説明

CO選択酸化触媒およびその製造方法

【課題】 CO選択酸化触媒において、低温条件下および/または高空間速度条件下における触媒活性をさらに向上させうる手段を提供する。
【解決手段】 白金原子を含む白金粒子が無機担体に担持されてなる白金含有触媒粉末を含むCO選択酸化触媒において、前記白金含有触媒粉末に、コバルト、マンガン、ニッケル、および銅からなる群から選択される助触媒原子のアルミネートをさらに含ませる。また、CO選択酸化触媒を製造する際には、コバルト、マンガン、ニッケル、および銅からなる群から選択される助触媒原子のアルミネートを含有する無機担体を準備し、さらに、前記無機担体に白金原子を含有する白金粒子を担持させて、白金含有触媒粉末を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素(以下、「CO」とも称する)を選択的に酸化するための、CO選択酸化触媒に関する。詳細には、本発明は、低温においても高いCO選択酸化活性を示すCO選択酸化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の水素−酸素燃料電池が開発されており、中でも、低温(通常100℃以下)で作動可能な固体高分子型燃料電池が注目を集め、自動車用低公害動力源としての実用化が検討されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、純粋な水素を燃料源として用いることがエネルギー効率の観点からは好ましいが、安全性やインフラの普及等を考慮すると、アルコール、ガソリン、軽油等の液体を燃料源として用い、これらを改質装置において水素リッチな改質ガスに転換する方法も有望な候補である。
【0004】
炭化水素系液体燃料を燃料源として用いた場合、改質ガス中にはある程度の量のCOが残存しうる。ところが、このCOは、燃料電池の電極に用いられている白金系触媒に対し、触媒毒として作用する。このため、このCOを例えばCOに転化するなどして除去し、白金系電極触媒に対する被毒を防止する必要がある。具体的には、まずシフト反応(CO+HO→CO+H)を利用し、改質ガス中に含まれるCO濃度を1体積%程度にまで低減する。そして、貴金属が無機担体に担持されてなるCO選択酸化触媒を用い、COを酸化除去(COに転化)する方法が提案されている。
【0005】
この場合、CO選択酸化触媒の温度は酸化反応の進行に伴い上昇する。その結果、逆シフト反応(CO+H→CO+HO)によるCO濃度の増加や、メタン化反応(CO+3H→CH+HO、CO+4H→CH+2HO)による水素の消費、といった問題が生じる。このため、熱交換器などの装置を用いてCO選択酸化触媒の温度を比較的低い温度範囲に維持し、上記の好ましくない反応を抑制するのが一般的である。
【0006】
上記の好ましくない反応は、低温条件ほど効果的に抑制されうる。このため、低温活性に優れる触媒が望まれている。また、頻繁に起動および停止し、負荷変動にさらされる自動車へのオンボード改質器を考えると、雰囲気変動に耐えうる触媒が好ましい。これらの観点からは、貴金属系、とりわけ白金系の触媒が有望である。反面、白金系触媒の欠点として、低温条件下では白金原子にCOが強く吸着するという吸着被毒現象により、COの除去効率が低下するという問題がある。
【0007】
かような問題を解決すべく、白金原子に加えて、コバルト、銅、および鉄などの遷移金属原子を添加して、低温におけるCO選択酸化活性を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【特許文献1】特開2001−149781号公報
【特許文献2】特開2002−263501号公報
【特許文献3】特開2002−306972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献に記載の触媒によっても、低温領域における触媒活性は未だ充分といえるものではない。また、50000〜100000h−1といった高空間速度条件下における前記特許文献に記載の触媒の触媒活性についても明らかではない。
【0009】
さらに、前記特許文献には、含浸や蒸発乾固といった手段を用いてコバルト原子や銅原子などの低温活性化成分と白金成分とを担体に同時に担持させることにより、CO選択酸化触媒を調製することが好ましい旨が記載されている。
【0010】
しかしながら、かような手法により触媒を調製すると、場合によっては、白金成分と低温活性化成分とのいずれか一方の成分が他方の成分により被覆されてしまう虞がある。その結果、被覆された成分が活性を充分に発揮できず、最終的なCO選択酸化活性が低下してしまうという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、白金原子を含有するCO選択酸化触媒において、低温条件下および/または高空間速度条件下での触媒活性をより一層向上させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、白金原子を含む白金粒子が第1の無機担体に担持されてなる白金含有触媒粉末を含むCO選択酸化触媒であって、前記白金含有触媒粉末が、コバルト、マンガン、ニッケル、および銅からなる群から選択される助触媒原子のアルミネートをさらに含む、CO選択酸化触媒である。
【0013】
また本発明は、コバルト、マンガン、ニッケル、および銅からなる群から選択される助触媒原子のアルミネートを含有する無機担体を準備する工程と、前記無機担体に白金原子を含有する白金粒子を担持させて、白金含有触媒粉末を得る工程と、を有する、CO選択酸化触媒の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、CO選択酸化触媒において、低温条件下および/または高空間速度条件下での触媒活性を向上させうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
上述したように、従来、貴金属原子である白金原子を含有するCO選択酸化触媒において、コバルト、銅、および鉄などの遷移金属原子をさらに添加すると、低温領域におけるCO選択酸化活性が向上することが知られている。本発明者は、これらの遷移金属原子のなかでもコバルト、マンガン、ニッケル、および銅といった助触媒原子に着目し、CO選択酸化触媒の触媒活性のさらなる向上を図るべく、鋭意研究を行った。
【0017】
なお、上記の助触媒原子の添加によりCO選択酸化活性が向上するメカニズムはいまだ明らかとはなっていない。ただし、助触媒原子が存在することで、反応ガス中の酸素や水などが活性化されて何らかの活性種が生成し、この活性種がCOのCOへの酸化に関与しているものと推測される。また、助触媒原子の存在によって白金原子から助触媒原子へと電子が吸引され、これにより白金原子のCO吸着力が低下し、COがCOへと酸化されやすくなるというメカニズムも推定されている。ただし、その他のメカニズムが関与していたとしても、本発明の技術的範囲は何ら影響を受けない。
【0018】
ここで、前記特許文献に好ましい調製方法として記載されているように、白金成分と助触媒成分とを同時に無機担体に担持させることによって、白金原子および助触媒原子を含有するCO選択酸化触媒を製造する場合を考えてみる。かような調製方法によれば、白金原子は、白金金属の粒子または白金酸化物の粒子として無機担体の表面に担持される。一方、助触媒原子も同様に、助触媒原子の金属粒子または酸化物(例えば、コバルト酸化物(Co)など)の粒子として無機担体の表面に担持される。この際、無機担体の1個の粒子に着目すると、この無機担体粒子の表面には、白金成分と助触媒成分とが共存している。多くの場合には、白金金属の粒子と、助触媒原子の酸化物とが、無機担体粒子の表面に同時に存在していると考えられる。
【0019】
従って、場合によっては、無機担体に担持された白金成分が、酸化物などの助触媒成分により被覆されてしまう虞がある。あるいは逆に、無機担体に担持された助触媒成分が白金成分により被覆されてしまう虞もある。その結果、被覆された成分が活性を充分に発揮できず、最終的なCO選択酸化活性が低下してしまうという問題がある。
【0020】
本発明者は、CO選択酸化触媒の触媒活性を向上させるためのアプローチとして、白金成分および助触媒成分の無機担体表面における存在状態を制御することを試みた。具体的には、助触媒原子をアルミネートの形態で含有させることで、上述した被覆による問題の解決を図った。
【0021】
すなわち、本発明の第1は、白金原子を含む白金粒子が第1の無機担体に担持されてなる白金含有触媒粉末を含むCO選択酸化触媒であって、前記白金含有触媒粉末が、コバルト、マンガン、ニッケル、および銅からなる群から選択される助触媒原子のアルミネートをさらに含む、CO選択酸化触媒である。なお、本願において「CO選択酸化触媒」とは、少なくともCOおよびOを含有するガスに接触することにより、前記ガス中のCOのCOへの酸化反応を選択的に促進する触媒をいう。また、本願において「低温」とは、例えば、200℃程度以下の温度を指し、より詳細には、100〜180℃程度の温度を指す。
【0022】
本発明の第1のCO選択酸化触媒は、白金原子を含む白金粒子が第1の無機担体に担持されてなる白金含有触媒粉末を含む。そして、前記白金含有触媒粉末が、コバルト、マンガン、ニッケル、および銅からなる群から選択される助触媒原子のアルミネートをさらに含む点に特徴を有する。以下、図面を参照しながら、本発明のCO選択酸化触媒の好ましい形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下に記載する形態のみには制限されない。
【0023】
[CO選択酸化触媒]
(第1形態)
[構成]
図1は、本形態のCO選択酸化触媒を示す模式断面図である。
【0024】
図1に示すように、本形態のCO選択酸化触媒10は、第1の無機担体22の表面に白金粒子24が担持された構成の白金含有触媒粉末20から構成される。前記第1の無機担体22は、アルミナを主成分として含む。さらに、第1の無機担体22は、その表層に、コバルトアルミネートからなるコバルトアルミネート層26を有する。なお、説明の便宜上、図1に示すCO選択酸化触媒の各構成成分の寸法比率は誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、多くの場合、第1の無機担体22の表面には多数の微細孔が形成されているが、この微細孔は図1においては省略されている。このことは、後述するその他の図面についても同様である。
【0025】
以下、図1に示す形態のCO選択酸化触媒10(白金含有触媒粉末20)の好ましい構成について、詳細に説明する。
【0026】
白金含有触媒粉末20は、白金粒子24が第1の無機担体22に担持されてなる構成を有する。なお、本明細書において、前記の「第1の」という語、および、第4形態以降において後述する助触媒粉末用の無機担体に冠せられる「第2の」という語は、白金含有触媒粉末20に含まれる白金粒子24と、後述する助触媒粉末に含まれる助触媒粒子とが別々の無機担体に担持されていることを示すために便宜的に用いられる。従って、「第1の」および「第2の」という序列自体に格別な意味はない。
【0027】
白金粒子24は、白金原子を含有する金属粒子である。この白金原子は、本発明の触媒の使用時において、流通するガス中のCOを吸着する機能を有する。図1に示す形態において、白金粒子24は、白金原子のみからなる粒子である。ただし、白金粒子24は白金原子のみからなる粒子に限られず、例えば、白金酸化物(一酸化白金(PtO)、二酸化白金(PtO)など)からなる粒子、白金と白金酸化物との混合物からなる粒子、白金合金からなる粒子などであってもよい。白金合金としては、後述する他の貴金属や遷移金属と白金との合金が例示される。
【0028】
第1形態において、第1の無機担体22は、上述したように主成分がアルミナであり、その表層にコバルトアルミネート層26を有する。第1の無機担体22の主成分としてアルミナを用いると、触媒活性の点で好ましく、また、原料の入手、担体の製造および取扱いが容易である。
【0029】
アルミナの種類は特に制限されず、触媒用の無機担体として従来公知のものが用いられうる。アルミナとしては、例えば、αアルミナ、θアルミナ、γアルミナ、δアルミナ、βアルミナが例示される。なお、これらは1種のみが単独で用いられてもよく、これらの混合物が用いられてもよい。ここで、アルミナの混合物には、2種以上のアルミナが物理的に混合された形態のほか、結晶構造のある部分と他の部分とで結晶性の異なるアルミナも含まれる。かような形態としては、例えば、ある部分がα型で他の部分がθ型のアルミナが挙げられる。
【0030】
第1の無機担体22の比表面積は、好ましくは35〜150m/g、より好ましくは50〜110m/gである。第1の無機担体22の比表面積がかような範囲内の値であると、第1の無機担体22の表面に白金粒子22が高分散に担持され、触媒活性に優れる。かような観点から、第1の無機担体22としては、γアルミナ、θアルミナ、またはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0031】
第1の無機担体22の平均粒子径についても、特に制限はない。ただし、第1の無機担体22の平均粒子径は、好ましくは0.8〜3.5μm、より好ましくは1.5〜2.5μmである。この平均粒子径が小さすぎると、飛散性が上昇して取扱いが煩雑となる場合がある。一方、この平均粒子径が大きすぎると、無機担体の比表面積の減少に伴って白金粒子の分散性が悪化し、触媒性能が低下する虞がある。また、触媒の成形性が悪化し、例えば触媒をモノリス担体に塗布して使用する場合などに剥離し易くなる虞がある。
【0032】
