説明

DLC接触面を有するシステム、該システムの潤滑方法及び該システム用潤滑油

少なくとも一方がDLC膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面を、更に低摩擦化し、安定的に低摩擦特性を維持するシステム、それに用いる潤滑油及び潤滑方法であって、該DLC接触面を有するシステム用潤滑油は、水素化分解鉱油、ワックス異性化鉱油及びポリ−α−オレフィン系基油の少なくとも1種からなり、且つ100℃における動粘度が2〜20mm/s、全芳香族含有量が5質量%以下、且つ硫黄含有量が0.005質量%以下である基油(X)を主成分とする潤滑油基油(A)及び硫黄含有モリブデン錯体(B)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方がダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面を備え、特に、該DLC接触面と、DLC膜を有していない非DLC接触面との両方を備える内燃機関等のシステム、該システムに用いる潤滑油、及び該潤滑油を利用したDLC接触面を有するシステムの潤滑方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球全体の温暖化、オゾン層の破壊など地球規模での環境問題がクローズアップされている。とりわけ地球全体の温暖化に大きな影響があると言われているCO削減については各国でその規制値の決め方をめぐって大きな関心を呼んでいる。
CO削減には、機械、装置等の摩擦損失によるエネルギー損失の低減、特に自動車の燃費の削減を図ることが大きな課題の一つである。エンジン等における、対向して相対的に運動する接触面、例えば、摺動面、回動面、転動面等を有する部品の摩擦を低減するために、該接触面を形成する材料や、該材料に適応した接触面を潤滑する潤滑剤が果たす役割は大きい。
上記接触面を形成する材料の役割は、エンジン等における摩擦摩耗環境が苛酷な部位に対して耐摩耗性に優れ、かつ低い摩擦係数を発現することであり、最近では種々の硬質薄膜材料の適用が進んでいる。例えば、一般のDLC材料は、空気中、潤滑油非存在下における摩擦係数が、TiN、CrN等の耐摩耗性の硬質被膜材料に比して低いことから低摩擦材料として期待されている。
【0003】
一方、潤滑油におけるエネルギー損失の低減対策として、例えば、エンジンの燃費対策としては、潤滑油の低粘度化による、流体潤滑領域における粘性抵抗及びエンジン内の攪拌抵抗の低減や、最適な摩擦調整剤及び各種添加剤の配合による、混合及び境界潤滑領域下での摩擦損失の低減等が提言されている。該摩擦調整剤としては、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)やモリブデンジチオホスフェート(MoDTP)等の有機Mo化合物を中心として多くの研究がなされており、従来の鋼材料からなる摺動面において、使用開始初期に優れた低摩擦係数を示す有機Mo化合物を配合した潤滑油が開発され、効果を上げている。
ところで、空気中において低摩擦特性に優れる一般のDLC材料は、潤滑油存在下においては、その摩擦低減効果が小さいことが報告されている(非特許文献1)。加えて、このDLC材料に、有機Mo化合物を含有する潤滑油を適用したとしても摩擦低減効果が十分発揮されないことがわかってきた(非特許文献2)。
【非特許文献1】日本トライボロジー学会予稿集・東京1999.5,p11−12,加納 他
【非特許文献2】World Tribology Congress 2001.9,Vienna,Proceeding p342,Kano et.al.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、少なくとも一方がDLC膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面を有するシステム、特に、該DLC接触面と、対向して相対的に運動するDLC膜を有していない一対の非DLC接触面との両方を備えたシステムにおいて、これら接触面を更に低摩擦化し、かつ、安定的に低摩擦特性を維持しうるDLC接触面を有するシステムを提供することにある。
本発明の別の課題は、前記DLC接触面を有するシステム、特に、DLC接触面と非DLC接触面との両方を備えたシステムを更に低摩擦化し、安定的に低摩擦特性を維持するために最適なDLC接触面を有するシステム用潤滑油を提供することにある。
本発明の他の課題は、前記DLC接触面を有するシステム、特に、DLC接触面と非DLC接触面との両方を備えたシステムを更に低摩擦化し、安定的に低摩擦特性を維持しながら潤滑できるDLC接触面を有するシステムの潤滑方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、少なくとも一方がDLC膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面を備え、該DLC接触面間に、以下に示す基油(X)を主成分とする潤滑油基油(A)及び硫黄含有モリブデン錯体(B)を含む潤滑油(L)を介在させたDLC接触面を有するシステムが提供される。
前記基油(X)は、水素化分解鉱油、ワックス異性化鉱油及びポリ−α−オレフィン系基油の少なくとも1種からなり、且つ100℃における動粘度が2〜20mm/s、全芳香族含有量が5質量%以下、硫黄含有量が0.005質量%以下を示す。
また本発明によれば、少なくとも一方がDLC膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面間に、上記潤滑油(L)を介在させて潤滑する前記システムの潤滑方法が提供される。
更に本発明によれば、少なくとも一方がDLC膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面を有するシステムを潤滑するための潤滑油であって、水素化分解鉱油、ワックス異性化鉱油及びポリ−α−オレフィン系基油の少なくとも1種からなり、且つ100℃における動粘度が2〜20mm/s、全芳香族含有量が5質量%以下、硫黄含有量が0.005質量%以下を示す基油(X)を主成分とする潤滑油基油(A)及び硫黄含有モリブデン錯体(B)を含むDLC接触面を有するシステム用潤滑油がが提供される。
更にまた本発明によれば、少なくとも一方がDLC膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面を潤滑するための、前記基油(X)を主成分とする潤滑油基油(A)及び硫黄含有モリブデン錯体(B)を含む潤滑油(L)の使用が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の潤滑油は、少なくとも一方がDLC膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面、例えば、摺動面、回動面、転動面等を低摩擦で潤滑することができ、その低摩擦特性を安定的に維持することができ、システムを構成する接触面の全てが前記DLC接触であるシステムに対しても有効であるが、特に、当該DLC接触面を1箇所以上と、非DLC接触面を1箇所以上を備えたシステムに対して有効である。また本発明の低摩擦運動システム及び潤滑方法は、いずれも本発明の上記潤滑油を利用するので、DLC接触面を有し、低摩擦性能が要求される各種機械、装置等における分野で幅広く省エネルギー対策に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のシステムは、少なくとも一方がDLC膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面を備える。該DLC接触面は、一方がDLC膜で被覆され、他方が、金属材料、非金属材料で形成されるか、又はこれらの表面にDLC膜以外の薄膜を被覆した材料により形成された面、若しくは両方の接触面がDLC膜で被覆された接触面を含む。
本発明のシステムは、システムに含まれる接触面の全てが前記DLC接触面であっても良いが、前記DLC接触面を1箇所以上、及びDLC膜を有していない金属材料、非金属材料で形成されるか、又はこれらの表面にDLC膜以外の薄膜を被覆した材料により形成された面からなる一対の非DLC接触面を1箇所以上備えることが好ましい。
【0008】
前記対向して相対的に運動する一対の接触面とは、対向する一方の面若しくは両方の面が運動することにより、相対的に両面が運動する摺動面、回動面、転動面等の様々な接触面を意味する。
ここで、DLC膜を構成するDLC材は、炭素元素を主として構成された非晶質であり、炭素同士の結合形態がダイヤモンド構造(SP結合構造)とグラファイト結合(SP結合)の両方から成る。具体的には、炭素元素だけから成るa−C(アモルファスカーボン)、水素を含有するa−C:H(水素アモルファスカーボン)、及びチタン(Ti)やモリブデン(Mo)等の金属元素を一部に含むMeCが挙げられる。本発明においては、上記DLC材料として大幅な摩擦低減効果が発揮される点から、特に水素を含まないa−C系材料により被覆された面を有するDLC接触面を備えることが好適である。
DLC膜を形成する基材としては特に制限はないが、例えば、鉄系材料が好適に使用できる。また、DLC膜の形成は、公知のPVD法又はCVD法等を利用して行うことができる。
【0009】
前記DLC接触面において、一方がDLC膜で被覆された面であり、他方がDLC膜で被覆されていない場合の他方の面を構成する材料、DLC膜を形成する基材、若しくは前記非DLC接触面を構成する材料は特に制限はないが、例えば、鉄系材料、アルミニウム系材料、マグネシウム系材料、チタン系材料等の金属系材料が挙げられる。特に、鉄系材料、アルミニウム系材料、マグネシウム系材料は、既存の機械、装置等における対向して相対的に運動する一対の接触面に適用し易く、また様々な分野で幅広く省エネルギー対策に貢献できる点で好ましい。このような他方の面等を構成する材料としては、樹脂、プラスティック、カーボン等の非金属系材料を使用することもできる。これら金属材料や非金属材料で構成される面は、更にDLC膜以外のTiN、CrN等の各種薄膜で被覆されていても良い。特に、各種薄膜は、鉄系材料、アルミニウム系材料、マグネシウム系材料又はチタン系材料等の金属材料基材面に形成されることが好ましい。
【0010】
上記鉄系材料としては特に制限はなく、高純度の鉄だけでなく、例えば、炭素、ニッケル、銅、亜鉛、クロム、コバルト、モリブデン、鉛、ケイ素、チタン又はこれら2種以上を任意に鉄と組合わせた各種鉄系合金も使用できる。具体的には、浸炭鋼SCM420、SCr420(JIS)等が挙げられる。
上記アルミニウム系材料としては特に制限はなく、高純度のアルミニウムだけでなく、各種のアルミニウム系合金が使用でき、例えば、シリコン(Si)を4〜20質量%及び銅(Cu)を1.0〜5.0質量%含む亜共晶アルミニウム合金又は過共晶アルミニウム合金等の使用が望ましい。アルミニウム合金の好適例としては、例えば、AC2A、AC8A、ADC12、ADC14(JIS)が挙げられる。
上記マグネシウム系材料としては、例えば、マグネシウム−アルミニウム−亜鉛(Mg−Al−Zn)系、マグネシウム−アルミニウム−希土類金属(Mg−Al−REM)系、マグネシウム−アルミニウム−カルシウム(Mg−Al−Ca)系、マグネシウム−亜鉛−アルミニウム−カルシウム(Mg−Zn−Al−Ca)系、マグネシウム−アルミニウム−カルシウム−希土類金属(Mg−Al−Ca−REM)系、マグネシウム−アルミニウム−ストロンチウム(Mg−Al−Sr)系、マグネシウム−アルミニウム−シリコン(Mg−Al−Si)系、マグネシウム−希土類金属−亜鉛(Mg−REM−Zn)系、マグネシウム−銀−希土類金属(Mg−Ag−REM)系又はマグネシウム−イットリウム−希土類金属(Mg−Y−REM)系、及びこれらの任意の組合わせに係る材料が好適に使用できる。具体的には、AZ91、AE42、AX51、AXJ、ZAX85、AXE522、AJ52、AS21、QE22又はWE43(ASTM)等が挙げられる。
【0011】
