説明

DNA損傷誘発性細胞周期G2チェックポイントを排除し、そして/またはDNA損傷処置の抗癌活性を増強する化合物

【課題】本発明は、細胞増殖障害(例えば、良性および悪性の癌細胞に関連する障害)を処置するために使用され得る化合物を提供し、さらに、この化合物を含む薬学的組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題は、ヒト細胞を含む哺乳動物細胞中の細胞周期G2チェックポイント、特にDNA損傷誘発性G2チェックポイントを阻害する組成物および方法を提供することによって解決された。特に、本発明は、細胞周期G2チェックポイントを排除することにより細胞をDNA損傷剤に感作する組成物および方法を提供する。本発明の化合物は、癌のような増殖障害を処置するのに使用される。本発明は、G1チェックポイントで弱められた癌細胞をDNA損傷剤および処置に対して選択的に感作するための組成物および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2002年6月6日に出願された米国出願60/386,930の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、抗細胞増殖活性を有する化合物、およびその生成、ならびにこの化合物を含む薬学的組成物、およびこれらの化合物および組成物を使用して増殖障害を処置する方法に関する。従って、本発明の化合物は、細胞増殖の阻害のため、従って、癌を含む細胞増殖障害を処置するために有用である。特に、本発明は、細胞周期G2チェックポイント(DNA損傷誘発性G2チェックポイント)を排除する化合物に関し、これは、増殖障害(例えば、癌)の処置(転移性および非転移性の固形または液体の腫瘍の処置を含む)のために有用である。
【背景技術】
【0003】
(背景)
細胞周期は、S期(DNA複製)、M期(有糸分裂)、およびS期とM期との間の2つのギャップ期(G1期およびG2期)を含む。細胞周期中のチェックポイントは、細胞周期段階を通る正確な進行を保証し、そしてDNA完全性の状態、DNA複製、細胞サイズおよび周辺環境状態のモニタリングを包含する(非特許文献1)。多細胞生物にとって、ゲノムの完全性を維持することが本質的に重要であり、そしてゲノムの状態をモニタリングする複数のチェックポイントが存在する。これらの中に、G1チェックポイントおよびG2チェックポイントが、それぞれ、DNA複製およびDNA有糸分裂の前に存在する。S期に入る前にDNA損傷を修復または修正することが重要である。なぜなら、一旦、損傷したDNAが複製されると、これはしばしば変異を生じるからである(非特許文献2)。広範なDNA損傷を修復することのないG1チェックポイントおよびG2チェックポイントを通る進行は、有糸分裂の結末および/またはアポトーシスを誘導する。
【0004】
ほとんどの癌細胞が、G1チェックポイント関連タンパク質(例えば、p53、Rb、MDM−2、p16INK4およびp19ARF)に異常を有する(非特許文献3)。あるいは、変異は、癌遺伝子産物(例えば、Ras、MDM−2およびサイクリンD)の過剰発現および/または過剰活性化を生じ得、このことはG1チェックポイントのストリンジェンシーを減少させる。これらの変異に加えて、過剰な増殖因子のシグナル伝達が、増殖因子の過剰発現によって生じ得、そしてG1チェックポイントのストリンジェンシーを減少させ得る。機能の喪失および機能変異の取得と共に、増殖因子レセプターまたは下流シグナル伝達分子による連続した活性化は、G1チェックポイントを無効にすることによって、細胞形質転換を生じ得る。崩壊または排除されたG1チェックポイントは、癌細胞において観察されるより高い変異率および多くの変異に寄与する。結果として、ほとんどの癌細胞は、過剰なDNA損傷に対する生存について、G2チェックポイントに依存する(非特許文献4)。
【0005】
G2細胞周期チェックポイントは、DNAの複製および修復が完了するまで、有糸分裂の開始を制限する。G2チェックポイントの機能不全は、DNAの複製および修復の完了前に有糸分裂を時期尚早に開始させ、ゲノムDNAのかなりの部分を欠くか、または変異を有する娘細胞を生成する。G2チェックポイントの機能としては、DNA損傷の検出、およびDNA損傷が検出された場合に細胞周期を停止させ得るシグナルの生成が挙げられる。DNA損傷の後の細胞周期G2の停止を促進するメカニズムは、酵母からヒトまでの種において保存されていると考えられている。損傷DNAの存在下で、Cdc2/サイクリンBキナーゼは、Cdc2キナーゼ上のスレオニン−14残基およびチロシン−15残基のリン酸化によって不活性に保たれる;あるいは、サイクリンBタンパク質のレベルが減少され得る。有糸分裂の開始時に、CDC25ホスファターゼは、Cdc2/サイクリンBキナーゼから阻害性ホスファターゼを除去し、それによりCdc2/サイクリンBキナーゼを活性化する。Cdc2/サイクリンBキナーゼの活性化は、B期の開始と等価である。
【0006】
分裂酵母において、プロテインキナーゼChk1は、損傷DNAに応答する細胞周期の停止のために必要である。Chk1キナーゼは、いくつかのラット遺伝子産物の下流で作用し、DNAが損傷した際に、リン酸化によって改変される。発芽酵母のキナーゼRad53および分裂酵母のCds1は、未複製のDNAからシグナルを伝達することが知られている。CHK1とCds1との間にいくつかの縮退が存在するようである。なぜなら、Chk1およびCds1の両方の排除は、損傷DNAによって誘導されるG2停止の崩壊で終了したからである。興味深いことに、Chk1およびCds1の両方は、Cdc25をリン酸化し、そしてCdc25へのRad24の結合を促進し、このCdc25はCdc25を細胞質に隔離し、Cdc2/サイクリンBの活性化を妨げる。従って、Cdc25は、これらのキナーゼの共通の標的であるようであり、このことはこの分子がG2チェックポイントにおける不可欠の因子であることを示唆している。
【0007】
ヒトにおいて、分裂酵母Chk1のヒトホモログログであるhChk1、ならびに発芽酵母Rad53および分裂酵母Cds1のヒトホモログログであるChk2/HuCds1の両方は、DNA損傷に応答して、重要な調節部位であるセリン−216におけるCdc25Cをリン酸化する。このリン酸化は、分裂酵母のRad24およびRad25のヒトホモログログである小さな酸性タンパク質14−3−3sに対する結合部位を生成する。このリン酸化の調節的役割は、Cdc25Cのセリン−216のアラニンへの置換がヒト細胞における細胞周期G2停止を混乱させたという事実によって明確に示された。しかし、G2チェックポイントの機構は、完全には理解されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Maller(1991)Curr.Opin.Cell Biol.,3:26
【非特許文献2】Hartwell(1992)Cell,71:543
【非特許文献3】Levine(1997)Cell,88:323
【非特許文献4】O’ConnorおよびFan(1996)Prog.Cel Cycle Res.,2:165
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(要旨)
本発明は、細胞増殖障害(例えば、良性および悪性の癌細胞に関連する障害)を処置するために使用され得る化合物を提供し、さらに、この化合物を含む薬学的組成物を提供する。本発明な任意の特定の機構に限定されないが、本発明の化合物は、G2チェックポイントを阻害、破壊または排除することによって、特に、DNA損傷誘発性G2チェックポイントを排除することによって、機能し得ると考えられる。本発明の化合物は、DNA損傷を有する細胞(例えば、癌細胞)を、DNA損傷の影響に対して選択的に感作することによって、抗癌剤として作用し得る。本発明の化合物は、細胞、特に、癌細胞を、DNA損傷剤または処置剤の影響に対して感作し得る。本発明の化合物は、いずれのさらなるDNA損傷処置なしで、かつ正常細胞に対する細胞傷害性がほとんどか全くなしで、細胞増殖を抑制し得る。従って、本発明の化合物は、抗癌剤として、および抗癌薬として使用される薬学的組成物中の活性成分として、任意のさらなるDNA損傷処理を伴ってかまたは伴わずに使用され得る。
【0010】
本発明は、増殖性障害を有する細胞を処置するための方法を提供する。本発明は、細胞のG2チェックポイントを排除するための方法、特に、細胞を、本発明の化合物または本発明の薬学的組成物と、G2チェックポイントを排除するのに十分な量で接触させることによって、DNA損傷誘発性G2チェックポイントを排除するための方法を提供する。本発明はさらに、細胞を、DNA損傷剤に対して、損傷したG1チェックポイントで選択的に感作するための方法を提供し、この方法は、この細胞を、本発明の化合物または本発明の組成物と、G2チェックポイントを排除するのに十分な量で接触させ、それによりこの細胞をこのDNA損傷剤に対して感作する工程を包含する。この細胞は、哺乳動物細胞、特に、ヒト細胞、より詳細には、ヒト癌細胞であり得る。
【0011】
本発明は、本発明の化合物または本発明の薬学的組成物を、細胞におけるG2チェックポイントを排除するのに十分な量で投与し、それによりこの細胞をDNA損傷剤に対して感作し、そしてDNA損傷剤を投与することによって、個体における細胞の有糸分裂の崩壊および/またはアポトーシスを誘導するための方法を提供する。この細胞は、哺乳動物細胞、特に、ヒト細胞、詳細には、ヒト癌細胞であり得る。この癌細胞は、損傷したG1細胞周期停止チェックポイントを有し得る。DNA損傷剤は、5−フルオロウラシル(5−FU)、レベカマイシン(rebeccamycin)、アドリアマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、温熱療法、UV照射またはγ線照射、またはDNA損傷を引き起こすことが知られており、そして/またはスクリーニング方法によって同定される任意の適切な化合物であり得る(米国特許出願番号第09/667,365号に記載)。
【0012】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
細胞に投与される場合、細胞周期G2チェックポイントを排除する化合物であって、以下の構造:
【化1】


を有し、ベンゼンのいずれかまたは両方が、ピラジン、ピリミジン、ピペラジン、モルホリン、シクロヘキサン、ピペリジンまたはピリジンで置換され得;R1は、ハロゲン、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、アミノ(NH)、ニトロ(NO)、ヒドロキシ(OH)O−メチル(OCH)メチル(CH)または水素であり;R2、R3、R4、R5およびR6は、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、アミノ(NH)、ニトロ(NO)、メチル(CH)、O−メチル(OCH)、ヒドロキシ(OH)、CH(CH、CHO、CHOCH、O(CH)nCH、OCO(C12)Cl、COOCHまたは水素であり;X1は、窒素(NH)、酸素(O)、または硫黄(S)であり;そしてX2は、酸素(O)または硫黄(S)である、化合物。
(項目2)
細胞に投与される場合、DNA損傷誘発性チェックポイントを排除する、項目1に記載の化合物。
(項目3)
正常細胞およびDNA損傷細胞を含む細胞の集団に投与される場合、DNA損傷細胞を抑制または殺傷する、項目2に記載の化合物。
(項目4)
細胞に投与される場合、細胞をDNA損傷剤または処置に感作する、項目2に記載の化合物。
(項目5)
4−クロロ−安息香酸4−メトキシ−フェニルエステル(CDBC004);4−クロロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC401);4−ブロモ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC402);3,4,5−トリフルオロ−安息香酸p−トリル1エステル(CBDC403);4−フルオロ−安息香酸4−ブロモフェニル1エステル(CBDC404);3,4−ジクロロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC405);2,4−ジクロロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC406);4−フルオロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC407);2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC408);4−クロロ−安息香酸3,4−ジメチルフェニルエステル(CBDC409);4−クロロ−安息香酸4−ヒドロキシフェニルエステル(CBDC410);4−フルオロ−安息香酸4−ヒドロキシフェニルエステル(CBDC411);4−ブロモ−安息香酸4−フルオロフェニルエステル(CBDC412);4−ブロモ−安息香酸4−トリフルオロメチルフェニルエステル(CBDC413);4−ブロモ−安息香酸4−ヒドロキシフェニルエステル(CBDC414);4−ブロモ−安息香酸4−トリフルオロメトキシフェニルエステル(CBDC415);4−ブロモ−安息香酸6−メチル−ピリジン−3−イルエステル(CBDC418);4−ブロモ−チオ安息香酸0−p−トリルエステル(CBDC440);4−ブロモ−ジチオ安息香酸p−トリルエステル(CBDC441);4−ブロモ−チオ安息香酸S−p−トリルエステル(CBDC442)から選択される少なくとも1つの化合物を含む、項目1に記載の化合物。
(項目6)
以下の構造:
【化2】


を有する、4−クロロ−安息香酸4−メトキシ−フェニルエステル(CBDC004)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目7)
以下の構造:
【化3】


を有する、4−クロロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC401)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目8)
以下の構造:
【化4】


を有する、4−ブロモ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC402)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目9)
以下の構造:
【化5】


を有する、3,4,5−トリフルオロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC402)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目10)
以下の構造:
【化6】

を有する、4−フルオロ−安息香酸4−ブロモ−フェニルエステル(CBDC404)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目11)
以下の構造:
【化7】


を有する、3,4−ジクロロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC405)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目12)
以下の構造:
【化8】


を有する、2,4−ジクロロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC406)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目13)
以下の構造:
【化9】


を有する、4−フルオロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC407)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目14)
以下の構造:
【化10】


を有する、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC408)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目15)
以下の構造:
【化11】


を有する、4−クロロ−安息香酸3,4−ジメチル−フェニルエステル(CBDC409)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目16)
以下の構造:
【化12】