「助触媒原子のアルミネート」とは、アルミニウム原子と助触媒原子との複合酸化物であり、その組成はAlMO、AlMO、AlMO、AlM(ただし、Mは助触媒原子である)等で示される。なお、白金含有触媒粉末20におけるアルミネートの存在は、粉末X線回折法といった手法により確認されうる。また、助触媒原子のアルミネートは特徴的な色調を呈するため、場合によっては目視による判断も可能である。例えば、コバルトアルミネート、ニッケルアルミネート、銅アルミネート、マンガンアルミネートは、それぞれ、ライトブルー色、緑色、青緑色、暗緑色を呈する。
【0033】
本発明では、助触媒原子として4種の原子を採用したが、本形態においては、低温領域および高温領域の双方においてCO酸化活性を両立させるという観点から、助触媒原子としてコバルト原子が含まれることが好ましい。すなわち、白金含有触媒粉末20に含まれるアルミネートとしては、コバルトアルミネートが採用されることが好ましい。
【0034】
図1に示す形態において、第1の無機担体22は、表層の全面にコバルトアルミネート層26を有するが、本発明の技術的範囲はかような形態のみには制限されない。例えば、第1の無機担体22が表層の一部にコバルトアルミネート層26を有し、第1の無機担体22の表面の一部が露出する形態もまた、採用されうる。また、コバルト以外の助触媒原子のアルミネート、すなわち、マンガンアルミネート(AlMnO)、ニッケルアルミネート(AlNiO3)、および銅アルミネート(AlCuO3)からなる層が、第1の無機担体22の表層に形成されてもよい。さらに、前記アルミネートからなる層は、1種のみが単独で第1の無機担体22の表層に形成されてもよく、2種以上のアルミネートからなる層が形成されてもよい。
【0035】
第1の無機担体22が表層に有するアルミネート層26の厚さは、特に制限されない。ただし、アルミネート層26の厚さは、数nm〜0.5μm程度であることが好ましい。アルミネート層26の厚さは、触媒製造時の助触媒原子の含有量(後述する助触媒溶液中の助触媒原子の濃度)や助触媒溶液のpHなどを調節することにより、適宜制御されうる。
【0036】
図1に示す形態においては、第1の無機担体22の表層にのみコバルトアルミネートが存在している。しかしながら、かような形態のみには制限されず、場合によっては、第1の無機担体22の内部にコバルトアルミネートが存在してもよい。
【0037】
第1の無機担体22の表面積に占める、アルミネート層26が形成された部位の面積比は、50〜100%と高いことが好ましい。なお、図1に示す形態(第1形態)においては第1の無機担体22の全表面にコバルトアルミネート層26が形成されていることから、この面積比は100%となる。ここで、この面積比が小さすぎると、第1の無機担体の表層にアルミネート層を形成したことによる効果が充分に得られない虞がある。なお、この面積比は、例えば、XPS(X線光電子分光法)を用いて白金含有触媒粉末20の表面組成を分析することにより、算出されうる。
【0038】
以上、第1の無機担体22の主成分がアルミナである場合を例に挙げて説明したが、表面にコバルトアルミネート層26を形成することが可能であれば、アルミナ以外の化合物が第1の無機担体22の主成分として用いられてもよい。第1の無機担体22として用いられうるアルミナ以外の成分としては、例えば、チタニア、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア、マグネシア、ゼオライトなどの金属酸化物が例示される。これらは1種のみが単独で用いられてもよく、これらの混合物が用いられてもよい。さらに、これらの金属酸化物とアルミナとの混合物が用いられても、勿論よい。なお、アルミナ以外の金属酸化物が第1の無機担体22の主成分として用いられる場合であっても、第1の無機担体22の比表面積や平均粒子径その他の好ましい形態としては、アルミナを例に挙げて上述した形態が同様に採用されうる。
【0039】
第1形態のCO選択酸化触媒10(白金含有触媒粉末20)において、白金原子および助触媒原子、並びに第1の無機担体22のそれぞれの含有量は特に制限されず、所望の触媒性能や製造コストなどを考慮することにより、適宜調整されうる。
【0040】
以下、白金含有触媒粉末20における各成分の含有量の好ましい一実施形態について説明するが、下記の形態のみには制限されない。
【0041】
白金含有触媒粉末20における白金原子の含有量は、白金含有触媒粉末20の全量に対して、好ましくは0.3〜2.0質量%、より好ましくは0.5〜2.5質量%である。白金原子の含有量が少なすぎると、充分な触媒活性が得られない虞がある。一方、白金原子の含有量が多すぎると、含有量の増加に見合った触媒活性の上昇がみられなくなり、触媒の製造コストが高騰する虞がある。また、白金含有触媒粉末20における助触媒原子の含有量は、白金含有触媒粉末20の全量に対して、好ましくは0.6〜14質量%、より好ましくは2.5〜12質量%である。助触媒原子の含有量が少なすぎると、同様に充分な触媒活性が得られない虞がある。一方、助触媒原子の含有量が多すぎると、白金原子の含有量が相対的に減少する結果、やはり充分な触媒活性が得られない虞がある。
【0042】
本発明のCO選択酸化触媒は、COを吸着するための白金原子と、白金原子上に吸着されたCOのCOへの酸化を促進する助触媒原子とを含有しており、この両原子の含有量のバランスが良好に保たれると、触媒のCO選択酸化活性の向上に寄与しうる。かような観点から、白金含有触媒粉末20における、白金原子に対する助触媒原子の含有量の原子換算モル比は、好ましくは8〜65、より好ましくは11〜20である。ただし、この範囲を外れる量が採用されてもよいことは勿論である。
【0043】
ここで、本発明のCO選択酸化触媒が用いられる際の空間速度条件に応じて、必要とされる白金原子および助触媒原子の含有量は変動しうる。上記の含有量の好ましい値には一定の幅があるが、例えば、自動車に搭載される場合のように100000h−1を超えるような高空間速度条件下において用いられる場合の好ましい含有量は、触媒の全量に対して白金原子が0.5〜2.5質量%程度、助触媒原子が1.5〜10質量%程度である。これに対し、民生用機器に用いられる場合のように10000h−1を下回るようなそれほど高くない空間速度条件下で用いられる場合の好ましい含有量は、触媒の全量に対して白金原子が0.2〜1.2質量%程度、助触媒原子が1.5〜7.0質量%程度あれば充分である。
【0044】
なお、本願において白金原子および助触媒原子の含有量とは、特に断りのない限り、金属原子に換算した量をいう。また、白金原子および助触媒原子の含有量に関連する上述した種々の値は、触媒を製造する際に用いられる各原料の量から算出され、これらの原料の量を調節することにより制御されうる。
【0045】
白金含有触媒粉末20は、本発明の作用および効果を損なわない限り、上記の白金原子および助触媒原子以外の金属原子を触媒金属として含有してもよい。例えば、白金原子以外にも、ルテニウム、ロジウム、パラジウムなどの他の貴金属原子が含有されうる。これらの貴金属原子は、図1に示す白金粒子24と同様の粒子、または白金との合金の粒子として、第1の無機担体22に担持されうる。さらに、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジムなどの希土類原子や、鉄などの遷移金属原子が含有されてもよい。これらの原子は、白金粒子24を被覆しない形態で含有されることが好ましい。さらに、例えば、白金との合金の粒子として第1の無機担体22に担持されてもよく、ペロブスカイトのような複合酸化物の形態で含有されてもよい。なお、白金含有触媒粉末20における、白金原子および助触媒原子以外の金属原子の含有量は、特に制限されないが、金属原子換算で0.05〜3.0質量%程度が適当である。
【0046】
[作用および効果]
図1に示す第1形態のCO選択酸化触媒10においては、上述したように、第1の無機担体22の表層に形成されたアルミネート層26上に、白金粒子24が担持されている。かような構成によれば、白金粒子24が他の成分によって被覆されてしまうことがない。従って、白金粒子24がCOを充分に吸着しうる。また、助触媒原子であるコバルト原子が、アルミネート(コバルトアルミネート)層26として、第1の無機担体22の表層に存在している。従って、このコバルト原子の作用により、白金原子に吸着されたCOのCOへの酸化が充分に促進されうる。
【0047】
従って、第1形態のCO選択酸化触媒10によれば、白金原子によるCOの吸着と、助触媒原子(コバルト原子)によるCO酸化の促進との双方の機構が効率よく進行しうる。その結果、触媒活性に優れるCO選択酸化触媒が提供されうる。
【0048】
[製造方法]
本発明の第2は、CO選択酸化触媒の製造方法に関する。具体的には、本発明の第2は、コバルト、マンガン、ニッケル、および銅からなる群から選択される助触媒原子のアルミネートを含有する無機担体を準備する工程(無機担体準備工程)と、前記無機担体に白金原子を含有する白金粒子を担持させて、白金含有触媒粉末を得る工程と、を有する、CO選択酸化触媒の製造方法である。図1に示す形態(第1形態)のCO選択酸化触媒は、この製造方法によって製造可能である。以下、工程順に説明する。
【0049】
[無機担体準備工程]
まず、助触媒原子(コバルト、マンガン、ニッケル、銅)のアルミネートを含有する無機担体を準備する。この工程において準備される無機担体の好ましい形態については、既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0050】
助触媒原子のアルミネートを含有する無機担体としては、自ら調製したものを用いてもよいし、商品が市販されている場合には、その商品を購入して用いてもよい。
【0051】
助触媒原子のアルミネートを含有する無機担体を自ら調製する場合には、例えば、アルミナ原料に助触媒原子を担持させ、焼成することによって、表層に当該助触媒原子のアルミネートが生成したアルミナを得るとよい。以下、かような手法により無機担体を調製する具体的な方法を説明する(後述する実施例も参照)。ただし、その他の手法により無機担体を調製しても、勿論よい。
【0052】
まず、助触媒原子を担持させるためのアルミナ原料を準備する。アルミナ原料は、焼成によりアルミナとなりうる原料であれば特に制限されない。アルミナ原料としては、例えば、ベーマイトアルミナ、ギブサイトなどの水酸化アルミニウムのほか、γアルミナ、θアルミナ、δアルミナ、βアルミナなどが挙げられる。新たに開発された材料がアルミナ原料として用いられてもよい。
【0053】
続いて、助触媒原子のイオンが溶解した溶液(以下、単に「助触媒溶液」とも称する)を調製する。この助触媒溶液は、助触媒原子を上記で準備したアルミナ原料に担持させる目的で、後述する担持工程において用いられる。
【0054】
この助触媒溶液を調製する工程では、まず、助触媒原子の原料化合物(以下、単に「助触媒化合物」とも称する)を準備する。さらに、助触媒化合物を溶解させるための溶媒を準備する。その後、準備した溶媒に助触媒化合物を添加し、必要に応じて撹拌して、助触媒溶液を調製する。
【0055】
助触媒化合物としては、助触媒原子の金属塩が挙げられ、例えば、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩、塩化物等が挙げられる。これらの化合物は、入手が容易で触媒調製時の原料として広く用いられており、アルミナ原料へ担持する際の取扱いも簡便である。
【0056】
助触媒溶液の調製に用いられる溶媒としては、水やエタノール等が例示されるが、これらに制限されることはない。
【0057】
助触媒溶液中の助触媒原子の濃度は特に制限されず、上記で準備したアルミナ原料の量や得られる触媒における助触媒原子の所望の含有量、担持方法などを考慮して、適宜調節されうる。
【0058】
得られる触媒において、助触媒原子以外の金属原子を無機担体中に含有させたい場合には、本工程において、助触媒溶液中に所望の成分を所望の量だけ添加するとよい。この際、所望の成分は、やはり金属塩の形態で溶媒中に添加し、必要に応じて撹拌して、溶解させるとよい。
【0059】
その後、上記で調製した助触媒溶液に溶解している助触媒原子を、上記で準備したアルミナ原料に担持させる。
【0060】
担持させるための具体的な手法としては、例えば、含浸法、共沈法、競争吸着法などの触媒調製分野において従来公知の手法が採用されうる。処理条件は、採用される手法に応じて適宜選択されうるが、通常は、常温〜80℃にて0.5〜8時間程度、アルミナ原料と助触媒溶液とを接触させればよい。
【0061】
アルミナ原料に助触媒原子を担持させた後、必要に応じてこれを乾燥させる。乾燥させるための具体的な手法としては、例えば、自然乾燥、蒸発乾固のほか、ロータリーエバポレータや送風乾燥機等を用いた乾燥などが採用されうる。乾燥時間は、採用される手法に応じて適宜設定されうる。場合によっては、この乾燥段階を省略し、後述する焼成工程において乾燥させることとしてもよい。
【0062】
続いて、助触媒原子が担持されたアルミナ原料を焼成する。これにより、助触媒原子のアルミネートを含有する無機担体、具体的には、表層に助触媒原子のアルミネートが生成したアルミナが得られる。
【0063】
焼成の具体的な手法や焼成条件については特に制限はなく、触媒調製分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。焼成条件について一例を挙げると、焼成温度は、好ましくは700〜900℃、より好ましくは750〜800℃であり、焼成時間は、好ましくは1〜6時間、より好ましくは2〜4時間である。場合によっては、異なる温度で2回以上焼成を行ってもよい。焼成雰囲気についても特に制限はなく、例えば、空気雰囲気や窒素雰囲気の下で焼成が行われうる。焼成条件を調節することによって、得られる無機担体の比表面積や結晶状態を制御可能である。例えば、焼成温度を低くするか、または焼成時間を短くすることによって、比表面積が比較的大きい無機担体が得られる。一方、焼成温度を高くするか、または焼成時間を長くすることによって、比表面積が比較的小さい無機担体が得られる。
