説明

C8位置換プリン塩基誘導体及びそれを利用した蛍光プローブ

【課題】周囲の極性環境の違いにより蛍光発光波長又は蛍光発光強度が大きく変化する蛍光プリン塩基誘導体及びそれを利用したプローブの提供。
【解決手段】下記式のプリン塩基誘導体及びこれを導入したポリヌクレオチド誘導体。


[式中、環A1及び環A2は2価又は3価の芳香環であり、X1及びX2は炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合であり、Y1及びY2はアシル基、アルコキシカルボニル基等から選ばれる置換基であり、m及nは、1又は2であり、R1及びR2は、水素原子又は水酸基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C8位置換プリン塩基誘導体、それを含むヌクレオチド誘導体及びそれを利用した蛍光プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
周囲の極性環境の違いにより蛍光発光波長を変化させる化合物については、これまでにも多く報告されている。同様のヌクレオシドについてもいくつか報告例がある。例えば、国際公開第2004/58793号パンフレット(特許文献1)、国際公開第2005/85269号パンフレット(特許文献2)、特開2006−169240号公報(特許文献3)、特開2007−31388号公報(特許文献4)、特開2007−31389号公報(特許文献5)、Base-discriminating fluorescent (BDF) nucleoside: distinction of thymine by fluorescence quenching Chem. Commun., (2004) 1704-1705(非特許文献1)及びSynthesis and properties of novel base-discriminating fluorescent (BDF) nucleosides: A highly polarity-sensitive fluorophore for SNP typing Tetrahedron Lett., (2004) vol.45, 7827-7831(非特許文献2)など参照。これらの化合物は、周辺の極性環境の違いにより蛍光発光強度又は発光波長を変化させるという特徴を持つことから、タンパク質又は細胞内の局所的な極性環境の調査用のプローブなど様々な用途に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/58793号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/85269号パンフレット
【特許文献3】特開2006−169240号公報
【特許文献4】特開2007−31388号公報
【特許文献5】特開2007−31389号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】BASE-DISCRIMINATING FLUORESCENT (BDF) NUCLEOSIDE: DISTINCTION OF THYMINE BY FLUORESCENCE QUENCHING CHEM. COMMUN., (2004) 1704-1705.
【非特許文献2】SYNTHESIS AND PROPERTIES OF NOVEL BASE-DISCRIMINATING FLUORESCENT (BDF) NUCLEOSIDES: A HIGHLY POLARITY-SENSITIVE FLUOROPHORE FOR SNP TYPING TETRAHEDRON LETT., (2004) VOL.45, 7827-7831.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者はこれまで、DNA中の局所的な極性環境の違いを利用して対面塩基の種類を識別するプローブである塩基識別型蛍光核酸塩基(遺伝子検出用のプローブなど)の開発を行ってきた。このプローブに利用可能な蛍光分子は、蛍光発光波長又は蛍光発光強度が周辺の極性環境の変化に伴って蛍光発光強度又は発光波長が大きく変化する分子ほど望ましく、特に発光波長の違いが色の違いとして現れるような分子は理想的であるといえる。
このような状況下、周囲の極性環境の違いにより蛍光発光強度又は発光波長が大きく変化するような新規蛍光性塩基及びそれを利用したプローブの開発が期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、本研究で鋭意検討したところ、プリン塩基のC8位に二重結合又は三重結合を介して蛍光分子を導入して共役構造を形成させることで、蛍光発光波長が長波長化して蛍光発光強度を変化させるという新しいコンセプトを含むプリン塩基誘導体を合成した。このプリン塩基誘導体を種々の溶媒に溶解したところ、使用する溶媒の種類によって蛍光発光波長が大きく変化し、色の変化が見られるという特徴を持つことを見出した。さらに該プリン塩基誘導体は、周囲の極性環境の変化に応答して塩基の種類を色の違いで識別できることから、対面塩基識別プローブとして利用できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
[1]下記式(I)又は(II):
【化1】

[式中、環A1及び環A2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、2価又は3価の芳香環であり、X1及びX2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、Y1及びY2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボン酸アミド基、シアノ基、チオール基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びC1〜C20炭化水素基からなる群より選ばれる置換基であり、m及nは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、1又は2であり、R1及びR2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又は水酸基である。
但し、次の場合を除く:
(a)環A1がフェニレン基であり、X1が炭素−炭素三重結合であり、Y1がシアノ基であり、mが1であり、R1が水酸基である場合、
(b)環A2がフェニレン基であり、X2が炭素−炭素二重結合であり、Y2がシアノ基であり、nが1であり、R2が水酸基である場合、
(c)環A2がフェニレン基であり、X2が炭素−炭素三重結合であり、Y2がアセチル基であり、nが1であり、R2が水酸基である場合。]
で示されるC8位置換プリン塩基誘導体。
[2]前記R1及びR2が、水素原子である、[1]記載のプリン塩基誘導体。
[3]前記環A1及びA2が、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基及びピレニレン基からなる群より選ばれるものである、[1]又は[2]記載のプリン塩基誘導体。
[4]前記環A1及びA2が、フェニレン基である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のプリン塩基誘導体。
[5]前記置換基Y1及びY2が、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボン酸アミド基、シアノ基及びベンジルビニル基からなる群より選ばれるものである、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のプリン塩基誘導体。
[6]前記置換基Y1及びY2が、アセチル基又はシアノ基である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のプリン塩基誘導体。
[7]下記式のいずれかで示される、[1]〜[7]のいずれか1項に記載のプリン塩基誘導体。
【化2】

[8]極性環境の変化に応答して蛍光発光波長が変化するものである、[1]〜[7]のいずれか1項に記載のプリン塩基誘導体。
[9]下記式(III)又は(IV):
【化3】

