説明

CMP研磨液、基板の研磨方法及び電子部品

【課題】ポリシリコン膜の研磨速度に対して酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度を向上させることが可能であり、ポリシリコン膜をストッパ膜として酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜を研磨する研磨工程に適用することが可能なCMP研磨液を提供する。
【解決手段】本発明のCMP研磨液は、第1の液と第2の液とを混合して使用されるCMP研磨液であって、第1の液がセリウム系砥粒と分散剤と水とを含有し、第2の液がポリアクリル酸化合物と界面活性剤とpH調整剤とリン酸化合物と水とを含有し、第2の液のpHが6.5以上であり、リン酸化合物の含有量が所定範囲となるように第1の液と第2の液とが混合される。また、本発明のCMP研磨液は、セリウム系砥粒と、分散剤と、ポリアクリル酸化合物と、界面活性剤と、pH調整剤と、リン酸化合物と、水とを含有し、リン酸化合物の含有量が所定範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMP研磨液、基板の研磨方法及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の超々大規模集積回路では、実装密度を更に高める傾向にあり、種々の微細加工技術が研究、開発され、デザインルールでは、サブハーフミクロンのオーダーになっている。このような厳しい微細化の要求を満足するために開発されている技術の一つに、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)技術がある。
【0003】
このCMP技術は、半導体装置の製造工程において、露光を施す層をほぼ完全に平坦化することで露光技術の負担を軽減し、歩留まりを高いレベルにて安定させることができる。そのため、CMP技術は、例えば、層間絶縁膜、BPSG膜の平坦化、シャロー・トレンチ分離等を行う際に、必須となる技術である。
【0004】
現在、一般的に用いられるCMP研磨液は、酸化ケイ素膜を主な研磨対象とするCMP研磨液であり、酸化ケイ素膜やポリシリコン膜が、窒化ケイ素膜よりも、5倍以上速く研磨される特性があるのが通例である。
【0005】
一方、窒化ケイ素膜に対しては、実用的な速度で研磨を行える研磨液がなかった。そこで、特許文献1のように、リン酸を1.0質量%以上添加することで、窒化ケイ素膜の研磨速度を増加させ、窒化ケイ素膜の研磨工程の実用を可能にする技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3190742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、CMP技術を用いた回路形成プロセスは様々なものが提案されており、その中の一つとして、酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜を研磨し、ストッパ膜であるポリシリコン膜が露出したところで研磨を終了させるプロセスがある。より具体的には、例えば、45nmノード以降の、Logicデバイスでの適用が予想されるHigh−k/metal Gateプロセス(酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜を研磨し、ポリシリコン膜が露出したところで研磨を終了するプロセス)がある。
【0008】
前記特許文献1に開示される技術は、このような、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜とを実用的な研磨速度で研磨し、ポリシリコン膜をストッパ膜として研磨する研磨工程の実用を可能にするものではない。そして、特許文献1に開示される技術は、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜との2種の膜をポリシリコン膜に対して選択的に研磨する研磨工程に適用できない。
【0009】
本発明は、ポリシリコン膜の研磨速度に対して酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度を向上させることが可能であり、ポリシリコン膜をストッパ膜として酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜を研磨する研磨工程に適用することが可能なCMP研磨液、このCMP研磨液を用いた基板の研磨方法及びこの研磨方法により研磨された基板を備える電子部品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、第1の液と第2の液とを混合して使用されるCMP研磨液であって、第1の液がセリウム系砥粒と、分散剤と、水とを含有し、第2の液がポリアクリル酸化合物と、界面活性剤と、pH調整剤と、リン酸又はリン酸誘導体の少なくとも一方のリン酸化合物と、水とを含有し、第2の液のpHが6.5以上であり、リン酸化合物の含有量がCMP研磨液全質量を基準として0.01〜1.0質量%となるように第1の液と第2の液とが混合される、CMP研磨液を提供する。
【0011】
このような本発明のCMP研磨液は、ポリシリコン膜の研磨速度に対して酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度を向上させることが可能であり、ポリシリコン膜をストッパ膜として酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜を研磨する研磨工程に適用することが可能である。
【0012】
第2の液は、pH調整剤としてpKaが8以上である塩基性化合物を含有することできる。
【0013】
第2の液は、界面活性剤として非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。この場合、ポリシリコン膜の研磨速度に対して酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度を更に向上させることができる。
【0014】
第1の液のpHは7.0以上であることが好ましい。
【0015】
第1の液は、セリウム系砥粒として酸化セリウム粒子を含有することが好ましい。また、第1の液がセリウム系砥粒として酸化セリウム粒子を含有し、セリウム系砥粒の平均粒径が0.01〜2.0μmであることがより好ましい。
【0016】
第1の液は、分散剤としてポリアクリル酸系分散剤を含有することが好ましい。この場合、ポリシリコン膜の研磨速度に対して酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度を更に向上させることができる。
【0017】
