説明

B7−H1ならびに癌の診断、予後診断および処置の方法

本発明は、癌を有する、または有することが疑われる被験体由来の組織においてB7−H1発現を評価することによって診断する方法、B7−H1−受容体相互作用に干渉する薬剤によって治療する方法、癌免疫療法から利益を得る見込みのある候補被験体を選択する方法、およびB7−H1の発現を阻害する方法を特色とする。B7−H1発現の評価を、B7−H1ポリペプチドまたはmRNAの検出によって実施し得る。例えば組織サンプルまたは組織サンプルに含まれる試験細胞を、B7−H1ポリペプチドに結合する抗体と接触させることによって、B7−H1ポリペプチドを検出し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/616,590号(2004年10月6日出願)および米国仮特許出願第60/642,794号(2005年1月11日出願)の優先権を主張する。米国仮特許出願第60/616,590号および米国仮特許出願第60/642,794号の開示は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【0002】
(技術的分野)
本発明は、癌組織において発現する免疫分子、および特に腫瘍細胞および腫瘍浸潤白血球における免疫分子の発現の評価に関連する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
癌の開始および進行の重要な決定要因は、癌細胞の、宿主の免疫系を回避する能力である。例えば、不適当な、不適切な、または阻害性の免疫分子が癌組織に存在することは、宿主の、癌に対する免疫反応を産生する能力を制限し得る。
【0004】
特許文献1および同時係属中の米国出願第09/649,108号;同第10/127,282号;および同第10/719,477号;ならびに特許文献2(国際出願第US/02/32364号)の開示が、その全体として本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【特許文献1】米国特許第6,803,192号明細書
【特許文献2】国際公開第03/049755号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
本発明は、部分的には、腎細胞癌(RCC)被験体において、死亡の危険性は、同時刺激ヒト糖タンパク質B7−H1を発現する、腫瘍細胞および/または腫瘍中の白血球の数に比例するという発見に基づく。本明細書中で使用される場合、「B7−H1」という用語は、あらゆる哺乳類種由来のB7−H1を指し、そして「hB7−H1」という用語は、ヒトB7−H1を指す。B7−H1ポリペプチドおよび核酸についてのさらなる詳細は、米国特許第6,803,192号および同時係属中の米国出願連続番号第09/649,108号において提供され、その開示はその全体として本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0006】
本発明は、癌組織の細胞によるB7−H1の発現に基づいて、組織の癌を有する、または発症する見込みのある被験体を診断する方法、免疫療法の成功を予測する方法、予後の方法、および治療の方法を提供する。腫瘍中の白血球は、本明細書中で「腫瘍浸潤白血球」または「腫瘍に浸潤している白血球」と呼ばれることがある。
【0007】
より具体的には、本発明は、被験体において癌を診断する方法を提供する。その方法は、以下のものを含む:(a)組織の癌を有することが疑われる、または発症する見込みのある被験体由来の組織サンプルを提供すること、ここでそのサンプルは試験細胞を含み、その試験細胞は組織の細胞または組織に浸潤している白血球である;および(b)試験細胞がB7−H1を発現しているかどうか評価すること、ここで試験細胞のいくつかまたは全てによる発現は、その被験体が癌を有することを示す。
【0008】
B7−H1発現の評価を、B7−H1ポリペプチドまたはmRNAの検出によって実施し得る。例えば組織サンプルまたは組織サンプルに含まれる試験細胞を、B7−H1ポリペプチドに結合する抗体と接触させることによって、B7−H1ポリペプチドを検出し得る。B7−H1ポリペプチドを検出する適当な方法は、制限無しに、蛍光フローサイトメトリー(FFC)または免疫組織学を含み得る。例えば組織サンプルをB7−H1 mRNAにハイブリダイズする核酸プローブと接触させることによって(例えばインサイチューハイブリダイゼーションによるような)、または逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応によって、B7−H1 mRNAを検出し得る。その組織は、あらゆる臓器または解剖学的システムの組織であり得、そして制限無しに、肺、上皮、結合、血管、筋肉、神経、骨格、リンパ、前立腺、子宮頚部、乳房、脾臓、胃、腸、口腔、食道、子宮、卵巣、または精巣組織を含み得る。その組織はまた、腎組織であり得る。その被験体は、例えばヒトのような哺乳類であり得る。
【0009】
本発明の別の局面は、免疫療法の候補を同定する方法である。この方法は、以下のものを含む:(a)組織の癌を有する被験体由来の組織サンプルを提供すること、ここでその組織サンプルは、試験細胞を含み、その試験細胞は癌細胞または腫瘍浸潤白血球である;および(b)B7−H1を発現する、組織サンプル中の試験細胞のレベルを評価すること、ここでもしB7−H1発現が試験細胞において検出されなければ、またはもし免疫阻害閾値レベルより少ない試験細胞がB7−H1を発現するなら、その被験体はより免疫療法から利益を得る見込みがある。
【0010】
例えば診断の方法に関して上記で記載した方法のいずれかを用いて、B7−H1ポリペプチドまたはmRNAを検出することによって、B7−H1のレベルを評価し得る。その組織は、あらゆる臓器または解剖学的システムの組織であり得、そして制限無しに、肺、上皮、結合、血管、筋肉、神経、骨格、リンパ、前立腺、子宮頚部、乳房、脾臓、胃、腸、口腔、食道、子宮、卵巣、または精巣組織を含み得る。その組織はまた、腎組織であり得る。その被験体は、例えばヒトのような哺乳類であり得る。その癌は、あらゆる癌であり得、そして例えば腎細胞癌を含む。
【0011】
別の実施態様において、本発明は癌を有する被験体の予後を決定する方法を特色とする。この方法は、以下のものを含む:(a)組織の癌を有する被験体由来の組織サンプルを提供すること、ここでその組織サンプルは、試験細胞を含み、その試験細胞は癌細胞または腫瘍浸潤白血球である;および(b)B7−H1を発現する、組織サンプル中の試験細胞のレベルを評価すること、ここでもし予後レベル、または予後レベルより多い試験細胞がB7−H1を発現するなら、その被験体は、予後レベルより少ない試験細胞がB7−H1を発現するよりも、癌で死亡する見込みが高い。予後レベルは、当該分野で公知の統計学的臨床分析、例えば本明細書中で記載されたものを行うことによって得られた、前もって決定された値である。例えば診断の方法および免疫療法の方法に関して上記で列挙したものを含む、当該分野で公知の様々な方法のいずれかを使用して、B7−H1ポリペプチドまたはB7−H1 mRNAを検出することによって、B7−H1の評価を実施し得る。その組織サンプルはあらゆる組織であり得、そして例えば上記で記載したもののいずれも含み得る。組織を提供する被験体は、哺乳類、例えばヒトであり得る。
【0012】
本発明のさらに別の局面は、治療の方法である。その方法は、以下のものを含む:(a)癌を有する被験体を同定すること、ここで癌の細胞のいくらかまたは全て、または癌の腫瘍浸潤白血球のいくらかまたは全てが、B7−H1を発現する;および(b)被験体に、B7−H1およびB7−H1の受容体間の相互作用に干渉する薬剤を送達すること。その薬剤は、B7−H1またはB7−H1の受容体、例えばPD−1受容体に結合し得る。その薬剤は、B7−H1に結合する、またはB7−H1の受容体に結合する、抗体または抗体断片(例えばFab’、F(ab’)、または1本鎖Fv(scFv)断片);可溶性B7−H1またはB7−H1の可溶性機能的断片;B7−H1の可溶性受容体またはその可溶性機能的断片であり得る。望ましい場合にはいつでも、その薬剤を、1つまたはそれ以上の免疫調節性サイトカイン、成長因子、または血管新生抑制因子の投与の前、それと同時、または後に投与し得る。そのような免疫調節性サイトカイン、成長因子、および血管新生抑制因子の例は、制限無しに、インターロイキン(IL)−1から25までのいずれか、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、エンドスタチン、アンジオスタチン、およびトロンボスポンジンを含む。薬剤および/または1つまたはそれ以上の免疫調節性サイトカイン、成長因子、または血管新生抑制因子の投与は、全身性(例えば静脈内)、または局所性、例えば手術中に、癌細胞および/または腫瘍浸潤白血球を含む組織への直接的な注射または注入により得る。その癌は、制限無しに、血液癌、神経癌、黒色腫、乳癌、肺癌、頭頚部癌、胃腸癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、尿生殖器癌、骨癌、または血管癌であり得る。
【0013】
本発明のさらに別の局面は、腫瘍細胞または腫瘍浸潤白血球においてB7−H1の発現を阻害する方法である。その方法は、以下のものを含む:(a)癌を有する被験体を同定すること、その癌はB7−H1を発現する標的細胞を含み、その標的細胞は腫瘍細胞または腫瘍浸潤白血球である;および(b)標的細胞に(i)B7−H1転写物にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド、ここでそのアンチセンスオリゴヌクレオチドは細胞においてB7−H1の発現を阻害する;または(ii)B7−H1干渉RNA(RNAi)を導入すること。導入工程は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAiの被験体への投与、および標的細胞によるオリゴヌクレオチドまたはRNAiの取り込みを含み得る。あるいは、導入工程は、アンチセンスオリゴヌクレオチドに相補的な核酸に作動可能に連結した転写調節因子(TRE)を含む核酸の、被験体への投与および細胞による取り込みを含み得、ここで細胞内でのヌクレオチド配列の転写が、アンチセンスオリゴヌクレオチドを産生する。さらに、導入工程は、(a)RNAiのセンスおよびアンチセンス鎖がTREの指示の下で転写され得る;または(b)RNAiのセンスおよびアンチセンス鎖がどちらも単一のTREの指示の下で転写され得る核酸の、被験体への投与および細胞による取り込みを含み得る。
【0014】
その組織サンプルは、肺、上皮、結合、血管、筋肉、神経、骨格、リンパ、前立腺、子宮頚部、乳房、脾臓、胃、腸、口腔、食道、皮膚、肝臓、膀胱、甲状腺、胸腺、副腎、脳、胆嚢、膵臓、子宮、卵巣、または精巣組織であり得る。その組織はまた、腎臓組織であり得る。その組織の癌は、あらゆる癌であり得、そして例えば腎細胞癌を含む。
【0015】
被験体は哺乳類であり得、そして例えばヒト、非ヒト霊長類(例えばサル)、ウマ、ウシ(または雄ウシ(ox)または雄ウシ(bull))、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット、またはスナネズミを含む。
【0016】
本明細書中で使用される場合、「B7−H1およびB7−H1の受容体間の相互作用に干渉する」は、(a)B7−H1分子および受容体間に実質的に物理的相互作用が存在しないように、B7−H1分子およびB7−H1受容体間の物理的相互作用を完全に阻害すること;または(b)物理的相互作用がB7−H1および/またはB7−H1受容体を含む細胞にシグナルを伝達しないか、または細胞の抗腫瘍活性に実質的に影響を与えないシグナルを伝達するように、B7−H1分子および受容体間の相互作用を修飾することを意味する。
【0017】