上記各接触面の表面粗さRaは、JIS B 0601−1994に準拠して測定することができ、その値は通常0.1μm以下、好ましくは0.08μm以下であることが接触面の運動の安定性面から好適である。Raが0.1μmを超えると局部的にスカッフィングを形成し、摩擦係数の大幅向上となる恐れがある。
上記DLC膜の被覆面又はDLC以外の薄膜で被覆された面は、表面硬さが、マイクロビッカース硬さ(10g荷重)でHv1000〜3500が好ましい。また、その膜厚は0.3〜2.0μmが好ましい。前記薄膜の表面硬さHvが1000未満、若しくは膜厚0.3μm未満では摩滅し易くなり、逆にHvが3500を超え、若しくは膜厚が2.0μmを超えると剥離し易くなる恐れがある。
上記DLC膜が形成されていない他方の接触面を形成する基材として鉄系材料を用いる場合、その表面硬さは、ロックウェル硬さで、CスケールにおいてHRC45〜60が好ましい。この場合は、カムフォロワー部材のように700MPa程度の高面圧下の接触運動条件においても、DLC膜の耐久性が維持できるので有効である。上記鉄系材料の表面硬さがHRC45未満では、DLC膜が高面圧下で座屈し剥離し易くなる恐れがある。
上記DLC膜が形成されていない他方の接触面を形成する基材としてアルミニウム系材料を用いる場合、その表面硬さは、ブリネル硬さHが80〜130であることが好ましい。アルミニウム系材料の表面硬さがH80未満ではアルミニウム系材料面が摩耗し易くなる恐れがある。
上記DLC膜が形成されていない他方の接触面を形成する基材としてマグネシウム系材料を用いる場合、その表面硬さは、ブリネル硬さHが45〜95であることが好ましい。マグネシウム系材料の表面硬さがH45未満ではマグネシウム系材料面が摩耗し易くなる恐れがある。
【0012】
本発明のシステム及び潤滑方法に用いる潤滑油(L)は、本発明のDLC接触面を有するシステム用潤滑油を用いることができる。
本発明の潤滑油は、基油(X)を主成分とする潤滑油基油(A)及び硫黄含有モリブデン錯体(B)を含み、必要により、摩擦調整剤(C)、金属系清浄剤(D)及びリン系摩耗防止剤(E)の少なくとも1種を含む。
前記基油(X)は、水素化分解鉱油、ワックス異性化鉱油及びポリ−α−オレフィン系基油の少なくとも1種からなる特定性状の基油である。
【0013】
基油(X)に用いられる水素化分解鉱油は、後述する性状を有する限り特に制限はなく、公知の方法により製造できる。
基油(X)に用いられるワックス異性化鉱油は、後述する性状を有する限り特に制限はなく、例えば、潤滑油の脱ろう工程で得られるノルマルパラフィンを多く含むワックス、スラックワックスあるいはフィッシャートロプシュ反応により得られるGTL(ガストゥリキッド)ワックスを公知の方法によりイソパラフィンに異性化する方法等により製造できる。また、ワックス異性化鉱油は、更に必要に応じ、蒸留、溶剤精製、溶剤脱ろう、水素化脱ろう、水素化精製等の工程を適宜組合せて製造することもできる。
基油(X)に用いられるポリ−α−オレフィン系基油としては、例えば炭素数2〜30の、好ましくは炭素数8〜16のα−オレフィンの重合物又は共重合物及びこれらの水素化物が挙げられる。具体的には、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物を特に好ましく使用できる。
【0014】
基油(X)の100℃における動粘度は2〜20mm/s、好ましくは3〜10mm/s、より好ましくは3.5〜5mm/sである。基油(X)の100℃における動粘度を2mm/s以上とすることによって油膜形成が十分であり、潤滑性に優れ、また、厳しい条件下での基油の蒸発損失がより小さい潤滑油を得ることができる。一方、100℃における動粘度を20mm/s以下とすることによって、基油の攪拌における流体抵抗が著しく大きくなることを避け、各潤滑箇所における摩擦抵抗の小さい潤滑油が得られる。
基油(X)の全芳香族含有量は、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは0〜2質量%である。該全芳香族含有量を低減することで、DLC接触面における低摩擦化及びその維持性をより高めることができる。
ここで、全芳香族含有量とは、ASTM D2549に準拠して測定した芳香族留分(aromatic fraction)含有量を意味し、通常この芳香族留分には、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、アントラセン、フェナントレン、及びこれらのアルキル化物、四環以上のベンゼン環が縮合した化合物、又はピリジン類、キノリン類、フェノール類、ナフトール類等のヘテロ芳香族を有する化合物等が含まれる。
【0015】
基油(X)の硫黄含有量は、0.005質量%以下、好ましくは0.002質量%以下であり、実質的に硫黄を含有しないことが好ましい。基油(X)に含まれる硫黄分を低減することで、DLC接触面の低摩擦化及びその維持性をより高めることができる。
基油(X)の粘度指数は特に制限はないが、通常80以上、特に100以上、更には120以上、より更には125以上が望ましく、その上限は通常200〜300である。基油(X)の粘度指数が高いものを選択することにより低温粘度特性に優れるだけでなく、摩擦低減効果に優れた潤滑油が得られる。
【0016】
前記潤滑油基油(A)は、前記基油(X)からなることが最も好ましいが、その他の基油を、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、例えば、潤滑油基油(A)全量基準で、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下混合しても良い。
その他の基油としては、上記性状を満たさない鉱油、マイルドな条件で得られる水素化分解油、ポリ−α−オレフィン系基油以外の合成油等が挙げられる。上記性状を満たさない鉱油としては、例えば、溶剤精製油、溶剤脱ろう油等が挙げられる。上記ポリ−α−オレフィン系基油以外の合成油としては、例えば、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、ジトリデシルグルタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、及びジオクチルセバケート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、及びペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル又はこれら2種以上の混合物等が挙げられる。尚、その他の基油を混合する場合、潤滑油基油(A)における硫黄含有量としては特に制限はないが、低摩擦特性をより維持し易い点で、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、又は実質的に硫黄を含有しないことが好ましい。
【0017】
前記(B)成分は、分子中に硫黄を含有する有機モリブデン錯体であり、例えば、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン等の酸化モリブデン、オルトモリブデン酸、パラモリブデン酸、(ポリ)硫化モリブデン酸等のモリブデン酸、これらモリブデン酸の金属塩、アンモニウム塩等のモリブデン酸塩、二硫化モリブデン、三硫化モリブデン、五硫化モリブデン、ポリ硫化モリブデン等の硫化モリブデン、硫化モリブデン酸、硫化モリブデン酸の金属塩又はアミン塩、塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン等のモリブデン化合物と、例えば、ジヒドロカルビルジチオカーバメート、ジヒドロカルビルジチオホスフェート、アルキル(チオ)キサンテテート、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、チオカーボネート、テトラヒドロカルビルチウラムジスルフィド、ビス(ジ(チオ)ヒドロカルビルジチオホスホネート)ジスルフィド、有機(ポリ)サルファイド、硫化エステル等の硫黄含有有機化合物あるいはその他の有機化合物との錯体を挙げることができる。
【0018】
(B)成分の好適例としては、硫化モリブデンジヒドロカルビルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジヒドロカルビルジチオカーバメート、オキシモリブデンジヒドロカルビルジチオカーバメート、あるいは、モリブデンチオ又はポリチオ−三核モリブデンにジチオカーバメート基が配位したもの等のモリブデンジチオカーバメート、硫化モリブデンジヒドロカルビルジチオホスフェート、硫化オキシモリブデンジヒドロカルビルジチオホスフェート、オキシモリブデンジヒドロカルビルジチオホスフェート等のモリブデンジチオホスフェートが挙げられ、モリブデンジチオカーバメートが最も好ましい。
ここで、ヒドロカルビル基は、炭素数2〜30の炭化水素基を示し、例えば、炭素数2〜30、好ましくは炭素数5〜18、より好ましくは炭素数6〜13の直鎖状又は分枝状アルキル基、炭素数6〜18、好ましくは炭素数10〜15のアルキル基、アルキルアリール基等の炭化水素基が挙げられ、特に炭素数6〜13の直鎖状又は分枝状のアルキル基であることが好ましい。
本発明の潤滑油において、(B)成分の含有割合は特に制限はないが、潤滑油全量基準で、モリブデン元素換算で通常0.001〜0.2質量%、好ましくは0.02〜0.1質量%であり、特に0.03〜0.1質量%であることが低摩擦性能に優れる点で望ましい。
【0019】
前記(C)成分として摩擦調整剤は、例えば、含酸素有機化合物又はアミン類が好ましく挙げられる。また、炭素数1〜40のエステル類、アミン類、アミド類、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類、ケトン類、アルデヒド類及びカーボネート類並びにこれらの誘導体の少なくとも1種も好ましく挙げられ、中でも、炭素数3〜30、より好ましくは炭素数3〜20の脂肪酸エステル類、脂肪族アミン類、脂肪酸アミド類、脂肪族アルコール類及び脂肪族カルボン酸類並びにこれらの誘導体の少なくとも1種又はこれらの2種以上の混合物が望ましい。
【0020】
前記含酸素有機化合物は、分子中に酸素を含有する有機化合物であれば良く、例えば、炭素、酸素及び酸素からなる化合物、分子中にこれら以外にフッ素塩素等のハロゲン、窒素、硫黄、リン、ホウ素、金属等を含む化合物のいずれであっても良い。
前記含酸素有機化合物としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エステル結合及びエーテル結合の少なくとも1つを有する含酸素有機化合物並びにこれらの誘導体が挙げられ、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基及びエステル結合の少なくとも1つを有する含酸素有機化合物並びにこれらの誘導体が好ましく、ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエステル結合の少なくとも1つを有する含酸素有機化合物並びにこれらの誘導体がより好ましく、ヒドロキシル基及びカルボキシル基の少なくとも1つを有する含酸素有機化合物並びにこれらの誘導体が更に好ましく、特にDLC接触面の摩擦をより低減できる点で、ヒドロキシル基を有する含酸素有機化合物及びその誘導体が好適である。このような化合物におけるヒドロキシル基は、2個以上であることが好ましい。また、含酸素有機化合物は、硫黄含有量が少ないか、硫黄を含まない化合物がより好ましい。
前記誘導体としては、炭素、酸素及び酸素からなる化合物に、例えば、窒素含有化合物、リン含有化合物、硫黄、硫黄含有化合物、ホウ素含有化合物、ハロゲン、ハロゲン含有化合物、金属、無機系又は有機系金属含有化合物、アルキレンオキサイドを反応させて得られる化合物等が代表的に挙げられる。
【0021】
前記含酸素有機化合物としては、例えば、アルコール類、カルボン酸類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、カーボネート類、これらに更にヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基及びエステル結合の少なくとも1つを有する含酸素有機化合物、これらの誘導体、及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0022】