[式中、環A1及び環A2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、2価又は3価の芳香環であり、X1及びX2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、Y1及びY2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボン酸アミド基、シアノ基、チオール基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びC1〜C20炭化水素基からなる群より選ばれる置換基であり、m及nは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、1又は2であり、R1及びR2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又は水酸基であり、s及びtは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、1、2又は3である。
但し、次の場合を除く:
(a)環A1がフェニレン基であり、X1が炭素−炭素三重結合であり、Y1がシアノ基であり、mが1であり、R1が水酸基である場合、
(b)環A2がフェニレン基であり、X2が炭素−炭素二重結合であり、Y2がシアノ基であり、nが1であり、R2が水酸基である場合、
(c)環A2がフェニレン基であり、X2が炭素−炭素三重結合であり、Y2がアセチル基であり、nが1であり、R2が水酸基である場合。]
で示されるヌクレオチド誘導体。
[10]前記R1及びR2が、水素原子である、[9]記載のヌクレオチド誘導体。
[11]ポリヌクレオチドにおいて少なくとも1つのヌクレオチドが[9]又は[10]記載のヌクレオチド誘導体で置換されてなるポリヌクレオチド誘導体。
[12][11]記載のポリヌクレオチド誘導体を含むプローブ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プリン塩基のC8位に二重結合又は三重結合を介して蛍光分子を導入してなる新規なC8位置換プリン塩基誘導体、それを含むヌクレオチド誘導体及びそれを利用したプローブが得られる。本発明の好ましい態様によれば、該C8位置換プリン塩基誘導体は、周囲の極性環境の違いにより蛍光発光波長を変化させることができる。この性質を利用することにより、該C8位置換プリン塩基誘導体をヌクレオチドに導入してなるプローブは、遺伝子検出用プローブあるいはタンパク質又は細胞内の局所的な極性環境の調査用プローブなどとして実用化可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】オリゴヌクレオチドDNA(T-rich)に各種相補鎖(N = A,G,C,T又はバルジ(bulge))を加えたときのUV吸収スペクトル(a)、蛍光スペクトル(b)及び励起スペクトル(c)の測定結果を示したグラフである。
【図2】オリゴヌクレオチドDNA(C-rich)に各種相補鎖(N = A,G,C,T又はバルジ(bulge))を加えたときのUV吸収スペクトル(a)、蛍光スペクトル(b)及び励起スペクトル(c)の測定結果を示したグラフである。
【図3】オリゴヌクレオチドDNA(probe 1)にターゲットODNを加えたときのUV吸収スペクトル(a)及び蛍光励起スペクトル(b)の測定結果を示したグラフである。
【図4】オリゴヌクレオチドDNA(probe 2)にターゲットODNを加えたときのUV吸収スペクトル(a)及び蛍光励起スペクトル(b)の測定結果を示したグラフである。
【図5】オリゴヌクレオチドDNA(probe 1及びprobe 2)がそれぞれ単独のときと、ターゲットDNAが存在するときの蛍光発光の色を比較した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のC8位置換プリン塩基誘導体、それを含むヌクレオチド誘導体及びそれを利用したプローブ等について詳細に説明する。
【0011】
1.C8位置換プリン塩基誘導体
まず、本発明のC8位置換プリン塩基誘導体について説明する。本発明のC8位置換プリン塩基誘導体は、下記式(I)又は(II)で示され、プリン塩基と五炭糖が結合してなるヌクレオシドにおいて、プリン塩基のC8位に二重結合又は三重結合を介して蛍光分子を導入した化合物である(以下「プリン塩基誘導体」ということがある。)。
【化4】

[式中、環A1及び環A2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、2価又は3価の芳香環であり、X1及びX2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、Y1及びY2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボン酸アミド基、シアノ基、チオール基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びC1〜C20炭化水素基からなる群より選ばれる置換基であり、m及nは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、1又は2であり、R1及びR2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又は水酸基である。
但し、次の場合を除く:
(a)環A1がフェニレン基であり、X1が炭素−炭素三重結合であり、Y1がシアノ基であり、mが1であり、R1が水酸基である場合、
(b)環A2がフェニレン基であり、X2が炭素−炭素二重結合であり、Y2がシアノ基であり、nが1であり、R2が水酸基である場合、
(c)環A2がフェニレン基であり、X2が炭素−炭素三重結合であり、Y2がアセチル基であり、nが1であり、R2が水酸基である場合。]
【0012】
本発明のプリン塩基誘導体は、プリン塩基(式(I)ではアデニン、式(II)ではグアニン)と五炭糖が結合してなるヌクレオシドにおいて、プリン塩基のC8位に炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を介して蛍光分子を導入することで、プリン塩基と蛍光分子が共役構造を形成するように設計されている。本発明の好ましい態様によれば、本発明のプリン塩基誘導体は、周辺環境たとえば極性環境の変化に応答して蛍光発光波長が大きく変化することで、蛍光発光強度(望ましくは蛍光発光の色)が変化するという特徴を有している。
【0013】
本発明のプリン塩基誘導体において、プリン塩基と結合する五炭糖は、2−デオキシリボースでもリボースでもよく、R1及びR2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又は水酸基である。本発明のプリン塩基誘導体をヌクレオチドに導入してDNA型のプローブとして用いるときはR1及びR2は水素原子が好ましく、RNA型のプローブとして用いるときはR1及びR2は水酸基が好ましい。
【0014】
環A1及び環A2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、置換基を有していてもよい、2価又は3価の芳香環である。前記芳香環は、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を介してプリン塩基との間に共役構造を形成できるものであれば特に制限されない。芳香環は、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基及びピレニレン基からなる群より選ばれるものが好ましく挙げられる。中でも、フェニレン基、ナフチレン基が好ましく、フェニレン基が特に好ましい。
【0015】
芳香環基A1及びA2はそれぞれ置換基Y1及びY2を一つ又は二つ有している。該置換基としては、アシル基(RC(=O)−)、アルコキシカルボニル基(R’OC(=O)−)、カルボン酸アミド基(−C(=O)NR12)、シアノ基、チオール基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びC1〜C20炭化水素基(ベンジルビニル基(C66−C=C−)など)からなる群より選ばれる置換基が好ましく挙げられる。ここで、式中のR、R’、R1及びR2は、それぞれ互いに独立して、同一又は異なって、C1〜C20アルキル基である。置換基Y1及びY2は、前記芳香環との組み合わせで蛍光を発光するものが好ましく、上記の中から目的及び用途等に応じて適宜選択すればよい。中でも、置換基Y1及びY2としては、電子吸引性置換基が好ましく、具体的にはアセチル基、シアノ基、チオール基などが挙げられる。これらの中でもアセチル基又はシアノ基が特に好ましい。
置換基Y1及びY2は、前記芳香環のいずれの位置で結合していてもよい。共役構造がより安定化することから、置換基の少なくとも一つは炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合に対してパラ位で結合していることが好ましい。
【0016】
ここで、本明細書において「ハロゲン原子」、「C1〜C20炭化水素基」、「C1〜C20アルキル基」等の定義は下記のとおりである。
【0017】
本明細書において、「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。
【0018】
本明細書において、「C1〜C20炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C1〜C20炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。「C1〜C20炭化水素基」には、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C4〜C20アルキルジエニル基、C6〜C18アリール基、C7〜C20アルキルアリール基、C7〜C20アリールアルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、C4〜C20シクロアルケニル基、(C3〜C10シクロアルキル)C1〜C10アルキル基などが含まれる。
【0019】
本明細書において、「C1〜C20アルキル基」は、C1〜C12アルキル基であることが好ましく、C1〜C10アルキル基であることがより好ましく、C1〜C6アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「C2〜C20アルケニル基」は、C2〜C10アルケニル基であることが好ましく、C2〜C6アルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「C2〜C20アルキニル基」は、C2〜C10アルキニル基であることが好ましく、C2〜C6アルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「C4〜C20アルキルジエニル基」は、C4〜C10アルキルジエニル基であることが好ましく、C4〜C6アルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3−ブタジエニル等を挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「C6〜C18アリール基」は、C6〜C12アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0024】
本明細書において、「C7〜C20アルキルアリール基」は、C7〜C12アルキルアリール基であることが好ましい。アルキルアリール基の例としては、制限するわけではないが、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、o−クメニル、m−クメニル、p−クメニル、メシチル等を挙げることができる。
【0025】
本明細書において、「C7〜C20アリールアルキル基」は、C7〜C12アリールアルキル基であることが好ましい。アリールアルキル基の例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル等を挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルキル基」は、C4〜C10シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0027】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルケニル基」は、C4〜C10シクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態として、下記式I(a)〜(d)で示される化合物が挙げられる。式中のY1の定義は上記と同じである。
【0029】
【化5】

