説明

C型肝炎ウイルス用の環状カルボキサミド化合物およびその類似体

本発明は、式(I)で示される環状カルボキサミド化合物およびその類似体、並びにその医薬用の塩および水和物を提供する。可変記号R、R、R〜R、R16、R18、R19、M、n、T、YおよびZは本明細書に定義のとおりである。(I)で示される特定の化合物は抗ウイルス剤として有用である。本明細書に開示する特定の環状カルボキサミド化合物および環状カルボキサミド類似体は、ウイルス複製、とりわけ、C型肝炎ウイルス複製の強力なおよび/または選択的なインヒビタである。本発明はまた、1種以上の環状カルボキサミド化合物または環状カルボキサミド類似体および1種以上の薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物をも提供する。かかる医薬組成物は、環状カルボキサミド化合物または環状カルボキサミド類似体を唯一の活性薬剤として含有してもよいし、環状カルボキサミド化合物または環状カルボキサミド類似体と1種以上の他の医薬的に活性な薬剤とを組み合わせて含有してもよい。本発明はまた、C型肝炎ウイルス感染症などのウイルス感染症の処置方法をも提供する。


式(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス薬として有用な環状カルボキサミド化合物およびその類似体に関する。本明細書に開示する特定の環状カルボキサミド化合物および環状カルボキサミド類似体は、ウイルス複製、とりわけ、C型肝炎ウイルス複製の強力なおよび/または選択的なインヒビタである。本発明はまた、1種以上の環状カルボキサミド化合物または環状カルボキサミド類似体と1種以上の薬学的に許容される担体とを含有してなる医薬組成物を提供する。かかる医薬組成物は、環状カルボキサミド化合物もしくは環状カルボキサミド類似体を唯一の活性剤として含有していてもよく、または環状カルボキサミド化合物もしくは環状カルボキサミド類似体と1種以上の他の医薬的に活性な薬剤との組み合わせを含有していてもよい。本発明はまた、C型肝炎感染症などのウイルス感染症を処置する方法をも提供する。
【背景技術】
【0002】
世界人口の推定3%がC型肝炎ウイルスに感染している。HCVに接触した人のうち、80%から85%が慢性的に感染しており、少なくとも30%が肝硬変を発症し、1〜4%が肝細胞癌を発症する。C型肝炎ウイルス(HCV)は、米国において慢性肝臓疾患の最も広く認められる原因の一つであり、報告によると、約15パーセントが急性のウイルス性肝炎であり、60〜70パーセントが慢性肝炎、また硬変症の50%までが末期の肝臓疾患および肝臓癌であるとされている。慢性のHCV感染症は、米国、オーストラリア、およびヨーロッパの殆どの国で、肝臓移植の最も一般的な理由である。C型肝炎は、米国における年間の推定死亡数10,000から12,000の原因となっている。HCV感染症の急性期は、通常、軽い症候と思わせるが、一部の証拠は、感染した人々の約15%から20%でHCVが自然に排除されることを示唆している。
【0003】
HCVは、約9.6kbのプラス鎖ゲノムを含む包膜一本鎖RNAである。HCVは、フラビウイルス科ヘパシウイルス属のメンバとして分類される。HCVの少なくとも4株、GT−1〜CT−4、が特性化されている。
【0004】
HCVのライフサイクルは、宿主細胞への侵入;HCVゲノムの翻訳、ポリタンパク質のプロセシング、およびレプリカーゼ複合体集合;RNA複製、およびビリオンの集合と放出を含んでなる。HCV RNAゲノムの翻訳は、3000個を超えるアミノ酸鎖長のポリタンパク質を生じ、このものは少なくとも2種の細胞性プロテアーゼと2種のウイルス性プロテアーゼにより加工処理される。
【0005】
このHCVポリタンパク質は以下のとおりである。
NH2−C−E1−E2−p7−NS2−NS3−
NS4A−NS4B−NS5A−NS5B−COOH
【0006】
細胞性シグナルペプチダーゼおよびシグナルペプチドペプチダーゼは、非構造的なタンパク質(NS2−NS3−NS4A−NS4B−NS5A−NS5B)からポリタンパク質N−末端の第3番目(C−E1−E2−p7)の切断に関与していることが報告されている。NS2−NS3プロテアーゼは、NS2−NS3部位で最初のシス切断を仲介する。NS3−NS4Aプロテアーゼは、次いで、NS3−NS4A結合での第二のシス切断を仲介する。NS3−NS4A複合体は、次いで、3つの下流部位で開裂し、残りの非構造的タンパク質を引き離す。ポリタンパク質の正確なプロセシングは、活性HCVレプリカーゼ複合体を形成するために必須であることが確認されている。
【0007】
ポリタンパク質が一旦切断されると、少なくともNS3−NS5B非構造的タンパク質を含んでなるレプリカーゼ複合体が集合する。レプリカーゼ複合体は細胞質内膜と会合している。レプリカーゼ複合体の主たる酵素活性は、NS3のセリンプロテアーゼ活性とNTPアーゼヘリカーゼ活性、およびNS5BのRNA依存性RNAポリメラーゼ活性を含む。RNA複製過程においては、ゲノムRNAの相補性マイナス鎖コピーが産生される。マイナス鎖コピーは、翻訳、複製、パッケージング、もしくはそのいずれかの組み合わせに関与して子孫のウイルスを産生し得るさらなるプラス鎖ゲノムRNAを合成するための鋳型として使用される。機能的レプリカーゼ複合体の集合は、HCV複製メカニズムの要素として説明されてきた。2005年4月11日に出願された米国仮出願第60/669,872号「HCVの複製を阻害する医薬組成物およびその方法」(特許文献1)は、レプリカーゼ複合体の集合に関連する開示のその全文を参照により本明細書の一部とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/110762号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
C型肝炎感染症の現行の処置法は、一般に、PEG化インターフェロンなどのインターフェロン(IFN)をリバビリンと組み合わせて投与することを含んでなる。持続性ウイルス陰性化(SVR)により測定した場合の現行治療法の成功は、患者が感染しているHCVの株とその治療計画を患者が遵守するか否かに掛かっている。HCV株GT−1に感染した患者の50%のみが持続性ウイルス陰性化を示す。直接作用する抗ウイルス薬、例えば、ACH−806、VX−950およびNM283(NM107のプロドラッグ)は、慢性HCVの処置のために臨床開発中である。特定のHCV株を処置するための有効な治療法のないこと、またHCVの高い突然変異率のために、新しい治療法が必要とされる。本発明はこの必要性を満たし、本明細書に記載のさらなる有益性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は式(I)(下記に示す)で示される化合物を提供し、環状カルボキサミド化合物およびその類似体を包含する。本明細書に開示する環状カルボキサミド化合物およびその類似体は、式(I)で示され、抗ウイルス活性を保有する。本発明はまた、C型肝炎ウイルス複製の強力なおよび/または選択的インヒビタである式(I)で示される化合物を提供する。本発明はまた、式(I)で示される1種以上の化合物、またはかかる化合物の塩、溶媒和物、もしくはアシル化プロドラッグ、および1種以上の薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明は、さらに当該疾患または障害の兆候または症候の低減に有効な量の式(I)で示される化合物を特定の感染性疾患に罹患する患者に提供することにより、かかる患者を処置する方法を含んでなる。これらの感染性疾患は、ウイルス感染、とりわけHCV感染である。本発明は、特に感染性疾患に罹患するヒト患者の処置方法を含むが、さらに感染性疾患に罹患する他の動物、例えば、家畜および飼い馴らされた愛玩動物などの処置方法をも包含する。
【0012】
処置方法とは、式(I)で示される化合物を単一の活性薬剤として提供するか、または式(I)で示される化合物を1種以上の他の治療薬と組み合わせて提供することである。
【0013】
従って、本発明の第一の態様は、式(I)で示される化合物および薬学的に許容されるその塩を包含する。
【化1】

式(I)
【0014】
式中、Rは水素であるか、またはRは、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルカノイル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(5員もしくは6員のヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、または(C−Cアルキルエステル)C−Cアルキルであり、その各々は、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、アミノ、−COOH、−CONH、オキソ、C−Cアルコキシ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個、1個もしくはそれ以上の置換基により置換されている。
【0015】
は、C−C10アルキルまたはC−C10アルケニルであり、その各々は置換されていてもよい;またはRは、C−Cの飽和もしくは不飽和の炭化水素鎖であり、該鎖は、(i)Rに共有結合している(ただし、Rはメチンまたはメチレン基である);(ii)RとRが結合して置換されていてもよい3員から7員のシクロアルキル環を形成することにより形成される置換されていてもよいシクロアルキル環に共有結合している。
【0016】
Qは結合、−O−、または−N(R)−であり、Wは−N(R)−、−C(R)−、−C(R)N(R)−である;ただし、WおよびQの少なくとも一方は−N(R)−である。
【0017】
はそれぞれ出現するごとに独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、ヘテロシクロアルキル、および(フェニル)C−Cアルキルから選択され、その各々は、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、アミノ、−COOH、−CONH、オキソ、C−Cアルコキシ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個、1個もしくはそれ以上の置換基により置換されている。
【0018】
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、またはC−Cアルコキシである。
【0019】
およびRは独立して、水素、ハロゲン、もしくはアミノであるか、またはRおよびRは、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(C−Cシクロアルケニル)C−Cアルキル、(ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cアルカノイル、もしくはモノ−もしくはジ−C−Cアルキルアミノであり、その各々は置換されていてもよいか;またはRおよびRが結合して、置換されていてもよい3員から7員のシクロアルキル環またはN、S、およびOから独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を含む置換されていてもよい3員から7員のヘテロシクロアルキル環を形成してもよいか;またはRはRに共有結合するメチンもしくはメチレン基であるか;またはRおよびRが結合して、Rに共有結合する3員から7員の置換されていてもよいシクロアルキル環を形成する。
【0020】
Tは式:
【化2】

