説明

CMP用スラリーおよび半導体装置の製造方法

【課題】欠陥を発生させることなく、下層のCMPストッパー膜を実質的に研磨せずに、実用的な速度でシリコン酸化膜を研磨できるCMP用スラリーを提供することである。
【解決手段】実施形態のCMP用スラリーは、総量の0.5質量%以上3質量%以下で配合されたコロイダルシリカと、総量の0.1質量%以上1質量%以下で配合された重量平均分子量500以上10,000以下のポリカルボン酸とを含有し、pHが2.5以上4.5以下である。コロイダルシリカ全体の50質量%以上90質量%以下の粒子は、3nm以上10nm以下の一次粒子径を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、CMP用スラリーおよび半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体装置の製造における素子分離STI(Shallow Trench Isolation)の形成には、セリア系スラリーを用いたCMP(Chemical Mechanical polishing)が採用されている。CMPストッパー膜を有する半導体基板に溝を設けて、その上にシリコン酸化膜を形成し、余分なシリコン酸化膜をCMPにより除去してSTIが形成される。
【0003】
セリア系スラリーは、シリコン酸化膜の研磨速度が大きく、CMPストッパー膜の研磨速度は小さい。シリカ系スラリーでは達成し得なかった高い選択比でシリコン酸化膜を研磨できる点では、セリア系スラリーは有利である。
【0004】
希土類元素の使用削減が望まれるものの、セリア系スラリーに匹敵する性能を有するスラリーは未だ得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−16346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、欠陥を発生させることなく、下層のCMPストッパー膜を実質的に研磨せずに、実用的な速度でシリコン酸化膜を研磨できる、セリア系スラリーに代わるCMP用スラリーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のCMP用スラリーは、総量の0.5質量%以上3質量%以下で配合されたコロイダルシリカと、総量の0.1質量%以上1質量%以下で配合された重量平均分子量500以上10,000以下のポリカルボン酸とを含有し、pHが2.5以上4.5以下である。コロイダルシリカ全体の50質量%以上90質量%以下の粒子は、3nm以上10nm以下の一次粒子径を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】STIの製造工程を表わす断面図。
【図2】一実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明する図。
【図3】プラグの製造工程を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を具体的に説明する。
【0010】
本実施形態のCMP用スラリーは、研磨粒子としてコロイダルシリカを含有し、その量は、スラリー総量の0.5質量%以上3質量%以下に規定される。コロイダルシリカの含有量が少なすぎる場合には、実用的な速度(180nm/min以上)でシリコン酸化膜を研磨することができない。一方、コロイダルシリカの含有量が多すぎるスラリーは、シリコン酸化膜を選択的に研磨することができず、その下層のCMPストッパー膜も研磨してしまう。シリコン酸化膜の下層のCMPストッパー膜は、通常、シリコン窒化膜またはポリシリコン膜から構成される。
【0011】
CMPストッパー膜がシリコン酸化膜とともに研磨された場合には、研磨後の表面の平坦性も低下する。したがって、本実施形態のCMP用スラリーにおいては、コロイダルシリカの量を、スラリー総量の0.5質量%以上3質量%以下に規定した。コロイダルシリカの量は、スラリー総量の1質量%以上2質量%以下が好ましい。
【0012】
コロイダルシリカ全体の50質量%以上90質量%以下の粒子は、一次粒子径が3nm以上10nm以下である。コロイダルシリカの一次粒子径は、次のような手法により求められる。
【0013】
まず、コロイダルシリカのTEM像(倍率50〜100万)を得、画像中から200個の粒子をランダムに選択する。それぞれの粒子について、周辺長を円に近似し、その直径を一次粒子径とする。具体的には、一般的な画像解析ソフトによって周辺長を円に近似する。一次粒子径が3nm以上10nm以下の粒子が100個以上180個以下の場合には、本実施形態の範囲内となる。
