説明

C16不飽和FP−選択的プロスタグランジン類縁体

【課題】骨の障害のような種々の疾患および症状の治療に有用である新規なPGF類似体の提供。
【解決手段】式(I)に従った構造を有する化合物(但し、R、R、XおよびZは下記に定義したとおりである。)。また、式(I)の光学異性体、ジアステレオマーおよびエナンチオマー、並びに、これらの薬剤として許容可能な塩、生加水分解可能なアミド、エステルおよびイミドを含む。更に、これらの化合物を含む医薬組成物。更に、これらの化合物またはこれらを含有する組成物を使用した骨の障害を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、天然に存在するプロスタグランジンの特定の新規な類縁体に関する。特に、本発明は新規なプロスタグランジンF類縁体に関する。本発明はさらに、該新規なプロスタグランジンF類縁体の使用方法に関する。好ましい使用には、骨障害および緑内障の治療方法が含まれる。
本出願は、特願2000−602208に基づく分割出願である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
天然に存在するプロスタグランジン(PGA、PGB、PGE、PGF、およびPGI)はC−20不飽和脂肪酸である。ヒト内で天然に存在するプロスタグランジンFであるPGFは、脂環式環上のC9およびC11位のヒドロキシル基、C5およびC6との間のシス−二重結合、およびC13およびC14との間のトランス−二重結合により特徴づけられる。それゆえPGFは下式を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
天然に存在するプロスタグランジンF類縁体は、当技術分野で開示されている。例えば、1977年5月17日にBindraおよびJohnsonに発行された米国特許第4,024,179号(特許文献1);1976年7月1日に刊行されたBeck、Lerch、Seeger、およびTeufelに発行されたドイツ特許第DT−002,460,990号(特許文献2);1978年12月5日にHayashi、Kori、およびMiyakeに発行された米国特許第4,128,720号(特許文献3);1977年3月8日にHess、Johnson、BindraおよびSchaafに発行された米国特許第4,011,262号(特許文献4);1973年12月4日にBergstormおよびSjovallに発行された米国特許第3,776,938号(特許文献5);P.W.CollinsおよびS.W.Djuricの「Synthesis of Therapeutically Useful Prostaglandin and Prostacyclin Analogs」、Chem.Rev.、93巻、1533〜1564頁、1993年(非特許文献1);G.L.BundyおよびF.H.Lincolnの「Synthesis of 17−Phenyl−18,19,20−Trinorprostaglandins:I.The PG1 Series」、Prostaglandins、9巻、1号、1〜4頁、1975年(非特許文献2)、W.Bartman、G.Beck、U.Lerch、H.TeufelおよびB.Scholkensの「Luteolytic Prostaglandins:Synthesis and Biological Activity」、Prostaglandins、17巻、2号、301〜311頁、1979年(非特許文献3);C.Iilebris、G.Selen、B.Resul、J.SternschantzおよびU.Hacksellの「Derivatives of 17−Phenyl−18,19,20−trinorprostaglandin F Isopropyl Ester:Potential Antiglaucoma Agents」、Journal of Medicinal Chemistry、38巻、2号、289〜304頁、1995年(非特許文献4)参照。
【0005】
天然に存在するプロスタグランジンは、幅広い薬理学的特性を有することが知られている。例えば、プロスタグランジンは、血管拡張および気管支拡張を起こす平滑筋を弛緩すること、胃酸の分泌を阻害すること、血小板凝集を阻害すること、眼内圧を低下すること、および陣痛を誘発することが示されている。天然に存在するプロスタグランジンは特定のプロスタグランジン受容体に対するこれらの活性によって特徴づけられるが、通常、いずれか1つのプロスタグランジン受容体に対して特異的ではない。したがって、天然に存在するプロスタグランジンは、全身に投与された場合に、炎症のような副作用、並びに、表面刺激作用を引き起こすことが知られている。天然に存在するプロスタグランジンの体内での放出後の迅速な代謝により、プロスタグランジンの効果は局所領域に制限されると考えられている。このことにより、プロスタグランジンが、全身のプロスタグランジン受容体を刺激すること、および天然に存在するプロスタグランジンの全身投与で見られる影響を引き起こすことが効果的に阻止される。
【0006】
プロスタグランジン、特にEシリーズのプロスタグランジン(PGE)は、強力な骨吸収刺激剤として知られている。PGFも骨吸収刺激剤であることが示されているがPGE2ほど強力ではない。また、PGE2と比較してPGFは骨形成にほとんど効果がないことが示されている。骨吸収、骨形成および細胞複製に対するPGFの効果の幾つかは、内因性PGE2産生の増加により仲介されうることが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,024,179号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第DT−002,460,990号明細書
【特許文献3】米国特許第4,128,720号明細書
【特許文献4】米国特許第4,011,262号明細書
【特許文献5】米国特許第3,776,938号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】P.W.CollinsおよびS.W.Djuricの「Synthesis of Therapeutically Useful Prostaglandin and Prostacyclin Analogs」、Chem.Rev.、93巻、1533〜1564頁、1993年
【非特許文献2】G.L.BundyおよびF.H.Lincolnの「Synthesis of 17−Phenyl−18,19,20−Trinorprostaglandins:I.The PG1 Series」、Prostaglandins、9巻、1号、1〜4頁、1975年
【非特許文献3】W.Bartman、G.Beck、U.Lerch、H.TeufelおよびB.Scholkensの「Luteolytic Prostaglandins:Synthesis and Biological Activity」、Prostaglandins、17巻、2号、301〜311頁、1979年
【非特許文献4】C.Iilebris、G.Selen、B.Resul、J.SternschantzおよびU.Hacksellの「Derivatives of 17−Phenyl−18,19,20−trinorprostaglandin F2α Isopropyl Ester:Potential Antiglaucoma Agents」、Journal of Medicinal Chemistry、38巻、2号、289〜304頁、1995年
【非特許文献5】H.O.Houseらの「カルボアニオンの化学: 有機銅リチウム塩の生成における有用な前駆体(The Chemistry of Carbanions: A Convenient Precursor for the Generation of Lithium Organocuprates)」、J.Org.Chem.、40巻、1460〜1469頁、1975年
【非特許文献6】P.Knochelらの「効率的および選択的a′/d′多重カップリング剤としての亜鉛および銅カルベノイド(Zinc and Copper Carbenoid as Efficient and Selective a′/d′ Multicoupling Reagents)」、J.Amer.Chem.Soc.、111巻、6474〜6476頁、1989年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
天然に存在するプロスタグランジンの広範な薬理学的特性およびこれらの天然に存在するプロスタグランジンを全身投与する際に見られる副作用の両方の観点から、特定の受容体または複数の受容体に選択的な天然に存在するプロスタグランジン類縁体を調製する試みがなされている。このような多くの類縁体は本技術分野で開示されている。多くのプロスタグランジン類縁体が開示されているけれども、多くの疾患および状態を治療するための強力で選択的なプロスタグランジン類縁体の必要性が引き続きある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
本発明は新規なPGF類縁体を提供する。特に、本発明は、下式の構造を有する化合物に関する。
【0011】
【化2】

