説明

CRTH2受容体アンタゴニストとしてのインドール誘導体

(+){7R−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}酢酸化合物およびその薬学的に許容可能な塩は、PGD受容体、CRTH2、のアンタゴニストであり、そうであるので喘息などのCRTH2介在性疾患の治療および/または予防に有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プロスタグランジンD(PGD)は、アラキドン酸のシクロオキシゲナーゼ代謝産物である。PGDは、免疫誘発に反応して肥満細胞およびTH2細胞から放出されるもので、様々な生理学的事象(睡眠およびアレルギー反応など)での役割に関係があるとされてきた。
【0002】
PGDの受容体として、TH2細胞で発現する化学誘引物質受容体相同分子(「CRTH2」)である「DP」受容体、および「FP」受容体がある。これらの受容体は、PGDで活性化されるGタンパク質結合受容体である。ヒトTヘルパー細胞、好塩基球、および好酸球をはじめとする様々な細胞でのCRTH2受容体およびその発現は、以下に記載されている。Abe,et al,Gene 227:71−77,1999,Nagata,et al,FEBS Letters 459:195−199,1999,およびNagata,et al,The Journal of Immunology 162:1278−1286,1999(CRTH2受容体について記載する)。Hirai,et al,J.Exp.Med.193:255−261,2001は、CRTH2がPGDの受容体であることを示している。
【0003】
WO2007019675は、以下の式のCRTH2アンタゴニストを開示する。
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2007019675
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Abe,et al,Gene 227:71−77,1999
【非特許文献2】Nagata,et al,FEBS Letters 459:195−199,1999
【非特許文献3】Nagata,et al,The Journal of Immunology 162:1278−1286,1999
【非特許文献4】Hirai,et al,J.Exp.Med.193:255−261,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、様々なプロスタグランジン介在性疾患および障害の治療に有用なCRTH2受容体アンタゴニストを提供する。したがって、本発明は、本明細書中記載される新規化合物、ならびにその化合物を含有する薬学的組成物を用いた、プロスタグランジン介在性疾患の治療法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、化合物A、すなわち(+){7R−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}酢酸またはその薬学的に許容可能な塩に関する。化合物Aは、以下に示すとおりの構造式を有する。
【化2】

【0008】
本明細書中使用される場合、以下の用語は、示されるとおりの意味を有する。「治療上有効量」は、研究者、獣医、医師、またはその他臨床医によって求められる、組織、全身、動物、またはヒトの生物学的または医薬的反応を引き起こすことができる、薬物または薬学的作用剤の量である。
【0009】
「治療」または「治療する」という用語は、疾患または障害に伴う徴候および症状を、緩和、改善、軽減、またはいずれにしろ減少させることを含む。
【0010】
薬学的組成物のように「組成物」という用語は、活性成分(単数または複数)およびキャリアとなる不活性成分(単数または複数)(薬学的に許容可能な賦形剤)を含む生成物、ならびに任意の2種以上の成分の組合せ、複合化、もしくは凝集から、または1種以上の成分の離脱から、または1種以上の成分のその他の種類の反応もしくは相互作用から、直接または間接的に生じる任意の生成物を包含するものとする。したがって、本発明の薬学的組成物は、化合物Aと薬学的に許容可能な賦形剤を混合することで得られる任意の組成物を包含する。
【0011】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、薬学的に許容可能な無毒の塩基から調製される塩を示し、無毒の塩基として無機塩基および有機塩基が含まれる。無機塩基由来の塩として、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などが挙げられる。特に好適なのは、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、およびナトリウム塩である。薬学的に許容可能な無毒の有機塩基由来の塩として、第一級、第二級、および第三級アミン、天然の置換アミンをはじめとする置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂の塩が挙げられる(例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなど)。本明細書中の化合物Aに関する任意の記載は、反対であると特に記載されるか文脈から示されない限り、化合物Aの薬学的に許容可能な塩を含むことを理解されたい。
【0012】
化合物Aおよびその薬学的に許容可能な塩は、非晶質形でも結晶形でも存在することができる。本発明の化合物の結晶形の中には多形体として存在するものも有ることができ、そうであるので、全ての形が本発明に含まれるものとする。また、化合物Aおよびその薬学的に許容可能な塩は、水と(水和物)または通常の有機溶媒と溶媒和物を形成することができる。そうした溶媒和物も本発明の範囲に包含される。
【0013】
用途
化合物Aには、プロスタグランジン受容体と相互作用する能力があるので、哺乳類、特にヒト被検体において、プロスタグランジンにより引き起こされる望ましくない症状を予防または反転させるのに有用である。プロスタグランジンの作用のこの模倣または拮抗は、化合物およびその薬学的組成物が、哺乳類および特にヒトで呼吸器症状、アレルギー症状、疼痛、炎症症状、粘液分泌障害、骨障害、睡眠障害、妊娠障害、血液凝固障害、視覚障害、ならびに免疫および自己免疫疾患を治療、予防、または改善するのに有用であることを示唆する。また、そのような化合物は、細胞性腫瘍形質転換および転移性(metastic)腫瘍増殖を阻害することができ、したがって癌の治療に用いることができる。化合物Aは、プロスタグランジン介在性増殖障害(糖尿病性網膜症および腫瘍血管新生で生じ得るものなど)の治療および/または予防にも有用となることができる。化合物Aは、収縮性プロスタノイドと拮抗することにより、または弛緩プロスタノイドを模倣することにより、プロスタノイド誘導平滑筋収縮も阻害することができ、したがって月経困難症、早期分娩、および好酸球関連障害の治療に用いることができる。より詳細には、化合物Aは、プロスタグランジンD2受容体、CRTH2のアンタゴニストである。
【0014】
したがって、本発明の別の態様は、プロスタグランジン介在性疾患の治療法または予防法を提供し、この方法は、そのような治療を必要としている哺乳類の患者に、そのプロスタグランジン介在性疾患を治療または予防するのに有効な量で化合物Aを投与することを含む。プロスタグランジン介在性疾患として、以下が挙げられるがそれらに限定されない。アレルギー性鼻炎、鼻づまり、鼻漏、通年性鼻炎、鼻炎、アレルギー性喘息をはじめとする喘息、慢性閉塞性肺疾患およびその他の形の肺炎。蕁麻疹、接触皮膚炎、およびアレルギー性結膜炎などのその他アレルギーおよびアレルギー性反応。睡眠障害および睡眠起床サイクル障害。月経困難症および早期分娩に伴うプロスタノイド誘導平滑筋収縮。好酸球関連障害。血栓症。緑内障および視覚障害;閉塞性血管障害。うっ血性心不全。傷害後または手術後治療などの抗凝固治療を必要とする疾患または症状。炎症。壊疽。レイノー病。細胞保護をはじめとする粘液分泌障害。疼痛および片頭痛。例えば、骨粗鬆症などの骨形成および再吸収の制御を必要とする疾患。ショック。発熱をはじめとする熱調節。ならびに免疫調節することが望ましい免疫障害または症状。より詳細には、治療しようとする疾患は、例えば鼻づまり、肺うっ血、およびアレルギー性喘息をはじめとする喘息などのプロスタグランジンD2が介在するものである。
【0015】
本発明の1実施形態は、プロスタグランジン介在性疾患の治療法または予防法であり、この方法は、そのような治療を必要としている哺乳類の患者に、プロスタグランジン介在性疾患を治療または予防するのに有効な量で化合物Aを投与することを含み、プロスタグランジン介在性疾患とは、鼻づまり、アレルギー性鼻炎および通年性鼻炎をはじめとする鼻炎、ならびにアレルギー性喘息をはじめとする喘息である。
【0016】
本発明の別の実施形態は、プロスタグランジンD2介在性疾患の治療法または予防法であり、この方法は、そのような治療を必要としている哺乳類の患者に、プロスタグランジンD2介在性疾患を治療または予防するのに有効な量で化合物Aを投与することを含み、プロスタグランジンD2介在性疾患とは、鼻づまりまたは喘息である。
【0017】
本発明の別の実施形態は、鼻づまりの治療を必要としている患者の鼻づまり治療法であり、この方法は、この患者に治療上有効量の化合物Aを投与することを含む。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態は、アレルギー性喘息をはじめとする喘息の治療を必要としている患者の喘息治療法であり、この方法は、この患者に治療上有効量の化合物Aを投与することを含む。