で示される基である。
【0021】
は、ヒドロキシル、アミノ、−NR1011、−OR12、−SR12、−NR10(S=O)R11、−NR10SO11、−NR10SONR1112、−NR10SONR1112、−(C=O)OR10、−NR10(C=O)OR11、もしくは−CONR1011であるか、またはRは、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルカノイル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)CHSO−、(ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、もしくは(フェニル)C−Cアルキルであり、その各々が置換されていてもよい。
【0022】
10、R11、およびR12はそれぞれ出現するごとに独立して、水素であるか、またはC−Cアルキル、C−Cアルケニル、(アリール)C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、もしくは(5員から10員のヘテロアリール)C−Cアルキルであり、その各々が置換されていてもよい。
【0023】
Mは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C−Cアルキル、またはC−Cアルコキシである。
【0024】
16は、ハロゲン、C−Cアルキル、およびC−Cアルコキシから独立して選択される0個から4個の置換基を表す。
【0025】
Yは存在しないか、またはCR1819、NR20、S、O、−O(C=O)(NR20)−、NH(C=O)(NR20)−、NH(S=O)(NR20)−、もしくは−O(C=O)−であり;またnは、0、1、または2である。
【0026】
18およびR19は独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルキル、またはC−Cハロアルコキシである。
【0027】
20は、水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、またはC−Cハロアルコキシである。
【0028】
Zは、(単環状もしくは二環状アリール)C−Cアルキルまたは(単環状もしくは二環状へテロアリール)C−Cアルキルであり、そのZの各々は、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、−CONH、−COOH、C−Cアルキル、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルエステル、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個、1個もしくはそれ以上の置換基により置換されており、またZは、0個もしくは1個の(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(フェニル)C−Cアルキル、(フェニル)C−Cアルコキシ、(5員もしくは6員のヘテロアリール)C−Cアルキル、(5員もしくは6員のヘテロアリール)C−Cアルコキシ、ナフチル、インダニル、(5員もしくは6員のヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、または9員もしくは10員の二環状へテロアリールであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、−COOH、−CONH、CH(C=O)NH−、=NOH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cヒドロキシアルキル、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルエステル、モノ−およびジ−C−Cアルキルカルボキサミド、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個、1個、もしくは2個の置換基により置換されている。
【0029】
本明細書に開示する式(I)で示される特定の化合物は、HCV複製アッセイにおいて、例えば、実施例7に記載するHCVレプリコンアッセイなどにおいて、以下のように良好な活性を示す。式(I)で示される好適な化合物は、HCVレプリコン複製アッセイにおいて、約40マイクロモル以下のEC50を示すか、またはより好ましくは、約10マイクロモル以下のEC50を示すか、またはさらにより好ましくは、約5ナノモル以下のEC50を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[化学上の記載と用語]
本発明について詳細に説明するのに先立ち、本明細書にて使用する特定の用語を定義しておくことが役立ち得る。本発明の化合物は、標準の命名法に従って記載する。特に他に定義しない限り、本明細書にて使用する技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。その文脈が明らかに矛盾するものでない限り、各化合物の名称は、該化合物の遊離酸または遊離塩基を含み、同様に、該化合物の水和物および該化合物の薬学的に許容される塩のすべてを含む。
【0031】
「環状カルボキサミド化合物および環状カルボキサミド類似体」という用語は、いずれものエナンチオマ、ラセミ体および立体異性体、並びにかかる化合物のすべての薬学的に許容される塩を含め、式(I)を満足するすべての化合物を包含する。「式(I)で示される化合物」という文言は、この文言を用いる文脈が明らかに矛盾するものでない限り、塩および水和物を含め、かかる化合物のすべての形状を含む。
【0032】
不定冠詞(aおよびan)は、量を限定するものではなく、むしろ言及する項目の少なくとも一つは存在することを示すものである。「または」という用語は、「および/または」を意味する。用語「含んでなる」、「有する」、「含む」、および「含有する」とは、幅広い解釈のできる用語と解釈すべきである(すなわち、「含むが、これらに限定されるものではない」ことを意味する)。数値範囲の列挙は、本明細書において他に断りのない限り、単に、当該範囲内に入る各別個の数値を個々に言及する簡潔な言い方として役立つことを企図したものであり、各別個の数値はそれを個々に本明細書に列挙したと同様に、本明細書に組み込まれるものである。すべての範囲の両端値はその範囲内に含まれ、独立して組み合わせ得る。本発明に記載の方法はすべて、本明細書にて他に断りのない限り、または文脈が明らかに矛盾するものでない限り、適当な順序で実施できる。いずれか、およびすべての例示、または列挙の文言(例えば、「など」)を使用する場合は、単に本発明をよりよく説明することを企図するものであり、他に断りのない限り、本発明の範囲を限定しようとするものではない。本明細書の文言は、ここで使用される本発明の実施に必須の非特許請求要素を示すものと解釈すべきではない。他の方式で定義しない限り、本明細書にて使用する技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。
【0033】
「活性薬剤」とは、患者に、単独で、または別の化合物、要素、もしくは混合物と組み合わせて投与した場合に、直接または間接に、患者に生理作用を供する化合物(本発明化合物を含む)、要素、または混合物を意味する。間接的生理作用は、代謝生成物または他の間接的メカニズムを介して起こり得る。活性薬剤が化合物、さらには該遊離化合物の塩、溶媒和物(水和物を含む)である場合、該化合物の結晶形状、非結晶形状、および多形をも包含する。化合物は1個以上の不斉元素、例えば、立体形成中心、立体形成軸など、例えば、不斉炭素原子を含み得て、結果として、該化合物は異なる立体異性体形状で存在し得る。これらの化合物は、例えば、ラセミ体または光学活性体であり得る。2個以上の不斉元素を有する化合物の場合、これらの化合物はさらにジアステレオマの混合物であり得る。不斉中心をもつ化合物の場合、純粋な形状およびその混合物である光学異性体のすべてが包含される。さらに、炭素−炭素二重結合をもつ化合物は該化合物のすべての異性体について、Z−型とE−型で存在し得る。これらの状況下、単一のエナンチオマ、すなわち、光学活性体は、不斉合成、光学活性の純前駆体からの合成により、またはラセミ体の分割により得ることができる。ラセミ体の分割は、例えば、分割剤存在下の再結晶、例えば、キラルHPLCカラムを用いるクロマトグラフィなどの常套の方法により実施し得る。それらを得るために使用する方法の如何に関わらず、すべての形状を本明細書では企図する。
【0034】
2つの文字または記号の間ではない位置にあるダッシュ(“−”)は、置換基の結合点を指定するために使用する。例えば、−(CH)C−Cシクロアルキルは、メチレン基(CH)の炭素を介して結合する。
【0035】
実線と破線とを組み合わせて表す結合(すなわち、
【化3】