【0030】
本発明の他の好ましい実施形態として、下記式II(a)〜(d)で示される化合物が挙げられる。式中のY2の定義は上記と同じである。
【0031】
【化6】

【0032】
本発明の特に好ましい実施形態の一例を下記に示す。
【化7】

【0033】
本発明のプリン塩基誘導体は、プリン塩基のC8位に二重結合又は三重結合を介して蛍光分子を導入し共役構造を形成させることで、該プリン塩基誘導体の蛍光発光波長が長波長化し、蛍光発光強度が変化するように設計されている。蛍光発光波長の変化の程度は周囲の極性環境によって異なるので、本発明の好ましい態様によれば、本発明のプリン塩基誘導体を利用することで、周囲の極性環境の違いを蛍光発光の色の変化によって識別することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、本発明のプリン塩基誘導体は上記のような性質を有するので、DNA中の局所的な極性環境の違いにより対面塩基の種類を識別するプローブとして使用可能である。例えば、本発明のプリン塩基誘導体をポリヌクレオチドに導入することで、遺伝子検出用のプローブとして、あるいは、タンパク質又は細胞内の局所的な極性環境の調査用プローブとして実用可能である。
【0034】
本発明のC8位置換プリン塩基誘導体は、天然のプリンヌクレオシドに蛍光分子を導入することにより製造することができる。
【0035】
例えば、本発明の式(I)で示されるプリン塩基誘導体は、下記のスキームAに従って製造することができる。
【化8】

【0036】
(1)まず、アデニンヌクレオシド(a)を溶媒中でN−ブロモスクシンイミド(NBS)と反応させ、アデニンのC8位をブロモ化して化合物(b)を得る。反応温度は、例えば、20℃〜80℃であり、好ましくは40℃〜60℃である。溶媒は、メタノールなどのアルコール系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などを好ましく使用できる。臭素元であるN−ブロモスクシンイミドの使用量は特に制限されないが、化合物(a)に対して、1〜4倍量が好ましく、2〜3倍量がより好ましい。反応は窒素又はアルゴンガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0037】
(2)次に、化合物(b)及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を溶媒に溶かし、この溶液にテトラビニルスズを加えて反応させる。反応温度は、例えば、40℃〜120℃であり、好ましくは80℃〜100℃である。溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物などを好ましく用いることができる。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)の使用量は、化合物(b)に対して、0.05〜0.5倍量が好ましく、0.1〜0.2倍量がより好ましい。また、テトラビニルスズの使用量は、化合物(b)に対して、1〜3倍量が好ましく、1.2〜1.5倍量がより好ましい。反応は窒素又はアルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
【0038】
(3)次に、化合物(c)及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を溶媒に溶かし、この溶液に4−ブロモアセトン、4−ブロモベンゾニトリル、4−ブロモスチルベンなどの対応する蛍光分子のブロモ化合物を加えて反応させる。反応温度は、例えば、60℃〜120℃であり、好ましくは80℃〜100℃である。溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物などを好ましく用いることができる。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)の使用量は、化合物(c)に対して、0.05〜0.5倍量が好ましく、0.1〜0.2倍量がより好ましい。また、蛍光分子のブロモ化合物の使用量は、化合物(c)に対して、1〜5倍量が好ましく、2〜3倍量がより好ましい。反応は窒素又はアルゴンガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0039】
なお、いずれの反応も窒素又はアルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。各工程において反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーなど常法に従って精製することが好ましい。
【0040】
本発明の式(II)で示されるプリン塩基誘導体は、下記のスキームBに従って製造することができる。
【化9】

【0041】
スキームBの工程(1)〜(3)はそれぞれ、出発化合物としてグアニンヌクレオシド(a’)を用いることを除いて、スキームAの工程(1)〜(3)と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。なお、スキームA及びBはR2が水素原子の場合であるが、
2が水酸基の場合も同様にして製造することができる。
【0042】
本発明のプリン塩基誘導体は、上記のように天然のヌクレオシドを利用して簡便な方法で製造することができるので、本発明のプリン塩基誘導体の有用性は高い。
【0043】
2.ヌクレオチド誘導体及びポリヌクレオチド誘導体
本発明のヌクレオチド誘導体は、上述した本発明のプリン塩基誘導体にリン酸がエステル結合したものであり、下記式(III)又は(IV):
【化10】