「ポリペプチド」および「タンパク質」は交換可能に使用され、そして長さまたは翻訳後修飾に関わらず、あらゆるアミノ酸のペプチド結合鎖を意味する。本発明に有用なポリペプチドは、対応する野生型ポリペプチドと同一であるが、50以下(例えば45;40;35;30;25;20;19;18;17;16;15;14;13;12;11;10;9;8;7;6;5;4;3;2;または1以下)の保存的置換で異なる変異ポリペプチドを含む。必要な全ては、その変異ポリペプチドが、少なくとも20%(例えば、少なくとも25%;30%;35%;40%;45%;50%;60%;70%;80%;85%;90%;93%;95%;96%;97%;98%;99%;99.5%;99.8%;99.9%;または100%またはそれ以上)の野生型ポリペプチドの活性を有することである。保存的置換は、典型的には以下のグループ内の置換を含む:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシンおよびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリン、およびスレオニン;リシン、ヒスチジン、およびアルギニン;およびフェニルアラニンおよびチロシン。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「腫瘍浸潤白血球」は、Tリンパ球(CD8Tリンパ球および/またはCD4Tリンパ球のような)、Bリンパ球、または顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(すなわち指状突起樹状細胞)、組織球、およびナチュラルキラー細胞を含む、他の骨髄系統細胞であり得る。
【0019】
他に規定されなければ、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。対立する場合、定義を含む本文書が統制する。好ましい方法および材料を以下で記載するが、本明細書中で記載したものと同様のまたは同等の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用し得る。本明細書中で言及した全ての出版物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体として参考文献に組み込まれる。本明細書中で開示された材料、方法、および実施例は、実例となるのみであり、そして制限することを意図しない。
【0020】
本発明の他の特徴および利点が、以下の説明から、図から、および請求から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(詳細な説明)
本発明者は、同時刺激糖タンパク質hB7−H1を発現する、増加したレベルの腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤白血球を有する腎細胞癌(RCC)被験体は、RCCによる死亡の増加した危険性を有することを発見した。それに加えて、増加したレベルのhB7−H1発現腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤白血球は、より高い悪性度の腫瘍と関係しており、そしてこの関連は、例えば腫瘍、リンパ節、転移(TNM)ステージ;原発性腫瘍サイズ;核グレード;および組織学的腫瘍壊死を含む、RCCの進行の伝統的な前兆に関して調整した後でも持続した。
【0022】
正常な、非活性化哺乳類細胞におけるB7−H1の発現は、独占的でないにしても大部分、マクロファージ系統細胞に限られ、そしてT細胞活性化の調節のために潜在的な同時刺激シグナルの供給源を提供する。対照的に、腫瘍細胞による異常なB7−H1の発現は、T細胞機能および生存の障害と結びつけられ、不完全な宿主抗腫瘍免疫を引き起こす。
【0023】
発明者は、ヒトRCC腫瘍がB7−H1を発現することを発見した。特に、hB7−H1は、腎細胞癌(RCC)腫瘍およびRCC腫瘍に浸潤する白血球によって発現されることを発見した。対照的に、そこから明細胞腫瘍が起こると考えられる腎皮質の近位尿細管は、hB7−H1を発現しなかった。
【0024】
臨床標本を、Mayo Clinic Nephrectomy Registryから、2000年および2002年の間に、片側性明細胞RCCのために、根治的腎摘出術または腎保存手術で治療された196人の被験体から得た。標本におけるhB7−H1発現の免疫組織学的検出および定量は、その腫瘍標本が高いhB7−H1の腫瘍内発現レベル(腫瘍細胞単独、白血球単独、または腫瘍および/または白血球を合わせたものによって寄与される)を示した被験体は、高悪性度の腫瘍を有し、そしてRCCによる死亡の著しく増加した危険性があることを明らかにした。
【0025】
増加した腫瘍細胞hB7−H1および腫瘍浸潤白血球hB7−H1の組み合わせ(高凝集腫瘍内hB7−H1)は、hB7−H1発現腫瘍細胞または腫瘍浸潤白血球単独のいずれかよりもさらに強力な被験体予後の予測変数であった。高凝集腫瘍内hB7−H1発現レベルも、局所リンパ節の関与、遠隔転移、進んだ核グレード、および組織学的腫瘍壊死の存在と有意に関連していた。
【0026】
活性化腫瘍特異的T細胞の機能および生存を損なうその能力に基づいて、腫瘍細胞(例えばRCC細胞)または浸潤白血球のいずれかによって発現されるB7−H1は、癌(例えばRCC)を有する被験体において通常観察される免疫抑制に寄与し得、そして進行癌の管理のための免疫療法(例えばIL−2、IL−12、IFN−α、ワクチン接種またはT細胞養子療法)に対する被験体の反応の決定的な決定要因として役立ち得る。これは、癌被験体に、B7−H1とその受容体(例えばPD−1)との相互作用に干渉する薬剤を投与することは、特にその高レベルの腫瘍内B7−H1発現が、以前に彼らを他の免疫療法の様式に対して無応答性またはほとんど無応答性にしていた被験体において、免疫療法の方法として役立ち得るという可能性を生じる。
【0027】
これらの発見は、下記で記載される本発明の方法を支持する。
【0028】
(診断の方法)
本発明は、被験体において癌を診断する方法を提供する。その方法は、(a)組織の癌を有することが疑われる、または発症する見込みのある被験体由来の組織サンプルを提供すること、そのサンプルは試験細胞を含み、その試験細胞は組織の細胞または組織に浸潤する白血球である;および(b)その試験細胞がB7−H1を発現しているかどうかを評価することを含む。いくらかまたは全ての試験細胞による発現は、その被験体が癌を有することを示す。広く様々な癌細胞がその表面にB7−H1を発現するので、本発明の方法は、あらゆるそのような癌を診断するために特に有用である。従って試験細胞は、例えば乳房細胞、肺細胞、大腸細胞、膵臓細胞、腎細胞、胃細胞、肝細胞、骨細胞、血液細胞(例えばリンパ系細胞、顆粒球性細胞、単球またはマクロファージ)、神経組織細胞、メラニン細胞、卵巣細胞、精巣細胞、前立腺細胞、子宮頚部細胞、膣細胞、膀胱細胞、または本明細書中で列挙されたあらゆる他の細胞であり得る。さらに、試験細胞は、上記で列挙された試験細胞のいずれかを含む関連組織に存在する白血球であり得る。組織に浸潤している白血球は、T細胞(CD4T細胞および/またはCD8T細胞)またはBリンパ球であり得る。そのような白血球はまた、好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、組織球またはナチュラルキラー細胞であり得る。被験体は哺乳類であり得、そして例えばヒト、非ヒト霊長類(例えばサル、ヒヒ、またはチンパンジー)、ウマ、ウシ(または雄ウシ(oxen)または雄ウシ(bulls))、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット、スナネズミ、またはマウスを含む。
【0029】
本明細書中で記載されるように、本発明は、多くの診断的利点および用途を提供する。本発明の方法において、B7−H1ポリペプチドおよび/またはmRNAのレベルを評価し得る。B7−H1のレベルを、組織サンプルにおいて評価して、その組織を得た被験体における癌の存在を診断または確認する。
【0030】
組織サンプルにおいてポリペプチドを検出する方法は、当該分野で公知である。例えば、B7−H1に特異的なエピトープに結合する抗体(またはその断片)を、その組織サンプル由来の試験細胞がB7−H1を発現しているかどうかを評価するために使用し得る。そのような抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であり得る。そのようなアッセイにおいて、抗体自身、またはそれに結合する2次抗体を、検出可能に標識し得る。あるいは、その抗体をビオチンと結合し得、そして検出可能に標識したアビジン(ビオチンに結合するポリペプチド)を使用して、ビオチン化抗体の存在を検出し得る。当業者に知られたこれらのアプローチの組み合わせ(「多層サンドイッチ」アッセイを含む)を使用して、その方法論の感受性を増強し得る。これらのタンパク質検出アッセイのいくつか(例えばELISAまたはウェスタンブロット)を細胞の溶解物に適用し得、そして他のもの(例えば免疫組織学的方法または蛍光フローサイトメトリー)を、組織学的切片または未溶解細胞懸濁液に適用し得る。その組織サンプルは、例えば肺、上皮、結合、血管、筋肉、神経、骨格、リンパ、前立腺、子宮頚部、乳房、脾臓、胃、腸、口腔、食道、皮膚、肝臓、腎臓、膀胱、甲状腺、副腎、脳、胆嚢、膵臓、子宮、卵巣、または精巣組織であり得る。
【0031】
組織サンプルにおいてmRNAを検出する方法は、当該分野で公知である。例えば、細胞を溶解し得、そして溶解物中または溶解物から精製または半精製したRNA中のmRNAを、制限無しに、検出可能に標識した遺伝子特異的DNAまたはRNAプローブを使用したハイブリダイゼーションアッセイ(例えばノーザンブロットアッセイ)および適当な遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーを使用した定量的または半定量的RT−PCR方法論を含む、様々な方法のいずれかによって検出し得る。あるいは、定量的または半定量的インサイチューハイブリダイゼーションアッセイを、例えば組織切片または未溶解細胞懸濁液、および検出可能に(例えば蛍光的または酵素)標識したDNAまたはRNAプローブを使用して行い得る。mRNAを定量する更なる方法は、RNA protection assay(RPA)およびSAGEを含む。
【0032】
B7−H1発現(RNAおよび/またはポリペプチド)のレベルを評価する方法は、定量的、半定量的、または定性的であり得る。従って、例えばB7−H1発現のレベルを、別々の値として決定し得る。例えば、定量的RT−PCRを使用する場合、定量的アッセイから得られる検出シグナルを、(a)B7−H1核酸配列(例えば、B7−H1cDNAまたはB7−H1転写物);または(b)B7−H1をコードする核酸配列を含むRNAまたはDNAの混合物の、公知の濃度の検出シグナルと関連付けることによって、B7−H1 mRNAの発現のレベルを、数値として測定し得る。あるいは、B7−H1発現のレベルを、当該分野で公知の様々な半定量的/定性的システムのいずれかを使用して評価し得る。従って、細胞または組織サンプルにおけるB7−H1の発現のレベルを、例えば(a)1つまたはそれ以上の「非常に良い」「良い」「可」「不可」および/または「不良」;(b)1つまたはそれ以上の「非常に高い」「高い」「平均」「低い」および/または「非常に低い」;または(c)1つまたはそれ以上の「++++」「+++」「++」「+」「+/−」および/または「−」として表現し得る。望ましい場合には、被験体由来の組織におけるB7−H1の発現のレベルを、(a)癌性でないことが公知の被験体の組織(例えば反対側の腎臓または肺、または無関係のリンパ節);または(b)関心のある癌を有さないことが公知の、好ましくはいかなる癌も有さないことが公知の、1人またはそれ以上の他の被験体由来の対応する組織からのB7−H1の発現と相対的に表現し得る。
【0033】
