説明

CD4+細胞のHIV−1感染を防ぐ方法

【課題】HIV-1とCD4細胞との融合を阻害する方法の提供。
【解決手段】 CD4細胞に対して、ケモカイン・レセプターと結合できる非ケモカイン作用剤を、HIV-1のCD4細胞への融合が阻害される量および条件下で接触させることを具備した方法。CD4細胞のHIV-1感染を阻害する方法であって、 CD4細胞に対して、ケモカイン・レセプターと結合できる非ケモカイン作用剤を、HIV-1のCD4細胞に対する融合が阻害される量および条件下で接触させることにより、HIV-1感染を阻害することを具備する方法。また、ケモカイン・レセプターと結合できかつHIV-1のCD4細胞への融合を阻害できる非ケモカイン作用剤。HIV-1のCD4細胞に対する融合を抑制するに有効な量の、ケモカイン・レセプターと結合できかつHIV-1のCD4細胞への融合を阻害する非ケモカイン作用剤と、薬学的に許容可能な担体とを含む薬学的組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、1996年6月25日に出願された親出願である合衆国出願番号08/673,682の一部継続出願であり、この親出願はまた、1996年6月14日に出願された祖父出願である合衆国出願番号08/663,616号の一部継続出願であり、この祖父出願は更に、1996年4月2に出願された合衆国出願番号08/627,684号の一部継続出願である。これら先の出願の内容は、ここでの引用により、本明細書の一部として本願に取り込まれる。
【0002】
本出願の全体を通して、様々な参照文献が括弧内に引用されている。これら刊行物の開示は、本発明の族ずる技術の状態をより完全に記載するために、その全体が本明細書の一部をなすものとして本願に組み込まれる。これら引用の完全な書誌的引用は各実験シリーズの末尾に列記してある。
【0003】
〔発明の背景〕
ケモカイン(chemokines)類は、リンパ球および他の細胞によって分泌される分子量8-10 KDaの関連した可溶性蛋白のファミリーであって、標的細胞表面のレセプターに結合して、例えば、炎症過程にある白血球を活性化し流動化させる。近年、コッチら(Cocchi et al.)によって、ケモカイン類のRANTES、 MIP-1α及びMIP-1βは CD8Tリンパ球によって産生される因子であって、それらはHIV-1のマクロファージ向性初代単離物による感染を阻害するが、HIV-1ウイルスの実験室適用株による感染は阻害しない事が実証された(1)。これらのケモカインは、ケモカイン類のC-C群の一員である。このように名づけたのは、それらが隣り合うシステイン残基を担持しているからであって、システイン残基が一つのアミノ酸で分離されているC-X-C群とは異なる(2)。コッチらは、HIV-1 RNAの発現がケモカインによる処置で抑制される事を発見したが、これらの分子の活性部位を特定していない。
【0004】
HIV-1エンベロープ糖蛋白に媒介された膜融合の共鳴エネルギー転移(RET)分析を使用して、HIV-1JR−FLの初代マクロファージ向性単離物から得られるエンベロープ糖蛋白によって媒介される融合がケモカインによって特異的に阻害されるかどうかを、実験室順応Tリンパ球親和性株HIV-1LAI由来のエンベロープ糖蛋白に媒介される融合と比較して決定した。以下で説明するように、これはまさにその通りである事が実証された。この事によって、いくつかのケモカインのレセプターは、HIV-1感染に必要とされる融合補助分子であることが実証された。以前の研究において、当該ウイルスが侵入するためには、HIV-1レセプターCD4に加えて、未確認の細胞表面分子が必要である事が指摘されている。CD4がHIV-1の付着に必要であるのに対して、この補助分子は、侵入の膜融合工程で必要とされる。これらの補助分子は、一般にヒト細胞上にのみ発現される。 それゆえ、HIV-1は非ヒトCD4細胞に感染しないのである(3−6)。更に、これらを(ポリエチレングリコールを使用して)ヒトCD4細胞と融合する事によって、非ヒトCD4細胞を補完し、HIV-1エンベロープ介在膜融合に対して応答能のあるターゲットであるヘテロカリオン(異核共存体)を生じさせることが可能である(7、8)。これらの研究は、該ウイルスの実験室順応Tリンパ球親和性株を使用して行なわれてきた。
【0005】
ある場合には、融合補助分子がヒトCD4細胞のサブセット上に見られ、特殊な向性を持つHIV-1単離物による感染に必要のようにみえる。例えば、HIV-1JR−FLのようなHIV-1のマクロファージ向性初代株は、HIV-1LAIのような実験室順応Tリンパ球親和性株と比較すると、補助分子に対しては異なる要求性を有するかもしれない。この現象によって、HIV-1株の間の向性の相違を説明できるであろう。
【0006】
本発明は、HIV-1感染の一連の新治療法を包含する。ケモカインは、HIV-1侵入の融合工程で働き、該ウイルスの実験室順応Tリンパ球親和性株によってではなく、マクロファージ向性初代ウイルス単離物のエンベロープ糖蛋白により媒介される膜融合を特異的に阻害することが初めて実証された。該ウイルスの初代マクロファージ向性単離物は、ウイルスの伝染に通常関わる株であり、HIV-1感染の病因において特に重要性を持ち得るため、特に重要である。
【0007】
これらの結果は、HIV-1のエンベロープに媒介された膜融合の共鳴エネルギー転移(RET)分析を使用して得られた。更に、この分析を使用して、HIV-1のエンベロープ糖蛋白媒介性膜融合を阻害し、それによってウイルスを中和し、かつ炎症性反応を誘導しない、ケモカイン断片および修飾ケモカインを含む非ケモカイン類を特定した。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明は、HIV-1とCD4との融合を阻害する方法を提供する。該方法は、CD4 細胞と、ケモカイン・レセプターに結合できる非ケモカイン作用剤とを、HIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害できるような量と条件下で接触させる事からなる。
【0009】
本発明はまた、CD4細胞のHIV-1感染を阻害する方法を提供する。該方法は、CD4細胞と、ケモカイン・レセプターに結合できる非ケモカイン作用剤とを、HIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害できるような量と条件下で接触させ、それによってHIV-1感染を阻害する事からなる。
【0010】
本発明は更に、ケモカイン・レセプターと結合する事ができ、かつHIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害できるような非ケモカイン剤を提供する。
【0011】
本発明は、フュージン(fusin)と結合する事ができ、かつ感染を阻害する事ができる作用剤を提供する。一つの態様において、該作用剤はオリゴペプチドである。別の態様において、該作用剤はポリペプチドである。また別の態様において、該作用剤は抗体又は抗体の一部である。別の態様において、該作用剤は非ペプチジル剤である。
【0012】
加えて、本発明は、HIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害するのに有効な量の、上記非ケモカイン作用剤又はフュージンと結合できる作用剤と、薬学的に許容できる担体とを含有する薬学的組成物を提供する。
【0013】
本発明は、ケモカイン・レセプターと結合して、HIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害することができる物質を提供する。該組成は、ケモカイン・レセプター以外のCD4細胞細胞表面レセプターと結合できるリガンドに連結された非ケモカイン剤を含み、該非ケモカイン剤がケモカイン・レセプターに結合しても、他のレセプターに対する前記リガンドの結合は阻害されない。
【0014】
本発明はまた、HIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害するに有効な量の上記組成物と、薬学的に許容可能な担体とを含有する薬学的組成物を提供する。
【0015】
本発明はケモカイン・レセプターに結合する事ができ、かつHIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害する物質であって、非ケモカイン作用剤のインビボでの半減期を増大させる事ができる化合物に連結された非ケモカイン剤を含む物質を提供する。
【0016】