[式中、環A1及び環A2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、2価又は3価の芳香環であり、X1及びX2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、Y1及びY2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボン酸アミド基、シアノ基、チオール基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びC1〜C20炭化水素基からなる群より選ばれる置換基であり、m及nは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、1又は2であり、R1及びR2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又は水酸基であり、s及びtは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、1、2又は3である。
但し、次の場合を除く:
(a)環A1がフェニレン基であり、X1が炭素−炭素三重結合であり、Y1がシアノ基であり、mが1であり、R1が水酸基である場合、
(b)環A2がフェニレン基であり、X2が炭素−炭素二重結合であり、Y2がシアノ基であり、nが1であり、R2が水酸基である場合、
(c)環A2がフェニレン基であり、X2が炭素−炭素三重結合であり、Y2がアセチル基であり、nが1であり、R2が水酸基である場合。]
で示される。
【0044】
式(III)又は(IV)におけるA1、A2、X1、X2、Y1、Y2、R1、R2、m、nは、式(I)又は(II)におけるA1、A2、X1、X2、Y1、Y2、R1、R2、m、nで定義したとおりである。s及びtはそれぞれ1、2又は3であるが、1又は3が好ましく、ポリヌクレオチド誘導体に容易に導入できることから3が特に好ましい。
【0045】
本発明のヌクレオチド誘導体(III)又は(IV)の一リン酸体(s,t=1)は、通常、本発明のプリン塩基誘導体(I)又は(II)をトリメチルホスファイトなどの溶媒に溶解し、0℃オキシ塩化リンを加えて反応させた後に水を加えることで簡単に合成することができる。また、三リン酸体(s,t=3)は、水を加える前にトリブチルアンモニウムピロリン酸(二リン酸)を加えるステップを加えることを除いて一リン酸体と同様にして合成することができる。
【0046】
また、本発明のヌクレオチド誘導体(III)又は(IV)の三リン酸体は、PCR法を用いてDNAに容易に導入することができ、ポリヌクレオチドにおいて少なくとも1つのヌクレオチドが本発明のヌクレオチド誘導体で置換された本発明のポリヌクレオチド誘導体を得ることができる。あるいは、実施例5に記載したとおり、本発明のプリン塩基誘導体にN,N−メチルホルムアミドジエチルアセタールを反応させ、その後、触媒量のN,N−ジメチルアミノピリジン及びジメトキシトリチルクロリドを加えて反応させて得られる化合物を、更に2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロアミダイトと反応させて、得られたアミダイト体を直接DNA自動合成機にかけることで本発明のポリヌクレオチド誘導体を得ることができる。
【0047】
本発明において、ポリヌクレオチド誘導体はオリゴヌクレオチド誘導体であってもよい。本発明のオリゴヌクレオチド誘導体の塩基数は特に制限されなく、例えば2から1000が好ましく、2から200がより好ましく、2から100が特に好ましい。
【0048】
本発明のポリヌクレオチド誘導体又はオリゴヌクレオチド誘導体は、DNA中の局所的な極性環境の違いを利用して対面塩基の種類を識別する塩基識別型蛍光核酸塩基(遺伝子検出用プローブ)として、あるいは、タンパク質又は細胞内の局所的な極性環境の調査用のプローブとして用いることができる。
【0049】
本発明のプローブを標的DNAとハイブリダイズさせフルマッチしたときの極性環境の変化による前記プローブの蛍光発光の色の違いで標的DNAの対面塩基を識別することができる。
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【実施例1】
【0051】
下記スキーム1に従って本発明のプリン塩基誘導体(4)を合成した。
【化11】

【0052】
化合物(2)の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(1) (6.00g, 22.0 mmol) のメタノール溶液 (50 ml)にNBS (7.94 g, 44.6 mmol) を加え、50℃で90分攪拌した。その後反応溶液を室温で20時間攪拌した後ろ過し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/クロロホルム= 1/20)で精製して化合物(2) (4.55g, 13.8mmol, 61.7%) を得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ2.20 (m, 1H), 3.25 (m, 1H), 3.65 (m, 1H), 3.89 (m, 1H), 4.49 (m, 1H), 5.35 (br, 2H), 6.29 (dd, J=6.56, 7.88 Hz, 1H), 7.55 (br, 2H), 8.12 (s, 1H); 13C NMR (DMSO-d6,400 MHz)δ36.4,61.5,70.6,85.8,87.7,119.1,126.1,149.3,151.7,154.5.
【0053】
化合物(3)の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(2) (1.82 g, 5.51 mmol)及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) (378 mg, 32.7 mmol) のDMF溶液にテトラビニルスズ (0.750 ml, 4.12 mmol)を加え、80℃で1時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1)で精製して化合物(3) (783 mg, 2.82 mmol, 86.3 %) を得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ2.98 (m, 1H), 3.54 (m, 1H), 3.66 (m, 1H), 3.88 (m, 1H), 4.46 (m, 1H), 5.31 (d, J=4.32, 1H), 5.38 (m, 1H), 5.67 (dd, J=1.96, 11.1 Hz, 1H), 6.33 (dd, J=1.96, 17.0 Hz, 1H), 6.44 (dd, J=6.36, 8.24 Hz, 1H), 7.14 (dd, J=11.1, 17.0 Hz, 1H), 7.37 (br, 2H), 8.10 (s, 1H); 13C NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ36.7, 59.8, 68.8, 81.6, 85.8, 116.7, 120.6, 122.3, 145.3, 147.6, 147.6, 150.0, 153.7.
【0054】
化合物(4)の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(3) (210 mg, 0.757 mmol)とテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) (175 mg, 0.151 mmol)のDMF溶液 (20 ml)に4-ブロモアセトフェノン(226 mg, 0.114 mmol)、TEA (2 ml)を加え、80℃で16時間攪拌した。溶媒を減圧留去して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1)で精製して化合物(4)(151 mg, 0.382 mmol, 51 %)を得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ2.09 (m, 1H), 2.22 (s, 1H), 2.61 (s, 3H), 2.91 (m, 1H), 3.62 (m, 1H), 3.72 (m, 1H), 3.91 (m, 1H), 4.54 (m,, 1H), 5.35 (d, J = 4.34 Hz, 1H), 5.50(dd, J = 4.31, 6.88 Hz, 1H), 7.41 (br, 1H), 7.80 (m, 2H), 7.91 (d, J = 8.45 Hz, 2H), 8.00 (d, J = 8.45 Hz, 2H), 8.81 (s, 1H); 13C NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ26.7, 38.8, 61.6, 70.6, 83.4, 87.8, 117.7, 119.2, 127.6, 128.7, 134.6, 136.5, 140.1, 147.3, 149.9, 152.1, 155.7, 197.8.
【実施例2】
【0055】
下記スキーム2に従って本発明のプリン塩基誘導体(7)を合成した。
【化12】

