説明

DSRCシステム

【課題】ユーザは車載器の無線通信機能をチェックする専用チェッカを用いることなく、車載器の無線通信機能の状態を知ることができるDSRCシステムを得る。
【解決手段】路上機は、複数の車載器との通信により算出された平均通信時間を車載器1に通知し、車載器1は、路上機との通信時に、通信時間を演算し、この演算した通信時間と、路上機から通知された平均通信時間とにより、演算した通信時間の誤差量を算出し、この誤差量に基づき、車載器1の通信回路3及びアンテナ2の無線通信機能を診断し、診断結果をユーザに通知することにより、ユーザは車載器1の取り付け業者の専用チェッカを用いなくても、車載器1の無線通信機能の状態を知ることができるとともに、実環境における無線通信機能の状態を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)のETC(Electronic Toll Collection:道路自動料金収受)システムなどに用いられるDSRC(Dedicated Short−Range Communication:狭域通信)システムに関し、とくに車載器が車両に取り付けられた状態で、路車間通信を利用して車載器の無線通信機能を診断するDSRCシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、DSRCを利用したサービスが普及し始めている。例えば、ETCシステムが既に実用化されている。ETC車載器の普及台数は、2005年6月に700万台を突破した。ETCシステム以外にも、駐車場、ガソリンスタンド、ドライブスルーでの決済サービス等が実用化されつつあり、今後、DSRCサービスを利用する車載器が普及していくことが予想される。そのため、路車間通信の信頼性が確保されることが重要となっている。
一般に、車載器は、自己診断機能を有しており、電源投入時にICカードの読取り機能や無線通信部などの車載器内部の機能を検査することができるように構成されている。
また、車両に接続後の車載器における無線通信機能の状態は、専用のチェッカでチェックすることができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−223650号公報(第3〜5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の車載器では、車載器内部の状態を自己診断できるものの、車載器を車両に取り付けた状態で、車載器の無線通信機能が、実際に路上機と通信できる状態であるかどうかを診断することができない、という問題があった。
また、前述の専用チェッカは、一般のユーザが購入するには高価であるし、通常は車載器の取り付け業者やディーラーしか所有していない。よって、一般のユーザ自身が専用チェッカを用いて車載器の無線通信機能を検査することはなかった。
【0005】
また、前述の専用チェッカでは、実際の走行時における路車間通信を模擬できない。これは、路上に設置されている路上機は、その周りの建物等によって電波環境が悪い領域も存在するからである。その電波環境は、路上機によって様々である。
路上機のもつ電界強度の分布の一例として、電界強度が−55dBm〜−60dBmである領域は、路上機側から16mあり、電界強度が−60dBmから−65dBmである領域は、路上機側から25mあり、電界強度が−65dBm〜−70dBmの領域は、路上機側から36mあるとする。一方、車両の走行速度を例えば時速20kmとする。
この場合に、今、上述の電界強度の分布を有する路上機のもとを、車載器を搭載した車両が、時速20kmで走行した場合、電界強度が−55dBm〜−60dBmである領域内を走行できる時間は、約2.9秒である。また、電界強度が−60dBmから−65dBmである領域内を走行できる時間は約4.5秒である。また、電界強度が−65dBm〜−70dBmの領域内を走行できる時間は約6.5秒である。
ここで、車載器の入力感度が−63dBmであるとすると、路車間が接続できる時間は、約4.5秒である。しかし、車載器の入力感度が劣化し、例えば−59dBmとなれば、この場合において路車間が接続できる時間は、約2.9秒と短くなってしまう。
【0006】
一般に、車載器の入力感度は、工場出荷前に検査されているが、車載器を車両に取付け、実際に運用している路上機と通信させて検査しているわけではない。