標識の量を評価する方法は、標識の性質に依存し、そして当該分野で周知である。適当な標識は、制限無しに、放射性核種(例えば125I、131I、35S、H、または32P)、酵素(例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、またはβ−ガラクトシダーゼ)、蛍光成分またはタンパク質(例えばフルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、または青色蛍光タンパク質(BFP))、または発光成分(例えばQuantum Dot Corporation、Palo Alto、CAによって供給される、QdotTMナノ粒子)を含む。他の適用可能なアッセイは、定量的免疫沈降または補体結合反応アッセイを含む。
【0034】
本発明の診断的アッセイにおいて、B7−H1を発現する、被験体由来の試験細胞の割合が、コントロール値よりも多いならば、被験体は癌を有するとして診断される。そのコントロール値は、例えば:(a)癌性でないことが公知である被験体の対応する組織(例えば反対側の腎臓または肺、または無関係のリンパ節)におけるB7−H1発現細胞の割合;または(b)関心のある癌を有さないことが公知の、好ましくはいかなる癌も有さないことが公知の、1人またはそれ以上の他の被験体由来の対応する組織におけるB7−H1発現細胞の割合であり得る。
【0035】
本発明の方法を、それ自身で、または癌を診断する他の手順と組み合わせて使用し得る。例えば、望ましいまたは好ましい場合には、癌性である、またはそうであることが疑われる組織サンプルにおける、B7−H1発現試験細胞のレベルを、有用な癌の診断マーカーである他の分子のレベルを評価する前、その間、またはその後に評価し得る。そのような診断マーカーは、制限無しに、腫瘍関連抗原(TAA)であり得る。関連のあるTAAは、制限無しに、癌胎児抗原(CEA)、MAGE(黒色腫抗原)1−4、6、および12、MUC(ムチン)(例えばMUC−1、MUC−2等)、チロシナーゼ、MART(黒色腫抗原)、Pmel17(gp100)、GnT−Vイントロン配列(N−アセチルグルコサミン転移酵素VイントロンV配列)、PSA(前立腺特異的抗原)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、PRAME(黒色腫抗原)、β−カテニン、MUM−1−B(黒色腫偏在性変異遺伝子産物)、GAGE(黒色腫抗原)1、BAGE(黒色腫抗原)2−10、c−ERB2(HER2/neu)、EBNA(エプスタインバーウイルス核抗原)1−6、gp75、ヒトパピローマウイルス(HPV)E6およびE7、p53m、肺抵抗タンパク質(LRP)、Bcl−2、Ki−67、およびVHL(フォンヒッペルリンダウ)遺伝子を含む。
【0036】
(免疫療法から利益を得る見込みがある癌被験体を同定する方法)
本発明の別の局面は、免疫療法の候補を同定する方法である。この方法は、組織の癌を有する被験体から組織サンプルを提供することを含む。その組織サンプルは試験細胞を含み、その試験細胞は癌細胞または腫瘍浸潤白血球である。B7−H1を発現する、組織サンプルにおける試験細胞のレベルを評価し、もしB7−H1発現が試験細胞において検出されなければ、または免疫−阻害閾値レベルより少ない試験細胞がB7−H1を発現するなら、その被験体はより免疫療法から利益を得る見込みがある。
【0037】
免疫−阻害閾値レベルは、B7−H1を発現する関連試験細胞の前もって決定されたレベルである。関心のある癌被験体由来の試験細胞が、B7−H1発現細胞の免疫−阻害閾値レベル(関連する癌に関して前もって決定されたような)より少ないレベルのB7−H1発現細胞を含むなら、その被験体は、同じ癌を有するが、その対応する試験細胞が、免疫−阻害閾値レベルと同等の、またはそれより多いレベルのB7−H1発現細胞を含む別の被験体よりも、免疫療法からより利益を得る見込みがある。免疫−阻害閾値レベルを、当該分野で公知の統計学的臨床分析、例えば本明細書中で記載されたものを行うことによって得ることができる。
【0038】
試験細胞がB7−H1を発現しているかどうかを評価する方法は、診断の方法に関して上記で記載されたものと同じである。そのような方法は、これも上記で記載されたように、定量的、半定量的、または定性的であり得る。
【0039】
「免疫療法」は、能動免疫療法または受動免疫療法であり得る。能動免疫療法に関して、治療は、免疫反応修飾薬剤の投与によって腫瘍に対して反応する、内因性宿主免疫系のインビボ刺激に依存する。これらの免疫反応修飾薬剤を、下記で記載する。
【0040】
受動免疫療法に関して、治療は確立した腫瘍免疫反応性を有する薬剤(免疫エフェクター細胞または抗体)の送達を含み、それは直接的、または間接的に抗腫瘍効果を媒介し得、そして必ずしも無傷の宿主免疫系に依存しない。免疫エフェクター細胞の例は、白血球、例えば上記で議論したような腫瘍浸潤白血球、Tリンパ球(CD8細胞傷害性Tリンパ球および/またはCD4T−ヘルパーリンパ球のような)、キラー細胞(ナチュラルキラー細胞およびリンホカイン活性化キラー細胞のような)、B細胞および抗原提示細胞(樹状細胞およびマクロファージのような)を含む。
【0041】
免疫療法はまた、1つまたはそれ以上の、下記で(「治療の方法」および「B7−H1の発現を阻害する方法」において)記載される方法であり得る。
【0042】
(予後の方法)
別の実施態様において、本発明は、癌を有する被験体の予後を決定する方法を特色とする。この方法は、(a)組織の癌を有する被験体由来の組織サンプルを提供すること、その組織サンプルは試験細胞を含み、その試験細胞は癌細胞または腫瘍浸潤白血球である;および(b)B7−H1を発現する、組織サンプルにおける試験細胞のレベルを評価することを含む。予後レベル、または予後レベルより多い試験細胞がB7−H1を発現するなら、その被験体は、予後レベルより少ない試験細胞がB7−H1を発現するよりも、より癌で死亡する可能性が高い。予後レベルは、当該分野で公知の統計学的臨床分析、例えば本明細書中で記載されるものを行うことによって得られる、前もって決定された値である。
【0043】
従って、例えば癌被験体由来の試験細胞が、有意なレベルのB7−H1発現細胞を含むが、(関連する癌に関して前もって決定されたような)予後レベルより少ないB7−H1発現細胞を含むなら、その癌被験体は、同じ癌を有するが、対応する試験細胞が検出可能なB7−H1発現細胞を含まない被験体より、より癌で死亡する見込みは高くない。他方、癌被験体由来の試験細胞が、予後レベルより多いB7−H1発現細胞を含むなら、その癌被験体は、同じ癌を有するが、その対応する試験細胞が検出可能なB7−H1発現細胞を含まないか、またはB7−H1発現細胞の予後レベルより低いB7−H1発現細胞のレベルを含む被験体より、より癌で死亡する見込みがある。さらに、適当な試験細胞集団において、予後レベルより多いB7−H1発現細胞のレベルを有する癌被験体に関して、癌で死亡する機会は、試験細胞集団における、B7−H1発現細胞のレベルに比例する可能性がある。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「試験細胞がB7−H1を発現しているかどうか評価すること」または「B7−H1を発現する、組織サンプルにおける試験細胞のレベルを評価すること」は、上記で記載された方法のいずれかによって決定し得る。予後の方法は、一般的に定量的または半定量的である。
【0045】
被験体は、「診断の方法」に関して列挙されたもののいずれかであり得、そして癌は以下のいずれかであり得る:腎臓癌、血液癌(例えば白血病またはリンパ腫)、神経癌、黒色腫、乳癌、肺癌、頭頚部癌、胃腸癌、肝臓癌、膵臓癌、膵臓癌、尿生殖器癌、骨癌、または血管癌。
【0046】
(治療の方法)
本発明はまた、治療の方法を含む。その方法は、(a)癌を有する被験体を同定すること、いくらかまたは全ての癌細胞、またはいくらかまたは全ての癌の腫瘍浸潤白血球がB7−H1を発現している;および(b)被験体に、B7−H1およびB7−H1の受容体間の相互作用に干渉する薬剤を送達することを含み得る。これらの方法を、上記で記載した方法のいずれかの実施に続いて、またはそれ無しで行い得る。その薬剤は、抗体または例えばB7−H1に結合するFab’、F(ab’)、またはscFv断片のような、抗体断片であり得る。その薬剤はまた、可溶性B7−H1またはB7−H1の可溶性機能的断片;B7−H1の可溶性受容体またはその可溶性機能的断片;B7−H1の受容体、例えばPD−1受容体に結合する抗体または抗体断片であり得る。PD−1受容体は、米国特許第6,808,710号においてより詳しく記載され、その開示はその全体として本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0047】
1つの実施態様において、その薬剤自身を被験体に投与する。一般的に、その薬剤を薬剤学的に許容可能な担体(例えば生理的食塩水)に懸濁し、そして経口または静脈内(i.v.)注入によって投与する、または皮下、筋肉内、くも膜下腔内、腹腔内、直腸内、膣内、鼻腔内、胃内、気管内、または肺内に注射する。その薬剤を、例えば免疫反応の部位、例えば影響された組織または臓器の領域におけるリンパ節または脾臓に直接送達し得る。必要な投与量は、投与経路の選択;処方の性質;被験体の疾病の性質;被験体の大きさ、体重、表面積、年齢および性別;投与される他の薬剤;および付き添う医師の判断に依存する。適当な投与量は、0.0001−100.0mg/kgの範囲内である。利用可能な様々な化合物および様々な投与経路の異なる効率を考慮して、必要な投与量の広い変動が予期される。例えば、経口投与は、i.v.注射による投与よりも高い投与量を必要することが予期される。これらの投与量レベルの変動を、当該分野でよく理解されているように、最適化のための標準的な経験的日常業務を用いて調整し得る。投与は単回または複数回(例えば2−、3−、4−、6−、8−、10−、20−、50−、100−、150−、またはそれ以上倍)であり得る。適当な送達媒体(例えばポリマー性微粒子または植え込み型装置)に化合物を封入することは、送達、特に経口送達の効率を増加し得る。
【0048】
あるいは、薬剤がポリペプチドである場合、そのポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを、哺乳類の適当な細胞に送達し得る。コーディング配列の発現を、被験体の体内のあらゆる細胞に指示し得る。しかし、発現を、好ましくは影響を受けた組織または臓器を流れるリンパ組織中の、またはそれに近い細胞に指示する。コーディング配列の発現を、例えば癌組織を構成する細胞(例えば腫瘍浸潤白血球および腫瘍細胞)または免疫関連細胞、例えばB細胞、マクロファージ/単球、または指状突起樹状細胞に指示し得る。これを、例えば当該分野で公知のポリマー性、生物分解性微粒子またはマイクロカプセル送達装置および/または組織または細胞特異的抗体を用いることによって達成し得る。
【0049】
核酸の取り込みを達成するための別の方法は、リポソームを使用することであり、それを標準的な方法によって調製し得る。ベクターを単独でこれらの送達媒体に組み込み得る、または組織特異的抗体と同時に組み込み得る。あるいは、静電気または共有結合力によってポリ−L−リシンに結合した、プラスミドまたは他のベクターからなる分子結合物を調製し得る。ポリ−L−リシンは、リガンドに結合し、それは標的細胞の受容体に結合し得る[Cristianoら(1995)、J.Mol.Med.73:479]。あるいは、組織特異的標的化を、当該分野で公知である組織特異的転写調節因子(TRE)の使用によって達成し得る。「裸のDNA」(すなわち送達媒体無し)の、筋肉内、皮内、または皮下部位への送達は、インビボ発現を達成するための別の手段である。
【0050】
