説明

COおよびH2から炭化水素を合成するための触媒およびその製造方法

本発明は、ナノテクノロジー、石油化学、ガス化学、石炭化学に関し、COおよびHから炭化水素を合成するためのカーボンナノチューブに基づく触媒およびその製造方法に関するものである。当該触媒ペレットの細孔内に固定されたカーボンナノチューブは触媒ペレットおよび触媒床における物質移動および熱伝導を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノテクノロジー、石油化学、ガス化学、石炭化学に関し、発熱法のための触媒組成物、特にフィッシャー−トロプシュ反応下でCOおよびHからC以上の炭化水素を合成するための触媒組成物、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素および水素からの炭化水素の製造(フィッシャー−トロプシュ法)は、メンデレーエフの元素の周期表のVIII族から選択される金属に基づく触媒の存在下で行われる。触媒組成物が最終的な結果物、すなわち生成組成物をもたらすので、触媒組成物は炭化水素の製造に際して重要な役割を担っている。
【0003】
COおよびHからの炭化水素の製造は発熱性であり、高圧で行われることがよく知られている。触媒の高活性および高選択性を維持するためには、触媒組成物の改善が必要である。局所的な過熱は主生成物を製造するための触媒の選択性に悪影響を及ぼし、触媒の劣化をもたらすものであり、当該過熱の可能性を、このような改善により任意に削減しようとしている。
【0004】
フィッシャー−トロプシュ法において触媒床を形成するための主要な要件(反応容積中における触媒的活性成分の濃度が高いこと;触媒粒子の粒径が小さいこと(50μm未満);触媒床の熱伝導率が高いこと;気体−液体界面相の面が広いこと;栓流(plug flow)に近い気体対流の流れを管理すること)は、たいていの触媒がスラリー床、固定床または流動床で使用される現在の工程流れ図では実現されない(ハシンA.A.等、工業における触媒(Catalysis in industry)、第2巻、2002年、第26〜37頁)。このため、合成ガスから炭化水素を効率よく製造するには、新型触媒の開発が必要である。
【0005】
固定床を形成し、熱の除去のために気体空間を触媒および液体相(水)と分けたチューブ内に置かれる固形触媒(ペレット化、環形状など)による方法において、上記した問題が生じる。当該工程上の問題を解決するための方法のひとつに、固形触媒の熱伝導率を高めることがある。触媒成分として金属、カーバイドおよびナノカーボン材料を用いることにより、固形触媒の熱伝導率を高めることが可能である(S.バーバー等、カーボンナノチューブの著しく高い熱伝導率、フィジカル・レビュー・レターズ、第84巻、N.20、2000年、第4613〜4616頁)。
【0006】
WO2004069407号明細書では、合成ガスから炭化水素および/または酸素含有化合物を製造するめの触媒を製造する方法が開示されている。当該触媒は、触媒活性剤、熱伝導剤および細孔形成剤からなる粒径300μm未満の粉体から製造される。まず、熱伝導剤および細孔形成剤からなる粉体を混合した後、当該混合物に触媒活性剤を添加し、当該混合物を圧縮し、触媒本体に所望の形状を賦形し、当該触媒本体の熱処理を行う。シリンダーもしくは孔開きシリンダー(perforated cylinder)またはプレートもしくは型彫りプレート(profiled plate)での触媒本体の圧縮および賦形は練りロール機(rolling mill)でのペレット化により行う;所望形状のプレートの打ち抜きが加わる。熱処理は2段階であり、まず不活性ガス流中、400℃を超える温度で行い、その後、水素含有ガス流中、300℃を超える温度で行う。触媒活性剤は、メンデレーエフの元素の周期表のVIII族から選択される金属を少なくとも2重量%で含有する。熱導電剤としては、金属銅および/または亜鉛および/またはアルミニウムおよび/または錫および/またはそれらの混合物または合金が使用される。細孔形成剤としては、熱導電剤または触媒活性剤粉体の金属の酸化物および/または水酸化物および/または炭酸塩および/または炭酸水素塩(hydrocarbonate)および/または塩が使用される。細孔形成剤の熱導電剤に対する含有重量比は0.25〜4である。当該触媒の不都合は、触媒本体の位置および反応流の方向が整合しないことである。このため、熱導電剤が存在しているにもかかわらず、このような触媒は効率が低い(CO転化率は合成ガス時間空間率(syngas hour space rate)930 l/時で15%を超えない)。
【0007】
EP0681868号明細書はフィッシャー−トロプシュ法のための触媒に関するものである。当該触媒においては、担体上にコバルトまたは鉄が装填される。担体は比表面積が少なくとも100m/gの炭素である。当該触媒は促進剤−白金(0.2〜10%)を含有する。当該触媒は、炭素粉体(0.5〜1.0mm)に金属塩の水溶液を含浸させることにより製造される。有機材料(例えば、ココナツ石炭、ピート(peat)、石炭、炭化ポリマー)由来の炭素は、予め、不活性雰囲気中、300〜3300℃で処理した後、酸化雰囲気で処理し、再度、不活性雰囲気で処理する。製造は、温度150〜300℃、圧力0.1〜5MPaおよびH:CO比1:1〜3:1で行う。当該触媒の欠点は、担体の熱伝導率がかなり低いために、C以上の生成物の選択率が低いことである。
【0008】
SU1819158号明細書は合成ガスから炭化水素を製造するための触媒を提供する。当該触媒は、活性成分としての鉄、銅、ケイ素、カリウムおよびスチームまたは鉱酸で活性化された石炭(鉄100gに対して2〜20g)を含有する。当該触媒は、鉄および銅を高温で硝酸中に個別に溶解させることにより得られるものであり、その後は、混合し、得られた溶液を沸騰させ、該沸騰した懸濁液にアルカリ性液体または焼成ソーダ溶液を添加してpHを7〜8に調整する。懸濁液を濾過し、固形分を復水に懸濁させ、カリウム含有水ガラスを添加した後、硝酸処理、触媒沈殿物分離、押出による乾燥および成形(formation)、さらなる乾燥および砕解を行う。当該触媒の固定床を用いた反応器中、圧力20〜30barおよび温度220〜320℃でフィッシャー−トロプシュ合成を行う。ワックス形態の固形生成物の収率は炭化水素C2+基準で40〜55%である。当該触媒の欠点は、主生成物の生産率および選択率が低く、製造方法がかなり困難なことである。