【0012】
式中、R1、R2、XおよびZは以下に定義する。
【0013】
本発明は、上記式の光学異性体、ジアステリオマーおよびエナンチオマー、および、その薬剤として許容できる塩類、生加水分解性アミド、エステル、およびイミドも含む。
【0014】
本発明の化合物は、骨障害および緑内障のような多くの疾病および状態の治療に有用である。したがって、本発明はこれらの化合物を含む医薬組成物をさらに提供する。本発明はさらに、これらの化合物またはこれらを含む組成物を用いる骨障害および緑内障の治療方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
用語および定義
「アルキル」とは、1から18個の炭素原子、好ましくは1から12個、より好ましくは1から6個、さらにより好ましくは1から4個の炭素原子を有する飽和または不飽和炭化水素鎖である。アルキル鎖は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。好ましい分岐アルキルは、1つまたは2つの分岐を有するものであり、好ましくは1つの分岐を有する。好ましいアルキルは飽和である。不飽和アルキルは1つまたはそれ以上の二重結合および/または1つまたはそれ以上の三重結合を有する。好ましい不飽和アルキルは、1つまたは2つの二重結合または1つの三重結合、より好ましくは1つの二重結合を有する。アルキル鎖は、非置換であっても、1から4個の置換基で置換されていてもよい。好ましい置換アルキルは、1−、2−、または3−置換されている。置換基は、低級アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、アシルオキシ(例えば、アセトキシ)、カルボキシ、単環式芳香族環(例えば、フェニル)、単環式複素芳香族環、単環式炭素環式脂肪族環、単環式複素環式脂肪族環、およびアミノである。
【0016】
「低級アルキル」とは、1から6個、好ましくは1から3個の炭素原子を含むアルキル鎖である。
【0017】
「芳香族環」とは、芳香族炭化水素環である。芳香族環は単環式または縮合二環式の環系である。単環式芳香族環は約5から約10個の炭素原子、好ましくは5から7個の炭素原子、および最も好ましくは5から6個の炭素原子を環に含む。二環式芳香族環は、8から12個の炭素原子、好ましくは9または10個の炭素原子を環系に含む。二環式芳香族環は、系の1つの環が芳香族である環系を含む。好ましい二環式芳香族環は、系の両方の環が芳香族である環系である。芳香族環は、無置換であっても、または環が1から4個の置換基で置換されていてもよい。置換基は、ハロ、シアノ、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシまたはこれらのいずれかの組み合わせであってよい。好ましい置換基はハロおよびハロアルキルを含む。好ましい芳香族環はナフチルおよびフェニルを含む。最も好ましい芳香族環はフェニルである。
【0018】
「炭素環式脂肪族環」とは、飽和または不飽和の炭化水素環である。炭素環式脂肪族環は芳香族ではない。炭素環式脂肪族環は単環式である。炭素環式脂肪族環は、約4から約10個の炭素原子、好ましくは4から7個の炭素原子、および最も好ましくは5から6個の炭素原子を環に含む。炭素環式脂肪族環は、無置換であっても、または環上で1から4個の置換基で置換されていてもよい。置換基は、ハロ、シアノ、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシまたはこれらのいずれかの組み合わせであってよい。好ましい置換基は、ハロおよびハロアルキルを含む。好ましい炭素環式脂肪族環は、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルを含む。より好ましい炭素環式脂肪族環は、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルを含む。
【0019】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。好ましいハロは、フルオロ、クロロおよびブロモであり、より好ましくは、クロロおよびフルオロであり、特にフルオロである。
【0020】
「ハロアルキル」とは、1つまたはそれ以上のハロ置換基で置換された直鎖、分岐鎖、または環状の炭化水素である。好ましいアロアルキルはC1〜C12、より好ましくはC1〜C6、さらにより好ましくはC1〜C3である。好ましいハロ置換基はフルオロおよびクロロである。最も好ましいハロアルキルはトリフルオロメチルである。
【0021】
「ヘテロアルキル」とは、炭素および少なくとも1つのヘテロ原子を含む飽和または不飽和鎖であって、2つのヘテロ原子が隣り合っていないものである。ヘテロアルキル鎖は、鎖中に1から18個の構成原子(炭素およびヘテロ原子)、好ましくは1から12個、より好ましくは1から6個、さらにより好ましくは1から4個の構成原子を含む。ヘテロアルキル鎖は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。好ましい分岐ヘテロアルキルは、1つまたは2つの分岐、好ましくは1つの分岐を有する。好ましいヘテロアルキルは飽和である。不飽和ヘテロアルキルは、1つまたはそれ以上の二重結合および/または1つまたはそれ以上の三重結合を有する。好ましい不飽和ヘテロアルキルは、1つまたは2つの二重結合または1つの三重結合、より好ましくは1つの二重結合を有する。ヘテロアルキル鎖は、無置換であっても、または1から4個の置換基で置換されていてもよい。好ましい置換ヘテロアルキルは、1−、2−、または3−置換されている。置換基は、低級アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、アシルオキシ(例えば、アセトキシ)、カルボキシ、単環式芳香族環(例えば、フェニル)、単環式複素芳香族環、単環式炭素環式脂肪族環、単環式複素環式脂肪族環、およびアミノである。
【0022】
「低級ヘテロアルキル」とは、1から6個、好ましくは1から3個の構成原子を含むヘテロアルキル鎖である。
【0023】
「複素芳香族環」とは、炭素および1から約4個のヘテロ原子を環内に含む芳香族環である。複素芳香族環は単環式または縮合二環式の環系である。単環式複素芳香族環は約5から約10個の構成原子(炭素およびヘテロ原子)、好ましくは5から7個、および最も好ましくは5から6個の原子を環に含む。二環式複素芳香族環は、系の1つの環のみが芳香族である環系を含む。好ましい二環式複素芳香族環は、系の両方の環が芳香族である環系である。二環式複素芳香族環は、8から12個の構成原子、好ましくは9から10個の構成原子を環に含む。複素芳香族環は、無置換であっても、または環上で1から4個の置換基で置換されていてもよい。置換基は、ハロ、シアノ、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシまたはこれらのいずれかの組み合わせであってよい。好ましい置換基は、ハロ、ハロアルキルおよびフェニルを含む。好ましい単環式複素芳香族環は、チエニル、チアゾロ、プリニル、ピリミジル、ピリジル、およびフラニルを含む。より好ましい単環式複素芳香族環は、チエニル、フラニル、およびピリジルを含む。最も好ましい単環式複素芳香族環はチエニルである。好ましい二環式複素芳香族環は、ベンゾ[β]チアゾリル、ベンゾ[β]チオフェニル、キノリニル、キノキサリニル、ベンゾ[β]フラニル、ベンズイミジゾリル、ベンゾオキサゾリル、インドリル、およびアントラニリルを含む。より好ましい二環式複素芳香族環は、ベンゾ[β]チアゾリル、ベンゾ[β]チオフェニル、およびベンゾオキサゾリルを含む。
【0024】
「ヘテロ原子」とは、窒素、硫黄、または酸素原子である。1つより多いヘテロ原子を含む基は、異なるヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0025】
「複素環式脂肪族環」とは、炭素および1から約4個のヘテロ原子を環に含む飽和または不飽和環であって、環中の2つのヘテロ原子が隣り合っておらず、環内の炭素原子は、それに結合したヘテロ原子を有している場合、それに結合しているヒドロキシル、アミノ、またはチオール基を有さないものである。複素環式脂肪族環は芳香族ではない。複素環式脂肪族環は単環式である。複素環式脂肪族環は、約4から約10個の構成原子(炭素およびヘテロ原子)、好ましくは4から7個の構成原子、および最も好ましくは5から6個の構成原子を環に含む。複素環式脂肪族環は、無置換であっても、または環上で1から4個の置換基で置換されていてもよい。置換基は、ハロ、シアノ、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシまたはこれらのいずれかの組み合わせであってよい。好ましい置換基は、ハロおよびハロアルキルを含む。好ましい複素環式脂肪族環は、ピペリジル、モルフォリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニルおよびピペリジルを含む。
【0026】
「フェニル」とは、約1から約4個の置換基で置換された、または置換されていない単環式芳香族環である。置換基は縮合していてもよいが架橋はしておらず、フェニル環のオルト、メタまたはパラ位で、またはこれらのいずれかの組み合わせで置換されていてもよい。置換基は、ハロ、アシル、シアノ、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシまたはこれらのいずれかの組み合わせであってよい。フェニル環上の好ましい置換基は、ハロおよびハロアルキルを含む。最も好ましい置換基はハロである。フェニル環上での好ましい置換パターンはオルトまたはメタである。フェニル環上での最も好ましい置換パターンはメタである。
【0027】
化合物
本発明は、下記構造を有する化合物に関する。
【0028】
【化3】