【0019】
用量範囲
化合物Aの予防用量または治療用量の大きさは、勿論、治療しようとする症状の性質および重篤度ならびに投与経路で様々であるだろう。この量は、個々の患者の年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与時間、排出速度、薬物の組合せ、および反応を含む様々な要因によっても変化するだろう。一般に、一日量は、哺乳類の体重1kgあたり、約0.001mg〜約100mg、好ましくは1kgあたり0.01mg〜約10mgである。一方で、場合によってはこの制限外の投薬量を用いることが必要なこともあるかもしれない。
【0020】
キャリア材料と組み合わせて1個の剤形を生成することができる活性成分の量は、治療される生体および具体的な投与様式に依存して変化するだろう。例えば、ヒトの経口投与用配合物は、活性剤0.05mg〜5gを、適切で便利な量のキャリア材料と配合して含有することができ、キャリア材料の量は、組成物全体の約5〜約99.95%まで様々であり得る。投薬単位形は、一般に、活性成分を、約0.1mg〜約0.4gで、典型的には0.5mg、1mg、2mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mg、または400mgで含有するだろう。
【0021】
薬学的組成物
本発明の別の態様は、化合物Aを薬学的に許容可能なキャリアとともに含む薬学的組成物を提供する。任意のプロスタノイド介在性疾患の治療のため、化合物Aは、投薬単位配合物で、経口で、吸入スプレーにより、局所的に、非経口で、または直腸から投与することができ、投薬単位配合物は、従来の無毒で薬学的に許容可能なキャリア、アジュバント、およびビヒクルを含有する。「非経口」という用語は、本明細書中使用される場合、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、および輸液技法を含む。本発明の化合物は、温血動物例えば、マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコなどの治療だけでなく、ヒトの治療に有効である。
【0022】
活性成分を含有する薬学的組成物は、経口使用に適した形、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、水和性粉剤もしくは顆粒剤、乳濁液、硬もしくは軟カプセル剤、またはシロップもしくはエリキシル剤が可能である。経口用組成物は、当該分野で既知の任意の薬学的組成物製造法に従って調製することができ、そうした組成物は、薬学的に洗練された口に合う製剤を提供する目的で、甘味剤、香味剤、着色剤、および保存料からなる群より選択される作用剤1種以上を含有することができる。。錠剤は、活性成分を、錠剤の製造に適した無毒で薬学的に許容可能な賦形剤に混合して含有する。こうした賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;例えば、トウモロコシデンプン、またはアルギン酸などの顆粒化剤および崩壊剤;例えば、デンプン、ゼラチン、またはアカシアガムなどの結合剤;および例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクなどの潤滑剤であってよい。錠剤は、被覆されていなくてもよいし、胃腸管での消化吸収を遅らせる既知の技法で被覆されていてもよく、これにより長期間で持続した作用を提供する。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの時間を遅らせる材料を用いることができる。錠剤は、米国特許第4,256,108号、第4,166,452号、および第4,265,874号に記載される技法で被覆されて、放出制御のための浸透圧治療錠剤を形成することもできる。
【0023】
経口用配合物は、活性成分を例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンなどの不活性固体希釈剤と混合した硬ゼラチンカプセル剤として、または、活性成分をプロピレングリコール、PEG、およびエタノールなどの水混和性溶媒もしくは例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、またはオリーブ油などの油性媒体と混合した軟ゼラチンカプセル剤として存在することもできる。
【0024】
水性懸濁液は、活性材料を、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合して含有する。そうした賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴムなどの懸濁剤があり、分散または湿潤剤は、例えば、レシチンである天然のホスファチド、または例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレンなどのアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物、または例えば、ヘプタデカエチレン−オキシセタノールなどのエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物、またはポリオキシエチレンソルビトールモノオレアートなどのエチレンオキシドと脂肪酸とヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合物、または例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレアートなどのエチレンオキシドと脂肪酸とヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合物などが可能である。水性懸濁液は、例えば、エチル、n−プロピル、p−ヒドロキシベンゾアートなどの1種以上の保存料、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤、およびスクロース、サッカリン、またはアスパルテームなどの1種以上の甘味剤も含有できる。
【0025】
油性懸濁液は、活性成分を例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、またはココナッツ油などの植物油または流動パラフィンなどの鉱物油に懸濁させることにより配合できる。油性懸濁液は、例えば、ミツロウ、固形パラフィン、またはセチルアルコールなどの増粘剤を含有できる。上記したような甘味剤、および香味剤を添加して、口に合う経口製剤を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加により保存できる。
【0026】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した水和性粉剤および顆粒剤は、活性成分を分散または湿潤剤、懸濁剤、および1種以上の保存料との混合物として提供する。適した分散または湿潤剤および懸濁剤は、すでに上記で例示したものである。さらに、例えば、甘味料、香味剤、および着色剤などの賦形剤が存在することもできる。
【0027】
本発明の薬学的組成物は、水中油乳濁液の形でも存在できる。油相は、例えば、オリーブ油またはラッカセイ油などの植物油または例えば、流動パラフィンなどの鉱物油またはそれらの混合物が可能である。適した乳化剤は、天然のホスファチド、例えば、大豆、レシチン、および脂肪酸とヘキシトール無水物に由来する、例えば、ソルビタンモノオレアートといったエステルまたは部分エステル、および例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートなどといったこの部分エステルとエチレンオキシドの縮合物が可能である。乳濁液は、甘味料および香味剤も含有できる。
【0028】
シロップおよびエリキシル剤は、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはスクロースなどの甘味剤と配合することができる。そのような配合物は、粘滑薬、保存料、香味剤、および着色剤も含有できる。薬学的組成物は、滅菌した注射用水性もしくは油性(oleagenous)懸濁液の形であることができる。この懸濁液は、すでに上記に記載している適した分散または湿潤剤および懸濁剤を用いて、当該分野に従って配合できる。滅菌注射用製剤は、例えば、1,3−ブタンジオールの溶液として無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒の滅菌注射用液または懸濁液であってもよい。許容されるビヒクルおよび溶媒のなかで、用いることができるものは、水、リンガー溶液、および等張塩化ナトリウム溶液である。エタノール、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなどの共溶媒も用いることができる。また、滅菌した不揮発性油が、溶媒または懸濁媒として従来から用いられている。この目的で、合成モノまたはジグリセリドをはじめとする任意の混合不揮発性油を用いることができる。また、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製に用途を見出す。
【0029】
化合物Aは、薬物の直腸投与用坐剤の形でも投与できる。こうした組成物は、薬物を適した無刺激賦形剤と混合することで調製することができ、無刺激賦形剤とは周辺温度では固体であるが直腸温度では液体になり、したがって直腸で溶融して薬物を放出できるものである。そのような材料は、カカオバターおよびポリエチレングリコールである。
【0030】
