説明

DNA処理装置

【課題】DNAチップを洗浄する際に、洗浄動作の開始から終了まで、洗浄に適した温度の洗浄液を供給するDNAチップ処理装置を提供する。
【解決手段】DNAチップを洗浄するため洗浄液を送る送液ノズルと、このノズルから加熱ブロックまでの送液チューブ内の洗浄液を、最初の洗浄動作前に加熱ブロックまで送り、温めた後、注入ノズルに洗浄液を送る指令を行うことで、洗浄処理の最初から適切な温度の洗浄液をDNAチップに与えることの出来るDNA処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAマイクロアレイのハイブリダイゼーションや洗浄処理を行うDNA処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のDNAチップ処理装置の処理(ハイブリダイゼーション、洗浄)に関して、図6を用いて説明する。図6は従来技術の送液に関わる模式図である。図6において洗浄液保持ボトル1は洗浄に用いる洗浄液を保持するためのものであり、送液チューブ2は洗浄液の流路を形成するための管である。三方電磁弁3は、その電磁弁を外部からの指令で動かして液送ポンプ4と連動させて、洗浄液保持ボトルから洗浄液を吸引し、吸引後は、次の流路へと洗浄液を送る。送液ポンプ4はシリンジポンプなどのポンプであり、送液ポンプ制御手段5により始動や停止を行う。この送液ポンプ4により洗浄液保持ボトルから吸引された洗浄液は、加熱ブロック6の流路を通ることで、内蔵されたヒーターにより加熱され送液ノズル12に送られる。その後、ウェルプレート14に保持されたDNAチップ15を洗浄するため、温められた洗浄液は送液ノズル12から吐出される。DNAチップ15の洗浄後の廃液は、吸引ノズル13を通して廃液ポンプ16によって廃液保持ボトル17へ排出される(例えば特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2006−3349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、洗浄液を加熱するための加熱ブロックと送液ノズルとが離れているので、この間の流路にある洗浄液は加熱されないため、最初の洗浄では低温の洗浄液がDNAチップ15に加えられる。このため、本来、洗浄液温度の精度が要求されるDNAチップの洗浄温度が一定時間、低下してしまう。
【0004】
本発明は、前記課題を解決するもので、DNAチップを洗浄する際に、洗浄動作の開始から終了まで、洗浄に適した温度の洗浄液を供給するDNAチップ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明のDNA処理装置は、液体を注入するための注入ノズルと、前記液体を送液するための送液ポンプと、前記送液ポンプと前記注入ノズルとを繋ぐ送液チューブと、前記送液チューブの途中に設けられた前記送液チューブ内部の前記液体を加熱するための加熱ブロックと、前記液体を前記注入ノズルから最初に吐出する前に、前記送液チューブ内の予め定めた所定量の液体を前記送液ポンプに送り、所定時間経過後に前記注入ノズルから前記液体を吐出するように指令を送るポンプ制御手段と、を備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0006】
以上のように本発明のDNA処理装置によれば、洗浄動作の開始から終了まで、洗浄に適した温度の洗浄液を供給することで、複数のDNAチップすべてにおいて最適な洗浄温度でDNAチップの洗浄を行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明のDNA処理装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0008】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるDNA処理装置の送液部構成図である。 図1において洗浄液保持ボトル1は洗浄に用いる洗浄液が格納されており、三方電磁弁3に接続されている。この三方電磁弁3の一方の接続口には、送液ポンプ4が接続されており、三方電磁弁3は、送液ポンプ4により洗浄液保持ボトルから洗浄液を吸い上げ、その後、次の流路へ洗浄液を送るように外部からの指令で弁を切り替えている。また、送液ポンプ4は、送液ポンプ制御手段5により始動・停止や、あらかじめ設定された一定量の洗浄液の送液が行われる。三方電磁弁3の残りの接続口には、送液チューブ2が接続されており、この送液チューブ2は、加熱ブロック6を介して送液ノズル12に接続されている。送液ポンプ4は、シリンジポンプなどの液体ポンプが好適であり、送液チューブ2は、洗浄液により腐食を受けにくいアルミ材またはステンレス材等の金属、またはシリコン材料などで作られている。
【0009】
加熱ブロック6は、その内部のヒーターを送液チューブ2と隣接させて送液チューブ内の洗浄液を温めるためのものである。加熱ブロック6には、温度検出素子7が取り付けられており、その出力は温度検出手段8に接続されている。温度検出手段8は、温度検出素子7からの電気信号を温度に換算するAD変換器と温度換算曲線あるいは温度換算テーブルからなり、検出した信号から温度を計算する。この温度検出手段8の出力は、送液温度判定手段9と加熱ブロック制御手段10に出力される。なお、温度検出素子7は、例えばサーミスタ等の温度検出素子が良い。