【0029】
上記構造において、R1は、CO2H、C(O)NHOH、CO23、CH2OH、S(O)23、C(O)NHR3、C(O)NHS(O)24、およびテトラゾールであり、ここでR3はアルキル、ヘテロアルキル、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、単環式芳香族環または単環式複素芳香族環であり、R4はアルキル、ヘテロアルキル、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、単環式芳香族環、または単環式複素芳香族環である。好ましいR3はメチル、エチル、およびイソプロピルである。好ましいR1はCO2H、C(O)NHOH、CO23、C(O)NHS(O)24、およびテトラゾールである。最も好ましいR1はCO2HおよびCO23である。
【0030】
上記構造において、R2はHまたは低級アルキルである。最も好ましいR2はHである。
【0031】
上記構造において、XはC≡Cまたは共有結合である。
【0032】
上記構造において、Zは芳香族環または複素芳香族環であるが、但し、Zが複素芳香族環であり、Xが共有結合である場合、Zは環内の炭素原子を介してC15に結合されるという条件が付く。XがC≡Cである場合、好ましいZは、単環式芳香族環である。XがC≡Cである場合、より好ましいZはフラニル、チエニル、およびフェニルである。Xが共有結合である場合、好ましいZは二環式複素芳香環である。
【0033】
本発明は上記構造の光学異性体、ジアステレオマーおよびエナンチオマーも含む。それゆえ、立体化学が定義されていない全ての立体中心(C11、C12、およびC15)において、両方のエピマーが描かれる。本発明の化合物のこの種の全ての立体中心における好ましい立体化学は、天然に存在するPGFの立体化学と同じである。
【0034】
上記の説明から容易にわかるように、本発明は、官能基「X」に基づいて、二種類の亜族に分けられる。以下の式A1(XがC≡Cである)および式A2(Xが共有結合である)は、これら二種類の亜族を表す。
【0035】
【化4】

【0036】
本発明の新規なPGF類縁体は、骨障害、特に骨量、骨体積、または骨強度の顕著な増加を必要とする疾患を治療するために有用であることを見出した。驚くべきことに、本発明の化合物には、公知の骨障害の治療を越える以下の利点があることが見出された。(1)新規な骨梁の形成による骨梁数の増加、(2)より通常の骨回転速度を維持することによる骨量および骨体積の増加、および/または(3)皮質穿孔の増加なく骨内膜表面での骨形成の増加。
【0037】
薬理学的活性を決定し、評価するために、本化合物の動物での試験を、当業者に知られている多くのアッセイを用いて行う。例えば、本化合物の骨活性は、本化合物の骨体積、質量、または密度を増加させる能力を試験するために設計されたアッセイを用いて都合よく立証できる。このようなアッセイの一例は、卵巣切除ラットアッセイである。
【0038】
卵巣切除ラットアッセイにおいて、6カ月齢のラットを卵巣切除し、2カ月加齢した後、試験化合物で1日1回、皮下に投与する。試験が終わったところで、二重エネルギーX線吸収法(DXA)、周辺定量的コンピュータ断層撮影法(pQCT)、またはマイクロコンピュータ断層撮影法(mCT)により骨量および/または骨密度が測定できる。代わりに、静と動の組織形態計測を骨体積または骨形成の増加を計測するために使用することができる。
【0039】
本化合物が眼内圧を低下させる能力を試験するように設計されたアッセイを用いて、緑内障に対する薬理学的活性を立証できる。このようなアッセイの例は以下の参考文献に記載されており、本明細書に組み込まれる。C.Iiljebris、G.Selen、B.Resul、J.Sternschantz、およびU.Hacksellの「17−フェニル−18,19,20−トリノル プロスタグランジン F イソプロピルエステルの誘導体: 潜在的抗緑内障剤(Derivatives of 17−Phenyl−18,19,20−trinorprostaglandin F2α Isopropyl Ester: Potential Antiglaucoma Agents)」、Journal of Medicinal Chemistry、38巻、2号、289〜304頁、1995年(非特許文献4)。
【0040】
本発明で有用な化合物は、従来の有機合成法を用いて製造することができる。特に好ましい合成法は、以下の一般的な反応スキームである。
【0041】
【化5】