を有する、4−クロロ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル(CBDC410)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目17)
以下の構造:
【化13】


を有する、4−フルオロ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル(CBDC411)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目18)
以下の構造:
【化14】


を有する、4−ブロモ−安息香酸4−フルオロ−フェニルエステル(CBDC412)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目19)
以下の構造:
【化15】


を有する、4−ブロモ−安息香酸4−トリフルオロメチル−フェニルエステル(CBDC413)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目20)
以下の構造:
【化16】


を有する、4−ブロモ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル(CBDC414)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目21)
以下の構造:
【化17】


を有する、4−ブロモ−安息香酸4−トリフルオロメトキシ−フェニルエステル(CBDC415)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目22)
以下の構造:
【化18】


を有する、4−ブロモ−安息香酸6−メチルピリジン−3−イルエステル(CBDC418)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目23)
以下の構造:
【化19】


を有する、4−ブロモ−チオ安息香酸0−p−トリルエステル(CBDC440)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目24)
以下の構造:
【化20】


を有する、4−ブロモ−ジチオ安息香酸p−トリルエステル(CBDC441)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目25)
以下の構造:
【化21】


を有する、4−ブロモ−チオ安息香酸S−p−トリルエステル(CBDC442)を含む、項目1に記載の組成物。
(項目26)
薬学的に受容可能なキャリアおよび項目1に記載の組成物を含む、薬学的組成物。
(項目27)
薬学的に受容可能なキャリアおよび項目2に記載の組成物を含む、薬学的組成物。
(項目28)
細胞中の前記G2チェックポイントを排除する方法であって、細胞に該G2チェックポイントを阻害するのに有効な量の項目1に記載の少なくとも1つの化合物を投与する工程を包含する、方法。
(項目29)
増殖障害を有する細胞を殺傷し、または抑制するための方法であって、増殖障害を有する少なくとも1つの細胞に、前記G2チェックポイントを阻害するのに有効な量の項目1に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
(項目30)
増殖障害または分化障害により特徴付けられる症状を処置する方法であって、該障害を処置するのに有効な量の項目1に記載の少なくとも1つの化合物を投与する工程を包含する、方法。
(項目31)
DNA損傷細胞を選択的に抑制または殺傷する方法であって、前記DNA損傷誘発性G2チェックポイントを阻害するのに有効な量の項目2に記載の化合物を、正常細胞およびDNA損傷細胞を含む細胞の集団に投与する工程を包含する、方法。
(項目32)
前記DNA損傷細胞が、癌細胞である、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記DNA損傷細胞が、異種移植片腫瘍細胞である、項目31に記載の方法。
(項目34)
項目2に記載の化合物を投与する工程が、DNA損傷細胞をDNA損傷剤または処置に感作する、項目31に記載の方法。
(項目35)
前記DNA損傷細胞が癌細胞であり、さらに項目2に記載の化合物を投与する工程が、該癌細胞をDNA損傷剤または処置に感作する、項目34に記載の方法。
(項目36)
DNA損傷誘発性G2チェックポイントを排除する非ペプチド化合物をスクリーニングする方法であって、以下:
(a)試験化合物を提供する工程;
(b)細胞の集団を提供する工程;
(c)該細胞の集団にG2/M期細胞の蓄積を引き起こすDNA損傷剤を投与する工程;
(d)該試験化合物を該DNA損傷剤で処置された集団の第1の処置された部分に投与する工程;
(e)該集団の該第1の処置された部分のG2/M期の細胞数を測定し、該集団の該G2/M期の細胞数が、G2細胞周期停止における細胞数を示す工程;
(f)該DNA損傷剤で処置された該集団の第2の処置されない部分の該G2/M期の細胞数を測定する工程であって、該集団の該G2/M期の細胞数を測定する工程が、該G2細胞周期停止における細胞数を示す工程;ならびに
(g)該(e)の数と該(f)の数を比較し、工程(e)のG2/M期のより低い細胞数が、該試験化合物が、第1に処置された部分における該DNA損傷細胞誘発性G2細胞周期チェックポイントを排除することを示す工程
を包含する、方法。
(項目37)
前記化合物が、項目1に記載の化合物である、項目40に記載の方法。
(項目38)
前記化合物が、項目2に記載の化合物である、項目42に記載の方法。
(項目39)
細胞に投与される場合、細胞周期G2チェックポイントを排除する化合物であって、以下の構造:
【化22】