【0010】
加熱ブロック制御手段10は、温度検出手段8の出力をもとに、洗浄液の温度を一定に保つために前記加熱ブロック6内に保持されたヒーターのON/OFFを行う。また、前記温度検出手段8の温度情報は、送液温度判定手段9にも提供され、前記加熱ブロック6内に保持されたヒーターがOFFされたとき、あらかじめ定められた一定の温度に達すると、前記送液温度判定手段9は前記送液ポンプ制御手段5を介して前記送液ポンプ4に動作開始の信号を送る。
【0011】
ノズルブロック11は、送液ノズル12と吸引ノズル13を保持するためのブロックで、DNAチップ15が内蔵されたウェルプレート14上に設置されている。吸引ノズル13は洗浄後の廃液を、例えばダイヤフラム式ポンプなどの廃液ポンプ16によって 廃液保持ボトル17へ向けて排出するためのノズルである。
【0012】
以上のように構成されたDNA処理装置について、以下図2は本発明の実施の形態1におけるDNA処理装置の送液動作フローチャートを元に、その動作、作用を説明する。
【0013】
まず、DNAチップの洗浄を行う場合、洗浄液保持ボトル1に保持された洗浄液は、送液ポンプ制御手段5によって制御される送液ポンプ4によって送液チューブ2を介して加熱ブロック制御手段10によって制御される加熱ブロック6へ送られ、加熱ブロック6を通過する際に温度エネルギーを受けて温度上昇する。
【0014】
次に、温められた洗浄液は送液ポンプ4によってさらに押し進められ、送液ノズル12からウェルプレート14に保持されたDNAチップ15に注入され、DNAチップ15の洗浄の洗浄を行う。
【0015】
このとき、加熱ブロック6は加熱ブロック制御手段10によって、扱うDNAの塩基数によって決まる洗浄に最適な温度に制御されるが、加熱ブロック6で温度上昇をうけた洗浄液は、送液ノズル12から吐出されてDNAチップ15に到達するまでに温度低下を受けるため、温度低下を見越して実際には洗浄に最適な温度よりも5〜10℃程度高い値に設定される。
【0016】
また、次のチップの洗浄に移行する際に、加熱ブロック6から送液ノズル12までの流路の長さと流路の内径によって決まる一定量の洗浄液を、送液温度判定手段9からの命令によって送液ポンプ4を動作させ、再び加熱ブロック6内に引き戻し、送液温度判定手段9によって送液ノズルに送液可能と判断された後、再び送液ノズルに送られる。
【0017】
このように、十分に加熱された洗浄液をDNAチップ15に送ることで、毎回安定した洗浄に最適な温度で洗浄動作を行うことが可能である。
(実施の形態2)
図3は本発明における加熱ブロックの構成の一形態を示した図である。図3において送液チューブ2は洗浄液を通すための流路であり、例えば液体によって腐食を受けにくいアルミ材またはステンレス材等の金属、またはシリコンなどの液体を扱うのに適した材質のチューブであることが望ましく、ヒーター18は、例えばラバーヒーター、セラミックヒーターなどのヒーティング材であり、緩衝材19は前記送液チューブ2を保持するための連続した溝を有するアルミブロック等であり、前記ヒーター18で発生した熱エネルギーは、前記緩衝材19を介して送液チューブ2に伝達され、送液チューブ2内の洗浄液が加熱される。また、外郭20は前記送液チューブ2、前記ヒーター18および前記緩衝材19を覆う耐熱性樹脂等の外郭であり、全体として加熱ブロックとしての機能を有する。
【0018】
このとき、前記送液チューブ2は金属または樹脂等のチューブであり、急な屈曲を与えると流路がふさがってしまうため、前記送液チューブ2に急激な屈曲を与えないよう配置する必要があるが、実施の形態1に記載の加熱ブロックと異なる点は、前記送液チューブ2を渦巻状に配置することで流路を確保しつつ、一回の洗浄に必要な洗浄液を蓄えることができ、かつ、1回の洗浄に必要な洗浄液量および洗浄液の引き戻し量に対して十分な洗浄液を蓄積でき、また、渦巻き状に流路を形成することで、実施の形態1に示した加熱ブロックよりもコンパクトな加熱ブロックを形成できるという有用な効果が得られる。
【0019】
(実施の形態3)
図4は本発明における加熱ブロックの構成の一形態を示した図である。図4において送液チューブ2は洗浄液を通すための流路であり、例えば液体によって腐食を受けにくいアルミ材またはステンレス材等の金属、またはシリコンなどの液体を扱うのに適した材質のチューブであることが望ましく、ヒーター18は、例えばラバーヒーター、セラミックヒーターなどのヒーティング材であり、緩衝材19は前記送液チューブ2を保持するための連続した溝を有するアルミブロック等であり、前記ヒーター18で発生した熱エネルギーは、前記緩衝材19を介して前記送液チューブ2に伝達され、送液チューブ2内の洗浄液が加熱される。また、外郭20は前記送液チューブ2、前記ヒーター18および前記緩衝材19を覆う耐熱性樹脂等の外郭であり、全体として加熱ブロックとしての機能を有する。
【0020】
このとき、前記送液チューブ2は金属または樹脂等のチューブであり、急な屈曲を与えると流路がふさがってしまうため、前記送液チューブ2に急激な屈曲を与えないよう配置する必要があるが、実施の形態1に記載の加熱ブロックと異なる点は、前記送液チューブ2を蛇行状に配置することで流路を確保しつつ、一回の洗浄に必要な洗浄液を蓄えることができ、かつ、1回の洗浄に必要な洗浄液量および洗浄液の引き戻し量に対して十分な洗浄液を蓄積でき、また、蛇行状に流路を形成することで、実施の形態1に示した加熱ブロックよりもコンパクトな加熱ブロックを形成できるという有用な効果が得られる。
