説明

D級アンプ

【課題】入力信号が微小レベル時のリニアリティを改善したフルブリッジ方式D級アンプを提供する。
【解決手段】4個のスイッチング素子22,24,26,28をフルブリッジ接続してスピーカ30を駆動する。スイッチング素子22,24をパルス信号PWM1で駆動し、スイッチング素子26,28をパルス信号PWM2で駆動する。パルス信号PWM1,PWM2は入力信号レベルに応じてパルス幅変調された信号である。パルス信号PWM1,PWM2の入力信号レベル対デューティ比特性は、通常の入力信号レベル対デューティ比特性に偶関数でオフセットを与えた特性である。これにより、入力信号が微小レベル時にスイッチング素子は細いパルスで駆動されなくなり、リニアリティが改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フルブリッジ方式D級アンプの改良に関し、入力信号が微小レベル時のリニアリティを改善したものである。
【背景技術】
【0002】
フルブリッジD級アンプは、フルブリッジ接続されたスイッチング素子を、入力オーディオ信号の信号レベルに応じてパルス幅変調された所定周波数(高周波)のパルス信号(PWM信号)でオン、オフスイッチングして、該フルブリッジ回路に負荷として接続されている電気音響変換器を駆動するものである。図2はフルブリッジD級アンプの一般的な構成を示す。直流電源Vdd・Vss間には、スイッチング素子10,12による直列接続回路とスイッチング素子14,16による直列接続回路がそれぞれ接続されている。スイッチング素子10,12の中間点に連結された接続端子P1とスイッチング素子14,16の中間点に連結された接続端子P2間にはローパスフィルタ18を介してスピーカ20が接続されている。スイッチング素子10,12は入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第1のPWM信号(パルス信号PWM1)により互いに逆方向にオン、オフされる。すなわち、スイッチング素子10がオンのときはスイッチング素子12はオフ、スイッチング素子10がオフのときはスイッチング素子12はオンされる。スイッチング素子14,16は入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第2のPWM信号(パルス信号PWM2)により互いに逆方向にオン、オフされる。すなわち、スイッチング素子14がオンのときはスイッチング素子16はオフ、スイッチング素子14がオフのときはスイッチング素子16はオンされる。
【0003】
入力信号のレベルに対するパルス信号PWM1,PWM2の変調方法として従来より様々な方法が提案されている。図3〜図5は特許文献1,2に記載された変調方法を示す。図3は入力信号レベルが0のときの状態を示す。このとき、パルス信号PWM1,PWM2のデューティ比は(a),(b)に示すようにともに50%で同相である。したがって、スピーカ20の両端は(c)に示すように同電位となり、スピーカ20には(d)に示すように電流は流れない。図4は入力信号が正極性で中レベル時の状態を示す。このとき、パルス信号PWM1のデューティ比は(a)に示すように50%より大きくなり、パルス信号PWM2のデューティ比は(b)に示すように50%より小さくなる。したがって、スピーカ20には(c)に示すように入力信号の正極性レベルに応じた正極性のパルス電圧が印加され、(d)に示すように正方向にスピーカ電流が流れる。図5は入力信号が負極性で中レベル時の状態を示す。このとき、パルス信号PWM1のデューティ比は(a)に示すように50%より小さくなり、パルス信号PWM2のデューティ比は(b)に示すように50%より大きくなる。したがって、スピーカ20には(c)に示すように入力信号の負極性レベルに応じた負極性のパルス電圧が印加され、(d)に示すように負方向にスピーカ電流が流れる。
【0004】
図6〜図8は特許文献3に記載された変調方法を示す。この変調方法はパルス信号PWM1,PWM2を位相を相互に180°ずらして発生させる。図6は入力信号が0のときの状態を示す。このとき、パルス信号PWM1,PWM2のデューティ比は(a),(b)に示すように互いに等しい。したがって、スピーカ20には(c)に示すように正負各極性の電圧が同一パルス幅で交互に印加され、スピーカ電流は(d)に示すように正負各方向に交互に流れる(平均値は0)。図7は入力信号が正極性で中レベル時の状態を示す。このとき、パルス信号PWM1のデューティ比は(a)に示すように0レベル時よりも増大する。また、パルス信号PWM2のデューティ比は0レベル時よりも減少し、入力信号があるレベル以上ではパルス信号PWM2のデューティ比は(b)に示すように0%を保持する。したがって、スピーカ20には(c)に示すように入力信号の正極性レベルに応じた正極性のパルスが印加され、(d)に示すように正方向にスピーカ電流が流れる。図8は入力信号が負極性で中レベル時の状態を示す。このとき、パルス信号PWM1のデューティ比は減少し、入力信号があるレベル以上ではパルス信号PWM1のデューティ比は(a)に示すように0%を保持する。また、パルス信号PWM2のデューティ比は(b)に示すように増大する。したがって、スピーカ20には(c)に示すように入力信号の負極性レベルに応じた負極性のパルス電圧が印加され、(d)に示すように負方向にスピーカ電流が流れる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−57519号公報(図12)
【特許文献2】特開2005−210280号公報(図3)
【特許文献3】特開2006−42296(図2〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来技術によれば、入力信号が微小レベル時の入力対出力特性のリニアリティが悪い問題があった。図9は図3〜図5の変調方法で入力信号が正極性で微小レベル時の動作を示す。このとき、図9の(a),(b)によれば、パルス信号PWM1,PWM2のデューティ比の差は小さく、原理的には(c)に点線で示すようにスピーカ20にこのデューティ比の差に応じた細いパルスの時間分だけ電源電圧が印加される。しかし、実際にはスイッチング素子の応答遅れにより、スピーカ20に印加される電圧波形は(c)に実線で示すように鈍り、電源電圧まで達しない。このため、スピーカ20に流れる電流値は(d)に点線で示す理想的な値に対して(d)に実線で示すように小さくなり誤差が生じていた。入力信号が負極性で微小レベル時も同様の問題を生じていた。そこで、従来は出力を入力にフィードバックすることにより誤差を抑圧してリニアリティの改善をしていた。