前記アルコール類としては、例えば、1価アルコール、2価アルコール、3価以上のアルコール及びこれら2種以上の混合物等が挙げられる。
前記1価アルコールは、ヒドロキシル基を分子中に1つ有するものであり、例えば、アルキル基が直鎖状又は分枝状である炭素数1〜40の1価アルキルアルコール、アルケニル基が直鎖状又は分枝状であり、二重結合の位置が任意な炭素数2〜40の1価アルケニルアルコール、アルキル基が直鎖状又は分枝状であり、アルキル基及びヒドロキシル基の置換位置が任意である炭素数3〜40の1価(アルキル)シクロアルキルアルコール、アルキル基が直鎖状又は分枝状であり、アルキル基及びヒドロキシル基の置換位置が任意である(アルキル)アリールアルコール、6−(4−オキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−2,4−ビス(n−オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン又はこれら2種以上の混合物等が挙げられる。
【0023】
前記1価アルキルアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール等のブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール等のペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2,2−ジメチルブタノール等のヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−メチル−1−ヘキサノール、2−メチル−1−ヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、5−メチル−2−ヘキサノール、3−エチル−3−ペンタノール、2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、4,4−ジメチル−2−ペンタノール、3−メチル−1−ヘキサノール、4−メチル−1−ヘキサノール、5−メチル−1−ヘキサノール、2−エチルペンタノール等のヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−メチル−3−ヘプタノール、6−メチル−2−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−プロピル−1−ペンタノール、2,4,4−トリメチル−1−ペンタノール、3,5−ジメチル−1−ヘキサノール、2−メチル−1−ヘプタノール、2,2−ジメチル−1−ヘキサノール等のオクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、3−エチル−2,2−ジメチル−3−ペンタノール、5−メチルオクタノール等のノナノール、1−デカノール、2−デカノール、4−デカノール、3,7−ジメチル−1−オクタノール、2,4,6−トリメチルヘプタノール等のデカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール等のオクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、トリコサノール、テトラコサノール等が挙げられる。
【0024】
前記1価アルケニルアルコールとしては、例えば、エテノール、プロペノール、ブテノール、ヘキセノール、オクテノール、デセノール、ドデセノール、オレイルアルコール等のオクタデセノール等が挙げられる。
前記1価(アルキル)シクロアルキルアルコールとしては、例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、メチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、ブチルシクロヘキサノール、ジメチルシクロヘキサノール、シクロペンチルメタノール、シクロヘキシルメタノール、1−シクロヘキシルエタノール、2−シクロヘキシルエタノール等のシクロヘキシルエタノール、3−シクロヘキシルプロパノール等のシクロヘキシルプロパノール、4−シクロヘキシルブタノール等のシクロヘキシルブタノール、ブチルシクロヘキサノール、3,3,5,5−テトラメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
前記(アルキル)アリールアルコールとしては、例えば、フェニルアルコール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のメチルフェニルアルコール、クレオソール、エチルフェニルアルコール、プロピルフェニルアルコール、ブチルフェニルアルコール、3−メチル−6−tert−ブチルフェニルアルコール等のブチルメチルフェニルアルコール、ジメチルフェニルアルコール、ジエチルフェニルアルコール、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアルコール、2,4−ジ−tert−ブチルフェニルアルコール等のジブチルフェニルアルコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニルアルコール等のジブチルメチルフェニルアルコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニルアルコール等のジブチルエチルフェニルアルコール、2,4,6−トリ−tert−ブチル−4−ブチルフェニルアルコール等のトリブチルフェニルアルコール、α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール、2,4−ジ−tert−ブチル−α−ナフトール等のジブチルナフトール等が挙げられる。
【0025】
前記1価アルコールとしては、DLC接触面の摩擦をより低減でき、例えば内燃機関における高温条件においても揮発性が低く、摩擦低減効果が発揮できる点から、オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数12〜18の直鎖又は分枝のアルキルアルコールの使用が好ましい。
【0026】
前記2価アルコールは、ヒドロキシル基を分子中に2つ有するものであり、例えば、アルキル基又はアルケニル基が直鎖状又は分枝状であり、アルケニル基の二重結合の位置が任意な炭素数2〜40のアルキル又はアルケニルジオール、アルキル基が直鎖状又は分枝状であり、アルキル基及びヒドロキシル基の置換位置が任意である(アルキル)シクロアルカンジオール、アルキル基が直鎖状又は分枝状であり、アルキル基及びヒドロキシル基の置換位置が任意である炭素数2〜40の2価(アルキル)アリールアルコール、p−tert−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物、p−tert−ブチルフェノールとアセトアルデヒドとの縮合物又はこれら2種以上の混合物等が挙げられる。
【0027】
前記アルキル又はアルケニルジオールとしては、例えば、エチルングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ヘプタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,17−ヘプタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−イコサデカンジオール等が挙げられる。
【0028】
前記(アルキル)シクロアルカンジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール等が挙げられる。
前記2価(アルキル)アリールアルコールとしては、例えば、カテコール等のベンゼンジオール、メチルベンゼンジオール、エチルベンゼンジオール、p−tert−ブチルカテコール等のブチルベンゼンジオール、4,6−ジ−tert−ブチルレゾルシン等のジブチルベンゼンジオール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4,6−ジ−tert−ブチルレゾルシン)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)プロパン、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール等が挙げられる。
【0029】
前記2価アルコールとしては、DLC接触面の摩擦をより低減できる点から、エチルングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が好ましく使用できる。また、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)フェニルアルコール等の分子量300以上、好ましくは400以上の高分子量のヒンダードアルコールは、例えば、内燃機関における高温条件においても揮発性が低く、耐熱性に優れ、摩擦低減効果が発揮できるとともに、優れた酸化安定性も付与できる点で好ましい。
【0030】
前記3価以上のアルコールは、ヒドロキシル基を分子中に3つ以上有するものであり、通常3〜10価、好ましくは3〜6価の多価アルコールが用いられる。例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等のトリメチロールアルカン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、これらの重合体又は縮合物等が挙げられる。
前記重合体又は縮合物としては、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等のグリセリンの2〜8量体、ジトリメチロールプロパン等のトリメチロールプロパンの2〜8量体、ジペンタエリスリトール等のペンタエリスリトールの2〜4量体、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物等の分子内縮合化合物、分子間縮合化合物又は自己縮合化合物等が挙げられる。
【0031】
前記3価以上のアルコールとして、キシロース、アラビトール、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マントース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類を使用することもできる。
【0032】
前記3価以上のアルコールにおいては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等のトリメチロールアルカン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の3〜6価の多価アルコール及びこれらの混合物がより好ましく、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン及びこれらの混合物が更に好ましく、酸素含有量が20%以上、好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上である多価アルコールが特に好ましい。尚、6価を超える多価アルコールは粘度が高くなる。
【0033】
前記カルボン酸類は、カルボキシル基を1又は2以上有する化合物、例えば、脂肪族モノカルボン酸類、脂肪族多価カルボン酸類、炭素環カルボン酸類、複素環式カルボン酸類又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
前記脂肪族モノカルボン酸類としては、飽和脂肪族が直鎖状又は分枝状の炭素数1〜40の飽和脂肪族モノカルボン酸、不飽和脂肪族が直鎖状又は分枝状であり、不飽和結合の位置が任意である炭素数2〜40の不飽和脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
【0034】
