説明

DLL4アンタゴニストによる自己免疫疾患の治療法

本発明は、調節性T細胞(Treg)の数を増加させることが有益な疾患または障害を治療する方法であって、このような疾患または障害に罹患している対象者に、Dll4−ノッチシグナル伝達経路を遮断する、治療的有効量のDll4アンタゴニストを投与して、Tregの数を増加させる工程を包含する方法を提供する。本発明の方法によって治療可能な疾患または障害としては、多発性硬化症(MS)のような自己免疫疾患または障害、糖尿病などが挙げられる。本発明に適切なDll4アンタゴニストとしては、Dll4を特異的に結合し、Dll4−ノッチ相互作用を遮断する抗体または抗体フラグメント、Dll4の細胞外ドメインなどが挙げられる。本発明はまた、このような疾患または障害の発症が予測されているかまたは罹りやすい対象者におけるこのような疾患または障害の発症または再発を防止する方法を提供する。さらに、本発明の方法は、器官移植の拒絶反応または移植片対宿主病の予防または治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デルタ様リガンド4(Dll4)アンタゴニストを用いた、調節性T細胞(Treg細胞またはTregs)の数を増加させることが有益である疾患、障害、または状態の治療法に関する。より具体的には、本発明の方法は、Dllアンタゴニストを用いて、Dll4のノッチレセプターへの結合を遮断し、それによってTregの数を増加させることにより、多発性硬化症および糖尿病のような種々の自己免疫疾患、ならびに器官移植の拒絶反応および移植片対宿主病(GVHD)を治療することができる。本発明はさらに、これらの疾患または障害を受けやすくなっているかまたは受けやすい対象者が、このような疾患または障害を発症または再発するのを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノッチレセプターとそれらのリガンドとの間の相互作用は、細胞の運命決定のためだけではなく、造血における系統決定の調節および胸腺の発達に重要な進化的に保存された経路を示す(非特許文献1〜3)。最近、Dll4−ノッチ1の阻害が、胸腺内でPro−T細胞からDCへの運命の変換を生じ得る、B細胞の異所性出現および樹状細胞(DC)の増殖に付随するT細胞の発達における完全な遮断を導くことが示されている(非特許文献4〜6)。このように、ノッチシグナル伝達は、造血前駆細胞からの細胞運命決定の測定のために重要であるという蓄積された証拠が存在する。さらに、インビボでのDCによる調節性T細胞(Treg)恒常性のフィードバックコントロールが示されている(非特許文献7)。しかしながら、DCの起源およびその発達ならびにその後のTreg恒常性の制御におけるノッチシグナル伝達の役割は未だ不明である。Treg増殖を誘導する新規の方法を確認することにより、自己免疫疾患および障害の治療として用いることができるため、これは、非常に重要な問題である。
【0003】
ヒトDll4(hDll4)の核酸およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および2に示されている。Dllアンタゴニストおよびそれらの使用は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 2007/143689
【特許文献2】WO 2007/070671
【特許文献3】WO 2008/076379
【特許文献4】WO 2008/042236
【特許文献5】WO/2008/019144
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Artavanis−Tsakonas et al.,1999,Science 284:770−776
【非特許文献2】Skokos et al.,2007;J Exp Med 204:1525−1531
【非特許文献3】Amsen et al.,2004,Cell 117:515−526
【非特許文献4】Hozumi et al.,2008,J Exp Med 205(11):2507−2513
【非特許文献5】Koch et al.,2008,J Exp Med 205(11):2515−2523
【非特許文献6】Feyerabend et al.,2009,Immunity 30:1−13
【非特許文献7】Darrasse−Jeze et al.,2009,J Exp Med 206(9):1853−1862
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、本発明者による、Dll4を特異的に結合し、Dll4のノッチレセプターへの結合を遮断する抗体が、ヒト多発性硬化症の動物モデルであるマウスにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の進行を完全に防止する一方、コントロール抗体はEAEを防止しないという発見に一部基づいている。さらに、本発明者らは、抗Dll4抗体のこの効果が、Treg細胞の数の増加に関連していることを発見した。その上、抗Dll4抗体は、血中グルコース濃度を増加させ、I型糖尿病の動物モデルであるNOD/ShiLtJマウスの膵島の数および形態を保存し、かつこのような効果は、少なくとも部分的にTregsの増大によって仲介されることがさらに観察された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、第1の局面において、本発明は、Treg細胞の数を増加させる方法を特徴とし、この方法は、有効量のDll4アンタゴニストをそれが必要な対象者に投与する工程を包含し、ここでこのDll4アンタゴニストはDll4とノッチレセプターとの間の相互作用を遮断して、Treg細胞の数を増加させる。
【0008】
第2の局面において、本発明はT細胞の数を増加させることが有益である疾患または障害を治療または改善させる方法を特徴とし、該方法は、治療的有効量のDll4アンタゴニストをそれが必要な対象者に投与する工程を包含する。本発明の方法によって処置可能な疾患または障害は、Dll4活性の除去、阻害または低減、それによる処置される対象者中のTreg細胞数の増加によって利益を受ける(すなわち、向上する、改善する、阻害されるまたは予防される)任意の疾患、障害または状態である。このような疾患、障害、または状態としては、限定的ではないが以下を含む:種々の自己免疫疾患、例えば多発性硬化症、1型および2型糖尿病、慢性関節リウマチ、クローン病、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン−バレー症候群(GBS)、橋本病、突発性血小板減少性紫斑病、過敏性腸症候群、エリテマトーデス、混合型結合組織病、重症筋無力症、ナルコレプシー、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、脈管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症など、ならびに、器官移植の拒絶反応およびGVHD。
【0009】
一実施態様において、本発明の方法で用いられるDll4アンタゴニストは、高い親和性でDll4を特異的に結合し、Dll4のノッチレセプターへの結合を遮断するか、および/またはDll4−ノッチシグナル伝達経路を遮断する、Dll4抗体またはそのフラグメント(「抗Dll4 Ab」または「Dll4Ab」)である。
【0010】
抗体は、ポリクローナル、モノクローナル(mAb)、キメラ、ヒト化、もしくは完全ヒト化抗体またはこれらのフラグメントであってもよい。この抗体フラグメントは、一本鎖抗体、Fab、または(Fab’)2であってもよい。
【0011】
一実施態様において、このDll4 Abまたはその抗原結合フラグメントは、hDll4(配列番号:2)のN末端ドメイン(残基S27−R172)、またはDelta/Serrate/Lag−2(DSL)ドメイン(残基V173−C217)、またはN末端−DSLドメイン(残基S27−C217)内のエピトープに結合する。別の実施態様において、このDll4 Abまたはその抗原結合フラグメントは、EGFドメイン、すなわちhDll4(配列番号:2)の、およそアミノ酸残基Q218−N251(ドメイン1)、E252−D282(ドメイン2)、D284−E322(ドメイン3)、E324−E360(ドメイン4)、S362−E400(ドメイン5)、K402−E438(ドメイン6)、H440−E476(ドメイン7)、またはS480−E518(ドメイン8)のうちの1つの中のエピトープに結合する。いくつかの実施態様において、抗体または抗体フラグメントは、上に列挙したエピトープを1つより多く含む、立体エピトープを結合することができる。本発明の方法に用いられるDll4 Abまたはそのフラグメントは、高い親和性でヒトDll4を結合することができ、表面プラズモン共鳴によって測定される、約1nM以下、約500pM以下、約300pM以下、約200pM以下、約100pM以下、または約50pM以下の平衡解離定数(KD)を有している。
【0012】
一実施態様において、Dll4 Abまたはそのフラグメントは、3つの重鎖相補性決定領域、HCDR1、HCDR2およびHCDR3(それぞれ配列番号:22、24および26のアミノ酸配列を有する)を含む、重鎖可変域(HCVR)を含む。別の実施態様において、抗体またはそのフラグメントは、3つの軽鎖相補性決定領域、LCDR1、LCDR2およびLCDR3(それぞれ配列番号:30、32および34のアミノ酸配列を有する)を含む軽鎖可変域(LDVR)を含む。別の実施態様において、Dll4 Abまたはそのフラグメントは、配列番号:22、24、26、30、32および34のCDR配列組み合わせを含む、重鎖および軽鎖CDR配列を含む。さらに別の実施態様において、Dll4 Abは、配列番号:20もしくは116のアミノ酸配列を含むHCVR、または配列番号:28もしくは118のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。さらに別の実施態様において、Dll4 Acは、配列番号:20/28(REGN281)または116/118(REGN421)のHCVR/LCVR組み合わせを含む。
【0013】
特定の実施態様において、Dll4 Abは、以下から選択される重鎖CDR1/CDR2/CDR3の組み合わせおよび軽鎖CDR1/CDR2/CDR3の組み合わせを含む:それぞれ配列番号:6/8/10および配列番号:14/16/18;それぞれ配列番号:38/40/42および配列番号:46/48/50;それぞれ配列番号:54/56/58および配列番号:62/64/66;それぞれ配列番号:70/72/74および配列番号:78/80/82;それぞれ配列番号:86/88/90および配列番号:94/96/98;それぞれ配列番号:102/104/106および配列番号:110/112/114。別の実施態様において、Dll4 Abは、配列番号:4、36、52、68、84、もしくは100のアミノ酸配列を含むHCVR、または配列番号:12、44、60、76、92、もしくは108のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。さらに別の実施態様において、Dll4 Abは、以下から選択されるHCVR/LCVR組み合わせを含む:配列番号:4/12(REGN279);配列番号:36/44(REGN290);配列番号:52/60(REGN306);配列番号:68/76(REGN309);配列番号:84/92(REGN310);および配列番号:100/108(REGN289)。
【0014】
配列番号:4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116および118のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号:3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115および117
と示される。
【0015】
別の実施態様において、本発明の方法において利用可能なDll4アンタゴニストは、多量体形成成分に融合した、Dll4を結合し得る少なくとも1つの可溶性ノッチレセプターまたはそのフラグメントを含む融合タンパク質である。一実施態様において、この可溶性ノッチレセプターは、ヒトノッチ1またはノッチ4である。別の実施態様において、本発明のDll4アンタゴニストは、ノッチレセプターを結合し得る、改変Dll4タンパク質であるが、このような結合はこのレセプターの活性化をもたらさない。特定の実施態様において、本発明のDll4アンタゴニストは、多量体形成成分に融合されたDll4またはそのフラグメントの細胞外ドメイン(例えば、免疫グロブリンドメイン(例えば、ヒトIgGのFcドメイン))を含む融合タンパク質である。特定の実施態様において、これらのDll4アンタゴニストは、Dll4−ノッチ相互作用を遮断することのできる低分子および他の薬剤を含む。
【0016】
