説明

CNS疾患及び病理の治療に用いるロフェキシジンエナンチオマー、並びにそのキラル合成法

本発明は、ロフェキシジンエナンチオマーの非ラセミ混合物を用いた、CNS疾患及び病理の治療方法関する。また、本発明は、ロフェキシジンの光学的に純粋なエナンチオマーの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、中枢神経系疾患及び病理の治療方法に関する。特に、ロフェキシジンエナンチオマー投与によるCNS疾患及び病理の治療方法に関する。さらに、オピオイド禁断療法のような、従来の治療よりも不快な副作用が少ないCNS疾患及び病理の治療法に関する。本発明は、ロフェキシジンエナンチオマーの新規キラル合成に関する。
【0002】
〔背景技術〕
オピオイド依存症は、アメリカ合衆国で重大な環境衛生懸案事項である。ヘロインは、アメリカ合衆国内の公的資金を受けた薬物乱用治療施設で最も顕著な違法薬物として報告されている。日常の様々な場面で2.4百万の人々がヘロインを使用しており、1997年には、81,000人の新たなヘロイン使用者が存在し、このヘロイン使用者の87%は、26歳未満である。違法薬物使用を低減する取り組みにも関わらず、この問題はエスカレートしており、乱用人口は若年層へますます広がった。21都市地域の病院の緊急治療室での症例をみると、薬物に関する緊急治療室の症例の14%がヘロインに関する症例であり、1991年から1996年にかけて2倍以上も増加した。さらに、処方薬としてのオピオイドの乱用はエスカレートし、鎮痛剤処方の中毒となっている多くの人々はヘロイン中毒者の3倍以上であった。例えば、1999年から2001年において、OxyContin(登録商標)の非医療的使用は4倍に増加し、その使用はエスカレートし続けている。
【0003】
一般的に、オピオイド依存症は、高い疾病率及び死亡率に関連があり、静脈薬物使用者の死亡リスクは、同年代の人と比較して15から20倍増加している。明らかに、オピオイド依存症の効果的な治療開発の、医学的かつ社会的な重要性は、よく認識されている。驚くべきことに、オピオイド依存症の幾つかの治療措置が利用可能になっている。
【0004】
薬の使用中止、維持、及び症状の再発は、オピオイド依存症の治療のための進歩的な段階とみなされている。それらは、オピオイド依存症の治療のために、禁断療法及び補充療法という、2つの主な管理ストラテジーがあり、それらは、一般的に、医学的サポート、社会的サポート、及び精神的サポートと組み合わされる。大部分の個人は、不定の期間、維持フェーズを保つことから恩恵を受けている。一方、他の個人は、維持療法の必要なしに、医学的な指示のもとに、禁断療法及び/または再発療法を直接受けることができる。メタドン及びブプレノルフィンは、一般的に薬物治療に用いられる。患者は、mμオピオイド受容体作用薬メタドンにより継続的に治療され続けるが、メタドンの治療には、薬の使用中止期間の長さ、完全な禁断を得ることが困難であること、及び乱用傾向といった、いくつかの欠点がある。メタドンの乱用傾向及びその結果としての麻薬取締局(DEA)による第2分類に起因して、メタドンは、その処方の要件、調合条件の慎重な調節、及びメタドン用量を得るために調剤局を来診しなければならない患者が経験する不快感について、さらに欠点がある。
【0005】
α−アドレナリン作用性作用薬BritLofex(登録商標)(塩酸塩0.2mg錠剤)は、イギリスではオピオイド解毒用の非オピオイド薬剤として使用される。アメリカでは、食品医薬品庁(FDA)より認可がなされた非オピオイド薬剤はない。現在のところオピオイド禁断療法用としてFDAにより認可されている薬剤は、メタドン及びブプレノルフィンであり、ともにオピオイド受容体作用薬であり、かつ乱用傾向に関連する。α−アドレナリン作用性作用薬クロニジンは、アメリカでは、「認可外」にしばしば使用されている。しかしながら、クロニジンは、FDAにより認可されていない。クロニジンの使用は、副作用の特徴、すなわち、オピオイド禁断症状を低減する有効な用量での深刻な低血圧によって、制限される。
【0006】
これに対し、ロフェキシジン塩酸塩は、非アヘン剤であり、アヘン剤解毒を受けている患者の禁断症状を管理するためにイギリスで使用が許可されている、非中毒性の治療である。ロフェキシジンは、悪寒、嘔吐、発汗、腹痛、下痢、筋肉痛、鼻水といった、ヘロインの禁断症状の低減に有効であることがわかった。イギリスでは、治療が年間約20,000の解毒を担っている。上記薬剤における安全性を証明するレベルから、薬剤の使用は、外来患者の場合に許されている。このことは、治療診療所を容易に利用できない地方の一部に居住する米国患者にとって重大である。