前記飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、メタン酸、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、酪酸、イソ酪酸等のブタン酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸等のペンタン酸、カプロン酸等のヘキサン酸、ヘプタン酸、カプリル酸等のオクタン酸、ペラルゴン酸等のノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸等のドデカン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸等のテトラデカン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸等のヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸等のオクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸等が挙げられる。
前記不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸等のプロペン酸、プロピオール酸等のプロピン酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オレイン酸等のオクタデセン酸、ノナデセン酸、イコセン酸、ヘンイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸、ペンタコセン酸、ヘキサコセン酸、ヘプタコセン酸、オクタコセン酸、ノナコセン酸、トリアコンテン酸等が挙げられる。
【0035】
前記脂肪族多価カルボン酸としては、飽和脂肪族又は不飽和脂肪族が直鎖状又は分枝状であり、不飽和結合の位置が任意である炭素数2〜40の飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸、飽和又は不飽和脂肪族が直鎖状又は分枝状であり、不飽和結合の位置が任意である飽和又は不飽和脂肪族トリカルボン酸、飽和又は不飽和脂肪族が直鎖状又は分枝状であり、不飽和結合の位置が任意である飽和又は不飽和脂肪族テトラカルボン酸等が挙げられる。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、エタン二酸(シュウ酸)、マロン酸等のプロパン二酸、コハク酸、メチルマロン酸等のブタン二酸、グルタン酸、エチルマロン酸等のペンタン二酸、アジピン酸等のヘキサン二酸、ピメリン酸等のヘプタン二酸、スペリン酸等のオクタン二酸、アゼライン酸等のノナン二酸、セバシン酸等のデカン二酸、プロペン二酸、マレイン酸、フマル酸等のブテン二酸、シトラコン酸、メサコン酸等のペンテン二酸、ヘキセン二酸、ヘプテン二酸、オクテン二酸、ノネン二酸、デセン二酸等が挙げられる。
前記脂肪族トリカルボン酸としては、例えば、プロパントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ペンタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ヘプタントリカルボン酸、オクタントリカルボン酸、ノナントリカルボン酸、デカントリカルボン酸等が挙げられる。
【0036】
前記炭素環カルボン酸類としては、アルキル基、アルケニル基を有する場合、それらが直鎖状又は分枝状であり、二重結合の位置も任意であり、置換数、置換位置も任意である炭素数3〜40の、ナフテン環を有するモノ、ジ、トリ又はテトラカルボン酸、アルキル基、アルケニル基を有する場合、それらが直鎖状又は分枝状であり、二重結合の位置も任意であり、置換数、置換位置も任意である炭素数7〜40の芳香族モノカルボン酸類等の炭素数7〜40のアリール基を有するモノ、ジ、トリ又はテトラカルボン酸等が挙げられる。
前記ナフテン環を有するモノ、ジ、トリ又はテトラカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンモノカルボン酸、メチルシクロヘキサンモノカルボン酸、エチルシクロヘキサンモノカルボン酸、プロピルシクロヘキサンモノカルボン酸、ブチルシクロヘキサンモノカルボン酸、ペンチルシクロヘキサンモノカルボン酸、ヘキシルシクロヘキサンモノカルボン酸、ヘプチルシクロヘキサンモノカルボン酸、オクチルシクロヘキサンモノカルボン酸、シクロヘプタンモノカルボン酸、シクロオクタンモノカルボン酸、ショウノウ酸等のトリメチルシクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。
前記アリール基を有するモノ、ジ、トリ又はテトラカルボン酸としては、例えば、ベンゼンカルボン酸(安息香酸)、トルイル酸等のメチルベンゼンカルボン酸、エチルベンゼンカルボン酸、プロピルベンゼンカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸、トリメリット酸等のベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸等のベンゼンテトラカルボン酸、ナフトエ酸等のナフタリンカルボン酸、ヒドロアトロパ酸等のフェニルプロパン酸、アトロパ酸、ケイ皮酸等のフェニルプロペン酸、サリチル酸、炭素数1〜30のアルキル基を1又は2以上有するアルキルサリチル酸等が挙げられる。
【0037】
前記複素環式カルボン酸類は、カルボキシル基を分子中に1又は2以上有する複素環式カルボン酸類であり、例えば、フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸等のピリジンカルボン酸等の炭素数5〜40の複素環式カルボン酸類が挙げられる。
【0038】
前記エステル類は、エステル結合を1又は2以上有する含酸素有機化合物であり、例えば、脂肪族モノカルボン酸類のエステル、脂肪族多価カルボン酸類のエステル、炭素環カルボン酸のエステル、複素環式カルボン酸類のエステル又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。尚、エステル類中のヒドロキシル基又はカルボキシル基が全てエステル化された完全エステルでも良く、ヒドロキシル基又はカルボキシル基が一部残存した部分エステルであっても良い。
【0039】
前記脂肪族モノカルボン酸類のエステルは、上述の脂肪族モノカルボン酸類からなる群より選択される1種又は2種以上と、上述の1価、2価又は3価以上のアルコール類からなる群より選択される1種又は2種以上とのエステルが挙げられる。このようなエステルの好適例としては、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、グリセリントリオレート、ソルビタンモノオレート又はソルビタンジオレート等が挙げられる。
【0040】
前記脂肪族多価カルボン酸類のエステルは、上述の脂肪族多価カルボン酸類からなる群より選択される1種又は2種以上と、上述の1価、2価又は3価以上のアルコール類からなる群より選択される1種又は2種以上とのエステルが挙げられる。このようなエステルの好適例としては、ジブチルマレエート、ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等の炭素数2〜40、好ましくは炭素数4〜18、特に好ましくは炭素数6〜12のジカルボン酸類からなる群より選択される1種又は2種以上の多価カルボン酸類と、炭素数4〜40、好ましくは炭素数4〜18、特に好ましくは炭素数6〜14の1価アルコール類からなる群より選択される1種又は2種以上とのジエステル類、これらジエステル類、例えばジブチルマレート等と、炭素数4〜16のポリα−オレフィン等との共重合体、無水酢酸等にα−オレフィンを付加した化合物と、炭素数1〜40のアルコール類とのエステル等が挙げられる。
【0041】
前記炭素環類のエステルは、上述の炭素環カルボン酸類からなる群より選択される1種又は2種以上と、上述の1価、2価又は3価以上のアルコール類からなる群より選択される1種又は2種以上とのエステルが挙げられる。このようなエステルの好適例としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、サリチル酸エステル等の芳香族カルボン酸エステルが挙げられる。
【0042】
前記複素環式カルボン酸類のエステルとしては、上述の複素環式カルボン酸類からなる群より選択される1種又は2種以上と、上述の1価、2価又は3価以上のアルコール類からなる群より選択される1種又は2種以上とのエステルが挙げられる。
【0043】
前記エーテル類は、エーテル結合を1又は2以上有する含酸素有機化合物であり、例えば、飽和又は不飽和脂肪族エーテル類、芳香族エーテル類、環式エーテル類、多価アルコールのエーテル類又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
前記飽和又は不飽和脂肪族エーテル類としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−n−アミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジヘプタデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、ジノナデシルエーテル、ジイコシルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−n−アミルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチル−n−プロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、エチル−n−アミルエーテル、エチルイソアミルエーテル、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、メチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、エチルアリルエーテル等の炭素数1〜40の飽和又は不飽和脂肪族エーテル等が挙げられる。これら飽和又は不飽和脂肪族は直鎖状又は分岐状のいずれでも良く、不飽和結合の位置も任意である。
【0044】
前記芳香族エーテル類としては、例えば、アニソール、フェネトール、フェニルエーテル、ベンジルエーテル、フェニルベンジルエーテル、α−ナフチルエーテル、β−ナフチルエーテル、ポリフェニルエーテル、パーフルオロエーテル等が挙げられる。これらは直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和脂肪族基を有していても良く、不飽和結合の位置は任意であり、また、その置換位置も数も任意である。これらは使用時に液状、特に常温で液状であることが好ましい。
前記環式エーテル類としては、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化トリメチレン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、グリシジルエーテル等の炭素数2〜40の環式エーテル類が挙げられる。これらは直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和脂肪族基、炭素環、飽和又は不飽和脂肪族基を有する炭素環を有していても良く、不飽和結合の位置は任意であり、また、その置換位置も数も任意である。
【0045】
前記多価アルコールのエーテル類は、上述の2価又は3価以上のアルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の多価アルコールと、上述の1価アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上とのエーテルである。ここで、エーテルとは、多価アルコールのヒドロキシル基が全てエーテル化された完全エーテルでも良く、ヒドロキシル基が一部残存した部分エーテルでも良いが、より低摩擦特性を示すことから部分エーテルであることが好ましい。
【0046】