また、本発明は、セリウム系砥粒と、分散剤と、ポリアクリル酸化合物と、界面活性剤と、pH調整剤と、リン酸又はリン酸誘導体の少なくとも一方のリン酸化合物と、水とを含有し、リン酸化合物の含有量がCMP研磨液全質量を基準として0.01〜1.0質量%である、CMP研磨液を提供する。
【0018】
このような本発明のCMP研磨液は、ポリシリコン膜の研磨速度に対して酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度を向上させることが可能であり、ポリシリコン膜をストッパ膜として酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜を研磨する研磨工程に適用することが可能である。
【0019】
本発明のCMP研磨液は、pH調整剤としてpKaが8以上である塩基性化合物を含有することができる。
【0020】
本発明のCMP研磨液は、界面活性剤として非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。この場合、ポリシリコン膜の研磨速度に対して酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度を更に向上させることができる。
【0021】
本発明のCMP研磨液は、セリウム系砥粒として酸化セリウム粒子を含有することが好ましい。また、本発明のCMP研磨液は、セリウム系砥粒として酸化セリウム粒子を含有し、セリウム系砥粒の平均粒径が0.01〜2.0μmであることが好ましい。
【0022】
本発明のCMP研磨液は、分散剤としてポリアクリル酸系分散剤を含有することが好ましい。この場合、ポリシリコン膜の研磨速度に対して酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度を更に向上させることができる。
【0023】
本発明は、少なくとも一方面上に被研磨膜が形成された基板の該被研磨膜を研磨定盤の研磨布に押圧した状態で、上記CMP研磨液を被研磨膜と研磨布との間に供給しながら、基板と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨膜を研磨する研磨工程を備える、基板の研磨方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、セリウム系砥粒、分散剤及び水を含有する第1の液と、ポリアクリル酸化合物、界面活性剤、pH調整剤、リン酸又はリン酸誘導体の少なくとも一方のリン酸化合物、及び、水を含有しかつpHが6.5以上である第2の液とを混合し、リン酸化合物の含有量がCMP研磨液全質量を基準として0.01〜1.0質量%であるCMP研磨液を得る研磨液調製工程と、CMP研磨液を用いて、少なくとも一方面上に被研磨膜が形成された基板の該被研磨膜を研磨する研磨工程と、を備える、基板の研磨方法を提供する。
【0025】
本発明の基板の研磨方法は、ポリシリコン膜の研磨速度に対して酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度を向上させることが可能であり、ポリシリコン膜をストッパ膜として酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜を研磨する研磨工程に適用することが可能である。
【0026】
本発明の基板の研磨方法において、第1の液のpHは7.0以上であることが好ましい。本発明の基板の研磨方法において、基板の上記一方面が段差を有していてもよい。本発明の基板の研磨方法において、基板と被研磨膜との間にポリシリコン膜が形成されており、研磨工程では、ポリシリコン膜をストッパ膜として被研磨膜を研磨してもよい。さらに、本発明の基板の研磨方法において、基板に被研磨膜として酸化ケイ素膜又は窒化ケイ素膜の少なくとも一方が形成されていてもよい。
【0027】
本発明は、上記基板の研磨方法により研磨された基板を備える電子部品を提供する。このような本発明の電子部品は、ポリシリコン膜の研磨速度に対して酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度を向上させることが可能な基板を備えることにより、加工の微細化に対応した優れた品質を有する。
【発明の効果】
【0028】
本発明のCMP研磨液及びこのCMP研磨液を用いた基板の研磨方法は、ポリシリコン膜の研磨速度を抑制しつつ、酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜を充分に実用的な速度で研磨することが可能であり、ポリシリコン膜をストッパ膜として酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜を研磨する研磨工程に適用することが可能である。また、本発明の研磨方法により研磨された基板を備える電子部品は、加工の微細化に対応した優れた品質を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る研磨方法を示す模式断面図である。
【図2】実施例で用いたパターンウェハを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(CMP研磨液)
本実施形態のCMP研磨液は、セリウム系砥粒、分散剤、ポリアクリル酸化合物、界面活性剤、pH調整剤、リン酸又はリン酸誘導体の少なくとも一方のリン酸化合物、及び、水を含有する。本実施形態のCMP研磨液は、スラリー(第1の液)と添加液(第2の液)とを混合して得ることができる。
【0031】
{スラリー}
まず、スラリーについて説明する。スラリーは、セリウム系砥粒、分散剤及び水を含有する。スラリーは、セリウム系砥粒粒子が、分散剤により水中に分散していることが好ましい。
【0032】
<セリウム系砥粒>
セリウム系砥粒とは、セリウムを構成元素として含む砥粒として定義される。本実施形態のCMP研磨液は、セリウム系砥粒として酸化セリウム、水酸化セリウム、硝酸アンモニウムセリウム、酢酸セリウム、硫酸セリウム水和物、臭素酸セリウム、臭化セリウム、塩化セリウム、シュウ酸セリウム、硝酸セリウム及び炭酸セリウムから選択される少なくとも1種の砥粒を含有することが好ましく、酸化セリウム粒子を含有することがより好ましく、酸化セリウム粒子からなることが更に好ましい。酸化セリウム粒子を作製する方法としては、特に制限はないが、例えば、焼成又は過酸化水素等による酸化法を用いることができる。酸化セリウム粒子は、例えば、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、しゅう酸塩等のセリウム化合物を酸化することによって得ることができる。前記焼成の温度は、350〜900℃が好ましい。
【0033】
セリウム系砥粒は、結晶粒界を持つ多結晶体のセリウム系砥粒を含むことが好ましい。このような多結晶体のセリウム系砥粒は、研磨中に細かくなると同時に活性面が次々と現れるため、酸化ケイ素膜に対する高い研磨速度を高度に維持できる。
