、Erb−B4について免疫標識した。Erb−B4(赤色)は、ADDLによってターゲティングされない一握りの細胞で強く発現され、これは、ErbB4とADDL(緑色)の免疫反応性の画像の組み合わせによって証明される(C)。挿入図は、ADDL結合神経網のより高倍率の拡大画像であり、Erb−B4とADDL点との間で同時局在化を欠くことが示されている。等しい密度の神経網におけるErbB4 IFの定量により、標識ピクセルおよび点の数の有意な増加が明らかとなった(D、E、p<0.05、グラフは1つの実験から得られた4つの画像の平均および対応するSEMを示す)。スケールバーは40μmを示す。
【実施例6】
【0101】
シナプス後膜肥厚(PSD)へのADDLの結合
図15に示すように、ELISAアッセイを使用して決定したところ、ADDLは、シナプス後膜肥厚(PSD)に結合するが活性帯(AZ)に結合しない。PSDへのADDLの結合を、ADDLを含むELISAプレートに付着した単離PSDのインキュベーションによってアッセイした。コントロールとして活性帯(AZ)を使用した。図15中のパネルAは、PSDへのADDL結合のアッセイのための典型的なプロトコールを概説する。パネルAの上部に示すように、最初に、標準的なプロトコールにしたがって、シナプトソームを使用してPSDおよびAZを生成する(例えば、Phillips,G.R.et al.(2001),Neuron,vol.32,pp.63−77;およびその参考文献を参照のこと)。図では、本明細書中の他の場所に示すように、TX100は、Triton X−100を示す。M71/2は、以前に開示のM93およびM94に類似のADDL特異的ポリクローナル抗体を示す(例えば、2002年6月11日出願の米国特許出願番号第10/166,856号)。図15中のパネルBは、このようなアッセイの典型的な結果を示す。
【0102】
図16に示すように、CNQXはシナプトソームへのADDLの結合を遮断する。図16中のパネルAは、CNQXの存在下でのシナプトソームへのADDL結合のアッセイのための典型的なプロトコールを概説する。図16中のパネルBは、このようなアッセイの典型的な結果を示す。WBは、この場合は6E10抗体を使用したウェスタンブロットを示す。
【0103】
図17に示すように、ADDL免疫沈降アッセイにおいて、CNQXは、PSD−95の共沈量を減少させる。図17のパネルAは、CNQXの存在下でのPSD−95へのADDL結合のアッセイのための典型的なプロトコールを概説する。図17中のパネルBは、このようなアッセイの典型的な結果を示す。PSD−95 WBは、標準的なプロトコールにしたがって行ったPSD−95ウェスタンブロットを示す。
【0104】
図18に示すように、CNQXは、ニューロン表面へのADDL結合を遮断する。ADDLまたはADDL+CNQXを、本明細書中に記載の培養物中でニューロン細胞とインキュベートした。典型的なADDL点状結合が認められ、所与の突起長あたりの各点を計数した。CNQXの存在下でADDL点状結合部位数は減少する。
【実施例7】
【0105】
ニューロンへのADDL結合の定量
図19および20に示すように、ニューロンへのADDL結合を定量することができる。
【0106】
標準的なプロトコールにしたがって、ビオチン化ADDLを調製した。
【0107】
漸増量のビオチン−ADDL(.07μM〜17.8μM)を、初代海馬培養物に添加し、37℃で15分間インキュベートした。その後、ニューロンを、加温したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄し、4%パラホルムアルデヒドにて4Cで20分間固定した。PBSで細胞を数回洗浄することによってパラホルムアルデヒドを除去した。非特異的結合を、2%BSA(ウシ血清アルブミン)を含むPBSをを使用した室温で30分間のインキュベーションによって遮断した。ニューロンを、アルカリホスファターゼ(Molecular Probes,1:1500)にカップリングしたストレプトアビジンと室温で1時間インキュベートした。PBSで細胞を数回洗浄することによって非特異的結合を除去した。アルカリホスファターゼの基質としてSapphine−IIを使用したCDP Starを使用して、ADDL結合を検出した。終点発光を、Tecan GENios proを使用して室温で30分間のインキュベーション後に測定した(例えば、図19を参照のこと)。
【0108】
ADDL結合の免疫細胞化学:初代海馬ニューロンを、2.5μM ADDLと共に37Cで15分間インキュベートした。その後、ニューロンを加温PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、その後、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4)で洗浄した。非特異的結合を、2%正常ヤギ血清を含むPBSを使用して室温で30分間遮断した。一次抗体を、4Cで一晩インキュベートした(ウサギ抗微小管関連タンパク質(MAP2)の700倍希釈物およびマウス抗ADDL抗体の2000倍希釈物)。翌日、培養物をPBSで洗浄し、その後、適切なAlexaFluor 488または594抱合IgG(Molecular Probes,Eugene,OR)(2μg/ml)と共に室温で2時間インキュベートした。さらに、300nMのDAPI核色素を含むPBSを30分間添加した。その後、培養物を、PBSで4回洗浄し、Cellomics Arrayscanプラットフォームを使用して画像化した。
【0109】
Arrayscan:Arrayscan Compartmental Analysis BioApplicationを、ADDL陽性初代海馬培養物の画像分析のために修正して使用した。蛍光強度を測定するために、3チャネルを使用して対象物を同定した。チャネル1は、第1の対象物(DAPI色素によって視覚化した核)のためであり、この対象物の平均強度および総強度を測定した。チャネル2および3は従属チャネルであるので、チャネル2をニューロンMAP2染色(AlexaFluor 594によって視覚化)に割り当て、チャネル3をADDL染色(AlexaFluor 488によって視覚化)に割り当てた。10倍対物レンズを使用して画像を取得し、1ウェルあたり全部で15視野をスキャニングした。(例えば、図20のパネルAおよびBを参照のこと)。
【実施例8】
【0110】
ADDL受容体
膜の調製
(1)いくつかの工程で示した操作以外は、全ての操作を4℃で行った。氷上で成体ラットから全脳を除去した。
(2)小脳、皮質、および海馬をPBS中で分離した。望ましくない白質の切除後、大血管を除去した。
(3)冠状断面を、0.32Mスクロース、50mM HEPS、25mM MgCl2、0.5mMジチオスレイトール、200μg/ml PMSF、2μg/mlペプスタチンA、4μg/mlロイペプチン、および30μg/ml塩酸ベンズアミジンを含むPBS(pH7.4)を含む3倍量の緩衝液Aで3回洗浄した。
(4)1gの組織を、20倍量の緩衝液Aで20分間ホモジナイズし、混合物を、1,000×gで10分間遠心分離した。
(5)ペレットを15倍量の緩衝液Aに再懸濁し、工程4を繰り返した。
(6)合わせた上清を、100,000×gで1時間遠心分離した。
(7)ペレットを30mlPBSに懸濁し、100,000×gで45分間再度遠心分離した。
(8)ペレットを2mlPBSに再懸濁し、細胞膜として使用し、−83℃で維持した。
【0111】
界面活性剤処置によるADDL受容体の富化および線形勾配超遠心
界面活性剤処置
成体ラット皮質の40mg×6の皮質膜タンパク質を、0.4%双性イオンを含む120mlの5mM Tris−HCl(pH9.5)に室温で1時間溶解した。
【0112】
線形スクロース勾配超遠心
30〜60%スクロース線形勾配を含む10mlの5mM Tris−HCl(pH7.4)を調製し、1つの超遠心管の底に誘導した。20mlの界面活性剤処置溶液を、このスクロース線形勾配の上部に適用した。100,000gで18時間超遠心を行った。底のペレットを、p140およびp260を含む粗サンプルとして使用した。このサンプルを、3ml 10%SDSに溶解し、10mMリン酸ナトリウムによって室温で1時間1%SDSに再度希釈した。この溶液を、100,000gにて21℃で1時間遠心分離した。上清を、CHT HPLCにアプライした。
【0113】
CHTカラムによるADDL受容体の富化
上清(すなわち、ADDL受容体の粗抽出物)を、10mMリン酸緩衝液(pH7.2)、1%SDS、および0.5mM DTTで平衡化したEcono−Pac CHT−IIカートリッジにアプライした。平衡化緩衝液での洗浄後、同一緩衝液中のリン酸ナトリウムの線形勾配(10〜700mM)を使用してクロマトグラフィを行った。SDSの沈殿を防止するために緩衝液およびカラムを28℃に保持した。200μlの溶離画分を、1%SDSを含む10mM Tris−HCl(pH7.4)に対して一晩透析した。これらの画分を、Centricon(Amicon、10kDaカットオフ)での限外濾過によって60μlに濃縮し、100%PEGによって25μlに再度濃縮した。
【0114】
カラム由来の画分中のADDL受容体の同定
リガンドとして合成ADDLを使用した。ラット皮質の75μgタンパク質を、コントロールのために、30μlの電気泳動サンプル緩衝液に溶解した。濃縮された画分を、25μlの電気泳動サンプル緩衝液と混合した。電気泳動条件は以下の通りである。4〜20% Tris−HClゲル、120V、室温で1.5時間および冷所で2.5時間。移動:100Vで1時間。ニトロセルロース膜を、5%無脂肪粉乳を含むTBS.T1で一晩ブロッキングし、TBS.T1にて室温で3回×15分間洗浄した。ニトロセルロース膜上のタンパク質を、10nM ADDLを含む10ml F12培地と冷所で3時間インキュベートした。ニトロセルロース膜を、TBS.T1にて室温で3回×15分間洗浄し、一次抗体M71/2(1:4,000)を含む5%ミルク含有TBS.T1と室温で1時間インキュベートした。膜を、TBS.T1にて室温で3回×15分間洗浄し、5%ミルクと共にM71/2に対する二次抗体Igウサギ(1:160,000)と室温で1時間インキュベートし、その後、TBS.T1にて室温で3回×15分間洗浄した。画像を、ECL,Femto Kit(各0.5mlおよび1.0ml水)によって現像した。
【0115】
電気泳動によるp140およびp260の分離
CHT−カラム由来のp140およびp260を含む画分を濃縮し、SDS−PAGEによって分離した。ADDLリガンドブロットのために、コントロールの膜タンパク質をニトロセルロースに移した。他のラインのゲルを、クーマジーブルーR250で染色した。コントロールとの比較後、p140およびp260を切り出し、配列決定のためにミシガン州立大学に送った。
【0116】
LC−MS/MSまたはN末端配列:
LC−MS/MS:SDS−PAGEゲル中のタンパク質を、クーマジーブルーR−250で染色する。バンドを切り出し、ゲル中のタンパク質をトリプシンで消化し、HPLCによってペプチドを溶離および分画し、質量分析計に導入する。Mascotでペプチド配列を検索した。
【0117】
N末端配列:
タンパク質をPVDF膜に移した後、タンパク質をクーマジーブルーR−250で染色した。タンパク質バンドを切り出し、Edman化学によってタンパク質のN末端配列を決定した。
【0118】
p140およびp260と同定された2つのタンパク質がsynGAPと呼ばれるタンパク質およびProSAP/Shankと呼ばれるタンパク質であるとさらに決定した(例えば、米国特許第6,723,838号;Park,E.et al.(2003)J.Biol.Chem.,vol.278,no.21,pp.19220−19229;Roussignol,G.et al.(2005)J.Neurosci.,vol.25,no.14,pp.3560−3570;Sala,C.et al.(2005)J.Neurosci.,vol.25,no.18,4587−4592;Soltau,M.et al.(2004)J.Neurochem.,vol.90,pp.659−665;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。これらは、シナプス後膜肥厚(PSD)中に存在し、種々の受容体およびチャネルを固定する働きをする足場タンパク質である。ADDLは、両方と相互作用するようである。依然として同定されていない他の膜貫通ADDL受容体タンパク質が存在する可能性が高い。このような受容体には、シナプス後膜肥厚(PSD)受容体、グルタミン酸受容体(例えば、mGluR、AMPA、NMDA、GluR2、GluR5、およびGluR6など)、ナトリウム/カリウムATPアーゼ(すなわち、Na+/K-ATPアーゼ)、インテグリン受容体、接着受容体、栄養因子受容体(例えば、トロフィン受容体)、GABA受容体、およびCAMキナーゼなどが含まれ得るが、これらに限定されない(例えば、米国特許第4,975,430号;Wang,Q.et al.(2004)J.Neurosci.,vol.24,no.13,pp.3370−3378;Maj,M.et al.(2003)Neuropharmacol.,vol.45,no.7,pp.895−906;Blanchard,B.J.et al.(2002)Biochem.Biophys.Res.Comm.,vol.293,no.4,pp.1197−1203;Blanchard,B.J.et al.(2002)Biochem.Biophys.Res.Comm.,vol.293,no.4,pp.1204−1208;Allen,J.W.et al.(1999)Neuropharmacol.,vol.38,no.8,pp.1243−1252;Oka,A.& Takashima,S.(1999)Acta Neuropathol.(Berl.),vol.97,no.3,pp.275−278;Copani,A.et al.(1995)Mol.Pharmacol.,vol.47,no.5,pp.890−897;Louzada,P.R.et al.(2001)Neurosci.Lett.,vol.301,pp.59−63;Lavreysen,H.et al.(2003)Mol.Pharmacol.,vol.63,no.5,pp.1082−1093;Conquet,F.et al.(1994)Nature,vol.372,pp.237−243;Battaglia,G.et al.(2001)Mol.Cell.Neurosci.,vol.17,pp.1071−1083;Bruno,V.et al.(2001)vol.21,pp.1013−1033;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【実施例9】
【0119】
synGAP、shank3、およびグルタミン酸受容体
初期アルツハイマー病におけるシナプス
歯状回中のシナプス前部位から放出され、細胞外斑中に沈着するアミロイドβ[ベータ](Aベータ)ペプチドは、シナプス機能に影響を与え得る(例えば、Lazarov,O.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.9785−9793;およびその参考文献を参照のこと)。アルツハイマー病(AD)を罹患していると同定された脳内の新皮質および海馬の多くの領域でシナプス結合性およびシナプス小胞が有意に喪失し、シナプス数およびシナプス機能が変化する(例えば、Scheff,S.W.& Price,D.A.(2003)Neurobiol.Aging,vol.24,pp.1029−1046;Coleman,P.D.& Yao,P.J.(2003)Neurobiol.Aging,vol.24,pp.1023−1027;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。シナプス後膜肥厚は、AD脳で約50%減少する(例えば、Brun,A.et al.(1995)Neurodegeneration,vol.4,pp.171−177;およびその参考文献を参照のこと)。