【0014】
一次粒子径が3nm以上10nm以下の粒子が少なすぎる場合には、研磨後の表面の平坦性が低下する。しかも、CMPストッパー膜の研磨速度が高められて、所望の選択比を得ることができない。一次粒子径が3nm以上10nm以下の粒子が多すぎる場合には、CMPストッパー膜の研磨速度は、さらに大きくなって、選択比および平坦性が著しく低下する。
【0015】
シリカ総量の50質量%以上の粒子の一次粒子径が3nm未満の場合には、実用的な速度でシリコン酸化膜を研磨することができない。一方、シリカ総量の50質量%以上の一次粒子径が10nmを超えた場合には、CMPストッパー膜の研磨速度が著しく増大して、選択比を確保することができない。
【0016】
CMPストッパー膜を実質的に研磨せず、シリコン酸化膜を選択的かつ実用的な速度で研磨するためには、シリカ総量の50質量%以上90質量%以下の一次粒子径は、3nm以上10nm以下に規定される。研磨速度が10nm/min未満であれば、実質的に研磨しないとすることができる。次のようなシリカであれば、一次粒子径が3nm以上10nm以下のシリカの量を、シリカ総量の50質量%以上90質量%以下に制御することができる。例えば、アルコキシシランの加水分解で生成したシリカや、ケイ酸ナトリウム水溶液からナトリウム除去し形成するシリカなどのコロイダルシリカである。
【0017】
一次粒子径が3nm以上10nm以下の粒子が、シリカ総量の50質量%以上90質量%以下を占めていれば、残部のシリカの一次粒子径は特に限定されない。50nmを超える一次粒子径を有するシリカが、シリカ総量の1質量%程度含まれていても問題ない。シリカ総量の10質量%程度までであれば、3nm未満の一次粒子径を有するシリカが含まれていてもよい。
【0018】
研磨粒子としてのコロイダルシリカに加えて、本実施形態にかかるCMP用スラリーには、重量平均分子量が500以上10000以下内のポリカルボン酸が所定の量で含有される。ポリカルボン酸は、シリカの凝集体の形成を助ける。ポリカルボン酸の重量平均分子量が小さすぎる場合には、研磨後の表面の平坦性が低下する。ポリカルボン酸の重量平均分子量が大きすぎる場合には、実用的な速度でシリコン酸化膜を研磨することができない。したがって、ポリカルボン酸の重量平均分子量は500以上10000以下に規定した。ポリカルボン酸の重量平均分子量は、1000以上6000以下が好ましい。
【0019】
ポリカルボン酸の重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量(Mw)を適用できる。
【0020】
ポリカルボン酸の含有量が少なすぎる場合には、研磨後の表面の平坦性が低下し、ポリカルボン酸の含有量が多すぎる場合には、実用的な速度でシリコン酸化膜を研磨することができない。したがって、ポリカルボン酸の含有量は、スラリー総量の0.1質量%以上1質量%以下に規定される。ポリカルボン酸の含有量は、スラリー総量の0.3質量%以上0.6質量%以下が好ましい。
【0021】
ポリカルボン酸としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、およびこれらの塩等が挙げられる。分子量の制御性に優れ、重量平均分子量500以上10000以下の際の親水疎水バランスも良好であることから、ポリアクリル酸が特に好ましい。シリカの凝集体を適切に生成して研磨布との相互作用が十分に高められ、高速研磨が可能となる。
【0022】
さらに、本実施形態のCMP用スラリーは、pHが2.5以上4.5以下の範囲内に規定される。pHが2.5未満の場合には、シリコン窒化膜等のCMPストッパー膜の研磨速度が大きくなって、選択比を確保することができない。一方、pHが4.5より大きい場合には、CMPストッパー膜の研磨速度が大きくなるのに加えて、実用的な速度でシリコン酸化膜を研磨することができない。このため、選択比が著しく低下するのに加えて、研磨後の平坦性も低下する。
【0023】
マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸などのpH調整剤を加えることによって、目的のpHに調整することができる。本実施形態のCMP用スラリーのpHは、3以上3.5以下の範囲であることがより好ましい。
【0024】
