説明

DPP−IV阻害剤と5−HT3および/または5−HT4受容体を調節する化合物の組合せ剤

本発明は、DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩ならびに5−HT受容体と相互作用する薬剤および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤、またはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1個の治療剤をそれぞれ含む、組み合わせた製剤または医薬組成物のような組合せ剤に関する。本発明はさらに、インスリン耐性、グルコース代謝障害、耐糖能異常の状態、空腹時血漿グルコース異常の状態、糖尿病、特に2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性神経障害、勃起不全、月経前症候群、冠動脈心疾患、高血圧症、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、皮膚および結合組織障害下肢潰瘍および潰瘍性大腸炎、内皮機能不全および血管コンプライアンス異常、変化した胃腸運動、過敏性および/または胸焼け、膨満感、術後イレウス、腹痛および不快感を含むが、それらに限定されない分泌障害、早期満腹感、上腹部痛、悪心、嘔吐、腹部膨満感(burbulence)、逆流、腸偽閉塞、肛門失禁、GERD、IBS、消化不良、慢性便秘または下痢、糖尿病性胃疾患、胃不全麻痺、例えば糖尿病性胃不全麻痺、潰瘍性大腸炎、クローン病、それに関係する潰瘍痛および内臓痛から選択される疾患または障害の予防、進行の遅延または処置のためのそのような組合せ剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
セロトニンは、数年間、様々な動物モデルにおいて胃腸(GI)管の蠕動運動を調節することが知られている。1980年代中頃にかけて、5−HT受容体サブタイプに対するいくつかの特異的アゴニストが同定され、現在、癌治療において抗嘔吐剤(anti−emesis/vomiting agent)として用いられている。5−HTアンタゴニストはまた、近年、過敏性腸症候群(“IBS”)の処置のために研究されている。
【背景技術】
【0002】
多くの胃腸症候群は、セロトニンの産生および作用と関係があり、世界中の非常に多くの人々にかなり一般的に発生している。よりよく知られている胃腸状態、症候群または疾患のいくつかは、IBS、胃食道逆流症(“GERD”)および消化不良である。
【0003】
IBSは、腹痛、膨満感および変化した腸機能と関係する慢性状態であり、人口の10−20%程度に影響を与えると推定される。時折、前記疾患は、過敏性結腸、痙攣性結腸、痙攣性大腸炎または粘液性大腸炎として示される。大腸炎は結腸の炎症を意味し、かつ炎症の不存在がIBSの診断において指標所見の1つであるため、後者の二つはほぼ確実に誤称である。IBSの原因は未知であるが、ダイエット、生活習慣、鬱、不安症、感染症、ならびに中枢神経の感受性化および腸内神経の感受性化による初期傷害(insult)を含む無関係の炎症状態を含む多くの因子が関係している。IBSの処置に現在用いられているほとんど全ての薬剤が、顕著な治療効果の確立に失敗している。
【0004】
GERDは、胃内容物の下部食道括約筋を介する食道への逆流と関係する状態である。GERDは、胸焼け、膨満感、腹痛、上腹部痛、早期満腹感、悪心、逆流、腹部膨満感(burbulence)および嘔吐の症状により特徴付けられる。逆流は、胃内容物が食道に入り込むのを可能にする一時的な下部食道括約筋弛緩の増加した頻度により起こると考えられる。
【0005】
消化不良もまた、重大な健康上の問題である。消化不良の慢性症状を示す患者と関係のある最も一般的な状態は、GERD、十二指腸潰瘍または胃潰瘍および他の疾病(例えば、機能性/非潰瘍性消化不良、胆嚢疾患または肝臓疾患)である。
【0006】
これらの状態または疾患は、変化した運動性、過敏性、分泌および/またはヘリコバクター・ピロリの感染、ならびに可能性のある心理的(通常、潜在意識的)負荷により特徴付けられる。現在、例えば、その内のいくつかがヒトに様々な悪影響を与える機能性消化不良の処置に臨床的に顕著な効果を示している薬剤は、僅かしかない。
【0007】
GLP−1誘導体は、胃腸疾患の処置に有効な可能性があるとして特許出願US2003216292にも記載されている。
【0008】
従って、変化したGI運動性、過敏性および分泌を調節および正常化し、毎年何百万という胃腸疾患を有する多くの人々の処置に広範な臨床的有用性を有する薬剤または処置が必要とされている。
【0009】
現在、例えば下記に定義の、5−HTまたは5−HT受容体と相互作用する少なくとも1個の薬剤、および例えば下記に定義の、共薬剤としてのDPP−IV阻害剤を含む組合せ剤が、有益な効果を有し、変化した胃腸運動、過敏性および/または分泌障害および/または腹部障害ならびにDPP−IV阻害により処置されるかもしれない状態/疾患の処置に有用であるということが発見されている。この組合せ剤を、変化した胃腸運動、過敏性および/または分泌障害および/または腹部障害の制御、安定化および正常化のためにも使用できる。
【発明の開示】
【0010】
従って、本発明は、
i)DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および
ii)5−HT受容体と相互作用する薬剤および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1個の治療剤
を含む組合せ剤に関する。
【0011】
好ましくは、本発明は、DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および
a)5−HT受容体と相互作用する薬剤またはその薬学的に許容される塩、
b)5−HT受容体と相互作用する薬剤またはその薬学的に許容される塩、
を含む群から選択される少なくとも1個の治療剤、ならびに少なくとも1個のさらなる薬学的に許容される担体をそれぞれ含む、組み合わせた製剤または医薬組成物のような組合せ剤に関する。
【0012】
好ましくは前記組合せ剤は、医薬組成物または組み合わせた医薬製剤である。
【0013】
この医薬組成物において、組合せパートナー(i)および(ii)は、共に投与され得るか、一方の後に他方を投与され得るか、または1個の組み合わせた単位投与量形態または2個の別個の単位投与量形態で別々に投与され得る。単位投与量形形態は、固定した組合せ剤であってもよい。
【0014】
用語“少なくとも1個の治療剤”は、DPP−IV阻害剤に加えて、1個またはそれ以上、例えば2個、さらには3個の本明細書に記載の活性成分を組合せ得ることを意味するものとする。好ましくは、組合せパートナーは、a)またはb)またはa)から選択される1個の組合せパートナーおよびb)から選択される1個である。
【0015】
本明細書で用いる用語“DPP−IV”は、CD26としても公知のジペプチジルペプチダーゼIVを意味するものとする。プロリン/アラニンの後ろを切断するアミノ−ジペプチダーゼ群に属するセリンプロテアーゼであるDPP−IVは、プロリンまたはアラニンを2位に有するタンパク質から2個のN末端アミノ酸を特異的に除去する。DPP−IVは、その基質がインスリン分泌促進ホルモンであるグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)および胃抑制ペプチド(GIP)を含むため、グルコース代謝の調節に用いられ得る。GLP−1およびGIPは、その無傷の形態でのみ活性であり;2個のN末端アミノ酸の除去により不活性となる。
【0016】
DPP−IVの合成阻害剤のインビボ投与は、GLP−1およびGIPのN末端分解を妨げ、その結果、これらのホルモンのより高い血漿濃度、増加したインスリン分泌、およびそれにより改善されたグルコース耐性をもたらす。
【0017】
用語“DPP−IV阻害剤”は、DPP−IVおよび機能的に関係する酵素の酵素活性の阻害、例えば1〜100%または20〜80%阻害を示し、特に、GLP−1、GIP、ペプチドヒスチジンメチオニン(peptide histidine methionine)、サブスタンスP、神経ペプチドY、および典型的に第2アミノ末端位にアラニンまたはプロリン残基を含む他の分子を含むが、それらに限定されない基質分子の作用を維持する分子を示すものとする。DPP−IV阻害剤を用いる処置は、ペプチド基質の作用持続時間を延長し、開示された発明に関する一連の生物学的活性をもたらす無傷の非分解形態のレベルを増加する。
【0018】
その目的のため、化合物を、精製CD26/DPP−IVの酵素活性を阻害する能力について試験する。簡単には、CD26/DPP−IVの活性を、合成基質Gly−Pro−p−ニトロアニリド(Gly−Pro−pNA)を切断する能力によりインビトロで測定する。DPP−IVによるGly−Pro−pNAの切断は、生成物p−ニトロアニリド(pNA)を遊離し、その出現速度は、酵素活性と正比例している。特定の酵素阻害剤による酵素活性の阻害は、pNA産生を遅らせる。阻害剤と酵素のより強い相互作用は、pNAの産生速度をより遅くする。故に、pNAの蓄積速度の阻害度は、酵素阻害強度の直接的尺度である。pNAの蓄積は、分光光度計により測定される。各化合物について阻害定数Kiを、一定量の酵素をいくつかの異なる濃度の阻害剤および基質と共にインキュベートすることにより決定する。
【0019】
本明細書中“DPP−IV阻害剤”はまた、DPP−IV阻害剤の活性代謝産物およびプロドラッグのような、その活性代謝産物およびプロドラッグを含むものとする。活性“代謝産物”は、DPP−IV阻害剤が代謝されるときに産生されるDPP−IV阻害剤の活性誘導体である。“プロドラッグ”は、DPP−IV阻害剤に代謝されるか、またはDPP−IV阻害剤と同じ代謝産物(複数可)に代謝される化合物である。
【0020】
DPP−IV阻害剤は、当技術分野で公知である。例えば、DPP−IV阻害剤は、例えばWO98/19998、DE19616486A1、WO00/34241、WO95/15309、WO01/72290、WO01/52825、WO9310127、WO9925719、WO9938501、WO9946272、WO9967278およびWO9967279それぞれに包括的かつ具体的に開示されている。
【0021】
好ましいDPP−IV阻害剤は、下記の特許出願に記載されている;WO02053548、とりわけ化合物1001から1293および実施例1から124、WO02067918、とりわけ化合物1000から1278および2001から2159、WO02066627、とりわけ記載の実施例、WO02/068420、とりわけ実施例IからLXIIIに具体的に列記される全ての化合物および記載される対応する類似体、さらに好ましい化合物は、IC50を記録する表に記載の2(28)、2(88)、2(119)、2(136)である、WO02083128、とりわけ実施例1から13、US2003096846、とりわけ具体的に記載される化合物、WO2004/037181、とりわけ実施例1から33、WO0168603、とりわけ実施例1から109の化合物、EP1258480、とりわけ実施例1から60の化合物、WO0181337、とりわけ実施例1から118、WO02083109、とりわけ実施例1Aから1D、WO030003250、とりわけ実施例1から166の化合物、最も好ましくは1から8、WO03035067、とりわけ実施例に記載の化合物、WO03/035057、とりわけ実施例に記載の化合物、US2003216450、とりわけ実施例1から450、WO99/46272、とりわけ請求項12、14、15および17の化合物、WO0197808、とりわけ請求項2の化合物、WO03002553、とりわけ実施例1から33の化合物、WO01/34594、とりわけ実施例1から4に記載の化合物、WO02051836、とりわけ実施例1から712、EP1245568、とりわけ実施例1から7、EP1258476、とりわけ実施例1から32、US2003087950、とりわけ記載されている実施例、WO02/076450、とりわけ実施例1から128、WO03000180、とりわけ実施例1から162、WO03000181、とりわけ実施例1から66、WO03004498、とりわけ実施例1から33、WO0302942、とりわけ実施例1から68、US6482844、とりわけ記載されている実施例、WO0155105、とりわけ実施例1および2に列記の化合物、WO0202560、とりわけ実施例1から166、WO03004496、とりわけ実施例1から103、WO03/024965、とりわけ実施例1から54、WO0303727、とりわけ実施例1から209、WO0368757、とりわけ実施例1から88、WO03074500、とりわけ実施例1から72、実施例4.1から4.23、実施例5.1から5.10、実施例6.1から6.30、実施例7.1から7.23、実施例8.1から8.10、実施例9.1から9.30、WO02038541、とりわけ実施例1から53、WO02062764、とりわけ実施例1から293、好ましくは実施例95の化合物、(2−{{3−(アミノメチル)−4−ブトキシ−2−ネオペンチル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリニル}オキシ}アセトアミド塩酸塩)、WO02308090、とりわけ実施例1−1から1−109、実施例2−1から2−9、実施例3、実施例4−1から4−19、実施例5−1から5−39、実施例6−1から6−4、実施例7−1から7−10、実施例8−1から8−8、90頁の実施例7−1から7−7、91頁から95頁の実施例8−1から8−59、実施例9−1から9−33、実施例10−1から10−20、