本発明はまた、HIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害するのに有効量の、非ケモカイン作用剤のインビボでの半減期を増大させる事ができる化合物に連結された非ケモカイン剤と、薬学的に挙用可能な担体とを含有する薬学的組成物を提供する。
【0017】
本発明は、対象におけるHIV-1感染の可能性を減らす方法であって、当該対象に対して、上記の薬学的組成物を投与する事を具備した方法を提供する。本発明はまた、上記の薬学的組成物を投与することを具備した、対象におけるHIV-1感染を治療する方法を提供する。
【0018】
本発明はまた、非ケモカイン剤がHIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害できるかどうかを決定する方法を提供する。該方法は、(a)第一の色素で標識されたCD4細胞(i)と、細胞表面にHIV-1エンベロープ糖蛋白を発現する第二の色素で標識された細胞(ii)とを、前記作用剤の過剰存在下において、表面にHIV-1エンベロープ糖蛋白を発現する細胞とCD4細胞との融合を前記作用剤の不存在下で可能にする条件のもとで接触させる工程(ここで、前記第一及び第二の色素は、これら色素間での共鳴エネルギーの転移を可能にするように選択される)と;(b)工程(a)の産物を、融合が起ったときに共鳴エネルギー転移を生じる条件に曝す工程と;(c)前記作用剤の不存在下での共鳴エネルギー転移と比較して共鳴エネルギー転移の減少があるかどうかを決定し、該エネルギー転移の減少によって、該作用剤がHIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害できる事が示される工程とを具備する。
【0019】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、HIV-1とCD4細胞との融合を阻害する方法であって、 CD4細胞に対して、ケモカイン・レセプターと結合できる非ケモカイン作用剤を、HIV-1のCD4細胞への融合が阻害される量および条件下で接触させることを具備した方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、CD4細胞のHIV-1感染を阻害する方法であって、 CD4細胞に対して、ケモカイン・レセプターと結合できる非ケモカイン作用剤を、HIV-1のCD4細胞に対する融合が阻害される量および条件下で接触させることにより、HIV-1感染を阻害することを具備する方法を提供する。
【0021】
本発明において、ケモカインとは、RANTES、MIP-1α、MIP-1β、又はHIV-1感染を阻止する他のケモカインを意味する。ケモカイン・レセプターとは、 RANTES、MIP-1α、MIP-1β、又はHIV-1感染を阻止する他のケモカインを結合する事が可能なレセプターを意味する。
【0022】
本出願を通して、レセプターの「フュージン」はまた、CXCR4とも名づけられ、ケモカイン・レセプターC-C CKR5もCCR5と命名される。
【0023】
本出願で使用されるHIV-1は、特定しない限りは、その臨床的特徴を保持しているHIV-1ウイルスの臨床的単離物、または初代もしくはフィールド単離物を意味するものである。HIV-1の臨床的単離物は初代末梢血単核細胞中で継代させても良い。該HIV-1の臨床学的単離物は、マクロファージ向性である。
【0024】
本発明の非ケモカイン作用剤は、ケモカイン・レセプターと結合できかつHIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害できる。 該非ケモカイン作用剤には、ケモカインの断片、誘導体および類縁体が含まれるが、これには制限されない。しかしながら天然のケモカインは含まれない。該非ケモカイン作用剤には、ケモカインの断片、誘導体および類縁体、あるいは、他の分子と連結されているケモカインの断片、誘導体および類縁体を含む融合分子の多様な形態が含まれる。
【0025】
本発明の一つの態様においては、該非ケモカイン作用剤はオリゴペプチドである。別の態様では、該非ケモカイン作用剤はポリペプチドである。また別の態様では、該非ケモカイン作用剤は抗体又は抗体の一部である。ケモカイン・レセプターに対する抗体は、手順の決まった実験によって簡単に生成できる。ケモカイン・レセプターに結合する事ができる抗体の断片を合成することも、当該技術レベルの範囲内である。さらに別の態様では、該非ケモカイン作用剤は非ペプチジル作用剤である。
【0026】
純ペプチジル組成である非ケモカイン作用剤は、固相法(Merrifield, 1966)によって化学的に合成されるか、或いは原核菌又は真核菌系のいづれかにおいて組み替え技術を使用して産生できる。該合成および組み替え方法は、従来技術で既知である。
【0027】
ビオチン又は他のペプチジル基を含む非ケモカイン作用剤は、合成又は組換えケモカイン作用剤又は非ケモカイン作用剤を化学的に修飾することによって調製できる。化学的修飾の一つの方法には、そのN末端アミノ酸としてセリン又はスレオニンを有するケモカイン又は非ケモカイン作用剤に存在する、2−アミノアルコールの過ヨウ素酸塩酸化があげられる(Geophegan and Stroh, 1992)。その結果得られるアルデハイド基を使用して、ペプチジル又は非ペプチジル基を、還元性アミノ化、ヒドラジン化又はほかの当該技術者に既知の化学技法によって、酸化されたケモカイン又は非ケモカイン作用剤に連結することができる。
【0028】
ここで使用する蛋白質のN末端とは、プロセッシングされた後の蛋白の末端を意味する。開裂可能なシグナル配列を含む分泌性蛋白の場合、分泌性蛋白のN末端は、シグナルペプチドの開裂後の末端になるべきである。
【0029】
本発明は、これらの非ケモカイン作用剤を特定する方法を提供する。ケモカイン・レセプターに結合し、HIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害する非ペプチジル作用剤を含むこのような作用剤を特定する一つの方法として、次の分析方法の使用が挙げられる: 1)可溶性CD4を、HIV-1JR−FL又はHIV-1LAIから得られるビオチン化されたgp120と共にインキュベーションする;2)この複合体を、 CD4を発現しないCCR5又はCXCR4(夫々、 HIV-1JR−FL又はHIV-1LAI gp120s に対して)と共に、候補阻害剤の存在又は不存在下でインキュベートする;3)洗浄し、次にストレプトアビジン・フィコエリスリンと共にインキュベートし、4)洗浄し、その後gp120と結合した量をフロー・サイトメトリー又はフルオロメータを使用して測定し、阻害剤による結合阻害の程度を計算する。
【0030】
上記のビオチン化されたgp120-ストレプトアビジン・フィコエリスリン方法に代って、結合gp120を検出する幾つかの代替方法も使用可能である。例えば、ビオチン化されたgp120の代りに、パーオキシダーゼ接合gp120が使用可能であリ、結合はペルオキシダーゼのための適切な発色性基質を使用して、スペクトロメータの読み出しによって検出できる。
【0031】
本発明はさらに、上記幾つかの方法によって特定される非ケモカイン作用剤を提供する。
【0032】
本発明は、ケモカイン・レセプターに結合でき、HIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害する事ができる非ケモカイン作用剤を提供する。一つの態様では、非ケモカイン作用剤は、ポリペプチドである。さらに別の態様では、このポリペプチドは、ケモカインRANTES(Gong et al., 1996)の断片である。さらに別の態様では、該ポリペプチドは、その配列のN末端アミノ酸を欠くRANTES配列からなっていてもよい。該欠失は、RANTES配列(配列認識番号5)の最初の8つのN 末端アミノ酸でも良い。
【0033】
別の態様では、該ポリペプチドは、その配列のN末端アミノ酸を欠くMIP-1β配列からなっていてもよい。該欠失は、 MIP-1β配列の最初の7、8、 9、 10つのN 末端アミノ酸でも良い。
【0034】
非ケモカイン作用剤のもう一つの態様では、該ポリペプチドは、 アミノ酸又はオリゴペプチドを付加する事によって修飾されたN末端配列を持つMIP-1β配列からなる。別の態様では、N末端のアラニンを除去し、それをセリンあるいはスレオニン、および別のアミノ酸、又はオリゴペプチドあるいは非ペプチジル成分で置換する事で修飾されたN末端配列を有するMIP-1β配列からなる。さらに別の態様では、該別のアミノ酸はメチオニンである。
【0035】