【0064】
必要であれば、焼成後に、得られた無機担体を粉砕し、篩分けすることで、所望の粒子径を有する無機担体のみを選別してもよい。
【0065】
[白金担持工程]
次に、上述した無機担体準備工程において準備した無機担体に、白金粒子を担持させる。これにより、図1に示す本発明の第1形態のCO選択酸化触媒が得られる。
【0066】
まず、白金イオンが溶解した溶液(以下、単に「白金溶液」とも称する)を調製する。この白金溶液は、白金粒子を無機担体に担持させる目的で、後述する担持工程において用いられる。
【0067】
この白金溶液を調製する工程では、まず、白金原料である白金化合物を準備する。さらに、この白金化合物を溶解させるための溶媒を準備する。その後、準備した溶媒に白金原料である白金化合物を添加し、必要に応じて撹拌して、白金溶液を調製する。
【0068】
白金原料である白金化合物としては、金属塩の形態の化合物が挙げられ、例えば、ジニトロジアンミン白金、塩化白金酸などが挙げられる。これらの化合物は、入手が容易で触媒調製時の原料として広く用いられており、無機担体へ担持する際の取扱いも簡便である。
【0069】
白金溶液の調製に用いられる溶媒としては、水やエタノール等が例示されるが、これらに制限されることはない。
【0070】
白金溶液中の白金の濃度は特に制限されず、上記で準備した無機担体の量や得られる触媒における所望の含有量、担持方法などを考慮して、適宜調節されうる。
【0071】
得られる触媒において、白金原子以外の金属原子(特に、貴金属原子)を無機担体に担持させたい場合には、本工程において、白金溶液中に所望の成分を所望の量だけ添加するとよい。この際、所望の成分は、やはり金属塩の形態で溶媒中に添加し、必要に応じて撹拌して、溶解させるとよい。
【0072】
その後、上記で調製した白金溶液に溶解している白金原子を、上記で準備した無機担体に担持させる。担持の具体的な手法や担持条件については、アルミナ原料への助触媒原子の担持について上述した形態が同様に採用されうる。また、この際に用いられる白金溶液および無機担体の量は、得られる触媒中の白金原子および助触媒原子の最終的な含有量を考慮することにより、適宜調節されうる。
【0073】
無機担体に白金原子を担持させた後、必要に応じてこれを乾燥させる。乾燥の具体的な手法についても、上述した形態が同様に採用されうる。
【0074】
続いて、白金原子が担持された無機担体を焼成する。これにより、無機担体の表面において白金粒子が成長し、本発明の第1形態のCO選択酸化触媒が完成する。
【0075】
焼成の具体的な手法や焼成条件については特に制限はなく、触媒調製分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。焼成条件について一例を挙げると、焼成温度は、好ましくは400〜600℃、より好ましくは450〜550℃であり、焼成時間は、好ましくは0.5〜4時間、より好ましくは1〜3時間である。場合によっては、異なる温度で2回以上焼成を行ってもよい。焼成雰囲気についても特に制限はなく、例えば、空気雰囲気や窒素雰囲気の下で焼成が行われうる。
【0076】
必要であれば、焼成後に、得られた触媒粉末を粉砕し、篩分けすることで、所望の粒子径を有する触媒粉末のみを選別してもよい。
【0077】
なお、本発明のCO選択酸化触媒をモノリス触媒の形態として製造する場合には、上記の工程後、白金含有触媒粉末に、適当な溶媒やバインダ(例えば、アルミナゾルなど)を併せて混合し、モノリス担体へコーティングするための触媒スラリーの形態の触媒を得てもよい。
【0078】
触媒スラリーをモノリス担体へコーティングするための手法は特に制限されず、例えば、吹き付け法、浸漬法といった従来公知の手法によりコーティングが可能である。
【0079】
(第2形態)
[構成]
第2形態は、上記の第1形態と比較して、白金原子および助触媒原子(コバルト原子)のアルミネート(コバルトアルミネート)の含有形態が異なる。
【0080】
図2は、第2形態のCO選択酸化触媒10を示す模式断面図である。
【0081】
図2に示すように、第2形態のCO選択酸化触媒10(白金含有触媒粉末20)は、第1の無機担体22の表面にアルミネート(コバルトアルミネート)粒子30が担持され、さらに、前記アルミネート粒子30の表面に白金粒子24が担持された構成を有する。
【0082】
本発明の第2形態における白金粒子24の好ましい形態は、上記の第1形態の説明の欄において記載した形態と同様である。
【0083】
上述したように、第2形態において、白金粒子22は、アルミネート粒子30の表面に担持されている。このアルミネート粒子30は、コバルトアルミネート(AlCoO)からなる粒子である。ただし、コバルトアルミネートに代えて、その他の助触媒原子(マンガン、ニッケル、および銅)のアルミネートが用いられてもよい。また、他の物質(例えば、酸化コバルトなど)が、1〜4質量%程度、アルミネート粒子30中に含まれてもよい。
【0084】
アルミネート粒子30の平均粒子径については、特に制限はない。ただし、通常は0.1〜2.0μm程度であり、好ましくは0.5〜1.0μmである。アルミネート粒子30の平均粒子径が小さすぎると、凝集性が上昇し、アルミネート粒子30の表面に担持される白金粒子24の分散性が低下する虞がある。一方、アルミネート粒子30の平均粒子径が大きすぎても、同様に白金粒子24の分散性が低下し、白金粒子24の凝集が発生しやすくなる虞がある。
【0085】
上記の第1形態においては、第1の無機担体22の主成分がアルミナである場合を例に挙げて説明したが、第2形態において、第1の無機担体22の形態は特に制限されず、触媒調製分野において従来公知の無機担体が好ましく用いられる。第1の無機担体22としては、例えば、上述した種々のアルミナのほか、チタニア、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア、マグネシア、ゼオライトなどの金属酸化物が例示される。これらは1種のみが単独で用いられてもよく、これらの混合物が用いられてもよい。なかでも、触媒活性や原料の入手、担体の製造および取扱いの容易さの観点からは、第1の無機担体22の主成分はアルミナであることが好ましい。なお、第1の無機担体22の比表面積や平均粒子径その他の好ましい形態は、上記の第1形態の[構成]の欄において記載した形態と同様である。
【0086】
白金原子および助触媒原子のそれぞれの含有量、およびこれらの含有量の比の好ましい形態は、上記の第1形態の[構成]の欄において記載した形態と同様である。
【0087】
第2形態においても、第1形態と同様に、白金原子および助触媒原子以外の金属原子が触媒金属として含有されうる。白金原子および助触媒原子に加えて含有される金属原子の種類や量についても、上記の第1形態の[構成]の欄において記載した形態と同様である。これらの金属原子は、白金との合金の形態でアルミネート粒子30に担持されてもよく、アルミネート粒子30の内部に含まれてもよい。
【0088】
なお、場合によっては、白金粒子24が担持されたアルミネート粒子30を、無機担体に担持させずにそのままCO選択酸化触媒として用いてもよい。
【0089】
[作用および効果]
図2に示す第2形態のCO選択酸化触媒においては、上述したように、第1の無機担体22の表面に担持されたアルミネート粒子30上に、白金粒子24がさらに担持されている。かような構成により、白金粒子24が他の成分によって被覆されてしまうことがない。このため、白金粒子24がCOを充分に吸着しうる。また、コバルト原子は、アルミネート粒子30として、第1の無機担体22の表面に存在している。このため、白金原子に吸着されたCOのCOへの酸化を充分に促進しうる。
【0090】
従って、第2形態のCO選択酸化触媒によっても、白金原子によるCOの吸着と、助触媒原子(コバルト原子)によるCO酸化の促進との双方の機構が効率よく進行しうる。その結果、触媒活性に優れるCO選択酸化触媒が提供されうる。
【0091】
[製造方法]
第2形態のCO選択酸化触媒は、例えば、アルミネート粒子の表面に白金粒子を担持させ、得られた白金担持アルミネート粒子を無機担体の表面に分散させることにより、製造されうる。以下、かような製造方法につき、アルミネートとしてコバルトアルミネートを例に挙げて工程順に説明する。
【0092】
[コバルトアルミネート粒子準備工程]
まず、コバルトアルミネート粒子を準備する。この工程において準備されるコバルトアルミネート粒子の好ましい形態については、既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0093】
コバルトアルミネート粒子としては、自ら調製したものを用いてもよいし、商品が市販されている場合には、その商品を購入して用いてもよい。
【0094】
コバルトアルミネート粒子を自ら調製する場合には、例えば、共沈法が用いられうる。以下、共沈法によりコバルトアルミネート粒子を調製する具体的な方法を説明する(後述する実施例も参照)。ただし、その他の手法によりコバルトアルミネート粒子を調製しても、勿論よい。
【0095】
まず、コバルト原料であるコバルト化合物、およびアルミニウム原料であるアルミニウム化合物を準備する。さらに、これらの化合物を溶解させるための溶媒を準備する。その後、準備した溶媒に前記コバルト化合物およびアルミニウム化合物を添加し、必要に応じて撹拌して、コバルト−アルミニウム溶液を調製する。
【0096】
コバルト原料であるコバルト化合物としては、コバルトアルミネートを含有する無機担体の調製の欄において上述した化合物が同様に用いられうる。また、アルミニウム原料であるアルミニウム化合物についても、コバルト原料と同様に、金属塩の形態の化合物が挙げられ、例えば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどが例示される。
【0097】
コバルト−アルミニウム溶液の調製に用いられる溶媒としては、水やエタノール等が例示されるが、これらに制限されることはない。
【0098】
コバルト−アルミニウム溶液中のコバルトおよびアルミニウムの濃度は特に制限されないが、触媒の調製に用いられる無機担体や白金粒子の量、担持方法を勘案することにより、適宜調節されうる。なお、コバルトアルミネートの組成(AlCoO)を考慮すると、コバルト−アルミニウム溶液中のコバルト原子とアルミニウム原子とのモル比は約1:2に調節されることが、製造コスト等の点で好ましい。
【0099】
ここで、コバルト原子以外の金属原子を触媒金属としてコバルトアルミネート粒子中に含有させたい場合には、本工程において、コバルト−アルミニウム溶液中に所望の成分を所望の量だけ添加するとよい。この際、所望の成分は、やはり金属塩の形態で溶媒中に添加するとよい。
【0100】
次いで、上記で調製したコバルト−アルミニウム溶液に適当な沈殿剤を添加し、コバルトおよびアルミニウムを含む沈殿物を得る。
【0101】
沈殿剤としては、例えば、塩基性化合物が挙げられる。塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、尿素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムなどが例示される。これらは1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0102】
沈殿剤は粒状や粉末状の固体の形態でコバルト−アルミニウム溶液に添加されてもよいが、水溶液の形態で添加すると、操作が簡便である。沈殿剤が水溶液の形態で添加される場合、沈殿剤水溶液中の上記の塩基性化合物の濃度は特に制限されない。また、コバルト−アルミニウム溶液への沈殿剤の添加量についても特に制限はなく、所望の沈殿物の量に応じて、適宜調節されうる。必要であれば、上記の沈殿物を濾過し、洗浄することにより、精製してもよい。またさらに、必要に応じて、得られた沈殿物を乾燥させてもよい。乾燥の具体的な手法としては、上述した形態が同様に採用されうる。
【0103】
その後、上記で得られた沈殿物を焼成する。これにより、コバルトアルミネート粒子が得られる。
【0104】
焼成の具体的な手法や焼成条件については特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。焼成条件について一例を挙げると、焼成温度は、好ましくは700〜900℃、より好ましくは750〜800℃であり、焼成時間は、好ましくは1〜6時間、より好ましくは2〜4時間である。場合によっては、異なる温度で2回以上焼成を行ってもよい。焼成雰囲気についても特に制限はなく、例えば、空気雰囲気や窒素雰囲気の下で焼成が行われうる。
【0105】
必要であれば、焼成後に、得られたコバルトアルミネート粒子を粉砕し、篩分けすることで、所望の粒子径を有する粒子のみを選別してもよい。
【0106】
[白金担持工程]
次に、上記の[コバルトアルミネート粒子準備工程]において準備したコバルトアルミネート粒子の表面に、白金粒子を担持させる。これにより、コバルトアルミネート粒子の表面に白金粒子が担持された白金担持コバルトアルミネート粒子が得られる。
【0107】
本工程の詳細については、無機担体に代えて上記で準備したコバルトアルミネート粒子が用いられること以外は、本発明の第1形態のCO選択酸化触媒の製造方法の[白金担持工程]の欄で説明した形態と同様である。
