説明

CDK阻害剤、および成長因子抗体または抗有糸分裂剤を含む組合せ

本発明は、明細書に記載の式(I)の化合物Aまたは医薬として許容できるこの塩、ならびに成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体、および/または抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグを含む、腫瘍の治療において有用な組合せを提供する。化合物Aの化学名は、8−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニルアミノ]−1,4,4−トリメチル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−h]キナゾリン−3−カルボン酸メチルアミドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には癌治療の分野に関し、より詳細には、CDK阻害剤、ならびに成長因子を阻害する抗体、および/または抗有糸分裂化合物を含み、相乗的抗腫瘍効果を有する抗腫瘍性組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
細胞周期の進行は、制限点と称されることもある一連のチェックポイント制御により支配され、このチェックポイント制御は、サイクリン依存性キナーゼ(cdk)として知られている酵素のファミリーにより制御されていることはよく知られている。同様に、cdk自体も、例えば、サイクリンとの結合などの多くの段階で制御されている。
【0003】
細胞周期の正常な進行には、異なるサイクリン/cdk複合体の協調した活性化および不活性化が必要である。重要なG1−S移行およびG2−M移行の両方が、異なるサイクリン活性/cdk活性の活性化により制御される。G1において、サイクリンD/cdk4およびサイクリンE/cdk2の両方が、S期の開始を仲介すると考えられている。S期の進行には、サイクリンA/cdk2の活性が必要であるが、有糸分裂の開始には、サイクリンA/cdc2(cdkl)およびサイクリンB/cdc2の活性化が必要である。サイクリンおよびサイクリン依存性キナーゼの一般参照として、例えば、Kevin R.Webster et al、in Exp.Opin.Invest.Drugs、1998、Vol.7(6)、865−887を参照されたい。
【0004】
腫瘍細胞においてチェックポイント制御に欠陥があるのは、一部には、cdk活性の調節不全による。例えば、サイクリンEおよびcdkの変化した発現が腫瘍細胞において観察され、癌の発生率を高くする、マウスにおけるCDK阻害剤p27KIP遺伝子の欠失が見られた。
【0005】
増加する証拠によって、cdkが細胞周期進行における律速酵素であり、これ自体が治療的介入のための分子標的を務めるという考えが裏付けされている。特に、cdk/サイクリンキナーゼ活性の直接阻害は、腫瘍細胞の未制御の増殖を制限するのに役立つはずである。
【0006】
PCT/WO2003039536A(YALE UNIVERSITY)15.05.2003、およびPCT/WO2004041268A(CYCLACEL LIMITED)21.05.2004は、ドセタキセルまたはパクリタキセルのようなタキサンと、タンパク質キナーゼ阻害剤であるロスコビチンとの組合せに関する。PCT/WO2005094830A(PFIZER INC)13.10.2005に、cdk阻害剤などのシグナル伝達阻害剤の組合せが記載されている。
【0007】
治療的処置を最適化するため、公知の抗癌剤を組み合わせることが継続的に必要とされている。
【0008】
一部のピラゾロキナゾリンは、サイクリン依存性キナーゼ酵素、特にCdk2の強力阻害剤であることが実証された。これらの化合物の1つが抗癌剤として現在開発されている。cdk阻害剤は、細胞周期のG2/M期からの細胞の通過を阻止すると理解されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、増殖障害、特に癌の治療に適切である、Cdk阻害剤と公知の医薬品との新規な組合せを提供する。より詳細には、本発明の組合せは、抗腫瘍薬として、治療において非常に有用であり、毒性および副作用の両方の観点から、現在入手可能な抗腫瘍剤に伴う欠点が無い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一の態様において、下記式(I):
【0011】
【化2】

を有する化合物A、
または医薬として許容できるこの塩、ならびに
成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体、および/または
抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグ
を含む組合せを提供することが、本発明の目的である。
【0012】
別の態様は、医薬として許容できる担体、希釈剤、または賦形剤と混合した、本発明に従った組合せを含む医薬組成物を提供する。
【0013】