【0007】
図10は図6〜図8の変調方法で入力信号が正極性で微小レベル時の動作を示す。このとき、図10の(b)に示すようにパルス信号PWM2のデューティ比が小さくなる。原理的には(c)に点線の負側パルスで示すようにスピーカ20にこのデューティ比に応じた細いパルスの時間分だけ電源電圧が印加される。しかし、実際にはスイッチング素子の応答遅れにより、スピーカ20に印加される電圧波形は(c)に実線の負側パルスで示すように鈍り、電源電圧まで達しない。このため、スピーカ20に流れる電流値は(d)に点線で示す理想的な値に対して(d)に実線で示すように大きくなり誤差が生じていた。入力信号が負極性で微小レベル時も同様の問題を生じていた。
【0008】
この発明は前記従来の技術における問題点を解決して、入力信号が微小レベル時のリニアリティを改善したフルブリッジ方式D級アンプを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のD級アンプは、直流電源に直列接続された第1,第2のスイッチング素子と、前記直流電源に直列接続された第3,第4のスイッチング素子と、前記第1,第2のスイッチング素子の中間点と前記第3,第4のスイッチング素子の中間点間に電気音響変換器を接続する接続端子と、前記第1のスイッチング素子を入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第1のパルス信号でオン、オフし、前記第2のスイッチング素子を前記第1のスイッチング素子がオンするときオフし、該第1のスイッチング素子がオフするときオンする第1のPWM回路と、前記第3のスイッチング素子を前記入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第2のパルス信号でオン、オフし、前記第4のスイッチング素子を前記第3のスイッチング素子がオンするときオフし、該第3のスイッチング素子がオフするときオンする第2のPWM回路とを具備し、前記第1のPWM回路が前記第1のパルス信号を生成するのに使用する入力信号レベル対デューティ比特性は、入力信号のレベルが負の所定の最大値から0まで変化するときにデューティ比が所定の最小値を保持し、入力信号のレベルが0から正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記所定の最小値から所定の最大値まで直線状に順次増加する第1の特性と、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から0まで変化するときにデューティ比が0%から正の所定値まで順次増加し、入力信号のレベルが0から前記正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記正の所定値から0%まで順次減少する所定の偶関数とを加算合成した特性であり、前記第2のPWM回路が前記第2のパルス信号を生成するのに使用する入力信号レベル対デューティ比特性は、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から0まで変化するときにデューティ比が前記所定の最大値から前記所定の最小値まで直線状に順次減少し、入力信号のレベルが0から前記正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記所定の最小値を保持する第2の特性と、前記所定の偶関数とを加算合成した特性であり、前記入力信号のレベルに対する前記第1,第2のパルス信号のデューティ比特性が、該入力信号のレベル0で相互に線対称の特性であり、前記第1,第3のスイッチング素子が同時にオンせず、かつ前記第2,第4のスイッチング素子が同時にオンしないように前記第1,第2のパルス信号の位相が相互にずらされているものである。
【0010】
この発明の別のD級アンプは、直流電源に直列接続された第1,第2のスイッチング素子と、前記直流電源に直列接続された第3,第4のスイッチング素子と、前記第1,第2のスイッチング素子の中間点と前記第3,第4のスイッチング素子の中間点間に電気音響変換器を接続する接続端子と、前記第1のスイッチング素子を入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第1のパルス信号でオン、オフし、前記第2のスイッチング素子を前記第1のスイッチング素子がオンするときオフし、該第1のスイッチング素子がオフするときオンする第1のPWM回路と、前記第3のスイッチング素子を前記入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第2のパルス信号でオン、オフし、前記第4のスイッチング素子を前記第3のスイッチング素子がオンするときオフし、該第3のスイッチング素子がオフするときオンする第2のPWM回路とを具備し、前記第1のPWM回路が前記第1のパルス信号を生成するのに使用する入力信号レベル対デューティ比特性は、入力信号のレベルが負の所定の最大値から正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が所定の最小値から所定の最大値まで直線状に順次増加する第1の特性と、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から0まで変化するときにデューティ比が0%から負の所定値まで順次減少し、入力信号のレベルが0から前記正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記負の所定値から0%まで順次増加する所定の偶関数とを加算合成した特性であり、前記第2のPWM回路が前記第2のパルス信号を生成するのに使用する入力信号レベル対デューティ比特性は、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から前記正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記所定の最大値から前記所定の最小値まで直線状に順次減少する第2の特性と、前記所定の偶関数とを加算合成した特性であり、前記入力信号のレベルに対する前記第1,第2のパルス信号のデューティ比特性が、該入力信号のレベル0で相互に線対称の特性であり、前記第1,第3のスイッチング素子が同時にオンせず、かつ前記第2,第4のスイッチング素子が同時にオンしないように前記第1,第2のパルス信号の位相が相互にずらされているものである。