また、このように車載器の無線通信機能が劣化していた場合でも、車載器と前述の専用チェッカとの間で無線通信が行える状態であれば、前述の専用チェッカは、車載器の無線通信機能を異常なしと判定してしまう。つまり、専用チェッカで車載器の無線通信機能に異常がみられなくても、実際の路上機との通信に失敗する可能性があるのである。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、ユーザは車載器の無線通信機能をチェックする専用チェッカを用いることなく、車載器の無線通信機能の状態を知ることができるDSRCシステムを得ることを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わるDSRCシステムにおいては、路上に設置された路上機と車両に搭載された車載器との間でDSRC通信により情報の授受を行うDSRCシステムにおいて、
路上機は、通信に要する所定の物理量の基準値を車載器に通知し、
車載器は、通信を行う無線通信手段、通信時に、通信に要する所定の物理量を演算するとともにこの演算した所定の物理量と路上機から通知された所定の物理量の基準値とに基づき、演算した所定の物理量の誤差を算出する演算手段、この演算手段により算出された誤差に基づき無線通信手段の状態を診断する診断手段、及びこの診断手段により診断された無線通信手段の状態をユーザに通知する通知手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、以上説明したように、路上に設置された路上機と車両に搭載された車載器との間でDSRC通信により情報の授受を行うDSRCシステムにおいて、
路上機は、通信に要する所定の物理量の基準値を車載器に通知し、
車載器は、通信を行う無線通信手段、通信時に、通信に要する所定の物理量を演算するとともにこの演算した所定の物理量と路上機から通知された所定の物理量の基準値とに基づき、演算した所定の物理量の誤差を算出する演算手段、この演算手段により算出された誤差に基づき無線通信手段の状態を診断する診断手段、及びこの診断手段により診断された無線通信手段の状態をユーザに通知する通知手段を備えたので、ユーザは車載器の取り付け業者の専用チェッカを用いなくても、車載器の無線通信手段の状態を知ることができるとともに、実環境における無線通信手段の状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、図を参照して、実施の形態1について説明する。
図1は、この発明の実施の形態1によるDSRC車載器を示すブロック構成図である。
図1において、DSRC車載器(以下、単に車載器ともいう)1は、アンテナ2と、アンテナ2を介してDSRC通信を行う通信回路3と、CPU4と、不揮発性メモリであるEEPROM5と、ヒューマンインターフェイスを形成するHMI機能6と、車両側電源11に接続され、DSRC車載器1に電源供給する電源回路10と、外部装置13に接続される外部装置I/F12と、ICカード16に接続されるICカードI/F15と、ICカードI/F15及びCPU4間に配置され、セキュリティ管理を行うSAM(Security Apprication Module)14とにより構成される。
なお、アンテナ2と通信回路3は、無線通信手段を構成する。
HMI機能6は、音量変更ボタンや無線通信機能診断結果要求ボタンなどの操作手段7と、スピーカなどの音出力手段8と、LEDなどの光出力手段9とを有している。電源回路10は、車両側電源11と接続され、外部装置I/F12は、カーナビゲーションなどの外部機器13に接続される。ICカードI/F15は、ICカード16と接続される。
CPU4は、通信回路3、EEPROM5、HMI機能6、電源回路10、外部装置I/F12、SAM14に接続されて、DSRC車載器の動作を制御する。CPU4は、車載器1と路上機との通信接続から切断までの通信時間A(通信に要する所定の物理量)を演算する演算機能(演算手段)を備える。また、CPU4は、この通信時間Aと、路上機より受信した平均通信時間B(通信に要する所定の物理量の基準値)との誤差である通信時間誤差量Cを演算する演算機能(演算手段)を備える。また、通信時間誤差量Cに基づいて、車載器1の無線通信機能の状態を診断する診断機能(診断手段)を備える。さらに、HMI機能6または外部機器13を用いて、診断機能により診断された車載器1の無線通信機能(無線通信手段)の状態を通知する通知機能(通知手段)を備えている。
【0011】
図2は、この発明の実施の形態1によるDSRC車載器が、無線通信機能の診断を行う場合の手順を示すフローチャートである。
次に、図2を用いて実施の形態1によるDSRC車載器の動作について説明する。
DSRC車載器1を搭載した車両において、車両側電源11からDSRC車載器1の電源回路10に電源が供給されている状態で、車両が路上機とのDSRC通信領域内に進入したとする。車載器1は、路上機との通信接続直後(ステップS101)に、通信時間Aの測定を開始する(ステップS102)。路車間の通信接続後、路上機は車載器1に対して、所定の通信時間を示す値である平均通信時間Bを送信する。この平均通信時間Bとは「路上機を通過した複数の車載器から得た、通信接続から通信切断までの平均値」である。車載器1は、平均通信時間Bを受信する(ステップS103)。