【0009】
カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブ(CNT、SWNT、MWNT)を含有する触媒がよく知られている。
【0010】
カーボンナノファイバーは主として炭素原子により形成される細糸からなる材料であり、各糸の直径は1μm未満である。炭素原子は互いに平行に並んで微結晶に結合する。カーボンナノファイバーは、引張強度および耐薬品性が高いこと、密度および熱膨張率が低いことにより特徴付けられる。カーボンナノチューブは、カーボンナノファイバーの形態のひとつであり、最大の熱伝導率を示す。カーボンナノチューブの微細構造は伸長円筒構造が他のカーボンナノファイバーの構造と異なる。このような構造は、直径が1〜数十nmであり、長さは通常、数μm以下である。
【0011】
理想的なナノチューブは中空円筒形状へ巻き上げられたグラファイト層である;当該グラファイト層は六角形から構成され、当該六角形の各頂点は炭素原子である。しかしながら、実験の単層カーボンナノチューブの構造は多くの点で理想的ではない。多層ナノチューブは形状および構成が様々であることが単層ナノチューブと異なっている。長手方向および横手方向の両方向において様々な構造が存在する。多層カーボンナノチューブ構造の形成は、特定の実験における合成条件に依存している。実験データの分析より、多層カーボンナノチューブの最も典型的な構造は、より小径の筒がより大径の筒の中に同軸状に配置されたロシア人形のような構造であることが示された。
【0012】
カーボンナノチューブは初めアーク放電でのグラファイトの蒸発により合成された。本発明によれば、カーボンナノチューブは化学蒸着(CVD)により形成される。CVDの間、基体は金属触媒粒子(最も一般的にはニッケル、コバルト、鉄、またはそれらの組み合わせ)の層で調製される。当該基体は約600〜1200℃に加熱される。ナノチューブの成長を開始するために、炭素含有ガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノールまたはメタン等)を反応器へ流す。ナノチューブは金属触媒の部位において成長を始める。
【0013】
触媒組成物においてカーボンナノファイバーおよびナノチューブを使用することは、当該触媒の熱伝導率を増大させ、触媒効率に好影響を与えることを可能にするので、魅力的なことである。
【0014】
しかしながら、カーボンナノファイバーまたはナノチューブを含有する触媒には不都合がある。特にカーボンナノファイバーおよびナノチューブは水素化のために腐食される。触媒中におけるカーボンナノファイバーおよびナノチューブの配置により、主生成物よりもむしろ主に水素含有ガスとナノ材料との接触がもたらされるので、このような不都合が現れる。カーボンナノファイバーおよびナノチューブは熱伝導率が高いが、接触熱伝導性が低いために、周囲粒子に熱を十分に伝導させることができない(自由な配置の場合)。このことは第2の不都合をもたらす。さらに、表面(活性成分の装填のための表面)の大部分が、他の成分、例えば酸化物成分、を用いた混合も含浸もされない炭素である場合、当該触媒の活性成分は活性が低い。
【0015】
例えば、CN101185904号明細書は、カルボニル化合物の芳香族アルコールへの選択性のある触媒的水素化およびその製造方法に適用できる触媒に関するものである。当該触媒は、1)金属発泡体、蜂の巣状セラミック、カーボンフェルトおよびセラミックファイバーなどの構造基体;2)カーボンナノファイバーなどのナノ材料被膜;3)ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウムおよび/または白金などの金属活性成分を含有する。
【0016】
当該触媒の重大な欠点は、ナノ材料の大部分が水素含有ガスと接触するように、触媒中に配置されるナノカーボンへ触媒の活性中心が直接的に装填されるので、活性が低いことである。ナノカーボン被膜の水素化処理における触媒の損失も重大である。
【0017】
EP1782885号明細書には、合成ガスを炭化水素へ転化させるためのカーボンナノチューブ担持コバルト触媒が開示されている。当該触媒は、コバルトおよび/またはルテニウムおよび所望によりアルカリ金属をCNT担体へ導入することにより製造される。当該触媒は、合成ガスを、本質的に線状で飽和された炭化水素混合物へ転化させるのに適している。触媒の全重量に基づくコバルトの重量%で表されるコバルト含有量は1〜60重量%であり、触媒中のコバルトの存在量に基づくルテニウムの重量%で表されるルテニウム含有量は0.1〜1%であり、触媒中のコバルトの存在量に基づくアルカリ金属の重量%で表されるアルカリ金属含有量は0〜3重量%である。
【0018】
当該触媒の重大な欠点は、触媒を工業的条件で使用する可能性が欠如していることである。処理中に放出される熱が活性中心およびナノチューブならびに生成物から除去されるので、合成ガスの装填量が低くても生成物の高収率が達成される。分散コバルトクラスター(dispersed cobalt clusters)が得られることにより、触媒中にCNTを使用する目的が制限される。
【0019】
RU2325226号明細書では、メンデレーエフの元素の周期表のVIII族の金属および酸化物成分およびカーボンナノファイバーを含有する担体を含有する、COおよびHから炭化水素を合成するための触媒が提供される。活性成分の含有量は、触媒の全重量に基づいて5〜40重量%であり、酸化物成分は酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素および/または酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウムを含有する。当該触媒はさらに促進剤(ジルコニウムおよびメンデレーエフの元素の周期表のVII、VIII族の金属および/または酸化物を触媒の全重量に基づいて0.1〜5重量%)を含有することができる。また触媒はカーボンナノファイバーを約3mm長および少なくとも20μm径の円筒形状で、触媒の全重量に基づいて1〜25重量%にて含有する。当該触媒を製造する方法は、酸化物成分、カーボンナノファイバー、バインダーとしてのベーマイト、水、可塑剤、および細孔形成成分からなるペーストを製造すること、およびその後、押出、乾燥、か焼することを含み、その後は、金属塩の溶液を用いた含浸を連続的段階で、コバルトの含有量が5〜40重量%を、促進剤の含有量が0.1〜5%を達成するまで行う。各段階の含浸の後は、乾燥およびか焼を行う。