第3の局面において、疾患または障害の発生が予測されるかまたは発生しやすい対象者において、本発明は上に記載したような自己免疫疾患、または障害の発症または再発を予防または低減する方法を特徴とし、予防的に有効な量のDll4アンタゴニストを対象者に投与する工程を包含する。関連する実施態様において、本発明は、移植受容者における器官移植の拒絶反応またはGVHDの可能性を予防または低減する方法を特徴とし、移植の前および/または後にその受容者に予防的に有効な量のDll4アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0017】
第4の局面において、本発明は、自己免疫疾患もしくは障害、または器官移植の拒絶反応を予防、治療、または改善する方法を特徴とし、有効量のDll4アンタゴニストをさらなる治療剤(例えば、免疫抑制剤(immunosuppressive agentまたはimmunosuppressant)、抗炎症剤、鎮痛剤、血糖降下剤(例えば、インスリン、インスリンアナログなど))(これらの多くは、互いにオーバーラップしている治療効果を有していてもよい)と組み合わせて、その必要のある対象者に投与する工程を包含する。Dll4アンタゴニストと組み合わせて用いられる適切な免疫抑制剤としては、限定するわけではないが、グルココルチコイド、シクロスポリン、メトトレキサート、インターフェロンβ(IFN−β)、タクロリムス、シロリムス、アザチオプリン、メルカプトプリン、オピオイド、ミコフェノール酸、TNF−結合タンパク質(例えば、インフリキシマブ、エタナセプト、アダリムマブなど)、細胞毒性抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、ミトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシンなど)、免疫細胞を標的とする抗体(例えば、抗CD20抗体、抗CD3抗体など)が挙げられる。抗Dll4アンタゴニストとの組み合わせ治療に適切な抗炎症剤および/または適切な抗炎症剤および/または鎮痛剤としては、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンなど)、TNF−αアンタゴニスト、IL−1アンタゴニスト、IL−6アンタゴニスト、アセトアミノフェン、モルヒネ様作用薬などが挙げられる。
【0018】
第5の局面において、本発明はDll4アンタゴニスト、少なくとも1種のさらなる治療剤、および薬学的に受容可能な担体を含む医薬組成物を特徴とする。一実施態様において、このDll4アンタゴニストは、高い親和性でDll4に特異的に結合し、Dll4活性を中和する、Dll4 Abまたはそのフラグメントであり、少なくとも1種のさらなる治療剤は、上に記載した免疫抑制剤、抗炎症剤、鎮痛剤、血糖降下薬などのいずれかである。
【0019】
第6の局面において、本発明は本発明の医薬組成物を含む容器、および使用に際する説明書を備えた添付文書を含むキットを特徴とする。一実施態様において、キットは、その中にhDll4を特異的に結合する抗体またはそのフラグメントを含む容器、その中に上に記載した少なくとも1種のさらなる治療剤を含む別の容器を含んでいてもよい。
【0020】
他の目的および利点は、以下の詳細な説明を精査することにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】Dll4遮断がT細胞、B細胞に対して及ぼす影響を示す図で、図1Aおよび1Bは、胸腺におけるT細胞およびB細胞の集団を示す。
【図2】Dll4遮断がB細胞の発達などに対して影響を及ぼさないことを示す図で、図2Aおよび2Bは骨髄中B細胞および末梢脾臓中B細胞亜集団を示す。
【図3A】Dll4遮断が樹状細胞(DC)に及ぼす影響を確認した図で、図3Aは胸腺中のcDCおよびpDCの増殖を誘発することを示す。
【図3B】Dll4遮断が樹状細胞(DC)に及ぼす影響を確認した図で、図3Bはその増殖の経過を示す。
【図3C】Dll4遮断が樹状細胞(DC)に及ぼす影響を確認した図で、図3Cはpre−DCの増殖が胸腺に限定されることを示す。
【図3D】Dll4遮断が樹状細胞(DC)に及ぼす影響を確認した図で、図3Dはpro−T細胞集団内で有意な増殖があることを示す。
【図4】Dll4Ab処置したCDを胸腺内移植した細胞の増殖性を示す図である。
【図5】DCの発達に関与するCSF−1の血清レベルが、Dll4Ab処置で増加したことを示す図である。
【図6】タモキシフェン処置したマウスにおけるB細胞、pDC、cDCが胸腺中で増殖したことを示す図である。
【図7A】Dll4遮断がTregの恒常性に影響を及ぼすかを確認した図であり、図7Aは胸腺内でTregの強い増殖をもたらすことを示す図である。
【図7B】Dll4遮断がTregの恒常性に影響を及ぼすかを確認した図であり、図7Bはその経過を示す図である。
【図7C】Dll4遮断がTregの恒常性に影響を及ぼすかを確認した図であり、図7Cは、タモキシフェン処置によるDll4条件付不活化が胸腺中のTregの増殖をもたらすことを示す図である。
【図8A】Dll4Ab処置したマウスのDll遮断による胸腺中の細胞に及ぼす影響を確認した図で、図8Aは治療後cDC、pDCにおいて顕著な増加を示したことを示す図である。
【図8B】Dll4Ab処置したマウスのDll遮断による胸腺中の細胞に及ぼす影響を確認した図で、図8BはTreg集団において顕著な増加を示したことを示す図である。
【図9】Dll4遮断による処置が自己免疫疾患の進行を予防したことを示す図であり、図9Aは罹患率を、図9Bは平均スコアを示す。
【図10】Dll4Ab処置したマウスのリンパ節中のIL−7およびIFN−γの産生を減少させることを示す図である。
【図11−1】Dll4遮断の糖尿病に対する効果の試験結果を示す図であり、図11Aは、糖尿病におけるDll4Abは少なくとも部分的にTregによって媒介されることを示す図である。
【図11−2】Dll4遮断の糖尿病に対する効果の試験結果を示す図であり、図11Bは、DllAb処置が抗インスリン自己抗体などを遮断することを示す図である。
【図11−3】Dll4遮断の糖尿病に対する効果の試験結果を示す図であり、図11Cおよび11Dは、Dll4Ab処置したマウスが、コントロールと比較して正常数の膵島が認められ、細胞浸潤が観察されなかったことを示す図である。
【図11−4】Dll4遮断の糖尿病に対する効果の試験結果を示す図であり、図11Eは、Dll4Ab処置により糖尿病マウスの血中グルコース濃度が減少したことを示す図である。
【0022】
図1A−1Bは、T細胞およびB細胞の発達におけるDll4遮断の効果を示している。マウスに抗Dll4抗体(REGN577)またはコントロールのヒトFcフラグメント(hFc)を注射した。14日後、胸腺を採取し、Tsaibou およびB細胞のサブセットをフローサイトメトリーで評価した。図1A:ドットプロットは、CD4-CD8-(ダブルネガティブの胸腺前駆体または「DP」)、CD4+CD8+(ダブルポジティブの胸腺前駆体または「SP」)、CD4+またはCD8+(シングルポジティブの胸腺前駆体または「SP」)、およびDN/CD44+CD25-(DN1ステージにおける胸腺前駆体)T細胞を示している。ドットプロットの数は、全ての胸腺細胞の中のT細胞分集団のパーセンテージ(平均値±SEM)を表わしている。図1B:ヒストグラムは、DN1細胞(すなわち、CD4-CD8-CD44+CD25-でゲート)中のB細胞(B220+)のパーセンテージ(平均値±SD)を示している。
【0023】
図2A−2Bは、骨髄中のB細胞の発達段階(図2A)および脾臓におけるB細胞の恒常性(図2B)におけるDll4遮断の効果を示している。ドットプロット内の数字は、骨髄中または脾臓中の総細胞のうちB細胞サブセットのパーセンテージ(平均値±SEM)を表わしている。GC:胚中心B細胞;T1およびT2:B細胞サブセット;およびFo:濾胞性B細胞。
【0024】
図3A−3Dは、樹状細胞(DC)の発達におけるDll4遮断の効果を示している。図3A:ドットプロットは、抗Dll4 Ab処置における胸腺中の従来のDC(“cDCs”;B220-CD11C+)および形質細胞様DC(“pDCs”;PDCA1+B220+CD11C+)の増殖を示している。ドットプロット内の数字は、14日目における総細胞中のDCの平均パーセンテージ(平均値±SEM)を表わしている。図3B:この棒グラフは、Dll4 Ab処置したマウス(■)とhFc−コントロール処置したマウス(□)におけるcDCおよびpDC増殖の動態を示している。図3C:ドットプロットは、胸腺におけるPreDC(MHCIIloCD11cintCD135+Sirp−αint)および後期のPreDC(MHCIIloCD11cint)に対するDll4 Abの効果を示している。ドットプロット中の数字は、14日目における総細胞中のPreDCの平均パーセンテージ(平均値±SEM)を表わしている。図3D:ドットプロットは、Dll4 Abで処置したマウスの胸腺中のDN1(CD4-CD8-CD44+CD25-)プロ−T細胞集団におけるMHCIIloCD11cint DCの存在を示しているが、hFcコントロールAbで処置したマウスの胸腺ではない。ドットプロット中の数は、3日目におけるDN1プロT細胞集団中のMHCIIloCD11cint DCの平均数(平均値±SEM)を表わしている。
【0025】
図4は、通常のT/DC DN1前駆細胞に由来している未熟DC(imDCs)中への、胸腺内代替DC系統の発達における、Dll4遮断の効果を示している。DN1 CD45.1+Lin-を挿入した細胞を、Dll4 Ab(■)またはhFc コントロール Ab(□)で処置したCD45.2+ホストマウス中に胸腺内移植した。
【0026】
図5は、DCの発達に関与する重要なサイトカインであるCSF−1(M−CSF)の血清中濃度におけるDll4遮断の効果を示している。未処置
【化1】

のマウス、またはアイソタイプコントロールAb(□)、もしくはDll4 Ab(■)で処置したマウスの血清中CSF−1濃度を、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって測定した。
【0027】
図6は、タモキシフェン誘導性Creリコンビナーゼ構築物であるCreERT2を含むDLL4COINマウス中のB細胞およびDC恒常性に対して、タモキシフェン処置の際の遺伝子のDll欠損の効果を示している。ドットプロットの数は、胸腺内の総細胞中のB細胞およびpDCsとcDCsの両方の平均パーセンテージ(平均値±SEM)を表わしている。
【0028】
図7A−7Cは、Treg恒常性におけるDll4遮断/欠損の効果を示している。図7A:ドットプロットは、hFcコントロールAbで処置したマウスと比較して、Dll4−Abで2週間処置したマウスの胸腺内でのTregの増殖を示している。ドットプロットの数は、胸腺中のCD3+CD4+ T細胞中のTregの平均パーセンテージ(平均値±SEM)を表わしている。図7B:棒グラフは、Dll4 Abで処置したマウス(■)およびhFcコントロールAbで処置したマウス(□)の胸腺(上パネル)および脾臓(下パネル)におけるTregの発達の動態を示している。図7C:ドットプロットは、トウモロコシ油コントロールで処置したコントロールDLL4COINと比較して、タモキシフェン(TAM)で処置したDLL4COINマウスの胸腺内におけるTregの増殖を示している。ドットプロット中の数は、胸腺内のCD3+CD4+ T細胞中のTregの平均パーセンテージ(平均値±SEM)を表わしている。
【0029】
図8A−8Bは、治療の中止後2週間および28日目に、Dll4−Ab(REGN421)処置(1mg/kgまたは5mg/kg)またはhFc処置(5mg/kg)後7日目および14日目で観察された、ヒトDll4(hDll4)を発現するマウスの胸腺中のDC(図8A)およびTreg恒常性(図8B)に対するDll4遮断の効果を示している。ドットプロット中の数は、胸腺中の総細胞の中の、pDCsおよびcDCs(図8A)またはTregs(図8B)の平均パーセンテージ(平均値±SEM)を表わしている。
【0030】
図9A−9Bは、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)のマウスモデルにおけるDll4遮断の効果を示している。図9A:このグラフは、治療群あたりのEAE疾患の発生率(%)を示している。図9B:このグラフは、平均的な疾患のスコアに基づいて、DADの発達を示している。治療は、抗Dll4 Ab(REGN577)プレ誘導(▼);アイソタイプコントロール Ab pure 誘導(◆);REGN577誘導後(▲);または抗−VLA−4 Ab(PS/2)プレ誘導(■)であった。
【0031】
図10は、EAEマウスのリンパ節におけるIL−17およびIFN−γ生産に対するDll4遮断の効果を示している。Dll4 Ab(■)またはhFcコントロールAb(□)で治療したEAEマウスのリンパ節中のIL−17(左パネル)およびIFN−γ(右パネル)の濃度を、ELISAによって12日目および18日目に測定した。
【0032】