を有し、ベンゼンのいずれかまたは両方が、ピラジン、ピリミジン、ピペラジン、モルホリン、シクロヘキサン、ピペリジン、またはピリジンで置換され得;R1は、ハロゲン、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、アミノ(NH)、ニトロ(NO)、ヒドロキシ(OH)O−メチル(OCH)メチル(CH)または水素であり;R2は、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、アミノ(NH)、ニトロ(NO)、メチル(CH)、O−メチル(OCH)、ヒドロキシ(OH)、CH(CH、CHO、CHOCH、O(CH)nCH、OCO(C12)Cl、COOCH、または水素であり;X1は、窒素(NH)、酸素(O)または硫黄(S)であり;そしてX2は、酸素(O)または硫黄(S)である、化合物。
(項目40)
細胞に投与される場合、DNA損傷誘発性チェックポイントを排除する、項目39に記載の化合物。
(項目41)
正常細胞およびDNA損傷細胞を含む細胞の集団に投与される場合、DNA損傷細胞を抑制または殺傷する、項目40に記載の化合物。
(項目42)
細胞に投与される場合、細胞をDNA損傷剤または処置に感作する、項目40に記載の化合物。
(項目43)
細胞中の前記G2チェックポイントを排除する方法であって、細胞に該G2チェックポイントを阻害するのに有効な量の項目39に記載の少なくとも1つの化合物を投与する工程を包含する、方法。
(項目44)
増殖障害を有する細胞を殺傷し、または抑制するための方法であって、増殖障害を有する少なくとも1つの細胞に、前記G2チェックポイントを阻害するのに有効な量の項目39に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
(項目45)
増殖障害または分化障害により特徴付けられる症状を処置する方法であって、該障害を処置するのに有効な量の項目39に記載の少なくとも1つの化合物を投与する工程を包含する、方法。
(項目46)
DNA損傷細胞を選択的に抑制または殺傷する方法であって、前記DNA損傷誘発性G2チェックポイントを阻害するのに有効な量の項目40に記載の化合物を、正常細胞およびDNA損傷細胞を含む細胞の集団に投与する工程を包含する、方法。
(項目47)
前記DNA損傷細胞が、癌細胞である、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記DNA損傷細胞が、異種移植片腫瘍細胞である、項目46に記載の方法。
(項目49)
項目40に記載の化合物を投与する工程が、DNA損傷細胞をDNA損傷剤または処置に感作する、項目46に記載の方法。
(項目50)
前記DNA損傷細胞が癌細胞であり、さらに項目40に記載の化合物を投与する工程が、該癌細胞をDNA損傷剤または処置に感作する、項目49に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、24時間、ブレオマイシン(40μg/ml)、または種々の濃度(0.2、0.39、0.78、1.56、3.125、6.25、12.5,25および50μg/ml)のブレオマイシン+CBDC402で処置した後の、Jurkat細胞のDNA含量のフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図2】図2は、24時間、コルヒチン(5μg/ml)、または種々の濃度(0.2、0.39、0.78、1.56、3.125、6.25、12.5,25および50μg/ml)のコルヒチン+CBDC402で処置した後の、Jurkat細胞のDNA含量のフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図3】図3a〜bは、種々のCBDC化合物の活性を示す:図3aは、種々のCBDC化合物によるG2チェックポイントの排除についての用量応答曲線を示し、図3bは、CBDC化合物の構造−活性の関係を示す。
【図4−1】図4−1は、特定のCBDC化合物の構造、化学名、およびCBDCコードを示す。
【図4−2】図4−2は、特定のCBDC化合物の構造、化学名、およびCBDCコードを示す。
【図4−3】図4−3は、特定のCBDC化合物の構造、化学名、およびCBDCコードを示す。
【図5】図5は、特定のCBDC化合物の構造および相対活性を示す。
【図6】図6は、特定のCBDC化合物によるG2チェックポイントの排除についてのIC50値を示す。
【図7】図7は、24時間、アドリアマイシン(ADR)、ブレオマイシン(Bleo)、カンプトセシン(comptothecin)(Campto)およびシスプラチン(CDDP)で処置し、その後この細胞をCBDC004で処置しないか、または2μM、10μMもしくは50μMのCBDC004で処置した後の、HCT116細胞のDNA含量のフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図8】図8は、ブレオマイシン(10μg/ml)、アドリアマイシン(1μg/ml)、カンプトセシン(1μg/ml)またはシスプラチン(CDDP,10μg/ml)で処置したHCT116細胞の細胞傷害性結果(%サブG1集団)のフローサイトメトリー分析の結果を示し、各処置レジメンにおいて、細胞は、CBDC004で処置されていないか、または2μM、10μMまたは50μMのCBDC004で処置され;そしてサブG1集団は、Krishan溶液で細胞を染色することによって決定された。
【図9】図9は、CPT−11、CBDC402、またはCPT−11とCBDC402との組み合わせの腫瘍増殖に対する効果を示し、ここで、ヒト結腸癌細胞株HCT116細胞は、SCIDマウスに皮下移植され;各処置群の平均腫瘍サイズが、処置後の日数に対してプロットされた(n=4)。
【図10】図10a〜cは、CBDC402がDNA損傷誘発性細胞周期G2チェックポイントを特異的に排除することを示すフローサイトメトリー分析の結果を示す;図10aは、CBDC402がG2期の活性化された正常T細胞のブレオマイシン誘発性の増加を排除することを示し;図10bは、CBDC402が、G2期の白血病性T細胞(Jurkat細胞)の大きなブレオマイシン誘発性の増加を排除することを示し;図10cは、CBDC402が、M期の活性化正常T細胞のコルヒチン誘発性の増加に影響を与えないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、細胞増殖性障害を処置するための組成物および方法を提供する。詳細には、本発明は、細胞周期G2チェックポイントを排除する化合物を提供し、この化合物は、細胞増殖性障害(例えば、癌に関連するもの)を処置するために使用され得る。本発明は、本発明の1つ以上の化合物を、適切なキャリアまたは賦形剤中に含む薬学的組成物を提供し、ここでこれらの組成物は、DNA損傷剤のようなさらなる活性成分を含み得る。本発明は、本発明の化合物および本発明の化合物を含む薬学的組成物を使用するための方法を提供し、増殖中の細胞、特に、増殖性障害を有する細胞を抑制または殺傷する。本発明はさらに、DNA損傷剤を含む他の薬剤または処置剤の影響に対して細胞を選択的に感作するために、本発明の化合物を使用するための方法を提供する。
【0015】
(定義)
他に記載されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する(登録商標)業者によって一般的に理解されている意味を有する。本明細書中で使用される場合、以下の用語は、特に明記されない限り、この用語に与えられた意味を有する。
【0016】
用語「細胞周期G2チェックポイントを排除する」または「細胞周期G2チェックポイントを阻害する」または「細胞周期G2チェックポイントを崩壊する」または「G2チェックポイントの排除」、およびこの用語の任意の文法的等価物は、本発明の化合物が、G2チェックポイントにおける細胞周期を低下させる細胞の能力を排除する能力をいう。細胞周期G2チェックポイントの排除は、そうでなければG2細胞周期停止を引き起こす細胞における条件下、例えば、特定の抗腫瘍剤、X線照射、γ線照射、UV照射または温熱療法によるDNAの損傷の蓄積の排除を含む。このような条件下におけるG2チェックポイントの排除は、「G2チェックポイントの排除」と考えられるが、より詳細には、「DNA損傷誘発性G2チェックポイント」の排除と考えられ、ここで、このDNA損傷誘発性G2チェックポイントは、DNA損傷の認識、および通常はG2細胞周期停止を生じるシグナルの生成を含むことが理解される。細胞周期G2チェックポイントが排除される細胞は、細胞がG2チェックポイントに留まる時間の減少を示し、この時間は、G2チェックポイント全ての非存在(G2チェックポイント停止)から、適切な条件下で、数分、数時間、数週間またはそれより長い持続時間の減少を有するG2チェックポイントまでの範囲であり得る。従って、本発明の化合物と接触される細胞は、この化合物の非存在下においてこの細胞が通常有する時間よりも短いG2チェックポイント時間を有する。例えば、G2チェックポイント時間の長さの減少は、特定の時間(例えば、4時間)G2にある細胞が、本発明の化合物と接触された場合、4時間未満(例えば、3.5、3、2.5、2、1またはそれより短い時間)G2にあることを意味する。用語「G2の排除」または「G2チェックポイントの排除」または「G2チェックポイント阻害活性」または任意の文法的等価物は、G2チェックポイントの任意の量の排除または阻害を意味する。
【0017】
本明細書中で使用される場合、用語「アポトーシス」とは、当該分野で理解されているように、プログラム細胞死、および細胞生理学における関連の変化(核酸フラグメント化、カスパーゼ活性化、染色体凝縮などを含む)をいう。用語「有糸分裂の破壊」とは、有糸分裂プロセスにおける誤りから生じる細胞死を意味する。
【0018】
本明細書中で使用される場合、用語「DNA損傷処置」およぼい「DNA損傷剤」とは、直接的または間接的にDNAを損傷する任意の処置レジメンを意味する。DNA損傷剤の特定の例としては、アルキル化剤、ニトロソウレア、抗代謝物質、植物アルカロイド、植物抽出物および放射性同位体が挙げられる。薬剤の特定の例としてはまた、DNA損傷薬、例えば、5-フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン(capecitabi
ne)、S−1(Tegafur,5−クロロ−2,4−ジヒドロキシピリジンおよびオキソ酸(oxonic acid))、5−エチニルウラシル、アラビノシルシトシン(ara−C)、5−アザシチジン(5−AC)、2’,2’−ジフルオロ−2’−デオキシシチジン(dFdC)、プリン抗代謝物質(メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン)、ゲムシタビン塩酸塩(Gemzar)、ペントスタチン、アロプリノール、2−フルオロ−アラビノシル−アデニン(2F−ara−A)、ヒドロキシウレア、イオウマスタード(ビスクロロエチルスルフィド)、メクロレタミン(mechlorethamine)、メルファラン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミドチオテパ、AZQ、マイトマイシンC、ジアンヒドロガラクチトール(dianhydrogalactitol)、ジブロモドシトール(dibromoducitol)、アルキルスルホネート(ブスルファン)、ニトロソウレア(BCNU、CCNU、4−メチルCCNUまたはACNU)、プロカルバジン、デカルバジン、レベカマイシン、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン;ADR)、ダウノルビシン(Cerubicine)、イダルビシン(Idamycin)、およびエピルビシン(Ellence))、アントラサイクリンアナログ(例えば、ミトキサトロン)、アクチニマイシンD、非介在トポイソメラーゼインヒビター(例えば、エピポドフィロトキシン(エトポシド=VP16、テニポシド=VM−26))、ポドフィロトキシン、ブレオマイシン(Bleo)、ペプレオマイシン(pepleomycin)、核酸含有白金誘導体との付加物を形成する化合物(例えば、シスプラチン(CDDP)、シスプラチンのトランスアナログ、カルボプラチン、イプロプラチン(iproplatin)、テトラプラチンおよびオキサリプラチン(oxaliplatin))、ならびにカンプトテシン、トポテカン、イリノテカン(CPT−11)、およびSN−38が挙げられる。核酸損傷処置の特定の例としては、放射線(例えば、紫外線(UV)、赤外線(IR)、またはα線、β線もしくはγ線)、ならびに環境的ショック(例えば、温熱療法)が挙げられる。当業者は、他のDNA損傷剤および処置を同定し使用し得る。
【0019】
用語「本発明の化合物」とは、本明細書中に開示される構造および活性を有する分子を意味することを意図する。本発明の化合物は、単離され得るか、純粋であり得るか、実質的に純粋であり得、あるいは他の化合物の混合物を含む組成物中に存在し得る。本発明の化合物を含む組成物の純度は、例えば、分析化学技術(例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して決定され得る。本明細書中で提供される組成物は、1つ以上の本発明の化合物を、適切なキャリア、賦形剤、さらなる活性成分(DNA損傷剤を含む)などと混合して含み得る。
【0020】
用語「薬学的組成物」とは、被験体における薬学的使用(例えば、抗癌剤として)に適切な組成物をいう。被験体は、細胞増殖性障害の処置を必要とするヒトであり得る。本発明の薬学的組成物は、薬理学的有効量の少なくとも1つの本発明の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む処方物である。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「増殖性障害」および「増殖性状態」とは、少なくとも1つの細胞の異常または望まない増殖によって特徴付けられる任意の病理学的または非病理学的な生理学的状態を意味し、これには望まないかまたは不要な細胞増殖によって特徴付けられる状態、または不完全または異常または不完全なアポトーシスによって特徴付けられる細胞生存状態、ならびに異常または望まないまたは不要な細胞生存によって特徴付けられる状態が挙げられる。用語「分化障害]とは、異常または不完全な分化によって特徴付けられる任意の病理学的または非病理学的な生理学的状態を意味する。
【0022】
用語「被験体」とは、動物、代表的には、哺乳動物、例えば、霊長類(ヒト、サル、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、マカクザル)、ペット(イヌおよびネコ)、家畜(ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、および実験用動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)をいう。被験体は、動物疾患モデル(例えば、腫瘍保有マウス)を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、単数形態「a」、「and]、「the」および「is」は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含む。従って、例えば、「化合物」という言及は、複数の化合物を含み、そして「残基」または「アミノ酸」という言及は、1つ以上の残基およびアミノ酸を含む。
【0024】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、全て目的のために、参考として明確に援用される。
【0025】
(G2チェックポイントの排除(abrogation))
本発明は、特定の作用機構に限定されないが、本発明の化合物が増殖細胞のG2チェックポイントを排除し得ることを観察している。G2細胞周期チェックポイントは、DNA複製および修復が完了するまで有糸分裂の開始を制限し、G2チェックポイントの破壊は、DNA複製および修復の完了前に、早まった有糸分裂を開始させる。この理論に束縛されることを望まないが、蓄積したDNA損傷を有する細胞において、本発明の化合物によるG2チェックポイントの排除は、G2チェックポイントでDNA損傷を正し、修復する機会を持たない細胞は、そのかわり、DNA修復せずにG2を進み、それにより、有糸分裂の破壊、アポトーシスまたは細胞の抑制もしくは細胞死を生じる他の状態を誘導すると考えられる。
【0026】
1つの局面に従って、本発明は、DNA損傷により誘導されるG2細胞周期停止を排除するための方法を提供する。特に、G2チェックポイント、正常細胞、およびDNA損傷細胞において、細胞周期応答の有意な差異が存在する。損傷誘発性G2チェックポイント(damage−induced G2 checkpoint)は、DNA損傷の認識および細胞周期停止を生じるシグナルの生成を含む。本発明は、DNA損傷誘発性G2チェックポイントを選択的に排除する化合物を提供する。
【0027】
別の局面において、本発明は、DNA損傷剤および処置に対して細胞を感受性にする化合物ならびに薬学的組成物を提供する。本発明は、DNA損傷剤および処置に対して細胞を感受性にするための方法を提供する。
【0028】
別の局面に従って、本発明は、DNA損傷を有する細胞を選択的に標的化する化合物および薬学的組成物を提供する。本発明は、さらに、細胞と、DNA損傷誘発性G2チェックポイントを排除するのに十分な量の、本発明の少なくとも1つの化合物とを接触させることによって、DNA損傷を有する細胞を選択的に標的化するための方法を提供する。1つの実施形態において、DNA損傷が元から存在する細胞は、G2チェックポイントを排除する本発明の化合物で処置され、そしてG2期を通過したDNA損傷細胞は、細胞死または細胞の抑制(通常、有糸分裂の破壊またはアポトーシス)を生じる。別の実施形態において、細胞は、少なくとも1つのDNA損傷剤および少なくとも1つの本発明の化合物の組み合わせで処理され、DNA損傷剤単独を用いて得られるよりも高い割合で細胞死または細胞の抑制を生じる。
【0029】
別の局面において、本発明は、損傷したG1細胞周期チェックポイントを有する細胞を選択的に標的化する化合物および薬学的組成物を提供する。本発明は、損傷したG1細胞周期チェックポイントを有する細胞(特に癌細胞)を、これらの細胞と、G2細胞周期チェックポイントを排除するのに十分な量の本発明の少なくとも1つの化合物とを接触させることによって、選択的に標的化するための方法を提供する。この理論に限定されることを望まないが、損傷したG1細胞周期チェックポイント(impaired G1 cell cycle checkpoint)を有する細胞は、G1前にDNA損傷を修復せず、本発明の化合物によるG2チェックポイントの排除は、これらの細胞が蓄積されたDNA損傷を修復することなしに有糸分裂を通過することを意味する。DNA損傷後の有効なG2チェックポイントの欠如は、G1チェックポイントの欠陥を有する細胞を致命的にする。細胞がDNA損傷を十分に修復せずにG2を通過した場合、損傷は、有糸分裂の破壊またはアポトーシスを誘導する。
【0030】
1つの局面に従って、本発明は、癌細胞を選択的に標的化し、癌細胞の殺傷または増殖を抑制する化合物を提供する。本発明はさらに、癌細胞(特に癌細胞)と、G2チェックポイントを排除するために十分な量の少なくとも1つの化合物とを接触させることによって、癌細胞を選択的に標的化し、癌細胞を殺傷または細胞の増殖を抑制するための方法を提供する。多くの癌細胞は、G1細胞周期停止チェックポイント(cell cycle
arrest checkpoint)に関連する遺伝子の変異(障害された腫瘍抑制遺伝子(例えば、p53、Rb、p16INK4、およびp19ARFが挙げられる)、ならびに/または癌遺伝子(oncogene)(例えば、MDM−2およびサイクリンD)の発現を引き起こす変異を有する。さらに、G1チェックポイントを無効にすること(override)は、正常細胞の癌細胞への形質転換(増殖因子の過剰発現によって引き起こされる増殖因子の過剰なシグナル伝達のような)は、増殖因子レセプターまたは下流シグナル伝達分子がG1チェックポイントを無効にすることによって細胞の形質転換を引き起こす状態を導き得る。対照的に、いくつかの癌は、混乱したG2細胞周期停止チェックポイントを有する。従って、G2チェックポイントは、通常、損傷したG1チェックポイントを有する癌細胞において保持される。G2チェックポイントの選択的な混乱は、インタクトなG1チェックポイントを有する正常細胞に比べて、よDNA損傷剤に対してより感受性の、損傷したG1チェックポイントを有する癌細胞をつくる。なぜなら、このような損傷を修復することなくG1およびG2を進行させることは、アポトーシスまたは有糸分裂の破壊を誘導するからである。この理論に限定されることを望まないが、本発明の化合物は、癌細胞のG2チェックポイントを選択的に混乱(排除)し、それによって、損傷したG1チェックポイントを有する癌細胞を、DNA損傷処置に対してより感受性にさせる。従って、本発明は、G1チェックポイントを障害した癌細胞を、DNA損傷剤および処置に対して感受性にする化合物を提供する。
【0031】
本発明の別の局面に従って、本発明の化合物は、正常細胞に対して細胞毒性効果を全く有さないか、またはほとんど有さずに、選択的に癌細胞を標的化し得る。この理論に限定されることを望まないが、本発明の化合物によってG2チェックポイントが排除される正常細胞は、G2チェックポイントを機能化することなくG2期に入り有糸分裂を行うという有害な結果を全く被らないか、またはほとんど被らず;対照的に、本発明の化合物によるDNA損傷細胞のDNA損傷G2チェックポイントの排除は、アポトーシスまたは有糸分裂の破壊を引き起こす重大な細胞毒性効果を有することが予測されることが提案される。従って、本発明は、DNA損傷細胞(例えば、癌細胞)を、これらの細胞と、G2チェックポイントを排除するのに十分な量の本発明の少なくとも1つの化合物とを接触させることによって、正常(損傷していない)細胞に対して細胞毒性効果を全く有さないか、またはほとんど有さずに選択的に標的化するための方法を提供する。DNA損傷細胞(例えば、癌細胞)を選択的に標的化するための方法における使用にとって適切な、正常(損傷していない)細胞に対して細胞毒性効果を全く有さないか、またはほとんど有さない、本発明の少なくとも1つの化合物を含む薬学的組成物が提供される。
【0032】
本発明のなお別の局面に従って、本発明の化合物は、正常細胞に対して細胞毒性効果を全く有さないか、またはほとんど有さないDNA損傷剤の細胞殺傷効果に対して、細胞(特に癌細胞)を選択的に感受性にし得る。最も習慣的な抗癌剤は、細胞が癌細胞であるか、または正常細胞であるか否かとは関係なく、増殖細胞を標的にし、その結果、最も習慣的な抗癌薬剤は、悪心、下痢、または脱毛のような副作用を生じる。対照的に、本発明の化合物は、損傷したG1チェックポイントまたはDNA損傷の他の型を有する細胞を選択的に標的化し、それによって、正常細胞に対して細胞毒性効果を全く有さないか、またはほとんど有さない。
【0033】
本発明は、細胞と、G2チェックポイントを排除するのに十分な量の本発明の少なくとも1つの化合物とを接触させることによって、アポトーシスと有糸分裂の破壊を誘導するための方法を提供する。本発明は、細胞と、G2チェックポイントを排除するのに十分な量の本発明の少なくとも1つの薬学的組成物とを接触させることによって、細胞のアポトーシスまたは有糸分裂の破壊を誘導するための方法を提供する。これらの細胞は、DNA損傷を有する細胞(特に、癌細胞)であり得る。
【0034】
本発明は、細胞と、DNA損傷剤または処置剤およびG2チェックポイントを排除するのに十分な量の本発明の少なくとも1つの化合物とを接触させ、それにより、細胞をDNA損傷剤または処置に対して感受性にすることによって、細胞のアポトーシスまたは有糸分裂の破壊を誘導するための方法を提供する。これらの細胞は癌細胞であり得る。癌細胞は、損傷したG1細胞周期チェックポイントを有し得る。DNA損傷剤または処置剤は、5−フルオロウラシル(5−FU)、レベカマイシン(rebeccamycin)、アドリアマイシン、ブレイマイシン(bleomcin)、シスプラチン、温熱療法、UV照射、γ線照射、または損傷を引き起こすのに十分な他のDNA損傷剤もしくは処置剤であり得る。
【0035】
1つの局面に従って、本発明は、以下の工程によってG2チェックポイントを排除し得る化合物についてスクリーニングする方法を提供する:(a)試験化合物を提供する工程;(b)細胞の集団を提供する工程;(c)処理後、G2/M期細胞の蓄積を引き起こす因子を細胞の集団に投与する工程;(d)G2/M期細胞の蓄積を引き起こす因子で処理した集団の一部分に、この試験化合物を投与する工程;(e)この試験化合物で処理された集団におけるG2/M期の細胞数を測定する工程;(f)G2/M期細胞の蓄積を引き起こす因子のみで処理された集団におけるG2/M期の細胞数を測定する工程;(f)の数と(e)の数とを比較して、この試験化合物がG2細胞周期チェックポイントを排除したか否かを決定する工程。この方法によると、G2/M期の細胞の蓄積は、G2細胞周期停止の指標して使用される。1つの実施形態において、この因子は、DNA損傷を誘導し、この方法は、DNA損傷誘発性G2チェックポイントを排除し得る化合物をスクリーニングのに有用である。別の実施形態において、DNAの量は、フローサイトメトリー(例えば、ヨウ化プロピジウムを用いてDNAを染色して)、およびFACSTM分析、または等価物を使用して各細胞のDNA含有量を測定することによって、細胞周期の段階を決定する。1つの実施形態において、DNAの量は、接触工程の約10〜約72時間後に測定される。
【0036】
本発明は、細胞に投与した場合、G2チェックポイント(特にDNA損傷誘発性G2チェックポイント)を排除し、そしてDNA損傷処置を伴ってか、または伴わずに、細胞を殺傷または抑制する化合物を提供し、この化合物は、以下の一般構造:
【0037】
【化23】