【0042】
スキーム1において、R1、R2、X、およびZは上記に定義した通りである。スキームIで出発物質として示される7−[3−(R)−ヒドロキシ−5−オキソ−1−シクロペント−1−イル]ヘプタン酸メチル(S1a)は、(住友化学またはケイマンケミカル(Cayman Chemical)などより)市販されている。
【0043】
メチル 7−[3−(R)−ヒドロキシ−5−オキソ−1−シクロペント−1−イル]ヘプタノエート(S1a)のC11アルコールを適切な保護基で保護する。最も好ましい保護基はシリル基である。上記スキーム1において、7−[3−(R)−ヒドロキシ−5−オキソ−1−シクロペント−1−イル]ヘプタン酸メチル(S1a)を溶媒中シリル化剤および塩基と反応させてシリル化を行う。好ましいシリル化剤は、tert−ブチルジメチルシリルクロリドおよびtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートを含む。最も好ましいシリル化剤は、tert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートである。好ましい塩基は、トリエチルアミン、トリメチルアミン、および2,6−ルチジンを含む。より好ましい塩基は、トリエチルアミンおよび2,6−ルチジンを含む。最も好ましい塩基は2,6−ルチジンである。好ましい溶媒はハロカーボン溶媒を含み、ジクロロメタンが最も好ましい溶媒である。好ましくは−100℃と100℃の間、より好ましくは−80℃と80℃の間、および最も好ましくは−70℃と23℃の間の温度で反応を行う。
【0044】
得られたシリル化化合物を当業者に知られている方法により単離する。このような方法は、抽出、溶媒蒸発、蒸留、および結晶化を含むがこれらに限定されるものではない。好ましくは、シリルエーテルを真空下に蒸留して単離した後に精製する。
【0045】
次いで、シリル化化合物を、例えば以下の参考文献に開示されているように、適切な臭化アルケニルのグリニヤール形成により生成した銅塩(cuprate)と反応させる。H.O.Houseらの「カルボアニオンの化学: 有機銅リチウム塩の生成における有用な前駆体(The Chemistry of Carbanions: A Convenient Precursor for the Generation of Lithium Organocuprates)」、J.Org.Chem.、40巻、1460〜1469頁、1975年(非特許文献5)、およびP.Knochelらの「効率的および選択的a′/d′多重カップリング剤としての亜鉛および銅カルベノイド(Zinc and Copper Carbenoid as Efficient and Selective a′/d′ Multicoupling Reagents)」、J.Amer.Chem.Soc.、111巻、6474〜6476頁、1989年(非特許文献6)。好ましい臭化アルケニルは、4−ブロモ−1−ブテン、4−ブロモ−1−ブチン、4−ブロモ−2−メチル−1−ブテン、および4−ブロモ−2−エチル−1−ブテンを含む。最も好ましい臭化アルケニルは4−ブロモ−1−ブテンである。好ましい溶媒はエーテル系溶媒であり、この中でもジエチルエーテルおよびテトラヒドロフランが好ましい。最も好ましい溶媒はテトラヒドロフランである。グリニヤール試薬は、100℃と23℃の間、より好ましくは85℃と30℃の間、および最も好ましくは75℃と65℃の間で形成される。反応時間は好ましくは1時間と6時間の間であり、より好ましい反応時間は2時間と5時間の間であり、最も好ましい反応時間は3時間と4時間の間である。
【0046】
グリニヤール試薬が形成されると、アルケニルマグネシウム種から銅塩が生成する。銅塩形成の温度範囲は−100℃と0℃の間である。好ましい温度範囲は−80℃と−20℃の間である。より好ましい温度範囲は−75℃と−50℃の間である。好ましい反応時間は30分と6時間の間である。より好ましい反応時間は45分と3時間の間である。最も好ましい反応時間は1時間と1.5時間の間である。
【0047】
このように形成されたアルケンを当業者に知られている方法により単離する。このような方法は、抽出、溶媒蒸発、蒸留、および結晶化を含むがこれらに限定されるものではない。好ましくは、溶離液として10%EtOAc/ヘキサンを用いるシリカゲル(メルク製、230〜400メッシュ)でのフラッシュクロマトグラフィによりアルケンを精製する。次いで、アルケンを水素化還元剤および極性のプロトン性溶媒と反応させ、C−9アルコールを得る。好ましい還元剤は、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、およびL−セレクトライドを含む。より好ましい還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、およびL−セレクトライドを含む。最も好ましい還元剤は水素化ホウ素ナトリウムである。好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、およびブタノールを含む。最も好ましい溶媒はメタノールである。−100℃と23℃の間の温度で還元を行う。好ましい温度範囲は−60℃と0℃の間である。最も好ましい温度範囲は−45℃と−20℃の間である。
【0048】
得られたアルコールを当業者に知られている方法により単離する。このような方法は、抽出、溶媒蒸発、蒸留、および結晶化を含むがこれらに限定されるものではない。好ましくは、溶離液として20%EtOAc/ヘキサンを用いるシリカゲル(メルク製、230〜400メッシュ)でのフラッシュクロマトグラフィによりアルコールを精製する。
【0049】
得られたアルコールは既に本明細書に記載したように保護できる。この場合でも好ましいシリル化剤は、tert−ブチルジメチルシリルクロリドおよびtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートを含む。最も好ましいシリル化剤は、tert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートである。好ましい塩基は、トリエチルアミン、トリメチルアミン、および2,6−ルチジンを含む。より好ましい塩基は、トリエチルアミンおよび2,6−ルチジンを含む。最も好ましい塩基は2,6−ルチジンである。好ましい溶媒はハロカーボン溶媒を含み、ジクロロメタンが最も好ましい溶媒である。好ましくは−100℃と100℃の間、より好ましくは−80℃と80℃の間、および最も好ましくは−70℃と23℃の間の温度で反応を行う。
【0050】
得られたシリル化化合物を当業者に知られている方法により単離する。このような方法は、抽出、溶媒蒸発、蒸留、および結晶化を含むがこれらに限定されるものではない。好ましくは、シリルエーテルを真空下に蒸留して単離した後に精製する。
【0051】
次いで、オスミウムの形態および過ヨウ素酸ナトリウムを、両方が可溶である溶媒中で用いて、保護されたアルコールを処理する。好ましいオスミウムの形態は四酸化オスミウムおよびオスミウム酸カリウムを含む。好ましい溶媒系は、酢酸と水の1:1混合物および水、酢酸、THFの1:1:2混合物を含む。この処理によりアルデヒドS1bが得られる。
【0052】
化合物S1bを当業者に知られている方法により単離する。このような方法は、抽出、溶媒蒸発、蒸留、および結晶化を含むがこれらに限定されるものではない。好ましくは、溶離液として20%EtOAc/ヘキサンを用いるシリカゲル(メルク製、230〜400メッシュ)でのフラッシュクロマトグラフィによりS1bを精製する。
【0053】
S1bで表される鍵中間体アルデヒドを、種々の不飽和炭素求核剤と反応し、S1cとして表される、C−9およびC−11が保護された13,14−ジヒドロ−16−テトラノル プロスタグランジンF誘導体を得ることができる。
【0054】
アルキン求核剤を用いて、好ましくは−80℃と0℃の間、より好ましくは−80℃と−20℃の間、最も好ましくは−80℃と−40℃の間で反応を行う。反応の好ましい塩基には、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、およびリチウムジイソプロピルアミド(LDA)が含まれる。反応の好ましい溶媒は、エーテル系溶媒である。好ましい溶媒にはジエチルエーテル、およびテトラヒドロフランが含まれる。最も好ましい溶媒はテトラヒドロフランである。複素環求核剤では、好ましい溶媒にはエーテル系溶媒が含まれる。より好ましいエーテル系溶媒には、ジエチルエーテル、ジブチルエーテルおよびテトラヒドロフランが含まれる。最も好ましいエーテル系溶媒はテトラヒドロフランである。
【0055】
S1cとして表される、得られた化合物を、次に、当業者に公知の技法により脱保護し、単離して、式Iで表される13,14−ジヒドロ−15−置換−15−ペンタノル プロスタグランジンF誘導体を得ることができる。式Iで表される化合物は実施例1〜43で例示される。
【0056】
式IIで表される化合物は、S1cとして表される、C−9およびC−11が保護された13,14−ジヒドロ−16−テトラノル プロスタグランジンF誘導体から、当業者に公知の方法によって直接に製造することができる。例えば、S1cのメチルエステルをアミンまたはヒドロキシルアミンと縮合し、式IIで表される化合物を得ることができる。式IIで表される化合物は、実施例44〜47で例示される。これらの化合物は当業者に公知の方法で単離される。このような方法には抽出、溶媒の蒸発、蒸留および結晶化が含まれるが、これらに限定されない。
【実施例1】
【0057】
以下の非制限的な実施例は、本発明の化合物、本発明の組成物、および本発明の使用を例示する。
【0058】
(実施例)
1Hおよび13C−NMR、元素分析、質量スペクトル、高分解能質量スペクトルおよび/またはIRスペクトルを適切に用いて化合物を分析する。
【0059】
典型的には、不活性溶媒を、好ましくは乾燥状態で用いる。例えば、テトラヒドロフラン(THF)をナトリウムおよびベンゾフェノンから蒸留し、ジイソプロピルアミンを水素化カルシウムから蒸留し、およびその他の全ての溶媒を適切な等級として購入する。適切なシリカゲル(70〜230メッシュ、アルドリッチ)または(230〜400メッシュ、メルク)でのクロマトグラフィを行う。ガラス装着シリカゲルプレート(200〜300メッシュ、J.T.Baker)上で薄層クロマトグラフィー分析を行い、そして紫外光、5%リンモリブデン酸エタノール溶液、または10%H2SO4水溶液中のモリブデン酸アンモニウム/硫酸セリウムを用いて視覚化する。
【0060】
実施例1
13,14−ジヒドロ−15−(チアナフチル)ペンタノル プロスタグランジンFの調製
【0061】
【化6】