外用として、化合物Aを含有するクリーム、軟膏、ゲル、溶液、または懸濁液などが用いられる。(この用途を目的とする場合、外用は洗口液およびうがい薬を含むはずである。)外用配合物は、通常、薬学的キャリア、共溶媒、乳化剤、浸透促進剤、保存系、および皮膚軟化薬で構成することができる。
【0031】
他の薬物との組合せ
プロスタグランジン介在性疾患の治療および予防のため、化合物Aを他の治療薬と同時投与することができる。したがって、別の態様において、本発明は、治療上有効量の化合物Aおよび1種以上の他の治療薬を含むプロスタグランジン介在性疾患を治療するための薬学的組成物を提供する。化合物Aとの併用療法に適した治療薬として以下が挙げられる。(1)S−5751などのDP受容体アンタゴニスト、(2)トリアムシノロンアセトニドなどのコルチコステロイド、(3)サルメテロール、ホルモテロール、テルブタリン、メタプロテレノール、アルブテロールなどのβ−アゴニスト、(4)モンテルカスト、ザフィルルカスト、プランルカストなどのロイコトリエン受容体アンタゴニストをはじめとするロイコトリエン修飾因子、または5−リポオキシゲナーゼインヒビターおよびジロートンなどのFLAP(5−リポオキシゲナーゼ活性化タンパク質)インヒビターをはじめとするリポオキシゲナーゼインヒビター、(5)ブロンフェニラミン(bromopheniramine)、クロルフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、トリプロリジン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、トリペレナミン、ヒドロキシジン、メトジラジン、プロメタジン、トリメプラジン、アザタジン、シプロヘプタジン、アンタゾリン、フェニラミンピリラミン、アステミゾール、テルフェナジン、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、デスカルボエトキシロラタジン(descarboethoxyloratadine)などの抗ヒスタミン薬、(6)フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン(pseudophedrine)、オキシメタゾリン、エピネフリン(ephinephrine)、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、またはレボ−デスオキシエフェドリンなどのうっ血除去薬、(7)コデイン、ヒドロコドン、カラミフェン、カルベタペンタン、またはデキストロメトロファン(dextramethorphan)などの鎮咳薬、(8)ラタノプロスト、ミソプロストール、エンプロスチル、リオプロスチル、オルノプロスチル(ornoprostol)またはロサプロストルなどのプロスタグランジンFアゴニストをはじめとする別のプロスタグランジンリガンド、(9)利尿薬、(10)例えばプロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシン酸(bucloxic acid)、カプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン(miroprofen)、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、およびチオキサプロフェンなど)、酢酸誘導体(インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロジン酸(fenclozic acid)、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナク、イソキセパック、オクスピナク(oxpinac)、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシン、およびゾメピラク)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルミン酸、およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(ジフルニサルおよびフルフェニサル(flufenisal))、オキシカム(イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカム(sudoxicam)およびテノキシカム(tenoxican))、サリチル酸エステル(アセチルサリチル酸、スルファサラジン)、およびピラゾロン(アパゾン、ベズピペリロン(bezpiperylon)、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン)などの非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、(11)セレコキシブおよびロフェコキシブなどのシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、(12)例えばAriflo、ロフルミラストなどのホスホジエステラーゼIV型(PDE−IV)阻害剤、(13)ケモカイン受容体、特にCCR−1、CCR−2、およびCCR−3のアンタゴニスト、(14)コレステロール降下剤、例えばHMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、およびその他のスタチン類)、捕捉剤(コレスチラミンおよびコレスチポール)、ニコチン酸、フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート(clofibrat)、フェノフィブラート、およびベザフィブラート(benzafibrate)など)、およびプロブコールなど、(15)抗糖尿病剤、例えばインシュリン、スルホニル尿素、ビグアナイド(メトホルミン)、α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース)、およびグリタゾン(トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、ロシグリタゾンなど)、(16)インターフェロンβ製剤(インターフェロンβ−1a、インターフェロンβ−1b)、(17)抗コリン剤、例えばムスカリンアンタゴニスト(臭化イプラトロピウムおよび臭化チオトロピウム)、ならびに選択的ムスカリンM3アンタゴニスト、(18)ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン、およびヒドロコルチゾンなどのステロイド、(19)スマトリプタン(sumitriptan)およびリザトリプタンなどの片頭痛の治療に一般的に用いられるトリプタン、(20)アレンドロネートおよびその他の骨粗鬆症治療薬、(21)5−アミノサリチル酸などのその他の化合物およびそのプロドラッグ、アザチオプリンおよび6−メルカプトプリンなどの代謝拮抗剤、細胞傷害性癌化学療法薬、FK−3657などのブラジキニン(BK2)アンタゴニスト、セラトロダストなどのTP受容体アンタゴニスト、ニューロキニンアンタゴニスト(NK1/NK2)、米国特許第5,510,332号、WO97/03094、WO97/02289、WO96/40781、WO96/22966、WO96/20216、WO96/01644、WO96/06108、WO95/15973、およびWO96/31206などに記載されるVLA−4アンタゴニスト。また、本発明は、プロスタグランジンD介在性疾患の治療法を包含し、この方法はそのような治療を必要としている患者に、無毒な治療上有効量の化合物Aを、場合によって直前に列挙したような成分1種以上と同時に投与することを含む。
【0032】
化合物Aの合成法:
化合物Aは、適切な材料を使って、以下のスキームおよび実施例の手順に従って調製することができ、以下の具体的な例でさらに説明される。しかしながら、以下の具体的な例に示される化合物は、本発明であるとみなされる唯一の属を形成するものとは解釈されない。実施例は、本発明の化合物の調製の詳細をさらに例示する。当業者は、以下の調製手順の保護基、試薬、ならびに条件およびプロセスの既知の変異形を用いてこれらの化合物を調製することができると容易に理解するだろう。化学試薬(イソシアナート、ボロン酸、またはボロナートなど)が市販されていない場合でも、そうした化学試薬は文献に記載される多数の方法の1つに従って容易に調製できることも理解される。温度は全て特に記載がないかぎり、摂氏度である。質量スペクトル(MS)は、エレクトロスプレーイオン質量分析(ESMS)または大気圧化学イオン化質量分析(APCI)で測定した。
【0033】
略称の一覧:
Alk=アルキル、APCI=大気圧化学イオン化、Ar=アリール、ATA−117=アミン−トランスアミナーゼ−117、Boc=tert−ブトキシカルボニル、CHCl=ジクロロメタン、br=幅広い、Cbz=ベンジルオキシカルボニル、d=二重項、DIPEA=N,N−ジイソプロピルエチルアミン、DMAP=4−ジメチルアミノピリジン、DMF=N,N−ジメチルホルムアミド、DMSO=ジメチルスルホキシド、ESI=エレクトロスプレーイオン化、EtOAc=酢酸エチル、EtO=エチルエーテル、FDH=葉酸デヒドロゲナーゼ、h=時間(単数または複数)、Hex=ヘキサン、HOAc=酢酸、KOH=水酸化カリウム、LC−MS=液体クロマトグラフィー−質量分析、LDH=乳酸デヒドロゲナーゼ、LiOH=水酸化リチウム、m=多重項、MeOH=メチルアルコール、min=分、MgSO=硫酸マグネシウム、MnO=酸化マンガン、MS=質量分析、MTBE=メチルtert−ブチルエーテル、NaBH=水素化ホウ素ナトリウム、NaSO=硫酸ナトリウム、Na=チオ硫酸ナトリウム、NAD=ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、NaH=水素化ナトリウム、NaHCO=重炭酸ナトリウム、NHCl=塩化アンモニウム、NHOAc=酢酸アンモニウム、NMR=核磁気共鳴分光法、NMM=N−メチルモルホリン、PG=保護基、PPTS=ピリジニウムpara−トルエンスルホナート、rt=室温、s=一重項、t=三重項、SOCl=塩化チオニル、TBAF=テトラブチルアンモニウムフルオリド、TBSCl=tert−ブチルジメチルシリルクロリド、THF=テトラヒドロフラン、TFA=トリフルオロ酢酸、TLC=薄層クロマトグラフィー、TMSCl=クロロトリメチルシラン、TsCl=p−トルエンスルホニルクロリド。