【0007】
オピオイド依存症の治療において、ナルトレキン、メタドン、より最近ではブプレノルフィンがFDAにより認可されたが、これらのオピオイド治療は、高い再発率を伴う。また、近年、オピオイド乱用患者にとって、メタドン、ブプレノルフィン治療の利用は不十分である。多くの患者は禁断療法の治療を受けている。しかしながら、乱用の危険性が高いこと、並びに他に存在する、医学的処方及び医薬調合といったいくつかの制限から、メタドン、ブプレノルフィンの使用は、外来患者に制限される。また、クロニジンの未認可状態、血圧低下といった副作用、及び中程度の効果により、クロニジンの使用も制限されている。研究の多くは、オピオイド依存症に関連した高い再発率のメカニズムの解明を進めている。それらは、特に、ストレスの多い生活環境の出来事や、麻薬のきっかけなどの様な環境刺激に直面し再発の危険と麻薬の渇望に関連した血液回路において脳のストレスと快楽の神経の変化する慢性薬物使用の結果として、文献証拠となっている。
【0008】
イギリス市場で入手できるロフェキシジン塩酸塩の錠剤(BritLofex(登録商標))は、薬物のラセミ混合物を含有する。しかしながら、ロフェキシジンエナンチオマーは、オピオイド解毒のための投薬時の(±)−ロフェキシジンの作用に含まれる中枢神経系神経伝達物質に対し、異なる親和性を示すので、これらエナンチオマーはそれぞれ、オピオイド依存症の治療において、治療上の利点を有しているであろう。
【0009】
〔発明の概要〕
ロフェキシジンエナンチオマーの効果を最大限にするために、(−)−ロフェキシジン及び(+)−ロフェキシジンは、オピオイド依存症や他の薬物依存症の治療に使用することができる。加えて、(−)−ロフェキシジン及び(+)−ロフェキシジンの非ラセミ混合物(すなわち、一方のエナンチオマーのモル比が他方のエナンチオマーのモル比よりも大きくなっている、あるいは小さくなっている混合物)の使用は、様々な方法で、いっそう患者に利益を与える。
【0010】
オピオイド解毒機構に関係する脳アドレナリン作用性受容体に対し、(−)−ロフェキシジンは、(+)−ロフェキシジンよりも効能がある。それゆえ、(±)−ロフェキシジンに対し使用される用量と比較して、少ない(−)−ロフェキシジンの用量が使用され得る。一方、(+)−ロフェキシジンは、血圧の低減、または除脈活性において、実質的に効果がないので、オピオイド解毒薬剤としての(±)−ロフェキシジンを超えた利点がある。さらに、(+)−ロフェキシジンエナンチオマーは、中枢作用性(−)−ロフェキシジンと低い比率で組み合わせることができ、望ましくない副作用を低減させて、より少ない有効用量で製品製剤を提供する。
【0011】
この発明は、予備的製造規模の工程でそれぞれのエナンチオマーを多量に生成するための、物理的分離及び合成工程に関する。
【0012】
【化1】

【0013】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
予備研究において、ロフェキシジンエナンチオマーは、α−アドレナリン作用性受容体と、異なる相互親和力を示すことが示されている。ロフェキシジンのα−アドレナリン受容体活性は、主に(−)−エナンチオマーに備わっていると考えられる。ラットの脳膜におけるα−アドレナリン作用性結合部位に対して、(−)−エナンチオマーは、(+)−エナンチオマーよりも親和性が約9倍高い。また、α−アドレナリン作用性受容体に対して、(−)−エナンチオマーは、(+)−エナンチオマーよりも約4倍高い親和性を示す。他の研究では、正常圧の脊髄穿刺ラットにおいて、静脈内投与された(−)−ロフェキシジンは、同様に投与された(+)−ロフェキシジンよりも20倍少ない用量で昇圧効果を誘発することが示されている。さらに、続けて、ペントバルビタール麻酔下の正常圧ラットに対する静脈内投与では、(−)−ロフェキシジンは、 、動脈圧及び心拍数の減少について、(+)−ロフェキシジンよりも20倍有効である。脊髄穿刺ラットにおいて、(−)−ロフェキシジンは、(+)−ロフェキシジンよりも、電気的刺激により誘起する心拍数増加を低減させる効能が30倍高いことがわかった。同様に、電気的刺激により誘導した拡張期血圧の増加は、(−)−ロフェキシジンによって、より効果的に不対になる(unpaired)ことがわかった。
【0014】