下記の実験の詳細のセクションで述べる様に、HIV-1融合および侵入の共ファクターが特定され、「フユージン」と命名された(Feng et al, 1996)。 この発明は、フユージンと結合でき、感染を阻害できる作用剤を提供する。一つの態様では、該作用剤はオリゴペプチドである。 別の態様では、該作用剤はポリペプチドである。
【0036】
さらなる態様では、該ポリペプチドは、該配列のN末端アミノ酸の欠失を持つSDF-1からなる。該欠失は、SDF-1配列のN 末端アミノ酸の最初の6、7、8、9であっても良い。
【0037】
本発明はまた、上記の非ケモカイン作用剤であって、SDF-1に対して抗拮抗剤効果を生じるようにN末端配列を修飾されたSDF-1配列を具備する作用剤ヲ提供する。修飾の一つには、SDF-1のN末端のグリシンをセリンで置換しビオチンで誘導化する事があげられる。別の修飾では、SDF-1のN 末端グリシンをセリンで置換し、メチオニンで誘導化する事があげられる。さらに別の修飾には、 SDF-1のN 末端に対して、終端グリシンの手前にメチオニンを付加する事があげられる。
【0038】
また別の態様では、 該作用剤は抗体又は抗体の一部である。別の態様では、該作用剤は非ペプチジル作用剤である。
【0039】
フュージンに結合できる該作用剤は、インビトロでフュージンに結合するその能力について、様々な化合物をスクリーニングすることによって特定し得る。
【0040】
フォルクスら(Fowlkes et al.1994)らは、適切な方法を国際出願:PCT/US94/03143、 国際公開WO94/23025に記載している。この内容は、ここでの引用により本明細書の一部をなす参照文献として本願に組み込まれる。簡略に説明すれば、フェロモン系を持つ酵母菌細胞を、酵母フェロモン系蛋白の異種代用物を発現するように加工する。該代用物は、フュージンを取り込み、ある条件下では、該酵母細胞のフェロモン系において対応する酵母フェロモン系蛋白が自然に行う機能を実行する。このような酵母細胞はまた、ペプチドのライブラリーを発現するように加工される。これによって、フュージンを結合するペプチドを含む酵母細胞は、代理酵母フェロモン系蛋白と酵母フェロモン系との相互作用を調節するが、この調節は選択又はスクリーニングが可能な現象である。同様のアプローチを使用して、フュージンおよびケモカイン・レセプターC-C CKR5の両方に結合できる作用剤を特定し得る。
【0041】
本発明はまた、 HIV-1のCD4細胞への融合を阻害するのに有効な量のこのような非ケモカイン作用剤又はフュージンと結合できる作用剤と、薬学的に許容できる担体とを含有する薬学的組成物を提供する。
【0042】
薬学的に許容可能な担体は、当該技術者には周知である。このような薬学的に許容可能な担体には、水性溶液又は非水性溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。非水性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物性油(例えばオリーブ油)、および注入可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)が挙げられる。水性担体には、水、アルコール/水性溶液、乳剤、又は懸濁液、生理食塩水および緩衝培地が挙げられる。非経口ベヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース,デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル又は固定化油が挙げられる。 静脈ベヒクルとしては、液体、栄養補給剤、電解物補給剤例えばリンゲルデキストロースを基礎とするもの等が挙げられる。保存剤およびその他の添加物、例えば抗細菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等が存在していてもよい。
【0043】
本発明は、ケモカイン・レセプターと結合する事ができ、かつHIV-1のCD4細胞への融合を阻害する物質であって、ケモカイン・レセプター以外のCD4細胞細胞表面レセプターと結合できるリガンドに連結された非ケモカイン作用剤を含み、該非ケモカイン作用剤がケモカイン・レセプターに結合しても、前記他のレセプターへの前記リガンドの結合は阻害されないような物質を提供する。一つの態様において、該細胞表面レセプターはCD4である。別の態様において、該リガンドは抗体又は抗体の一部である。
【0044】
本発明はまた、HIV-1のCD4細胞への融合を阻害するのに有効な量の上記物質と、薬学的に許容可能な担体とを含有する薬学的組成物を提供する。
【0045】
本発明は、ケモカイン・レセプターに結合し、且つつHIV-1のCD4細胞への融合を阻害する事ができる物質であって、非ケモカイン作用剤のインビボでの半減期を増大させる事ができる化合物に連結される非ケモカイン作用剤を含む物質を提供する。一つの態様において、該化合物はポリエチレングリコールである。
【0046】
本発明はまた、HIV-1のCD4細胞への融合を阻害するに有効な量の、非ケモカイン作用剤のインビボでの半減期を増大させる事ができる化合物に連結された非ケモカイン作用剤を含む物質と、薬学的に許容可能な担体とを含有する薬学的組成物を提供する。
【0047】
本発明はまた、対象におけるHIV-1感染の可能性を減らす方法であって、上記記載の薬学的組成物を対象に投与する事を具備した方法を提供する。本発明はまた、HIV-1感染を治療する方法であって、上記記載の薬学的組成物を投与すること事を具備した方法を提供する。
【0048】
本発明はまた、非ケモカイン作用剤がHIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害する事ができるかどうかを決定する方法であって、(a)第一の色素で標識されたCD4細胞(i)と、細胞表面にHIV-1エンベロープ糖蛋白を発現する第二の色素で標識された細胞(ii)とを、前記作用剤の過剰存在下において、表面にHIV-1エンベロープ糖蛋白を発現する細胞とCD4細胞との融合を前記作用剤の不存在下で可能にする条件のもとで接触させる工程(ここで、前記第一及び第二の色素は、これら色素間での共鳴エネルギーの転移を可能にするように選択される)と;(b)工程(a)の産物を、融合が起ったときに共鳴エネルギー転移を生じる条件に曝す工程と;(c)前記作用剤の不存在下での共鳴エネルギー転移と比較して共鳴エネルギー転移の減少があるかどうかを決定し、該エネルギー転移の減少によって、該作用剤がHIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害できる事が示される工程とを具備する方法を提供する。
【0049】
HIV-1は適切なCD4細胞とだけ融合するある。例えば、実験室適応性のTリンパ球親和性HIV-1株は、ほとんどのCD4ヒト細胞と融合する。臨床学的HIV-1単離物は、ほとんどの形質転換されたCD4ヒト細胞系とは融合しないが、ヒト初代CD4細胞、例えば、 CD4Tリンパ球およびマクロファージとは融合する。 手順の決まった実験を行うことにより、そのCD4細胞が上記の融合分析に適切であるかどうかを容易に決定することができる。
【0050】
本発明に記載するように、HIV-1膜融合は、共鳴エネルギー転移(RET)分析によってモニターされる。該分析は、国際公開WO 95/16789、並びに1994年12月16日に出願された国際出願PCT/US94/14561に記載されている。本分析は、1995年6月7日に提出された合衆国の同時係属出願番号08/476、515に更に詳述されている。これら出願の内容は、ここでの引用により本明細書の一部をなす。
【0051】
上記方法の一つの態様において、非ケモカイン作用剤はオリゴペプチドである。別の態様において、該ケモカイン作用剤はポリペプチドである。また別の態様において、該作用剤は抗体又は抗体の一部である。別の態様において、該ケモカイン作用剤は非ペプチジル作用剤である。
【0052】
別の態様では、CD4+細胞はPM1細胞である。他の態様では、HIV-1エンベロープ糖蛋白を発現する細胞は、HIV-1JR-FLgp120/gp41を発現するHeLa細胞である。
【0053】
本発明は、次に続く実験の詳細を参照する事によってより良く理解されるであろ。しかし、当業者は、詳述された特異的な実験が後述の請求の範囲に完全に記載されている本発明を単に例証するにすぎない事を容易に理解するであろう。
【0054】
実験の詳細
第一実験シリーズ
1) ケモカイン類は、HIV-1の実験室順応Tリンパ球親和性株ではなくHIV-1のマクロファージ向性初代単離物から得られるエンベロープ糖蛋白によって媒介される融合を阻害する。