)は、単結合または二重結合のいずれであってもよい。
【0036】
「アルキル」とは、分枝鎖または直鎖の飽和脂肪族炭化水素基であり、特定数の炭素原子、一般に、1個から約12個の炭素原子を有する。本明細書にて使用する場合の用語C−Cアルキルは、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するアルキル基を示す。他の実施態様は、1から8個の炭素原子、1から4個の炭素原子、または1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル基であり、例えば、C−Cアルキル、C−Cアルキル、およびC−Cアルキルである。本明細書にてC−Cアルキルを別の基と結合させて、例えば、(アリール)C−Cアルキル、として使用する場合、指定した基、この場合アリールは、共有単結合(C)により直接結合するか、または特定数の炭素原子、この場合は、1個または2個の炭素原子を有するアルキル鎖を介して結合する。C−Cアルキルは、ヘテロアリール、アリール、フェニル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルと結合して、例えば、(5員から10員のヘテロアリール)C−Cアルキル、(アリール)C−Cアルキル、(フェニル)C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、および(ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキルとして使用する。アルキルの例は、限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、3−メチルブチル、t−ブチル、n−ペンチル、およびsec−ペンチルである。
【0037】
「アルケニル」は、1つ以上の不飽和炭素−炭素二重結合を含んでなる直鎖または分枝の炭化水素鎖であり、該結合は鎖に沿って安定な部位に存在し得る。本明細書に記載するアルケニル基は指定数の炭素原子を有する。同様に、「アルキニル」は、1つ以上の不飽和炭素−炭素三重結合を含んでなる直鎖または分枝の炭化水素鎖であり、該結合は鎖に沿って安定な部位に存在し得る。例えば、C−Cアルケニルは、2、3、4,5、または6個の炭素原子を含んでなるアルケニル基を意味する。炭素原子数が示されていない場合、本明細書に記載するアルケニル基は、2個から約12個の炭素原子を典型的に有するが、8個以下の炭素原子を有する低級アルケニル基が好ましい。アルケニル基の例は、エテニル、プロペニル、およびブテニル基である。
【0038】
「アルコキシ」とは、酸素橋(−O−)を介して結合する指定炭素原子数を有する上記定義のアルキル基である。アルコキシの例は、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、2−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、n−ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ、および3−メチルペントキシである。「C−Cアルコキシ」が別の基と、例えば、(ヘテロアリール)C−Cアルコキシと共に使用される場合、指定の基、この場合はヘテロアリールは、共有結合する酸素橋を介して結合(Cアルコキシ)するか、または特定の炭素原子数、この場合は1個から約4個の炭素原子を有するアルコキシ基により結合する。すなわち、それが置換する基にアルコキシの酸素原子を介して共有結合する。
【0039】
「アルカノイル」とは、ケト橋(−(C=O)−)を介して結合する本明細書に定義したアルキル基である。アルカノイル基は指定の炭素原子数を有し、そのケト基の炭素は数を指定した炭素原子に含まれる。例えば、Cアルカノイル基とは、式CH(C=O)−で示されるアセチル基である。
【0040】
「アルキルエステル」とは、エステル結合を介して結合する本明細書に定義したアルキル基である。エステル結合は、いずれかの方向の配向をもつ、例えば、式−O(C=O)アルキルで示される基、または式−(C=O)Oアルキルで示される基であってもよい。
【0041】
「アルキルチオ」とは、アルキル−S−を意味する。ただし、該アルキル基は指定した炭素原子数を有する本明細書に定義したアルキル基であり、アルキルチオ置換基の結合点はイオウ原子上である。代表的アルキルチオ基はメチルチオである。
【0042】
「アリール」とは、1個または複数の芳香環に炭素のみを含む芳香基である。かかる芳香基は、さらに炭素原子または非炭素原子または基により置換されていてもよい。典型的なアリール基は、1個または2個の個別の環、縮合した環、もしくはペンダント環を含み、また6個から約12個の環原子を含んでなるが、環構成メンバとしてヘテロ原子は含まない。この場合、指定アリール基は置換されていてもよい。かかる置換は、選択肢としてN、O、およびSから独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を含み、例えば、3,4−メチレンジオキシ−フェニル基を形成する5員から7員の飽和環状基への縮合を含み得る。アリール基は、例えば、フェニル、ナフチルであり、1−ナフチルと2−ナフチル、およびビフェニルを含む。
【0043】
用語「(アリール)アルキル」において、アリールおよびアルキルは上記定義の通りであり、その結合点はアルキル基上にある。「(アリール)C−Cアルキル」は、共有単結合を介して(アリール)Cアルキルに直接結合しているか、または1個から約2個の炭素原子を有するアルキル基を介して結合しているアリール基を意味する。(アリール)アルキル基の例は、ベンジルおよびフェニルエチルなどのピペロニルおよび(フェニル)アルキル基である。同様に、用語「(アリール)C−Cアルコキシ」は、それが置換する分子に酸素橋を介して、例えば、(アリール)Cアルコキシに直接結合しているか、または1個から4個の炭素原子を有するアルコキシ基に共有結合しているアリール基を意味する。
【0044】
「シクロアルキル」とは、特定数の炭素原子を有する飽和の炭化水素環基である。単環状シクロアルキル基は、典型的には、3個から約8個(3、4、5、6、7、または8個)の炭素環原子または3個から7個の炭素環原子を有する。シクロアルキル置換基は、置換された窒素もしくは炭素原子から垂下しているか、または2個の置換基を有し得る置換された炭素原子がシクロアルキル基を有していてもよく、該基はスピロ基として結合している。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル、並びに架橋もしくはかご型の飽和環基、例えば、ノルボルナンまたはアダマンタンである。同様に、「シクロアルケニル」とは、指定数の炭素原子を有し、環炭素原子間に少なくとも炭素−炭素二重結合を有する炭化水素環基である。
【0045】
用語「(シクロアルキル)C−Cアルキル」とは、シクロアルキルとアルキルが本明細書に定義したとおりのものであり、それが置換する分子に対する(シクロアルキル)アルキル基の結合点が共有単結合(Cアルキル)であるか、または該アルキル基上にある置換基を意味する。(シクロアルキル)アルキルは、限定されるものではないが、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルメチル、およびシクロヘキシルメチルである。
【0046】
「ハロアルキル」とは、特定数の炭素原子を有し、1個以上のハロゲン原子から最大可能な数のハロゲン原子により置換された分枝および直鎖両方のアルキル基を意味する。ハロアルキルの例は、限定されるものではないが、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2−フルオロエチル、およびペンタ−フルオロエチルである。
【0047】
「ハロアルコキシ」とは、酸素橋(アルコール遊離基の酸素)を介して結合する本明細書に定義したハロアルキルを意味する。
【0048】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードのいずれかを意味する。
【0049】
「ヘテロアリール」とは、N、O、およびSから選択される1個から3個、一部の実施態様においては1個から2個のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である指定数の環原子を有する安定な単環状芳香環であるか、またはN、O、およびSから選択される1個から3個、一部の実施態様においては1個から2個のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である少なくとも1つの5員から7員の芳香環を含む安定な二環状もしくは三環状系を意味する。単環状へテロアリール基は、典型的には、5個から7個の環原子を有する。一部の実施態様において、二環状へテロアリール基は、9員から10員のヘテロアリール基、すなわち、1つの5員から7員の芳香環が第二の芳香性もしくは非芳香性環に縮合している9個から10個の環原子を含む基である。ヘテロアリール基においてSおよびO原子の総数が1を超える場合、これらのヘテロ原子は互いに隣接することはない。ヘテロアリール基においてSおよびO原子の総数は、2を超えないことが好ましい。芳香族複素環においてSおよびO原子の総数は、1を超えないことが特に好ましい。ヘテロアリール基の例は、限定されるものではないが、オキサゾリル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾロピリミジニル、ピラゾリル、ピリジジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キノリニル、テトラゾリル、チアゾリル、チエニルピラゾリル、チオフェニル、トリアゾリル、ベンゾ[d]オキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサジアゾリル、ジヒドロベンゾジオキシニル、フラニル、イミダゾリル、インドリル、およびイソオキサゾリルである。
【0050】
用語「ヘテロシクロアルキル」とは、指定数の環原子を有し、N、O、およびSから選択される1個から約3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である飽和の単環状基であるか、または少なくとも1個のN、O、もしくはS環原子を有し、残りの環原子が炭素である飽和の二環状環系を意味する。単環状へテロシクロアルキル基は、通常、4個から約8個の環原子を有する。一部の実施態様において、単環状へテロシクロアルキル基は、5、6、または7個の環原子を有する。二環状へテロシクロアルキル基は、典型的には、約5個から約12個の環原子を有する。へテロシクロアルキル基の例は、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、およびピロリジニル基である。
【0051】
用語「(ヘテロシクロアルキル)アルキル」とは、ヘテロシクロアルキルおよびアルキルが本明細書に定義したとおりであり、それが置換する分子への(ヘテロシクロアルキル)アルキル基の結合点が該アルキル基上にある飽和の置換基を意味する。この用語は、限定されるものではないが、ピペリジルメチル、ピペラジニルメチル、およびピロリジニルメチルを包含する。
【0052】
「ヒドロキシアルキル」とは、少なくとも1個のヒドロキシル置換基により置換されている上記定義のアルキル基である。
【0053】
用語「モノ−および/またはジ−アルキルアミノ」とは、二級または三級のアルキルアミノ基を意味し、その場合のアルキル基は、指定数の炭素原子を有する、本明細書に定義のように、独立して選択されるアルキル基である。アルキルアミノ基の結合点は窒素上にある。モノ−およびジ−アルキルアミノ基の例は、エチルアミノ、ジメチルアミノ、およびメチル−プロピル−アミノである。
【0054】
「モノ−および/またはジ−アルキルカルボキサミド」とは、式(アルキル)−NH−(C=O)−で示されるモノ−アルキルカルボキサミド、または式(アルキル)(アルキル)−N−(C=O)−で示されるジアルキルカルボキサミドを意味し、式中、モノ−またはジアルキルカルボキサミド置換基のそれが置換する分子への結合点は、カルボニル基の炭素上である。用語「モノ−および/またはジ−アルキルカルボキサミド」はまた、式(アルキル)(C=O)NH−および(アルキル)(C=O)(アルキル)N−で示される基をも包含する(式中、結合点は窒素原子上である)。基アルキル1およびアルキル2は、指定数の炭素原子を有する独立して選択されるアルキル基である。
【0055】
「オキソ」とはケト基(C=O)を意味する。非芳香性炭素原子の置換基であるオキソ基は、−CH−から−C(=O)−への変換の結果である。芳香性炭素原子の置換基であるオキソ基は、−CH−から−C(=O)−への変換と芳香性喪失の結果である。
【0056】
「置換された」とは、指定された原子または基上の1個以上のいずれかの水素を、表示された基から選択された基と置き換えることを意味する。ただし、指定された原子の標準原子価を超えないものとする。置換基がオキソ(すなわち、=O)である場合は、該原子上の2個の水素が置き換わる。オキソ基が芳香族部分に置換する場合、相当する部分的に不飽和の環が芳香環に置き換わる。例えば、オキソが置換しているピリジル基はピリドンである。置換基および/または可変記号の組み合わせは、かかる組み合わせが安定な化合物または有用な合成中間体を生じる場合にのみ可能である。安定な化合物または安定な構造とは、反応混合物からの単離および引き続く有効な治療薬への製剤化に耐えるために十分に強固である化合物を含意するものとする。他に別意に特定しない限り、置換基は核となる構造に従って命名する。例えば、理解すべきことは、(シクロアルキル)アルキルが可能な置換基としてリストに掲載されている場合、核となる構造へのこの置換基の結合点は、アルキル部分にある。
【0057】
「置換された」部位に存在し得る適切な基は、限定されるものではないが、例えば、ハロゲン;シアノ;ヒドロキシル;ニトロ;アジド;アルカノイル(アシルなどのC−Cアルカノイル基など);カルボキサミド;1個から約8個の炭素原子、または1個から約6個の炭素原子を有するアルキル基(シクロアルキル基を含む);1つ以上の不飽和結合を有する基を含み、2個から約8個の、または2個から約6個の炭素原子を有するアルケニルおよびアルキニル基;1つ以上の酸素結合を有し、1個から約8個の炭素原子、または1個から約6個の炭素原子を有するアルコキシ基;フェノキシなどのアリールオキシ;1つ以上のチオエーテル結合を有し、1個から約8個の炭素原子、または1個から約6個の炭素原子を有する基を含むアルキルチオ基;1つ以上のスルフィニル結合を有し、1個から約8個の炭素原子、または1個から約6個の炭素原子を有する基を含むアルキルスルフィニル基;1つ以上のスルホニル結合を有し、1個から約8個の炭素原子、または1個から約6個の炭素原子を有する基を含むアルキルスルホニル基;1個以上のN原子を有し、1個から約8個の炭素原子、または1個から約6個の炭素原子を有する基を含むアミノアルキル基;6個以上の炭素および1つ以上の環を有するアリール(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチルなどであり、各環は置換もしくは未置換の芳香環);1個から3個の個別の環もしくは縮合環を有し、また6個から約18個の環炭素原子を有するアリールアルキル(ベンジルが代表的なアリールアルキル基である);1つから3つの個別の環もしくは縮合環を有し、また6個から約18個の環炭素原子を有するアリールアルコキシ(ベンジルオキシが代表的なアリールアルコキシ基である);または1つの環が3員から約8員である1つから3つの個別の環もしくは縮合環を有し、1個以上のN、OもしくはS原子を有する飽和、不飽和、もしくは芳香族へテロ環状基、例えば、クマリニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、フラニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、トリアジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、およびピロリジニルである。かかるヘテロ環状基は、さらに、例えば、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロゲンおよびアミノにより置換されていてもよい。
【0058】
「剤形」とは、活性薬剤の投与単位を意味する。剤形の例は、錠剤、カプセル剤、注射剤、懸濁液、液剤、乳剤、クリーム、軟膏、坐剤、吸入用剤、経皮用剤などである。
【0059】
「医薬組成物」とは、少なくとも1種の活性薬剤、例えば、式(I)で示される化合物または塩、および少なくとも1種の担体などの他の物質を含有してなる組成物である。医薬組成物は、ヒトおよび非ヒト用薬物についての米国FDAのGMP(製造及び品質管理に関する基準)に合致する。
【0060】
「薬学的に許容される塩」とは、親化合物をその無機および有機の非毒性の酸もしくは塩基付加塩とすることにより修飾した開示化合物の誘導体である。本発明化合物の塩は、塩基性もしくは酸性部分を含む親化合物から、通常の化学的方法により合成することができる。一般に、かかる塩は、これらの化合物の遊離酸形を化学当量の適切な塩基(例えば、Na、Ca、Mg、またはKの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩など)と反応させることにより、またはこれらの化合物の遊離塩基形を化学当量の適切な酸と反応させることにより調製することができる。かかる反応は、典型的には、水中にて、または有機溶媒中にて、または2種類の混合物中にて実施する。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が、実施可能な場合には、好ましい。本発明化合物の塩は、さらに、該化合物の、および該化合物塩の溶媒和物をも包含する。
【0061】
薬学的に許容される塩の例は、限定されるものではないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸もしくは有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリもしくは有機塩;などである。薬学的に許容される塩は、例えば、非毒性無機または有機の酸から形成される、親化合物の常套の非毒性塩および四級アンモニウム塩を包含する。例えば、常套の非毒性酸塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から調製される塩;または酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸,HOOC−(CH−COOH(式中、nは0〜4である)などの有機酸から調製される塩を包含する。さらなる適当な塩のリストは、レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., p. 1418 (1985))に見出し得る。
【0062】
本発明の医薬組成物に適用される「担体」という用語は、活性化合物を共に提供する賦形剤、添加剤、または媒体をいう。
【0063】
「薬学的に許容される添加剤」とは、一般的に安全、非毒性であり、生物学的にも他の意味でも不所望なものではない、医薬組成物を調製する上で有用な添加剤を意味し、獣医用途並びにヒト医薬用途として許容され得る添加剤である。本出願にて使用する「薬学的に許容される添加剤」は、かかる添加剤の1種およびそれ以上の両方を含む。
【0064】
「患者」とは、医学的処置を必要とするヒトまたは非ヒト動物である。医学的処置は、疾患もしくは障害などの既存の症状の処置、予防的または防御的処置、または診断処置を含み得る。一部の実施態様において、患者とはヒトの患者である。
【0065】
「提供する」とは、与えること、投与すること、販売すること、配布すること、譲渡すること(利益または不利益のため)、製造すること、調合すること、または分配することを意味する。
【0066】
「少なくとも1種のさらなる活性薬剤と共に式(I)で示される化合物を提供する」とは、式(I)で示される化合物と、さらなる活性薬剤とを単一の剤形として同時に提供すること、個別の剤形で付随的に提供すること、または式(I)で示される化合物と、少なくとも1種のさらなる活性薬剤との両方が患者の血流内に留まる時間内の一定時間を隔てて投与用の別個の剤形で提供することを意味する。式(I)で示される化合物と、さらなる活性薬剤は、同じ医療従事者が患者に処方する必要はない。さらなる活性薬剤(類)は処方箋を要求する必要がない。式(I)で示される化合物または少なくとも1種のさらなる活性薬剤の投与は、いずれかの適切な経路で、例えば、経口錠剤、経口カプセル剤、経口液剤、吸入剤、注射剤、坐剤、または局所接触剤として実施し得る。
【0067】
本明細書にて使用する場合、「処置」とは、当該疾患を阻害するため、すなわち、その進行を止めること、また疾患を軽快するため、すなわち、疾患を退行させるために十分な活性薬剤のみとして、または少なくとも1種のさらなる活性薬剤と共に、式(I)で示される化合物を提供することを含む。「処置すること」および「処置」はまた、C型肝炎に感染している患者に、治療有効量の式(I)で示される化合物を単一の活性薬剤として、または少なくとも1種のさらなる活性薬剤と共に提供することをも意味する。
【0068】
本発明医薬組み合わせ剤の「治療有効量」とは、患者に投与したときに、症候の改善などの治療上の有益性を提供するために有効な量を意味し、例えば、C型肝炎感染の症候を低下させるために有効な量である。例えば、C型肝炎ウイルスに感染している患者では、ASTおよびALTなどの特定の肝臓酵素レベルが上昇して現れ得る。ASTの正常レベルは血清1リットル(血液の液状部分)あたり5から40単位であり、ALTの正常レベルは血清1リットルあたり7から56単位である。従って、治療有効量とは、上昇したASTおよびALTレベルを有意に低下させるために十分な量であるか、またはASTおよびALTレベルを正常範囲に戻すために十分な量である。治療有効量はまた、患者の血中、血清中、もしくは組織中のウイルスまたはウイルス抗体の検出可能レベルを有意に上昇するのを防ぐか、または有意に低下させるに十分な量でもある。処置の有効性を判定する一つの方法は、ロシュ・タックマンアッセイなど、ウイルスRNAレベルを定量する常套の方法により、HCV・RNAレベルを測定することである。特定の好適な実施態様においては、処置がHCV・RNAレベルを定量限界以下(ロシュ・タックマンアッセイにより測定した場合、30IU/mL)に低下させ、より好ましくは検出限界以下(10IU/mL;ロシュ・タックマン)に低下させる。
【0069】
ウイルスまたはウイルス抗体の検出可能レベルの有意な上昇または低下は、スチューデントのT検定などの統計的有意性の標準パラメトリック検定において、統計的に有意である何らかの検出可能な変化である(p<0.05)。
【0070】
[化学に関する説明]
式(I)はそのすべての下位式を含む。特定の状況下、式(I)で示される化合物は、立体形成中心、立体形成軸などの1つ以上の不斉元素、例えば、不斉炭素原子を含む可能性があり、その結果、該化合物は異なる立体異性体として存在し得る。これらの化合物は、例えば、ラセミ体または光学活性体であり得る。2個以上の不斉元素を有する化合物の場合、これらの化合物はさらにジアステレオ異性体の混合物となり得る。不斉中心を有する化合物の場合、理解すべきことは、光学異性体およびその混合物のすべてが包含されることである。さらに、炭素−炭素二重結合をもつ化合物は、Z型およびE型で存在し得、該化合物のすべての異性体型が本発明に包含される。これらの状況下、単一のエナンチオマ、すなわち、光学活性体は、不斉合成、光学活性純前駆体からの合成により、またはラセミ体の分割により得ることができる。ラセミ体の分割は、例えば、分割剤存在下の再結晶、例えば、キラルHPLCカラムを用いるクロマトグラフィなどの常套の方法により実施し得る。
【0071】
化合物が種々の互変異性体として存在する場合、本発明は特定の互変異性体のいずれか1つに限定されるものではなく、むしろすべての互変異性体を包含する。
【0072】
本発明は、本発明化合物に存在するすべての同位体原子を包含するものとする。同位体は同じ原子番号を有するが、質量数が異なる原子である。一般的例示により、また限定することなしに、水素の同位体はトリチウムとジュウテリウムであり、炭素の同位体は、11C、13C、および14Cである。
【0073】
特定の化合物については、可変記号、例えば、R、R、R−R、R16、R18、R19、M、n、T、Y、およびZを含む一般式を用いて、本明細書に記載する。他の様式で特定しない限り、かかる式中の各可変記号は、他の可変記号から独立して定義する。従って、ある基が、例えば、0−2Rにより置換されている場合、該基は2個までのR基により置換されていてもよく、Rは各出現ごとにRの定義から独立して選択される。また、置換基および/または可変記号の組み合わせは、かかる組み合わせが安定な化合物を生じる場合にのみ許容される。
【0074】
上記の式(I)で示される化合物に加えて、本発明は以下の条件の一つ以上が、可変記号R、R、R−R、R16、R18、R19、M、n、T、Y、およびZを満足する式(I)で示される化合物を包含する。本発明は、安定な化合物を生じる下記の可変記号の定義の組み合わせを担持する式(I)で示される化合物を包含する。
【化4】