【0022】
US2003225102、とりわけ化合物1から115、実施例1から121の化合物、好ましくは化合物a)からz)、aa)からaz)、ba)からbz)、ca)からcz)およびda)からdk)、WO0214271、とりわけ実施例1から320およびUS2003096857およびWO2004/052850、とりわけ実施例1から42のような具体的に記載される化合物および請求項1の化合物、DE10256264A1、とりわけ実施例1から181のような記載される化合物および請求項5の化合物、WO04/076433、とりわけ表Aに列記のような具体的に記載される化合物、好ましくは表Bに列記の化合物、好ましくは化合物IからXXXXVII、または請求項6から49の化合物、WO04/071454、とりわけ具体的に記載される化合物、例えば化合物1から53または表IaからIfの化合物、または請求項2から55の化合物、WO02/068420、とりわけ具体的に記載される化合物、例えば化合物IからLXIIIまたは実施例Iおよび類似体1から140または実施例2および類似体1から174または実施例3および類似体1、または実施例4から5、または実施例6および類似体1から5、または実施例7および類似体1−3、または実施例8および類似体1、または実施例9、または実施例10および類似体1から531、さらに好ましいのは、請求項13の化合物である、WO03/000250、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば化合物1から166、好ましくは実施例1から9の化合物、WO03/024942、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば化合物1から59、表1の化合物(1から68)、請求項6、7、8、9の化合物、WO03024965024942、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば化合物1から54、Wo03002593、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば表1または請求項2から15の化合物、WO03037327、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば実施例1から209の化合物、WO03/000250、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば化合物1から166、好ましくは実施例1から9の化合物、WO03/024942、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば化合物1から59、表1の化合物(1から68)、請求項6、7、8、9の化合物、WO03024965024942、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば化合物1から54、Wo03002593、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば表1または請求項2から15の化合物、WO03037327、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば実施例1から209の化合物、WO0238541、WO0230890、
【0023】
WO03/000250、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば化合物1から166、好ましくは実施例1から9の化合物、WO03/024942、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば化合物1から59、表1の化合物(1から68)、請求項6、7、8、9の化合物、WO03024965、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば化合物1から54、W003002593、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば表1または請求項2から15の化合物、WO03037327、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば実施例1から209の化合物、WO0238541、とりわけ具体的に記載の化合物、例えば実施例1から53の化合物、WO03/002531、とりわけ具体的に記載の化合物、好ましくは9頁から13頁に列記された化合物、最も好ましくは実施例1から46の化合物、およびさらに好ましいのは、実施例9の化合物、米国特許番号第6,395,767号、好ましくは実施例1から109の化合物、最も好ましくは実施例60の化合物、2001年2月16日出願の米国特許出願番号第09/788,173号(代理人ファイル番号LA50)、とりわけ記載されている実施例、WO99/38501、とりわけ記載されている実施例、W099/46272、とりわけ記載されている実施例、およびDE19616486A1、特にval−pyr、val−チアゾリジド、イソロイシル−チアゾリジド、イソロイシル−ピロリジド、ならびにイソロイシル−チアゾリジドおよびイソロイシル−ピロリジドのフマル酸塩。
【0024】
さらに好ましいDPP−IV阻害剤には、米国特許番号第6124305号および米国特許番号第6107317号、国際特許出願の国際公開WO9515309およびWO9818763に開示される具体的実施例が含まれる。
【0025】
それぞれの場合において、特に化合物の請求項および実施例の最終生成物において、最終生成物、医薬製剤および請求項の主題は、上記文献を参照することにより本明細書中に包含される。
【0026】
公開された国際特許出願WO9819998は、N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン、特に1−[2−[5−シアノピリジン−2−イル]アミノ]−エチルアミノ]アセチル−2−シアノ−(S)−ピロリジン(NVP−DPP728)を開示している。
【0027】
DE19616486A1は、val−pyr、val−チアゾリジド、イソロイシル−チアゾリジド、イソロイシル−ピロリジド、ならびにイソロイシル−チアゾリジドおよびイソロイシル−ピロリジドのフマル酸塩を開示している。
【0028】
公開された国際特許出願WO0034241および公開された米国特許出願US6110949は、N−置換アダマンチル−アミノ−アセチル−2−シアノピロリジンおよびW(置換グリシル)−4−シアノピロリジンをそれぞれ開示している。興味のあるDPP−IV阻害剤は、特に請求項1から4に記載されるものである。特に、これらの出願は、化合物1−[[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル]−2−シアノ−(S)−ピロリジン(LAF237またはビルダグリプチンとしても公知)を記載している。
【0029】
公開された国際特許出願WO9515309は、DPP−IVの阻害剤としてアミノ酸2−シアノピロリジンアミドを開示しており、公開された国際特許出願WO9529691は、アルファ−アミノアルキルホスホン酸のジエステルのペプチジル誘導体、特にプロリンまたは関連構造を有するものを開示している。興味のあるDPP−IV阻害剤は、特に表1から8に記載されるものである。
【0030】
WO01/72290において、興味のあるDPP−IV阻害剤は、特に実施例1ならびに請求項1、4および6に記載されるものである。
【0031】
WO01/52825は、特に、(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2イル)アミノ]エチル−アミノアセチル)−2−シアノ−ピロリジンまたは(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンを開示している。
【0032】
公開された国際特許出願WO9310127は、DPP−IV阻害剤として有用なプロリンホウ素エステルを開示している。興味のあるDPP−IV阻害剤は、特に実施例1から19に記載されるものである。
【0033】
公開された国際特許出願WO9925719は、微生物ストレプトマイセスを培養することにより製造されたDPP−IV阻害剤である、スルホスチン(sulphostin)を開示している。
【0034】
公開された国際特許出願WO9938501は、N−置換4員〜8員ヘテロ環式環を開示している。興味のあるDPP−IV阻害剤は、特に請求項15から20に記載されるものである。
【0035】
公開された国際特許出願WO9946272は、DPP−IVの阻害剤としてリン酸化合物を開示している。興味のあるDPP−IV阻害剤は、特に請求項1から23に記載されるものである。
公開された国際特許出願WO9967278およびWO9967279は、DPP−IVプロドラッグおよびA−B−C形態の阻害剤(ここで、Cは、DPP−IVの安定または不安定阻害剤である。)を開示している。
【0036】
他の好ましいDPP−IV阻害剤は、国際特許出願WO03/057200の14頁から27頁に開示される式I、IIまたはIIIの化合物である。最も好ましくは、DPP−IV阻害剤は、28頁および29頁に具体的に記載された化合物である。
【0037】
上記の特許文献に開示され、参照により本明細書中に包含される物質は全て、本発明の実施に用いられるDPP−IV阻害剤として有用である可能性があると見なされている。
【0038】
さらに好ましい態様において、DPP−IV阻害剤は、N−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンまたはその薬学的に許容される塩である。アロイルは、例えばナフチルカルボニル;または、非置換または例えば低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、または好ましくはニトロによりモノもしくはジ置換されるベンゾイルである。ペプチジル基には、好ましくは2個のα−アミノ酸、例えばグリシン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、リシンまたはプロリンが含まれ、そのうちの直接ヒドロキシルアミン窒素原子に結合する1つは、好ましくはプロリンである。
【0039】
好ましくは、N−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンは、式VII
【化1】

[式中、
jは、0、1または2であり;
Rεは、天然アミノ酸の側鎖を示し;そして
Rεは、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲンまたはニトロを示す。]
で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0040】
本発明の非常に好ましい態様において、N−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンは、式VIIa
【化2】

で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0041】
例えば式VIIまたは式VIIaのN−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミン、およびそれらの製造は、H.U. Demuth et al. in J. Enzyme Inhibition 1988, Vol. 2,の129頁から142頁、とりわけ130頁から132頁に記載される。
【0042】
好ましいDPP−IV阻害剤は、N−置換アダマンチル−アミノ−アセチル−2−シアノピロリジン、N−(置換グリシル)−4−シアノピロリジン、N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン、N−アミノアシルチアゾリジン、N−アミノアシルピロリジン、L−アロ−イソロイシルチアゾリジン、L−トレオ−イソロイシルピロリジン、およびL−アロ−イソロイシルピロリジン、1−[2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチルアミノ]アセチル−2−シアノ−(S)−ピロリジンおよびそれらの薬学的塩である。