ケモカイン類のRANTES、 MIP-1α及びMIP-1βは、R&Dシステム(Minneapolis, MN)から入手した。これらは、Hela-envJR-Fl細胞(マクロファージ性単離物HIV-1JR-Flから得られるgp120/gp41を発現する)とPM1細胞間の融合を阻害する能力について、あるいは、Hela-envLAI細胞(実験室適用株HIV-1LAIから得られるgp120/gp41を発現する)と様々なCD4Tリンパ細胞系間の融合を阻害する能力について、RET分析でテストされた。図1に示すように、3つのケモカインは全て、マクロファージ性ウイルスエンベロープ糖蛋白によって媒介される融合を阻害したがしかし実験室適用株エンベロープ糖蛋白によって媒介される融合は阻害しなかった。
【0055】
次に、ウイルスの付着時に起こるケモカインのCD4とHIV-1 gp120間の相互作用を阻害する能力について試験した。該ケモカイン類はこの相互作用を阻害しない事がわかった(図2)。これにより、HIV-1エンベロープ糖蛋白に媒介される膜融合の阻止は、融合に先がけて起こる初期のCD4−gp120の相互作用というよりもむしろ、膜融合そのもの自身が起こった時点で起こるという事が、実証された。
【0056】
2) HIV−1融合を阻害する非ケモカインペプチド及びその誘導体
非ケモカインには、ケモカイン断片及びケモカイン誘導体が含まれ、これらはRET分析でテストされ、どれがHIV-1膜融合を阻害するのに活性があるかを決定した。特に、HIV-1融合を阻害するが白血球反応を活性化しない断片又は誘導体に注目が集まっている。これら非ケモカインには下記のものが含まれる:
a) 該ケモカインの類のN末端誘導体。 ケモカインのN末端に残基を付加すると、ケモカイン・レセプターと結合するケモカインの能力を重篤に削減することなく、これらの蛋白の機能を阻害する。 例えば、Met-RANTES(N末端メチオニンを持つRANTES)は、天然のRANTESの力強な抗拮抗剤である事及びある系では化学走性又はカルシウム代謝を誘導する事ができない事が知られている。拮抗作用のメカニズムはレセプターと結合するための競合であるようだ(9)。RANTESのN末端の別の誘導体(9)を使用してもまた他のケモカイン、例えばIL8(C-X-Cケモカインのメンバー)のN末端を修飾する事によっても、同様の結果がみられた(10)。本発明には、メチオニン又は他の残基をN末端に添加する事で誘導されるMet-RANTES及び他のケモカインを含み、その結果、HIV-1JR−FLのエンベロープ糖蛋白によって媒介される融合が阻害され、かつHIV-1の多数の単離物によって感染が阻害され、炎症性反応も活性化されない。
【0057】
b) N末端アミノ酸欠失を持つケモカイン:
ケモカイン抗拮抗剤は、N末端領域においてアミノ酸を欠失させる事によって生成されてきた。例えば、ケモカインMCP-1(C-Cケモカイン群のメンバー)のN末端において、最高8アミノ酸まで欠失させることによって、ケモカイン・レセプターの結合及び自然のMCP−1の活性を阻害する能力を維持させたまま、蛋白の生物学的活性を除去した(11、12)。
【0058】
本発明は、HIV-1融合及びHIV-1感染を阻害する、天然蛋白の生物学的活性を欠くRANTES、 MIP-1α及びMIP-1βのN末端欠失物を包含する。 C) 他のペプチド:RANTES、 MIP-1α及びMIP-1βの全領域から得られる重複した一連のペプチド類(例えば、20−67残基)は、同じアプローチによってスクリーンされ、白血球を活性化せずして、HIV-1融合を阻害するに最も力のあるペプチド類を特定した。白血球反応を活性化は、次の手順の決まった方法によって測定される(9、10、11、12)。
【0059】
3) ケモカイン・レセプターのクローニング
HIV-1融合に必要とされるケモカイン・レセプターは、次の方法によってクローン化される。まず、哺乳類発現ベクター(例えば、Invitrogen Corp. Sna Diego, CAから入手されるpcDNA3.1)中で、PM1細胞系又はCD4Tリンパ球あるいはマクロファージから調製されたmRNAを使用してcDNAライブラリーを作成する。縮重オリゴヌクレオチド・プローブを使用して、ケモカイン・レセプターファミリーのメンバーをコードしているcDANライブラリーのメンバーを、例えば次の先般公開された方法(2)を使用して特定する。次いで、ケモカイン・レセプターcDNAsを含むベクターは、ヒトCD4を発現するがHeLa-envJR−FL細胞(例えば、HeLa-CD4、CHO-CD4あるいはCOS-CD4)又はHeLa-envLAI細胞(例えば、CHO-CD4, COS-CD4)とは融合しない幾つかの哺乳類細胞系において、個々に発現される。RET分析での分析に続いて、HeLa-envJR−FL細胞又はHeLa-envLAI細胞と融合する能力を得たクローンが特定され、そのコード配列が、当該者に既知の手法に従ってPCR増幅で再生された。次いでDNAの配列決定が行われ、再生されたcDNAが既知のケモカイン・レセプターをコードしているかどうかが決定された。レセプターの発現に続いて、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体が調製され、HIV-1単離物のパネルによって感染を阻害するその能力についてテストされた。
【引用文献1】
【0060】


第二実験シリーズ
CD4T細胞において、一次非シンシチウム誘導性(NSI)HIV-1単離物の複製物は、C-CβケモカインMIP-1α、MIP-1β及びRANTES(1、2)によって阻害されるが、T細胞系適用性(TCLA)又はシンチウム誘導性(SI)の初代株は感受性を示さない(2、3)。該βケモカインは、リンパ球及び単核球細胞形(4−8)の細胞上で活性な、小さい(8kDa)関連蛋白である。それらのレセプターは、7つの膜にかかるG蛋白連結スーパーファミリーのメンバーであり、そのうちの一つ(LESTRオーファンレセプター)はTCLA HIV-1株の第二レセプターとして特定されてきていたが、現在はフュージンと命名されている(9)。フュージンがβケモカイン・レセプターである事は知られていない(7−9)。
【0061】
β−ケモカインがどのようにしてHIV-1複製を阻害するかを研究するために、トランスに発現するエンベロープ糖蛋白を補充したenv欠失ウイルスNL4/3Δenv(ルシフェラーゼレセプター遺伝子も担持する)による単一サイクル感染に基づくウイルス侵入分析が採用された(10、11)。様々なenv補充ウイルスを、PM1細胞(初代及びTCLA HIV-1株の複製を助ける特異的な能力を有するHUT-78変種)の中でテストし、共通の細胞のバックグラウンドに対するエンベロープ糖蛋白機能の比較を可能にした(2、12)。MIP-1α、MIP−β及びRANTESは、これらを組み合わせると、HIV-1に対して一番活性があり(2、3)、NSI初代株ADA及びBaL(表1a)から誘導されたエンベロープをもった補充ウイルスによるPM1細胞の感染を強力に阻害する。
【表1】

【0062】
表1の説明 PM1細胞をルソーら(Lusso et al.)(12)によって記載のように培養した。実験室労働者(LW)から得られたフィコール/ハイパーク単離PBMCは、CD8リンパ球を抗CD8免疫磁性ビーズ(DYNAL, Great Neck NY)で除去する前に、PHAで72時間刺激された。CD4+リンパ球は、先般記載のように(3)、インターロイキン2(100 U/ml, Hoffmann laRoche, Nutley, NJ)を含む培養基中に保持された。目的細胞(1−2X10)に、NL4/3Δenvルシフェラーゼ・ベクターとHIV-1 env発現ベクターとが供トランスフェクトした293細胞より得られる上澄み液(10-50 ngのHIV-1 p24)を感染させた。βケモカイン(R & D Systems, Minneapolis)は、ウイルスと同時に、第一カラムに括弧書きで示される最終濃度(ng/ml)で目的細胞に添加された。βケモカイン濃度範囲は、先般の研究(2、3)に基づいて選択された。二時間後、細胞はPBSで二回洗浄され、βケモカイン配合培地中に再懸濁され、48−96時間維持された。細胞溶融物中のルシフェラーゼ活性は、先に記載されたように測定された(10、11)。示された値は、ルシフェラーゼ活性(cpm)/ng p24/mg蛋白を表し、βケモカイン(100%)を欠くウイルスのコントロール培地中のルシフェラーゼ活性にと相対させて表され、二重又は6重に行われた測定の平均である。ndは、測定されなかったもの。R/Mα /Mβ, RANTES+MIP-1α+MIP-1β.