関連するポリヌクレオチド(例えば発現ベクター)において、開始メチオニンおよび任意で標的化配列を有する、関心のあるポリペプチドをコードする核酸配列を、プロモーターまたはエンハンサー−プロモーターの組み合わせに作動可能に連結する。短いアミノ酸配列が、タンパク質を特定の細胞内区画へ指示するシグナルとして作用し得る。そのようなシグナル配列が、米国特許第5,827,516号において詳しく記載され、その開示はその全体として本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0051】
エンハンサーは、時間、場所、およびレベルに関して発現特異性を提供する。プロモーターと異なり、エンハンサーは、プロモーターが存在するなら、転写開始部位から可変の距離に位置する場合に機能し得る。エンハンサーはまた、転写開始部位から下流にも位置し得る。コーディング配列をプロモーターのコントロール下に置くために、ペプチドまたはポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位が、プロモーターの1および約50ヌクレオチド下流(3’)の間に位置する必要がある。発現ベクターのコーディング配列を、転写終了領域に作動可能に連結する。
【0052】
適当な発現ベクターは、プラスミドおよび特にヘルペスウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、弱毒化ワクシニアウイルス、カナリアポックスウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスのようなウイルスベクターを含む。
【0053】
ポリヌクレオチドを、薬剤学的に許容可能な担体中で投与し得る。薬剤学的に許容可能な担体は、ヒトへの投与に適当な、生物学的に適合性の媒体、例えば生理的食塩水またはリポソームである。治療的に有効な量は、治療した被験体において医学的に望ましい結果(例えば減少した癌細胞の増殖)を産生し得るポリヌクレオチドの量である。医学分野において周知であるように、あらゆる一人の被験体のための投与量は、被験体の大きさ、体の表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間および経路、一般的な健康、および同時に投与される他の薬剤を含む多くの因子に依存する。投与量は変動するが、ポリヌクレオチドの投与のために好ましい投与量は、約10から約1012コピーのポリヌクレオチド分子である。この投与量を、必要に応じて反復して投与し得る。投与経路は、上記で列挙したもののいずれかであり得る。
【0054】
それに加えて、その方法は、エキソビボ手順であり得、それは被験体から得た、または被験体から得た細胞の子孫であり、そして細胞が薬剤を発現するように、B7−H1およびB7−H1の受容体間の相互作用に干渉する1つまたはそれ以上の薬剤をコードする1つまたはそれ以上の核酸で、エキソビボでトランスフェクトまたは形質転換した、組み換え細胞を提供すること;およびその細胞を被験体に投与することを含む。その細胞は、癌組織から(例えば、腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤白血球)、または好ましくはこれらの細胞が投与される被験体から、または別の被験体から得た非癌性組織から得た細胞であり得る。細胞のドナーおよびレシピエントは、同一の主要組織適合複合体(MHC;ヒトにおけるHLA)ハプロタイプを有し得る。最適には、ドナーおよびレシピエントは、ホモ接合体双生児または同一の個人(すなわち自己の)である。例えばレシピエントが重症の免疫無防備状態である、ミスマッチの細胞しか入手可能でない、および/または組み換え細胞の短期の生存のみが必要または望ましい状況において、組み換え細胞をまた、その組み換え細胞と共通のMHC分子を有さない、または1、2、3、または4つしか共通のMHC分子を有さないレシピエントに投与し得る。
【0055】
薬剤の効果を、インビトロおよびインビボの両方で評価し得る。簡単には、その薬剤を、例えば(a)B7−H1およびB7−H1の受容体間の相互作用を阻害する、(b)癌細胞の増殖を阻害する、(c)癌細胞の死を誘導する、または(d)癌細胞を、白血球(例えばリンパ球および/またはマクロファージ)によって産生される細胞免疫反応により感受性にする、その能力に関して試験し得る。インビボ研究に関して、その薬剤を、例えば動物(例えばマウス癌モデル)に注射し得、そして次いでその癌に対する効果を評価する。その結果に基づいて、適当な投与量範囲および投与経路を決定し得る。
【0056】
本出願を通して使用される場合、「抗体」という用語は、当該分野で公知の様々な方法のいずれか1つによって産生される、抗体分子全体(例えばIgM、IgG、IgA、IgD、またはIgE)を指す。その抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であり得る。非ヒト(例えばマウス、ラット、スナネズミ、またはハムスター)抗体から作成された、キメラ抗体およびヒト化抗体も、本発明のために有用である。本明細書中で使用される場合、「抗体断片」という用語は、抗原結合断片、例えばFab、F(ab’)、Fv、および1本鎖Fv(scFv)断片を指す。scFv断片は、単一のポリペプチド鎖であり、そのscFvを得た抗体の重鎖および軽鎖可変領域の両方を含む。
【0057】
分子の結合ドメインを含む抗体断片を、公知の技術によって産生し得る。例えば:F(ab’)断片を、抗体分子のペプシン消化によって産生し得る;およびFab断片を、F(ab’)断片のジスルフィド結合を還元することによって、または抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することによって産生し得る。例えば、National Institutes of Health、1 Current Protocols In Immunology、Coliganら編、2.8、2.10(Wiley Interscience、1991)を参照のこと。scFv断片を、例えば米国特許第4,642,334号において記載されたように産生し得、それはその全体として本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0058】
キメラおよびヒト化モノクローナル抗体を、当該分野で公知の組み換えDNA技術によって、例えばRobinsonら、国際特許公報PCT/US86/02269;Akiraら、欧州特許出願184,187;Taniguchi、欧州特許出願171,496;Morrisonら、欧州特許出願173,494;Neubergerら、PCT出願WO86/01533;Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Cabillyら、欧州特許出願125,023;Betterら(1988)Science 240、1041−43;Liuら(1987)J.Immunol.139、3521−26;Sunら(1987)PNAS 84、214−18;Nishimuraら(1987)Canc.Res.47、999−1005;Woodら(1985)Nature 314、446−49;Shawら(1988)J.Natl.Cancer Inst.80、1553−59;Morrison(1985)Science 229、1202−07;Oiら(1986)BioTechniques 4、214;Winter、米国特許第5,225,539号;Jonesら(1986)Nature 321、552−25;Veroeyanら(1988)Science 239、1534;およびBeidlerら(1988)J.Immunol.141、4053−60において記載された方法を用いて産生し得る。
【0059】
本明細書中で使用される場合、B7−H1受容体の「機能的断片」は、野生型成熟B7−H1受容体より小さく、そしてB7−H1の野生型成熟受容体のB7−H1に結合する能力の、少なくとも10%(例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%またはそれ以上)を有する、B7−H1の受容体の断片を意味する。本明細書中で使用される場合、B7−H1の「機能的断片」は、野生型成熟B7−H1ポリペプチドよりも小さく、そして野生型成熟B7−H1のB7−H1受容体に結合する能力の、少なくとも10%(例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%またはそれ以上)を有する、野生型成熟B7−H1ポリペプチドの断片を意味する。分子のお互いに結合する能力を試験および比較する方法は、当業者に公知である。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「可溶性」という用語は、本発明において使用される受容体を、その細胞膜結合対応物から区別する。可溶性受容体、または受容体の可溶性機能的断片は、例えば細胞外(リガンド結合)ドメインを含み得るが、受容体の細胞表面への保持を引き起こす膜貫通領域を欠く。可溶性受容体またはその断片を産生する方法は、当該分野で公知であり、そして例えば受容体の細胞外ドメインをコードするDNA断片を、適当な宿主細胞/発現ベクターシステムにおいて発現することを含む。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「治療」という用語は、疾患、疾患の症状、疾患に二次的な病状、または疾患に対する素因を、治療する(cure)、緩和する、軽減する、治療する(remedy)、予防する、または寛解させる目的で、薬剤を、癌を有する(または癌を有することが疑われる)被験体に投与することを意味する。治療薬(または組成物)の「有効な量」は、治療した被験体において、医学的に望ましい結果を産生し得る薬剤(または組成物)の量である。本発明の方法を、単独で、または他の薬剤または療法と組み合わせて実施し得る。
【0062】
本明細書中で使用される場合、「予防」は、疾患の症状の完全な防止、疾患の症状の発症の遅延、または続いて発症した疾患の症状の重症度の低下を意味し得る。本明細書中で使用される場合、「治療」は、疾患の症状の完全な消滅、または疾患の症状の重症度の減少を意味し得る。
【0063】
(B7−H1の発現を阻害する方法)
本発明の別の局面は、腫瘍細胞または腫瘍浸潤白血球において、B7−H1の発現を阻害する方法である。その方法は:(a)癌を有する被験体を同定すること、その癌はB7−H1を発現する標的細胞を含み、その標的細胞は腫瘍細胞または腫瘍浸潤白血球である;および(b)標的細胞に:(i)B7−H1転写物にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド、細胞においてB7−H1の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド;または(ii)B7−H1干渉RNA(RNAi)を導入することを含む。これらの方法を、上記で記載した方法のいずれかの実施に続いて、またはそれ無しに、実施し得る。
【0064】
上記で述べたように、異常なB7−H1発現は、腫瘍特異的T細胞の機能および生存を損なうので、B7−H1の細胞発現を阻害することによって、およびB7−H1およびその受容体間の相互作用に干渉することによって、抗腫瘍免疫反応を回復し得る見込みがある。従って、本方法は、本明細書中で引用されたあらゆる癌の治療および/または予防に有用であり得る。本方法を、例えばRCCの治療に使用し得る。
【0065】
アンチセンス化合物を一般的に、例えば標的mRNA分子の翻訳に直接干渉することによって、標的mRNAのRNA分解酵素Hによる分解によって、mRNAの5’キャッピングに干渉することによって、5’キャップのマスキングによって標的mRNAに対する翻訳因子の結合を防止することによって、またはmRNAのポリアデニル化を阻害することによって、タンパク質発現に干渉するために使用する。タンパク質発現の干渉は、アンチセンス化合物のその標的mRNAとのハイブリダイゼーションによって起こる。アンチセンス化合物との相互作用のために関心のある標的mRNA上の特異的標的化部位を選択する。従って、例えばポリアデニル化の調節のために、mRNA標的上の好ましい標的部位は、ポリアデニル化シグナルまたはポリアデニル化部位である。mRNAの安定性を低下させるまたは分解するために、不安定化配列が好ましい標的部位である。1つまたはそれ以上の標的部位を同定したら、望ましい効果を与えるために、標的部位に十分相補的な(すなわち生理学的条件下で十分よく、および十分な特異性でハイブリダイズする)オリゴヌクレオチドを選択する。