更なる態様は、増殖障害を治療する薬物の製剤における、本発明に従った組合せの使用に関する。また更なる態様は、治療における、同時、逐次、または別々の使用のための組合せ製剤としての、上記に定義した化合物A、ならびに成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体、および/または抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグを含む医薬製品に関する。別の態様は、増殖障害を治療する方法であって、上記で定義した化合物A、ならびに成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体、および/または抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグを、同時に、逐次的に、または別々に対象に投与することを含む方法に関する。
【0014】
また更なる態様は、上記で定義した化合物A、ならびに成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体、および/または抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグを同時に、逐次的に、または別々に対象に投与することを含む増殖障害の治療のための薬物の製剤における、上記で定義した化合物Aの使用に関する。
【0015】
別の態様は、増殖障害を治療するための薬物の製剤における、上記で定義した化合物A、ならびに成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体、および/または抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグの使用に関する。
【0016】
本明細書において、別段の指定がない限り、化合物Aは、8−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニルアミノ]−1,4,4−トリメチル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−h]キナゾリン−3−カルボン酸メチルアミドである。これは、PCT/WO2004104007A(PHARMACIA ITALIA SPA)02.12.2004に記載されているように調製することができ、タンパク質キナーゼ阻害活性が賦与されることにより抗腫瘍薬として治療に有用である。特に、化合物Aの好ましい調製物は、上記の国際特許出願の実施例58に記載の調製物である。
【0017】
化合物Aの医薬として許容できる塩として、無機または有機酸との酸付加塩、例えば、硝酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、過塩素酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、イセチオン酸、サリチル酸などが挙げられる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によると、成長因子またはこの受容体を阻害する抗体は、ベバシズマブ(血管内皮増殖因子に対する抗体)、セツキシマブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ(上皮成長因子受容体に対する抗体)、トラスツズマブ、およびペルツズマブ(ErbB2に対する抗体)から選択される。
【0019】
本発明のより好ましい実施形態によると、成長因子またはこの受容体を阻害する抗体はベバシズマブである。
【0020】
抗有糸分裂剤は、例えば、エポチロンまたはタキサンである。
【0021】
エポチロンは、微小管に結合して微小管を安定させ、許容できる副作用を伴う用量およびスケジュールで、広範囲の抗腫瘍作用を有する:Journal of Clinical Oncology、Vol22、No10(May15)、2004:pp.2015−2025を参照。主な代表的エポチロ類は、イクサベピロン、BMS−310705、EPO906、およびKOS−862である。
【0022】
タキサンは、広範囲の活性を示す、全ての化学療法薬の中で最も強力な化合物の種類の1つである。主な代表的タキサンは、パクリタキセルおよびドセタキセルである(例えば、総説:Cancer,Principles and Practice of Oncology、Lippincott−Raven Ed.(1997)、467−483を参照)。転移性の乳癌、肺癌、卵巣癌、および消化器癌のための最も重要な治療設定、ならびに乳癌のためのアジュバント設定における、ドセタキセルおよびパクリタキセルを評価する無作為化臨床試験により、タキサンが、癌治療の医用品における主要な一助であることが確認された:例えば、総説「Docetaxel for treatment of solid tumours:a systematic review of clinical data」Lancet Oncology(2005)を参照。
【0023】
タキサンは、特有の作用機序、すなわち、微小管の超安定化を有する。詳細には、タキサンは、細胞微小管の重要な成分であるチューブリンのヘテロ二量体のβサブユニットを標的にする。この作用機序は、細胞周期停止およびアポトーシスに関係している。パクリタキセルおよびドセタキセルの作用および抗癌活性は同じであるが、同時に、重要な相違が存在し、タキサン類間の交差耐性の欠如は臨床的に明らかである。ドセタキセルは、βチューブリンに対する親和性が大きいことを示し、中心体構成を標的にし、細胞周期の3段階(S/G/M)において細胞に作用するが、パクリタキセルは、細胞周期のG期およびM期において、紡錘体に影響を及ぼすことにより細胞の損傷を引き起こす。
【0024】
したがって、本発明によると、好ましくは、抗有糸分裂剤がタキサンであり、より好ましくは、ドセタキセルまたはパクリタキセルである。
【0025】
本発明において、上記で定義した化合物A、または医薬として許容できるこの塩、ならびに