図11A−11Eは、NODマウス糖尿病モデルにおけるDll4 Abの効果を示している。図11Aは、9週齢でhFCコントロールAb(●)または抗Dll4Ab(REGN577)(■)のいずれかを受けたマウスの中での糖尿病発生(250mg/dLより高い血中グルコース濃度を2回連続して読み取り)の割合を示している。Dll4 Abで処置し、その後PC61 Abを注射した5匹のマウスの20週での糖尿病発症率(%)もまた示している(◆)。PC61 Abは、抗CD25抗体であり、Treg細胞を枯渇している。図11Bは、未処置の野性型(WT)マウスと比較して、Dll4 AbまたはhFcコントロールで処置したNODマウス中の抗インスリン自己抗体(□)および抗グルタミン酸脱炭酸酵素65(GAD65)抗体(■)の、ELISAによる測定を示している。図11Cは、Dll4Ab(左パネル)またはhFcコントロール(右パネル)で処置したNODマウスのヘマトキシリンおよびエオシン(H&D)で染色した膵臓切片を示している。黒色矢印は、個々の膵島を示しており、白色矢印は、その島内の湿潤細胞を示している(右パネル)。図11Dは、hFcコントロール処置(□)またはDll4 Ab処置(■)したマウスの膵臓における、膵島の数(左パネル)または、湿潤膵島の割合(%)(右パネル)を示している。図11Eは、処置後42日を超えての、Dll4 Ab(●)またはhFcコントロール(□)で処置したマウスにおける、疾患の発症時における血中グルコース濃度の変化を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の方法を記載する前に、本発明は、記載する特定の方法および実験条件に限定されるものではなく、方法および実験は変更できることが理解されるべきである。同様に、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるため、本明細書で使用する専門用語は特定の態様の説明のみを目的にしており限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される、単数形の「1つの(a)」「ある(an)」、および「その(the)」とは、文脈上で明確に規定されない限り、複数の言及も含む。したがって、例えば「方法(a method)」への言及は、1つまたは複数の方法、ならびに/または本明細書に記載される種類の段階、および/もしくは本開示およびその他を読むことで当業者に明白となる種類の段階を含む。
【0035】
特記されない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験においては本明細書に記載されたものと類似のまたは同等の任意の方法および材料を使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書中で述べられている全ての刊行物は、その全体が参考として援用される。
【0036】
(定義)
用語「Dll4アンタゴニスト」は、本明細書中で用いる場合、Dll4のノッチレセプター(例えばノッチ1およびノッチ4)への結合を遮断および/またはDll4−ノッチシグナル伝達経路を遮断(例えば、WO 2008/076379を参照)することのできる、Dll4に対する抗体およびそのフラグメント、多量体形成成分に融合するDll4の細胞外ドメインを含む融合タンパク質またはそのフラグメント(例えば、米国特許公開公報番号2006/0134121および2008/0107648を参照)、ペプチドおよびペプチボディー(peptibody)(例えば、米国特許第7,138,370号を参照)など(これらは、Dll4とノッチレセプターとの間の相互作用を遮断する)を含む。従って、特定の実施態様において、この用語は、ノッチレセプター(例えば、抗ノッチ1抗体、抗ノッチ4抗体)を特異的に結合し、Dll4−ノッチシグナル伝達経路を遮断する低分子、抗体またはその抗原結合フラグメントなどをも包含する。
【0037】
本明細書で使用される用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結した4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖から構成される免疫グロブリン分子を指すことを意図している。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」又は「VH)及び重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3ドメインから構成される)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」又は「VL」)及び軽鎖定常領域(CL)から構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより良く保存された領域が組み入れられている、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分される。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配列している:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0038】
HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定する方法および技術は、当該分野で公知であり、本明細書中に開示されている特定のHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRの同定に適用することができる。CDRの境界を同定するのに用いられ得る慣例としては、Kabatの定義、Chothiaの定義およびAbMによる定義を含む。一般的な用語において、Kabatの定義は、配列の変動性に基づいており、Chothiaの定義は、構造的なループ領域の位置に基づいており、AbMによる定義は、Kabatの定義とChothiaの定義との間の折衷である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」 National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991);Al−Lazikani et al.、J.Mol.Biol.273:927−948(1997);および Martin et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268−9272(1989)を参照のこと。公開されているデータベースもまた、抗体内のCDR配列を同定するのに利用可能である。
【0039】
1つ又はそれ以上のCDR残基の置換又は1つ又はそれ以上のCDRの脱落もまた可能である。1つ又は2つのCDRが結合のために省くことができる抗体は、科学文献に記載されている。Padlan et al.(1995 FASEB J.9:133−139)は、公表された結晶構造を基準にして抗体とそれらの抗原間の接触領域を解析し、CDR残基の約1/5〜1/3だけが実際に抗原と接触していると結論した。Padlanは、また、 1つ又は2つのCDRが、抗原と接触したアミノ酸を有さない多くの抗体を見出した(Vajdos et al.2002 J Mol Biol320:415−428も参照)。
【0040】
抗原と接触していないCDR残基は、ChothiaCDR外にあるKabatCDRの領域から、分子モデリングにより及び/又は経験的に、過去の研究(例えばCDRH2中の残基H60〜H65は頻繁には必要とされない)に基づいて同定することができる。CDR又はその残基が脱落している場合、それは通常別のヒト抗体配列又は当該配列のコンセンサス中で対応する位置を占有するアミノ酸で置換される。CDR内の置換位置及び置換するアミノ酸は経験的に選択することもできる。経験的置換は保存的置換又は非保存的置換であってよい。
【0041】
用語「抗体」はまた、改変されたグリコシル化パターンを有する抗体も包含する。いくつかの適用において、望ましくないグリコシル化部位を除去するための改変、または例えば、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)機能を増加するフコース部分の除去(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照)が有用である。他の適用において、N−グリコシル化部位の除去は、治療抗体に対する望ましくない免疫反応を低減するかまたは抗体の親和性を増加させることができる。さらに他の的湯において、ガラクトシル化の改変は、補体依存性細胞障害(CDC)を改変するためになされ得る。
【0042】
本明細書で使用される用語、抗体の「抗原結合部分」(又は簡単に「抗体フラグメント」)は、hDll4、または任意の他の企図される標的タンパク質に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ又はそれ以上のフラグメントを指す。抗体フラグメントは、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、単鎖Fv(scFv)分子、dAbフラグメント、抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDRを含むフラグメント、または単離CDR)を含むことができる。他の操作分子(例えば、ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディーおよびミニボディーなど)もまた、本明細書中用いられる場合の表現「抗原結合フラグメント」に包含される。特定の実施態様において、本発明の抗体または抗体フラグメントは、治療部分(「免疫結合体」)、例えば細胞毒、化学療法薬、免疫抑制剤または放射性同位体に結合され得る。
【0043】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には少なくとも1つの可変ドメインを含む。この可変ドメインは、任意のサイズのドメインまたはアミノ酸組成物であり得、一般的に少なくとも1つのCDR(1つまたはそれ以上のフレームワーク配列を有するフレームに隣接しているかその中にある)を含んでいる。VLドメインに結合しているVHドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、VHおよびVLドメインは任意の適切な配置で互いに関連して位置され得る。例えば、可変域は2部分からなり得、VH−VH、VH−VLまたはVL−VLの2量体を含み得る。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体のVHまたはVLドメインを含み得る。
【0044】
特定の実施態様において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合している少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。非限定的に、本発明の抗体の抗原結合フラグメント内で見いだされ得る可変ドメインおよび定常ドメインの構成例として以下が挙げられる:(i)VH−CH1;(ii)VH−CH2;(iii)VH−CH3;(iv)VH−CH1−CH2;(v)VH−CH1−CH2−CH3;(vi)VH−CH2−CH3;(vii)VH−CL;(viii)VL−CH1;(ix)VL−CH2;(x)VL−CH3;(xi)VL−CH1−CH2;(xii)VL−CH1−CH2−CH3;(xiii)VL−CH2−CH3;および(xiv)VL−CL。上に列挙した構成例のいずれかを含む可変ドメインおよび定常ドメインの任意の構成において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結され得るか、または、完全または部分的なヒンジ領域またはリンカー領域によって連結され得る。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子中の隣接する可変および/または定常ドメイン間に可動性または反可動性の結合をもたらす少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上)のアミノ酸からなり得る。さらに、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、互いにおよび/または1つまたはそれ以上のモノマーVHもしくはVLドメインと(例えば、ジスルフィド結合によって)非共有結合で、上に列挙した可変ドメインと定常ドメインの構成のうちのいずれかのホモダイマーまたはヘテロダイマー(または他のマルチマー)を含み得る。
【0045】
完全抗体分子を有する場合、抗原結合フラグメントは、単一特異的または多重特異的(例えば、二重特異的)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合フラグメントは、典型的には少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、ここで各可変ドメインは別の抗原または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合し得る。任意の多重特異性抗体フォーマットは、当該分野で利用可能な通常の技術を用いて、本発明の抗体の抗原結合フラグメントと関連して使用するために適合され得る。
【0046】