【0043】
好ましいDPP−IV阻害剤は、Mona Patelおよび同僚(Expert Opinion Investig Drugs. 2003 Apr;12(4):623−33)の第5段落に記載されるもの、とりわけP32/98、K−364、FE−999011、BDPX、NVP−DDP−728などであり、その刊行物、とりわけ記載されるDPP−IV阻害剤は、参照により本明細書中に包含される。
【0044】
他の好ましい阻害剤は、WO2001068603または米国特許番号第6,395,767に開示される化合物BMS−477118(実施例60の化合物)であり、これは、国際特許出願WO2004/052850の2頁の式Mに示される(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシオリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル、安息香酸塩(1:1)、および対応する遊離塩基、国際特許出願WO2004/052850の3頁の式Mで示される(lS,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシ−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ−[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル(M’)およびその一水和物(M”)としても公知である。化合物BMS−477118は、サクサグリプチンとしても公知である。
【0045】
他の好ましい阻害剤は、(2S,4S)−1−((2R)−2−アミノ−3−[(4−メトキシベンジル)スルホニル]−3−メチルブタノイル)−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル塩酸塩としても公知の、WO03/002531に開示される化合物GSK23A(実施例9)である。
【0046】
FE−999011は、国際特許出願WO95/15309の14頁に、化合物18として記載されている。
【0047】
3−[(2S,3S)−2−アミノ−3−メチル−1−オキソペンチル]チアゾリジンとしても公知のP32/98またはP3298(CAS番号:251572−86−8)は、下記
【化3】

で示されるような、3−[(2S,3S)−2−アミノ−3−メチル−1−オキソペンチル]チアゾリジンおよび(2E)−2−ブテンジオエート(2:1)混合物として用いることができ、プロバイオドラッグ、ならびに同じ会社により記載される化合物P93/01の名称で、WO99/61431、およびまたDiabetes 1998, 47, 1253−1258に記載されている。
【0048】
本発明の他の非常に好ましいDPP−IV阻害剤は、国際特許出願WO02/076450(とりわけ実施例1から128)およびWallace T. Ashton(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 14 (2004) 859−863)により記載され、とりわけ化合物1ならびに表1および表2に列記される化合物である。好ましい化合物は、式:
【化4】

で示される化合物21e(表1)である。
【0049】
他の好ましいDPP−IV阻害剤は、国際特許出願WO2004/037169に記載されており、とりわけ実施例1から48に記載されるもの、およびWO02/062764、とりわけ実施例1から293に記載されるもの、さらに好ましくは、7頁およびまた国際特許出願WO2004/024184、とりわけ実施例1から4に記載される化合物3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミドである。
【0050】
他の好ましいDPP−IV阻害剤は、国際特許出願WO03/004498、とりわけ実施例1から33に記載されており、そして実施例7に記載されており、MK−0431またはシタグリプチンとしても公知の、式
【化5】

で示される化合物が最も好ましい。
【0051】
好ましいDPP−IV阻害剤は、国際特許出願WO2004/037181、とりわけ実施例1から33にも記載されており、請求項3から5に記載される化合物が最も好ましい。
【0052】
好ましいDPP−IV阻害剤は、N−置換アダマンチル−アミノ−アセチル−2−シアノピロリジン、N−(置換グリシル)−4−シアノピロリジン、N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン、N−アミノアシルチアゾリジン、N−アミノアシルピロリジン、L−アロ−イソロイシルチアゾリジン、L−トレオ−イソロイシルピロリジン、およびL−アロ−イソロイシルピロリジン、1−[2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチルアミノ]アセチル−2−シアノ−(S)−ピロリジン、MK−431およびその薬学的塩である。
【0053】
最も好ましいDPP−IV阻害剤は、[S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリル一塩酸塩、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンおよびL−トレオ−イソロイシルチアゾリジン(プロバイオドラッグによる化合物コード:上記のP32/98)、MK−0431、3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミドおよび所望によりその薬学的塩から選択される。
【0054】
[S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリル一塩酸塩および(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンは、WO98/19998の実施例3およびWO00/34241の実施例1にそれぞれ具体的に記載される。DPP−IV阻害剤P32/98(上記を参照のこと)は、Diabetes 1998, 47, 1253−1258に具体的に開示される。[S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリル一塩酸塩および(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンは、WO98/19998の20頁またはWO00/34241に記載される通りに製剤され得る。
【0055】
とりわけ好ましくは、式
【化6】

で示される1−{2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチルアミノ}アセチル−2(S)−シアノ−ピロリジン二塩酸塩(DPP728)([S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリル一塩酸塩とも称される)、とりわけその二塩酸塩および一塩酸塩、ならびに式
【化7】

で示される1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジン,(S)(また、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジン、LAF237またはビルダグリプチンとも称される)およびL−トレオ−イソロイシルチアゾリジン(プロバイオドラッグによる化合物コード:上記のP32/98)、MK−0431、GSK23A、サクサグリプチン、3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミドおよび所望によりその薬学的塩である。
【0056】
DPP728およびLAF237は、WO98/19998の実施例3およびWO00/34241の実施例1にそれぞれ具体的に開示されている。DPP−IV阻害剤P32/98(上記を参照のこと)は、Diabetes 1998, 47, 1253−1258に具体的に記載されている。DPP728およびLAF237は、WO98/19998の20頁またはWO00/34241または国際特許出願EP2005/000400(出願番号)に記載される通りに製剤され得る。
【0057】
とりわけ好ましくは、経口活性なDPP−IV阻害剤である。
【0058】
参照により本明細書中に包含される上記の特許文献または科学文献に開示される全ての物質は、本発明の実施に用いられるDPP−IV阻害剤として有用な可能性があると見なされている。
【0059】
それぞれの場合において、特に化合物の請求項および実施例の最終生成物において、最終生成物、医薬製剤および請求項の主題は、上記文献を参照することにより本明細書中に包含される。
【0060】
5−HT受容体と相互作用する薬剤には、5−HT受容体部分的アゴニスト、5−HT受容体アゴニスト、5−HT受容体アンタゴニストまたは二重5HTおよび5HTアゴニストが含まれる。
【0061】
代表的5−HT受容体部分的アゴニストには、セロトニンの内因性活性より低い活性を有する、米国特許番号第5510353号、とりわけ実施例1から117に記載の化合物が含まれるが、それらに限定されない(対応する本文献の主題は、参照により本明細書中に包含される)。
【0062】
5−HT受容体部分的アゴニストとして好ましい化合物は、例えば、US5510353に記載のものであり、ここで、Rは、Hであり、Zは、−CH=であり、そしてRは、OHまたはC1−6アルコキシである。
【0063】
5−HT受容体部分的アゴニストのさらなる例には、例えば、RS67333(1−(4−アミノ−5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−[1−ブチル−4−ピペリジニル]−1−プロパノン)またはRS67506(1−(4−アミノ−5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−[1−メチルスルホニルアミノ)エチル−4−ピペリジニル]−1−プロパノン)が含まれる。
【0064】
US5510353に記載される特に好ましい化合物は、遊離型または薬学的に許容される塩形態の、式
【化8】

で示される化合物である。本化合物は、3−(5−メトキシ−1H−インドール−3−イル−メチレン)−N−ペンチルカルボジイミドアミド(carbazimidamide)の化学名を有し、テガセロドとして、ならびに商標ZELMACおよびZELNORMの下で公知である。それは、米国特許番号第5510353号および欧州特許番号第505322号の実施例13に記載され、5−HT受容体部分的アゴニストとして開示される。それは、本発明に包含される互変異性体
【化9】

の形態でも存在し得る。好ましい塩形態は、水素マレイン酸塩である。
【0065】
組合せ剤中共薬剤としての5−HT受容体アゴニストには、休止/静止状態下で5−HT受容体を活性化し得る何らかの化合物が含まれる。これらの化合物には、EP−B1−0505322に開示される式Iの化合物、シサプリド、ノルシサプリド、レンザプリド、ザコプリド、モサプリド、プルカロプリド、ブスピロン、ノルシサプリド;Y−34959としも公知の4−アミノ−5−クロロ−2−メトキシ−N−(l−置換プペリジン−4−イル)ベンズアミド;SB205149、SC53116、RS67333、RS67506、BIMU−1、BIMU−8および(S)−RS56532、米国特許出願番号第20040127514号、とりわけ実施例1から22、または米国特許出願番号第20040122043号、とりわけ実施例1から9、または米国特許出願番号第US20040034226号、とりわけ実施例1から30、または米国特許番号第6624162号、とりわけ実施例1から30に記載の化合物が含まれるが、それらに限定されない。様々なイミダゾピリジンである5−HT受容体モジュレーター化合物は、2001年10月22日出願の米国特許出願番号第60/343,371号に開示された。シス−4−アミノ−5−クロロ−N−[1−[3−(4−フルオロフェノキシ)プロピル]−3−メトキシ−4−ピペリジニル]−2−メトキシ−ベンズアミドであるシサプリドは、胃運動促進剤として用いられる(A. Reyntjens et al., Drug Div. Res., 8, 251 (1986)およびCurr. Ther. Res., 36, 1029−1070 (1984)を参照のこと)。前記化合物は、ACENALIN(登録商標)、PREPULSID(登録商標)、RISAMOL(登録商標)、PULSAR(登録商標)およびPROPULSIN(登録商標)のような商標下に国際的に市販されている。
【0066】
5−HT受容体アゴニストまたは部分的アゴニストの好ましい群は、選択性であり;選択性とは、5−HT受容体サブタイプと実質的に結合しないか、または刺激しない化合物を意味する。例えば、テガセロドは、5−HT受容体サブタイプと結合せず、それを刺激しない。
【0067】