【0066】
本発明に関して、「オリゴヌクレオチド」という用語は、RNA、DNA、またはいずれかの模倣物のオリゴマーまたはポリマーを指す。その用語は、天然に存在する核塩基、糖、およびヌクレオチド間共有結合(バックボーン)からなるオリゴヌクレオチドを含む。RNAおよびDNAの正常な結合またはバックボーンは、3’から5’へのホスホジエステル結合である。しかしその用語はまた、天然に存在する成分のみを含むオリゴヌクレオチドと同様の方式で機能する、全部が天然に存在しない成分からなる、または天然に存在しない成分を含む部分を有するオリゴヌクレオチドも指す。そのような修飾置換オリゴヌクレオチドは、例えば増強された細胞の取り込み、増強された標的配列への親和性、およびヌクレアーゼ存在下での増加した安定性のような、望ましい性質のために、多くの場合天然の形式よりも好ましい。模倣物において、コア塩基(ピリミジンまたはプリン)構造は一般的に保存されるが、(1)糖は修飾されるか、または他の成分と置換され、および/または(2)核塩基間の結合は修飾される。非常に有用であることが証明された核酸模倣物の1つの種類は、タンパク質核酸(Protein Nucleic Acid)(PNA)と呼ばれる。PNA分子において、糖バックボーンはアミドを含むバックボーン、特にアミノエチルグリシンバックボーンに置換される。塩基は保持され、そしてバックボーンのアミド部分のアザ窒素原子に直接結合する。PNAおよび本発明において有用な他の模倣物が、米国特許第6,210,289号において詳しく記載され、その開示はその全体として本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0067】
本発明の方法において使用されるアンチセンスオリゴマーは、一般的に約8から約100(例えば約14から約80または約14から約35)の核塩基(または核塩基が天然に存在する場合にはヌクレオシド)を含む。
【0068】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを、それ自身細胞に導入し得る、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする核酸配列(TREに作動可能に連結した)を含む発現ベクターを細胞に導入し得る。後者の場合において、発現ベクターによって産生されるオリゴヌクレオチドは、RNAオリゴヌクレオチドであり、そしてRNAオリゴヌクレオチドは、全体に天然に存在する成分からなる。
【0069】
アンチセンスオリゴヌクレオチドそれ自体が投与される場合、それらを薬剤学的に許容可能な担体(例えば生理的食塩水)に懸濁し、そしてB7−H1およびB7−H1の受容体間の相互作用に干渉する薬剤に関して上記で記載されたのと同じ条件下で投与し得る。
【0070】
アンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする核酸配列(TREに作動可能に連結された)を含む発現ベクターを被験体に投与する場合、コーディング配列の発現を、B7−H1およびB7−H1の受容体間の相互作用に干渉するポリペプチドを発現するベクターに関して上記で記載された、細胞−または組織−標的化技術のいずれかを用いて、被験体の体内の腫瘍細胞または腫瘍浸潤白血球に指示し得る。
【0071】
B7−H1DNAに相同性の2本鎖干渉RNA(RNAi)も、腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤白血球においてB7−H1の発現を抑制するために使用し得る。例えば、Fireら(1998)Nature 391:806−811;RomanoおよびMasino(1992)Mol.Microbiol.6:3343−3353;Cogoniら(1996)EMBO J.15:3153−3163;CogoniおよびMasino(1999)Nature 399:166−169;MisquittaおよびPaterson(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:1451−1456;およびKennerdellおよびCarthew(1998)Cell 95:1017−1026を参照のこと。これらの記事全ての開示は、その全体として本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0072】
RNAiのセンスおよびアンチセンスRNA鎖を、当該分野で公知の手順を用いた化学的合成および酵素的ライゲーション反応を用いて個々に構築し得る。例えば、各鎖を、天然に存在するヌクレオチド、または分子の生物学的安定性を増加させるために、またはセンスおよびアンチセンス鎖間に形成される2本鎖の物理的安定性を増加させるためにデザインされた、様々に修飾されたヌクレオチド、例えばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを用いて、化学的に合成し得る。センスおよびアンチセンス鎖をまた、標的B7−H1配列(全長または断片)がセンスまたはアンチセンス方向でサブクローニングされた発現ベクターを用いて、生物学的に産生し得る。センスおよびアンチセンスRNA鎖を、dsRNAを細胞に送達する前にインビトロでアニーリングし得る。あるいは、アニーリングは、センスおよびアンチセンス鎖が腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤白血球に連続的に送達された後、インビボで起こり得る。
【0073】
2本鎖RNAi干渉をまた、センスおよびアンチセンスRNAが別々のプロモーターの指示下で転写され得る、またはセンスおよびアンチセンス配列を両方含む単一のRNA分子が単一のプロモーターの指示下で転写され得るポリヌクレオチドを、腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤白血球に導入することによって達成し得る。
【0074】
腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤白血球においてB7−H1の発現を阻害するために、ある薬剤および小分子も使用し得ることが理解される。
【0075】
当業者は、RNAi、薬剤、および小分子法は、上記で記載されたアンチセンス法と同様に、インビトロおよびインビボであり得ることを認識する。さらに、送達の方法および条件は、アンチセンスオリゴヌクレオチドに関するものと同じである。
【0076】
B7−H1およびB7−H1の受容体間の相互作用を阻害する、およびB7−H1の発現を阻害する上記の方法のいずれにおいても、例えば阻害性化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、薬剤または小分子(またはそれらをコードするベクター)を含む、1つまたはそれ以上の薬剤(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、20、25、30、40、50、60、70、80、100またはそれ以上)を使用し得る。
【0077】
さらに、そのような薬剤を、免疫調節性サイトカイン、成長因子、血管新生抑制因子、免疫原性刺激、および/またはこれらのいずれかに特異的な抗体を含む、1つまたはそれ以上の(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、20、25、30、40、50、60、70、80、100またはそれ以上)補助薬剤と共に使用し得る。そのような補助薬剤を、上記で列挙した薬剤のいずれかの送達の前、それと同時、またはその後に投与し得る。
【0078】
免疫調節性サイトカイン、成長因子、血管新生抑制因子の例は、制限無しに、インターロイキン(IL)−1から25(例えばIL−2、IL−12、またはIL−15)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、エンドスタチン、アンジオスタチン、およびトロンボスポンジンを含む。免疫調節性サイトカイン、成長因子、血管新生抑制因子は、例えば感染を阻害する(例えば標準的な抗菌抗生物質)、T細胞の活性化を阻害する、またはT細胞活性化の結果を阻害するために役立つ物質を含む。例えば、Th1型免疫反応を減少させることが望ましい場合(例えばDTH反応において)、インターロイキン(IL)−4、IL−10、またはIL−13のようなサイトカイン、またはIL−12またはインターフェロン−γ(IFN−γ)のようなサイトカインに特異的な抗体を使用し得る。あるいは、Th2型免疫反応を阻害することが望ましい場合(例えば即時型過敏反応において)、IL−12またはIFN−γのようなサイトカイン、またはIL−4、IL−10、またはIL−13に特異的な抗体を、補助薬剤として使用し得る。IL−1、IL−6、IL−8、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1、MIP−3α、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)、上皮好中球活性化ペプチド−78(ENA−78)、インターフェロン−γ−誘導タンパク質−10(IP10)、ランテス、および本明細書中で引用されたあらゆる他の適当なサイトカインまたはケモカインのような、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインに特異的な抗体(または上記で記載された抗体断片または誘導体のいずれか)も興味深い。
【0079】
ある場合において、1つまたはそれ以上の免疫反応修飾薬剤を投与することによって、被験体における免疫反応を増加させることが望ましくあり得る。そのような免疫反応修飾薬剤は、上記で列挙したあらゆる免疫調節性サイトカイン、成長因子、および血管新生性因子(angiogenic factor)に加えて、T細胞の表面に発現する抗原特異的T細胞受容体(TCR)によって送達し得る免疫原性刺激を含む。さらに一般的には、そのような刺激は、そのTCRが特異的な抗原の形式で提供されるが、必ずしもそうではない。そのような抗原は、一般的にはタンパク質であるが、それらはまた炭水化物、脂質、核酸、または2つまたはそれ以上のこれらの分子型の成分を有するハイブリッド分子、例えば糖タンパク質またはリポタンパク質であり得る。しかし、免疫原性刺激はまた、TCR成分(例えばTCRα鎖またはβ鎖可変領域)に特異的な抗体、またはTCR結合CD3複合体に特異的な抗体のような、他のアゴニストTCRリガンドによっても提供され得る。免疫原性刺激として有用な抗原は、例えば抗原提示細胞(APC)(例えば樹状細胞(DC)、マクロファージ、単球、またはB細胞)上の同種抗原(例えばMHC同種抗原)を含む。関心のあるDCは、指状突起DCおよび非濾胞DCである;濾胞DCは、B細胞に抗原を提示する。簡便さのために、指状突起DCを本明細書中でDCと呼ぶ。血液、骨髄、脾臓またはリンパ節のような組織からDCを単離する方法は、そのような組織における前駆細胞からインビトロでそれらを産生する方法と同様に、当該分野で公知である。
【0080】
