説明

DC−DCコンバータ

【課題】シリーズレギュレータの前段にスイッチングレギュレータが接続されるDC−DCコンバータにおいて、前記シリーズレギュレータの損失を最小限に抑える。
【解決手段】シリーズレギュレータ24の出力電圧Voutに比例した出力電圧Voutを分圧した分圧電圧Vdからシリーズレギュレータ24の制御トランジスタ52の入出力間電圧Vceが小さくなる方向の最小電圧値Vminを検出するピーク検出器26と、検出した最小電圧値Vminに基づき、シリーズレギュレータ24の制御トランジスタ52の入出力間電圧Vceが許容最小入出力間電圧値Vceminとなるようスイッチングレギュレータ22のスイッチング素子28に供給されるPWM信号Sswを調整するPWM駆動回路36を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリーズレギュレータの前段にスイッチングレギュレータが接続されたDC−DCコンバータ(直流−直流変換装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体スイッチにより非安定の直流電圧(入力電圧)をスイッチングして、所望の出力電圧を発生するスイッチングレギュレータは効率が高い電源であり消費電力が少ないという利点を有する。しかし、スイッチングレギュレータの出力電圧には、スイッチング動作を原因とする出力リップル(脈流)が発生する。このため、スイッチングレギュレータは、出力リップルの影響を受けにくいデジタル回路機器の電源に採用される。
【0003】
その一方、アナログ回路機器の電源には、出力リップルがほとんどない出力電圧が要求されるために、出力リップルが原理的に発生しないシリーズレギュレータが採用される。
【0004】
この場合、シリーズレギュレータは、非安定の直流電圧(入力電圧)と負荷との間に制御トランジスタが直列に接続され、入力電圧の変動に対して安定な出力電圧を確保するために、制御トランジスタへの入力電圧を出力電圧より数V高めに設定する必要がある。ところが、入力電圧を高めに設定すればするほどシリーズレギュレータの電力損失が大きくなる。
【0005】
シリーズレギュレータの電力損失を小さくするために、シリーズレギュレータの前段にスイッチングレギュレータを接続したDC−DCコンバータが、特許第2706740号(特許文献1)に開示されている。
【0006】
図6に、この特許文献1に開示されたDC−DCコンバータ2の回路図を示す。このDC−DCコンバータ2において、入力端子1から入力電圧Vinが入力され、コイルとダイオードを通じてスイッチングレギュレータ11の出力端子2に出力電圧Vswが出力される。出力端子2に出力された出力電圧Vswは、入力電圧としてシリーズレギュレータ10に供給され、制御トランジスタ7を介して出力端子8に出力電圧Voutとして出力される。
【0007】
シリーズレギュレータ10では、出力電圧Voutが抵抗器12、13で分圧され、この分圧電圧である比較電圧Vdと基準電圧発生器14の基準電圧Voutrefとが誤差増幅器9により比較され誤差増幅器9の出力により制御トランジスタ7が制御されることで、出力電圧Voutが基準電圧Voutrefに対応した電圧に安定化される。
【0008】
ここで、シリーズレギュレータ10の比較電圧Vdが、スイッチングレギュレータ11の誤差増幅器3にも供給される。誤差増幅器3により比較電圧Vdと基準電圧Vswrefとが比較され、誤差増幅器3の出力と発振回路4の出力とがゲート回路5を介して制御トランジスタ6を制御することで、スイッチングレギュレータ11の出力電圧Vswが、出力電圧Voutに制御トランジスタ7の入出力間電圧(降下電圧)Vceを加算した値に制御される。この場合、入出力間電圧Vceは、出力電流Ioutに比例して増減する。
【0009】