本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒトmAbsは、例えばCDR特にCDR3において、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的突然変異により又はインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)によってコード化されないアミノ酸残基を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖細胞系から由来するCDR配列がヒトFR配列上に移植された、mAbsを含むことを意図するものではない。
【0047】
本明細書中に開示される完全ヒト抗Dll4抗体は、対応する生殖系列配列と比較した場合、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、挿入および/または欠失を含み得る。このような変異は、例えば公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と本明細書中に開示されているアミノ酸配列を比較することにより、容易に確認することができる。本発明は、本明細書中に開示されるアミノ酸配列のいずれかから誘導される抗体、およびその抗原結合フラグメントを含み、ここで1つまたはそれ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つまたはそれ以上のアミノ酸は、抗体が由来する生殖系列配列の対応する残基に、または別のヒト生殖系列配列の対応する残基に、または対応する生殖系列残基の保存的アミノ酸置換に変異を起こさせる(このような配列変化は、「生殖細胞変異」と総称される)。当業者は、本明細書中に開示されている重鎖および軽鎖可変域配列で開始することで、1つまたはそれ以上の個々の生殖系列の復帰突然変異を含む多くの抗体および抗原結合フラグメントまたはこれらの組み合わせを容易に生産することができる。特定の実施態様において、VHおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基の全てが、抗体が由来する元の生殖系列配列中に見出される残基に復帰変異される。他の次実施態様において、特定の残基のみが、元の生殖系列配列に復帰変異される(例えば、FR1の最初の8アミノ酸内もしくはFR4の最後の8アミノ酸内に見出された変異残基のみ、またはCDR1、CDR2またはCDR3内で見いだされた変異残基のみ)。他の実施態様において、このフレームワークおよび/またはCDR残基のうちの1つまたはそれ以上が、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が元々由来する生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基に変異される。さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つまたはそれ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含み得る(例えば、ここで特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基に変異されるが、元の生殖系列配列と異なる特定の他の残基は、維持されるかまたは、異なる生殖系列配列の対応する残基に変異される)。一旦得られると、1つまたはそれ以上の生殖系列変異を含む抗体および抗原結合フラグメントは、1つまたはそれ以上の所望の特性(例えば、結合特異性、結合親和性の向上、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性(場合により)の向上または増強、免疫原性の低減など)について簡単に試験される。この一般的な方法で得られた抗体および抗原結合フラグメントは、本発明に包含される。
【0048】
本発明はまた、1つまたはそれ以上の保存的置換を有する、基本明細書中に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗Dll4抗体も含む。例えば、本発明は、本明細書中に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列と相対的な、例えば10個以下、8個以下、6個以下、4個以下、2個または1個の保存的アミノ酸置換を持つHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗Dll4抗体を含む。一実施態様において、HCVRは、その中に10個以下の保存的アミノ酸置換を持つ配列番号:116のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、HCVRは、その中に8個以下の保存的アミノ酸置換を持つ配列番号:116のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、HCVRは、その中に6個以下の保存的アミノ酸置換を持つ配列番号:116のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、HCVRは、その中に4個以下の保存的アミノ酸置換を持つ配列番号:116のアミノ酸配列を含む。さらに別の実施態様において、HCVRは、その中に2または1個以下の保存的アミノ酸置換を持つ配列番号:116のアミノ酸配列を含む。一実施態様において、HCVRは、その中に10個以下の保存的アミノ酸置換を持つ配列番号:118のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、HCVRは、その中に8個以下の保存的アミノ酸置換を持つ配列番号:118のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、HCVRは、その中に6個以下の保存的アミノ酸置換を持つ配列番号:118のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、HCVRは、その中に4個以下の保存的アミノ酸置換を持つ配列番号:118のアミノ酸配列を含む。さらに別の実施態様において、HCVRは、その中に2または1個以下の保存的アミノ酸置換を持つ配列番号:118のアミノ酸配列を含む。
【0049】
「中和」または「遮断」抗体は、そのDll4への結合が、Dll4の生物学的活性の阻害をもたらす抗体を意味することが意図される。このDll4の生物学的活性の阻害は、Dll4の生物学的活性の、一つまたは複数の指標を測定することによって評価され得る。Dll4の生物学的活性のこれらの指標は、当技術分野において公知のいくつかの標準的なインビトロまたはインビボアッセイの一つまたは複数によって評価され得る(以下の実施例を参照のこと)。好ましくは、Dll4活性を中和する抗体の能力は、ノッチ受容体へのDll4の結合の阻害によって評価される。同様に、この用語はまた、ノッチ1およびノッチ4のような他の標的に対する抗体にも適用可能であり、このような抗体は標的の生物学的活性を阻害し、それによりDll4−ノッチの相互作用またはシグナル伝達経路を阻害する。
【0050】
用語「特異的に結合する」等は、抗体又はその抗原結合フラグメントが生理的条件下に相対的に安定な抗原と複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-6M以下(例えば、小さいKDはより強固な結合を示す)の平衡解離定数によって特徴付けることができる。2分子が特異的に結合するかどうかを測定する方法は当技術分野で周知であり、そして例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。しかしながら、Dll4を特異的に結合する単離抗体は、他の種からのDll4分子のような他の抗原に対して交差反応を呈する。更に、Dll4及び1つ又はそれ以上の更なる抗原に結合する多特異性抗体(例えば二重特異体)は、それでも本明細に記載のDll4を「特異的に結合する」検討された抗体である。
【0051】
本明細書において使用される「KD」という用語は、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を意味することが意図される。
【0052】
「高親和性」抗体という用語は、表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORE(登録商標))によって測定される、約1nM以下、または約500pM以下、約400pM以下、約300pM以下、約200pM以下、または約100pM以下、または約50pM以下のKpによってDll4に結合する抗体を意味する。
【0053】
本明細書において使用される「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えば、BIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden and Piscataway、N.J.)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によって、リアルタイム生体特異的相互作用の解析を可能にする光学現象を意味する。
【0054】
用語「エピトープ」は抗体によって結合される抗原の領域を指す。エピトープは構造又は機能と定義される。機能エピトープは一般的に構造エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与するそれらの残基を有する。エピトープは、立体配座性でもあり、すなわち非線形アミノ酸から構成されてもよい。特定の実施態様では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、又はスルホニル基などの分子の化学的活性表面グルーピングである決定因子を含んでもよく、そして特定の実施態様では、特異的3次元構造特性、及び/又は特異的電荷特性を有してもよい。エピトープは、典型的には少なくとも3つ、より一般的には少なくとも5または8〜10個のアミノ酸を特有の立体配座中に含んでいる。
【0055】
本明細書中で用いられる場合、用語「処置」または「処置すること」は、本明細書中で用いられる場合、他に指示のない限り、予防手段(prophylactic またはpreventative)および治療手段の両方を意味することが企図されている。治療の必要のある対象者は、特定の状態、障害または疾患を発症しているものだけではなく、このような状態、障害または疾患を発症することが予測されるかまたはその可能性のあるもの、および予防的手段によって利益を受け、その結果そのような状態、障害または疾患が生じた場合に、処置をしていない対象者と比較してその発症もしくは再発、または進行が低減されるものも含む。
【0056】
語句「治療的有効量」、「予防的有効量」、または「有効量」は、それが投与されることで所望の効果をもたらす量を意味する。正確な量は、処置の目的、処置される対象者の年齢および大きさ、投与経路などに依存し、公知の技術を用いて当業者により確認される(例えば、Lloyd(1999)The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照のこと)。
【0057】
一般的記載
本発明は、Dll4特異的抗体によるDll4の遮断が、マウスにおいてTreg細胞の数の増加をもたらし、次にEAEまたは糖尿病の進行を予防、低減、または遅延させるという知見に一部基づいている。完全ヒトDll4 Abの記載については、組み換えヒトDll4 Abを含む(国際特許公開公報番号WO 2008/076379を参照のこと)。
【0058】
治療的投与および処方
本発明は、Treg細胞の数を増加させることが有益である、疾患または障害の予防、治療または改善方法を提供し、この方法は、Dll4 AbのようなDll4アンタゴニストを含む治療的有効量の医薬組成物を投与する工程を包含する。この医薬組成物は、免疫抑制剤、抗炎症剤、鎮痛剤、血糖降下剤などのような1種またはそれ以上のさらなる治療剤(以下の章を参照のこと)をさらに含むことができる。本発明に基づいた医薬組成物の投与は、好適な担体、賦形剤、及び移動、送達、耐容性などの改良を提供するために製剤に組み込まれる他の薬剤とともに投与することができる。適切な製剤の数量は、すべての製剤化学者に公知の処方集に見出すことができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PA。これらの製剤は、例えば、散剤、パスタ剤、軟膏剤、ジェリー剤、ろう剤、油、脂質類、ベシクル(LIPOFECTIN(商標)など)を含む脂質(陽イオン性又は陰イオン性)、DNA複合体、無水吸収パスタ剤、水中油及び油中水懸濁剤、懸濁剤カーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固形ゲル剤、及びカーボワックスを含む半固形混合剤を含む。またPowell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238−311をも参照されたい。
【0059】
全身投与のために、初めに、治療有効用量は、インビトロアッセイから推定され得る。例えば、用量は、細胞培養において決定されたIC50を含む循環濃度範囲を動物モデルにおいて達成するように、処方され得る。このような情報は、ヒトにおける有用な用量を、より正確に決定するために使用され得る。最初の投薬量もまた、当該分野において周知の技術を使用して、インビボデータ(例えば、動物モデル)から推定され得る。当業者は、動物データに基づいてヒトへの投与を容易に最適化し得る。
【0060】