成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体、および/または
抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグは、相乗的抗腫瘍効果を生み出すための有効量である。
【0026】
本発明は、ヒトを含めて、これを必要とする哺乳動物において、抗悪性腫瘍薬を使用する抗腫瘍療法により引き起こされた副作用を低減する方法であって、上記で定義した化合物A、ならびに上記で定義した抗有糸分裂化合物、および/または成長因子もしくはこれらの受容体を阻害する抗体を含む組合せ製剤を、相乗的抗腫瘍効果を生み出す有効量で前記哺乳動物に投与することを含む方法も提供する。
【0027】
本明細書で使用する「相乗的抗腫瘍効果」という用語により、上記で定義した化合物A、ならびに抗有糸分裂化合物、および/または成長因子もしくはこれらの受容体を阻害する抗体の組合せの有効量を、ヒトを含む哺乳動物に投与することによる、増殖腫瘍の阻害、好ましくは腫瘍の完全な退行を意味する。
【0028】
本明細書で使用する「投与され」または「投与する」という用語により、非経口および/または経口の投与を意味する。「非経口」により、静脈内、皮下、および筋肉内の投与を意味する。本発明の方法において、上記で定義した化合物Aは、抗有糸分裂活性、および/または成長因子もしくはこれらの受容体を阻害する抗体を有する化合物と共に、同時に投与しもよいし、これらをいずれかの順番で、逐次的に投与してもよい。実際の好ましい投与の方法および順番は、とりわけ、利用している化合物Aの特定の配合、利用しているタキサン類似種の1種などの抗有糸分裂化合物および成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体の特定の配合、治療している特定の腫瘍モデル、ならびに治療されている特定の宿主によって様々であることは理解されよう。
【0029】
本発明の方法において、化合物Aの投与に関し、一般に用いられる治療クールは、5mg/m体表面積から1.5g/m体表面積の範囲である。より好ましくは、用いられる治療クールは、約50mg/m体表面積から約500mg/m体表面積である。
【0030】
化合物Aは、様々な剤形で、例えば、錠剤、カプセル、糖衣もしくはフィルムコーティング錠、溶液、または懸濁液の形態で経口的に;坐剤の形態で直腸的に;非経口的、例えば筋肉内に、または静脈内および/もしくはクモ膜下腔内および/もしくは髄腔内に、注射または注入を介して投与することができる。
【0031】
本発明の方法において、抗有糸分裂化合物、好ましくはドセタキセルの投与に関し、一般に用いられる治療クールは、3週間毎に約50mg/mから100mg/m、または毎週30mg/mからである。
【0032】
成長因子を阻害する抗体の投与に関し、一般に用いられる治療クールは、0.1mg/kgから100mg/kgであってよい。より好ましくは、用いられる治療クールは1mg/kgから20mg/kgである。
【0033】
本発明の抗腫瘍療法は、限定されるものではないが、膀胱癌、乳房癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、小細胞肺癌を含む肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、頚部、甲状腺癌、前立腺癌、および扁平上皮癌を含む皮膚癌などの癌種;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫、およびバーキットリンパ腫を含めた、リンパ系の造血腫瘍;急性および慢性の骨髄性白血病、脊髄形成異常性症候群、ならびに前骨髄球性白血病を含めた骨髄系の造血腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫を含めた間葉起点の腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、および神経鞘腫を含めた中枢神経系および末梢神経系の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形癌腫、骨肉腫、色素性乾皮症、角膜黄色腫、甲状腺濾胞癌、およびカポジ肉腫を含めた他の腫瘍を含めて、癌の全形態を治療するための特に適切である。
【0034】
上記のように、化合物A、ならびに抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグ、および/または成長因子もしくはこれらの受容体を阻害する抗体の効果は、平行して増加する毒性もなく、有意に増加した。言い換えると、本発明の併用療法は、化合物Aおよび/または抗有糸分裂化合物および/または成長因子もしくはこれらの受容体を阻害する抗体の抗腫瘍効果を高め、したがって、腫瘍に対して最も有効で毒性の少ない治療をもたらす。
【0035】
本発明に従った医薬組成物は、抗癌治療において有用である。
【0036】
本発明は、適当な容器手段中に、上記で定義した化合物A、および抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグを含む市販用キットをさらに提供する。
【0037】
本発明は、適当な容器手段中に、上記で定義した化合物A、および成長因子またはこの受容体を阻害する抗体を含む市販用キットも提供する。本発明に従ったキットにおいて、上記で定義した化合物A、ならびに成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体、および/または抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグは、単一の容器手段または別々の容器手段内に存在する。
