説明

DSRC車載器

【課題】運転者が情報の格納方法を設定することができ、これにより通知された情報を再確認できるようにしたDSRC車載器を得る。
【解決手段】路上機との間でDSRC通信を行う無線通信制御部2と、この無線通信制御部2により路上機から受信した情報を運転者が認識できる状態で出力する報知装置7と、路上機から受信した情報を格納するメモリと、運転者が路上機から受信した情報のメモリへの格納方法を示す設定を入力するHMI5と、このHMI5により入力された設定に基づき、路上機から受信した情報のメモリへの格納方法を判定する優先度判定装置9と、これらを制御するマイコン3とにより構成され、優先度判定装置9の判定に基づき、路上機から受信した情報がメモリに格納されるので、運転者が情報のメモリへの格納方法を設定することができ、運転者が残しておきたい情報をDSRC車載器1に残しておくことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)のETC(Electronic Toll Collection:道路自動料金収受)システムなどに用いられるDSRC(Dedicated Short−Range Communication:狭域通信)車載器に関し、とくに情報の格納方法を設定するようにしたDSRC車載器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のDSRC車載器においては、マイコンにより制御され、アンテナを介して、路上機と無線データの送受信を行う無線通信制御部と、ICカードと接続される物理的装着部を有し、料金収受に必要な情報を読み取る記憶媒体インターフェイスと、運転者の操作を入力する機器であるヒューマンインターフェイス(以後、HMIとする)と、運転者に情報を通知する機器である報知装置とから構成される。
このようなDSRC車載器においては、車載器は、路上機から情報を受信、記憶し、次に、報知装置を介して記憶した情報を運転者に通知するという、処理フローにより、路上機から受信した情報を運転者に提供する。
特許文献1には、DSRC通信により、運転者の関心が高い事柄を選別して、路側装置から車載装置に配信する広告配信システムが示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−134707号公報(第4〜7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構成の従来のDSRC車載器においては、運転者は、路上機から通知された情報が、通知された後、削除されているのか、それとも保存されているのかが判らなかった。
特許文献1に示される広告配信システムでは、運転者の関心が高い事柄を選別して、路側装置から車載装置に配信されるが、配信された情報を運転者に通知した後、運転者が通知された情報を残しておきたくとも、残しておくことができず、運転者が関心の高い情報をいつでも取り出せるようにしたものではなかった。
このように、従来では、交通情報などのアプリケーションの情報を優先的に残しておきたくとも、残しておくことができず、運転者が再確認したくとも再確認することができなかった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、運転者が情報の格納方法を設定することができ、これにより通知された情報を再確認できるようにしたDSRC車載器を得ることを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わるDSRC車載器においては、路側に設置された路上機との間でDSRC通信による情報の授受によりアプリケーションを実行するDSRC車載器において、路上機との間でDSRC通信を行う無線通信制御部、この無線通信制御部により路上機から受信した情報を運転者が認識できる状態で出力する報知装置、路上機から受信した情報を格納するメモリ、運転者が路上機から受信した情報のメモリへの格納方法を示す設定を入力するヒューマンインターフェイス、及びこのヒューマンインターフェイスにより入力された設定に基づき、路上機から受信した情報のメモリへの格納方法を判定する優先度判定装置を備え、優先度判定装置により判定された路上機から受信した情報のメモリへの格納方法に基づき、路上機から受信した情報をメモリに格納するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、以上説明したように、路側に設置された路上機との間でDSRC通信による情報の授受によりアプリケーションを実行するDSRC車載器において、路上機との間でDSRC通信を行う無線通信制御部、この無線通信制御部により路上機から受信した情報を運転者が認識できる状態で出力する報知装置、路上機から受信した情報を格納するメモリ、運転者が路上機から受信した情報のメモリへの格納方法を示す設定を入力するヒューマンインターフェイス、及びこのヒューマンインターフェイスにより入力された設定に基づき、路上機から受信した情報のメモリへの格納方法を判定する優先度判定装置を備え、優先度判定装置により判定された路上機から受信した情報のメモリへの格納方法に基づき、路上機から受信した情報をメモリに格納するので、運転者が情報のメモリへの格納方法を設定することができ、運転者が残しておきたい情報をDSRC車載器に残しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるDSRC車載器を示すブロック構成図である。
図1において、DSRC車載器1は、次の2〜7、9から構成され、2、4〜7、9はマイコン3により制御される。
