説明

D級アンプ

【課題】小型かつ安価な構成でありながらノイズを十分に抑制することができる「D級アンプ」を提供すること。
【解決手段】ローパスフィルタからなる第1のフィルタ19の後段に、信号出力ライン5に対して並列に接続され、ノイズ成分の信号に対する当該信号の周波数に応じた信号レベルの減衰が可能な所定の周波数特性を示すように形成された第2のフィルタ20を備え、第2のフィルタ20の周波数特性は、第1のフィルタ19の周波数特性と合成された状態において、ノイズ成分の信号の基本周波数における信号レベルの減衰量が、第1のフィルタ19のみの周波数特性による基本周波数における信号レベルの減衰量よりも大きくなる周波数特性であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、D級アンプに係り、特に、ローパスフィルタ等の電気フィルタを備えたD級アンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用または携帯用等のオーディオ再生装置に搭載される音声信号の増幅手段として、小型化および高効率化に適したD級増幅方式を用いたD級アンプが普及するようになった。
【0003】
このD級アンプは、増幅前の音声信号をパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)を用いてPWM信号に変換し、そのPWM信号を増幅させることによって、従来のアナログ増幅方式に比べて非常に高い効率を得ることができる。
【0004】
ここで、PWM信号とは、図8(a)、(b)に示すように、ハイ(高電圧)状態の信号(Hi)とロー(低電圧)状態の信号(Low)とが交互に現れる方形波の信号であって、基本周期Tに対するハイ状態の時間Tの割合(百分率)であるデューティを調整することにより、このPWM信号を積分することによって取り出される出力信号(アナログ信号)のレベル(電圧値)を制御することが可能な信号として知られている。なお、図8(a)は、各基本周期Tごとのデューテイがいずれも50%とされたPWM信号を示しており、このPWM信号を積分した場合には、図8(a)に示すような一定値(0〔V〕)をとる出力信号を取り出すことができる。一方、図8(b)は、各基本周期Tごとのデューティがいずれも50%以上の一定値とされたPWM信号を示しており、このPWM信号を積分した場合には、図8(b)に示すような一定値(図8(a)の場合よりも大きい正の値)をとる出力信号を取り出すことができる。なお、図8(a)、(b)においては、各基本周期Tごとのデューテイが一定であるために、出力信号も一定値をとっているが、各基本周期Tごとのデューテイが互いに異なる場合には、例えば、正弦波やひずみ波状の出力信号が取り出されることも当然にある。このようなPWM信号の増幅は、振幅(ハイ状態の信号値)を増加させることによって行うことができる。
【0005】
そして、図9に示すように、従来から、PWM信号を用いたD級アンプ1においては、アンプ本体である音声信号の増幅部2とスピーカ3との間に、LC型のローパスフィルタ8を配設し、このローパスフィルタ8によって、増幅部2による増幅後のPWM信号を復調(積分)することにより、増幅後のアナログの音声信号を取り出すことが行われていた。なお、図9に示すローパスフィルタ8は、スピーカ3に向かう信号出力ライン5上に、信号出力ライン5に対して直列に接続されたコイル等からなるインダクタ6と、信号出力ライン5およびグランドライン4の間に、信号出力ライン5に対して並列に接続されたコンデンサ等からなるキャパシタ7とによって構成されている。
【0006】
ところで、この種のD級アンプ1においては、従来から、PWM信号に含まれるノイズ成分の信号の電磁放射に起因して、電磁的な不干渉性もしくは電磁環境適合性(EMC:Electro-Magnetic Compatibility)の確保が阻害される場合があるといった問題が生じていた。
【0007】
すなわち、一般的なD級増幅方式におけるPWM信号には、本来の再生対象となる可聴帯域(20Hz〜20kHz)の信号(オーディオ信号)の他にも、図10に示すようなスペクトラム分布を有するノイズ成分の信号が含まれている。
【0008】
具体的には、デューテイが50%の場合におけるPWM信号には、ノイズ成分の信号として、図10において実線で示すように、基本周波数f(デューテイ50%の場合のPWMの発振周波数)を有するノイズ成分(1次)(以下、基本周波数成分と称する)の信号と、この基本周波数成分の信号に対する3次、5次および7次等の奇数次高調波成分の信号とが含まれている。なお、一般的に、基本周波数は、400kHz〜500kHzの間の周波数とされている。
【0009】
また、デューティが50%以外の場合におけるPWM信号には、ノイズ成分の信号として、基本周波数成分および奇数高調波成分の信号に加えて、図9において破線で示すような基本周波数成分の信号に対する2次、4次および6次等の偶数次高調波成分の信号が含まれている。
【0010】
そして、このようなノイズ成分の信号のうち、特に、基本周波数成分の信号は信号レベル〔dB〕が高く、EMCを確保する上で大きな障害となっていた。
【0011】
ここで、前述したLC型のローパスフィルタ8は、一般に、図11に示すような周波数特性を示すようになっており、カットオフ周波数fcよりも高い周波数の信号の信号レベルを所定の減衰率(例えば、−12dB/oct)にしたがって減衰させることができるようになっている。なお、カットオフ周波数fcや減衰率は、インダクタ6およびキャパシタ7の定数によって決定されるようになっている。
【0012】
したがって、このような周波数特性を利用すれば、基本周波数成分の信号の信号レベルについてもある程度は減衰させることが可能である。
【0013】