【0062】
a. 7−(2−オキソ−4−(1,1,2,2−テトラメチル−1−シラプロポキシ)シクロペント−1−エニル)ヘプタン酸メチル(S2a):7−[3−(R)−ヒドロキシ−5−オキソ−1−シクロペンテン−1−イル]ヘプタン酸メチルS1a(1当量)のCH2Cl2溶液に、−78℃で2,6−ルチジン(1.3当量)を15分かけて滴下する。溶液を−78℃に維持する。TBDMSトリフレート(1.2当量)のCH2Cl2溶液を15分かけて滴下する。反応物を室温にまで除々に加温し、15時間室温で攪拌する。10%HCl水溶液を添加し、そして層を分離する。水層をCH2Cl2で抽出し、有機層を合わせる。有機層を食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、そして濃縮する。残留物を真空下(10mmHg)に蒸留して、シリルエーテルS2bを得る。
【0063】
b. 7−(5−ブト−3−エニル−2−ヒドロキシ−4−(1,1,2,2−テトラメチル−1−シラプロポキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチル(S2c):Mg0粉末(2当量)のTHF懸濁液に、室温で、ヨウ素(触媒量のI2)の結晶1つを添加し、1−ブロモブテン(2当量)を10分かけて滴下する。反応は添加を続けるにつれ発熱しながら進行する。添加終了後、反応物を3時間還流させ、室温に冷却する。グリニヤールをTHFで希釈して、機械攪拌器を装着し、THF/DMSの1:1溶液中CuBr.DMS(2当量)を仕込んだ3ツ口フラスコに−78℃でカニューレを用いて添加する。グリニヤールの添加(〜20分)後、反応物を−78℃で1時間攪拌する。この時点で反応物の色は暗赤色である。次いで、ケトンS2b(1当量)のTHF溶液を25分かけて滴下する。反応物を−78℃で15分間攪拌し、次いで2時間かけてゆっくり室温に加温する。反応をNH4Cl水溶液で停止させ、過剰のDMSを終夜で蒸発させる。反応物を食塩水/CH2Cl2に分配して層を分離する。水層をCH2Cl2で抽出し戻し、有機層を合わせて乾燥する(Na2SO4)。溶媒を真空下に除去し、残留物をSiO2上でクロマトグラフィーにかけ(10%ヘキサン/EtOAc)、S2cのケトン前駆体を得る。
【0064】
S2cのケトン前駆体(1当量)をMeOHに溶解して−40℃に冷却する。水素化ホウ素ナトリウム(0.9当量)を10分かけて一部づつ添加する。添加終了後、反応物を−40℃で13時間、そして−78℃で12時間攪拌する。反応を水で停止し、食塩水とCH2Cl2とに分配して層を分離する。水層をCH2Cl2で抽出し戻し、有機層を合わせて乾燥する(Na2SO4)。溶媒を真空下に除去し、残留物をSiO2上でクロマトグラフィーにかけ(30%EtOAc/ヘキサン)、アルコールS2cを得る。
【0065】
c. 7−(5−ブト−3−エニル−2,4−ジ(1,1,2,2−テトラメチル−1−シラプロポキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチル(S2d)
アルコールS2c(1当量)をCH2Cl2に溶解して0℃に冷却し、2,6−ルチジン(1.3当量)を15分かけて滴下する。この溶液を−78℃に保ち、TBDMSトリフレート(1.2当量)のCH2Cl2溶液を15分かけて滴下する。反応物をゆっくり室温にまで加温し、室温下で15時間攪拌する。10%HCl水溶液を添加し、層を分離する。水層をCH2Cl2で抽出し、有機層を合わせる。有機層を食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、そして濃縮する。残留物をクロマトグラフィーにかけ(ヘキサン中10%EtOAc)、シリルエーテルS2dを得る。
【0066】
d. 7−(5−(3−オキソプロパニル)−2,4−ジ(1,1,2,2−テトラメチル−1−シラプロポキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチル(S2e):50mLの丸底フラスコに過ヨウ素酸ナトリウム(2当量)および水10mLを添加する。これを過ヨウ素酸塩が完全に溶解するまで攪拌する。次いで、当容量の氷酢酸を添加した後、2倍容量のテトラヒドロフランを添加する。最後に、数モル%のオスミウム酸カリウムを添加した後、アルケンS2d(1当量)を添加する。TLCを反応のモニターに使用しながら、反応物を窒素下室温で攪拌する。出発物質がTLCで見えなくなったときに、反応を食塩水で停止し、酢酸エチルおよびヘキサン4:1比で抽出する。有機層を食塩水で洗浄してpHを中性とし、硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮する。カラムクロマトグラフィー(7:3、ヘキサン:酢酸エチル)後、S2eを得る。
【0067】
e. 7−(5−(3−ヒドロキシ−3−チアナフチル−プロパニル)2,4−ジ(1,1,2,2−テトラメチル−1−シラプロポキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸 メチル S2f:アルデヒドS2eを数mLの乾燥THFに溶解し、50mLの丸底フラスコ中で、チアナフチレンのリチウムアニオンのTHF溶液(n−ブチルリチウムおよびチアナフチレンを−78℃で混合することにより調製される)を−78℃で滴下する。これを、TLCによる証拠として、反応が進行して終了するまで攪拌する。次いで、反応を飽和塩化アンモニウム溶液で停止し、酢酸エチルおよびヘキサンの4:1比で抽出した。有機層を中性のpHになるまで食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮する。カラムクロマトグラフィー(7:3ヘキサン:酢酸エチル)の後、S2fを得る。
【0068】
f. 13,14−ジヒドロ−15−(チアナフチル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF(S2g):小型の丸底フラスコにメチルエステルS2fおよび3mLのCH3CNおよび0.1mLのHF/ピリジン(0.1mmol、1等量)を、フラスコを0℃から室温に加温しながら添加する。21℃で3時間後、反応を飽和NaCl水溶液で停止する。水層をCH2Cl2で3回抽出する。有機層を合わせて、1NのHClで3回および食塩水で洗浄し、そして乾燥(Na2SO4)する。カラムクロマトグラフィー(7:3、ヘキサン:酢酸エチル)後、透明なオイルを得る。このオイルを数mLのTHF:水3:1溶液に添加し、フラスコを0℃に冷却する。過剰量(2.5当量)の水酸化リチウムを添加し、氷浴を除去し、そして反応物を室温下で終夜攪拌する。塩化メチレンおよび飽和クエン酸を反応混合物に添加し、水層を塩化メチレンで3回洗浄し、有機層を合わせて食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、真空下に濃縮し、そして残留物をクロマトグラフィーにかけ(塩化メチレン:メタノール:酢酸、9.6:0.4:0.015)、S2gを得る。
【0069】
実施例2〜22
実施例2〜22は、適切な出発物質に置き換えて、実施例1に記載したのと実質的に同様の方法を用いて調製する。当業者は、温度、圧力、雰囲気、溶媒または反応の順序を適切に変えることができる。加えて、当業者は副反応を阻止したり、または、収率を増加させたりするために適切に保護基を用いることができる。このような修飾は全て有機化学の分野における当業者により容易に行うことができ、それゆえ本発明の範囲内である。
【0070】
実施例2
13,14−ジヒドロ−15−(2−ベンゾチアゾリル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0071】
【化7】