【0020】
合成を行う前には、触媒の試料を、水素流(ガス時間空間率100〜5000 l/時)中、300〜600℃での0.5〜5時間の還元により活性化させる。CO:Hからの炭化水素の合成は、触媒の固定床を備えたチューブ状反応器中、圧力0.1〜4MPaおよび温度150〜300℃で行う。
【0021】
しかしながら、活性成分は含浸により担体へ適用され、当該担体は酸化物成分および熱伝導性成分としての金属アルミニウムを含有する。このような方法で、触媒の求める活性および選択性を提供するためには、高価な活性金属の過剰消費をもたらす。
【0022】
チン等は、マイクロチャンネル反応器におけるフィッシャー−トロプシュ合成のための、整列された多層カーボンナノチューブアレイに基づく微細構造平坦触媒(microstructured flat catalyst)を報告している(チンY.H.等、マイクロチャンネル・フィッシャー−トロプシュ合成反応器のための整列カーボンナノチューブアレイに基づく新規構造触媒の製造、触媒の今日(CATALYSIS TODAY)、第110巻、第47〜52頁、2005年)。カーボンナノチューブアレイは、金属セラミック合金発泡体の表面に配置される。チン等はまた、ほとんど困難ではなく、時間がほとんどかからない複数の段階を含む上記触媒の製造方法も報告する。金属セラミック合金発泡体の表面にカーボンナノチューブを有する構造触媒の製造方法は以下の段階を含むものである:
【0023】
1)FeCrAlY金属間合金発泡体(FeCrAlY intermetallic alloy foam)を製造する;
2)FeCrAlY金属間発泡体を空気中で酸化させた後、アルミニウムプロポキシドの金属有機化学蒸着(MOCVD)により900℃で酸化アルミニウム層を被覆する;
3)Fe/メソ多孔質シリカゾル(Fe/mesoporous silica sol)を製造し、発泡体に被覆する;
4)得られた材料を乾燥し、か焼する;
5)エチレンの触媒的分解により700℃でカーボンナノチューブの成長を行う;
6)カーボンナノチューブを有する材料を、コロイドアルミナアルコール溶液で浸漬被覆した後、続いて、硝酸コバルトおよびフェレニック酸(pherrennic acid)を含有する水溶液で浸漬被覆し、Co−Re/Alを当該材料へ適用する;
7)各浸漬後、空気中、350℃で3時間の乾燥およびか焼を繰り返す;
8)触媒を活性化する(または還元する);
9)触媒を、マイクロチャンネル・スチール反応器(microchannel steel reactor)で試験する。
【0024】
カーボンナノチューブは、(ナノチューブの自由端に配置される)活性中心からの効率的な熱伝導を提供する金属セラミック基体に固定される。しかしながら、熱除去の方向は試薬および生成物の流れの方向と全く相関しない。この事実により、反応器中の熱除去の効率は必然的に無効となる。試薬および生成物はナノチューブの自由端から外側へ流れるので、カーボンナノチューブは物質移動からはずれて留まっている。一般的な触媒反応器においてこのような触媒を使用することは不可能である;このような見解は、著者が当該触媒をマイクロチャンネル反応器で使用することを推薦していることにより立証されている。述べられた不都合はマイクロチャンネル系の性能特徴と相殺される。
【0025】
当該触媒には他の欠点もある。当該触媒は複雑な構造設計がなされている。製造方法はかなり複雑である;触媒の技術的パラメータはかなり低く、換言すると、CO転化率は42%、CH選択率は27%である。さらに、上記のような多段階で労働集約的な製造方法は、当該触媒の工業的な使用を不可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】WO2004069407号明細書
【特許文献2】EP0681868号明細書
【特許文献3】SU1819158号明細書
【特許文献4】CN101185904号明細書
【特許文献5】EP1782885号明細書
【特許文献6】RU2325226号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】ハシンA.A.等、工業における触媒(Catalysis in industry)、第2巻、2002年、第26〜37頁
【非特許文献2】S.バーバー等、カーボンナノチューブの著しく高い熱伝導率、フィジカル・レビュー・レターズ、第84巻、N.20、2000年、第4613〜4616頁
【非特許文献3】チンY.H.等、マイクロチャンネル・フィッシャー−トロプシュ合成反応器のための整列カーボンナノチューブアレイに基づく新規構造触媒の製造、触媒の今日(CATALYSIS TODAY)、第110巻、第47〜52頁、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
従って、上記した触媒および製造方法は以下の重要な欠点を有している:高価な成分の含有量が高いため、コストが高いこと;ペレットの熱伝導率が低いこと;製造が複雑で、高温処理が必要なため、特別な装置が必要であったり、触媒コストが増大したり、製造方法が非常に複雑であったりすること。
【0029】
発明者等の数多くの研究より、ナノチューブおよびナノファイバーの触媒中での配置が試薬および生成物の流れ方向において触媒の活性中心からの熱流を高めることができる場合、ナノチューブおよびナノファイバーの使用は効率的であることが明らかにされている。物質移動の増大は、製造される炭化水素およびカーボンナノチューブのグラファイト状表面の高い親和性をもたらし得る。カーボンナノチューブは以下の基準を満たして、必要な効果を達成しなければならない:第1に、炭化水素の中間的な吸着/脱着(sorbtion/desorbtion)は欠如しているが、ほとんど理想的な円筒構造を有していること;第2に、活性中心から触媒ペレット表面までの生成物分子の路長(pass length)に匹敵する長さを有すること;第3に、活性中心から触媒ペレット表面までの生成物の取り出し路(withdrawal path)に沿って、好ましくは輸送細孔(transport pores)の壁に沿って配置されること。
【0030】