【0056】
化合物(5)の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(2) (880 mg, 2.67 mmol)、よう化銅 (53mg, 0.278 mmol)及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) (39.0 mg, 0.337 mmol) のDMF溶液 (20 ml) にTEA (1 ml)、TMSアセチレン (0.500 ml, 3.61 mmol) を加え、50℃で30分間攪拌した。反応液を減圧下濃縮して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1)で精製して化合物(5) (738 mg, 2.13 mmol, 79.7 %)を得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ0.30 (s, 9H), 2.21 (m, 1H), 3.08 (m, 1H), 3.52 (m, 1H), 3.67 (m, 1H), 3.89 (m, 1H), 4.65 (m, 1H), 5.32 (m, 2H), 6.41 (dd, J=6.74, 7.76 Hz, 1H), 7.63 (br, 2H), 8.16 (s, 1H); 13C NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ0.0, 38.4, 62.8, 71.9, 85.5, 88.9, 94.2, 102.8, 119.9, 132.9, 149.0, 154.3, 156.8.
【0057】
化合物(6)の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(5)(738 mg, 2.13 mmol)のTHF溶液(10 ml)にTBAF (668 mg, 2.55 mmol)を加え、60分間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1) で精製して化合物(6) (438 mg, 1.59 mmol, 74.9 %) を得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ2.21 (m, 1H), 3.16 (m, 1H), 3.51 (m, 1H), 3.66 (m, 1H), 3.90 (m, 1H), 4.47 (m, 1H), 5.03 (s, 1H), 5.35 (dd , J=4.32, 8.28 Hz, 2H), 6.43 (dd, J=6.34, 8.19 Hz,1H), 7.64 (br, 2H), 8.17 (s, 1H); 13C NMR (DMSO-d6, 400MHz)δ36.5, 61.2, 70.3, 71.8, 84.3, 86.4, 87.4, 118.1, 131.4, 147.4, 152.5, 155.2.
【0058】
化合物(7)の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(6)(107 mg, 0.389 mmol), 4-ブロモアセトフェノン (209 mg, 1.05 mmol)、よう化銅(31.0 mg, 0.162 mmol)及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) (112 mg, 0.0969 mmol) のDMF溶媒 (5 ml) にTEA (2 ml) を加え、80 oC で30分間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (クロロホルム/メタノール=10/1) で精製して化合物(7)(89.3 mg, 0.227 mmol, 58.4 %)を得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ2.31 (m, 1H), 2.63 (s, 3H), 3.17 (m, 1H), 3.53 (m, 1H), 3.68 (m, 1H), 3.92 (m, 1H), 4.53 (m, 1H), 5.30 (dd, J=4.56 Hz, 7.48 Hz, 1H), 5.38 (d, J=4.48Hz, 1H), 6.56 (m, 1H), 7.69 (br, 2H), 7.84 (d, J=8.48Hz, 2H), 8.06 (d, J=8.48Hz, 2H), 8.20 (s, 1H); 13C NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ26.8, 37.8, 62.1, 71.1, 81.1, 85.0, 88.2, 93.3, 119.7, 124.3, 128.6, 132.1, 132.3, 137.3, 148.6, 153.6, 156.1, 197.3.
【実施例3】
【0059】
下記スキーム3に従って本発明のプリン塩基誘導体(9)、(10)及び(11)を合成した。
【化13】

【0060】
化合物(8)の合成
Tetrahedron Letters, 2009, 50, 1403-1406に記載されている合成法に従って化合物(8)を合成した。
【0061】
化合物(9)の合成
化合物(8)(300 mg, 0.86 mmol) をDMF (10 ml) に溶解し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム (99 mg, 0.086 mol)、4-ブロモアセトフェノン (259 mg, 1.3 mmol) を加え100 ℃で6時間撹拌した。TLCで化合物(8)の消失を確認した後、反応液に少量のシリカゲル(Wako-gel C-200)を加え溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1) で粗精製した。これをメタノール/28%アンモニア水1/1に溶解し、50 ℃で一晩撹拌した。ロータリーエバポレーターでメタノールを減圧留去して化合物(9) (239 mg、0.58 mmol, 67 %)を得た。
2.11 (m, 1H), 2.50-2.61 (complex, 4H), 3.67-3.74 (complex, 2H), 3.85 (m, 1H), 4.47 (m, 1H), 5.27 (dd, 1H, J = 5.1 5.1 Hz), 5.31 (d, 1H, J = 4.1 Hz), 6.40 (dd, 1H, J = 6.2, 8.9 Hz), 6.55 (bs, 2H), 7.60 (d, 1H, J = 15.8 Hz), 7.69 (d, 1H, J = 15.8 Hz),7.85 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 7.95(d, 2H, J = 8.5 Hz), 10.71 (bs, 1H,); 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz)δ26.6, 40.6, 60.9, 69.9, 82.3, 87.1, 118.2, 119.9, 127.3 (2C), 128.6 (2C), 132.1, 136.0, 140.6, 144.8, 150.4, 156.9, 157.2, 197.2.
【0062】
化合物(10)の合成
化合物(8)(300 mg, 0.86 mmol)をDMF (10 ml) に溶解し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム (99 mg, 0.086mol)、4-ブロモベンゾニトリル (237 mg, 1.3 mmol) を加え100 ℃で4時間撹拌した。TLCで化合物(8)の消失を確認した後、反応液に少量のシリカゲル(Wako-gel C-200)を加え溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1)で粗精製した。これをメタノール/28%アンモニア水1/1に溶解し、50 ℃で一晩撹拌した。ロータリーエバポレーターでメタノールを減圧留去し、化合物(10)(210 mg、0.53 mmol, 62 %)を得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ2.11 (m, 1H), 2.57 (m, 1H), 3.67-3.83 (complex, 2H), 3.84 (m, 1H), 4.46 (m, 1H), 5.27 (dd, 1H, J = 5.3 5.3 Hz), 5.31 (d, 1H, J = 4.1 Hz), 6.40 (dd, 1H, J = 6.1, 8.8 Hz), 6.56 (s, 2H), 7.60 (d, 1H, J = 15.8 Hz), 7.73 (d, 1H, J = 15.8 Hz),7.81 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.91(d, 2H, J = 8.4 Hz), 10.73 (s, 1H); 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz)δ40.0, 61.1, 70.2, 82.5, 87.3, 109.9, 116.9, 119.0, 119.5, 127.8 (2C), 130.8, 132.5 (2C), 141.0, 143.5, 151.8, 153.5, 156.4.
【0063】
化合物(11)の合成
化合物(8)(300 mg, 0.86 mmol)をDMF (10 ml) に溶解し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム (99 mg, 0.086mol)、4-ブロモスチルベン (337 mg, 1.3 mmol) を加え100 ℃で4時間撹拌した。TLCで化合物(8)の消失を確認した後、反応液に少量のシリカゲル(Wako-gel C-200)を加え溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1)で粗精製した。これをメタノール/28%アンモニア水1/1に溶解し、50 ℃で一晩撹拌した。ロータリーエバポレーターでメタノールを減圧留去し、化合物(11)(112 mg、0.238 mmol、28 %)を得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ2.11 (m, 1H), 2.55 (m, 1H), 3.65-3.80 (complex, 2H), 3.84 (m, 1H), 4.46 (m, 1H), 5.22 (dd, 1H, J = 5.4 5.4 Hz), 5.30 (d, 1H, J = 4.2 Hz), 6.40 (dd, 1H, J = 6.3, 8.8 Hz), 6.56 (bs, 2H), 7.26-7.73 (complex, 13H), 10.69(s, 1H); 13C NMR (DMSO-d6, 100 MHz)δ40.1, 61.2, 70.2, 82.4, 87.2, 115.7, 116.6, 126.5 (2C), 126.8 (2C), 127.7 (2C), 128.0, 128.6, 128.7 (2C), 132.5, 135.6 137.0, 137.0, 144.4, 151.7, 153.3, 156.3.
【実施例4】
【0064】
下記スキーム4に従って本発明のプリン塩基誘導体(13)、(15)及び(16)を合成した。
【化14】