この用量は、投与される対象者の年齢およびサイズ(例えば体重または体表面積)、標的疾患、状態、投与経路などに基づいて変化させることができる。Dll4アンタゴニスト(特にDll4抗体)の全身投与について、静脈内投与の典型的な投薬量範囲は、一日用量で、約0.01〜約100mg/kg体重、約0.1〜約50mg/kg、または約0.2〜約10mg/kgである。皮下投与については、この抗体は少なくとも約25mg/ml、約50mg/ml、約75mg/ml、約100mg/ml、約125mg/ml、約150mg/ml、約175mg/ml、約200mg/ml、または約250mg/mlの抗体濃度で、少なくとも1日あたり1〜5回、1週間あたり1〜5回、または1ヶ月あたり1〜5回、約1mg〜約800mg、約10mg〜約500mg、約20mg〜約400mg、約30mg〜約300mg、または約50mg〜約200mg投与され得る。あるいは、この抗体は、最初に静脈内注射により投与され、その後連続的に皮下投与される。
【0061】
種々の送達システムは公知であり、本発明の医薬組成物、例えば、リポソームへのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することができる組み換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス、を投与するために使用することができる(例えば Wu et al.(1987)J.Biol.Chem.262:4429−4432を参照)。導入の方法は、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路を含むが、これらに限定されるものではない。組成物は、いずれかの好都合な経路により、例えば、輸注又は静脈内ボーラスにより、上皮又は皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、結腸及び腸粘膜など)を通した吸収により投与してもよく、そして他の生理活性物質と一緒に投与してもよい。投与は全身的又は局所的であってよい。
【0062】
医薬組成物はベシクルで、特にリポソーム(Langer(1990)Science 249:1527−1533;Treat et al.(1989)in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353−365;Lopez−Berestein,ibid.,pp.317−327を参照;一般に同書を参照)で送達することもできる。
【0063】
特定の状況では、医薬組成物は放出制御システムで送達することもできる。1つの実施態様では、ポンプを使用してもよい(Sefton(1987)CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照)。別の実施態様では、高分子材料を使用してもよい;Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974)を参照。尚別の実施態様では、放出制御システムは、組成物標的に近接して留置することができ、その結果全身投与用量のわずかだけが必要となる(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115−138,1984を参照)。
【0064】
注射製剤は、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射用剤形、点滴静注などの剤形を含んでよい。これらの注射製剤は公知の方法により調製することができる。例えば、注射製剤は、例えば、通常注射用に便利に使用される滅菌水性媒体又は油性媒体中で、上記の抗体又はその塩を溶解、懸濁又は乳化することにより調製することができる。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の助剤などを含む等張液があり、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO−50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加体)などの適切な可溶化剤との組み合わせで使用してもよい。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが用いられ、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの適切な可溶化剤との組み合わせで使用してもよい。このように調製した注射剤は、好ましくは適切なアンプルに充填される。本発明の医薬組成物は、標準注射針及びシリンジにより皮下又は静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン送達デバイスは、本発明の医薬組成物を送達するのに容易な適用性を有する。このようなペン送達デバイスは、再利用可能又は使い捨て可能となり得る。再利用可能なペン送達デバイスは、一般的に医薬組成物を含む交換可能カートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物のすべてが投与され、カートリッジが空になった時点で、空のカートリッジは容易に廃棄され、医薬組成物を含む別のカートリッジと交換することができる。このようにペン送達デバイスは再使用することができる。使い捨てペン送達デバイスでは、交換式カートリッジはない。むしろ使い捨てペン送達デバイスは、デバイス内のリザーバに貯められる医薬組成物であらかじめ充填される。リザーバの組成物が空になった時点で、全デバイスは廃棄される。
【0065】
多くの再利用可能なペン及び自己注射送達デバイスは、本発明の医薬組成物の皮下送達に適用性を有する。例としては、例えば、わずか数例を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems,Burghdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン,HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)I、II及びIII(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、 OPTIPEN STARLET(商標)、及び OPTICLIK(商標)(sanofi−aventis,Frankfurt,Germany)を含むが、それらに限定されるものではない。本発明の医薬組成物の皮下送達において適用を有する使い捨てペン送達デバイスの例としては、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi−aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、及びKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)を含むが、それらに限定されるものでない。
【0066】
有利には、上記の経口または非経口用の医薬組成物は、活性成分の用量に合わせて適した単位用量の剤形に調製される。単位用量でのこのような剤形は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、座薬などを含む。含まれるDll4アンタゴニスト(例えばDll4抗体)の量は、一般的には単位用量の剤形あたり約0.1〜約800mgであり;特に注射剤の形では、抗体は約5〜約100mgで含まれるのが好ましく、他の剤形では約10〜約250mgが好ましい。
【0067】
特定の実施態様において、本発明の医薬組成物を処置の必要な場所に局所的に投与することが望まれる場合があり;これは、例えば、限定の方法ではなく、手術中の局所注入、局所適用によって、例えば、注射、カテーテル、またはインプラントの集団によって達成され得、このインプラントは多孔性、非多孔性、またはゼラチン状の物質であり、シリコンゴム膜、ファイバーまたは市販の皮膚代替物などが含まれる。
【0068】
併用療法
本発明の治療法において、Dll4アンタゴニストは、単独でかまたは免疫抑制剤(immunosuppressive agentまたはimmunosuppressant)、抗炎症剤、鎮痛剤、直接的もしくは間接的血糖降下剤などのような1しゅまたはそれ以上のさらなる治療剤と組み合わせて提供され得る。適切な免疫抑制剤としては、限定されるわけではないが、グルココルチコイド、シクロスポリン、メトトレキサート、インターフェロンβ(IFN−β)、タクロリムス、シロリムス(sirolimus)、アザチオプリン、メルカプトプリン、オピオイド、ミコフェノール酸、TNF−結合タンパク質(例えば、インフリキシマブ、エタナセプト、アダリムマブなどの結合タンパク質)、抗悪性腫瘍性抗生物質(例えば、ダクチオマイシン、アントラサイクリン、ミトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシンなど)、免疫細胞を標的化する抗体(例えば抗CD20抗体、抗CD30抗体など)が挙げられる。抗Dll4アンタゴニストとの併用療法に適切な抗炎症剤および/または鎮痛剤としては、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンなど)、TNF−αアンタゴニスト(例えば、インフリキシマブまたはCentocor Inc.のREMICADE(登録商標);Centocor Inc.のゴリムマブ;Amgen/WyethのエタネルセプトまたはENBREL(登録商標);Abbott LaboratoriesのアダリムマブまたはHUMIRA(登録商標)など)、IL−1アンタゴニスト(例えば、IL−1結合融合タンパク質、例えばRegeneron Pharmaceuticals、Inc.のArcalyst(登録商標)(米国特許第6,927,044号を参照))、IL−6アンタゴニスト(例えば、米国特許第7,582,298号に開示されるような抗IL−6レセプター抗体)、アセトアミノフェン、モルヒネ様作用薬などが挙げられる。適切な血糖降下薬としては、限定するわけではないが、インスリンおよびそのアナログ、鼻ぐア二度、スルホンアミドおよびその尿素誘導体、α−グリコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオンおよびその誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤、グアーガム、レパグリニド、ナテグリニド、エキセナチド、プラムリンチド、ベンフルオレックス、リラグルチド、ミチグリニド、アルドース還元酵素阻害薬などが挙げられる。
【0069】
hDll4 AcまたはそのフラグメントのようなDll4アンタゴニスト、および上記のさらなる治療剤は、一緒に共投与されるかまたは別々に投与することができる。別々の剤形が用いられる場合、本発明の抗体またはそのフラグメントおよび追加薬は同時に投与され得るかまたは時差的に(すなわち、適切な順に順番に)分けて投与され得る。
【0070】
キット
本発明はさらに、梱包材、容器および容器内に収納された医薬品を含む、製造品またはキットを提供し、ここでこの医薬品は、Dll4抗体のような少なくとも1種のDll4アンタゴニスト、および少なくとも1種のさらなる治療剤を含み、また梱包材は、ラベルまたは使用の際の指示および使用法を示す添付文書を含む。一実施態様において、Dll4アンタゴニストとさらなる治療剤は別々の容器に収納されていてもよい。
【0071】
実施例
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物を製造し、使用する方法の完全な開示及び記載を当業者に提供するために示されるものであり、本発明者らが彼らの発明と考えるものの範囲を限定することは意図されない。使用される数値(例えば量、温度など)に関して正確さを確実にしようとする努力がなされるが、いくらかの実験誤差及び偏差が存在するはずである。別に指示がなければ、部は質量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、そして圧力は大気圧又はその付近であり、図のエラーバー=平均値±SEMである。
【0072】
以下の実施例において、3%のFCSを補充したダルベッコPBS(Dulbecco’s PBS)(Gibco(登録商標) Invitrogen(商標))1×中の以下の抗体を、フローサイトメトリーの目的のために細胞を染色するのに用いた:DC用、シグナル調節タンパク質αに対する抗体(Sirp−α;カタログ番号P84;BD Biosciences)、B220(カタログ番号RA3−6B2)、PDCA−1(カタログ番号eBio927)、CD8(カタログ番号53−6.7)、CD11b(カタログ番号M1/70)、MHCII(カタログ番号M5/114.15.2)、CD11c(カタログ番号N418)、およびCD135(カタログ番号A2F10);T細胞、B細胞およびNK細胞用、CD4に対する抗体(カタログ番号GK1.5またはL3T4)、CD3(カタログ番号145−2C11)、CD25(カタログ番号PC61または7D4)、CD44(カタログ番号IM7)、FoxP3(カタログ番号FJK16s);およびF4/80(カタログ番号BM8)、NK1.1(カタログ番号PK136)、IgM(カタログ番号II/41)、IgD(カタログ番号26−11c)、CD43(カタログ番号S7)、CD21(カタログ番号eBio4E3)、HSA(カタログ番号M1/69)、およびCD23(カタログ番号B3B4)(全てeBioscienceより)。