【0034】
方法A(スキーム1):
市販されているエチルインドール−2−カルボキシラート1をLiAlHで処理し、続いてMnOで酸化して、インドール−2−カルボキシアルデヒド2に変換する。エチル(トリフェニルホスホラニリデン)アセタートなどのホスホランを用いたウィッティッヒ反応により2からα,β−不飽和エステル3を得て、この3を、t−ブチルブロモアセタートおよび炭酸セシウムなどの塩基でアルキル化して、ジエステル4を得る。4の水素化により、対応するジエステル5とする。5をカリウムtert−ブトキシドなどの塩基で処理して環状β−ケトエステル6を得る。6をトルエン中、シリカゲルの存在下で還流することで、脱炭酸することができ、これにより三環ケトン7が得られる。ケトン7をNaBHで還元してアルコール8とし、この8は、メシラート化、続いてアジ化ナトリウムで置換することによりアジド9に変換できる。9を水素化条件下で還元して対応するアミン10を得る。このアミンを、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、4−フルオロフェニルスルホニルクロリドで処理して、アリールスルホンアミド11とする。この11は、水素化ナトリウムなどの塩基で処理し、続いてヨウ化メチルで処理することでN−メチル化して、N−メチルアリールスルホンアミド12を得ることができる。12をオキサリルクロリドと反応させ、続いてメタノールでエステル化して、α−ケトエステル13とする。NaBHでの13のケトン基の還元により対応するα−ヒドロキシエステル14を得る。14の脱酸素は、TFA中EtSiHで処理するか、またはアセトニトリル中TMSClおよびヨウ化ナトリウムと反応させることにより達成でき、対応するインドール酢酸エステル15が得られる。ラセミ体の15は、キラルHPLC分離により2つの純粋な鏡像異性体に分割することができ、続いて水性塩基中、R配置の鏡像異性体を加水分解することで最終生成物、鏡像異性体として純粋な16を得る。
【0035】
スキーム1
【化3】

【0036】
方法B(スキーム2):
標準的なキラルHPLC技法を用いるラセミ体のスルホンアミド12の分割により、鏡像異性体として純粋なスルホンアミド(R)−12が得られる。所望の生成物16は、方法1に記載の工程に従って、(R)−12から調製することができる。
【0037】
スキーム2
【化4】

【0038】
方法C(スキーム3):
フェニルヒドラジン塩酸塩とジエチル4−オキソピメラートのディーンスターク縮合により17ができ、これは、乾燥塩化水素またはメタンスルホン酸などの酸を用いてインドール18に変換することができる。水酸化カリウムで18を選択的鹸化し、モノ酸19とする。N−メチルモルホリンなどの塩基の存在下、19とクロロギ酸エステルとを反応させ、続いて過剰のジアゾメタンで処理することで、対応するジアゾメチルケトン20が得られる。ロジウム触媒を用いてジアゾケトン20にカルベンを挿入し、三環ケトン21とする。21からキラルアミン22への変換は、アラニンなどアミノ酸を補給したトランスアミナーゼ、補因子を用い、デヒドロゲナーゼ触媒系と組み合わせて、触媒的に達成することができる。塩基の存在下でのキラルアミン22と4−フルオロベンゼンスルホニルクロリドとのカップリングにより、スルホンアミド23が得られる。23のN−メチル化は、ヨウ化メチルを水素化ナトリウムまたはCsCOなどの塩基と組み合わせて用いることで達成され、24が得られる。水性塩基中、エステル24を加水分解して、所望のキラル酸16とする。
【0039】
スキーム3
【化5】

【0040】
方法D(スキーム4):
D−アスパラギン酸を、メタノール中、塩化チオニルでエステル化し、続いて4−フルオロフェニルスルホニルクロリドで処理して、ジエステル25とし、これをNaBHで還元して対応するジオール26とすることができる。アジリジン形成は、Wenker合成のMistunobu変異形態により達成することができ、26をホスフィンおよび1,1’−アゾジカルボニル化合物で処理して27とする。続いてアルコール部分をTBSClで保護することで、アジリジン化合物28が得られる。当然、以下の反応の順序に適合するTBSエーテル以外の保護基を代わりに用いることができるだろう。インドール酢酸29は、簡単にエステル化してメチルエステル30とすることができる。30を水素化ナトリウムなどの塩基で処理し、続いてアジリジン28、次にヨウ化メチルと反応させることで31とする。フルオリドアニオンでシリルエーテル保護基を外すことにより、アルコール32が得られる。または、32は、粗31を水性酸で処理すれば、30から直接得ることができる。アルコール部分の酸化は、スワン酸化により、またはデス−マーチンペルヨージナンを用いて達成することができ、得られるアルデヒドを酸触媒による環化反応にかけて、不飽和三環インドール33を得ることができる。33の水素化により34とし、これを鹸化して所望のインドール酸16とする。
【0041】
スキーム4
【化6】

【0042】
(+){7R−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}酢酸
【化7】

【0043】
方法A
工程1:1H−インドール−2−カルバルデヒド
エチルインドール−2−カルボキシラートをTHFに加えた溶液(0.5M)を−78℃にして、これにLiAlH1.04当量を、1MのTHF溶液として加えた。反応物を0℃に昇温しながら1時間撹拌し、次いでHCl5当量を、4N水溶液として、ゆっくりと加え、続けて同量の水を加えてクエンチした。反応混合物を過剰のEtOAc/Hex(1:1)で2回抽出し、有機層を1つにまとめてNaSOで脱水した。ろ過し、揮発物をエバポレートして、粗アルコールを得、これをCHCl(0.1M)に溶解して、MnOの11当量で処理した。2時間撹拌後、混合物をセライトろ過し、ろ液をさらに精製することなく次の工程に用いた。
【0044】
工程2:エチル(2E)−3−(1H−インドール−2−イル)アクリラート
工程1からの1H−インドール−2−カルバルデヒドのCHCl溶液に、エチル(トリフェニルホスホラニリデン)アセタート1当量を加えた。12時間撹拌後、反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにかけ1:1EtOAc/Hexで溶出させて精製し、表題化合物を黄色固体として得た(エチルインドール−2−カルボキシラートから88%)。
【0045】
工程3:エチル(2E)−3−[1−(2−tert−ブトキシ−2−オキソエチル)−1H−インドール−2−イル]アクリラート
工程2からのエチル(2E)−3−(1H−インドール−2−イル)アクリラートをDMFに加えた0.1M溶液に、BrCHCO−t−Bu1.4当量およびCsCO2.1当量を加えた。反応混合物を60℃で24時間撹拌し、次いでアセトン同量で希釈してろ過した。ろ液を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにかけてEtOAc/Hex(1:2)で溶出させ、表題化合物(98%)をシロップ状物として得た。
【0046】
工程4:エチル3−[1−(2−tert−ブトキシ−2−オキソエチル)−1H−インドール−2−イル]プロパノアート
工程3からのエチル(2E)−3−[1−(2−tert−ブトキシ−2−オキソエチル)−1H−インドール−2−イル]アクリラートをEtOAcに加え(0.08M)、これに10%パラジウム担持炭素(基質1gあたり50mg)を加えた。反応混合物を水素で数回フラッシュし、次いで、室温で、水素1気圧下で一晩撹拌した。反応混合物をCHCl(2mL/g)で希釈し、セライトろ過した。ろ液を濃縮乾固して粗表題化合物(100%)を得、これをさらに精製することなく次の工程に用いた。
【0047】
工程5:tert−ブチル7−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−6−カルボキシラート
工程4からのエチル3−[1−(2−tert−ブトキシ−2−オキソエチル)−1H−インドール−2−イル]プロパノアートをTHFに加えた溶液(0.06M)を−10℃で撹拌しながら、これに1Mのカリウムtert−ブトキシド(2.5当量)を滴下した。反応混合物を1時間かけて室温まで昇温し、次いで室温で一晩撹拌した。反応混合物を塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、過剰のEtOAc(2回)で抽出した。有機層を1つにまとめてブラインで洗い、MgSOで脱水し、ろ過し、減圧濃縮して、粗表題化合物を暗色油状物として得た(92%)。この物質をさらに精製することなく次の工程に用いた。
【0048】
工程6:8,9−ジヒドロピリド[1,2−a]インドール−7(6H)−オン