以上より、効率的で選択性のある新型の触媒が必要とされていることに注目するべきであり、このような触媒は過熱に対する安定性があって、信頼性があり、しかも触媒ペレット中および触媒床中における全体の熱伝導および物質移動が改善されており、低コストで高活性を有さなければならない。さらに、触媒の簡便で安全な製造方法への必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明によれば、COおよびHから炭化水素を合成するための触媒が提供される。当該触媒は、メンデレーエフの元素の周期表のVIII族から選択される活性成分としての金属および酸化物成分を用いた多孔質担体を含有し、該担体の細孔壁へカーボンナノチューブがグラフトされている。
【0032】
本発明の好ましい一実施態様においては、活性成分はCo、FeまたはRuから選択される金属であり、該金属の含有量は触媒の全重量に基づいて10〜45重量%である。
【0033】
本発明の好ましい一実施態様においては、酸化物成分はアルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、マグネシウムまたはランタンの酸化物、ゼオライト、それらの混合酸化物および/または混合物から選択される。
【0034】
本発明の好ましい一実施態様においては、担体の細孔径は少なくとも10nmである。
【0035】
本発明の好ましい一実施態様においては、多孔質担体の含有量は触媒の全重量に基づいて45〜80重量%である。
【0036】
本発明の好ましい一実施態様においては、カーボンナノチューブの含有量は触媒の全重量に基づいて10〜35重量%である。
【0037】
本発明の好ましい一実施態様においては、触媒は促進剤をさらに含有し、さらに該促進剤として、メンデレーエフの元素の周期表のII〜IVおよび/またはVI〜VIII族の元素が使用され、該促進剤の含有量は触媒の全重量に基づいて0.1〜5重量%である。
【0038】
本発明はまた、メンデレーエフの元素の周期表のVIII族から選択される活性成分としての金属および酸化物成分を用いた多孔質担体を含有し、COおよびHから炭化水素を合成するための触媒を製造する方法であって、活性成分を酸化物成分へ該金属塩の水溶液による含浸により適用した後、乾燥、か焼および水素流での処理を行って多孔質材料を得、該多孔質材料を通して炭素含有気体を600〜650℃で流すことにより、カーボンナノチューブを付着およびグラフトさせた後、Co、FeまたはRuからなる群から選択される活性金属の塩の溶液を用いた処理を、該金属の含有量が触媒の全重量に基づいて10〜45重量%を達成するまで、繰り返し、乾燥およびか焼を行うことを含む方法にも関する。
【0039】
本発明の好ましい一実施態様においては、活性成分はCo、FeまたはRuから選択される金属であり、該金属の含有量は触媒の全重量に基づいて10〜45重量%である。
【0040】
本発明の好ましい一実施態様においては、酸化物成分はアルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、マグネシウムまたはランタンの酸化物、ゼオライト、それらの混合酸化物および/または混合物から選択される。
【0041】
本発明の好ましい一実施態様においては、カーボンナノチューブの含有量は触媒の全重量に基づいて10〜35重量%である。
【0042】
本発明の好ましい一実施態様においては、担体に促進剤塩の溶液をさらに含浸させ、さらに該促進剤として、メンデレーエフの元素の周期表のII〜IVおよび/またはVI〜VIII族の金属および/または酸化物が使用され、該促進剤の含有量は触媒の全重量に基づいて0.1〜5重量%である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
発明者等の多数の実験による研究より、本発明の方法は、ナノチューブの既知の使用方法(チンY.H.等、マイクロチャンネル・フィッシャー−トロプシュ合成反応器のための整列カーボンナノチューブアレイに基づく新規構造触媒の製造、触媒の今日(CATALYSIS TODAY)、第110巻、第47〜52頁、2005年)とは対照的に、金属セラミック担体上のナノチューブの自由端に活性中心を有し密集して一方向に配向されたナノチューブアレイの代わりに、触媒ペレットの輸送細孔の壁に固定されたナノチューブの秩序化配列を製造できることが明らかにされている。本発明の触媒における活性中心はナノチューブの固定端に近接して位置し、このことは、COおよびHから炭化水素を製造する方法において、熱伝導および物質移動を提供するのに効果的である。請求項に記載された触媒およびその製造方法は、一般に知られている要件(すなわち、反応容積中において高濃度の触媒的活性成分を提供すること;触媒粒子の粒径が50μm未満であること、触媒床の熱伝導率が高いこと、気体−液体界面相の面が広いことおよび栓流(plug flow)に近い気体対流の流れを管理すること)に従って、COおよびHからの炭化水素の製造方法のための触媒床を形成することを可能にする。
【0044】
本発明によれば、COおよびHから炭化水素を合成するための触媒が提供される。当該触媒は、メンデレーエフの元素の周期表のVIII族から選択される活性成分としての金属および酸化物成分および炭素成分を有する多孔質担体を含有する。当該炭素成分はカーボンナノチューブ(CNT)であり、担体の細孔壁内へグラフト(固定)されている。
【0045】
酸化物成分の細孔壁内へのカーボンナノチューブのグラフトは、メンデレーエフの元素の周期表のVIII族から選択される活性成分の金属、例えば、Co、FeまたはRu、の粒子上でのCVDによる成長(付着)の間に起こる。金属粒子は、当該金属塩の溶液を用いた含浸工程において、多孔質酸化物担体へ装填される。
【0046】
担体の酸化物成分は、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、マグネシウムまたはランタンの酸化物、ゼオライト、それらの混合酸化物および/または混合物からなる多孔質材料であり、当該多孔質材料の含有量は触媒の全重量に基づいて45〜80重量%である。酸化物成分中の細孔は、カーボンナノチューブを細孔壁内へグラフトさせるように、カーボンナノチューブを金属粒子へ固定させるのを可能にするものであり、細孔径は少なくとも10nmである。このような事実により、活性中心からの効果的な生成物の排気がもたらされる。酸化物成分は様々な形態、例えば、ペレット状、球状、を有し得るものである;このような酸化物成分の大きさは1〜5mmで変化させてもよい。
【0047】
触媒の全重量に基づく酸化物成分の含有量が45%未満であると、C炭化水素の触媒選択率が有意に低下するので望ましくない;当該成分の含有量が80%を超えると、炭化水素の製造時における触媒活性がかなり低下する。