【0012】
車載器1は、通信終了(ステップS104)とともに、通信時間Aの測定を終える(ステップS105)。通信終了後、車載器1は、路上機から受信した平均通信時間Bを基準として、車載器が測定した通信時間Aとの通信時間誤差量Cを求める(ステップS106)。この求めた通信時間誤差量Cによって、例えば、車載器1の受信感度の低下により、車載器1と路上機との通信可能領域が減少したことが判断できるなど、車載器1の無線通信機能を診断することができる。通信時間誤差量Cが許容範囲を越えていた場合(ステップS107)、車載器1の無線通信機能に異常があるとの診断結果を音声、ブザー、光り等を出力する音出力手段8及び光出力手段9などのHMI機能6を用いてユーザに通知する(ステップS108)。
【0013】
このように、実施の形態1によれば、車載器に通信時間Aを演算する機能をもたせ、路上機から通知される平均通信時間Bとの通信時間誤差量Cから車載器の無線通信機能を診断させる構成としたので、ユーザは、車載器の取付け業者の専用チェッカを用いなくても、車載器の無線通信機能の状態を知ることができる。
また、実環境において無線通信機能の診断を行う構成としたので、専用チェッカよりも信頼性の高い診断結果を得ることができ、無線通信機能の劣化が原因で起る通信失敗を防止することができる。
【0014】
実施の形態2.
実施の形態1は、通信開始から切断までを路車間の通信可能領域と考え、車載器が測定した通信時間Aに基づき車載器の無線通信機能の診断を行う構成としているが、車両の移動速度が著しく速い(または遅い)場合は、車載器が測定する通信時間Aが著しく短く(または長く)なり、正確な診断が行えない場合がある。このため、実施の形態2は、車両の速度によらず、無線通信機能の診断が行えるようにしたものである。
以下、図を参照して、実施の形態2について説明する。
なお、実施の形態2のDSRC車載器の構成は、図1と同じである。ただし、実施の形態2では、CPU4は、車載器1と路上機との通信接続から切断までの間に路上機から受信したデータ量の総和E(通信に要する所定の物理量)を演算するとともに、この受信データ量の総和Eと、路上機より別途送られる、路上機が送信する総データ量である所定のデータ量を示す値D(通信に要する所定の物理量の基準値)との誤差を演算し、誤差量Fを算出する演算機能(演算手段)を備える。また、誤差量Fに基づいて、車載器1の無線通信機能の状態を診断する診断機能(診断手段)を備える。さらに、HMI機能6または外部機器13を用いて、診断機能により診断された車載器1の無線通信機能(無線通信手段)の状態を通知する通知機能(通知手段)を備えている。
【0015】
図3は、この発明の実施の形態2によるDSRC車載器が、無線通信機能の診断を行う場合の手順を示すフローチャートである。
次に、図3を用いて、実施の形態2によるDSRC車載器の動作について説明する。
DSRC車載器1を搭載した車両において、車両側電源11からDSRC車載器1の電源回路10に電源が供給されている状態で、車両が路上機とのDSRC通信領域内に進入したとする。路車間の通信接続(ステップS201)後、路上機は、車載器1に対して、所定のデータ量を示す値Dを送信する。ここで、所定のデータ量を示す値Dとは、「本路上機の通信領域内において、通信良好で再送を行わなかった場合に、本路上機が車載器に対して送信する総データ量を示す値」である。
【0016】
車載器1は、路上機から所定のデータ量を示す値Dを受信すると(ステップS202)、それ以降、通信切断まで路上機からの受信データ量の総和Eを計算する(ステップS203)。通信終了時(ステップS204)、車載器は、路上機から受信したデータ量の総和Eの計算を終了する(ステップS205)。
車載器は、所定のデータ量を示す値Dを基準にして、受信データ量の総和Eとの誤差量Fを算出する(ステップS206)。この受信データ量の誤差量Fから、例えば、車載器1の送信出力の低下により、路上機が再送したため、受信したデータ量の総和Eが大きくなったことが判断できるなど、車載器1の無線通信機能を診断することができる。車載器1は、受信データ量の誤差量Fが許容範囲を越えていた場合(ステップS207)、車載器1の通信機能に異常があるとの診断結果を音声、ブザー、光り等を出力する音出力手段8及び光出力手段9などのHMI機能6を用いてユーザに通知する(ステップS208)。
【0017】
このように、実施の形態2によれば、車載器に路上機からの受信データの総和Eを演算する機能をもたせ、路上機から通知される所定のデータ量を示す値Dとの誤差量Fから車載器の無線通信機能を診断させる構成としたので、実環境において、車両の速度によらず、車載器の無線通信機能の診断を行うことができる。
【0018】
実施の形態3.