【0038】
を有し、ここで、いずれかまたは両方のベンゼンは、ピラジン、ピラミジン、ピペラジン、モルホリン、シクロヘキサン、ピペリジンもしくはピリジンで置換され得;R1は、ハロゲン(例えば、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、アミノ(NH)、ニトロ(NO)、ヒドロキシ(OH)O−メチル(OCH)メチル(CH)もしくは水素(H)であり、R2、R3、R4、R5および/またはR6は、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、アミノ(NH)、ニトロ(NO)、メチル(CH)、O−メチル(OCH)、ヒドロキシ(OH)、CH(CH、CHO、CHOCH、O(CH)nCH、OCO(C12)Cl、COOCHもしくは水素であり;X1は、窒素(NH)、酸素(O)もしくは硫黄(S)であり;Xは、酸素(O)もしくは硫黄(S)である。例示的な実施形態は、図面、特に図3、4、5および6に見出されるが、本発明の化合物は、これらの実施形態に限定されない。
【0039】
本発明は、細胞に投与された場合、G2チェックポイント(特に、DNA損傷誘発性G2チェックポイント)を排除し、DNA損傷処置伴うか、または伴わずに細胞を殺傷または抑制する化合物を提供し、この化合物は、以下の一般構造:
【0040】
【化24】

【0041】
を有し、ここで、いずれかまたは両方のベンゼンは、ピラジン、ピラミジン、ピペラジン、モルホリン、シクロヘキサン、ピペリジンもしくはピリジンで置換され得;R1は、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、アミノ(NH)、ニトロ(NO)、ヒドロキシ(OH)O−メチル(OCH)メチル(CH)もしくは水素(H)であり、R2は、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、アミノ(NH)、ニトロ(NO)、メチル(CH)、O−メチル(OCH)、ヒドロキシ(OH)、CH(CH、CHO、CHOCH、O(CH)nCH、OCO(C12)Cl、COOCHもしくは水素であり;X1は、窒素(NH)、酸素(O)もしくは硫黄(S)であり;X2は、酸素(O)もしくは硫黄(S)である。例示的な実施形態は、図面、特に図3、4、5および6に見出される。
【0042】
本発明は、G2チェックポイントを排除し、そして/あるいは、DNA損傷処置伴うか、または伴わずに細胞を抑制または殺傷する化合物を提供し、この化合物は、以下の一般構造:
【0043】
【化25】