【0120】
可溶性アミロイドおよびアルツハイマー病
Aβ(Aベータ)は、プラークの不在下でシナプス毒性である(例えば、Mucke,L.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,pp.4050−4058;およびその参考文献を参照のこと)。ニューロン生成前の海馬シナプス有効性の変化およびシナプス機能障害は、アミロイドβタンパク質の拡散性のオリゴマーアセンブリに起因する(例えば、Selkoe,D.J.(2002)Science,vol.298,pp.789−791;およびその参考文献を参照のこと)。β[ベータ]アミロイドペプチド1〜40および1〜42の水溶性オリゴマーは、正常およびアルツハイマー病の脳の大脳皮質中に存在する。AD脳は、コントロール脳より水溶性の高いAβ(Aベータ)を含む(例えば、Kuo,Y.M.(1996)J.Biol.Chem.,vol.271,pp.4077−4081;およびその参考文献を参照のこと)。AD患者由来の可溶性Aベータの濃度は、シナプス喪失と強く相関する(例えば、Lue,L.F.et al.(1999)Am.J.Pathol.,vol.155,pp.853−862;およびその参考文献を参照のこと)。LRPは、Aベータの小さな可溶性形態のプールの調整によってアルツハイマー病に典型的な記憶障害に寄与し得る(例えば、Zerbinatti,C.V.et al.(2004)Proc.Nat’1.Acad.Sci.USA,vol.101,pp.1075−1080;およびその参考文献を参照のこと)。
【0121】
アルツハイマー病におけるADDL
Aベータ(1〜42)の自己アセンブリによって、球状の神経毒性ADDLが形成される(例えば、Chromy,B.A.et al.(2003)Biochemistry,vol.42,pp.12749−12760;およびその参考文献を参照のこと)。ADDLは初期段階のアルツハイマー病のシナプス可塑性を低下させて記憶機能障害と結び付け、それにより、末期に細胞を変性させて認知症を発症する(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;およびその参考文献を参照のこと)。オリゴマーAベータリガンド(ADDL、アミロイドβ由来の拡散性リガンド)は、AD前頭葉皮質で70倍に増加した(例えば、Gong,Y.S.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.100,pp.10417−10422;およびその参考文献を参照のこと)。小Aベータオリゴマーのターゲティングは、アルツハイマー病という難題の解決法であり得る(例えば、Klein,W.L.et al.(2001)Trends Neurosci.,vol.24,pp.219−224;およびその参考文献を参照のこと)。
【0122】
アルツハイマー病におけるグルタミン酸受容体
複数の神経受容体の変化が、アルツハイマー病で存在する。興味深いことに、アルツハイマー病の脳皮質組織中でカイナイト受容体数が増加する一方で、NMDA受容体が減少する。ムスカリン性受容体(M1)、カイナイト受容体、およびCRF受容体は、おそらくアルツハイマー病における変性反応に起因する受容体代償反応を示す(例えば、Guan,Z.Z.et al.(2003)J.Neurosci.Res.,vol.71,no.3,pp.397−406;Nordberg,A.et al.(1992)J.Neurosci.Res.,vol.31,no.1,pp.103−111;Nordberg,A.(1992)Cerebrovasc.Brain Metab.Rev.,vol.4,no.4,pp.303−328;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【0123】
グルタミン酸受容体
グルタミン酸受容体は、7回膜貫通ドメインGタンパク質共役受容体(代謝調節型)およびリガンド依存性イオンチャネル(向イオン性)の両方である。向イオン性受容体は、以下の3つの定義可能なファミリーにクラスター形成する。NMDA型、AMPA型(例えば、GluR1、GluR2、GluR3、およびGluR4)、ならびにカイニン酸型(例えば、GluR5、GluR6、およびGluR7)。これらの受容体は、特定のサブユニットの多量体会合物(associations)であり、最終受容体複合体上に特異的結合ドメインを有する(例えば、Meador−Woodruff,J.H.et al.(2003)Ann.N.Y.Acad.Sci.,vol.1003,pp.75−93;およびその参考文献を参照のこと)。
【0124】
カイニン酸受容体サブユニットの相同性
GluR5は、AMPA受容体サブユニットGluR1−GluR4と約40%の配列相同性を示すクローン化すべき第1のカイニン酸受容体サブユニットであった。別の4つのカイニン酸受容体サブユニット(GluR6、GluR7、KA1、およびKA2)を、その構造相同性および[3H]カイニン酸塩に対する親和性に基づいて、2つの群に分類することができる。カイニン酸受容体複合体は、5つの異なるタンパク質サブユニット(KA1およびKA2(高親和性カイニン酸を好む)およびGluR5−GluR7(低親和性カイニン酸を好む)が含まれる)から形成される。低親和性サブユニット(GluR5−GluR7)は約75%相同である一方で、高親和性サブユニット(KA1およびKA2)は約68%相同である。GluR5−GluR7とKAl/KA2との間の相同性は、約45%と遥かに低い。AMPA受容体サブユニットと同様に、各カイニン酸受容体サブユニットは、相対分子量(Mr)が約100kDaの約900個のアミノ酸を含む(例えば、Chittajallu,R.et al.(1999)Trends Pharmacol.Sci.,vol.20,no.l,pp.26−35;およびその参考文献を参照のこと)。
【0125】
カイニン酸受容体および長期増強(LTP)
カイニン酸受容体は、海馬中の苔状線維シナプスでの長期増強(LTP)の誘導で役割を果たす。カイニン酸受容体ノックアウトマウスでは、GluR6を欠くマウスでLTPが減少するが、GluR5(カイニン酸受容体サブユニット)では減少しない。これらの事実は、GluR6サブユニットを含むカイニン酸受容体が苔状線維シナプス強度の調整因子であることを証明している(例えば、Contractor,A.et al.(2001)Neuron,vol.29,pp.209−216;およびその参考文献を参照のこと)。
【0126】
グルタミン酸受容体、synGAP、およびシナプス後膜肥厚(PSD)
向イオン性受容体および代謝調節型受容体の両方の場合、両受容体型と特異的に会合するシナプス後膜肥厚に会合する細胞内タンパク質が同定された。PSD95は、NMDA(NR2)およびGluR5,6/KA2と特異的に会合する(例えば、Meador−Woodruff,J.H.et al.(2003)Ann.N.Y.Acad.Sci.,vol.1003,pp.75−93;Hirbec,H.et al.(2003)Neuron,vol.37,pp.625−638;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【0127】
PSD95およびNMDA受容体との巨大な高分子複合体中に存在する場合、SynGAPは脳内で選択的に発現し、興奮性シナプスで高度に富化される。synGAPは、RasのGTPアーゼ活性を刺激するので、興奮性シナプスでのRas活性を負に調節することが示唆される。シナプス後膜でのRasシグナル伝達は、NMDA受容体およびニューロトロフィンによる興奮性シナプス伝達の調整に関与し得る。(例えば、Kim,J.H.et al.(1998)Neuron,vol.20,pp.683−691;およびその参考文献を参照のこと)。興奮性シナプスのシナプス後膜で、神経伝達物質受容体は巨大タンパク質の「シグナル伝達機構」(情報処理および記憶の形成に寄与するシナプス後膜肥厚)に付着する(例えば、Kennedy,M.B.(2000)Science,vol.290,pp.750−754;Walikonis,R.S.et al.(2000)J.Neurosci.,vol.20,no.11,pp.4069−4080;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【0128】
興奮性シナプスでは、シナプス後足場タンパク質であるシナプス後膜肥厚95(PSD95)により、NMDA受容体(NMDAR)をRas GTPアーゼ活性化タンパク質synGAPと共役させる(例えば、Komiyama,N.H.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.972109732;およびその参考文献を参照のこと)。synGAPによるシナプスRasシグナル伝達の調節は適切なニューロン発達およびグルタミン酸受容体輸送に重要であり、LTPの誘導に重要である。変異マウスでは、synGAPによってRasを適切に調節することなく、シナプスでのRasの活性化により、Rasシグナル伝達を増加させることができる(MAPキナーゼカスケードの活性化が含まれる)(例えば、Kim,J.H.et al.(2003)J.Neurosci.,vol.23,pp.1119−1124;およびその参考文献を参照のこと)。synGAPはまた、ERK/MAPKシグナル伝達を調節する(例えば、Komiyama,N.H.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.972109732;およびその参考文献を参照のこと)。CaMKIIによるsynGAPの阻害により、GTP結合Rasの不活化が停止され、NMDA受容体の活性化の際に海馬ニューロン中で分裂促進因子活性化タンパク質(MAP)キナーゼ経路を活性することができる(例えば、Chen,H.J.et al.(1998)Neuron,vol.20,pp.895−904;Komiyama,N.H.et al.(2002)J.Neurosci.,vol.22,pp.972109732;および上記のいずれかにおける参考文献などを参照のこと)。
【0129】
ADDL、shank3、およびグルタミン酸受容体
ニューロン細胞では、Shankタンパク質はシナプス後膜肥厚(PSD)に局在し、シナプス後シグナル伝達機能を皮質細胞骨格に関連させることによって樹状突起棘の形態を調節することが示されている(Naisbitt et al.,1999;Tu et al.,1999;Sheng and Kim,2000;Sala et al.,2001;Boeckers et al.,2002)。グルタミン酸受容体は、シナプス後シグナル伝達機構の鍵となる要素であり、shankタンパク質は、PSD−95、GKAP、およびタンパク質のホーマーファミリーなどの他のPSD足場タンパク質を介してmGluRとGluRとの間の結合を確立する。ADDLは、ProSAP2/shank3(海馬シナプトソームから単離され、質量分析によって同定されたp260タンパク質バンド)に結合することができる。shank3と群ImGlu受容体(mGluR1およびmGluR5)との複合体へのADDL結合により、mGluシグナル伝達を誘発し、それにより、LTPを妨害することができる(Wang et al.,2004)。
【0130】
ADDLおよびLTP
ADDLは、初期アルツハイマー病においてシナプス可塑性を低下させてLTPを阻害し、末期に細胞を変性させて認知症を発症させることができる(例えば、Lambert,M.P.et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.95,pp.6448−6453;およびその参考文献を参照のこと)。アミロイドβタンパク質のオリゴマーは、潜在的にインビボで海馬の長期増強を阻害する(例えば、Walsh,D.M.et al.(2002)Nature,vol.416,pp.535−539;およびその参考文献を参照のこと)。Aベータの可溶性オリゴマー(1〜42)は、ラット歯状回における長期増強を阻害するが、長期低下を阻害しなかった(例えば、Wang,et al.(2002)Brain Res.,vol.924,pp.133−140;およびその参考文献を参照のこと)。
【0131】
他の基礎的情報には、以下が含まれるが、これらに限定されない:米国特許第6,811,992号;米国特許第6,723,838号;米国特許第6,653,102号;米国特許第6,515,107号;米国特許第6,500,624号;米国特許第6,228,610号;米国特許第6,221,609号;米国特許第6,051,688号;米国特許第6,040,175号;米国特許第6,033,865号;米国特許第5,912,122号;米国特許第5,888,996号;米国特許第5,783,575号;米国公開特許番号第2003/0176651号;Fleck,M.W.et al.(2003)J.Neurosci.,vol.23,no.4,pp.1219−1227;Meldrum,B.S.(2000)J.Nutr.,vol.130,pp.1007S−1015S;Senkowska,A.& Ossowska,K.(2003)Pol.J.Pharmacol.,vol.55,no.935−950;Ronnback,L.& Hansson,E.(2004)J.Neuroinflammation,vol.1,no.1,pp.22−30;Lee,J.−M.et al.(2000)J.Clin.Invest.,vol.106,no.6,pp.723−731;and Tao,H.W.et al.(2001)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,vol.98,no.20,pp.11009−11015;および上記の全てにおける参考文献などを参照のこと。
【0132】
2つのタンパク質(p140およびp260)は、高親和性でADDLに結合することができ、これらは共に皮質および海馬のみで見出される。質量分析(MS)データから、p140由来の55個のペプチドがPSD中でsynGAPと適合する。p140の分子サイズは、synGAPの分子サイズと近似する。免疫細胞化学実験では、ADDL「ホットスポット」は、synGAPと同時局在化する。ADDLを最初にニトロセルロース上でp140とインキュベートする場合、ADDLは、synGAPへのN末端特異的抗体の結合を遮断することができる。しかし、類似の条件下で、ADDLは、synGAPへのC末端特異的抗体の結合を遮断することができない。これにより、ADDLはsynGAPのN末端またはN末端付近でsynGAPに結合することができる可能性が高く、N末端抗体の1又は複数のエピトープを遮断または被覆することができることが証明される。(例えば、Lacor,P.et al.(2004)J.Neurosci.,vol.24,pp.10191−10200;およびその参考文献を参照のこと)。
【0133】
synGAPおよびグルタミン酸受容体の相同配列
synGAP(配列番号_)およびグルタミン酸受容体(配列番号_)との間の以前に認識されていない配列相同性を本明細書中に開示する。
【化10】
(「|」は、2配列間の同一アミノ酸を示し、「^」は、グルタミン酸受容体中の特異的リガンド結合アミノ酸を示す。)
【0134】
ClustalWアルゴリズムを使用して同一領域をアラインメントする場合、アラインメントは以下である。
【化11】
(コンセンサス中の「*」は同一アミノ酸を示し、「:」は非常に類似したアミノ酸を示し、「.」は類似性の低いアミノ酸を示す)
【0135】
同一のGluR5前駆体タンパク質領域の配列(N.C.B.I Entrez Proteinでのアクセッション番号P39086)をアラインメントに加える場合、類似の相同性が存在する。