【0038】
本発明の別の実施形態は、上記のような医薬組成物または製品を含む市販用キットである。
【0039】
本発明に従ったキットは、抗腫瘍療法における、同時、別々、または逐次的な使用を意図する。
【0040】
本発明に従ったキットは、抗癌治療における使用を意図する。
【0041】
細胞増殖の制御におけるcdkの重要な役割のため、本発明の組合せは、例えば良性前立腺肥大、家族性大腸腺腫症、神経線維腫症、乾癬、アテローム性動脈硬化症に伴う血管平滑細胞増殖、肺線維症、関節炎、糸球体腎炎、ならびに手術後の狭窄および再狭窄などの様々な細胞増殖障害の治療においても有用である。
【0042】
この発明の組合せは、アポトーシスの調節剤として、癌における治療、ウイルス感染症、HIVに感染した個々におけるAIDS発生の予防、自己免疫疾患、および神経変性疾患においても有用であり得る。
【0043】
本発明の組合せの活性を、例えば、例示することを意図するが本発明を限定するものではない下記in vivo試験により示す。
【実施例】
【0044】
単クローン抗体を使用するin vivo抗腫瘍効果
Harlan(Italy)からのBalb Nu/Nu雄性マウスを、滅菌したろ紙フィルターカバー、飼料、および寝床、ならびに酸性化した水と共にケージ内に維持した。(アメリカンタイプカルチャーコレクションからの)2.5×10DU145前立腺癌細胞を、無胸腺マウスの皮下に注射した。この腫瘍モデルは、ベバシズマブが、in vivoで該モデルの血管形成および成長を阻害することが以前に実証されていたために選択した(参考までに、The Prostate36:1−10、1998を参照)。治療は、腫瘍細胞注射の6日後に開始し、このとき腫瘍は触診可能であった。ベバシズマブは治療の直前に調製し、化合物Aは化合物の公知の安定性に基づいて3日毎に調製した。
【0045】
化合物Aを、10ml/kgの容量、40mg/kgの用量で、1日2回(BID)12日間(6から17日目)、経口経路により投与した。ベバシズマブを、10ml/kgの容量、20mg/kgの用量で、腫瘍細胞の注射から6、10、14、18日目に、腹腔内に投与した。併用の場合、化合物Aを、7、8、9、11、12、13、15、16、17、19、20、および21日目に、ベバシズマブ治療の合間に投与した。腫瘍成長および体重を3日毎に測定した。腫瘍成長を測径器により計測した。2つの直径を記録し、腫瘍重量を次式:長さ(mm)×幅/2に従って算定した。抗腫瘍治療の効果を、腫瘍の指数増殖開始の遅延として評価した(参考として、Anticancer drugs7:437−60、1996を参照)。この遅延(T−C値)を、治療群(T)および対照群(C)の腫瘍が所定の大きさ(1g)に達するのに必要な(日数における)時間の相違として定義した。毒性を、体重減少に基づいて評価した。結果を下記表に表した。ベバシズマブと組み合わせた化合物Aは、明確な相乗効果をもたらした。化合物Aをベバシズマブと組み合わせた場合に観察したT−Cは、単独治療により得られたT−Cを単純に加えたことによって、予想を上回った。毒性は、治療群のいずれにおいても全く認められなかった。
【0046】
【表1】

【0047】
ドセタキセルを使用するin vivo抗腫瘍効果
Harlan(Italy)からのBalb Nu/Nu雄性マウスを、滅菌したろ紙フィルターカバー、飼料、および寝床、ならびに酸性化した水と共にケージ内に維持した。(アメリカンタイプカルチャーコレクションからの)2.5×10DU145前立腺癌細胞を、無胸腺マウスの皮下に注射した。この腫瘍モデルは、ドセタキセルが、in vivoで(参考までに、Cancer Res.2004 Oct 15、(64):7426−31を参照)、さらに、前立腺癌における、この薬物の使用に基づいても(参考までに、Approval summary:docetaxel in combination with prednisone for the treatment of androgen−independent hormone−refractory prostate cancer、Clin.Cancer Res.2004 Dec 15;10(24):8147−51を参照)、該モデルの成長を阻害することが以前に実証されていたために選択した。
【0048】
治療は、腫瘍細胞注射の10日後に開始し、このとき腫瘍は触診可能であった。ドセタキセルは治療直前に調製し、化合物Aは化合物の公知の安定性に基づいて3日毎に調製した。
【0049】
化合物Aを、10ml/kgの容量、40mg/kgの用量で、1日2回(BID)9日間(10から18日目)、経口経路により投与した。ドセタキセルを、10ml/kgの容量、10mg/kgの用量で、細胞注射の日から10、14、18日目に、静脈内経路により投与した。併用の場合、化合物Aを、11、12、13、15、16、17、19、20、および21日目に、ドセタキセル治療の合間に投与した。腫瘍成長および体重を3日毎に測定した。腫瘍成長を測径器により計測した。2つの直径を記録し、腫瘍重量を、次式:長さ(mm)×幅/2に従って算定した。抗腫瘍治療の効果を、腫瘍の指数増殖開始における遅延として評価した(参考までに、Anticancer drugs7:437−60、1996を参照)。この遅延(T−C値)を、治療群(T)および対照群(C)の腫瘍が所定の大きさ(1g)に達するのに必要な(日数における)時間の相違として定義した。毒性を、体重減少に基づいて評価した。結果を下記表に表した。ドセタキセルと組み合わせた化合物Aは、明確な相乗効果をもたらした。化合物Aをドセタキセルと組み合わせた場合に観察したT−Cは、単独治療により得られたT−C(15.27)を単純に加えたことによって、予想を上回った(20.37日)。毒性は、治療群のいずれにおいても全く認められなかった。