工程5からの粗tert−ブチル7−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−6−カルボキシラートをトルエンに加えた溶液(0.06M)をシリカゲル(基質1gあたり5g)で処理し、混合物を6時間加熱還流した。冷却後、混合物をろ過し、ケーキをEtOAcで洗って、有機層を1つにまとめて減圧濃縮し、粗表題化合物を褐色固体として得た(82%)。この材料をさらに精製することなく次の工程に用いた。
【0049】
工程7:(+/−)6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−7−オール
工程6からの8,9−ジヒドロピリド[1,2−a]インドール−7(6H)−オンをMeOHに加えた溶液(0.3M)を冷却し(0℃)、これにNaBH(1当量)を少しずつ加えた。0℃で1時間撹拌後、反応混合物を飽和NHCl水溶液同量に注ぎ、EtOAcで抽出(2回)した。有機層を1つにまとめ、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、CombiFlashRF(Teledyne ISCO)を用いてEtOAc/Hex(10:90から60:40へ)で溶出させて、表題化合物を黄色固体として得た(98%)。
【0050】
工程8:(+/−)7−アジド−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール
工程7からの(+/−)6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−7−オールをCHClに加えた溶液(0.2M)を−40℃で撹拌しながら、これにトリエチルアミン(1.2当量)、続いてメタンスルホニルクロリド(1.1当量)を加えた。反応混合物を−40℃で30分間撹拌し、次いで炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、CHCl(2回)で抽出した。有機層を1つにまとめ、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、減圧濃縮して粗メタンスルホンアミドを褐色油状物として得た(91%)。この粗物質を、DMF(0.2M)に溶解し、アジ化ナトリウム(4.5当量)を加えた。反応液を60℃で一晩撹拌し、次いで室温に冷却し、水に注いで、1:1のEtOAc−Hex(2回)で抽出した。有機層を1つにまとめ、水(2回)、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルの短いパッドにかけて、EtOAc/Hex(10:90から30:70へ)で溶出させて精製し、表題化合物を明褐色固体として得た(75%)。
【0051】
工程9:(+/−)6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−7−アミン
工程8からの(+/−)7−アジド−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドールをMeOHに加えた溶液(0.1M)に、10%パラジウム担持炭素(基質1gあたり200mg)を加えた。反応混合物を水素で数回フラッシュし、次いで、室温で、水素1気圧下で一晩撹拌した。反応液をCHClで希釈し、セライトろ過した。ケーキをEtOAcで洗い、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、CHCl/MeOH/NHOH(100:0:0から89:10:01へ)で溶出させて精製し、表題化合物を褐色ガム状物として得た(81%)。
【0052】
工程10:(+/−)4−フルオロ−N−(6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−7−イル)ベンゼンスルホンアミド
工程9からの(+/−)6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−7−アミンをCHClに加えた溶液(0.14M)を室温で撹拌しながら、これに4−フルオロベンゼンスルホニルクロリド(1.2当量)、トリエチルアミン(5当量)、およびDMAP(0.03当量)を加えた。反応液を室温で2時間撹拌した。反応混合物をNaHCO水溶液に注ぎ、ジクロロメタン(2回)で抽出した。有機層を1つにまとめ、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、CombiFlashRF(Teledyne ISCO)を用いてEtOAc/Hex(0:100から15分間で50:50へ、次いで5分間50:50にて)で溶出させて精製し、表題化合物を明黄色発泡物として得た(78%)。
【0053】
工程11:(+/−)4−フルオロ−N−メチル−N−(6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−7−イル)ベンゼンスルホンアミド
工程10からの(+/−)4−フルオロ−N−(6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−7−イル)ベンゼンスルホンアミドをDMFに加えた溶液(0.2M)を0℃にし、これにNaH(1.1当量)を加えた。混合物を30分間撹拌した。ヨウ化メチル(1.25当量)を加え、反応物を室温でさらに1時間撹拌した。混合物をNHCl水溶液に注ぎ、EtOAc(2回)で抽出した。有機層を1つにまとめ、水(2回)、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、減圧濃縮して粗表題化合物を黄色固体(96%)として得た。これをさらに精製することなく次の工程に用いた。純粋な化合物は、2:1Hex/EtOAcに懸濁させろ過する(swish)ことで得られる。
【0054】
工程12:(+/−)メチル{7−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}(オキソ)アセタート
工程11からの(+/−)4−フルオロ−N−メチル−N−(6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−7−イル)ベンゼンスルホンアミドをCHClに加えた溶液(0.1M)を0℃にし、これにオキサリルクロリド(2当量)を加え、混合物を0℃で1時間撹拌した。MeOH(20当量)を加え、得られる混合物を室温で1時間撹拌し、次いでNaHCO水溶液に注いでCHCl(2回)で抽出した。有機層を1つにまとめ、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、減圧濃縮して粗表題化合物を黄色固体(100%)として得た。この生成物は、そのまま次の工程に用いた。
【0055】
工程13:(+/−)メチル{7−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}(ヒドロキシ)アセタート
工程12からの(+/−)メチル{7−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}(オキソ)アセタートをTHFに加えた懸濁液(0.1M)を0℃で撹拌しながら、これにNaBH(1当量)を加え、続いてMeOH(2.5当量)を加えた。氷浴を外して、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応液をNHCl/1NのHCl水溶液に注ぎ、EtOAc(2回)で抽出した。有機層を1つにまとめ、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、CombiFlashRF(Teledyne ISCO)を用いてEtOAc/Hex(0:100から70:30へ)で溶出させて精製し、所望の物質を発泡物として得た(85%)。
【0056】
工程14:(+/−)メチル{7−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}アセタート
ヨウ化ナトリウム(7当量)をアセトニトリルに加えた懸濁液(2M)を室温で撹拌しながら、これにTMSCl(7当量)を滴下した。反応混合物を室温で15分間撹拌した。工程13からの(+/−)メチル{7−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]−インドール−10−イル}(ヒドロキシ)アセタートを1:1のEtOおよびアセトニトリルに加えた溶液を加え(実質的な最終濃度=0.15M)、反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物をNaHCO水溶液およびNa水溶液に注ぎ、EtOAc(2回)で抽出した。有機層を1つにまとめ、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、CombiFlashRF(Teledyne ISCO)を用いてEtOAc/Hex(0:100から40:60へ)で溶出させて精製し、表題化合物を明黄色発泡物として得た(87%)。
【0057】
工程15:(+){7R−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}酢酸