しかしながら、このローパスフィルタ8は、可聴帯域の信号に対する影響(減衰)が出ないように20Hz〜20kHzまではフラットな特性が求められているため、そのような制約から、カットオフ周波数fcを最低でも約40kHzに設定することが必要であった。そして、このように、カットオフ周波数fcを十分に低く設定することができないことにより、ローパスフィルタ8の周波数特性は、ノイズ成分の基本周波数f(図11参照)における信号レベルの減衰量A(図11参照)を十分に多くとることができないものとなっていた。
【0014】
この結果、従来のD級アンプ1は、EMCの確保には不十分なものであった。
【0015】
そこで、これまでにも、D級アンプに対して、ノイズ成分の基本周波数における信号レベルの減衰量を向上させるための種々の対策が講じられてきた。
【0016】
例えば、図12に示すD級アンプ10においては、図9に示したものと同様のLC型のローパスフィルタ8の後段に、前段のローパスフィルタ8と同様のLC型のローパスフィルタ11が接続されている。このような2段構成のローパスフィルタ8,11は、例えば、特許文献1の図1にも開示されている。これらのローパスフィルタ8,11は、互いの周波数特性が合成されることによって、図13における実線のグラフのような周波数特性を示すようになっている。この周波数特性は、前段のローパスフィルタ8の周波数特性におけるカットオフ周波数fcよりも高周波数側の帯域の部分(図13における破線部)に、後段のローパスフィルタ11の周波数特性が合成されることによって、図9に示したものよりも減衰率が2倍に向上されたもの(例えば、−24dB/oct)となっている。
【0017】
さらに、より好ましい対策として、例えば、図14に示すD級アンプ12においては、図9、図12に示したものと同様の前段のLC型のローパスフィルタ8の後段に、他のローパスフィルタ14が接続されたものとなっている。この図14における後段のローパスフィルタ14は、図12に示したLC型の後段のローパスフィルタ11の構成に、さらに、抵抗15およびキャパシタ16を、ともにインダクタ6に対して並列に接続することによって追加したものとなっている。これらのローパスフィルタ8,14は、互いの周波数特性が合成されることによって、図15における実線のグラフのような周波数特性を示すようになっている。この周波数特性は、前段のローパスフィルタ8の周波数特性におけるカットオフ周波数fcよりも高周波数側の帯域の部分(図15における破線部)に、後段のローパスフィルタ14の周波数特性が合成されることによって、図13に示したものよりも基本周波数fにおける信号レベルの減衰量Aがさらに向上されたものとなっている。
【0018】
このように、フィルタを追加することによって、基本周波数における信号レベルの減衰量を改善することは可能であった。
【0019】
【特許文献1】特開2002−330035号公報
【特許文献2】特開2006−229891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、図12および図14に示したD級アンプ10,12においては、いずれも、前段のローパスフィルタ8の後段に、前段のローパスフィルタ8とほぼ同サイズのローパスフィルタ11,14を備える必要があったため、基板上にD級アンプ10,12を配置するための基板占有面積が大きくなって小型化が困難となるとともに、コストが上昇してしまうといった問題が生じていた。特に、後段のローパスフィルタ11,14のうち、信号出力ライン5上に直列に接続されるインダクタ6は、可聴帯域の信号を含む大電流を流すとともに、ノイズ成分の信号を熱損失によって除去する必要上、大型になることを余儀なくされていた。
【0021】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、小型かつ安価な構成でありながらノイズを十分に抑制することができるD級アンプを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前述した目的を達成するため、本発明のD級アンプは、音声信号をD級増幅方式を用いて増幅させ、増幅された前記音声信号をスピーカ側に出力するD級アンプであって、音源側から入力された前記音声信号を、PWM信号に変換した上で増幅させ、前記音声信号が増幅された後の前記PWM信号を後段に出力する増幅手段と、この増幅手段の後段に接続され、前記増幅手段から出力された前記PWM信号をアナログ音声信号に変換し、変換された前記アナログ音声信号を、前記スピーカに向かう信号出力ラインに出力するように形成された所定のカットオフ周波数を有するローパスフィルタからなる第1のフィルタであって、前記PWM信号に含まれる前記カットオフ周波数よりも高い所定の周波数を有するノイズ成分の信号に対する当該信号の周波数に応じた信号レベルの減衰が可能な所定の周波数特性を示すように形成された第1のフィルタと、この第1のフィルタの後段において、前記信号出力ラインに対して並列に接続され、前記ノイズ成分の信号に対する当該信号の周波数に応じた信号レベルの減衰が可能な所定の周波数特性を示すように形成された第2のフィルタとを備え、前記第2のフィルタの周波数特性は、前記第1のフィルタの周波数特性と合成された状態において、前記ノイズ成分の信号の基本周波数における信号レベルの減衰量が、前記第1のフィルタのみの周波数特性による前記基本周波数における信号レベルの減衰量よりも大きくなるような周波数特性とされていることを特徴としている。
【0023】
そして、このような構成によれば、第1のフィルタと第2のフィルタとの互いに合成された周波数特性によって、基本周波数成分の信号の信号レベルを十分に減衰させることができるとともに、第2のフィルタを信号出力ラインに並列に接続することによって、第2のフィルタに可聴帯域の信号を含む大電流が流れることを回避して第2フィルタを小型化することができるので、小型かつ安価な構成でありながらノイズを十分に抑制することができる。
【0024】
また、本発明において、前記第2のフィルタの周波数特性は、前記第1のフィルタの周波数特性と合成された状態において、前記基本周波数を含む所定の帯域幅を有する第1の周波数帯域における信号レベルの減衰量が、前記基本周波数において最大となり、かつ、前記第1の周波数帯域における信号レベルの減衰量が、前記第1のフィルタのみの周波数特性による前記第1の周波数帯域における信号レベルの減衰量よりも大きくなるような周波数特性とされていることが好ましい。