上述したような条件を全て備えることによって、シリコン窒化膜等のCMPストッパー膜を実質的に研磨せずに、シリコン酸化膜を高い速度で研磨可能なCMP用スラリーを得ることが可能となった。
【0025】
所定のコロイダルシリカとポリカルボン酸とを水に加えて、本実施形態にかかるCMP用スラリーが得られる。水としては例えば純水を用いることができる。
【0026】
必要に応じて、非イオン性界面活性剤としてポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、およびポリビニルピロリドン等の添加剤が本実施形態のCMP用スラリーに含有されてもよい。こうした添加剤は、例えば、平坦性を高めて、かつスクラッチを低減することが目的の場合には、スラリー総量の0.01〜0.5質量%程度の量で加えることができる。
【0027】
本実施形態にかかるCMP用スラリーは、STIの製造に適用することができる。ここで、図1を参照して、STIの製造方法について説明する。まず、図1(a)に示されるような、CMPストッパー膜21を表面に有しSTIパターンBが設けられた半導体基板20を準備する。CMPストッパー膜21としては、シリコン窒化膜またはポリシリコン膜を用いることができる。
【0028】
半導体基板20とCMPストッパー膜21との間には、例えばシリコン酸化膜等が設けられていてもよい。シリコン酸化膜等をエッチングマスクとして半導体基板20をCMPストッパー膜21とともに加工して、STIパターンBが形成される。このSTIパターンBの幅および間隔は、0.01〜5μmの範囲で適宜決定することができ、STIパターンBの深さは、100〜1000nmの範囲で適宜決定することができる。
【0029】
CMPストッパー膜21上には、図1(b)に示すように、シリコン酸化膜22を形成する。シリコン酸化膜22の形成には、例えば高密度プラズマCVD法(HDP−CVD)等を採用することができる。シリコン酸化膜22の膜厚は、150〜1100nmの範囲で適宜決定することができ、全面にわたってSTIパターンB外にも形成される。シリコン酸化膜22は被研磨膜となるので、図1(b)に示される構成は、被研磨膜を有する半導体基板14と称することができる。
【0030】
次に、全面のCMPを行なって、図1(c)に示すようにSTIパターンB外のシリコン酸化膜22を除去する。STIパターンBの内部にシリコン酸化膜22が埋め込まれ、STIパターンBの外においてはCMPストッパー膜21の表面が露出される。
【0031】
シリコン酸化膜22の研磨に当たっては、図2に示すように、研磨布12が貼付されたターンテーブル11を、回転機構(図示せず)により回転させつつ、被研磨膜を有する半導体基板14を保持した研磨ヘッド13を当接させる。被研磨膜を有する半導体基板14においては、図1(b)に示したように、被研磨膜としてのシリコン酸化膜が形成されている。
【0032】
研磨荷重は100〜500hPaの範囲内で適宜選択することができ、ターンテーブルおよび研磨ヘッドの回転数は30〜120rpmの範囲内で適宜選択することができる。研磨布12の中央領域に、スラリー15としてのサンプルを、スラリー供給ノズル16から供給し、所定時間、研磨を行なって図1(c)に示すように、STIパターンB内にシリコン酸化膜が残置されてSTIが得られる。
【0033】
上述したように本実施形態にかかるCMP用スラリーは、シリコン酸化膜の研磨速度が大きく、シリコン窒化膜、ポリシリコン膜といったCMPストッパー膜の研磨速度は小さい。こうしたCMPストッパー膜は、プラグを形成する際にW膜などの金属膜の下層にも設けられる。本実施形態のCMP用スラリーに酸化剤を加えた場合には、CMPストッパー膜に対して選択的に金属膜を研磨することができる。
【0034】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、および過硫酸二アンモニウム等が挙げられる。酸化剤の含有量は、スラリー総量の0.05〜5質量%程度とすることができる。酸化剤が含有された本実施形態のCMP用スラリーは、W、Ti、Mo、Ta、Cuおよび、これらを主成分とする窒化物、酸化物、炭化物および、これら混合物などの金属膜を実用的な研磨速度(20nm/min以上)で研磨することができる。しかも、シリコン窒化膜およびポリシリコン膜の研磨速度は、10nm/min未満程度である。したがって、例えばCMPストッパー膜としてのシリコン窒化膜の上に設けられた金属膜を、高い選択比で研磨することができる。
【0035】
