説明

CO2ガス濃度値センサーにおける温度補正方法

【課題】CO2ガス濃度値センサーに使用される赤外線センサーの温度補正を行い、また、赤外線センサーからの信号を増幅する増幅器の飽和と直流出力電圧の変動を防ぎ、増幅器の直流出力電圧をゼロに補正する。
【解決手段】赤外線センサーが配置された空間内の温度を検出する温度検出素子には、ビーズ状のものを使用し、赤外線センサーの近傍の温度を検出するように空間内に配置する。赤外線センサーからの信号を増幅する増幅器の帰還回路に、(−)の温度特性を持った温度検出素子を挿入し、増幅度の温度特性に(+)の温度特性を持たせて赤外線センサーの(−)の温度特性を補正する。温度特性を持った赤外線センサーの直流出力電圧に対しては、赤外線センサーからの信号を増幅する増幅器にオートゼロ補正回路を追加して、信号が出現していないときの直流出力電圧を常にゼロに補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCO2ガス濃度値センサーにおける温度補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のCO2ガス濃度値センサーの温度補正方法には、断熱空間内にヒータと温度検出素子を配置し、この空間内の温度を一定に制御する方法がある。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】 特開2000−213986
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
CO2ガス濃度値センサーに使用される赤外線センサーは、一般には温度が上がると電圧感度が下るという(−)の温度特性を持ち、温度が上がると直流出力電圧が上がるという(+)の温度特性を持っていて、CO2ガス濃度センサーの温度補正が必要となる。
【0004】
赤外線センサーの温度は、周囲温度の変化及び検出ガスを通過したランプからの光照射により変化する。
【0005】
また、赤外線センサーからの信号を増幅する増幅器は高い増幅度を持つので、赤外線センサーの直流出力電圧により飽和してしまう。この直流出力電圧が温度特性を持っていると通常のゼロ補正回路では対応できず、オートゼロ補正回路が必要となる。
【0006】
従来の技術は、チップ状の温度検出素子をプリント基板上に実装し、ここの温度を検出して赤外線センサーが配置された断熱空間内の温度を一定に制御しようとするものである。
【0007】
しかし、チップ状の温度検出素子はプリント基板上に実装されているため、温度検出素子が検出する温度は空間内の温度ではなく、プリント基板の温度である。
【0008】
したがって、赤外線センサーが配置された空間内の温度を一定に制御することはできず、赤外線センサーの近傍のプリント基板の温度を制御することになる。
【0009】
また、このような温度制御で変動の無い制御を達成することは難しく、変動の無い制御を達成するためには大掛かりな回路を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
赤外線センサーが配置された空間内の温度を検出する温度検出素子には、ビーズ状のものを使用し、赤外線センサーの近傍の温度を検出するように空間内に配置する。
【0011】
この温度検出素子が検出した温度により、空間内の温度を一定に制御するのではなく、赤外線センサーからの信号を増幅する増幅器の帰還回路に、(−)の温度特性を持った温度検出素子を挿入し、増幅度の温度特性に(+)の特性を持たせて赤外線センサーの電圧感度の(−)の温度特性を補正する。
【0012】
温度特性を持った直流出力電圧に対しては、赤外線センサーからの信号を増幅する増幅器にオートゼロ補正回路を追加して、信号が出現していないときの直流電圧を常にゼロに制御する。
【発明の効果】
【0013】
難しい温度制御をするのではなく、増幅器の帰還回路に(−)の温度特性を持った温度検出素子を挿入することにより、増幅度の温度特性に(+)の特性を持たせて、簡便に赤外線センサーの電圧感度の(−)の温度特性を補正できる
【0014】
また、オートゼロ補正回路により、赤外線センサーの直流出力電圧の変動に対して対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図1のサーミスタ配置図と、図2の赤外線センサーからの信号増幅回路および図3に基づいて説明する。
【0016】
赤外線センサーが配置された空間内の温度を検出するために、図1のようにサーミスタを赤外線センサーの近傍の、断熱空間内に配置する。
【0017】
サーミスタはプリント基板上のサーミスタ半田付け用パッドに半田付けし、基板に対して垂直に配置する。
【0018】
ここで、検出ガスを通過したランプからの光は、図1の上方から照射される。
【0019】
このようなサーミスタの配置により、赤外線センサーの近傍の温度を検出することができる。
【0020】
