説明

Apo−B48及びApo−B100のアッセイのための組成物及び方法

本発明は、試料中のアポリポタンパク質−B48のアッセイ又は検出のための組成物及び方法に関する。具体的には、生物学的試料中のアポリポタンパク質−B48(Apo−B48)とアポリポタンパク質−B100(Apo−B100)の示差的測定のための方法に関する。本発明はまた、Apo−B100の合成産物、対応する抗体及びこれらを含むキット、並びに試料中のApo−B48及び/又はApo−B100の量を検出、示差的に定量及び/又は記録するための、あるいは試料中のアテローム発生性脂質粒子を定量及び/又は記録するための、これらの使用に関する。本発明の生成物、有機体及びキットはまた、その活性のApo−B48及び/又はApo−B100レベルをインビトロ又はインビボで示差的にモジュレーションするため、並びに対象における脂質代謝を調節するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
緒言及び先行技術
本発明は、試料中のアポリポタンパク質−B48又はアポリポタンパク質−B100のアッセイ又は検出のための組成物及び方法に関する。具体的には、アポリポタンパク質−B48(「Apo−B48」)及びアポリポタンパク質−B100(「Apo−B100」)の検出及び示差的定量のための方法に関する。本発明はまた、Apo−B100の合成産物、対応する抗体、これらを含むことを特徴とするキット、並びに生物学的試料中のApo−B48及び/又はApo−B100の量を検出、定量及び/又は経時的に追跡するためのこれらの使用に関する。本発明の産物、材料及びキットはまた、Apo−B48及び/又はApo−B100のレベル又はこれらのインビトロ若しくはインビボの活性を示差的にモジュレーションするため、及び対象における脂質代謝を調節するために使用することができる。
【0002】
血漿中の高レベルのトリグリセリド及び食餌中のキロミクロンの残存は、目下世界中で死因の第1位である心血管疾患のリスク因子である(HokansonとAustin 1996)。高レベルの血漿脂質は、アテローム発生性であると考えられているApo−Bリポタンパク質のレベルと相関する。
【0003】
アポリポタンパク質Bは、均質ではない。超低密度リポタンパク質(VLDL:Very Low Density Lipoprotein)及び低密度リポタンパク質(LDL:Low Density Lipoprotein)は、約549,000Daの見かけ分子量を有するアイソフォームを含み、そしてこれは、百分順位命名法では略語でB100と呼ばれ、一方キロミクロン(食後のリポタンパク質の大部分)中に存在する主要なアイソフォームは、246,000Daの見かけ分子量を有し、同じ命名法では略語でB48として同定されている。Apo−B48は、Apo−B100の短縮型であり、Apo−B100メッセンジャーRNAの転写後修飾により生成する。該修飾は、コドン2153(CAA、グルタミンをコードする)を終止コドンに変換する(Davidson, Anantら 1995)。
【0004】
Apo−B48及びApo−B100は、哺乳動物のリポタンパク質代謝における重要なタンパク質である。Apo−B100は、ヒト肝臓(Kane 1983)におけるVLDL集合に必要であり(Havel 1995)、またLDLの細胞内取り込み及び異化においても役割を果たす。LDL受容体経路に関与することが証明されている(GoldsteinとBrown 1977)。Apo−B48は、腸におけるキロミクロンの集合に必要であり(Young 1990)(Kane 1983)、冠動脈疾患の更なるリスク因子であると考えられるキロミクロンの「レムナント」(即ち、残留)粒子に特徴的である(Simons, Dwyerら 1987)。
【0005】
現在のところ、腸に由来するApo−B48を含むキロミクロン粒子及び肝臓由来のApo−B100含有粒子のアテローム発生性に関する情報はほとんど存在しない。したがって、特に、Apo−B48とApo−B100のそれぞれの役割を研究できるように、及び対象における脱調節状態(deregulations)又は機能不全を証明できるように、Apo−B48及びApo−B100を検出及び/又は示差的に定量するための方法を開発することは特に妥当性が高い。
【0006】
種々の理由から、血漿中のApo−B48及びApo−B100濃度を示差的に測定することは極めて難しい。先ず第1に、Apo−B48のアミノ酸配列は、Apo−B100のN末端領域と同一である(Apo−B100の48%を占める)。第2に、Apo−B48は、Apo−B100とは対照的に、血漿中には非常に低レベルで存在する。第3に、Apo−Bエピトープの発現は、粒子の脂質含量により変化する。
【0007】
免疫学的方法に基づき、かつApo−B48の定量が可能な手順は、先行技術に報告されている。特に、ウチダ(Uchida)らの方法(Uchida, Kuranoら 1998)は、Apo−B48を定量するためにELISA試験法(酵素免疫吸着測定法(Enzyme-Linked Immuno-Sorbent Assay))を利用する。しかし、この方法の精度と出力はかなり低いため、抗体を精製及び標識する必要がある。更に、使用されるモノクローナル抗体は、ヒトApo−B48のC末端領域に対するものである。該抗体は、Apo−B100含有粒子中のApo−B48の示差的コンフォメーションにより得られるが、これでは、脂質粒子の脂質組成により、異なる特異性と親和性を持つ抗体が生じることもある。
【0008】
他の文献は、毛細管電気泳動(ProctorとMamo 1997)、HPLC系における液体クロマトグラフィー(Hidaka, Kojimaら 1990)(Wagner, Nustedeら 1987)又はSDS−PAGE(KarpeとHamsten 1994)(Smith, Proctorら 1997)のような非免疫化学的方法によるApo−B48の定量法を報告している。このような方法は、幾つかの欠点を持つ:これらは、出力が低く、そして結果の精度を改善するためにリポタンパク質の調製と脱脂工程を必要とする。このような方法はまた、免疫化学的方法よりもはるかに感度が低い。
【0009】
発明の要旨
本発明は、Apo−B100に特異的な合成ペプチドを製造するための新規な方策、並びにApo−B100及びApo−B48を検出及び示差的に定量するための新規な方法を提供する。示差的定量は、典型的には試料中の総Apo−B(Apo−B100+Apo−B48)を好ましくは抗Apo−Bポリクローナル抗体を活用してアッセイすることにより行われる。次にApo−B48を直接かつ特異的に定量するために、Apo−B100を、特異的な抗Apo−B100抗体により試料から涸渇させる。
【0010】
更に詳細には、本発明は、Apo−B100に特異的な合成ペプチドの使用によって、Apo−B100に特異的な抗体を産生するための新規な方法を記述している。本発明はまた、該抗体、これを含むキット、並びに血清又は血漿中のApo−B100及びApo−B48の量の変化を検出、定量、精製及び/又はモニタリングするためのこれらの使用を記述している。該抗体はまた、インビトロ又はインビボでApo−B活性をモジュレーションするため、及び対象における脂質代謝を調節するための新規なアプローチ法を提示する。
【0011】
本発明の第1の特定の目的は、Apo−B100に特異的な実質的に純粋な合成ペプチドであって、配列番号1の配列若しくは配列番号2の配列、又は該ペプチドの免疫原性断片若しくは誘導体を含むことを特徴とするペプチドに関する。
【0012】
