説明

ALC下り壁下端水きりの取付け金具

【課題】外観の見映えが良く、作業中の安全が確保され、作業能率に優れた取付け金具を提供する。
【解決手段】取付け金具1を水平支持具3と垂直支持具21とで構成する。水平支持具と垂直支持具にはそれぞれ係止部7、25を設けてアングル37の水平部と垂直部に掛け止めする。水平支持具と垂直支持具にはそれぞれアングルの水平部と垂直部に当接する折り曲げ部17、19、33、35を形成する。水平支持具の後端側には前後方向で所定の距離だけ離れた貫通孔13、15を形成し、垂直支持具の下端に形成された結合板部31には雌ねじ32を設ける。ボルト38をアングルの寸法に応じて貫通孔13、15のいずれかの下方から挿入し、結合板部の雌ねじに螺合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ALC下り壁下端へ水切りを取付けるための金具に関する。より詳細に言えば、寸法の異なるアングルに対応できる取付け金具に関する。
【背景技術】
【0002】
ALC下り壁の下端への水切りの取付けは、この下り壁に設けられるアングルを利用して行なわれ、このアングルに水切りを取付けるための取付け金具を使用する。この種の金具の1つとして、寸法の異なるアングルに対応することのできる取付け金具が例えば実開昭63−34230(実願昭61−128154号)で提案されている。
【0003】
この取付け金具においては、一端部に形成した鈎状部をアングルの水平片の先端に係止させた水平支持部材と、上端部に形成された鈎状部をアングルの垂直片の先端に係止させた垂直支持部材とを使用し、水平支持部材の他端側と垂直支持部材の下端側で外側に折り曲げられた対向片とを、水平支持部材の下側から挿通した締結ボルトで締結する構成となっている。そして水平支持部材のボルト通し孔を長孔にして、寸法の異なるアングルに対応するようにしている。
【0004】
【特許文献1】実開昭63−34230号(実願昭61−128154号)公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上記従来の取付け金具では、締結ボルトの先端が垂直支持部材の対向片の上側へ剥き出しの状態で突出している。従って見映えが悪く、また水切りの取付け作業中に手に当たって怪我をしたり、衣服を引っ掛けて引き裂いたりして危険である。
【0006】
本願発明は上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、締結ボルト先端が露出せず、見映えが良く、作業中に怪我をしたり衣服を引っ掛けたりすることのない取付け金具を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明においては、取付け金具を水平支持具と垂直支持具とで構成し、水平支持具には、アングルの水平部に対向する水平板部と、該水平板部の前端側に折り曲げて形成され、アングルの水平部前端に係止される係止部と、水平板部より所定の距離だけ上方に位置してアングルの水平部の下面に当接する当接部とを設け、垂直支持具には、アングルの垂直部に対向する垂直板部と、該垂直板部の上端側に折り曲げて形成した、アングルの垂直部上端に係止される係止部と、垂直面部の下端側をアングルの垂直部に向って略直角に折り曲げて形成した結合板部と、垂直板部より所定の距離だけ前方に位置してアングルの垂直部の背面に当接する当接部とを設けた。さらに水平支持具の水平板部の後端側には、水平板部の前後方向に所定の距離を隔てて複数の貫通孔を形成し、垂直支持具の結合板部にはねじ孔を形成し、前記複数の貫通孔の何れか1つに下方からボルトを挿通し、該ボルトを前記ねじ孔に螺合させて水平支持具と垂直支持具とを結合する。
【発明の効果】
【0008】
上記のごとく構成した取付け金具では、水平支持具と垂直支持具とを結合するボルトの突出端部が垂直支持具の垂直板部により覆われて外に露出しないため、外観がよくなるとともに、水切り取り付け作業などの際に露出したボルト端部により怪我をしたり、衣服を引っ掛けたりすることがなく、安全で効率の良い作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明するが、以下の実施の形態は例示的に示すものであり、本願発明の範囲がそれに限定されるものではない。以下に本願発明に関して、寸法の異なる2種類のアングルに対応することの出来る取付け金具について説明するが、種類の数はこれに限定されるものではない。また、垂れ壁下端に取付けるものは水切りとして説明するが、見切縁など、名称が異なるものでも垂れ壁下端に取付けられるものを全て含むものとして説明する。
【0010】
図1は本願発明に第1の実施の形態に係る取付け金具1を構成する金属製の水平支持具3と垂直支持具21とを分離して配置し、下方から見た斜視図である。水平支持具3は、平板を適宜折り曲げ加工して形成されている。すなわち、水平支持具3は概略長方形の形となる平板状の水平板部5を備え、その前端側(以下、「前」「後」「上」「下」「右」「左」「水平」「垂直」等の語を使用するが、これらは説明の便宜上使用するものであり、本発明の構成を何ら限定するものではない。)には、水平板部5に対して垂直上方へ折り曲げられた垂直折り曲げ部9とその上端から後方へ向って折り曲げられた水平曲げ部11とで構成される係止部7が形成されている。この係止部7は後述するアングルの水平部の前端に掛け止めされる部分である。