【化12】
(同様に、コンセンサス中の「*」は同一アミノ酸を示し、「:」は非常に類似したアミノ酸を示し、「.」は類似性の低いアミノ酸を示す。)
【0136】
この相同性は、グルタミン酸受容体のリガンド結合領域に局在し、ADDLがグルタミン酸受容体中の相同配列に結合し、それにより、LTPを阻害することを示し得る。Armstrong,N.et al.(1998)Nature,vol.395,pp.913−917)に示すようにキナーゼに結合したグルタミン酸受容体(GluR2 S1S2)の結晶構造の表示を考慮すると、グルタミン酸受容体とsynGAPとの間の相同領域は、GluR2 S1S2結晶構造のJヘリックス付近に存在するであろう。
【0137】
図21(パネルA〜C)は、ヒトsynGAP(N.C.B.I.Entrez Proteinでのアクセッション番号NP 006763およびQ96PVO)、ヒトグルタミン酸受容体2前駆体(N.C.B.I.Entrez Proteinでのアクセッション番号P42262)、およびヒトグルタミン酸受容体6イソ型1前駆体(N.C.B.I.Entrez Proteinでのアクセッション番号NP 068775)の配列のClustalWアラインメントの結果を示す。NPS@:Network Protein Sequence Analysis,Combet,C.et al.(2000)TIBS,vol.25,no.3,pp.147−150によって配列アラインメントを行った(<http://npsa−pbil.ibcp.fr/egi−bin/npsa_automat.pl?page=npsa_clustalw.html>;最終閲覧日2004年12月15日)。
【0138】
グルタミン酸およびグルタミン酸受容体リガンド(CNQXおよびNS−102)は、樹状受容体へのADDL結合を遮断する。
【0139】
図22のパネルAおよびBに示すように、グルタミン酸およびグルタミン酸受容体リガンド(CNQXおよびNS−102)の添加によってシナプス後局在受容体または受容体の複合体へのADDL結合を遮断することができる。結果としてADDL結合が減少するのは、ADDLが1又は複数のグルタミン酸受容体に直接結合するか、グルタミン酸受容体リガンドがグルタミン酸受容体を介した変化を誘導し、それにより、ADDLに対するADDL受容体の結合親和性が減少するからである。
【0140】
グルタミン酸受容体は、2つのクラス(代謝調節型および向イオン性)に分類される。シナプス後部位に局在する群ImGlu受容体はmGluR1およびmGluR5であり、ADDLがこれらの受容体またはこれらの受容体および他のシナプス後膜肥厚固定タンパク質を含む複合体に直接結合する可能性が高い。
【0141】
向イオン性グルタミン酸受容体(GluR)は、イオンチャネルにゲーティングし、AMPAおよびカイナイト受容体が含まれる。これらは、GluR1−4サブユニットおよびGluR5−7サブユニットをそれぞれ含む四量体アセンブリである。機能的四量体チャネル内の異なるサブユニットの正確な組み合わせにより、特定の結合特性およびイオン輸送特性が決定される。ADDLは、グルタミン酸リガンドによるシナプス結合の遮断を考慮してAMPA受容体に結合する可能性が最も高いが、GluRとのリガンド結合によって誘発されるADDL受容体の高次構造の変化およびその後のADDL受容体に及ぼす間接的影響によってADDL受容体へのADDLの結合を間接的に遮断することもできる。
【0142】
ADDLは、シナプス後膜肥厚固定タンパク質SHANK3(mGluR5受容体と直接相互作用することが公知のタンパク質)に結合することが公知である。
【0143】
海馬細胞へのADDL結合に及ぼすGluR遮断剤の影響についての免疫蛍光試験。
以前の実験は、一部がADDLと同時局在化したGluR6およびシナプトソームへのADDL結合を少なくとも一部遮断するグルタミンを示した。したがって、GluR遮断剤がニューロン細胞へのADDL結合を遮断する能力を評価した。
【0144】
海馬細胞を、ポリ−L−リジンをコーティングしたスライドガラス上にプレートし、Saraによって25日間成長させた。Daliyaによって9/21/04に濃度54.2μMのADDLを作製した。培養皿にL−グルタミン酸(5mM)、NS−102(50μM)、CNQX(100μM)を添加するか何も添加せず、その直後にADDL(0.5μM)を添加し、37℃で15分間インキュベートした。コントロールとして1つの皿に媒体を添加した。培地への同体積の3.7%ホルムアルデヒドの添加によって細胞を5分間固定し、その後、全ての固定培地溶液を除去し、10分間のみ3.7%ホルムアルデヒドと置換した。細胞を、PBSで4回リンスし、次いで、PBS:10%NGSと8℃で一晩インキュベートした。細胞を、PBS:NGSで希釈した20C2(1:1000)にて室温で3時間免疫標識した。細胞を、PBSで4回リンスし、次いで、PBS:NGSで希釈したAlexa Fluor 488抗マウス(1:500)と室温で3時間インキュベートした。細胞をPBSで5回リンスし、ProLong anti−fadeマウンティング培地を使用してマウントした。細胞を、MetaMorphを備えたNikonで視覚化した。結果:CNQXおよびグルタミン酸は、海馬細胞へのADDL結合を選択的に減少させる。NS−102は、ADDL結合をいくらか減少させる。
【0145】
グルタミン酸は、興奮性神経伝達で重要な役割を果たし、且つLTP生成および正常な脳機能に必要な3つの主な向イオン性受容体クラスおよび3つの主な代謝調節型受容体クラスのリガンドである(Meldrum 2000)。グルタミン酸はまた、神経変性からの防御で主な役割を果たす2つのグリア型輸送体(GLASTおよびGLT)および3つの神経輸送体(EAAC1、EAAT4および5)に結合する(Kanai and Hediger 2003)。
【0146】
グルタミン酸は、高親和性(例えば、高親和性Na+依存性グルタミン酸輸送体(Km=5〜20μM))から低親和性(低親和性グルタミン酸輸送体(1〜2mM))までの範囲の種々の親和性でその基質と結合する(表1を参照のこと)。
【0147】
5mMグルタミン酸は、ニューロンへのADDL結合を阻害することができる。高濃度は、ADDLが、グルタミン酸が同一部位に結合する親和性よりもはるかに高い親和性を有することを意味する。
【0148】
【表1】
【0149】
海馬細胞へのADDL結合に及ぼすグルタミン酸受容体(GluR)遮断剤の影響についての免疫蛍光試験
前文で開示したように、図23が海馬培養物中のニューロンへの点状ADDL結合(前にシナプス結合であると示されている)は、グルタミン酸およびCNQX(AMPAおよびキナーゼ型グルタミン酸受容体の公知のアンタゴニスト)によって遮断されることを示す。前の実験により、GluR6がADDLと一部同時局在化し、グルタミンがシナプトソームへのADDL結合を少なくとも一部遮断することが示されている。したがって、GluR遮断剤が細胞へのADDL結合を遮断することができるかどうかを決定するための試験に取り掛かった。海馬細胞を、標準的な条件下で25日間成長させた。培養培地を含む個別の皿にL−グルタミン酸(5mM)、CNQX(100μM)、NS−102(50μM)、メマンチン(50μM)を添加するか何も添加せず、その直後にADDL(0.1μM)を添加し、37℃で15分間インキュベートした。コントロールとして1つの皿に媒体を添加した。細胞を固定し、ADDL(20C2)に特異的なモノクローナル抗体およびその後にAlexa Fluor 488抗マウス抗体で免疫標識した。細胞を、落射蛍光アタッチメントおよびMetaMorph画像化ソフトウェアを備えたNikon Optiphotを使用して視覚化した。データは、グルタミン酸およびCNQXがADDL結合の遮断で有効であり、NS−102は部分的遮断を示し、メマンチンはADDL結合に及ぼす影響はごく小さいことを示す。
【0150】
パニングアッセイにおいて、5mMグルタミン酸は、100nM ADDLの約75%のシナプトソームへの結合を遮断/防止する
パラメーター:シナプトソームを、グルタミン酸、ADDL、および20C2モノクローナル抗体に連続的に結合させ、抗マウスIgGでコーティングしたアッセイプレートウェル中でインキュベートし、20C2抗体について探索した。
【0151】
原理:本明細書中に開示されるように、GluR6とSynGAPとの間には配列相同性が存在する。ADDLがグルタミン酸受容体に結合することが可能である。したがって、グルタミン酸を使用してADDL結合を遮断することができるかどうかを決定した。
【0152】
処置:ヤギ抗マウスIgG(Fcフラグメント特異的(Jackson))を、50mM Tris−HCI(pH 9.5)で10mg/mlに希釈し、100ml/ウェル(1mg)をImmulon 4 Removawellストリップ(Dynatech Labs)に室温で7時間結合させた。非結合部位を、200ml 2%BSAを含むTBS(20mM Tris−HCI(pH 7.5)、0.8%NaCl)にて室温で10分間の遮断を3回行った。シナプトソームを、1ml/チューブの1%BSAを含むF12と混合し、4℃にて5,000gで5分間遠心分離し、各ペレットを1mlのBSA/F12で洗浄し、1ml BSA/F12に再懸濁した。シナプトソームを分割し、1つのチューブに5mMグルタミン酸を含む1mlのBSA/F12を添加し、室温で2時間インキュベートした。非結合グルタミン酸を、1mlのBSA/F12で3回洗浄した。シナプトソームを再度分割し、100nM ADDLを含むBSA/F12をグルタミン酸に結合しているシナプトソームおよび結合していないシナプトソームに添加し、37℃で1時間インキュベートした。上記のようにサンプルをペレット化し、1ml BSA/F12で3回洗浄した。各ペレットを、1.52mgモノクローナル20C2 IgGを含む1ml BSA/F12に再懸濁した。サンプルを、回転震盪器にいれ、4℃で2時間インキュベートした。上記のようにサンプルをペレット化し、1ml BSA/F12で3回洗浄した。各ペレットを、220ml BSA/F12に再懸濁し、100ml/ウェルを準備したアッセイプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした。ウェルを200mlのBSA/TBSで10分間の洗浄を3回行った。HRP結合抗マウスIgG(Amersham)をBSA/TBSで2000倍に希釈し、100ml/ウェルを室温で1時間インキュベートした。上記のBSA/TBSでの洗浄および流れているdH2Oでの3回のリンス後、100 ml/ウェルのBio−Radペルオキシダーゼ基質を使用して結合を視覚化した。室温で発色させ、Dynex MRX Microplate Readerにて405nmを読み取った。統計:データは、2つの値の平均として示し、エラーバーはSEMを示す。
【0153】
結果:図24に示すように、ADDLで標識していないシナプトソームは、低バックグラウンド結合を示した。反復洗浄および遠心分離に起因するシナプトソームのいくつかの劣化にもかかわらず、ADDLに結合したシナプトソームは、15分および30分で良好なシグナルを示した(30分のデータを示す)。グルタミン酸が存在する場合、ADDLシグナルがかなり減少する(約75%)。
【0154】
確証:パニングアッセイにおいて、グルタミン酸の存在は、シナプトソームへのADDL結合に影響を及ぼす。いかなる1つの可能な機構にも拘束されないが、1又は複数のグルタミン酸受容体へのADDL結合を直接遮断することができるか、グルタミン酸はADDL受容体に影響を与え、そして/または修飾することができる。本明細書全体に開示のように、これらの結果は、グルタミン酸とADDL結合が関連することを示す。
【0155】
アルツハイマー病を治療するためのsynGAP/グルタミン酸受容体の配列相同性
本明細書中に開示のsynGAPとグルタミン酸受容体との間の相同配列を使用して、ADDLの神経毒性の遮断によってアルツハイマー病を治療することができる。本明細書中に開示の相同配列を含むペプチドおよびタンパク質フラグメントなどを使用して、ニューロンへのADDLの結合を遮断し、それにより、アルツハイマー病を防止または治療することができる。
【0156】
抗ADDL治療薬の標的は、グルタミン酸受容体(カイニン酸、AMPA、およびNMDAサブタイプが含まれる)を含み得る。GluR6サブタイプ(いわゆるカイニン酸受容体)は、synGAPとの配列相同性を有する受容体サブタイプを例示する。他の配列相同性もAMPA受容体(例えば、GluR2)およびNMDA受容体内に存在する。
【実施例10】
【0157】
ADDL−シナプトソーム結合
シナプトソームパニングは、ADDL結合がシナプトソーム濃度に依存することを示す
パラメーター:シナプトソームを、ADDLおよびモノクローナル20C2抗体で連続的に標識し(例えば、2004年10月25日出願の米国特許第60/621,776号を参照のこと)、抗マウスIgGでコーティングしたアッセイプレートウェル中でインキュベートし、20C2抗体について探索した。
【0158】
原理:前のシナプトソームパニングの結果は、ADDLで標識したシナプトソームを抗体コーティングウェル中で補足することができることを示した。時折、バックグラウンド蛍光シグナルが存在したが、おそらくプレートの選択に起因する(すなわち、ELISAプレートではない)。
【0159】
処置:ヤギ抗マウスIgG(Fcフラグメント特異的(Jackson))を、50mM Tris−HCI(pH 9.5)で10mg/mlに希釈し、100ml/ウェル(1mg)をImmulon 3 Removawellストリップ(Dynatech Labs)に室温で7時間結合させた。非結合部位を、200ml 2%BSAを含むTBS(20mM Tris−HCI(pH 7.5)、0.8%NaCl)にて室温で10分間の遮断を3回行った。シナプトソームを、1ml/チューブの1%BSAを含むF12と混合し、4℃にて5,000gで5分間遠心分離し、各ペレットを1mlのBSA/F12で洗浄し、1ml BSA/F12に再懸濁した。チューブにADDL(50nM、100nM、および200nM)を添加し、シナプトソームを37℃で1時間インキュベートした。上記のようにサンプルをペレット化し、1ml BSA/F12で3回洗浄した。各ペレットを、420mlのBSA/F12に再懸濁し、200mlアリコートを1.52mgモノクローナル20C2 IgGを含む800ml BSA/F12と混合した。サンプルを、回転震盪器にいれ、4℃で2時間インキュベートした。上記のようにサンプルをペレット化し、1ml BSA/F12で3回洗浄した。各ペレットを、220ml BSA/F12に再懸濁し、100ml/ウェルを準備したアッセイプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした。BSA/F12で希釈したモノクローナル20C2(1.5〜15ng/100ml)も準備したウェル中でインキュベートした。ウェルを200mlのBSA/TBSで10分間の洗浄を3回行った。HRP結合抗マウスIgG(Amersham)をBSA/TBSで2000倍に希釈し、100ml/ウェルを室温で1時間インキュベートした。上記のBSA/TBSでの洗浄および流れているdH2Oでの3回のリンス後、100 ml/ウェルのBio−Radペルオキシダーゼ基質を使用して結合を視覚化した。室温で発色させ、Dynex MRX Microplate Readerにて405nmを読み取った。
【0160】
結果:図25に示すように、ADDLおよび20C2で標識したシナプトソームは、抗マウスIgGコーティングアッセイプレートに結合するようであった。シナプトソームコントロールはいかなるシグナルも示さなかった。20C2は、抗マウスIgGコーティングアッセイプレートへの良好な線形結合を示した。80mg/ウェルで予想されるような飽和は認められなかった。統計:データは、2つの値の平均として示し、エラーバーはSEMを示す。
【0161】