【0108】
[白金担持コバルトアルミネート粒子分散工程]
続いて、上記の[白金担持工程]で得られた白金担持コバルトアルミネート粒子を、無機担体の表面に分散させる。これにより、本発明の第2形態のCO選択酸化触媒が完成する。
【0109】
本工程においては、上記で得られた白金担持コバルトアルミネート粒子および無機担体を準備する。準備される無機担体の好ましい形態については、既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0110】
分散の具体的な手法は特に制限されず、従来公知の手法が適宜採用されうる。この際、用いられる白金担持コバルトアルミネート粒子および無機担体の量は、得られる触媒中の白金原子およびコバルト原子の最終的な含有量を考慮することにより、適宜調節されうる。
【0111】
分散の手法の一例としては、例えば、白金担持コバルトアルミネート粒子と無機担体とを混合し、直径5mm程度のアルミナボールとともにポットミル容器内に仕込み、水を加えない乾式法または水を加える湿式法にて、振動により粉砕混合させる手法が挙げられる。
【0112】
(第3形態)
[構成]
第3形態もまた、上記の第1形態および第2形態と比較して、白金原子および助触媒原子(コバルト原子)のアルミネート(コバルトアルミネート)の含有形態が異なる。図3は、第3形態のCO選択酸化触媒10を示す模式断面図である。
【0113】
図3に示すように、第3形態のCO選択酸化触媒10は、第1の無機担体22の表面に白金粒子24が担持された白金含有触媒粉末20と、アルミネート(コバルトアルミネート)粒子30とが混合された構成を有する。
【0114】
本発明の第3形態における白金粒子24の好ましい形態も、上記の第1形態の説明の欄において記載した形態と同様である。
【0115】
図3に示すように、第3形態において、白金粒子24は、第1の無機担体22の表面に担持されて、白金含有触媒粉末20を構成している。白金粒子24が担持される第1の無機担体22の好ましい形態は、上記の第2形態の説明の欄において記載した形態と同様である。ただし、第3形態において、第1の無機担体22の平均粒子径は、好ましくは1.0〜4.0μm、より好ましくは2.0〜3.0μmである。
【0116】
なお、場合によっては、上記の第1形態の説明の欄において記載したような、表層にアルミネート層26を有する無機担体が、第3形態の第1の無機担体22として用いられてもよい。かような形態は、換言すれば、本発明の第1形態のCO選択酸化触媒が、さらにコバルトアルミネート粒子と混合された形態であるといえる。
【0117】
第3形態において、白金含有触媒粉末20と混合されるアルミネート粒子30の好ましい形態は、上記の第2形態の[構成]の欄において記載した形態と同様である。ここで、第3形態において、白金含有触媒粉末20とアルミネート粒子30との混合性を考慮すると、アルミネート粒子30の平均粒子径は、好ましくは0.1〜1.5μm、より好ましくは0.5〜1.0μmである。ただし、かような粒子径を有する形態のみに本発明の技術的範囲が限定されるわけではない。
【0118】
白金原子およびコバルト原子のそれぞれの含有量、およびこれらの含有量の比の好ましい形態は、上記の第1形態の[構成]の欄において記載した形態と同様である。
【0119】
第3形態においても、第1形態と同様に、白金原子およびコバルト原子以外の金属原子が含有されうる。白金およびコバルトに加えて含有される金属原子の種類や量についても、上記の第1形態の[構成]の欄において記載した形態と同様である。これらの金属原子は、白金との合金の形態で第1の無機担体22に担持されてもよく、アルミネート粒子30に含まれてもよい。
【0120】
[作用および効果]
図3に示す第3形態のCO選択酸化触媒において、白金粒子24は、上述したように、コバルト成分とは別に第1の無機担体22の表面に担持されて、白金含有触媒粉末20を構成している。かような構成により、白金粒子24が他の成分によって被覆されてしまうことがない。このため、白金粒子24がCOを充分に吸着しうる。また、コバルト原子も、アルミネート粒子30の形態で、白金含有触媒粉末20とは別に存在している。このため、白金原子に吸着されたCOのCOへの酸化を充分に促進しうる。
【0121】
従って、第3形態のCO選択酸化触媒によっても、白金原子によるCOの吸着と、コバルト原子によるCO酸化の促進との双方の機構が効率よく進行しうる。その結果、触媒活性に優れるCO選択酸化触媒が提供されうる。
【0122】
[製造方法]
第3形態のCO選択酸化触媒は、例えば、無機担体の表面に白金粒子を担持させて白金触媒粒子を調製し、得られた白金触媒粒子とコバルトアルミネート粒子とを混合することにより、製造されうる。以下、かような製造方法につき、工程順に説明する。
【0123】
[白金担持工程]
まず、無機担体の表面に白金粒子を担持させる。これにより、白金触媒粒子が調製される。
【0124】
本工程の詳細については、無機担体として、上記の[構成]の欄において説明したものが用いられること以外は、本発明の第1形態のCO選択酸化触媒の製造方法の[白金担持工程]の欄で説明した形態と同様である。
【0125】
[混合工程]
続いて、上記で調製した白金触媒粒子と、コバルトアルミネート粒子とを混合する。これにより、本発明の第3形態のCO選択酸化触媒が完成する。
【0126】
本工程においては、まず、上記で調製した白金触媒粒子と、コバルトアルミネート粒子とを準備する。
【0127】
本工程において準備されるコバルトアルミネート粒子の好ましい形態は、上記の本発明の第2形態の[製造方法]の[コバルトアルミネート粒子準備工程]において説明した形態と同様である。
【0128】
混合の具体的な手法は特に制限されず、粉末の混合について従来公知の知見が適宜参照されうる。この際、混合される白金触媒粒子およびコバルトアルミネート粒子の量は、得られる触媒中の白金原子およびコバルト原子の最終的な含有量を考慮することにより、適宜調節されうる。
【0129】
混合の手法は特に制限されず、上記の第2形態において説明した分散の手法が同様に用いられうる。
【0130】
(第4形態)
第4形態のCO選択酸化触媒は、白金原子を実質的に含有しない助触媒粉末をさらに含む点で、上記の第1〜第3形態のCO選択酸化触媒とは異なる。以下、第4形態のCO選択酸化触媒について、図面を用いて詳細に説明する。
【0131】
[構成]
図4は、本形態のCO選択酸化触媒を示す模式断面図である。
【0132】
図4に示すように、本形態のCO選択酸化触媒10は、白金含有触媒粉末20と、助触媒粉末40と、から構成される。以下、図4に示す形態のCO選択酸化触媒10の好ましい構成について、詳細に説明する。
【0133】
[白金含有触媒粉末]
白金含有触媒粉末20の好ましい構成については、上記の第1〜第3形態の[構成]の欄において説明した形態が同様に採用されうるため、ここでは説明を省略する。
【0134】
[助触媒粉末]
助触媒粉末40は、第2の無機担体42に、上記の助触媒原子(コバルト、マンガン、ニッケル、銅)を含む助触媒粒子44が担持されてなる構成を有する。
【0135】
図4に示す形態において、助触媒粒子44は、助触媒原子のみからなる粒子である。助触媒粒子44は、単独の助触媒原子のみからなる粒子であってもよく、2種以上の助触媒原子の合金からなってもよい。ただし、かような形態のみに制限されず、助触媒粒子44は、例えば、助触媒原子の酸化物(例えば、Co、MnO、NiO、CuOなど)からなる粒子、助触媒原子とその酸化物とからなる粒子などであってもよい。
【0136】
本発明では、助触媒原子として4種の原子を採用したが、助触媒粒子44においても、
低温領域および高温領域の双方におけるCO酸化活性を両立させるという観点から、助触媒原子としてコバルト原子が含まれることが好ましい。
【0137】
助触媒粉末40は、白金原子を実質的に含有しない。上述したように、助触媒粉末40に含有される助触媒原子はCOのCOへの酸化を促進させる目的で含有される。一方、本発明のCO選択酸化触媒10は、助触媒粉末40に加えて、上述したように白金原子を含有する白金含有触媒粉末20をもその一構成要素として含む。従って、CO吸着作用は白金含有触媒粉末20に含有される白金原子によって担われることから、助触媒粉末40が白金原子を実質的に含有しなくとも本発明の触媒におけるCO吸着能が不充分となる虞はなく、触媒活性の向上が達成されうる。また、かような形態によれば、貴金属原子である白金原子の使用量が減少し、触媒の製造コストが削減されうる。なお、「実質的に含有しない」とは、不純物程度の混入は許容されうることを意味し、一例を挙げると、助触媒粉末40の全量に対して0.01〜0.4質量%程度の白金原子の混入は許容されうる。ただし、助触媒粉末40中への混入が許容される白金原子の質量は前記の範囲のみに制限されない。
【0138】
第2の無機担体42の種類は、特に制限されず、白金含有触媒粉末20用の第1の無機担体22として上述した形態が同様に採用されうる。
【0139】
ただし、第2の無機担体42の比表面積は、上記の第1の無機担体22よりも小さいほうがよく、好ましくは10〜150m/g、より好ましくは30〜110m/gである。第2の無機担体42の比表面積が小さすぎると、触媒製造時の助触媒粒子44の分散性が悪化し、触媒活性が低下する虞がある。一方、第2の無機担体42の比表面積が大きすぎると、助触媒粒子44の分散性が高くなりすぎてしまい、そのCO酸化促進作用が充分に発揮されない虞がある。
【0140】
第2の無機担体42の平均粒子径についても、特に制限はなく、好ましくは0.1〜1.5μm、より好ましくは0.5〜1.0μmである。ただし、かような粒子径を有する形態のみに本発明の技術的範囲が限定されるわけではない。
【0141】
助触媒粉末40における助触媒粒子44および第2の無機担体42のそれぞれの含有量は、所望の触媒性能や製造コストなどを考慮することにより、適宜調整されうる。この助触媒粉末40は、白金原子により吸着されたCOのCOへの酸化を効率的に促進させるのに充分な量のCO酸化活性種を生成させる必要があるため、助触媒原子は助触媒粉末40中に比較的多くの量が含有されることが好ましいが、多すぎると凝集により無駄が生じ、製造コストの高騰につながる。かような観点から、助触媒原子の含有量は、助触媒粉末40の全量に対して、好ましくは1.0〜30質量%、より好ましくは5.0〜20質量%である。
【0142】
本発明の作用および効果を損なわない限り、上述した助触媒原子以外の金属原子が助触媒粒子44の一成分として助触媒粉末40中に含有されてもよい。助触媒粉末40中にさらに含有されうる金属原子の例としては、上記の第1形態の白金含有触媒粉末20の欄において説明した種々の金属原子が挙げられる。これらの追加の金属原子は、白金との合金として第1の無機担体22の表面に担持された形態で、またはアルミネート層26に含まれた形態で、白金含有触媒粉末20に含有されてもよい。あるいは、助触媒粒子44に含まれた形態で、助触媒粉末40に含有されてもよい。
【0143】
[CO選択酸化触媒]
本形態(第4形態)のCO選択酸化触媒10は、図4を参照して上述したように、白金含有触媒粉末20と、助触媒粉末40とを含む。
【0144】
CO選択酸化触媒10に含まれる白金含有触媒粉末20および助触媒粉末40のそれぞれの具体的な形態については、上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0145】
上記のような構成を有する本発明のCO選択酸化触媒10の作用は、概説すれば、白金含有触媒粉末20に含まれる白金原子にCOが吸着され、白金含有触媒粉末20や助触媒粉末40に含まれる助触媒原子が、白金原子に吸着されたCOのCOへの酸化を促進することにより、COが酸化除去されるというものである。
【0146】
上記の点に鑑みれば、白金含有触媒粉末20と助触媒粉末40との配合量のバランスが良好に保たれると、触媒のCO選択酸化活性が効率的に向上しうる。
【0147】
かような観点から、本発明のCO選択酸化触媒10において、白金含有触媒粉末20と助触媒粉末40との含有量の比は、白金含有触媒粉末:助触媒粉末の比で、好ましくは30:70〜70:30、より好ましくは40:60〜60:40である。これらの含有量の比が上記の範囲内であると、白金原子によるCO吸着作用と遷移金属原子によるCO酸化促進作用とのバランスが良好に保たれ、その結果、触媒のCO除去性能が向上しうる。また、従来のCO選択酸化触媒よりも白金原子の含有量が比較的少ないため、コストの面でも有利である。
【0148】
本発明のCO選択酸化触媒10の全体の比表面積についても特に制限はないが、通常は30〜150m/g程度、より好ましくは40〜80m/gである。触媒の比表面積がかような範囲内の値であると、触媒のCO選択酸化活性が向上しうる。
【0149】
[作用および効果]
図4に示す第4形態のCO選択酸化触媒10においては、白金含有触媒粉末20中の白金粒子24を構成する白金原子がCOを充分に吸着しうる。また、助触媒粉末40を構成する助触媒原子の作用によって、白金原子に吸着されたCOのCOへの酸化が充分に促進されうる。
【0150】
従って、本発明のCO選択酸化触媒10によれば、触媒活性に優れるCO選択酸化触媒が提供されうる。
【0151】
[製造方法]
図4に示す本形態のCO選択酸化触媒10は、例えば、白金含有触媒粉末と助触媒粉末とを準備し、これらを混合することによって、製造されうる。以下、無機担体(第1の無機担体および第2の無機担体)としてアルミナが用いられる場合を例に挙げて、本形態のCO選択酸化触媒の製造方法を工程順に説明する。ただし、アルミナ以外の無機担体が用いられてもよいことは、上述した通りである。