【0073】
(実施例1:B細胞、樹状細胞およびT細胞の発達におけるDll4遮断の影響)
Dll4−ノッチ1阻害は、B細胞の異所性の出現を伴うT細胞の分化における完全な遮断および胸腺内でPro−T細胞からDCへの細胞運命の転換を生じ得る樹状細胞(DC)の増殖につながることが示されている(Hozumi et al.、2008、J Exp Med 205(11):2507−2513;Koch et al.、2008、J Exp Med 205(11):2515−2523;およびFeyerabend et al.、2009、Immunity 30:1−13)。しかしながら、DC発達の特定の段階がDll4遮断によって直接的に影響を受けているかはまだ不明である。
【0074】
この問いに答えるために、6週齢のC57B1/6マウス(Jackson Labs)に、抗Dll4 Ab(REGN577)(n=5)またはヒトFcフラグメント(コントロール)(n=5)を2週間、1週間につき2度、皮下注射した。REGN577を、公開されている配列(WO 2007/143689)に基づいて社内で準備した。REGN 577は、ヒトおよびマウスのDll4に結合するが、ヒトDll1およびJAG1を検出可能に結合しない。注射の14日後、胸腺および脾臓を採取し、10%ウシ胎児血清(FCS)を補い、コラゲナーゼD(Sigma Aldrich)を含む完全RPMI 1640培地(Invitrogen)中で30分間、37℃で消化した。反応を停止させるために、2nMのEDTAを加え、この臓器懸濁液を70mmのセルストレーナーを通過させた。10% FCSを補った完全RPMI 1640培地中の大腿骨と脛骨を洗い流すことにより、各マウスから骨髄(BM)を回収し、細胞をRPMI培地中に再懸濁させた。細胞を上記の特異的マーカーに対する抗体で染色した後に、T細胞、B細胞およびDCサブセットをフローサイトメトリーにより評価した。染色された細胞はBDTM LSR IIフローサイトメーター(BD Biosciences)で実行し、データはFlowJoソフトウエア(version 8.8.6;Tree Star Inc.)を用いて解析した。
【0075】
図1Aおよび1Bは、胸腺におけるT細胞およびB細胞の集団を示している。図1Aに示されるように、Dll4遮断は、胸腺内でダブルネガティブ(「DN」:CD4-CD8-)のT細胞数における顕著な増加、およびダブルポジティブ(「DP」:CD4+CD8+)のT細胞数における現象を引き起こした。さらに、同じ処置は、Pro−T細胞(すなわち、DN1ステージにおけるCD44+CD25-CD4-CD8-細胞)から生じた、胸腺内でのB細胞の異所性の出現を誘発した(図1Bを参照)。対照的に、Dll4遮断は、骨髄中のB細胞の発達(図2A)または末梢脾臓B細胞亜集団(図2B)には影響を及ぼさなかった。さらに、Dll4遮断は、胸腺中の通常のDC(「cDC」;B220-CD11c+)および形質細胞様DC(「pDCs」;PDCA1+B220+CD11C+)の増殖を誘発し(図3A)、大幅な増殖はDll4 Abの最初の注射後7日目(p<0.001)に始まり、14日目(p<0.001)を通過して、21日目(p<0.01)も通過して続いた(図3B)。図3Aのドットプロットの数は、14日目での総細胞の中のDCの平均パーセンテージを表わしている。さらに、DCはDll4 Ab(REGN577)で処置したマウスの末梢中に増殖された。コントロールマウス(hFc 処置したもの)と比較したDll4 Abでの処置の際の脾臓中のDCのパーセンテージおよび絶対数の増加倍数は、表1に示される。
【0076】
【表1】

【0077】
リンパ組織のcDC、pDCおよび単球は、「マクロファージおよびDC前駆体」または「MDP」(その表面表現型「Lin-cKithiCD115+FLT3+」で同定され得る)と呼ばれる共通の祖先を共有するが、一方「Lin-cKitloCD115+FLT3+」を持つ「通常のDC前駆体」または「CDP」と呼ばれる別の祖先は、cDCおよびpDCの生産を制限されることが知られている。単球は、炎症状態下でDCの表現型の特徴の多くを発達させることができ、cDC、pDCおよび単球系統は、それらが組織に到達する時間によって分けられ、そして単球もpDCも定常状態下ではcDC中に発達しない。単球およびpDCとは異なり、リンパ組織中のcDSは、リンパ器官中でさらに分化および分裂せねばならない未熟細胞として骨髄から出てくると考えられている。Pre−DC(MHCIIloCD11cintCD135+Sirp−αint)および後期のpre−DC(MHCIIloCD11cint)は、主に骨髄中に生じるcDCの前駆体である(Liu et al.、2009、Science 324:392−397)。
【0078】
DC前駆細胞の恒常性におけるDll4 Abの効果を確認するために、胸腺、骨髄および脾臓中のMDPおよびCDPレベルをフローサイトメトリーで評価した。MDPおよびCDPは、骨髄中でのみ検出され、胸腺でも脾臓でも検出されなかった(データは示さず)。さらに、Dll4遮断は、コントロール処置をしたマウスと比較して、骨髄中に初期の前駆細胞の増殖を誘発しなかった。従って、この結果は、Dll4 Abが、MDPおよびCDPよりもDCの発達の後期段階(すなわちpre−DC段階)において作用することができることを示唆した。
【0079】
従って、胸腺および骨髄中のpre−DCおよび後期pre−DCを、フローサイトメトリーを用いて探索した。図3Cに示されるように、骨髄中に正常に存在するMHCIIloCD11cint DCは、Dll4 Ab処置の14日後に胸腺中にのみ増殖したが、MHCIIloCD11cint DCの増殖は、同じマウスのBM中では増殖されなかった(データは示さず)。従って、このpre−DC段階に由来するDC増殖は、胸腺に限定された。胸腺中のMHCIIloCD11cint DCの起源を評価するために、DN1(CD4-CD8-CD44CD25-)pro−T細胞中のMHCIIloCD11cint DCを同定するフローサイトメトリーを実施した。図3Dに示されるように、3日目にDll4遮断時のDN1 pro−T細胞集団内でMHCIIloCD11cint DCが検出された。MHCIIloCD11cint DCは、Dll4 Ab処置なしだけではなく、Dll4 Ab処置時のDN2、DN3およびDN4 T細胞集団内で検出されなかった(データは示さず)。Dll4 Ab処置時の末梢DC恒常性の変化は観察されなかった(データは示さず)。従って、Dll4遮断は、3日目(p<0.01)にDN1 pro−T細胞集団内でMHCIIloCD11cint DCの有意な増殖(図3D)、14日目(p<0.001)に増殖のピークを誘発した(データは示さず)。一方、未熟DCサブセットは、上で議論したように、胸腺中で7日目(p<0.001)から21日目(p<0.01)をとおして増殖した(図3Bを参照)。
【0080】
DC増殖が、分化の方向性のない(uncommitted)T細胞前駆体を起源とし得るか否かを調べるために、DN1 CD45.1+Lin-を挿入した細胞を抗Dll4 Abで処置したCD45.2+宿主マウス中に胸腺内移植した。CD45.1+細胞は、DN1段階で蓄積し、未熟DC(imDC)が検出されかつ胸腺中で増殖したことが分かった(図4)(p<0.01)。コントロールのAb処置マウスにおいては細胞が観察されず、おそらくはDN1移行細胞のほとんどが、T細胞ネガティブ選択によって排除されたからであろう。Dll4遮断は、通常のT/DC DN1前駆細胞由来の胸腺内代替DC系統の発達を促進することが結論付けられた。Fms様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3−L)は、DC中への骨髄前駆細胞の分化および末梢DCの発達に十分かつ不可欠である。Flt3−Lの血清レベルは、抗Dll4 Ab処置したWT動物中で変化しなかった(データは示さず)。さらに、以下の表2および3に示されるように、胸腺中のDCの割合は、野性型マウス(WT(表2および3))、FLt3−Lノックアウトマウス(Flt3−L-/-)(p<0.05)(表2)、およびFlt3−Rノックアウトマウス(Flt3−R-/-)(p<0.001)(表3)で増殖され、全てDll4 Abで処置され、コントロールAbで処置されたマウスと比較されている。従って、Dll4遮断は、胸腺中でFlt3依存性のDC増殖を誘導する。
【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
非T細胞表現型にに対して再駆動する初期T細胞前駆体の能力が観察されている(James P.Di Santo、2010、Science 329:44−45)。遺伝子配列の分析を胸腺細胞とpro−T細胞において実施し、BとDCの細胞系統の特定化に対し、T細胞に関与している遺伝子における抗Dll4 Ab処置の効果を測定した。T細胞の拘束に重要な遺伝子(例えば、Tcf7、Gata3、およびEts1)がダウンレギュレートされ、一方T細胞の発達をそれぞれ遮断することのできる遺伝子(Lyl1、Sfpi1)がアップレギュレートされたことがわかった(データは示さず;Di Santo、2010、上述、を参照のこと)。最も興味深いのは、DCを制御する遺伝子(PU.1 および Spi−B)およびB細胞の発達もまた、アップレギュレートされたことである(データは示さず;M.Merad et al.、2009、Bood 113:3418−3427を参照のこと)。さらに、DCサブセット発達に関与する、RelB および Id2ならびにインターフェロン調節因子(IRFs)2、4および8(重要な転写因子)の発現が増加された(データは示さず;Merad et al.、2009、上述、を参照のこと)。最後に、DCの発達に関与する重要なサイトカインであるCSF−1(M−CSF)の遺伝子発現は、抗Dll4 Ab処置においてアップレギュレートされることがわかった(p<0.05;データは示さず)。さらに、CSF−1血清レベルは、抗Dll4 Ab処置の際に増加した(図5;p<0.05)(B.Francke、et al.、2008、Blood 111:150−159を参照のこと)。従って、Dll4−ノッチのシグナル伝達遮断は、T細胞系統の拘束に特異的な転写因子をダウンレギュレートし、DC発達に重要な他の因子をアップレギュレートすることが結論付けられる。
【0084】
(実施例2:T細胞発達におけるDll4欠失の効果)
上記の実施例1において観察されたDC発達におけるDll4の効果がDll4に公有のものであるかを評価するために、Dll4が条件付きで不活性化されているDLL4COINマウスを準備した。「コンディショナル−バイ−インバーション(Conditional−by−inversion)(COIN)」対立遺伝子は、逆位要素(「COIN要素」)を持つ条件付き対立遺伝子であり、リコンビナーゼ媒介性条件付き変異を提供する。DLL4COINマウスは、タモキシフェン誘導性Creリコンビナーゼ構築物、CreERT2を含んでおり、これは、変異体エストロゲンリガンド結合ドメイン(ERT2)に融合するCreリコンビナーゼをコードする。CreERT2は、タモキシフェンの非存在下では主に不活性であり、内因性エストロフェンによっても活性化されない。マウスのタモキシフェン処置は、CreERT2を活性化し、COIN挿入点の下流の全てのエクソンの転写を抑止するCOIN要素の反転を引き起こし、それによりDll4をノックアウトする。CreERT2リコンビナーゼ系の詳細については、Feil et al.、1997、Biochemical and Biophysical Research Communications 237:752−757を参照のこと。
【0085】
DLL4COINにタモキシフェン(TAM)(カタログ番号T−5648、Sigma)を3mg/150μlコーン油/マウスで、1週間あたり3回、2週間にわたって腹腔内(i.p.)注射した。DLL4COINコントロールマウス(n=6)にはタモキシフェンを含まないコーン油を与えた。同様に、野性型C5B1/6マウスをタモキシフェン(n=6)またはコーン油のみ(n=6)で処置した。マウスの苦痛の徴候(例えば、毛皮の外観、低活性など)、感染症、および体重の過度の損失についてモニタリングした。マウスの体重を1週間あたり約3度測定した。20%より多く体重を落としたマウスを全て実験から除いた。この処置の2週間後、胸腺を採取し、胸腺細胞をフローサイトメトリーで分析した。
【0086】
図6に示されるように、Dll4の非存在下において(すなわち、タモキシフェン処置したマウス)、コーン油処置したマウスと比較して、B細胞およびpDCおよびcDCの両方が胸腺中で増殖し、実施例1で観察されたDCの発達および恒常性におけるDll4の効果は、確かにDll4に固有のものであることが示された。従って、Dll4−ノッチシグナル伝達は、pro−T細胞集団内で非T細胞系統の潜在能力を抑制することによりT細胞の拘束を維持するようである。
【0087】
(実施例3:Treg恒常性におけるDll4遮断またはDll4欠失の効果)