【0025】
そして、このような構成によれば、基本周波数成分の信号をさらに有効に減衰させることができ、また、スピーカから出力される音声の出力レベルの増加にともなって、ノイズ成分の信号が存在するノイズ帯域の帯域幅が、第1の周波数帯域内において広がったとしても、この第1の周波数帯域内においては、ノイズ成分の信号を有効に抑制することができる。
【0026】
さらに、本発明において、前記第2のフィルタの周波数特性は、前記第1のフィルタの周波数特性と合成された状態において、前記第1の周波数帯域に高周波数側において連なる所定の帯域幅を有する第2の周波数帯域における信号レベルの減衰量が、前記第1のフィルタのみの周波数特性による前記第2の周波数帯域における信号レベルの減衰量よりも小さくなり、かつ、前記第2の周波数帯域内に、前記ノイズ成分の信号における基本周波数成分の信号に対する2次以上の高調波成分の信号の周波数を含まないような周波数特性とされていてもよい。
【0027】
そして、このような構成によれば、第2フィルタの構成上、第2の周波数帯域における信号レベルの減衰量が、第1のフィルタのみの場合に比べて劣化した場合であっても、この第2の周波数帯域内に高調波成分の信号が現れないようにすることができるので、ノイズをさらに有効に抑制することができる。
【0028】
さらにまた、前記第1のフィルタは、LC型のローパスフィルタとされていることが好ましい。
【0029】
そして、このような構成によれば、PWM信号からアナログの音声信号を効率的に取り出すことができる。
【0030】
また、前記第2のフィルタは、互いに並列に接続されたインダクタおよび抵抗と、前記インダクタおよび前記抵抗に直列に接続されたキャパシタとを備えることが好ましい。
【0031】
そして、このような構成によれば、第2フィルタを簡易に形成することができ、さらなる小型化および低コスト化を図ることができる。
【0032】
さらに、前記第2のフィルタに配設され、第2のフィルタ本体を前記信号出力ラインに対して接続状態または切断状態にするスイッチと、前記スピーカによって出力される音声の出力レベルを検出する出力レベル検出手段と、この出力レベル検出手段によって検出された前記出力レベルが、前記出力レベルの増加にともなって帯域幅が広がる前記ノイズ成分の信号が存在するノイズ帯域を、前記第2の周波数帯域に至らせるような出力レベルの場合に、前記スイッチを制御して前記第2のフィルタを前記信号出力ラインに対して切断状態にするスイッチ制御手段とを備えることが好ましい。
【0033】
そして、このような構成によれば、音声の出力レベルの増加にともなって、ノイズ帯域が第2の周波数帯域に至る場合には、スイッチによって第2のフィルタを信号出力ラインに対して切断状態にすることによって、第2の周波数帯域を有しない第1のフィルタのみを用いるようにすることができるので、第1フィルタと第2フィルタとの合成された周波数特性のうちの第1フィルタの周波数特性よりも信号レベルの減衰量が小さい部分(後述するピーク特性)によって、この部分まで広がったノイズ帯域に含まれる信号の信号レベルが増加することを未然に回避することができる。
【0034】
さらにまた、前記第2のフィルタは、互いに並列に接続されたインダクタおよび抵抗と、前記インダクタおよび前記抵抗に直列に接続され、かつ、互いに並列に接続された複数個のキャパシタと、これら複数個のキャパシタのそれぞれを前記信号出力ラインに対して接続状態または切断状態にすることが可能な前記キャパシタと同数のスイッチとによって形成され、D級アンプ本体は、さらに、前記基本周波数を変更可能とされた周波数可変手段と、所定の前記キャパシタを接続状態とするための前記スイッチの制御を行うスイッチ制御手段とを備え、前記スイッチ制御手段は、前記周波数可変手段によって前記基本周波数が変更された場合に、前記スイッチの制御として、前記第2のフィルタの周波数特性を、前記第1のフィルタの周波数特性と合成された状態において、変更後の前記基本周波数における信号レベルの減衰量が前記第1のフィルタのみの周波数特性による変更後の前記基本周波数における信号レベルの減衰量よりも大きくなるような周波数特性とするための前記スイッチの制御を行うように形成されていることが好ましい。
【0035】
そして、このような構成によれば、基本周波数が変更された場合であっても、変更後の基本周波数における信号レベルの減衰に適合したキャパシタを接続状態とすることができるので、基本周波数の変化にかかわらずノイズを安定的に抑制することができる。
【0036】
また、前記基本周波数の変更前および変更後のいずれにおいても、前記第2のフィルタの周波数特性は、前記第1のフィルタの周波数特性と合成された状態において、変更前または変更後の基本周波数を含む第1の周波数帯域における信号レベルの減衰量が、前記第1のフィルタのみの周波数特性による前記第1の周波数帯域における信号レベルの減衰量よりも大きくなるとともに、前記第1の周波数帯域に高周波数側において連なる第2の周波数帯域における信号レベルの減衰量が、前記第1のフィルタのみの周波数特性による前記第2の周波数帯域における信号レベルの減衰量よりも小さくなるような周波数特性とされ、D級アンプ本体は、さらに、前記スピーカによって出力される音声の出力レベルを検出する出力レベル検出手段を備え、前記スイッチ制御手段は、前記出力レベル検出手段によって検出された前記出力レベルが、前記出力レベルの増加にともなって帯域幅が広がる前記ノイズ成分の信号が存在するノイズ帯域を、前記第2の周波数帯域に至らせるような出力レベルの場合に、前記スイッチを制御して前記第2のフィルタを前記信号出力ラインに対して切断状態にするように形成されていることが好ましい。
【0037】