【特許文献1】特許第2706740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来技術に係るDC−DCコンバータ2においては、スイッチングレギュレータ11の誤差増幅器3の比較電圧Vdとして、シリーズレギュレータ10の比較電圧Vdを供給しているため、入出力間電圧Vceをできるだけ小さくしようとして基準電圧Vswrefを小さい電圧に設定している場合、出力電圧Vswの出力リップルの負側ピークが出力電圧Voutを下回る電圧となることがあり、この場合、シリーズレギュレータ10によるスイッチングレギュレータ11の出力電圧Vswに対する出力リップルの除去効果が消失するという欠点が表れる。この欠点を解決するためには、基準電圧Vswrefを、出力電圧Vswのリップルの負側ピークが出力電圧Voutを下回る電圧とならないような高い基準電圧Vswrefに設定する必要があるが、そのように設定すると、その分、シリーズレギュレータ10の電力消費が増加するという欠点があらわれる。
【0011】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、シリーズレギュレータのリップルの除去効果を維持し、かつシリーズレギュレータの入出力間電圧(降下電圧)を最小に維持することを可能とする、シリーズレギュレータの前段にスイッチングレギュレータが接続されたDC−DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るDC−DCコンバータは、シリーズレギュレータの前段にスイッチングレギュレータが接続されたDC−DCコンバータにおいて、以下の特徴(1)〜(4)を有する。
【0013】
(1)前記スイッチングレギュレータの出力電圧から、前記シリーズレギュレータの入出力間電圧が小さくなる方向の最小電圧値を検出するピーク検出器と、検出した前記最小電圧値に基づき、前記シリーズレギュレータの前記入出力間電圧が許容最小入出力間電圧値以上となるよう前記スイッチングレギュレータのスイッチング素子に供給するPWM信号を調整するPWM駆動回路と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この特徴(1)を有する発明によれば、PWM駆動回路が、スイッチングレギュレータの出力電圧からピーク検出器により検出した最小電圧値に基づき、シリーズレギュレータの入出力間電圧が許容最小入出力間電圧以上となるよう前記スイッチングレギュレータのスイッチング素子に供給されるPWM信号を調整するように構成しているので、シリーズレギュレータによるスイッチングレギュレータの出力電圧に対する出力リップルの除去効果が消失することなくシリーズレギュレータの電力損失を少なくすることができる。
【0015】
(2)前記シリーズレギュレータの出力電圧から、前記シリーズレギュレータの入出力間電圧が小さくなる方向の最小電圧値を検出するピーク検出器と、検出した前記最小電圧値に基づき、前記シリーズレギュレータの前記入出力間電圧が許容最小入出力間電圧値以上となるよう前記スイッチングレギュレータのスイッチング素子に供給するPWM信号を調整するPWM駆動回路と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この特徴(2)を有する発明によれば、PWM駆動回路が、シリーズレギュレータの出力電圧からピーク検出器により検出した最小電圧値に基づき、シリーズレギュレータが最小入出力間電圧値以上となるよう前記スイッチングレギュレータのスイッチング素子に供給されるPWM信号を調整するようにしているので、シリーズレギュレータによるスイッチングレギュレータの出力電圧に対する出力リップルの除去効果が消失することなくシリーズレギュレータの電力損失を少なくすることができる。
【0017】
(3)上記の特徴(1)又は(2)を有する発明において、前記PWM駆動回路は、前記シリーズレギュレータの出力電圧に前記シリーズレギュレータの前記許容最小入出力間電圧値を加えた電圧が、前記スイッチングレギュレータの前記出力電圧の前記最小電圧値に等しくなるように前記PWM信号を調整することを特徴とする。
【0018】
この特徴(3)を有する発明によれば、シリーズレギュレータによるスイッチングレギュレータの出力電圧に対する出力リップルの除去効果が消失することなくシリーズレギュレータの電力損失を最小にすることができる。
【0019】
(4)上記の特徴(1)又は(2)を有する発明において、前記ピーク検出器は、少なくとも前記PWM信号が前記スイッチングレギュレータの前記スイッチング素子を導通させるタイミング毎にリセットされ、リセットされた後に前記最小電圧値を検出してホールドするピークホールド回路であることを特徴とする。
【0020】