【0034】
セリウム系砥粒の結晶子径は1〜400nmであることが好ましい。結晶子径は、TEM写真画像又はSEM画像により測定できる。TEOS−CVD法等で形成される酸化ケイ素膜の研磨に使用する酸化セリウムスラリー(以下、単に「スラリー」ともいう。)では、酸化セリウム粒子の結晶子径が大きく、結晶歪みが少ない程、すなわち結晶性が良い程、高速研磨が可能である。なお、結晶子径とは、セリウム系砥粒の単結晶の一粒の大きさであり、結晶粒界を持つ多結晶体である場合は、多結晶体を構成する粒子一つの大きさをいう。
【0035】
セリウム系砥粒が凝集している場合は、機械的に粉砕することが好ましい。粉砕方法としては、例えば、ジェットミル等による乾式粉砕や、遊星ビーズミル等による湿式粉砕が好ましい。ジェットミルとしては、例えば、「化学工学論文集」、第6巻第5号、(1980)、527〜532頁に説明されているものを用いることができる。
【0036】
このようなセリウム系砥粒を、分散媒である水中に分散させてスラリーを得る。分散方法としては、後述する分散剤を用いて、例えば、通常の攪拌機による分散処理の他に、ホモジナイザ、超音波分散機、湿式ボールミル等を用いることができる。
【0037】
上記の方法により分散されたセリウム系砥粒を、更に微粒子化する方法としては、例えば、スラリーを小型遠心分離機で遠心分離後に強制沈降させ、上澄み液のみ取り出すことによる、沈降分級法を用いることができる。他に、微粒子化する方法として、分散媒中のセリウム系砥粒同士を高圧で衝突させる高圧ホモジナイザを用いてもよい。
【0038】
スラリー中のセリウム系砥粒の平均粒径は、0.01〜2.0μmが好ましく、0.08〜0.5μmがより好ましく、0.08〜0.4μmが更に好ましい。また、本実施形態のCMP研磨液が酸化セリウム粒子を含有し、かつ、セリウム系砥粒の平均粒径が0.01〜2.0μmであることが好ましい。平均粒径が0.01μm以上であると、酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度を更に向上させることができる。平均粒径が2.0μm以下であると、被研磨膜に研磨傷が付くことを抑制することができる。
【0039】
セリウム系砥粒の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布計で測定した体積分布のメジアン径を指すものである。このような平均粒径は、具体的には、株式会社堀場製作所製のLA−920(商品名)等を用いて得ることができる。まず、セリウム系砥粒を含むサンプル(スラリー又はCMP研磨液でもよい)を、He−Neレーザーに対する測定時透過率(H)が60〜70%になるように希釈又は濃縮して、測定用サンプルを得る。そして、この測定サンプルをLA−920に投入して測定を行い、得られた算術平均径(meanサイズ)とする。
【0040】
セリウム系砥粒の含有量は、CMP研磨液全質量を基準として0.2〜3.0質量%が好ましく、0.3〜2.0質量%がより好ましく、0.5〜1.5質量%が更に好ましい。セリウム系砥粒の含有量が3.0質量%以下であると、添加液による研磨速度調整の効果が更に向上する。また、セリウム系砥粒の含有量が0.2質量%以上であると、酸化ケイ素膜の研磨速度が更に向上し、所望の研磨速度を容易に得ることができる。
【0041】
<分散剤>
本実施形態のCMP研磨液に用いる分散剤は、水に溶解可能で、前記セリウム系砥粒を分散させることができる化合物であれば、それ以上の制限を加えるものではない。分散剤としては、一般的には、水に対する溶解度が、0.1〜99.9質量%となる化合物が好ましく、例えば、水溶性陰イオン性分散剤、水溶性非イオン性分散剤、水溶性陽イオン性分散剤、水溶性両性分散剤等が挙げられ、後述するポリカルボン酸型高分子分散剤が好ましい。
【0042】
前述した水溶性陰イオン性分散剤としては、例えば、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリカルボン酸型高分子分散剤等が挙げられる。
【0043】
前述したポリカルボン酸型高分子分散剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和二重結合を有するカルボン酸単量体の重合体、不飽和二重結合を有するカルボン酸単量体と他の不飽和二重結合を有する単量体との共重合体及びそれらのアンモニウム塩やアミン塩等が挙げられる。ポリカルボン酸型高分子分散剤としては、ポリアクリル酸系分散剤が好ましく、共重合成分としてアクリル酸アンモニウム塩を構成単位とした高分子分散剤がより好ましい。
【0044】
前述した共重合成分としてアクリル酸アンモニウム塩を構成単位とした高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸アンモニウム塩、アクリル酸アルキルとアクリル酸との共重合体のアンモニウム塩等を好ましく用いることができる。また、共重合成分としてアクリル酸アンモニウム塩を構成単位とした高分子分散剤の少なくとも1種類と、その他の分散剤から選ばれた少なくとも1種類とを含む2種類以上の分散剤として使用することもできる。
【0045】
ポリカルボン酸型高分子分散剤の重量平均分子量は、100000以下であることが好ましい。尚、重量平均分子量は、例えば、以下の条件でGPCを用いて測定することができる。
(条件)
試料:10μL
標準ポリスチレン:東ソー株式会社製標準ポリスチレン(分子量;190000、17900、9100、2980、578、474、370、266)
検出器:株式会社日立製作所社製、RI−モニター、商品名「L−3000」
インテグレーター:株式会社日立製作所社製、GPCインテグレーター、商品名「D−2200」
ポンプ:株式会社日立製作所社製、商品名「L−6000」
デガス装置:昭和電工株式会社製、商品名「Shodex DEGAS」
カラム:日立化成工業株式会社製、商品名「GL−R440」、「GL−R430」、「GL−R420」をこの順番で連結して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:23℃
流速:1.75mL/分
測定時間:45分
【0046】
前述した水溶性非イオン性分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
【0047】
前述した水溶性陽イオン性分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
【0048】
水溶性両性分散剤としては、例えば、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0049】