【0152】
[白金含有触媒粉末調製工程]
まず、白金含有触媒粉末を調製する。この工程において調製される白金含有触媒粉末は、後述する混合工程において助触媒粉末(下記の[助触媒粉末調製工程]において調製される)と混合され、本発明のCO選択酸化触媒とされる。なお、調製される白金含有触媒粉末の好ましい構成については、上記の第1〜第3形態の[構成]の欄において既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。また、白金含有触媒粉末の製造方法の好ましい形態についても、上記の第1形態の[製造方法]の欄において既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。すなわち、白金触媒含有粉末は、上記の第1形態の[製造方法]の欄における[無機担体準備工程]および[白金担持工程]を経て、調製されうる。
【0153】
[助触媒粉末調製工程]
一方、助触媒粉末を調製する。この工程において調製される助触媒粉末は、後述する混合工程において白金含有触媒粉末(上記の[白金含有触媒粉末調製工程]において調製される)と混合され、本発明のCO選択酸化触媒とされる。なお、調製される助触媒粉末の好ましい構成については、上記の本形態の[構成]の欄において既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0154】
助触媒粉末としては、自ら調製したものを用いてもよいし、商品が市販されている場合には、その商品を購入して用いてもよい。
【0155】
助触媒粉末を自ら調製する場合には、例えば、無機担体(第2の無機担体)であるアルミナに助触媒原子を担持させ、焼成することにより、アルミナの表面に助触媒粒子を成長させて、助触媒粉末とするとよい。以下、かような手法により助触媒粉末を調製する具体的な方法を説明する(後述する実施例も参照)。ただし、その他の手法により助触媒粉末を調製しても、勿論よい。
【0156】
初めに、助触媒原子を担持させるための無機担体(第2の無機担体)として、アルミナを準備する。ここで、準備されるアルミナ(第2の無機担体)の好ましい構成については、上記の本発明の第1の[構成]の欄において既に説明した形態が同様に採用されうるため、ここでは説明を省略する。また、その調製方法としては、第1の無機担体としてのアルミナについて上記の[白金含有触媒粉末調製工程]の欄で説明した手法が同様に採用されうる。
【0157】
次に、上記で準備したアルミナ(第2の無機担体)に、助触媒原子を担持させる。
【0158】
まず、助触媒原子のイオンが溶解した溶液(以下、単に「助触媒原子含有溶液」とも称する)を調製する。この助触媒原子含有溶液は、助触媒原子をアルミナ(第2の無機担体)に担持させる目的で、後述する担持工程において用いられる。
【0159】
この助触媒原子含有溶液を調製する工程では、まず、助触媒原子の原料として、助触媒原子を含有する化合物(以下、単に「助触媒化合物」とも称する)を準備する。さらに、この助触媒化合物を溶解させるための溶媒を準備する。その後、準備した溶媒に助触媒原子の原料である助触媒化合物を添加し、必要に応じて撹拌して、助触媒原子含有溶液を調製する。
【0160】
助触媒原子の原料である助触媒化合物としては、金属塩の形態の化合物が挙げられ、例えば、助触媒原子(コバルト、マンガン、ニッケル、銅)の硝酸塩、硫酸塩、塩化物などの化合物が例示される。これらの化合物は、入手が容易で触媒調製時の原料として広く用いられており、アルミナ(第2の無機担体)へ担持する際の取扱いも簡便である。
【0161】
助触媒原子含有溶液の調製に用いられる溶媒としては、水やエタノール等が例示されるが、これらに制限されることはない。
【0162】
助触媒原子含有溶液中の助触媒原子の濃度は特に制限されず、上記で準備したアルミナ(第2の無機担体)の量や得られる助触媒粉末における所望の含有量、担持方法などを考慮して、適宜調節されうる。
【0163】
得られる助触媒粉末において、助触媒原子以外の金属原子(例えば、その他の遷移金属原子)をアルミナ(第2の無機担体)に担持させたい場合には、本工程において、助触媒原子含有溶液中に所望の成分を所望の量だけ添加するとよい。この際、所望の成分は、やはり金属塩の形態で溶媒中に添加し、必要に応じて撹拌して、溶解させるとよい。
【0164】
その後、上記で調製した助触媒原子含有溶液に溶解している助触媒原子を、上記で準備したアルミナ(第2の無機担体)に担持させ、必要に応じて乾燥させる。担持や乾燥の具体的な手法や条件について特に制限はなく、白金含有触媒粉末について上記の[白金含有触媒粉末調製工程]の欄で説明した形態が同様に採用されうる。このため、ここでは説明を省略する。
【0165】
続いて、助触媒原子が担持されたアルミナ(第2の無機担体)を焼成する。これにより、アルミナ(第2の無機担体)の表面において助触媒粒子が成長し、助触媒粉末が得られる。
【0166】
焼成の具体的な手法や焼成条件についても特に制限はなく、上記の[白金含有触媒粉末調製工程]の欄で説明した形態が同様に採用されうる。このため、ここでは説明を省略する。
【0167】
必要であれば、焼成後に、得られた助触媒粉末を粉砕し、篩分けすることで、所望の粒子径を有する粉末のみを選別してもよい。
【0168】
[混合工程]
続いて、上記で調製した白金含有触媒粉末と、助触媒粉末とを混合する。これにより、本発明のCO選択酸化触媒が完成する。
【0169】
本工程においては、まず、上記で調製した白金含有触媒粒子と、助触媒粉末とを準備する。準備される白金含有触媒粉末および助触媒粉末の好ましい構成については、上記の本発明の第1の[構成]の欄において既に説明した通りであるため、ここでも説明を省略する。
【0170】
混合の具体的な手法は特に制限されず、上記の第3形態の[製造方法]の[混合工程]の欄において説明した手法が同様に採用されうる。この際、混合される白金含有触媒粉末および助触媒粉末の量は、得られる触媒中に含まれる各成分の最終的な含有量を考慮することにより、適宜調節されうる。
【0171】
なお、本発明のCO選択酸化触媒をモノリス触媒の形態として製造する場合には、本混合工程において、白金含有触媒粉末および助触媒粉末に、適当な溶媒やバインダ(例えば、アルミナゾルなど)を併せて混合し、モノリス担体へコーティングするための触媒スラリーの形態の触媒を得てもよい。
【0172】
触媒スラリーをモノリス担体へコーティングするための手法は特に制限されず、例えば、吹き付け法、浸漬法といった従来公知の手法によりコーティングが可能である。
【0173】
(第5形態)
[構成]
第5形態のCO選択酸化触媒10は、白金含有触媒粉末を含む白金含有触媒部と助触媒粉末を含む助触媒部とが、改質ガスの流通方向に直列に配置されている点で、上記の第1〜第4形態とは異なる。以下、第5形態のCO選択酸化触媒について、図面を用いて詳細に説明する。
【0174】
図5は、第5形態のCO選択酸化触媒を示す模式斜視図である。図6は、図5に示すVI−VI線に沿った断面図である。
【0175】
図5および図6に示すように、第5形態のCO選択酸化触媒10は、白金含有触媒部50と助触媒部60とを有する。そして、これらが改質ガスの流通方向(図5および図6に示す矢印の方向)に直列に配置されている点に特徴を有する。ここで、第5形態において、白金含有触媒部50は、第1のモノリス担体52の内表面に白金含有触媒粉末20を含む白金含有触媒層54が形成されてなるモノリス触媒の形態で、改質ガスの流通方向の下流側に配置されている。一方、助触媒部60は、第2のモノリス担体62の内表面に助触媒粉末40を含む助触媒層64が形成されてなるモノリス触媒の形態で、改質ガスの流通方向の上流側に配置されている。
【0176】
以下、第5形態のCO選択酸化触媒10の好ましい構成について、白金含有触媒部50、助触媒部60、およびこれらが配置されてなるCO選択酸化触媒10の順に、詳細に説明する。
【0177】
[白金含有触媒部]
白金含有触媒部50は、白金含有触媒粉末20を含む触媒部である。前記白金含有触媒粉末20中に含有される白金原子は、上述したように、改質ガス中のCOを選択的に吸着する。従って、白金含有触媒部50は、主にCOを選択的に吸着するための触媒部として機能する。図5および図6に示す形態において、白金含有触媒部50は、第1のモノリス担体52の内表面に白金含有触媒粉末20を含む白金含有触媒層54が形成されてなるモノリス触媒の形態であり、改質ガスの流通方向の下流側に配置されている。なお、第5形態において「モノリス担体」の語に冠せられる「第1の」および「第2の」という語も、白金含有触媒部50を構成する白金含有触媒層54および助触媒部60を構成する助触媒層64が別々のモノリス担体に形成されていることを示すために便宜的に用いられる。従って、ここでも「第1の」および「第2の」という序列自体に格別な意味はない。
【0178】
第5形態のCO選択酸化触媒10において白金含有触媒部50に含まれる白金含有触媒粉末20の具体的な構成については、上記の第1〜第3形態の[構成]の欄において説明した形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0179】
白金含有触媒部50を構成する第1のモノリス担体52の具体的な形態は特に制限されず、従来公知のモノリス担体が適宜用いられうる。モノリス担体の一例としては、セラハニカム、メタルハニカム、セラフォーム、メタルフォームなどが挙げられる。これらのモノリス担体を用いるとコーティングが容易であり、圧力損失の観点からも好ましい。
【0180】
白金含有触媒部50を構成する白金含有触媒層54の厚さは特に制限されず、用いられる白金含有触媒粉末20の量や第1のモノリス担体52の形態に応じて適宜調節されうる。白金含有触媒層54の厚さは、通常50〜200μm程度であり、好ましくは100〜150μmである。この厚さが50μm未満であると、反応分子が触媒層に捉えられずに吹き抜けが多くなってしまい、その結果CO転化率が低下する虞がある。一方、この厚さが200μmを超えると、触媒層内での反応・生成物の拡散律速によりCO酸化反応が阻害される虞がある。
【0181】
白金含有触媒部50における、白金含有触媒粉末20のコーティング量についても特に制限はないが、第1のモノリス担体52の単位体積あたりにコーティングされる白金含有触媒粉末20の質量は、40〜250g/L程度であるとよく、60〜200g/Lであるとより好ましい。この値が小さすぎると、触媒層が薄くなり、上記と同様に反応分子が触媒層に捉えられず吹き抜けが多くなってCO転化率が低下する虞がある。一方、この値が大きすぎると、同じく上記と同様に触媒層が薄くなり、上記と同様に反応分子が触媒層に捉えられず吹き抜けが多くなってCO転化率が低下する虞がある。なお、ここで「白金含有触媒粉末の質量」には、コーティング時に添加されるバインダ等の質量は含まないものとする。
【0182】
[助触媒部]
助触媒部60は、助触媒粉末40を含む触媒部である。前記助触媒粉末40中に含有される助触媒原子は、上述したように、改質ガス中の酸素や水に作用し、CO酸化活性種を生成させる。また、COに直接作用し、COへと酸化されやすい形態に変化させる。従って、助触媒部60は、主にCOのCOへの酸化を促進するための触媒部として機能する。図5および図6に示す形態において、助触媒部60は、第2のモノリス担体62の内表面に助触媒粉末40を含む助触媒層64が形成されてなるモノリス触媒の形態であり、改質ガスの流通方向の上流側に配置されている。
【0183】
第5形態のCO選択酸化触媒10において助触媒部60に含まれる助触媒粉末40の具体的な構成については、上記の第4形態の構成の欄において説明した形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0184】
助触媒部60を構成する第2のモノリス担体62の具体的な形態についても特に制限はなく、上記の[白金含有触媒部]の欄において列挙した形態のような従来公知のモノリス担体が同様に用いられうる。なお、白金含有触媒部50に用いられる第1のモノリス担体52と助触媒部60に用いられる第2のモノリス担体62とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0185】
助触媒部60を構成する助触媒層64の厚さは特に制限されず、用いられる助触媒粉末40の量や第2のモノリス担体62の形態に応じて適宜調節されうる。この厚さが50μm未満であると、反応分子が触媒層に捉えられずに吹き抜けが多くなり、その結果CO転化率が低下する虞がある。一方、この厚さが200μmを超えると、触媒層内での反応・生成物の拡散律速によりCO酸化反応が阻害される虞がある。
【0186】
助触媒部60における、助触媒粉末40のコーティング量についても特に制限はないが、第2のモノリス担体62の単位体積あたりにコーティングされる助触媒粉末40の質量は、40〜250g/L程度であるとよく、60〜200g/Lであるとより好ましい。この値が小さすぎると、触媒層が薄くなり、上記と同様に反応分子が触媒層に捉えられずに吹き抜けが多くなってCO転化率が低下する虞がある。一方、この値が大きすぎると、同じく上記と同様に触媒層が薄くなり、上記と同様に反応分子が触媒層に捉えられずに吹き抜けが多くなってCO転化率が低下する虞がある。なお、コーティング時に添加されるバインダ等の質量が「助触媒粉末の質量」に含まれないことは、上記の「白金含有触媒粉末」と同様である。
【0187】
[CO選択酸化触媒]