【0044】
を有し、R1〜R6位での異なる分子の置換は、得られる化合物のG2チェックポイント排除活性に影響を与える。以下の構造−活性関係は決定されている。
【0045】
R1において、臭素(Br)は、塩素(Cl)、フッ素(F)またはメチル(CH)よりも高い活性を提供する。
【0046】
R2において、メチル(CH)またはO−メチル(OCH3)は、水酸化物(OH)、臭素(Br)、塩素(CI)、CH(CH、CHO、CHOCH、O(CH)nCH、OCO(C12)CまたはCOOCHまたはHよりも高い活性を提供する。
【0047】
R3において、メチル(CH)は、HまたはO−メチル(OCH)よりも高い活性を提供する。
【0048】
R4において、臭素(Br)、フッ素(F)、塩素(Cl)、またはHが使用され得る。
【0049】
R5において、臭素(Br)、フッ素(F)、塩素(Cl)、またはHが使用され得る。
【0050】
R6において、臭素(Br)、フッ素(F)、塩素(Cl)、またはHが使用され得る。
【0051】
以下の列挙は、単に例示であり、網羅ではない。例示的な実施形態は、図3、4、5および6において見出される。当業者は、本開示の教示に従って、さらなる置換および活性の決定をなし得、本発明のさらなる化合物を得る。DNA損傷誘発性G2チェックポイントの排除に関して、特定の置換基が他の置換基よりも高い活性を有する構造をつくることが観察されるものの、本発明は、全ての置換基および全レベルの活性を有する化合物を提供することは、当業者によって理解される。特定の実施形態について、当業者は、特定の標的に対する化合物の活性に加えて、実施形態において使用されるための本発明の化合物を選択する複数の要因を考慮する。当業者は、化合物の活性、アベイラビリティー、安定性、容易さ、または合成効率、薬学的組成物の処方についての適合性、薬物適合性(drugability)、インビボ、エキソビボ、もしくはインビトロでの他の化合物との相互作用、細胞殺傷能力、細胞の増殖抑制能力、正常細胞に対する影響、および他の活性を考慮する。
【0052】
本発明は、G2チェックポイントを排除する化合物、特に、DNA損傷誘発性細胞周期G2チェックポイントを選択的に排除する化合物を提供する。G1チェックポイント欠損細胞(例えば、癌細胞)において、DNA損傷誘発性細胞周期G2チェックポイントを選択的に排除し、そしてDNA損傷薬剤で処理された細胞において、DNA損傷誘発性G2チェックポイントを選択的に排除する化合物が提供される。本発明は、DNA損傷処理に対して癌細胞を感作する化合物を提供する。異種移植片腫瘍増殖を、単独でかまたは抗癌剤との組み合わせで阻害する化合物が、さらに提供される。本発明は、癌細胞におけるインビトロでのコロニー形成を、単独でかまたは抗癌剤との組み合わせで抑制する化合物を提供する。特に、本発明は、DNA損傷処理ありまたはなしで、G2チェックポイントを排除し、そして/または癌細胞を抑制もしくは殺傷する化合物を提供し、これらの化合物としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
CDBC004: 4−クロロ−安息香酸4−メトキシ−フェニルエステル
CBDC401: 4−クロロ−安息香酸p−トリルエステル
CBDC402: 4−ブロモ−安息香酸p−トリルエステル
CBDC403: 3,4,5−トリフルオロ−安息香酸p−トリル1エステル
CBDC404: 4−フルオロ−安息香酸4−ブロモ−フェニル1エステル;エタンとの配合物
CBDC405: 3,4−ジクロロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの配合物CBDC406: 2,4−ジクロロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの配合物CBDC407: 4−フルオロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの配合物
CBDC408: 2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの配合物
CBDC409: 4−クロロ−安息香酸3,4−ジメチル−フェニルエステル;エタンとの配合物
CBDC410: 4−クロロ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル;エタンとの配合物
CBDC411: 4−フルオロ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル;エタンとの配合物
CBDC412: 4−ブロモ−安息香酸4−フルオロ−フェニルエステル
CBDC413: 4−ブロモ−安息香酸4−トリフルオロメチル−フェニルエステル
CBDC414: 4−ブロモ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル
CBDC415: 4−ブロモ−安息香酸4−トリフルオロメトキシ−フェニルエステルCBDC418: 4−ブロモ−安息香酸6−メチル−ピリジン−3−イルエステル
CBDC440: 4−ブロモ−チオ安息香酸O−p−トリルエステル
CBDC441: 4−ブロモ−ジチオ安息香酸p−トリルエステル
CBDC442: 4−ブロモ−チオ安息香酸S−p−トリルエステル。
【0053】
これらの化合物の構造は、本明細書中で、図3、4、5、および6、ならびに特許請求の範囲に提供されている。
【0054】
本発明は、DNA損傷誘発性細胞周期チェックポイントを選択的に排除する組成物を提供する。1つの実施形態において、化合物CBDC402は、以下で実施例1に記載されるように、G1チェックポイント欠損癌細胞において、DNA損傷誘発性細胞周期G2チェックポイントを選択的に排除した。Jurkat細胞(ヒトT細胞白血病由来の細胞株)の、ブレオマイシン(抗癌剤として使用されるDNA損傷薬剤)での処理は、G2/M期における細胞の蓄積を生じた。このことは、ブレオマイシン誘発性DNA損傷に起因するG2細胞周期停止を示す。CBDC402は、用量依存性の様式で、G2/M期の細胞のブレオマイシン誘発性蓄積を排除した(図1)。コルヒチンは、G2細胞周期停止を誘発せず、そして別の実施形態において、CBDC402は、いずれのCBDC402濃度においても、G2/M期の細胞におけるコルヒチン誘発性細胞蓄積を阻害しなかった(図2)。従って、CBDC402は、DNA損傷誘発性細胞周期チェックポイントを、選択的に排除した。
【0055】
本発明は、細胞に投与される場合にDNA損傷誘発性G2チェックポイントを排除する組成物を提供する。種々の実施形態において、化合物CBDC004、CBDC402、CBDC403、CBDC404、CBDC405、CBDC406、CBDC407、CBDC408、CBDC409、CBDC410およびCBDC411は、ブレオマイシン処理されたJurkat細胞におけるG2細胞周期チェックポイントを、用量依存性の様式で排除した(図3a)。種々のCBDC化合物によるG2チェックポイントの排除についての用量−応答曲線は、CBDC402が、この実施形態において最も高い活性を示し、そして試験された全てのCBDC化合物は、最も高い濃度(50μg/ml)において、G2細胞周期チェックポイントを排除し得ることを示した。異なるレベルの活性に対応する構造が、図3bに示される;図3bに開示される構造に対応するCBDCの指定は、図4を参照することによって見出され得る。
【0056】
この方法は、異なるG2チェックポイント排除活性を有する組成物を提供し、そしてさらに、これらの活性を決定するための方法を提供する。さらなる実施形態において、CBDC化合物は、それらのG2チェックポイント排除活性について試験された。CBDC化合物は、図5に示されるように、非常に活性;中程度に活性;活性;弱く活性;および不活性と順位付けられた。Jurkat細胞におけるG2チェックポイント排除のIC50は、上記活性として実施される用量応答性の研究によって決定され、そして図6に示されるように、それらの活性に従って順位付けされた。図5および6において、CBDC化合物は、それらの化学構造の開示によって完全に開示されており、そしていくつかのエントリーにおいて、CBDC化合物は、CBDC指定番号によってさらに同定される。
【0057】
本発明は、種々のDNA損傷薬剤によって誘発される、DNA損傷誘発性G2チェックポイントを排除する組成物を提供する。1つの実施形態において、化合物CBDC004は、種々の抗癌剤によって活性化されたDNA損傷誘発性G2チェックポイントを排除した。ヒト癌細胞(HCT116ヒト結腸癌腫細胞)が、化合物CBDC004ありまたはなしで、ブレオマイシン、アドリアマイシン、カンプトテシン、またはシスプラチン(CDDP)で処理された。これらの抗癌剤の各々が、細胞周期G2/Mにおける細胞の蓄積を誘発し、そしてCBDC004との同時インキュベーションは、G2/Mにおける細胞の数を減少させ、このことは、CBDC004が、ブレオマイシン、アドリアマイシン、カンプトテシン、またはシスプラチンによって活性化された、DNA損傷誘発性G2チェックポイントを排除したことを示した。
【0058】
本発明は、DNA損傷処理に対して細胞を感作させるための組成物および方法を提供する。なお別の実施形態において、CBDC004は、ヒト細胞を、抗癌剤として使用される種々のDNA損傷処理の細胞傷害性効果に対して感作した。ヒト癌細胞(HCT116細胞)が、CBDC004ありまたはなしで、ブレオマイシン、アドリアマイシン、カンプトテシンまたはシスプラチンで処理され、そして死滅した細胞の数が、処理後に測定された。CBDC004は、細胞を、各DNA損傷処理の細胞傷害性効果に対して感作した(図8)。本発明の化合物を細胞に投与することにより、この細胞がDNA損傷処理に対して感作され、DNA損傷処理をより効果的にする。
【0059】
本発明は、異種移植片腫瘍の増殖を阻害するための組成物および方法を提供する。別の実施形態において、CBDC402は、異種移植片腫瘍の増殖を阻害した。HCT−116ヒト結腸癌腫細胞が重症複合型免疫不全(SCID)マウスに皮下移植された後に、種々の化合物が投与され、そして腫瘍増殖がモニタリングされた。CBDC402は、単独では、腫瘍増殖のわずかな減少を与え、そしてCBDC402とCPT−11(CSMPTOSAR(登録商標)、イリノテカン(Irinotecan),トポイソメラーゼインヒビター)との組み合わせは、腫瘍増殖をわずかに減少させたか、または阻害した。
【0060】
本発明は、増殖障害を有する細胞を処理するための組成物および方法を提供する。特に、本発明は、増殖障害を有する細胞の種々の局面を阻害するため(癌細胞によるインビトロでのコロニー形成の阻害を包含する)の化合物および方法を提供する。本発明の化合物は、癌細胞によるコロニー形成を、インビトロで、単独でかまたは抗癌剤との組み合わせで阻害した。1つの実施形態において、ヒト胃癌由来の細胞株由来のMK−45細胞(マルチウェルプレートに播種された)を、CBDC402、CBDC412、CBDC413、およびCBDC418で処理した。CBDC402単独での処理は、MK−45細胞によるコロニー形成の有意な抑制を引き起こし、そしてCBDC412での処理は、コロニー形成のわずかな抑制を引き起こした。CPT−11もまた含む実施形態において、CBDC402の添加は、CPT−11の効果を増大させるようであり、コロニー形成のほとんど完全な抑制を生じた。
【0061】
本発明は、Mチェックポイントに影響を与えずに、DNA損傷誘発性G2チェックポイントを選択的に排除する組成物および方法を提供する。1つの実施形態において、CBDC402は、DNA損傷誘発性G2チェックポイントを選択的に排除する。ブレオマイシンは、G2期にある活性化正常T細胞の蓄積の、中程度の増加を誘発し(図10a)、そしてJurkat細胞(白血病T細胞)におけるG2期にある細胞の大きい蓄積を誘発した(図10b)。CBDCは、両方の細胞株において、G2期にある細胞のバイオマイシン誘発性増加を廃止した(図10a、b)。受容された活性化正常T細胞が、コルヒチンで処理される場合、これは、M期の細胞の蓄積を引き起こし、そしてCBDC402は、M期の活性化正常T細胞のコルヒチン誘発性増加に影響を与えなかった。この実施形態は、CBDC402が、G2細胞周期チェックポイントを選択的に排除し、そしてM期でないチェックポイントを排除しないことを実証する。
【0062】
本発明は、本発明の化合物を合成するための方法を提供する。1つの実施形態において、CBDC412(4−ブロモ−安息香酸4−フルオロ−フェニルエステル)が、以下に記載されるように合成される。1つの実施形態において、10mlのジオキサン、5mmol(1.1g)の4−ブロモ−安息香酸塩素(4−bromo−benzoic acid chlorine)、および5mmol(0.56g)の4−フルオロ−フェノールが、50mlの4つ口フラスコに連続的に添加され、そして室温で溶解された。ジオキサンに溶解したトリエチルアミンが、この溶液にゆっくりと滴下され、そしてこの溶液が、室温で3時間撹拌された。沈澱した結晶が濾過され、そしてベンゼンで抽出された。抽出された溶液が、炭酸水素ナトリウムで数回洗浄され、無水マグネシウムが添加され、そして得られた溶液が乾燥され、そして濾過された。この溶液が、低圧下で蒸留され、そして結晶化された。この原料結晶は、黄色がかった白色であり、1.37gの重量であった。この結晶の一部(0.5g)がベンゼンに溶解され、そして100gのシリカゲルで精製された。この精製された生成物は白色であり、そしてその純度は、液体クロマトグラフィー(LC)によって、99.93%であると確認された。その構造は、NMRによって確認された(実施例6を参照のこと)。
【0063】
(スクリーニング)
本発明は、G2チェックポイントを阻害または排除するための潜在的な治療化合物(「試験化合物」または「候補化合物」)をスクリーニングするための組成物および方法を提供する。スクリーニングのために使用され得るアッセイ形式は、周知である。結合アッセイについての異なる形式の一般的な記載については、例えば、BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY,第7版、StilesおよびTerr編(1991);ENZYME IMMUNOASSAY,Maggio編,CRC Press,Boca Raton,Florida(1980);ならびに「Practice and Theory of Enzyme Immunoassays」,Tijssen,LABORATORY TECHNIQUES IN BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY,Elsevier Science Publishers,B.V.Amsterdam(1985)を参照のこと。
【0064】
(標的)
処置のために適切な被験体としては、増殖障害または分化障害または(例えば、抗腫瘍治療)のための処置を現在受けている被験体、あるいはこの処置の候補である被験体が挙げられる。さらなる候補被験体としては、例えば、細胞増殖障害を発症する危険のある被験体が挙げられる。従って、本発明の方法は、細胞増殖障害を発症する危険にあるが、この障害の明白な症状をまだ示していない被験体を処置するために適用可能である。危険のある被験体は、細胞増殖障害を発症する遺伝的素因または家族歴を有するとして同定され得る。例えば、活性化癌遺伝子を有するかまたは腫瘍サプレッサ遺伝子の変異もしくは欠失を有する被験体は、候補被験体である。従って、危険のある被験体は、遺伝的病変の存在についての慣用的な遺伝的スクリーニング、または被験体がこの障害の危険にあることを確立する被験体の家族歴の調査を使用して、同定され得る。危険のある被験体の特定の例は、腫瘍性細胞または薬物耐性の腫瘍性細胞がCD40を発現する癌に対する素因を示す家族歴または他の遺伝的特徴を有する被験体である。遺伝的疾患の特定の例は、網膜芽細胞腫であり、これは、Rb腫瘍サプレッサ遺伝子の欠損によって引き起こされる。
【0065】
代表的に、「有効量」または「十分な量」の本発明の化合物が投与され、ここで、この量は、所望の効果を生じるために十分な量である。従って、有効量は、増殖している細胞(例えば、標的細胞の少なくともいくらか)を含む細胞の少なくとも一部の、細胞増殖の減少、細胞の数の減少、増加した増殖の阻害、細胞の増加した数の阻害、アポトーシスの増加、または生存の減少のうちの1つ以上を測定することによって、決定される。従って、例えば、細胞増殖を阻害することが望ましい場合、有効量は、細胞増殖、または増殖する細胞の数を検出可能に減少させる量、あるいは細胞アポトーシスを増加させるかまたは細胞の生存を減少させる量である。従って、この量は、標的細胞の数を減少させるため、標的細胞の数を安定化させるため、または標的細胞の数の増加を阻害するために十分であり得る。例えば、障害が固形腫瘍を含む場合、腫瘍の少なくとも一部の腫瘍の大きさを減少させること、腫瘍の大きさを安定化させること、または腫瘍のさらなる増殖を予防すること(例えば、腫瘍塊を構成する細胞の5〜10%、またはこれらの細胞の10〜20%以上の増殖を阻害すること)は、満足な臨床エンドポイントである。障害が液体腫瘍を含む場合、腫瘍細胞の少なくとも部分集団の腫瘍細胞の数を減少させること、腫瘍細胞の数を安定化させること、または腫瘍細胞の数のさらなる増加を阻害すること(例えば、細胞の5〜10%、またはこれらの細胞の10〜20%以上の増殖を阻害すること)は、満足な臨床エンドポイントである。