前述した各種分散剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。尚、スラリーと添加液とを混合して得られたCMP研磨液は、分散剤として後述するポリアクリル酸化合物や界面活性剤と同様の物質を使用できる。この場合には、スラリーと添加液とを混合して得られたCMP研磨液は、スラリー由来の物質と添加液由来の物質とを含むこととなる。
【0050】
スラリーにおける分散剤の含有量は、砥粒を充分分散でき、保管中に凝集沈降するのを抑制できる点で、スラリー中の砥粒の全質量を基準として、1.0〜5.0質量%が好ましく、1.0〜4.0質量%がより好ましい。
【0051】
半導体素子の製造に係る研磨にCMP研磨液を使用する場合には、例えば、全分散剤中の不純物イオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属、ハロゲン原子及びイオウ原子等)の含有率を、CMP研磨液全体を基準として質量比で10ppm以下に抑えることが好ましい。
【0052】
<スラリーのpH>
スラリーのpHは、7.0以上であることが好ましく、7.0〜12.0がより好ましく、7.0〜11.0が更に好ましい。pHが7.0以上であると、粒子が凝集することを抑制することができる。pHが12.0以下であると、良好な平坦性を得ることができる。
【0053】
<水>
本実施形態のCMP研磨液において、スラリー、添加液又はそれらの濃縮液の希釈に用いる媒体である水は、特に制限はないが、脱イオン水、超純水が好ましい。水の含有量は、他の含有成分の含有量の残部でよく、特に限定されない。
【0054】
{添加液}
次に、添加液について説明する。添加液は、ポリアクリル酸化合物、界面活性剤、pH調整剤、リン酸又はリン酸誘導体の少なくとも一方のリン酸化合物、及び、水を含有する。
【0055】
<ポリアクリル酸化合物>
添加液は、添加液成分の1成分として、ポリアクリル酸化合物を含有する。ポリアクリル酸化合物としては、アクリル酸単独の重合物で形成されるポリアクリル酸や、アクリル酸と水溶性のアクリル酸アルキルとの共重合体が挙げられる。ポリアクリル酸化合物としては、例えば、ポリアクリル酸、アクリル酸とアクリル酸メチルとの共重合体、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、アクリル酸とアクリル酸エチルとの共重合体等を用いることができ、中でもポリアクリル酸を用いることが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
ポリアクリル酸化合物の重量平均分子量は、500000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が500000以下であると、例えばポリアクリル酸を用いた場合、ポリアクリル酸が被研磨膜に均一に吸着し易くなる。尚、重量平均分子量は、ポリカルボン酸型高分子分散剤と同様の条件でGPCを用いて測定することができる。
【0057】
ポリアクリル酸化合物の含有量は、CMP研磨液全質量を基準として、0.05〜2.0質量%が好ましく、0.08〜1.8質量%がより好ましく、0.10〜1.5質量%が更に好ましい。ポリアクリル酸化合物の含有量が2.0質量%以下であると、酸化ケイ素膜の研磨速度を更に向上させることができる。ポリアクリル酸化合物の含有量が0.05質量%以上であると、平坦性を向上させることができる。尚、前記分散剤としてポリアクリル酸化合物を使用する場合には、分散剤としてのポリアクリル酸化合物と、添加液中のポリアクリル酸化合物の合計量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0058】
<界面活性剤>
添加液は、添加液成分の1成分として、界面活性剤を含有する。界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上の組み合わせて用いることができる。上記界面活性剤の中でも、特に非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0059】
前述した非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル誘導体、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、アセチレン系ジオールのオキシエチレン付加体等のエーテル型界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等のエステル型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のアミノエーテル型界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル等のエーテルエステル型界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド等のアルカノールアミド型界面活性剤、アセチレン系ジオールのオキシエチレン付加体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0060】
界面活性剤の含有量は、CMP研磨液全質量を基準として、0.01〜1.0質量%が好ましく、0.02〜0.7質量%がより好ましく、0.03〜0.5質量%が更に好ましい。界面活性剤の含有量が1.0質量%以下であると、酸化ケイ素膜の研磨速度が更に向上する。界面活性剤の含有量が0.01質量%以上であると、ポリシリコン膜の研磨速度の増加を更に抑制することができる。尚、前記分散剤として界面活性剤を使用する場合には、分散剤としての界面活性剤と、添加液中の界面活性剤の合計量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0061】
<添加液のpH>
添加液のpHは、6.5以上であることが必要であり、6.7〜12.0が好ましく、6.8〜11.0がより好ましい。pHが6.5以上であると、添加液とスラリーとを混合した際にスラリーに含有される粒子が凝集することを抑制することができる。pHが12.0以下であると、添加液とスラリーとを混合した際に良好な平坦性を得ることができる。
【0062】
添加液のpHは、一般的なガラス電極を用いたpHメータによって測定できる。pHの測定には、具体的には、例えば、株式会社堀場製作所の商品名:Model(F−51)を使用することができる。添加液のpHは、フタル酸塩pH標準液(pH:4.01)と、中性リン酸塩pH標準液(pH:6.86)と、ホウ酸塩pH標準液(pH:9.18)とをpH標準液として用い、pHメータを3点校正した後、pHメータの電極を添加液に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定することで得られる。このとき、標準緩衝液と添加液の液温は、例えば、共に25℃とすることができる。なお、スラリーのpHも同様の手法により測定することができる。