【0048】
活性成分(Co、FeまたはRu)の含有量は触媒の全重量に基づいて10〜45重量%である。当該金属の含有量が10%未満であること、および45%を超えることは合理的ではない。
【0049】
カーボンナノチューブの含有量は触媒の全重量に基づいて10〜35重量%である。当該含有量が10%未満であると効果を奏さず、45%を超えると炭化水素の製造時における触媒活性が低下する。
【0050】
触媒は促進剤をさらに含有し、さらに該促進剤としては、メンデレーエフの元素の周期表のII〜IVおよび/またはVI〜VIII族の元素が使用され、該促進剤の含有量は触媒の全重量に基づいて0.1〜5重量%である。促進剤は、当該金属塩の溶液を用いた含浸により、触媒内へ導入される。
【0051】
本発明はまた、COおよびHから炭化水素を合成するための請求項に記載の触媒を製造する方法であって、メンデレーエフの元素の周期表のVIII族から選択される活性金属、例えばCo、FeまたはRu、を酸化物成分へ該金属塩の水溶液による含浸により適用することを含む方法にも関する。その後、試料の乾燥、か焼および水素流での処理を行って多孔質材料を得る。カーボンナノチューブを触媒の総重量に基づいて10〜35重量%の量でCVDにより炭素含有ガスより600〜650℃にてグラフトさせる。グラフト化CNTを有する多孔質材料に、Co、FeまたはRuからなる群から選択される活性金属の塩の溶液を、該金属の含有量が触媒の全重量に基づいて10〜45重量%を達成するまで、再度、含浸させた後、乾燥およびか焼を行う。
【0052】
細孔壁内へCNTがグラフトされた多孔質担体は促進剤塩の溶液で含浸させる。促進剤としては、メンデレーエフの元素の周期表のII〜IVおよび/またはVI〜VIII族の金属および/または酸化物が使用され、当該促進剤の含有量は触媒の全重量に基づいて0.1〜5重量%である。
【0053】
炭化水素の製造に本発明の触媒を使用することにより、合成ガスの装填量が高くても、過熱に対する安定性が高まることがわかった。同時に、主生成物の生産性は増大する。
【0054】
カーボンナノチューブは、CVDの間に活性金属粒子により担体の細孔壁内へグラフトされ、ガス流の方向で配向される。このような事実により触媒特性が改善され、例えば、改善された物質移動および熱伝導がもたらされる。
【0055】
CNTを含有する本発明の触媒は、フィッシャー−トロプシュ反応、酸化反応CO、スチーム改質(steam reforming)、アルケンの水素化(それらのうちアルカジエンおよびアルキンのオレフィンへの選択的な水素化)、n−ブタン脱水素化、およびCO水素化に使用されてもよい。
【0056】
本発明の方法によれば、CNTを含有する触媒の形成には、予め、多孔質担体を製造しておくことが必要である。CNT含有触媒の形成のため、メンデレーエフの元素の周期表のVIII族から選択される活性金属、例えばCo、FeまたはRuを、当該金属塩の水溶液を含浸させることにより、酸化物成分へ導入した後、乾燥およびか焼を行い、水素流中、500℃で2時間処理する。触媒の全重量に基づいて10〜35重量%のカーボンナノチューブを、CVDにより、酸化物成分の細孔壁内の活性金属粒子へ付着およびグラフトさせる。
【0057】
CVDは炭素含有ガスを用いて行う。炭素含有ガスとしては、水素ガスおよび/または不活性ガス(アルゴン、ヘリウム)を添加(ドープ)されたメタン、アセチレン、一酸化炭素が使用される。活性金属粒子を備えた多孔質材料を鉛直流反応器(vertical flow reactor)内に置き、反応温度まで加熱する。当該反応器内へ炭素含有ガスを連続的に供給し、ガス生成物を排気する。反応器は30mm径および400mm長の石英チューブ(quartz tube)である。当該石英チューブ内へ不活性ガスを吹き込み、空気を排出させる。多孔質材料を予め還元させる。合成は0.01〜1MPaおよび500〜1100℃で30〜240分間行う。多孔質材料を室温まで冷却させ、反応器から排出させる。
【0058】
Co、FeまたはRuの塩(硝酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、アセチルアクトネート(acetylactonate)等)の水溶液を用いた含浸により、活性金属を適用する。活性金属の量に応じて、含浸は多段階、すなわち1段階、2段階などで行うことができる。各段階は、水浴中での乾燥およびその後の不活性ガス流中、100〜1000℃で60〜600分間の乾燥および/またはか焼を含む。必要であれば、促進剤を用いて当該手順を繰り返す。
【0059】
酸化物成分の多孔質系における細孔壁内へのCNTの付着およびグラフトの前には、多孔質材料を、水素スチーム(ガス時間空間率1000〜5000 l/時)中、500〜800℃の温度範囲で60〜180分間、還元により活性化させる。
【0060】
炭化水素の合成を行う前には、触媒試料を、水素スチーム(ガス時間空間率1000〜5000 l/時)中、300〜600℃の温度範囲で60〜300分間、還元により活性化させる。
【0061】
CO:Hからの炭化水素の合成は、請求項に記載の触媒の固定床を備えたチューブ状反応器中、圧力0.1〜4MPaおよび温度150〜300℃で行う。合成ガス中のCO:Hのモル比は1:1〜1:3である。
【0062】
以下の実施例を提供して本発明の様々な具体例をさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0063】
実施例1
10%Co/(80%SiO+10%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
硝酸コバルト水溶液由来のCo0.05gを1gの酸化物成分SiOへ湿式含浸により適用した後、乾燥およびか焼を行う。得られた材料を水素流中、500℃の温度で2時間処理し、直径30mmの反応器中に置き、水素流中、650℃の温度まで加熱した後、比率CH:Hが2:1で供給量が40:20ml/分のメタン−水素混合物を当該反応器へ導入する。付着したCNTは担体の多孔質系の壁のコバルト粒子へ固定される。未反応のメタンおよび水素を反応器からトラップにより取り除く。合成時間は30分間である。完了したら、反応器を水素流で室温まで冷却させ、得られた材料を反応器から排出する。当該材料は、酸化物成分および8〜70nm径の円錐および円筒構造のカーボンナノチューブを含有する多孔質担体である。