無線通信制御部2は、アンテナを介して、路上機と無線データの送受信を行う。記憶媒体インターフェイス4は、物理的装着部を有し、この物理的装着部は、ICカードと接続され、料金収受に必要な情報をICカードから読み取る。HMI(ヒューマンインターフェイス)5は、運転者が操作入力する機器であり、例えば音声認識装置やスイッチ等である。このHMI5は、運転者の操作により、上記受信した情報の格納方法を示す設定を入力する。報知装置7は、運転者に路上機から受信した情報を通知する機器であり、例えば発光素子、ディスプレー、音声発声装置等である。優先度判定装置9は、マイコン3に接続され、HMI5により入力された、受信した情報の格納方法を示す設定に基づき、メモリへの情報の格納方法を判定する。この判定は、とくにメモリが全部使用されているときに、どうするかを判定する。このメモリは、情報を格納するものであれば、例えば、マイコン3内に実装されてもよく、また、外部装置8であってもよい。この外部装置8は、外部接続インターフェイス6を介して、DSRC車載器1と情報の授受を行うもので、例えば、携帯電話、PC(パーソナルコンピュータ)、カーナビ、情報携帯端末などである。
【0009】
図2は、この発明の実施の形態1によるDSRC車載器が、路上機より受信した情報を処理する場合の手順を示すフローチャートであり、メモリが全て使用されているときに、情報を破棄するか、メモリに保存されている最古の情報をメモリから削除するかをヒューマンインターフェイスの設定値により選択できるようにしている。
図2において、路上機から情報を受信する(ステップS101)と、まず、優先度判定装置9は、運転者から、情報を格納するメモリの大きさが設定されているかどうかを判定する(ステップS102)。次に、優先度判定装置9は、情報を格納するメモリの大きさが設定されていれば、情報を格納するメモリの大きさを運転者からの設定値とする(ステップS103)。次いで、優先度判定装置9は、情報を格納するメモリの大きさが設定されていなければ、情報を格納するメモリの大きさを初期値とする(ステップS104)。
【0010】
次に、優先度判定装置9は、情報を格納するメモリの大きさ内で受信した情報を格納可能かどうかを判定する(ステップS105)。格納可能であれば、マイコン3が、受信した情報を記憶する(ステップS106)。次に、報知装置7により、受信情報を運転者に通知する(ステップS107)。
ステップS105で、優先度判定装置9は、格納可能でなければ、運転者から最古の情報を削除する設定があるかどうかを判定する(ステップS108)。最古の情報を削除する設定があれば、メモリに保存されている最古の情報を、マイコン3がメモリから削除する(ステップS109)。次に、マイコン3が、受信した情報を記憶する(ステップS110)。次に、報知装置7により情報を運転者に通知する(ステップS111)。
ステップS108で、優先度判定装置9は、最古の情報を削除する設定がなければ、情報を格納するメモリが全て使用されていることを報知装置7により運転者に通知する(ステップS112)。
【0011】
なお、図2のステップS102において、運転者が設定した情報を格納するメモリの大きさは、情報を保存するメモリの種類毎、このDSRC車載器が適用されるアプリケーション毎、及び報知装置7の種類毎に設定されるものとする。
また、図2のステップS108において、最古の情報を削除するかどうかの運転者による設定は、情報を保存するメモリの種類毎、このDSRC車載器が適用されるアプリケーション毎、及び報知装置の種類毎に設定されるものとする。
【0012】
実施の形態1によれば、メモリが全て使用されているときに、情報を破棄するか、メモリに保存されている最古の情報をメモリから削除するかをヒューマンインターフェイスの設定値により選択でき、運転者が情報のメモリへの格納方法を選択することができるため、運転者が残しておきたい情報を残しておくことができる。
また、ヒューマンインターフェイスから情報を格納するメモリの大きさを設定でき、運転者が残しておきたい情報を残しておくことができる。
【0013】
また、情報を保存するメモリ毎、DSRC車載器が適用されるアプリケーション毎、及び報知装置の種類毎に、メモリが全て使用されているときに、情報を破棄するか、メモリに保存されている最古の情報をメモリから削除するかをヒューマンインターフェイスの設定値により選択できるため、運転者が残しておきたい情報を残しておくことができる。
また、情報を保存するメモリ毎、DSRC車載器が適用されるアプリケーション毎、及び報知装置の種類毎に、ヒューマンインターフェイスから情報を格納するメモリの大きさを設定でき、運転者が残しておきたい情報を残しておくことができる。
【0014】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2によるDSRC車載器が、路上機より受信した情報を処理する場合の手順を示すフローチャートであり、メモリが全て使用されているときに、ヒューマンインターフェイスの設定値によりメモリから削除する情報を選択できるようにしている。
ここでのヒューマンインターフェイスの設定値には、交通情報や音楽、広告など情報の内容によるものや、音声やテキストなど情報の種類などによる設定がある。
【0015】
図3において、ステップS201〜S207は、図2のステップS101〜S107と同様である。
ステップS205で、優先度判定装置9は、情報を格納する大きさ内で受信した情報を格納可能でなければ、運転者から削除する情報の設定が、HMI5により行われているかどうかを判定する(ステップS208)。運転者から削除する情報の設定があれば、マイコン3が、メモリに保存されている、運転者から設定された情報を削除する(ステップS209)。次に、マイコン3が、受信した情報を記憶する(ステップS210)。次に、報知装置7により、受信した情報を運転者に通知する(ステップS211)。