【0072】
実施例3
13,14−ジヒドロ−15−(7−フルオロベンゾチアゾリル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0073】
【化8】

【0074】
実施例4
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(2,5−ジフルオロフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンF
【0075】
【化9】

【0076】
実施例5
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(2,3−ジフルオロフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンF
【0077】
【化10】

【0078】
実施例6
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(3,5−ジフルオロフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンF
【0079】
【化11】

【0080】
実施例7
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(3,4−ジフルオロフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンF
【0081】
【化12】

【0082】
実施例8
13,14−ジヒドロ−15−(6−フルオロチアナフチル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0083】
【化13】

【0084】
実施例9
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(2,4−ジフルオロフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンF
【0085】
【化14】

【0086】
実施例10
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(3−フルオロフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンFメチルエステル
【0087】
【化15】

【0088】
実施例11
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(2−フルオロ−4−メチルフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンF
【0089】
【化16】

【0090】
実施例12
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(4−クロロフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンF
【0091】
【化17】

【0092】
実施例13
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−フェニル−17−トリノル プロスタグランジンFイソプロピルエステル
【0093】
【化18】

【0094】
実施例14
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(4−フルオロフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンFエチルエステル
【0095】
【化19】

【0096】
実施例15
13,14−ジヒドロ−15−(5−フルオロベンゾチアゾリル)−15−ペンタノル プロスタグランジンFイソプロピルエステル
【0097】
【化20】

【0098】
実施例16
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(2−クロロフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンF
【0099】
【化21】

【0100】
実施例17
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(2−フルオロフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンFメチルエステル
【0101】
【化22】

【0102】
実施例18
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(2−フルオロフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンF
【0103】
【化23】

【0104】
実施例19
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(4−フェニルフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンF
【0105】
【化24】

【0106】
実施例20
13,14−ジヒドロ−16−イニル−18−フェニル−18−ジノル プロスタグランジンF
【0107】
【化25】

【0108】
実施例21
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(4−メチルフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンF
【0109】
【化26】

【0110】
実施例22
13,14−ジヒドロ−16−イニル−18−(2−フルオロフェニル)−18−ジノル プロスタグランジンF
【0111】
【化27】

【0112】
実施例23
13,14−ジヒドロ−15−フェニル−15−ペンタノル プロスタグランジンFの調製
【0113】
【化28】

【0114】
a. 7−(5−(3−ヒドロキシ,3−フェニル−プロパニル)−2,4−ジ(1,1,2,2−テトラメチル−1−シラプロポキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチル S3a:
実施例1で得たアルデヒドS2eを数mLの乾燥THFに溶解し、これを、50mLの丸底フラスコ内のグリニヤール種(0℃でマグネシウムとブロモベンゼンを混合して調製される)のTHF溶液に、−78℃で滴下した。これを、反応が進行して終了したことがTLCで示されるまで攪拌する。次に、−78℃において飽和塩化アンモニウム溶液で反応を停止し、4:1の比の酢酸エチルおよびヘキサンで抽出する。有機層を食塩水で中性のpHまで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮する。カラムクロマトグラフィー(7:3、ヘキサン:酢酸エチル)の後、S3aを得る。
【0115】
b. 13,14−ジヒドロ−15−フェニル−15−ペンタノル プロスタグランジンF(S3b):
小さな丸底フラスコに、メチルエステルS3aおよび3mLのCH3CN、および0.1mLのHF/ピリジン(0.1mmol、1等量)を、フラスコを0℃から室温に温めながら加える。21℃で3時間後、反応を飽和NaCl水溶液で停止した。水層をCH2Cl2で3回抽出する。有機層を合わせ、1NHClで3回洗浄し、食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)した。カラムクロマトグラフィー(97:3、ジクロロメタン:メタノール)の後、透明な油状物を得る。この油状物を数mLの3:1のTHF:水の溶液に加え、フラスコを0℃に冷却した。過剰量(2.5等量)の水酸化リチウムを加え、氷浴を除去し、反応物を一夜室温で攪拌した。塩化メチレンおよび飽和クエン酸を反応混合物に加え、水層を塩化メチレンで3回洗浄し、有機層を合わせ、食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、真空下に濃縮し、残渣をクロマトグラフィー(塩化メチレン、メタノール、酢酸、9.6、0.4、0.015)にかけ、S3bを得る。
【0116】
実施例24〜35
実施例24〜35は、適切な出発物質に置き換えて、実施例23に記載したのと実質的に同様の方法を用いて調製する。当業者は、温度、圧力、雰囲気、溶媒または反応の順序を適切に変えることができる。加えて、当業者は副反応を阻止したり、または、収率を増加させたりするために適切に保護基を用いることができる。このような修飾は全て有機化学の分野における当業者により容易に行うことができ、それゆえ本発明の範囲内である。
【0117】
実施例24
13,14−ジヒドロ−15−(4−メチルフェニル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0118】
【化29】

【0119】
実施例25
13,14−ジヒドロ−15−(4−トリフルオロメチルフェニル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0120】
【化30】

【0121】
実施例26
13,14−ジヒドロ−15−(3−トリフルオロメチルフェニル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0122】
【化31】

【0123】
実施例27
13,14−ジヒドロ−15−(2−フルオロフェニル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0124】
【化32】

【0125】
実施例28
13,14−ジヒドロ−15−(3,5−ジフルオロフェニル)−15−ペンタノル プロスタグランジンFエチルエステル
【0126】
【化33】

【0127】
実施例29
13,14−ジヒドロ−15−(3−クロロ−4−フルオロ−6−メチルフェニル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0128】
【化34】

【0129】
実施例30
13,14−ジヒドロ−15−(3−ピリジニル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0130】
【化35】

【0131】
実施例31
13,14−ジヒドロ−15−(2−クロロフェニル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0132】
【化36】

【0133】
実施例32
13,14−ジヒドロ−15−(4−フェニルフェニル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0134】
【化37】

【0135】
実施例33
13,14−ジヒドロ−15−S−(2−フルオロフェニル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0136】
【化38】

【0137】
実施例34
13,14−ジヒドロ−15−S−(2−フルオロナフチル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0138】
【化39】

【0139】
実施例35
13,14−ジヒドロ−15−(2−フルオロ−4−ピリジル)−15−ペンタノル プロスタグランジンFイソプロピルエステル
【0140】
【化40】