組合せ剤1.1または1.2中共薬剤として、または組合せ剤1.3または1.4中第一剤としての使用のための5−HT受容体アンタゴニストには、IUPHAR(Pharmacological Reviews, Vol. 44, p. 157−213,1994)により定義される通り5−HT受容体と結合し、そして5−HT受容体を活性化せず、セロトニンの効果をアンタゴナイズする何らかの化合物が含まれる。化合物が、5−HT受容体アンタゴニストであるかどうかを決定するための関連する試験は、Br. J. Pharm., p. 1593−1599 (1993)に記載の通りのモルモット遠位結腸試験またはArch. Pharmacol., Vol. 343, p. 439−446 (1991)に記載の試験である。代表的な5−HT受容体アンタゴニストには、例えば、ピボセロド;A−85380(Abbott Laboratories)(WO94/08994);SB204070(SmithKline Beecham)(Drugs Fut., 19:1109−1121, 1994);SB207058(Exp. Opin. Invest. Drugs, 3(7):767, 1994);SB207710(Drug Data Report, 15(10):949, 1993);SB205800(Drug Data Report, 15(10):949, 1993);SB203186(Br. J. Pharmacol., 110:1023−1030, 1993);N3389(Nisshin Flour Milling)(Eur. J. Pharmacol., 271:159, 1994);FK1052(藤沢)(J. Pharmacol. Exp. Ther., 265:752, 1993);SC56184(Searle)(R&D Focus, 2(37) 10, 1993);SC53606(Searle/Monsanto)(J. Pharmacol. Exp. Ther. 226:1339,1993);DAU6285(Boerhinger Ingelheim)(Br. J. Pharmacol., 105:973,1992);GR125487(Glaxo)(Br. J. Pharmacol., 113 suppl. 119P & 120P, 1994);GR113808(Br. J. Pharmacol. 110:1172, 1993);RS23597(Syntex)(Bioorg Med. Chem. Lett., 4(20):2477, 1994);RS39604(Br. J. Pharmacol., 115, 1087−1095, 1995);LY0353433(Eli Lilly Co. Ltd.)(J. Pharmacol. Exp. Ther., 277(1), 97−104, 1996);および、R59595(Eur. J. Pharmacol., 212, 51−59, 1992)が含まれる。5−HT受容体アンタゴニストであるピボセロドまたはSB−207266Aは、IBSの処置のためにも示唆されている。
【0068】
二重5HTおよび5HTアゴニストには、レンザプリド(SmithKline Beecham)およびE3620(Eisai)が含まれる。5HTlaアゴニストは、LY315535(Eli Lilly)としても公知である。
【0069】
5−HT受容体と相互作用する薬剤には、5−HT受容体アンタゴニストならびに二重5HTおよび5HTアゴニストが含まれる。
【0070】
5−HT受容体アンタゴニストには、例えばEP29761に記載されるシランセトロン;WO99/17755に記載されるアロセトロン;ラモセトロン;アザセトロン;オンダンセトロン;ドルセトロン;ラモセトロン;グラニセトロン;ミルタザピン;インジセトロン;レリセトロン;Ro−93777;YM−114;タリペキソール;N−3389、ザコプリド、シランセトロン、E−3620、リントプリド、KAE−393、イタセトロン、モサプリド;ドルセトロンおよびトロピセトロン、または米国特許出願番号第US20030158221号、とりわけ実施例1から30に記載の化合物が含まれる。
【0071】
英国特許番号第2209335号は、とりわけ、化合物2,3,4,5−テトラヒドロ−5−メチル−2−[(5−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)メチル]−1H−ピリド[4,3−b]インドール−1−オン(現在、アロセトロンとして公知)、ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物および薬学的に許容される均等物、特にその塩酸塩を開示している。
【0072】
組合せ剤1.1または1.2中共薬剤として、または組合せ剤1.3中第一剤としての使用のための5−HT受容体アンタゴニストおよび5−HT受容体アゴニストまたはアンタゴニストの特徴を示す化合物は、例えば、シサプリドおよびノルシサプリド;BIMU化合物、例えばBIMU1、BIMU8およびDumuis A., et al., Naunyn Schmiedeber’s Arch. Pharmacol., Vol. 343(3), pp. 245−251 (1991)中に開示されるDAU6215(イタセトロンとしても公知); Rizzi, C.A. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., Vol. 261, pp. 412−419 (1992)中に開示されるDAU−6236;および、DAU−6258、Turconi M, et al., J. Med. Chem., Vol. 33(8), pg. 2101−2108 (1990)、安息香酸誘導体(エステル)であるSDZ205−557、Eglen R. M. et al., Proc. Br. Pharmacol. Soc., Vol. 149 (1992);レンザプリド;ザコプリド;SB205149;SC53116;RS67333;RS67506;または、(S)−RS56532、リントプリドである。
【0073】
投与される5−HT受容体と相互作用する薬剤または5−HT受容体と相互作用する薬剤の投与量は、一般的に、処置すべき対象の健康、所望の胃腸処置の程度、併用療法の性質および種類、行っているとすれば、処置の頻度および所望の効果の性質にも依存し得る。概して、薬剤の投与量は、一般的に、1日当たり対象の体重1kg当たり約0.001から約50mg、好ましくは1日当たり対象の体重1kg当たり約0.1から約10mgの範囲で、単一用量または分割用量で投与される。しかしながら、一般的投与量範囲のいくつかの変化はまた、年齢、体重および患者の種類、意図される投与経路、ならびに疾患の進行および重症度または処置すべき状態に依存して必要とされ得る。
【0074】
本発明の方法の実施に必要な5−HT受容体と相互作用する薬剤または5−HT受容体と相互作用する薬剤の一日投与量は、例えば投与方法および処置すべき状態の重症度に依存して変化し得る。指示される一日用量は、経口使用のための活性剤を約1から約200mg、例えば2から30mgまたは2から24mgまたは2から12mgの範囲で、一度にまたは分割投与量で都合良く投与される。
【0075】
DPP−IV阻害剤、好ましくはLAF237またはその薬学的に許容される塩、およびガセロド、シサプリド、ノルシサプリド、レンザプリド、ザコプリド、モサプリド、プルカロプリド、ブスピロン、およびノルシサプリド、またはそれぞれの場合に、その薬学的に許容される塩、とりわけマレイン酸水素テガセロドからなる群から選択される第二活性剤をそれぞれ含む、組み合わせた製剤または医薬組成物のような組合せ剤が好ましい。
【0076】
DPP−IV阻害剤、好ましくはLAF237またはその薬学的に許容される塩、ならびにシランセトロン、ラモセトロン、アザセトロン、オンダンセトロン、ドルセトロン、ラモセトロン、グラニセトロン、ミルタザピン、インジセトロン、レリセトロン、Ro−93777、YM−114、タリペキソール、N−3389、ザコプリド、シランセトロン、E−3620、リントプリド、KAE−393、イタセトロン、モサプリド;ドルセトロンおよびトロピセトロン、またはそれぞれの場合に、その薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つの活性剤をそれぞれ含む、組み合わせた製剤または医薬組成物のような組合せ剤がさらに好ましい。
【0077】
対応する活性成分またはその薬学的に許容される塩はまた、水和物のような、または結晶化に用いられる他の溶媒を含む溶媒和物の形態で用いられ得る。
【0078】
合すべき化合物は、薬学的に許容される塩として存在し得る。これらの化合物が、例えば少なくとも1個の塩基性中心を有するならば、それらは、酸付加塩を形成し得る。対応する酸付加塩はまた、要すればさらに存在する塩基性中心を有しながら形成され得る。酸性基(例えばCOOH)を有する化合物はまた、塩基と塩を形成し得る。
【0079】
これらの全ての市販品は、本発明の併用療法にそれ自体で用いられ得る。
【0080】
一般名または商品名により同定される活性剤の構造は、標準概要“The Merck Index”の現行版またはデータベース、例えばPatents International(例えば、IMS World Publications)から入手され得る。その対応する内容は、参照により本明細書中に包含される。当業者であれば、十分に有効成分を同定することができ、またこれらの参考文献に基づいて、同様に、それらを製造し、インビトロおよびインビボの両方で標準試験モデルにおいて薬学的適応症および特性を試験することができる。
【0081】
DPP−IV阻害剤またはその塩、および(i)から(ii)から選択される少なくとも1個の治療剤の併用投与が、有益な、とりわけ相乗的な治療効果をもたらすのみでなく、併用療法によりもたらされるさらなる有益性をもたらし、本明細書中で開示される組合せ剤に用いられる薬学的に活性な化合物のうち1つだけを適用する単剤療法と比較してさらに驚くべき有益な効果をもたらすという実験的発見は、ことさら驚くべきことである。
【0082】
確立された試験モデル、およびとりわけ本明細書に記載の試験モデルにより、DPP−IV阻害剤と(i)から(ii)から選択される少なくとも1個の治療剤との組合せ剤が、下記に記載の疾患のより効果的な予防、または好ましくは処置をもたらすことを示すことができる。特に、確立された試験モデル、およびとりわけ本明細書に記載の試験モデルにより、本発明の組合せ剤が、下記に記載の疾患のより有効な予防または好ましくは処置をもたらすことを示すことができる。
【0083】
同時に摂取するならば、このことは、本明細書中に記載の多くの組合せ剤について、さらに有益性を高める、とりわけ相乗的な治療効果をもたらすのみでなく、同時処置によりもたらされるさらなる有益性、例えば驚くべき効果の延長、より広範囲に様々な治療処置ならびに、過敏性腸症候群、胃食道逆流疾患、消化不良、糖尿病、とりわけ2型糖尿病、IGTおよび糖尿病、IGT、肥満と関係する疾患および状態に対する驚くべき有益な効果などの結果がもたらされる。
【0084】
用語“増強”は、対応する薬理学的活性または治療的効果をそれぞれ増加することを意味するものとする。本発明の組合せ剤の一成分の、本発明の他の成分の共投与による増強は、一成分単独で達成される効果よりも大きな効果が達成されることを意味するものとする。
【0085】
用語“相乗作用”は、前記薬剤を一緒に摂取するとき、単独で用いられるときの各薬剤の効果の和よりも大きな総併用効果が生じることを意味するものとする。
【0086】
さらに、ヒト患者、とりわけ高齢の患者に関して、2個の錠剤を、時間をずらして、すなわち、より複雑な処置計画に従い摂取するよりも、同時に、例えば食事前に摂取することの方がより簡便であり、容易に記憶できる。より好ましくは、両活性成分を、本明細書に記載の全ての場合において、固定した組合せ剤、すなわち単一錠剤として投与する。単一錠剤を服用することは、同時に2個の錠剤を摂取するよりも取扱いがさらに容易である。さらに、パッケージングを、より少ない労力で達成することができる。
【0087】
関連技術における当業者は、上記および下記に示される治療適応症および有益な効果を証明するための関連および標準動物試験モデルを選択することが十分可能である。
【0088】
本発明に用いられる活性剤の組合せ剤の投与による効果としての薬学的な活性は、例えば、関連技術において公知の対応する薬理学的モデルを用いることにより証明され得る。
【0089】
本発明の組合せ剤のインスリン分泌を増強する特性は、例えば、刊行物T.Ikenoue et al. Biol.Pharm.Bull. 29(4), 354−359 (1997)に開示される通りの下記の方法論により決定され得る。
【0090】
これらの参照文献の対応する主題は、参照により本明細書中に包含される。
【0091】
従って、本発明の組合せ剤は、例えばDPP−IV阻害により、および/または5−HTまたは5−HT受容体と相互作用することにより阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延または処置のために使用され得る。