第5形態のCO選択酸化触媒10は、上述したように白金含有触媒部50と助触媒部60とを含み、これらが改質ガスの流通方向に沿って直列に配置されている。具体的には、図5および図6に示すように、助触媒部60が改質ガスの流通方向の上流側に配置され、白金含有触媒部50が改質ガスの流通方向の下流側に配置されている。かような構成によれば、助触媒部60において生成した酸化されやすい形態のCOやCO酸化活性種が白金含有触媒部50において効率よく用いられ、COのCOへの酸化の促進に効果的に寄与しうる。ただし、かような形態のみには制限されず、場合によっては、白金含有触媒部50が上流側に配置され、助触媒部60が下流側に配置される形態もまた、採用されうる。
【0188】
なお、図5および図6に示す第3形態においては、白金含有触媒部50と助触媒部60とが接触するように配置されているが、かような形態のみに制限されない。例えば、白金含有触媒部50と助触媒部60とが完全に分離されて配置されてもよく、その際には、改質ガスの流通方向の上流側に配置される触媒部(例えば、助触媒部60)から流出したガスが、下流側に配置される触媒部(例えば、白金含有触媒部50)に流入しうるように、分離している2つの触媒部を接続するための流路が設けられるべきである。
【0189】
第5形態のCO選択酸化触媒10に含まれる白金含有触媒部50および助触媒部60のそれぞれの具体的な形態については、上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0190】
第5形態においても、白金含有触媒層54に含まれる白金含有触媒粉末20と助触媒層64に含まれる助触媒粉末40との配合量のバランスが良好に保たれると、触媒のCO選択酸化活性の向上に寄与しうることは、上記の第2形態と同様である。
【0191】
その具体的な形態も上記の第2形態の場合と同様であり、上記の第2形態において説明した各成分の含有量の好ましい形態は、第5形態に対しても同様に採用されうる。
【0192】
[作用および効果]
第5形態においては、改質ガスはまず助触媒部60を流通する。この際、改質ガス中のCOは、助触媒部60に含まれる助触媒原子の作用によって、COへと酸化されやすい形態へと変化しうる。また、改質ガス中の酸素および水の一部は、助触媒原子の作用によって、CO酸化活性種へと変換されうる。
【0193】
助触媒部60において生成した、酸化されやすい形態のCOやCO酸化活性種を含有する改質ガスは、続いて助触媒部60の下流に配置された白金含有触媒部50を流通する。この際、改質ガス中のCOは、白金含有触媒部50に含まれる白金原子に吸着される。また、白金含有触媒部50に含まれる遷移金属原子の作用によっても、COが酸化されやすい形態へと変換され、改質ガス中の酸素や水からCO酸化活性種が生成しうる。
【0194】
次いで、白金原子に吸着されたCOは、上記で生成したCO酸化活性種の作用によって、COへと酸化されうるモノと推測される。
【0195】
従って、第5形態のCO選択酸化触媒10によっても、触媒活性に優れるCO選択酸化触媒が提供されうる。
【0196】
また、第5形態のようなモノリス触媒の形態とすることで、後述するCO濃度低減装置に適用された場合の触媒充填部への触媒の充填が容易である。また、モノリス担体の有するハニカム構造により、改質ガスの通気性が確保されうる。さらに、触媒反応による熱が効率よく放散しうるため、触媒の耐久性が向上しうる。
【0197】
[製造方法]
以下、第5形態のCO選択酸化触媒の製造方法の一形態について説明するが、以下の方法のみに制限されることはない。
【0198】
第5形態のCO選択酸化触媒は、例えば、上記の第4形態と同様に白金含有触媒粉末および助触媒粉末を調製し、これらの粉末をそれぞれモノリス担体にコーティングし、コーティングされたモノリス担体を直列に配置することによって、製造されうる。以下、無機担体としてアルミナが用いられる場合を例に挙げて、上記の製造方法を工程順に説明する。ただし、アルミナ以外の無機担体が用いられてもよいことは、上述した通りである。
【0199】
[白金含有触媒粉末および助触媒粉末の調製工程]
第5形態において用いられる白金含有触媒粉末および助触媒粉末は、上記の第1形態および第4形態の製造方法の欄において説明したのと同様の手法により、調製されうる。従って、ここでは説明を省略する。なお、本工程において調製される白金含有触媒粉末および助触媒粉末は、後述するコーティング工程において第1のモノリス担体および第2のモノリス担体にそれぞれコーティングされ、モノリス触媒とされる。
【0200】
[コーティング工程]
続いて、上記で調製した白金含有触媒粉末および助触媒粉末を、それぞれモノリス担体にコーティングして、モノリス触媒とする。
【0201】
まず、それぞれの触媒粉末をコーティングするためのモノリス担体(第1のモノリス担体および第2のモノリス担体)を準備する。準備されるモノリス担体の具体的な形態について特に制限はなく、上記で例示した形態が同様に採用されうる。このため、ここでは説明を省略する。
【0202】
一方、上記で準備したモノリス担体にそれぞれの触媒粉末をコーティングするためのコーティングスラリーを調製する。
【0203】
コーティングスラリーの具体的な組成は特に制限されず、モノリス担体への触媒のコーティングの分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、白金含有触媒粉末および助触媒粉末のそれぞれに対して、適当な溶媒を添加し、必要であれば適当なバインダをさらに添加して、コーティングスラリーを調製すればよい。コーティングスラリーを調製するための適当な溶媒としては、例えば、水やエタノールなどが例示される。また、適当なバインダとしては、アルミナゾルが例示される。
【0204】
コーティングスラリー中に含まれる各成分の組成は特に制限されないが、例えば、触媒粉末30〜60質量%、溶媒30〜60質量%、およびバインダ1〜10質量%程度が適当である。
【0205】
コーティングスラリーをモノリス担体へコーティングするための手法は特に制限されず、従来公知の手法が用いられうる。一例を挙げると、吹き付け法、浸漬法といった手法によりコーティングが可能である。
【0206】
[配置工程]
最後に、白金含有触媒粉末がモノリス担体(第1のモノリス担体)にコーティングされてなるモノリス触媒(白金含有触媒部)と、助触媒粉末がモノリス担体(第2のモノリス担体)にコーティングされてなるモノリス触媒(助触媒部)とを、改質ガスの流通方向に対して直列に配置することにより、第5形態のCO選択酸化触媒が完成する。配置の一例としては、後述するCO濃度低減装置の触媒充填部に、前記の2つのモノリス触媒を直列に配列するように配置する形態が例示される。第5形態では、白金含有触媒粉末がコーティングされたモノリス触媒(白金含有触媒部)を改質ガスの流通方向に沿って上流側に配置し、助触媒粉末がコーティングされたモノリス触媒(助触媒部)を改質ガスの流通方向に沿って下流側に配置する形態が例示される。
【0207】
なお、ここでは白金含有触媒粉末と助触媒粉末とが別々のモノリス担体(第1のモノリス担体および第2のモノリス担体)にコーティングされて、それぞれ白金含有触媒部および助触媒部を構成する形態について説明したが、かような形態のみには制限されない。すなわち、場合によっては、単一のモノリス担体を準備し、このモノリス担体の、改質ガスの流通方向に沿って下流側に白金含有触媒粉末をコーティングして白金含有触媒部を形成し、上流側に助触媒粉末をコーティングして助触媒部を形成することによって、CO選択酸化触媒を製造してもよい。
【0208】
(第6形態)
第6形態のCO選択酸化触媒は、白金含有触媒粉末を含む白金含有触媒層と助触媒粉末を含む助触媒層とが、モノリス担体の内表面に2層に積層されている点で、上記の第1〜第5形態とは異なる。以下、第6形態のCO選択酸化触媒について、図面を用いて詳細に説明する。
【0209】
[構成]
図7は、第6形態のCO選択酸化触媒10の、改質ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって見た模式断面図である。図8は、図7に示すVIII−VIII線に沿った断面図である。
【0210】
図7および図8に示すように、第6形態のCO選択酸化触媒10は、モノリス担体70の内表面に、白金含有触媒層72と助触媒層74とが2層に積層されている点に特徴を有する。第6形態では、モノリス担体70の内表面において、助触媒層74が下層に形成され、白金含有触媒層72が上層に形成されている。なお、図8においては、図の中央に示すセルに形成された触媒層のみを示し、当該セルの周囲のセルに形成された触媒層については記載を省略する。
【0211】
以下、第8形態のCO選択酸化触媒10の好ましい構成について、白金含有触媒層72、助触媒層74、およびこれらがモノリス担体70の内表面に2層に積層されてなるCO選択酸化触媒10の順に、詳細に説明する。
【0212】
[白金含有触媒層]
白金含有触媒層72は、白金含有触媒粉末20を含む触媒層である。前記白金含有触媒粉末20中に含有される白金原子は、本形態においても上記の第1〜第5形態と同様に、改質ガス中のCOを選択的に吸着する。このため、白金含有触媒層72は、主にCOを選択的に吸着するための触媒層として機能する。
【0213】
白金含有触媒層72に含まれる白金含有触媒粉末20の具体的な形態としては、上記の第1形態の構成の欄において説明した形態が同様に採用されうる。従って、ここでは説明を省略する。
【0214】
第6形態において、白金含有触媒層72は、上記の白金含有触媒粉末20がモノリス担体70にコーティングされてなる形態を有する。この際、白金含有触媒層72は、モノリス担体70の内表面に直接形成された、後述する助触媒層74の上層に、さらにコーティングされている。なお、モノリス触媒を構成するためのモノリス担体70の具体的な形態は特に制限されず、従来公知のモノリス担体が適宜用いられうる。その一例としては、上記の第5形態の[構成]の欄において例示した形態が挙げられる。
【0215】
白金含有触媒層72の厚さは特に制限されず、用いられる白金含有触媒粉末20の量やモノリス担体70の形態、助触媒層74の厚さなどに応じて適宜調節されうる。白金含有触媒層72の厚さは、通常50〜200μm程度であり、好ましくは100〜150μmである。この厚さが50μm未満であると、反応分子が触媒層に捉えられずに吹き抜けが多くなり、その結果CO転化率が低下する虞がある。一方、この厚さが200μmを超えると、触媒層内での反応・生成物の拡散律速によりCO酸化反応が阻害される虞がある。
【0216】
白金含有触媒部50における、白金含有触媒粉末20のコーティング量についても特に制限はないが、第1のモノリス担体52の単位体積あたりにコーティングされる白金含有触媒粉末20の質量は、40〜250g/L程度であるとよく、60〜200g/Lであるとより好ましい。この値が小さすぎると、触媒層が薄くなり、上記と同様に反応分子が触媒層に捉えられずに吹き抜けが多くなってCO転化率が低下する虞がある。一方、この値が大きすぎると、同じく上記と同様に触媒層が薄くなり、上記と同様に反応分子が触媒層に捉えられずに吹き抜けが多くなってCO転化率が低下する虞がある。なお、「白金含有触媒粉末の質量」には、コーティング時に添加されるバインダ等の質量は含まないものとする。
【0217】
[助触媒層]
助触媒層74は、助触媒粉末40を含む触媒層である。前記助触媒粉末40中に含有される助触媒原子は、本形態においても上記の第1形態〜第5形態と同様に、改質ガス中の酸素や水に作用し、CO酸化活性種を生成させる。また、COに直接作用し、COへと酸化されやすい形態に変化させる。このため、助触媒層74は、主にCOのCOへの酸化を促進するための触媒層として機能する。
【0218】
助触媒層74に含まれる助触媒粉末40の具体的な形態としては、上記の第5形態の[助触媒部]の欄において説明した形態が同様に採用されうる。従って、ここでは説明を省略する。
【0219】
第6形態において、助触媒層74は、上記の助触媒粉末40がモノリス担体70にコーティングされてなる形態を有する。この際、助触媒層74は、モノリス担体70の内表面に直接形成されて下層を構成し、この助触媒層74の上層に、上記の白金含有触媒層72が形成される。
【0220】
助触媒層74の厚さは特に制限されず、用いられる助触媒粉末40の量やモノリス担体70の形態、白金含有触媒層72の厚さなどに応じて適宜調節されうる。助触媒層74の厚さは、通常50〜200μm程度であり、好ましくは100〜150μmである。この厚さが50μm未満であると、反応分子が触媒層に捉えられずに吹き抜けが多くなってCO転化率が低下する虞がある。一方、この厚さが200μmを超えると、触媒層内での反応・生成物の拡散律速によりCO酸化反応が阻害される虞がある。
【0221】
白金含有触媒部50における、白金含有触媒粉末20のコーティング量についても特に制限はないが、第1のモノリス担体52の単位体積あたりにコーティングされる白金含有触媒粉末20の質量は、40〜250g/L程度であるとよく、60〜200g/Lであるとより好ましい。この値が小さすぎると、触媒層が薄くなり、上記と同様に反応分子が触媒層に捉えられずに吹き抜けが多くなってCO転化率が低下する虞がある。一方、この値が大きすぎると、同じく上記と同様に触媒層が薄くなり、上記と同様に反応分子が触媒層に捉えられずに吹き抜けが多くなってCO転化率が低下する虞がある。なお、コーティング時に添加されるバインダ等の質量を「助触媒粉末の質量」に含まないことは、上記の「白金含有触媒粉末の質量」と同様である。
【0222】
[CO選択酸化触媒]