【0011】
この発明によれば、第1,第2のPWM回路が第1,第2のパルス信号を生成するのに使用する各入力信号レベル対デューティ比特性は、偶関数でオフセットを与えた特性であるので、入力信号が微小レベル時にスイッチング素子は細いパルスで駆動されなくなる。したがって、入力信号が微小レベル時のリニアリティが改善される。しかも、オフセット関数は偶関数なので、第1,第2のパルス信号を加算合成する課程でキャンセルされて出力には現れない。偶関数としては例えば一次特性または二次特性を使用できる。なお、第1のパルス信号は入力信号レベルが負の所定の最大値付近のときにデューティ比が小さくなり、また第2のパルス信号は入力信号のレベルが正の所定の最大値付近のときにデューティ比が小さくなり、これらの場合はいずれかのスイッチング素子が細いパルスで駆動されることになるが、入力信号のレベルが最大値付近のところは通常使われないし、使われたとしても大レベル時には一般に(つまりこの細いパルスが原因でなく)歪が大きくなる傾向があるので、この細いパルスによるリニアリティの悪化の影響は無視できる。
【0012】
この発明のD級アンプは、直流電源に直列接続された第1,第2のスイッチング素子と、前記直流電源に直列接続された第3,第4のスイッチング素子と、前記第1,第2のスイッチング素子の中間点と前記第3,第4のスイッチング素子の中間点間に電気音響変換器を接続する接続端子と、前記第1のスイッチング素子を入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第1のパルス信号でオン、オフし、前記第2のスイッチング素子を前記第1のスイッチング素子がオンするときオフし、該第1のスイッチング素子がオフするときオンする第1のPWM回路と、前記第3のスイッチング素子を前記入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第2のパルス信号でオン、オフし、前記第4のスイッチング素子を前記第3のスイッチング素子がオンするときオフし、該第3のスイッチング素子がオフするときオンする第2のPWM回路とを具備し、前記第1のPWM回路が前記第1のパルス信号を生成するのに使用する入力信号レベル対デューティ比特性は、入力信号のレベルが負の所定の最大値のときにデューティ比が所定の最小値で、入力信号のレベルが正の所定の最大値のときにデューティ比が所定の最大値で、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から前記正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記所定の最小値から前記所定の最大値まで変化し、入力信号のレベルが0のときのデューティ比が50%以下の所定値であり、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から0まで変化するときの該入力信号のレベルに対するデューティ比の増加率よりも、入力信号のレベルが0から前記正の所定の最大値まで変化するときの該入力信号のレベルに対するデューティ比の増加率の方が大きい特性であり、前記第2のPWM回路が前記第2のパルス信号を生成するのに使用する入力信号レベル対デューティ比特性は、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値のときにデューティ比が前記所定の最大値で、入力信号のレベルが前記正の所定の最大値のときにデューティ比が前記所定の最小値で、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から前記正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記所定の最大値から前記所定の最小値まで変化し、入力信号のレベルが0のときのデューティ比が50%以下の前記所定値であり、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から0まで変化するときの該入力信号のレベルに対するデューティ比の減少率の方が、入力信号のレベルが0から前記正の所定の最大値まで変化するときの該入力信号のレベルに対するデューティ比の減少率よりも大きい特性であり、前記入力信号のレベルに対する前記第1,第2のパルス信号のデューティ比特性が、該入力信号のレベル0で相互に線対称の特性であり、前記第1,第3のスイッチング素子が同時にオンせず、かつ前記第2,第4のスイッチング素子が同時にオンしないように前記第1,第2のパルス信号の位相が相互にずらされているものである。
【0013】