この特徴(4)を有する発明によれば、スイッチングレギュレータの出力電圧はスイッチング素子の導通時以降に最小となるので、スイッチングレギュレータ又はシリーズレギュレータの出力電圧値の最小電圧を確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、シリーズレギュレータの電力損失を少なくできる。また、この発明によれば、シリーズレギュレータによるスイッチングレギュレータの出力電圧に対する出力リップルの除去効果が消失することなく、換言すれば、シリーズレギュレータの出力電圧にリップルが現れることなく、かつシリーズレギュレータの電力損失を最小化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、この発明の一実施形態に係るDC−DCコンバータ20の構成を示す回路図である。
【0024】
このDC−DCコンバータ20は、基本的には、入力端子100に供給される非安定直流電圧である入力電圧Vinをスイッチングし、スイッチング周波数の出力リプルを含む安定化電圧である出力電圧Vswを出力するスイッチングレギュレータ22と、出力電圧Vswが入力電圧として供給されスイッチングレギュレータ22の出力電圧Vswに含まれるリップルが除去されてより安定化した出力電圧Voutを出力端子102に出力するシリーズレギュレータ24と、シリーズレギュレータ24の出力電圧Voutからシリーズレギュレータ24の入出力間電圧(降下電圧)Vceが小さくなる方向の最小電圧値Vminを検出するピーク検出器26とを備える。
【0025】
スイッチングレギュレータ22は、MOSFET等のスイッチング素子28と、ダイオード30と、コイル32と、コンデンサ34とを有する出力回路35と、ピーク検出器26により検出された最小電圧値Vminに基づきスイッチング素子28のデューティ(オン時間とオフ時間の時間比率)を調整するためのPWM(パルス幅変調)信号Sswをスイッチング素子28のゲート端子に供給するPWM駆動回路36とを備える。
【0026】
PWM駆動回路36は、比較電圧としての最小電圧値Vminと基準電圧発生器38からの基準電圧V2とが供給され誤差電圧Veを出力する誤差増幅器40と、PWM回路42とを備える。
【0027】
PWM回路42は、三角波Sstを発生する三角波発振器44と、三角波Sstと誤差電圧Veとを比較してデューティの調整されたPWM信号Swを出力回路35とピーク検出器26とに出力する比較器45とを備える。
【0028】
なお、ピーク検出器26の出力端子と誤差増幅器40の比較入力端子(図中、負入力端子)との間に、最小電圧値Vminを平滑する(直流化させる)図示しないローパスフィルタを設けてフィードバックの安定性をより向上させるように構成してもよい。
【0029】
シリーズレギュレータ24は、出力電圧Voutを分圧した分圧電圧Vdを出力する抵抗器(分圧器)46、48と、基準電圧V1を発生する基準電圧発生器50と、分圧電圧Vdと基準電圧V1を比較して出力端子102に所定の出力電圧Voutが得られるように制御トランジスタ52のベース端子をフィードバック制御する誤差増幅器55とを備える。制御トランジスタ52は、FETに代替することができる。
【0030】
ピーク検出器26は、PWM信号Sswが供給されスイッチング素子28を導通させるタイミング毎にリセット信号Srを出力する微分回路構成のリセット回路54と、リセット信号Srによりリセットされた後に、シリーズレギュレータ24の出力電圧Voutに比例した分圧電圧Vdの最小電圧値Vminを検出してホールド(保持)するピークホールド回路56とを備える。抵抗器46と抵抗器48による分圧比は既知であるので、ピークホールド回路56は、出力電圧Voutの最小値を検出するのと同等である。
【0031】
リセット回路54は、振幅制限用のダイオード58、60と、バイアス用の抵抗器62と、微分用のコンデンサ64とを備える。
【0032】
ピークホールド回路56は、分圧電圧Vdを検出するボルテージフォロワ66と、最小電圧値Vminを検出しホールドするダイオード68とコンデンサ70と、リセット信号Srによりスイッチング素子28の導通タイミング毎にコンデンサ70にホールドされている最小電圧値Vminを発生する電荷を放電する抵抗器72とMOSFET等の半導体素子74とを備える。