ここで、図3を参照して微細プラグの形成について説明する。まず、図3(a)に示すように、半導体基板30上に順次形成された絶縁膜31およびCMPストッパー膜32にホールAを形成し、バリアメタル33および配線材料膜34を形成する。半導体基板30には、半導体素子(図示せず)が形成されている。
【0036】
絶縁膜31は、例えば膜厚500〜5000nmのシリコン酸化膜とすることができ、その上のCMPストッパー膜32は、例えば膜厚10〜50nmのシリコン窒化膜とすることができる。これらに設けられるホールAは、例えば、幅が30〜100nm、被覆率0.0001〜65%の微細ホールとすることができる。ここで被覆率とは、任意の領域におけるホールの密度をさす。
【0037】
バリアメタル33は、例えばCVD法などによって全面に形成することができる。このバリアメタル33は、例えば、Ti、TiN等を用いて3〜50nmの膜厚で形成することができる。バリアメタル33上の配線材料膜34も同様に、CVD法などによって全面に形成される。配線材料膜34は、例えばW等を用いて100〜600nmの膜厚で形成することができる。図3(a)に示されるように、配線材料膜34はホールA外にも形成される。
【0038】
次に、全面のCMPを行なって、図3(b)に示すようにホールA外の配線材料膜34を除去する(1stポリッシュ)。ここでのCMPに用いられるスラリーは、配線材料膜の材質に応じて適宜選択することができる。1stポリッシュによって、ホールA内に配線材料膜34が埋め込まれ、ホールA外においてはバリアメタル33の表面が露出される。バリアメタル33は被研磨膜となるので、図3(b)に示される構成は、被研磨膜を有する半導体基板14と称することができる。
【0039】
その後、タッチアップCMPを行なって、ホールA外のバリアメタル33を除去することにより、図3(c)に示されるようにCMPストッパー膜32の表面が露出される。このとき、CMPストッパー膜32の表面の一部も除去される。こうして、CMPストッパー膜32を表面に有する絶縁膜31のホールA内に、バリアメタル33を介して配線材料膜34が埋め込まれてプラグが形成される。
【実施例】
【0040】
以下に、CMP用スラリーおよび半導体装置の製造方法の具体例を示す。
【0041】
<実施例1>
研磨粒子としてのコロイダルシリカとポリアクリル酸とを純水に加えて、サンプルNo.1のスラリーを調製した。コロイダルシリカの濃度は、スラリー総量の1.5質量%であり、コロイダルシリカ全体の60質量%の粒子の一次粒子径は、3m以上10nm以下であった。コロイダルシリカの一次粒子径は、上述したようにTEM像上の一つの独立した粒子の像から求められた。楕円形状であっても、その周辺長を円に変換し、求めた直径を一次粒子径と判断した。
【0042】
ポリアクリル酸の重量平均分子量は3,000であり、その濃度はスラリー総量の0.2質量%とした。また、pH調整剤としてのマレイン酸を加えて、pHを3.5に調整した。
【0043】
さらに、コロイダルシリカ全体の60質量%の粒子の一次粒子径を次のように変更する以外はNo.1のサンプルと同様にして、No.2,3のサンプルを調製した。
【0044】
No.2:3nm未満
No.3:10nmより大きい
各スラリーを用いてSTI(Shallow Trench Isolation)を製造し、研磨特性を調べた。
【0045】
CMPストッパー膜21として、半導体基板20上にシリコン窒化膜を形成し、図1(a)に示すようにSTIパターンBを形成した。STIパターンBの幅および間隔は、いずれも1μmである(ライン/スペース:1μm/1μm)。また、STIパターンBの深さは、200nmである。
【0046】
CMPストッパー膜21上には、図1(b)に示すように、膜厚280nmのシリコン酸化膜22を、高密度プラズマCVD法(HDP−CVD)等により形成した。次に、全面のCMPを行なって、図1(c)に示すようにSTIパターンB外のシリコン酸化膜22を除去した。
【0047】
シリコン酸化膜22の研磨に当たっては、図2に示すように、研磨布12が貼付されたターンテーブル11を、回転機構(図示せず)により100rpmで回転させつつ、被研磨膜を有する半導体基板14を保持した研磨ヘッド13を200hPaの研磨荷重で当接させた。ここで用いた研磨布12はIC1000(ニッタ・ハース社)製である。研磨ヘッド13は、図示しない回転機構により102rpmで回転させ、研磨布12の中央領域に、スラリー15としてのサンプルを、スラリー供給ノズル16から供給した。
【0048】