式(I)
例えば、本発明は、安定な化合物の得られる限りにおいて、以下の条件のいずれか一つ以上を満足する実施態様を包含する。
【0075】
(i)Wは−N(R)−であり、Qは結合または−O−である。
【0076】
(ii)Wは−C(R)−であり、Qは−N(R)−である。
【0077】
(iii)RはC−C10アルキルまたはC−C10アルケニルであり、その各々が置換されていてもよい。
【0078】
(iv)Qは結合であり、Rは単一の二重結合を有するC−Cアルケニルであるか;またはQが−Oであり、Rは分枝したC−Cアルキルである。
【0079】
(v)RはRに共有結合するC−C飽和もしくは不飽和炭化水素鎖である(ただし、Rはメチンまたはメチレン基である)。
【0080】
(vi)Wは−N(R)−であり、Rは水素、メチル、またはエチルである;Qは結合である;RおよびRは結合してシクロプロピル基を形成する;またRは単一の二重結合を有するC−Cアルケニルであり、該C−CアルケニルはRおよびRにより形成されるシクロプロピルに共有結合する。
【0081】
例えば、本発明は式(II)で示される化合物とその塩を含む。
【化5】

式(II)
(式中、Dは4個から8個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基である)
【0082】
(vii)Rは3員から7員の置換されていてもよいシクロアルキル環を形成するように結合したRおよびRにより形成される置換されていてもよいシクロアルキル環に共有結合するC−Cの飽和もしくは不飽和炭化水素鎖である。例えば、本発明は式(III)および式(IV)で示される化合物およびその塩を包含する。
【化6】

式(III)
【化7】

式(IV)
(式中、Dは4個から8個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルケニル基であり、Eは3個から5個の炭素原子を有するアルキル基である)
【0083】
(viii)Rはメチンまたはメチレン基であり、Rは、Rに共有結合する単一の二重結合を有するC−Cアルケニルである。
【0084】
(ix)RおよびRは結合してシクロプロピル基を形成し、Rは、RおよびRにより形成されるシクロプロピルに共有結合する単一の二重結合を有するC−Cアルケニルである。
【0085】
(x)Rは水素またはC−Cアルキルである。
【0086】
(xi)RはC−Cアルキル、C−Cアルケニル、または(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキルであり、その各々が、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、アミノ、−COOH、−CONH、オキソ、C−Cアルコキシ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個、1個、もしくは2個の置換基により置換されている。
【0087】
(xii)Rは水素である。
【0088】
(xiii)Rは水素であるか、またはRはC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルカノイル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(5員または6員のヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、または(C−Cアルキルエステル)C−Cアルキルであり、その各々が、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、アミノ、−COOH、−CONH、オキソ、C−Cアルコキシ、およびモノ−およびジ−C−Cアルキルアミノから独立して選択される0個、1個、もしくは2個の置換基により置換されている。
【0089】
(xiv)Wは−N(R)−であり、Rは水素、メチル、またはエチルである;
Qは結合である;
Rは水素であるか、またはRはC−Cアルキル、(5員または6員のN−結合ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、または(C−Cアルキルエステル)C−Cアルキルであり、その各々が、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、アミノ、−COOH、オキソ、C−Cアルコキシ、およびモノ−およびジ−C−Cアルキルアミノから独立して選択される0個、1個、もしくは2個の置換基により置換されており、その場合の5員または6員のN−結合ヘテロシクロアルキルは、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、およびモルホリンから選択される;
は水素である;
およびRは結合してシクロプロピル基を形成する;また
は単一の二重結合を有するC−Cアルケニルであり、そのC−CアルケニルはRおよびRにより形成されるシクロプロピルに共有結合する。
【0090】
(xv)RはC−C10アルキルである。
【0091】
(xvi)Mは水素であり、nは0である。
【0092】
(xvii)Mは水素であり、nは0であり、Yは0である。
【0093】
(xviii)Mは水素またはC−Cアルキルである;またR16はハロゲン、C−Cアルキル、およびC−Cアルコキシから独立して選択される0個から4個の置換基を表す。
【0094】
(xix)nは0であり、Yは0である。
【0095】
(xx)nは1である;Yは存在しないか、CH、O、または−O(C=O)−である;またR18およびR19は独立して水素またはメチルである。
【0096】
(xxi)Zは1−ナフチル、2−ナフチル、または以下の基である。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

【化51】

【化52】

【化53】

【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

【化58】

または
【化59】

【0097】
(xxii)Zは以下の式で示される基である。
【化60】

【化61】

【化62】

【化63】

【化64】

【化65】

【化66】

【化67】

または
【化68】

式中、X、X、X、X、およびXは独立してNまたはCHであり、2個を超えないX〜XはNである;
21は、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、−CONH、−COOH、C−Cアルキル、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個から3個の基を表す;また
22は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、−CONH、−COOH、C−Cアルキル、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルエステル、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシであるか、またはR22は、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(フェニル)C−Cアルキル、(フェニル)C−Cアルコキシ、(5員または6員のヘテロアリール)C−Cアルキル、(5員または6員のヘテロアリール)C−Cアルコキシ、ナフチル、インダニル、(5員または6員のヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、または9員もしくは10員の二環状へテロアリールであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、−COOH、−CONH、CH(C=O)NH−、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cヒドロキシアルキル、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルエステル、モノ−およびジ−C−Cアルキルカルボキサミド、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個、1個、もしくは2個の置換基により置換されている。
【0098】
(xxiii)Zは式:
【化69】

で示される基であり、またX−X、R21、およびR22は(xxii)にて上述した定義を有する。
【0099】
(xxiv)Zは式:
【化70】

で示されるキノリンである。
【0100】
(xxv)R21は、この可変記号が存在する実施態様において、キノリンの7位の置換基、および0個から2個のさらなる置換基であり、それら置換基のすべてが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、−CONH、−COOH、C−Cアルキル、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される;またR22は(フェニル)C−Cアルキルまたは(ピリジル)C−Cアルキルであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、−COOH、−CONH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシから独立して選択される0個、1個、もしくは2個の置換基により置換されている。
【0101】
(xxvi)
【化71】

式中、R22はフェニルまたはピリジルであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシから独立して選択される0個、1個、もしくは2個の置換基により置換されている。
【0102】
(xxvii)R22は、この可変記号が存在する実施態様のいずれかにおいて、以下の式で示される基である。
【化72】