そして、このような構成によれば、基本周波数の変更前および変更後のいずれにおいても、音声の出力レベルの増加にともなって、ノイズ帯域が第2の周波数帯域にまで広がる場合には、スイッチによって第2のフィルタを信号出力ラインに対して切断状態にすることによって、第2の周波数帯域を有しない第1のフィルタのみを用いるようにすることができるので、基本周波数の変更前および変更後のいずれにおいても、第1フィルタと第2フィルタとの合成された周波数特性のうちの第1フィルタの周波数特性よりも信号レベルの減衰量が小さい部分(後述するピーク特性)によって、この部分まで広がったノイズ帯域に含まれる信号の信号レベルが増加することを未然に回避することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、小型かつ安価な構成でありながらノイズを十分に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るD級アンプの第1実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。
【0040】
なお、従来と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0041】
図1に示すように、本実施形態におけるD級アンプ18は、従来と同様に、アンプ本体である増幅手段としての増幅部2を有しており、この増幅部2は、音源(例えば、記憶媒体に記憶された音声情報を読み取って音声信号に変換する読取り装置)側から入力された音声信号を、PWM信号に変換した上で増幅させ、増幅が行われた後のPWM信号を後段に出力するようになっている。なお、増幅部2に入力される音声信号は、アナログの音声信号またはデジタルの音声信号のいずれであってもよい。
【0042】
また、増幅部2の後段には、第1のフィルタとしての第1フィルタ19が接続されており、この第1フィルタ19は、信号出力ライン5に直列に接続されたインダクタ6と、信号出力ライン5に並列に接続されたキャパシタ7とからなるLC型のローパスフィルタとされている。この第1フィルタ19は、増幅部2から出力されたPWM信号をアナログ音声信号に変換し、変換されたアナログ音声信号を、信号出力ライン5に出力するようになっている。
【0043】
この第1フィルタ19は、図11に示したものと同様の周波数特性を有しており、この周波数特性によって、PWM信号に含まれるカットオフ周波数fcよりも高い周波数を有するノイズ成分の信号に対する当該信号の周波数に応じた信号レベルの減衰が可能とされている。ただし、この第1フィルタ19の周波数特性だけでは、ノイズ成分の信号の基本周波数における信号レベルの減衰量が十分なものとはならない。
【0044】
そこで、本実施形態において、第1フィルタ19の後段には、第2のフィルタとしての第2フィルタ20が、信号出力ライン5に対して並列に接続されている。
【0045】
この第2フィルタ20は、信号出力ライン5に対して並列かつ互いに並列に接続されたインダクタ22および抵抗23と、信号出力ライン5に対して並列かつインダクタ22および抵抗23に対して直列に接続されたキャパシタ24とによって構成されている。なお、インダクタ22は、コイルであってもよい。また、キャパシタ24は、コンデンサであってもよい。
【0046】
このように構成された第2フィルタ20は、PWM信号に含まれたノイズ成分の信号に対する当該信号の周波数に応じた信号レベルの減衰が可能な所定の周波数特性を有している。
【0047】
すなわち、図2に示すように、第2フィルタ20の周波数特性は、第1フィルタ19の周波数特性と合成された合成特性(図2における実線部のグラフ)の状態において、ノイズ成分の信号の基本周波数fにおける信号レベルの減衰量A1+2が、第1フィルタ19のみの周波数特性による基本周波数fにおける信号レベルの減衰量Aよりも大きくなるような周波数特性とされている。
【0048】
このような構成によれば、第1フィルタ19と第2フィルタ20との合成特性によって、基本周波数成分の信号の信号レベルを十分に減衰させることができる。
【0049】
また、第2フィルタ20が信号出力ライン5に対して並列に接続されていることによって、第2フィルタ20には、可聴帯域の信号を含む大電流(例えば、5.0〔A〕)を流さずに、ノイズ成分の信号を含む小電流(例えば、0.2〔A〕)のみが流れるようにすることができる。これにより、第2フィルタ20のインダクタ22を、第1フィルタ19のインダクタ6よりも小型にすることができ、また、抵抗23およびキャパシタ24についても、小型にすることができる。
【0050】
したがって、本実施形態においては、小型かつ安価な構成でありながらノイズを十分に抑制することができる。
【0051】
上記構成に加えて、さらに、本実施形態において、第2フィルタ20の周波数特性は、第1フィルタ19の周波数特性との合成特性の状態において、図2に示すように、基本周波数fを含む所定の帯域幅を有する第1の周波数帯域(以下、第1周波数帯域BWと称する)内における信号レベルの減衰量が、基本周波数fにおいて最大となり、かつ、第1周波数帯域BWにおける信号レベルの減衰量が、第1フィルタ19のみの周波数特性による第1周波数帯域BWにおける信号レベルの減衰量よりも大きくなるような周波数特性とされている。
【0052】
ここで、図2に示すような第1周波数帯域BW内における合成特性のように、信号レベルの減衰量が一端急激に増加した後に急激に減少する特性(以下、ディップ(DIP)特性と称する)は、前述したインダクタ22、抵抗23およびキャパシタ24からなる第2フィルタ20を第1フィルタ19の後段に設けることによって実現することができる。
【0053】
そして、本実施形態においては、このようなディップ特性が、前述のように基本周波数fにおいて最大の信号レベルの減衰量を示すように、インダクタ22のインダクタンス、抵抗23の抵抗値およびキャパシタ24の容量が設定されている。
【0054】
これにより、基本周波数成分の信号の信号レベルをさらに有効に減衰させることができる。
【0055】