【0011】
水平板部5の後端側には、組み立て時に後述の垂直支持具21と結合するボルトを通すための二つの貫通孔13、15が前後方向に所定の間隔で形成されるとともに、それより前側にはバーリング加工で形成した下孔に刻んだ雌ねじ16、16が前後方向所定の間隔で2つ設けられ、これには後述する水切りブラケットをこの取付け金具1に取付けるときに使用するねじが螺合するようになっている。さらに、係止部7と貫通孔13との間で水平板部5の左右縁部すなわち両側縁部にそれぞれ2箇所、前後方向に適宜な間隔で左右同じ位置に、左右に延びる折り曲げ線に沿って、水平板部5に対して略直角上向きに曲げられた前側折り曲げ部17、17と後側折り曲げ部19、19とが形成されている。これら前側及び後側折り曲げ部の高さは同じであり、これら折り曲げ部17、19の上端17a、19aとは当接部である。すなわち、これら当接部17a、19aと係止部7の水平折り曲げ部11の下面との上下方向での間隔は、後述するアングルの水平部の厚みと略等しくなっており、アングルに取付けたときにこれら前側及び後側折り曲げ部17、19の上端の当接部17a、19aはアングル水平部37aの下面に当接するようになっている。
【0012】
垂直支持具21も平板を適宜折り曲げ加工して形成されており、概略長方形の形をした垂直板部23の上端側には、前側へ曲げられた水平折り曲げ部27とそれから下方へ曲げられた垂直折り曲げ部29とで構成される、後述するアングルの垂直部の上端へ掛け止めされる係止部25が形成されている。また、下端側には前側へ略直角に折り曲げられた結合板部31が形成され、その左右方向略中央にはバーリングにより形成した下孔に加工した雌ねじ32が刻設されている。また、係止部25と結合板部31との間で垂直板部23の左右縁部にそれぞれ2箇所、上下方向に適宜な間隔で左右同じ位置に、左右に延びる折り曲げ線に沿って、垂直板部23に対して略直角前向きに曲げられた上側折り曲げ部33、33と下側折り曲げ部35、35とが形成されている。これら上側及び下側折り曲げ部の高さは同じであり、これら折り曲げ部33、35の前端33a、35aは当接部となっている。すなわち、これら当接部33a、35aと係止部25の垂直折り曲げ部29の内面との前後方向での間隔は、後述するアングルの垂直部の厚みと略等しくなっており、アングルに取付けたときにこれら上側及び下側折り曲げ部33、35の前端の当接部33a、35aはアングル垂直部の背面或いは外面に当接するようになっている。
【0013】
図2は上述の取り付け金具1を用いて水切り39を取付けた状態を示す側断面図であり、垂れ壁Hには水平部37aと垂直部37bとを備えたアングル37が取り付けられている。そして取付け金具1の垂直支持具21の係止部25をアングル37の垂直部37bの上端に図示の如く掛け止めし、一方水平支持具3の係止部7をアングル37の水平部37aの前端に図示の如く掛け止めする。そしてボルト38を水平支持具の貫通孔15に下側から挿通し、垂直支持具21の結合板部31の雌ねじ32に螺合させ、水平支持具3と垂直支持具21との結合及び取付け金具1のアングル37への取付けが行なわれる。
【0014】
水切り39は、そのブラケット41が図示のよう小ねじ42を水平支持具3の雌ねじ16に螺合させることにより取付け金具1に取付けられ、それに本体40が弾性を利用して掛け止めして取付けられる。これらは公知であり、また本願発明に直接の関連はないのでこれ以上の説明は省略する。符号43はコーキング、44はバックアップ材、44aは天井仕上げ材である。
【0015】
図3は同じ取付け金具1を、図2に示したアングル37の水平部37aと垂直部37bよりそれぞれ短い水平部45aと垂直部45bとを備えたアングル45に取付けた状態を示す側断面図である。この場合、ボルト38は取付け金具1の水平支持具3の貫通孔13に挿通され、水平板部5の後端側は若干垂直支持具21の垂直板部23より後方へ伸びている。他の構成に付いては図2の場合と同じであるのでその説明は省略する。図1及び2の何れの場合にも、結合用のボルト38は垂直支持具21の垂直板部23とアングルの垂直部との間に位置するので、取付け金具1の外側に位置することはなく、その後に水切り39を取付けたりする作業時に怪我をしたり衣服を引っ掛けたりする心配がない。
【0016】
図4は第2の実施の形態に係る取付け金具51を示す分解斜視図である。水平支持具53は水平板部55を備え、その前側端部には係止部57が形成されている。そして水平板部55の後端側にはその一部を図示のように切り起こして、水平板部55より上方に、水平板部55と平行になったボルト取付け部57が形成され、ここに第1の実施形態での貫通孔13、15に対応する貫通孔59、61が形成されている。水平板部55の両側縁部において、略直角上側へ向いた左右折り曲げ部63、65が設けられ、これらは第1の実施形態での前側及び後側折り曲げ部17、19に対応するものである。また、水切りを取付けるための雌ねじ66、66も形成されている。なお、ボルト取付け部57は、平面板部55に対してその左右方向で中央より少し左側へ寄っている。
【0017】