【0066】
さらに、有効であるとみなされる量は、状態または障害の進行を防止または阻害し得る。例えば、特定の腫瘍は、進行するにつれて、次第に攻撃的になり、転移性形態に進行することを包含する。従って、同様に有効であるとみなされる量は、腫瘍が次第に攻撃的になること、または転移することの、減少または防止を生じる。従って、障害または状態の悪化を阻害または予防すること、すなわち、状態を安定化することは、さらなる満足な臨床エンドポイントである。
【0067】
液体腫瘍を含有する生物学的サンプル(例えば、血液または組織サンプル)の試験は、腫瘍細胞の質量または数が減少したか否か、あるいは腫瘍細胞増殖の阻害が起こったか否かを確立し得る。固形腫瘍については、侵襲性画像化方法および非侵襲性画像化方法が、腫瘍の大きさの減少、または腫瘍の大きさの増加の阻害を確認し得る。レセプター陽性腫瘍のレセプターの計数の減少を使用して、腫瘍細胞増殖の減少または阻害を評価し得る。ホルモン産生腫瘍(例えば、乳癌、精巣癌、または卵巣癌)のホルモンの量を使用して、腫瘍の増殖の減少または阻害を評価し得る。
【0068】
有効量はまた、障害または状態に付随する症状の重篤度または頻度を、客観的にかまたは主観的に減少させ得る。例えば、疼痛、悪心または他の不快を減少させるか、あるいは欲求または主観的幸福を増加させる、本発明の化合物の量は、満足な臨床エンドポイントである。
【0069】
有効量はまた、満足な臨床エンドポイントとみなされる別のプロトコルでの処置の量(例えば、投薬量)または頻度の減少を包含する。例えば、本発明の化合物で処置される癌患者は、癌細胞増殖を阻害するために、より少ない核酸損傷処置を必要とし得る。この例において、有効量は、この被験体が投与される核酸損傷薬剤の投薬頻度または投薬量を、本発明の化合物での処置なしで投与される投薬頻度または投薬量と比較して減少させる投薬量を含む。
【0070】
被験体の状態の改善または治療的利点を導く、本発明の方法は、持続時間が比較的短くあり得、例えば、改善は、数時間、数日間、または数週間続き得るか、あるいはより長い期間(例えば、数ヶ月または数年間)にわたって延長され得る。有効量は、状態または障害の任意の症状または全ての症状の完全な切除である必要はない。従って、有効量についての満足な臨床エンドポイントは、上記基準のいずれか、または障害もしくは状態の状態を短期間または長期間にわたって決定するために適切な、当該分野において公知の他の基準を使用して決定されるような、被験体の状態の主観的改善または客観的改善が存在する場合に、達成される。本明細書中に記載されるような、または当業者に公知であるような、1つ以上の有利な効果を提供するために有効な量は、被検体の状態の「改善」または被験体に対する「治療的利点」と称される。
【0071】
本発明の化合物の有効量は、動物研究に基づいて、または必要に応じて、ヒト臨床治験において、決定され得る。当業者は、特定の被験体を処置するために必要とされる用量およびタイミングに影響を与え得る、種々の要因を理解し、これらの要因としては、例えば、被験体の一般的健康状態、年齢、もしくは性別、障害または状態の重篤度または段階、以前の処置、所望でない副作用の受けやすさ、所望される臨床結果、および他の障害または状態の存在が挙げられる。このような要因は、治療的利点のために有効な量を提供するために必要とされる投薬量およびタイミングに影響を与え得る。投薬レジメンはまた、薬物速度論(すなわち、薬学的組成物の吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、およびクリアランス)を考慮する。さらに、用量または処置プロトコルは、被験体に対して特にあつらえられ得るか、または薬物ゲノム学データに基づいて改変され得る。
【0072】
本発明の化合物で処理され得る細胞としては、その増殖がインビトロ、エキソビボ、またはインビボで阻害または予防されることが望ましい、任意の細胞が挙げられる。特定の標的細胞は、正常な細胞周期G1チェックポイント時間より短い時間を示すか、または欠損した細胞周期G1チェックポイントを有し、その結果、この細胞は、核酸修復を完了するために十分な時間が経過する前に、G1チェックポイントを出る。候補細胞はまた、試験細胞を本発明の化合物に単独で、またはDNA損傷処理と組み合わせて接触させ、そして接触された細胞が、減少した増殖または増加した細胞死、特に、アポトーシスまたは有糸分裂カタストロフを示すか否かを決定することによって、同定され得る。
【0073】
従って、本発明の化合物は、細胞増殖を、インビトロ、エキソビボおよびインビボで阻害するために有用である。従って、異常かもしくは望ましくないかもしくは所望でない細胞増殖もしくは細胞生存、または異常かもしくは欠損した細胞分化によって特徴付けられる、障害または生理学的状態を有するか、あるいはこれらの障害または生理学的状態を有する危険のある被験体が、本発明の化合物で、単独でかあるいはDNA損傷を直接的にかもしくは間接的に引き起こす処理と組み合わせて、または抗増殖処理と組み合わせて、処置され得る。
【0074】
従って、本発明に従って、細胞増殖を阻害するための方法、DNA損傷薬剤または処理に対する細胞の感受性を増加させるための方法、ならびに細胞に対する核酸損傷をインビトロ、エキソビボおよびインビボで増加させるための方法が、提供される。1つの実施形態において、方法は、細胞(例えば、培養された細胞または被験体中に存在する細胞)を、G2チェックポイントを排除するために十分な量の本発明の化合物と接触させる工程を包含する。別の実施形態において、方法は、細胞を、DNA損傷薬剤または処理に対する細胞の感受性を増加させるために十分な量の本発明の化合物と接触させる工程を包含する。なお別の実施形態において、方法は、細胞を、この細胞の核酸損傷を増加させるために十分な量の本発明の化合物と接触させる工程を包含する。種々の局面において、方法は、細胞を、DNA損傷薬剤と接触させる工程、または細胞を、DNA損傷処理に曝露する工程をさらに包含する。
【0075】
被験体における細胞増殖性障害または細胞分化性障害(所望でないもしくは不要な細胞増殖または細胞生存によって特徴付けられる状態、欠乏性アポトーシスまたは異常性アポトーシスによって特徴付けられる状態、異常性細胞生存または欠乏性細胞生存によって特徴付けられる状態、ならびに異常性細胞分化または欠乏性細胞分化によって特徴付けられる状態を含む)を処置する方法が、さらに提供される。1つの実施形態において、方法は、細胞増殖性障害を有するか、または細胞増殖性障害を有する危険性がある被験体に、その細胞増殖性障害を処置するのに有効な量の本発明の化合物を投与する工程を包含する。1つの局面において、この量は、被験体の状態を改善するのに十分である。特定の局面において、この改善は、標的細胞(例えば、異常に増殖している細胞)のうちの少なくとも一部分において、減少された細胞増殖、減少された細胞数、細胞数の増加の阻害、増加されたアポトーシス、または減少された生存を含む。なお別の局面において、本発明の化合物は、細胞増殖を阻害する処置を行う前に、同時に、または後に、被験体に投与される。さらなる特定の局面において、細胞増殖性障害の細胞のうちの少なくとも一部分は、血液、乳房、肺、甲状腺、頭部または頚部、脳、リンパ球、胃腸管、尿生殖路、腎臓、膵臓、肝臓、骨、筋肉、または皮膚に位置付けられる。
【0076】
別の実施形態において、方法は、一定量の本発明の化合物を被験体に投与して、固形腫瘍を処置する工程を包含する。なお別の実施形態において、方法は、一定量の本発明の化合物を投与して、液状腫瘍を処置する工程を包含する。種々の局面において、腫瘍を有する被験体は、別の抗腫瘍治療の前に、同時に、または後に、本発明の化合物を投与される。
【0077】
(増殖性障害または分化性障害を処置するための本発明の化合物の使用)
本明細書中で提供される組成物および方法を使用する処置に従う増殖性障害または分化性障害としては、異常であるかもしくは所望されない細胞数、細胞増殖または細胞生存によって特徴付けられる、良性および腫瘍性の両方の疾患および非病理学的な生理的状態が挙げられる。従って、このような障害または状態は、疾患状態を構成し得、かつすべての型の癌性増殖または発癌性プロセス、転移性組織または悪性転換細胞、悪性転換組織、または悪性転換器官を含み得るか、あるいは非病理学的(すなわち、正常からの逸脱であるが、代表的には疾患と関連付けられない)であり得る。本発明に従って処置され得る非病理学的な状態の特定の例は、瘢痕を生じる創傷修復からの組織再生である。
【0078】
増殖性障害または分化性障害を含む細胞は、細胞塊中に凝集され得るか、または分散され得る。用語「固形腫瘍」は、代表的には一緒になって凝集して集団を形成する、新形成または転移を指す。特定の例としては、内臓腫瘍(例えば、胃癌または結腸癌、肝臓癌、静脈癌、肺および脳の腫瘍/癌)が挙げられる。「液状腫瘍」は、造血系の新形成(例えば、リンパ腫、骨髄腫および白血病)、または代表的には固体塊を形成しないような、自然に拡散する新形成を指す。白血病の特定の例としては、急性および慢性のリンパ芽球性白血病、骨髄芽球白血病および多発性骨髄腫が挙げられる。
【0079】
このような障害としては、実質的に任意の細胞型または組織型(例えば、癌腫、肉腫、黒色腫、転移性障害または造血性新生物障害)に影響を及ぼし得る、新生物または癌が挙げられる。転移性腫瘍は、多数の原発性腫瘍型(乳房、肺、甲状腺、頭部および頚部、脳、リンパ球、胃腸(口、食道、胃、小腸、結腸、直腸)、尿生殖器路(子宮、卵巣、子宮頚部、精巣、陰茎、前立腺)、腎臓、膵臓、肝臓、骨、筋肉、皮膚などを含むが、これらに限定されない)から生じ得る。
【0080】
癌腫とは、上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍を指し、そして呼吸器系癌腫、胃腸系癌腫、尿生殖器系癌腫、精巣癌腫、乳房癌腫、前立腺癌腫、内分泌系癌腫、および黒色腫が挙げられる。例示的な癌腫としては、子宮頚部、肺、前立腺、乳房、頭部および頚部、結腸、肝臓および卵巣から形成する癌腫が挙げられる。この用語はまた、癌肉腫(例えば、癌組織および肉腫組織から構成される悪性腫瘍を含む)を含む。腺癌としては、腺組織の癌腫、または癌腫中で腫瘍が腺様構造を形成する癌腫が挙げられる。
【0081】
肉腫とは、間葉細胞起源の悪性腫瘍を指す。例示的な肉腫としては、例えば、リンパ肉腫、脂肪肉腫、骨肉種、および線維肉腫が挙げられる。
【0082】
本明細書中で使用される場合、用語「造血性増殖性障害」とは、造血性起源(例えば、骨髄系統、リンパ系統または赤血球系統、あるいはそれらの前駆細胞から生じる)の増殖性/新生物性細胞に関わる疾患を意味する。代表的には、この疾患は、未分化型急性白血病(例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病)から生じる。さらなる例示的な骨髄性疾患としては、急性前骨髄球性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)が挙げられるが、これらに限定されない;リンパ悪性腫瘍としては、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(B系統ALLおよびT系統ALLが挙げられる)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、毛様細胞性白血病(HLL)およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる悪性のリンパ腫としては、非ホジキンリンパ腫およびその変種、末梢T細胞リンパ腫、成体T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ性白血病(LGF)、ホジキン病およびリード−スターンバーグ疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明の化合物と組み合わせての使用のための処置としては、本明細書中で開示されるかまたは当該分野で公知のような任意の抗増殖性処置、DNA損傷処置、または抗腫瘍処置が挙げられる。例えば、抗細胞増殖性処置または抗腫瘍処置は、必要に応じて薬物処置と組み合わせる放射線処置または外科的切除を含み得る。この処置は、化学物質(例えば、放射性同位元素、薬物(例えば、化学療法剤)、または遺伝子治療(例えば、抗癌遺伝子(例えば、Rb、DCC、p53など)、ドミナントネガティブな癌遺伝子または癌遺伝子のアンチセンス)の投与を含み得る。この化合物は、他の処置プロトコルの前に、同時にまたは後に、投与され得る。例えば、抗細胞増殖性治療(例えば、放射線治療、化学療法、遺伝子治療、外科的切除など)についての候補被験体は、抗細胞増殖性治療を開始する前に本発明の化合物を投与され得る。従って、予防的処置法が提供される。
【0084】
(コンビナトリアル化学ライブラリー)
コンビナトリアル化学ライブラリーは、新しい化合物リード(すなわち、G2細胞周期停止チェックポイントを阻害または抑止する化合物)の産生を補助するための1つの手段である。コンビナトリアル化学ライブラリーは、試薬のような多数の化学的「基礎単位」を組み合わせることによる化学合成または生合成のいずれかによって生成される、多様な化合物の収集物である。例えば、直鎖状のコンビナトリアル化学ライブラリー(例えば、ポリペプチドライブラリー)は、所定の化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)のために可能なあらゆる方法で、アミノ酸と称される化学的基礎単位のセットを組み合わせることによって形成される。何百万もの化合物が、このような化学的基礎単位の組み合わせ混合を介して合成され得る。例えば、100個の互換性のある化学的基礎単位の系統的な組み合わせ混合は、結果として1億個の四量体化合物または100億個の五量体化合物の理論的合成物をもたらす。コンビナトリアル化学ライブラリーの調製およびスクリーニングは、当業者に周知である(例えば、米国特許第6,004,617号、同第5,985,356号を参照のこと)。このようなコンビナトリアル化学ライブラリーとしては、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号;Furka(1991)Int.J.Pept.Prot.Res.、37:487−493、Houghtonら(1991)Nature、354:84−88、を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。化学的多様性ライブラリーを生成するための他の化学としては、ペプトイド(例えば、WO 91/19735を参照のこと)、コード化ペプチド(例えば、WO 93/20242を参照のこと)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、WO 92/00091を参照のこと)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号を参照のこと)、ダイバーソマー(diversomer)(例えば、ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチド)(例えば、Hobbs(1993)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 90:6909 6913、を参照のこと)、ビニル性(vinylogous)ポリペプチド(例えば、Hagihara(1992)J.Amer.Chem.Soc.114:6568、を参照のこと)、β Dグルコース骨格を有する非ペプチド性ペプチド模倣物(例えば、Hirschmann(1992)J.Amer.Chem.Soc.114:9217 9218、を参照のこと)、小化合物ライブラリーの類似の有機合成(例えば、Chen(1994)J.Amer.Chem.Soc.116:2661、を参照のこと)、オリゴカルバメート(例えば、Cho(1993)Science 261:1303、を参照のこと)、および/またはペプチジルホスホネート(例えば、Campbell(1994)J.Org.Chem.59:658、を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。また、Gordon(1994)J.Med.Chem.37:1385、を参照のこと;核酸ライブラリー、ペプチド核酸ライブラリーについて、例えば、米国特許第5,539,083号を参照のこと;抗体ライブラリーについて、例えば、Vaughn(1996)Nature Biotechnology 14:309−314、を参照のこと;糖質ライブラリーについて、例えば、Liangら(1996)Science 274:1520−1522、米国特許第5,593,853号を参照のこと;有機低分子ライブラリーについて、例えば、イソプレノイドについて米国特許第5,569,588号を;チアゾリジノン(thiazolidinone)およびメタチアザノン(metathiazanone)について米国特許第5,549,974号を;ピロリジンについて米国特許第5,525,735号および同第5,519,134号を;モルホリン化合物について米国特許第5,506,337号を;ベンゾジアゼピンについて米国特許第5,288,514号を参照のこと。
【0085】