ところで、他励方式のD級発振(増幅)方式においては、図3(a)(b)に示すように、スピーカ3から出力される音声の出力レベル(換言すれば、音量)が増加すると、基本周波数fが不動のまま、ノイズ成分の信号が存在する周波数帯域であるノイズ帯域の帯域幅が、基本周波数を中心として高周波数側および低周波数側に広がることが知られている。具体的には、図3(a)においては、音声の出力レベルが小さいため、ノイズ帯域NBWは基本周波数fの一点のみに止まっているが、図3(b)においては、音声の出力レベルが増加したことにより、基本周波数fに対して高周波数側および低周波数側に広がったノイズ帯域NBWが形成されている。なお、ノイズ帯域が基本周波数fから広がる場合には、広げられた後のノイズ帯域内のノイズ信号の信号レベルは、ノイズ帯域が基本周波数fのみに止まっている場合における信号レベルよりも小さくなる。
【0056】
本実施形態においては、このように、音声の出力レベルの増加にともなって、第1周波数帯域BW内における所定の範囲にわたる広さのノイズ帯域NBWが形成されたとしても、第1周波数帯域BW内におけるディップ特性により、第1フィルタ19のみの周波数特性に比べて、ノイズ帯域NBWに含まれるノイズ信号の信号レベルを有効に減衰させることができる。
【0057】
一方、自励方式のD級発振方式においては、図示はしないが、音声の出力レベルの増加にともなって基本周波数が低周波数側に移動するため、第1周波数帯域BW内におけるノイズ帯域(基本周波数から広がったもの)の占有率は、他励方式の場合に比べて低くなる傾向にある。しかし、この自励方式の場合においても、図2の合成特性を適用すれば、他励方式の場合と同様に、第1周波数帯域BW内に形成されるノイズ帯域に含まれるノイズ信号を有効に抑制することができることに代りはない。
【0058】
上記構成に加えて、さらに、本実施形態において、第2フィルタ20の周波数特性は、第1フィルタ19の周波数特性との合成特性の状態において、図2に示すように、第1周波数帯域BWに高周波数側において連なる所定の帯域幅を有する第2の周波数帯域(以下、第2周波数帯域BWと称する)における信号レベルの減衰量が、第1フィルタ19のみの周波数特性による第2周波数帯域BWにおける信号レベルの減衰量よりも小さくなるような周波数特性とされている。さらに、第2フィルタ20の周波数特性は、合成特性の状態において、第2周波数帯域BW内に、ノイズ成分の信号における基本周波数成分の信号に対する2次以上の高調波成分の信号の周波数を含まないような周波数特性とされている。なお、図2においては、2次高調波成分の信号の周波数fが、第2周波数帯域BWに対して高周波数側に位置している。
【0059】
ここで、図2に示すような第2周波数帯域BW内における合成特性のように、信号レベルの減衰量が一旦急激に減少した後に急激に増加する特性(以下、ピーク特性と称する)は、前述したインダクタ22、抵抗23およびキャパシタ24からなる第2フィルタ20の構成上、周波数特性の一部として示されることを余儀なくされる。
【0060】
しかし、本実施形態においては、このようなピーク特性が生じたとしても、このピーク特性が示される第2周波数帯域BW内に、基本周波数成分の信号に対する高周波成分の信号が現れないようにすることができるので、ノイズ信号における高周波成分の信号を有効に抑制することができる。
【0061】
以上の構成を有する本実施形態のD級アンプ18によれば、小型かつ安価な構成でありながらノイズが十分に抑制された聴取品質に優れた音声を出力(再生)することができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るD級アンプの第2実施形態について図4および図5を参照して説明する。
【0063】
なお、第1実施形態と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0064】
図4(a)、(b)に示すように、本実施形態におけるD級アンプは、第1実施形態と同様に、ディップ特性およびピーク特性を含む合成特性を示すことが可能とされている。
【0065】
また、図5に示すように、本実施形態におけるD級アンプ26は、増幅部2、LC型のローパスフィルタからなる第1フィルタ19、および、第1フィルタ19の後段に、信号出力ライン5に対して並列に接続された第2のフィルタとしての第2フィルタ28を備えた点については、第1実施形態と同様である。
【0066】
ただし、本実施形態におけるD級アンプは、図4(c)に示すように、スピーカ3から出力される音声の出力レベルの増加にともなって、ピーク特性が示される第2周波数帯域BW(図4(a)、(b)参照)内にノイズ帯域(以下、強音側ノイズ帯域NBWと称する)が形成されることにより、強音側ノイズ帯域NBWに含まれるノイズ信号の信号レベルがピーク特性によって増加してしまうことを未然に回避するように構成されている点で、第1実施形態とは異なっている。
【0067】
より具体的には、図5に示すように、本実施形態におけるD級アンプ26は、増幅部2の前段に接続された出力レベル検出手段としての信号レベル検出部27を有しており、この信号レベル検出部27は、音源側から入力された音声信号の信号レベルを検出するようになっている。そして、信号レベル検出部27は、検出された音声信号の信号レベルと、予め取得されている増幅部2のゲインとに基づいて、スピーカ3から出力される音声の出力レベル(以下、音声出力レベルと称する)を予測することによって、音声出力レベルを検出するようになっている。
【0068】
さらに、本実施形態におけるD級アンプ26は、第2フィルタ28が、第1実施形態に示したインダクタ22、抵抗23およびキャパシタ24に加えて、キャパシタ24に直列に接続されたスイッチ29を有しており、このスイッチ29は、第2フィルタ28を信号出力ライン5に対して接続状態または切断状態にするようになっている。
【0069】
さらにまた、本実施形態におけるD級アンプ26は、信号レベル検出部27とスイッチ29との間に接続されたスイッチ制御手段としてのスイッチコントローラ31を有しており、このスイッチコントローラ31は、信号レベル検出部27から、音声出力レベルの検出(予測)結果を取得するようになっている。