この発明によれば、第1のパルス信号は入力信号レベルが負の所定の最大値のときにデューティ比が所定の最小値で、入力信号のレベルが正の所定の最大値のときにデューティ比が所定の最大値となり、第2のパルス信号は入力信号のレベルが負の所定の最大値のときにデューティ比が前記所定の最大値で、入力信号のレベルが正の所定の最大値のときにデューティ比が前記所定の最小値となり、しかも第1,第2のスイッチング素子が同時にオンせず、かつ第3,第4のスイッチング素子が同時にオンしないように第1,第2のパルス信号の位相が相互にずらされているので、入力信号が微小レベル時に第1〜第4のスイッチング素子は細いパルスで駆動されない。したがって、入力信号が微小レベル時のリニアリティが改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の実施の形態を説明する。はじめに、この実施の形態の基本的な考えを図11の回路とその動作を示す図12(a)〜(c)並びに図13(a)〜(c)を参照して説明する。図11において、直流電源Vdd(正電位)・Vss(負電位または接地電位)間には、スイッチング素子22,24による直列接続回路とスイッチング素子26,28による直列接続回路がそれぞれ接続されている。スイッチング素子22,24,26,28はパワーMOSFET等で構成される。スイッチング素子22,24の中間点に連結された接続端子P3とスイッチング素子26,28の中間点に連結された接続端子P4間にはスピーカ30が直結され、いわゆるフィルタレスD級アンプを構成している。スイッチング素子22,24はPWM回路32から出力されるパルス信号PWM1により互いに逆方向にオン、オフされる。すなわち、スイッチング素子20がオンされるときはスイッチング素子22はオフされ、スイッチング素子20がオフされるときはスイッチング素子22はオンされる。スイッチング素子26,28はPWM回路34から出力されるパルス信号PWM2により互いに逆方向にオン、オフされる。すなわち、スイッチング素子26がオンされるときはスイッチング素子28はオフされ、スイッチング素子26がオフされるときはスイッチング素子28はオンされる。
【0015】
従来のD級アンプは、関数発生器36に入力信号レベル対デューティ比特性の関数f(x)を設定し、該関数発生器36から該関数f(x)に基づき入力信号レベルに応じたデューティ比情報を出力し、PWM回路32は該デューティ比情報で指示されるデューティ比で所定周波数(高周波)の第1のPWM信号(パルス信号PWM1)を出力してスイッチング素子22,24をオン、オフする。また、極性反転器40で入力信号を極性反転した信号を作成し、関数発生器38に上記と同じ入力信号レベル対デューティ比特性の関数f(x)を設定し、該関数発生器38から該関数f(x)に基づき、前記極性反転した入力信号レベルに応じたデューティ比情報を出力し(極性反転器40と関数発生器38の組合せは関数f(−x)を使用することに相当)、PWM回路34は該デューティ比情報で指示されるデューティ比で、第1のPWM信号(パルス信号PWM1)に同期して第2のPWM信号(パルス信号PWM2)を出力してスイッチング素子26,28をオン、オフする。
【0016】
上記関数f(x)は、例えば図12(a)に実線で示すように、入力信号のレベルが負の所定の最大値−Vから0まで変化するときにデューティ比が最小値(0%)を保持し、入力信号のレベルが0から正の所定の最大値+Vまで変化するときにデューティ比が最小値(0%)から最大値(100%)まで直線状に順次増加する特性とすることができる。あるいは、関数f(x)は、図13(a)に実線で示すように、入力信号のレベルが負の所定の最大値−Vから正の所定の最大値+Vまで変化するときにデューティ比が最小値(0%)から最大値(100%)まで直線状に順次増加する特性とすることができる。いずれの特性を使用する場合も、極性反転器40と関数発生器38の組合せで構成される関数f(−x)は関数f(x)に対し入力信号のレベル0を軸として線対称である。
【0017】
以下に説明する実施の形態では、上記関数f(x)とは別に入力信号レベル対デューティ比特性のオフセット関数g(x)(関数f(x)にオフセットを与えるための偶関数)を設定する。すなわち、図11に示すように、入力信号に対して、関数f(x)を設定した関数発生器36と関数g(x)を設定した関数発生器42を並列に配置する。関数発生器36からは関数f(x)に基づき入力信号レベルに応じたデューティ比情報が出力され、関数発生器42からは関数g(x)に基づき入力信号レベルに応じたデューティ比情報が出力される。加算器44は両デューティ比情報を加算する。この加算は関数f(x)+g(x)の特性を使用することに相当する。PWM回路32は該加算されたデューティ比情報で指示されるデューティ比(すなわち、関数f(x)+g(x)に基づき入力信号レベルに応じて指示されるデューティ比)でパルス信号PWM1を出力してスイッチング素子22,24をオン、オフする。
【0018】
同様に、極性反転器40で極性反転した入力信号に対して、関数f(x)を設定した関数発生器38と関数g(x)を設定した関数発生器46を並列に配置する。関数発生器38からは関数f(x)に基づき、極性反転した入力信号レベルに応じたデューティ比情報が出力され、関数発生器46からは関数g(x)に基づき、極性反転した入力信号レベルに応じたデューティ比情報が出力される。加算器48は両デューティ比情報を加算する。この加算は関数f(−x)+g(−x)の特性を使用することに相当する。PWM回路34は該加算されたデューティ比情報で指示されるデューティ比(すなわち関数f(−x)+g(−x)に基づき入力信号レベルに応じて指示されるデューティ比)でパルス信号PWM2を出力してスイッチング素子26,28をオン、オフする。
【0019】
上記関数g(x)は関数f(x)にオフセットを与えるための関数であり、次の特性を有する偶関数である。
(A)関数f(x)が図12(a)に実線で示す特性(すなわち、入力信号のレベルが負の所定の最大値−Vから0まで変化するときにデューティ比が最小値(0%)を保持し、入力信号のレベルが0から正の所定の最大値+Vまで変化するときにデューティ比が最小値(0%)から最大値(100%)まで直線状に順次増加する特性)である場合:
このとき、関数g(x)は、図12(b)に示すように、入力信号のレベルが負の所定の最大値−Vから0まで変化するときにデューティ比が最小値(0%)から正の所定値α%(αは50よりも小さな正の値)まで直線状に順次増加し、入力信号のレベルが0から正の所定の最大値+Vまで変化するときにデューティ比が正の所定値α%から最小値(0%)まで直線状に順次減少する一次特性の偶関数(y=a|x|、aは定数)である。