本発明の別の目的は、上に定義されるようなApo−B100に特異的な合成ペプチドを活用した免疫化工程を特徴とする、抗Apo−B100抗体を産生する方法に関する。本発明はまた、該方法により調製される抗体、更に、より一般的には、上に定義されるようなペプチドに結合することができる抗体、並びにこのような抗体の断片又は誘導体を含む。
【0013】
本発明の別の態様は、生物学的試料中(特に、調製脂質粒子中又は血漿若しくは血清試料中)のApo−B100又はApo−B48を、上に定義されるような抗体(その断片又は誘導体を含む)を活用して検出又はアッセイする方法に関する。
【0014】
本発明の別の目的は、対象における脂質代謝の障害の発現の存在、素因又はリスクを検出する方法であって、上に定義されるような抗体(その断片又は誘導体を含む)を活用して、該対象からの試料中のApo−B100及びApo−B48をインビトロで検出することを特徴とする方法に関する。この方法は、アテローム動脈硬化、又は例えば冠動脈疾患のような心血管疾患の発現の存在、素因又はリスクを検出するのに特に適している。
【0015】
この点において、本発明の具体的な目的は、対象におけるアテローム動脈硬化の形成、進展又は進行を検出及び/又はモニタリングする方法であって、上述のような抗体(その断片又は誘導体を含む)を活用して、該対象からの試料中のApo−B100及び/又はApo−B48の量又はレベルをインビトロで検出することを特徴とする方法である。
【0016】
本発明の別の目的は、対象において、トリグリセリドに富んだリポタンパク質及びLDLの細胞内取り込みを検出又はモニタリングする方法であって、上に定義されるような抗体(その断片又は誘導体を含む)を活用した、Apo−Bを含む粒子のインビトロ検出を特徴とする方法に関する。
【0017】
一般に、対象は、哺乳動物、好ましくはヒトであり、更に好ましくは冠動脈疾患のような、脂質代謝の障害に関する心血管疾患の発現のリスクを示す対象、あるいはこのような疾患を呈する対象である。
【0018】
本発明の別の目的は、上に定義されるような抗体(又はその断片若しくは誘導体)と、薬学的に許容しうるビヒクル又は賦形剤を含むことを特徴とする医薬組成物に関する。
【0019】
発明の詳細な説明
前述のように、本発明の1つの態様は、Apo−B100に特異的な実質的に純粋な合成ペプチドであって、配列番号1の配列若しくは配列番号2の配列、又は該ペプチドの免疫原性断片若しくは誘導体を含むことを特徴とするペプチドに関する。「Apo−B100に特異的な合成ペプチド」は、未変性Apo−B100タンパク質の一部を模倣し、かつ該タンパク質に特異的な領域又はエピトープを含み、そして本質的に他のタンパク質には存在しない、全ての人工的に合成したペプチドを意味すると理解される。詳細には、これは、他のApo−B形、特にApo−B48には存在しない、Apo−B100のある領域の配列を含むことを特徴とするペプチドである。「実質的に純粋な」という用語は、このペプチドが、Apo−B48に存在するアミノ酸配列、及び/又は具体的にはApo−A1のような、脂質粒子中に通常存在するか同粒子中でApo−Bと結合している混入タンパク質を本質的に含まないことを示す。「合成」という用語は、このペプチドが、自然に得られる分子ではないが、特に実施例に記述されるような人工的な手段(例えば、化学合成、集合など)により調製されていることを示す。これに関連して、本発明のApo−B100に特異的な合成ペプチドは、好ましくは本質的にグリコシル化されていない。
【0020】
本発明は今や、Apo−B100に特異的な合成ペプチドを製造し、そして特異的な抗Apo−B100抗体を生成させるために使用できることを示す。本発明は更に、該抗体が、自然に、即ち可溶性抗原の形態で得られるか、又は脂質粒子に含まれた形態で得られるApo−B100に特異的に結合できることを示す。本発明はまた、該抗体が、Apo−B100を含む種々の脂質粒子(IDL(中間密度リポタンパク質(Intermediary Density Lipoprotein))、VLDL及びLDL)に結合でき、そして免疫沈降性を表示できることを示す。よってApo−B100に特異的な該合成ペプチド及びこれらの対応する抗体は、Apo−B100を検出するため、並びにApo−B100及びApo−B48を示差的に定量するために特に有利な新規な産物を表す。
【0021】
更に詳細には、本発明のApo−B100に特異的な好ましい合成ペプチドは、以下に記述されるような配列番号1の配列、又は該ペプチドの免疫原性断片若しくは誘導体を含むことを特徴とする。
【0022】
【表1】

【0023】
該ペプチドは、成熟ヒトApo−B配列の4105〜4215残基に相当する。
【0024】
本発明の変形態様において、本発明のApo−B100に特異的な好ましい合成ペプチドは、以下に記述されるような配列番号2の配列、又は該ペプチドの免疫原性断片若しくは誘導体を含むことを特徴とする。
【0025】
【表2】

【0026】
該ペプチドは、成熟ヒトApo−B配列の3955〜4062残基に相当する。
【0027】
本発明のペプチドは、有利には200個未満のアミノ酸、更に好ましくは180個未満のアミノ酸を含む。
【0028】
実施例に例示されるように、本発明のペプチド(配列番号1の配列又は配列番号2の配列を含む)は、固相合成法により特に有利に、更に具体的にはBoc/Bzl方策を用いることにより調製することができる(Merrifield 1963)。
【0029】
「誘導体」という用語は、1つ以上のアミノ酸残基の1つ以上の突然変異、置換、欠失及び/又は付加を含み、そして実質的に同じ抗原特異性を有するペプチドを含む。誘導体の典型例は、Apo−Bの多型、スプライシングなどによる配列の多様性を含む。特に好ましい誘導体は、配列番号1又は配列番号2に存在するアミノ酸とは異なる最大5個のアミノ酸残基を含む、配列番号1の修飾配列又は配列番号2の配列を含むことを特徴とする。追加の残基は、輸送又は結合配列、保護基などの残基に相当してもよい。更に、このペプチドは、その安定性を増大させるため、その免疫原性を増強するため、あるいはタグ又は標識などを組み込むために、例えば、化学、物理及び/又は酵素経路により修飾することができる。このような修飾の例は、グリコシル化、タグ(例えば、myc)、標識(例えば、放射活性の又は酵素の標識付けなど)の付加などを含む。
【0030】
本発明の特定の目的は、Apo−B100に特異的なエピトープを含み、かつApo−B48に特異的なエピトープを含まず、かつ配列番号1の配列若しくは配列番号2の配列、又は該配列の断片若しくは誘導体を含むことを特徴とする、Apo−Bに特異的な合成ペプチドに関する。
【0031】
「断片」という用語は、配列番号1の配列のセグメント4105〜4139及び4198〜4215の少なくとも5個、好ましくは5〜20個の間の連続残基を含むことを特徴とする任意のペプチド、あるいは配列番号2の配列のセグメント4022〜4062の少なくとも5個、好ましくは5〜40個の間の連続残基を含む任意のペプチドを意味する。「断片」という用語は、エピトープを含む、好ましくは上述のセグメントの少なくとも10個の連続残基を含むことを特徴とする、配列番号1の配列又は配列番号2の配列の、上述のような任意の部分を含む。
【0032】
このペプチドは、可溶性であっても、精製されていても、あるいは例えば、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン(Keyhole Limpet Hemocyanin))若しくは血清アルブミンのような担体分子と、又はビーズのような任意の他の不活性分子(例えば、合成物質)などと複合体形成していてもよい。本発明の特定の実施態様では、このペプチドは担体分子と結合している。これは特に、これらが抗体を産生させるために使用される場合である。この結合は、当業者には既知の従来法により行われる(Vaitukaitis, Robbinsら 1971)(Bassiri 1979)。