【0050】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物Aまたは医薬として許容できるこの塩、ならびに
成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体、および/または
抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグ
を含む組合せ。
【請求項2】
請求項1に定義される化合物A、ならびにベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、トラスツズマブ、およびペルツズマブから選択される、成長因子またはこの受容体を阻害する抗体を含む、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
成長因子またはこの受容体を阻害する抗体がベバシズマブである、請求項2に記載の組合せ。
【請求項4】
請求項1に定義される化合物A、および抗有糸分裂剤としてのエポチロンまたはタキサンを含む、請求項1に記載の組合せ。
【請求項5】
抗有糸分裂剤としてのエポチロンがイクサベピロンである、請求項4に記載の組合せ。
【請求項6】
抗有糸分裂剤としてのタキサンが、パクリタキセルまたはドセタキセルである、請求項4に記載の組合せ。
【請求項7】
化合物Aが、8−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニルアミノ]−1,4,4−トリメチル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−h]キナゾリン−3−カルボン酸メチルアミドまたは医薬として許容できるこの塩である、請求項1から6のいずれかに記載の組合せ。
【請求項8】
医薬として許容できる担体、希釈剤、または賦形剤と混合した、請求項1から7のいずれかに記載の組合せを含む医薬組成物。
【請求項9】
治療において同時に、逐次的に、または別々に使用するための組合せ製剤としての、請求項1に定義される化合物A、ならびに成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体、および/または抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグを含む医薬製品。
【請求項10】
増殖障害を治療するための薬物の調製における、請求項1に記載の組合せの使用。
【請求項11】
治療が、請求項1に定義される化合物A、ならびに成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体、および/または抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグを、同時に、逐次的に、または別々に対象に投与することを含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
請求項1に定義される化合物A、ならびに成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体、および/または抗有糸分裂剤もしくはこの誘導体もしくはプロドラッグを、同時に、逐次的に、または別々に対象に投与することを含む、増殖障害の治療方法。
【請求項13】
抗腫瘍薬での抗腫瘍治療により起こった副作用の減少を必要とするヒトを含めた哺乳動物において抗腫瘍薬での抗腫瘍療法により起こった副作用を減少する方法であり、上記で定義した化合物A、ならびに上記で定義した抗有糸分裂化合物、および/または成長因子もしくはこの受容体を阻害する抗体を含む組合せ製剤を、相乗的抗腫瘍効果を生ずるのに有効な量で、前記哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項14】
適当な容器手段中に、請求項1に定義される化合物A、および抗有糸分裂化合物またはこの誘導体もしくはプロドラッグを含む市販用キット。
【請求項15】
適当な容器手段中に、請求項1に記載の化合物A、成長因子またはこの受容体を阻害する抗体を含む市販用キット。
【請求項16】
請求項8または9に定義される医薬組成物または医薬製品を含む市販用キット。
【請求項17】
抗腫瘍療法における、同時、別々、または逐次の使用のための、請求項14から16のいずれか一項に記載のキット。

【公表番号】特表2009−526009(P2009−526009A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553730(P2008−553730)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051020
【国際公開番号】WO2007/090794
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(307012403)ネルビアーノ・メデイカル・サイエンシーズ・エツセ・エルレ・エルレ (55)
【Fターム(参考)】