確証:これらの結果は、本明細書中に開示の他の情報をさらに支持する。
【実施例11】
【0162】
ADDL−シナプトソーム結合
シナプトソームを固定するためのコレラ毒素サブユニットBの使用は、ADDLおよびシナプトソーム濃縮依存性結合を示す
パラメーター:アッセイプレートウェルを、コレラ毒素サブユニットBでコーティングした。シナプトソームが結合され、ADDLおよび20C2抗体を使用して視覚化した。
【0163】
原理:以前の手順は、シナプトソームの有意なプロセシングを含み、シナプトソームを喪失させ、且つ時間がかかる。CT−Bが脂質ラフトに結合するので、これは、アッセイウェルにシナプトソームを固定するための代替法であり得る。
【0164】
処置:コレラ毒素サブユニットB(CT−B,Sigma)を、TBS(20mM Tris−HCI(pH 7.5)、0.8%NaCl)で10mg/mlに希釈し、100ml/ウェル(1mg)をImmulon 4 Removawellストリップ(Dynatech Labs)に冷所で一晩結合させた。非結合部位を、200ml 2%BSAを含むTBS(20mM Tris−HCI(pH 7.5)、0.8%NaCl)にて室温で10分間の遮断を3回行った。シナプトソームを、4℃にて5,000gで5分間遠心分離し、1mlのBSA/F12で2回洗浄し、BSA/F12に再懸濁した。シナプトソームを適切な体積に希釈し、0、10、20、40、および80mg/ウェルをウェルに添加し、シナプトソームを4℃で1時間結合させた。シナプトソームを、200mlのBSA/F12で3回洗浄する。ADDLを希釈し(10nM、50nM、および100μnM)、ウェルに添加し、37℃で1時間結合させた。上記のように、サンプルをBSA/F12で洗浄した。モノクローナル20C2IgG(1.52mg/ml)をBSA/F12で1000倍希釈し、100ml/ウェルを準備したアッセイプレートに添加した。プレートを4℃で2時間インキュベートした。サンプルを、上記のようにBSA/F12で洗浄した。HRP結合抗マウスIgG(Amersham)をBSA/FTBSで2000倍に希釈し、100ml/ウェルを室温で1時間インキュベートした。上記のBSA/TBSでの洗浄および流れているdH2Oでの3回のリンス後、100 ml/ウェルのBio−Radペルオキシダーゼ基質を使用して結合を視覚化した。室温で発色させ、Dynex MRX Microplate Readerにて405nmを読み取った。統計:データは、2つの値の平均として示し、エラーバーはSEMを示す。
【0165】
結果:図26に示すように、吸光度は、ADDL濃度およびシナプトソーム濃度に依存する。2連のウェルは、1つのデータポイント以外は、良好な再生性を示した。
【0166】
確証:CT−Bを使用して、シナプトソームを固定することができる。
【実施例12】
【0167】
ADDL−シナプトソーム免疫沈降
抗ADDLモノクローナル抗体(20C2)でコーティングした磁性ビーズを使用したADDL処置シナプトソームの免疫沈降
シナプトソームを、ADDLまたは媒体を含むF12/FBS(F12培地、5%FBS)とインキュベートした。処置したシナプトソームを、抗ADDLモノクローナル抗体(Dyna−20C2)を含むF12/FBSでコーティングした磁性ビーズを使用して免疫沈降を行った。標準的なウェスタンブロットで抗PSD95抗体を使用して、異なる画分中のシナプスマーカーの存在を評価した。
【0168】
パラメーター:Dyna−20C2を使用してADDL処置シナプトソームを免疫沈降する。
【0169】
根拠:ADDLに特異的なM71/2抗体を使用して得た以前の情報を、抗ADDLモノクローナル抗体(20C2)を使用して確認した。さらに、20C2は、生物活性を示す高分子量のADDLを認識する。したがって、20C2は、本明細書中に開示の他の情報を与えられたシナプトソームへのADDL結合を認識すると予想されるであろう。
【0170】
処置:シナプトソームとのADDLのインキュベーション:標準的なプロトコールにしたがって、シナプトソームを調製した。75μgのシナプトソームを、300nM ADDL(2.5μl ADDL 1/10/05)または賦形剤を含む500μl F12/FBS(F12培地、5%FBS)と回転しながら4℃で3時間インキュベートした。溶液中のADDLを除去するために、サンプルを、5000gにて4℃で10分間遠心分離し、1ml F12/FBSで5分間の洗浄を3回行った。上清を4℃で保存した。Dyna−20C2を使用した免疫沈降:製造者によって提供された手順にしたがって、DynabeadsM−500subcellularを、20C2でコーティングした。処置したシナプトソームを、300μlのF12/FBSに再懸濁した。0.250mgのDyna−M71.2をPBS中で洗浄し、シナプトソームに添加し、これらを回転させながら4℃で一晩インキュベートした。磁石でビーズを取り出した。ビーズを、1ml F12/FBSで12分間の洗浄を9回および1ml F12での12分間の洗浄を2回行った。上清を、「非結合」および「洗浄」として保存した。ペレット(「結合」)を、50μl SLB中に溶解した。「非結合」、「W1」、および「W2」を、20,000gで20分間遠心分離し、そのペレットを、60μl SLBに溶解させた。免疫ブロッティング:15μlの各サンプルを、4〜20%のTris−グリシンゲルにロードした。ゲルを、180Vで45分間泳動し、100V、4℃で1時間ニトロセルロース膜に移した。膜を、5%ミルクを含むTBS−Tにて室温で1時間ブロッキングし、PSD95抗体と室温で1時間インキュベートした。PSD95(ABRのMA1−045):1:4,000マウス−HRP:1:50,000。膜を、TBS−T中で10分間の洗浄を3回行い、抗マウスIgG−HRPと室温で1時間インキュベートした。TBS−Tで10分間の洗浄を3回行った後、ゲルを高感度化学発光(ECL)を使用して発色させた。
【0171】
結果:図27に示すように、PSD95を、ADDL−シナプトソームの結合画分中で検出することができるが、媒体−シナプトソームでは検出できない。
【0172】
確証:ADDL−シナプトソームを、20C2を使用して免疫沈降を行うことができる。
【実施例13】
【0173】
皮質PSDへのADDL結合
パラメーター:単離皮質PSDおよび/またはAZへのADDLの結合を評価する
【0174】
原理:ファーウェスタンブロットおよびAnt2.041の実験では、ADDLは、PSDに結合するが、活性帯に結合しないようである。単離PSDまたはAZをADDLとインキュベートし、YM−100で濾過した。
【0175】
処置:シナプトソームの分画:皮質シナプトソームを、少し修正した標準的な手順にしたがって調製した(例えば、Phillips et al.Neuron,vol.32,pp.63−77を参照のこと)。900μgシナプトソームを、5mlの0.1mM CaCl2で希釈し、浸透圧溶解を30分間行った。混合物を、20mM Tris(pH6)および1%TX−100(5ml溶液2×)に入れ、膜を氷中で30分間可溶化した。不溶性物質(シナプス接合部)を、30,000gで45分間の遠心分離によってペレット化した。シナプス接合部(SJ)を、3.5mlの20mM Tris(pH8.8)および1% TX100(Triton X−100)に再懸濁した。4℃で一晩のインキュベーション後、サンプルを40,000gで45分間遠心分離した(TLA 1300ローターにて25krpm)。ペレットは、PSDを含んでいた。上清を、O.1mM CaCl2、20mM Tris(pH6)、および1%TX−100に対して透析し(3×10時間)、上記のように40,000gで45分間遠心分離した。このペレットは、活性帯(AZ)を含んでいた。AZおよびPSDを、プロテアーゼインヒビターを含む30μl TBS中に再懸濁した。サンプルを短時間超音波処理し、BSAアッセイを使用してタンパク質濃度を得た。両サンプルについて3μg/μl。ELISA:少し修正した標準的プロトコルにしたがってELISAを行った。0.25、0、5、1、2.5、または5μgのサンプルをコーティングしたウェルを、100μl TBS+2%BSA(TBS/BSA)中に4℃で一晩溶解した。プレートを、200μl TBS/BSAにて室温で20分間のブロッキングを3回行った。100nM ADDLを、100μl TBS−T/BSAを含む各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。プレートを、TBS−Tでの室温で10分間の洗浄を3回行った。検出のために、1000倍希釈したM71/2ポリクローナル抗体(ADDL特異的)を含む100μlのTBS−T/BSAを使用した。室温で1時間インキュベートし、200μl TBS−Tにて室温で10分間の洗浄を3回行った。2000倍希釈のウサギ−HRP(Amersham)を、二次抗体として100μl TBS−T中で使用した。室温で1時間インキュベートし、200μl TBS−Tにて10分間の洗浄を3回行った。100μlの新たに調製したHRP基質(Bio−Radの「ペルオキシダーゼ基質キット」172−1064)を添加し、室温で45分間発色させた。色を、405nmで測定した。ネイティブウェスタンブロット(WB):9μgのPSDまたは活性帯を、15μlネイティブサンプル緩衝液中に溶解し、Tris−グリシン 4〜20%ゲルにロードした。β−メルカプトエタノール、サンプルのボイル、および泳動緩衝液中のSDSを使用しなかった。ゲルを100Vで泳動し、4℃、120Vで1.5時間ニトロセルロース膜に移した。移動後、膜を、5%ミルクを含むTBS−Tにて室温で1時間ブロッキングし、一次抗体(Ab)と4℃で一晩インキュベートした。PSD95(ABR−Affinity BioReagents−のMAI−045):1:4,000、マウス−HRP:1:50,000。Syntaxin(CHEMICONのMAB336):1:4,000、マウス−HRP:1:10,000。TBS−T中で10分間の洗浄を3回行い、抗マウスIgG−HRPと室温で1時間インキュベートした。TBS−T中で10分間の洗浄を3回行った後、ゲルをECLで発色させた。
【0176】
結果:図28のパネルAおよびBに示すように、ADDLは、PSDのみに結合し、AZに結合しない。活性帯およびPSDは共に、本明細書中に記載の調製後(すなわち、超音波処理)に多タンパク質複合体として残存する。したがって、これらは、ネイティブゲル電気泳動のウェル中に残存し、ゲルマトリクスに侵入することができない。
【実施例14】
【0177】
生化学的および細胞生物学的測定で使用するためのビオチン標識ADDLの形成
図29に示すように、ADDLへのビオチンの組み込みにより、LMWおよびHMWオリゴマーが産生される。ビオチン−Aベータ(1〜42)により、ストレプトアビジン結合試薬を使用してADDLが直接検出される。
【0178】
図29を参照すると、ビオチン−ADDL(すなわち、b−ADDL、B−ADDL、および/またはBADDL)は、三量体/四量体およびHMWアセンブリにオリゴマー化する。1:4の比率でAベータを使用した場合、ビオチン−Aベータ(1〜42)により、ADDLアセンブリの正確なプロフィールが得られる(例えば、米国特許第6,218,506号などを参照のこと)。1×PBS(w/o CaおよびMg)中にて37℃で1時間の100μMの総ペプチド(20μMビオチン化、80μM未変性)のインキュベーションにより、時間0での新たなペプチド単量体希釈物と比較して、可溶性オリゴマーが有意に形成される。HFIP蒸発およびDMSO再懸濁後にF−12組織培養培地の代わりに希釈剤としてPBSを使用した標準的なADDL調製法を使用して1mlのサンプルを生成した。図中の実線の曲線は、220nmでのペプチドおよびペプチドアセンブリの吸光度を示す。これらの曲線を、室温で1×PBS(w/o CaおよびMg)を含むSuperdex−200HR 10/30カラムに流速0.5ml/分で注入した300μlのサンプルの吸光度のモニタリングによって得た。Unicornソフトウェアを使用してAKTA基本クロマトグラフィシステムを操作し、データを収集した。点線の曲線は、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)によって決定した分子量(MW)値を示す。Wyatt Technologies DAWN EOS MALLS装置を、HPLCカラムおよび吸収フローセルとオンラインで接続し、Optilab rEX装置を使用して、溶離種のタンパク質濃度を決定した。Wyatt Technologies’のASTRA Vソフトウェアを使用して、MWプロフィールを記録し、フィッティングした。時間0における新たな単量体サンプルで認められるように、単量体に対応するMWが、約20〜19分で溶離された第2のピークで認められた。1時間のサンプルは、有意にオリゴマー化した。8ml〜15mlに有意に軌跡を描く第1のピークは、100万ダルトンから10万ダルトンまでの範囲の種を含む。むしろ単量体ペプチドを主に含む第2のピークは、三量体および四量体の範囲の種を含む。単量体MWは約4800Daであり、1時間のサンプルは、15000〜20000の範囲の低分子量(LMW)オリゴマーを含み、これらの種の安定な形成を示す。
【0179】
ビオチン標識ADDLと同様に、フルオレセイン標識ADDLがアセンブリする(データ示さず)。
【実施例15】
【0180】
ビオチンで標識されたADDLの特徴づけ
パラメーター:ビオチンかおよび非標識Ab1〜42の混合物由来のADDLを、SECによって分画し、ネイティブおよびSDS−PAGEウェスタンブロットによって分析し、ビオチン標識またはモノクローナル6E10抗体および20C2抗体を使用して探索した。
【0181】
原理:ビオチン化ADDLは、抗体と無関係の別の研究用ツールを提供する。ビオチン標識がオリゴマーのアセンブリ、構造、または機能に影響を与えるかどうかを調査するためにビオチン化Ab1〜42を使用して産生されたADDLを分析する必要がある。
【0182】
処置:2つのペプチドのHFIP溶液の混合および一晩の風乾、その後のSavantSpeed−Vac乾燥機での乾燥によって、ビオチン化および非標識Ab1〜42の混合物(1:4.7 mol:mol)からADDLを調製した。HFIPフィルムを約5mMにDMSOに溶解し、氷冷F12で約100μMに希釈し、短時間ボルテックスし、4℃で一晩静置した。サンプルを、14,000gにて4℃で10分間遠心分離し、清潔なチューブに移した。タンパク質濃度を、BSA標準を使用したCoomassie Plusタンパク質アッセイ(Pierce)によって決定した。ビオチン化ADDLを、Superdex75HR/10/30カラムによるSECに供し、画分を、ドットブロットによってビオチン標識について分析した。ビオチン化ADDLおよびSEC画分を、F12およびネイティブサンプル緩衝液(最終濃度は以下の通りである。5mM Tris−HCl(pH6.8)、38.3mMグリシン、10%グリセロール、0.017%ブロモフェノールブルー)またはTricineサンプル緩衝液(Bio−Rad)で希釈し、PAGEによって分析した(銀染色用の約60pmolまたはウェスタンブロット用の約20pmol)。比較のために非標識ADDLを泳動した。ネイティブゲル(10%Tアクリルアミド、5%C分離ゲル)は、5mM Tris、38.4mMグリシン(pH 8.3)(Betts et al.(1999)Meth.Enzymol.,vol.309,pp.333−350)の泳動緩衝液を120Vにて4℃で約3時間使用した。SDSゲル(10〜20%Tris−Tricineプレキャストゲル、Bio−Rad)を、Tris/グリシン/SDS緩衝液(Bio−Rad)を使用して120Vにて室温で80分間泳動した。Tricineゲルプロトコールを使用し、SilverXpress銀染色キット(Invitrogen)を使用して銀染色を行った。あるいは、ゲルを、25mM Tris−192mMグリシン、20% v/vメタノール(pH 8.3)を使用して、ゲルをHybondECLニトロセルロース上に100Vにて4℃で1時間エレクトロブロッティングを行った。ブロットを、5%ミルクを含むTBS−T(0.1%Tween−20を含む20mM Tris−HCI(pH7.5)、0.8%NaCl)にて室温で1時間ブロッキングした。