【化73】

【化74】

【化75】

【化76】

【化77】

【化78】

【化79】

【化80】

【化81】

【化82】

【化83】

【化84】

【化85】

【化86】

【化87】

【化88】

【化89】

【化90】

【化91】

【化92】

【化93】

【化94】

【化95】

【化96】

【化97】

【化98】

−OCH
−OCHCH
【化99】

【化100】

または
【化101】

【0103】
(xxviii)Rは、ヒドロキシル、アミノ、−NR1011、−OR12、−SR12、−NR10(S=O)R11、−NR10SO11、−NR10SONR1112、−NR10SONR1112、−(C=O)OR10、−NR10(C=O)OR11、または−CONR1011である。
【0104】
(xxix)Rは、ヒドロキシル、−NR10SO11、−(C=O)OR10、または−CONR1011である。
【0105】
(xxx)Rは、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルカノイル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)CHSO−、(ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、または(フェニル)C−Cアルキルであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、オキソ、−COOH、−CONH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個もしくは1個以上の置換基により置換されている。
【0106】
(xxxi)C−Cアルキルまたは(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル。
【0107】
(xxxii)R10、R11、およびR12は各出現で独立して水素であるか、またはC−Cアルキル、C−Cアルケニル、(フェニル)C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、(ナフチル)C−Cアルキル、もしくは(5員から10員のヘテロアリール)C−Cアルキルであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、オキソ−COOH、−CONH、オキソ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルカノイル、C−Cアルキルチオ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルエステル、モノ−およびジ−C−Cアルキルカルボキサミド、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個から3個の置換基により置換されている。
【0108】
(xxxii)R10、R11およびR12は独立して水素であるか、またはC−Cアルキル、C−Cアルケニル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、(フェニル)C−Cアルキル、もしくは(5員から6員の単環状ヘテロアリール)C−Cアルキルであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシから独立して選択される0個から3個の置換基により置換されている。
【0109】
(xxxiii)R10、R11およびR12は独立して水素またはC−Cアルキルである。
【0110】
[製剤]
本発明化合物はニートの化学品として投与し得るが、好ましくは医薬組成物として投与する。従って、本発明は式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を、少なくとも1種の薬学的に許容される担体と共に含有してなる医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、式(I)の化合物もしくは塩を唯一の活性薬剤として含有し得るし、または1種以上のさらなる活性薬剤を含有し得る。
【0111】
本発明化合物の化合物は、経口、局所、非経口、吸入もしくは噴霧、舌下、経皮、口腔内投与経由、直腸内、点眼液として、または他の手段により、常套の薬学的に許容される担体を含む投与単位剤形で投与し得る。該医薬組成物は、医薬として有用な形状として、例えば、エーロゾル、クリーム、ゲル、ピル、カプセル、錠剤、シロップ、経皮パッチ、または点眼液として製剤し得る。一部の剤形、例えば、錠剤およびカプセルは、活性成分の適切な量、例えば、所望の目的を達成する有効量を含有する適当な大きさの単位用量にさらに分割する。
【0112】
担体は添加剤と賦形剤であり、処置すべき患者への投与に適する状態とするために、純度が十分に高く、また毒性が十分に低くなければならない。担体は不活性であるか、またはそれ自体、薬学的に有益性を有し得る。該化合物と共に使用する担体の量は、該化合物の単位用量あたりの投与物質の実用的な量を提供するのに十分な量である。
【0113】
担体の種類は、限定されるものではないが、結合剤、緩衝剤、着色剤、賦形剤、崩壊剤、乳化剤、芳香剤、すべり剤、滑沢剤、保存剤、安定剤、界面活性剤、製錠剤、および湿潤剤などである。一部の担体は一分類を超えてリスト掲載し得る。例えば、植物油は一部の製剤において滑沢剤として使用し、他の場合には賦形剤として使用し得る。代表的な薬学的に許容される担体は、砂糖、デンプン、セルロース、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、および植物油である。選択肢としての活性および/または不活性薬剤は医薬組成物中に含まれるが、ただし、かかる薬剤は医薬組成物に使用されるヒドラゾンおよびジアシルヒドラジン化合物の活性を実質的に阻害しない。選択肢としての活性剤は、式(I)の化合物または塩ではないさらなる活性薬剤である。
【0114】
該医薬組成物は経口投与用に製剤化し得る。これらの組成物は、式(I)で示される化合物の0.1から99重量%を含み、通常、式の化合物を少なくとも約5重量%含む。一部の実施態様では、式(I)で示される化合物を約25重量%から約50重量%、または約5重量%から約75重量%含有する。
【0115】
[処置方法]
本発明は、C型肝炎感染のリスクのある患者に、またはC型肝炎ウイルスに感染している患者に、本発明化合物の有効量を提供することにより、C型肝炎感染を予防および処置する方法を含む。本発明化合物を唯一の活性薬剤として提供するか、または1種以上のさらなる活性薬剤と共に提供し得る。
【0116】
本明細書に開示する医薬組成物は患者のC型肝炎感染の予防または処置に有用である。
【0117】
本発明の医薬組み合わせ剤の有効量は、(a)C型肝炎に罹患する傾向にあるが、未だC型肝炎であると診断されていない患者において、C型肝炎もしくはC型肝炎の症候の発症を予防すること、または初期C型肝炎感染と関連し得るか、もしくはそれを原因とする疾患(慢性HCV感染を背景として起こり得る肝臓線維症など)を予防すること;(b)C型肝炎の進行を阻止すること;および(c)C型肝炎感染を退行させること;に十分な量である。C型肝炎の進行を阻止し、またはC型肝炎を退行させるために有効な医薬組成物の量は、C型肝炎の症候の悪化を停止させるか、またはC型肝炎ウイルスに感染した患者が経験する症候を低減させるために有効な量である。あるいは、C型肝炎の進行もしくは退行の停止は、該疾患の数種のマーカのいずれかにより示すことができる。例えば、C型肝炎ウイルス負荷における増大もしくは低下の欠落、または患者の血中における循環するHCV抗体数の増加もしくは低下の欠落は、C型肝炎感染の進行もしくは退行停止のマーカである。その他のC型肝炎疾患のマーカは、アミノ基転移酵素レベル、特に、肝臓酵素ASTおよびALTのレベルである。ASTの正常レベルは血清1リットル(血液の液状部分)あたり5から40単位であり、ALTの正常レベルは血清1リットルあたり7から56単位である。これらのレベルはHCV感染患者において典型的に上昇する。疾患の退行は、通常、ASTおよびALTレベルが正常範囲に戻ることを特徴とする。
【0118】
本発明の医薬組み合わせ剤の有効量により影響され得るC型肝炎の症候は、肝機能低下、疲労、風邪様症候、発熱、悪寒、筋肉痛、関節痛、および頭痛、嘔吐、特定食物忌避、説明不能の体重喪失、うつ病などの精神障害、腹部虚弱、および黄疸である。
【0119】
「肝機能」とは、限定されるものではないが、血清タンパク質(例えば、アルブミン、血液凝固因子、アルカリホスファターゼ、アミノ基転移酵素(例:アラニントランスアミナーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ)、5’−ヌクレオシダーゼ、γ−グルタミニルトランスペプチダーゼなど)の合成、ビリルビン合成、コレステロール合成、および胆汁酸の合成などの合成機能;炭水化物代謝、アミノ酸とアンモニア代謝、ホルモン代謝、および脂質代謝などの肝臓代謝機能;外来薬物の解毒;および内蔵および門脈の血行動態などの血行動態機能;などの肝臓の正常機能をいう。
【0120】
本明細書に記載の組み合わせ剤の有効量は、患者に投与したときの濃度において、活性薬剤の十分な濃度を提供する。活性薬剤の十分な濃度とは、感染を予防または撃退するために必要な、患者身体における該薬剤の濃度である。かかる量は、実験的に、例えば、該薬物の血中濃度をアッセイすることにより、または理論的に生物利用能を計算することにより確認することができる。インビトロでウイルス感染を阻止するために十分な活性薬剤の量は、レプリコンに基づくアッセイなどのウイルス感染性についての通常のアッセイにより決定し得、これは文献に記載されている。
【0121】
本発明はまた、本発明化合物を含有してなる医薬の組み合わせ剤を予防的治療に使用することを包含する。予防または防御的処置という文脈において、本発明化合物の有効量は、C型肝炎感染症に罹患する患者のリスクを有意に低下させるために十分な量である。
【0122】
本発明はインビボでのHCV複製を阻害する方法であって、HCVに感染した患者に、本発明の化合物または塩を、インビトロでHCVレプリコンの複製を阻害するために十分な該化合物または塩の濃度で提供することを特徴とする方法を含む。本事例において、濃度はインビボの濃度、例えば、血中または血漿中濃度である。インビトロでHCVレプリコンの複製を阻害するために十分な化合物濃度は、本明細書の実施例3に示すアッセイ法などのレプリコン複製のアッセイにより決定し得る。
【0123】
処置方法は、本発明化合物の特定の投与量を患者に提供することを含んでなる。各活性薬剤の投与レベルは、1日につき体重1キログラムあたり約0.1mgから約140mgが上記症状の処置において有用である(患者1名あたり1日につき約0.5mgから約7g)。単一投与製剤を製造するために担体物質と組み合わせ得る有効成分の量は、処置する患者および特定の投与様式によって変わる。本発明化合物の投与単位。特定の実施態様において、25mgから500mg、または25mgから200mgの本発明化合物が、患者に毎日提供される。投与頻度は使用する化合物および処置すべき特定の疾患により変わり得る。しかし、殆どの感染性障害の処置のためには、1日4回以下の投与計画が好ましく、1日1回または2回の投与計画が特に好ましい。
【0124】
しかし、特定の患者に対する具体的な投与量レベルは、多様なファクタ、例えば、採用する具体的化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、および治療を受ける患者における排泄速度、薬物組み合わせおよび特定疾患の重篤度などに依存することが理解されよう。
【0125】
[包装製剤]
本発明は式(I)で示される化合物または塩を、C型肝炎感染に罹患する患者の処置のために該組成物を使用するための説明書と共に、包装容器内に提供することを含んでなる。
【0126】
本発明は包装した医薬組み合わせ剤を包含する。かかる包装した組み合わせ剤は、式(I)で示される化合物を包装容器中に含む。該包装容器はさらに、C型肝炎感染などの患者のウイルス感染症を処置または予防する組み合わせ剤の使用についての説明書を含む。
【0127】
包装した医薬組み合わせ剤は、1種以上のさらなる活性薬剤を含み得る。
【0128】
[組み合わせ方法]
本発明は、本発明化合物または塩を1種以上のさらなる活性薬剤と共に提供する医薬組成物および処置方法を包含する。特定の実施態様において、活性薬剤(または薬剤類)はHCVプロテアーゼインヒビタまたはHCVポリメラーゼインヒビタである。例えば、プロテアーゼインヒビタはテラプレビル(telaprevir)(VX−950)であり、ポリメラーゼインヒビタはバロピシタビン(valopicitabine)、またはNM107、バロピシタビンがインビボで変換される活性薬剤であってもよい。特定の実施態様において、第二の活性薬剤は、リバビリン、インターフェロン、またはPeg−インターフェロン−アルファ接合体である。
【0129】
本発明方法によると、本発明化合物およびさらなる活性薬剤は、(1)組み合わせ製剤において、同時製剤し、同時に投与または送達する;(2)別個の製剤として交互にまたは並行して送達する;または(3)当該技術分野で既知の他の組み合わせ治療計画により投与する。交互療法により送達する場合、本発明方法は本発明化合物およびさらなる活性薬剤を連続的に、例えば、個別の液剤、エマルジョン、懸濁液、錠剤、ピルもしくはカプセルとして、または個別のシリンジ中の異なる注射剤として投与または送達することを含んでなる。一般に、交互療法に際して、各有効成分の有効投与量を連続して、すなわち、継続して投与するが、一方、同時療法においては、2種以上の有効成分の有効投与量を一緒に投与する。間歇的組み合わせ療法の様々な順序が使用し得る。
【0130】
特定の実施態様において、処置方法では、患者に式(I)で示される化合物およびPEG化インターフェロンもしくはインターフェロンガンマなどのインターフェロンを提供する。インターフェロンは本発明化合物と共に提供される唯一の化合物であってもよく、またはインターフェロンではないさらなる活性薬剤と共に提供してもよい。
【0131】
本発明の処置方法および医薬的組み合わせ剤は、本発明化合物およびさらなる活性薬物としての以下の化合物および物質のいずれか1種もしくは組み合わせを含む。
カスパーゼインヒビタ:IDN6556(イダン(Idun)ファーマシューティカル)
シクロフィリンインヒビタ:NIM811(ノバルティス)およびDEBIO−025(デビオファーム)
シトクロムP450モノオキシゲナーゼインヒビタ;リトナビル(ritonavir)(WO94/14436)、ケトコナゾール、トロレアンドマイシン、4−メチルピラゾール、シクロスポリン、クロメチアゾール、シメチジン、イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、フルボキサミン、フルオキセチン、ネファゾドン、セルトラリン、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、フォサンプレナビル、サキナビル、ロピナビル、デラビルジン、エリスロマイシン、VX−944、およびVX−497。好適なCYPインヒビタは、リトナビル、ケトコナゾール、トロレアンドマイシン、4−メチルピラゾール、シクロスポリン、およびクロメチアゾールである。
グルココルチコイド:ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニソン、プレドニソロン、メチルプレドニソロン、トリアムシノロン、パラメタゾン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾン
ヘマトポイエチン:ヘマトポイエチン−1およびヘマトポイエチン−2。ヘマトポイエチンスーパーファミリの他のメンバ、例えば、種々のコロニ刺激因子(例(例:G−CSF、GM−CSF、M−CSF)、Epo、およびSCF(幹細胞因子)
ホメオパシー療法:ノゲシ、シルマリン(オオアザミ)、ヤクヨウニンジン、グリチルリチン、カンゾウ根、サネカズラ(南五味子)、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロテン、およびセレン
免疫調節性化合物:サリドマイド、IL−2、ヘマトポイエチン、IMPDHインヒビタ、例えば、メリメポジブ(ベルテックス(Vertex)ファーマシューティカルス・インク)、インターフェロン、例えば、天然インターフェロン(オムニフェロン(ビラゲン)およびスミフェロン(住友)天然インターフェロン混合物)、天然インターフェロンアルファ(アルフェロン(ヘミスファークス・バイオファーマ・インク))、リンパ芽球細胞からのインターフェロンアルファn1(ウエルフェロン(グラクソ・ウエルカム))、経口アルファインターフェロン、Peg−インターフェロン、Peg−インターフェロンアルファ2a(ペガシス(ロシュ))、組換えインターフェロンアルファ2a(ロフェロン(ロシュ))、吸入インターフェロンアルファ2b(アエルックス(AERX)アラダイム)、Peg−インターフェロンアルファ2b(アルブフェロン(ヒューマン・ゲノム・サイエンス/ノバルティス;ペギントロン(シェリング))、組換えインターフェロンアルファ2b(イントロンA(シェリング))、PEG化インターフェロンアルファ2b(PEG−イントロン(シェリング);ビラフェロンPEG(シェリング))、インターフェロンベータ−1a(レビフ(セロノ・インクおよびファイザー))、共通インターフェロンアルファ(インフェルゲン(バレント・ファーマシューティカル))、インターフェロンガンマ−1b(アクチンミューン(インターミューン・インク)、非PEG化インターフェロンアルファ、アルファインターフェロン、およびその類似体、および合成チモシンアルファ1(ザダキシン(サイクローン・ファーマシューティカル・インク))
免疫抑制剤:シロリムス(ラパミューン(ワイエス))
インターロイキン:(IL−1、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−11、IL−12)、LIF、TGF−ベータ、TNF−アルファ)および他の低分子量因子(例:AcSDKP、pEEDCK、胸腺ホルモン、およびミニサイトカイン)
インターフェロン・エンハンサー:EMZ702(トランジション・セラピューティックス)
IRESインヒビタ:VGX−410C(VGXファーマ)
モノクローナルおよびポリクローナル抗体:XTL−6865(XTL)、ヒューマックス−ヘップC(ジェンマブ)、C型肝炎インミューングロビン(ヒト)(シバシル(CIVACIR)(ナビ・バイオファーマシューティカルス)
ヌクレオシド類似体:ラミブジン(エピビル、3TC(グラクソスミスクライン)、MK−0608(メルク)、ザルシタビン(ヒビド(HIVID)(ロシュUSファーマシューティカルス)、リバビリン(コペガス(COPEGUS)(ロシュ)、レベトール(シェリング)、ビロナ(ICNファーマシューティカルス)、およびビラゾール(ICNファーマシューティカルス)など)、およびビラミジン(バレント・ファーマシューティカルス)、リバビリンのアミジンプロドラッグ。ヌクレオシド類似体の組み合わせも使用し得る。
非ヌクレオシドインヒビタ:PSI−6130(ロシュ/ファーマセット)、デラビリジン(レスクリプター(ファイザー))およびHCV−796(ビロファーム)
P7プロテインインヒビタ:アマンタジン(シンメトレル(エンド・ファーマシューティカルス・インク)
ポリメラーゼインヒビタ:NM283(バロピシタビン)(イデニックス)およびNM107(イデニックス)
プロテアーゼインヒビタ:BILN−2061(ベーリンガー・インゲルハイム)、GW−433908(アンプレナビルのプロドラッグ(グラクソ/ベルテックス))、インジナビル(クリキシバン(CRIXIVAN)、メルク)、ITMN−191(インターミューン/アレイ・バイオファルマ)、VX950(ベルテックス)および前記プロテアーゼインヒビタの1種以上を含んでなる組み合わせ剤
RNA干渉:SIRNA−034RNAi(シマ・セラピューティックス)
治療ワクチン:IC41(インターセル)、IMN−0101(イムノジェネティックス)、GI5005(グロベインミューン)、クロンバック−C(トリペプ/イノビオ)、ED−002(イムノジェネティックス)、ヘパバックスC(バイレックス(ViRex)メディカル)
TNFアゴニスト:アダリムマブ(ヒュミラ(HUMIRA)、アボット)、エンタネルセプト(エンブレル(ENBREL)、アムジェンおよびワイエス)、インフリキシマブ(レミケイド(REMICADE)、セントコア、インク)
チューブリンインヒビタ:コルヒチン
スフィンゴシン−1−リン酸受容体モジュレーター:FTY720(ノバルティス)
TLRアゴニスト:ANA−975(アナディス(Anadys)ファーマシューティカルス)、TLR7アゴニスト(アナディス・ファーマシューティカルス)、CPG10101(コレイ(Coley))、およびCPG7909(コレイ)などのTLR9アゴニスト
シクロフィリンインヒビタ:NIM811(ノバルティス)およびDEBIO−025(デビオファーム)
【0132】
C型肝炎の投薬を受けた患者には、典型的に、インターフェロンが別の活性薬剤と共に供与される。従って、本発明化合物がさらなる活性薬剤としてPEG化インターフェロンアルファ2aなどのインターフェロンと共に提供される処置方法と医薬的組み合わせ剤が、実施態様として包含される。同様に、リバビリンがさらなる活性薬剤である方法と医薬的組み合わせ剤も本明細書にて提供される。
【実施例】
【0133】
本発明をさらに以下の実施例により説明するが、これらの実施例は限定するためのものではない。
【0134】
本明細書にて提供される化合物は、一般に、標準の合成方法により調製し得る。出発原料は、一般に、商業的供給源、例えば、シグマ−アルドリッチ・コーポレーション(セントルイス、ミズーリ)から容易に入手し得る。例えば、実施例1〜5に示された経路と同様の合成経路が使用し得る。明らかなことは、以下の反応工程図に示す最終生成物および中間体は、抽出、乾燥、濾過および/または濃縮し、さらに(例えば、クロマトグラフィにより)精製することができることである。以下の反応工程図の各可変記号(例えば、“R”)は、本明細書に提供されている化合物の説明と矛盾しない基を表す。当業者個々人は、合成反応工程図全体からほとんど迂回することなく、本明細書に記載した1つまたは数種の合成工程を改変し得ることを知り得よう。これらの反応工程図を介して代表的な化合物を合成するためのさらなる実験的詳細を、本明細書の実施例1〜5に提供する。
【0135】
[略号]
以下の化学上の略号は実施例1にて使用するものである。これらの実施例に使用するさらなる略号は、有機化学合成分野の当業者が周知のものである。
CDI 1,1’−カルボニルジイミダゾール
DBU 1,8−ジアゾビシクロ(5.4.0)ウンデカ−7−エン
DCE ジクロロエタン
DCM ジクロロメタン
DMF ジメチルホルムアミド
HATU ヘキサフルオロリン酸O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム
HBTU ヘキサフルオロリン酸O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム
NMM N−メチルモルホリン
TFA トリフルオロ酢酸
【0136】
[実施例1:(2S)−1−((2S,4R)−2−(1−(シクロプロピルスルホニルカルバモイル)−2−ビニルシクロプロピルカルバモイル)−4−(7−メトキシ−2−フェニルキノリン−4−イルオキシ)ピロリジン−1−イル)−3,3−ジメチル−1−オキソブタン−2−イルカルバミン酸tert−ブチルの合成]
<工程1:N−(シクロプロピルスルホニル)−1−(BOC−アミノ)−2−ビニルシクロプロパンカルボキサミド(化合物2)の調製>
【化102】