【0070】
そして、スイッチコントローラ31は、取得された音声出力レベルが、音声出力レベルの増加にともなって帯域幅が広がるノイズ帯域を、第2周波数帯域BWに至らせるような音声出力レベルの場合には、スイッチ29を制御して第2フィルタ28を信号出力ライン5に対して切断状態にするようになっている。一方、スイッチコントローラ31は、取得された音声出力レベルが、ノイズ帯域を、第2周波数帯域BW内の周波数までは広げないような音声出力レベルの場合には、スイッチ29を制御して第2フィルタ28を信号出力ライン5に対して接続状態にするようになっている。
【0071】
より具体的な例としては、スイッチコントローラ31は、音声出力レベルが、図4(a)に示すような基本周波数fの一点のみに止まるノイズ帯域(以下、弱音側ノイズ帯域NBWと称する)を形成する弱音レベル(音量0)の場合や、図4(b)に示すような第1周波数帯域BW内における所定の範囲にわたる広さのノイズ帯域(以下、中音側ノイズ帯域NBWと称する)を形成する中音レベルの場合には、スイッチ29を閉路して第2フィルタ28を接続状態にする。なお、図4(b)において、中音側ノイズ帯域NBWの最大周波数は、第1周波数帯域BWの最大周波数に一致している。また、スイッチコントローラ31は、音声出力レベルが、弱音側ノイズ帯域NBWよりも広くかつ中音側ノイズ帯域NBWよりも狭い広さのノイズ帯域を形成する音声出力レベルの場合にも、スイッチ29を閉路して第2フィルタ28を接続状態にする。
【0072】
このようにして、第2フィルタ28が接続状態となった場合には、第2フィルタ28が機能して第1実施形態と同様の合成特性が示されることになり、基本周波数成分の信号を有効に抑制するばかりでなく、中音側ノイズ帯域NBW内に広がる周波数成分の信号をも有効に抑制することができる。
【0073】
一方、スイッチコントローラ31は、音声出力レベルが、図4(c)に示すような強音側ノイズ帯域NBWを形成する強音レベルの場合には、スイッチ29を開路して第2フィルタ28を切断状態にする。
【0074】
このようにして、第2フィルタ28が切断状態となった場合には、第2フィルタ28は機能せず、第1フィルタ19のみが機能して、第1フィルタ19のみの周波数特性が示されることになる。この場合には、基本周波数における信号レベルの減衰量は合成特性の場合よりも減少してしまうものの、第2周波数帯域BW内における合成特性に示されていたピーク特性が無くなるので、強音側ノイズ帯域NBWに含まれるノイズ信号がピーク特性によって増加することを未然に回避することができる。
【0075】
以上の構成を有する本実施形態のD級アンプ26においても、第1実施形態と同様に、小型かつ安価な構成でありながらノイズが十分に抑制された聴取品質に優れた音声を出力することができる。
【0076】
なお、本実施形態において、音声出力レベルの検出は、前述した信号レベル検出部27のように、必ずしも増幅部2の前段において行うことに限定される必要はなく、コンセプトに応じて種々の変更が可能である。例えば、音声出力レベルの検出は、増幅部2から第1フィルタ19に向かって出力されるPWM信号の検出結果に基づいて行うようにしてもよいし、また、第2フィルタ28からスピーカ3に向かって出力される音声信号の出力レベルを直接モニタすることによって行うようにしてもよい。
【0077】
(第3実施形態)
次に、本発明に係るD級アンプの第3実施形態について図6および図7を参照して説明する。
【0078】
なお、第1および第2実施形態と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0079】
図6(a)、(b)に示すように、本実施形態におけるD級アンプは、第1および第2実施形態と同様に、ディップ特性およびピーク特性を含む合成特性を示すことが可能とされている。
【0080】
また、図7に示すように、本実施形態におけるD級アンプ33は、増幅部2、LC型のローパスフィルタからなる第1フィルタ19、および、第1フィルタ19の後段に、信号出力ライン5に対して並列に接続された第2のフィルタとしての第2フィルタ34を備えた点については、第1および第2実施形態と同様である。
【0081】
さらに、図7に示すように、本実施形態におけるD級アンプ33は、第2フィルタ34におけるキャパシタ24に接続されたスイッチ29と、このスイッチ29を制御するスイッチコントローラ35とを備えた点については、第2実施形態と同様である。
【0082】
ただし、本実施形態におけるD級アンプは、図6(b)に示すように基本周波数が変化した場合においても、変化後における基本周波数成分の信号の信号レベルを有効に減衰させるように構成されている点で、第1および第2実施経形態とは異なっている。
【0083】
より具体的には、図7に示すように、本実施形態におけるD級アンプ33は、増幅部2に接続された周波数可変手段としての発振周波数コントローラ36を有しており、この発振周波数コントローラ36は、PWM信号の発振周波数を変更することによって、基本周波数を変更可能とされている。なお、発振周波数コントローラ36は、ラジオを聴く場合におけるラジオビートへの対策のために設けられたものであってもよい。
【0084】
また、本実施形態におけるD級アンプ33は、第2フィルタ34が、1個のみのキャパシタ24ではなく、信号出力ライン5に対して並列かつインダクタ22および抵抗23に対して直列かつ互いに並列に接続された複数個のキャパシタ24を備えている。各キャパシタ24は、互いに容量が等しいものであってもよいし、互いに容量が異なるものであってもよい。
【0085】
さらに、本実施形態におけるD級アンプ33は、第2フィルタ34が、1個のみのスイッチ29ではなく、各キャパシタ24にそれぞれ直列に接続されたキャパシタ24と同数の複数個のスイッチ29を備えており、これらのスイッチ29は、スイッチコントローラ35に接続されている。
【0086】