【0033】
このペプチドはまた、例えば生物活性分子のような、異種ポリペプチド分子と結合体形成又は結合していてもよい。この異種性とは、ヒトApo−B分子に由来しない任意のペプチドを指す。
【0034】
本発明の特定の目的は、配列番号1の配列又は配列番号2の配列を含む合成ペプチドを含み、かつ他のアポリポタンパク質質を含まないことを特徴とする組成物に関する。
【0035】
このペプチドは、Apo−B活性をモジュレーションする化合物をスクリーニングする方法において、力価測定法において、対照、標準物質として、又は分析法を較正するために使用することができる。これらはまた、有利には特異的にApo−B100活性を調節するために使用することができる。これらはまた、抗Apo−B100抗体を産生させるために特に有用である。
【0036】
この点において、本発明の別の目的は、好ましくは特異的に、上に定義されるようなペプチドに結合できる任意の抗体に関する。好ましくは、本発明の抗体は、Apo−B100を沈降させる能力を有する(免疫沈降物質)。この抗体は、ポリクローナルであっても、又はモノクローナルであってもよい。有利には、抗体がモノクローナルであるとき、これらは、モノクローナル抗体の混合物の形態で存在する。その上、抗体という用語は更に、任意の抗体断片及び誘導体、特に実質的に同じ抗原特異性を有する該モノクローナル又はポリクローナル抗体の断片及び誘導体を含む。後者は、抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、CDRなど)、ヒト化抗体、多機能性抗体、1本鎖抗体(ScFv)などを含む。本発明の抗体は、動物を免疫すること、及び血清(ポリクローナル)又は脾臓細胞(適切な細胞株との融合によりハイブリドーマを産生するため)を回収することを特徴とする従来法により産生することができる。
【0037】
齧歯類(マウス、ラットなど)、霊長類、ウマ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、家禽などを含む種々の動物種からポリクローナル抗体を産生する方法は、例えば、Vaitukaitisら(Vaitukaitis, Robbinsら 1971)に報告されている。抗原は、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント)と合わせて、典型的には皮下注射により動物に投与する。反復注射を行ってもよい。血液試料(免疫血清)を回収して、イムノグロブリンを単離する。
【0038】
種々の動物種からモノクローナル抗体を産生する方法は、例えば、Harlowら(Harlow 1988)又はKohlerら(KohlerとMilstein 1975)に見い出すことができる。該方法は、動物を抗原で免疫し、次に脾臓細胞を回収して、これを骨髄腫細胞のような不死化細胞と融合することを特徴とする。生じるハイブリドーマはモノクローナル抗体を産生するが、個々のクローンを単離するために限界希釈法により選択することができる。この抗体はまた、例えば、Wardら(Ward, Gussowら 1989)に開示されるようなイムノグロブリンコンビナトリアルライブラリーの選択により産生することもできる。
【0039】
本発明の好ましい抗体は、上述のようなApo−B100に特異的な、好ましくは配列番号1の配列若しくは配列番号2の配列を含む実質的に純粋な合成ペプチド、又は該ペプチドの免疫原性断片若しくは誘導体(例えば、少なくとも1個のエピトープを含むサブ断片)、又は配列番号1及び配列番号2の免疫原性断片若しくは誘導体の混合物(オリゴペプチド)で非ヒト動物を免疫すること、並びに抗体又は抗体産生細胞を回収することにより調製される。
【0040】
Fab又はF(ab’)2断片は、従来法によるプロテアーゼでの消化によって産生することができる。ヒト化抗体は、例えば、Riechmannら(Riechmann 1988)(Jones 1986)に記述される方法の1つにより調製することができる。
【0041】
本発明はまた、特異的な抗Apo−B100抗体を産生する方法であって、配列番号1の配列若しくは配列番号2の配列のペプチド、又は上述のような該ペプチドの免疫原性断片若しくは誘導体を非ヒト動物に投与すること、及び抗体又は抗体産生細胞を回収することを特徴とする方法に関する。
【0042】
本方法は、有利には、特異的で免疫沈降性の抗体の産生を可能にする。特異性は、Apo−B48を含む他の血中循環タンパク質との交差反応が存在しないことを証明することにより検証することができる。更に一般的には、特異性とは、この抗体が、他の任意の抗原に対するよりも高い親和性でApo−B100に結合できることを示す。実施例に例示されるように、本発明のポリクローナル抗体は、免疫沈降性であり、よってApo−B100を検出するため、又はApo−B100とApo−B48とを高い効率で示差的にアッセイするために使用することができる。
【0043】
この抗体は、毒素、標識、医薬又は他の任意の治療物質のような異なる断片と、共有結合か又はそうでなく、直接又はカップリング剤によって結合させることができる。標識は、放射性標識、酵素、蛍光標識、磁気粒子などよりなる群において選択することができる。好ましい毒素は、例えば、ジフテリア毒素、ボツリヌス毒素などである。医薬又は治療物質は、特にリンフォカイン、抗生物質、アンチセンス配列、成長因子などよりなる群において選択される。抗体とこのような異種断片との結合を実施するための方法は、例えば、特許US 4,277,149及びUS 3,996,345に記述されている。
【0044】
本発明の抗体は、治療、予防、診断、精製、検出などにおける用途を含む多くの用途を持つ。
【0045】
これらは、スクリーニング物として、又は種々の生物学的試料(例えば、血液試料)を含む種々の試料から抗原を精製するために、インビトロで使用することができる。これらはまた、対象から収集した試料(典型的には哺乳動物又は好ましくはヒトからの血液試料)中に存在するApo−B含有脂質粒子中のApo−B100又は間接的にApo−B48の存在又は量を検出又は定量するために使用することができる。
【0046】
この点において、本発明の別の目的は、生物学的試料中のApo−B100を検出又は定量する方法であって、試料を上に定義されるような抗体(その断片又は誘導体を含む)と接触させること、及び抗原抗体免疫複合体の存在を検出することを特徴とする方法に関する。
【0047】
定量は、典型的には示差的に、即ち、試料中の総Apo−B(Apo−B100+Apo−B48)をアッセイし、次に特異的な抗Apo−B100抗体を用いてApo−B100をここから涸渇させることによって、Apo−B48の直接かつ特異的な定量を可能にすることにより行われる。Apo−B100濃度は、総Apo−B測定値とApo−B48の値との差により得られる。よって該方法により、試料中の免疫複合体の(相対)量(Apo−B100の回収の前後)を求め、そしてこれを標準条件と、又は例えば較正曲線と比較することによって、試料中のApo−B100及びApo−B48レベルを求めることができる。
【0048】
よって好ましい検出又は示差的定量の方法は、有利には以下の工程:
a.総抗Apo−B抗体により試料中のApo−Bの総量を測定する工程、