【0033】
基本的には、以上のように構成されかつ動作するシリーズレギュレータ24の前段にスイッチングレギュレータ22が接続されたDC−DCコンバータ20の動作について図2の定常状態の波形図を用いてより詳しく説明する。
【0034】
三角波発振器44から発生された一定振幅一定周期の三角波Sst(点線で示す信号)と、誤差増幅器40からの誤差電圧Ve(一点鎖線で示す電圧)がPWM回路42を構成する比較器45により比較されてデューティが調整されるPWM信号Ssw(2点鎖線で示す信号)が出力され、出力回路35を構成するスイッチング素子28のゲート端子とリセット回路54に供給される。
【0035】
この実施形態において、スイッチング素子28は、PWM信号Sswの立ち下がり時点(例えば、時点t1)から次の立ち上がり時点t2までの間ON状態(導通期間)とされ、PWM信号Sswの立ち上がり時点、例えば、時点t0(又は時点t2)から次の立ち下がり時点t1(又は時点t3)までの間OFF状態(非導通期間)とされる。
【0036】
非導通期間の時点t0〜時点t1の間において、出力電圧Vswは、コイル32とコンデンサ34にそれ以前の導通期間に蓄えられたエネルギが放出されることで保持されるので、スイッチング素子28が導通した時点t1では、出力電圧Vswは、図2の波形図から理解されるように出力リプル電圧幅の最小電圧に近い電圧となる。時点t1でスイッチング素子28が導通されるとコイル32による遅延があるので、その遅延時間分だけ遅れて最小電圧となり、その後、時点t1〜時点t2間でコイル32にエネルギが蓄えられながらコンデンサC34が充電されるので、出力電圧Vswは、時点t1〜時点t2間で増加する。
【0037】
したがって、出力電圧Vswには、PWM信号Sswの周期、換言すれば、スイッチング周波数に比例した周期で振幅が変動する出力リップルが現れる。
【0038】
ここで、シリーズレギュレータ24の制御トランジスタ52の入出力間のリップル除去効果(除去機能)は制御トランジスタ52の入出力間のストレイキャパシタンス等により無限大とはなり得ないので、この出力リップルの一部がシリーズレギュレータ24の出力電圧Voutに現れる。
【0039】
したがって、分圧電圧Vdにも、出力電圧Voutに現れている出力リップルの分圧電圧Vdに比例した分が載る。ただし、出力電圧Voutに現れる出力リップルはきわめて小さい値であるので、図2中の出力電圧Voutには描いていない。
【0040】
ピークホールド回路56の最小電圧値Vminをホールドするコンデンサ70は、スイッチング素子28が導通するタイミングのリセット信号Srにより半導体素子74がON状態となったときに、例えば、時点t1で最小電圧値Vminとなる直前の電圧に充電され、その後、分圧電圧Vdが低下すると、換言すればボルテージフォロワ66の出力電圧が低下するとダイオード68を通じてコンデンサ70の電荷が放電され、ダイオード68のカソード側の電圧が最小値となった時点で最小電圧値Vminがコンデンサ70にホールドされる(時点t1)。このホールド時点ta(図2参照)から次にリセットされる時点t3まで最小電圧値Vminが比較電圧としてPWM駆動回路36が駆動される。したがって、出力電圧Vswは、概ね、最小電圧値Vminに基づいて電圧値が制御されることとなる(例えば、時点t1〜t3の1周期で考えると、リセット時点t1からホールド時点taまでの期間を除いたホールド時点taから次のリセット時点t3までの間、最小電圧値Vminに基づいて出力電圧Vswの電圧値がフィードバック制御されることとなる。)。
【0041】
この場合、検出した最小電圧値Vminに基づきシリーズレギュレータ24の入出力間電圧Vceが制御トランジスタ52が通常の範囲(飽和しない能動の範囲)で動作する許容最小入出力間電圧値(最低入力電圧値ともいう。)Vcemin以上の値、好ましくは許容最小入出力間電圧値Vceminに等しい値になるように、基準電圧発生器38による基準電圧V2が設定される。
【0042】