【0063】
<pH調整剤>
本実施形態のCMP研磨液は、添加液成分の1成分として、pH調整剤を含有する。pH調整剤としては、水溶性の塩基化合物や水溶性の酸化合物が挙げられる。塩基化合物としては、pKaが8以上の塩基性化合物が挙げられる。ここで、「pKa」とは、第1解離可能酸性基の酸解離定数を意味し、該基の平衡定数Kaの負の常用対数である。前述した塩基性化合物としては、具体的には、水溶性の有機アミン、アンモニア水等が好ましく用いられる。また、添加液のpHは、上記ポリアクリル酸化合物等の他の含有成分によって調整することもできる。
【0064】
水溶性の有機アミンとしては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジフェ二ルグアニジン、ピペリジン、ブチルアミン、ジブチルアミン、イソプロピルアミン、テトラメチルアンモニウムオキサイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムフロライド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムフロライド、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩等が挙げられる。
【0065】
pH調整剤の含有量は、例えば塩基性化合物を用いる場合、CMP研磨液全質量を基準として0.01〜10.0質量%が好ましく、0.05〜5.0質量%がより好ましく、0.1〜3.0質量%が更に好ましい。但し、pH調整剤の含有量は、調整するpHに制約されるため、他の含有成分(強酸、ポリアクリル酸化合物等)の含有量により決定されるものであり、特に制限はない。
【0066】
<リン酸化合物>
添加液は、添加液成分の1成分として、リン酸又はリン酸誘導体の少なくとも一方のリン酸化合物を含有する。尚、「リン酸化合物」とは、リン酸、リン酸誘導体を含むものとする。リン酸誘導体としては、例えば二量体、三量体等のリン酸の重合物(例えばピロリン酸、ピロ亜リン酸、トリメタリン酸)や、リン酸基を含む化合物(例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸、メタリン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム等)が挙げられる。
【0067】
リン酸化合物の含有量は、CMP研磨液全質量を基準として0.01〜1.0質量%であり、0.02〜0.7質量%が好ましく、0.03〜0.5質量%がより好ましい。リン酸化合物の含有量が1.0質量%以下であると、窒化ケイ素膜の研磨速度を更に向上させることができる。同様に、リン酸化合物の含有量が0.01質量%以上であると、窒化ケイ素膜の研磨速度を更に向上させることができる。尚、リン酸化合物として、リン酸及びリン酸誘導体を同時に使用する場合には、それらの合計量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0068】
(CMP研磨液の保存方法)
本実施形態のCMP研磨液は、例えば、セリウム系砥粒を分散剤で水中に分散させたスラリーと、添加液とに分けた二液式研磨液として保存することが好ましい。スラリーと添加剤とを混合せず二液式研磨液として保管すると、セリウム系砥粒が凝集することを抑制し、研磨傷の抑制効果や研磨速度が変動することを抑制することができる。
【0069】
スラリーと添加液とは、事前に混合されてもよく、使用直前に混合されてもよい。二液式研磨液を用いる場合、例えば、スラリーと添加液とを別々の配管で送液し、これらの配管を合流させて供給配管出口の直前で混合して研磨定盤上に供給するA方法や、研磨直前にスラリーと添加液とを混合するB方法、研磨定盤上にスラリーと添加剤とを別々に供給し研磨定盤上で両液を混合するC方法、及び、予めスラリーと添加液とを混合したものを供給配管にて供給するD方法等を用いることができる。これら二液の配合を任意に変えることにより、平坦化特性と研磨速度との調整が可能となる。スラリーと添加液との配合比は、質量比で1:10〜10:1(スラリー:添加液)程度が好ましい。A方法又はB方法の場合は、スラリーや添加液を予め水の含有量を少なくした濃縮液としておき、必要に応じて混合時に脱イオン水で希釈してもよい。
【0070】
(基板の研磨方法)
本実施形態の基板の研磨方法は、少なくとも一方面上に被研磨膜が形成された基板の該被研磨膜を、研磨定盤の研磨布に押圧した状態で、前述したCMP研磨液を被研磨膜と研磨布との間に供給しながら、基板と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨膜を研磨する研磨工程を備える。また、本実施形態の基板の研磨方法は、スラリーと添加液とを混合し、前述したCMP研磨液を得る研磨液調製工程と、得られたCMP研磨液を用いて、少なくとも一方面上に被研磨膜が形成された基板の該被研磨膜を研磨する研磨工程とを備えていてもよい。
【0071】
本実施形態の基板の研磨方法は、特に、基板の被研磨膜が形成された上記一方面が段差を有する場合に、基板の該一方面を研磨して段差を平坦化する研磨工程に好適である。
【0072】
本実施形態の基板の研磨方法では、基板と被研磨膜との間にポリシリコン膜が形成されている場合には、研磨工程においてポリシリコン膜をストッパ膜として被研磨膜を研磨することができる。例えば、分離溝が形成された基板上に該分離溝に沿ってストッパ膜を形成し、ストッパ膜上に被研磨膜を形成した後に、ストッパ膜が露出するまで被研磨膜を除去することができる。
【0073】
より具体的には、図1(a)に示すような構造を有する基板100を研磨する研磨方法が挙げられる。図1(a)に示す基板100は、シリコン1に形成された溝に二酸化ケイ素等の絶縁物2が埋め込まれてシャロートレンチアイソレーション(STI)が形成されている。高い導電率を有する絶縁膜(High−k絶縁膜)3がシリコン1の上に積層されている。絶縁膜3の上の所定の位置に、ポリシリコン膜のダミーゲート4が形成され、該ダミーゲート4の側部には、窒化ケイ素膜のサイドウォール5が形成されている。さらに、拡散層にストレスをかけてトランジスタ性能を向上させるために、表面を覆うようにして窒化ケイ素膜のストレスライナー6が積層され、最後に酸化ケイ素膜7が積層されている。このような基板の前記酸化ケイ素膜7と、前記窒化ケイ素のストレスライナー6の一部を、本実施形態に係るCMP研磨液を用いて、前記ポリシリコンのダミーゲート4が露出するまで研磨することで、図1(b)に示すような構造の基板200を得ることができる。この工程において、前記ダミーゲート4であるポリシリコン膜が、過剰な研磨を抑制するためのストッパ膜として作用する。
【0074】
以下、被研磨膜として酸化ケイ素膜又は窒化ケイ素膜の少なくとも一方の無機絶縁層が形成された半導体基板を例に挙げて研磨方法を更に説明する。
【0075】