前記ケトン類は、カルボニル結合を1又は2以上有する含酸素有機化合物であり、例えば、飽和又は不飽和脂肪族ケトン類、炭素環ケトン類、複素環ケトン類、ケトンアルコール類、ケトン酸類又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
前記飽和又は不飽和脂肪族ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ピナコロン、ジエチルケトン、ブチロン、ジイソプロピルケトン、メチルビニルケトン、メシチルオキシド、メチルフェブテノン等の炭素数1〜40の飽和又は不飽和脂肪族ケトン類等が挙げられる。これら飽和又は不飽和脂肪族は直鎖状又は分枝状のいずれでも良く、不飽和結合の位置は任意である。
前記炭素環ケトン類としては、例えば、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、バレロフェノン、ベンゾフェノン、ジベンジルケトン、2−アセトナフトン等の炭素数1〜40の炭素環ケトン類が挙げられる。これらは直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和脂肪族基を有していても良く、不飽和結合の位置は任意であり、また、その置換位置も数も任意である。
前記複素環ケトン類としては、例えば、アセトチエノン、2−アセトフロン等の炭素数1〜40の炭素環ケトン類が挙げられる。これらは直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和脂肪族基を有していても良く、不飽和結合の位置は任意であり、また、その置換位置も数も任意である。
前記ケトンアルコール類としては、例えば、アセトール、アセトイン、アセトエチルアルコール、ジアセトンアルコール、フェナシルアルコール、ベンゾイン等の炭素数1〜40のケトンアルコール類が挙げられる。これらは炭素環、複素環を有していても良く、また直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和脂肪族基を有する炭素環、複素環を有していても良く、不飽和結合の位置は任意であり、その置換位置も数も任意である。
前記ケトン酸類としては、例えば、ピルビン酸、ベンゾイルギ酸、フェニルピルビン酸等のα−ケトン酸類、アセト酢酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイル酢酸等のβ−ケトン酸、レブリン酸、β−ベンゾイルプロピオン酸等のγ−ケトン酸類等の炭素数1〜40のケトン酸類が挙げられる。
【0047】
前記アルデヒド類は、アルデヒド基を1又は2以上有する含酸素有機化合物であり、例えば、飽和又は不飽和脂肪族アルデヒド類、炭素環アルデヒド類、複素環アルデヒド類又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
前記飽和又は不飽和脂肪族アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ピバリンアルデヒド、カプロンアルデヒド、ペラルゴンアルデヒド、カプリンアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ラウリンアルデヒド、トリデシルアルデヒド、ミリスチンアルデヒド、ペンタデシルアルデヒド、パルミチンアルデヒド、マルガリンアルデヒド、ステアリンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、プロピオールアルデヒド、グリオキサール、スクシンジアルデヒド等の炭素数1〜40の飽和又は不飽和脂肪族アルデヒド類が挙げられる。これら飽和又は不飽和脂肪族は直鎖状又は分枝状のいずれでも良く、不飽和結合の位置は任意である。
前記炭素環アルデヒド類としては、例えば、ベンズアルデヒド、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、シンナムアルデヒド、α−ナフトアルデヒド、β−ナフトアルデヒド等の炭素数1〜40の炭素環アルデヒド類が挙げられる。これら飽和又は不飽和脂肪族は直鎖状又は分枝状のいずれでも良く、不飽和結合の位置は任意であり、置換位置も数も任意である。
前記複素環アルデヒド類としては、例えば、フルフラール等の炭素数1〜40の複素環アルデヒド類が挙げられる。これらは直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和脂肪族基を有していても良く、不飽和結合の位置は任意であり、また、その置換位置も数も任意である。
【0048】
前記カーボネート類は、カーボネート結合を1又は2以上有する含酸素有機化合物であり、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジノニルカーボネート、ジデシルカーボネート、ジウンデシルカーボネート、ジドデシルカーボネート、ジトリデシルカーボネート、ジテトラデシルカーボネート、ジペンタデシルカーボネート、ジヘキサデシルカーボネート、ジヘプタデシルカーボネート、ジオクタデシルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の炭素数1〜40の飽和又は不飽和脂肪族、炭素環、飽和又は不飽和脂肪族を有する炭素環、炭素環を有する飽和又は不飽和脂肪族等を有するカーボネート類が挙げられる。これら飽和又は不飽和脂肪族基は直鎖状又は分枝状のいずれでも良く、不飽和結合の位置は任意であり、その置換位置も数も任意である。
またこれらカーボネート類に、アルキレンオキサイドを付加したヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート類を用いることもできる。
【0049】
前記アルコール類は式R−(OH)nで、前記カルボン酸類は式R−(COOH)nで、前記エステル類は式R−(COO−R’)nで、前記エーテル類は式R−(O−R’)nで、前記ケトン類は式R−(CO−R’)nで、前記アルデヒド類は式R−(CHO)nで、前記カーボネート類は式R−(O−COO−R’)nで表すこともできる。
前記R及びR’はそれぞれ別個に、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等の炭化水素基又はこれら炭化水素基から1個又は2個以上の水素原子を除いた炭化水素基を示す。これら炭化水素基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エステル結合及びエーテル結合からなる群より選択される1種又は2種以上の基又は結合を更に有していても良く、炭素、水素及び酸素以外の元素、例えば、窒素、硫黄、複素環化合物、フッ素、塩素等のハロゲン、リン、ホウ素、金属等を含んでいても良い。
前記炭化水素基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは1〜40、より好ましくは2〜30、特に好ましくは3〜20である。
【0050】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝のペンチル基、直鎖又は分枝のヘプチル基、直鎖又は分枝のオクチル基、直鎖又は分枝のノニル基、直鎖又は分枝のデシル基、直鎖又は分枝のウンデシル基、直鎖又は分枝のドデシル基、直鎖又は分枝のトリデシル基、直鎖又は分枝のテトラデシル基、直鎖又は分枝のペンタデシル基、直鎖又は分枝のヘキサデシル基、直鎖又は分枝のヘプタデシル基、直鎖又は分枝のオクタデシル基、直鎖又は分枝のノナデシル基、直鎖又は分枝のイコシル基、直鎖又は分枝のヘンエイコシル基、直鎖又は分枝のドコシル基、直鎖又は分枝のトリコシル基、直鎖又は分枝のテトラコシル基等の炭素数1〜40のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数2〜30のアルキル基、特に好ましくは炭素数3〜20のアルキル基である。
【0051】
前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、直鎖又は分枝のプロペニル基、直鎖又は分枝のブテニル基、直鎖又は分枝のペンテニル基、直鎖又は分枝のヘキセニル基、直鎖又は分枝のヘプテニル基、直鎖又は分枝のオクテニル基、直鎖又は分枝のノネニル基、直鎖又は分枝のデセニル基、直鎖又は分枝のウンデセニル基、直鎖又は分枝のドデセニル基、直鎖又は分枝のトリデセニル基、直鎖又は分枝のテトラデセニル基、直鎖又は分枝のペンタデセニル基、直鎖又は分枝のヘキサデセニル基、直鎖又は分枝のヘプタデセニル基、直鎖又は分枝のオクタデセニル基、直鎖又は分枝のノナデセニル基、直鎖又は分枝のイコセニル基、直鎖又は分枝のヘンエイコセニル基、直鎖又は分枝のドコセニル基、直鎖又は分枝のトリコセニル基、直鎖又は分枝のテトラコセニル基等の炭素数2〜40のアルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素数2〜30のアルケニル基、特に好ましくは炭素数3〜20のアルケニル基である。
【0052】
前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜40のシクロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、特に好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基である。
前記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数4〜40のアルキルシクロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数5〜20のアルキルシクロアルキル基、特に好ましくは炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基である。尚、これらアルキルシクロアルキル基において構造異性体があるものは全ての構造異性体が含まれる。
【0053】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられ、好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。
前記アルキルアリール基としては、トリル基、エチルフェニル基、直鎖又は分枝のプロピルフェニル基、直鎖又は分枝のブチルフェニル基、直鎖又は分枝のペンチルフェニル基、直鎖又は分枝のヘキシルフェニル基、直鎖又は分枝のヘプチルフェニル基、直鎖又は分枝のオクチルフェニル基、直鎖又は分枝のノニルフェニル基、直鎖又は分枝のデシルフェニル基、直鎖又は分枝のウンデシルフェニル基、直鎖又は分枝のドデシルフェニル基等の1置換フェニル基、キシリル基、ジエチルフェニル基、ジプロピルフェニル基、2−メチル−6−tert−ブチルフェニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ベンジル)フェニル基等の同一又は異なる直鎖又は分枝のアルキル基を2以上有するアリール基等のアルキルアリール基が挙げられ、炭素数7〜40のアルキルアリール基、好ましくは炭素数7〜20のアルキルアリール基、特に好ましくは炭素数7〜12のアルキルアリール基である。ここで、アルキル基は更にアリール基、アルキルアリール基、アリールアルキルを含んでいても良く、また、構造異性体があるものは全ての構造異性体が含まれる。
前記アリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜40のアリールアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数7〜20のアリールアルキル基、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールアルキル基である。ここで、構造異性体があるものは全ての構造異性体が含まれる。
【0054】