工程14で得られたメチル(+/−){7−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}アセタートを、ChiralpakADカラムを用いてキラルHPLCにかけ、20%EtOH/20%iPrOH/60%Hexの混合物で溶出させて分割し、先に溶出する異性体(>99%ee)と後から溶出する異性体(>99%ee)を同量で得た。後から溶出する異性体のH NMR(400MHz,アセトン−d6):δ8.10−8.05(m,2H),7.51−7.40(m,3H),7.26(d,1H),7.14−7.01(m,2H),4.58−4.48(m,1H),4.19(dd,1H),3.87(t,1H),3.70−3.60(m,2H),3.60(s,3H),3.18−3.08(m,1H),2.96(s,3H),2.90−2.78(m,1H),1.97−1.84(m,1H),1.74−1.65(m,1H)。後から溶出する異性体を室温でTHFとMeOHに溶解させ(2:1、0.07M)、2MのLiOH水溶液を加えた(5当量)。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物をホスフェート緩衝液(pH2)に注ぎ、EtOAc(2回)で抽出した。有機層を1つにまとめ、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、EtOAc/Hex+酢酸(50:50+1%)で溶出させて精製し、表題化合物をベージュ色固体として得た(100%)。H NMR(400MHz,アセトン−d6):δ8.13−8.07(m,2H),7.53−7.42(m,3H),7.26(d,1H),7.13−7.02(m,2H),4.56−4.49(m,1H),4.20(dd,1H),3.96−3.86(m,1H),3.69−3.57(m,2H),3.20−3.10(m,1H),2.98(s,3H),2.90−2.72(m,1H),2.00−1.89(m,1H),1.75−1.68(m,1H)。MS(−ESI):414.7。旋光度α23:+62.0(C=0.5、アセトン)。
【0058】
方法B
(+/−)4−フルオロ−N−((7R)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−7−イル)ベンゼンスルホンアミド
方法1、工程10からのラセミ体4−フルオロ−N−(6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−7−イル)ベンゼンスルホンアミドを、ChiralpakADカラムを用いてキラルHPLCにかけ、30%MeOH/20%EtOH/20%i−PrOH/30%Hexに0.25%EtNを足して溶出させて分割し、先に溶出する異性体(>99%ee)と後から溶出する異性体(>99%ee)を同量で得た。後から溶出する異性体のH NMR(400MHz,アセトン−d6):δ8.10−8.04(m,2H),7.46−7.38(m,3H),7.19(d,1H),7.09−6.96(m,2H),6.14(s,1H),4.21(dd,1H),4.01−3.93(m,1H),3.83(dd,1H),3.10−3.04(m,1H),2.97−2.87(m,1H),2.04−1.88(m,2H)。この物質を、方法1の工程11から15に従って、(+){7R−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}酢酸に変換した。
【0059】
方法C
工程1:エチル3−(6−オキソ−1−フェニル−1,4,5,6−テトラヒドロピリダジン−3−イル)プロパノアート
ディーンスターク管を備えた3つ口フラスコ中、フェニルヒドラジン塩酸塩およびジエチル4−オキソヘプタンジオアート(1当量)をトルエンに加えた(1.15M)。懸濁液を48時間還流撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧濃縮して、所望の物質を褐色油状物として得、これはそのまま次の工程に用いた。
【0060】
工程2:プロピル3−[3−(2−オキソ−2−プロポキシエチル)−1H−インドール−2−イル]プロパノアート
工程1からのエチル3−(6−オキソ−1−フェニル−1,4,5,6−テトラヒドロピリダジン−3−イル)プロパノアートをn−プロパノールに加えた溶液(1.1M)を撹拌しながら、これにメタンスルホン酸(1.15当量)を加えた。混合物を80℃で一晩撹拌した。混合物を室温まで冷却し、1NのNaOH水溶液(1当量)で中和した。最終混合物を減圧濃縮し、トルエンで希釈し、再び濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、CombiFlashRF(Teledyne ISCO)を用いてEtOAc/Hex(0:100から60:40へ)で溶出させて精製し、表題化合物を褐色油状物として得た(79%)。
【0061】
工程3:3−[3−(2−オキソ−2−プロポキシエチル)−1H−インドール−2−イル]プロパン酸
工程1からのプロピル3−[3−(2−オキソ−2−プロポキシエチル)−1H−インドール−2−イル]プロパノアートをn−プロパノールに加えた溶液(0.5M)を撹拌しながら、これに8NのKOH水溶液(1.05当量)を加えた。混合物を50℃で4時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸(1.2当量)でクエンチし、濃縮した。残渣をシリカゲルパッドにかけ、CHCl、次いでCHCl/EtOAc(9:1)、最後にCHCl/EtOAc/MeOH(88:10:2)を用いて精製し、揮発分をエバポレートして、所望の物質を黄色油状物として得た(68%)。
【0062】
工程4:プロピル[2−(4−ジアゾ−3−オキソブチル)−1H−インドール−3−イル]アセタート
工程3からの3−[3−(2−オキソ−2−プロポキシエチル)−1H−インドール−2−イル]プロパン酸とクロロギ酸エチル(1.11当量)をTHFに加えた混合物(0.4M)を0℃に冷却して撹拌しながら、これに1時間かけてN−メチルモルホリン(1.1当量)を滴下した。添加中の反応温度は細かく確認し、+2℃を超えないようにした。混合物を0℃でさらに30分間撹拌した。白色沈殿がすぐに生じた。ジアゾメタン(0.3MのEtO液、1.8当量)を加え、最終混合物を0℃で2時間撹拌した。混合物をろ過し、上清を減圧濃縮した(このときAcOHを減圧トラップに入れ過剰のジアゾメタンをクエンチした)。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、CombiFlashRF(Teledyne ISCO)を用いてEtOAc/Hex(10:90から60:40へ)で溶出させて精製し、表題化合物を黄色固体として得た(63%)。
【0063】
工程5:プロピル(7−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル)アセタート
工程4からのプロピル[2−(4−ジアゾ−3−オキソブチル)−1H−インドール−3−イル]アセタートをCHClに加えた溶液(0.02M)に、オクタン酸ロジウム(II)二量体(0.1当量)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いで濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、CombiFlashRF(Teledyne ISCO)を用いてEtOAc/Hex(2:98から10:90へ)で溶出させて精製し、表題化合物を黄色固体として得た(64%)。
【0064】
工程6:プロピル([7R]−7−アミノ−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル)アセタート
D−アラニン(38当量)の水溶液に、リン酸二ナトリウム(3.8当量)およびギ酸ナトリウム(266当量)を加えた。pHを測定すると7.6であった。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(0.04当量)、ピリドキサール−5−ホスフェート(0.11当量)、乳酸デヒドロゲナーゼ(1当量)、葉酸デヒドロゲナーゼ(1当量)、およびアミン−トランスアミナーゼ−117(1当量)を、撹拌しながら加え、ゆっくりと溶解させた。pHを測定すると7.3であった。混合物を22℃で1時間熟成した。フラスコを窒素でフラッシュし、工程5からのプロピル(7−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル)アセタートをDMSO(0.06M)溶液として加えた。反応物をpH7.2に調整し、窒素雰囲気下30℃で一晩熟成した。反応の完了をHPLCで確認し、反応物のpHを6NのHClでpH4.0に調整してセライト(1Lあたり20g)を加えた。1時間撹拌後、反応物をセライトろ過し、ろ過ケーキを0.1NのHClで2回洗った。水性ろ液を1つにまとめて、1倍体積のMTBEで抽出した。有機層にはアミンが含まれてなかったので廃棄した。水層を同量のMTBEで希釈し、混合物のpHを5NのNaOHを用いてpH9.5に調整した。2つの層を分離し、水層をMTBEで抽出した。抽出済み水層には検出可能なアミンはなかったので廃棄した。有機層を1つにまとめ、希釈した炭酸ナトリウムで洗い、Na2SOで脱水した。揮発物をエバポレートして粗表題化合物を得た(80%)。SFCアッセイで求めたeeは99%であった。SFC条件は、以下のとおり:ADHカラム(250×4.6mm、5um)、定組成の20%MeOH、25mMイソプロピルアミン/CO2、2ml/分、35℃、200bar、215nm、15分。これらの条件下、所望のR−アミンは8.99分の保持時間を有する(S−アミン;5.82分)
工程7:プロピル{(7R)−7−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}アセタート