CDI(2.98g、18.4mm、1.1eq)を酢酸エチルに溶解する。文献(Beaulieu, P.L. et al., J. Org. Chem. 70:5869-79 (2005))に記載された手順に従い調製したN−Boc−シクロプロピルビニル酸(3.8g、16.7mm、1.0eq)をCDI/酢酸エチル混合物に添加し、出発原料が消費されるまで室温で撹拌する。この混合物にシクロプロピルスルホンアミン(2.2g、18.4mm、1.1eq)を加え、次いで、DBU(2.1ml、20.5mm、1.23eq)を加え、この混合物を室温で2時間撹拌する。後処理し、シリカゲルクロマトグラフィにより精製して、2gの化合物(1)を得る。
【0137】
<工程2:(2S,4R)−2−(1−(シクロプロピルスルホニルカルバモイル)−2−ビニルシクロプロピルカルバモイル)−4−(7−メトキシ−2−フェニルキノリン−4−イルオキシ)ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルおよび(2S,4R)−N−(1−(シクロプロピルスルホニルカルバモイル)−2−ビニルシクロプロピル)−4−(7−メトキシ−2−フェニルキノリン−4−イルオキシ)ピロリジン−2−カルボキサミドの調製>
【化103】

WO02/060926記載の方法に従い調製した化合物(2)(4.3g、9.3mmol、1.1eq)をDMF中、ヘキサフルオロリン酸O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム(4.1g、10.5mmol、1.3eq)と共に30分間撹拌し、次いで、シクロプロピルアミン(1)(1.92g、8.3mmol,1.0eq)およびN−メチルモルホリン(2.52g、25.0mmol、3.0eq)を加える。混合物を一夜撹拌し、減圧下で溶媒を除去する。得られる残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和NaHCO水溶液で洗浄する。有機溶媒をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮して粗生成物(3)を得る。これをさらに精製することなく次工程で使用する。
【0138】
乾燥CHCl(10ml)中、化合物(3)を5mLのTFAで処理し、一夜撹拌する。溶媒を除去し、残渣を酢酸エチルから結晶化して、4.12gの化合物(4)(2工程の収率61%)を得る。
【0139】
<工程3:(2S)−1−((2S,4R)−2−(1−(シクロプロピルスルホニルカルバモイル)−2−ビニルシクロプロピルカルバモイル)−4−(7−メトキシ−2−フェニルキノリン−4−イルオキシ)ピロリジン−1−イル)−3,3−ジメチル−1−オキソブタン−2−イルカルバミン酸tert−ブチルの調製>
【0140】
[実施例2:(2S)−1−((2S,4R)−2−(1−(シクロプロピルスルホニルカルバモイル)−2−ビニルシクロプロピルカルバモイル)−4−(7−メトキシ−2−フェニルキノリン−4−イルオキシ)ピロリジン−1−イル)−3,3−ジメチル−1−オキソブタン−2−イルカルバミン酸tert−ブチルの合成]
【化104】

N−メチルモルホリン(2mmol)およびHBTU(453mg、1.2mmol)を、無水DMF(10ml)中、酸(5)(231mg、1mmol)の溶液に室温で一度に加える。室温で10分間撹拌した後、化合物(4)(673mg、1mmol)を一度に加え、一夜撹拌する。反応混合物を氷水中に加え、酢酸エチル(100ml)で抽出する。有機層をHO、食塩水で洗い、無水MgSOで乾燥する。残渣を濾過し、減圧下で蒸発乾固させる。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル100:0から50:50)により精製し、所望の生成物(6)を得る。
【0141】
[実施例3:(2S,4R)−N−(1−(シクロプロピルスルホニルカルバモイル)−2−ビニルシクロプロピル)−1−((S)−2−ヘキサ−5−エナミド−3,3−ジメチルブタノイル)−4−(7−メトキシ−2−フェニルキノリン−4−イルオキシ)ピロリジン−2−カルボキサミド(化合物(17))の合成]
【化105】

無水DCM(7ml)中、化合物(6)(790mg、1mmol)の溶液に、TFA(3〜4ml)を室温で加える。反応をLC/MSおよびTLCによりモニタする。2時間後、反応混合物を減圧下で蒸発乾固する。粗生成物をさらに精製することなく次工程反応で使用する。
【0142】
N−メチルモルホリン(1mmol)およびHBTU(226mg、0.6mmol)を、無水DMF(10ml)中のヘキサ−5−エン酸(57mg、0.5mmol)の溶液に室温で一度に加える。室温で10分間撹拌した後、粗中間体(394mg、0.5mmol)を一度で加え、次いで、一夜撹拌する。反応混合物を氷水に加え、酢酸エチル(100ml)で抽出する。有機層をHO、食塩水で洗い、無水MgSOで乾燥する。残渣を濾過し、減圧下で蒸発乾固させる。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル100:0から50:50)により精製し、所望の生成物(7)を得る。
【0143】
[実施例4:(2R,6S,16aS,Z)−6−tert−ブチル−N−(シクロプロピルスルホニル)−2−(7−メトキシ−2−フェニルキノリン−4−イルオキシ)−5,8,16−トリオキソ−1,2,3,5,6,7,8,9,10,11,13a,14,14a,15,16,16a−ヘキサデカヒドロシクロプロパ[n]ピロロ[2,1−c][1,4,7]トリアザシクロペンタデシン−14a−カルボキサミド(化合物8)の合成]
グルッブス(Grubbs)2nd(CAS登録番号246047−72−3)またはホベイダ−グルッブス(Hoveyda-Grubbs)2nd触媒(CAS登録番号301224−40−8)が触媒するRCM
【化106】

【0144】
1,2−ジクロロエタン(300ml)中、化合物(7)(786mg、1mmol)、ホベイダ−グルッブス(Hoveyda-Grubbs)2nd触媒(5mol%)の混合物を脱気し、アルゴン雰囲気下、12〜24時間110℃に加熱する。反応をLC/MSおよびTLCによりモニタする。反応混合物を減圧下で蒸発乾固する。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル100:0から50:50)により精製し、所望の生成物(8)を得る。
【0145】
化合物(9)および(10)は、化合物(8)について示した手順により調製する。
【0146】
[実施例5:2−((2R,6S,14aR,16aS,Z)−14a−(シクロプロピルスルホニルカルバモイル)−2−(7−メトキシ−2−フェニルキノリン−4−イルオキシ)−5,8,16−トリオキソ−1,2,3,5,6,7,8,9,10,11,13a,14,14a,15,16,16a−ヘキサデカヒドロシクロプロパ[n]ピロロ[2,1−c][1,4,7]トリアザシクロペンタデシン−6−イル)酢酸tert−ブチルの合成]
【化107】