RANTES及び MIP-1βは、個々に添加するときわめて活性であったのに対し、MIP-1α、MCP-1、MCP-2、MCP-3(参照番号13−15)は、弱い阻害剤であった(表1a)。しかしながら、MIP-1α、MIP-1β及びRANTESは、組み合わせるとPM1細胞のTCLA株NL4/3及びHxB2のよる感染あるいは非脂肪親和性ネズミの白血球ウイルス(MuLV-Ampho)の偽タイプによる感染を阻害しなかった(表1a)。このように、ウイルスの侵入分析においては、HIV-1のエンベロープ糖蛋白の表現形の特徴が、βケモカインの感受性に影響を与える。
【0063】
Env補充分析を使用して、二つのコントロール固体(LW4、LW5)から得られたCD4T細胞へのHIV-1の侵入を評価した。MIP-1α+MIP-1β及びRANTESは、LW4'及びLW5'のCD4T細胞にNSI初代株JR-FLが感染することによって、感染を強力に阻害し、LW細胞のHxB2感染を若干減少させた(表1b)。これによって、異なるウイルス株によって活性化されたCD4T細胞上のレセプターは、幾分か重複して使用され得る事が示唆される。正常PBLにおけるBaL envに媒介される複製もまた、MIP-1α、MIP-1β及びRANTESによって阻害されたが、感受性の点では、ドナー間に著しい変異(データは不表示)が見られた。
【0064】
いつβケモカインが、HIV-1の複製を阻害するかは、PM1細胞への感染を完全に阻害するには、ADA又はBaL env補体ウイルス(図3a)添加後最高5時間までβケモカインが続けて存在する事が必要であることを立証する事によって、決定された。感染に先立って細胞をβケモカインで2時間又は24時間前処理し、その細胞をウイルスの添加前に、続けて洗浄すると何の阻害効果示さなかった。更に、ウイルス添加後2時間してβケモカインを添加すると、ごく僅だがウイルスの侵入に影響を与えた(図3a)。次に、PCRをもとにした分析を使用し、感染の10時間後、PM1細胞中での初期のDNA逆転写物を検出した。NL4/3ではなくADAの逆転写物は、MIP-1β及びRANTES(図3b)の存在下では検出する事ができなかった。このように、βケモカインによる阻害には、HIV-1複製の初期段階の少なくとも一つの段階;つまりウイルスの付着、融合及び初期の逆転写の少なくとも一段階の間、でβケモカインが存在している必要がある。
【0065】
第一実験シリーズの中で一部記載したように、βケモカイン類が、JR-Fl又はBRU(LAI)gp120の可溶性CD4に対する結合を阻害するか、又は四量体CD4-IgG2のオリゴ量体のエンベロープ糖蛋白(17)を発現するHeLa-JR-Fl細胞に対する結合を阻害するかをまずテストする事によって、βケモカイン類の作用部位が区別された。いずれの分析においても、どのβケモカインによっても阻害は見られなかったが、OKT4a CD4-MAbは、両分析において阻害性を強く示した(図2、データ不表示)。このように、βケモカインは、CD4結合後の工程、つまりエンベロープ糖蛋白における形態的変化してウイルスと細胞膜の融合を導く時、を阻害する(18)。細胞と細胞の融合もまた、gp120−CD4の相互作用によって誘導され、細胞膜に取り入れられた蛍光染料間の共鳴エネルギー転換(RET)によって直接監視できる(17)。該RET分析では、OKT4aは、PM1細胞とJR-FL(HeLa-JR-Fl、HeLa envJR-FLとして上記に言及された同じ細胞系)又はBRU(HeLa-BRU, HeLa-envLAIとして上記に言及された同じ細胞系)のいづれかのエンベロープ糖蛋白を発現するHeLa細胞との膜融合を完全に阻害する。これによってプロセスに特異的であることが確認された(17)。RANTES、MIP-1β(及び程度は低いが、MIP-1α)は、HeLa-JR-FL細胞とPM1細胞との膜融合を強力に阻害するが、PM1細胞とHeLa-BRU細胞の間の融合は、これらのβケモカインに対する感受性は示さなかった(図1及び表2a)。
【表2】

【0066】
表2の説明: CD4目的細胞(分裂促進剤によって活性化されたCD4リンパ球又はPM1細胞)は、オクラデシル・ローダミン(Molecular Probes Eugene, OR)で標識し、HeLa-JR-Fl細胞HeLa-BRU細胞(又はコントロールHeLa細胞、不表示)は、オクタデシル・フルオロセイン(Molecular Probes)で一晩37℃で標識された。同じ数の標識された目的細胞とenv発現細胞とを96ウエルプレート中で混合し、βケモカインを第一カラムの括弧内に示した最終濃度(ng/ml)で添加した。蛍光の発光値を細胞混合後4時間目に測定した(17)。
【0067】
もし細胞融合が起こったなら、染料は結合した膜にしっかりと会合する。そうすると、450nmで蛍光が励起し、結果として、共鳴エネルギー転移(RET)となり、590 nmでロダミンによる発光が起こる。融合パーセントは、100 X [(実験RET−最小RET)]/(最大RET−最小RET)と等しいと規定されている。ここで、最大RETは、Hela−Env細胞及びCD発現細胞を、混合したとき得られる%RET値である。 実験RETは、Hela-Env細胞とCD4細胞を、融合阻害化合物の存在下で混合したときに得られる%RET値である。最小RETは、Hela細胞(HIV-1エンベロープ糖蛋白を欠く)及びCD4細胞を混合したときに得られる%RET値である。該%RET値は、どこか別の場所で述べた計算で規定され(17)手織り、夫々は三重に行った測定の平均である。Hela-JR-Fl及びHeLa-BRU細胞のこれらの値は、夫々、PM1細胞11.5%, 10.5%; LW5CD4+細胞6.0%, 10.5%; R/Mα/Mβ, RANTES+MIP-1α+MIP-1β.