前記含酸素有機化合物は、上述の各化合物の誘導体であっても同様に使用できる。誘導体としては、窒素含有化合物、硫黄、硫黄含有化合物、ホウ素含有化合物、ハロゲン元素、ハロゲン元素化合物、金属元素、有機又は無機金属含有化合物及びアルキレンオキサイドの少なくとも1種を反応させて得られる化合物等が挙げられるが特にこれらに限定されない。例えば、上記アルコール類、カルボン酸類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類及びカーボネート類からなる群より選択される少なくとも1種を硫化した化合物、フッ化、塩化等のハロゲン化した化合物、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸及びこれらの酸のエステル又は金属塩との反応生成物、金属、金属含有化合物又はアルキレンオキサイドと反応させたアルキレンオキサイド付加物、アミン化合物との反応生成物等が挙げられる。
中でも、アルコール類、カルボン酸類、アルデヒド類及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、アミン化合物との反応生成物、例えばマンニッヒ反応生成物、アシル化反応生成物、アミド等が好適に挙げられる。
【0055】
前記アミン化合物としては、例えば、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミンが挙げられる。より具体的には、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、プロピルブチルアミン等の炭素数1〜30の直鎖状又は分枝状のアルキル基を有するアルキルアミン、エテニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、オクテニルアミン、オレイルアミン等の炭素数2〜30の直鎖状又は分枝状のアルケニル基を有するアルケニルアミン、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン、ヘキサノールアミン、ヘプタノールアミン、オクタノールアミン、ノナノールアミン、メタノールエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールプロパノールアミン、エタノールブタノールアミン、プロパノールブタノールアミン等の炭素数1〜30の直鎖状又は分枝状のアルカノール基を有するアルカノールアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン等の炭素数1〜30の直鎖状又は分枝状のアルキレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン、ウンデシルジエチルアミン、ウンデシルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミン、オレイルプロピレンジアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン等の上記モノアミン、ジアミン、ポリアミンに炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物、N−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の複素環化合物、これらの化合物のアルキレンオキシド付加物、又はこれらの混合物等が挙げられる。
これら窒素化合物の中でもデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミン等の炭素数10〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基、直鎖状又は分枝状のアルキルアミン又は直鎖状又は分枝状のアルケニルアミンが好適に挙げられる。
これら含酸素有機化合物の誘導体の中でも、オレイン酸アミド等の上述の脂肪族モノカルボン酸類のうち、炭素数8〜20のカルボン酸と上述のアミン化合物とのアミドが好適に挙げられる。
【0056】
以上、含酸素有機化合物について説明したが、これらの中でも摩擦低減効果に優れることから、ヒドロキシル基を有するものが好ましい。また、ヒドロキシル基の中でも、カルボキシル基等のカルボニル基に直接結合したヒドロキシル基より、アルコール性ヒドロキシル基の方がより摩擦低減効果が優れていることから好ましい。更に、化合物中のこのようなヒドロキシル基の数は特に限定されないが、より摩擦低減効果に優れることからより多くのヒドロキシル基を有することが好ましい。しかし、前述の潤滑油基油等の媒体と共に使用する場合には、溶解性の点からヒドロキシル基の数は制限を受ける場合がある。
【0057】
前記脂肪族アミン類としては、炭素数6〜30、好ましくは炭素数8〜24、特に好ましくは炭素数10〜20の直鎖状又は分枝状の脂肪族炭化水素基を有するものが挙げられる。炭素数が6〜30の範囲外の場合には、摩擦低減効果が充分に得られない可能性がある。尚、当該範囲の直鎖状又は分枝状の脂肪族炭化水素基を有する場合には、その他の炭化水素基を有していても良い。
【0058】
前記炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
尚、前記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝状のいずれでも良く、アルケニル基の二重結合の位置は任意である。
【0059】
前記脂肪族アミン類としては、上述の炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状の脂肪族炭化水素基を有するモノアミン、ポリアミン、アルカノールアミン、イミダゾリン化合物等の各種アミン化合物又はこれらの誘導体が例示できる。
モノアミンとしては、例えば、ラウリルアミン、ラウリルジエチルアミン、パルミチンアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンが挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、ステアリルテトラエチレンペンタミン、オレイルプロピレンジアミンが挙げられる。
アルカノールアミンとしては、例えば、ラウリルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミンが挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、例えば、N−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリンが挙げられる。
前記誘導体としては、アルキレンオキシド付加物、酸変性化合物等が挙げられる。
アルキレンオキシド付加物としては、上述の各種アミン化合物中の窒素原子にアルキレンオキサイドを付加させたものが挙げられる。例えば、炭素数6〜28アルキサン基又はアルケニル基を有する第1級モノアミンに、アルキルオキサイドを付加させて得られるN,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキル又はアルケニルアミン、より具体的には、N,N−ジポリオキシエチレン−N−オレイルアミンが挙げられる。
酸変性化合物としては、例えば、上述の各種アミン化合物に、上述のカルボン酸類、好ましくは上述の脂肪族モノカルボン酸類、中でも炭素数2〜30の脂肪族モノカルボン酸類、上述の脂肪族多価カルボン酸類、中でもシュウ酸を含む炭素数2〜30の脂肪族多価カルボン酸類、上述の炭素環カルボン酸類、中でもフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を含む炭素数6〜30の炭素環カルボン酸類等を作用させて、アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したりアミド化したものが挙げられる。
【0060】
本発明の潤滑油において、より摩擦低減効果を改善するために(C)成分を添加することが好ましい。該(C)成分の含有割合は特に制限はないが、潤滑油全量基準で通常3.0質量%以下、好ましくは0.05〜3.0質量%、更に好ましくは0.1〜2.0質量%、特に好ましくは0.5〜1.4質量%である。
【0061】
前記(D)成分として金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属フェネート、あるいはアルカリ金属又はアルカリ土類金属カルボキシレート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ナフテネート又はこれら2種以上の混合物等が挙げられる。
アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム等が挙げられる。これら金属系清浄剤の金属としては、アルカリ土類金属が好ましく、特にカルシウムが望ましい。
【0062】
(D)成分は、中性、塩基性、過塩基性のものが挙げられ、そのいずれを用いても良く、中性アルカリ土類金属サリシレートは摩擦低減効果に特に優れる。また、塩基性又は過塩基性金属系清浄剤としては、例えば、炭酸カルシウム及び/又はホウ酸カルシウムを含有する金属系清浄剤が挙げられ、そのいずれも使用可能であるが、摩擦低減性能に特に優れる点で、ホウ酸カルシウムを含有する金属系清浄剤の使用が好ましい。
これらの中でも、アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属フェネート(硫黄架橋していないもの、例えば、アルキレン基で架橋したもの等)、あるいはアルカリ金属又はアルカリ土類金属カルボキシレート等の非硫黄系金属系清浄剤、特に炭酸カルシウム及び/又はホウ酸カルシウム含有アルカリ土類金属サリシレートの使用が好ましく、ホウ酸カルシウム含有アルカリ土類金属サリシレートの使用が特に好ましい。
尚、(D)成分は、摩擦特性を悪化させる場合があるが、この悪影響がより小さい点から中性アルカリ土類金属サリシレート、ホウ酸カルシウムを含有する塩基性又は過塩基性金属系清浄剤が好ましい。
【0063】
金属系清浄剤(D)の全塩基価は特に制限はないが、通常0〜500mgKOH/g、好ましくは10〜400mgKOH/gであり、10〜150mgKOH/g及び150〜350mgKOH/gのいずれか又はこれらを併用することが望ましい。
本発明の潤滑油において金属系清浄剤(D)は、よりスラッジの分散等の清浄性を改善するために必要により添加できる。該(D)成分の含有割合は特に制限はないが、内燃機関用に使用する場合は、潤滑油全量基準で、金属元素換算量で通常1質量%以下、好ましくは0.01〜1質量%、より好ましくは0.05質量%以上、その上限は硫酸灰分を低減する点で通常0.3質量%以下、特に0.2質量%以下が好ましい。
【0064】
前記(E)成分としてのリン系摩耗防止剤は、特に制限はなく、分子中にリンを含有する摩耗防止剤であれば良い。
(E)成分としては、例えば、炭素数1〜30の炭化水素基を有する亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、これらの亜鉛塩等の金属塩及びこれらのアミン塩等のリン化合物が挙げられる。
ここで、炭素数1〜30の炭化水素基としては、炭素数1〜30の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数1〜30の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜13のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルアリール基、又は炭素数7〜19のアリールアルキル基等のいずれかであることが望ましい。また、アルキル基やアルケニル基は、第1級、第2級及び第3級のいずれであっても良い。
【0065】