第6形態のCO選択酸化触媒10は、上述したように白金含有触媒層72と助触媒層74とを含み、これらがモノリス担体70の内表面に2層に積層されている。具体的には、図7および図8に示すように、モノリス担体70の内表面において、助触媒層74が下層に形成され、白金含有触媒層72が上層に形成されている。かような形態によれば、助触媒層74において生成した酸化されやすい形態のCOやCO酸化活性種が、白金含有触媒層72を透過する際に効率よく用いられ、COのCOへの酸化の促進に効果的に寄与しうる。ただし、かような形態のみには制限されず、白金含有触媒層72が下層に形成され、助触媒層74が上層に形成される形態もまた、採用されうる。
【0223】
第6形態のCO選択酸化触媒10において、モノリス担体70の内表面に形成される白金含有触媒層72および助触媒層74のそれぞれの具体的な形態については、上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0224】
第6形態においても、白金含有触媒層72に含まれる白金含有触媒粉末20と助触媒層74に含まれる助触媒粉末40との配合量のバランスが良好に保たれると、触媒のCO選択酸化活性の向上に寄与しうることは、上記の形態と同様である。
【0225】
その具体的な形態も上記の第4形態および第5形態の場合と同様であり、上記の第4形態において説明した各粉末の含有量の好ましい形態は、第6形態に対しても同様に採用されうる。
【0226】
また、第6形態における白金含有触媒層72と助触媒層74との厚さの比についても特に制限はなく、通常は白金含有触媒層72/助触媒層74の比で30/70〜70/30程度であり、好ましくは40/60〜60/40である。
【0227】
[作用および効果]
図7および図8に示す第6形態のCO選択酸化触媒10においては、上述したように、モノリス担体70の内表面において、助触媒粉末40を含む助触媒層74が下層に形成され、白金含有触媒粉末20を含む白金含有触媒層72が前記助触媒層74の上層に形成されている。
【0228】
第6形態において、改質ガスはまず白金含有触媒層72に流入する。この際、改質ガス中のCOは、この白金含有触媒層72を構成する白金含有触媒粉末20に含まれる白金原子に吸着される。そして、白金含有触媒粉末20に含まれる助触媒原子の作用によって、酸化されやすい形態に変換されうる。一方、前記助触媒原子の作用によって、改質ガス中の酸素や水からCO酸化活性種が生成しうる。その後、改質ガスは白金含有触媒層72を通過して助触媒層74に到達する。ここでも、助触媒層74を構成する助触媒粉末40に含まれる助触媒原子の作用によって、改質ガス中の水や酸素からCO酸化活性種が生成する。このCO酸化活性種は、再度白金含有触媒層72を通過する際に、白金原子に吸着されたCOに作用し、COへの酸化を促進させるものと推測される。
【0229】
従って、第6形態のCO選択酸化触媒10によっても、触媒活性に優れるCO選択酸化触媒が提供されうる。
【0230】
さらに、モノリス触媒の形態とすることで、上記の第5形態の欄で説明したようなモノリス触媒を採用することによる利点も得られる。
【0231】
[製造方法]
第6形態のCO選択酸化触媒は、例えば、上記の第4形態および第5形態と同様に白金含有触媒粉末および助触媒粉末を調製し、さらに必要であればバインダ等の添加物を添加して、助触媒粉末、白金含有触媒粉末の順にモノリス担体にコーティングすることによって、製造されうる。触媒粉末の調製からコーティングに至る一連の流れについては、上記で記載した形態が同様に採用されうるため、ここでは説明を省略する。
【0232】
(第7形態)
第7形態では、本発明のCO選択酸化触媒を、CO濃度低減装置に配置する。本発明のCO選択酸化触媒が配置されたCO濃度低減装置は、例えば、固体高分子型燃料電池に供給される水素リッチガス中のCOを選択的に酸化除去するために用いられうる。なお、本発明のCO選択酸化触媒がCO濃度低減装置に配置される際の形態は特に制限されず、従来公知の技術やその改良技術が適宜採用されうる。
【0233】
[CO濃度低減装置]
以下、本発明のCO濃度低減装置について、図面を用いて詳細に説明する。図9は、本発明のCO選択酸化触媒が配置されたCO濃度低減装置が用いられている燃料電池システム100の概略図である。
【0234】
まず、改質部110に炭化水素などの燃料を供給する。改質部110においては、通常は水蒸気を用いた水蒸気改質によって、燃料は水素リッチな改質ガスへと改質される。また、水蒸気に加えて、酸素を含むガスを同時に供給し、部分酸化反応を併発させたオートサーマル改質によっても、水素リッチな改質ガスが得られる。
【0235】
次いで、改質部110において得られた改質ガスをシフト反応部120に送り、改質ガス中のCO濃度を1体積%程度にまで低減させる。CO濃度が1体積%程度にまで低減された改質ガスは、続いて本発明のCO選択酸化触媒10が配置された、固体高分子型燃料電池用CO濃度低減装置130に送られ、CO濃度がppmオーダーにまで低減される。
【0236】
CO濃度低減装置130においてCO濃度がppmオーダーにまで低減された改質ガスと、酸化剤(通常は空気)とを用いて、固体高分子型燃料電池140において発電反応が進行する。固体高分子型燃料電池140からは使用済み燃料および酸化剤が排出される。燃焼部150を設けてこの使用済み燃料および酸化剤を燃焼させ、蒸発部160においてその燃焼熱を利用して水を蒸発させ、改質器110において用いられる水蒸気を発生させることによって、系全体のエネルギー効率を向上させうる。燃焼部150および蒸発部160には、必要に応じて炭化水素などを供給してもよい。
【0237】
上述したように、本発明のCO選択酸化触媒は、低温領域においても優れたCO除去性能を示す。このような触媒を用いて改質ガス中の微量のCOを酸化除去することによって、燃料電池に供給される燃料ガス中のCO濃度が効率的に低減されうる。その結果、燃料電池に用いられる白金電極の寿命を延ばすことが可能となり、燃料電池自動車の実用化に大きく寄与しうる。
【0238】
以上、本発明のCO選択酸化触媒の好ましい用途として、固体高分子型燃料電池用CO濃度低減装置に配置されて燃料電池システムに用いられる場合を例に挙げて説明したが、本発明のCO選択酸化触媒の用途はこれに制限されず、微量のCOを酸化除去するためのあらゆる用途に適用されうる。本発明のCO選択酸化触媒についての上記以外の用途としては、例えば、トンネルのような密閉空間内におけるCO除去、エンジンや燃焼器からの排気中のCO除去等が挙げられる。
【実施例】
【0239】
以下、実施例を用いて本発明の実施の形態をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の実施例のみには制限されない。
【0240】
<実施例1:第1形態>
以下の手法により、図1に示す本発明の第1形態のCO選択酸化触媒を製造した。なお、助触媒原子(アルミネート層を構成する)としてはコバルトを採用した。
【0241】
[無機担体準備工程]
アルミナ原料として、ベーマイトアルミナの未焼成粉末を準備した。また、コバルト原料である硝酸コバルトの所定量を溶媒である蒸留水に添加し、撹拌して、コバルト溶液を調製した。次いで、準備したベーマイトアルミナの粉末を、前記コバルト溶液に含浸させて、ベーマイトアルミナにコバルト原子を担持させた。さらに、コバルト原子を担持させたベーマイトアルミナを120℃にて24時間以上乾燥させた後、電気炉中で780℃にて5時間焼成し、第1の無機担体(表層にコバルトアルミネートが生成したアルミナ)を調製した。なお、得られた無機担体の平均粒子径は約5μmであった。得られた無機担体(アルミナ)はライトブルーの色調を呈しており、表層におけるコバルトアルミネートの存在が確認された。
【0242】
[白金担持工程]
白金原料として、ジニトロジアンミン白金を準備し、その所定量を溶媒である蒸留水に添加し、撹拌して、白金溶液を調製した。次いで、上記で調製した第1の無機担体(アルミナ)の粉末を、前記白金溶液に含浸させて、前記アルミナの表面に白金原子を担持させた。さらに、白金原子を担持させたアルミナを120℃にて24時間以上乾燥させた後、電気炉中で460℃にて2時間焼成し、アルミナの表面に白金粒子を成長させて、本発明の第1形態のCO選択酸化触媒(白金含有触媒粉末)を得た。なお、白金原料およびコバルト原料の量を調節することにより、得られる触媒の全量に対する白金原子およびコバルト原子の含有量を制御した。また、得られた触媒についてBET法により比表面積の測定を行った。
【0243】
上記の白金原子およびコバルト原子の含有量の値とともに、上記で測定した触媒の比表面積の値を、下記の表1に示す。
【0244】
[コーティング工程]
上記で得られたCO選択酸化触媒(白金含有触媒粉末)に適量の蒸留水を添加し、さらにバインダとしての硝酸酸性アルミナゾルを、アルミナとして、白金含有触媒粉末の質量に対して1質量%となるように添加して、ボールポットミルを用いて粉砕することにより、コーティングスラリーを調製した。
【0245】
一方、モノリス担体として、1インチあたりのセル数が900であるコージェライト製ハニカム担体(200mLサイズ)(以下、単に「900セルハニカム担体」とも称する)を準備した。
【0246】
準備した900セルハニカム担体を、上記で調製したコーティングスラリーに浸漬し、余分なスラリーを圧縮空気で除去することによりコーティングし、次いで120℃にて乾燥させ、さらに400℃にて焼成することにより、CO選択酸化触媒(ハニカム触媒A)を得た。この際、ハニカム担体へのCO選択酸化触媒(白金含有触媒粉末)のコーティング量(バインダを含まない)を、120g/Lに制御した。
【0247】
<実施例2〜4:第1形態>
白金含有触媒粉末における白金原子およびコバルト原子の含有量、並びに第1の無機担体の調製時の焼成温度を、下記の表1に示す値としたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法を用いて、本発明の第1形態のCO選択酸化触媒(白金含有触媒粉末)を製造し、比表面積の測定を行った。また、同様に900セルハニカム担体へのコーティングを行い、ハニカム触媒B〜Dを得た。
【0248】
<実施例5〜7:第1形態>
アルミネート層を構成する助触媒原子として、コバルト原子に代えてマンガン原子、ニッケル原子、または銅原子を採用したこと以外は、上記の実施例1と同様の手法を用いて、本発明の第1形態のCO選択酸化触媒(白金含有触媒粉末)を製造し、比表面積の測定を行った。また、同様に900セルハニカム担体へのコーティングを行い、ハニカム触媒E〜Gを得た。
【0249】
<実施例8:第2形態>
以下の手法により、図2に示す本発明の第2形態のCO選択酸化触媒を製造した。なお、助触媒原子(アルミネート粒子を構成する)としてはコバルトを採用した。
【0250】
[コバルトアルミネート粒子準備工程]
共沈法により、コバルトアルミネート粒子を調製した。まず、コバルトアルミネートの原料として、コバルト原料である硝酸コバルトおよびアルミニウム原料である硝酸アルミニウムを準備した。これらの所定量を溶媒である蒸留水に同時に添加し、撹拌して、コバルト−アルミニウム溶液を調製した。次いで、このコバルト−アルミニウム溶液に5%アンモニア水溶液を徐々に滴下し、沈殿物を生成させた。得られた沈殿物を濾過し、蒸留水で洗浄した。この沈殿物を120℃にて24時間以上乾燥させた後、電気炉中で760℃にて5時間焼成し、ライトブルーの色調を呈するコバルトアルミネートを調製した。なお、得られたコバルトアルミネートの平均粒子径は2.5μmであった。
【0251】
[白金担持工程]
実施例1と同様に白金溶液を調製した。次いで、上記で調製したコバルトアルミネートの粉末を、前記白金溶液に含浸させて、コバルトアルミネートに白金原子を担持させた。さらに、白金原子を担持させたコバルトアルミネートを120℃にて8時間乾燥させた後、電気炉中で460℃にて2時間焼成し、コバルトアルミネート粒子の表面に白金粒子を成長させて、白金担持コバルトアルミネートを得た。
【0252】
[白金担持コバルトアルミネート粒子分散工程]
無機担体原料として、実施例1と同様のベーマイトアルミナの未焼成粉末を準備した。この無機担体原料を、コバルト原子を担持させないこと以外は実施例1と同様の手法により焼成し、無機担体(アルミナ)を調製した。なお、得られた無機担体の平均粒子径は4.4μmであった。
【0253】
上記で調製した白金担持コバルトアルミネートを、同じく上記で調製した無機担体の表面に分散させて、CO選択酸化触媒を調製した。具体的には、直径5mmのアルミナ製ボールミルを用いた湿式粉砕混合法により、白金担持コバルトアルミネート粒子および無機担体を充分に混合させて、本発明の第2形態のCO選択酸化触媒を得た。なお、白金原料およびコバルト原料の量を調節することにより、得られる触媒の全量に対する白金およびコバルトの含有量を制御した。また、得られた触媒についてBET法により比表面積の測定を行った。これらの値を、下記の表1に示す。
【0254】
[コーティング工程]
上記で製造した本発明の第2形態のCO選択酸化触媒を、上記の実施例1と同様の手法を用いて、900セルハニカム担体にコーティングし、ハニカム触媒Hを得た。
【0255】
<実施例9:第4形態>
以下の手法により、図4に示す本発明の第4形態のCO選択酸化触媒を製造した。なお、助触媒原子(アルミネート粒子を構成する)としてはコバルトを採用した。
【0256】
[白金含有触媒粉末調製工程]
白金含有触媒粉末として、上記の実施例1において製造したCO選択酸化触媒(白金含有触媒粉末)を準備した。
【0257】
[助触媒粉末調製工程]
助触媒粉末用の無機担体(第2の無機担体)の原料として、上記と同様のベーマイトアルミナの未焼成粉末を準備した。次いで、準備したベーマイトアルミナの未焼成粉末を1000℃にて8時間焼成して、助触媒粉末用の無機担体(第2の無機担体)であるアルミナを得た。