本実施形態の研磨方法において使用する研磨装置としては、例えば、被研磨膜を有する基板を保持するホルダーと、研磨布(パッド)を貼り付け可能で、回転数が変更可能なモータ等が取り付けてある研磨定盤とを有する、一般的な研磨装置等を使用することができる。
【0076】
上記研磨装置としては、例えば、株式会社荏原製作所製の研磨装置、型番:EPO−111、AMAT(Applied Materials)社製の研磨装置、商品名:Mirra3400、Reflection研磨機、等が挙げられる。
【0077】
研磨布としては、特に制限はなく、例えば、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等を使用することができる。また、前記研磨布には、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0078】
研磨条件としては、特に制限はないが、半導体基板が飛び出すことを抑制する見地から、研磨定盤の回転速度は200rpm以下の低回転が好ましい。半導体基板にかける圧力(加工荷重)は、研磨後に傷が発生することを抑制する見地から、100kPa以下が好ましい。
【0079】
研磨している間、研磨布の表面には、研磨液をポンプ等で連続的に供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。
【0080】
研磨液の供給方法は、前述したように、二液を別々の配管で送液し、これらの配管を合流させて供給配管出口の直前で混合して研磨定盤上に供給するA方法、二液を研磨直前に混合するB方法、二液を別々に研磨定盤上へ供給するC方法、及び、予めスラリーと添加液とを混合したものを供給配管にて供給するD方法等が挙げられる。
【0081】
研磨終了後の半導体基板は、流水中で良く洗浄後、スピンドライヤ等を用いて半導体基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。このように、被研磨膜である無機絶縁層を上記研磨液で研磨することによって、表面の凹凸を解消し、半導体基板全面にわたって平滑な面を得ることができる。この工程を所定回数繰り返すことにより、所望の層数を有する半導体基板を製造することができる。
【0082】
被研磨膜である酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の作製方法としては、低圧CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。低圧CVD法により酸化ケイ素膜を形成する場合、Si源としてモノシラン:SiH、酸素源として酸素:Oを用いることができる。酸化ケイ素膜は、このSiH−O系酸化反応を400℃以下の低温で行わせることにより得られる。酸化ケイ素膜は、CVD法により製膜した後に、場合により1000℃又はそれ以下の温度で熱処理してもよい。
【0083】
酸化ケイ素膜には、リン、ホウ素等の元素がドープされていてもよい。高温リフローによる表面平坦化を図るために、酸化ケイ素膜にリン:Pをドープするときには、SiH−O−PH系反応ガスを用いることが好ましい。
【0084】
プラズマCVD法は、通常の熱平衡下では高温を必要とする化学反応を低温で行うことができる利点を有する。プラズマ発生法には、容量結合型と誘導結合型との2つが挙げられる。反応ガスとしては、Si源としてSiH、酸素源としてNOを用いたSiH−NO系ガスと、テトラエトキシシラン(TEOS)をSi源に用いたTEOS−O系ガス(TEOS−プラズマCVD法)とが挙げられる。基板温度は250〜400℃、反応圧力は67〜400Paの範囲が好ましい。
【0085】
低圧CVD法により窒化ケイ素膜を形成する場合、Si源としてジクロルシラン:SiHCl、窒素源としてアンモニア:NHを用いることができる。窒化ケイ素膜は、SiHCl−NH系酸化反応を900℃の高温で行わせることにより得られる。
【0086】
プラズマCVD法の反応ガスとしては、Si源としてSiH、窒素源としてNHを用いたSiH−NH系ガスが挙げられる。基板温度は、300〜400℃が好ましい。
【0087】
本実施形態で使用される基板としては、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリー)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリー)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、フラッシュメモリー等の記憶素子、マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子等を有する基板が挙げられる。
【0088】
本実施形態のCMP研磨液は、半導体基板に形成された窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜のみならず、所定の配線を有する配線板に形成された酸化ケイ素膜、ガラス、窒化ケイ素等の無機絶縁膜、ポリシリコン、Al、Cu、Ti、TiN、W、Ta、TaN等を主として含有する膜を研磨することが可能である。
【0089】
(電子部品)
本実施形態の電子部品は、前述した研磨方法で研磨された基板を用いたものである。電子部品とは、半導体素子だけでなくフォトマスク・レンズ・プリズム等の光学ガラス、ITO等の無機導電膜、ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路、光ファイバーの端面、シンチレータ等の光学用単結晶、固体レーザ単結晶、青色レーザLED用サファイヤ基板、SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶、磁気ディスク用ガラス基板、磁気ヘッド等を含む。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0091】
(酸化セリウム粉砕粉の作製)
炭酸セリウム水和物:40kgをアルミナ製容器に入れ、830℃で2時間、空気中で焼成して黄白色の粉末を20kg得た。この粉末をX線回折法で相同定したところ、酸化セリウムであることを確認した。また、焼成粉末の粒子径をレーザ回折式粒度分布計により測定した結果、焼成粉末の粒子径は95%以上が1〜100μmの間に分布していた。
【0092】
次いで、前記酸化セリウム粉末:20kgを、ジェットミルを用いて乾式粉砕を行った。多結晶体の比表面積をBET法により測定した結果、9.4m/gであった。
【0093】
(酸化セリウムスラリーの作製)
酸化セリウム粉末:10.0kg及び脱イオン水:116.65kgを混合し、分散剤として市販のポリアクリル酸アンモニウム塩水溶液(重量平均分子量:8000、40質量%):228gを添加し酸化セリウム分散液を得た。酸化セリウム分散液を10分間攪拌した後、別の容器に送液しつつ、送液する配管内で超音波照射を行った。超音波周波数は400kHzであり、酸化セリウム分散液は30分かけて送液した。