【0065】
化合物(13)の合成
8-ブロモ-2'-デオキシグアノシン(12)(1.5080g, 4.347 mmol)をDMF (50 ml) に溶解しPd(PPh3)4 (1.0046 g, 0.869 mmol)及びCuI (163.7 mg, 0.869 mmol) を加えた。これにトリメチルシリルアセチレン(0.9 ml, 6.522 mmol)及びTEA(3 ml)を加え、50 ℃で3時間加熱した。溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH = 10/1)で精製し化合物(13)(1326 mg, 84%)を得た。
1H NMR (CD3OD, 400 MHz) 0.20 (s 9H), 2.14 (m 1H), 2.98 (m 1H), 3.68 (m 1H), 3.93 (m 1H),3.93 (m 1H), 4.78 (m 1H), 6.35 (m 1H), 13C NMR (CD3OD, 100 MHz) 9.8, 40.0, 64.7, 74.0, 87.7, 90.3, 94.2, 103.8, 119.2, 132.9, 152.5, 156.1, 159.1.
【0066】
化合物(14)の合成
化合物(13)(1.7596 g, 4.846 mmol)のTHF (40 ml)溶液にテトラブチルアンモニウムフルオリド(1.267 g)を加え室温で2時間撹拌した。析出物をろ過し、乾燥させて化合物(14)(1.1309 g, 80 %)を得た。
1H NMR (DMSO-d6 400 MHz) 2.11 (m 1H), 3.07 (m 1H), 3.51 (ddd 1H J = 5.6, 5.6, 11.7),3.62 (ddd 1H J = 5.6, 5.6, 11.7),3.80 (m 1H),4.37 (m 1H),4.79 (s 1H),4.90 (m 1H),5.28 (d 1H J = 4.1),6.25 (dd 1H J = 6.6, 8.1),6.58 (br 2H), 10.88 (br 1H); 13C NMR (DMSO-d6 100 MHz) 37.4, 62.4, 66.9, 71.5, 74.2, 84.5, 84.8, 88.2, 117.7, 127.1, 150.6.
【0067】
化合物(15)の合成
化合物(14)(101.4 mg, 0.348 mmol)と4'ブロモアセトフェノン(97.1 mg, 0.488 mmol)の DMF(5 ml)溶液に Pd(PPh3) (80.5 mg, 0.0697 mmol)、CuI (13.3 mg, 0.0697 mmol)及びTEA (0.5 ml) を加えた。室温で3時間撹拌した後濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH = 8/1)で精製して化合物(15)(77mg, 54 %)を得た。
1H NMR (DMSO-d6 400 MHz) 2.18 (m 1H), 2.93 (m 1H), 3.23 (s 3H), 3.63 (m 1H),3.82 (m 1H), 3.81 (m 1H), 4.39 (m 1H), 4.79 (m 1H), 5.31 (m 1H), 6.35(d 1H J = 6.4, 8.0), 6.59 (br 2H), 7.78 (d 2H J =8.4), 8.04 (d 2H J =8.4), 10.90(br 1H)
【0068】
化合物(16)の合成
化合物(14)(135.3 mg, 0.465 mmol)と4'ブロモベンゾニトリル(118.4 mg, 0.651 mmol)のDMF(5 ml)溶液にPd(PPh 3)(107.4 mg,0.093 mmol)、CuI(17.7 mg, 0.093 mmol)及びTEA(0.5 ml)を加えた。室温で3時間撹拌した後濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH = 8/1)で精製して化合物(16)(110.7 mg, 61 %)を得た。
1H NMR (DMSO-d6 400 MHz) 2.19 (ddd 1H J = 3.4, 6.8, 13.3), 3.02 (m 1H), 3.51(m 1H), 3.63 (m 1H), 3.81(m 1H),4.43 (m 1H),4.87 (m 1H), 5.30 (m 1H), 6.35 (dd 1H J = 6.4, 8.0), 6.66 (br 2H), 7.84 (d 2H J = 6.7), 7.98 (d 2H J = 8.5), 10.90 (br 1H)
【実施例5】
【0069】
下記スキーム5に従って本発明のプリン塩基誘導体をDNA鎖に導入した。
【化15】