【0064】
2.触媒試料の製造
硝酸コバルト水溶液由来のCo0.05gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
フィッシャー−トロプシュ反応での使用前に、触媒試料を水素流(ガス時間空間率3000 l/時)により400℃で1時間活性化する。当該触媒の固定床を備えたチューブ状反応器中、2MPaおよび160〜240℃にて、合成ガス中のCO:Hモル比1:2(ガス時間空間率3000 l/時)を採用して、炭化水素の合成を行う。
【0065】
実施例2
25%Co/(60%ゼオライトHY+15%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
実施例1で記載したように、コバルトを1gの酸化物成分ゼオライトHYへ湿式含浸により適用し、当該材料を処理する。得られた材料を直径30mmの反応器中に置き、アルゴン流中、500℃の温度まで加熱した後、比率C:Arが1:7で供給量が12:93ml/分のアセチレン−アルゴン混合物を当該反応器へ導入する。付着したCNTは担体の多孔質系の壁のコバルト粒子へ固定される。未反応のアセチレンおよびアルゴンを反応器からトラップにより取り除く。合成時間は120分間である。完了したら、反応器をアルゴン流で室温まで冷却させ、得られた材料を反応器から排出する。当該材料は、酸化物成分および8〜60nm径の円錐および円筒構造のカーボンナノチューブを含有する多孔質担体である。
【0066】
2.触媒試料の製造
硝酸コバルト水溶液由来のCo0.20gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
フィッシャー−トロプシュ反応での使用前に、触媒試料を水素流(ガス時間空間率3000 l/時)により450℃で1時間活性化する。当該触媒の固定床を備えたチューブ状反応器中、2MPaおよび160〜240℃にて、合成ガス中のCO:Hモル比1:2(ガス時間空間率3000 l/時)を採用して、炭化水素の合成を行う。
【0067】
実施例3
45%Co/(45%MgO+10%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
実施例1で記載したように、コバルトを1gの酸化物成分MgOへ湿式含浸により適用し、当該材料を処理する。得られた材料を直径30mmの反応器中に置き、水素流中、650℃の温度まで加熱した後、比率CH:Hが2:1で供給量が80:40ml/分のメタン−水素混合物を当該反応器へ導入する。付着したCNTは担体の多孔質系の壁のコバルト粒子へ固定される。未反応のメタンおよび水素を反応器からトラップにより取り除く。合成時間は180分間である。完了したら、反応器を水素流で室温まで冷却させ、得られた材料を反応器から排出する。当該材料は、酸化物成分および8〜50nm径の円錐および円筒構造のカーボンナノチューブを含有する多孔質担体である。
【0068】
2.触媒試料の製造
硝酸コバルト水溶液由来のCo0.40gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ含浸により適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0069】
実施例4
25%Fe/(65%La+10%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
実施例1で記載したように、Fe(III)0.05gを1gの酸化物成分Laへ湿式含浸により適用し、当該材料を処理する。得られた材料を直径30mmの反応器中に置き、N:H比率=2:1の窒素−水素混合物流中、600℃の温度まで加熱した後、体積比率C:N:Hが1:7:4で供給量が12:93:45ml/分のアセチレン、窒素および水素の混合物を当該反応器へ導入する。付着したCNTは担体の多孔質系の壁のコバルト粒子へ固定される。未反応のアセチレン、窒素および水素を反応器からトラップにより取り除く。合成時間は180分間である。完了したら、反応器を水素流で室温まで冷却させ、得られた材料を反応器から排出する。当該材料は、酸化物成分および8〜60nm径の円錐および円筒構造のカーボンナノチューブを含有する多孔質担体である。
【0070】
2.触媒試料の製造
硝酸第二鉄水溶液由来のFe0.20gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ含浸により適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0071】
実施例5
10%Ni/(70%TiO+20%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
実施例1で記載したように、硝酸ニッケル水溶液由来のNi0.05gを1gの酸化物成分TiOへ湿式含浸により適用し、当該材料を処理する。得られた材料を直径30mmの反応器中に置き、水素流中、700℃の温度まで加熱した後、体積比率C:N:Hが1:7:4で供給量が12:93:45ml/分のアセチレン、窒素および水素の混合物を当該反応器へ導入する。付着したCNTは担体の多孔質系の壁のコバルト粒子へ固定される。未反応のアセチレン、窒素および水素を反応器からトラップにより取り除く。合成時間は120分間である。完了したら、反応器を水素流で室温まで冷却させ、得られた材料を反応器から排出する。当該材料は、酸化物成分および5〜10nm径の円錐および円筒構造のカーボンナノチューブを含有する多孔質担体である。
【0072】
2.触媒試料の製造
硝酸ニッケル水溶液由来のNi0.05gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ含浸により適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0073】
実施例6
20%Ru/(70%Al+10%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
実施例1で記載したように、Ru0.05を1gの酸化物成分Alへ湿式含浸により適用し、当該材料を処理する。得られた材料を直径30mmの反応器中に置き、水素流中、650℃の温度まで加熱した後、比率CH:Hが2:1で供給量が110:55ml/分のメタン−水素混合物を当該反応器へ導入する。付着したCNTは担体の多孔質系の壁のコバルト粒子へ固定される。未反応のメタンおよび水素を反応器からトラップにより取り除く。合成時間は120分間である。完了したら、反応器を水素流で室温まで冷却させ、得られた材料を反応器から排出する。当該材料は、酸化物成分および8〜70nm径の円錐および円筒構造のカーボンナノチューブを含有する多孔質担体である。