【0258】
一方、コバルト粒子の原料である硝酸コバルトの所定量を、溶媒である蒸留水に添加し、撹拌して、助触媒原子含有溶液(コバルト溶液)を調製した。
【0259】
続いて、上記で調製したアルミナ(第2の無機担体)の粉末を、同じく上記で調製したコバルト溶液に含浸させて、アルミナにコバルト原子を担持させた。さらに、コバルト原子を担持させたアルミナを120℃にて24時間以上乾燥させた後、電気炉中で700℃にて4時間焼成することにより、第2の無機担体の表面にコバルト酸化物の粒子を成長させて、助触媒粉末(コバルト触媒粉末)を調製した。なお、本工程においては、助触媒粉末の全量に対して、コバルト原子の含有量が8.0質量%となるように、コバルト原料およびアルミナ(第2の無機担体)の量を調節した。また、得られた触媒についてBET法により比表面積の測定を行った。
【0260】
[混合工程]
上記で準備した白金含有触媒粉末および上記で調製した助触媒粉末(1:1の質量比)、および溶媒としての蒸留水(適量)を、直径5mmのアルミナ製ボールミル中に仕込み、4時間湿式粉砕混合することにより、スラリー状混合物を得た。
【0261】
得られたスラリー状混合物をボールミルから取り出し、120℃にて乾燥後、アトマイザーを用いて乾式で再度粉砕し、本発明の第4形態のCO選択酸化触媒を得た。
【0262】
[コーティング工程]
上記で製造した本発明の第4形態のCO選択酸化触媒を、上記の実施例1と同様の手法を用いて、900セルハニカム担体にコーティングし、ハニカム触媒Iを得た。
【0263】
<実施例10:第5形態>
以下の手法により、図5および図6に示す本発明の第5形態のCO選択酸化触媒を製造した。なお、助触媒原子(白金含有触媒粉末におけるアルミネート層、および助触媒粉末における助触媒粒子を構成する)としてはコバルトを採用した。
【0264】
[白金触媒部の調製]
白金触媒部として、上記の実施例1において製造したハニカム触媒Aを準備した。
【0265】
[助触媒部の調製]
[助触媒粉末調製工程]
助触媒粉末として、上記の実施例9において調製した助触媒粉末を準備した。
【0266】
[コーティング工程]
上記で準備した助触媒粉末を、上記の実施例1と同様の手法により、900セルハニカム担体へコーティングし、ハニカム触媒の形態の助触媒部を調製した。この際、助触媒粉末のコーティング量(バインダを含まない)を、180g/Lに制御した。
【0267】
[配置工程]
上記の[助触媒部の調製]の欄において調製した助触媒部を、改質ガスの流通方向の上流側に位置するように配置し、上記の[白金触媒部の調製]の欄において準備した白金触媒部を、改質ガスの流通方向の下流側に位置するように配置して、本発明の第5形態のCO選択酸化触媒(ハニカム触媒J)を完成させた。
【0268】
<実施例11および12:第5形態>
白金含有触媒粉末におけるアルミネート層、および助触媒粉末における助触媒粒子を構成する助触媒原子として、コバルト原子に代えてマンガン原子、または銅原子を採用したこと以外は、上記の実施例10と同様の手法を用いて、本発明の第5形態のCO選択酸化触媒(ハニカム触媒KおよびL)を製造した。
【0269】
<実施例13:第6形態>
以下の手法により、図7および図8に示す本発明の第6形態のCO選択酸化触媒を製造した。なお、助触媒原子(白金含有触媒粉末におけるアルミネート層、および助触媒粉末における助触媒粒子を構成する)としてはコバルトを採用した。
【0270】
[白金含有触媒粉末調製工程]
白金含有触媒粉末として、上記の実施例1において製造したCO選択酸化触媒(白金含有触媒粉末)を準備した。また、上記の実施例1と同様の手法により、白金含有触媒粉末のコーティングスラリーを調製した。
【0271】
[コーティング工程]
上記の実施例10において助触媒部として調製した、助触媒粉末がコーティングされてなるハニカム触媒を準備した。このハニカム触媒に、上記で準備した白金含有触媒粉末のコーティングスラリーをさらにコーティングすることにより、本発明の第6形態のCO選択酸化触媒(ハニカム触媒M)を製造した。この際、白金含有触媒粉末のコーティング量(バインダを含まない)を、100g/Lに制御した。
【0272】
<比較例1:白金単独で担持>
以下の手法により、無機担体(ベーマイトアルミナ)の表面に白金原子のみが触媒金属として担持されてなるCO選択酸化触媒を製造した。
【0273】
無機担体として、実施例1と同様のベーマイトアルミナの未焼成粉末を準備した。
【0274】
一方、白金原料として、ジニトロジアンミン白金を準備し、その所定量を溶媒である蒸留水に添加し、撹拌して、白金溶液を調製した。次いで、上記で準備した無機担体(ベーマイトアルミナ)の粉末を、前記白金溶液に含浸させて、前記ベーマイトアルミナの表面に白金原子を担持させた。さらに、白金原子を担持させたアルミナを120℃にて24時間以上乾燥させた後、電気炉中で500℃にて2時間焼成し、ベーマイトアルミナの表面に白金粒子を成長させて、CO選択酸化触媒を得た。なお、白金原料の量を調節することにより、得られる触媒の全量に対する白金原子の含有量を制御した。また、得られた触媒についてBET法により比表面積の測定を行った。
【0275】
上記の白金原子の含有量の値とともに、上記で測定した触媒の比表面積の値を、下記の表1に示す。
【0276】
上記で製造した比較例1のCO選択酸化触媒を、上記の実施例1と同様の手法を用いて、900セルハニカム担体にコーティングし、ハニカム触媒Nを得た。
【0277】
<比較例2:逐次含浸法>
以下の手法(逐次含浸法)により、無機担体(ベーマイトアルミナ)の表面に白金成分および助触媒成分の双方が触媒金属として担持されてなるCO選択酸化触媒を製造した。なお、助触媒原子としては、コバルト原子を採用した。
【0278】
無機担体として、実施例1と同様のベーマイトアルミナの未焼成粉末を準備した。
【0279】
次いで、上記で準備した無機担体(ベーマイトアルミナ)を、上記の実施例1において調製したコバルト溶液に含浸させ、120℃にて24時間以上乾燥させて、無機担体(ベーマイトアルミナ)にコバルト原子を担持させた。次いで、得られたコバルト担持ベーマイトアルミナを、実施例1と同様の白金溶液に含浸させ、120℃にて24時間以上乾燥させて、コバルト担持ベーマイトアルミナに白金原子をさらに担持させた。その後、電気炉中で500℃にて2時間焼成し、ベーマイトアルミナの表面に白金粒子およびコバルト酸化物を成長させた。その後粉砕することにより、比較例2のCO選択酸化触媒を調製した。なお、本工程においては、後述のコーティング工程におけるコーティングスラリー中に含有される触媒の全量(バインダを除く)に対する白金原子およびコバルト原子の含有量がそれぞれ1.2質量%および5.0質量%となるように、白金原料、コバルト原料および無機担体(ベーマイトアルミナ)の量を調節した。
【0280】
上記で製造した比較例2のCO選択酸化触媒を、上記の実施例1と同様の手法を用いて、900セルハニカム担体にコーティングし、ハニカム触媒Oを得た。
【0281】
【表1】

【0282】
<試験例>
上記の実施例で得られたハニカム触媒A〜M、および上記の比較例で得られたハニカム触媒NおよびOから、試験用の触媒サンプルとして30mLの触媒片を切り出し、以下のモデルガス組成の下でのCO転化率を測定した。
【0283】
すなわち、モデルガス(H:32体積%、CO:15体積%、HO:33体積%、CO:0.8体積%、O:0.9体積%、He:残り)をガス空間速度(ガスの総流量(cm/h)/触媒サンプル体積(cm))が50000h−1または100000h−1となるように供給し、CO除去試験を行った。反応温度は触媒入口温度を150℃に維持し、触媒サンプルの出口ガス中のCO濃度を測定した。それをもとに、下記数式1により、CO転化率を算出した。
【0284】
【数1】

【0285】
すなわち、CO転化率が高いほど、CO除去性能に優れる触媒であるといえる。
【0286】
各実施例および各比較例について算出されたCO転化率の値を、試験時の空間速度の値とともに下記の表2に示す。
【0287】
【表2】

【0288】
表2に示す結果から、CO選択酸化触媒において、白金原子に加えて、助触媒原子(コバルト、マンガン、ニッケル、および銅)をアルミネートの形態でさらに含有させることで、CO転化率を向上させうることが示唆される。
【0289】
また、白金含有触媒粉末と助触媒粉末とを別々に調製し、これらを組み合わせることで、CO転化率をより一層向上させうることが示される。
【0290】
さらに、助触媒原子としてコバルト原子を採用すると、より高いCO転化率の向上効果が得られることが示される。
【図面の簡単な説明】
【0291】
【図1】第1形態のCO選択酸化触媒(白金含有触媒粉末)を示す模式断面図である。
【図2】第2形態のCO選択酸化触媒(白金含有触媒粉末)を示す模式断面図である。
【図3】第3形態のCO選択酸化触媒を示す模式断面図である。
【図4】第4形態のCO選択酸化触媒を示す模式断面図である。
【図5】第5形態のCO選択酸化触媒を示す模式斜視図である。
【図6】図5に示すVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】第6形態のCO選択酸化触媒の、改質ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって見た模式断面図である。
【図8】図7に示すVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】本発明のCO選択酸化触媒が配置されたCO濃度低減装置が用いられている燃料電池システムの概略図である。
【符号の説明】
【0292】
10 CO選択酸化触媒、
20 白金含有触媒粉末、
22 第1の無機担体、
24 白金粒子、
26 アルミネート層、
30 アルミネート粒子、
40 助触媒粉末、
42 第2の無機担体、
44 助触媒粒子、
50 白金含有触媒部、
52 第1のモノリス担体、
54 白金含有触媒層、
60 助触媒部、
62 第2のモノリス担体、
64 助触媒層、
70 モノリス担体、
72 白金含有触媒層、
74 助触媒層、
100 燃料電池システム、
110 改質部、
120 シフト反応部、
130 固体高分子型燃料電池用CO濃度低減装置、
140 固体高分子型燃料電池、
150 燃焼部、
160 蒸発部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金原子を含む白金粒子が第1の無機担体に担持されてなる白金含有触媒粉末を含むCO選択酸化触媒であって、
前記白金含有触媒粉末が、コバルト、マンガン、ニッケル、および銅からなる群から選択される助触媒原子のアルミネートをさらに含む、CO選択酸化触媒。
【請求項2】
前記アルミネートが前記第1の無機担体に含有される、請求項1に記載のCO選択酸化触媒。
【請求項3】
前記第1の無機担体が、その表層に前記アルミネートからなるアルミネート層を有する、請求項2に記載のCO選択酸化触媒。
【請求項4】
前記白金含有触媒粉末の全量に対する前記白金原子の含有量が0.2〜3.0質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のCO選択酸化触媒。
【請求項5】
前記白金含有触媒粉末の全量に対する前記助触媒原子の含有量が0.6〜14質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のCO選択酸化触媒。
【請求項6】
前記助触媒原子を含む助触媒粒子が第2の無機担体に担持されてなり、白金原子を実質的に含有しない助触媒粉末をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のCO選択酸化触媒。
【請求項7】
前記助触媒粉末を含む助触媒部が前記ガスの流通方向の上流側に配置され、前記白金含有触媒粉末を含む白金含有触媒部が前記ガスの流通方向の下流側に配置されてなる、請求項6に記載のCO選択酸化触媒。
【請求項8】
前記白金含有触媒部が、第1のモノリス担体の内表面に前記白金含有触媒粉末を含む白金含有触媒層が形成されてなるモノリス触媒であり、
前記助触媒部が、第2のモノリス担体の内表面に前記助触媒粉末を含む助触媒層が形成されてなるモノリス触媒である、請求項7に記載のCO選択酸化触媒。
【請求項9】
モノリス担体の内表面に、
前記白金含有触媒粉末を含む白金含有触媒層と、
前記助触媒粉末を含む助触媒層と、
が形成されてなる、請求項6に記載のCO選択酸化触媒。
【請求項10】
前記助触媒層が下層に形成され、前記白金含有触媒層が上層に形成されてなる、請求項9に記載のCO選択酸化触媒。
【請求項11】
コバルト、マンガン、ニッケル、および銅からなる群から選択される助触媒原子のアルミネートを含有する無機担体を準備する工程と、
前記無機担体に白金原子を含有する白金粒子を担持させて、白金含有触媒粉末を得る工程と、
を有する、CO選択酸化触媒の製造方法。
【請求項12】
前記アルミネートを含有する無機担体を準備する工程が、
アルミナ原料に前記助触媒原子を担持させる工程と、
前記助触媒原子が担持された前記アルミナ原料を焼成することにより、表層に前記助触媒原子のアルミネートが生成したアルミナを得る工程と、
を有する、請求項11に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−192381(P2006−192381A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7336(P2005−7336)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】