ポリペプチド抗原およびそれら由来のペプチドエピトープも、免疫原性刺激として有用である(下記を参照のこと)。未処理ポリペプチドは、APCによってペプチドエピトープに処理され、それがAPC表面のMHC分子との分子複合体の形式で反応性T細胞に提示される。有用な免疫原性刺激はまた、腫瘍細胞または関心のある感染性微生物で感染した細胞のいずれかの溶解物のような、抗原の供給源を含む。抗原性ポリペプチド、そのようなポリペプチドのペプチドエピトープ、または腫瘍(または感染細胞)の溶解物に、前に接触した(例えば同時培養によって)APCも、免疫原性刺激として使用し得る。そのようなAPCをまた、癌細胞または関心のある感染細胞と培養することによって、抗原で「刺激」し得る;癌または感染細胞を、任意でプライミング培養の前に照射または加熱(例えば煮沸)し得る。それに加えて、APC(特にDC)を、全RNA、mRNA、または単離されたTAAをコードするRNAのいずれかで「刺激」し得る。
【0081】
あるいは、免疫原性刺激を、細胞(例えば、関心のある抗原を産生する腫瘍細胞または感染細胞)の形式で提供し得る。それに加えて、免疫原性刺激を、APC(例えばDC)を腫瘍細胞[Gongら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97(6):2716−2718;Gongら(1997)Nature Medicine 3(5);558−561;Gongら(2000)J.Immunol.165(3):1705−1711]または関心のある感染細胞と融合することによって形成された細胞ハイブリッドの形式で提供し得る。
【0082】
抗原(例えば腫瘍関連抗原または感染性微生物によって産生される抗原)由来の抗原性ペプチドエピトープに結合した熱ショックタンパク質も、免疫原性刺激として有用である[Srivastava(2000)Nature Immunology 1(5):363−366]。関心のある熱ショックタンパク質は、制限無しに、糖タンパク質96(gp96)、熱ショックタンパク質(hsp)90、hsp70、hsp110、グルコース調節タンパク質170(grp170)、およびカルレティキュリンを含む。免疫原性刺激は、1つまたはそれ以上の(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、それ以上)、腫瘍細胞から単離された熱ショックタンパク質を含み得る。そのような腫瘍は、好ましくは、(i)B7−H1およびB7−H1の受容体間の相互作用に干渉する薬剤を送達する、または(ii)その腫瘍細胞または腫瘍浸潤白血球においてB7−H1の発現が阻害される、同じ被験体由来であるが、かならずしもそうではない。腫瘍細胞をまた、例えば被験体と同じ、または関連する腫瘍型を有する別の個人から得ることができる。あるいは、熱ショックタンパク質を、関心のある腫瘍細胞から調製したtranscriptosomeを発現する哺乳類細胞から単離し得る。
【0083】
上記で示されたように、本発明において有用な免疫原性刺激は、広く様々な腫瘍細胞、腫瘍細胞で「刺激された」APC、ハイブリッド細胞、またはTAA(上記を参照のこと)、そのようなTAAのペプチドエピトープ、およびTAAまたはそれらのペプチドエピトープで「刺激された」APCのいずれかであり得る。本明細書中で使用される場合、「TAA」は、腫瘍細胞によって発現される分子(例えばタンパク質分子)であり、そして(a)正常細胞において発現するその対応物と質的に異なるか、または(b)正常細胞より腫瘍細胞においてより高いレベルで発現する。従って、TAAは、正常細胞において発現するその対応物と異なり得る(例えばその分子がタンパク質である場合1つまたはそれ以上のアミノ酸残基によって)、またはそれと同一であり得る。正常細胞によって発現されないことが好ましい。あるいは、腫瘍細胞の正常対応物におけるよりも、腫瘍細胞において、少なくとも2倍高い(例えば2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、40倍、100倍、500倍、1000倍、5000倍、または15000倍高い)レベルで発現する。関連するTAAは、制限無しに、上記で列挙したTAAのいずれをも含む。
【0084】
薬剤および/または1つまたはそれ以上の補助薬剤の投与は、全身的(例えば静脈内)または局所的、例えば手術中、癌細胞および/または腫瘍浸潤白血球を含む組織への直接注射または注入であり得る。その投与はまた、本明細書中で引用されるあらゆる経路、投与量、およびスケジュールにより得る。
【0085】
それに加えて、上記で記載された方法を、制限無しに、化学療法、免疫療法、放射線療法、または遺伝子治療のような、当該分野で公知の様々な他の治療様式のいずれか1つと組み合わせて使用し得る。
【0086】
B7−H1およびB7−H1の受容体間の相互作用を阻害する方法、およびB7−H1の発現を阻害する方法の両方において、その癌は本明細書中で引用されるあらゆる癌であり得、そして例えば腎細胞癌を含む。被験体は哺乳類であり得、そして例えばヒト、非ヒト霊長類(例えばサル、ヒヒ、またはチンパンジー)、ウマ、ウシ(または雄ウシ(oxen)または雄ウシ(bulls))、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット、スナネズミ、またはマウスを含む。
【0087】
以下の実施例は、本発明を制限ではなく説明することになっている。
【実施例】
【0088】
(実施例1.材料および方法)
(被験体の選択)
Mayo Clinic Institutional Review Boardからの承認において、2000年から2002年の間に、一側性、弧発性明細胞RCCのために根治的腎摘出術または腎保存手術で以前に治療された、429人の被験体がMayo Clinic Nephrectomy Registryから同定された。病理的な特徴および被験体の予後はRCCのサブタイプによって異なるので、全ての分析は、最もよくあるRCCサブタイプである、明細胞RCCのみで治療した被験体に制限した[Chevilleら(2003)Am.J.Surg.Pathol.27:612−624]。hB7−H1特異的モノクローナル抗体、5H1(下記を参照のこと)は、新鮮凍結した組織を再現性良く染色し得るが、パラフィン固定した組織はしないので[Dongら(2002)Nature Med.8:793−800]、新鮮凍結組織の入手可能性に基づいて被験体を選択した。
【0089】
(病理的特徴)
調査した病理的特徴は、組織学的サブタイプ、腫瘍サイズ、原発性腫瘍の病期、局所リンパ節の関与、および腎摘出術(2002TNM)における遠隔転移、核グレード、および組織学的腫瘍壊死を含んでいた。全ての標本からの顕微鏡スライドを、被験体の予後の予備知識無しで、泌尿器病理学者が再調査した。組織学的サブタイプを、the Union Internationale Contre le Cancer、American Joint Committee on Cancer、およびHeidelbergガイドライン[Storkelら(1997)Cancer 80:987−989;Kovacsら(1997)J.Pathol.183:131−133]によって分類した。核グレードを、標準化された基準を用いて指定した[Lohseら(2002)Am.J.Clin.Pathol.118:877−886]。組織学的腫瘍壊死を、あらゆる顕微鏡的凝固性腫瘍壊死の存在として定義した。硝子化、出血、および線維症のような変性性の変化は、壊死とは考えなかった。
【0090】
(腫瘍標本の免疫組織化学的染色)
RCC腫瘍および正常腎皮質標本から作成した凍結切片(5μmの厚さ)を、Superfrost Plusスライドに載せ、空気乾燥し、そして氷冷アセトン中で固定した。Dako AutostainerおよびDako Cytomation Labeled Polymer(EnVision+)HRP検出キットTM(Dako;Carpinteria、California)を用いて染色した。スライドを、Hで10分間固定し、続いて1次抗B7−H1抗体と30分間室温でインキュベートした。次いで西洋ワサビペルオキシダーゼ結合2次試薬(ヤギ抗マウス免疫グロブリン)を、室温で15分間スライドに適用し、続いて発色基質と10分間インキュベートした。最後に、切片を修飾シュミットヘマトキシリンで3分間対比染色した。この研究において使用した1次抗体は5H1、マウス抗hB7−H1モノクローナル抗体であった[Dongら(2002)NatureMed.8:793−800]。良性腎腫瘍および末梢T細胞は、この研究において染色されなかった。hB7−H1染色のポジティブ組織コントロールは、ヒト扁桃腺組織であった。無関係のアイソタイプ一致抗体を、非特異的染色のコントロールのために使用した。
【0091】
(hB7−H1発現の定量)
hB7−H1に関して陽性に染色された腫瘍細胞および白血球の割合を、被験体の予後の予備知識無しに、泌尿器病理学者が、5−10%の増加量で定量した。白血球浸潤の程度を評価し、そして無し、限局的(散乱したリンパ凝集物)、中程度、または顕著と記録した。白血球性hB7−H1発現を表す調整スコアを、白血球浸潤の程度(0=無し、1=限局的、2=中程度、3=顕著)をかけた、hB7−H1に関して陽性に染色された白血球の割合として計算した。
【0092】
(統計学的方法)
病理学的特徴およびhB7−H1発現間の比較を、χ二乗検定、Fisher正確確率検定、およびウィルコクソン順位和検定を用いて評価した。癌特異的な生存率を、Kaplan−Meier法を用いて推定した。フォローアップの期間を、腎摘出術の日から死亡または最後のフォローアップの日まで計算した。死因を、死亡証明書または医師の書状から決定した。hB7−H1に関して陽性に染色された細胞の割合対観察された生存率およびコックス比例ハザード回帰モデル(公式にはMartingale residualとして知られる)から予測される生存率における差異のスキャッタープロットを、hB7−H1発現に関する潜在的なカットオフポイントを同定するために使用した[Therneauら(2000)Modeling Survival Data: Extending the Cox Model、第1版(Springer−Verlag、Ann Arbor)、87−92頁]。これらのカットポイントとRCCによる死亡の関連を、コックス比例ハザード回帰モデルを用いて一変量で、そして原発性腫瘍の病期、局所リンパ節の関与、遠隔転移、腫瘍サイズ、核グレード、および組織学的腫瘍壊死に関して一度に1つの特徴を調整した後、評価する。hB7−H1発現とRCCによる死亡の関連をまた、MayoClinic SSIGN(病期、サイズ、グレード、および壊死)スコア、明細胞RCCを有する被験体のために特に開発された予後複合スコアに関して調整した[Frankら(2002)J.Urol.168:2395−2400]。SASソフトウェアパッケージ(SAS Institute、Cary、North Carolina)を用いて統計学的分析を行い、そして<0.05のp値を、統計学的に有意であると考えた。
【0093】
(実施例2.新鮮凍結組織サンプルが入手可能なRCC被験体の生存率)
研究に適格な429人の被験体のうち、196人(46%)が、検査調査のために利用可能な新鮮凍結組織を有していた。新鮮凍結組織を有する被験体は、有さない被験体と比較して、より大きな腫瘍を有していた(腫瘍サイズ中央値6.0cm対5.0cm;p=0.008)。しかし、研究した他の特徴は2つのグループで有意に異なっていなかった。さらに、新鮮凍結組織を有するおよび有さない被験体間で、癌特異的生存率に統計学的に有意な差異は存在しなかった(p=0.314)。
【0094】
最後のフォローアップにおいて、研究した196人のうち、腎摘出術後1.1年の中央値で(0−2.5の範囲)、明細胞RCCによって死亡した30人の被験体を含む、39人が死亡した。最後のフォローアップにおいて依然として生存していた157人の被験体のうち、フォローアップ期間の中央値は2.0年であった(0−4.1の範囲)。腎摘出術後1、2、および3年における、推定される癌特異的生存率(標準誤差、依然として危険のある数)は、それぞれ91.4%(2.1%、148)、81.8%(3.3%、78)および77.9%(3.8%。30)であった。
【0095】
(実施例3.RCC腫瘍細胞におけるhB7−H1発現と被験体予後の関連)