【0092】
故に、さらなる局面において、本発明は、DPP−IV阻害により、および/または5−HTまたは5−HT受容体と相互作用することにより阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延または処置のための薬剤の製造を目的とした、
i)DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および
ii)5−HT受容体と相互作用する薬剤および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1個の治療剤
を含む組合せ剤の使用に関する。
【0093】
本発明はさらに、DPP−IV阻害により、および/または5−HT受容体または5−HT受容体と相互作用することにより阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延または処置のための方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物にDPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩と、5−HT受容体と相互作用する薬剤および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1個の治療剤;ならびに、少なくとも1個のさらなる薬学的に許容される担体の組合せ剤の組み合わせた有効量を投与することを含む方法に関する。
【0094】
本発明はさらに、DPP−IV阻害により、および/または5−HT受容体または5−HT受容体と相互作用することにより阻害され得る疾患および障害から選択される疾患または状態の予防、進行の遅延または処置のための、DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩と、5−HT受容体と相互作用する薬剤および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1個の治療剤;ならびに、少なくとも1個のさらなる薬学的に許容される担体の組合せ剤を含む医薬組成物に関する。
【0095】
さらなる態様において、本発明は、下記に関する;
1.変化した胃腸運動、過敏性および/または胸焼け、膨満感、術後イレウス、腹痛および不快感を含むが、それらに限定されない分泌障害、早期満腹感、上腹部痛、悪心、嘔吐、腹部膨満感(burbulence)、逆流、腸偽閉塞、肛門失禁、GERD、IBS、消化不良、慢性便秘または下痢、糖尿病性胃疾患、胃不全麻痺、例えば糖尿病性胃不全麻痺、潰瘍性大腸炎、クローン病、それに関係する潰瘍痛および内臓痛から選択される疾患および状態の予防、進行の遅延または処置のための薬剤の製造を目的とした、DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用。
【0096】
2.DPP−IV阻害により、および/または5−HT受容体または5−HT受容体と相互作用することにより阻害され得る疾患または障害の予防、進行の遅延または処置のための方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、有効量のDPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1個のさらなる薬学的に許容される担体を投与することを含む方法。
【0097】
3.変化した胃腸運動、過敏性および/または胸焼け、膨満感、術後イレウス、腹痛および不快感を含むが、それらに限定されない分泌障害、早期満腹感、上腹部痛、悪心、嘔吐、腹部膨満感(burbulence)、逆流、腸偽閉塞、肛門失禁、GERD、IBS、消化不良、慢性便秘または下痢、糖尿病性胃疾患、胃不全麻痺、例えば糖尿病性胃不全麻痺、潰瘍性大腸炎、クローン病、それに関係する潰瘍痛および内臓痛から選択される疾患または障害の予防、進行の遅延または処置のための方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に有効量のDPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
【0098】
前記疾患または状態が、インスリン耐性、グルコース代謝障害、耐糖能異常の状態、空腹時血漿グルコース異常の状態、糖尿病、特に2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性神経障害、勃起不全、月経前症候群、冠動脈心疾患、高血圧症、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、皮膚および結合組織障害下肢潰瘍および潰瘍性大腸炎、内皮機能不全および血管コンプライアンス異常、変化した胃腸運動、過敏性および/または胸焼け、膨満感、術後イレウス、腹痛および不快感を含むが、それらに限定されない分泌障害、早期満腹感、上腹部痛、悪心、嘔吐、腹部膨満感(burbulence)、逆流、腸偽閉塞、肛門失禁、GERD、IBS、消化不良、慢性便秘または下痢、糖尿病性胃疾患、胃不全麻痺、例えば糖尿病性胃不全麻痺、潰瘍性大腸炎、クローン病、それに関係する潰瘍痛および内臓痛から選択される、上記の方法または使用。
【0099】
最も好ましくは、前記疾患または状態が、糖尿病、2型糖尿病、IGTならびに糖尿病と関係する疾患または状態から選択される。
【0100】
最も好ましくは、前記疾患または状態が、過敏性腸症候群(IBS)、胃食道逆流症(GERD)、糖尿病性胃疾患、糖尿病性胃不全麻痺、慢性便秘および消化不良から選択される。
記載した使用または方法に好ましい組合せ剤は、本明細書に記載される。
【0101】
本明細書中に定義される“DPP−IV阻害剤により阻害され得る疾患または状態”には、インスリン耐性、グルコース代謝障害、耐糖能異常の状態、空腹時血漿グルコース異常の状態、糖尿病、特に2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性神経障害、勃起不全、月経前症候群、冠動脈心疾患、高血圧症、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、皮膚および結合組織障害下肢潰瘍および潰瘍性大腸炎、内皮機能不全および血管コンプライアンス異常が含まれるが、それらに限定されない。好ましくは、“DPP−IV阻害剤により阻害され得る疾患または状態”は、グルコース代謝障害、耐糖能異常の状態、空腹時血漿グルコース異常の状態、糖尿病、特に2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害および下肢潰瘍から選択される。
【0102】
本明細書で用いる用語“治療的”は進行中の疾患、障害、または状態の処置において有効であることを意味する。
【0103】
用語“予防的”は、処置すべき疾患、障害または状態の発症または再発の予防を意味する。
【0104】
本明細書で用いる用語“進行の遅延”は、処置すべき疾患の前段階または初期にある患者であって、例えば対応する疾患の前形態であると診断される患者か、または例えば、薬物療法中の状態にあるか、または対応する疾患が発現するであろうと思われる偶発的に生じる状態にある患者への前記組合せ剤の投与を意味する。
【0105】
本明細書で用いる用語“組み合わせた医薬製剤”は、活性成分、例えばテガセロドまたはマレイン酸水素テガセロド、およびDPP−IV阻害剤、好ましくはLAF237が両方とも、同時に、併用してまたは特定の時間制限なしに連続的に別個のものとして患者に投与され、そのような投与は、体内に、好ましくは同時に、治療的有効レベルの2個の化合物を提供することを意味する。一例として、非固定の組合せ剤は、患者に、両方の活性成分を一緒に体内において処置を達成させることを目的とする、それぞれ1個の活性成分を含む2個のカプセルであり得る。
【0106】
“5−HTまたは5−HT受容体と相互作用することにより阻害され得る疾患または状態”は、好ましくは変化した胃腸運動、過敏性および/または分泌障害である。
【0107】
本明細書中、用語“処置”には、疾患を有する危険性のある患者または疾患もしくは障害を有することが予期される患者、ならびに罹患患者の処置を含む、予防的処置または防止的処置、ならびに治療的処置または疾患抑制的処置の両方が含まれる。この用語にはさらに、疾患の進行の遅延のための処置が含まれる。
【0108】
本明細書で用いる用語“変化した胃腸運動、過敏性および/または分泌障害”は、胸焼け、膨満感、術後イレウス、腹痛および不快感、早期満腹感、上腹部痛、悪心、嘔吐、腹部膨満感(burbulence)、逆流、腸偽閉塞、肛門失禁、GERD、IBS、消化不良、慢性便秘または下痢、糖尿病性胃疾患、胃不全麻痺、例えば糖尿病性胃不全麻痺、潰瘍性大腸炎、クローン病、それに関係する潰瘍痛および内臓痛を含むが、それらに限定されない、口から肛門に至る胃腸管に影響を与える症状および状態の一種またはそれ以上が含まれる。
【0109】
本明細書で用いる用語“腹部障害”には、下腹部に影響を与える状態が含まれ、クロム親和性細胞機能、GI分泌、運動性、求心性および遠心性線維活性および/または腹部平滑筋細胞活性の制御、安定化および正常化により処置される状態が含まれるが、それらに限定されない。
【0110】
本明細書で用いる用語“胃食道逆流症”および“GERD”は、胃内容物の食道への逆流により引き起こされる状態の発症、および症状を意味する。これには、びらん性および非びらん性GERD、胸焼けおよびGERDと関係する他の症状が含まれるが、それらに限定されない、GERDの全ての形態/徴候が含まれる。
【0111】
本明細書で用いる用語“過敏性腸症候群”および“IBS”は、顕性腸炎のない様々な程度の腹痛、膨満感、便秘または下痢と関係する、主に小腸および大腸が関係する変化した運動性、過敏性および分泌に関係する機能障害を意味する。
【0112】
本明細書で用いる用語“消化不良”は、主として胃腸障害、または考えられる、潰瘍性疾患、虫垂炎、胆嚢障害、または栄養失調症のような障害に限定されない合併症の、上腹部痛、腹痛、膨満感、早期満腹感、悪心、胸焼けおよび嘔吐の症状により特徴付けられる状態を意味する。
【0113】
本明細書で用いる用語“胃不全麻痺”は、しばしば胃内容物排出遅延として認められる胃における運動異常によってもたらされる胃の麻痺を意味する。これらは、糖尿病、進行性全身性硬化症、拒食症、または筋硬直性ジストロフィーのような疾患の合併症でもあり得る。
【0114】
本明細書で用いる用語“便秘”は、変化したGI運動性、変化した感覚または排出機能、電解質と水の変化した分泌または再吸収のような状態から生じる便排出の低頻度および/または困難により特徴付けられる状態を意味する。
【0115】
本明細書で用いる用語“下痢”は、変化したGI運動性、変化した感覚および電解質と水の分泌または再吸収のような状態からもたらされる、切迫感を伴い、しばしば大量で頻繁な便排出により特徴付けられる状態を意味する。
【0116】
用語“処置する”または“処置”は、生物に影響を与える徴候または疾患の、軽減、緩和および除去を含む医薬と関係する治療的プラス効果の全範囲を包含する。
【0117】
好ましくは、本発明の組合せ剤の組み合わせた治療的有効量の活性剤を、例えば個別に(組み合わせた医薬製剤)または固定した組合せ剤で、同時にまたは任意の順序で連続的に投与することができる。
【0118】
任意の状況下で、異なる作用機序を有する薬物を組み合わせることができる。しかしながら、異なる作用経路を有するが、類似の領域で作用する薬物の何らかの組合せ剤が、必ずしも有利な効果を有する組合せ剤をもたすわけではない。
【0119】
本発明のDPP−IV阻害剤、またはそれぞれの場合に、その薬学的に許容される形態の併用投与が、有益な、とりわけ増強または相乗的な治療効果をもたらすのみではないという実験的発見は、ことさら驚くべき事である。それとは独立して、驚くべき効果の持続、より広範な多様な治療処置、ならびに糖尿病と関係する疾患および状態における驚くべき有益な効果(例えば、体重増加の低下または心臓血管の副作用の低下)のような併用処置によりもたらされるさらなる利点が達成され得る。
【0120】
糖尿病、特に2型糖尿病と関係する疾患、障害または状態には、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症および糖尿病性神経障害、黄斑変性症、冠動脈心疾患、心筋梗塞、糖尿病性心筋症、心筋細胞死、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、卒中、肢虚血、血管再狭窄、下肢潰瘍、血管内皮機能障害および/またはアテローム性動脈硬化症が含まれるが、それらに限定されない。
【0121】
本発明により組合わせるべき個々の薬物がより低用量であるというさらなる利点は、例えば必要な投与量がより少量であるのみでなく、用いる頻度も少ないという投与量を減ずるために用いることができるか、または副作用の出現を軽減するために用いることができる。このことは、処置すべき患者の願望と要望に従う。