同様な結果が、LW5から得られる初代CD4T細胞によって得られた(表2b)が、PM1細胞においてよりも、初代細胞においてのほうがより高濃度のβケモカインが膜融合を阻害するために必要であった。このように、βケモカインの活性は、PM1細胞系に限られる訳ではない。RET分析によって、βケモカインがenvに媒介される膜融合を阻害する事が実証される。
【0068】
これらの結果をもっと単純に説明すると、ある種のβケモカインのそのレセプターに対する結合は、直接又はその他の方法で、HIV-1とCD4T細胞との融合を妨げる。HIV-1がCD4細胞へ侵入するためには、第二のレセプターが必要である事がこの10年来既知となっている(19−21)。この機能は、TCLA株については、フュージン(9)によって提供される。MIP-1α、MIP-1β及びRANTESについて幾つかのレセプターが特定されており(6、7)、βケモカインは、レセプターを利用する際に相当な交差反応性を示す(4−8)。しかしながら、組織発現パターン及びMIP-1α、MIP-1β及びRANTES(4、7、8、15、22)に結合するその能力を基にして、C-C CKR-1特にC-C CKR-5が、最も可能性のある候補だと特定された。C-C CKR-1、C-C CKR-5及びLESTRは、PM1細胞及び初代マクロファージ(データ不表示)中でmRNAレベルで各々発現される。これら及び他のβケモカイン・レセプターは、よってPCR増幅され、クローンされ、発現された。
【0069】
HeLa-CD4(ヒト)、COS-CD4(サル)、 3T3-CD4(ネズミ)細胞においてC-C CKR-5が発現すると、それら各々の細胞は、HIV-1侵入のenv相補性分析においては、初代NSI株ADA及びBaLによって容易に感染させられる様になった(表3)。
【表3】

【0070】
表3の説明
ケモカイン・レセプター遺伝子C-C CKR−1, C-C CRK-2a, C-C CKR-3, C-C CKR-4, C-C-CKR-5はイントロンを持たない(4-8, 15, 22)ず、7人の健常ドナーのRBMC派生のヒトゲノムDNAプールにおいて直接行われるPCRによって単離される。ATG及び停止コドンと重複し、pcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen Inc.)に指向性をもってクローンするためのBamHI及びXhol制限部位を含むオリゴヌクレオチドが使用された。LESTR(フュージン又はHUMSTRとしても知られる)(4, 9, 24)は、直接PM1細胞派生するcDNA上で行われたPCRによって、NIHデータベースから派生する配列を使用してクローンされた。下記のリストは、第一回目(5-1、及び3-1)、二回目(5-2、3-2)の直接ヒトゲノムDNAから得られたCKR遺伝子及びPM1cDNAから得られたLESTRのPCR増幅に使用された5'−3'のプラーマー対である。CKR-5を増幅させるに、僅1組みのプライマーが使用された。
【0071】
LESTR: L/5-1 = AAG CTT GGA GAA CCA GCG GTT ACC ATG GAG GGG ATC(配列認識番号:6);
L/5-2 = GTC TGA GTC TGA GTC AAG CTT GGA GAA CCA(配列認識番号:7);
L/3-1 = CTC GAG CAT CTG TGT TAG CTG GAG TGA AAA CTT GAA GAC TC(配列認識番号:8);
L/3-2 = GTC TGA GTC TGA GTC CTC GAG CAT CTG TGT(配列認識番号:9);
CKR-1: C1/5-1 = AAG CTT CAG AGA GAA GCC GGG ATG GAA ACT CC(配列認識番号:10);
C1/5-2 = GTC TGA GTC TGA GTC AAG CTT CAG AGA GAA(配列認識番号:11);
C1/3-1 = CTC GAG CTG AGT CAG AAC CCA GCA GAG AGT TC(配列認識番号:12);
C1/3-2 = GTC TGA GTC TGA GTC CTC GAG CTG AGT CAG(配列認識番号:13);
CKR-2a:C2/5-1 = AAG CTT CAG TAC ATC CAC AAC ATG CTG TCC AC(配列認識番号:14);
C2/5-2= GTC TGA GTC TGA GTC AAG CTT CAG TAC ATC(配列認識番号:15);
C2/3-1 = CTC GAG CCT CGT TTT ATA AAC CAG CCG AGA C(配列認識番号:16);
C2/3-2 = GTC TGA GTC TGA GTC CTC GAG CCT CGT TTT(配列認識番号:17);
CKR-3: C3/5-1 = AAG CTT CAG GGA GAA GTG AAA TGA CAA CC(配列認識番号:18);
C3/5-2= GTC TGA GTC TGA GTC AAG CTT CAG GGA GAA(配列認識番号:19);
C3/3-1 = CTC GAG CAG ACC TAA AAC ACA ATA GAG AGT TCC(配列認識番号:20);
C3/3-2 = GTC TGA GTC TGA GTC CTC GAG CAG ACC TAA(配列認識番号:21);
CKR-4= C4/5-1 = AAG CTT CTG TAG AGT TAA AAA ATG AAC CCC ACG G;(配列認識番号22);
C4/5-2 = GTC TGA GTC TGA GTC AAG CTT CTG TAG AGT(配列認識番号:23);
C4/3-1 = CTC GAG CCA TTT CAT TTT TCT ACA GGA CAG CAT C(配列認識番号:24);
C4/3-2 = GTC TGA GTC TGA GTC CTC GAG CCA TTT CAT(配列認識番号:25);
CKR-5, C5/5-12 = GTC TGA GTC TGA GTC AAG CTT AAC AAG ATG GAT TAT CAA(配列認識番号:26);
C5/3-12 = GTC TGA GTC TGA GTC CTC GAG TCC GTG TCA CAA GCC CAC(配列認識番号:37)。
【0072】
ヒトCD4発現細胞系HeLa-CD4(P42), 3T3-CD4(sc6)及びCOS-CD4(Z28T1)(23)には、異なるpcDNA3.1−CKR構築物をりん酸カルシウム法によってトランスフェクトさせ、48時間後に、異なるレポーターウイルス(200ngのHIV-1p24/106細胞)をβケモカインの存在下又は不存在下で感染させた。細胞溶融物中のルシフェラーゼ活性を48時間後に測定した(10、11)。βケモカインの阻害データは、他のC-C CKR遺伝子によって媒介された感染の阻害の程度が数値化するには低すぎるとして、C-C CKR-5についてのみ示された。HIV−1の侵入のPCRにもとずく分析では、NL4/3及びADAのC-C-CKR-1発現細胞中への侵入レベルが一貫して低い(データ不表示)事が観察された。
【0073】
LESTRも C-C-CKR-1, -2a, -3又は-4も本分析中では、C-C CKR-5の代替となる事はできなかった。COS-CD4及び3T3-CD4細胞中でのLESTRの発現はHxB2の侵入を可能とし、HxB2は、未トランスフェクト(コントロールプラスミドトランスフェクト)HeLa-CD4細胞中に容易に侵入した(表3)。BAL及びADAの3つのC-C CKR-5発現細胞系全てへの侵入は、MIP-1α、MIP-1β及びRANTESの組み合せによって殆ど完全に阻害された。しかるに、HxB2のLESTR発現細胞中への侵入は、βケモカインに対して非感受性であった(表3)。これらの結果によって、C-C CKR-5は、初代NSI HIV-1株についてのβケモカイン感受性第二レセプターとして機能する事が示唆された。
【0074】
C-C CKR-5の第二レセプター機能は、envによって媒介される膜融合分析において確認された。C-C CKR-5が、永久的にヒトCD4を発現するCOS及びHeLa細胞系で一時的に発現された時、両細胞系は、JR-FLエンベロープ糖蛋白を発現するHeLa細胞と強力に融合されたが、しかるに、コントロールプラスミドを使用したときには融合は起こらなかった(データ不表示)。C-C CKR-5に代わってLESTRが発現しても、COS-CD4及びHeLa-CD4細胞のどちらもHeLa-JR-FL細胞と融合できなかった。しかしCOS-CD4細胞及びHeLa-BRU細胞間の融合はできた(データ不表示)。
【0075】
βケモカイン・レセプターの融合能もまた、RET分析でテストされた。C-C CKR-1、-2a, -3, 又は-4ではなくC-C CKR-5の発現はHeLa-CD4細胞及びHeLa-JR-FL細胞間の強力な融合を可能とした。 HeLa-JR-FL細胞とC-C CKR-5発現HeLa-CD4細胞間の融合の程度は、構成的なレベルのHeLa-BRU及びHeLa-CD4細胞間の融合より大きかった(図4)。よって、初代NSI HIV-1株についてのC-C CKR-5の融合賦与機能が二つの独立した融合分析において確認された。