実施の形態2は、車載器に路上機からの受信データの総和Eを演算する機能をもたせ、路上機から通知される所定のデータ量を示す値Dとの誤差量Fから車載器の無線通信機能を診断させる構成としたが、通信接続から切断までに複数のアプリケーションが実行されることもあり、この場合には、路上機は通信開始時に、「本路上機の通信領域内において、通信良好で再送を行わなかった場合に、本路上機が車載器に対して送信する総データ量を示す値」を明確にすることができず、したがって、正確な診断が行えない。そのため、実施の形態3は、同一路上機で複数のアプリケーションが実行されても、無線通信機能の診断が行えるようにしたものである。
以下、図を参照して、実施の形態3について説明する。
なお、実施の形態3のDSRC車載器の構成は、図1と同じである。ただし、実施の形態3では、CPU4の演算機能は、一つのアプリケーション当りの通信時間(通信に要する所定の物理量)を演算し、これにより、路上機から通知された一つのアプリケーション当りの平均通信時間(通信に要する所定の物理量の基準値)との誤差量を演算して、無線通信機能の状態を診断し、通知するようにしている。
【0019】
図4は、この発明の実施の形態3によるDSRC車載器が、無線通信機能の診断を行う場合の手順を示すフローチャートである。
次に、図4を用いて、実施の形態3によるDSRC車載器の動作について説明する。
DSRC車載器1を搭載した車両において、車両側電源11からDSRC車載器1の電源回路10に電源が供給されている状態で、車両が路上機とのDSRC通信領域内に進入したとし、路車間が通信接続したとする(ステップS301)。通信接続後、路上機は、車載器1に対して、アプリケーション開始通知を送信し、車載器1がアプリケーション開始通知を受信することで、アプリケーションが開始される(ステップS302)。車載器1は、アプリケーション開始通知の受信と共に、アプリケーション通信時間Gの測定を開始する(ステップS303)。路上機は、所定の通信時間を示す値Hを送信する。ここで、所定の通信時間を示す値Hとは、「本路上機において、これから実行するアプリケーションの開始通知を送信してからアプリケーション終了通知を受信するまでに要する通信時間の平均値を示す値」である。
【0020】
その後、車載器1は、アプリケーションを実行し(ステップS305)、路上機からのアプリケーション終了通知の受信によって、アプリケーションを終了する(ステップS306)。車載器1は、アプリケーションの終了と共に、アプリケーション通信時間Gの測定を終える(ステップS307)。車載器1は、路上機から受信した所定の通信時間を示す値Hをもとに、アプリケーション通信時間Gとの誤差量Iを算出する(ステップS308)。この誤差量Iによって、例えば、車載器1の受信感度の低下により、車載器1と路上機との通信可能領域が減少したことが判断できるなど、車載器1の無線通信機能を診断することができる。
車載器1は、誤差量Iが許容範囲を越えていた場合(ステップS309)、車載器1の無線通信機能に異常があるとの診断結果を音声、ブザー、光り等を出力する音出力手段8及び光出力手段9などのHMI機能6を用いてユーザに通知する(ステップS310)。
【0021】
このように、実施の形態3によれば、車載器に1つのアプリケーションの開始から終了までの通信時間Gを演算する機能をもたせ、路上機から通知される所定の通信時間を示す値Hとの誤差量Iから車載器の無線通信機能を診断させる構成としたので、実環境において、同一路上機で複数のアプリケーションが実行されても、車載器の無線通信機能の診断が行うことができる。
【0022】
実施の形態4.