近年、Tregは、正常な数のDCを維持するのに必要であることが示されている。Tregが枯渇すると、代償性のFms様チロシンキナーゼ3(Flt3)に依存するDCの増加がある(Liu et al.、2009、前出)。さらに、2つの独立したグループが、インビボでDCによる調節性T細胞恒常性のフィードバックコントロールを示していた:すなわち、DCの数を増加させることで自己免疫疾患の進行を防止するTregの分裂および集積の増加につながる(Darrasse−Jeze G.et al.、2009、J Exp.Med.206(9):1853−1862;and Swee LK et al.、2009、Blood 113(25):6277−6287)。
【0088】
Dll4遮断がTregの恒常性に影響を及ぼすかどうかを決定するために、実施例1でDll4 AbまたはヒトFc(コントロール)で処置したマウスの胸腺中のTreg数をフローサイトメトリーで測定した。図7Aに示すように、Dll4の遮断は最初の注射の14日後に胸腺内でのTregの強い増殖をもたらした。この増殖は、最初の注射後、7日目に始まり(p<0.001)、胸腺中で14日目に最大効果に到達した(p<0.001)(図7Bを参照)が、末梢(すなわち脾臓)のTregにおいては、14〜21日目(p<0.05)のみ出現した(図7Bおよび表4を参照のこと)。表4に、コントロールマウス(hFc処置)と比較して、Dll4 Abで処置した脾臓中のTregのパーセンテージおよび絶対数の増加倍数を示している。
【0089】
【表4】

【0090】
観察されたTreg増殖がDll4分子に固有であるかどうかを評価するために、実施例2のDLL4COINマウスの胸腺中のTreg数もまた、フローサイトメトリーで測定した。Dll4 AbによるDll4遮断で観察されるように、コーン油処置したマウス(図7Cを参照)ならびにタモキシフェンで処置した野性型マウス(データは示さず)と比較して、タモキシフェン処置によるDll4の条件付き不活化もまた胸腺中のTregの増殖をもたらす。従って、Dll4−ノッチシグナル伝達は、DCを維持し、結果的にTregの恒常性およびT細胞の拘束を維持する。
【0091】
同様の実験を、ヒトDll4のN末端DSLドメインを結合することが知られている抗Dll4 Abを用いて(配列番号116および118のそれぞれHCVRおよびLCVR配列を有するREGN421)、ヒトDll4を発現するマウス(「ヒト化Dll4マウス」)中で実施した。このヒト化Dll4マウスを、マウスDll4遺伝子の細胞外ドメイン全体を、F1 C57BL/6 /129の胚性肝(ES)細胞中のヒトDll4遺伝子(7kb)の対応する細胞外領域と置き換えることにより、準備した。ホモ接合体マウスを作製し、C57BL/6バックグラウンドに飼育した。ヒト化Dll4マウスを、5mg/kgのhFc(コントロール;n=6)、または1mg/kg(n=6)もしくは5mg/kg(n=6)のREGN421 Abで2週間、1週間あたり2度処置した。各処置グループからの2匹のマウスを7日目に屠殺し、各グループ2匹以上のマウスは14日目に屠殺した。胸腺を採取し、細胞を染色して、フローサイトメトリーで試験した。残りのマウスは何も処置することなくにさらに4週間回復させ、処置の中止後28日目に屠殺して、胸腺細胞をフローサイトメトリーで分析した。治療の2週間後、cDCおよびpDCの増加(図8A)ならびにTreg集団における顕著な増加(図8B)を抗Dll4 Ab処置したマウスの胸腺中で確認した(p<0.01)。Dll4 Abを2週間受け、その後何の処置もせず4週間おいたマウスの胸腺において、DCとTregの数は両方、各期間の終わりには正常レベルに戻った(図8Aおよび8B)。一方、DCおよびTregの増殖もまた、hFc処置したマウスと比較して、Dll4−Ab処置したマウスの末梢で確認された(データは示さず)。
【0092】
(実施例4:Tregにおけるノッチレセプターの効果)
DCの増殖が、Tregの増殖につながることは示されている(Darrasse−Jeze G.et al.、2009 )。上で議論したように、Dll4遮断によって、DCとTregの両方が胸腺中で増殖されることが観察された(図3Aおよび図7A)。さらに、DCとTregのパーセンテージおよび絶対数の両方がDll4−Ab処置したマウスの末梢中で見いだされた(表1および4)。ノッチレセプターの遮断が、Dll4欠失のNicastrinノックアウト(KO)マウス(Nic-/-)と同じ表現型を導くかどうかが研究された。Nicastrinは、ノッチシグナル伝達経路に関与する分子であり、nicastrin欠失マウスにおけるnicastrinの遺伝手術は、ノッチレセプター1、2、3および4の下流のシグナル変換の遮断をもたらす(Aifantis et al.、un−published data)。Nicastrin KOマウスは、胸腺ならびに脾臓において、パーセンテージと絶対数の両方において、Tregの数が増加したDll4欠失/遮断マウスと同様の表現型を表わすことが示された(表5を参照のこと)。
【0093】
【表5】

【0094】
最終的に、Nic-/-マウス由来の骨髄細胞を、致死的に被ばくしたWTマウス中に移した場合、胸腺Tregの増殖をNic-/-→WTキメラ中で観察され、このような増殖が、細胞の自律的な効果であり、抗Dll4 Abを持つレシピエントマウスのDll4遮断は付加的な効果を持たないことを示唆している(表6を参照のこと)。
【0095】
【表6】

【0096】
これらの結果は、Dll4またはノッチレセプターのいずれかの遮断によるDll4−ノッチシグナル伝達の妨害が、Tregの増殖に関する同様の表現型をもたらすことを示唆している。
【0097】
Dll4遮断におけるTregの増殖がDCの数と相関しているかどうかを確認するために(Darrasse−Jeze G.et al.、2009、前出)、DCを欠いたマウスを準備して、実施例1のようにDll4 Abでを用いて試験した。霊長類のジフテリア毒素レセプター(DTR)を発現するトランスジェニックマウスに、それらの細胞に感応するジフテリア毒素(DT)を与えた(その他ではDT非感応性である)。DTは、そのBサブユニットと細胞DTRとの相互作用を介して細胞に入ると、エンドサイトーシスにより、DT Aサブユニットが放出され、伸長因子2のADPリボース化を触媒し、タンパク質合成の阻害とその後の有糸分裂および高分化細胞両方の急速なアポトーシスをもたらす。細胞除去の特殊性およびタイミングは、細胞のタイプ−制限プロモーター/エンハンサーエレメントによって、および毒素投与の計画によってそれぞれ決定され得る。DT感応性の標的をDTにするために、Jung et al.(2002、Immunity 17:211−220)は、ネズミのCD11cプロモーターの制御下で、サルのDTR−GFP(緑色蛍光タンパク質)融合タンパク質をコードする導入遺伝子を保持するマウス(CD11cre−DTRマウス)を作製した。CD11cは、DCの全てをコードするため、CD11cを発現する全てのネズミDCサブセットは、DTの投与により除去される。
【0098】
このように準備されたDCを欠くトランスジェニックマウスを、実施例1に記載のプロトコルに従ってDll4 AbまたはhFcコントロールで処置した。処置の14日後、胸腺および脾臓を採取し、分析用に調製した。どの特異的サブセットがDll4 Abと結合するかを決定するために、特異的DCまたはT細胞サブセットの表面上のDll4の発現レベルをフローサイトメトリーで評価した。これらの結果は、DCとT細胞はそれらの表面上に検出可能なレベルのDll4を発現しなかったことを示していた(データは示さず)。この知見は、Dll4が、胸腺上皮細胞(TEC)上に発現されるというレポートによって実証されている(Koch et al.2008、前出)。しかし、最も重要なことに、DCを欠いたマウスのDll4 Ab治療は、Tregの発現を誘発することができなかったが、Dll4 Abで処置した野性型マウス(すなわち、DC非欠失マウス)は、CD3+CD4+細胞中でTregの集団を明らかに増加させ(p<0.001)、Dll4 Ab治療によるTregの増殖がDC増殖を介して少なくとも一部媒介されたことを示唆している。
【0099】
(実施例5: 実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)におけるDll4遮断の効果)
CD4+CD25+FoxP3+天然調節性T細胞(すなわちTreg)は自己免疫寛容の維持ならびに、1型糖尿病、自己免疫性脳脊髄炎、GVHDおよび炎症性腸疾患(IBD)のような自己免疫疾患の抑制に重要な役割を果たしている(Darrasse−Jeze G.et al.、2009、supra;Swee LK et al.、2009、supra;and McGreachy et al.、2005、175(5):3025−3032)。
【0100】
Dll4遮断によってもたらされたTregの数の増加が、自己免疫疾患を予防しているかを確かめるために、EAEにおけるDll4遮断の影響をマウスモデルにおいて研究した。このEAEマウスモデルは、完全Freundアジュバンド(CFA)中で乳化させたミエリンオリゴデドロサイトグルコプロテイン(MOG)ペプチドをC57B1/6マウスの足蹠に注射し、そのと(24時間後)疾患を誘発させる百日咳毒素(PTX)注射をすることにより作製した。この疾患スコアを以下の症状に基づいて決定した:(0)症状なし;(1)弱々しい尾;(2)弱々しい尾および後ろ足の脱力感;(3)後ろ足の部分的な麻痺;(4)後ろ足の完全麻痺;(5)全ての肢の麻痺;および(6)瀕死の状態。免疫化の12〜24時間前、前侑同グループ(n=10)のマウスには、抗Dll4 Ab(REGN577)もしくはアイソタイプコントロールAb(CD20に特異的なヒト抗体であって、米国特許第2008/0260641の開示に従って社内で準備される)、またはPS/2(マウスインテグリン様細胞接着分子VLA−4;ATCC #CRL−1911)のいずれかを25mg/kg皮下注射ラット/マウスIgG2bに皮下注射し、一方導入後グループのマウス(n=10)のマウスは症状の表れた日に同じものを注射した。PS/2 Abは、疾患の再発を悪化させ、再発型自己免疫性脳脊髄炎(R−EAE)のマウスモデルにおいて中枢神経中のCD4+ T細胞の蓄積を増加させることが知られている(Theien BE et al.、2001、J Clin Invest 107(8):995−1006)。抗体の注射を、2週間にわたり、1週間に2度実施した。実験の終わりに、マウスの脊髄を注意深く取り除き、粉砕してその後コラゲナーゼD(Sigma Aldrich)を含むRPMI 1640培地中でインキュベーションした。2mMのEDTAを加えて反応を停止させ、その混合物を70mmの細胞ストレーナーを通過させ、細胞含有量をフローサイトメトリーで分析した。
【0101】
図9Aおよび9Bに示されるように、アイソタイプコントロールAbで処置したマウスは、MOG注射後、10〜14日あたりで始まり、15〜21日間のピークを持つ症状を発症(すなわち、「0」よりも大きい疾患スコアを有している)した。対照的に、Dll4 Abで処置したマウスは、コントロールAbで処置したマウスと比較して、疾患の進行を完全に予防した。表7は、コントロールAbで処置したマウスと比較して、Dll4 Abで処置したマウスの胸腺および脾臓におけるTregのパーセンテージおよび絶対数の増加倍数を示している。
【0102】
【表7】

【0103】
Tregは、18日あたりでは胸腺内で主に増殖し、21日後のみ、末梢(すなわち、脾臓)中で明らかな増殖が見られるようである。
この特定の事件条件下で、誘導後段階でのDll4 Abは、疾患の進行において有意な向上を示さなかった。Dll4 Abの投薬量および/または頻度は、当業者の知識内でさらに調節される。しかしながら、重要なことに、誘導前Dll4 Abを受けたマウスは、コントロールAbのマウスと比較して、18日目にて脊髄中に細胞浸潤の明らかな減少を示した(以下の表8を参照のこと)。コントロールAbで処置されたマウスの脊髄中で観察された細胞浸潤は、コレラのマウスにおける疾患の進行に対する主要な寄与源であり得る。
表8に示されるように、21日目にコントロールAbで処置したマウスの脊髄と比較して、Dll4 Abで処置したマウスの脊髄中では、マクロファージにおいて8倍の減少(p<0.0001)、NK細胞において2.7倍の減少(p<0.0001)、CD11b細胞において1.7倍の減少(p<0.001)、およびB細胞において2.5倍の減少(p<0.001)であった。
【0104】
【表8】

【0105】
さらに、Dll4 Abで処置したマウスにおけるリンパ節中のIL−17およびIFN−γの産生は、明らかに減少した(p<0.001)(図10)。従って、Dll4は、Th1の発達を媒介することによってEAEの病因に関与し得、Dll4 Ab治療は、Th1およびTh17サイトカインの分泌を遮断することによって疾患の誘発を防止することができる。
【0106】
(実施例6 糖尿病におけるDll4遮断の効果)