【0122】
例えば、本発明の組合せ剤が、とりわけ糖尿病患者の処置における利点、例えば、(糖尿病患者における)または変化した胃腸運動、過敏性および/または分泌障害を有する患者における、心臓血管の負事象の危険性の減少、副作用の危険性の減少、体重増加の制御を提供することが判明している。
【0123】
本発明で用いたDPP−IV阻害剤または5−HTもしくは5−HT受容体と相互作用する薬剤の減少した用量を考慮すると、組合せ剤を一次治療に適するように作製するためのかなりの安全性プロファイルがある。
【0124】
上記および下記の本発明の医薬組成物を、個別使用のためにまたは固定した組合せ剤として、同時使用または任意の順で連続使用するために用いることができる。
【0125】
上記の方法または使用では、DPP−IV阻害剤ならびに5−HT受容体と相互作用する薬剤(複数可)および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤が、固定した組合せ剤または組み合わせた製剤または部分のキットのような本発明の組合せ剤の形態で投与される。
【0126】
本明細書に記載した組合せ剤、方法または使用では、DPP−IV阻害剤が、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンであり、5−HT受容体と相互作用する薬剤が、好ましくはテガセロド、シサプリド、ノルシサプリド、レンザプリド、ザコプリド、モサプリド、プルカロプリド、ブスピロン、ノルシサプリド、またはそれぞれの場合に、その薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0127】
上記の組合せ剤、方法または使用では、DPP−IV阻害剤が、(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチル−アミノアセチル)−2−シアノ−ピロリジンであり、5−HT受容体と相互作用する薬剤が、テガセロド、またはそれぞれの場合に、その薬学的に許容される塩、とりわけマレイン酸水素テガセロドである。
【0128】
本明細書に記載された組合せ剤、方法または使用では、DPP−IV阻害剤が、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンであり、5−HT受容体と相互作用する薬剤(複数可)が、好ましくはシランセトロン、ラモセトロン、アザセトロン、オンダンセトロン、ドルセトロン、ラモセトロン、グラニセトロン、ミルタザピン、インジセトロン、レリセトロン、Ro−93777、YM−114、タリペキソール、N−3389、ザコプリド、シランセトロン、E−3620、リントプリド、KAE−393、イタセトロン、モサプリド、ドルセトロンおよびトロピセトロン、またはそれぞれの場合に、その薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0129】
本発明に従い、DPP−IV阻害剤、ならびに5−HT受容体と相互作用する薬剤(複数可)および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤が共に投与されるとき、かかる投与を、ある時間内に連続してまたは同時に行われ、一般的に同時の方法が好まれる。連続投与に関して、DPP−IV阻害剤、ならびに5−HT受容体と相互作用する薬剤(複数可)および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤を、任意の順に投与することができる。一般的に、かかる投与が経口であることが好ましい。とりわけ、前記投与が経口で、かつ同時であることが好ましい。しかしながら、処置すべき対象が飲み込めないとき、または経口吸収が他に障害されるかまたは望ましくないとき、非経腸投与または経皮投与が適当であり得る。DPP−IV阻害剤、ならびに5−HT受容体と相互作用する薬剤(複数可)および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤を連続して投与するとき、それぞれの投与を同じ方法によるかまたは異なる方法により行うことができる。
【0130】
本発明のさらなる局面は、
(a)第一の単位投与量形態のDPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩の一定量;
(b)第二などの単位投与量形態の、成分(i)から(ii)、またはそれぞれの場合に、適当であるとき、その薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1個の治療剤の一定量;および
(c)該第一、第二などの単位形態を包含するための容器、
を含む、本発明の疾患または障害の予防、進行の遅延または処置のためのキットである。
【0131】
その変形において、本発明は同様に、例えば、その変形において、本発明は同様に、本発明により組み合わせられる成分が、独立して投与され得るか、または成分の異なる量を有する異なる固定した組合せ剤の、すなわち同時にまたは異なる時間点で使用により投与され得るという意味で“複数部分のキット”に関する。複数部分のキットの一部を、例えば同時にまたは、複数部分のキットの任意の一部を、異なる時間点で、同じかまたは異なる時間間隔で、時差をつけて順番に投与することができる。好ましくは、時間間隔は、複数部分の組み合わせた使用での処置された疾患または状態への効果が、成分の任意の1個のみの使用により得られ得る効果より大きいように選択される。
【0132】
故に、本発明はまた、とりわけ本発明の疾患または障害の予防、進行の遅延または処置のための、
(a)第一の単位投与量形態のDPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩の一定量;
(b)5−HT受容体と相互作用する薬剤(複数可)および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤、またはそれぞれの場合に、適当であるとき、その薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1個の治療剤の一定量
を、成分(a)から(b)の2個または3個またはそれ以上の分割単位の形態で含む、複数部分のキットに関する。
【0133】
本発明はさらに、本発明の組合せ剤を、同時、個別または連続使用するための取扱説明書を共に含む商業的パッケージに関する。
【0134】
好ましい態様において、(商業的な)製品は、本明細書に記載の疾患の進行の遅延または処置において、その同時、個別または連続的使用のための取扱説明書と共に、(成分(a)または(b)の2個または3個またはそれ以上の形態で)本発明の組合せ剤、またはその任意の組合せ剤を活性成分として含む商業的パッケージである。
【0135】
本明細書中に記載の好適な例のすべてを、本発明の組合せ剤、組成物、使用、処置法、“複数部分のキット”および商業的パッケージに適用する。
【0136】
これらの医薬製剤は、単独または慣習的な薬学的な補助剤と共のどちらかで薬理学的に活性な化合物を含む製剤と共に、恒温動物への経口などの経腸投与、およびまた経直腸または非経腸投与のためのものである。例えば、前記医薬製剤は、約0.1%から90%、好ましくは約1%から約80%の活性化合物からなる。経腸または非経腸投与のため、およびまた眼への投与ための医薬は、例えば、被覆錠、錠剤、カプセルまたは坐剤およびまたアンプルなどの単位用量形態である。これらは、それ自体公知の方法、例えば常套的な混合法、造粒法、コーティング法、可溶化法または凍結乾燥法を用いて製造される。故に、経口使用のための医薬製剤を、活性化合物(複数可)を固体の賦形剤と組み合わせることにより得ることができ、所望であれば、得られた混合物を造粒し、そして要するかまたは必要であれば、適する補助剤を加えた後、混合物または顆粒を錠剤または被覆錠コアに加工することにより得ることができる。
【0137】
活性化合物の投与量は、投与方法、恒温動物種、年齢および/または個体の状態などの様々な因子に依存して変化し得る。
【0138】
本発明の薬学的組合せ剤の活性成分についての好ましい投与量は、治療的に有効な投与量、とりわけ商業的に利用可能な量である。
【0139】
通常、経口投与の場合、約1mgから約360mgの適当な1日用量が、例えば、約75kgの体重の患者について見積もられる。
【0140】
活性化合物の投与量は、投与方法、恒温動物種、年齢および/または個体の状態などの様々な因子に依存して変化し得る。
【0141】
前記医薬製剤は、適する投与量単位形態、例えばカプセルまたは錠剤の形態で供給され、一定量の、さらなる成分(複数可)と共に合して有効量の、例えば50mgのLAF237を含み得る。
【0142】
上記の本発明の医薬組成物を、同時使用または任意の順での連続使用、個別使用、または固定した組合せ剤として用いることができる。
【0143】
故に、さらなる態様に従い、DPP−IV阻害剤は、5−HT受容体と相互作用する薬剤(複数可)および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤と共に、好ましくは薬学的に許容される担体、ビヒクルまたは希釈剤を含む固定された医薬組成物の形態で投与される。従って、本発明のDPP−IV阻害剤は、慣用の経口、非経腸または経皮投与形態のいずれかで、固定した組合せ剤として5−HT受容体と相互作用する薬剤(複数可)および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤と共に投与され得る。
【0144】
例えば、体重約70kgの温血動物、例えばヒトに投与されるべき式(I)のDPP−IV阻害剤の用量、とりわけ、DPP−IV酵素の阻害に有効な用量は、1日に1人当たり約3mgから約3g、好ましくは約10mgから約1g、例えば約20mgから200mgの、分割された、好ましくは1回から4回の単一用量(それは、例えば同じサイズであり得る)である。通常、小児は、成人用量の約半分を受ける。各個体に必要な用量は、例えば活性成分の血清濃度を測定することにより観察し、最適なレベルに合わすことができる。単一用量には、成人患者1人当たり例えば、10、40または100mgが含まれる。
【0145】
(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンの投与量は、好ましくは1日に10から150mg、最も好ましくは1日に25から150mg、25から100mgまたは25から50mgまたは50から100mgである。経口1日投与量の好ましい例は、25、30、35、45、50、55、60、80または100mgである。活性成分の適用は、1日に3回まで、好ましくは1日に1回または2回行われ得る。
【0146】
本明細書に記載の好ましい5−HT受容体と相互作用する薬剤(複数可)および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤は、適する投与量単位形態、例えば、カプセルまたは錠剤の形態で供給され、治療的有効量、例えば本明細書および先行技術に既に記載の通り約2から約200mgを含み得る。活性成分の適用は、1日に3回まで、好ましくは1日に1回または2回まで行われ得る。同様の好ましい投与量が、固定された組合せについて選択される。
【0147】
本発明の方法の実施に必要なテガセロドの一日投与量は、例えば投与方法および処置すべき状態の重症度に依存して変化し得る。指示される一日用量は、経口使用のための活性剤を約1から約30mg、例えば2から24mgまたは2から12mgの範囲で、一度にまたは分割投与量で都合良く投与される。テガセロドを送達するため用いられる好ましいガレヌス製剤は、参照により本明細書中に包含される国際特許出願WO2003053432、とりわけ実施例1から3、およびWO00/10526に記載される。
【0148】
対応する用量を、例えば、朝、昼または晩に投与することができる。
【0149】
好ましい局面において、本発明は、下記を含むか、または毎日の投与が、下記;
i)25から150mg、または50から100mgのビルダグリプチン、および
ii)1から30mg、または2から12mgのテガセロド、
または、いずれかの場合に、その薬学的に許容される塩
である、本明細書に記載の組合せ剤または使用または方法に関する。
【0150】
本発明は、下記を含むか、または毎日の投与が、下記;
−50mのビルダグリプチンおよび2mgのテガセロド、またはいずれかの場合に、その薬学的に許容される塩、
−50mgのビルダグリプチンおよび6mgのテガセロド、またはいずれかの場合に、その薬学的に許容される塩、
−50mgのビルダグリプチンおよび12mgのテガセロド、またはいずれかの場合に、その薬学的に許容される塩、
−100mgのビルダグリプチンおよび2mgのテガセロド、またはいずれかの場合に、その薬学的に許容される塩、
−100mgのビルダグリプチンおよび6mgのテガセロド、またはいずれかの場合に、その薬学的に許容される塩.