b.上述のような特異的な抗Apo−B100抗体を活用して、該試料からApo−B100又はApo−B100を含む脂質粒子を除去する工程、及び
c.総抗Apo−B抗体により、工程(b)後に得られた試料中の、又は該試料中のApo−B100を含まない脂質粒子中の、Apo−B48の量を測定する工程
を特徴とする。
【0049】
差し引きにより、(a)及び(c)で得られる量から、試料中のApo−B100の量(又はApo−B100を含む脂質粒子の量)を求めることができる。
【0050】
使用される抗体は、単独の、修飾された、かつ/又は混合された、ポリクローナル、モノクローナル又はその断片若しくは誘導体であってよい。詳細には、これらは、可溶性の形で、又は支持体(特にビーズ、プレート、カラムなど)に固定化して使用することができる。
【0051】
総Apo−B抗体は、種々の形での抗原の完全な検出又は定量を保証するために、有利にはモノクローナル抗体の混合物又はポリクローナル抗体からなる。更に、工程(a)及び(c)で使用される抗体は、同一であっても異なっていてもよい。一般には同一の抗体である。
【0052】
典型的には、総抗Apo−B抗体としてポリクローナル抗体が使用される。総抗Apo−Bポリクローナル抗体は、当業者には既知の任意の方法により、特に全Apo−Bでの免疫化により得られる。このような抗体は、詳細にはLi(Li, Wuら 1997)及びLevinson(LevinsonとWagner 1993)の刊行物に記述されている。
【0053】
有利には、工程(b)において、試料中に存在するApo−B100を選択的に除去するために、Apo−B100への結合が複合体の沈降を誘導する、本発明の1つ以上の特異的な抗Apo−B100抗体を使用する。よって非限定例として、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の混合物、又はApo−B100抗体免疫複合体の沈降を誘導するように修飾された抗体(ポリクローナル又はモノクローナル)のいずれかを使用することができる。
【0054】
第1の変形態様において、工程(b)で使用される特異的な抗Apo−B100抗体は、免疫沈降性を有するポリクローナル抗体である。
【0055】
別の変形態様において、特異的な抗Apo−Bモノクローナル抗体の混合物又はApo−B抗体免疫複合体の沈降を誘導するように修飾されたモノクローナル抗体(例えば、ラテックス又は他の粒子に結合したもの)の混合物を使用することもできる。
【0056】
Apo−B100を含むリポタンパク質を除去するための別の方法は、特異的な抗Apo−B100抗体を、A若しくはGタンパク質に、又は他の化学分子(ポリウレタン、活性化セファロースなどのような、化学ポリマー又は樹脂)に結合させることである。該複合体は、磁気ビーズに固定することができ、磁場の適用によりApo−B100を除去することができる(例えば、磁気分離又は沈降)。
【0057】
本発明の分析法(そして更に具体的には、抗原抗体免疫複合体の検出又は定量法)は、ELISA法(直接又は競合免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)、EIA(電気免疫拡散法とも呼ばれる電気免疫測定法)、比濁法、又は他の任意の免疫学的方法のような従来法を用いて行うことができる。しかし、本発明の特に好ましい目的は、ネフェロメトリー分析法に関する。実際、前述のように、この抗体は、特異的であり、かつ試料中のApo−B100を免疫沈降させることができるため、総抗Apo−Bポリクローナル抗体(又はモノクローナル抗体の混合物若しくはApo−B抗体免疫複合体の沈降を誘導するように修飾されたモノクローナル抗体)によるApo−B48の示差的アッセイが可能である。
【0058】
ネフェロメトリー分析法では、懸濁液中の粒子により放射される光の強度が分析器で測定される。粒子は、ポリマー形成を刺激する緩衝媒体中で、特異的抗体が特異的抗原に接触するとき生じる免疫沈降反応において形成される。抗原と抗原に特異的な抗体を含む複合体は、経時的に漸増するレベルで生じ、次に急速に増大して、最後には抗原濃度に比例するピーク値に達する。この分析法は、抗原濃度に相関する(そして同濃度に変換できる)光シグナル強度の最大変化速度の測定に基づく。典型的には、ネフェロメトリー分析法は、英数字表に結果を示す、ベックマン(Beckman)免疫化学システム(IMMAGE)、Beckman Coulter、フォスターシティー、カリフォルニア州、米国)を活用して行われる。本発明のネフェロメトリー法は、迅速かつ再現性があり、かつ高い出力を有する限り、特に有利である。実際、該分析法には、1試料当たりほんの数秒しか必要でないが、比較として、先行技術の方法には、まる1日が必要である。更に、本発明の方法は、容易に自動化することができる。その上、Apo−B検出(アイソフォームに関わりなく)の変動係数は、先行技術の10%に比較すると本発明の方法ではわずか4%である。
【0059】
よって本発明の特定の目的は、生物学的試料中に存在する脂質粒子中のApo−B48及びApo−B100を示差的に定量する方法であって、試料(又はその希釈液)を上述のような抗体(その断片又は誘導体を含む)と接触させることを特徴とする方法に関する。簡単に述べると、第1の工程では、生物学的試料を免疫ネフェロメトリーシステムで総抗Apo−B抗体によりアッセイすることによって、総循環Apo−Bの定量ができる。第2の工程では、該試料を特異的な抗Apo−B100抗体(好ましくは配列番号1又は配列番号2を有するペプチドの使用により産生した)と接触させることにより、この生物学的試料中のApo−B100を涸渇させる。最後にApo−B100涸渇試料中のApo−B48の量を、粗試料と同様に総抗Apo−B抗体によりアッセイする。次いでApo−B100の量は、単に総Apo−Bの量とApo−B48の量との差として得ることができる。典型的には、生物学的試料の種々の希釈液及び/又は総抗Apo−B抗体及び/又は抗Apo−B100抗体は、試料との接触に先立ち、非イムノグロブリンタンパク質を除去すること及び/又は抗体を濃縮することを目的として処理に付される。この処理は、例えば、Ritchieら(Ritchie 1972)に記述されるように、典型的には抗体をポリエチレングリコール(PEG)と接触させることを特徴とする。典型的には、この分析法には0.5〜1μgの特異的抗体が使用されるが、当業者であれば、本発明から著しく逸脱することなく、異なる量を使用することができる。
【0060】
ネフェロメトリー分析法では、一般にポリクローナル抗体が使用される。
【0061】
この分析法は、特に血液、血漿、血清、間質液、脳脊髄液、細胞培養上清などを含む、種々の生物学的試料で実施することができる。試料は、対象(例えば、ヒト対象)から収集して、この分析法を実行するために直接使用することができる。あるいは、試料は、後日の試験のために希釈及び/又は貯蔵(例えば、凍結)することができる。本発明はまた、高い出力、効率及び安全性を持つ、総抗Apo−B抗体及び特異的な抗Apo−B100抗体を用いる脂質粒子中のApo−B48及びApo−B100濃度の測定法を提供する。
【0062】
検出は、種々の実験的、臨床的及び/又は診断的条件で実施することができる。具体的には、本方法は、脂質代謝の障害を発現する、ある個人の素因を検出するために使用することができる。
【0063】