これらのスイッチ29は、スイッチコントローラ35による制御によって、対応するキャパシタ24のそれぞれを、信号出力ライン5に対して接続状態または切断状態にすることが可能とされている。
【0087】
さらにまた、本実施形態においては、スイッチコントローラ35が、発振周波数コントローラ36による発振周波数の制御結果を取得するようになっている。
【0088】
そして、スイッチコントローラ35は、発振周波数の制御結果が、発振周波数すなわち基本周波数の変更を示す場合には、スイッチ29の制御を行うことによって、第2フィルタ34の周波数特性を、第1フィルタ19の周波数特性と合成された合成特性の状態において、変更後の基本周波数における信号レベルの減衰量が第1フィルタ19のみの周波数特性による変更後の基本周波数における信号レベルの減衰量よりも大きくなるような所望の周波数特性とするようになっている。
【0089】
このスイッチ29の制御は、第2フィルタ34に所望の周波数特性を設定することが可能なキャパシタ24(複数個であってもよい)を接続状態とするためのスイッチ29の制御とされている。
【0090】
より具体的には、図6(a)、(b)に示すように、発振周波数コントローラ36による発振周波数の変更にともなって、基本周波数が図6(a)に示す周波数fから図6(b)に示す周波数f’に変更された場合には、スイッチコントローラ35は、図6(b)に示す新たな(変更後の)合成特性が得られるような第2フィルタ34の周波数特性を設定するためのスイッチ29の制御を行うようになっている。なお、図6(b)に示す新たな合成特性においては、ディップ特性およびピーク特性の部分が、図6(a)の状態からf’側へと移動し、また、ディップ特性における信号レベルの減衰量が最大となる周波数が、変更後の基本周波数f’に一致している。また、これともなって、第1周波数帯域BWおよび第2周波数帯域BWについても、変更後の基本周波数f’側に移動している。
【0091】
したがって、図6(b)に示す新たな合成特性においては、変更後の基本周波数f’における信号レベルの減衰量を、第1フィルタ19のみの周波数特性による変更後の基本周波数f’における信号レベルの減衰量よりも大きくすることができる。
【0092】
したがって、本実施形態によれば、基本周波数が変更された場合であっても、変更後の基本周波数における信号レベルの減衰に適合したキャパシタを接続状態とすることができるので、基本周波数の変化にかかわらずノイズを安定的に抑制することができる。
【0093】
なお、本実施形態においても、第2実施形態と同様に、信号レベル検出部27によって音声出力レベルを検出するように構成し、検出された音声出力レベルが強音レベルに達して、ノイズ帯域が基本周波数からピーク特性が示される第2周波数帯域BW内へと広がる場合には、スイッチコントローラ35によるスイッチ29の制御によって、第2フィルタ34を信号出力ライン5に対して切断状態にするようにしてもよい。ただし、この場合には、すべてのスイッチ29を開路することを要する。また、スイッチコントローラ35は、このような音声出力レベルに基づくスイッチ29の制御を、基本周波数の変更後においても同様に行うようにしてもよい。
【0094】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係るD級アンプの第1実施形態を示すブロック図
【図2】本発明に係るD級アンプの第1実施形態において、周波数特性を示すグラフ
【図3】本発明に係るD級アンプの第1実施形態において、(a)は、他励方式のD級発振方式において、音声の出力レベルが小さい場合におけるノイズ帯域の状態を説明し、(b)は、他励方式のD級発振方式において、音声の出力レベルが増加した場合におけるノイズ帯域の状態を説明するための説明図
【図4】本発明に係るD級アンプの第2実施形態において、(a)は、弱音側ノイズ帯域の形成状態を示し、(b)は、中音側ノイズ帯域の形成状態を示し、(c)は、強音側ノイズ帯域の形成状態を示す図
【図5】本発明に係るD級アンプの第2実施形態を示すブロック図
【図6】本発明に係るD級アンプの第3実施形態において、(a)は、基本周波数の変更前における周波数特性を、(b)は、基本周波数の変更後における周波数特性を示すグラフ
【図7】本発明に係るD級アンプの第3実施形態を示すブロック図
【図8】PWM信号を説明するための説明図であって、(a)は、デューテイ50%のPWM信号を示し、(b)は、デューティが50%よりも大きい場合のPWM信号を示す図
【図9】従来から採用されていたLC型のローパスフィルタを備えたD級アンプの一例を示すブロック図
【図10】一般的なD級増幅方式のPWM信号に含まれるノイズ成分の信号のスペクトラム分布を示す図
【図11】一般的なLC型のローパスフィルタの周波数特性を示すグラフ
【図12】ノイズ成分の基本周波数における信号レベルの減衰量を向上させるための従来の対策例の1つとしてのD級アンプを示すブロック図
【図13】図12に示すD級アンプの周波数特性を示すグラフ
【図14】ノイズ成分の基本周波数における信号レベルの減衰量を向上させるための従来の対策例の1つとしての図12とは異なるD級アンプを示すブロック図
【図15】図14に示すD級アンプの周波数特性を示すグラフ
【符号の説明】
【0096】
2 増幅部
3 スピーカ
5 信号出力ライン
18 D級アンプ
19 第1フィルタ
20 第2フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号をD級増幅方式を用いて増幅させ、増幅された前記音声信号をスピーカ側に出力するD級アンプであって、
音源側から入力された前記音声信号を、PWM信号に変換した上で増幅させ、増幅された後の前記PWM信号を後段に出力する増幅手段と、
この増幅手段の後段に接続され、前記増幅手段から出力された前記PWM信号をアナログ音声信号に変換し、変換された前記アナログ音声信号を、前記スピーカに向かう信号出力ラインに出力するように形成された所定のカットオフ周波数を有するローパスフィルタからなる第1のフィルタであって、前記PWM信号に含まれる前記カットオフ周波数よりも高い所定の周波数を有するノイズ成分の信号に対する当該信号の周波数に応じた信号レベルの減衰が可能な所定の周波数特性を示すように形成された第1のフィルタと、