サーミスタは図2に示すようにR_sと直列に、R_pと並列に接続され、増幅器の帰還回路に挿入される。
【0021】
サーミスタの抵抗値のRTH、R_sおよびR_pの合成抵抗値をRtとすると、
Rt=(RTH+R_s)×R_p/((RTH+R_s)+R_p) −−−(1)
となり、増幅器の増幅度Aは、
A=R2/R1×(1+R3/Rt) −−−−−−−−−−−−−−−− (2)
と表される。
【0022】
(1)式において、R_sはサーミスタ抵抗値の温度勾配によるRtの変化を調整し、R_pはRtの抵抗値を調整し増幅度Aを設定する働きがある。R_sが小さければ増幅器の温度に対する変化は大きくなり、R_sが大きければ増幅器の温度に対する変化は小さくなる。
【0023】
サーミスタの抵抗値は温度が上がれば減少するので、(2)式において増幅度Aは温度が上がれば増加する特性を持ち、温度が上がると電圧感度が下るという赤外線センサーの特性を補正することができる。
【0024】
R_sは増幅度の温度特性が、赤外線センサーの温度特性を補正するように調整される。これらの特性を図3に示す。
【0025】
次に、オートゼロ補正回路について図2にしたがって説明する。
【0026】
図2において、赤外線センサーの信号出力は小さいので、増幅度Aは100〜1000倍と大きい。一方赤外線センサーの直流出力電圧は一般に(+)1V前後であり、この電圧により増幅器の出力は飽和してしまう。
【0027】
そこで、積分器により増幅器の直流出力電圧を積分し、R_balを通して増幅器の入力に加える。
【0028】
積分器の出力は、R_balとR_sigの分圧比で増幅器の入力に加わり、赤外線センサーからの信号はR_sigとR_balの分圧比で増幅器の入力に加わる。
【0029】
増幅器の(+)の直流出力電圧により、積分器の出力には(−)の電圧が出力され、赤外線センサーの(+)の直流出力電圧とは逆の電圧となり、増幅器の(+)の直流出力電圧を減少させる。
【0030】
わずかな増幅器の(+)の直流出力電圧によっても、積分器出力には(−)の電圧が出力され、ついには増幅器の直流出力電圧がゼロとなるように働く。
【0031】
ランプは1秒程度のパルス幅で点灯し、10秒程度の繰り返しで点滅するので、赤外線センサーからの信号は1秒程度の時定数を持ったパルス状のものとなる。
【0032】
積分器の時定数はC×R4であり、この値は1秒よりも大きい200秒程度に設定されているので、赤外線センサーからの信号は平均化され、この信号による積分器の直流出力電圧の変化はない。
【0033】
したがって、赤外線センサーの温度変化による直流出力電圧の変動に起因する増幅器の出力変化は常に補正され、増幅器の直流出力電圧がゼロとなるように働く。
【0034】
ここで、積分器に使用されるオペアンプのバイアス電流を補正するために、R4=R5と設定される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】 サーミスタ配置図
【図2】 赤外線センサーからの信号増幅回路
【図3】 赤外線センサーの電圧感度および増幅器の正規化増幅度の温度特性
【符号の説明】
【0036】
図1
1 サーミスタ
2 赤外線センサー
3 プリント基板
4 サーミスタのリード線
5 サーミスタ半田付け用パッド
図2
1 ランプ
2 赤外線センサー
3 増幅器
4 積分器
5 サーミスタ
6 FET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短時間に点灯するランプを光源とする赤外線方式ガス濃度値センサーにおいて、(−)の温度特性を持ったビーズ状の温度検出素子を、赤外線センサーの温度を検出するために赤外線センサー近傍の空間内に配置し、前記温度検出素子を赤外線センサーからの信号を増幅する増幅器の帰還回路に挿入し、増幅度の温度特性に(+)の温度特性を持たせて赤外線センサーの(−)の温度特性を補正する温度補正回路を備えたことを特徴とする赤外線方式ガス濃度値センサー。
【請求項2】
短時間に点灯するランプを光源とする赤外線方式ガス濃度値センサーにおいて、赤外線センサーからの信号の増幅器の出力電圧を、信号の時定数より大きな時定数を持った積分器で積分し、この出力を前記増幅器の入力に加えて、赤外線センサーからの温度特性を持った直流出力電圧による前記増幅器の飽和と直流出力電圧の変動を防ぎ、前記増幅器の直流出力電圧をゼロに補正するように、前記増幅器にオートゼロ補正回路を備えたことを特徴とする赤外線方式ガス濃度値センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−127923(P2010−127923A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326481(P2008−326481)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(508206977)株式会社美山技研 (5)
【Fターム(参考)】