【0147】
<工程1>
N−メチルモルホリン(0.2mmol)およびHATU(45.3mg、0.12mmol)を、無水DMF(4ml)中、酸(11)(40.3mg、0.11mmol)の溶液に室温で一度に加える。室温で5分間撹拌した後、化合物(4)(67.3mg、0.1mmol)を一度に加え、次いで、一夜撹拌する。反応混合物を氷水中に加え、酢酸エチル(50ml)で抽出する。有機層をHO、食塩水で洗い、無水MgSOで乾燥する。残渣を濾過し、減圧下で蒸発乾固させる。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル100:0から50:50)により精製し、所望の生成物(12)を得る。
【0148】
<工程2>
1,2−ジクロロエタン(30ml)中、化合物(12)(32mg、0.038mmol)、ホベイダ−グルッブス(Hoveyda-Grubbs)2nd触媒(3mg、10mol%)の混合物を脱気し、アルゴン雰囲気下、5時間60℃に加熱する。反応をLC/MSおよびTLCによりモニタする。反応混合物を減圧下で蒸発乾固する。粗生成物をPrep−LC/MSにより精製し、所望の生成物(13)を得る。
【0149】
<工程3>
無水DCM(3ml)中の化合物(13)(150mg、0.18mmol)の溶液に室温でTFA(3ml)を加える。反応をLC/MSおよびTLCによりモニタする。2時間後に、反応混合物を減圧下で蒸発乾固する。粗生成物はさらに精製することなく次工程反応に使用する。
【0150】
粗生成物をDMF(5ml)に溶かす。ジイソプロピルエチルアミン(1mmol)およびHBTU(113mg、0.3mmol)を室温で一度に加える。室温で5分間撹拌した後、ピペリジン(0.1ml)を一度に加え、次いで一夜撹拌する。粗生成物をPrep−LC/MSにより精製し、所望の生成物(14)を得る。
【0151】
[実施例6:追加化合物]
実施例1から4の反応工程図1に示した方法により以下の化合物を調製した。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
【表3】

【0155】
【表4】

【0156】
【表5】

【0157】
【表6】

【0158】
[実施例7:HCV複製阻害化合物の同定アッセイ法]
本明細書の請求項に記載した化合物について、HCVレプリコン構築物が組み込まれている培養細胞により、C型肝炎レプリコンのウイルス複製阻害能力を試験する。HCVレプリコン系については、バーテンシュレイガーら(Bartenschlager et. al., Science, 285, pp.110-113 (1999))が記載している。レプリコン系はインビボ抗−HCV活性を予測させるものである。ヒトにおいて活性な化合物は、レプリコンアッセイにおいて一様に活性を示す。
【0159】
このアッセイにおいては、HCVレプリコン含有細胞を異なる濃度の試験化合物で処理し、HCVレプリコンの複製を抑制する試験化合物の能力を確認する。陽性対照として、HCVレプリコン含有細胞を異なる濃度のインターフェロンアルファ(HCV複製の既知インヒビタ)で処理する。レプリコンアッセイ系は、宿主細胞におけるレプリコン遺伝子生成物の転写を検出するために、レプリコンそれ自体の成分として、ネオマイシンリン酸転移酵素(NPT)を含む。HCVレプリコンが活発に複製している細胞は、高レベルのNPTを有する。NPTのレベルはHCV複製に比例する。HCVレプリコンが複製活動していない細胞では、NPTレベルが低く、その結果、ネオマイシンで処理したときに生存し得ない。各サンプルのNPTレベルは捕捉ELISAにより測定する。
【0160】
レプリコン構築物を取り込ませたC型肝炎レプリコン培養細胞のウイルス複製を阻害する能力について化合物を試験するためのプロトコールは以下のとおりである。
【0161】
<7A.HCVレプリコンおよびレプリコン発現>
HCVゲノムは、3000個のアミノ酸を含んでなるポリタンパク質をエンコードする単一のORFを含んでなる。ORFは5’側で内部リボソームエントリ部位(IRES)として働く非翻訳領域に隣接し、3’側でウイルス複製に必要な高度保存配列(3’−NTR)に隣接する。ウイルス感染に必要な構造タンパク質は、ORFの5’末端付近に位置している。NS2からNS5Bと命名される非構造タンパク質は、ORFの残りの部分を構成する。
【0162】
HCVレプリコンは、5’−3’、HCV−IRES、ネオマイシンリン酸転移酵素(neo)遺伝子、脳心筋炎ウイルスのIRES(HCV配列NS3からNS5Bの翻訳を指令する)、および3’−NTRを含んでいる。HCVレプリコンの配列はジェンバンクに寄託されている(受託番号AJ242652)。
【0163】
レプリコンは、エレクトロポレーションなどの標準的方法により、Huh−7細胞に形質移入する。
【0164】
<7B.細胞維持>
装置および材料は限定されるものではないが、Huh−7HCVレプリコン含有細胞、維持媒体(DMEM(ダルベッコ修飾イーグル培地):10%FBS、L−グルタミン、非必須アミノ酸、ペニシリン(100単位/ml)、ストレプトマイシン(100マイクログラム/ml)、および500マイクログラム/mlのゲネチシン(G418)を追加)、スクリーニング培地(DMEM:10%FBS、L−グルタミン、非必須アミノ酸、ペニシリン(100単位/ml)、およびストレプトマイシン(100マイクログラム/ml)追加)、96穴組織培養プレート(平底)、96穴プレート(薬物希釈用U底)、陽性対照用インターフェロンアルファ、固定試薬(メタノール、アセトンなど)、一次抗体(ウサギ抗−NPTII)、二次抗体:Eu−NaI、および増強液である。
【0165】
HCVレプリコン含有細胞はその密度が適当である場合に、高レベルのウイルスRNAレプリコン複製を支持する。集密度が過度になると、ウイルスRNAの複製が低下する。従って、細胞は500マイクログラム/mlのG418の存在下に、対数期の増殖を維持しなければならない。一般に、細胞は1週間に2回、1:4〜6の希釈で継代すべきである。細胞維持は以下のように実施する。
【0166】
HCVレプリコン含有細胞は、細胞が良好に増殖していることを確認するために、顕微鏡下で試験する。細胞を一度PBSですすぎ、2mlのトリプシンを加える。細胞/トリプシン混合物は、COインキュベータ中、37℃で3〜5分間インキュベートする。インキュベーション後、10mlの完全培地を加えて、トリプシン処理反応を停止させる。細胞に緩やかに空気を送り込み、15mlのチューブに容れ、1200rpmで4分間回転する。トリプシン/培地溶液を除去する。培地(5ml)を加え、注意して細胞を混合する。細胞を計数する。
【0167】
次いで、細胞を6000〜7500細胞/100マイクロリットル/ウエル(6〜7.5×10細胞/10ml/プレート)の密度として96穴プレートに播種する。次いで、プレートを5%COインキュベータ中、37℃でインキュベートする。
【0168】
細胞は播種のおよそ24時間後および薬物添加前に顕微鏡下で試験する。計数および希釈を正確に実施した場合、細胞は60〜70%密集しており、略すべての細胞が均一にウエルに付着し、広がる。
【0169】
<7C:HCVレプリコン含有細胞の試験化合物による処理>
HCVレプリコン含有細胞はPBSで一度すすぎ、次いで、2mlのトリプシンを加える。細胞を5%COインキュベータ中、37℃で3〜5分間インキュベートする。10mlの完全培地を加えて、反応を停止させる。細胞に緩やかに空気を送り込み、15mlのチューブに容れ、1200rpmで4分間回転する。トリプシン/培地溶液を除去し、5mlの培地(500mlのDMEM(高グルコース;BRLカタログ番号12430−054)、50mlの10%FBS、5%ゲネチシンG418(50mg/ml、BRLカタログ番号10131−035)、5mlのMEM非必須アミノ酸(100X BRLカタログ番号11140−050)および5mlのpen−strep(ペニシリン−ストレプトマイシン;BRL番号15140−148)を加える。細胞と培地を注意深く混合する。
【0170】
細胞は、スクリーニング培地(500mlのDMEM(BRL番号21063−029)、50mlのFBS(BRL番号10082−147)および5mlのMEM非必須アミノ酸(BRL番号11140−050)により、6000−7500f細胞/100μl/ウエル(96穴プレート)(6〜7.5×10細胞/10ml/プレート)として塗布する。プレートを37℃、5%COインキュベータに一夜放置する。
【0171】
翌朝、スクリーニングのために選択した最終濃度に基づいて、薬物(試験化合物またはインターフェロンアルファ)を培地またはDMSO/培地で、96穴U底プレートに希釈する。一般的に、10マイクロモルから0.03マイクロモルの範囲の6濃度の各試験化合物を適用する。試験化合物希釈液100μlを、HCVレプリコン細胞を容れた96穴プレートのウエルに容れる。薬物を含まない培地を陰性対照としての幾つかのウエルに加える。DMSOは細胞増殖に影響することが知られている。従って、DMSOで希釈した薬物を使用する場合には、陰性対照(培地のみ)および陽性対照(インターフェロンアルファ)ウエルを含め、すべてのウエルが、単一用量スクリーニングのために、同じ濃度のDMSOを含まなければならない。プレートは湿潤5%CO環境にて3日間インキュベートする。
【0172】
4日目に、NTPIIアッセイにより定量する。培地をプレートから移し、プレートは200μlのPBSで1回洗う。次いで、PBSをデカントし、プレートをペーパータオルで軽く叩き、残りのPBSを除去する。細胞は予め冷却(−20℃)した100μl/ウエルのメタノール:アセトン(1:1)でインシトゥで固定化し、プレートを30分間−20℃に放置する。
【0173】
固定液をプレートから移し、プレートを完全に空気乾燥する(約1時間)。乾燥細胞層の外観を記録し、毒性ウエル中の細胞密度を肉眼で採点する。あるいは、細胞の生存度を以下に記載のMTSアッセイにより評価してもよい。
【0174】
ウエルは200μlのブロッキング溶液(10%FBS;3%NGS/PBS)により室温で30分間ブロックする。ブロッキング溶液を除去し、ブロッキング溶液に1:1000に希釈した100μlのウサギ抗NPTIIを各ウエルに加える。次いで、プレートを室温で45〜60分間インキュベートする。インキュベーション後、ウエルをPBS−0.05%トゥイーン−20溶液で6回洗浄する。ブロッキング溶液中に1:15,000に希釈したユーロピウム(EU)接合ヤギ抗ウサギ抗体100μlを各ウエルに加え、室温で30〜45分間インキュベートする。プレートを再度洗い、100μlの増強溶液(パーキンエルマーNo.4001−0010)を各ウエルに加える。各プレートをプレートシェーカーにより3分間振盪(約30rpm)する。各ウエルから95μlをブラックプレートに移す。EUシグナルをパーキン−エルマー・ビクター・プレートリーダ(EU−ランス)にて定量する。
【0175】
このアッセイ法において試験した場合、化合物11、16、25、33、38、39、および40は、約10マイクロモル以下のEC50値を示す。
【0176】
[実施例8:細胞毒性アッセイ]
レプリコン複製の低下が、非特異的毒性によるものではなく、HCVレプリコンに対する化合物の活性によるものであることを確認するために、アッセイ法を用いて化合物の細胞毒性を定量する。
【0177】
<8A.細胞毒性についての細胞タンパク質アルブミンアッセイ>
細胞タンパク質アルブミンの測定は、細胞毒性のマーカの1つである。細胞アルブミンアッセイから得られるタンパク質レベルは、化合物の抗ウイルス活性についての正規化対照標準を提供するためにも使用し得る。タンパク質アルブミンアッセイにおいては、HCVレプリコン含有細胞を異なる濃度のヘリオキサンチン(高濃度で細胞毒性を示すことの知られた化合物)で3日間処理する。細胞を溶解し、細胞溶解液を用いて、プレートに結合したヤギ抗アルブミン抗体に室温(25℃から28℃)で3時間結合させる。次いで、プレートを1×PBSで6回洗浄する。未結合タンパク質を洗浄除去した後、マウスモノクローナル抗ヒト血清アルブミンを加えて、プレート上のアルブミンに結合させる。次いで、複合体を二次抗体としてのホスファターゼ標識抗マウスIgGにより検出する。
【0178】
<8B.細胞毒性についてのMTSアッセイ>
細胞生存率は、生存細胞数測定用比色アッセイ法であるセルタイター96アクイアスワン溶液細胞増殖アッセイ(プロメガ、マディソン、ウィスコンシン)により測定してもよい。この方法では、細胞を固定する前に、製造業者の説明書に従い、10〜20μlのMTS試薬を各ウエルに加え、プレートを37℃でインキュベートし、OD490nmで読み取る。インキュベーションの間に、生存細胞はMTS試薬をフォルマザン生成物(490nmに吸収をもつ)に変換する。従って、490nmの吸光度は、培養における生存細胞数に正比例する。
【0179】
細胞毒性を決定するための細胞アルブミン法とMTS法の直接比較は、以下のように行い得る:細胞を異なる濃度の試験化合物またはヘリオキサンチンと、3日間処理する。上記のようにアルブミン検出のために細胞溶解する前に、製造業者の説明書に従い、MTS試薬を各ウエルに加え、37℃でインキュベートし、OD490nmで読み取る。次いで、細胞アルブミンの定量を上記のとおりに実施する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