ロフェキシジンエナンチオマーは、中枢神経系神経伝達物質受容体に対し異なる親和性を示すので、オピオイド解毒のための投薬時の(±)−ロフェキシジンの作用は、オピオイド依存症の治療において、治療上利点がある。オピオイド依存症及び他の関連する薬物依存症の治療において、(−)−ロフェキシジン及び(+)−ロフェキシジンの両方の使用は、ラセミ化合物の(±)−ロフェキシジンの使用を超えた付加的な利点がある(offer) 。加えて、等モル(すなわちラセミ混合物)でなく、モル比が一方よりも大きい、あるいは小さい(−)−ロフェキシジン及び(+)−ロフェキシジン混合物を使用することにより、望ましくない副作用を最小限にして、オピオイド依存症治療での使用が可能になる。また、この発明は、予備的製造規模の工程でそれぞれのエナンチオマーを多量に生成するための、物理的分離及び合成工程に向けられる。
【0015】
(−)−ロフェキシジンは、オピオイド解毒機構に含まれる脳アドレナリン性受容体で(±)−ロフェキシジンよりも効能があるので、治療薬として適している。よって、(±)−ロフェキシジンのための用量と比較して、少ない用量の(−)−ロフェキシジンを使用することができ、高い用量で付与される(±)−ロフェキシジンによる望ましくない抹消昇圧効果を低減する。
【0016】
(+)−ロフェキシジンもまた、実質的に血圧低下に影響を及ぼさないので、オピオイド解毒薬剤としての(±)−ロフェキシジンを超えた利点があり、ラット脳膜のα−アドレナリン受容体で(−)−ロフェキシジンよりも4倍効能が低く、ラット脳膜のα−アドレナリン受容体で(−)−ロフェキシジンよりも9倍効能が低い。それゆえ、CNS受容体に対する親和性の減少に起因して、(+)−ロフェキシジンの用量は、(±)−ロフェキシジンと比較して増加させる必要があるが、(+)−エナンチオマーは、血圧に関し顕著に低い抹消的な副作用を示す。また、(+)−ロフェキシジンエナンチオマーは、低い比率で中枢作用性の(−)−ロフェキシジンと組み合わせることができ、望ましくない副作用を低減させて、より少ない有効用量で製品製剤を提供する。最適な非ラセミ混合物における活性化した(−)−ロフェキシジンの量は、血圧低下、徐脈活性等の望ましくない副作用が原因で抹消アドレナリン性受容体を活性化しない量である。また、要するに、(+)−ロフェキシジン及び(−)−ロフェキシジンの個々のエナンチオマー、並びにこれら2つのエナンチオマーの非ラセミ混合物の使用は、ラセミ混合物の使用よりも望ましくない末梢的な副作用を小さくする。
【0017】
この発明は、アヘン剤禁断治療を受ける患者の症状を緩和する治療、探索している中毒性物質の、ストレスにより誘導される回復を低減する治療、閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者の心臓血管系の治療、偏頭痛や神経因性疼痛のような一般的疼痛と同様に女性の慢性骨盤痛の治療、行動障害(すなわち、多動症候群(ADHD))の治療、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)拮抗薬の弊害または(NMDA)受容体の機能低下に関連する結合失調症を防止する治療、眼内圧(IOP)の治療、タバコやアルコールの禁断症状を軽減する治療、及び下痢止め薬としての(−)−ロフェキシジン、(+)−ロフェキシジン、及びロフェキシジンエナンチオマーの非ラセミ混合物の新規使用に関する。この発明は、家畜飼料の成長促進薬剤としての(−)−ロフェキシジン及び(+)−ロフェキシジンの新規使用に関する。
【0018】
本発明は、立体特異的合成方法、並びに(−)−ロフェキシジン及び(+)−ロフェキシジンの分割における物理的分離方法に関する。光学異性的に純粋なR−(+)またはS−(−)−ロフェキシジン(2−[l−(2,6−ジクロロフェニル)エチル]−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール)またはその薬学的に許容可能な塩の調製方法は、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸及びS−(+)−マンデリックで(R,S)−ロフェキシジン塩酸塩を分割しジアステレオマー塩の混合物を形成し、ここに記述された種類の溶媒系の混合物内で、特定の時間及び温度範囲で動的な分割によりこれら塩を分離し、99.9%以上の優れたキラル純度の上記R−(+)−ロフェキシジン塩酸塩またはS−(−)−ロフェキシジン塩酸塩を提供することによる。より具体的には、純粋なロフェキシジン塩酸塩の調製に関する。
【0019】
(−)−ロフェキシジン及び(+)−ロフェキシジンを調製するための新規処理は、次の工程を含む。
【0020】