よって本発明の特定の目的は、対象における脂質代謝の障害の発現の存在、素因又はリスクを検出する方法であって、対象からとった試料中で、上に定義されるような抗体(その断片又は誘導体を含む)を活用して、Apo−B48及びApo−B100を含む脂質粒子をインビトロで検出又はインビトロ(又はエクスビボ)で定量することを特徴とする方法に関する。Apo−B48及び/又はApo−B100レベルの上昇(正常対象の平均値と比較して)は、この脂質代謝の障害を発現するリスク増大に特有である。該方法は、アテローム動脈硬化、又は冠動脈疾患のような心血管疾患の発現の存在、素因又はリスクを検出するために特に適している。
【0064】
本発明の別の目的は、対象におけるLDL及びトリグリセリドに富んだリポタンパク質の細胞内取り込みを検出又はモニタリングする方法であって、脂質粒子中に存在するApo−B48及び/又はApo−B100の量を、上に定義されるような抗体(その断片又は誘導体を含む)を活用してインビトロで検出することを特徴とする方法に関する。
【0065】
本発明の別の目的は、対象における脂質代謝の障害を矯正することを目的とする処置をモニタリングする方法であって、該対象からの試料中のApo−B48及び/又はApo−B100の量を、上に定義されるような抗体(その断片又は誘導体を含む)を活用して、該対象に該処置を施した後に、好ましくは示差的にインビトロで測定することを特徴とする方法に関する。その処置の効果は、対象におけるApo−B48及び/又はApo−B100のレベルと相関する。これらの結果は、対象におけるApo−B48及び/又はApo−B100の量又は活性を調整する、その処置の能力と相関させることができる。該方法は、アテローム動脈硬化、又は例えば冠動脈疾患のような心血管疾患の処置をモニタリングするのに特に適合する。
【0066】
本発明の別の目的は、対象の生理的状態(例えば、対象における脂質代謝のレベル)を評価する方法であって、該対象からの試料中のApo−B48及び/又はApo−B100を、上に定義されるような抗体(その断片又は誘導体を含む)を用いてインビトロで検出することを特徴とする方法に関する。
【0067】
本発明の抗体はまた、血清又は血漿中のApo−B48及び/又はApo−B100の濃度をモジュレーションすることができる化合物又は食餌をスクリーニング(選択)するために使用することができる。典型的には、この方法は、動物又は患者にある化合物又は食餌を投与すること、及びその動物又は患者から生物学的試料を回収すること、そして次に上に定義されるような抗体(その断片又は誘導体を含む)を活用して、該試料中のApo−B48及びApo−B100の存在を検出すること、かつ/又はその量をアッセイすることを特徴とする。
【0068】
前述のように、該方法は、種々の試料(典型的には血漿又は血清)で、ELISA、RIA、EIA、比濁法などにより、又は好ましくはネフェロメトリー分析法を用いて実施することができる。
【0069】
本発明の別の目的は、対象におけるApo−B100活性をインビボで選択的に調整するように設計された組成物を調製するための、本発明の抗体の使用に関する。例えば、肝臓又は末梢細胞によるApo−B100含有リポタンパク質の取り込み(LDL受容体を介する)を阻害して、そこへの脂質の供給を改変するために、又はリポタンパク質の細胞内集合及び分泌を阻害(Apo−B100はこのような集合に必要であるため)することにより、いわゆるアテローム発生性リポタンパク質の産生を低下させるためである。
【0070】
具体的には、Apo−B100活性とは、血漿中のリポタンパク質(VLDL)の集合及び分泌におけるその役割、並びに末梢細胞によるリポタンパク質取り込みにおけるその役割を意味すると理解される。
【0071】
本発明は更に、上に定義されるような抗体と、場合により薬学的に許容しうるビヒクル又は賦形剤とを含む医薬組成物を含むことを特徴とする。賦形剤は、薬剤としての使用に適合する、任意の溶液、懸濁液、ゲル、粉末などであってよい。おそらくタンパク質や他の高分子量分子のような安定化剤と組合せた、等張性溶液、緩衝液、食塩水などは、実施例として引用することができる。
【0072】
本発明はまた、上に定義されるようなペプチド又は抗体を含むことを特徴とするキットに関する。このキットは、任意の試料中のApo−B48及び/又はApo−B100を検出又は定量するために使用することができる。
【0073】
本発明の他の態様及び利点は、以下の実施例に記述されるが、これらは例示を目的として与えられるものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0074】
実施例
1.Apo−B100合成
Apo−B100に特異的な合成ペプチドは、固相法(Merrifield 1963)によりモデルABI 431自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems Inc.)、フォスターシティー、カリフォルニア州、米国)でBoc/Bzl方策を用いて、0.5mmolのPAM−Ala樹脂上で合成した。各アミノ酸は、キャッピングなしにジシクロヘキシルカルボジイミド/ヒドロキシベンゾトリアゾールを用いることにより2回カップリングした。
【0075】
次に粗生成物は、0〜100%緩衝液B(緩衝液A:H2O中0.05% TFA、及び緩衝液B:H2O中60% CH3CNを含む、0.05% TFA)の線形勾配を用いる、Vydac 18カラム(インターキム(Interchim)、モンリュソン、フランス)での逆相HPLCにより、精製及び分析した。次いで分子量は、シングル四重極とエレクトロスプレーイオン源(ネブライザー援用エレクトロスプレー)(サイエックス(Sciex)、トロント、カナダ)を取り付けたAPI質量分析計(パーキン・エルマー(Perkin-Elmer)、フォスターシティー、カリフォルニア州、米国)で測定した。
【0076】
アミノ酸分析は、110℃で24時間の0.25%フェノールを含む6N HCl中での加水分解後にベックマン6300アミノ酸分析機(ベックマン機器(Beckman Instruments)、フラートン(Fullerton)、カリフォルニア州、米国)で実行した。
【0077】
2.免疫化
総Apo−Bに対する抗血清は、Fievetら(Fievet 1984)により報告されたように調製した。簡単に述べると、1.030〜1.053の間の密度のLDL(よってApo−B100だけを含む)を超遠心分離により調製し、次に全てのApo−Bアイソフォームを認識できる総抗Apo−B免疫血清を産生させるためにヤギに注射した。
【0078】
また特異的なApo−B100抗血清も、本質的にはVaitukaitisらのプロトコール(Vaitukaitis, Robbinsら 1971)に記載されたように調製した。抗原となったペプチド(配列番号1又は配列番号2)は、完全フロイントアジュバントに乳化して、ヤギに皮下注射(最初の2回の注射では注射1回当たりペプチド0.5mgで)し、続いて2週間の間隔で同じアジュバント中であるがペプチド0.25mgだけを含むブースター注射を行った。
【0079】
3.総Apo−B及びApo−B100に特異的なイムノグロブリン(IgG)の単離
IgGは、Ritchieら(Ritchie 1972)の改変プロトコールにより調製した。非イムノグロブリンタンパク質を免疫血清から除去して、IgGを透析して濃縮した。
【0080】
抗体は、1週間以内に使用するときは、例えば、2〜8℃で貯蔵するか、又は最長1ヶ月の長期使用のために−20℃で凍結することができる。
【0081】
4.抗体の特異性
キロミクロンとVLDLの免疫ブロット分析は、抗Apo−B100抗体の特異性を証明するために実行した。図1に示されるように、Apo−B48との又は他のキロミクロンタンパク質との交差反応は観測されなかった。VLDLに関しては、抗Apo−B100抗体は、Apo−B100の分子量に相当する550kDaに位置するタンパク質のみを認識した。これらの結果は、配列番号1のペプチドに対する抗体が、Apo−B100を特異的に認識することを証明している。