で示される化合物および薬学的に許容されるその塩;
式中、
Rは水素であるか、またはRは、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルカノイル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(5員もしくは6員のヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、または(C−Cアルキルエステル)C−Cアルキルであり、その各々は、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、アミノ、−COOH、−CONH、オキソ、C−Cアルコキシ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個、1個もしくはそれ以上の置換基により置換されている;
はC−Cの飽和もしくは不飽和の炭化水素鎖であり、前記炭化水素鎖は、(i)Rに共有結合している(ただし、Rはメチンまたはメチレン基である);(ii)RとRが結合して置換されていてもよい3員から7員のシクロアルキル環を形成することにより形成される置換されていてもよいシクロアルキル環に共有結合している;
Qは結合、−O−、または−N(R)−である;
Wは−N(R)−、−C(R)−、−C(R)N(R)−である;ただし、WおよびQの少なくとも一方は−N(R)−である;
はそれぞれ出現するごとに独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、ヘテロシクロアルキル、および(フェニル)C−Cアルキルから選択され、その各々は、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、アミノ、−COOH、−CONH、オキソ、C−Cアルコキシ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個、1個もしくはそれ以上の置換基により置換されている;
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、またはC−Cアルコキシである;
は、Rの定義で示したRに共有結合するメチンまたはメチレン基であり;また
は、(a)水素、ハロゲン、もしくはアミノであるか、または(b)C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cアルカノイル、もしくはモノ−もしくはジ−C−Cアルキルアミノである(その各々は置換されていてもよい)か;または
およびRが結合して、Rに共有結合する置換されていてもよい3員から7員のシクロアルキル環を形成する;または
Tは式:
【化2】

で示される基である;
は、ヒドロキシル、アミノ、−NR1011、−OR12、−SR12、−NR10(S=O)R11、−NR10SO11、−NR10SONR1112、−NR10SONR1112、−(C=O)OR10、−NR10(C=O)OR11、もしくは−CONR1011であるか、または
は、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルカノイル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)CHSO−、(ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、もしくは(フェニル)C−Cアルキルであり、その各々が置換されていてもよい;
10、R11、およびR12はそれぞれ出現するごとに独立して、水素であるか、またはC−Cアルキル、C−Cアルケニル、(アリール)C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、もしくは(5員から10員のヘテロアリール)C−Cアルキルであり、その各々が置換されていてもよい;
Mは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C−Cアルキル、またはC−Cアルコキシである;
16は、ハロゲン、C−Cアルキル、およびC−Cアルコキシから独立して選択される0個から4個の置換基を表す;
nは、0、1、または2である;
Yは存在しないか、またはCR1819、NR20、S、O、−O(C=O)(NR20)−、NH(C=O)(NR20)−、NH(S=O)(NR20)−、もしくは−O(C=O)−である;
18およびR19は独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルキル、またはC−Cハロアルコキシである;
20は、水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、またはC−Cハロアルコキシである;また
Zは、(単環状もしくは二環状アリール)C−Cアルキルまたは(単環状もしくは二環状へテロアリール)C−Cアルキルであり、そのZの各々は、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、−CONH、−COOH、C−Cアルキル、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルエステル、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個、1個もしくはそれ以上の置換基により置換されており、またZは、0個もしくは1個の(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(フェニル)C−Cアルキル、(フェニル)C−Cアルコキシ、(5員もしくは6員のヘテロアリール)C−Cアルキル、(5員もしくは6員のヘテロアリール)C−Cアルコキシ、ナフチル、インダニル、(5員もしくは6員のヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、または9員もしくは10員の二環状へテロアリールであり、そのZの各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、−COOH、−CONH、CH(C=O)NH−、=NOH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cヒドロキシアルキル、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルエステル、モノ−およびジ−C−Cアルキルカルボキサミド、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個、1個、もしくは2個の置換基により置換されている。
【請求項2】
Wが−N(R)−であり、Qが結合または−O−である請求項1記載の化合物または塩。
【請求項3】
Wが−N(R)−であり、Rが水素、メチル、またはエチルであり;Qが結合であり;RおよびRが結合してシクロプロピル基を形成し、Rが単一の二重結合を有するC−Cアルケニルであり、前記C−CアルケニルがRとRにより形成されるシクロプロピルに共有結合する請求項2記載の化合物または塩。
【請求項4】
Rが水素であるか、またはRが、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルカノイル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(5員もしくは6員のヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、または(C−Cアルキルエステル)C−Cアルキルであり、その各々が、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、アミノ、−COOH、−CONH、オキソ、C−Cアルコキシ、およびモノ−およびジ−C−Cアルキルアミノから独立して選択される0個、1個もしくは2個の置換基により置換されており;Rが水素である請求項1記載の化合物または塩。
【請求項5】
Wが−N(R)−であり、Rが水素、メチル、またはエチルであり;Qが結合であり;Rが水素であるか、またはRが、C−Cアルキル、(5員もしくは6員のN−結合ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、または(C−Cアルキルエステル)C−Cアルキルであり、その各々が、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、アミノ、−COOH、オキソ、C−Cアルコキシ、およびモノ−およびジ−C−Cアルキルアミノから独立して選択される0個、1個もしくは2個の置換基により置換されており;その場合の5員もしくは6員のN−結合ヘテロシクロアルキルが、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、およびモルホリンから選択され;Rが水素であり;RおよびRが結合してシクロプロピル基を形成し;またRが単一の二重結合を有するC−Cアルケニルであり、その場合のC−CアルケニルがRおよびRにより形成されるシクロプロピルに共有結合している請求項1記載の化合物または塩。
【請求項6】
Mが水素であり、nが0である請求項1記載の化合物または塩。
【請求項7】
Mが水素であり、nが0であり、YがOである請求項1記載の化合物または塩。
【請求項8】
Zが式:
【化3】

で示される基である請求項1記載の化合物または塩;
式中、
、X、X、X、およびXは独立してNまたはCHであり、2個を超えないX〜XはNである;
21は、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、−CONH、−COOH、C−Cアルキル、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個から3個の基を表す;また
22は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、−CONH、−COOH、C−Cアルキル、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルエステル、C−Cハロアルキル、もしくはC−Cハロアルコキシであるか、または
22は、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、(フェニル)C−Cアルキル、(フェニル)C−Cアルコキシ、(5員または6員のヘテロアリール)C−Cアルキル、(5員または6員のヘテロアリール)C−Cアルコキシ、ナフチル、インダニル、(5員または6員のヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、または9員もしくは10員の二環状へテロアリールであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、−COOH、−CONH、CH(C=O)NH−、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cヒドロキシアルキル、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルエステル、モノ−およびジ−C−Cアルキルカルボキサミド、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択される0個、1個、もしくは2個の置換基により置換されている。
【請求項9】
Zが式:
【化4】

で示されるキノリンである請求項8記載の化合物または塩。
【請求項10】
21がキノリンの7位の置換基、および0個から2個の追加の置換基であり、そのすべてがハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、−CONH、−COOH、C−Cアルキル、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシから独立して選択され;また
22が(フェニル)C−Cアルキル、(ピリジル)C−Cアルキルまたは(チアゾリル)C−Cアルキルであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、−COOH、−CONH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシから独立して選択される0個、1個、もしくは2個の置換基により置換されている;
請求項9記載の化合物または塩。
【請求項11】
式:
【化5】

で示される請求項10記載の化合物または塩:
式中、R22はフェニル、チアゾリル、またはピリジルであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシから独立して選択される0個、1個、もしくは2個の置換基により置換されている。
【請求項12】
22が下記式で示される基である請求項11記載の化合物または塩。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

−OCH
−OCHCH
【化33】

【化34】

または
【化35】

【請求項13】
Wが−N(R)−であり、Rが水素、メチル、またはエチルであり;Qが結合であり;Rが水素であるか、またはRが、C−Cアルキル、(5員もしくは6員のN−結合ヘテロシクロアルキル)C−Cアルキル、または(C−Cアルキルエステル)C−Cアルキルであり、その各々が、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、アミノ、−COOH、オキソ、C−Cアルコキシ、およびモノ−およびジ−C−Cアルキルアミノから独立して選択される0個、1個もしくは2個の置換基により置換されており;その場合の5員もしくは6員のN−結合ヘテロシクロアルキルが、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、およびモルホリンから選択され;Rが水素であり;RおよびRが結合してシクロプロピル基を形成し;Rが単一の二重結合を有するC−Cアルケニルであり、その場合のC−CアルケニルがRおよびRにより形成されるシクロプロピルに共有結合しており;またMが水素であり、nが0であり、YがOである;
請求項8記載の化合物または塩。
【請求項14】
が、ヒドロキシル、−OR12、−NR10SO11、−(C=O)OR10、または−CONR1011である請求項8記載の化合物または塩。
【請求項15】
がC−Cアルキルまたは(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキルである請求項14記載の化合物または塩。
【請求項16】
前記化合物が以下で示される化合物である請求項1記載の化合物または塩。
【化36】

化合物4
【化37】

化合物9
【化38】

化合物12
【化39】

化合物13
【化40】

化合物14
【化41】

化合物15
【化42】

化合物16
【化43】

化合物17
【化44】

化合物18
または
【化45】

化合物19
【請求項17】
請求項1記載の化合物の治療有効量および少なくも1種の薬学的に許容される担体を含有してなる医薬組成物。
【請求項18】
さらに第二の活性薬剤を含有してなる請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
第二の活性薬剤がリバビリン(ribavarin)である請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物が、注射液、エーロゾル、クリーム、ゲル、錠剤、ピル、カプセル、シロップ、点眼液、または経皮パッチとして製剤化したものである請求項17記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項1記載の化合物または塩の治療有効量をC型肝炎患者に提供することを特徴とするC型肝炎感染症患者の処置方法。
【請求項22】
少なくともさらなる活性薬剤を患者にさらに提供することを含み、前記活性薬剤がリバビリン、インターフェロン、またはPEG−インターフェロンアルファ接合体であることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
C型肝炎感染症に罹患する患者を処置する組成物を用いるための説明書と共に包装容器中に前記化合物または塩をさらに提供することを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項24】
治療有効量が、患者の血中または血清中のHCV抗体数を有意に低下させるのに十分な量である請求項23記載の方法。

【公表番号】特表2012−509350(P2012−509350A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537654(P2011−537654)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/065328
【国際公開番号】WO2010/059937
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(504378685)アキリオン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (22)
【Fターム(参考)】