【0183】
ビオチンプローブ:アビジン−ビオチン化HRP複合体(Vectastain ABC standard kit;Vector Labs)を、試薬AおよびBの5%ミルク/TBS−Tでの500倍希釈および室温で30分間のプレインキュベーションによって形成させた。ブロットを、予め形成させた複合体と1時間インキュベートし、TBS−Tでの10分間の洗浄を3回行い、dH20で2回リンスし、SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity基質(Pierce;ddH2Oでの1:1希釈)で発色させ、Kodak Image Stationで読み取った。
【0184】
免疫染色:モノクローナル抗Ab(6E10,Signet)または抗ADDL(20C2;M.Lambert;IgG PV02−109,1.52 mg/ml)を、ミルク/TBSで1000倍希釈し、ブロットと室温で90分間インキュベートした。TBS−Tで10分間の洗浄を3回行った後、ブロットを、HRP結合抗マウスIg(ミルク/TBSTで40,000倍希釈;Amersham)と室温で90分間インキュベートした。ブロットを、TBS−Tで10分間の洗浄を3回行い、dH2Oで2回リンスし、SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity基質(Pierce;ddH2Oでの1:1希釈)で発色させ、Kodak Image Stationで読み取った。
【0185】
結果:ビオチン化ADDLは、非標識ADDLを使用して前に認められたSECプロフィールと類似のSECプロフィールを有する(図30、左上のパネル)。ビオチン標識についてのドットブロットは、280nmで読み取った吸光度と類似のプロフィールを示す。ビオチン標識のためのプローブを使用したSEC画分のネイティブPAGEウェスタンブロット(図30、右上のパネル)は、ピーク1のオリゴマーよりも遅く移動する。主なネイティブ種のほとんど(*)およびより速く移動するバンドはピーク2に存在していた。ピーク3の画分は染色されなかった。SDS−PAGE後のビオチン化ADDLの銀染色は、非標識ADDLと類似のパターンを示した(図30、左下のパネル)。ビオチン化ADDL中に約52kDaの単一の小さなバンドが存在した。ビオチン化および非標識ADDLのSDS−PAGE後のウェスタンブロット(図30、右下のパネル)は、ビオチンについてのプローブの特異性を示した。6E10および20C2は共にビオチン化および非標識ADDLについて類似の免疫染色パターンを示した。銀染色物中の約52kDaのバンドは、いかなるウェスタンブロットでも認められない。
【0186】
確証:ビオチン化および非標識Ab1〜42の混合物は、ネイティブゲルおよびSDSゲルの両方で典型的な電気泳動プロフィールのADDLを形成する。ビオチン標識の探索により、抗体と共に得られるエピトープ特異的免疫染色と無関係に、種々のオリゴマー種の分布を検出することができる。ビオチン化ADDLも、非標識ADDLと類似のパターンでサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)にて分画される。
【0187】
参考文献
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【0188】
本書類で言及した特許、特許出願、ならびに任意の他の科学文献および技術文献は、これらが矛盾しない範囲で引用により組み入れられる。
【0189】
本発明の好ましい実施形態の上記開示は、例示および説明を目的として示している。厳密な形態または開示の形態は網羅的でなく、本発明を制限することを意図しない。意図する特定の用途に合わせる場合に当業者が種々の実施形態および種々の修正形態で本発明を最良に実施することができるようにするために本発明の原理およびこれらの原理の実際の適用を最良に説明するために説明を選択した。意図する特定の用途に適している。本発明の範囲は、明細書によって制限されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】Aβオリゴマーが細胞外にニューロンを取り囲んで沈着しており、アルツハイマー病の大脳皮質で非常に増加している。AD脳の前頭葉の切片を、M94抗体を使用してADDLについて免疫標識し、蛍光またはペルオキシダーゼ抱合二次抗体(それぞれ、AおよびB)のいずれかで視覚化した。両方の標識条件における単一のピラミッド型のニューロンの細胞体周囲の拡散したシナプス型標識に留意のこと。非認知症のコントロールではIR沈着は認められない(示さず)。画像AおよびB中のスケールバーは、10μmを示す。(C)は、ADと診断された9人の被験体(黒塗りの記号)またはADと診断されなかった15人の被験体(白抜きの記号)の2つの脳領域[皮質(四角)および小脳(三角)]由来のドットブロットによって測定された可溶性Aβレベルの散布図を示す。脳サンプルを、ドットブロット(挿入図)によってアッセイし、デンシトメトリーによって分析した。各ポイントは、2つの測定の相対強度の平均であれる。バーは、各群の平均を示す(AD皮質:2.281+/−0.202;CTL皮質:0.206+/−0.083;AD小脳:0.263+/−0.090およびCTL小脳:0.097+/−0.013;値は、平均+/−SEMを示す)。このプロットは、AD皮質中のAβレベルの散乱がコントロール皮質よりも大きく、コントロールよりも有意に高い(p<0.0001、AD対CTL)ことを示す。しかし、小脳について、ADとCTLの間のAβレベルの相違は明白でなく、あまり有意ではなかった(p=0.1316、AD対CTL)。Mann−Whitney検定を使用し、GraphPad InS(登録商標)tat3ソフトウェアを使用して、有意性を試験するための片側検定のp値を確立した。
【図2】AD脳由来のAβオリゴマー(ADDL)は、点状の特異性を有するニューロンに結合する。一次海馬ニューロンを、AD前頭葉(A)またはAD CSF(E)由来の可溶性抽出物と30分間インキュベートした。いくつかの培養物を、年齢適合コントロールの皮質抽出物(B)またはCSF(F)とインキュベートした。いくつかの実験では、海馬ニューロンを、同様に、10kDa〜100kDaとの間の質量の種(C)または10kDa以下の質量の種(D)を含むCentricon分画可溶性AD抽出物(方法を参照のこと)をインキュベートした。非結合種を洗い流し、ADDLの付着を、ウサギポリクローナルオリゴマー特異的M94抗体を使用した非透過処理免疫標識条件下で評価した(Lambert et al.,2001に記載)。AD脳(A)およびCSF(E)由来の可溶性抽出物は、点状に分布してニューロン表面に選択的に結合するADDLを含む。年齢適合コントロール由来の皮質抽出物(B)およびCSF(F)で標識は検出されなかった。10kDa〜100kDaの質量範囲の種を含むAD抽出物のCentricon(登録商標)フィルター分画物は、非分画可溶性抽出物と区別可能な点状の染色を示す一方で、10kD以下の質量の種を含む画分には結合種は存在しなかった。3つの独立した実験で同様の所見が得られた。
【図3】合成ADDL(しかし、低分子量でない種)は、AD由来の種と同様に、ニューロンに結合する。一次海馬ニューロンを、Centricon(登録商標)フィルター(A、B)によって分画された合成ADDLまたはサイズ排除クロマトグラフィ(E、F)によって分離したビオチン化ADDLと30分間インキュベートした(Chromy et al.,2003に記載)。新鮮な培地での洗浄による非結合種の除去後、細胞結合ADDLを、M94およびAlexa−488抱合抗ウサギ二次抗体(A、B)またはAlexa488抱合ストレプトアビジン(E、F)を使用した非透過処理免疫標識条件下で評価した。共焦点画像は、いくつかの細胞体への結合も明らかであるにも関わらず、オリゴマーの免疫反応性がニューロンの原形質膜および主に樹状分枝(dendritic arbor)内に存在することを証明する。点状の結合は受容体クラスターを連想させ、アルツハイマー病のAβオリゴマーの受容体クラスターに類似している(図2)。AD脳由来の分画された可溶性オリゴマーと同様に、100〜10kDの範囲の合成ADDL種との海馬ニューロンのインキュベーションは免疫反応の点を示す一方で(A)、10kDa以下の種(単量体および二量体を含むであろう)は示さない(B)。(挿入図)海馬ニューロンとの6時間のインキュベーション後の培養培地中に存在するADDLのウェスタンブロットにより、ADDLが安定であり、且つ100kDaより高い分子量の種を含まないことが証明された(C)。レーンは、2つの異なる培養培地を示す。Superdex 75におけるサイズ排除クロマトグラフィによるビオチン化ADDL(約14nmolの70μM ADDL調製物)の分離により、2つのピークが得られた(D)。溶離体積対280nmでの吸光度のヒストグラムは、16.9mAUで吸収を示す8.1mlでのピーク1および11.7mAUで吸収を示す13.9mlでのピーク2を示した。それぞれのタンパク質濃度が6.5μMおよび4μMである画分B1およびD6を、(ピーク1と2との間で採取した)SECコントロール画分と並行して500nMの最終濃度で成熟海馬細胞と1時間インキュベートした。ビオチン化種の結合を、Alexa−Fluor488抱合ストレプトアビジンを使用して検出した。ピーク1の画分B1(E)で蛍光のホットスポットが排他的に認められ、これは、十二量体などの50kDaを超える分子量の種と一致する。ピーク2の画分D6(F)またはコントロール画分(示さず)では蛍光は認められなかった。共焦点顕微鏡設定(レーザー出力、フィルター、検出器の感度、増幅率、および増幅補正)を常時使用して共焦点画像を得た。画像は、3つの異なる実験の代表である。スケールバーは、40μmを示す。
【図4】ADDL結合は細胞特異的である。二重標識免疫蛍光研究を、マウスモノクローナル抗αCaMキナーゼIIおよびウサギポリクローナル抗ADDL(M94)を使用して、成熟海馬ニューロン(21 DIV)に対して行い、Alexa Fluor 594(赤)二次抗体およびAlexa Fluor 488(緑)二次抗体でそれぞれ視覚化した(A、B)。類似の二重標識実験を、マウスモノクローナル抗PSD−95(C、赤)および抗ADDL(緑)を使用して行った。z軸方向の共焦点スキャン(0.5μm間隔で取り込む)による三次元再構築画像の重ね合わせ(B、C)は、ADDLがいくつかのαCaMキナーゼII陽性ニューロンに選択的に結合する(重複により黄色が出現する)ことを示した(ここでは、ADDLとの6時間のインキュベーション後に示した)。PSD−95標識を使用して、類似の細胞選択性が認められた。2つのニューロンのうちの1つのみがADDLによってターゲティングされることに留意のこと。30分のインキュベーション後にADDLとαCaMキナーゼIIまたはPSD−95陽性ニューロンとの間の類似の細胞特異的結合および同時局在化が認められた(示さず)。スケールバーは、20μmを示す。
【図5】ADDLは、PSD−95陽性末端のサブセットを特異的にターゲティングする。ADDLで処置した海馬ニューロンを、PSD−95(赤、A)およびADDL(緑、B)で二重免疫標識した。再構築したz軸方向の共焦点スキャンの重ね合わせは、組み合わせた画像における黄色の点の量によって認められるように、ADDL−IR点の樹状クラスターがPSD−95とほとんど完全に同時局在化していることを示す(C)。ADDLとPSD−95との間の同時局在化の程度を、Metamorphソフトウェアを使用して定量した。棒グラフは、14の異なる視野についてのADDLによってターゲティングされたPSD−95数(E)およびPSD−95と同時局在化したADDL結合部位数(F)を示す(40倍の対物レンズ)。グラフ(E)は、多数のPSD−95部位がADDLによって占有されていないことを示す(黄色のバー:ADDLと同時局在化したPSD−95;赤色のバー:ADDLを含まないPSD−95)(1視野あたりの平均総オリゴマー結合部位は、1062+/−125であった;PSD−95と同時局在化した平均オリゴマー部位は、971+/−105であった)。グラフ(F)は、各視野についてのPSD−95シナプス部位に局在したADDL点の比率を示す。PSD−95部位でのADDL数(黄色のバー)は、非シナプス部位でのADDL数(緑色)よりも遥かに多かった。円グラフは、ADDLによって占められるPSD−95画分(G)およびPSD−95と同時局在化したADDL結合部位画分(H)を示す、全視野をまとめた分布を示す。結果を、14の異なる全視野についての平均+/−SEMとして示す(1視野あたりの総部位の平均は1960+/−174であり、50+/−2%はオリゴマー結合部位に結合しなかった)。まとめると、PSD−95点の半分はADDLによってターゲティングされる(G)が、90%を超えるADDL点はPSD−95と同時局在化する(H)。分析により、ADDLがシナプス部位に特異的に局在することが立証される。スケールバーは、10μmを示す。(挿入図;D)シナプス前マーカー(シナプトフィジン)(赤色)が重なり合うよりもむしろ並列しているADDL(緑色)を示す海馬ニューロンの画像。
【図6】樹状突起棘へのADDL結合部位の局在化。合成ADDLで1時間処置した高度に分化した海馬細胞(21 DIV)を、ADDL(緑色)およびαCaMキナーゼII(赤色)について二重免疫標識した。ADDL結合αCaMキナーゼII陽性ニューロンを描写する(A)。高倍率の画像は、多数のADDL−IR点がαCaMキナーゼII富化樹状突起棘と同時分布していることを示す(B)。矢印で示すように、ADDLは主に樹状突起棘をターゲティングした。画像は、3つの異なる試験の代表である。スケールバーは、40μm(A)および8μm(B)を示す。
【図7】最初期遺伝子Arcの急速なADDL誘導性シナプス発現。海馬ニューロンを、合成ADDLに5分間曝露し、その後、Arc(赤色)およびADDL(緑色)について標識する。画像の組み合わせは、ADDL点とArc陽性シナプスとの同時局在化点を示す(黄色)。スケールバーは、8μmを示す。
【図8】ADDLは、Arcの上方制御の維持を促進する。賦形剤(A、C)またはADDL(B、D)で1時間(A、B)または6時間(C、D)処置した海馬細胞を固定し、透過処理し、Arcタンパク質について標識した。免疫蛍光により、ニューロンサブセットの樹状突起および樹状突起棘全体でADDL誘導性のArc発現が非常に増加することが明らかになった。賦形剤処置細胞では、Arc発現はニューロン細胞体に限定される。挿入図は、Arcポリクローナル抗体を使用したSDS−PAGE後に免疫ブロッティングを行った賦形剤(−)またはADDL(+)で1時間処置した海馬細胞由来の抽出物を示す。免疫ブロットは、賦形剤処置(−)細胞抽出物と比較して、ADDL処置(+)細胞抽出物でのArc濃度の増加を示す。サイロフィリンB(cylophilin B)(シクロ)を使用して、タンパク質ローディングに関して正規化し、Arc/シクロIR比は、コントロールで0.70+/−0.11であり、オリゴマー処置サンプルでは3.51+/−0.76であった(n=4、t検定を使用してp=0.01(対応する2サンプルについての平均値))。ブロットは、4つの独立した実験の代表である。また、海馬細胞を、賦形剤(C)またはADDL(D)で6時間処置し、透過処理し、Arcについて標識した。賦形剤処置ニューロンの高倍率の共焦点画像は、Arc−IR点が樹状軸(dendritic shaft)に局在していることを示し、少数の棘の頭部(head)のみが樹状軸で見出された強度レベルよりも高い強度レベルに到達している。ADDL処置ニューロンの樹状突起は、樹状突起棘の頭部に集中した強いArc−IRの点パターンおよび樹状軸および棘全体に上方制御されたArc−IRを示す。一次抗体についてのコントロールは標識されなかった。3つの独立した試験で同一の結果が得られた。スケールバーは、20μm(A、B)および6μm(C、D)を示す。