以上説明したように上述した実施形態によれば、シリーズレギュレータ24の前段にスイッチングレギュレータ22を接続したDC−DCコンバータ20において、シリーズレギュレータ24の出力電圧Voutに比例した出力電圧Voutを分圧した分圧電圧Vdからシリーズレギュレータ24の制御トランジスタ52の入出力間電圧Vceが小さくなる方向の最小電圧値Vminを検出するピーク検出器26と、検出した最小電圧値Vminに基づき、シリーズレギュレータ24の制御トランジスタ52の入出力間電圧Vceが許容最小入出力間電圧値Vcemin以上となるようスイッチングレギュレータ22のスイッチング素子28に供給されるPWM信号Sswを調整するPWM駆動回路36を備える。
【0043】
この場合、PWM駆動回路36が、シリーズレギュレータ24の出力電圧Voutからピーク検出器26により検出した最小電圧値Vminに基づき、シリーズレギュレータ24が許容最小入出力間電圧値Vcemin以上(実際には、Vcemin又はVcemin以上でなるべく低い値)となるようスイッチングレギュレータ22のスイッチング素子28に供給されるPWM信号Sswを調整するようにしているので、シリーズレギュレータ24によるスイッチングレギュレータ22の出力電圧Vswに対する出力リップルの除去効果が消失することなくシリーズレギュレータ24の電力損失を最小化又は少なくすることができる。
【0044】
なお、図1例のDC−DCコンバータ20において、最小電圧値Vminは、シリーズレギュレータ24の出力電圧Voutの分圧電圧Vdから得るようにしているが、図3に示す他の実施形態に係るDC−DCコンバータ20Aに示すように、スイッチングレギュレータ22の出力電圧Vsw自体を抵抗器80、82により分圧した分圧電圧Vd´からシリーズレギュレータ24の入出力間電圧Vceが小さくなる方向の最小電圧値Vminを検出するように構成を変更してもよい。この場合、検出した最小電圧値Vminに基づきシリーズレギュレータ24の入出力間電圧Vceが制御トランジスタ52が通常の範囲(飽和しない能動の範囲)で動作する許容最小入出力間電圧値Vcemin以上となるように、基準電圧発生器38による基準電圧V2を再設定するだけで略同一の作用効果が達成される。
【0045】
PWM駆動回路36は、PWM信号Sswを調整する際、シリーズレギュレータ24の出力電圧Voutにシリーズレギュレータ24の制御トランジスタ52の許容最小入出力間電圧値Vceminを加えた電圧(Vout+Vcemin)が、スイッチングレギュレータ22の出力リップルを含む出力電圧Vswの最小値に等しい値となるように調整することで、シリーズレギュレータ24の出力電圧Voutにリップルが現れることがなく、かつシリーズレギュレータ24の電力損失を最小化することができる。
【0046】
また、ピーク検出器26は、PWM信号Sswが、スイッチングレギュレータ22のスイッチング素子28を導通させるタイミング毎(例えば、時点t1、t3等)にリセットされた後に、最小電圧値Vminを検出しホールドするピークホールド回路56を含む構成としており、スイッチングレギュレータ22の出力電圧Vswはスイッチング素子28の導通時以降に出力リップルを含む電圧値が最小となるので、スイッチングレギュレータ22及びシリーズレギュレータ24の出力電圧Vsw、Voutの最小値に対応する最小電圧値Vminを確実に検出することができる。
【0047】
なお、上述した実施形態において、ピーク検出器26によりピークを検出するタイミングは、PWM信号Sswの周期に一致させているが、これに限らず、PWM信号Sswの周期を分周又は逓倍した周期、あるいはPWM信号Sswの周期と非同期であってより高周波の周期で検出するようにしてもよい。
【0048】
上述した実施形態によれば、シリーズレギュレータ24の電力損失を少なくできる。また、シリーズレギュレータ24によるスイッチングレギュレータ22の出力電圧Vswに対する出力リップルの除去効果が消失することなく、換言すれば、シリーズレギュレータ24の出力電圧Voutにリップルが現れることなく、かつシリーズレギュレータ24の電力損失を最小化できる。
【0049】
図4は、図1例のピーク検出器26を備えるDC−DCコンバータ20のスイッチングレギュレータ22の出力電圧Vswと、シリーズレギュレータ24の出力電圧Voutのシミュレーション波形図、図5は、図1例のDC−DCコンバータ20において、ピーク検出器26を削除し、分圧電圧Vdを直接誤差増幅器40の比較入力端子に供給するように構成を変更した場合の従来技術に係るDC−DCコンバータのシミュレーション波形図である。