コンビナトリアルライブラリーの調製のためのデバイスは、市販される(例えば、米国特許第6,045,755号;同第5,792,431号;357 MPS,390 MPS,Advanced Chem Tech,Louisville KY,Symphony,Rainin,Woburn,MA,433A Applied Biosystems,Foster City,CA,9050 Plus,Millipore,Bedford,MAを参照のこと)。多数のロボットシステムがまた、液相化学について開発されている。これらのシステムは、自動化ワークステーション(例えば、Takeda Chemical Industries,LTD.(Osaka,Japan)によって開発された同様の自動化合成装置および科学者によって実施されるマニュアル合成オペレーションを模倣する、ロボットアームを利用する多くのロボットシステム(Zymate II,Zymark Corporation,Hopkinton,Mass.;Orca,Hewlett Packard,Palo Alto,Calif.)が挙げられる。上記のデバイスのうちのいずれもが、本発明での使用に適切である。本明細書中に議論される通りにこれらが作動し得るこれらのデバイスへの改変(ある場合)の性質および実行は、関連分野の当業者に明らかである。さらに、多数のコンビナトリアルライブラリーは、それ自体が市販される(例えばComGenex,Princeton,N.J.,Asinex,Moscow,Ru,Tripos,Inc.,St.Louis,MO,ChemStar,Ltd,Moscow,RU,3D Pharmaceuticals,Exton,PA,Martek Biosciences,Columbia,MDなどを参照のこと)。
【0086】
(薬学的組成物の処方および投与)
1つの実施形態では、本発明の化合物は、薬学的に受容可能なキャリア(賦形剤)と合わされて、薬理学的組成物が形成される。薬学的に受容可能なキャリアは、例えば、本発明の薬学的組成物を安定化するか、または本発明の薬学的組成物の吸収速度もしくはクリアランス速度を増加もしくは減少させるように作用する、生理学的に受容可能な化合物を含み得る。生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、糖質(例えば、グルコース、スクロース、またはデキストラン)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸またはグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、この化合物のクリアランスまたは加水分解を減少させる組成物、あるいは賦形剤または他の安定剤および/もしくは緩衝剤が挙げられ得る。界面活性剤をまた用いて、この薬学的組成物(リポソームキャリアが挙げられる)を安定化し得るか、またはこの薬学的組成物の吸収を増加もしくは減少させ得る。本明細書中に開示される通りの化合物についての薬学的に受容可能なキャリアおよび処方物は、当業者に公知であり、そして科学文献および特許文献(例えば、Remington’s
Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania(「Remington’s」)の最新版を参照のこと)に詳細に記載されている。
【0087】
他の生理学的に受容可能な化合物としては、湿潤剤、乳化剤、分散剤または保存剤(これは、微生物の増殖または作用を防止するために特に有用である)が挙げられる。種々の保存剤は周知であり、そして例えば、フェノールおよびアスコルビン酸が挙げられる。当業者は、薬学的に受容可能なキャリア(生理学的に受容可能な化合物が挙げられる)の選択が、例えば、本発明の化合物の投与経路およびその特定の物理化学的特徴に依存することを認識する。
【0088】
1つの実施形態では、本発明の少なくとも1つの化合物の溶液は、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、この組成物が水溶性である場合、水性キャリア)中に溶解される。腸での薬物送達、非経口薬物送達または経粘膜薬物送達のための処方物中で用いられ得る水溶液の例としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、ハンクス溶液、リンゲル溶液、デキストロース/生理食塩水、グルコース溶液などが挙げられる。これらの処方物は、生理学的条件に近似させるために必要とされる場合、薬学的に受容可能な補助物質(例えば、緩衝化剤、張度調整剤(tonicity adjusting agent)、湿潤剤、界面活性剤など)を含み得る。添加物はまた、さらなる活性成分(例えば、殺細菌剤または安定剤)を含み得る。例えば、この溶液は、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレートまたはトリエタノールアミンオレエートを含み得る。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌されてもよく、または濾過滅菌されてもよい。得られる水溶液は、そのままでの使用のために包装されてもよく、または凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥調製物は、投与前に無菌水溶液と合わされる。これらの処方物中のペプチド濃度は、広範囲に変動し得、そして流体の体積、粘度、体重など主に基づいて、選択された特定の投与形態および患者の要求に従って、選択される。
【0089】
固体処方物は、腸(経口)投与のために用いられ得る。これらは、例えば、丸剤、錠剤、散剤またはカプセル剤として処方され得る。固体組成物に関しては、従来の無毒性固体キャリア(例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる)が用いられ得る。経口投与について、薬学的に受容可能な無毒性組成物は、通常用いられる賦形剤(例えば、上記に列挙されたキャリア)のいずれかおよび一般に10%〜95%の活性成分(例えば、ペプチド)を取り込むことにより、形成される。非固体処方物はまた、腸投与のために用いられ得る。このキャリアは、石油起源、動物起源、植物起源もしくは合成起源の油(例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油など)を含む種々の油から選択され得る。適切な薬学的賦形剤としては、例えば、デンプン、セルロース、滑石、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールが挙げられる。
【0090】
本発明の化合物は、経口投与される場合、消化から保護され得る。これは、この化合物を酸加水分解および酵素的加水分解に対して耐性にする構成物(composition)を、この化合物と化合させること、または適切に耐性なキャリア(例えば、リポソーム)中でペプチドもしくは複合体でパッケージングすることのいずれかによって達成され得る。化合物を消化から保護する手段は、当該分野で周知である(例えば、治療剤の経口送達用の脂質組成物を記載するFix(1996)Pharm Res.13:1760 1764;Samanen(1996)J.Pharm.Pharmacol.48:119 135;米国特許5,391,377を参照のこと(リポソーム送達は、以下でさらに詳細に考察される)。
【0091】
全身投与はまた、経粘膜手段または経皮手段によってであり得る。経粘膜投与または経皮投与については、透過障害に対して適切な透過剤がその組成物中で用いられ得る。このような透過剤は、当該分野で一般に知られており、そして例えば、経粘膜投与については、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。さらに、界面活性剤はまた、透過を促進するために用いられ得る。経粘膜投与は、鼻腔スプレーによって、または坐剤を用いてであり得る。例えば、Sayani(1996)「Systemic delivery
of peptides and proteins across absorptive mucosae」、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.13:85 184を参照のこと。局所の経皮投与については、これらの薬剤は、軟膏剤(ointment)、クリーム剤、軟膏(salve)、散剤およびゲル剤に処方される。経皮送達システムとしてはまた、例えば、パッチが挙げられる。
【0092】
本発明の化合物はまた、処方物を内部に送達し得る、持続送達または徐放機構において投与され得る。例えば、本明細書中に開示された通りの化合物の持続送達が可能な、生分解性マイクロスフェアもしくは生分解性カプセルまたは他の生分解性ポリマー構成物は、本発明の処方物に含まれ得る(例えば、Putney(1998)Nat.Biotechnol.16:153 157を参照のこと)。
【0093】
吸入については、本発明の化合物は、乾燥粉末エアロゾル、液体送達システム、エアジェットネブライザ、プロペラントシステムなどを含め、当該分野で公知の任意のシステムを用いて送達され得る。例えば、この薬学的処方物は、エアロゾルまたはミストの形態で投与され得る。エアロゾル投与については、この処方物は、細かく分割された形態で、界面活性剤およびプロペラントとともに供給され得る。別の実施形態では、この処方物を呼吸器組織へと送達するためのデバイスは、その中で処方物が気化される吸入器である。他の液体送達システムとしては、例えば、エアジェットネブライザが挙げられる。
【0094】
本発明の薬剤を調製する際に、種々の処方改変が、薬物動態および生体分布を改変するために用いられ得、そして操作され得る。薬物動態および生体分布を改変するための多数の方法は、当業者に公知である。このような方法の例としては、物質(例えば、タンパク質、脂質(例えば、リポソーム、以下を参照のこと)、糖質または合成ポリマー(以下で考察される))から構成されるビヒクル中での複合体の保護が挙げられる。薬物動態の一般的な考察については、例えば、Remington’sの第37章〜第39章を参照のこと。
【0095】
本発明の方法において用いられる化合物および組成物は、単独で、または薬学的組成物として、当該分野で公知の任意の手段によって(例えば、全身的に、局部的に(regional)または局所的に(local)(例えば、腫瘍に対して直接的にまたは向けられて);動脈内投与、髄腔内(IT)投与、静脈内(IV)投与、非経口投与、胸膜腔内投与、表面(topical)投与、経口投与または局所投与によって、皮下、気管内(例えば、エアロゾルによる)または経粘膜(例えば、頬粘膜、膀胱粘膜、膣粘膜、子宮粘膜、直腸粘膜、鼻腔粘膜)として)送達され得る。投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に公知または明らかであり、そして科学文献および特許文献に詳細に記載されている。例えば、Remington’sを参照のこと。例えば、特定の器官に焦点を合わせるための、「局部的効果」について、1つの投与形態としては、例えば、特定の器官(例えば、脳および中枢神経系)に焦点を合わせるための動脈内注射または髄腔内(IT)注射が挙げられる(例えば、Gurun(1997)Anesth Analg.85:317 323を参照のこと)。例えば、本発明のペプチド複合体またはポリペプチド複合体を脳に直接的に送達することが所望される場合、頸静脈内注射が好ましい。高い全身投薬量が必要とされる場合、非経口投与が好ましい送達経路である。非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に公知であるかまたは明らかであり、そして例えば、Remington’sに詳細に記載される。Bai(1997)J.Neuroimmunol.80:65 75;Warren(1997)J.Neurol.Sci.152:31 38;Tonegawa(1997)J.Exp.Med.186 :507 515もまた参照のこと。
【0096】
1つの実施形態において、本発明の化合物を含む薬学的処方物は、脂質単層または脂質二重層(例えば、リポソーム)中に組み込まれる。例えば、米国特許第6,110,490号;同第6,096,716号;同第5,283,185号;同第5,279,833号を参照のこと。リポソーム処方物は、任意の手段(静脈内投与、経皮投与(例えば、Vutla(1996)J.Pharm.Sci.85:5 8を参照のこと)、経粘膜投与、または経口投与が挙げられる)によってであり得る。本発明はまた、本発明のペプチドおよび/または複合体がミセルおよび/またはリポソーム内に組み込まれた、薬学的調製物を提供する(例えば、Suntres(1994)J.Pharm.Pharmacol.46:23 28;Woodle(1992)Pharm.Res.9:260 265を参照のこと)。リポソームおよびリポソーム処方物は、標準的方法に従って調製され得、そしてそれらはまた、当該分野で周知である。例えば、Remington’s;Akimaru(1995)Cytokines Mol.Ther.1:197 210;Alving(1995)Immunol.Rev.145:5 31;Szoka(1980)Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号および同第4,837,028号を参照のこと。
【0097】
薬学的に受容可能な処方物は、約1%〜99.9%の活性成分(例えば、本発明の化合物)を組込み得る。この薬学的組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌されても、または滅菌濾過されてもよい。さらなる薬学的処方物および送達系が、当該分野で公知であり、そして本発明の方法および組成物において適用可能である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)第18版、Mack Publishing CO.,Easton,PA;The Merck Index(1996)第12版、Merck Publishing Group,Whitehouse,NJ;Pharmacetutical Principles of Solid Dosage Forms,Technonic Publishing Co.,Inc.,Lancaster,PA,(1993);およびPoznanskyら、Drug Delivery Systems,R.L.Juliano編、Oxford,N.Y.(1980),pp.253〜315を参照のこと)。
【0098】
この薬学的処方物は、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、単位投与形態でパッケージされ得る。「単位投与形態」とは、本明細書中で使用される場合、処置されるべき被験体に投与するための、物理的に別個の単位投与量を指し、各単位は、薬学的キャリアもしくは賦形剤と組み合わせて望ましい効果を生成する所定量の化合物を含む。
【0099】
本発明はさらに、本発明の化合物およびその薬学的処方物を、必要に応じて適切なパッケージング材料中にパッケージして含む、キットを提供する。キットは、代表的には、そのキット中の成分のインビトロ、インビボもしくはエキソビボでの使用のためのその成分の説明または指示を含む、標識またはパッケージ挿入物を含む。キットは、そのような成分(例えば、2つ以上の本発明の化合物、または核酸損傷剤もしくは抗増殖剤と組み合わせた本発明の化合物)の集合物を含み得る。
【0100】
用語「パッケージ材料」とは、そのキットの成分を収容する物理的構造をさす。このパッケージ材料は、その成分を滅菌して維持し得、そしてそれは、そのような目的のために一般的に使用される材料(例えば、紙、ダンボール、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプルなど)から製造され得る。その標識またはパッケージ挿入物は、適切な文書の指示を含み得る。従って、本発明のキットは、さらに、本発明の任意の方法においてキット成分を使用するための標識または指示を含み得る。指示は、本明細書中に記載された本発明の方法(処置方法、検出方法、モニタリング方法、または診断法を含む)のいずれかを実施するための指示を包含し得る。従って、例えば、キットは、本発明の処置方法において本発明の化合物を投与するための指示とともに、パック中または供給器中に本発明の化合物を含み得る。指示は、満足すべき臨床指標もしくは生じ得るあらゆる有害な症状の表示、または監督官庁(例えば、食品医薬品局)によりヒト被験体における使用のために必要とされるさらなる情報を、さらに含み得る。
【0101】
この指示は、「印刷物」上(例えば、そのキット中にあるかもしくは添付された紙もしくは厚紙上、またはそのキットもしくはパッケージ材料に添付された標識上、またはそのキットの成分を含むバイアルもしくはチューブに取り付けられた標識上)であり得る。指示は、コンピュータ読出し可能媒体(例えば、ディスク(フレキシブルディスクもしくはハードディスク)、光学CD(例えば、CD−ROM/RAMもしくはDVD−ROM/RAM)、磁気テープ、電子記憶媒体(例えば、RAMおよびROM)、ICチップ、ならびにこれらの混合物(例えば、磁気/光学記憶媒体))上にさらに含まれ得る。
【0102】
本発明のキットは、緩衝剤または保存剤または安定化剤を、薬学的処方物中にさらに含み得る。このキットの各成分は、個々の容器内に収納され得、それらの種々の容器すべては、単一パッケージ中に存在し得る。本発明のキットは、低温保存のために設計され得る。