実施の形態3は、車載器に1つのアプリケーションの開始から終了までの通信時間Gを演算する機能をもたせ、路上機から通知される所定の通信時間を示す値Hとの誤差量Iから車載器の無線通信機能を診断させる構成としたが、各メーカの車載器によって車載器内部でのデータ処理速度が異なるため、アプリケーション通信時間が長く(または短く)なり、正確な診断が行えない場合がある。このため、実施の形態4は、アプリケーション通信時間の大小によらず、無線通信機能の診断が行えるようにしたものである。
以下、図を参照して、実施の形態4について説明する。
なお、実施の形態4のDSRC車載器の構成は、図1と同じである。ただし、ただし、実施の形態4では、CPU4の演算機能は、一つのアプリケーション当りの受信データ量の総和(通信に要する所定の物理量)を演算し、これにより、路上機から通知された一つのアプリケーション当りの送信総データ量(通信に要する所定の物理量の基準値)との誤差量を演算して、無線通信機能の状態を診断し、通知するようにしている。
【0023】
図5は、この発明の実施の形態4によるDSRC車載器が、無線通信機能の診断を行う場合の手順を示すフローチャートである。
次に、図5を用いて、実施の形態4によるDSRC車載器の動作について説明する。
DSRC車載器1を搭載した車両において、車両側電源11からDSRC車載器1の電源回路10に電源が供給されている状態で、車両が路上機とのDSRC通信領域内に進入したとし、路車間が通信接続したとする(ステップS401)。通信接続後、路上機は、車載器1に対して、アプリケーション開始通知を送信し、車載器1がアプリケーション開始通知を受信することで、アプリケーションが開始される(ステップS402)。アプリケーション開始後、路上機は、車載器1に対して、所定のデータ量を示す値Jを送信する。ここで、所定のデータ量を示す値Jとは、「本路上機の通信領域内において、通信良好で再送を行わなかった場合に、本路上機がこれから実行するアプリケーションを完了するために車載器に送信すべき総データ量を示す値」である。
【0024】
車載器1は、路上機から所定のデータ量を示す値Jを受信すると(ステップS403)、それ以降、実行中のアプリケーション終了通知を受信するまで、路上機からの受信データ量の総和Kを計算する(ステップS404)。車載器1は、アプリケーションを実行してゆき(ステップS405)、路上機からアプリケーション終了通知を受信すると(ステップS406)、車載器1は、路上機から受信したデータ量の総和Kの計算を終了する(ステップS407)。車載器1は、所定のデータ量を示す値Jを基準にして、受信データ量の総和Kとの誤差量Lを算出する(ステップS408)。受信データ量の誤差量Lから、例えば、車載器1の送信出力の低下により、路側機が再送してきたため、受信したデータ量の総和Lが大きくなったことが判断できるなど、車載器1の無線通信機能を診断することができる。
車載器1は、受信データ量の誤差量Lが許容範囲を越えていた場合(ステップS409)、その差によって、車載器1の無線通信機能に異常があるとの診断結果を音声、ブザー、光り等を出力する音出力手段8及び光出力手段9などのHMI機能6を用いてユーザに通知する(ステップS410)。
【0025】
このように、実施の形態4によれば、車載器に1つのアプリケーションの開始から終了まで路上機から受信するデータ量の総和Kを演算する機能をもたせ、路上機から通知される所定のデータ量を示す値Jとの誤差量Lから車載器の無線通信機能を診断させる構成としたので、実環境において、車載器内部のデータ処理時間によらず、車載器の無線通信機能の診断が行うことができる。
【0026】
実施の形態5.