工程6からのプロピル([7R]−7−アミノ−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル)アセタートをCHClに加えた溶液(0.2M)に、4−フルオロベンゼンスルホニルクロリド(1.1当量)を加え、続いてトリエチルアミン(3当量)およびDMAP(1当量)を加えた。反応液を室温で12時間撹拌した。混合物を減圧濃縮し、EtOAcで希釈し、NaHCO水溶液、水、および最後にブラインで洗った。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、CombiFlashRF(Teledyne ISCO)を用いてEtOAc/Hex(10:90から50:50へ)で溶出させて精製し、表題化合物を無色発泡物として得た(97%)。
【0065】
工程8:プロピル{(7R)−7−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}アセタート
工程7からのプロピル{(7R)−7−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}アセタートをDMFに加えた溶液(0.14M)を0℃にし、これに水素化ナトリウム(1.05当量)を加え、混合物を0℃で30分間撹拌した。ヨードメタン(3当量)を加え、反応物を0℃で2時間撹拌した。混合物をNHCl水溶液に注ぎ、EtO(2回)で抽出した。有機抽出物を1つにまとめ、水(3回)、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、CombiFlashRF(Teledyne ISCO)を用いてEtOAc/Hex(5:95から50:50へ)で溶出させて精製し、表題化合物を無色油状物として得た(98%)。
【0066】
工程9:(+){7R−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}酢酸
工程8からのプロピル{(7R)−7−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}酢酸を、イソプロパノールとTHFの2:1混合物に溶解させた(0.06M)。1NのLiOH水溶液(3当量)を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を減圧濃縮し、1NのHClに注ぎ、EtOAcで抽出(2回)した。有機層を1つにまとめ、水、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、ろ過し、減圧濃縮して表題化合物を得た(96%)。この物質を、還流EtOAcから再結晶させ、ろ過し、空気流下で乾燥させて、HPLCによれば99.7%純粋である所望の物質を得た。ジアゾメタンを用いて対応するメチルエステル少量を調製し、それを方法Aの工程15に記載されるとおりに分析して、不斉収率(ee)を求めた。eeは、99%であることがわかった。これは工程6のキラルアミンから一連の最後の3つの工程の間にラセミ化が生じなかったことを示している。
【0067】
方法D
工程1:ジメチル(2R)−2−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アミノ}スクシナート
アスパラギン酸ジメチル−HCl塩(1当量)と4−F−ベンゼンスルホニルクロリド(1.1当量)をTHF(4ml/g)に加えた混合物に、トリエチルアミン(3.1当量)を加え、反応物を一晩撹拌した。懸濁液をろ過し、1MのHClでクエンチした。相を分離して、水層をMTBEで逆抽出した。有機相を1つにまとめて、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、減圧濃縮して、所望の物質を明黄色油状物として得た(93%)。
【0068】
工程2:4−フルオロ−N−[(1R)−3−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]ベンゼンスルホンアミド
工程1からのジメチル(2R)−2−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アミノ}スクシナート(1当量)をEtOH(10mL/g)に加えた溶液を冷却し(0℃)、これにNaBH(5当量)を3回に分けて加え、反応物を室温で一晩撹拌した。反応物をブライン(5mL/g)でクエンチし、ろ過した。固体をEtOAc(10mL/g)に懸濁した。母液を減圧濃縮し、NaClで飽和させた。次いでEtOAc懸濁液をろ過した。このろ過の母液を用いて水層を抽出した。水層をEtOAcで2回抽出した。有機相を1つにまとめて、ブラインで洗い、MgSOで脱水し、減圧濃縮した。粗生成物をアセトンに溶解し(5mL/g)ホウ素塩を全て砕いてsolkaflocでろ過し、エバポレートして所望の物質を得た(60%)。
【0069】
工程3:2−{(2R)−1−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アジリジン−2−イル}エタノール
工程2からの4−フルオロ−N−[(1R)−3−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]ベンゼンスルホンアミド(1当量)をTHF(20mL/g)に加えた溶液に、アゾジカルボン酸ジピペリジド(1当量)を加え、続いてtri−n−ブチルホスフィン(1当量)を30分かけて滴下した。反応物を30分間撹拌し、次いでろ過した。ろ液をTHFおよびHO(5mL/g)で洗い、次いで得られる溶液に加えて1時間撹拌した。NaClを加えて、水層と有機層を分離させた。層を分け、有機層をブラインで洗い、MgSOで脱水し、減圧濃縮した。粗生成物をMTBEに入れて溶解分を溶解させ、ろ過した。得られる溶液を濃縮しEtOAc/Hex(1:1)に入れて溶解分を溶解させ、ろ過した。次いで得られる溶液を濃縮しカラムクロマトグラフィーにかけてEtOAc/Hexを25−75%で用いて精製して、所望の物質を明黄色油状物として得た(77%)。
【0070】
工程4:(2R)−2−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−1−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アジリジン
工程3からの2−{(2R)−1−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アジリジン−2−イル}エタノールをTHFに溶解させ(0.2M)、これにTBSCl(1.1当量)、続いてイミダゾール(2.2当量)を加えた。反応液を室温で1時間撹拌し、ろ過し、固体をMTBEで洗った。有機相を1つにまとめ、1MのHCl(2回)、ブライン(2回)で洗い、MgSOで脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにかけ、EtOAc/Hex(1:9)で溶出させて精製し、表題化合物を白色固体として得た(85%)。
【0071】
工程5:メチル1H−インドール−3−イルアセタート
1H−インドール−3−イル酢酸のMeOH溶液(1M)に、濃硫酸(0.2当量)を注意して加え、反応物を室温で2.5時間撹拌した。溶液を氷浴で冷却し、2NのNaOH水溶液(0.18当量)をT<10℃であるようにゆっくりと加えた。溶液を水で希釈し、次いで固体のKCOをpHが中性になるまで加えた。溶液をMTBE(2回)で抽出し、水(2回)、ブラインで洗い、NaSOで脱水し、ろ過し、濃縮して、褐色シロップ状物を得た。粗シロップ状物をMTBEに溶解させ(1.4mL/g)、温度プローブ、機械撹拌器、滴下ロート、および窒素導入管を備えた3つ口フラスコに移した。次いで、撹拌した溶液に1時間かけてHexをゆっくりと加えた。さらにHexを2時間かけて追加し、次いで一晩放置した。懸濁液をろ過し、Hexで洗い、ガラスフリット上、窒素下で20時間乾燥させ、表題化合物を明橙色固体として得た(81%)。
【0072】
工程6:メチル(1−{(2R)−2−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−4−ヒドロキシブチル}−1H−インドール−3−イル)アセタート
磁器撹拌子、窒素導入管、温度プローブ、および滴下ロートを備えた3つ口丸底フラスコに、水素化ナトリウム(2当量)およびDMFを投入した。混合物を0℃に冷却し、工程5からのメチル1H−インドール−3−イルアセタート(2当量)をDMFに加えた溶液(1M)を滴下した。滴下後、反応物を15分間撹拌し、その間に、工程4からの(2R)−2−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−1−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アジリジン(1当量)をDMFに加えた溶液(0.5M)を滴下した。反応物を1.5時間撹拌した。次いでヨウ化メチル(5当量)を反応物に加え、さらに1時間撹拌した。次いで、2MのHCl水溶液(7.2当量)を反応物に注意して加え、続いて同量のEtOAcを加え、撹拌を2時間続けた。溶液をEtOAcで希釈し、層を分離した。有機相を1/2飽和ブライン(2回)で洗い、NaSOで脱水し、ろ過し、濃縮して、橙色シロップ状物を得た。シロップ状物をMTBEで希釈すると、固体が生じだした。懸濁液を激しく撹拌し、その間にさらなるMTBEを15分かけて滴下した。懸濁液を0℃に冷却し、ヘプタンを滴下した。反応物を1時間撹拌し、ろ過した。固体ケーキをMTBE/ヘプタン(2:1)で洗い、ガラスフリット上、窒素下で、16時間乾燥させ、表題化合物を白色固体として得た(75%)。
【0073】
工程7:メチル{(7R)−7−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7−ジヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}アセタート