【0103】
(処置レジメン:薬物速度論)
この薬学的組成物は、投与方法に依存して、種々の単位投与形態で投与され得る。代表的な薬学的組成物についての投与量は、当業者にとって周知である。そのような投与量は、代表的には、本質的に助言的であり、特定の治療状況、患者の許容度などに依存して、調整される。これを達成するために十分である本発明の化合物の量が、「治療上有効な用量」として規定される。この使用のために有効な投与スケジュールおよび量(すなわち、「投与レジメン」)は、種々の要因(疾患もしくは状態の段階、その疾患もしくは状態の重篤度、患者の健康の一般的状態、患者の身体的状態、年齢、薬学的処方物および活性剤濃度などが挙げられる)に依存する。患者についての投与レジメンを計算する際に、投与様式もまた、考慮に入れられる。その投与レジメンはまた、薬物速度論(すなわち、薬学的組成物の吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、クリアランスなど)を考慮にいれなければならない。例えば、最新のRemington’s;Egleton(1997)「Bioavailability and transport of peptides and peptide drugs into the brain」Peptides 18:1431〜1439;Langer(1990)Science 249:1527〜1533を参照のこと。
【0104】
治療適用において、組成物は、癌に罹患している患者に、その疾患および/またはその合併症を少なくとも部分的に停止するに十分な量で投与される。例えば、1つの実施形態において、静脈内(IV)投与のための可溶性薬学的組成物投与量は、数時間(代表的には、1時間、3時間、または6時間)にわたって投与される約0.01mg/時間〜約1.0mg/時間であり、これは、断続的周期で数週間にわたって反復され得る。かなり高投与量(例えば、約10mg/mlまでの範囲)が、特にその薬物が離れた部位に投与されて血流中(例えば、体腔もしくは器官管腔(例えば、脳脊髄液(CSF))中)に投与されない場合には、使用され得る。
【0105】
他のように規定されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載された方法および材料と類似するかまたは等価である方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、適切な方法および材料は、本明細書中に記載される。
【0106】
本明細書中にて引用されるすべての刊行物、特許および他の参考文献は、その全体が参考として援用される。矛盾する場合、本明細書(定義を含む)が支配する。
【実施例】
【0107】
以下の実施例は、本願発明を例示するために提供されるが、本願発明を限定するためには提供されない。
【0108】
(実施例1:G1チェックポイント欠損細胞(癌細胞)におけるDNA損傷誘発性細胞周期G2チェックポイントの選択的排除)
(化学物質および試薬) ブレオマイシン、アドリアマイシン、およびコルヒシンを、Wako Pure Chemical Co.(Osaka,Japan)から購入した。これらの化学物質を、蒸留HO中に10mg/mlで溶解し、4℃で保存した。シスプラチンを、Nihon Kayaku Co.(Tokyo,Japan)から購入し、蒸留HO中に5mg/mlで溶解し、そして4℃で保存した。カンプトテシン(Campto)を、Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO)から購入した。ヨウ化プロピジウム(PI)を、Sigmaから購入した。フィトヘマグルチニンを、Life Technologies,Inc.(Grand Island,NY)から購入した。インターロイキン2(IL−2)を、Hemagen Diagnostics Inc.から購入した。
【0109】
(細胞培養) ヒトT細胞白血病由来細胞株であるJurkatを、10%ウシ胎仔血清(IBL:Immuno−Biological Laboratoris,Gunma,Japan)を補充したRPMI 1640培地(Sigma)中で37℃/5%COにて培養した。ヒト結腸癌由来細胞株であるHCT116を、10%ウシ胎仔血清を補充したMcCoy’s 5A Medium Modified(Gibco BRL)中で37℃/5%COにて培養した。正常ヒト末梢血白血球を、Ficoll−Paque(登録商標)(Pharmacia)により分離し、そして0.1μg/ml PHAおよび1μg/ml IL−2の存在下で培養した。
【0110】
(細胞周期分析) 本発明の化合物および/またはブレオマイシン、アドリアマイシン、コルヒシン、もしくはシスプラチンで処理した細胞の細胞周期状態を、Kawabe(1997)Nature 385:454〜458により本質的には記載されるように、フローサイトメトリーによって分析した。簡単に述べると、2百万個の細胞を、300μlのKrishan’s溶液(0.1% クエン酸ナトリウム、50μg/ml PI、20μg/ml RNアーゼAおよび0.5% NP−40)中に再懸濁し、そして4℃にて1時間インキュベートし、そしてFACScanTMフローサイトメーター(Beckton Dickinson,Mountain View,CA)をCELLQuestTMプログラム(Beckton Dickinson)とともに使用するフローサイトメトリーによって分析した。
【0111】
(CBDC402は、Jurkat細胞のブレオマイシン誘発性細胞周期G2蓄積を無効にした)
Jurkat細胞(ヒトT細胞白血病由来細胞株)を、ブレオマイシン(40μg/ml)またはブレオマイシン+化合物CBDC402(4−ブロモ−安息香酸p−トリルエステル)を種々の濃度(0.2μg/ml、0.39μg/ml、0.78μg/ml、1.56μg/ml、3.125μg/ml、6.25μg/ml、12.5μg/ml、25μg/mlおよび50μg/ml)で用いて24時間処理した。処理したJurkat細胞のDNAを、ヨウ化プロピジウムで染色し、各細胞の細胞周期状態を、フローサイトメトリーによって評価した。図1に示されるように、ブレオマイシン処理は、細胞周期G2/M期における細胞の蓄積を誘発した。CBDC402処理は、用量依存性様式で、G2/M細胞のブレオマイシン誘発性蓄積を無効にした。
【0112】
(Jurkat細胞におけるM期チェックポイントは、CBDC402処理によって排除されなかった)
Jurkat細胞を、コルヒシン(5μg/ml)およびコルヒシン+化合物CBDC402を種々の濃度(0.2μg/ml、0.39μg/ml、0.78μg/ml、1.56μg/ml、3.125μg/ml、6.25μg/ml、12.5μg/ml、25μg/mlおよび50μg/ml)で用いて24時間処理した。処理したJurkat細胞のDNAを、ヨウ化プロピジウムで染色し、各細胞の細胞周期状態を、フローサイトメトリーによって評価した。図2に示されるように、コルヒシン処理は、G2/M期の細胞における細胞の蓄積を誘発した。CBDC402は、いかなるCBDC402濃度でも、このG2/M蓄積を排除しなかった。
【0113】
(種々のCBDC化合物は、細胞周期G2チェックポイントを排除した)
Jurkat細胞を、ブレオマイシン(40μg/ml)および種々のCBDC化合物を0.2μg/ml、0.39μg/ml、0.78μg/ml、1.56μg/ml、3.125μg/ml、6.25μg/ml、12.5μg/ml、25μg/mlおよび50μg/mlで用いて処理し、そして24時間培養した。CBDC化合物004、402、403、404、405、406、407、408、409、410、および411を試験した。細胞を採集し、DNAを、ヨウ化プロピジウムで染色し、G2/M期の細胞の割合(G2/M%)を、フローサイトメトリーによって評価した。図3は、各濃度の各CBDC化合物について検出されたG2/M細胞%を示し、これは、種々のCBDC化合物によるG2チェックポイント排除についての用量応答曲線を提供する。CBDC402は、最高の活性を示した。試験したすべてのCBDC化合物は、最高濃度(50μg/ml)にてG2細胞周期チェックポイントを排除した。この実験において試験したCBDC化合物の構造が、図4に示される。
【0114】
さらなるCBDC化合物を、上記ようにそのG2チェックポイント排除活性について試験した。図5に示されるように、化合物を、非常に活性;中程度に活性;活性;弱く活性;および不活性として順位付けた。図6に示されるように、Jurkat細胞におけるG2チェックポイント排除のIC50を、上記のように実行した用量応答研究によって決定した。
【0115】
(CBDC004は、種々の抗癌剤により誘発された細胞周期G2チェックポイントを排除した)
HCT116ヒト結腸癌細胞を、10μg/mlのブレオマイシン(Bleo)または1μg/mlのアドリアマイシン(ADR)または10μg/mlのカンプトテシン(Campto)または2μg/mlのシスプラチン(CDDP)、および0μM、2μM、10μM、もしくは50μMのCBDC004で、24時間処理した。DNAをヨウ化プロピジウムで染色し、各細胞の細胞周期状態を、フローサイトメトリーによって評価した。図7に示されるように、これらの抗癌剤の各々が、細胞周期G2/Mにおいて細胞の蓄積を誘発し、CBDC004との同時インキュベーションは、G2/Mの細胞数を減少した。このことは、CBDC004は、ブレオマイシン、アドリアマイシン、カンプトテシン、またはシスプラチンにより活性化されたG2チェックポイントを排除したことを示す。
【0116】
(実施例2:DNA損傷処理に対する癌細胞の感作)
組み合わせ処置の細胞傷害活性を、ブレオマイシン、アドリアマイシン、カンプトテシン、またはシスプラチンを、2μM、10μM、もしくは50μMのCBDC004とともに処理したかまたはCBDC004を伴わずに用いて処理したHCT116細胞のsubG1集団を分析することによって、決定した。このsubG1集団を、Krishan’s溶液を用いてHCT116を染色することによって決定し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。死細胞を、DNA含量に基づいて同定し、subG1中の細胞の割合(subG1%)を、計算した。図8において示されるように、ブレオマイシン、アドリアマイシン、カンプトテシン、またはシスプラチンは、HCT116細胞に対して細胞傷害効果を有した。CBDC004は、これらの抗癌剤の細胞傷害活性を、用量依存性様式で増加した。
【0117】
(実施例3;CBDC402は、SCIDマウスにおける異種移植片腫瘍増殖を抑制した)
HCT−116ヒト結腸癌細胞を、重症複合型免疫不全(SCID)マウスにおいて皮下移植した。原発性腫瘍が0.1cmの大きさ(7mmまたは8mm)に達した時(1日目と呼ばれる)、処理を開始した。
【0118】
抗癌剤CPT−11(CAMPTOSAR(登録商標)、イリノテカン、トポイソメラーゼインヒビター)およびCBDC402を、以下の処理レジメンにおいて静脈内注射によって投与した。20mg/kgのCPT−11を1週間に1回;20mg/kgのCBDC402を1週間に2回;40mg/kgのCBDC402を1週間に2回;20mg/kgのCBDC402を1週間に2回+20mg/kgのCPT−11を1週間に1回;ならびに40mg/kgのCBDC402を1週間に2回+20mg/kgのCPT−11を1週間に1回。DMSOを、コントロール処理として投与した。腫瘍サイズを、1週間に3回カリパスを使用して測定し、その体積を、式:重量(mg)=[幅(mm)×長さ(mm)]/2を使用して計算した。各処理群(n=4)についての平均腫瘍サイ
ズを、処理日に対してプロットした。図9に示されるように、DMSO処理したコントロールマウスは、成長し続けた。CBDC402単独(両方の濃度)は、腫瘍増殖のわずかな減少を生じた。CPT−11単独は、腫瘍増殖を減少した。CBDC402+CPT−11の組み合わせは、腫瘍増殖を有意に減少するかまたは阻害した。
【0119】
(実施例4:ヒト胃癌由来細胞株MK−45のコロニー形成分析)
ヒト胃癌由来細胞株由来のMK−45細胞を、6ウェルプレート中に1000細胞/ウェルで播種した。一晩培養した後、その細胞を、10μMの種々のCBDC化合物、10μg/mlのCPT−11、またはCBDC化合物とCPT−11との組み合わせを用いて3時間処理した。試験したCBDC化合物は、CBDC402、CBDC412、CBDC413、およびCBDC418であった。培養培地を交感し、そして細胞を14日間培養した。その後、コロニーをメタノールで固定し、0.1%クリスタルバイオレットで染色した。10μMのCBDC402を用いる3時間の処理によって、MK−45細胞によるコロニー形成の有意な抑制が引き起こされたが、10μM CBDC412を用いる処理は、コロニー形成のわずかな抑制を引き起こし、そして10μM CBDC413もCBDC418も、コロニー形成に対して感知できる影響は有さなかった。10μg/ml CPT−11を用いる処理は、コロニー形成の有意な抑制を引き起こしたが、10μM CBDC402の添加は、10μg/ml CPT−11の影響を増強するようであり、コロニー形成のほぼ完全な抑制を生じた。10μg/ml CPT−11と10μM
CBDC412との組み合わせは、CPT−11単独を用いて観察される上記のコロニー形成のわずかな抑制を引き起こしたが、10μg/ml CPT−11と10μM CBDC413、CBDC418との組み合わせ。
【0120】
(実施例5:CBDC402は、細胞周期G2チェックポイントを特異的に排除した)
活性化正常T細胞および白血病T細胞(Jurkat細胞)を、薬剤で処理して、G2期またはM期の細胞の蓄積を誘発し、細胞周期チェックポイントを通る細胞の進行に対するCBDC402の影響を、測定した。処理後に、細胞を採取し、DNAを染色し、各細胞の細胞周期段階を、上記のようにフローサイトメトリーによって決定した。1つの実験において、活性化正常T細胞に、何も処理を与えない(コントロール)か、またはそれを、ブレオマイシン、CBDC402、もしくはブレオマイシンとCBDC402との組み合わせで処理した。図10aに示されるように、ブレオマイシン処理は、G2期の少数の細胞集団の蓄積を引き起こし、CBDC402は、G2期の活性化正常T細胞のブレオマイシン誘発性増加を排除した。別の実験において、白血病T細胞(Jurkat細胞)に、何も処理を与えない(コントロール)か、またはそれを、ブレオマイシン、CBDC402、もしくはブレオマイシンとCBDC402との組み合わせで処理した。図10bに示されるように、ブレオマイシンは、G2期の多数の細胞集団の蓄積を引き起こし、CBDC402は、G2期の白血病T細胞(Jurkat細胞)の大きなブレオマイシン誘発性増加を排除した。別の実験において、活性化正常T細胞に、何も処理を与えない(コントロール)か、またはそれを、コルヒシン、CBDC402、もしくはコルヒシンとCBDC402との組み合わせで処理した。図10cに示されるように、コルヒシンは、M期の細胞の蓄積を引き起こした。CBDC402は、M期の活性化正常T細胞のコルヒシン誘発性増加に影響を与えなかった。これらの結果は、G2蓄積(M期チェックポイントではなく)に対するCBDC402の特異性を示し、癌細胞に対するCBDC402の特異性を示した。
【0121】
(実施例6:4−ブロモ−安息香酸4−フルオロ−フェニルエステルの合成)
10mlのジオキサン、5mmol(1.1g)の塩化4−ブロモ−安息香酸および5mmol(0.56g)の4−フルオロ−フェノールを、50mlの4口フラスコに連続して添加し、室温で溶解させた。ジオキサン中に溶解したトリエチルアミンを、この溶液中にゆっくり滴下し、この溶液を、室温で3時間攪拌した。沈殿した結晶を濾過し、ベンゼンで抽出した。抽出した溶液を、炭酸水素ナトリウムで数回洗浄し、無水マグネシウムを添加し、生じた溶液を乾燥させて濾過した。この溶液を、低圧下で蒸留して結晶化させた。未精製結晶は、黄白色であり、1.37gであった。この結晶の一部(0.5g)を、ベンゼン中に溶解し、100gのシリカゲル(WakoゲルC−300、Japan)を用いて精製した。この精製生成物は白色であった。その純度が99.93%であることを、液体クロマトグラフィー(LC)によって確認した。その構造が以下の通りであることをNMRによって確認した。1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ 8.05(2H,d,J=8.8Hz),7.83(2H,d,J=8.8Hz),7.38〜7.29(4H,m) 13C NMR(100MHz,DMSO−d6)δ159.72(C−F,d,J=240Hz)163.95(C=O)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−168398(P2010−168398A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99281(P2010−99281)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【分割の表示】特願2004−511251(P2004−511251)の分割
【原出願日】平成15年6月6日(2003.6.6)
【出願人】(504275568)株式会社 キャンバス (6)
【Fターム(参考)】