【0141】
実施例36
13,14−ジヒドロ−15−(6−メチルナフト−2−イル)−15−ペンタノル プロスタグランジンFの調製
【0142】
【化41】

【0143】
a. 7−(5−(3−ヒドロキシ,(4−メチル−2−ナフチル)−プロパニル)−2,4−ジ(1,1,2,2−テトラメチル−1−シラプロポキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチル S4a:
実施例1で得たアルデヒドS2eを数mLの乾燥THFに溶解し、これを、50mL丸底フラスコのナフチルアニオンのTHF溶液(−78℃でt−ブチルリチウムと臭化ナフチルから調製される)に−78℃で加える。これを、反応が進行し、終了したことがTLCにより示されるまで攪拌する。次いで、飽和塩化アンモニウムを用いて−78℃で反応を停止し、4:1の比の酢酸エチルおよびヘキサンで抽出する。有機層を中性のpHまで食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮する。カラムクロマトグラフィー(7:3、ヘキサン:酢酸エチル)の後、S4aを得る。
【0144】
b. 13,14−ジヒドロ−16,17−デヒドロ−15−(6−メチル−2−ナフチル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF(S4b):
小さな丸底フラスコに、メチルエステルS4aおよび3mLのCH3CN、および0.1mLのHF/ピリジン(0.1mmol、1等量)を、フラスコを0℃から室温に温めながら加える。21℃で3時間後、反応を飽和NaCl水溶液で停止する。水層をCH2Cl2で3回抽出する。有機層を合わせ、1NHClで3回洗浄し、食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)する。カラムクロマトグラフィー(97:3、ジクロロメタン:メタノール)の後、透明な油状物を得る。この油状物を数mLの3:1のTHF:水の溶液に加え、フラスコを0℃に冷却する。過剰量(2.5等量)の水酸化リチウムを加え、氷浴を除去し、反応物を一夜室温で攪拌する。塩化メチレンおよび飽和クエン酸を反応混合物に加え、水層を塩化メチレンで3回洗浄し、有機層を合わせ、食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、真空下に濃縮し、残渣をクロマトグラフィー(塩化メチレン、メタノール、酢酸、9.6、0.4、0.015)にかけ、S4bを得る。
【0145】
実施例37〜42
実施例37〜42は、適切な出発物質に置き換えて、実施例36に記載したのと実質的に同様の方法を用いて調製する。当業者は、温度、圧力、雰囲気、溶媒または反応の順序を適切に変えることができる。加えて、当業者は副反応を阻止したり、または、収率を増加させたりするために適切に保護基を用いることができる。このような修飾は全て有機化学の分野における当業者により容易に行うことができ、それゆえ本発明の範囲内である。
【0146】
実施例37
13,14−ジヒドロ−15−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0147】
【化42】

【0148】
実施例38
13,14−ジヒドロ−15−(6−ベンゾチアゾール−5−イル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0149】
【化43】

【0150】
実施例39
13,14−ジヒドロ−15−(ベンゾ[b]フラン−5−イル)−15−ペンタノル プロスタグランジンFメチルエステル
【0151】
【化44】

【0152】
実施例40
13,14−ジヒドロ−15−(5−フルオロナフチル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0153】
【化45】

【0154】
実施例41
13,14−ジヒドロ−15−(8−フルオロ−2−ナフチル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0155】
【化46】

【0156】
実施例42
13,14−ジヒドロ−15−(8−トリフルオロメチル−2−ナフチル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF
【0157】
【化47】

【0158】
実施例43
13,14−ジヒドロ−15−(1−フルオロ−3−トリフルオロメチル−2−ナフチル)−15−ペンタノル プロスタグランジンFイソプロピルエステル
【0159】
【化48】

【0160】
実施例44
13,14−ジヒドロ−16−イニル−17−(2−フルオロフェニル)−17−トリノル プロスタグランジンF1−ヒドロキサム酸の調製
【0161】
【化49】

【0162】
磁気攪拌子を装備し、フレーム乾燥した25mLの丸底フラスコに、13,14−ジヒドロ−16,17−ジデヒドロ−17−o−フルオロフェニルトリノル プロスタグランジンFメチルエステル(実施例17)(1.0当量)のメタノール溶液を添加する。この溶液にヒドロキシルアミンのメタノール溶液(1.25当量)を添加する。溶液を数分間攪拌する。次いで、溶液を1.0N塩酸で処理し、酢酸エチルで抽出する。有機層を食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、濾過し、そして減圧下に濃縮する。残留物をクロマトグラフィーにより精製して、13,14−ジヒドロ−16,17−ジデヒドロ−17−o−フルオロフェニルトリノル プロスタグランジンF1−ヒドロキサム酸を得る。
【0163】
実施例45〜47
実施例45〜47は、適切な出発物質に置き換えて、実施例44に記載したのと実質的に同様の方法を用いて調製する。当業者は、温度、圧力、雰囲気、溶媒または反応の順序を適切に変えることができる。加えて、当業者は副反応を阻止したり、または、収率を増加させたりするために適切に保護基を用いることができる。このような修飾は全て有機化学の分野における当業者により容易に行うことができ、それゆえ本発明の範囲内である。
【0164】
実施例45
13,14−ジヒドロ−15−(ベンゾチアゾリル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF1−ヒドロキサム酸
【0165】
【化50】

【0166】
実施例46
13,14−ジヒドロ−15−(5−フルオロチアナフチル)−15−ペンタノル プロスタグランジンF1−ヒドロキサム酸
【0167】
【化51】