この第1のフィルタの後段において、前記信号出力ラインに対して並列に接続され、前記ノイズ成分の信号に対する当該信号の周波数に応じた信号レベルの減衰が可能な所定の周波数特性を示すように形成された第2のフィルタと
を備え、
前記第2のフィルタの周波数特性は、前記第1のフィルタの周波数特性と合成された状態において、前記ノイズ成分の信号の基本周波数における信号レベルの減衰量が、前記第1のフィルタのみの周波数特性による前記基本周波数における信号レベルの減衰量よりも大きくなるような周波数特性とされていること
を特徴とするD級アンプ。
【請求項2】
前記第2のフィルタの周波数特性は、前記第1のフィルタの周波数特性と合成された状態において、前記基本周波数を含む所定の帯域幅を有する第1の周波数帯域における信号レベルの減衰量が、前記基本周波数において最大となり、かつ、前記第1の周波数帯域における信号レベルの減衰量が、前記第1のフィルタのみの周波数特性による前記第1の周波数帯域における信号レベルの減衰量よりも大きくなるような周波数特性とされていること
を特徴とする請求項1に記載のD級アンプ。
【請求項3】
前記第2のフィルタの周波数特性は、前記第1のフィルタの周波数特性と合成された状態において、前記第1の周波数帯域に高周波数側において連なる所定の帯域幅を有する第2の周波数帯域における信号レベルの減衰量が、前記第1のフィルタのみの周波数特性による前記第2の周波数帯域における信号レベルの減衰量よりも小さくなり、かつ、前記第2の周波数帯域内に、前記ノイズ成分の信号における基本周波数成分の信号に対する2次以上の高調波成分の信号の周波数を含まないような周波数特性とされていること
を特徴とする請求項2に記載のD級アンプ。
【請求項4】
前記第1のフィルタは、LC型のローパスフィルタとされていること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のD級アンプ。
【請求項5】
前記第2のフィルタは、互いに並列に接続されたインダクタおよび抵抗と、前記インダクタおよび前記抵抗に直列に接続されたキャパシタとを備えたこと
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のD級アンプ。
【請求項6】
前記第2のフィルタに配設され、第2のフィルタ本体を前記信号出力ラインに対して接続状態または切断状態にするスイッチと、
前記スピーカによって出力される音声の出力レベルを検出する出力レベル検出手段と、
この出力レベル検出手段によって検出された前記出力レベルが、前記出力レベルの増加にともなって帯域幅が広がる前記ノイズ成分の信号が存在するノイズ帯域を、前記第2の周波数帯域に至らせるような出力レベルの場合に、前記スイッチを制御して前記第2のフィルタを前記信号出力ラインに対して切断状態にするスイッチ制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載のD級アンプ。
【請求項7】
前記第2のフィルタは、互いに並列に接続されたインダクタおよび抵抗と、前記インダクタおよび前記抵抗に直列に接続され、かつ、互いに並列に接続された複数個のキャパシタと、これら複数個のキャパシタのそれぞれを前記信号出力ラインに対して接続状態または切断状態にすることが可能な前記キャパシタと同数のスイッチとによって形成され、
D級アンプ本体は、さらに、前記基本周波数を変更可能とされた周波数可変手段と、所定の前記キャパシタを接続状態とするための前記スイッチの制御を行うスイッチ制御手段とを備え、
前記スイッチ制御手段は、前記周波数可変手段によって前記基本周波数が変更された場合に、前記スイッチの制御として、前記第2のフィルタの周波数特性を、前記第1のフィルタの周波数特性と合成された状態において、変更後の前記基本周波数における信号レベルの減衰量が前記第1のフィルタのみの周波数特性による変更後の前記基本周波数における信号レベルの減衰量よりも大きくなるような周波数特性とするための前記スイッチの制御を行うように形成されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のD級アンプ。
【請求項8】
前記基本周波数の変更前および変更後のいずれにおいても、前記第2のフィルタの周波数特性は、前記第1のフィルタの周波数特性と合成された状態において、変更前または変更後の基本周波数を含む第1の周波数帯域における信号レベルの減衰量が、前記第1のフィルタのみの周波数特性による前記第1の周波数帯域における信号レベルの減衰量よりも大きくなるとともに、前記第1の周波数帯域に高周波数側において連なる第2の周波数帯域における信号レベルの減衰量が、前記第1のフィルタのみの周波数特性による前記第2の周波数帯域における信号レベルの減衰量よりも小さくなるような周波数特性とされ、
D級アンプ本体は、さらに、前記スピーカによって出力される音声の出力レベルを検出する出力レベル検出手段を備え、
前記スイッチ制御手段は、前記出力レベル検出手段によって検出された前記出力レベルが、前記出力レベルの増加にともなって帯域幅が広がる前記ノイズ成分の信号が存在するノイズ帯域を、前記第2の周波数帯域に至らせる場合に、前記スイッチを制御して前記第2のフィルタを前記信号出力ラインに対して切断状態にするように形成されていること
を特徴とする請求項7に記載のD級アンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−111693(P2009−111693A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281618(P2007−281618)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】