実施の形態4は、車載器に1つのアプリケーションの開始から終了まで路上機から受信するデータ量の総和Kを演算する機能をもたせ、路上機から通知される所定のデータ量を示す値Jとの誤差量Lから、車載器の無線通信機能を診断させる構成としたが、この場合、路車間通信を行った直後にしか、診断結果をユーザに通知できない。そのため、実施の形態5は、路車間通信時以外でも、ユーザに診断結果を通知できるようにしたものである。
以下、図を参照して、実施の形態5について説明する。
なお、実施の形態5のDSRC車載器の構成は、図1と同じである。
【0027】
図6は、この発明の実施の形態5によるDSRC車載器が、無線通信機能の診断を行う場合の手順を示すフローチャートである。
次に、図6を用いて、実施の形態5によるDSRC車載器の動作について説明する。
DSRC車載器1を搭載した車両において、車両側電源11からDSRC車載器1の電源回路10に電源が供給されている状態で、車両が路上機とのDSRC通信領域内に進入したとし、路車間が通信接続からアプリケーション実行、通信切断、そして車載器1の無線通信機能の診断を行ったとする(ステップS501)。このとき車載器1は、診断結果をEEPROM5に記録する(ステップS502)。ユーザが操作手段7によって、診断結果通知要求をした場合(ステップS503)、CPU4は、EEPROM5に格納されている診断結果を読み出し(ステップS504)、その診断結果を通知機能により音声、ブザー、光り等を出力する音出力手段8及び光出力手段9などのHMI機能6を用いてユーザに通知する(ステップS505)。
なお、ステップS501での車載器1の無線通信機能の診断は、実施の形態1〜4のいずれかの方法によるものとする。
また、診断結果を保存するメモリは、EEPROM5に限らず、フラッシュメモリなど不揮発性のメモリであればよい。
【0028】
このように、この実施の形態5によれば、車載器の無線通信機能の診断が行われる度に、その診断結果をEEPROM5に記録する構成としたので、路車間通信終了直後でなくても、ユーザが診断結果を要求した時に、車載器は、診断結果をユーザに通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施の形態1〜5によるDSRC車載器を示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるDSRC車載器が、無線通信機能の診断を行う場合の手順を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2によるDSRC車載器が、無線通信機能の診断を行う場合の手順を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態3によるDSRC車載器が、無線通信機能の診断を行う場合の手順を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態4によるDSRC車載器が、無線通信機能の診断を行う場合の手順を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態5によるDSRC車載器が、無線通信機能の診断を行う場合の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
1 DSRC車載器
2 アンテナ
3 通信回路
4 CPU
5 EEPROM
6 HMI装置
7 操作手段
8 音出力手段
9 光出力手段
10 電源回路
11 車両側電源
12 外部装置I/F
13 外部装置
14 SAM
15 ICカードI/F
16 ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路上に設置された路上機と車両に搭載された車載器との間でDSRC通信により情報の授受を行うDSRCシステムにおいて、
上記路上機は、通信に要する所定の物理量の基準値を上記車載器に通知し、
上記車載器は、上記通信を行う無線通信手段、上記通信時に、上記通信に要する所定の物理量を演算するとともにこの演算した所定の物理量と上記路上機から通知された所定の物理量の基準値とに基づき、上記演算した所定の物理量の誤差を算出する演算手段、この演算手段により算出された上記誤差に基づき上記無線通信手段の状態を診断する診断手段、及びこの診断手段により診断された上記無線通信手段の状態をユーザに通知する通知手段を備えたことを特徴とするDSRCシステム。
【請求項2】
上記路上機が上記車載器に通知する上記通信に要する所定の物理量の基準値は、上記路上機を通過した複数の車載器から得られた通信時間の平均値であり、上記車載器の演算する上記通信に要する所定の物理量は、上記車載器が上記路上機と通信した通信時間であることを特徴とする請求項1記載のDSRCシステム。
【請求項3】
上記路上機が上記車載器に通知する上記通信に要する所定の物理量の基準値は、上記通信で上記路上機から上記車載器に送信する総データ量であり、上記車載器の演算する上記通信に要する所定の物理量は、上記通信で上記車載器が上記路上機から受信した受信データ量であることを特徴とする請求項1記載のDSRCシステム。
【請求項4】
上記路上機が上記車載器に通知する上記通信に要する所定の物理量の基準値は、一つのアプリケーションについての上記通信に要する所定の物理量の基準値であり、上記車載器の演算する上記通信に要する所定の物理量は、上記アプリケーションについての上記通信に要する所定の物理量であることを特徴とする請求項2または請求項3記載のDSRCシステム。
【請求項5】
上記車載器は、上記診断手段により診断された上記無線通信手段の状態を記憶する不揮発性メモリを備え、上記車載器は、ユーザからの要求に応じて、上記無線通信手段の状態を上記不揮発性メモリから読出し、上記通知手段によりユーザに通知することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のDSRCシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−110401(P2007−110401A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298868(P2005−298868)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】