【0070】
化合物(10)の合成
実施例3で得た化合物(9)(65 mg 0.16 mmol)のメタノール溶液(20ml)にN,N-メチルホルムアミドジエチルアセタールを0.5 ml加え、60 ℃で5時間撹拌した。TLCで化合物(9)の消失を確認し、反応液にヘキサン10 mlを加え、沈殿物を濾過して化合物(10)(62 mg, 0.13 mmol)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6)δ2.18 (m, 1H), 2.51, (s, 3H), 3.05 (s, 3H), 3.18 (s, 3H), 3.67-3.75 (complex, 2H), 3.84 (m, 1H), 4.54 (m, 1H), 5.20 (dd, 1H, J = 5.4 5.4 Hz), 5.38 (d, 1H, J = 4.4 Hz), 6.40 (dd, 1H, J = 7.0, 7.0 Hz), 7.65 (d, 1H, J = 15.8 Hz), 7.70 (d, 1H, J = 15.8 Hz), 7.87 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 7.96(d, 2H, J = 8.5 Hz), 11.46 (s, 1H,); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6)δ26.6, 34.6 (2C), 40.6, 60.9, 69.9, 82.3, 87.1, 118.1, 119.8, 127.2 (2C), 128.6 (2C), 132.1, 136.0, 140.6, 144.8, 150.4, 156.9, 157.2, 158.0, 197.2.
【0071】
化合物(11)の合成
化合物(10)(62 mg, 0.13 mmol)のピリジン溶液 (5 ml) に、触媒量のN,N-ジメチルアミノピリジン及びジメトキシトリチルクロリドを加え、室温で1時間撹拌した。これにメタノール (1 ml) を加え、ロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール/トリエチルアミン=100/2/1)で精製し化合物(11)(60 mg) を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6)δ2.29 (m, 1H), 2.50, (s, 3H), 3.05 (s, 3H), 3.07 (s, 3H), 3.05-3.25 (complex, 3H), 3.65 ( s, 6H), 3.90 (m, 1H), 4.66 (m, 1H), 5.43 (d, 1H, J = 4.0 Hz), 6.62-6.75 (complex, 5H), 7.11-7.26 (complex, 11H) 7.65 (d, 1H, J = 15.8 Hz), 7.70-8.00 (complex 5H), 8.42 (s, 1H), 11.50 (s, 1H) ; 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6)δ26.6, 34.6 (2C), 40.7, 54.8, 54.8, 63.5, 70.1, 79.1, 82.6, 85.0, 112.8 (4C), 117.4, 120.4, 126.4, 127.1 (2C), 127.5, 128.6(2C), 129.4, 129.4, 132.0, 135.4, 136.0, 140.5, 144.8, 145.2, 149.9, 156.4, 157.3, 157.6, 157.7, 157.8, 197.1.
【0072】
DNA合成
化合物(11)(60 mg)をアセトニトリル(1 ml) に懸濁させ、トリエチルアミン100μlを加えた。これに、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイトを50μl加えた。TLCで化合物(11)の消失を確認し、酢酸エチル10 mlを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10 mlを3回, 飽和食塩水10mlで洗い、無水Na2SO4で脱水後ロータリーエバポレーターで濃縮し、黄色オイル状の粗精製物を得た。これをアセトニトリル600 μlに溶解させ、DNA自動合成機(製造元:アプライドバイオシステムズ社、型番:3400DNAシンセサイザー)で4種類のDNA鎖へ導入した。
【0073】
得られたオリゴヌクレオチドDNA(T-rich、C-rich、プローブ1(probe 1)及びプローブ2(probe 2))を用いたときのUV吸収スペクトル、蛍光スペクトル及び励起スペクトルを次のようにして測定した。測定結果を図1〜4に示す。
【0074】
[1]UV吸収スペクトルの測定
得られたオリゴヌクレオチドDNAを、0.1Mの濃度でNaClを含む50mMリン酸バッファーに2.5μMの濃度になるように溶解した。これに相補的な配列を有するターゲットDNAを2.5μMの濃度になるように各種加え、紫外可視分光光度計UV−2550(株式会社島津製作所)にてUV吸収スペクトルを測定した。
【0075】
[2]蛍光スペクトルの測定
得られたオリゴヌクレオチドDNAを、0.1Mの濃度でNaClを含む50mMリン酸バッファーに2.5μMの濃度になるように溶解した。これに相補的な配列を有するターゲットDNAを2.5μMの濃度になるように各種加え、蛍光光度計RF−5300PC(株式会社島津製作所)にて蛍光スペクトルを測定した(T-rich及びC-richの測定では380 nmで、プローブ1及びプローブ2の測定では370 nmでそれぞれ励起させた)。
【0076】
[3]励起スペクトルの測定
得られたオリゴヌクレオチドDNAを、0.1Mの濃度でNaClを含む50mMリン酸バッファーに2.5μMの濃度になるように溶解した。これに相補的な配列を有するターゲットDNAを2.5μMの濃度になるように各種加え、蛍光光度計RF−5300PC(株式会社島津製作所)にて蛍光スペクトルを測定した(T-rich及びC-richの測定は540 nmで、プローブ1及びプローブ2の測定は535 nmでそれぞれモニターした)。
【0077】
図1は、オリゴヌクレオチドDNA(T-rich)に各種相補鎖(N = A,G,C,T又はバルジ(bulge))を加えたときのUV吸収スペクトル(a)、蛍光スペクトル(b)及び励起スペクトル(c)を比較したものである。
T-rich 5'-CGCAATXTAACGC-3'(配列番号1)
相補鎖 5'- GCGTTANTAACGC-3' N = A,G,C,T,バルジ(bulge)(配列番号2)
図1(a)のUVスペクトルの結果から各DNAの量が揃っていることがわかる。また、図1(b)及び(c)の蛍光励起スペクトルの結果から蛍光ヌクレオシドがバルジ構造(N = バルジ(bulge))を形成するときに強い発光が見られることがわかる。
【0078】
図2は、オリゴヌクレオチドDNA(C-rich)に各種相補鎖(N = A,G,C,T又はバルジ(bulge))を加えたときのUV吸収スペクトル(a)、蛍光スペクトル(b)及び励起スペクトル(c)を比較したものである。
C-rich 5'-CGCAACXCAACGC-3'(配列番号3)
相補鎖 5'- GCGTTGNGAACGC-3' N = A,G,C,T,バルジ(bulge)(配列番号4)
図2(a)のUVスペクトルの結果から各DNAの量が揃っていることがわかる。また、図2(b)及び(c)の蛍光励起スペクトルに見られるように、蛍光ヌクレオシドの両端の配列がTのときには良好の結果が得られるが、両端がCの時にはバルジ構造での強い発光が得られない。このことから、プローブの設計の際に配列を選んでプローブを設計する必要があることがわかる。
【0079】
図3は、オリゴヌクレオチドDNA(probe 1)にターゲットODNを加えたときのUV吸収スペクトル(a)及び蛍光励起スペクトル(b)を比較したものである。
probe 1 5'-GTATCCAXAGATTGAA-3'(配列番号5)
ターゲットODN 3'-CATAGGT TCTAACTT-5'(配列番号6)
図3(a)のUVスペクトルの結果から各DNAの量が揃っていることがわかる。また、図3(b)の蛍光励起スペクトルに見られるように、蛍光ヌクレオシドがバルジ構造を形成するようにプローブを設計することで、プローブ単独のとき(シングルストランド:ss)とターゲットDNAが存在するとき(ダブルストランド:ds)の違いを蛍光発光で区別することが可能である。ターゲットDNAが存在しないときには発光は弱いが、ターゲットDNAを加えると強い発光が見られる。更に発光波長も大きく変化することがわかる。
【0080】
図4は、オリゴヌクレオチドDNA(probe 2)にターゲットODNを加えたときのUV吸収スペクトル(a)及び蛍光励起スペクトル(b)を比較したものである。
probe 2 5'-CTCAGTXTCTGGTCAATC-3'(配列番号7)
ターゲットODN 3'-GAGTCA AGACCAGTTAG -5'(配列番号8)
図4(a)のUVスペクトルの結果から各DNAの量が揃っていることがわかる。また、図4(b)の蛍光励起スペクトルに見られるように、蛍光ヌクレオシドがバルジ構造を形成するようにプローブを設計することで、プローブ単独のときとターゲットDNAが存在するときの違いを蛍光発光で区別することが可能である。ターゲットDNAが存在しないときには発光は弱いが、ターゲットDNAを加えると強い発光が見られる。更に発光波長も大きく変化することがわかる。
【0081】
図5は、オリゴヌクレオチドDNA(probe 1及びprobe 2)がそれぞれ単独のときと、ターゲットDNAが存在するときの蛍光発光の色を比較した写真である(室温でトランスイルミネーターを用い、366nmのUVを下から照射してデジカメで撮影した)。図5から明らかなようにターゲットDNAの有無により発光波長が大きく変化し、ターゲットDNAの有無が色の違いで識別可能であることがわかる。
以上のとおり、本発明の好ましい態様によれば、本発明のプリン塩基誘導体をポリヌクレオチドに導入して用いることで、ターゲットDNAとの相互作用による極性環境の変化を蛍光発光波長の変化、望ましくは蛍光発光の色の違いで検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のプリン塩基誘導体は周囲の極性環境の違いにより蛍光発光波長を変化させることができる。本発明の好ましい態様によれば本発明のプリン塩基誘導体は蛍光発光波長の変化が色の違いになって現れるので、本発明のプリン塩基誘導体をポリヌクレオチドに導入することで、対面塩基の種類を識別するプローブとして利用可能である。本発明のプローブは遺伝子検出用プローブあるいはタンパク質又は細胞内の局所的な極性環境の調査用プローブなどとして実用化可能である。
【配列表フリーテキスト】
【0083】
配列番号1:合成DNA
配列番号2:合成DNA
配列番号3:合成DNA
配列番号4:合成DNA
配列番号5:合成DNA
配列番号6:合成DNA
配列番号7:合成DNA
配列番号8:合成DNA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)又は(II):
【化16】