【0168】
実施例47
13,14−ジヒドロ−15−チアナフチル−15−ペンタノル プロスタグランジンF1−N−メタンスルホンアミド
【0169】
【化52】

【0170】
組成物
本発明の組成物は、安全かつ効果的な量の本化合物、および薬剤として許容しうる担体を含む。本明細書で用いられるように、「安全かつ効果的な量」とは、正常な医学的判断の範囲内で、治療されるべき状態の正の修正を有意に導くのに充分であるが、重篤な副作用を避けるのに充分少ない化合物量(適度な利益/リスク比で)を意味する。安全かつ効果的な量の化合物は特定の治療条件、治療される患者の年齢および健康状態、状態の重篤度、治療期間、併用する療法の性質、使用する特定の薬剤として許容しうる担体、および主治医の知識と経験内での同様の要因により変化する。
【0171】
化合物に加えて、本発明の組成物は薬剤として許容しうる担体を含む。本明細書に用いられる用語「薬剤として許容しうる担体」とは、1つまたはそれ以上の適合する固体または液体の、充填希釈剤または対象への投与に適した物質をカプセルに包むものを意味する。本明細書に用いられる用語「適合する」とは、通常使用する状態で組成物の薬効を実質的に低下させるような相互作用がないように、組成物の成分が化合物とおよび互いに混ざり合うことができることを意味する。薬剤として許容しうる担体は、もちろん、治療される対象への投与が適切であるように、充分に高純度でおよび充分に低毒性でなければならない。
【0172】
薬剤として許容しうる担体またはその成分としての役割を果たすことができる物質の例は、乳糖、ブドウ糖およびショ糖のような糖類;コーンスターチおよびジャガイモ澱粉のような澱粉類;ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテートのようなセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウムのような固体の潤滑剤;硫酸カルシウム;ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コーンオイルおよびカカオ脂のような植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのようなポリオール類;アルギン酸;Tweens(登録商標)のような乳化剤;ラウリル硫酸ナトリウムのような湿潤剤;着色剤;香味剤;賦形剤;錠剤化剤;安定剤;抗酸化剤;防腐剤;発熱物質を含まない水;等張性生理食塩水;およびリン酸緩衝溶液である。
【0173】
化合物と併せて使用される薬剤として許容しうる担体の選択は、化合物を投与する方法により基本的に決定される。本発明の化合物は全身に投与してもよい。投与の方法としては、経皮的、経口的、皮下または静脈内注射を含む非経口的、局所的、および/または鼻腔内を含む。
【0174】
使用すべき化合物の適切な量は、動物モデルを用いる通常の実験により決定できる。このようなモデルは、無傷のまたは卵巣切除したラットモデル、フェレット、イヌおよびヒト以外の霊長類モデル、並びに、不使用モデルを含むが、これらに限定されない。
【0175】
注射用の好ましい単位剤形は、水、生理食塩水またはこれらの混合物の殺菌溶液を含む。該溶液のpHを約7.4に調整すべきである。注射または手術による移植用の適切な担体は、ヒドロゲル、放出制御または徐放装置、ポリ乳酸およびコラーゲンマトリックスを含む。
【0176】
局所使用のための適切な薬剤として許容しうる担体は、ローション、クリームおよびゲルなどに使用するのに適切な担体を含む。化合物を経口投与する場合、好ましい単位剤形は、錠剤およびカプセル剤などである。経口投与用の単位剤形を調製するために適切な薬剤として許容しうる担体は、当技術分野においてよく知られている。これらの選択は、本発明の目的には重要ではないが、味覚、価格および保存安定性のような二次的な考慮に依存し、当業者により困難なく行うことができる。
【0177】
使用方法
本発明の化合物は、例えば、眼疾患、高血圧、出産制御、鼻詰まり、神経性膀胱疾患、胃腸疾患、皮膚疾患および骨粗鬆症を含む多く医学的障害を治療するために有用である。
【0178】
本発明の化合物は、新たな骨梁形成による骨体積および骨梁数の増加、正常な骨代謝回転速度を維持しながらの骨量の増加、および現存の皮質から骨を除去しない骨内膜表面での形成の増加に有用である。それゆえ、これらの化合物は骨障害の治療および予防に有用である。
【0179】
骨障害を治療するための好ましい投与経路は、経皮および鼻腔内である。他の好ましい投与経路は、直腸、舌下、および経口である。
【0180】
全身投与用の化合物の用量範囲は、1日当たり、約0.01から約1000μg/Kg体重、好ましくは約0.1から約100μg/Kg体重、最も好ましくは1日あたり、約1から約50μg/Kg体重である。経皮での用量は、薬動力学および経皮製剤の当業者に知られている技法に基づいて、同様の血清または血漿濃度を維持するために設計される。全身投与のための血漿濃度は、0.01から100ナノグラム/ml、より好ましくは0.05から50ng/ml、および最も好ましくは0.1から10ng/mlの範囲であることが望まれている。これらの用量は日々の投与割合を基にしているが、週ごとまたは月ごとの用量を、臨床での要求を計算して用いることもできる。
【0181】
用量は、所望する効果を達成するためには、治療される患者、治療される状態、治療される状態の重篤度、投与経路などにより変化させてもよい。
【0182】
本発明の化合物は眼圧を低下させるのにも有用である。それゆえ、これらの化合物は緑内障の治療に有用である。緑内障を治療する好ましい投与経路は局所的である。
【0183】
組成物および方法の実施例
以下の非限定的実施例は本発明を例示する。以下の組成物および方法の実施例は本発明を制限するものではないが、本発明の化合物、組成物および方法を調製し使用するための指標を当業者に提供する。それぞれの場合において、本発明内の他の化合物を、同様の結果を伴って、以下に示す実施例の化合物と置き換えることができる。実施例は指標を提供し、そして治療される状態および患者に基づいて変化することは、当業者は認識するであろう。
【0184】
実施例A
錠剤の形態の薬剤組成物を、混合および直接圧縮のような従来法により、以下のように処方して調製する。
構成成分 量(錠剤当たりのmg)
実施例1の化合物 5
微結晶セルロース 100
ナトリウムデンプングリコレート 30
ステアリン酸マグネシウム 3
1日1回経口投与すると、上記組成物は骨粗鬆症に苦しむ患者の骨体積を実質的に増加させる。
【0185】
実施例B
液体型における薬剤組成物を従来法により、以下のように処方して調製する。
構成成分 量
実施例32の化合物 1mg
リン酸緩衝 生理食塩水 10ml
メチルパラベン 0.05ml
上記組成物1.0mlを1日1回皮下的に投与すると、上記組成物は骨粗鬆症に苦しむ患者の骨体積を実質的に増加させる。
【0186】
実施例C
眼圧を低下させる局所的な薬剤組成物を従来法により、以下のように処方して調製する。
構成成分 量(重量%)
実施例1の化合物 0.004
デキストラン70 0.1
ヒドロキシプロピル メチルセルロース 0.3
塩化ナトリウム 0.77
塩化カリウム 0.12
EDTAジナトリウム(ジナトリウムエデテート) 0.05
ベンズアルコニウムクロリド 0.01
HCLおよび/またはNaOH pH7.2〜7.5
精製水 q.s.100%まで
【0187】
本発明の特定の実施態様を記載してきたが、本明細書に開示した組成物に対して種々の変更や修飾が、本発明の精神や範囲を逸脱せずに行うことができることは、当業者に明らかである。添付する特許請求の範囲において、本発明の範囲内であるこのような全ての修飾を含むことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造を有する化合物であって、
【化1】

(a)R1は、CO2H、C(O)NHOH、CO23、CH2OH、S(O)23、C(O)NHR3、C(O)NHS(O)24、およびテトラゾールよりなる群から選択され、ここでR3はアルキル、ヘテロアルキル、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、単環式芳香族環または単環式複素芳香族環であり、R4はアルキル、ヘテロアルキル、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、単環式芳香族環、または単環式複素芳香族環であることを特徴とし、
(b)R2は、Hまたは低級アルキルであり、
(c)Xは、
(1)C≡C、または
(2)共有結合であり
(d)Zは、芳香族環または複素芳香族環であるが、但し、Zがヘテロ芳香族環であり、Xが共有結合である場合、Zは環の炭素原子を介してC15に結合されることを特徴とする化合物、および
(e)上記構造の任意の、光学異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー若しくは薬剤として許容可能な塩、または、生加水分解可能なこれらのアミド、エステルまたはイミド。
【請求項2】
Zが単環式であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Zが二環式複素芳香族環であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1がCO2H、C(O)NHOH、CO23、C(O)NHS(O)24、またはテトラゾールであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
2がHであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
XがC≡Cであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
Zが1つの置換基で置換され、前記1つの置換基が低級アルキル基、ハロ、およびハロアルキルよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
骨の障害を治療するための医薬の製造における請求項1から7のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項9】
骨の障害が骨粗鬆症であることを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
緑内障を治療するための医薬の製造における請求項1、2、3、4、5、6、または7に記載の化合物の使用。

【公開番号】特開2011−37861(P2011−37861A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−208198(P2010−208198)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【分割の表示】特願2000−602208(P2000−602208)の分割
【原出願日】平成12年2月29日(2000.2.29)
【出願人】(304028151)デューク ユニバーシティ (5)
【Fターム(参考)】