【0076】
実験の考察
上記の結果によって、MIP-1α、MIP-1β及びRANTESが、CD4結合に続くウイルスと細胞の融合反応を阻止する事によって、HIV-1感染を侵入段階で阻害する事が立証された。C-C CKR-5が、HIV-1の初代NSI株がCD4+T細胞中に侵入するための第二レセプターとして働くことが可能である事、及びβケモカインとC-C CKR-5との相互作用によって、HIV-1融合反応が阻害される事が証明された。
【引用文献2】
【0077】


第三実験シリーズ
ケモカインSDF-1(間質細胞派生因子1)はフュージン/CXCR4に対する天然リガンドで、HIV-1の実験室適用株による感染を阻止する(参照1及び2)。SDF-1は、SDF-1遺伝子(参照1及び3)の可変スプライシングで少なくとも二つの型:SDF-1α及びSDF-2β、で存在する。RET分析においては、このケモカインは、図5に示したようにマクロファージ性単離物HIV-1JR−FLから得られる gp120/gp41によってではなく、実験室適用株HIVLANから得られる gp120/gp41によって媒介される膜融合を特異的に阻害する。
【0078】
第三実験シリーズの引用文献
1. Bleul, C.C., et al. (1996) Nature 382:829-833
2. Oberlin, E., et al. (1996) Nature 382:833-835
3. Shirozu, M., et al. (1995) Genomics 28:495-500
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】HIV-1JR−FLエンベロープ糖蛋白によって媒介される膜融合は、RANTES、MIP-1α及びMIP-1βによって阻害される PM1細胞とHeLa-envJR-FL(黒塗りの四角形)又はHeLa-envLAI(黒塗りの菱形)との融合から得られる%RETを、組換えヒト・ケモカインの存在下および不存在下で、濃度範囲:RANTS(80-2.5 ng/ml), MIP-1α(400-12.5 ng/ml), MIP-1β(200-6.25 ng/ml)で、指示されたように測定した。
【0080】
ケモカインおよび細胞は、4時間のインキュベーションの開始時に同時に添加した。データは、二重に行われた三回以上の独立した実験を示す。RETの%阻害は、下記記載のように規定される。
【0081】
%阻害 = 100・[(最大RET−最小RET)−(実験RET−最小RET)]
/(最大RET−最小RET)
この場合、最大RETは、阻害化合物の不存在下において、HeLa−env細胞及びCD発現細胞を用いて4時間目に得られた%RET値である。 実験RETは、阻害化合物の存在下で、同じ細胞の組合せについて得られた%RET値である。最小RETは、HeLaエンベロープ発現細胞の代わりにHela細胞を使用して得られたバックグラウンド%RET値である。
【図2】CD4:ヒト・ケモカインの存在下におけるHIV−1gp120結合 可溶性ヒトCD4のHIV−1LAI及びHIV−1JR−FLgp120に対する結合を、モノクローナル抗体OKT4A又は組換えヒト・ケモカインの存在下および不存在下に、図1のRET阻害研究で使用したものと同様の濃度範囲:OKT4A(62−0.3 nM), RANTS(10.3-0.3 ), MIP-1α(53.3-2.9 nM), MIP-1β(25.6-0.8 nM)で,エリザ分析によって決定した。阻害剤は、ビオチン化HIV−1 gp120と共に、マイクロタイター皿(Dynatech Laboratories, Inc., Chantilly, VA)に塗布された可溶性CD4に同時に添加された。2時間の室温でのインキュベーション、広範囲洗浄後、ストレプトアビジン・ホースラデイッシュ・パーオキシダーゼによる1時間の室温でのインキュベーションを行った。更に複数回洗浄を行なった後、基質を加え、492nmでの光学密度(OD)をエリザ・プレート・リーダーにて測定した。データは、4重に行なわれた二つの独立した実験を示している。
【図3A】特異性:HIV−1複製のβケモカインの阻害の時間変化とステージ (a)PM1細胞(1x10)をRANTES+MIP−1α+MIP−1β(R/Mα/Mβ,夫々100 ng/ml)で、24時間(-24h)又は二時間(-2h)インキュベーションし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で二回洗浄した。HIV−1(BaL env-相補)ウイルス(p24が50ng、表1の説明を参照)を二時間添加し、細胞を洗浄し、前述したように細胞溶融物中で、ルシフェラーゼ活性を測定する前に、48時間インキュベーションした(10、11)。
【0082】
又は、ウイルス及びR/Mα/Mβを細胞に同時に加え、指示時間点(1時間、3時間等)にて、細胞をPBS中で二回洗浄し、培養基中に再懸濁し、ルシフェラーゼ分析の前に48時インキュベーションした。時間0は、陽性対照を示し、ここにはβケモカインを添加してはいない。+2時間は、PBSで二回洗浄前の2時間のウイルスと細胞の混合物を示す。 R/Mα/Mβの添加及び、ルシフェラーゼ分析前に更に48時間培養を継続する。
【図3B】特異性:HIV−1複製のβケモカインの阻害の時間変化とステージ (b)PM1細胞(1x10)にCEM細胞(NL4/3、レーン1−4)で中で生育させたHIV−1(500pg p24)又はマクロファージ(ADA;レーン5−8)を、500 ng/mlのRANTES(レーン1及び5)、MIP-1β(レーン2と6)又は無βケモカイン(レーン4と8)の存在下で、感染させた。レーン3と7は陰性対照(無ウイルス)である。PCR分析に使用したウイルスの全ストックは、DNAseで30分37℃で処理され、使用前にDNA汚染についてテストした。2時間後、該細胞を洗浄し、同じβケモカインを含む培地中でさらに8時再懸濁した。次にDNA/RNA単離キット(US biochemical)を使用してDNAを感染細胞より抽出した。初回のネステッドPCRは、プライマー:U3 + 、5' -CAAGGCTACTTCCCTGATTGGCAGAACTACACACCAGG-3'(配列認識番号1)preGag、 5'-AGCAAGCCGAGTCCTGCGTCGAGAG-3' (配列認識番号2)を用い、またび第二ラウンドは、プライマー:LTRテスト、5'-GGGACTTTCCGCTGGGGACTTTC-3' (配列認識番号3)LRC2、5' -CCTGTTCGGGCGCCACTGCTAGAGATTTTCCAC 3'(配列認識番号4)を使用して、パーキン・エルマー2400サイクラー中で下記増幅サイクル:94℃5分、94℃30秒、55℃30秒、72℃30秒、72℃7分を35サイクルで実行した。Mは、1Kb DNAラダーを示し、1、10、100、1000は、参照プラスミド(pAD8)のコピー数を示す。この分析によって、逆転写物100コピーを検出した。
【図4】C-C CKR-5を一時的に発現するHIV-1 env媒介膜融合 HeLa細胞中で発現されるβケモカイン・レセプターによって媒介される膜融合は下記の様に実証された。対照のプラスミドpcDNA3.1又はプラスミドpcDNA3.1-CKR構築物を、リポフェクチン(Gibco BRL)を使用して細胞にトランスフェクトした。pcDNA3.1プラスミドは、T7ポリメラーゼ・プロモータを保持しており、βケモカイン・レセプターの一時的発現が、T7ポリメラーゼ(vFT7.3)をコードしている 1x10pfuのワクチンで細胞を感染させる事によってリポフェクチン投与後(9)4時間目に増大した。次に細胞をR18を含む培地中で一晩培養し、HeLa-JR-FL細胞(黒塗りカラム)又はHeLa-BRU細胞(斜線を付したカラム)と融合するその能力についてテストした。対照HeLa細胞についての該%RETは、トランスフェクトされたプラスミドに無関係に3%及び4%であった。
【図5】HIVLAIエンベロープ糖蛋白によって媒介される膜融合は、SDF-1によって阻害される PM1細胞とHela−envJR-FL又はHela−envLAI細胞の融合から得られる%RET(グラフ上に示したように)を、組換えSDF-1α(Gryphon Science, San Francisco)の存在下、指示された濃度で測定した。実験方法は、図1についての説明に記載された通りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIV-1とCD4細胞との融合を阻害する方法であって、 CD4細胞に対して、ケモカイン・レセプターと結合できる非ケモカイン作用剤を、HIV-1のCD4細胞への融合が阻害される量および条件下で接触させることを具備した方法。
【請求項2】