[a](+)(−)及び(+)(+)のジアステレオマー形態のロフェキシジン塩混合物、または(−)(−)及び(−)(+)のジアステレオマー形態のロフェキシジン塩混合物それぞれを形成する目的で、ロフェキシジンのラセミ体を、脂肪族もしくは芳香族の(+)−キラル酸、または脂肪族もしくは芳香族の(−)−キラル酸(限定されないが、酒石酸、乳酸、クエン酸、マンデル酸、フマル酸(femerate)、クエン酸、アブシジン酸、3−ヒドロキシイソブチル酸、コール酸、デオキシコール酸、アミノ酸、グリココール酸、及び、これに関連したステロイドカルボン酸)に反応させる。
【0021】
[b]分別結晶法、もしくは分取クロマトグラフィー法または選択吸着法により、ジアステレオマー塩を分離する、すなわち、(+)(+)ロフェキシジン塩から(+)(−)ロフェキシジン塩、または(−)(+)ロフェキシジン塩から(−)(−)ロフェキシジン塩を分離する。
【0022】
[c]そのようにして得られた(+)(−)ロフェキシジン塩、または(−)(−)ロフェキシジン塩を塩基で処理し、(−)−ロフェキシジンを遊離させる。
【0023】
[d]そのようにして得られた(+)(+)ロフェキシジン塩、または(−)(+)ロフェキシジン塩を塩基で処理し、(+)−ロフェキシジンを遊離させる。
【0024】
[e]分取クロマトグラフィー処理により、ロフェキシジンラセミ混合物をそのエナンチオマー成分に分離し、光学的に純粋な(−)−ロフェキシジン及び光学的に純粋な(+)−ロフェキシジンを得るために、キラルクロマトグラフィーマトリックスを利用する。
【0025】
[f]キラルアシル化剤による化学誘導体化処理により、ロフェキシジンラセミ混合物をそのエナンチオマー成分に分離し、結果物である2つのジアステレオマー形態のN−アシルロフェキシジン異性体を分別結晶または非キラル分取クロマトグラフィーにより分離し、単離したジアステレオマー形態のN−アシルロフェキシジン類似体を塩基で処理し、光学的に純粋な(−)−ロフェキシジン及び光学的に純粋な(+)−ロフェキシジンを生成する。
【0026】
[g]ロフェキシジンの(+)及び(−)−エナンチオマーの製造のため、次のステップを含む、キラル合成処理(図1参照)を行う。
【0027】
ラクトイミド酸エチル塩酸塩(ethyl lactimidate hydrochloride) 2に形成するために、1,S−ラクトニトリル1は、酸性条件(塩酸)下でエタノールに添加される。そして、2−(1−ヒドロキシ−エチル)−2−イミダゾリン3を形成するために、エチレンジアミンが十分な量添加される。 2−(1−ヒドロキシ−エチル)−2−イミダゾリン3のハロゲン化アルキル4への変換は、キラリティを保つSni機構を介して塩化チオニルとともに3を処理することにより導かれる。結果物であるS−2−(1−塩化−エチル)−2−イミダゾリン4は、2,6−ジクロロフェノールナトリウム塩5と反応し、R−2−[1−(2,6−ジクロロフェノキシ)−エチル]−1,3−ジアザシクロペンタ−2−エン6を形成する。R−2−[1−(2,6−ジクロロフェノキシ)−エチル]−1,3−ジアザシクロペンタ−2−エン6は、R−2−[1−(2,6−ジクロロフェノキシ)−エチル]−2−イミダゾリンとして知られ、R−ロフェキシジンに対応する。この反応は、完全キラル反転によって起こる。続いて、エナンチオマーの塩酸塩が形成される。図1は、S−;または(+)−ラクトニトリルの純粋なキラル体から始まるR−;または(−)−ロフェキシジンエナンチオマーの合成を示す。R−;または(−)−ラクトニトリルを用いたS−;または(+)−ロフェキシジンエナンチオマーの形成についても同様の処理が行われる。
【0028】
[h]得られたロフェキシジンにおける光学異性的に純粋な遊離塩基を適切な酸に変換して、その薬学的に許容可能な塩を得る。
【0029】
1)HPLC法によるキラル固定相を用いた、ラセミ混合物に見られる(−)−ロフェキシジンエナンチオマー及び(+)−ロフェキシジンエナンチオマーの分割:
キラルクロマトグラフィーマトリックスは、光学的に純粋なHPLC処理によりロフェキシジンのラセミ混合物をそのエナンチオマー成分に分離し、光学的に純粋な(−)−ロフェキシジン及び光学的に純粋な(+)−ロフェキシジンを生成するのに用いられる。この分離は、アステック社(Whippany, NJ,USA)からのD−グルコースシクロデキストラン錯体(Cyclobond HP−RSP)からなるキラル固定相、10mM酢酸アンモニウム(88%)、アセトニトリル(8%)、メタノール(8%)からなる流速0.85ml/minの移動層を用いて行われる。分析は、溶媒脱気ユニット、4組のポンプ、オートサンプラー、及びDAD検出器を備えたAgilentシリーズ1100HPLCシステムを用いて行われる。そのようなキラル固定相を予備的規模で用いることにより、所望のエナンチオマーについて、グラム量の収率が可能になる。