【0074】
2.触媒試料の製造
硝酸ルテニウム水溶液由来のRu0.15gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ含浸により適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0075】
実施例7
40%Co/(50%ZrO+10%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
実施例1で記載したように、Co0.05を1gの酸化物成分ZrOへ湿式含浸により適用し、当該材料を処理する。得られた材料を直径30mmの反応器中に置き、水素流中、650℃の温度まで加熱した後、比率CH:Hが2:1で供給量が80:40ml/分のメタン−水素混合物を当該反応器へ導入する。付着したCNTは担体の多孔質系の壁のコバルト粒子へ固定される。未反応のメタンおよび水素を反応器からトラップにより取り除く。合成時間は120分間である。完了したら、反応器を水素流で室温まで冷却させ、得られた材料を反応器から排出する。当該材料は、酸化物成分および8〜60nm径の円錐および円筒構造のカーボンナノチューブを含有する多孔質担体である。
【0076】
2.触媒試料の製造
硝酸コバルト水溶液由来のCo0.35gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ含浸により適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0077】
実施例8
25%Co−3%Ba/(57%ゼオライトHY+15%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
酸化物成分およびカーボンナノチューブを有する多孔質担体を実施例2で記載したように製造する。カーボンナノチューブは10〜80nm径の円錐および円筒構造を有している。
2.触媒試料の製造
適切な塩の水溶液由来のBa0.03gおよびCo0.20gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ含浸により適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0078】
実施例9
25%Co−1.5%Al/(63.5%ゼオライトHY+10%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
酸化物成分およびカーボンナノチューブを有する多孔質担体を実施例2で記載したように製造する。カーボンナノチューブは8〜70nm径の円錐および円筒構造を有している。
2.触媒試料の製造
適切な塩の水溶液由来のAl0.015gおよびCo0.2gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ含浸により適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0079】
実施例10
25%Co−3%Zr/(54%ゼオライトHY+18%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
酸化物成分およびカーボンナノチューブを有する多孔質担体を実施例2で記載したように製造する。カーボンナノチューブは8〜90nm径の円錐および円筒構造を有している。
2.触媒試料の製造
適切な塩の水溶液由来のZr0.03gおよびCo0.2gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ含浸により適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0080】
実施例11
25%Co−5%Cr/(53%ゼオライトHY+17%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
酸化物成分およびカーボンナノチューブを有する多孔質担体を実施例2で記載したように製造する。カーボンナノチューブは10〜80nm径の円錐および円筒構造を有している。
2.触媒試料の製造
適切な塩の水溶液由来のCr0.03gおよびCo0.2gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ含浸により適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0081】
実施例12
25%Co−0.1%Re/(55.9%ゼオライトHY+19%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
酸化物成分およびカーボンナノチューブを有する多孔質担体を実施例2で記載したように製造する。カーボンナノチューブは8〜60nm径の円錐および円筒構造を有している。
2.触媒試料の製造
適切な塩の水溶液由来のRe0.001gおよびCo0.2gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ含浸により適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0082】
実施例13
25%Co−0.5%Fe/(59.5%ゼオライトHY+15%CNT)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.CNTを有する触媒担体の製造
酸化物成分およびカーボンナノチューブを有する多孔質担体を実施例2で記載したように製造する。カーボンナノチューブは8〜70nm径の円錐および円筒構造を有している。
2.触媒試料の製造
適切な塩の水溶液由来のFe0.005gおよびCo0.2gを、細孔中にCNTがグラフトされた担体へ含浸により適用した後、当該試料を乾燥およびか焼する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0083】
実施例14(フィッシャー−トロプシュ法の既知の触媒20%Co/(80%ゼオライト)との比較)