(B)関数f(x)が図13(a)に実線で示す特性(すなわち入力信号のレベルが負の所定の最大値−Vから正の所定の最大値+Vまで変化するときにデューティ比が最小値(0%)から最大値(100%)まで直線状に順次増加する特性)である場合:
このとき、関数g(x)は、図13(b)に示すように、入力信号のレベルが負の所定の最大値−Vから0まで変化するときにデューティ比が最小値(0%)から負の所定値−α%(αは50よりも小さな正の値)まで曲線状に順次減少し、入力信号のレベルが0から正の所定の最大値+Vまで変化するときにデューティ比が負の所定値−α%から最小値(0%)まで曲線状に順次増加する例えば二次特性の偶関数(y=bx−α、bは定数
)である。
【0020】
関数g(x)として上記特性(A)または(B)の偶関数を使用することにより、加算器44から出力されるデューティ比情報の特性(すなわちf(x)+g(x)の特性)は図12(c)または図13(c)に実線で示す特性となる。この特性は次の特徴を有する。
・入力信号のレベルが負の所定の最大値−Vのときにデューティ比が最小値(0%)である。
・入力信号のレベルが正の所定の最大値+Vのときにデューティ比が最大値(100%)である。
・入力信号のレベルが負の所定の最大値−Vから正の所定の最大値+Vまで変化するときにデューティ比が最小値(0%)から最大値(100%)まで、入力信号レベル0で折れ曲がる直線状に(図12(c)の場合)、または曲線状に(図13(c)の場合)順次増加する。
・入力信号のレベルが0のときのデューティ比が50%以下の所定値(図12(c)の場合はα%、図13(c)の場合は(50−α)%で、例えば10%)である。
・入力信号のレベルが負の所定の最大値−Vから0まで変化するときの該入力信号のレベルに対するデューティ比の増加率よりも、入力信号のレベルが0から正の所定の最大値+Vまで変化するときの該入力信号のレベルに対するデューティ比の増加率の方が大きい。
【0021】
同様に、加算器48から出力されるデューティ比情報の特性(すなわちf(−x)+g(−x)の特性)は図12(c)または図13(c)に点線で示す特性となる。この特性は次の特徴を有する。
・入力信号のレベルが負の所定の最大値−Vのときにデューティ比が最大値(100%)である。
・入力信号のレベルが正の所定の最大値+Vのときにデューティ比が最小値(0%)である。
・入力信号のレベルが負の所定の最大値−Vから正の所定の最大値+Vまで変化するときにデューティ比が最大値(100%)から最小値(0%)まで、入力信号レベル0で折れ曲がる直線状に(図12(c)の場合)、または曲線状に(図13(c)の場合)順次減少する。
・入力信号のレベルが0のときのデューティ比が50%以下の所定値(図12(c)の場合はα%、図13(c)の場合は(50−α)%)である。
・入力信号のレベルが負の所定の最大値−Vから0まで変化するときの該入力信号のレベルに対するデューティ比の減少率の方が、入力信号のレベルが0から正の所定の最大値+Vまで変化するときの該入力信号のレベルに対するデューティ比の減少率の方よりも大きい。
【0022】
そして、加算器44から出力されるデューティ比情報の特性f(x)+g(x)と、加算器48から出力されるデューティ比情報の特性f(−x)+g(−x)は、入力信号のレベル0で相互に線対称の特性である。
【0023】
関数f(x)、g(x)として図12(c)または図13(c)の特性を使用した場合の図11の入力xと出力y(スピーカ端子P3,P4間の出力)の関係を式で示すと次のようになる。オフセット関数g(x)を使用しない場合に、入力xがK倍に増幅されて出力yになるものとする。すなわち、
y=K{f(x)−f(−x)}=Kx ・・・(1)
である。一方、オフセット関数g(x)を使用した場合の出力yは、
y=K〔f(x)+g(x)−{f(−x)+g(−x)}〕 ・・・(2)
となる。ここで、関数g(x)は偶関数であるから
g(x)=g(−x)
である。その結果(2)式は
y=K{f(x)−f(−x)}
=Kx ・・・(3)
となる。したがって、オフセット関数g(x)はキャンセルされ、出力yには現れない。
【0024】
一方、オフセット関数g(x)を使用したので、入力x=0のときにパルス信号PWM1,PWM2はデューティ比はα%(図12(c)の場合)または(50−α)%(図13(c)の場合)であり、細いパルスとなるのを回避することができる。したがって、入力信号が微小レベル時のリニアリティが良好となる。入力xのレベルが負の所定の最大値−V付近のときはパルス信号PWM1はデューティ比が0%付近となり(図12(c)または図13(c)の実線)、また入力xのレベルが正の所定の最大値V付近のときはパルス信号PWM2はデューティ比が0%付近となり(図12(c)または図13(c)の点線)、いずれも細いパルスとなるが、そのような大レベル入力は通常使われないし、使われたとしても大レベル時には一般に歪が大きくなる傾向があるので、この細いパルスによるリニアリティの悪化の影響は無視できる。また、オフセット関数g(x)のデューティ比は入力xのレベルが正負各方向に大きくなるにつれてしだいに小さくなり、入力xが所定の最大値±Vのときに0%となるので、関数f(x)+g(x)またはf(−x)+g(−x)は、入力xが最大値±Vに至る途中でデューティ比が100%にクリップすることがなく、クリップによる新たな歪みの発生もない。
【0025】
以上、この発明の基本的な考えを説明したが、図11の構成のままではパルス信号PWM1,PWM2が同相で発生し、入力信号が微小レベル時にスイッチング素子が細いパルスで駆動されることになる。そこで、パルス信号PWM1,PWM2が同相で発生しないように、相互に位相をずらす必要がある。図1に示すこの発明の実施の形態は、前述した図11の回路においてパルス信号PWM1,PWM2を相互に位相を180°ずらす処理を施したものである。すなわち、図1の回路は図11の回路に対して、関数f(x)を設定した関数発生器38を関数−f(x)を設定した関数発生器38’に変更し、関数g(x)を設定した関数発生器46を関数−g(x)を設定した関数発生器46’に変更し、f(x)+g(x)の演算をする加算器48を100(%)−(f(x)+g(x))の演算をする加算器48’に変更し、さらにPWM回路34の出力をインバータ50で反転して出力パルスPWM2としたものである。