【図9】ADDL誘導性シナプス不全および記憶喪失における仮説に基づくArcの役割。実施例1の考察の部を参照のこと。
【図10】成熟Ca++/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼIIα(CaMKIIα)陽性海馬ニューロン(桃色−赤色)の樹状突起の枝部(dendritic branch)上のAβ可溶性オリゴマーの蛍光分布(緑色)を示す共焦点免疫蛍光画像。Aβ可溶性オリゴマーは、CaMKIIαを高度に発現する樹状突起棘を特異的にターゲティングした(重複は黄色である)。ボックスは、樹状突起棘の拡大図を示す。
【図11−1】受容体−ADDLの付加および同時局在化。
【図11−2】受容体−ADDLの付加および同時局在化。
【図12】ADDL曝露後にNR2B膜発現が減少する。
【図13】ADDLでの海馬ニューロン処置の経時変化により、スピノフィリン免疫蛍光(IF)強度および棘の形態によってモニタリングしたところ、一過性シナプス後応答が得られる。
【図14】Erb−B4 IF染色強度は、ADDL曝露の1時間後に増加する。
【図15】(パネルAおよびB):ELISAアッセイにおいて、ADDLはシナプス後膜肥厚(PSD)に結合するが、活性帯に結合しない。
【図16】(パネルAおよびB):CNQXはシナプトソームへのADDLの結合を遮断する。CNQXは、シナプトソームに結合したADDLの量を減少させる。
【図17】(パネルAおよびB):CNQXはシナプトソームへのADDLの結合を遮断する。CNQXは、ADDL免疫沈降(IP)中のPSD95を減少させる。
【図18】CNQXは、ニューロン表面へのADDLの結合を遮断する。
【図19】パネルA:区画分析を使用した対象物(Object)の同定。チャネル1は核染色を示し(DAPI)、チャネル2はMAP2抗体を使用したニューロン染色を示し、チャネル3は抗ADDL抗体を使用したADDL染色を示す。ニューロンのみがDAPI陽性核およびMAP2陽性細胞体の両方を含む。ニューロン中の近位樹状突起へのADDL結合の平均強度を測定する(チャネル3中の緑色のピクセル)。パネルB:一次海馬ニューロンへのADDL結合の定量。ウェル1−10、13−22、25−34、および37−42中でADDLに曝露したニューロンは、賦形剤コントロールウェルよりも非常に強いADDL結合を示すニューロンの比率がはるかに高い。
【図20】一次海馬ニューロンへのADDL結合。ストレプトアビジンにカップリングしたアルカリホスファターゼを使用したニューロン細胞に結合したビオチン化ADDL量の増加の検出。
【図21A】標準的な手順によるヒトsynGAP、ヒトGluR2前駆体、およびヒトGluR6前駆体のClustalW配列アラインメント。
【図21B】標準的な手順によるヒトsynGAP、ヒトGluR2前駆体、およびヒトGluR6前駆体のClustalW配列アラインメント。
【図21C】標準的な手順によるヒトsynGAP、ヒトGluR2前駆体、およびヒトGluR6前駆体のClustalW配列アラインメント。
【図22】グルタミン酸およびグルタミン酸受容体リガンドCNQXおよびNS−102は、樹状突起受容体へのADDL結合を遮断する。
【図23】海馬細胞へのADDL結合に及ぼすグルタミン酸受容体(GluR)遮断薬の影響についての免疫蛍光試験。
【図24】パニングアッセイにおいて、グルタミン酸塩はシナプトソームへのADDL結合を遮断する。
【図25】シナプトソームパニングは、ADDL結合がシナプトソーム濃度に依存することを示す。
【図26】シナプトソームを免疫化するためのコレラ毒素サブユニットBの使用は、ADDLおよびシナプトソーム濃度依存性結合を示す。
【図27】ADDL−シナプトソーム免疫沈降。シナプトソームを、ADDLまたは賦形剤を含むF12/FBS(F12培地、5%FBS)とインキュベートした。処置したシナプトソームを、抗ADDLモノクローナル抗体(Dyna−20C2)でコーティングした磁性ビーズを含むF12/FBSを使用して免疫沈降を行った。異なる画分中のシナプスマーカーの存在を、標準的なウェスタンブロットで抗PSD95抗体を使用してアッセイした。
【図28】ADDLはPSDに結合するが、皮質シナプトソームの活性帯に結合しない。
【図29】ビオチン標識ADDLの特徴づけ。ビオチン化ADDL(b−ADDL)は、低分子量(LMW)ピーク中に出現する。
【図30】パネルA:ビオチン化および非標識Ab1−42の混合物由来のADDLを、SECにて分画し(ADDL31、左上のパネル)、ピーク画分を、ビオチン標識のプローブを使用したネイティブ−PAGEウェスタンブロットによって分析した(右上のパネル)。パネルB:ビオチン化および非標識Ab1−42の混合物由来のADDLをSDS−PAGEに供し、銀染色(左下のパネル)およびウェスタンブロット(右下のパネル)によって分析した。ブロットを、ビオチンについて探索するか、モノクローナル抗体で免疫染色した(6E10および20C2)。比較のために非標識ADDLを含んでいた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体であって、ADDLと結合する1又は複数の受容体を含む組成物。
【請求項2】
前記1又は複数の受容体がsynGAPである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1又は複数の受容体がproSAP2/Shank3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記1又は複数の受容体がグルタミン酸受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記受容体がカイニン酸サブタイプグルタミン酸受容体である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記受容体がGluR6である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記受容体がAMPAサブタイプグルタミン酸受容体である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記受容体がGluR2である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記受容体がmGluR1aである、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
前記受容体がmGluR1bである、請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
前記受容体がmGluR1cである、請求項4に記載の組成物。
【請求項12】
前記受容体がmGluR1dである、請求項4に記載の組成物。
【請求項13】
前記受容体がmGluR5aである、請求項4に記載の組成物。
【請求項14】
前記受容体がmGluR5bである、請求項4に記載の組成物。
【請求項15】
前記受容体がNMDAサブタイプグルタミン酸受容体である、請求項4に記載の組成物。
【請求項16】
前記受容体がインテグリン受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記受容体が接着受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記受容体がNCAMである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記受容体がL1である、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記受容体がカドヘリンである、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記受容体が栄養因子受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記受容体が線維芽細胞成長因子受容体1である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記受容体が線維芽細胞成長因子受容体2である、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記受容体がTrkA受容体である、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記受容体がTrkB受容体である、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
前記受容体がerbB4である、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
前記受容体がerbB/EGF受容体ファミリーの近接な(close)ホモログである、請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
前記受容体がトロフィン(trophin)に結合する、請求項21に記載の組成物。
【請求項29】
前記受容体がインスリン受容体(IR)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記受容体がインスリン成長因子受容体1(IGF−1)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
前記受容体がGABA受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
前記受容体がナトリウム/カリウムATPアーゼ(Na+/K-ATPアーゼ)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
前記受容体がCAMキナーゼIIである、請求項1に記載の組成物。
【請求項34】
前記受容体がPrPタンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項35】
前記受容体が受容体タンパク質チロシンホスファターゼα(RPTPα)タンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
前記受容体がソマトスタチン受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項37】
前記受容体がカンナビノイド受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項38】
前記受容体がσ受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項39】
前記受容体がVIP/PACAL受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項40】
ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を含む、組成物。
【請求項41】
請求項40に記載の組成物を含む医薬調製物。
【請求項42】
シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を阻害する1又は複数の化合物を含む、組成物。
【請求項43】
前記1又は複数の化合物がCNQXである、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
ADDL関連疾患の処置方法であって、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を投与する工程を含む方法。
【請求項45】
前記ADDL関連疾患がアルツハイマー病(AD)を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ADDL関連疾患が軽度認知障害(MCI)を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記ADDL関連疾患がダウン症候群を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記1又は複数の化合物が、CNQXまたはCNQXの医薬として許容される誘導体である、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記1又は複数の受容体がsynGAPである、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記1又は複数の受容体がproSAP2/Shank3である、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記1又は複数の受容体がグルタミン酸受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記受容体がカイニン酸サブタイプグルタミン酸受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記受容体がGluR6である、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
前記受容体がAMPAサブタイプグルタミン酸受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項55】
前記受容体がGluR2である、請求項44に記載の方法。
【請求項56】
前記受容体がmGluR1aである、請求項44に記載の方法。
【請求項57】
前記受容体がmGluR1bである、請求項44に記載の方法。
【請求項58】
前記受容体がmGluR1cである、請求項44に記載の方法。
【請求項59】
前記受容体がmGluR1dである、請求項44に記載の方法。
【請求項60】
前記受容体がmGluR5aである、請求項44に記載の方法。
【請求項61】
前記受容体がmGluR5bである、請求項44に記載の方法。
【請求項62】
前記受容体がNMDAサブタイプグルタミン酸受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項63】
前記受容体がインテグリン受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項64】
前記受容体が接着受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項65】
前記受容体がNCAMである、請求項44に記載の方法。
【請求項66】
前記受容体がL1である、請求項44に記載の方法。
【請求項67】
前記受容体がカドヘリンである、請求項44に記載の方法。
【請求項68】
前記受容体が栄養因子受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項69】
前記受容体が線維芽細胞成長因子受容体1である、請求項44に記載の方法。
【請求項70】
前記受容体が線維芽細胞成長因子受容体2である、請求項44に記載の方法。
【請求項71】
前記受容体がTrkA受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項72】
前記受容体がTrkB受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項73】
前記受容体がerbB4である、請求項44に記載の方法。
【請求項74】
前記受容体がerbB/EGF受容体ファミリーの近接なホモログである、請求項44に記載の方法。
【請求項75】
前記受容体がトロフィンに結合する、請求項44に記載の方法。
【請求項76】