【0082】
5.免疫ネフェロメトリー分析法
5.1 ネフェロメトリー分析法に使用される試薬と材料
【0083】
【表3】

【0084】
標準物質:Apo−B標準物質は、電気免疫拡散法(EIA)で較正し、HIV及び肝炎ウイルスについて試験したヒト血清に由来するものとした。該標準物質は、あらゆる混入を回避するために、通常の予防措置により取り扱わねばならない。Apo−B標準物質は、100mg/dlの濃度であった。
【0085】
調製:較正曲線を作成するために、標準物質は、以下のとおり緩衝液1に希釈した。
【0086】
【表4】

【0087】
貯蔵及び安定性:Apo−B標準物質は、−20℃で貯蔵及び保存することができる。EDTAとアジ化ナトリウムは安定化剤である。この調製物は、凍結及び乾燥することができる。
【0088】
試料の調製:分析用には新鮮な試料が推奨される。血清は、臨床検査室で利用される確立した手順により収集しなければならない。必要であれば、血清は最長1週間までなら2〜8℃で貯蔵することができる。凍結貯蔵された試料は、より長期に使用することができる:凍結試料は、最長1年間は安定である。
【0089】
Apo−B100粒子を含まない試料の調製:以下のものを記載された順に試験管に加えた:40μlの抗Apo−B100抗体、40μlの血清及び40μlの緩衝液1。この混合物を振盪して、室温で10分間インキュベートし、次に3500rpmで10分間遠心分離し、次に上清を分析用に取りだした。Apo−B100含有脂質粒子を涸渇させた試料中の最終Apo−B48濃度を、上清の希釈率に対して補正した。
【0090】
5.2 プロトコール:
− インメージ(IMMAGE)免疫化学システム指示書にリストされたパラメーターで定義される試薬をプログラムする、
− 抗体を含む試薬をカートリッジのA区画に移す、
− 表2に示される希釈にしたがい、パラメーターテーブルに標準物質の値(現行のApo−B標準物質の値は1mg/dlである)を入力する、
− 緩衝液1を使用して試料を希釈する。
【0091】
5.3 まとめ:
【0092】
【表5】

【0093】
* 較正後に設定する。
** Apo−B48測定後に設定する。
【0094】
5.4 結果
較正曲線(図2):較正曲線は、分析機により自動的にプロットされた。
【0095】
品質管理:各試験試料につき対照血清(デイド・ベーリング社(Dade-Behring GmbH)、マールブルク(Marburg)、ドイツ製の血清など;アポリポタンパク質質の対照用)を使用することが推奨される。
【0096】
値:分析機は、最終濃度を直接表示する。抗Apo−B100抗体を含む処理試料では、3倍希釈に対して補正する必要がある。
【0097】
動作範囲:
総Apo−Bには:25〜300mg/dl
Apo−B48測定には:1.5〜25mg/dl
Apo−B100測定には:総Apo−BとApo−B48の間の差。
【0098】
変動係数:4%
【0099】
通常値(Smith 1997):
Apo−B48:正常絶食対象では4〜6mg/dl
食後値20mg/dl
【0100】
6.本発明の他の利点。
本発明のApo−B100に特異的な合成ペプチドの他の利点及び使用は、以下を含む:
− モノクローナル抗体の産生、
− 任意のApo−B100分析法(ELISA、RIA、電気免疫拡散法など)を較正するための、標準物質としての使用、
− LDL受容体によるApo−B含有リポタンパク質の取り込みを記録又は阻害するための、リポタンパク質代謝の種々の経路に関する研究における使用。
【0101】
本発明の抗体の他の利点及び使用は、以下のとおりである:
− Apo−B100とApo−B48の示差的定量のための任意の免疫学的分析法における使用、
− Apo−B100とApo−B48の示差的検出(免疫ブロット、ドットブロット、免疫組織化学及び免疫細胞化学)のための使用、
− タンパク質精製の免疫親和法及び免疫沈降法における使用。
【0102】
【表6】





【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1:抗Apo−B100抗体の特異性。A:SDS−PAGE;B 免疫ブロット。レーン1及び2:HTG対象からのキロミクロン。レーン3:正常脂質(normolipemic)対象からのVLDL。
【図2】図2:Apo−B分析のネフェロメトリー法:較正曲線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に純粋な合成ペプチドであって、配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸配列、又は該配列の免疫原性断片若しくは誘導体を含むことを特徴とするペプチド。
【請求項2】
ペプチドが、可溶性であるか、又はKLH、血清アルブミン若しくはビーズのような担体分子と複合体形成していることを特徴とする、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
免疫沈降性抗体の産生を可能にすることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項記載のペプチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のペプチドに特異的な抗体、又は実質的に同じ抗原特異性を有する該抗体の断片若しくは誘導体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載のペプチドで非ヒト動物を免疫すること、及び抗体又は抗体産生細胞を回収することにより産生されることを特徴とする、請求項4記載の抗体。
【請求項6】
ポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項4又は5のいずれか1項記載の抗体。
【請求項7】
モノクローナル抗体の混合物に相当することを特徴とする、請求項4又は5のいずれか1項記載の抗体。
【請求項8】
Apo−B100を沈降させることができることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項記載の抗体。
【請求項9】
特異的な抗Apo−B100抗体を産生する方法であって、請求項1〜3のいずれか1項記載のペプチドを非ヒト動物に投与すること、及び抗体又は抗体産生細胞を回収することを含む方法。
【請求項10】
特異的な抗Apo−B100抗体を産生する方法であって、請求項1〜3のいずれか1項記載のペプチドの混合物を非ヒト動物に投与すること、及び抗体又は抗体産生細胞を回収することを含む方法。
【請求項11】
生物学的試料中のApo−B100を検出又は定量する方法であって、試料を請求項4〜8のいずれか1項記載の抗体と、又は請求項9若しくは10のいずれか1項記載の方法により産生される抗体と接触させること、及び抗原抗体免疫複合体の存在を検出することを含む方法。
【請求項12】
試料中のApo−B100及びApo−B48を検出又は示差的に定量する方法であって、以下の工程:
(a)総抗Apo−B抗体により試料中の総Apo−Bの量を測定する工程、
(b)請求項4〜8のいずれか1項記載の、又は請求項9若しくは10のいずれか1項記載の方法により産生される特異的な抗Apo−B100抗体を活用して、該試料からApo−B100又はApo−B100を含む脂質粒子を除去する工程、及び