【0026】
図14は図1の回路における上記位相をずらす処理の過程を示したものである。ここでは入力x=0のときの状態を示す。図14において(a)はPWM回路32の出力パルスPWM1であり、デューティ比はα%(図12(c)の特性を使用した場合。図13(c)の特性を使用した場合は(50−α)%)である。(b)は位相ずらし処理がないときのPWM回路34の出力パルスPWM2であり、デューティ比は同じくα%(図13(c)の特性を使用した場合は(50−α)%)である。位相ずらし処理がないので、パルス信号PWM1,PWM2は同相で発生されている。(c)は図1においてインバータ50がない場合のPWM回路34の出力パルスPWM2である。図11の加算器48の演算f(x)+g(x)を、図1の加算器48では100(%)−(f(x)+g(x))の演算をするように変更したので、パルス信号PWM2のデューティ比は(100−α)%(図13(c)の特性を使用した場合は(50+α)%)となる。なお(a),(b),(c)の各パルス信号(“H”レベルの部分)はそれぞれ図14に「PWM波の1周期」として示した区間の中央のタイミングを中心にその前後で対称波形となるようにパルス幅が変動して(すなわち該中央のタイミングを中心にパルス幅が広がりまたは狭まって)デューティ比が変化する。(d)はインバータ50を追加した図1の回路によるパルス信号PWM2である。この(d)のパルス信号(“H”レベルの部分)は図14に「PWM波の1周期」として示した区間の端のタイミングを中心にその前後で対称波形となるようにパルス幅が変動して(すなわち該端のタイミングを中心にパルス幅が広がりまたは狭まって)デューティ比が変化する。(d)によれば、パルス信号PWM2のデューティ比は(b)のパルス信号PWM2と同じα%(図13(c)の特性を使用した場合は(50−α)%)であり、しかも(a)のパルス信号PWM1に対して位相が180°ずらされている。このようにして作成した(a)のパルス信号PWM1と(d)のパルス信号PWM2を使用することにより、スイッチング素子22,26が同時にオンしたり、スイッチング素子24,28が同時にオンすることがなくなり、入力信号が微小レベル時にスイッチング素子22,24,26,28が細いパルスで駆動されるのが回避され、リニアリティが改善される。
【0027】
図14の位相ずらし処理の過程における入力信号レベル対デューティ比特性の変化を図12,図13の(d)、(e)にそれぞれ示す。なお、図12,図13の(a)〜(c)の動作は図11の基本構成および図1の実施の形態に共通である。図12,図13において(d)の実線は(c)の実線のパルス信号PWM1の特性であり、点線は図1においてインバータ50がない場合のパルス信号PWM2の特性である。実線の特性によるパルス信号PWM1と点線の特性によるパルス信号PWM2は同相である。(e)の実線は(d)の実線のパルス信号PWM1の特性であり、点線はインバータ50を追加した図1の回路そのものによるパルス信号PWM2の特性である。実線の特性によるパルス信号PWM1と点線の特性によるパルス信号PWM2は互いに逆相(位相差180°)である。
【0028】
図1の回路による入力信号の各レベル時の動作を図15〜図18を参照して説明する。図15は入力信号レベルが0のときの動作である。このとき(a),(b)に示すようにパルス信号PWM1,PWM2のデューティ比はともにα%(図12(e)の特性を使用した場合。図13(e)の特性を使用した場合は(50−α)%)である。したがって、スピーカ30には(c)に示すように正負各極性の電圧が同一パルス幅で交互に印加され、スピーカ電流は(d)に示すように正負各方向に交互に流れる(平均値は0)。(c)のスピーカに印加される電圧はスイッチング素子の応答遅れにより波形が鈍るが、デューティ比α%(図13(e)の特性を使用した場合は(50−α)%)を十分大きな値に設定しているので、電源電圧Vdd,Vssに達している。
【0029】
図16は入力信号が正極性で中レベル時の動作である。このとき(a)に示すようにパルス信号PWM1のデューティ比は図15の入力信号レベル0の状態に比べて大きくなる。また、(b)に示すようにパルス信号PWM2のデューティ比は図15の入力信号レベル0の状態に比べて小さくなるが、十分な値は確保されている。また、パルス信号PWM1,PWM2は同時に“H”レベルにはならない。したがって、スピーカ30に印加される電圧は(c)に示すように電源電圧Vdd,Vssに達し、スピーカ30には(d)に示すようにパルス信号PWM1,PWM2のデューティ比差に対応した電流が流れる。
【0030】
図17は入力信号が負極性で中レベル時の動作である。このとき(a)に示すようにパルス信号PWM1のデューティ比は図15の入力信号レベル0の状態に比べて小さくなるが、十分な値は確保されている。また、(b)に示すようにパルス信号PWM2のデューティ比は図15の入力信号レベル0の状態に比べて大きくなる。また、パルス信号PWM1,PWM2は同時に“H”レベルにはならない。したがって、スピーカ30に印加される電圧は(c)に示すように電源電圧Vdd,Vssに達し、スピーカ30には(d)に示すようにパルス信号PWM1,PWM2のデューティ比差に対応した電流が流れる。
【0031】