前記受容体がインスリン受容体(IR)である、請求項44に記載の方法。
【請求項77】
前記受容体がインスリン成長因子受容体1(IGF−1)である、請求項44に記載の方法。
【請求項78】
前記受容体がGABA受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項79】
前記受容体がナトリウム/カリウムATPアーゼ(Na+/K-ATPアーゼ)である、請求項44に記載の方法。
【請求項80】
前記受容体がCAMキナーゼIIである、請求項44に記載の方法。
【請求項81】
前記受容体がPrPタンパク質である、請求項44に記載の方法。
【請求項82】
前記受容体が受容体タンパク質チロシンホスファターゼα(RPTPα)タンパク質である、請求項44に記載の方法。
【請求項83】
前記受容体がソマトスタチン受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項84】
前記受容体がカンナビノイド受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項85】
前記受容体がσ受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項86】
前記受容体がVIP/PACAL受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項87】
ビオチン標識ADDLを含む、組成物。
【請求項88】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLを含む、組成物。
【請求項89】
抗体によって認識される1又は複数のエピトープを含むADDLを含む、組成物。
【請求項90】
前記エピトープがペプチド配列である、請求項88に記載の組成物。
【請求項91】
前記エピトープが有機小分子である、請求項88に記載の組成物。
【請求項92】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートである、組成物。
【請求項93】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、前記サロゲートが、内部βシートを形成することができる特定の構造エレメントを含むペプチドまたはペプチド模倣物を含み、前記形成によって、請求項1に記載のADDL受容体に結合することができるオリゴマーへのアセンブリが可能となる、組成物。
【請求項94】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、内部C末端βシートを形成することができる特定の構造エレメントを含むペプチドまたはペプチド模倣物を含む組成物であって、前記形成によって、請求項1に記載のADDL受容体に結合することができるオリゴマーへのアセンブリが可能となる、組成物。
【請求項95】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、モチーフ:
【化1】
(式中、Zは、グリシル−グリシル、プロリル−グリシル、グリシル−プロリル、またはβターンを形成することができる任意の他のジペプチドもしくはジペプチド模倣物または任意の他のβターン模倣物であり、Xは任意のアミノ酸またはアミノ酸模倣物である)を含むペプチドまたはペプチド模倣物を含み、その存在によって内部βシートを形成することができ、その形成によって、請求項1に記載のADDL受容体に結合することができるオリゴマーへのアセンブリが可能となる、組成物。
【請求項96】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、請求項1に記載のADDL受容体に結合することができるオリゴマーにアセンブリすることができるジペプチド官能化βターン模倣物を含む、組成物。
【請求項97】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化2】
(式中、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基である)を含み、前記ペプチドがオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーが請求項1に記載のADDL受容体に結合することができる、組成物。
【請求項98】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化3】
(式中、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基であり、Xは任意の疎水性アミノ酸である)を含み、前記ペプチドがオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーが請求項1に記載のADDL受容体に結合することができる、組成物。
【請求項99】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化4】
(式中、Rは任意のペプチドであり、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基である)を含み、前記ペプチドが、請求項1に記載のADDL受容体に結合することができるオリゴマーにアセンブリすることができる、組成物。
【請求項100】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化5】
(式中、Rは任意のペプチドであり、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基であり、Xは任意の疎水性アミノ酸である)を含み、前記ペプチドが、請求項1に記載のADDL受容体に結合することができるオリゴマーにアセンブリすることができる、組成物。
【請求項101】
蛍光標識ADDLを含む、組成物。
【請求項102】
前記蛍光標識がフルオレセインである、請求項100に記載の組成物。
【請求項103】
前記蛍光標識がテトラメチルローダミンである、請求項100に記載の組成物。
【請求項104】
前記蛍光標識がAlexa(登録商標)色素である、請求項100に記載の組成物。
【請求項105】
シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を妨害する化合物のスクリーニング方法であって、
a)ADDLを生成する工程と、
b)工程a)で生成したADDLを、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、
c)シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合に及ぼす1又は複数の化合物の影響を測定する工程と
を含む、方法。
【請求項106】
前記ADDLがビオチン標識ADDLである、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記ADDLが蛍光標識ADDLである、請求項104に記載の方法。
【請求項108】
1又は複数の請求項1に記載の受容体に結合した場合にADDLを認識する抗体を検出に使用する、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
組成物が1又は複数の請求項1に記載の受容体に結合する場合、請求項91に記載の組成物内のビオチンを認識するアビジンまたはストレプトアビジンを検出に使用する、請求項104に記載の方法。
【請求項110】
前記検出によって抗ADDL抗体を認識する蛍光標識二次抗体に会合した蛍光量を測定する、請求項104に記載の方法。
【請求項111】
検出によって酵素−抗体抱合体または酵素−ストレプトアビジン抱合体によって生成された蛍光シグナルまたは発光シグナルを測定する、請求項104に記載の方法。
【請求項112】
シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する化合物の同定方法であって、
a)ADDLサロゲートを生成する工程と、
b)工程a)で生成したADDLサロゲートを、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、
c)シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合に及ぼす1又は複数の化合物の影響を測定する工程と
を含む、方法。
【請求項113】
シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する化合物の同定方法であって、
a)ADDLサロゲートを生成する工程と、
b)工程a)で生成したADDLサロゲートを、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、
c)抗arc抗体を使用して、ニューロン内で産生されたarcタンパク質量を測定する工程と
を含む、方法。
【請求項114】
シナプス後膜肥厚へのADDL結合を測定する方法であって、
a)ADDLを生成する工程と、
b)工程a)で生成したADDLを、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、
c)シナプス後膜肥厚へのADDL結合に特徴的な点状の結合を測定する工程と
を含む、方法。
【請求項115】
シナプス後膜肥厚へのADDL結合を妨害する化合物の同定方法であって、
a)ADDLを生成する工程と、
b)工程a)で生成したADDLを、シナプス後膜肥厚へのADDLの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、
c)シナプス後膜肥厚へのADDL結合に特徴的な点状の結合に及ぼす1又は複数の化合物の影響を測定する工程と
を含む、方法。
【請求項1】
ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体であって、ADDLと結合する1又は複数の受容体を含む組成物。
【請求項2】
前記1又は複数の受容体がsynGAPである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1又は複数の受容体がproSAP2/Shank3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記1又は複数の受容体がグルタミン酸受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記受容体がカイニン酸サブタイプグルタミン酸受容体である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記受容体がGluR6である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記受容体がAMPAサブタイプグルタミン酸受容体である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記受容体がGluR2である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記受容体がmGluR1aである、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
前記受容体がmGluR1bである、請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
前記受容体がmGluR1cである、請求項4に記載の組成物。
【請求項12】
前記受容体がmGluR1dである、請求項4に記載の組成物。
【請求項13】
前記受容体がmGluR5aである、請求項4に記載の組成物。
【請求項14】
前記受容体がmGluR5bである、請求項4に記載の組成物。
【請求項15】
前記受容体がNMDAサブタイプグルタミン酸受容体である、請求項4に記載の組成物。
【請求項16】
前記受容体がインテグリン受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記受容体が接着受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記受容体がNCAMである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記受容体がL1である、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記受容体がカドヘリンである、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記受容体が栄養因子受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記受容体が線維芽細胞成長因子受容体1である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記受容体が線維芽細胞成長因子受容体2である、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記受容体がTrkA受容体である、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記受容体がTrkB受容体である、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
前記受容体がerbB4である、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
前記受容体がerbB/EGF受容体ファミリーの近接な(close)ホモログである、請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
前記受容体がトロフィン(trophin)に結合する、請求項21に記載の組成物。
【請求項29】
前記受容体がインスリン受容体(IR)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記受容体がインスリン成長因子受容体1(IGF−1)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
前記受容体がGABA受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
前記受容体がナトリウム/カリウムATPアーゼ(Na+/K-ATPアーゼ)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
前記受容体がCAMキナーゼIIである、請求項1に記載の組成物。
【請求項34】
前記受容体がPrPタンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項35】
前記受容体が受容体タンパク質チロシンホスファターゼα(RPTPα)タンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
前記受容体がソマトスタチン受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項37】
前記受容体がカンナビノイド受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項38】
前記受容体がσ受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項39】
前記受容体がVIP/PACAL受容体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項40】
ニューロンのシナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を含む、組成物。
【請求項41】
請求項40に記載の組成物を含む医薬調製物。