CD4細胞のHIV-1感染を阻害する方法であって、 CD4細胞に対して、ケモカイン・レセプターと結合できる非ケモカイン作用剤を、HIV-1のCD4細胞に対する融合が阻害される量および条件下で接触させることにより、HIV-1感染を阻害することを具備する方法。
【請求項3】
請求項1又は2の方法であって、前記非ケモカイン作用剤がオリゴペプチドである方法。
【請求項4】
請求項1又は2の方法であって、前記非ケモカイン作用剤がポリペプチドである方法。
【請求項5】
請求項1又は2の方法であって、前記非ケモカイン作用剤が抗体又は抗体の一部である方法。
【請求項6】
請求項1又は2の方法であって、前記非ケモカイン作用剤が非ペプチジル作用剤である方法。
【請求項7】
ケモカイン・レセプターと結合し、且つHIV-1のCD4細胞への融合を阻害できる非ケモカイン作用剤。
【請求項8】
請求項7の非ケモカイン作用剤であって、前記非ケモカイン作用剤がオリゴペプチドである作用剤。
【請求項9】
請求項7の非ケモカイン作用剤であって、前記非ケモカイン作用剤が非ペプチジル作用剤である作用剤。
【請求項10】
請求項7の非ケモカイン作用剤であって、前記非ケモカイン作用剤がポリペプチドである作用剤。
【請求項11】
請求項10の非ケモカイン作用剤であって、前記ポリペプチドが抗体又は抗体の一部である作用剤。
【請求項12】
請求項10の非ケモカイン作用剤であって、前記ポリペプチドが配列認識番号5に記載のアミノ酸配列を含む作用剤。
【請求項13】
請求項10の非ケモカイン作用剤であって、前記ポリペプチドが前記配列の最初の7つのN末端アミノ酸を欠くMIP-1β配列を含む作用剤。
【請求項14】
請求項10の非ケモカイン作用剤であって、前記ポリペプチドが前記配列の最初の8つのN末端アミノ酸を欠くMIP-1β配列を含む作用剤。
【請求項15】
請求項10の非ケモカイン作用剤であって、前記ポリペプチドが前記配列の最初の9つのN末端アミノ酸を欠失したMIP-1β配列を含む作用剤。
【請求項16】
請求項10の非ケモカイン作用剤であって、前記ポリペプチドが前記配列の最初の10個のN末端アミノ酸を欠失したMIP-1β配列を含む作用剤。
【請求項17】
請求項10の非ケモカイン作用剤であって、前記ポリペプチドが、アミノ酸又はオリゴペプチドの付加によって修飾されたN末端配列MIP-1β配列を含む作用剤。
【請求項18】
請求項10の非ケモカイン作用剤であって、前記ポリペプチドが、N末端アラニンを除去しかつセリン又はスレオニン及び別のアミノ酸又はオリゴペプチド又は非ペプチジル成分でそれを置換する事によって修飾されたN末端を持つMIP-1β配列を含む作用剤。
【請求項19】
請求項17又は18の非ケモカイン作用剤であって、前記別のアミノ酸はメチオニンである作用剤。
【請求項20】
CXCR4と結合し、かつHIV-1の感染を阻害する事ができる作用剤。
【請求項21】
請求項20に記載の作用剤であって、前記作用剤はオリゴペプチドである作用剤。
【請求項22】
請求項20に記載の作用剤であって、前記作用剤はポリペプチドである作用剤。
【請求項23】
請求項22の非ケモカイン作用剤であって、前記ポリペプチドは前記配列の最初の6個のN末端アミノ酸を欠失したSDF-1配列を含む作用剤。
【請求項24】
請求項22の非ケモカイン作用剤であって、前記ポリペプチドは前記配列の最初の7個のN末端アミノ酸を欠失したSDF-1配列を含む作用剤。
【請求項25】
請求項22の非ケモカイン作用剤であって、前記ポリペプチドは前記配列の最初の8個のN末端アミノ酸を欠失したSDF-1配列を含む。
【請求項26】
請求項22の非ケモカイン作用剤であって、前記ポリペプチドは前記配列の最初の9個のN末端アミノ酸を欠失したSDF-1配列を含む作用剤。
【請求項27】
請求項22の非ケモカイン作用剤であって、SDF-1のN末端グリシンは、セリンで置換されかつビオチンで誘導される作用剤。
【請求項28】
請求項22の非ケモカイン作用剤であって、SDF-1のN末端グリシンは、セリンで置換されかつメチオニンで誘導される作用剤。
【請求項29】
請求項22の非ケモカイン作用剤であって、前記SDF-1のN末端は、末端のグリシンの手前にメチオニンを付加する事によって修飾される作用剤。
【請求項30】
請求項22の作用剤であって、該作用剤は抗体又は抗体の一部である作用剤。
【請求項31】
請求項20の作用剤であって、該作用剤は非ペプチジル作用剤である作用剤。
【請求項32】
HIV-1のCD4細胞への融合を阻害するにの有効な量の請求項7の非ケモカイン作用剤と、薬学的に許容可能な担体とを含有する薬学的組成物。
【請求項33】
HIV-1のCD4細胞への融合を阻害するのに有効量な量の請求項20の非ケモカイン作用剤と、薬学的に許容可能な担体とを含有する薬学的組成物。
【請求項34】
ケモカイン・レセプターと結合する事ができ、かつHIV-1のCD4細胞への融合を阻害する物質であって、ケモカイン・レセプター以外のCD4細胞細胞表面レセプターと結合できるリガンドに連結された非ケモカイン作用剤を含み、該非ケモカイン作用剤がケモカイン・レセプターに結合しても、前記他のレセプターへの前記リガンドの結合は阻害されないような物質。
【請求項35】
請求項34の物質であって、前記細胞表面のレセプターがCD4である物質。
【請求項36】
請求項34の物質であって、前記リガンドが抗体か又は抗体の一部である物質。
【請求項37】
HIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害するに有効な量の請求項34の物質と、薬学的に許容可能な担体とを含有する薬学的組成物。
【請求項38】
ケモカイン・レセプターに結合する事ができ、かつHIV-1のCD4細胞への融合を阻害する物質であって、該物質は、非ケモカイン作用剤のインビボでの半減期を増大させる事ができる化合物に連結される非ケモカイン作用剤を含む物質。
【請求項39】
請求項38の物質であって、前記化合物はポリエチレン・グリコールである物質。
【請求項40】
HIV-1のCD4細胞への融合を阻害するに有効な量の請求項38の物質と、薬学的に許容可能な担体とを含有する薬学的組成物。
【請求項41】
請求項32、33、37又は40の薬学的組成物を対象に投与する事を具備した、対象におけるHIV-1感染の可能性を減らす方法。
【請求項42】
請求項32、33、39又は40の薬学的組成物を対象に投与する事を具備した、対象におけるHIV-1感染を治療する方法。
【請求項43】
非ケモカイン作用剤がHIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害する事ができるかどうかを決定する方法であって:
(a) 第一の色素で標識されたCD4細胞(i)と、細胞表面にHIV-1エンベロープ糖蛋白を発現する第二の色素で標識された細胞(ii)とを、前記作用剤の過剰存在下において、表面にHIV-1エンベロープ糖蛋白を発現する細胞とCD4細胞との融合を前記作用剤の不存在下で可能にする条件のもとで接触させる工程(ここで、前記第一及び第二の色素は、これら色素間での共鳴エネルギーの転移を可能にするように選択される)と;
(b) 工程(a)の産物を、融合が起ったときに共鳴エネルギー転移を生じる条件に曝す工程と;
(c) 前記作用剤の不存在下での共鳴エネルギー転移と比較して共鳴エネルギー転移の減少があるかどうかを決定し、該エネルギー転移の減少によって、該作用剤がHIV-1のCD4細胞に対する融合を阻害できる事が示される工程とを具備する方法。
【請求項44】
請求項43の方法であって、前記作用剤はオリゴペプチドである方法。
【請求項45】
請求項43の方法であって、前記作用剤はポリペプチドである方法。
【請求項46】
請求項43の方法であって、前記作用剤は抗体かもしくは抗体の一部である方法。
【請求項47】
請求項43の方法であって、前記作用剤は非ペプチジル作用剤である方法。
【請求項48】
請求項43の方法であって、前記CD4細胞はPM1細胞である方法。
【請求項49】
請求項43の方法であって、HIV-1エンベロープ糖蛋白を発現する細胞は、HeLa細胞を発現するHIV-1JR-FL gp120/gp41細胞である方法。
【請求項50】
請求項43の方法であって、HIV-1エンベロープ糖蛋白発現細胞は、HeLa細胞を発現するHIV-1LAIgp120/gp41である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−69148(P2008−69148A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−220275(P2007−220275)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【分割の表示】特願平9−535610の分割
【原出願日】平成9年4月2日(1997.4.2)
【出願人】(507287157)プロジェニクス・ファーマスーティカルス・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】