196個の明細胞RCC標本の免疫組織化学的染色は、RCC腫瘍細胞によるhB7−H1発現が無いことか、またはRCC腫瘍細胞および/またはRCC腫瘍浸潤白血球によって発現される様々な程度のhB7−H1を明らかにした(表1および2および図1)。それに加えて、RCC腫瘍が発生すると考えられる腎皮質内の近位尿細管は、研究した20個の正常腎皮質標本の中でhB7−H1発現を示さなかった(図1)。
【0096】
研究した196個の標本に関して、hB7−H1に関して陽性に染色された腫瘍細胞の割合を、表1にまとめる。各被験体に関する腫瘍hB7−H1発現対予期される死亡の危険性のスキャッタープロットは、10%のカットポイントがこれらのデータに関して適当であることを示唆した。≧10%の腫瘍細胞hB7−H1発現を有する標本を有する73人(37.2%)の被験体が存在した。
【0097】
(表1.196個の明細胞RCC標本における腫瘍hB7−H1発現のパーセント)
【0098】
【表1】

(表2.196個の明細胞RCC標本における白血球hB7−H1発現の調整スコア)
【0099】
【表2】

*白血球浸潤の程度を、0=無し、1=散発性に存在、2=中程度に存在、または3=顕著に存在として記録した。
【0100】
一変量で、およびTNM病期、腫瘍サイズ、核グレード、および組織学的腫瘍壊死に関して調整した後の両方で、腫瘍hB7−H1発現とRCCによる死亡の関連を、表3に示す。一変量で、≧10%の腫瘍hB7−H1発現を有する標本の被験体は、<10%の発現を有する標本の被験体よりも、3倍近くRCCによって死亡する確率が高かった(リスク比2.91;95%CI 1.39−6.13;p=0.005;図2A)。多変量解析において、≧10%の腫瘍hB7−H1発現を有する標本の被験体は、原発性腫瘍の病期、遠隔転移、または原発性腫瘍サイズに関して調整した後でも、RCCによって死亡する確率が有意に高かった。
【0101】
(表3.196個の明細胞RCC標本におけるhB7−H1発現とRCCによる死亡の関連)
【0102】
【表3】

*リスク比は、一変量で、または多変量調整の後のいずれかで、列挙した特徴に関して明細胞RCCによる死亡の危険性を表す。例えば、≧10%の腫瘍hB7−H1発現を有する標本の被験体は、<10%の腫瘍hB7−H1発現を有する標本の被験体と比較して、原発性腫瘍サイズに関して調整した後でも、2.9倍RCCによって死亡する確率が高かった(p=0.005)。
【0103】
白血球hB7−H1発現に関する調整スコアを、表2にまとめる。調整白血球hB7−H1スコアが100またはそれより高い(少なくとも50%の白血球がhB7−H1に関して陽性に染色される、実質的に中程度または顕著な白血球浸潤)40個(20.4%)の標本が存在し、それはこの特徴と被験体予後の関連を調査および説明するために適当なカットポイントであるようであった。白血球hB7−H1発現とRCCによる死亡の関連を、表3にまとめる。一変量で、≧100の調整白血球hB7−H1スコアを有する標本の被験体は、<100のスコアを有する標本を有する被験体と比較して、3.6倍RCCによって死亡する確率が高かった(リスク比3.58;95%CI 1.74−7.37;p<0.001;図2B)。高レベルの白血球hB7−H1発現を示した標本を有する被験体は、TNM病期、原発性腫瘍サイズ、核グレード、または組織学的腫瘍壊死に関して調整した後でも、RCCによって死亡する確率が有意により高かった。
【0104】
腫瘍および白血球hB7−H1発現はどちらも、一変量および多変量調整の後のいずれでも被験体予後と有意に関連していたので、これら2つの特徴の組み合わせを評価した。≧10%の腫瘍hB7−H1発現または≧100の白血球hB7−H1発現の調整スコア(すなわち高凝集腫瘍内hB7−H1発現)のいずれかを有する87個(44.4%)の標本が存在した。これらの標本のうち26個(13.3%)が、両方の特徴を有していた。逆に、109個(55.6%)の標本が、<10%の腫瘍hB7−H1発現および<100の白血球hB7−H1発現(すなわち、低凝集腫瘍内hB7−H1発現)を有していた。この組み合わせた特徴とRCCによる死亡の関連を、表3にまとめる。一変量で、高凝集腫瘍内hB7−H1発現を有する標本の被験体は、<10%の腫瘍発現および<100の白血球発現の両方を有する標本の被験体と比較して、RCCで死亡する確率が4.5倍高かった(リスク比4.53;95%CI 1.94−10.56;p<0.001)。Mayo Clinic SSIGNスコアに関して調整した後、高凝集腫瘍内hB7−H1発現を有する被験体は、低凝集腫瘍内hB7−H1を有する被験体と比較して、RCCで死亡する確率が2倍以上高いままであったが、この差異は統計学的な有意差は達成しなかった(リスク比2.19;95%CI0.91−5.24;p=0.079)。しかし、高凝集腫瘍内hB7−H1発現を有する標本の被験体は、TNM病期、原発性腫瘍サイズ、核グレード、および組織学的腫瘍壊死に関して、1度に1つの特徴に関して調整した後、RCCで死亡する確率が有意に高かった。組み合わせた腫瘍および白血球hB7−H1発現と研究下の病理的特徴の関連も調査した。高凝集腫瘍内hB7−H1発現レベルは、局所リンパ節の関与、遠隔転移、進行した核グレード、および組織学的腫瘍壊死の存在と有意に関連していた(表4)。
【0105】
(表4.196個の明細胞RCC標本における、腫瘍および白血球hB7−H1発現と病理的特徴の関連)
【0106】
【表4】

本発明の多くの実施態様を記載した。それにもかかわらず、本発明の意図および範囲から離れることなく、様々な修飾をし得ることが理解される。よって、他の実施態様が以下の請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、高い腫瘍細胞hB7−H1発現を有するRCC標本(図1A);高い白血球hB7−H1発現を有するRCC標本(図1B);腫瘍細胞または白血球のいずれにおいても検出可能なhB7−H1発現を有さないRCC標本(図1C);および近位尿細管において検出可能なhB7−H1発現を有さない正常腎臓標本(図1D)の免疫染色(hB7−H1に特異的な抗体による)を示す一連の顕微鏡写真(倍率400倍)である。
【図2】図2は、明細胞RCC標本を分析のために得た196人の被験体における、hB7−H1発現とRCCによる死亡の関連を示す一連の折れ線グラフである。図2Aは、腫瘍hB7−H1発現とRCCによる死亡の関連を示す(リスク比2.91;95%CI[信頼区間]1.39−6.13;p=0.005)。腎摘出術後1、2、および3年における、癌特異的生存率(標準誤差[SE]および依然として危険性のある数をカッコ内に示す)は:<10%の腫瘍hB7−H1発現を有する標本の被験体に関する、それぞれ93.6%(2.3%、95)、88.4%(3.4%、48)、および88.4%(3.4%、19)と比較して、≧10%の腫瘍hB7−H1発現を有する標本の被験体に関して、それぞれ87.8%(4.1%、53)、72.3%(6.0%、30)、および63.2%(7.2%、11)であった。図2Bは、白血球hB7−H1発現の調製スコアとRCCによる死亡の関連を示す(リスク比3.58;95%CI 1.74−7.37;p<0.001)。1、2および3年における癌特異的生存率(SE、依然として危険性のある数)は:<100のスコアを有する標本の被験体に関する、それぞれ93.5%(2.1%、122)、86.2%(3.3%、65)、および84.8%(3.5%、25)と比較して、≧100の白血球hB7−H1発現スコアを有する標本の被験体に関して、それぞれ83.5%(6.2%、26)、63.9%(9.2%、13)、および53.6%(10.2%、5)であった。図2Cは、高凝集腫瘍内hB7−H1発現とRCCによる死亡の関連を示す(リスク比4.53;95%CI 1.94−10.56;p<0.001)。1、2および3年における癌特異的生存率(SE、依然として危険性のある数)は:<10%の腫瘍および<100の白血球の(低凝集腫瘍内発現)hB7−H1発現を有する標本の被験体に関する、それぞれ94.9%(2.2%、87)、91.9%(3.1%、46)、および91.9%(3.1%、17)と比較して、高凝集腫瘍内hB7−H1発現を有する標本の被験体に関して、それぞれ87.0%(3.8%、61)、70.0%(5.8%、32)、および61.9%(6.8%、13)であった。
【図3】図3は、全長、未成熟hB7−H1、すなわち約22アミノ酸のリーダーペプチドを含むhB7−H1のアミノ酸配列(配列番号第1番)の描写である。
【図4】図4は、全長、未成熟hB7−H1をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号第2番)の描写である。
【図5】図5は、全長、未成熟マウスB7−H1のアミノ酸配列(配列番号第3番)の描写である。
【図6】図6は、全長、未成熟マウスB7−H1をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号第4番)の描写である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を有する被験体の予後を決定する方法であって、該方法は以下:
(a)組織の癌を有する被験体からの該組織のサンプルを提供する工程であって、ここで該組織サンプルは試験細胞を含み、該試験細胞は癌細胞または腫瘍浸潤白血球である、工程;および
(b)該組織サンプルにおける、B7−H1を発現する試験細胞のレベルを評価する工程であって、ここで予後レベルの該試験細胞、または予後レベルより多くの該試験細胞がB7−H1を発現する場合、該被験体は、予後レベルより少ない該試験細胞がB7−H1を発現する場合よりも、該癌で死亡する確率が高い、工程
を、包含する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記評価する工程は、B7−H1ポリペプチドを検出することを含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記検出する工程は、前記組織サンプルを前記B7−H1ポリペプチドに結合する抗体と接触させることを含む、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前記検出する工程は、蛍光フローサイトメトリー(FFC)を含む、方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、前記検出する工程は、免疫組織学を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記評価する工程は、B7−H1 mRNAを検出することを含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記検出する工程は、前記サンプルを前記B7−H1 mRNAにハイブリダイズする核酸プローブと接触させることを含む、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記検出する工程は、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応を含む、方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法であって、前記検出する工程は、インサイチューハイブリダイゼーションを含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記組織は、肺組織、上皮組織、結合組織、血管組織、筋肉組織、神経組織、骨格組織、リンパ組織、前立腺組織、子宮頚部組織、乳房組織、脾臓組織、胃組織、腸組織、口腔組織、食道組織、皮膚組織、肝臓組織、膀胱組織、甲状腺組織、胸腺組織、副腎組織、脳組織、胆嚢組織、膵臓組織、子宮組織、卵巣組織、および精巣組織から成るグループから選択される、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記組織は腎組織である、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記組織の前記癌は腎細胞癌である、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記被験体は哺乳類である、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記哺乳類はヒトである、方法。