−100mgのビルダグリプチンおよび2mgのテガセロド、またはいずれかの場合に、その薬学的に許容される塩
である、本明細書に記載の組合せ剤または使用または方法に関する。
【0151】
好ましくは、自由な組合せ剤の場合、承認され、市販されている発売された製品についての投与量であることが好ましい。
【0152】
低用量の組合せ剤がとりわけ好ましい。
【0153】
限定を目的としないが、本発明をさらに説明するために、下記の実施例を提供する。
【実施例】
【0154】
実施例1
胃腸および結腸の運動性へのテガセロドおよびLAF237の薬理学的効果
動物の準備:ビーグル犬をこれらの実験に用いる。ハロセン麻酔下で、Pascaud et al.(Am. J. Physiol.,1978, 235: E532−E538)により構築された4個のひずみゲージ(strain−gauge)トランスデューサーを、幽門から5cmの洞腔の漿膜、幽門から10cmの十二指腸、トライツ靱帯から50cmの空腸および回腸−結腸接合部から10cmの近接結腸に縫い付ける。各トランスデューサーを、輪筋層の収縮力を測定するために腸の横軸と並行に記録軸を縫い付ける。前記ひずみゲージワイヤーの遊離末端を、肩甲骨間の背側から外に出すために皮下を通して引き出す。
【0155】
記録:各ひずみゲージのキャリブレーション(calibration)を、移植前に行う。トランスデューサーによって検出された機械的活動を記録する。洞腔、十二指腸、空腸および結腸の運動指数は、Hachet et al.(J. Pharmacol. Meth. (1986) 16: 171−180)の技術に従い決定される。計算された運動指数は、30分間隔の、ベースラインと収縮カーブの間の領域に相当する。
【0156】
治験デザイン:前記イヌをグループに分ける。各グループは、下記のレジメン:1)プラセボ、2)テガセロド、3)LAF237、4)テガセロド+LAF237のうち1つを受ける。異なる用量の化合物またはプラセボを、食事の30分前に絶食を開始したイヌに経口投与する(水は無制限)。異なる用量の化合物またはプラセボ(ビヒクル)を、食事の30分前に絶食を開始したイヌに静脈注射する(水は無制限)。胃腸および結腸の運動性の記録を、食事摂取と共に開始し、合計6時間行う。
【0157】
データ分析:異なる化合物/投与と関係する食事後6時間の運動指数の変化を、洞腔、十二指腸、空腸および結腸のレベルで決定する。
【0158】
テガセロド+LAF237の組合せ剤は、プラセボおよび単独で投与されたいずれかの化合物と比較して胃腸および結腸の運動性を著しく増加し得る。
【0159】
実施例2
圧調節器を用いる拡張による、胃および結腸拡張に対する過敏性ならびに腸の筋緊張へのテガセロドおよびLAF237の効果
1.1.胃の過敏性および緊張(tone)
重さ200−250gのウイスターラットの群を用いる。手術について、前記動物に、腹腔内注射(ip)により0.3mlのアセプロマジン(0.5mg/kg)を前投与し、0.3mlのケタミンを静脈内注射して麻酔する。
【0160】
動物を仰向けに置き、次いでxypho−ombilical開腹手術を行い、胃を、大きな湾曲上の1cmの胃−食道結合部のルーメン上部に導入されたチューブに接続された常置バルーンを備え付ける。腹部を閉じた後、ラットを、俯せに置き、3個のステンレススチール電極の一群(長さ1m−直径270μm)を、Ruckebusch and Fioramonti, Gastroenterol. 68:1500−1508,1975に記載される技術を用いて頸筋中に移植する。電極の遊離末端およびバルーンのカテーテルを首の背部に露出させ、皮膚に取り付けたガラスチューブにより保護する。
【0161】
定圧での胃拡張を、電気的圧調節器(electronic barostat)を用いて行う(Hachet et al., Gastroenterol Clin Biol, 1993, 17, 347−351)。バルーン(5.0−5.5cm長)は、液貯めのないコンドーム(cistern free condom)を用いて作製され、ポリエチレンチューブ(内径1.0mmおよび外径1.8mm、長さ80cm)と縫合される。チューブの末端には、バルーンをより簡単に空にするために穴を開ける。
【0162】
手術後10日目に、2.4cm/分の記録速度にて脳波検査機(Reega VIII, Alvar, Paris, France)で筋電図記録を行う。増幅の短時定数を、選択的スパイクバーストを記録するために用いる(0.03秒)。筋電図活動を、コンピュータ上での積分回路および自動プロットにより20秒毎にまとめる。
【0163】
不健全な胃拡張下で、ラットは身体を伸縮させ、頭を起こし、そして/またはラット自身の側面を観察するために左右に頭の向きを変える。頸筋を収縮させ、筋電図シグナルを記録する。さらに、圧調節器を、胃内圧の永続的な記録のための電位差記録器に接続する。動物をグループに分ける。
【0164】
対照記録を30分間行った後、動物は、下記のレジメン:1)プラセボ、2)テガセロド、3)LAF237、4)テガセロド+LAF237のうち1つを受ける。
【0165】
胃拡張のプロトコールを、30分後に開始する。
【0166】
頸筋の筋電図活動(EANM)は、姿勢の変化と相関しており、胃拡張によりもたらされる痛みに比例する。20秒毎に集めた値を、連続10分間合計する。拡張の各段階について、頸部の活動を、下記の式を用いて決定する:
【数1】

【0167】
痛覚閾値を、頸筋の電気的活動の>100%増加として決定する。
【0168】
胃容積を、拡張の各段階について得られた最大容積として電位差記録器で決定する。痛覚閾値および胃容積を、平均±SEMおよび対応のない値についてスチューデントの“t”検定を用いて比較した値として与える。
【0169】
テガセロドおよびLAF237の医薬的組合せ剤は、顕著に、胃拡張と関係する胃痛を軽減し、プラセボおよび単独で投与される化合物のいずれかと比較して胃の緊張(tone)を増加することができる。
【0170】
2.結腸直腸の過敏性および緊張(tone)
直腸または結腸の緊張および疼痛へのテガセロドおよびLAF237の影響は、連続5分間、階段法(stair−case manner)にて高圧を適用することにより、圧調節器拡張法を用いておこなわれ;その容量を、緊張の変化の評価を与える各圧力に関して測定する。
【0171】
重さ220−250gであり、個別に飼育されたウイスターラットを用いる。その動物に、腹腔内(IP)注射により0.5mg/kgのアセプロマジンを前投与し、100mg/kgケタミンの筋肉内投与により麻酔する。それらを、Ruckebusch and Fioramonti, 1975に記載の技術を用いる筋電図記録用に準備する。ニクロム線電極(長さ60cm、直径80μm)対を、白線から2cm外側の腹部横紋筋中に移植する。電極の遊離末端を、首の背部に露出させ、皮膚に取り付けたプラスチックチューブにより保護する。
【0172】
筋電図記録(時定数:0.03秒)を手術の8日後に開始する。筋電活動の両極記録を、直腸拡張の30分前に開始し、脳波記録機を用いて1時間行う。
【0173】
拡張中の動作による人為的な影響の記録を避けるため、ラットを、拡張の3日前からポリプロピレン製トンネル中に維持して慣らし、そこで拡張およびEMG記録を行う。コンドームからなるバルーン(4cm)を、肛門から5cmの直腸中に挿入し、尾の根本で固定する。圧調節器に接続されたバルーンを、15、30、45および60mmHgの圧力にて次第に空気で膨らませる。各圧力を、5分間適用する。
【0174】
ラット群は、圧調節器拡張プロトコールをそれぞれ受ける。ラット群は、10分前に、1)プラセボ、2)テガセロド、3)LAF237、4)テガセロド+LAF237をIP注入される。各5分間に起こる腹部スパイクバーストの数の統計分析を、二元配置分散分析(two way ANOVA)後に対応する値の比較をスチューデントの“t”検定により行う。P<0.05は、統計的に有意であると見なされる。結腸直腸容積を、平均±SEMおよび対応のない値についてのスチューデントの“t”検定を用いて比較された値として与える。
【0175】
テガセロド+LAF237の医薬的組合せ剤は、顕著に、直腸拡張と関係する直腸および結腸の疼痛を軽減し、プラセボおよび単独で投与される化合物のいずれかと比較して結腸直腸の緊張(tone)を増すことができる。
【0176】
実施例3
テガセロドおよびLAF237の組合せ剤を用いる非びらん性GERDの処置
治験のために選択された患者は、治験にエントリーする3ヶ月前の間に上部消化管主症状として非びらん性GERDを有する患者における標的症状である胸焼け、および少なくとも3日/週起こる胸焼けの病歴を有する患者である。GERDを有し、びらん性食道炎の内視鏡サインを有しない患者が、本治験に含まれる。他の因子のなかで特に、治験のベースライン相(−14日目)にエントリーする1ヶ月前以内に指示用量でのヒスタミンH−受容体アンタゴニスト(HRA)またはPPIで処置される患者、ならびに治験のベースライン相にエントリーする3ヶ月前にPPIの連続使用を必要とする患者は、除外される。
【0177】
前記治験は、1週間のスクリーニング期間および2週間の薬剤なしのベースライン期間、次いで8週間の、二重盲検、プラセボ−制御処置期間からなる。スクリーニング期間中(−21日目から−14日目)、内視鏡検査を、びらん性食道炎の存在のないことを確認するために行う。ベースライン期間中(−14日目から1日目)、GERDの患者の症状を、日誌に文書化する。期間の開始時、HRA、PPI、促進剤および他の無許可薬剤のようなGERD用の薬剤を中止し、患者には、治験中の食事または生活スタイルを変えないように指導する。患者は、症状の制御のための救済薬としてマーロックス錠の摂取を許可される。二重盲検期間に入る患者は、ベースライン期間の最終週の3日またはそれ以上胸焼けを有している。
【0178】
患者を、治験の二重盲検、プラセボ−制御期間中、無作為に等人数群に分ける。治験のこの期間は8週間続き、12種の処置部門がある。各群の患者は、8週間の間、1日2回経口で、下記のレジメンのうちの1種:1)プラセボ、2)テガセロド 0.4mg/日、3)テガセロド 1mg/日、4)テガセロド 4mg/日、5)LAF237 50mg/日、6)テガセロド 0.4mg/日+LAF237 50mg/日、7)テガセロド 1mg/日+LAF237 50mg/日、8)テガセロド 4mg/日+LAF237 50mg/日を受ける。朝晩の食事時間の30分前以内に、上記の12グループについて投与を行う。8週間の間、患者は日誌を付け続け、症状の制御のための救済薬としてマーロックス錠のみを使用する。
【0179】
テガセロドとLAF237の組合せ剤は、プラセボ、テガセロド、およびLAF237単独のいずれかと比較して、治験の二重盲検、プラセボ−制御期間の8週間の間、1週間当たりに起こる胸焼けを顕著に減少し得る。テガセロド組合せ剤はまた、腹痛、膨満感および逆流を含むGERDの他の症状を減少する。さらに、患者は、プラセボ、テガセロド、およびLAF237単独のいずれかと比較して生活の質の顕著な改善を示す。