【0050】
図4及び図5を比較すれば、スイッチングレギュレータ22の出力電圧Vswの出力リップルの負側のピークに応じてシリーズレギュレータ24の出力電圧Voutに現れる負側のリップルが、図5例(従来技術)に比較して図4例(実施形態)では格段に低減されていることが理解される。
【0051】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の一実施形態に係るDC−DCコンバータの回路図である。
【図2】図1例のDC−DCコンバータの動作説明に供される波形図である。
【図3】他の実施形態に係るDC−DCコンバータの回路図である。
【図4】図1例のDC−DCコンバータによる出力電圧の波形図である。
【図5】従来技術に係るDC−DCコンバータによる出力電圧の波形図である。
【図6】従来技術に係るDC−DCコンバータの回路図である。
【符号の説明】
【0053】
20、20A…DC−DCコンバータ 22…スイッチングレギュレータ
24…シリーズレギュレータ 26…ピーク検出器
28…スイッチング素子 35…出力回路
36…PWM駆動回路 38、50…基準電圧発生器
40、55…誤差増幅器 42…PWM回路
44…三角波発振器 45…比較器
52…制御トランジスタ 54…リセット回路
56…ピークホールド回路 66…ボルテージフォロワ
74…半導体素子 Sst…三角波
Ssw…PWM信号 V1、V2…基準電圧
Vce…入出力間電圧(降下電圧) Vcemin…許容最小入出力間電圧値
Vd、Vd´…分圧電圧 Ve…誤差電圧
Vout、Vsw…出力電圧 Vmin…最小電圧値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリーズレギュレータの前段にスイッチングレギュレータが接続されたDC−DCコンバータにおいて、
前記スイッチングレギュレータの出力電圧から、前記シリーズレギュレータの入出力間電圧が小さくなる方向の最小電圧値を検出するピーク検出器と、
検出した前記最小電圧値に基づき、前記シリーズレギュレータの前記入出力間電圧が許容最小入出力間電圧値以上となるよう前記スイッチングレギュレータのスイッチング素子に供給するPWM信号を調整するPWM駆動回路と、
を備えることを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項2】
シリーズレギュレータの前段にスイッチングレギュレータを接続したDC−DCコンバータにおいて、
前記シリーズレギュレータの出力電圧から、前記シリーズレギュレータの入出力間電圧が小さくなる方向の最小電圧値を検出するピーク検出器と、
検出した前記最小電圧値に基づき、前記シリーズレギュレータの前記入出力間電圧が許容最小入出力間電圧値以上となるよう前記スイッチングレギュレータのスイッチング素子に供給するPWM信号を調整するPWM駆動回路と、
を備えることを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のDC−DCコンバータにおいて、
前記PWM駆動回路は、前記シリーズレギュレータの出力電圧に前記シリーズレギュレータの前記許容最小入出力間電圧値を加えた電圧が、前記スイッチングレギュレータの前記出力電圧の前記最小電圧値に等しくなるように前記PWM信号を調整する
ことを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項4】
請求項1又は2記載のDC−DCコンバータにおいて、
前記ピーク検出器は、少なくとも前記PWM信号が前記スイッチングレギュレータの前記スイッチング素子を導通させるタイミング毎にリセットされ、リセットされた後に前記最小電圧値を検出してホールドするピークホールド回路である
ことを特徴とするDC−DCコンバータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−125179(P2008−125179A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303819(P2006−303819)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】