上記炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基及びテトラコシル基等のアルキル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基及びオレイル基等のオクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基及びテトラコセニル基等のアルケニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、エチルメチルシクロペンチル基、トリメチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、エチルジメチルシクロペンチル基、プロピルメチルシクロペンチル基、プロピルエチルシクロペンチル基、ジプロピルシクロペンチル基、プロピルエチルメチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、エチルメチルシクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、エチルジメチルシクロヘキシル基、プロピルメチルシクロヘキシル基、プロピルエチルシクロヘキシル基、ジプロピルシクロヘキシル基、プロピルエチルメチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、エチルメチルシクロヘプチル基、トリメチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基、エチルジメチルシクロヘプチル基、プロピルメチルシクロヘプチル基、プロピルエチルシクロヘプチル基、ジプロピルシクロヘプチル基及びプロピルエチルメチルシクロヘプチル基等のアルキルシクロアルキル基、フェニル基及びナフチル基等のアリール基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、エチルメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、プロピルメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルジメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基及びドデシルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基及びジメチルフェネチル基等のアリールアルキル基等が例示できる。
【0066】
上記炭化水素基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造が含まれ、また、アルケニル基の二重結合の位置、アルキル基のシクロアルキル基への結合位置、アルキル基のアリール基への結合位置、及びアリール基のアルキル基への結合位置は任意である。また、これら炭化水素基は、(ポリ)エチレンオキサイドや(ポリ)プロピレンオキサイド等の(ポリ)アルキレンオキサイドを有していても良い。
ここで、金属塩における金属は何ら制限はないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン、モリブデン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属及び亜鉛が好ましく、亜鉛が最も好ましい。
【0067】
また、ここでアミン塩におけるアミンは何ら制限はないが、例えば、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミンが挙げられる。より具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、及びプロピルブチルアミン等の炭素数1〜30のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルキルアミン;エテニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、オクテニルアミン及びオレイルアミン等の炭素数2〜30のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルケニルアミン;メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン、ヘキサノールアミン、ヘプタノールアミン、オクタノールアミン、ノナノールアミン、メタノールエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールプロパノールアミン、エタノールブタノールアミン及びプロパノールブタノールアミン等の炭素数1〜30のアルカノール基(これらのアルカノール基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルカノールアミン;メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン及びブチレンジアミン等の炭素数1〜30のアルキレン基を有するアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン;ウンデシルジエチルアミン、ウンデシルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミン、オレイルプロピレンジアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン等の上記モノアミン、ジアミン、ポリアミンに炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物やN−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の複素環化合物;これらの化合物のアルキレンオキシド付加物;及びこれらの混合物、あるいはアルキル又はアルケニルコハク酸イミドのような化合物等が例示できる。
これらアミン化合物の中でもデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン及びステアリルアミン等の炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アミン(これらは直鎖状でも分枝状でもよい)が好ましい例として挙げることができる。
【0068】
(E)成分の好適例としては、例えば、前記DLC接触面が、機械、装置の複数の接触面の一部又は主要部に適用される場合は、通常炭素数3〜24、好ましくは炭素数4〜18、更に好ましくは炭素数4〜12の第1級、第2級又は第3級のアルキル基を有するジチオリン酸が挙げられる。特に、炭素数4〜12の第1級アルキル基を有するジチオリン酸亜鉛(プライマリー型)及び第2級アルキル基を有するジチオリン酸亜鉛(セカンダリー型)が好ましく、第2級アルキル基を有するジチオリン酸亜鉛が望ましい。
(E)成分としてプライマリー型ジチオリン酸亜鉛とセカンダリー型ジチオリン酸亜鉛とを用いる場合の比率は、セカンダリー型ジチオリン酸亜鉛がリン質量比で通常50%以上、好ましくは60%以上となるように配合することが望ましい。本発明の潤滑油ではこれらジチオリン酸亜鉛が極めて有用である。
【0069】
(E)成分の別の好適例としては、例えば、前記DLC接触面が、機械、装置の複数の接触面の一部又は主要部、あるいは全部、特に主要部又は全部の接触面に適用される場合においては、非硫黄系リン化合物であり、例えば、炭素数3〜24、好ましくは炭素数4〜18、特に好ましくは炭素数4〜12の第1級、第2級又は第3級のアルキル基を有する亜リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステル、亜リン酸トリエステル、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステル、これらの金属塩及びこれらのアミン塩が挙げられる。中でも、リン酸エステル類、その金属塩及びこれらのアミン塩が好ましく、リン酸モノエステル及び/又はリン酸ジエステルの金属塩及びこれらのアミン塩(アミン錯体)が特に好ましい。
【0070】
本発明の潤滑油において(E)成分は、より耐磨耗性に優れる点及び過酷な接触面運動となった場合により摩擦低減効果が大きくなる点から必要に応じて添加することができる。該(E)成分の含有割合は特に制限はないが、通常、潤滑油全量基準で5質量%以下、好ましくは0.1〜5質量%である。また、本発明の潤滑油を内燃機関用に使用する場合は、(E)成分の含有割合を、潤滑油全量基準で、リン元素換算量で通常0.1質量%以下、好ましくは0.01〜0.1質量%、特に好ましくは0.06〜0.08質量%である。
尚、前記(E)成分は、摩擦特性を悪化させる場合があるが、この影響がより小さい点から、硫黄を含まない非硫黄リン系摩耗防止剤の使用が好ましい。
【0071】
本発明の潤滑油及び前述の潤滑油(L)には、要求される性能向上のため、必要に応じて公知の添加剤、例えば、(E)成分以外の摩耗防止剤、無灰分散剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、上記以外の他の摩擦調整剤、防錆剤、金属不活性化剤、界面活性剤、抗乳化剤、シール膨潤剤、消泡剤、着色剤及びこれらの混合物からなる群より選択される添加剤を配合することができる。
(E)成分以外の摩耗防止剤、極圧剤としては、公知の摩耗防止剤、極圧剤、例えば、硫化油脂、硫化エステル、硫化オレフィン、ジチオカーバメート及びその誘導体、ジチオリン酸誘導体等の硫黄含有摩耗防止剤、極圧剤が挙げられる。これらの硫黄含有摩耗防止剤は、少量、例えば、潤滑油全量基準で、硫黄元素換算で0.1質量%以下、あるいは全く配合しないことが望ましい。
【0072】
無灰分散剤としては、潤滑油に使用される公知の無灰分散剤が使用できる。好ましい無灰分散剤としては、例えば、ポリブテニルコハク酸イミド系分散剤、ポリブテニルベンジルアミン系分散剤、ポリブテニルアミン系分散剤、マンニッヒ系分散剤等が挙げられる。ここで、ポリブテニル基は、数平均分子量が700〜3500、好ましくは900〜2500のものを用いるのが良い。また、無灰分散剤として、ホウ素化合物誘導体、カルボン酸誘導体等も好ましく使用できる。
前記無灰分散剤を含有させる場合の含有割合は特に制限はないが、潤滑油全量基準で、通常0.1〜15質量%である。
酸化防止剤としては、潤滑油に使用される公知の酸化防止剤が使用でき、好ましくは、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等の無灰系酸化防止剤、モリブデン系酸化防止剤、銅系酸化防止剤等の金属系酸化防止剤が挙げられ、特にフェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤の使用が望ましい。
前記酸化防止剤を含有させる場合の含有割合は特に制限はないが、潤滑油全量基準で、通常0.01〜3質量%である。
【0073】
粘度指数向上剤としては、各種メタクリル酸の重合物やその水添物又はこれらの任意の組合せに係る共重合体やその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又は更に窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。また、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、並びにポリアルキルスチレン等も例示できる。ここで、α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。特にポリメタクリレート系の使用が好ましい。
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば、分散型及び非分散型ポリメタクリレートでは通常5000〜1000000、好ましくは100000〜800000であり、ポリイソブチレン又はその水素化物では通常800〜5000、エチレン−α−オレフィン共重合体及びその水素化物では通常800〜300000、好ましくは10000〜200000である。また、粘度指数向上剤を含有させる場合には、単独で又は複数種を任意に組合せて含有させることができ、その含有割合は、潤滑油全量基準で通常0.1〜40.0質量%が望ましい。
【0074】
流動点降下剤としては、潤滑油基油に見合う流動点降下剤が使用でき、例えば、ポリメタクリレート系の流動点降下剤が好ましい。