図18は入力信号が正極性で微小レベル時の動作である。このとき(a)に示すようにパルス信号PWM1のデューティ比は図15の入力信号レベル0の状態に比べて僅かに大きくなる。また、(b)に示すようにパルス信号PWM2のデューティ比は図15の入力信号レベル0の状態に比べて僅かに小さくなる。このため、パルス信号PWM1,PWM2のデューティ比差は小さいが、パルス信号PWM1,PWM2は相互に位相が180°ずれており同時には“H”レベルにはならないので、スイッチング素子は細いパルスで駆動されることはない。したがって、スピーカ30に印加される電圧は(c)に示すように電源電圧Vdd,Vssに達し、スピーカ30には(d)に示すようにパルス信号PWM1,PWM2のデューティ比差に対応した電流が流れる。入力信号が負極性で微小レベル時も同様に、パルス信号PWM1,PWM2のデューティ比差は小さいが、パルス信号PWM1,PWM2は相互に位相が180°ずれており同時には“H”レベルにはならないので、スイッチング素子は細いパルスで駆動されることはない。したがって、スピーカ30に印加される電圧は電源電圧Vdd,Vssに達し、スピーカ30にはパルス信号PWM1,PWM2のデューティ比差に対応した電流が流れる。このようにして、入力信号が微小レベル時にリニアリティのよい出力が得られる。よって、出力を入力にフィードバックして誤差の抑圧を行う必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施の形態を示す回路図である。
【図2】フルブリッジD級アンプの一般的な構成を示す回路図である。
【図3】特許文献1,2に記載された変調方法による0レベル入力時の波形図である。
【図4】特許文献1,2に記載された変調方法による正極性中レベル入力時の波形図である。
【図5】特許文献1,2に記載された変調方法による負極性中レベル入力時の波形図である。
【図6】特許文献3に記載された変調方法による0レベル入力時の波形図である。
【図7】特許文献3に記載された変調方法による正極性中レベル入力時の波形図である。
【図8】特許文献3に記載された変調方法による負極性中レベル入力時の波形図である。
【図9】特許文献1,2に記載された変調方法による正極性微小レベル入力時の波形図である。
【図10】特許文献3に記載された変調方法による正極性微小レベル入力時の波形図である。
【図11】図1に示すこの発明の実施の形態の基本的な考えを説明するための回路図である。
【図12】図1および図11の回路で使用する入力信号レベル対デューティ比特性の説明図である。
【図13】図1および図11の回路で使用する別の入力信号レベル対デューティ比特性の説明図である。
【図14】図1の回路における上記位相をずらす処理の過程を示す波形図である。
【図15】図1の回路における入力信号が0レベル入力時の動作波形図である。
【図16】図1の回路における入力信号が正極性中レベル時の動作波形図である。
【図17】図1の回路における入力信号が負極性中レベル時の動作波形図である。
【図18】図1の回路における入力信号が正極性微小レベル時の動作波形図である。
【符号の説明】
【0033】
22…第1のスイッチング素子、24…第2のスイッチング素子、26…第3のスイッチング素子、28…第4のスイッチング素子、30…スピーカ(電気音響変換器)、32…第1のPWM回路、34…第2のPWM回路、Vdd,Vss…直流電源、P3,P4…接続端子、PWM1…第1のパルス信号、PWM2…第2のパルス信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に直列接続された第1,第2のスイッチング素子と、
前記直流電源に直列接続された第3,第4のスイッチング素子と、
前記第1,第2のスイッチング素子の中間点と前記第3,第4のスイッチング素子の中間点間に電気音響変換器を接続する接続端子と、
前記第1のスイッチング素子を入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第1のパルス信号でオン、オフし、前記第2のスイッチング素子を前記第1のスイッチング素子がオンするときオフし、該第1のスイッチング素子がオフするときオンする第1のPWM回路と、
前記第3のスイッチング素子を前記入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第2のパルス信号でオン、オフし、前記第4のスイッチング素子を前記第3のスイッチング素子がオンするときオフし、該第3のスイッチング素子がオフするときオンする第2のPWM回路とを具備し、
前記第1のPWM回路が前記第1のパルス信号を生成するのに使用する入力信号レベル対デューティ比特性は、入力信号のレベルが負の所定の最大値から0まで変化するときにデューティ比が所定の最小値を保持し、入力信号のレベルが0から正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記所定の最小値から所定の最大値まで直線状に順次増加する第1の特性と、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から0まで変化するときにデューティ比が0%から正の所定値まで順次増加し、入力信号のレベルが0から前記正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記正の所定値から0%まで順次減少する所定の偶関数とを加算合成した特性であり、
前記第2のPWM回路が前記第2のパルス信号を生成するのに使用する入力信号レベル対デューティ比特性は、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から0まで変化するときにデューティ比が前記所定の最大値から前記所定の最小値まで直線状に順次減少し、入力信号のレベルが0から前記正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記所定の最小値を保持する第2の特性と、前記所定の偶関数とを加算合成した特性であり、
前記入力信号のレベルに対する前記第1,第2のパルス信号のデューティ比特性が、該入力信号のレベル0で相互に線対称の特性であり、
前記第1,第3のスイッチング素子が同時にオンせず、かつ前記第2,第4のスイッチング素子が同時にオンしないように前記第1,第2のパルス信号の位相が相互にずらされているD級アンプ。
【請求項2】
直流電源に直列接続された第1,第2のスイッチング素子と、
前記直流電源に直列接続された第3,第4のスイッチング素子と、
前記第1,第2のスイッチング素子の中間点と前記第3,第4のスイッチング素子の中間点間に電気音響変換器を接続する接続端子と、