【0180】
例えば5−HTアゴニストまたは部分的アゴニストを含む本発明の薬学的組合せ剤、例えばテガセロド、およびDPP−IV阻害剤、例えばLAF237はまた、例えばTalley NJ, et alの、Gastroenterol. Intl., 1993, 6(4), 189:211、またはVeldhuyzen van Zanten SJO et alのGut 1999, 45 (Suppl.II), 1169:1177により開示される方法を用いて、臨床的に試験され得る。投与量は、好ましくは1日1回または2回、好ましくは経口投与され得る。
【0181】
上記の実施例を、本発明の疾患および状態を処置するためのDPP−IV阻害剤単剤の効果を証明するために用いることができる。併用療法について本明細書に記載の投与量および製剤を、DPP−IVが単剤療法で用いられるときも適用できる。
【0182】
本発明は、ある好ましい説明(version)についてかなり詳細に記載しているが、他の説明は、本発明に包含される好ましい説明の精神および範囲から逸脱しなければ可能である。本明細書中に示される全ての参考文献および特許(米国および他国)は、全部本明細書中に記載されているように、参照によりその全体を本明細書中に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および
ii)5−HT受容体と相互作用する薬剤および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1個の治療剤
を含む、組合せ剤。
【請求項2】
少なくとも1個のさらなる薬学的に許容される担体を含む、請求項1に記載の組合せ剤。
【請求項3】
組み合わせた製剤または固定した組合せ剤の形態である、請求項1または2に記載の組合せ剤。
【請求項4】
DPP−IV阻害により、および/または5−HT受容体もしくは5−HT受容体と相互作用することにより阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延または処置のため薬剤の製造を目的とした、
i)DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および
ii)5−HT受容体と相互作用する薬剤および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1個の治療剤
を含む、組合せ剤の使用。
【請求項5】
DPP−IV阻害により、および/または5−HT受容体もしくは5−HT受容体と相互作用することにより阻害され得る疾患または障害の予防、進行の遅延または処置のための方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩と、5−HT受容体と相互作用する薬剤および/または5−HT受容体と相互作用する薬剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1個の治療剤;ならびに、少なくとも1個のさらなる薬学的に許容される担体の組合せ剤の共同的有効量を投与することを含む、方法。
【請求項6】
前記疾患または状態が、インスリン耐性、グルコース代謝障害、耐糖能異常の状態、空腹時血漿グルコース異常の状態、糖尿病、特に2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性神経障害、勃起不全、月経前症候群、冠動脈心疾患、高血圧症、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、皮膚および結合組織障害、下肢潰瘍および潰瘍性大腸炎、内皮機能不全および血管コンプライアンス異常、変化した胃腸運動、過敏性および/または胸焼け、膨満感、術後イレウス、腹痛および不快感を含むが、それらに限定されない分泌障害、早期満腹感、上腹部痛、悪心、嘔吐、腹部膨満感(burbulence)、逆流、腸偽閉塞、肛門失禁、GERD、IBS、消化不良、慢性便秘または下痢、糖尿病性胃疾患、胃不全麻痺、例えば糖尿病性胃不全麻痺、潰瘍性大腸炎、クローン病、それに関係する潰瘍痛および内臓痛から選択される、請求項5または6に記載の方法または使用。
【請求項7】
前記DPP−IV阻害剤が、(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチル−アミノアセチル)−2−シアノ−ピロリジン、ビルダグリプチン、MK−0431、GSK23A、サクサグリプチン、3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミド、またはそれぞれの場合に、その薬学的に許容される塩から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項8】
前記DPP−IV阻害剤が、ビルダグリプチンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項9】
前記5−HT受容体と相互作用する薬剤が、好ましくは、テガセロド、シサプリド、レンザプリド、ザコプリド、モサプリド、プルカロプリド、ブスピロンおよびノルシサプリド、またはそれぞれの場合に、その薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項10】
前記5−HT受容体と相互作用する薬剤が、テガセロド、またはそれぞれの場合に、その薬学的に許容される塩、とりわけマレイン酸水素テガセロドである、請求項1から9のいずれか一項に記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項11】
前記5−HT受容体と相互作用する薬剤が、好ましくは、シランセトロン(cilansetron)、ラモセトロン、アザセトロン、オンダンセトロン、ドルセトロン、ラモセトロン、グラニセトロン、ミルタザピン、インジセトロン、レリセトロン、Ro−93777、YM−114、タリペキソール、N−3389、ザコプリド、E−3620、リントプリド、KAE−393、イタセトロン、モサプリド;ドルセトロンおよびトロピセトロン、またはそれぞれの場合に、その薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項12】
変化した胃腸運動、過敏性および/または胸焼け、膨満感、術後イレウス、腹痛および不快感を含むが、それらに限定されない分泌障害、早期満腹感、上腹部痛、悪心、嘔吐、腹部膨満感(burbulence)、逆流、腸偽閉塞、肛門失禁、GERD、IBS、消化不良、慢性便秘または下痢、糖尿病性胃疾患、胃不全麻痺、例えば糖尿病性胃不全麻痺、潰瘍性大腸炎、クローン病、それらに関係する潰瘍痛および内臓痛から選択される疾患および障害の予防、進行の遅延または処置のための薬剤の製造を目的とした、DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項13】
変化した胃腸運動、過敏性および/または胸焼け、膨満感、術後イレウス、腹痛および不快感を含むが、それらに限定されない分泌障害、早期満腹感、上腹部痛、悪心、嘔吐、腹部膨満感(burbulence)、逆流、腸偽閉塞、肛門失禁、GERD、IBS、消化不良、慢性便秘または下痢、糖尿病性胃疾患、胃不全麻痺、例えば糖尿病性胃不全麻痺、潰瘍性大腸炎、クローン病、それに関係する潰瘍痛および内臓痛から選択される疾患または障害の予防、進行の遅延または処置のための方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に有効量のDPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項14】
前記DPP−IV阻害剤が、(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2イル)アミノ]エチル−アミノアセチル)−2−シアノ−ピロリジン、ビルダグリプチン、MK−0431、GSK23A、サクサグリプチン、3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミド、またはそれぞれの場合に、その薬学的に許容される塩から選択される、請求項12に記載の使用または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記DPP−IV阻害剤が、ビルダグリプチンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項12に記載の使用または請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ビルダグリプチンが、25から150mg、または50から100mgの1日量で投与される、請求項1から15のいずれか一項に記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項17】
テガセロドが、1から30mg、または2から12mgの1日量で投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項18】
i)25から150mg、または50から100mgのビルダグリプチン、および
ii)1から30mg、または2から12mgのテガセロド、
またはいずれかの場合に、その薬学的に許容される塩を含む、請求項3に記載の組合せ剤。
【請求項19】
i)50mgのビルダグリプチン、および
ii)2、6または12mgのテガセロド、
またはいずれかの場合に、それらの薬学的に許容される塩を含む、請求項18に記載の組合せ剤。
【請求項20】
iii)100mgのビルダグリプチン、および
iv)2、6または12mgのテガセロド、
またはいずれかの場合に、それらの薬学的に許容される塩を含む、請求項18に記載の組合せ剤。
【請求項21】
1日投与が、
i)25から150mg、または50から100mgのビルダグリプチン、および
ii)1から30mg、または2から12mgのテガセロド、
またはいずれかの場合に、それらの薬学的に許容される塩である、請求項4に記載の使用または請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2008−506651(P2008−506651A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520755(P2007−520755)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007636
【国際公開番号】WO2006/005613
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】