CHCl、オキサリルクロリド(0.54M、1.2当量)の溶液を−76℃に冷却した。次いでT<−60℃であるようにしてDMSO(2.5当量)を滴下した。混合物を30分間撹拌し、その間に工程6からのメチル(1−{(2R)−2−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−4−ヒドロキシブチル}−1H−インドール−3−イル)アセタートをCHCl溶液(0.3M)として加えた。反応物をさらに30分間撹拌した。次いでトリエチルアミン(4当量)を滴下し、反応物を室温まで昇温して2時間撹拌した。飽和NaHCOを加えて反応をクエンチした。層を分離し、水層をCHClで逆抽出(2回)した。有機相を1つにまとめて、ブラインで洗い、NaSOで脱水し、SiOプラグでろ過し、濃縮して黄色発泡物を得た。この粗アルデヒドをトルエン(0.25M)に溶解させ、温度プローブ、窒素導入管、還流冷却管、および機械撹拌器を備えた3つ口丸底フラスコに投入した。ピリジニウムp−トルエンスルホナート(0.2当量)を加え、反応物を60℃で16時間加熱した(アルミホイルで遮光した)。反応物を水で希釈し、EtOAcで抽出した。層を分離し、水層をEtOAcで逆抽出した。有機層を1つにまとめ、ブラインで洗い、NaSOで脱水し、ろ過し、濃縮して、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、自動勾配ポンプシステムCombiFlashRF(Teledyne ISCO)を用いてEtOAc/Hex(20:80から40:60へ)で溶出させて精製し、明黄色発泡物を得た。次いで、この明黄色発泡物をEtOAc(2mL/g)に溶解し、MTBE(5mL/g)をゆっくりと加え、次いでヘプタン(7mL/g)をゆっくりと加えることで懸濁させろ過して、表題化合物をオフホワイト色固体として得た(73%)。母液を濃縮し、再びフラッシュして精製して所望の化合物をさらに得た(7%)。
【0074】
工程8:メチル{(7R)−7−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}アセタート
工程7からのメチル{(7R)−7−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7−ジヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}アセタート(1当量)をEtOAcに加えた溶液(0.25M)に、10%Pd−C(20mg/mmol)を加え、フラスコを窒素で十分にパージした。黒色溶液を撹拌しながら、水素ガスでパージし、次いで遮光しながら水素1気圧下に放置した。反応物を24時間撹拌し、次いでCelite545プラグでろ過し、プラグをEtOAcで洗い(2回)、有機層を1つにまとめて減圧濃縮し、黄色発泡物を得た。シリカゲルのカラムクロマトグラフィーでCombiFlashRF(Teledyne ISCO)を用いてEtOAc/Hex(20:80から40:60へ)で溶出させて精製し、表題化合物を明黄色発泡物として得た(91%)。
【0075】
工程9:(+){7R−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}酢酸
工程8からのメチル{(7R)−7−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}アセタートをTHFに加えた溶液(0.45M)に、調製したばかりの1NのLiOH(3当量)をゆっくりと滴下した。反応液を室温で16時間撹拌し、次いで1MのHCl水溶液(10当量)を室温で1時間かけて滴下した。明緑色沈殿物をろ過し、1MのHClですすぎ、48時間乾燥させて、明緑色粉末を得た。この物質をEtOAc(2ml/g)に懸濁させ、激しく撹拌した。室温で、MTBE(2mL/g)を1時間かけて滴下した。懸濁液を2時間撹拌し、その間にヘプタン(6ml/g)を2時間かけてゆっくりと加えた。懸濁液をさらに2時間撹拌し、次いでろ過して、表題化合物を薄オフホワイト色固体として得た(96%)。方法A、工程15の特性決定を参照のこと。
【0076】
生物学的アッセイ
放射性リガンド結合アッセイ:放射性リガンド結合アッセイは、室温で、10mMのHEPES/KOH(pH7.4)、1mMのEDTA(10mMのMnClおよび0.7nMの[H]PGD(NEN、171Cimmol−1)含有)中、最終体積0.2mlで行なった。競合リガンドをジメチルスルホキシド(MeSO)で希釈した。希釈は、最終インキュベーション体積の1%(v/v)で一定に保った。HEK−hCRTH2細胞株から調製した膜タンパク質8〜20μgを添加して、反応を開始した。総合および非特異的結合をそれぞれ10μMのPGDの不在下および存在下で求めた。これらの条件下、放射性リガンドの受容体に対する特異的結合(総合−非特異的)は、50分以内に平衡に達し、180分まで安定であった。反応は、室温で60分間規定通りに行ない、Tomtec MachIII半自動ハーベスター(HEK−hCRTH2用)を用いて、あらかじめ濡らしたUnifilters GF/C(Packard)で素早くろ過して停止させた。次いで、フィルターを同じ緩衝液4mlで洗浄し、フィルターに結合して残留した放射性リガンドを、25μLのUltima Gold F(登録商標)(Unifilter)(Packard)中に平衡させてからの液体シンチレーション計数で求めた。このアッセイにおいて、化合物Aは2.5nMのKiを示した。
【0077】
i[cAMP]測定:HEK−hCRTH2細胞を培養密度80〜90%に増殖させた。アッセイ当日、細胞をPBSで洗浄し、細胞乖離緩衝液中で2分間温置し、室温で300gで5分間遠心分離して収穫し、20mMのHEPES(pH7.4)および0.75mMのIBMX(HBSS/HEPES/IBMX)を含有するハンクス平衡塩溶液中に1.25e10細胞ml−1で再懸濁させた。384−プレートフォーマットで、12500個の細胞および様々な濃度で試験化合物75nlを含有するウェルに、1ウェルあたり0.01mlのHBSS/HEPES/IBMXを用いて、アッセイを行なった。細胞を試験化合物とともに37℃で10分間予備温置してから、HBSS 20mM Hepesに希釈したForskolin/DK−PGD0.005mLを、それぞれ最終濃度10μMおよび150nMで添加して反応を開始した。37℃で10分間温置後、cAMP XS+HitHunter化学発光アッセイを用いてcAMP含量を定量した。(GE Healthcare 90−0075)。ForskolinおよびEC85 DK−PGD対照を用いて、阻害割合を計算した。
【0078】
ヒト全血での好酸球変形アッセイ:EDTA含有バキュテナーに血液を採取した。アンタゴニストを血液に添加し、室温で10分間温置した。次いで、DK−PGD(13,14−ジヒドロ−15−ケトプロスタグランジンD)を、流水浴中、37℃で4分間、血液に添加した。次いで、血液細胞を、75%(v/v)PBS中調製した冷0.25%(v/v)パラホルムアルデヒドの存在下、氷上に1分間置いて固定した。固定した血液175μLを冷した155mMのNHCl溶解液870μL中に移し、4℃で少なくとも40分間温置した。次いで、溶液を430gで5分間遠心し、上清を廃棄した。遠心した細胞をFACs Caliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)で分析した。好酸球の高い自発蛍光に基づいて好中球から好酸球を単離し、FSC−H値の増加に合わせた全好酸球の割合を求めることにより、フローサイトメトリーの生データをFlowJoソフトウェアで分析した。最大(100%)および最少(0%)の変形を、それぞれ10μMのDK−PGDおよびPBSの存在下で求めた。アッセイごとにDK−PGDでの用量反応曲線を作成し、各血液ドナーについてのEC50を求めた。化合物を、30nM DK−PGDの存在下、10−用量滴定曲線で試験してアンタゴニストIC50を求めた。
【0079】
化合物Aは、DPおよび他のプロスタノイド受容体に勝って、CRTH2受容体に対して選択的である。DP、ならびに他のプロスタノイド受容体でのアッセイは、WO2003/06220に記載される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(+){7R−[[(4−フルオロフェニル)スルホニル](メチル)アミノ]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}酢酸化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
治療上有効量の請求項1に記載の化合物および薬学的に許容可能なキャリアを含む薬学的組成物。
【請求項3】
CRTH2介在性疾患の治療または予防用医薬の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2012−502926(P2012−502926A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527165(P2011−527165)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001320
【国際公開番号】WO2010/031182
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(305042057)メルク カナダ インコーポレイテッド (99)
【氏名又は名称原語表記】MERCK CANADA INC.
【Fターム(参考)】