【0094】
500mLビーカー4個に、各500g±20gの送液された酸化セリウム分散液を入れて、遠心分離した。外周にかかる遠心力が500Gになるように設定した条件で、2分間遠心分離し、ビーカーの底に沈降した酸化セリウムを取り除いた。
【0095】
得られた酸化セリウム分散液(酸化セリウムスラリー)の固形分濃度を測定したところ、4.0質量%であった。このスラリーのpHを測定したところ、9.0であった。
【0096】
更に、レーザ回折式粒度分布計〔株式会社堀場製作所製、商品名:LA−920〕を用い、屈折率:1.93、透過度:68%としてスラリー中の酸化セリウム粒子の平均粒径を測定したところ、0.11μmであった。
【0097】
また、原子吸光光度計〔株式会社島津製作所製、商品名:AA−6650〕を用いて測定した酸化セリウムスラリー中の不純物イオン(Na、K、Fe、Al、Zr、Cu、Si、Ti)は、質量比で1ppm以下であった。
【0098】
(添加液の作製)
<実施例1>
以下の工程により添加液を作製した。
超純水:900gを1000mL容器aに秤量する。
ポリアクリル酸40質量%水溶液(重量平均分子量:3000):10.0gを容器aに入れる。
界面活性剤:2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのポリエトキシレート:15.0gを容器aに入れる。
リン酸:8.5gとなるように85質量%のリン酸水溶液を容器aに入れる。
添加液のpHが7.0になるように添加量を調整してアンモニア水(25質量%水溶液)を容器aに入れる。
合計で1000gとなるように超純水を適量入れ、添加液を作製した。
【0099】
<実施例2〜11>
実施例1と同様に、表1に示す通りの配合にて添加液を作製した。
【0100】
<比較例1〜7>
実施例1と同様に、表2に示す通りの配合にて添加液を作製した。
【0101】
(研磨液の作製)
前述の酸化セリウムスラリー:500gと、前述した実施例1〜11や比較例1〜7にて作製した添加液:500gと、純水:1500gとを混合し、合計2500gのCMP研磨液をそれぞれ作製した。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
(研磨評価)
絶縁膜CMP評価用試験ウエハについて、パターンの形成されていないBlanketウエハとしては、Si基板上に1000nmの膜厚で成膜された酸化ケイ素膜と、Si基板上に200nmの膜厚で成膜された窒化ケイ素膜と、Si基板上に100nmの膜厚で成膜されたポリシリコン膜とを用いた。
【0105】
また、模擬パターンが形成されたパターンウェハとしては、SEMATECH社製、864ウエハ(商品名、直径:200mm)を用いた。パターンウェハは、図2に示すように、表面にトレンチを有するシリコン基板8と、トレンチを避けるようにシリコン基板8の上に積層された窒化ケイ素膜9と、トレンチを埋めるようにシリコン基板8及び窒化ケイ素膜9の上に積層された酸化ケイ素(SiO)膜(絶縁膜)10とを備える。酸化ケイ素膜10は、HDP(High Density Plasma)法により成膜されたものであり、シリコン基板8及び窒化ケイ素膜9上のいずれにおいても膜厚は600nmである。具体的には、窒化ケイ素膜9の膜厚は150nmであり、酸化ケイ素膜10の凸部の膜厚は600nmであり、酸化ケイ素膜10の凹部の膜厚は600nmであり、酸化ケイ素膜10の凹部深さは500nm(トレンチ深さ350nm+窒化ケイ素膜厚150nm)である。研磨評価に際しては、酸化ケイ素膜を窒化ケイ素膜に対して充分に選択的に研磨できる公知のCMP研磨液を用いて上記ウエハを研磨し、窒化ケイ素膜を露出させた状態のものを用いた(パターンウェハA)。
また、パターンウェハAと同様の構造を有しており、窒化ケイ素膜の代わりにポリシリコン膜が膜厚:150nm成膜されたものを用いた(パターンウェハB)。
【0106】
パターンウェハ評価には、ライン(凸部)&スペース(凹部)幅が200μmピッチで、凸部パターン密度が50%のものを使用した。ライン&スペースとは、模擬的なパターンであり、凸部であるSiでマスクされたActive部と、凹部である溝が形成されたTrench部とが、交互に並んだパターンである。例えば、「ライン&スペースが100μmピッチ」とは、ライン部とスペ−ス部との幅の合計が、100μmであることを意味する。また、例えば、「凸部パターン密度が10%」とは、凸部幅:10μmと、凹部幅:90μmとが、交互に並んだパターンを意味し、凸部パターン密度90%とは、凸部幅:90μmと、凹部幅:10μmとが、交互に並んだパターンを意味する。
【0107】
研磨装置(アプライドマテリアル社製、商品名:MIRRA3400)の、基板取り付け用の吸着パッドを貼り付けたホルダーに、上記試験ウエハをセットした。また、200mmウエハ用の研磨定盤に、多孔質ウレタン樹脂製の研磨パッド(ロデール社製、型番:IC−1010)を貼り付けた。
【0108】
前記研磨パッド上に、絶縁膜面を下にしたホルダーを載せ、メンブレン圧力を31kPaに設定した。
【0109】
研磨定盤上に、前述した酸化セリウムスラリーを160mL/分の速度で、及び、実施例1〜11、比較例1〜7の添加液を40mL/分の速度で同時滴下しながら、研磨定盤とウエハとをそれぞれ123rpm、113rpmで作動させて、酸化ケイ素膜(P−TEOS膜)、窒化ケイ素膜、ポリシリコン膜のBlanketウエハをそれぞれ1分間研磨した。
また、パターンウェハA、Bをそれぞれ100秒間研磨した。
研磨後のウエハを純水で良く洗浄後、乾燥した。
【0110】
その後、酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、及びポリシリコン膜のBlanketウエハについては、光干渉式膜厚装置(大日本スクリーン製造株式会社製、商品名:RE−3000)を用いて、ウエハ面内55点の残膜厚を測定し、研磨前からの膜厚減少量から1分当たりの研磨速度を算出した。パターンウェハに関しては、光干渉式膜厚装置(大日本スクリーン製造株式会社製、商品名:RE−3000)を用いて、パターンウェハAの窒化ケイ素膜の残膜厚、及び、パターンウェハBの凹部の絶縁膜の残膜厚、凸部の絶縁膜の残膜厚を測定した。そして、パターンウェハBの凸部の絶縁膜と、凹部の絶縁膜との残膜厚の差を平坦性とした。
得られた各測定結果を上記表1及び2に示す。
【0111】
表1及び2に示すように、実施例1〜11では、研磨速度比をみると、酸化ケイ素膜/ポリシリコン膜が64〜110、窒化ケイ素膜/ポリシリコン膜が18以上であり、ポリシリコン膜の研磨速度が40Å/min以下に抑制されており、ポリシリコン膜の研磨速度を抑制しつつ、酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度が向上することがわかる。