[式中、環A1及び環A2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、2価又は3価の芳香環であり、X1及びX2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、Y1及びY2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボン酸アミド基、シアノ基、チオール基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びC1〜C20炭化水素基からなる群より選ばれる置換基であり、m及nは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、1又は2であり、R1及びR2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又は水酸基である。
但し、次の場合を除く:
(a)環A1がフェニレン基であり、X1が炭素−炭素三重結合であり、Y1がシアノ基であり、mが1であり、R1が水酸基である場合、
(b)環A2がフェニレン基であり、X2が炭素−炭素二重結合であり、Y2がシアノ基であり、nが1であり、R2が水酸基である場合、
(c)環A2がフェニレン基であり、X2が炭素−炭素三重結合であり、Y2がアセチル基であり、nが1であり、R2が水酸基である場合。]
で示されるC8位置換プリン塩基誘導体。
【請求項2】
前記R1及びR2が、水素原子である、請求項1記載のプリン塩基誘導体。
【請求項3】
前記環A1及びA2が、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基及びピレニレン基からなる群より選ばれるものである、請求項1又は2記載のプリン塩基誘導体。
【請求項4】
前記環A1及びA2が、フェニレン基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリン塩基誘導体。
【請求項5】
前記置換基Y1及びY2が、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボン酸アミド基、シアノ基及びベンジルビニル基からなる群より選ばれるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプリン塩基誘導体。
【請求項6】
前記置換基Y1及びY2が、アセチル基又はシアノ基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプリン塩基誘導体。
【請求項7】
下記式のいずれかで示される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプリン塩基誘導体。
【化17】

【請求項8】
極性環境の変化に応答して蛍光発光波長が変化するものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプリン塩基誘導体。
【請求項9】
下記式(III)又は(IV):
【化18】

[式中、環A1及び環A2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、2価又は3価の芳香環であり、X1及びX2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、炭素−炭素二重結合(−C=C−)又は炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であり、Y1及びY2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボン酸アミド基、シアノ基、チオール基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びC1〜C20炭化水素基からなる群より選ばれる置換基であり、m及nは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、1又は2であり、R1及びR2は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子又は水酸基であり、s及びtは、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、1、2又は3である。
但し、次の場合を除く:
(a)環A1がフェニレン基であり、X1が炭素−炭素三重結合であり、Y1がシアノ基であり、mが1であり、R1が水酸基である場合、
(b)環A2がフェニレン基であり、X2が炭素−炭素二重結合であり、Y2がシアノ基であり、nが1であり、R2が水酸基である場合、
(c)環A2がフェニレン基であり、X2が炭素−炭素三重結合であり、Y2がアセチル基であり、nが1であり、R2が水酸基である場合。]
で示されるヌクレオチド誘導体。
【請求項10】
前記R1及びR2が、水素原子である、請求項9記載のヌクレオチド誘導体。
【請求項11】
ポリヌクレオチドにおいて少なくとも1つのヌクレオチドが請求項9又は10記載のヌクレオチド誘導体で置換されてなるポリヌクレオチド誘導体。
【請求項12】
請求項11記載のポリヌクレオチド誘導体を含むプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−37796(P2011−37796A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188664(P2009−188664)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】