その他の摩擦調整剤としては、二硫化モリブデンやその他の公知の摩擦調整剤が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステルが挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテルのポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、ベンゾトリアゾール又はチアジアゾールが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコーン又はフルオロアルキルエーテルが挙げられる。
【0075】
本発明の潤滑油において、防錆剤、抗乳化剤を含有させる場合の含有割合は特に制限はないが、潤滑油全量基準で通常0.01〜5質量%である。また金属不活性剤を含有させる場合の含有割合は特に制限はないが、潤滑油全量基準で通常0.0005〜1質量%の範囲から適宜選択できる。
【0076】
本発明のDLC接触面を有するシステムにおいて、上記DLC接触面、更には非DLC接触面に潤滑油(L)を介在させるには、密閉式、循環式等のシステムの種類に応じて上記接触面に潤滑油(L)を供給し、運転することにより行うことができる。
本発明のシステムは、少なくとも一方がDLC膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面を備えたシステムであり、例えば、4サイクル又は2サイクルエンジン等の内燃機関、具体的には、動弁系、ピストン、ピストンリング、ピストンスカート、シリンダライナ、コンロッド、クランクシャフト、ベアリング、軸受け、メタルギヤー、チェーン、ベルト、オイルポンプ等の少なくとも1箇所以上に該DLC接触面を備える内燃機関が挙げられる。また、駆動系伝達機構、例えば、ギヤー、ハードディスクドライブの接触面を有する駆動部、その他摩擦条件が厳しく、低摩擦性が要求される様々なDLC接触面を1箇所以上有するシステムが対象となる。
【0077】
本発明のシステムにおいて、内燃機関の動弁系における好的実施態様としては、例えば、鉄鋼材料の基盤にDLC膜を形成し円盤状のシムやリフター冠面と、低合金チルド鋳鉄、浸炭鋼又は調質炭素鋼、又はこれらの任意の組合せに係る材料を用いたカムロブからなる接触面等を有する動弁系が挙げられる。
【0078】
本発明のシステムの潤滑方法は、少なくとも一方がDLC膜で被覆された、対向して相対的に運動する上述のDLC接触面を、上述の潤滑油(L)を供給して潤滑することにより実施できる。このように、本発明の潤滑油である潤滑油(L)を供給してDLC接触面、特にDLC接触面と非DLC接触面との両方を潤滑することにより、各接触面を有するシステム全体の摩擦を低減し、その低摩擦特性を安定的に長期間維持させることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、様々に変形、改良が可能である。
実施例1−9、参考例1及び比較例1
低摩擦運動システムにおけるDLC接触面の一例として、エンジンモータリングトルク測定エンジンの動弁システムのシム材として、DLC膜で被覆したシム材を作製した。シム材はSUJ2熱処理材から研磨加工後、ラッピングテープを用いた研磨によって所定の表面粗さ(Ra=0.2μm以下)に仕上げた。得られたシム材の表面に、CVD処理によってa−CタイプのDLC膜を膜厚1.1μmとなるように被覆し、更にラッピングテープを用いた研磨によって表面粗さ(Ra)0.04μmに仕上げた。尚、シム材の表面硬さHvは1800であった。
【0080】
(潤滑油組成物の調製)
表1に示す通り、本発明にかかる潤滑油(実施例1〜9)、比較用の潤滑油(比較例1)及び参考例として硫黄含有モリブデン錯体を含まない潤滑油(参考例1)を調製した。
尚、表1において基油Iは、100℃における動粘度が4.0mm/s、粘度指数が125、芳香族含有量が1.0質量%、硫黄含有量が0.001質量%の高度水素化分解鉱油である。硫黄含有モリブデン錯体は、希釈油を含むMo含有割合9.9質量%のMoDTCである。摩擦調整剤Iはグリセリンモノオレートである。金属系清浄剤Iは、全塩基価170mgKOH/g、カルシウム含有割合6.8質量%のホウ酸カルシウム含有過塩基性カルシウムサリシレート、金属系清浄剤IIは、全塩基価166mgKOH/g、カルシウム含有割合6.2質量%の炭酸カルシウム含有過塩基性カルシウムサリシレートである。リン系磨耗防止剤Iは、リン含有割合7.2質量%、セカンダリー型/プライマリー型比が65/35(リン含有量の質量比)であるジアルキルジチオリン酸亜鉛、リン系摩耗防止剤IIは、希釈剤を含み、リン含有割合7.5質量%のアルキル基がブチル基であるジアルキルリン酸亜鉛である。また、添加剤パッケージIは、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤、フェノール系及びアミン系酸化防止剤、コハク酸イミド系無灰分散剤等を含むパッケージ、添加剤パッケージIIは、ジチオリン酸亜鉛、カルシウムスルホネート等を含むSG級パッケージである。
【0081】
(性能試験)
(1)高温清浄性試験(ホットチューブ試験(HTT))
各潤滑油組成物の高温清浄性をJPI−5S−55−99に準拠して行なった。具体的には、軟質ガラスチューブを純アルミニウム製灼熱ブロックで270℃に加熱し、このチューブに試験油を0.3ml/hr、空気10ml/分を連続16時間送入することにより行う。試験終了後、チューブを石油エーテルで洗浄し、内壁の汚れから高温清浄性を評価した。評点は、無色透明(汚れ無し)を10点、黒色不透明を0点とし、この間を0.5刻みで評価した。
(2)エンジンモータリング摩擦試験
エンジンのシム材として、通常の鋼材を使用したシム材及び、上記のようにDLC膜を被覆したシム材を使用した場合のそれぞれについて以下の条件にてエンジンモータリング摩擦試験を行った。通常の鋼材シム及び比較例1の潤滑油を使用した場合の摩擦トルクを基準として、DLC膜で被覆したシム材を用い、上記潤滑油を使用した場合について摩擦トルク低減率を測定した。結果を表1に示す。
尚、エンジンモータリング摩擦試験は、エンジン全体の摩擦トルクを測定するもので、SRV摩擦試験のような境界潤滑領域の評価とは異なり、境界潤滑領域、混合潤滑領域及び流体潤滑領域における総合的な摩擦低減性能の評価が可能である。また、本試験は、同一潤滑油が潤滑するエンジンの全潤滑箇所のうち、DLC膜で被覆したシム材のみとしたので、DLC接触面だけでなく、通常のエンジンの鋼材を中心とする、DLC膜を有さない非DLC接触面を同時に潤滑するシステムの摩擦低減性能を評価するものである。
<試験条件>
A:油温100℃、エンジン回転数700rpm、B:油温60℃、エンジン回転数3500rpm、
【0082】
【表1】

【0083】
表1より、DLC膜で被覆したシム材と実施例の潤滑油を使用した場合、通常の鋼材シム及び比較例1の潤滑油を使用した場合の摩擦トルクに対し、高温、低回転条件では優れた摩擦トルク低減率が示された。特に実施例1の潤滑油では20%を超える極めて優れた摩擦トルク低減率が示された。また、実施例2の潤滑油においても、同様に摩擦トルク低減率は19%と極めて優れていた。即ち、本発明の潤滑油は、DLC接触面に対して有効であるだけでなく、更に非DLC接触面をも有するシステムに対しても極めて優れた摩擦低減性能を示すことが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方がダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面を備え、該DLC接触面間に、以下に示す基油(X)を主成分とする潤滑油基油(A)及び硫黄含有モリブデン錯体(B)を含む潤滑油(L)を介在させたDLC接触面を有するシステム。
前記基油(X)は、水素化分解鉱油、ワックス異性化鉱油及びポリ−α−オレフィン系基油の少なくとも1種からなり、且つ100℃における動粘度が2〜20mm/s、全芳香族含有量が5質量%以下、硫黄含有量が0.005質量%以下を示す。
【請求項2】
潤滑油(L)が、摩擦調整剤(C)、金属系清浄剤(D)及びリン系摩耗防止剤(E)の少なくとも1種を更に含む請求項1記載のシステム。
【請求項3】
摩擦調整剤(C)が、炭素数1〜40のエステル類、アミン類、アミド類、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類、ケトン類、アルデヒド類及びカーボネート類の少なくとも1種からなる請求項2記載のシステム。
【請求項4】
摩擦調整剤(C)が、含酸素有機化合物及び脂肪族アミン類の少なくとも1種からなる請求項2記載のシステム。
【請求項5】
潤滑油基油(A)における硫黄含有量が0.005質量%以下又は実質的に硫黄を含まない請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記DLC接触面が、内燃機関に備えられた接触面である請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記DLC接触面に加えて、対向して相対的に運動するDLC膜を有していない一対の非DLC接触面を備え、前記DLC接触面間と該非DLC接触面間の両方の接触面間に潤滑油(L)を介在させた請求項1記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも一方がDLC膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面間に、以下に示す基油(X)を主成分とする潤滑油基油(A)及び硫黄含有モリブデン錯体(B)を含む潤滑油(L)を介在させて潤滑する請求項1記載のシステムの潤滑方法。
前記基油(X)は、水素化分解鉱油、ワックス異性化鉱油及びポリ−α−オレフィン系基油の少なくとも1種からなり、且つ100℃における動粘度が2〜20mm/s、全芳香族含有量が5質量%以下、硫黄含有量が0.005質量%以下を示す。
【請求項9】
少なくとも一方がDLC膜で被覆された、対向して相対的に運動する一対のDLC接触面を有するシステムを潤滑するための潤滑油であって、
水素化分解鉱油、ワックス異性化鉱油及びポリ−α−オレフィン系基油の少なくとも1種からなり、且つ100℃における動粘度が2〜20mm/s、全芳香族含有量が5質量%以下、且つ硫黄含有量が0.005質量%以下である基油(X)を主成分とする潤滑油基油(A)及び硫黄含有モリブデン錯体(B)を含むDLC接触面を有するシステム用潤滑油。
【請求項10】
摩擦調整剤(C)、金属系清浄剤(D)及びリン系摩耗防止剤(E)の少なくとも1種を更に含む請求項9記載の潤滑油。
【請求項11】
摩擦調整剤(C)が、炭素数1〜40のエステル類、アミン類、アミド類、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類、ケトン類、アルデヒド類及びカーボネート類の少なくとも1種からなる請求項10記載の潤滑油。
【請求項12】
摩擦調整剤(C)が、含酸素有機化合物及び脂肪族アミン類の少なくとも1種からなる請求項10記載の潤滑油。
【請求項13】
硫黄含有モリブデン錯体(B)の含有割合が、潤滑油全量基準で、モリブデン元素換算量で0.02〜0.1質量%である請求項9記載の潤滑油。
【請求項14】
金属系清浄剤(D)が、非硫黄系金属系清浄剤を主成分とする請求項10記載の潤滑油。
【請求項15】
非硫黄系金属系清浄剤が、中性アルカリ土類金属サリシレート及びホウ酸カルシウム含有塩基性又は過塩基性金属系清浄剤の少なくとも1種を含む請求項14記載の潤滑油。
【請求項16】
リン系摩耗防止剤(E)が、ジチオリン酸亜鉛を含む請求項10記載の潤滑油。
【請求項17】
リン系摩耗防止剤(E)が、非硫黄系リン化合物を含む請求項10記載の潤滑油。

【国際公開番号】WO2005/014763
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512976(P2005−512976)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011375
【国際出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】