【0112】
実施例1〜11と比較例1〜7とを比較すると、実施例1〜11では、特に窒化ケイ素膜の研磨速度が向上していることが明らかである。また、パターンウェハAでの評価結果より、実施例1〜11では、窒化ケイ素膜が充分に研磨できていることが明らかである。更に、パターンウェハBでの評価結果より、実施例1〜11はすべて平坦性の値が小さく、平坦性が良好であることがわかる。
【符号の説明】
【0113】
1…シリコン、2…絶縁物、3…絶縁膜、4…ダミーゲート、5…サイドウォール、6…ストレスライナー、7…酸化ケイ素膜、8…シリコン基板、9…窒化ケイ素膜、10…酸化ケイ素膜、100,200…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液と第2の液とを混合して使用されるCMP研磨液であって、
前記第1の液が、酸化セリウム粒子を含有するセリウム系砥粒と、分散剤と、水とを含有し、
前記第2の液がポリアクリル酸化合物と、界面活性剤と、pH調整剤と、リン酸又はリン酸誘導体の少なくとも一方のリン酸化合物と、水とを含有し、
前記第1の液のpHが7.0以上であり、
前記第2の液のpHが6.5以上であり、
前記リン酸化合物の含有量がCMP研磨液全質量を基準として0.01〜1.0質量%となるように前記第1の液と前記第2の液とが混合される、CMP研磨液。
【請求項2】
前記第2の液が、前記pH調整剤としてpKaが8以上である塩基性化合物を含有する、請求項1に記載のCMP研磨液。
【請求項3】
前記第2の液が前記界面活性剤として非イオン性界面活性剤を含有する、請求項1又は2に記載のCMP研磨液。
【請求項4】
前記第1の液が前記分散剤としてポリアクリル酸系分散剤を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項5】
前記リン酸誘導体が、リン酸の重合物、リン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸、メタリン酸ナトリウム及びリン酸アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項6】
第1の液と第2の液とを混合して得られたCMP研磨液であって、
前記第1の液のpHが7.0以上であり、
前記第2の液のpHが6.5以上であり、
酸化セリウム粒子を含有するセリウム系砥粒と、分散剤と、ポリアクリル酸化合物と、界面活性剤と、pH調整剤と、リン酸又はリン酸誘導体の少なくとも一方のリン酸化合物と、水とを含有し、
前記リン酸化合物の含有量がCMP研磨液全質量を基準として0.01〜1.0質量%である、CMP研磨液。
【請求項7】
前記pH調整剤としてpKaが8以上である塩基性化合物を含有する、請求項6に記載のCMP研磨液。
【請求項8】
前記界面活性剤として非イオン性界面活性剤を含有する、請求項6又は7に記載のCMP研磨液。
【請求項9】
前記分散剤としてポリアクリル酸系分散剤を含有する、請求項6〜8のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項10】
前記リン酸誘導体が、リン酸の重合物、リン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸、メタリン酸ナトリウム及びリン酸アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項6〜9のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項11】
酸化ケイ素膜又は窒化ケイ素膜の少なくとも一方の被研磨膜と、ポリシリコン膜とが形成された基板の該ポリシリコン膜をストッパ膜として、前記被研磨膜の少なくとも一部を研磨して除去するために用いられる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項12】
窒化ケイ素膜の少なくとも一部を研磨して除去するために用いられる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項13】
酸化ケイ素膜の少なくとも一部と、窒化ケイ素膜の少なくとも一部とを研磨して除去するために用いられる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のCMP研磨液を用いて、少なくとも一方面上に被研磨膜が形成された基板の該被研磨膜を研磨する研磨工程を備える、基板の研磨方法。
【請求項15】
酸化セリウム粒子を含有するセリウム系砥粒、分散剤及び水を含有しかつpHが7.0以上である第1の液と、ポリアクリル酸化合物、界面活性剤、pH調整剤、リン酸又はリン酸誘導体の少なくとも一方のリン酸化合物、及び、水を含有しかつpHが6.5以上である第2の液とを混合し、前記リン酸化合物の含有量がCMP研磨液全質量を基準として0.01〜1.0質量%であるCMP研磨液を得る研磨液調製工程と、
前記CMP研磨液を用いて、少なくとも一方面上に被研磨膜が形成された基板の該被研磨膜を研磨する研磨工程と、を備える、基板の研磨方法。
【請求項16】
前記基板の前記一方面が段差を有する、請求項14又は15に記載の基板の研磨方法。
【請求項17】
前記基板に前記被研磨膜として酸化ケイ素膜又は窒化ケイ素膜の少なくとも一方が形成されており、
前記基板と前記被研磨膜との間にポリシリコン膜が形成されており、
前記研磨工程では、前記ポリシリコン膜をストッパ膜として前記被研磨膜の少なくとも一部を研磨して除去する、請求項14〜16のいずれか一項に記載の基板の研磨方法。
【請求項18】
前記基板に前記被研磨膜として窒化ケイ素膜が形成されており、
前記研磨工程では、前記窒化ケイ素膜の少なくとも一部を研磨して除去する、請求項14〜16のいずれか一項に記載の基板の研磨方法。
【請求項19】
前記基板に前記被研磨膜として酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜が形成されており、
前記研磨工程では、酸化ケイ素膜の少なくとも一部と、窒化ケイ素膜の少なくとも一部とを研磨して除去する、請求項14〜16のいずれか一項に記載の基板の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−209567(P2012−209567A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−130748(P2012−130748)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【分割の表示】特願2010−51977(P2010−51977)の分割
【原出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】