【0021】
(実施の形態4)
図5は本発明における請求項8に記載の加熱ブロックの構成の一形態を示した図である。図5において送液チューブ2は洗浄液を通すための流路であり、例えば液体によって腐食を受けにくいアルミ材またはステンレス材等の金属、またはシリコンなどの液体を扱うのに適した材質のチューブであることが望ましく、ヒーター18は、例えばラバーヒーター、セラミックヒーターなどのヒーティング材であり、緩衝材19は前記送液チューブ2を保持するための連続した溝を有するアルミブロック等であり、前記ヒーター18で発生した熱エネルギーは、前記緩衝材19を介して前記送液チューブ2に伝達され、送液チューブ2内の洗浄液が加熱される。また、外郭20は前記送液チューブ2、前記ヒーター18および前記緩衝材19を覆う耐熱性樹脂等の外郭であり、全体として加熱ブロックとしての機能を有する。
【0022】
このとき、前記送液チューブ2は金属または樹脂等のチューブであり、急な屈曲を与えると流路がふさがってしまうため、前記送液チューブ2に急激な屈曲を与えないよう配置する必要があるが、実施の形態1に記載の加熱ブロックと異なる点は、前記送液チューブ2を前記ヒーター18にらせん状に巻きつけることで流路を確保しつつ、一回の洗浄に必要な洗浄液を蓄えることができ、かつ、1回の洗浄に必要な洗浄液量および洗浄液の引き戻し量に対して十分な洗浄液を蓄積でき、また、前記送液チューブ2を前記ヒーター18にらせん状に巻きつけることで、実施の形態1に示した加熱ブロックよりもコンパクトな加熱ブロックを形成できるという有用な効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明にかかるDNA処理装置は、DNAチップ洗浄時に洗浄液をDNAチップに適した温度で最初から与えられるため、DNAチップ部での温度制御効果的に行え、DNAハイブリダイゼーション装置のみならず、温度制御が必要な送液手段を有する装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1におけるDNA処理装置の送液部構成図
【図2】本発明の実施の形態1におけるDNA処理装置の送液動作フローチャート
【図3】本発明の実施の形態2における加熱ブロックの構成の一形態構成図
【図4】本発明の実施の形態3における加熱ブロックの構成の一形態構成図
【図5】本発明の実施の形態4における加熱ブロックの構成の一形態構成図
【図6】従来技術の送液に関わる模式図
【符号の説明】
【0025】
1 洗浄液保持ボトル
2 送液チューブ
3 三方電磁弁
4 送液ポンプ
5 送液ポンプ制御手段
6 加熱ブロック
7 温度検出素子
8 温度検出手段
9 送液温度判定手段
10 加熱ブロック制御手段
11 ノズルブロック
12 送液ノズル
13 吸引ノズル
14 ウェルプレート
15 DNAチップ
16 廃液ポンプ
17 廃液保持ボトル
18 ヒーター
19 緩衝材
20 外郭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を注入するための注入ノズルと、
前記液体を送液するための送液ポンプと
前記送液ポンプと前記注入ノズルとを繋ぐ送液チューブと、
前記送液チューブの途中に設けられた前記送液チューブ内部の前記液体を加熱するための加熱ブロックと、
前記液体を前記注入ノズルから最初に吐出する前に、前記送液チューブ内の予め定めた所定量の液体を前記送液ポンプに送り、所定時間経過後に前記注入ノズルから前記液体を吐出するように指令を送るポンプ制御手段と、を備えたDNA処理装置。
【請求項2】
前記所定量を前記加熱ブロック部の出口から前記注入ノズルの吐出口までの間に貯留している量とした、請求項1に記載のDNA処理装置。
【請求項3】
前記所定時間を、前記送液チューブ内部の液体が前記加熱ブロックで吐出可能な温度まで加熱するのに要する時間とした、請求項1に記載のDNA処理装置。
【請求項4】
前記加熱ブロックに温度検出手段を備え、前記送液チューブ内部の液体の温度を検出し、その結果を前記ポンプ制御手段に送る温度検出手段を備えた請求項1に記載のDNA処理装置。
【請求項5】
前記送液チューブは、前記加熱ブロックと平行に走査された形状であることを特徴とした請求項1に記載のDNA処理装置。
【請求項6】
前記送液チューブは、前記加熱ブロック内で渦巻状に平面配置された形状であることを特徴とした請求項1に記載のDNA処理装置。
【請求項7】
前記送液チューブは、前記加熱ブロック内で蛇行された形状であることを特徴とした請求項1に記載のDNA処理装置。
【請求項8】
前記送液チューブは、前記加熱ブロックを中心として加熱ブロックの外周に螺旋状に巻きつけられた形状であることを特徴とした請求項1に記載のDNA処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−256492(P2008−256492A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98167(P2007−98167)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】