【請求項42】
シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を阻害する1又は複数の化合物を含む、組成物。
【請求項43】
前記1又は複数の化合物がCNQXである、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
ADDL関連疾患の処置方法であって、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を拮抗する1又は複数の化合物を投与する工程を含む方法。
【請求項45】
前記ADDL関連疾患がアルツハイマー病(AD)を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ADDL関連疾患が軽度認知障害(MCI)を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記ADDL関連疾患がダウン症候群を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記1又は複数の化合物が、CNQXまたはCNQXの医薬として許容される誘導体である、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記1又は複数の受容体がsynGAPである、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記1又は複数の受容体がproSAP2/Shank3である、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記1又は複数の受容体がグルタミン酸受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記受容体がカイニン酸サブタイプグルタミン酸受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記受容体がGluR6である、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
前記受容体がAMPAサブタイプグルタミン酸受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項55】
前記受容体がGluR2である、請求項44に記載の方法。
【請求項56】
前記受容体がmGluR1aである、請求項44に記載の方法。
【請求項57】
前記受容体がmGluR1bである、請求項44に記載の方法。
【請求項58】
前記受容体がmGluR1cである、請求項44に記載の方法。
【請求項59】
前記受容体がmGluR1dである、請求項44に記載の方法。
【請求項60】
前記受容体がmGluR5aである、請求項44に記載の方法。
【請求項61】
前記受容体がmGluR5bである、請求項44に記載の方法。
【請求項62】
前記受容体がNMDAサブタイプグルタミン酸受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項63】
前記受容体がインテグリン受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項64】
前記受容体が接着受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項65】
前記受容体がNCAMである、請求項44に記載の方法。
【請求項66】
前記受容体がL1である、請求項44に記載の方法。
【請求項67】
前記受容体がカドヘリンである、請求項44に記載の方法。
【請求項68】
前記受容体が栄養因子受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項69】
前記受容体が線維芽細胞成長因子受容体1である、請求項44に記載の方法。
【請求項70】
前記受容体が線維芽細胞成長因子受容体2である、請求項44に記載の方法。
【請求項71】
前記受容体がTrkA受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項72】
前記受容体がTrkB受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項73】
前記受容体がerbB4である、請求項44に記載の方法。
【請求項74】
前記受容体がerbB/EGF受容体ファミリーの近接なホモログである、請求項44に記載の方法。
【請求項75】
前記受容体がトロフィンに結合する、請求項44に記載の方法。
【請求項76】
前記受容体がインスリン受容体(IR)である、請求項44に記載の方法。
【請求項77】
前記受容体がインスリン成長因子受容体1(IGF−1)である、請求項44に記載の方法。
【請求項78】
前記受容体がGABA受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項79】
前記受容体がナトリウム/カリウムATPアーゼ(Na+/K-ATPアーゼ)である、請求項44に記載の方法。
【請求項80】
前記受容体がCAMキナーゼIIである、請求項44に記載の方法。
【請求項81】
前記受容体がPrPタンパク質である、請求項44に記載の方法。
【請求項82】
前記受容体が受容体タンパク質チロシンホスファターゼα(RPTPα)タンパク質である、請求項44に記載の方法。
【請求項83】
前記受容体がソマトスタチン受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項84】
前記受容体がカンナビノイド受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項85】
前記受容体がσ受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項86】
前記受容体がVIP/PACAL受容体である、請求項44に記載の方法。
【請求項87】
ビオチン標識ADDLを含む、組成物。
【請求項88】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLを含む、組成物。
【請求項89】
抗体によって認識される1又は複数のエピトープを含むADDLを含む、組成物。
【請求項90】
前記エピトープがペプチド配列である、請求項88に記載の組成物。
【請求項91】
前記エピトープが有機小分子である、請求項88に記載の組成物。
【請求項92】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートである、組成物。
【請求項93】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、前記サロゲートが、内部βシートを形成することができる特定の構造エレメントを含むペプチドまたはペプチド模倣物を含み、前記形成によって、請求項1に記載のADDL受容体に結合することができるオリゴマーへのアセンブリが可能となる、組成物。
【請求項94】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、内部C末端βシートを形成することができる特定の構造エレメントを含むペプチドまたはペプチド模倣物を含む組成物であって、前記形成によって、請求項1に記載のADDL受容体に結合することができるオリゴマーへのアセンブリが可能となる、組成物。
【請求項95】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、モチーフ:
【化1】
(式中、Zは、グリシル−グリシル、プロリル−グリシル、グリシル−プロリル、またはβターンを形成することができる任意の他のジペプチドもしくはジペプチド模倣物または任意の他のβターン模倣物であり、Xは任意のアミノ酸またはアミノ酸模倣物である)を含むペプチドまたはペプチド模倣物を含み、その存在によって内部βシートを形成することができ、その形成によって、請求項1に記載のADDL受容体に結合することができるオリゴマーへのアセンブリが可能となる、組成物。
【請求項96】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、請求項1に記載のADDL受容体に結合することができるオリゴマーにアセンブリすることができるジペプチド官能化βターン模倣物を含む、組成物。
【請求項97】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化2】
(式中、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基である)を含み、前記ペプチドがオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーが請求項1に記載のADDL受容体に結合することができる、組成物。
【請求項98】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化3】
(式中、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基であり、Xは任意の疎水性アミノ酸である)を含み、前記ペプチドがオリゴマーにアセンブリすることができ、前記オリゴマーが請求項1に記載のADDL受容体に結合することができる、組成物。
【請求項99】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化4】
(式中、Rは任意のペプチドであり、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基である)を含み、前記ペプチドが、請求項1に記載のADDL受容体に結合することができるオリゴマーにアセンブリすることができる、組成物。
【請求項100】
1又は複数のビオチン部分を含むADDLサロゲートであり、ペプチド配列:
【化5】
(式中、Rは任意のペプチドであり、Uはヒスチジン以外の任意の親水性アミノ酸残基であり、Xは任意の疎水性アミノ酸である)を含み、前記ペプチドが、請求項1に記載のADDL受容体に結合することができるオリゴマーにアセンブリすることができる、組成物。
【請求項101】
蛍光標識ADDLを含む、組成物。
【請求項102】
前記蛍光標識がフルオレセインである、請求項100に記載の組成物。
【請求項103】
前記蛍光標識がテトラメチルローダミンである、請求項100に記載の組成物。
【請求項104】
前記蛍光標識がAlexa(登録商標)色素である、請求項100に記載の組成物。
【請求項105】
シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を妨害する化合物のスクリーニング方法であって、
a)ADDLを生成する工程と、
b)工程a)で生成したADDLを、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、
c)シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合に及ぼす1又は複数の化合物の影響を測定する工程と
を含む、方法。
【請求項106】
前記ADDLがビオチン標識ADDLである、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記ADDLが蛍光標識ADDLである、請求項104に記載の方法。
【請求項108】
1又は複数の請求項1に記載の受容体に結合した場合にADDLを認識する抗体を検出に使用する、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
組成物が1又は複数の請求項1に記載の受容体に結合する場合、請求項91に記載の組成物内のビオチンを認識するアビジンまたはストレプトアビジンを検出に使用する、請求項104に記載の方法。
【請求項110】
前記検出によって抗ADDL抗体を認識する蛍光標識二次抗体に会合した蛍光量を測定する、請求項104に記載の方法。
【請求項111】
検出によって酵素−抗体抱合体または酵素−ストレプトアビジン抱合体によって生成された蛍光シグナルまたは発光シグナルを測定する、請求項104に記載の方法。
【請求項112】
シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する化合物の同定方法であって、
a)ADDLサロゲートを生成する工程と、
b)工程a)で生成したADDLサロゲートを、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、
c)シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLの結合に及ぼす1又は複数の化合物の影響を測定する工程と
を含む、方法。
【請求項113】
シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する化合物の同定方法であって、
a)ADDLサロゲートを生成する工程と、
b)工程a)で生成したADDLサロゲートを、シナプス後膜肥厚に局在している1又は複数の受容体へのADDLサロゲートの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、
c)抗arc抗体を使用して、ニューロン内で産生されたarcタンパク質量を測定する工程と
を含む、方法。
【請求項114】
シナプス後膜肥厚へのADDL結合を測定する方法であって、
a)ADDLを生成する工程と、
b)工程a)で生成したADDLを、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、
c)シナプス後膜肥厚へのADDL結合に特徴的な点状の結合を測定する工程と
を含む、方法。
【請求項115】
シナプス後膜肥厚へのADDL結合を妨害する化合物の同定方法であって、
a)ADDLを生成する工程と、
b)工程a)で生成したADDLを、シナプス後膜肥厚へのADDLの結合を妨害する疑いのある1又は複数の化合物の存在下で、シナプス後膜肥厚を含む組織培養細胞に添加する工程と、
c)シナプス後膜肥厚へのADDL結合に特徴的な点状の結合に及ぼす1又は複数の化合物の影響を測定する工程と
を含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11−1】
【図11−2】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11−1】
【図11−2】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公表番号】特表2008−500286(P2008−500286A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513478(P2007−513478)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/017176
【国際公開番号】WO2005/110056
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【出願人】(506381201)アキュメン ファーマシューティカルズ,インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/017176
【国際公開番号】WO2005/110056
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【出願人】(506381201)アキュメン ファーマシューティカルズ,インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】
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