(c)総抗Apo−B抗体により、工程(b)後に得られた試料中の、又は該試料中のApo−B100を含まない脂質粒子中の、Apo−B48の量を測定する工程
を含む方法。
【請求項13】
工程(a)及び/又は(c)において、総抗Apo−Bに対するポリクローナル抗体が使用されることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
工程(b)において使用される特異的な抗Apo−B100抗体が、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の混合物又は免疫複合体の沈降を可能にする修飾抗体であることを特徴とする、請求項12又は13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
工程(b)において使用される特異的な抗Apo−B100抗体が、免疫沈降性ポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
抗原抗体免疫複合体の存在が、ELISA、RIA、EIA、比濁法又は任意の他の免疫学的測定法により測定されることを特徴とする、請求項11〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
抗原抗体免疫複合体の存在が、ネフェロメトリー分析法により測定されることを特徴とする、請求項11〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
生物学的試料中のApo−B100及びApo−B48を検出又は示差的に定量する方法であって、該試料を請求項4〜8のいずれか1項記載の抗体又は請求項9若しくは10のいずれか1項記載の方法により産生される抗体と接触させること、及びネフェロメトリー分析法によりApo−B100−抗体免疫複合体の形成を間接的に検出することを含む方法。
【請求項19】
生物学的試料が、血液又は血漿又は血清又は間質液又は脳脊髄液又は細胞培養上清の試料であることを特徴とする、請求項11〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
対象における脂質代謝の障害の発現の存在、素因又はリスクを検出する方法であって、請求項4〜8のいずれか1項記載の抗体により、又は請求項9若しくは10のいずれか1項記載の方法により産生される抗体により、対象からの試料中のApo−B48及びApo−B100の量をインビトロで示差的に定量することを含む方法。
【請求項21】
アテローム動脈硬化、又は例えば冠動脈疾患のような心血管疾患の発現の存在、素因又はリスクを検出するための、請求項20記載の方法。
【請求項22】
対象における脂質代謝の障害を矯正することを目的とした処置をモニタリングする方法であって、請求項4〜8のいずれか1項記載の抗体又は請求項9若しくは10のいずれか1項記載の方法により産生される抗体を活用して、該対象からの試料中のApo−B100及び/又はApo−B48をインビトロで定量することを含む方法。
【請求項23】
アテローム動脈硬化、又は例えば冠動脈疾患のような心血管疾患の処置をモニタリングするための、請求項22記載の方法。
【請求項24】
対象におけるLDL及びトリグリセリドに富んだリポタンパク質の細胞内取り込みを検出又はモニタリングする方法であって、請求項4〜8のいずれか1項記載の抗体又は請求項9若しくは10のいずれか1項記載の方法により産生される抗体を活用して、脂質粒子中に存在するApo−B48及び/又はApo−B100の量をインビトロで検出することを含む方法。
【請求項25】
対象の生理的状態を評価する方法であって、請求項4〜8のいずれか1項記載の抗体又は請求項9若しくは10のいずれか1項記載の方法により産生される抗体を活用して、該対象からの試料中のApo−B48及びApo−B100のレベルをインビトロで検出することを含む方法。
【請求項26】
Apo−B48及び/又はApo−B100の血清又は血漿濃度を調節することができる化合物又は食餌をスクリーニングするための、請求項4〜8のいずれか1項記載の、又は請求項9若しくは10のいずれか1項記載の方法により産生される抗体の使用。
【請求項27】
抗体が、毒素、標識、医薬又は任意の他の治療剤のような異種の断片と結合していることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか1項記載の、又は請求項9若しくは10のいずれか1項記載の方法により産生される抗体。
【請求項28】
対象におけるApo−B100活性をインビボで選択的に調節するために設計された組成物を調製するための、請求項4〜8及び27のいずれか1項記載の、又は請求項9若しくは10のいずれか1項記載の方法により産生される抗体の使用。
【請求項29】
請求項4〜8及び27のいずれか1項記載の、又は請求項9若しくは10のいずれか1項記載の方法により産生される抗体と、薬学的に許容しうるビヒクル又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項30】
Apo−B活性を調節する化合物のスクリーニング方法における、請求項1〜3のいずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項31】
Apo−B100活性を特異的に調節するために設計された組成物を調製するための、請求項1〜3のいずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項32】
請求項1〜3のいずれか1項記載のペプチド、あるいは請求項4〜8及び27のいずれか1項記載の、又は請求項9若しくは10のいずれか1項記載の方法により産生される抗体を含むキット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に純粋な合成ペプチドであって、配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸配列、又は該配列の免疫原性断片若しくは誘導体を含むことを特徴とするペプチド。
【請求項2】
配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1記載の実質的に純粋な合成ペプチド。
【請求項3】
ペプチドが、可溶性であるか、又はKLH、血清アルブミン若しくはビーズのような担体分子と複合体形成していることを特徴とする、請求項1又は2記載のペプチド。
【請求項4】
Apo−B100免疫沈降性抗体の産生を可能にすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のペプチドに特異的な抗体、又は実質的に同じ抗原特異性を有する該抗体の断片若しくは誘導体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載のペプチドで非ヒト動物を免疫すること、及び抗体又は抗体産生細胞を回収することにより産生されることを特徴とする、請求項5記載の抗体。
【請求項7】
ポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項5又は6のいずれか1項記載の抗体。
【請求項8】
モノクローナル抗体の混合物に相当することを特徴とする、請求項5又は6のいずれか1項記載の抗体。
【請求項9】
Apo−B100を沈降させることができることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項記載の抗体。
【請求項10】