所定時間、研磨を行なうことによって、STIパターンBの内部にシリコン酸化膜22が埋め込まれ、STIパターンBの外においてはCMPストッパー膜21の表面が露出された。
【0049】
研磨速度(SiO2およびSiN)、SiO2/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数を、以下の基準で評価した。研磨時間は、研磨テーブルを回転させるモータのトルク電流の変化により決定した。平坦性は、ライン/スペース(1μm/1μmパターン)を、原子間力顕微鏡(AFM)で測定して求め、スクラッチは、ライン/スペース(1μm/1μmパターン)を、ウエハ欠陥検査装置 KLA2815(ケーエルエー・テンコール社製)で測定して求めた。具体的には、KLA2815で総欠陥数をカウントし、その欠陥をランダムに50個SEM観察を行なって欠陥を分類した。下記数式よってスクラッチ数を求めた。
【0050】
スクラッチ数=(SEMで観測されたスクラッチ数)/50×総欠陥数
SiO2研磨速度
A:180nm/min以上
B:150nm/min以上180nm/min未満
C:150nm/min未満
SiN研磨速度
A:10nm/min未満
B:10nm/min以上20nm/min未満
C:20nm/min以上
SiO2/SiN選択比
A:15以上
B:10以上15未満
C:10未満
平坦性
A:20nm未満
B:20nm以上30nm未満
C:30nm以上
スクラッチ
A:10未満
B:10以上30未満
C:30以上
いずれの評価も、“C”は、NGである。SiO2/SiN選択比が“B”であっても、平坦性およびスクラッチの加工精度の評価が“A”であればOKと判断する。サンプルNo.1〜3のスラリーを用いた結果を、下記表1にまとめる。
【表1】

【0051】
上記表1に示されるように、シリカ全体の60質量%の粒子の一次粒子径が3nm未満の場合(No.2)には、実用的な速度でシリコン酸化膜を研磨することができない。しかも研磨後の表面の平坦性は劣化し、スクラッチ数も増加する。一方、シリカ全体の60質量%の粒子の一次粒子径が10nmを超える場合(No.3)には、シリコン窒化膜で研磨を停止することができず、選択比が得られない。平坦性はさらに低下し、スクラッチ数も増加する。
【0052】
一次粒子径が3nm以上10nm以下の粒子がシリカ全体の60質量%を占める場合には、研磨速度(SiO2およびSiN)、選択比、平坦性、およびスクラッチ数の全ての条件を満たすことができる。
【0053】
次に、以下の点を変更する以外はNo.1のサンプルと同様の処方で、No.4〜28のサンプルを調製した。
【0054】
一次粒子径が3nm以上10nm以下のシリカの濃度を、シリカ全体の40質量%、50質量%、75質量%、90質量%、100質量%に変更して、No.4,5,6,7、および8のサンプルを得た。
【0055】
サンプル4〜8を用いた以外は前述と同様の条件でSTIを製造し、その結果を調べた。研磨速度(SiO2およびSiN)、SiO2/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数を前述と同様に評価し、下記表2にまとめる。
【表2】

【0056】
上記表2に示されるように、一次粒子径が3nm以上10nm以下のシリカが、シリカ全体の40質量%の場合(No.4)には、シリコン窒化膜の研磨速度が大きくなってSiO2/SiN選択比が低下する。さらに、平坦性の低下が大きく、スクラッチ数も増加している。全シリカの一次粒子径が3nm以上10nm以下の場合(No.8)には、シリコン窒化膜の研磨速度は、よりいっそう大きくなり、選択比の低下も大きい。平坦性は劣り、スクラッチ数も増加している。
【0057】
一次粒子径が3nm以上10nm以下のシリカが、シリカ全体の50質量%以上90質量%以下を占めていれば、研磨速度(SiO2およびSiN)、SiO2/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数の全ての条件を満たすことができる。
【0058】
スラリー総量に対するシリカ濃度を、0.3質量%、0.5質量%、1質量%、3質量%、および5質量%にそれぞれ変更して、No.9,10,11,12,および13のサンプルを得た。
【0059】
サンプル9〜13を用いた以外は前述と同様の条件でSTIを製造し、その結果を調べた。研磨速度(SiO2およびSiN)、SiO2/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数を前述と同様に評価し、下記表3にまとめる。