ステップS208で、優先度判定装置9は、運転者から削除する情報の設定がなければ、情報を格納するメモリが全て使用されていることを報知装置7により運転者に通知する(ステップS212)。
【0016】
なお、図3のステップS202において、運転者が設定した情報を格納するメモリの大きさは、情報を保存するメモリの種類毎、このDSRC車載器が適用されるアプリケーション毎、及び報知装置7の種類毎に設定されるものとする。
また、図3のステップS208において、運転者が行うメモリから削除する情報の設定は、情報を保存するメモリの種類毎、このDSRC車載器が適用されるアプリケーション毎、及び報知装置の種類毎に設定されるものとする。
【0017】
実施の形態2によれば、メモリが全て使用されているときに、ヒューマンインターフェイスの設定値によりメモリから削除する情報を選択でき、運転者が情報のメモリへの格納方法を選択することができるため、運転者が残しておきたい情報を残しておくことができる。
また、ヒューマンインターフェイスにより情報を格納するメモリの大きさを設定でき、運転者が残しておきたい情報を残しておくことができる。
【0018】
また、情報を保存するメモリ毎、DSRC車載器が適用されるアプリケーション毎、及び報知装置の種類毎に、メモリが全て使用されているときに、ヒューマンインターフェイスの設定値によりメモリから削除する情報を選択でき、運転者が情報のメモリへの格納方法を選択することができるため、運転者が残しておきたい情報を残しておくことができる。
また、情報を保存するメモリ毎、DSRC車載器が適用されるアプリケーション毎、及び報知装置の種類毎に、ヒューマンインターフェイスにより情報を格納するメモリの大きさを設定でき、運転者が残しておきたい情報を残しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1によるDSRC車載器を示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるDSRC車載器が、路上機より受信した情報を処理する場合の手順を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2によるDSRC車載器が、路上機より受信した情報を処理する場合の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0020】
1 DSRC車載器
2 無線通信制御部
3 マイコン
4 記憶媒体インターフェイス
5 ヒューマンインターフェイス(HMI)
6 外部接続インターフェイス
7 報知装置
8 外部装置
9 優先度判定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側に設置された路上機との間でDSRC通信による情報の授受によりアプリケーションを実行するDSRC車載器において、上記路上機との間でDSRC通信を行う無線通信制御部、この無線通信制御部により上記路上機から受信した情報を運転者が認識できる状態で出力する報知装置、上記路上機から受信した情報を格納するメモリ、運転者が上記路上機から受信した情報の上記メモリへの格納方法を示す設定を入力するヒューマンインターフェイス、及びこのヒューマンインターフェイスにより入力された上記設定に基づき、上記路上機から受信した情報の上記メモリへの格納方法を判定する優先度判定装置を備え、上記優先度判定装置により判定された上記路上機から受信した情報の上記メモリへの格納方法に基づき、上記路上機から受信した情報を上記メモリに格納することを特徴とするDSRC車載器。
【請求項2】
上記優先度判定装置が行う上記路上機から受信した情報の上記メモリへの格納方法の判定は、上記メモリが全て使用されている場合に、上記路上機から受信した情報を破棄するか、または上記メモリに格納されている最古の情報を上記メモリから削除するかの判定であることを特徴とする請求項1記載のDSRC車載器。
【請求項3】
上記優先度判定装置が行う上記路上機から受信した情報の上記メモリへの格納方法の判定は、上記メモリが全て使用されている場合に、上記メモリから削除する情報の選択であることを特徴とする請求項1記載のDSRC車載器。
【請求項4】
上記優先度判定装置は、上記ヒューマンインターフェイスからの入力により上記路上機から受信した情報を格納するメモリの大きさを設定することを特徴とする請求項2または請求項3記載のDSRC車載器。
【請求項5】
上記メモリは、複数の種類があり、上記ヒューマンインターフェイスからの入力による上記路上機から受信した情報の上記メモリへの格納方法を示す設定は、上記メモリの種類毎に行われることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載のDSRC車載器。
【請求項6】
上記ヒューマンインターフェイスからの入力による上記路上機から受信した情報の上記メモリへの格納方法を示す設定は、DSRC車載器が適用されるアプリケーション毎に行われることを特徴とする請求項2〜請求項4にいずれかに記載のDSRC車載器。
【請求項7】
上記報知装置は、複数の種類があり、上記ヒューマンインターフェイスからの入力による上記路上機から受信した情報の上記メモリへの格納方法を示す設定は、上記報知装置の種類毎に行われることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載のDSRC車載器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−109032(P2007−109032A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299588(P2005−299588)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】