前記第1のスイッチング素子を入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第1のパルス信号でオン、オフし、前記第2のスイッチング素子を前記第1のスイッチング素子がオンするときオフし、該第1のスイッチング素子がオフするときオンする第1のPWM回路と、
前記第3のスイッチング素子を前記入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第2のパルス信号でオン、オフし、前記第4のスイッチング素子を前記第3のスイッチング素子がオンするときオフし、該第3のスイッチング素子がオフするときオンする第2のPWM回路とを具備し、
前記第1のPWM回路が前記第1のパルス信号を生成するのに使用する入力信号レベル対デューティ比特性は、入力信号のレベルが負の所定の最大値から正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が所定の最小値から所定の最大値まで直線状に順次増加する第1の特性と、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から0まで変化するときにデューティ比が0%から負の所定値まで順次減少し、入力信号のレベルが0から前記正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記負の所定値から0%まで順次増加する所定の偶関数とを加算合成した特性であり、
前記第2のPWM回路が前記第2のパルス信号を生成するのに使用する入力信号レベル対デューティ比特性は、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から前記正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記所定の最大値から前記所定の最小値まで直線状に順次減少する第2の特性と、前記所定の偶関数とを加算合成した特性であり、
前記入力信号のレベルに対する前記第1,第2のパルス信号のデューティ比特性が、該入力信号のレベル0で相互に線対称の特性であり、
前記第1,第3のスイッチング素子が同時にオンせず、かつ前記第2,第4のスイッチング素子が同時にオンしないように前記第1,第2のパルス信号の位相が相互にずらされているD級アンプ。
【請求項3】
前記偶関数は一次特性または二次特性である請求項1または2記載のD級アンプ。
【請求項4】
直流電源に直列接続された第1,第2のスイッチング素子と、
前記直流電源に直列接続された第3,第4のスイッチング素子と、
前記第1,第2のスイッチング素子の中間点と前記第3,第4のスイッチング素子の中間点間に電気音響変換器を接続する接続端子と、
前記第1のスイッチング素子を入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第1のパルス信号でオン、オフし、前記第2のスイッチング素子を前記第1のスイッチング素子がオンするときオフし、該第1のスイッチング素子がオフするときオンする第1のPWM回路と、
前記第3のスイッチング素子を前記入力信号のレベルに応じたデューティ比を有する第2のパルス信号でオン、オフし、前記第4のスイッチング素子を前記第3のスイッチング素子がオンするときオフし、該第3のスイッチング素子がオフするときオンする第2のPWM回路とを具備し、
前記第1のPWM回路が前記第1のパルス信号を生成するのに使用する入力信号レベル対デューティ比特性は、入力信号のレベルが負の所定の最大値のときにデューティ比が所定の最小値で、入力信号のレベルが正の所定の最大値のときにデューティ比が所定の最大値で、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から前記正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記所定の最小値から前記所定の最大値まで変化し、入力信号のレベルが0のときのデューティ比が50%以下の所定値であり、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から0まで変化するときの該入力信号のレベルに対するデューティ比の増加率よりも、入力信号のレベルが0から前記正の所定の最大値まで変化するときの該入力信号のレベルに対するデューティ比の増加率の方が大きい特性であり、
前記第2のPWM回路が前記第2のパルス信号を生成するのに使用する入力信号レベル対デューティ比特性は、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値のときにデューティ比が前記所定の最大値で、入力信号のレベルが前記正の所定の最大値のときにデューティ比が前記所定の最小値で、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から前記正の所定の最大値まで変化するときにデューティ比が前記所定の最大値から前記所定の最小値まで変化し、入力信号のレベルが0のときのデューティ比が50%以下の前記所定値であり、入力信号のレベルが前記負の所定の最大値から0まで変化するときの該入力信号のレベルに対するデューティ比の減少率の方が、入力信号のレベルが0から前記正の所定の最大値まで変化するときの該入力信号のレベルに対するデューティ比の減少率よりも大きい特性であり、
前記入力信号のレベルに対する前記第1,第2のパルス信号のデューティ比特性が、該入力信号のレベル0で相互に線対称の特性であり、
前記第1,第3のスイッチング素子が同時にオンせず、かつ前記第2,第4のスイッチング素子が同時にオンしないように前記第1,第2のパルス信号の位相が相互にずらされているD級アンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−270989(P2008−270989A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108737(P2007−108737)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】