特異的な抗Apo−B100抗体を産生する方法であって、請求項1〜4のいずれか1項記載のペプチドを非ヒト動物に投与すること、及び抗体又は抗体産生細胞を回収することを含む方法。
【請求項11】
特異的な抗Apo−B100抗体を産生する方法であって、請求項1〜4のいずれか1項記載のペプチドの混合物を非ヒト動物に投与すること、及び抗体又は抗体産生細胞を回収することを含む方法。
【請求項12】
生物学的試料中のApo−B100を検出又は定量する方法であって、試料を請求項5〜9のいずれか1項記載の抗体と、又は請求項10若しくは11のいずれか1項記載の方法により産生される抗体と接触させること、及び抗原抗体免疫複合体の存在を検出することを含む方法。
【請求項13】
試料中のApo−B100及びApo−B48を検出又は示差的に定量する方法であって、以下の工程:
(a)総抗Apo−B抗体により試料中の総Apo−Bの量を測定する工程、
(b)請求項5〜9のいずれか1項記載の、又は請求項10若しくは11のいずれか1項記載の方法により産生される特異的な抗Apo−B100抗体を活用して、該試料からApo−B100又はApo−B100を含む脂質粒子を除去する工程、及び
(c)総抗Apo−B抗体により、工程(b)後に得られた試料中の、又は該試料中のApo−B100を含まない脂質粒子中の、Apo−B48の量を測定する工程
を含む方法。
【請求項14】
工程(a)及び/又は(c)において、総抗Apo−Bに対するポリクローナル抗体が使用されることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
工程(b)において使用される特異的な抗Apo−B100抗体が、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の混合物又は免疫複合体の沈降を可能にする修飾抗体であることを特徴とする、請求項13又は14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
工程(b)において使用される特異的な抗Apo−B100抗体が、免疫沈降性ポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
抗原抗体免疫複合体の存在が、ELISA、RIA、EIA、比濁法又は任意の他の免疫学的測定法により測定されることを特徴とする、請求項12〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
抗原抗体免疫複合体の存在が、ネフェロメトリー分析法により測定されることを特徴とする、請求項12〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
生物学的試料中のApo−B100及びApo−B48を検出又は示差的に定量する方法であって、該試料を請求項5〜9のいずれか1項記載の抗体又は請求項10若しくは11のいずれか1項記載の方法により産生される抗体と接触させること、及びネフェロメトリー分析法によりApo−B100−抗体免疫複合体の形成を間接的に検出することを含む方法。
【請求項20】
生物学的試料が、血液又は血漿又は血清又は間質液又は脳脊髄液又は細胞培養上清の試料であることを特徴とする、請求項12〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
対象における脂質代謝の障害の発現の存在、素因又はリスクを検出する方法であって、請求項5〜9のいずれか1項記載の抗体により、又は請求項10若しくは11のいずれか1項記載の方法により産生される抗体により、対象からの試料中のApo−B48及びApo−B100の量をインビトロで示差的に定量することを含む方法。
【請求項22】
アテローム動脈硬化、又は例えば冠動脈疾患のような心血管疾患の発現の存在、素因又はリスクを検出するための、請求項21記載の方法。
【請求項23】
対象における脂質代謝の障害を矯正することを目的とした処置をモニタリングする方法であって、請求項5〜9のいずれか1項記載の抗体又は請求項10若しくは11のいずれか1項記載の方法により産生される抗体を活用して、該対象からの試料中のApo−B100及び/又はApo−B48をインビトロで定量することを含む方法。
【請求項24】
アテローム動脈硬化、又は例えば冠動脈疾患のような心血管疾患の処置をモニタリングするための、請求項23記載の方法。
【請求項25】
対象におけるLDL及びトリグリセリドに富んだリポタンパク質の細胞内取り込みを検出又はモニタリングする方法であって、請求項5〜9のいずれか1項記載の抗体又は請求項10若しくは11のいずれか1項記載の方法により産生される抗体を活用して、脂質粒子中に存在するApo−B48及び/又はApo−B100の量をインビトロで検出することを含む方法。
【請求項26】
対象の生理的状態を評価する方法であって、請求項5〜9のいずれか1項記載の抗体又は請求項10若しくは11のいずれか1項記載の方法により産生される抗体を活用して、該対象からの試料中のApo−B48及びApo−B100のレベルをインビトロで検出することを含む方法。
【請求項27】
Apo−B48及び/又はApo−B100の血清又は血漿濃度を調節することができる化合物又は食餌をスクリーニングするための、請求項5〜9のいずれか1項記載の、又は請求項10若しくは11のいずれか1項記載の方法により産生される抗体の使用。
【請求項28】
抗体が、毒素、標識、医薬又は任意の他の治療剤のような異種の断片と結合していることを特徴とする、請求項5〜9のいずれか1項記載の、又は請求項10若しくは11のいずれか1項記載の方法により産生される抗体。
【請求項29】
対象におけるApo−B100活性をインビボで選択的に調節するために設計された組成物を調製するための、請求項5〜9及び28のいずれか1項記載の、又は請求項10若しくは11のいずれか1項記載の方法により産生される抗体の使用。
【請求項30】
請求項5〜9及び28のいずれか1項記載の、又は請求項10若しくは11のいずれか1項記載の方法により産生される抗体と、薬学的に許容しうるビヒクル又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項31】
Apo−B活性を調節する化合物のスクリーニング方法における、請求項1〜4のいずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項32】
Apo−B100活性を特異的に調節するために設計された組成物を調製するための、請求項1〜4のいずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項33】
請求項1〜4のいずれか1項記載のペプチド、あるいは請求項5〜9及び28のいずれか1項記載の、又は請求項10若しくは11のいずれか1項記載の方法により産生される抗体を含むキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−515561(P2006−515561A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−514955(P2004−514955)
【出願日】平成15年6月19日(2003.6.19)
【国際出願番号】PCT/FR2003/001888
【国際公開番号】WO2004/000884
【国際公開日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【出願人】(503067111)
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
【Fターム(参考)】