垂直支持具67は垂直板部69を備え、その上端側には係止部71が形成されている。下端側には、右側と左側とに第1と第2の結合板部73、75が形成され、第2の結合板部75が所定の距離だけ上側に位置している。そしてそれぞれに雌ねじ74、76が形成されている。符号77、79は折り曲げ部であり、第1の実施の形態での上側及び下側折り曲げ部33、35に対応するものである。
【0018】
図5は、アングルに取付け金具51を取付けた時の水平支持具53と垂直支持具67との位置関係を示す背面図であり、(イ)は寸法が大きいアングルに、(ロ)は寸法が小さいアングルに取付けた状態である。寸法の小さいアングルに取付けたときには寸法の大きいアングルに取り付けた場合に比して、水平支持具53に対して垂直支持具67が右側へ雌ねじ74と76との間の距離分だけ、下方へ移動している。また、図の紙面垂直方向でも背面側へ移動している。
【0019】
図6は第3の実施の形態にかかる取付金具81の分解斜視図である。その水平支持具83は大略第1の実施の形態での水平支持具と同じ構造であるが、水平板部85に設けられたボルトを通すための貫通孔87、89の位置が右側へ寄っている。また、垂直支持具91も大略第1の実施の形態での垂直支持具1と同じ構造をしているが、結合板部が第2の実施の形態と同じように第1と第2の結合板部95と97とで構成され、それぞれ雌ねじ96、98が形成されている。寸法の異なるアングルに取付けた場合には、第2の実施の形態の場合と同じように、水平支持具83と垂直支持具91との間の相対位置が異なったものとなる。なお、第2の実施の形態の場合と異なり、第2の結合板部97で取付けたときには、第1の結合板部95は、水平支持具83の水平板部85の上から外れて、右側縁部の右側に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る取付け金具の分解斜視図である。
【図2】寸法の大きいアングルに取り付けた状態を示す側断面図である。
【図3】寸法の小さいアングルに取り付けた状態を示す側断面図である。
【図4】第2の実施の形態に係る取付け金具の分解斜視図である。
【図5】寸法の異なるアングルにそれぞれ取り付けた状態を示す背面図である。
【図6】第3の実施の形態に係る取付け金具の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1:取付け金具 3:水平支持具 5:水平板部 7:係止部 13、15:貫通孔 17:前側折り曲げ部 19:後側折り曲げ部 17a、19a:当接部21:垂直支持具 23:垂直板部 25:係止部 31:結合板部 32:雌ねじ 33:上側折り曲げ部 35:下側折り曲げ部 33a、35a:当接部 H::垂れ壁 37:アングル 39:水切り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ALC垂れ壁下端ヘ水切りを取付けるために前記垂れ壁に設けられたアングルに取付けられる取付け金具において、前記取付け金具は水平支持具と垂直支持具とを備え、前記水平支持具は、前記アングルの水平部に対向する水平板部と、該水平板部の前端側に折り曲げて形成され、前記アングルの水平部前端に係止される係止部と、前記水平板部より所定の距離だけ上方に位置して前記アングルの水平部の下面に当接する当接部とを備え、前記垂直支持具は、前記アングルの垂直部に対向する垂直板部と、該垂直板部の上端側に折り曲げて形成した、前記アングルの垂直部上端に係止される係止部と、前記垂直板部の下端側を前記アングルの垂直部に向って略直角に折り曲げて形成した結合板部と、前記垂直板部より所定の距離だけ前方に位置して前記アングルの垂直部の背面に当接する当接部とを備え、前記水平支持具の前記水平板部の後端側には、前記水平板部の前後方向に所定の距離を隔てて複数の貫通孔が形成され、前記垂直支持具の前記結合板部にはねじ孔が形成され、前記複数の貫通孔の何れか1つに下方からボルトを挿通し、該ボルトを前記ねじ孔に螺合させて前記水平支持具と垂直支持具とを結合したことを特徴とする、下り壁下端水切りの取付け金具。
【請求項2】
請求項1記載の取付け金具において、前記垂直支持具の前記結合板部に形成される雌ねじは、バーリングにより形成した下孔を用いて形成されている、下り壁下端水切りの取付金具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の取付け金具において、前記垂直支持具の前記結合板部は、上下方向で隔てて複数形成されていることを特徴とする、下り壁下端水切りの取付け金具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の取付け金具において、前記水平支持具と前記垂直支持具の前記当接部は、それぞれ前記水平板部と前記垂直板部から略直角に折り曲げて形成した折り曲げ部により構成されていることを特徴とする、下り壁下端水切りの取付け金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−162332(P2007−162332A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359884(P2005−359884)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000250432)理研軽金属工業株式会社 (89)
【Fターム(参考)】