【0030】
ジアステレオマー塩形成だけでなく優先晶出、ラセミ酸を用いた、ラセミ混合物に見られた、(−)−ロフェキシジンエナンチオマー及び(+)−ロフェキシジンエナンチオマーの分割。
【0031】
図1に示される[ジ−p−トルオイル−D−酒石酸 [δ]D20+142°(c=1,CHOH)]といったキラル酸との古典的な塩形成法を用いた(±)−ロフェキシジン塩酸塩の光学分割により、(−)−ロフェキシジン塩酸塩及び(+)−ロフェキシジン塩酸塩のエナンチオマーが産出された(収率=87%)。この方法は、以下のステップを含む:
ロフェキシジンのラセミ体(10mmol)を、エタノール(100ml)に入れ、 (+)(−)及び(+)(+)ジアステレオマーロフェキシジン塩の混合物を形成するために、キラル酸(+)−ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩を添加する。このジアステレオマー塩、すなわち(+)(−)ロフェキシジン ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩は、分別結晶処理により、(+)(+)ロフェキシジン ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩から分離される。メタノール10ml、水1mlを添加し、混合物を55〜65℃で1時間加熱する。混合物が透明になった後、室温で冷却したままにする。2日後、結晶を単離し、吸引下で乾燥させる。エタノール(20容量)を用いて、再結晶を行う。最終的な収率は、87%である。
【0032】
結果物である結晶のキラル純度は、キラルHPLCにより検査された。得られた(+)(−)ロフェキシジン ジ−p−トルオイル−D−酒石酸、または(+)(+)ロフェキシジン ジ−p−トルオイル−D−酒石酸を、0.1N炭酸ナトリウムといった塩基で処理し、(−)−ロフェキシジン及び(+)−ロフェキシジンを遊離させる。結果物である、(−)−ロフェキシジン及び(+)−ロフェキシジンにおける光学異性的に純粋な遊離塩基は、ロフェキシジン塩酸塩に変換される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】S−;または(+)−ラクトニトリルの純粋なキラル体から始まるR−;または(−)−ロフェキシジンエナンチオマーの合成を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(+)−ロフェキシジンに対する(−)−ロフェキシジンのモル比が1ではないロフェキシジンを投与する工程を含む、中枢神経系疾患及び病理を治療する方法。
【請求項2】
(a)有機酸で(R,S)−ロフェキシジンを分割し、ジアステレオマー塩の混合物を形成するステップ、
(b)上記ジアステレオマー塩を溶媒系にさらすステップ、
(c)結晶化後に上記ジアステレオマー塩を濾過により分離するステップ、
(d)光学的に純粋なR−(−)またはS−(+)−ロフェキシジン遊離塩基を遊離させ、光学純度が99.9%以上である塩酸塩を形成するステップ、
を含む、光学的に高純度のR−(−)またはS−(+)−ロフェキシジン塩酸塩の製造方法。
【請求項3】
上記有機溶媒は、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ジ−p−トルオイル−D−酒石酸は、(R,S)−ロフェキシジンとのモル比1〜1.5で用いられる、請求項3に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−530504(P2011−530504A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522042(P2011−522042)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/072570
【国際公開番号】WO2010/016844
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(511034620)アジーン リミテッド ライアビリティー カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】AGEAN LLC
【住所又は居所原語表記】3908 Zaring Mill Court,Louisville,KY 40241 United States of America
【Fターム(参考)】