【表3】

【0060】
上記表3に示されるように、シリカの濃度がスラリー総量の0.3質量%の場合(No.9)には、実用的な速度でシリコン酸化膜を研磨することができない。一方、シリカの濃度がスラリー総量の5質量%の場合(No.13)には、シリコン窒化膜で研磨を停止することができず、選択比、平坦性が低下する。
【0061】
スラリー総量の0.5質量%以上3質量%以下のシリカが含有されている場合には、研磨速度(SiO2およびSiN)、SiO2/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数の全ての条件を満たすことができる。
【0062】
ポリアクリル酸の重量平均分子量を、100、500、10000、および20000にそれぞれ変更して、No.14,15,16、および17のサンプルを得た。
【0063】
サンプル14〜17を用いた以外は前述と同様の条件でSTIを製造し、その結果を調べた。研磨速度(SiO2およびSiN)、SiO2/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数を前述と同様に評価し、下記表4にまとめる。
【表4】

【0064】
上記表4に示されるように、ポリアクリル酸の重量平均分子量が100の場合(No.14)には、所望の平坦性が得られず、20000の場合(No.17)には実用的な速度でSiO2膜を研磨することができない。また、平坦性およびスクラッチの評価も下がる。
【0065】
所定の量で含有されるポリアクリル酸の重量平均分子量が500以上10,000以下の場合には、研磨速度(SiO2およびSiN)、SiO2/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数の全ての条件を満たすことができる。
【0066】
スラリー総量に対するポリアクリル酸の濃度を、0.05質量%、0.1質量%、0.5質量%、1質量%、および2質量%にそれぞれ変更して、No.18,19,20,21および22のサンプルを得た。
【0067】
サンプル18〜22を用いた以外は前述と同様の条件でSTIを製造し、その結果を調べた。研磨速度(SiO2およびSiN)、SiO2/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数を前述と同様に評価し、下記表5にまとめる。
【表5】

【0068】
上記表5に示されるように、ポリアクリル酸の濃度がスラリー総量の0.05質量%の場合(No.18)には、所望の平坦性が得られず、スクラッチ数も増加する。ポリアクリル酸の濃度がスラリー総量の2質量%の場合(No.22)には、実用的な速度でシリコン酸化膜を研磨することができない。
【0069】
スラリー総量の0.1質量%以上1質量%以下で、所定の重量平均分子量を有するポリアクリル酸が含有された場合には、研磨速度(SiO2およびSiN)、SiO2/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数の全ての条件を満たすことができる。
【0070】
pHを2,2.5,3,4,4.5、および5にそれぞれ変更して、No.23,24,25,26,27および28のサンプルを得た。
【0071】
こうして得られたサンプル23〜28を用いた以外は前述と同様の条件でSTIを製造し、その結果を調べた。研磨速度(SiO2およびSiN)、SiO2/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数を、前述と同様に評価し、下記表6にまとめる。
【表6】

【0072】
上記表6に示されるように、スラリーのpHが2の場合(No.23)には、シリコン窒化膜で研磨を停止することができない。一方、スラリーのpHが5(No.28)の場合には、所望の速度でシリコン酸化膜を研磨できないのに加えて、シリコン窒化膜で研磨を停止することができない。このため、選択比が得られず、平坦性も劣っている。
【0073】
スラリーのpHが2.5以上4.5以下の場合には、研磨速度(SiO2およびSiN)、SiO2/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数の全ての条件を満たすことができる。
【0074】
<実施例2>
CMPストッパー膜として、膜厚30nmのポリシリコン膜を用いた以外は、実施例1と同様の手法でSTIを製造した。シリコン酸化膜の研磨には、No.29〜31のスラリーを用いた。