20%Co/(80%ゼオライト)を含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.触媒担体の製造
担体として粒状ゼオライトHBを使用する。
2.触媒試料の製造
コバルトを実施例1で記載したように適用する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0084】
実施例15(フィッシャー−トロプシュ法の既知の触媒であるEP1782885による20%Co/CNTとの比較)
20%Co/CNTを含有する触媒の試料を以下のように製造する。
1.触媒担体の製造
チンY.H.等により開示された方法(触媒の今日、第110巻、第47〜52頁、2005年)に従って、CVDによりエチレンからカーボンナノチューブを成長させる。担体は、嵩密度0.4g/cmのフレーク状黒色粉体である。
2.触媒試料の製造
コバルトを実施例1で記載したように適用する。
触媒の活性化および炭化水素の合成を実施例1で記載したように行う。
【0085】
実施例1〜15の組成の触媒試料を用いてCOおよびHから炭化水素を合成した結果を下記の表1に示す。
【0086】
表1に示す結果より、担体の細孔壁にグラフトされたカーボンナノチューブを含有する本発明の触媒を、カーボンナノチューブを含有しない実施例14の触媒と比較すると、CO転化率およびC以上の炭化水素の生産性は増加し、CH選択率は減少する。実施例15の触媒は、合成ガス時間空間率が3000 l/時のとき、活性が低い。
【0087】
以上より、本発明の炭化水素合成用触媒は効率的で選択性のある新型の触媒であり、過熱に対する安定性があって、信頼性があり、しかも触媒ペレット中および触媒床中における全体の熱伝導および物質移動が改善されており、低コストで活性が高い。触媒の製造方法は簡便で安全である。
【0088】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
COおよびHから炭化水素を合成するための触媒であって、メンデレーエフの元素の周期表のVIII族から選択される活性成分としての金属および酸化物成分を用いた多孔質担体を含有し、該担体の細孔壁内へカーボンナノチューブがグラフトされている触媒。
【請求項2】
活性成分がCo、FeまたはRuから選択される金属であり、該金属の含有量が触媒の全重量に基づいて10〜45重量%である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
酸化物成分がアルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、マグネシウムまたはランタンの酸化物、ゼオライト、それらの混合酸化物および/または混合物から選択される請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
担体の細孔径が少なくとも10nmである請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
多孔質担体の含有量が触媒の全重量に基づいて45〜80重量%である請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
カーボンナノチューブの含有量が触媒の全重量に基づいて10〜35重量%である請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
触媒が促進剤をさらに含有し、さらに該促進剤として、メンデレーエフの元素の周期表のII〜IVおよび/またはVI〜VIII族の元素が使用され、該促進剤の含有量が触媒の全重量に基づいて0.1〜5重量%である請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
メンデレーエフの元素の周期表のVIII族から選択される活性成分としての金属および酸化物成分を用いた多孔質担体を含有し、COおよびHから炭化水素を合成するための触媒を製造する方法であって、
活性成分を酸化物成分へ該金属塩の水溶液による含浸により適用した後、乾燥、か焼および水素流での処理を行って多孔質材料を得、該多孔質材料を通して炭素含有気体を600〜650℃で流すことにより、カーボンナノチューブを付着およびグラフトさせた後、Co、FeまたはRuからなる群から選択される金属の塩の溶液を用いた処理を、該金属の含有量が触媒の全重量に基づいて10〜45重量%を達成するまで、繰り返し、乾燥およびか焼を行うことを含む方法。
【請求項9】
活性成分がCo、FeまたはRuから選択される金属であり、該金属の含有量が触媒の全重量に基づいて10〜45重量%である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
酸化物成分がアルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、マグネシウムまたはランタンの酸化物、ゼオライト、それらの混合酸化物および/または混合物から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
カーボンナノチューブの含有量が触媒の全重量に基づいて10〜35重量%である請求項8に記載の方法。
【請求項12】
担体に促進剤塩の溶液をさらに含浸させ、さらに該促進剤として、メンデレーエフの元素の周期表のII〜IVおよび/またはVI〜VIII族の金属および/または酸化物が使用され、該促進剤の含有量が触媒の全重量に基づいて0.1〜5重量%である請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2013−509290(P2013−509290A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536741(P2012−536741)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/RU2010/000618
【国際公開番号】WO2011/053192
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(511305438)インフラ・テクノロジーズ・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】INFRA TECHNOLOGIES LTD.
【Fターム(参考)】