糖尿病におけるDll4遮断の効果もまた、1型糖尿病の多遺伝子モデルであるNOD/ShiLtJマウスにおいて試験した(Makino S et al.、1980、Jikken Dobutsu 29(1):1−13;Serreze DV et al.、1997、J Immunol 158(8):3978−86)。NOD/ShiLtJマウスにおける糖尿病は、膵島の膵島炎および白血球の浸潤によって特徴付けられる。膵臓のインスリン含有量の顕著な減少が、メスでは12週齢、オスではその数週間後に自発的に生じる。結果的に、血漿グルコース濃度は250mg/dLより大きくなる。NODマウスの血中グルコース濃度をOneTouch(登録商標) mini(LifeScan、Inc.)を用いて1週間に2度検査した。連続して血中グルコース濃度が読み取り値250mg/dLを超えた後、これらのマウスは糖尿病であると判断した。糖尿病の発症は、連続した糖尿病の測定の最初の日から始まった。これらのマウスに、hFc(n=5)または抗Dll4 Ab(Regn577)(n=10)25mg/kgを、7週齢から初め、9週齢まで、1週間あたり2度注射した。血中グルコース濃度を尾からの血液サンプルで週に1度モニタリングした。
【0107】
図11Aに示されるように、hFcで処置したマウスは、13週齢後、250mg/dLより高い血中グルコース濃度で連続する糖尿病の発症が始まった(●)。対照的に、抗Dll4 Ab(REGN577)で処置したマウスは、25週齢を超えてもグルコース濃度の増加の徴候が見られず(■)、その測定をさらに10週間継続した。糖尿病発症前のDll4−Abは、糖尿病の発症を防止し、処置された動物は、ついに糖尿病を発症しなかった。興味深いことに、Dll Abで処置した10匹のうち5匹のマウスに、20週齢で抗CD25(PC61)mAbを注射して、Tregを枯渇させると(◆)、それらの血中グルコース濃度はその後1〜2週間で増加しはじめ、それらのマウスは糖尿病となった。このことは、1型糖尿病におけるDll4 Abは、少なくとも部分的にはTregによって媒介されていることを示唆した(図11A)。
【0108】
インスリンおよびGAD65は、糖尿病NODマウスと同様、糖尿病個体の血清中で見いだされた2つの標準的な自己抗体である。従って、hFcコントロールまたはDll4 Abで処置されたマウス中の自己抗体の血清中濃度をDLISAにより測定した。図11Bに示されるように、Dll4 Ab処置は、抗インスリン(□)自己抗体および抗GAD65自己抗体(■)の産生を、未処置のWT C57Bl/6(すなわち、非NODマウス;ネガティブコントロール動物)と同様のレベルで遮断した。対照的に、hFcコントロールを受けたNOD(糖尿病)マウスの血清中の自己抗体は高いレベルであった。さらに、Dll4 Abで処置し、糖尿病の徴候を示していない23週齢のマウスの膵臓分泌物を&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)で染色すると、保存された形態で、正常数の膵島(インスリンまたはグルカゴンを産生する細胞であり、これらの破壊は、糖尿病の発症と直接的に関連する)が観察された(図11C、左パネル、および図11D、左パネル)。さらに、Dll4 Ab処置したマウスでは、その膵島内での細胞浸潤が観察されなかった(図11C、左パネル、および図11D、右パネル)。対照的に、hFcコントロールで処置した糖尿病動物は、Dll4 Ab処置したマウスよりも明らかに膵島の数が少なく(図11C、右パネル、および図11D、左パネル)、残りの非常に少ない膵島は高レベルの細胞浸潤を含んでいた(図11C、右パネル、および図11D、右パネル)。従って、Dll4 Abは、長い期間にわたり完全に糖尿病を予防することができ、その効果は、少なくとも部分的にTregの増殖によって媒介されているようである。しかしながら、さらなる機構が膵島および/またはインスリンにおけるDll4 Abの保護効果に関与し得る可能性がある。
【0109】
Dll4 Abで処置した糖尿病マウスの実際の血中グルコース濃度を測定し、hFcコントロールで処置したマウスの血中グルコース濃度と比較した。糖尿病マウスを、疾患の発症時(day 0)に、25mg/kgのDll4 Ab(n=3)またはコントロールhFc(n=4)で処置した。Dll4 Ab処置では、糖尿病マウスのグルコース濃度は、約350mg/dLから正常濃度(約120−130mg/dL)まで、明らかに減少した(図11E)。この効果は、平均4〜5週間続いた。一般的に、血中グルコースが350mg/dL未満の糖尿病マウスをDll4 Abで処置すると、それらのグルコース濃度は正常レベルまで低下し、この効果は処置の時点で350mg/dLより高い血中グルコースを持つマウスよりも長く続いた。このことは、Dll4 Abによる血中グルコース濃度のコントロールについて、長期にわたり効果的な治療には特定の機会のウインドウが存在することを示唆している。従って、本明細書中に記載される全ての特定のメカニズムによって縛られることなく、これらの知見は、Dll4抗体が、1型糖尿病の大きな治療能力を有していることを示唆している。
【0110】
上記の実験からの結果は、インビボでのTreg細胞とDCの数をコントロールする以前は未知であった調節ループの存在を明らかにした。この調節サーキットは、免疫と耐性のバランスが重要であるようであるが、最も重要なことは、最初に免疫系の3つの重要な構成要素間の連結(すなわち、Dll4−DC−Treg)を作製することである。従って、Dll4アンタゴニストによる治療は、インビボでTregの数を制御し、自己免疫疾患および関連する症状の進行を制御するために効果的な方法論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要のある対象者において調節性T(Treg)細胞の数を増加させるのに用いるためのデルタ様リガンド4(Dll4)アンタゴニストであって、Dll4とノッチレセプター間の相互作用を遮断し、それによってTreg細胞の数を増加させる、上記デルタ様リガンド4(Dll4)アンタゴニスト。
【請求項2】
請求項1に記載のDll4アンタゴニストであって、前記対象者は、多発性硬化症、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、クローン病、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン−バレー症候群(GBS)、橋本病、突発性血小板減少性紫斑病、過敏性腸症候群、エリテマトーデス、混合型結合組織病、重症筋無力症、ナルコレプシー、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、脈管炎、およびヴェーゲナー肉芽腫症から選択される疾患または障害に罹患している、上記Dll4アンタゴニスト。
【請求項3】
前記対象者が多発性硬化症に罹患している、請求項1または2に記載のDll4アンタゴニスト。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に従うDll4アンタゴニストであって、DllアンタゴニストはヒトDll4(hDll4)に特異的に結合し、Dll4−ノッチシグナル伝達経路を遮断する抗体もしくはそのフラグメントであるか、またはヒトIgGのFcドメインに融合する、Dll4の細胞外ドメインを含む融合タンパク質もしくはそのフラグメントである、上記Dll4アンタゴニスト。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のDll4アンタゴニストであって、Dll4アンタゴニストは、ヒトDll4(hDll4)に特異的に結合し、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列(それぞれ配列番号22、24および26)を含む重鎖可変域(HCVR)、ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3(それぞれ配列番号30、32および34)を含む軽鎖可変域を含む、Dll4−ノッチシグナル伝達経路を遮断する抗体もしくはそのフラグメントである、上記Dll4アンタゴニスト。
【請求項6】
抗体またはそのフラグメントが、配列番号20または配列番号116のHCVR配列を含む、請求項5に記載のDll4アンタゴニスト。
【請求項7】
抗体またはそのフラグメントが、配列番号28または配列番号118のLCVR配列を含む、請求項5に記載のDll4アンタゴニスト。
【請求項8】
抗体またはそのフラグメントが、配列番号22/28または116/118のHCVR/LCVR組み合わせを含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載のDll4アンタゴニスト。
【請求項9】
免疫抑制剤、抗炎症剤、および鎮痛剤から選択される少なくとも1つのさらなる治療薬と組み合わせに使用するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載のDllアンタゴニスト。
【請求項10】
さらなる治療薬が、インスリンおよびそのアナログ、グルココルチコイド、シクロスポリン、メトトレキサート、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、TNF−αアンタゴニスト、IL−1アンタゴニスト、IL−6アンタゴニスト、ならびにオピオイドから選択される少なくとも1つである、請求項9に記載のDll4アンタゴニスト。
【請求項11】
Dll4アンタゴニストおよび少なくとも1つのさらなる治療薬は、同時投与用または逐次投与用である、請求項9または10に記載のDll4アンタゴニスト。
【請求項12】
必要のある対象者において、Treg細胞の数を増加させることにおける、請求項1および4〜11のいずれか1項に記載のデルタ様リガンド4(Dll4)アンタゴニストの使用。
【請求項13】
必要がある対象者において制御性T(Treg)細胞の数を増加させるための医薬の製造におけるデルタ様リガンド4(Dll4)アンタゴニストの使用であって、該アンタゴニストはDll4とノッチレセプター間の相互作用を遮断し、それによってTreg細胞の数を増加させる、上記使用。
【請求項14】
対象者は、多発性硬化症、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、クローン病、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン−バレー症候群(GBS)、橋本病、突発性血小板減少性紫斑病、過敏性腸症候群、エリテマトーデス、混合型結合組織病、重症筋無力症、ナルコレプシー、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、脈管炎、およびヴェーゲナー肉芽腫症から選択される疾患または障害に罹患している、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
対象者が多発性硬化症に罹患している、請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に従う使用であって、DllアンタゴニストはヒトDll4(hDll4)に特異的に結合し、Dll4−ノッチシグナル伝達経路を遮断する抗体もしくはそのフラグメントであるか、またはヒトIgGのFcドメインに融合する、Dll4の細胞外ドメインを含む融合タンパク質もしくはそのフラグメントである、上記使用。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか1項に記載の使用であって、Dll4アンタゴニストは、ヒトDll4(hDll4)に特異的に結合し、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列(それぞれ配列番号22、24および26)を含む重鎖可変域(HCVR)、ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3(それぞれ配列番号30、32および34)を含む軽鎖可変域を含む、Dll4−ノッチシグナル伝達経路を遮断する抗体もしくはそのフラグメントである、上記使用。
【請求項18】
抗体またはそのフラグメントが、配列番号20または配列番号116のHCVR配列を含む、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
抗体またはそのフラグメントが、配列番号28または配列番号118のLCVR配列を含む、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
抗体またはそのフラグメントが、配列番号22/28または116/118のHCVR/LCVR組み合わせを含む、請求項17〜19のいずれか1項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−4】
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【図11−3】
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【公表番号】特表2013−518122(P2013−518122A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551293(P2012−551293)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022810
【国際公開番号】WO2011/094465
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】