【0075】
No.29:前述のサンプルNo.1
No.30:DLS2(日立化成社製)
No.31:SS25(キャボット社製)
なお、DLS2(日立化成社製)は、一般的な酸化セリウムスラリーであり、SS25は一般的なシリカスラリーである。
【0076】
実施例1と同様の条件でシリコン酸化膜を研磨し、研磨速度(SiO2およびPoly Si)、SiO2/Poly Si選択比、平坦性、およびスクラッチ数を、以下の基準で評価した。
【0077】
SiO2研磨速度
A:180nm/min以上
B:150nm/min以上180nm/min未満
C:150nm/min未満
Poly Si研磨速度
A:10nm/min未満
B:10nm/min以上20nm/min未満
C:20nm/min以上
SiO2/Poly Si選択比
A:15以上
B:10以上15未満
C:10未満
平坦性
A:20nm未満
B:20nm以上30nm未満
C:30nm以上
スクラッチ
A:10未満
B:10以上30未満
C:30以上
いずれの評価も、“C”はNGである。SiO2/Poly Si選択比が“B”であっても、平坦性およびスクラッチの加工精度の評価が“A”であればOKと判断する。サンプルNo.29〜31のスラリーを用いた結果を、下記表7にまとめる。
【表7】

【0078】
上記表7に示されるように、一般的なシリカスラリー(No.31)の場合には、ポリシリコン膜で研磨を停止することができない。一方、一般的なセリアスラリー(No.30)の場合には、研磨速度(SiO2およびPoly Si)、SiO2/Poly Si選択比、平坦性の評価は高いが、スクラッチを抑制することができない。
【0079】
本実施例のスラリー(No.29)は、スクラッチを発生させることなく、ポリシリコン膜上に形成されたシリコン酸化膜を、実用的な速度で選択的に研磨できることが確認された。
【0080】
<実施例3>
サンプルNo,1に1質量%の過酸化水素を添加して、No.32のサンプルを調製し、サンプルNo.1に1質量%の過硫酸アンモニウムを添加して、No.33のサンプルを調製した。
【0081】
また、W7203(pH2.5、キャボット社製)に1質量%の過酸化水素を添加して、No.34のサンプルとし、W7573A(pH2.5、キャボット社製)に1質量%の過酸化水素を添加して、No.35のサンプルとした。W7203およびW7573Aは、タッチアップCMPに用いられる一般的なスラリーである。
【0082】
各スラリーを用いて、プラグ形成におけるタッチアップCMPを行なって、研磨特性を調べた。
【0083】
半導体基板30上に、絶縁膜31として膜厚300nmのシリコン酸化膜を形成し、さらに、その上にCMPストッパー膜32として膜厚20nmのシリコン窒化膜を形成した。図3(a)に示されるように、CMPストッパー膜32および絶縁膜31にホールAを形成した。ホールAは、幅50nm、被覆率50%の微細ホールとした。
【0084】
膜厚5nmのTiN膜をCVD法により全面に堆積して、バリアメタル33を形成し、このバリアメタル33上には、CVD法により膜厚300nmのW膜を堆積して配線材料膜34を形成した。
【0085】
硝酸第二鉄(5wt%)とフュームドアルミナ(1wt%)との混合液をスラリーとして用いて、全面のCMPを行なって、図3(b)に示すようにホールA外の配線材料膜34を除去した(1stポリッシュ)。1stポリッシュによって、ホールA内に配線材料膜34が埋め込まれ、ホールA外においてはバリアメタル33の表面が露出された。
【0086】
次に、タッチアップCMPを行なって、ホールA外のバリアメタル33を除去することにより、図3(c)に示されるようにCMPストッパー膜32の表面が露出された。このとき、CMPストッパー膜32の表面の一部も除去された。こうして、CMPストッパー膜32を表面に有する絶縁膜31のホールA内に、TiN膜からなるバリアメタル33を介してW膜からなる配線材料膜34が埋め込まれてプラグが形成された。
【0087】
タッチアップCMPは、実施例1と同様の条件で行なった。面内均一性を配慮して研磨時間を設定し、バリアメタル膜33が完全に除去された時間の1.3倍の時間とした。
【0088】
研磨速度(W、TiN、およびSiN)、W/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数を、以下の基準で評価した。平坦性は、ホール幅/スペース(50nm/50nm)の領域2mmをAFMで測定して求めた。スクラッチは、ホール幅/スペース(50nm/50nm)の領域2mmをKLAで測定して求めた。