【請求項15】
診断の方法であって、該方法は以下:
(a)組織の癌を有することが疑われる、または該組織の癌を発症する見込みのある被験体からの該組織のサンプルを提供する工程であって、ここで該サンプルは試験細胞を含み、該試験細胞は、該組織の細胞または該組織に浸潤している白血球である、工程;および
(b)該試験細胞がB7−H1を発現しているかどうかを評価する工程であって、ここでいくつかまたは全ての該試験細胞による発現は、該被験体が癌を有することを示す、工程
を、包含する方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記評価する工程は、B7−H1ポリペプチドを検出することを含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記検出する工程は、前記組織サンプルを前記B7−H1ポリペプチドに結合する抗体と接触させることを含む、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、前記検出する工程は、蛍光フローサイトメトリー(FFC)を含む、方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、前記検出する工程は、免疫組織学を含む、方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法であって、前記評価する工程は、B7−H1 mRNAを検出することを含む、方法。
【請求項21】
請求項16に記載の方法であって、前記検出する工程は、前記サンプルを前記B7−H1 mRNAにハイブリダイズする核酸プローブと接触させることを含む、方法。
【請求項22】
請求項16に記載の方法であって、前記検出する工程は、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応を含む、方法。
【請求項23】
請求項16に記載の方法であって、前記検出する工程は、インサイチューハイブリダイゼーションを含む、方法。
【請求項24】
請求項15に記載の方法であって、前記組織は、肺組織、上皮組織、結合組織、血管組織、筋肉組織、神経組織、骨格組織、リンパ組織、前立腺組織、子宮頚部組織、乳房組織、脾臓組織、胃組織、腸組織、口腔組織、食道組織、皮膚組織、肝臓組織、膀胱組織、甲状腺組織、胸腺組織、副腎組織、脳組織、胆嚢組織、膵臓組織、子宮組織、卵巣組織、および精巣組織から成るグループから選択される、方法。
【請求項25】
請求項15に記載の方法であって、前記組織は腎組織である、方法。
【請求項26】
請求項15に記載の方法であって、前記被験体は哺乳類である、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、前記哺乳類はヒトである、方法。
【請求項28】
免疫療法の候補を同定する方法であって、該方法は、以下:
(a)組織の癌を有する被験体からの組織サンプルを提供する工程であって、ここで該組織サンプルは試験細胞を含み、該試験細胞は癌細胞または腫瘍浸潤白血球である、工程;および
(b)該組織サンプルにおける、B7−H1を発現する試験細胞のレベルを評価する工程であって、ここでB7−H1発現が該試験細胞において検出されない場合、または免疫阻害閾値レベルより少ない該試験細胞がB7−H1を発現する場合、該被験体は免疫療法から利益を得る可能性がより高い、工程
を、包含する方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記評価する工程は、B7−H1ポリペプチドを検出することを含む、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記検出する工程は、前記組織サンプルを前記B7−H1ポリペプチドに結合する抗体と接触させることを含む、方法。
【請求項31】
請求項29に記載の方法であって、前記検出する工程は、蛍光フローサイトメトリー(FFC)を含む、方法。
【請求項32】
請求項29に記載の方法であって、前記検出する工程は、免疫組織学を含む、方法。
【請求項33】
請求項28に記載の方法であって、前記評価する工程は、B7−H1 mRNAを検出することを含む、方法。
【請求項34】
請求項29に記載の方法であって、前記検出する工程は、前記サンプルを前記B7−H1 mRNAにハイブリダイズする核酸プローブと接触させることを含む、方法。
【請求項35】
請求項29に記載の方法であって、前記検出する工程は、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応を含む、方法。
【請求項36】
請求項29に記載の方法であって、前記検出する工程は、インサイチューハイブリダイゼーションを含む、方法。
【請求項37】
請求項28に記載の方法であって、前記組織は、肺組織、上皮組織、結合組織、血管組織、筋肉組織、神経組織、骨格組織、リンパ組織、前立腺組織、子宮頚部組織、乳房組織、脾臓組織、胃組織、腸組織、口腔組織、食道組織、皮膚組織、肝臓組織、膀胱組織、甲状腺組織、胸腺組織、副腎組織、脳組織、胆嚢組織、膵臓組織、子宮組織、卵巣組織、および精巣組織から成るグループから選択される、方法。
【請求項38】
請求項28に記載の方法であって、前記組織は腎組織である、方法。
【請求項39】
請求項28に記載の方法であって、前記組織の前記癌は腎細胞癌である、方法。
【請求項40】
請求項28に記載の方法であって、前記被験体は哺乳類である、方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、前記哺乳類はヒトである、方法。
【請求項42】
治療の方法であって、該方法は、以下:
(a)癌を有する被験体を同定する工程であって、ここでいくつかまたは全ての該癌の細胞またはいくつかまたは全ての該癌の腫瘍浸潤白血球はB7−H1を発現する、工程;および
(b)該被験体にB7−H1とB7−H1の受容体との間の相互作用に干渉する薬剤を送達する工程、
を、包含する方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、前記薬剤は抗体またはその断片を含む、方法。
【請求項44】
請求項42に記載の方法であって、前記薬剤はB7−H1に結合する、方法。
【請求項45】
請求項42に記載の方法であって、前記薬剤はB7−H1の受容体に結合する、方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法であって、前記受容体はPD−1である、方法。
【請求項47】
請求項44に記載の方法であって、前記薬剤はB7−H1の組み換え可溶性受容体である、方法。
【請求項48】
請求項43に記載の方法であって、前記抗体断片は、Fab’断片、F(ab’)断片、または1本鎖Fv(sFv)断片からなるグループから選択される、方法。
【請求項49】
請求項42に記載の方法であって、前記被験体に1種またはそれ以上の免疫調節性サイトカイン、成長因子、または血管新生抑制因子を送達することをさらに含む、方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、前記1種またはそれ以上の免疫調節性サイトカイン、成長因子、または血管新生抑制因子は、インターロイキン(IL)−1〜25、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、エンドスタチン、アンジオスタチン、およびトロンボスポンジンからなるグループから選択される、方法。
【請求項51】
請求項42に記載の方法であって、前記癌は、血液癌、神経癌、黒色腫、乳癌、肺癌、頭頚部癌、胃腸癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、尿生殖器癌、骨癌、または血管癌からなるグループから選択される、方法。
【請求項52】
請求項42に記載の方法であって、前記癌は腎細胞癌である、方法。
【請求項53】
腫瘍細胞または腫瘍浸潤白血球においてB7−H1の発現を阻害する方法であって、該方法は以下:(a)癌を有する被験体を同定する工程であって、該癌はB7−H1を発現する標的細胞を含み、該標的細胞は腫瘍細胞または腫瘍浸潤白血球である、工程;および(b)該標的細胞に:(i)B7−H1転写物にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、ここで該アンチセンスオリゴヌクレオチドは該細胞においてB7−H1の発現を阻害する、アンチセンスオリゴヌクレオチド;または(ii)B7−H1干渉RNA(RNAi)を導入する工程、を包含する方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法であって、前記導入工程は、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記RNAiの前記被験体への投与、および該アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは該RNAiの前記標的細胞による取り込みを包含する、方法。
【請求項55】
請求項53に記載の方法であって、前記導入工程は、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列に作動可能に連結した転写調節因子(TRE)を含む核酸の前記被験体への投与、および前記細胞による取り込みを包含し、ここで該細胞内での該ヌクレオチド配列の転写は、該アンチセンスオリゴヌクレオチドを産生する、方法。
【請求項56】
請求項53に記載の方法であって、前記導入工程は、(a)前記RNAiのセンス鎖およびアンチセンス鎖が、別のTREの指示下で転写され得る核酸;または(b)該RNAiのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方が、単一のTREの指示下で転写され得る核酸の、前記被験体への投与、および前記細胞による取り込みを包含する、方法。
【請求項57】
請求項53に記載の方法であって、前記被験体は哺乳類である、方法。
【請求項58】
請求項57に記載の方法であって、前記哺乳類はヒトである、方法。
【請求項59】
請求項53に記載の方法であって、前記癌は腎細胞癌である、方法。
【請求項60】
請求項53に記載の方法であって、前記癌は、肺組織、上皮組織、結合組織、血管組織、神経組織、骨格組織、リンパ組織、前立腺組織、子宮頚部組織、乳房組織、脾臓組織、胃組織、腸組織、口腔組織、食道組織、皮膚組織、肝臓組織、膀胱組織、甲状腺組織、胸腺組織、副腎組織、脳組織、胆嚢組織、膵臓組織、子宮組織、卵巣組織、および精巣組織から成るグループから選択される組織の癌である、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−515442(P2008−515442A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535894(P2007−535894)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/036431
【国際公開番号】WO2006/042237
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(502204218)マヨ ファウンデイション フォア メディカル エデュケイション アンド リサーチ (4)
【Fターム(参考)】