【0089】
W研磨速度
A:40nm/min以上
B:20nm/min以上40nm/min未満
C:20nm/min未満
TiN研磨速度
A:40nm/min以上
B:20nm/min以上40nm/min未満
C:20nm/min未満
SiN研磨速度
A:10nm/min未満
B:10nm/min以上20nm/min未満
C:20nm/min以上
W/SiN選択比
A:4以上
B:2以上4未満
C:2未満
平坦性
A:20nm未満
B:20nm以上30nm未満
C:30nm以上
スクラッチ
A:10未満
B:10以上30未満
C:30以上
いずれの評価も、“C”はNGである。W/SiN選択比が“B”であっても、平坦性およびスクラッチの加工精度の評価が“A”であればOKと判断する。サンプルNo.32〜35のスラリーを用いた結果を、下記表8にまとめる。
【表8】

【0090】
上記表8に示されるように、いずれのサンプルが用いられた場合も、W膜およびTiN膜といった金属膜の研磨速度は大きい。酸化剤が加えられた市販品(No.34、35)の場合には、W膜のみならずSiN膜の研磨速度も大きいことから、SiN膜で研磨を停止することができない。その結果、選択比および平坦性が低下し、しかも、スクラッチも多数発生する。これに対して、本実施形態にかかるスラリーサンプルが用いられた場合(No.32,33)には、研磨速度に加えて、W/SiN選択比、平坦性、およびスクラッチ数の全ての条件を満たすことができる。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
20…半導体基板; 21…シリコン窒化膜; 22…シリコン酸化膜
B…STIパターン; 11…ターンテーブル; 13…研磨ヘッド
14…被研磨膜を有する半導体基板; 15…スラリー; 16…スラリー供給ノズル
30…半導体基板; 31…絶縁膜; 32…CMPストッパー膜
33…バリアメタル; 34…配線材料膜; A…ホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
総量の0.5質量%以上3質量%以下で配合されたコロイダルシリカであって、その50質量%以上90質量%以下の粒子は3nm以上10nm以下の一次粒子径を有するコロイダルシリカと、
総量の0.1質量%以上1質量%以下で配合された重量平均分子量500以上10,000以下のポリカルボン酸とを含有し、
pHが2.5以上4.5以下の範囲内であることを特徴とするCMP用スラリー。
【請求項2】
酸化剤をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のCMP用スラリー。
【請求項3】
CMPストッパー膜を有する半導体基板に、前記CMPストッパー膜を介して凹部を形成する工程と、
前記凹部の内部および前記CMPストッパー膜の上にシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記CMPストッパー膜上に堆積された前記シリコン酸化膜をCMPにより除去して、前記CMPストッパー膜を露出する工程とを具備し、
前記シリコン酸化膜のCMPは、請求項1に記載のCMP用スラリーを用いて行なわれることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
CMPストッパー膜を有する半導体基板に、前記CMPストッパー膜を介して凹部を形成する工程と、
前記凹部の内部および前記CMPストッパー膜の上に金属膜を形成する工程と、
前記CMPストッパー膜上に堆積された前記金属膜をCMPにより除去して、前記CMPストッパー膜を露出する工程とを具備し、
前記金属膜のCMPは、請求項2に記載のCMP用スラリーを用いて行なわれることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記CMPストッパー膜は、シリコン窒化膜またはポリシリコン膜であることを特徴とする請求項3または4に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−74036(P2013−74036A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211001(P2011−211001)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】